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運動を記述する

放物運動と加法定理

著者:柚木芹香

放物運動の式では,sin⁡2θ や tan⁡θ など,三角関数の公式が何度も出てきます.先に高校の公式を整理してから,モンキーハンティングの証明と斜面への投射を例題で扱います.

定理 数学の道具:加法定理と2倍角(復習)

sin⁡(α±β)=sin⁡αcos⁡β±cos⁡αsin⁡β,cos⁡(α±β)=cos⁡αcos⁡β∓sin⁡αsin⁡β

で,α=β=θ とおくと2倍角の公式になる.

sin⁡2θ=2sin⁡θcos⁡θ,cos⁡2θ=cos2⁡θ−sin2⁡θ=2cos2⁡θ−1=1−2sin2⁡θ

また sin2⁡θ+cos2⁡θ=1 の両辺を cos2⁡θ で割ると 1+tan2⁡θ=1cos2⁡θ が得られる.放物運動では,sin⁡θcos⁡θ の積が出てきたら 12sin⁡2θ と書き直して,角度の最大・最小を調べるのが定石である.

練習 1. 加法定理を使って,sin⁡75∘ の値を求めよ.

練習 2. tan⁡θ=34(0<θ<90∘)のとき,sin⁡2θ と cos⁡2θ を求めよ.

練習 3. 加法定理を使って,cos⁡75∘ と sin⁡15∘ を求めよ.

練習 4. sin⁡θ=513(0<θ<90∘)のとき,cos⁡θ,tan⁡θ を求め,1+tan2⁡θ=1cos2⁡θ が成り立つことを数値で確かめよ.

練習 5. sin⁡2θ=32 となる θ(0<θ<90∘)をすべて求めよ.

答え:(1) sin⁡75∘=sin⁡(45∘+30∘)=22⋅32+22⋅12=6+24.(2) sin⁡θ=35,cos⁡θ=45 なので,sin⁡2θ=2⋅35⋅45=2425,cos⁡2θ=1625−925=725.(3) cos⁡75∘=cos⁡(45∘+30∘)=22⋅32−22⋅12=6−24≈0.259.sin⁡15∘=sin⁡(45∘−30∘)=6−24 で,同じ値になる(sin⁡15∘=cos⁡75∘).(4) cos⁡θ=1213,tan⁡θ=512.1+25144=169144=(1312)2 で一致する.(5) 0<2θ<180∘ で 2θ=60∘, 120∘ より θ=30∘, 60∘.放物運動で同じ到達距離を与える2つの角にあたる.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

問いのモンキーハンティングを数式で確かめよ.猟師の銃口を原点とし,猿の最初の位置を (L, H) とする.弾は猿を狙う向き(水平面との角 θ,tan⁡θ=H/L)に速さ v0 で撃ち出され,その瞬間に猿は手を離して自由落下する.弾が猿に当たることを示し,当たる条件を求めよ.

原点の銃口から猿の初期位置(L,H)を狙う.猿は発射と同時に手を離す.衝突位置は描かない. 原点の銃口から猿の初期位置(L,H)を狙う.猿は発射と同時に手を離す.衝突位置は描かない.
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考え方 弾と猿の位置を同じ時刻で式にし,水平位置が等しくなる時刻の高さを比べる.

弾の位置は x=v0cos⁡θ⋅t,y=v0sin⁡θ⋅t−12gt2.猿の位置は x=L,y=H−12gt2.弾の水平位置が L になる時刻は t∗=Lv0cos⁡θ である.このときの弾の高さは

y弾=v0sin⁡θ⋅t∗−12gt∗2=Ltan⁡θ−12gt∗2=H−12gt∗2

で,同じ時刻の猿の高さ H−12gt∗2 と等しい.よって時刻 t∗ に弾は猿に当たる.これは v0 の大きさによらない.

ただし当たるのは,その時刻に猿がまだ地面より上にいるときだけである.条件は H−12gt∗2≥0,すなわち v02cos2⁡θ≥gL22H で,弾が速いほど当たりやすい.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

傾き α の斜面が,点Oから下向きに続いている.Oから水平に速さ v0 で小球を投げる.(1) 小球が斜面に落ちるまでの時間 (2) Oから落下点までの斜面に沿った距離 (3) 落下の瞬間の速度の向き(水平面から下向きに測った角 ϕ)を求めよ.α=30∘,v0=10ms−1 のときの数値も求めよ.

下向きに傾く斜面の上端Oから,水平な初速度v₀で投げる. 下向きに傾く斜面の上端Oから,水平な初速度v₀で投げる.
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考え方 Oを原点とし,水平にx軸,鉛直上向きにy軸をとる.斜面は y=−xtan⁡α である.小球の軌道がこの直線と交わる点が落下点である.

水平投射なので x=v0t,y=−12gt2.

  1. 斜面上の点は y=−xtan⁡α を満たす.−12gt2=−v0ttan⁡α より,t>0 で t=2v0tan⁡αg.

  2. 落下点のx座標は x=v0t=2v02tan⁡αg.斜面に沿った距離は d=xcos⁡α=2v02sin⁡αgcos2⁡α.

  3. 落下の瞬間に vx=v0,vy=−gt=−2v0tan⁡α.水平面から下向きの角は tan⁡ϕ=|vy|vx=2tan⁡α.この結果は v0 によらない.

数値は t=203g≈1.2s,d=2⋅100⋅12g⋅34=4003g≈13.6m,tan⁡ϕ=23≈1.155,ϕ≈49∘ である.

例題 3

オリジナル ★☆☆☆☆

高さ 19.6m の崖の上から,水平に 15ms−1 で石を投げた.空気の抵抗は無視する.(1) 着水までの時間 (2) 崖の真下から着水点までの水平距離 (3) 着水直前の速さと,水平面から下向きに測った角度を求めよ.

高さ19.6 mの崖から,水平に15 m s⁻¹で石を投げる.着水位置は示さない. 高さ19.6 mの崖から,水平に15 m s⁻¹で石を投げる.着水位置は示さない.
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考え方 水平は等速,鉛直は初速度0の自由落下として扱う.

  1. 鉛直方向は 19.6=12gt2 より t=2⋅19.6/g=2.0s.

  2. 水平距離は 15×2.0=30m.

  3. vx=15ms−1,vy=−gt=−19.6ms−1.速さは 152+19.62=609.16≈24.7ms−1,約 25ms−1.角度は tan⁡ϕ=19.6/15≈1.31 より ϕ≈53∘.

ポイント ここまでのまとめ

  • 加法定理から2倍角の公式が出る.sin⁡θcos⁡θ の積は 12sin⁡2θ と書き直して,角度の最大・最小を調べる.1+tan2⁡θ=1/cos2⁡θ は軌道の式を tan⁡θ の2次式に直すときに使う.

  • モンキーハンティングでは,弾の水平位置が L になる時刻に,弾と猿の高さがどちらも H−12gt2 になる.空気抵抗を無視し,地面に着く前に出会える速さであれば,当たることは v0 の大きさによらない.

  • 斜面への投射は,軌道と斜面の直線の交点を求める問題になる.水平投射で斜面に落ちるとき,落下の向きは tan⁡ϕ=2tan⁡α で,初速に依存しない.