問いしるべ
問いから始める物理 回転と剛体

回転と剛体

剛体のつり合いの演習

著者:柚木芹香

力の作用点と作用線を図に書き込み,合力とモーメントの両方を調べてください.支点から離れる条件や摩擦の限界も,つり合いの式と一緒に確かめましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

水平な棒の左端Oから 0.30m の点に,右上へ水平と 30∘ をなす 20N の力を加える.

  1. 反時計回りを正として,力のモーメント NO を求めよ.

  2. 同じ作用点で同じ大きさの力を加えるとき,モーメントの大きさの最大値を求めよ.また,力を作用線上で移してもモーメントが変わらない理由を示せ.

水平な棒のOから0.30 mの作用点と,30°右上向きの力20 Nを描く. 水平な棒のOから0.30 mの作用点と,30°右上向きの力20 Nを描く.
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考え方 棒に沿う成分はOを通るので回す効果がない.棒に垂直な成分に,Oから作用点までの距離を掛ける.

  1. 鉛直成分は 20sin⁡30∘=10N.したがって NO=0.30×10=3.0Nm である.正の値は棒を反時計回りに回す向きであることを示す.力の大きさ20をそのまま掛けると,棒に沿う成分まで数えてしまう.

  2. 棒に垂直な上向きまたは下向きの力なら,腕が最大の 0.30m となり,大きさは 6.0Nm.作用線上の移動 Δr は力と平行なので,トルクの変化 Δr×F は0である.棒に沿って作用点を動かす操作とは異なり,移動先でも力の作用線を同じに保つことが条件である.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

長さ l,質量 M の一様な水平板の両端A,Bを,下から支える.Aから l/4 の位置に質量 2M の小物体を置く.支持点は板を上向きに押すだけである.

  1. A,Bから受ける力 NA,NB を求めよ.

  2. 小物体を板上の任意の位置 x(0≤x≤l) に移すときの両反力を求め,板が支持点から離れないことを確かめよ.

両端A,Bで支える板と,Aからl/4の小物体2M,板の重心Gを描く. 両端A,Bで支える板と,Aからl/4の小物体2M,板の重心Gを描く.
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考え方 Aのまわりでモーメントをとれば NA が消える.残る反力は鉛直方向のつり合いから求める.

  1. Aのまわりで NBl−Mg(l/2)−2Mg(l/4)=0 だから NB=Mg.合力0より NA+NB=3Mg なので NA=2Mg.小物体に近い側の支持点ほど大きな力を受け持つ.

  2. 同じ手順で NB=Mg/2+2Mgx/l,NA=5Mg/2−2Mgx/l.両者の和は常に 3Mg である.0≤x≤l ではどちらも Mg/2 以上で,上向きの反力だけでつり合える.小物体が端に来ても,板自身の重さが反対側の反力を正に保つ.式から負の反力が出た場合には,下から支えるという条件に反し,その接触を保つ静止状態は存在しないと判断する.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

水平面内にある剛体の点 (0,d/2) に右向きの力 F,点 (0,−d/2) に左向きの力 F を加える.F,d>0 とし,ほかの水平力はない.

  1. 合力と原点Oのまわりの合モーメントを求めよ.

  2. 任意の点A (a,b) のまわりでも計算し,この2力だけで静止し続けられるかを説明せよ.

剛体の上側に右向きF,下側に左向きFを描き,作用線の間隔dと原点Oを示す. 剛体の上側に右向きF,下側に左向きFを描き,作用線の間隔dと原点Oを示す.
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考え方 逆向きの2力の合力は0でも,作用線が離れていれば偶力になる.モーメントの符号は作用点ごとに計算する.

  1. 合力は (F,0)+(−F,0)=0.上側は −Fd/2,下側も −Fd/2 なので ∑NO=−Fd である.どちらの力も時計回りに回すため,モーメントは相殺しない.重心は加速しないが,回転の変化は起こり得る.

  2. Aに対する上側の位置は (−a,d/2−b),下側は (−a,−d/2−b).合モーメントは −(d/2−b)F+(−d/2−b)F=−Fd となり,a,b は消える.したがって支点を選び直しても回す効果を消せず,この2力だけで静止し続けることはできない.固定具が静止を保つなら,固定具は別に反対向きのモーメントを及ぼしている.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

幅 b,高さ h,質量 M の一様な直方体を粗い水平床に置く.側面の床から高さ y(0<y≤h) の位置を,水平右向きに力 F でゆっくり押す.静止摩擦係数は μ>0.断面内の運動だけを考える.

  1. 静止中の垂直抗力の作用線が,底面中央から右へ移る距離を求めよ.

  2. 滑り出す力と転倒を始める力を求め,どちらが先に起きるかを判定せよ.

幅b,高さhの直方体と床,高さyの右向き力Fを描く.垂直抗力の位置は描かない. 幅b,高さhの直方体と床,高さyの右向き力Fを描く.垂直抗力の位置は描かない.
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考え方 床の反力は一点に固定されていない.静止中は分布した接触力の合力の作用点が動き,底面の端まで来ると転倒の限界になる.

  1. 鉛直方向で N=Mg,水平方向で左向きの摩擦力は f=F.底面中央Oのまわりで,摩擦力のモーメントは0である.垂直抗力の作用点を右へ x とすると Nx−Fy=0,したがって x=Fy/(Mg).重力はOを通るため,この式に現れない.

  2. 摩擦の限界は Fs=μMg.転倒の限界は x=b/2 から Ft=Mgb/(2y).μ<b/(2y) なら先に滑り,μ>b/(2y) なら先に転倒する.等号なら同時に限界へ達する.後者では右下の縁を軸とする重力の復元モーメント Mgb/2 と,押す力のモーメント Fy の比較でも同じ結果になる.これは最初に動き出す条件であり,動き出した後の運動を静止の式で追ってはいけない.

ポイント 教える人へ

  • モーメントの記号には点の添字を付け,垂直抗力の記号と区別させる.

  • 未知の力が消える点を選ばせた後,別の点でも結果を検算させる.

  • 摩擦力を初めから最大値に置かず,つり合いに必要な値を求めさせる.

  • 接触力の符号と作用点の範囲は,式と同じく物理的な条件である.