問いしるべ
問いから始める物理 運動量と質点系

運動量と質点系

ロケットと質量収支の演習

著者:柚木芹香

出入りする物質が,地面から見てどの速度を持つかを書いてください.噴射,流入,自然にこぼれる場合を,同じ運動量収支の考え方で比べましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

外力のない宇宙で,ロケットが一定の噴射速度 u で後方へガスを出す.初速度は v0,初めの全質量は m0,燃焼後の全質量は m0/3 である.

  1. 速度の増加と最終速度を求めよ.

  2. 速度の増加を(1)の2倍にするには,同じ u で質量比をいくらにすればよいか.

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考え方 ロケットの式は最終速度そのものではなく,噴射による速度の増加を与える.初速度が0とは限らない.

  1. dv=−udm/m を初めと終わりの質量の間で積分すると,Δv=uln⁡{m0/(m0/3)}=uln⁡3.したがって vf=v0+uln⁡3 である.速度の増加は燃焼の速さによらず,質量比で決まる.ただしこれは外力がなく,噴射速度が一定の場合に限る.

  2. 新しい質量比を r とおくと,uln⁡r=2uln⁡3=uln⁡9 より r=9.質量比を3から6へ増やしても速度増加は2倍にならない.対数の中の比は無次元であり,質量の単位をそろえてから代入する必要がある.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

静止した台車と砂の全質量を m0 とする.滑らかな水平面上で,砂を台車に対して一定の速さ u で左向きに,毎秒質量 q の割合で噴出させる.砂が尽きる前を考える.

  1. 時刻 t の質量,加速度,速度を求めよ.

  2. 同じ量の砂を,水平に押さず底から自然にこぼした場合の速度を求めよ.

砂を左へ噴射する台車と,底から自然にこぼす台車を上下に並べる.噴射の相対速度uと流量qを示す. 砂を左へ噴射する台車と,底から自然にこぼす台車を上下に並べる.噴射の相対速度uと流量qを示す.
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考え方 台車から見た流出速度の水平成分が推力を決める.質量が減るだけで加速すると考えてはいけない.

  1. m(t)=m0−qt である.右向きを正とすると噴射による推力は qu なので,a(t)=qu/(m0−qt).初速度0から積分して v(t)=uln⁡{m0/(m0−qt)}.推力が一定でも質量が減るため加速度は増す.式は m0−qt が台車自身の質量以上の範囲だけで使う.

  2. 自然にこぼれる砂は,離れる瞬間に台車と同じ水平速度を持つ.水平の相対流出速度が0なので mdv=0,初め静止なら v=0 のままである.初めに速度があればその速度を保つ.残った台車と砂だけの運動量は流出とともに減り得るが,それをそのまま外力の力積と解釈することはできない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

滑らかな水平面上を質量 M の空の台車が右向きに速さ v0 で走る.上方から,水平速度0の砂が毎秒 q の一定の割合で入り,すべて台車に残る.水平外力はない.

  1. 時刻 t の台車の速度を求めよ.

  2. 台車を初めの速さ v0 に保つ場合,必要な水平外力を求めよ.

水平に動く台車の上方から砂が鉛直に落ちる配置.流量q,初速度v₀を示す. 水平に動く台車の上方から砂が鉛直に落ちる配置.流量q,初速度v₀を示す.
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考え方 流入する砂の水平運動量は0である.台車に入った後に砂が獲得する運動量を,台車の減速または外力が補う.

  1. 時刻 t の質量は m=M+qt.短い時間 dt について mv+0⋅qdt=(m+qdt)(v+dv) と書く.2次の微小量を除いて mdv+qvdt=0,すなわち d(mv)=0.初めの運動量が Mv0 なので v=Mv0/(M+qt).砂が増すほど台車は遅くなる.

  2. 速度一定なら,毎秒入る砂が得る水平運動量は qv0.したがって外力は右向きに F=qv0 である.台車の加速度が0でも,流入する砂を加速するため外力は必要となる.(1)で mv が一定なのは流入物の水平速度が0だからであり,質量が変わる系の一般則として暗記してはいけない.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

初めの全質量 m0 のロケットを,地表近くで静止から鉛直上向きに飛ばす.噴射速度は一定の u,毎秒の噴射質量は一定の q,燃焼終了時の質量は mf である.uq>m0g,0<mf<m0 とし,空気抵抗は無視する.

  1. 燃焼時間と燃焼終了時の速度を求めよ.

  2. 噴射流量を 2q に変え,他の条件を同じにしたとき,最終速度はどう変わるか.

  3. 燃焼中の加速度が最大となる時刻を求めよ.

鉛直上向きのロケットと,下向きの噴射を描く.上向き推力uqと下向き重力mgを赤で示す. 鉛直上向きのロケットと,下向きの噴射を描く.上向き推力uqと下向き重力mgを赤で示す.
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考え方 噴射による速度増加から,燃焼時間中の重力による速度減少を引く.最初の推力が重力を上回る条件も確認する.

  1. 質量収支から T=(m0−mf)/q.運動方程式 dvdt=uq/(m0−qt)−g を積分すると

v(T)=uln⁡m0mf−g(m0−mf)q

である.与えられた条件から初めの加速度が正で,以後も増すため,発射台を離れずに燃料だけを使う時間はない.

  1. 質量比は変わらず燃焼時間だけが T/2 になる.したがって最終速度は gT/2=g(m0−mf)/(2q) だけ増す.この結論には噴射速度が流量によらず一定という仮定が必要である.

  2. a=uq/m−g は質量が減るほど増すので,燃焼終了直前に最大値 uq/mf−g をとる.終了直後には推力が消えて加速度は −g となる.速度そのものはその瞬間に飛び変わらない.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

滑らかな水平面上の台車に砂を供給する.砂の地面に対する水平速度は一定の w,流入率は毎秒 q で,砂はすべて台車に残る.台車の初期質量は M,初速度は v0.台車に右向きの一定外力 F も加える.

  1. 運動量収支を立て,速度 v(t) を求めよ.

  2. 初めから等速となる F の条件を求めよ.

  3. F=0 のとき,速度が w を通り越すことがあるか.

斜めに流入する砂の水平速度wと,台車の速度v,台車への外力Fを示す. 斜めに流入する砂の水平速度wと,台車の速度v,台車への外力Fを示す.
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考え方 流入前の砂の運動量 wqdt を忘れず,外力の力積 Fdt と合わせる.供給装置はこの流入条件を保つものとする.

  1. m=M+qt として mv+wqdt+Fdt=(m+qdt)(v+dv).1次まで残すと mdvdt=F+q(w−v).積の微分で d(mv)dt=F+qw だから,積分すると

v(t)=Mv0+(F+qw)tM+qt

となる.流入率は実際に台車が受け取る質量の割合である.

  1. v=v0 を収支に代入して F=q(v0−w).この値が負なら,必要なのは左向きの外力であり,右向きだけの装置では等速にできない.

  2. v−w=M(v0−w)/(M+qt).分母は正なので差の符号は変わらず,w を通り越さない.v0=w なら最初から等速である.流入する砂と台車の速度差が小さくなるほど,加速または減速の程度も小さくなる.

ポイント 教える人へ

  • 流出入の直前と直後に,同じ物質を含む系の運動量を書かせる.

  • 噴射速度は相対速度であり,地面から測った速度とは区別する必要がある.

  • 自然な流出と水平速度0の流入を比べ,速度が変わる理由を説明させる.

  • 発射条件,燃料の残量,外力の有無を,公式の代入より先に確認させる.