問いしるべ
問いから始める物理 原子核と素粒子

原子核と素粒子

放射性崩壊と放射線測定の演習

著者:柚木芹香

核数と放射能,計数を区別して解いてください.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

単一核種の放射能が 80Bq から 9.0h 後に 10Bq となった.1h=3600s とする.

  1. 半減期・崩壊定数・平均寿命を求めよ.

  2. 初めの核数と崩壊した核数を求めよ.

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考え方 放射能 R=λN の比は核数の比に等しい.

  1. 10/80=1/8=2−3 より T1/2=3.0h.λ=ln⁡2/10800s−1=6.4×10−5s−1,τ=1/λ=4.3h.

  2. N0=R0/λ=1.2×106.崩壊数は 7N0/8=1.1×106.R/λ は無次元となる.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

質量数232,原子番号90の核が α・β− 崩壊を経て,質量数208,原子番号82になる.

  1. 各崩壊の回数を求めよ.途中の γ 放出で回数は変わるか.

  2. 単色の γ 線の未散乱光子数が厚さ d の板で半分になる.I(x)=I0e−μx として,μ と透過数を1/32以下にする最小厚さを求めよ.

質量数232,原子番号90から,質量数208,原子番号82へ変わる崩壊系列.別図にγ光子束,厚さxの板,検出器を示す. 質量数232,原子番号90から,質量数208,原子番号82へ変わる崩壊系列.別図にγ光子束,厚さxの板,検出器を示す.
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考え方 質量数から α の回数,電荷保存から β− の回数を決める.

  1. 回数を a,b とすると 232−4a=208,90−2a+b=82.よって a=6,b=4 である.γ 放出では質量数・原子番号は不変.

  2. e−μd=1/2 から μ=ln⁡2/d.e−μx≤2−5 より x≥5d で,最小は 5d.散乱光子も検出する配置では,この指数則をそのまま使えない.

演習 3

東京大 2000 後期(改題) ★★☆☆☆

単一核種を固定した配置で 60s ずつ測り,下表の総計数 Ci を得た.毎回の独立な同時間の背景計数 Di は400で,検出効率は一定とする.

開始時刻 t

Ci

0s

5200

600s

2800

1200s

1600

  1. Si=Ci−Di を片対数で直線化して半減期を求めよ.総計数も直線になるか.

  2. 計数の不確かさはその平方根で,正味計数の分散は σi2=Ci+Di である.両端から求める L=ln⁡(S0/S2) について,σL2=σ02/S02+σ22/S22 を使い,半減期の不確かさを求めよ.

試料ありの測定と独立な背景測定を示す.下段は開始時刻tと正味計数S_iの片対数作図用座標で,測定点は未記入. 試料ありの測定と独立な背景測定を示す.下段は開始時刻tと正味計数S_iの片対数作図用座標で,測定点は未記入.
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考え方 背景を引いても背景計数のゆらぎは残る.

  1. 正味計数は4800,2400,1200.効率 ε,測定時間 Δt で S(t)=ε[N(t)−N(t+Δt)]=εN0(1−e−λΔt)e−λt.ln⁡S の傾きは −λ で,λ=ln⁡4/(1200s),T1/2=ln⁡2/λ=600s.中央も一致する.総計数は直線にならない.

  2. σL=5600/48002+2000/12002=0.0404.T1/2=1200ln⁡2/Ls を微分すると σT/T1/2=σL/L.よって σT=600×0.0404/ln⁡4s≈17s である.相対ゆらぎ σL/L≈0.029 は小さい.

演習 4

東京大 1995 前期(改題) ★★☆☆☆

木炭の炭素の単位質量あたりの 614C 放射能は現代炭素の0.325倍である.炭素質量の10.0 %は後で混入した現代炭素である.植物の生前の同位体比は一定で,この混入以外には死後の炭素交換はない.半減期は 5730年 とする.

  1. 木炭由来の現代炭素に対する比と年代を求めよ.

  2. 混入を無視した年代と誤りの向きを求めよ.

炭素質量の90.0 %が木炭由来,10.0 %が混入した現代炭素である.試料全体の単位質量あたりの放射能は現代炭素の0.325倍. 炭素質量の90.0 %が木炭由来,10.0 %が混入した現代炭素である.試料全体の単位質量あたりの放射能は現代炭素の0.325倍.
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考え方 炭素質量で重みをつけて放射能を足す.

  1. 木炭由来の比を r とすると 0.325=0.900r+0.100 なので r=0.250.t=−5730ln⁡r/ln⁡2年=1.15×104年.

  2. t′=−5730ln⁡0.325/ln⁡2年=9.29×103年.比放射能が増すので約 2.2×103年 若く見える.混入0なら年代は一致する.

演習 5

東京大 2000 後期(改題) ★★☆☆☆

静止核が α 粒子と基底状態の娘核に崩壊する.娘核は 216u,α 粒子は 4.00u とする.α粒子の測定運動エネルギーは 6.48MeV であった.運動は非相対論近似で扱い,1uc2=931.5MeV とする.

  1. 娘核の運動エネルギーと解放エネルギー Q を求めよ.

  2. vα/c を求め,近似を確かめよ.β− 崩壊の電子が連続エネルギーになる理由を述べよ.

静止親核から娘核とα粒子が生じる.娘核の質量216 u,α粒子の質量4.00 uと測定運動エネルギー6.48 MeVを示す. 静止親核から娘核とα粒子が生じる.娘核の質量216 u,α粒子の質量4.00 uと測定運動エネルギー6.48 MeVを示す.
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考え方 等しい運動量では,運動エネルギーは質量に反比例する.

  1. pD+pα=0.K=p2/(2m) より KD/Kα=4/216 なので KD=0.120MeV.Q=Kα+KD=6.60MeV である.

  2. vα/c=2Kα/(mαc2)=12.96/(4.00×931.5)=0.0590.Kα/(mαc2)=0.00174 は小さく,非相対論近似がよい.β− 崩壊は娘核・電子・反ニュートリノへエネルギーと運動量を分けるので,電子の取り分は一定でない.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

PからD,Dから安定核へ枝分かれなく崩壊する.初めに NP=N0,ND=0 とする.半減期はPが 40日,Dが 2.0日 である.

  1. λP=λ とおき,ND(t) と放射能比 r=RD/RP を求めよ.

  2. 娘の放射能の最大時刻と r を求めよ.

  3. 十分後の r と,放射能を等しくする近似条件を求めよ.

PからD,Dから安定核への崩壊.Pの半減期40日,Dの半減期2.0日と,時刻0のN_P=N_0,N_D=0を示す. PからD,Dから安定核への崩壊.Pの半減期40日,Dの半減期2.0日と,時刻0のN_P=N_0,N_D=0を示す.
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考え方 娘核の増減は生成率と崩壊率の差である.

  1. λD=20λ,NP=N0e−λt.dNDdt+20λND=λN0e−λt.e20λt を掛けて0から積分すると e20λtND=N0(e19λt−1)/19.よって

ND=N019(e−λt−e−20λt),r=2019(1−e−19λt)
  1. 微分を0とすると −e−λt+20e−20λt=0.t∗=ln⁡20/(19λ)=40ln⁡20/(19ln⁡2)日=9.1日.このとき r=1 で,微分は正から負へ変わる.

  2. 極限は 20/19≈1.053 である.λP/λD と e−19λt が小さければ r≈1.前者は0.050で約5 %のずれが残る.t=0 で娘核数は0となる.

ポイント 教える人へ

半減期と平均寿命が対応する値を問います.
背景を引いてもゆらぎが残る理由を問います.
反跳のエネルギー等分の誤りを問います.
娘の放射能の最大と放射平衡を区別させます.