問いしるべ
問いから始める物理 電磁波(発展)

電磁波(発展)

加速する電荷の放射と散乱の演習

著者:柚木芹香

遅れ,放射の向き,振動数依存性を確かめましょう.以下,c=3.0×108ms−1,非相対論的な運動とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

小さな領域にある電荷 q が,時刻0から τ=1.0×10−7s の間,z方向に一定の加速度 a0 を受け,それ以外の時刻の加速度は0です.遠方の放射電場の大きさを

Erad(r,θ,t)=|q||a(t−r/c)|sin⁡θ4πε0c2r

とします.θ はz軸との角です.Aは距離 r=6.0×103m,角 30∘,Bは距離 2r,角 90∘ にあります.

  1. 各点に放射が届き始める時刻と継続時間を求めよ.

  2. 各点でパルスが届いている間の放射の強さの比 IA/IB と,z軸上の放射電場を求めよ.I は Erad2 に比例します.

電荷qから正のz方向へ加速度a_0を示す.観測点Aはz軸となす角30°,距離rにあり,Bは角90°,距離2rにある. 電荷qから正のz方向へ加速度a_0を示す.観測点Aはz軸となす角30°,距離rにあり,Bは角90°,距離2rにある.
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考え方 到達の遅れと,角度・距離による強さの変化を分ける.

  1. Aでは r/c=2.0×10−5s,Bでは 2r/c=4.0×10−5s から始まる.継続時間はどちらも τ である.

  2. IA/IB=(sin⁡30∘/r)2/(sin⁡90∘/(2r))2=1.z軸上は sin⁡θ=0 だから放射電場は0である.これは静電場も0という意味ではない.遠方場では源の大きさと r の比,および cτ/r=5.0×10−3 が小さく,運動の速さと c の比も小さいことを前提とする.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

電荷の絶対値がともに e,質量が m と 4m の2粒子を,それぞれ同じ運動エネルギー K で運動させます.瞬間の放射電力はラーモアの式 P=e2a2/(6πε0c3) に従います.

  1. 同じ一様電場に入れた直後の,軽い粒子と重い粒子の放射電力の比を求めよ.

  2. 同じ一様磁場に,磁場へ垂直に入れた直後の比を求めよ.初めの放射損失は無視できるとします.

質量mと4m,電荷の絶対値e,運動エネルギーKの2粒子を二つの場合に示す.左は青い一様電場,右は緑の⊙で表す一様磁場への垂直な入射である.右の矢印は入射方向だけを示す. 質量mと4m,電荷の絶対値e,運動エネルギーKの2粒子を二つの場合に示す.左は青い一様電場,右は緑の⊙で表す一様磁場への垂直な入射である.右の矢印は入射方向だけを示す.
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考え方 等しいエネルギーから各速さを決め,電場と磁場の加速度を比較する.

  1. am=eE/m,a4m=eE/(4m) より Pm/P4m=42=16.

  2. vm=2K/m,v4m=vm/2.a=eBv/M だから am/a4m=4×2=8,Pm/P4m=64.磁場は仕事をしないが,運動の向きを変えて加速度を生じさせる.適用条件は 2K/(mc2) が十分小さいことで,重い粒子についても同時に満たされる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

希薄な気体を異なる振動数の光で照らし,同じ方向・同じ距離の検出器が受ける散乱電力 Psc を測りました.入射電場振幅は E0 です.基準値 ν0,Eref を使い,Psc=P0(E0/Eref)2(ν/ν0)p という模型を調べます.

ν/ν0

E0/Eref

Psc(10−12W)

1.0

1.0

2.0

1.5

1.0

10.1

2.0

0.50

8.0

  1. 1行目と3行目から P0,p を求め,2行目を確かめよ.

  2. ν=1.2ν0,E0=0.75Eref での散乱電力を予測せよ.入射振幅の変化を無視すると,1行目と3行目から p をいくつと誤りますか.

振動数ν,電場振幅E_0の光を希薄気体に入射させる.同じ方向・同じ距離に固定した検出器が散乱光を受ける. 振動数ν,電場振幅E_0の光を希薄気体に入射させる.同じ方向・同じ距離に固定した検出器が散乱光を受ける.
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考え方 入射振幅の2乗で割って振動数依存性を調べる.

  1. P0=2.0×10−12W.3行目との比は 8.0/2.0=0.502×2p より 2p=16,p=4.2行目の予測は 2.0×1.54=10.125 で,測定の桁で10.1に一致する.

  2. Psc=2.0×10−12×0.752×1.24=2.3×10−12W.振幅変化を無視すると 2p=4 として p=2 を得る.4乗則は測定範囲では支持されるが,共鳴へ近づく範囲までの外挿はできない.レイリー近似では光の角振動数と電子の固有角振動数の比が十分小さいことも必要である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

束縛された電子の変位 x が

md2xdt2+mω02x=−eE0cos⁡ωt

に従います.共鳴を避け,強制振動だけを扱います.減衰と放射による運動の変化は無視し,平均放射電力は ⟨P⟩=e2⟨a2⟩/(6πε0c3) とします.

  1. x を複素振幅 X を用いた Xeiωt の実部として解き,平均放射電力を求めよ.

  2. 同じ E0 で ω=ω0/2 と ω0/3 の放射電力の比を求め,単純な ω4 則と比較せよ.

固定した束縛中心からx方向に変位した電子を示す.固有角振動数はω_0で,青い入射電場の駆動角振動数はωである. 固定した束縛中心からx方向に変位した電子を示す.固有角振動数はω_0で,青い入射電場の駆動角振動数はωである.
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考え方 加速度の複素振幅は −ω2X である.変位振幅自身も駆動振動数に依存する.

  1. 代入すると m(ω02−ω2)X=−eE0,従って X=−eE0/[m(ω02−ω2)].正弦振動の2乗平均から

⟨a2⟩=ω4|X|22,⟨P⟩=e4E02ω412πε0m2c3(ω02−ω2)2

となる.

  1. 分母も比較すると,比は (3/2)4[(1−1/9)/(1−1/4)]2=64/9≈7.1.4乗則だけなら (3/2)4≈5.1 である.ω2/ω02 が十分小さい場合にのみ分母を一定とみなせる.ここでは最大1/4なのでその近似は粗く,さらに ω|X|/c が小さい範囲で放射式を使う.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

固定した電荷 +e のまわりを電子がほぼ円軌道で運動し,放射により軌道半径 r がゆっくり縮む古典模型を考えます.κ=e2/(4πε0)=2.3×10−28Jm,電子質量 m=9.1×10−31kg,初期半径 r0=6.0×10−11m とします.放射電力は P=2κa2/(3c3) です.

  1. 円軌道の力学的エネルギー U(r) と放射電力 P(r) を導け.

  2. dUdt=−P から,半径が r0/2 になるまでの時間を求めよ.この範囲で速さが光速より十分小さく,1周中のエネルギー損失も十分小さいか確かめよ.

固定した正電荷+eのまわりの,初期半径r_0の円軌道を破線,一般の半径rの円軌道を実線で示す.一般の軌道上の電子と質量mを記す. 固定した正電荷+eのまわりの,初期半径r_0の円軌道を破線,一般の半径rの円軌道を実線で示す.一般の軌道上の電子と質量mを記す.
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考え方 各瞬間の円運動からエネルギーと放射電力を半径だけで表し,エネルギー収支を半径の微分方程式へ直す.

  1. mv2/r=κ/r2 だから v2=κ/(mr),a=κ/(mr2).運動エネルギーと電位エネルギーの和は U=κ/(2r)−κ/r=−κ/(2r),P=2κ3/(3m2c3r4).

  2. κdrdt/(2r2)=−P より drdt=−4κ2/(3m2c3r2).積分すると

t1/2=3m2c34κ2∫r0/2r0r2dr=7m2c3r0332κ2=2.0×10−11s

となる.速さは縮むほど増すが,最後でも v/c=2κ/(mr0c2)=9.7×10−3.周期 T=2πr/v を使うと PT/|U|=(8π/3)(v/c)3 で,最大でも 7.6×10−6.両無次元量が小さく,この範囲では近似が整合する.半径0まで同じ近似は延ばせない.

ポイント 教える人へ

  • 遅れを含む時刻と,電荷が加速した時刻を区別させます.

  • 放射電場のない方向にも静電場は存在しうることを問います.

  • 散乱の測定では,入射光の振幅をそろえた比較になっているか確かめさせます.

  • 古典原子の収縮では,速さと1周期の変化の両方から近似を点検させます.