問いしるべ
問いから始める物理 対称性から組み立てる力学(発展)

対称性から組み立てる力学(発展)

相対論の力学の演習

著者:柚木芹香

全エネルギーE と運動エネルギーK を区別し,衝突・放射ではE と運動量を保存させてください.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

質量 m の自由な粒子の運動量の大きさが p=3mc です.E,K,速さ v を求め,p=mv として速さを求めた場合と比べてください.

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考え方 運動量から正のエネルギーを求め,v=pc2/E を使う.

E=10mc2,K=(10−1)mc2.v=pc2/E より v=3c/10≈0.949c.p=mv とすると v=3c となり,光速を超えてしまう.

確かめ:この速さの γ は 10 で,γmv=3mc に戻る.運動量が mc よりずっと小さければ E≈mc2+p2/(2m),v≈p/m となるが,この粒子にはその近似を使えない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

質量 m の粒子が,1次元の外場 U=kx2/2,k>0 の中を動きます.x=a>0 で静止させて放し,ka2=2mc2 とします.

  1. ラグランジアンと保存するエネルギーを書いてください.

  2. x=0 での速さと運動量の大きさを求めてください.反対側の折り返し位置も答えてください.

x軸と対称な放物線形のUのグラフに,初めの位置aを示す.折り返し位置と速さは描かない. x軸と対称な放物線形のUのグラフに,初めの位置aを示す.折り返し位置と速さは描かない.
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考え方 時間の一様性からE=γmc2+U が保存する.

  1. L=−mc21−x˙2/c2−kx2/2,p=γmx˙.E=px˙−L=γmc2+kx2/2 で,初めの値は E=mc2+ka2/2=2mc2.

  2. 原点で γ=2 なので v=3c/2,|p|=3mc.左へ進むので,符号付きではp は負である.折り返すと γ=1 に戻り,kx2/2=mc2 だから,反対側は x=−a.

確かめ:原点の K=mc2 は初めの U に等しい.K=mv2/2 とすれば v=2c となるので,この設定では低速近似が破れる.一方,折り返し位置は,両端で K=0 なので低速の式でも同じになる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

一定の質量 m を持つ粒子に,慣性系Aで1次元の外力 F(t)=F0cos⁡ωt が働きます.F0,ω>0,p(0)=0 とし,0≤t≤π/ω を考えます.ここでは力を p˙=F(t) で定義します.

  1. 運動量と速さの時間変化,最大の速さを求めてください.

  2. この間の力の仕事を求めてください.粒子は元の位置へ戻りますか.

横軸ωt,縦軸F/F₀に,0からπまでの余弦曲線を描く.粒子の速度や変位は描かない. 横軸ωt,縦軸F/F₀に,0からπまでの余弦曲線を描く.粒子の速度や変位は描かない.
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考え方 加速度ではなく運動量を積分する.速度は v=pc2/E,仕事は dE=vdp から求める.

  1. p=(F0/ω)sin⁡ωt.A=F0/(mωc) とおくと

v(t)=cAsin⁡ωt1+A2sin2⁡ωt

この区間では非負なので,速度と速さが一致する.最大は t=π/(2ω) で vmax=cA/1+A2.有限の A では光速より小さい.

  1. E=p2c2+m2c4 を微分すると E˙=(pc2/E)p˙=vF.初めも終わりも p=0 なので,仕事は E(π/ω)−E(0)=0.ただし途中で v>0 なので,変位は正であり元の位置へは戻らない.

確かめ:前半では力が正でエネルギーが増え,後半では力が負で同じだけ減る.A が1よりずっと小さいなら,v≈(F0/(mω))sin⁡ωt に戻る.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

質量 m の粒子が右へ 0.80c で進み,静止した質量 2m の粒子と衝突してくっつきます.外へ光や物質は出ません.衝突後の物体の速度 V,質量 M,初めの質量の和からの増加を求めてください.

右向きに進む粒子mと静止した粒子2mを描き,衝突後は1つの物体Mになることだけを示す.衝突後の速度や質量の値は描かない. 右向きに進む粒子mと静止した粒子2mを描き,衝突後は1つの物体Mになることだけを示す.衝突後の速度や質量の値は描かない.
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考え方 全運動量は0ではないので,衝突後も物体は動く.衝突後のエネルギーをそのまま Mc2 としてはいけない.

初めの粒子の γ=5/3 より,保存する全エネルギーは Etot=(5/3+2)mc2=11mc2/3,全運動量は P=4mc/3.衝突後の1物体に V=Pc2/Etot を使って

V=411c,M=Etot2−P2c2c2=1053m≈3.42m

したがって質量の増加は約 0.416m.

確かめ:γV=11/105 より,γVM=11m/3,γVMV=4mc/3 となり,両保存則を満たす.初めのK のうち,(M−3m)c2 は内部エネルギー,残りは全体の運動エネルギーとなる.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

静止した質量 M の励起状態の粒子が,右向きに光子を1個出し,質量 m の粒子になります.M>m>0 とし,外からの影響はありません.光子のエネルギーを ϵ,残った粒子の速度を u とします.

  1. ϵ と u を求めてください.

  2. M=2m の場合の値を答え,(M−m)c2 のすべてが光子のエネルギーにならない理由を説明してください.

粒子Mが右へ光子を出す前後を並べ,放射後の粒子mと光子を描く.mの運動方向と速さは示さない. 粒子Mが右へ光子を出す前後を並べ,放射後の粒子mと光子を描く.mの運動方向と速さは示さない.
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考え方 光子の運動量の大きさは ϵ/c.初めの全運動量が0なので,残った粒子も同じ大きさの運動量を逆向きに持つ.

  1. 残った粒子は p=−ϵ/c,Em=Mc2−ϵ.Em2−p2c2=m2c4 を使うと

(Mc2−ϵ)2−ϵ2=m2c4,ϵ=M2−m22Mc2

さらに u=pc2/Em だから,u=−c(M2−m2)/(M2+m2).

  1. ϵ=3mc2/4,u=−3c/5.残った粒子の Em=5mc2/4 より,その K=mc2/4.質量差のエネルギー mc2 は,光子のエネルギーと反跳する粒子の K に分かれる.

確かめ:M→m で ϵ→0,u→0.M=2m では γu=5/4,p=(5/4)m(−3c/5)=−3mc/4 となり,光子の運動量 3mc/4 と打ち消し合う.

ポイント 教える人へ

E とK を区別し,力の積分が運動量になることを確認させてください.演習4では衝突後も全体が動くこと,演習5では反跳の運動量も保存することを問いかけます.