問いしるべ
問いから始める物理 測定と不確かさ(発展)

測定と不確かさ(発展)

ばらつきと偏りの演習

著者:柚木芹香

ばらつきの小ささと,偏りの小ささを分けて考えましょう.以下は架空の測定記録で,標準偏差は N−1 で割って求めます.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

同じ高さから小球を落とし,自動計時で次の5つの時間を得ました.各回の偶然のずれは独立で,落下条件は変わらないとします.

回

1

2

3

4

5

t[s]

0.448

0.452

0.450

0.454

0.446

横軸は測定回,縦軸は落下時間.問題の5つの記録だけを描き,平均は示していない. 横軸は測定回,縦軸は落下時間.問題の5つの記録だけを描き,平均は示していない.
  1. 平均,標準偏差,平均の標準不確かさを求めよ.

  2. この標準不確かさを添えた報告を書け.

解答を見る

考え方 基準 0.450s からの偏差で計算すると,小さい整数だけで足し算できる.

  1. 平均は t¯=0.450s.偏差は 10−3s 単位で −2,2,0,4,−4 なので,∑(ti−t¯)2=40×10−6s2.s=40×10−6/4=0.00316s,u(t¯)=s/5=0.00141s.

  2. 「平均の落下時間 0.4500s,タイプAの標準不確かさ 0.0014s」と書ける.自動計時の系統的な効果をまだ評価していないので,これを全体の不確かさとは呼ばない.確かめとして,偏差の和は0,不確かさの単位は時間である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

表示が 0.2g 刻みの電子てんびんで,物体の質量が 125.4g と出ました.ほかの効果を無視し,丸め前の値は表示から ±0.1g の範囲に一様にあるとします.物体を動かさず,表示を10回写してもすべて同じ値でした.

てんびんの125.4 gの表示と,丸め前の値が入りうる125.3〜125.5 gの範囲を示す. てんびんの125.4 gの表示と,丸め前の値が入りうる125.3〜125.5 gの範囲を示す.
  1. 表示の丸めによる標準不確かさを求めよ.

  2. 同じ表示を10回写したので,この不確かさを 10 で割ってよいか.

解答を見る

考え方 半幅からのタイプBの評価と,独立な繰り返しのタイプAの評価を区別する.

  1. u(m)=0.1/3=0.058g.

  2. 割ってはいけない.同じ丸め前の値を同じ境界で丸めた表示を写しており,新しい独立なずれを10個得たわけではない.記録の標準偏差が0でも,丸め前の値が 125.400g だと確定しない.確かめとして,不確かさは半幅 0.1g より小さいが0ではなく,表示刻みを細かくしたときだけこのモデルの不確かさも小さくなる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

温度計を,温度 20.00∘C の一定の水槽に入れ,20.8,20.9,20.7,20.8∘C と読みました.水槽の温度の不確かさは無視します.温度計には温度によらない加算の偏りがあると仮定します.

温度20.00 °Cの一定の水槽に,基準と調べる温度計を入れる.補正値は示していない. 温度20.00 °Cの一定の水槽に,基準と調べる温度計を入れる.補正値は示していない.
  1. 読みの平均,標準偏差,平均の標準不確かさと,加算の偏りの見積もりを求めよ.

  2. 別の水槽で 24.6∘C と読んだときの補正後の値を求めよ.ここから全体の不確かさまで決まるか.

解答を見る

考え方 基準との差の平均を,既知の系統的な効果の補正として使う.補正値にも有限の測定回数から来る不確かさが残る.

  1. x¯=20.80∘C,偏差の2乗の和は 0.020(∘C)2.s=0.020/3=0.082∘C,u(x¯)=s/2=0.041∘C.偏りは 20.80−20.00=+0.80∘C と見積もる.

  2. 補正後は 24.6−0.80=23.8∘C.別の読み自身のばらつきや,偏りが温度によらないという仮定も確かめる必要があり,全体の不確かさはまだ決まらない.確かめとして,元の水槽の平均に同じ補正をすると 20.00∘C に戻る.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

同じ棒を8回続けて測り,1.002,1.004,1.006,1.008,1.010,1.012,1.014,1.016m を得ました.測定の途中で室温も上昇していました.ある人は,全8回の標準偏差を 8 で割れば,最初の時点の棒の長さの不確かさになると考えています.

8回の長さの読みを測定順に並べた.平均線や原因の説明は描いていない. 8回の長さの読みを測定順に並べた.平均線や原因の説明は描いていない.
  1. 前半4回と後半4回の平均を比べよ.

  2. 上の考え方の問題点を説明し,次に何を記録・測定すべきか提案せよ.

解答を見る

考え方 平均の不確かさの式は,同じ量を一定の条件で測り,独立なずれが出るときの式である.測定順を消さずに見る.

  1. 前半は 1.005m,後半は 1.013m,差は 0.008m.全体の平均は 1.009m だが,最初の時点の長さとは限らない.

  2. 増加が温度による棒の変化なのか,器械の変化なのか,この記録だけでは分からない.同じ平均の周囲に独立に散らばっているとは見なせず,単に 8 で割って最初の値を報告できない.時刻・棒と器械の温度を記録し,条件が落ち着くのを待つか,安定した基準棒も交互に測る.確かめとして,8点は平均の上下に不規則に散らばらず,順番と読みが強く結び付いている.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

基準長さ 2.000m の棒を,器械AとBで各5回測りました.基準長さの不確かさは無視します.

器械

読み [m]

A

2.03,2.05,2.01,2.04,2.02

B

2.20,2.19,2.21,2.20,2.20

AとBの5つの読みを同じ長さの軸に並べ,基準2.000 mを緑の線で示す.同じ値のBの点は上下にずらして区別した.平均は描いていない. AとBの5つの読みを同じ長さの軸に並べ,基準2.000 mを緑の線で示す.同じ値のBの点は上下にずらして区別した.平均は描いていない.
  1. 各器械の平均,標準偏差,平均の標準不確かさを求めよ.

  2. 「Bのほうがばらつきが小さいので,補正せず使っても基準に近い」といえるか.

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考え方 平均からの散らばりと,平均の基準からの隔たりは別に計算する.

  1. Aは x¯=2.030m,偏差の2乗の和 0.0010m2 より s=0.0158m,u(x¯)=0.0071m.Bは x¯=2.200m,2乗の和 0.00020m2 より s=0.00707m,u(x¯)=0.0032m.

  2. いえない.Bは繰り返しのばらつきが小さいが,平均は基準より 0.200m 大きい.Aの隔たりは 0.030m で,補正前はAのほうが基準に近い.器械の読みを細かくすることと,既知の偏りを補正することの両方が必要である.確かめとして,Bの基準との差は平均のタイプAの不確かさの約63倍で,単なる小さな散らばりとは区別できる.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

変位計を基準で調べ,読みから基準を引いた差が 0.08,0.12,0.10,0.06,0.14mm でした.各回のずれは独立で,同じ加算の偏りが全測定に入るとします.この5回の平均で補正値を決め,別の試料の平均の読み 23.40mm を補正します.試料は20回測り,1回の標準偏差は 0.040mm でした.

基準の5回から決めた一つの補正値を,試料の20回の読み全体に使う.補正後の答えは示していない. 基準の5回から決めた一つの補正値を,試料の20回の読み全体に使う.補正後の答えは示していない.
  1. 補正値とその標準不確かさ,試料の補正後の平均を求めよ.

  2. 試料の平均自身のタイプAの不確かさを求め,補正値の不確かさと比べよ.試料だけの測定回数を増やせば両方とも減るか.

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考え方 補正値を決めた測定と,試料の読みを決めた測定の回数を混同しない.

  1. 差の平均は 0.100mm,偏差の2乗の和は 0.0040mm2.s=0.0040/4=0.0316mm,補正値の標準不確かさは s/5=0.014mm.読みが大きく出るので引き,23.40−0.100=23.30mm.

  2. 試料の平均のタイプAの不確かさは 0.040/20=0.0089mm.補正値の寄与のほうが大きい.同じ補正値を全20回に使うので,試料の回数だけ増やしても補正値の 0.014mm は減らない.基準での測定を改善する必要がある.確かめとして,差がすべて正なので,補正の符号は負でなければならない.

ポイント 教える人へ

標準偏差と平均の標準不確かさのどちらを報告するか,測る量に戻って選んでもらってください.「同じ表示の転記」「時間とともに変わる値」「共通の補正値」は,独立な繰り返しとは異なります.平均を計算する前に,測定順と基準との比較を見る習慣を確かめます.