問いしるべ
問いから始める物理 気体の分子運動論

気体の分子運動論

実在気体の演習

著者:柚木芹香

圧力の補正を無次元の比で評価してください.以下はファンデルワールス模型の問題で,w=V/ν,R=8.3Jmol−1K−1 とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

仮想的な気体の定数は a=0.166Pam6mol−2,b=4.0×10−5m3mol−1 である.温度は 400K とする.

  1. w=4.0×10−2m3mol−1 で b/w,a/(RTw) を求め,理想気体の近似を評価せよ.

  2. w=2.0×10−4m3mol−1 で,2つの比と Z=pw/(RT) を求めよ.Z=1 なら,両補正を無視できるといえるか.

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  1. RT=3320Jmol−1 より,比は 1.0×10−3,1.25×10−3.どちらも十分小さく,希薄気体の近似がよい.

  2. 比はそれぞれ 0.20,0.25 であり,小さい補正とはいえない.展開せずに

Z=11−b/w−aRTw=10.80−0.25=1

を得る.両効果が偶然相殺したのであり,どちらも無視できない.温度や体積を変えれば相殺も崩れる.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

同じ T,w で,I:大きさだけを入れた気体 p=RT/(w−b),II:引力だけを入れた気体 p=RT/w−a/w2,III:両方を入れた気体を比べる.b>0,a=RTb とする.

  1. w=10b のとき,それぞれの Z を求めよ.

  2. ボイル温度にあるIIIでも Z=1 が厳密に成り立つか.Z−1 を b,w で表せ.

Iは大きさのみ,IIは引力のみ,IIIは両方の効果を入れた模型.a=RTbの条件で比較し,いずれも希薄な極限でZ=1に戻る.IIの横軸も比較用の共通尺度bを使う. Iは大きさのみ,IIは引力のみ,IIIは両方の効果を入れた模型.a=RTbの条件で比較し,いずれも希薄な極限でZ=1に戻る.IIの横軸も比較用の共通尺度bを使う.
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  1. Iは Z=10/9,IIは Z=0.90,IIIは Z=10/9−0.10=91/90≈1.01.大きさは圧力を上げ,引力は下げる.

  2. T=a/(Rb)=TB で,ビリアル展開の1次係数 B(T) は0である.しかし

Z−1=ww−b−bw−1=b2w(w−b)

であり,w が b より大きい範囲では正となる.消えるのは1次の補正だけで,2次以降は残る.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

ある温度で圧縮因子を測り,次の値を得た.この範囲では Z=1+B/w+C/w2 で表せるものとする.

w(m3mol−1)

Z

0.010

0.997016

0.020

0.998504

0.040

0.999251

  1. Y=w(Z−1) と 1/w の関係を求め,最初の2点から B,C とその単位を決めよ.3点目も確かめよ.

  2. 同じ2次式で w=0.0020m3mol−1 の Z を求めよ.2次項は1次項の大きさの何 % か.

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  1. Y=B+C/w は切片 B,傾き C の直線.最初の2点は Y=−2.984×10−5,−2.992×10−5m3mol−1 なので

C=8.0×10−8100−50=1.6×10−9m6mol−2,B=−3.0×10−5m3mol−1

となる.3点目は Z=1−0.000750+0.000001=0.999251 で一致する.B が負なので,希薄な側では引力が勝つ.

  1. Z=1−0.015+0.0004=0.9854.比は 0.0004/0.015≈0.027,約2.7 %である.これは指定された2次式内の比較で,未測定の範囲で3次以降が小さいことまでは保証しない.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

仮想気体Xの定数は aX=0.30Pam6mol−2,bX=5.0×10−5m3mol−1 である.気体Yでは aY=4aX,bY=2bX とする.

  1. Xの wc,Tc,pc,TB を求め,Yでの倍率を答えよ.

  2. NA=6.0×1023mol−1 として,Xの分子径と両気体の分子径の比を求めよ.b を分子自身の体積のモルあたりの和として扱うと,直径を何倍に誤るか.

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  1. 臨界定数とボイル温度の式に代入すると

wc,X=1.5×10−4m3mol−1,Tc,X≈2.1×102K,pc,X≈4.4×106Pa,TB,X≈7.2×102K

となる.wc は b,Tc,TB は a/b,pc は a/b2 に比例し,Yでは順に2倍,2倍,1倍,2倍.

  1. dX=(3bX/(2πNA))1/3≈3.4×10−10m,dY/dX=21/3≈1.26.分子自身の体積の和は NAπd3/6=b/4.これを b と取り違えると,直径を 41/3≈1.59 倍に過大評価する.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

演習4の気体Xを ν=5.0mol,体積 V=2.0×10−3m3 の固いボンベに入れ,温度 450K で一様な状態に保つ.

  1. 模型の圧力 p と Z を求めよ.

  2. 理想気体の式で ν′=pV/(RT) と推定すると何 % 誤るか.

  3. 充填量が分かっている場合,T′=pV/(νR) と推定した温度と誤差を求めよ.

固い密閉ボンベの体積Vと物質量νは一定である.圧力計と温度計の読みを比較し,理想気体の式による推定誤差を調べる. 固い密閉ボンベの体積Vと物質量νは一定である.圧力計と温度計の読みを比較し,理想気体の式による推定誤差を調べる.
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  1. w=V/ν=4.0×10−4m3mol−1 より

p=37353.5×10−4−0.30(4.0×10−4)2≈8.8×106Pa,Z≈0.942

である.丸める前の圧力で以下を計算する.

  1. ν′=Zν≈4.7mol.相対誤差は (ν′−ν)/ν=Z−1 だから,約5.8 %少なく見積もる.

  2. T′=ZT≈424K で,約 26K,5.8 %低い.圧力に比例する目盛りが絶対温度と一致するのは希薄気体の極限で,この密度では補正が必要になる.

ポイント 教える人へ

  • Z が1に近い理由が,小さい補正か相殺かを区別させます.

  • ボイル温度で残る項と,排除体積が分子自身の体積の4倍になる理由を問います.

  • 誤差の分母を真の値にそろえ,模型の予言と測定を区別させます.