問いしるべ
問いから始める物理 外部運動と内部運動

外部運動と内部運動

剛体の衝突の例題

著者:柚木芹香

例題 1

オリジナル ★★★☆☆

なめらかな水平面(氷の上)に,質量 M=0.80kg,長さ l=1.2m の一様な細い棒が静止している.質量 m=0.20kg のパックが速さ v0=3.0ms−1 で,棒に垂直な向きに進み,棒の一端 A に当たった.

水平面上の棒とパックを真上から見た図.パックは棒に垂直に端 A へ進む.重心 G,G から A までの距離 \(d=0.60\,\mathrm{m}\),パックの速度 \(v_0\) を示す. 水平面上の棒とパックを真上から見た図.パックは棒に垂直に端 A へ進む.重心 G,G から A までの距離 \(d=0.60\,\mathrm{m}\),パックの速度 \(v_0\) を示す.
  1. 弾性衝突のとき,衝突直後のパックの速度 u,棒の重心の速さ V,角速度 ω を求めよ.

    1. で,衝突直後に棒の上で静止している点を,G からの距離で答えよ.

  2. パックが A に付着して棒と一体になるとき,直後の角速度 ω′ と,失われた運動エネルギーを求めよ.

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考え方 氷の上では撃力を受けないので,運動量が保存する.角運動量は衝突の瞬間に G があった点のまわりで考える.

  1. IG=Ml212=0.096kgm2.棒が受けた力積を J とすると V=JM,ω=JdIG,u=v0−Jm.エネルギー保存に入れて J≠0 の解を取ると

J=2v01m+1M+d2IG=6.05.0+1.25+3.75=0.60kgms−1

したがって u=3.0−0.600.20=0(パックは止まる),V=0.600.80=0.75ms−1,ω=0.60×0.600.096=3.75rads−1.確かめると,運動エネルギーは前が 0.90J,後が 12×0.80×0.752+12×0.096×3.752=0.225+0.675=0.90J で合う.

  1. G から A と反対側に s=Vω=0.753.75=0.20m の点である(s=l212d とも一致する).反対の端 B から見ると 0.40m の点で,B は後ろ向きに 0.75−3.75×0.60=−1.5ms−1 で動く.

  2. 合体後の重心 C は,G から A の側へ mdm+M=0.12m の点で,C の速さは mv0m+M=0.60ms−1.衝突の瞬間に C があった点のまわりの角運動量は,パックが 0.60−0.12=0.48m 離れた線上を進むので,前は 0.20×3.0×0.48=0.288kgm2s−1.直後の慣性モーメントは 0.096+0.80×0.122+0.20×0.482=0.1536kgm2.よって ω′=0.2880.1536=1.875rads−1.直後の運動エネルギーは 12×1.0×0.602+12×0.1536×1.8752=0.18+0.27=0.45J で,失われたのは 0.90−0.45=0.45J(半分)である.回転中心は C から後ろへ 0.601.875=0.32m,つまり G の反対側 0.20m で,(2) と同じ点である.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

長さ l=1.0m,質量 M=0.90kg の一様な細い棒が,上端 O を通る水平な固定軸(なめらか)のまわりに,鉛直にぶら下がって静止している.質量 m=0.10kg の粘土の玉が,速さ v=6.0ms−1 で水平に飛んできて,O から距離 q の点に当たり,棒に付着した.

鉛直にぶら下がる棒を横から見た図.上端 O の固定軸,O から \(q\) の点に水平に当たる粘土の玉,重心 G と O から G までの距離 \(\dfrac l2\) を描く. 鉛直にぶら下がる棒を横から見た図.上端 O の固定軸,O から \(q\) の点に水平に当たる粘土の玉,重心 G と O から G までの距離 \(\dfrac l2\) を描く.
  1. q=1.0m(棒の下端)のとき,直後の角速度と,軸が受ける水平方向の力積を求めよ.

  2. 軸が水平方向の力積を受けないための q と,そのときの角速度を求めよ.

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考え方 軸は撃力を受けうるので運動量は保存しないが,O のまわりの角運動量は保存する.重力の力積は無視する.この配置では衝突前後の鉛直運動量が0なので,軸の鉛直力積もこの近似で0となる.

  1. IO=Ml23=0.30kgm2.mvq=(IO+mq2)ω より ω=0.10×6.0×1.00.30+0.10=1.5rads−1.直後の水平方向の運動量は Ml2ω+mqω=0.675+0.15=0.825kgms−1,前は mv=0.60kgms−1 なので,軸が系へ与えた力積は玉の進む向きに 0.825−0.60=0.225kgms−1.したがって軸が棒から受けた力積は,玉の進む向きと反対向きに 0.225kgms−1 である.失われたエネルギーは 12×0.10×6.02−12×0.40×1.52=1.8−0.45=1.35J.

  2. 運動量の式 mv=(Ml2+mq)ω と角運動量の式 mvq=(IO+mq2)ω から ω を消すと,Mlq2=IO より

q=2IOMl=2l3≈0.67m

で,玉の質量 m も速さ v も入らない.これが打撃の中心である.そのとき ω=0.10×6.0×0.6670.30+0.10×0.6672≈1.2rads−1.確かめると,運動量は (0.45+0.0667)×1.161=0.60kgms−1 で前と等しい.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

水平な机の上に,質量 m=0.20kg,半径 R=0.030m の一様な球が置いてある.中心の高さを水平に突き,回転させずに速さ v0=2.0ms−1 で滑り出させた.球と机の動摩擦係数は μ′=0.20,重力加速度は 9.8ms−2 とし,転がり抵抗は無視する.

[図:滑り出した球の初期条件と運動]

初期状態は回転せず右へ滑る球と接点の摩擦・垂直抗力・重力.答えに関わる変化は「解答確認の動く図を開く」で表示し,再生・停止できる.

  1. 滑りが止まり,滑らずに転がり始めたときの速さを求めよ.

  2. そこまでの時間と,摩擦で失われた運動エネルギーを求めよ.

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考え方 第8章「転がりの束縛条件と例題」の例題3では並進と回転の運動方程式を時間で解いた.ここでは別の方法として,トルクが0になる基準点のまわりの角運動量保存を使う.動摩擦力は,運動量も運動エネルギーも変える.しかし,机の面上で進行方向の直線上にある点 P を基準にすると,摩擦力は P と接点を結ぶ向きに働くのでトルクが0である.重力と垂直抗力は同じ鉛直線上にあって,トルクは打ち消し合う.したがって P のまわりの角運動量が保存する.

  1. 球が机の面から高さ R の位置を速さ v で進み,角速度 ω(進む向きに転がる向きを正)で回るとき,P のまわりの角運動量の大きさは mRv+Iω(I=25mR2).はじめは mRv0,滑りが止まったとき ω=vR なので

mRv0=(mR+2mR5)vよりv=57v0≈1.4ms−1

である.

  1. 中心の加速度は −μ′g=−1.96ms−2 なので,t=2.0−1.431.96≈0.29s.運動エネルギーは前が 12×0.20×2.02=0.40J,後が 12×0.20×1.432×75≈0.29J で,失われたのは約 0.11J(もとの 27)である.回転の運動方程式 Iα=μ′mgR から出る角加速度 163rads−2 を使っても,ω=1.430.030=47.6rads−1 に達する時間は 0.29s で一致する.

例題 4

オリジナル ★★★★☆

例題 3 と同じ球(m=0.20kg,R=0.030m)が机の上に静止している.中心から高さ h の点を,水平なキューで力積 J=0.40kgms−1 だけ突く.押し球は中心より 0.015m 上(h=+0.015m),引き球は 0.015m 下(h=−0.015m)を突く.突いた直後,机との摩擦が効く前に,球は静止している同じ球に正面から弾性衝突した.球どうしの接触は滑らかで,接線方向の力積は無視する.その後,摩擦で転がり始めるまでを考える.動摩擦係数は 0.20.

[図:押し球と引き球の打点]

初期状態は中心より上と下を突く2つの設定.「解答確認の動く図を開く」後の再生は,球同士の衝突直後から手球が転がり始めるまでを表す.

  1. 突いた直後の中心の速さ v0 と角速度 ω0 を,押し球と引き球のそれぞれについて求めよ.

  2. 衝突の直後の手球の速度と角速度を求めよ.

  3. その後に手球が転がり始めたときの速度を求めよ.

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考え方 (1) 突く力積は水平で,中心のまわりのトルクは Jh.(2) 球どうしの接触力は中心を通るので,手球の回転は変わらない.(3) 机の面上の点のまわりの角運動量が保存する(例題 3).

  1. v0=Jm=2.0ms−1.I=25mR2=7.2×10−5kgm2 で Iω0=Jh より ω0=0.40×(±0.015)7.2×10−5=±83rads−1.押し球は前進の向きに転がる回転(正),引き球は逆向きの回転(負)である.

  2. 質量が等しい球の弾性正面衝突では速度が入れ替わるので,手球は止まり,的球が 2.0ms−1 で進む.接触力は手球の中心を通るのでトルクは0で,手球は ω0 のまま回り続ける.

  3. 机の面上の点のまわりの角運動量は,衝突直後は Iω0,転がり始めたとき mRv+IvR.

v=Iω0mR+I/R=27Rω0=±0.71ms−1

押し球は前へ 0.71ms−1 進み(的球について行く),引き球は後ろへ 0.71ms−1 戻る.引き球では,接点が机に対して前へ動くので,摩擦力が後ろ向きに働くためである.かかる時間は 0.710.20×9.8≈0.36s.運動エネルギーは 12Iω02=0.25J から 27 の約 0.071J に減る.

ポイント ここまでのまとめ

  • 氷の上の棒への衝突は,運動量・固定点のまわりの角運動量・(弾性なら)エネルギーの3本で解ける.叩かれた棒の止まっている点は,叩く位置だけで決まる.

  • 固定軸があるときは,軸のまわりの角運動量で ω を決め,運動量の差から軸の力積を出す.軸の力積が0になる点が打撃の中心である.

  • 外力の摩擦でも,作用線が基準点を通ればトルクは0である.机の面上の点のまわりでは,滑りながら転がる球の角運動量が保存し,v=mv0+Iω0/Rm+I/R2 が出る.

  • 押し球・引き球は,同じ式で ω0 の符号が違うだけである.