問いしるべ
問いから始める物理 波と音

波と音

反射と定常波の例題

著者:柚木芹香

弦のモードと張力,気柱の共鳴による音速の測定,2つの波源の干渉を,例題で確かめます.どの例題も,境界条件や経路差から「どこが節になるか」を先に決めるのが出発点です.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

ギターの1本の弦は,両端を固定した長さ l=0.650m の部分が振動し,線密度は μ=3.60×10−3kgm−1 である.調律が済んだとき,基本振動数は 110Hz になる.

ナットとブリッジで固定された長さl = 0.650 mの弦を,2つの場合に分ける.上段は途中のフレットを押さえ,下段はナットからl/4の点に指を軽く触れる.フレットの位置は模式的に描く.線密度と調律後の基本振動数を示す. ナットとブリッジで固定された長さl = 0.650 mの弦を,2つの場合に分ける.上段は途中のフレットを押さえ,下段はナットからl/4の点に指を軽く触れる.フレットの位置は模式的に描く.線密度と調律後の基本振動数を示す.
  1. 調律が済んだときの弦を伝わる波の速さと,張力 S を求めよ.

  2. フレットを押さえて基本振動数を 165Hz にするには,振動する部分の長さをいくらにすればよいか.張力と線密度は変わらないとする.

  3. 押さえずに,端から l/4 の点に指を軽く触れたまま弦をはじく.聞こえる音のうち最も低い振動数を求めよ.

  4. 調律の前,弦と 110.0Hz の音叉を同時に鳴らすと,毎秒 2.0 回のうなりが聞こえた.張力を少し大きくすると,うなりの回数は減った.調律を済ませるには,張力を何倍にすればよいか.また,何 N 増やせばよいか.

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考え方 両端固定の弦の基本振動では l=λ/2 である.軽く触れた点は節になり,その点が節であるモードだけが残る.

  1. λ1=2l=1.30m なので,v=f1λ1=110×1.30ms−1=143ms−1 である.v=S/μ から

S=μv2=3.60×10−3×1432N=73.6N

である.

  1. 張力と線密度が同じなら v は変わらず,f1=v/(2l) は長さに反比例する.l′=0.650×110165m=0.433m である.振動数の比 3/2 は完全5度で,弦の長さは 2/3 倍になる.

  2. 両端固定の n 番目のモードは y∝sin⁡(nπx/l)cos⁡(ωnt+ϕn) で,x=l/4 が節になるのは sin⁡(nπ/4)=0,つまり n=4,8,12,… のときである.残る最も低い音は n=4 で,f4=4×110Hz=440Hz である.

  3. うなりが毎秒 2.0 回なので,弦の振動数は 108.0Hz か 112.0Hz である.張力を大きくすると f1∝S は高くなり,うなりが減ったのだから,元は 108.0Hz で 110.0Hz より低かった.張力は振動数の2乗に比例するので,必要な倍率は

SS0=(110.0108.0)2=1.037

である.調律の前の張力は S0=μ(2l×108.0Hz)2≈71.0N で,増やす張力は S−S0=μ(2l)2[(110.0Hz)2−(108.0Hz)2]≈2.7N(3.7 %)である.

確かめ:振動数の変化が小さいとき,f∝S1/2 から Δf/f≈12ΔS/S である.Δf/f=2.0/108≈1.9 % の2倍が 3.7 % で,上の結果と合う.弦の振れが小さく張力が一定とみなせること,弦の両端が動かないことを仮定した.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

上端が開いたガラス管に水を入れ,水面の高さを変えられるようにする.管口の近くで振動数 500Hz の音叉を鳴らしながら水面を管口から下げていくと,管口から水面までの距離が L1=0.155m と L2=0.495m のときに,それぞれ1回目と2回目の共鳴が起こり,音が大きく響いた.

上端が開いたガラス管と水だめをゴム管でつなぎ,管口の上に500 Hzの音叉を置く.管口から下に測った1回目と2回目の共鳴の水面の位置はL₁ = 0.155 m,L₂ = 0.495 mである.点線は1回目,実線は2回目の水面を示す.管内の橙は1回目,青は2回目の変位の振幅で,水面が節,腹は管口の少し上にある. 上端が開いたガラス管と水だめをゴム管でつなぎ,管口の上に500 Hzの音叉を置く.管口から下に測った1回目と2回目の共鳴の水面の位置はL₁ = 0.155 m,L₂ = 0.495 mである.点線は1回目,実線は2回目の水面を示す.管内の橙は1回目,青は2回目の変位の振幅で,水面が節,腹は管口の少し上にある.
  1. 音の波長と音速を求めよ.

  2. 開口端補正 Δl を求めよ.開口端補正が管の半径の 0.6 倍だとすると,管の半径はいくらか.

  3. 水面をさらに下げたとき,次に共鳴する水面の位置を求めよ.また,L2 で共鳴しているとき,管の中で圧力のずれの振幅が最大になる位置をすべて答えよ.

  4. 0∘C(273K)での音速を 331ms−1 とし,音速は絶対温度の平方根に比例するとする.実験室の温度を求めよ.

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考え方 水面は閉口端で変位の節,管口は開口端で,変位の腹は管口より Δl だけ上にある.共鳴は,水面から腹までの長さが λ/4 の奇数倍のときに起こる.

  1. 1回目と2回目の共鳴では,水面から腹までの長さが λ/4 と 3λ/4 で,その差 λ/2 が水面の位置の差に等しい.

λ=2(L2−L1)=2×0.340m=0.680m,v=fλ=340ms−1

である.差をとったので,分からない Δl が消えている.

  1. 1回目の共鳴では L1+Δl=λ/4 だから,Δl=0.170−0.155m=0.015m である.管の半径は r=0.015/0.6m=0.025m ほどになる.

  2. 次の共鳴では腹までの長さが 5λ/4 なので,L3=L1+λ=0.835m である.圧力のずれの振幅が最大になるのは,δp=−γp∂ξ∂x から変位の節の位置である.L2 の共鳴では,変位の節は水面(管口から 0.495m)と,そこから λ/2=0.340m 上の点(管口から 0.155m)の2か所である.

  3. v∝T より

T=273×(340331)2K=288K

で,およそ 15∘C である.

確かめ:Δl>0 で,L1 は λ/4 よりわずかに短く,管口の外まで空気が動くという補正の向きと合う.開口端補正を 0.6r とする近似は,管の半径が波長よりずっと小さいとき(ここでは r/λ≈0.04)に使える.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

水槽の水面の2点 S1,S2 を,d=5.0cm 離して同じ振動数で上下に振動させ,波長 λ=1.2cm の円い波を出す.はじめ2つの波源は同じ位相で振動する.2つの波の振幅は,考える範囲で等しいとする.

同じ位相で振動する波源S₁,S₂を間隔d = 5.0 cmで配置し,波長λ = 1.2 cmの波の山を同心円で描く.橙の曲線は節線の例で,全部は描いていない.破線はそのうち1本の漸近線で,θは垂直二等分線からその漸近線までの角である.節線の本数とθの値は示さない. 同じ位相で振動する波源S₁,S₂を間隔d = 5.0 cmで配置し,波長λ = 1.2 cmの波の山を同心円で描く.橙の曲線は節線の例で,全部は描いていない.破線はそのうち1本の漸近線で,θは垂直二等分線からその漸近線までの角である.節線の本数とθの値は示さない.
  1. 線分 S1S2 を横切る節線は何本あるか.線分の上での節の位置を,線分の中点からの距離で答えよ.

  2. 波源から十分遠い所で,節線の向きは垂直二等分線から角 θ の方向に近づく.θ をすべて求めよ.

  3. 2つの波源を逆位相で振動させると,線分を横切る節線は何本になるか.

  4. 同位相に戻し,S2 の波の振幅だけを S1 の半分にした.(1) の節の位置の振幅は,強め合う位置の振幅の何倍になるか.

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考え方 点 P での位相差は δ=k(r1−r2)+α である.同位相なら経路差 r1−r2 が半波長の奇数倍の所が節になる.三角形の2辺の差は第3辺より小さいので,経路差は −d から d の範囲を動く.

  1. 節線は |r1−r2|=(m+1/2)λ を満たす双曲線である.(m+1/2)×1.2cm<5.0cm を満たすのは 0.6,1.8,3.0,4.2cm の4つで,経路差の正負それぞれにあるから節線は8本である.線分の上で中点から S2 の側へ x の点では r1=d/2+x,r2=d/2−x で,経路差は 2x である.節は x=±0.3,±0.9,±1.5,±2.1cm である.間隔 0.6cm は λ/2 で,線分の上では逆向きに進む2つの波が定常波を作っていることと合う.

  2. 波源からの距離が d より十分大きいと,S1 と S2 から P へ向かう線はほぼ平行で,経路差は r1−r2≈dsin⁡θ である.節線の方向は dsin⁡θ=(m+1/2)λ より sin⁡θ=0.12,0.36,0.60,0.84 で,θ=6.9∘,21∘,37∘,57∘(垂直二等分線の両側)である.

  3. 逆位相では α=π で,節は経路差が mλ の所になる.mλ<5.0cm を満たすのは 0,1.2,2.4,3.6,4.8cm で,経路差0の垂直二等分線と,その両側に4本ずつで,節線は9本である.

  4. 振幅を A と A/2 とすると,弱め合う所は A−A/2=A/2,強め合う所は A+A/2=3A/2 で,1/3 倍である.振幅が違うと,弱め合っても0にはならず,節線は「揺れの小さい線」になる.

確かめ:(1) で m=4 とすると経路差 5.4cm は d を超えるので除いた.sin⁡θ≤1 の範囲の本数は (1) と同じ8本で,遠方の向きと線分の上の節が1対1に対応している.(2) は d/r が十分小さい遠方での近似で,水面の波の振幅が距離とともに減るので,現実には波源の近くほど節がはっきりする.

ポイント ここまでのまとめ

  • 弦の基本振動数は f1=12lS/μ.長さに反比例し,張力の平方根に比例する.軽く触れた点が節になるモードだけが残る.

  • 気柱の共鳴の位置の差は λ/2 で,差をとると開口端補正が消える.圧力のずれの振幅が最大になるのは変位の節.

  • 2つの波源の干渉では,経路差の位相に初期位相の差を足す.節線は経路差が一定の双曲線で,その本数は経路差が −d から d の範囲にある節の条件の数.

  • 振幅が違う2つの波は,弱め合っても0にならない.