問いしるべ
問いから始める物理 仕事とエネルギー

仕事とエネルギー

重心運動と相対運動のエネルギーの計算

著者:柚木芹香

前の節の分解を確かめ,換算質量の性質を見たあと,例題に進みます.

定理 数学の道具:分解の証明と換算質量

分解の証明. v1=V+m2Mvrel,v2=V−m1Mvrel を2乗して質量をかけると,

12m1v12+12m2v22=12MV2+V⋅vrel(m1m2M−m2m1M)+12m1m2M2(m2+m1)vrel2

V と vrel の交差項は係数が打ち消し合って消え,最後の項が 12μvrel2 になる.

換算質量の性質. 1μ=1m1+1m2 なので 1μ>1m1,つまり μ<m1,同じく μ<m2.2つの質量が等しければ μ=m2.片方が非常に重いと μ は軽いほうの質量に近づく.

練習 1. (1) m1=3.0kg,m2=6.0kg の μ を求めよ.(2) m1=3.0kg が +4.0ms−1,m2=6.0kg が +1.0ms−1 で動くとき,12MV2 と 12μvrel2 を求め,和が K に一致することを確かめよ.

答え:(1) μ=3.0×6.09.0=2.0kg.(2) V=12+6.09.0=2.0ms−1 で 12MV2=18J,vrel=3.0ms−1 で 12μvrel2=9.0J.和は 27J.K=12⋅3.0⋅16+12⋅6.0⋅1.0=24+3.0=27J で一致する.

練習 2. 質量 2.0kg の2物体が,+5.0ms−1 と −5.0ms−1 で向かい合って進む.V,μ,12μvrel2 を求め,K と比べよ.

答え:V=0,μ=1.0kg,vrel=10ms−1 で 12μvrel2=50J.K=2×12×2.0×5.02=50J で,重心が止まっているので全部が相対運動のエネルギーである.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

静止している質量 5.0kg の物体が,内部の爆発で 2.0kg と 3.0kg の2つに割れた.爆発のエネルギー 60J は,すべて運動エネルギーになった.2つの破片の速さと運動エネルギーを求めよ.

上段は静止した5.0 kgの物体.下段は2.0 kgと3.0 kgの破片と静止する重心G.矢印の長さは未知の速さを表すものではない. 上段は静止した5.0 kgの物体.下段は2.0 kgと3.0 kgの破片と静止する重心G.矢印の長さは未知の速さを表すものではない.
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考え方 静止していたので V=0.増えた運動エネルギーは相対運動のエネルギーである.

μ=2.0×3.05.0=1.2kg.12×1.2vrel2=60 より vrel=10ms−1.V=0 なので

v1=m2Mvrel=6.0ms−1,v2=m1Mvrel=4.0ms−1

運動エネルギーは 12⋅2.0⋅6.02=36J と 12⋅3.0⋅4.02=24J(和は 60J).運動量 2.0×6.0=3.0×4.0 も合う.配分は質量の逆比 3:2 で,軽いほうが多くもらう.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

質量 800kg の軽自動車と質量 2000kg の乗用車が,どちらも速さ 15ms−1 で正面衝突し,一体になった.失われた運動エネルギーと,それぞれの車の速度の変化の大きさを求めよ.

800 kgと2000 kgの車が同じ速さ15 m s⁻¹で近づく.合体後の方向と速さは図に示さない. 800 kgと2000 kgの車が同じ速さ15 m s⁻¹で近づく.合体後の方向と速さは図に示さない.
解答を見る

考え方 乗用車の向きを正とする.失われるのは相対運動のエネルギーである.

M=2800kg,V=2000×15−800×152800≈6.4ms−1.μ=800×20002800≈571kg,vrel=30ms−1 で,

ΔK=12μvrel2=12×571×302≈2.6×105J

速度の変化は,軽自動車が 6.4−(−15)≈21ms−1,乗用車が 15−6.4≈8.6ms−1 で,比は質量の逆比 5:2.確認すると,衝突前の 12⋅800⋅152+12⋅2000⋅152=3.15×105J,衝突後の 12⋅2800⋅6.42≈5.8×104J,差は 2.6×105J である.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

滑らかな水平面上で,質量 1.0kg の台車 A(左)と 3.0kg の台車 B(右)が,ばね定数 3.0×102Nm−1 の軽いばね(自然長)でつながれている.B は静止し,A が右向きに 4.0ms−1 で動き出した.

初めの自然長のばねと台車A,Bを示す.下段は最大圧縮時の配置だけを示し,求める速度と縮みは空欄にする. 初めの自然長のばねと台車A,Bを示す.下段は最大圧縮時の配置だけを示し,求める速度と縮みは空欄にする.
  1. 重心の運動エネルギーと,相対運動のエネルギーを求めよ.

  2. ばねの最大の縮みを求めよ.

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考え方 水平方向の外力は無いので,重心の運動エネルギーは変わらない.相対運動のエネルギーとばねのエネルギーの和が一定である.

  1. M=4.0kg,V=1.0×4.04.0=1.0ms−1 から 12MV2=2.0J.μ=1.0×3.04.0=0.75kg,vrel=4.0ms−1 から 12μvrel2=6.0J.和 8.0J は,初めの 12⋅1.0⋅4.02 に一致する.

  2. 最も縮んだ瞬間は vrel=0 で,相対運動のエネルギーがすべてばねに入る.12kx2=6.0 より

x=2×6.03.0×102=0.20m

このとき2台車はどちらも V=1.0ms−1 で動いている.

ポイント ここまでのまとめ

  • 分解の交差項は,V と vrel の係数が打ち消し合って消える.

  • 換算質量は軽いほうの質量より小さく,質量が等しければ半分である.

  • 重心の運動エネルギーは外力が無ければ一定で,ばねや爆発や衝突で入れ替わるのは相対運動のエネルギーである.各物体の速度変化の大きさは質量の逆比になる.2体の重心系での運動エネルギーの配分も質量の逆比になるが,実験室系では一般にそうならない.