問いしるべ
問いから始める物理 測定と不確かさ(発展)

測定と不確かさ(発展)

計算した量の不確かさの演習

著者:柚木芹香

値だけでなく,どの読みが結果の不確かさを決めるかを調べます.以下の値は架空で,特に断らない限り入力の不確かさは独立です.括弧の中は標準不確かさを表します.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

ばねの自然長を l0=0.2500m,おもりをつるした長さを l1=0.2820m と測りました.各長さの標準不確かさは 0.0005m です.両方の読みのずれは独立とします.

ばねの自然長l₀と,おもりをつるした長さl₁を示す.伸びの値は描いていない. ばねの自然長l₀と,おもりをつるした長さl₁を示す.伸びの値は描いていない.
  1. 伸び d=l1−l0 とその合成標準不確かさを求めよ.

  2. 伸びの相対標準不確かさを,長さ l1 の相対標準不確かさと比べよ.

解答を見る

考え方 差では不確かさそのものを2乗して足す.大きい量どうしの差は,値が小さくても不確かさが小さくなるとは限らない.

  1. d=0.0320m,uc(d)=0.00052+0.00052=0.00071m.結果は d=0.03200(71)m.

  2. u(d)/d=0.000707/0.0320≈0.022,つまり2.2 %.一方 u(l1)/l1=0.0005/0.2820≈0.0018,つまり0.18 % である.確かめとして,伸びが0に近づいても差の絶対不確かさは変わらず,相対不確かさは大きくなる.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

等速で走る台車が,間隔 L=0.750m の2つの光センサーを t=0.2500s で通過しました.u(L)=0.002m,u(t)=0.0010s です.

間隔Lの光センサーA・Bを台車が通過する時間tを測る.速さの値は示していない. 間隔Lの光センサーA・Bを台車が通過する時間tを測る.速さの値は示していない.
  1. 速さ v=L/t とその合成標準不確かさを求めよ.

  2. 時間の不確かさだけが0になったとき,速さの不確かさはいくら残るか.

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考え方 商の相対不確かさは,分子・分母の相対不確かさの2乗の和の平方根である.

  1. v=3.000ms−1.u(v)/v=(0.002/0.750)2+(0.0010/0.2500)2=0.00481 より,uc(v)=0.014ms−1.報告は v=3.000(14)ms−1.

  2. u(v)=u(L)/t=0.0080ms−1 残る.時間を良くしても距離の寄与は消えない.確かめとして,距離の不確かさを時間で割った単位は速さの単位になる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

静かに放した小球の落下距離を h=0.800m,落下時間を t=0.4040s と測りました.u(h)=0.001m,u(t)=0.0020s です.空気抵抗は無視し,g=2h/t2 を使います.

小球を放す装置と下のセンサーを示す.球の同じ点が移動する距離hを測る. 小球を放す装置と下のセンサーを示す.球の同じ点が移動する距離hを測る.
  1. g とその合成標準不確かさを求めよ.

  2. 距離または時間の不確かさの一方だけを半分にできます.どちらを改善すべきか,両方の案を計算して比べよ.

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考え方 g∝ht−2 なので,時間の相対不確かさは2倍に効く.

  1. g=2×0.800/0.40402=9.803ms−2.距離の寄与は 0.001/0.800=0.00125,時間は 2×0.0020/0.4040=0.00990.uc(g)=9.8030.001252+0.009902=0.098ms−2.g=9.803(98)ms−2 と報告する.

  2. 距離を改善すると u(g)=9.8030.0006252+0.009902=0.097ms−2,時間を改善すると 9.8030.001252+0.004952=0.050ms−2.時間の改善が有効である.確かめとして,時間が長めに出ると g は小さくなり,微分の負の符号と一致する.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

円柱の直径を D=2.000cm,高さを H=5.000cm と測りました.u(D)=0.020cm,u(H)=0.020cm です.体積は V=πD2H/4 です.

円柱の直径Dと高さHを示す.体積や不確かさの答えは描いていない. 円柱の直径Dと高さHを示す.体積や不確かさの答えは描いていない.
  1. 体積と合成標準不確かさを求めよ.

  2. 直径を2回掛けるので,独立な2つの測定として寄与を足してよいか.

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考え方 同じ測定値の2乗は,1つの量のべきとして扱う.同じ値を式に2回書いても,測定が2つになったわけではない.

  1. V=π×2.0002×5.000/4=15.708cm3.直径の寄与は 2u(D)/D=0.0200,高さは u(H)/H=0.00400.uc(V)=15.7080.02002+0.004002=0.32cm3.V=15.71(32)cm3 と報告する.

  2. いけない.D のずれは2つの因子に同時に入るので,相対的なずれは2倍である.2 倍ではない.確かめとして,D が1 % 増えれば D2 は 1.012=1.0201 倍で,約2 % 増える.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

壁までの距離 L=12.00m,直接音から反射音までの間隔 τ=0.07060s を得ました.u(L)=0.020m,u(τ)=0.00020s です.音源とマイクは同じ位置にあり,c=2L/τ を使います.比較する基準の音速を 343.0ms−1 とし,その不確かさは無視します.

壁までの距離Lと往復経路,直接音と反射音の山の間隔τを示す.時間差の数値は描いていない. 壁までの距離Lと往復経路,直接音と反射音の山の間隔τを示す.時間差の数値は描いていない.
  1. 音速と合成標準不確かさ,k=2 の拡張不確かさを求めよ.

  2. 基準は c±U の範囲に入るか.この比較だけで測定ミスと断定してよいか.

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考え方 2は正確な定数で,不確かさを持ち込まない.比較では,何倍の標準不確かさの幅かを明示する.

  1. c=24.00/0.07060=339.94ms−1.uc(c)=c(0.020/12.00)2+(0.00020/0.07060)2=1.1ms−1.U=2uc=2.2ms−1.標準不確かさで c=339.9(11)ms−1 と報告する.

  2. 丸め前の値では範囲は約 337.71〜342.18ms−1 で,基準は入らない.ただし包含係数2の範囲は必ず真の値を含む境界ではない.室温などの条件が基準と同じか,反射経路の選択や器械の時間尺度に見落としがないかを調べる.確かめとして,往復距離を片道と取り違えると約半分の値になり,今回の差よりはるかに大きい.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

斜面の高さと斜面に沿った長さの比 q=h/L を測ります.h=0.0800m,L=0.4000m で,各読みの独立な標準不確かさは 0.0005m です.さらに,同じものさしの目盛り間隔には,共通の小さな倍率のずれ ε があり,u(ε)=0.010 とします.このずれだけなら,両方の読みは (1+ε)h,(1+ε)L になります.

直角三角形の高さhと斜辺の長さLを,同じものさしで測る.比の値は示していない. 直角三角形の高さhと斜辺の長さLを,同じものさしで測る.比の値は示していない.
  1. 共通の倍率のずれが q にどう入るか,分数を直接計算して調べよ.

  2. 独立な読みの不確かさだけから u(q) を求めよ.倍率のずれまで独立として合成すると,なぜ過大評価になるか.

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考え方 同じ原因によるずれは独立ではない.先に同じ ε を式に入れ,消えるかどうかを確かめる.

  1. q′=(1+ε)h/[(1+ε)L]=h/L.共通の倍率は,このモデルでは厳密に消える.独立な読みの小さなずれとの積は1次近似では無視する.

  2. q=0.2000,u(q)=q(0.0005/0.0800)2+(0.0005/0.4000)2=0.0013.q=0.2000(13) と報告する.倍率を独立として入れると,消えるはずの u(ε)2 を2つ足してしまう.ここでは共分散の一般式を使わず,共通の原因を式に表して判断した.確かめとして,q は長さ同士の比なので無次元であり,ものさしの単位を変えても値は変わらない.

ポイント 教える人へ

まず式に入る測定値を列挙し,同じ読みを2回使っていないかを調べてもらってください.相対不確かさを比べるときは指数も含めます.演習6では,独立な場合の公式を機械的に当てはめず,同じ原因のずれを同じ文字で書けることが理解の目安です.