問いしるべ
問いから始める物理 電流と回路

電流と回路

指数関数的な緩和と片対数グラフ

著者:柚木芹香

本体の節で結果だけ示した充電と放電の式を,第4章の1階の微分方程式の解き方で導きます.指数関数の性質と,測定から時定数を読む片対数グラフもまとめます.

定理 数学の道具:目標の値に近づく1階の微分方程式

τ>0,y∞ を定数として

τdydt=y∞−y,y(0)=y0

の解は

y=y∞+(y0−y∞)e−t/τ

である.u=y−y∞ とおくと τdu/dt=−u となり,変数分離で u=u0e−t/τ を得る(第4章).線形の空気抵抗の落下では y=v,y∞=mg/b,τ=m/b,コンデンサーの充電では y=q,y∞=CE,τ=RC,放電では y∞=0 である.

接線. t=0 での傾きは (y∞−y0)/τ で,この傾きのまま進むと,ちょうど t=τ で y∞ に届く.

半分になる時間. 差 y−y∞ が半分になる時間は τln⁡2≈0.69τ,10分の1になる時間は τln⁡10≈2.3τ で,どこから数えても同じである.

積分. ∫0∞e−t/τdt=τ,∫0∞e−2t/τdt=τ2.電流が e−t/τ で減るとき,運ばれる全電荷は I(0)τ,抵抗の熱は RI(0)2τ/2 である.

練習1 起電力 6.0V の電池で,R=20kΩ を介して未充電の C=50μF を充電する.電池の内部抵抗は無視し,充電開始を時刻0とする.時定数,電圧が 3.0V になる時刻,t=2.0s での電流を求めよ.

答え 練習1:τ=2.0×104×5.0×10−5=1.0s.e−t/τ=1/2 より t=τln⁡2≈0.69s.I=6.02.0×104e−2.0≈4.1×10−5A.

定理 数学の道具:片対数グラフ

y=y0e−t/τ の自然対数をとると

ln⁡y=ln⁡y0−tτ

で,横軸 t,縦軸 ln⁡y のグラフは傾き −1/τ の直線になる.常用対数なら傾きは −(log10⁡e)/τ=−0.434/τ である.片対数方眼紙(縦軸だけが対数の目盛り)に y をそのまま記入しても直線になり,y が10分の1になる時間 τln⁡10 から τ が読める.

0でない y∞ に近づく量は,差 |y∞−y| の対数をとる.点が1本の直線に乗れば時定数が1つの模型で説明でき,曲がっていれば時定数が2つ以上あるか,素子が線形でない.

測定値に直線を引くときは,差 y∞−y が小さい終わりの点ほど,測定のずれ δy による縦軸のずれ δy/|y∞−y| が大きいことに注意します.

練習2 片対数グラフで,放電の電圧が 10V から 1.0V まで下がるのに 4.6s かかった.時定数を求めよ.

答え τ=4.6/ln⁡10≈2.0s.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

内部抵抗の無視できる起電力 E=12V の電池の正極から,スイッチSと抵抗 R1=4.0kΩ を通って接続点Pに至る.Pと負極の間には,抵抗 R2=2.0kΩ と未充電のコンデンサー C=50μF を並列につなぐ.時刻0にSを閉じる.

  1. 閉じた直後の R1,R2,コンデンサーに流れる電流を求めよ.

  2. 十分時間がたった後の電流と,コンデンサーの電圧と電荷を求めよ.

  3. コンデンサーの電圧 v(t) と時定数を求めよ.

電池ℰの正極からスイッチS,抵抗R_1を通りPへ至る.Pと負極の間にR_2とCを並列につなぐ.矢印は各枝の電流の基準の向き,vはコンデンサーの電圧. 電池ℰの正極からスイッチS,抵抗R_1を通りPへ至る.Pと負極の間にR_2とCを並列につなぐ.矢印は各枝の電流の基準の向き,vはコンデンサーの電圧.
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考え方 直後は電圧が0のまま,十分後は電流が0.途中はコンデンサーから見た回路をテブナンの電源にまとめる.

  1. 直後は v=0 なので R2 の電流は0,R1 の電流 E/R1=3.0mA がすべてコンデンサーへ流れ込む.

  2. コンデンサーの電流が0なので,R1 と R2 に同じ電流 E/(R1+R2)=2.0mA が流れる.v=R2×2.0mA=4.0V,q=Cv=2.0×10−4C.

  3. コンデンサーから見ると Vth は (2) の 4.0V,電池を導線に置き換えて Rth=R1R2/(R1+R2)=4/3kΩ.よって

τ=RthC≈6.7×10−2s,v=4.0(1−e−t/τ)V

確かめ:(3) の t=0 での傾き Vth/τ=60Vs−1 は,(1) の電流から出す I/C=60Vs−1 と一致する.この後Sを開けば,放電の時定数は R2C=0.10s で,充電より長い.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

容量 C1 のコンデンサーを電圧 V0 に充電して充電用の電源から切り離し,未充電の容量 C2 のコンデンサーと,下側の極板どうしを導線で,上側の極板どうしを抵抗 R とスイッチでつなぐ.時刻0にスイッチを閉じる.

  1. 十分後の共通の電圧と,抵抗を通った電荷を求めよ.

  2. 2つの電圧の差 w=v1−v2 と電流 I を求めよ.時定数はいくらか.

  3. 抵抗で出る熱を求め,静電エネルギーの減少と比べよ.R を小さくすると熱は減るか.

左のC_1は電圧V_0で上側が正,右のC_2は未充電.下側の極板を導線で,上側を抵抗Rとスイッチでつなぐ.点線はスイッチを閉じた後の上側の孤立部分,IはC_1からC_2への基準の向き. 左のC_1は電圧V_0で上側が正,右のC_2は未充電.下側の極板を導線で,上側を抵抗Rとスイッチでつなぐ.点線はスイッチを閉じた後の上側の孤立部分,IはC_1からC_2への基準の向き.
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考え方 上側の2枚の極板とその間の導線は孤立部分で,電荷の和が変わらない.電圧の差が抵抗に電流を流す.

  1. 上側の電荷の和は C1V0 で一定.十分後は電流が0で電圧が等しく,(C1+C2)vf=C1V0 から

vf=C1V0C1+C2

抵抗を通った電荷は C2vf=C1C2V0C1+C2.

  1. I=w/R,C1dv1/dt=−I,C2dv2/dt=I より

dwdt=−(1C1+1C2)wR=−wRCs,Cs=C1C2C1+C2

w(0)=V0 だから w=V0e−t/τ,I=V0Re−t/τ,時定数は τ=RCs.Cs は2つを直列にしたときの容量である.

  1. 熱は

∫0∞RI2dt=V02R⋅τ2=12CsV02

静電エネルギーの減少 12C1V02−12(C1+C2)vf2=12C1V02⋅C2C1+C2 と一致する.熱は R によらず,R を小さくしても減らない.

確かめ:C1=C2 なら熱は初めのエネルギーの半分.R→0 では τ→0 で集中定数回路の条件が破れ,自己誘導や電磁波の放射なども考慮する必要がある.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

未知の容量 C の未充電のコンデンサーを,R=100kΩ を介して起電力 E=10.0V の電池で時刻0から充電し,コンデンサーの電圧 v を測った.電池の内部抵抗と電圧計の影響は無視でき,読みのずれは ±0.05V ほどである.何を縦軸にとれば直線になるかを示し,時定数と C を求めよ.

t

0s

1.0s

2.0s

3.0s

4.0s

6.0s

v

0V

3.9V

6.3V

7.8V

8.6V

9.5V

電池ℰと抵抗RでコンデンサーCを充電する.Cの両端に電圧計Vを並列につなぎ,電圧vを測る. 電池ℰと抵抗RでコンデンサーCを充電する.Cの両端に電圧計Vを並列につなぎ,電圧vを測る.
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考え方 v=E(1−e−t/τ) なら ln⁡(1−v/E)=−t/τ で,原点を通る直線になる.

y=ln⁡(1−v/E) を計算すると

t

1.0s

2.0s

3.0s

4.0s

6.0s

y

−0.49

−0.99

−1.51

−1.97

−3.00

で,原点を通るほぼ1本の直線に乗る.原点を通る直線の最小二乗法(第14章)で傾きは ∑ty/∑t2=−32.9/66≈−0.50s−1.よって τ≈2.0s,C=τ/R≈2.0×10−5F=2.0×101μF.

確かめ:t=τ=2.0s で v は E の 63 % の 6.3V で,表と合う.y のずれ δv/(E−v) は,t=1.0s で 0.05/6.1≈0.008,t=6.0s で 0.05/0.5=0.1 なので,直線を引くときは最後の点を軽く見る.上の和では t の大きい点ほど重く効くので,最後の点を除いて求め直すと −14.9/30≈−0.50s−1 で,結果は変わらない.

ポイント ここまでのまとめ

  • τdy/dt=y∞−y の解は y=y∞+(y0−y∞)e−t/τ.空気抵抗の落下と RC 回路は同じ方程式.

  • 初めの接線は t=τ で目標の値に届く.差が半分になる時間は τln⁡2.

  • 片対数グラフで ln⁡|y∞−y| は傾き −1/τ の直線になる.直線に乗るかどうかが模型の確かめになる.

  • 時定数は,抵抗が多い回路で RthC,2つのコンデンサーを抵抗でつなぐと RCs.孤立部分の電荷の和が終わりの電圧を決め,失うエネルギーは R によらない.