問いしるべ
問いから始める物理 振動

振動

フックの法則と単振動の演習

著者:柚木芹香

つり合いの位置と座標の正方向を決めてから,位置・速度・エネルギーを結びつけてください.同じ位置でも進む向きは2通りあることに注意しましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

滑らかな水平面で,質量 0.50kg の物体をばね定数 50Nm−1 の軽いばねにつなぐ.自然長の位置から右へ 0.040m 引いて,時刻0に静かに放す.右向きを正とする.

  1. 角振動数と周期,位置 x(t) を求めよ.

  2. 放した瞬間と初めて原点を通る瞬間の速度,加速度を求めよ.

水平ばねの自然長の位置を0とし,物体を右へ0.040 mずらして静かに放す.右向きのx軸を示す. 水平ばねの自然長の位置を0とし,物体を右へ0.040 mずらして静かに放す.右向きのx軸を示す.
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考え方 初速度0という条件は転回点からの出発を表す.速度は位置の微分,加速度は復元力から求める.

  1. ω=k/m=10rads−1,T=2π/10≈0.63s.x(0)>0,v(0)=0 なので A=0.040m,ϕ=0 であり,x(t)=0.040cos⁡10t(位置はm,時刻はs)となる.

  2. v=−0.40sin⁡10t,a=−4.0cos⁡10t である.放した瞬間は v=0,a=−4.0ms−2.最初の原点通過は 10t=π/2 で,v=−0.40ms−1,a=0.原点で力が0でも,それまでに得た速度は残るので静止しない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

角振動数 5.0rads−1 の単振動で,t=0 に x=−0.060m,v=−0.40ms−1 であった.

  1. x=C1cos⁡ωt+C2sin⁡ωt の係数を求めよ.

  2. x=Acos⁡(ωt+ϕ) の A と 0≤ϕ<2π の範囲の ϕ を求め,最初に左端へ達する時刻を求めよ.

原点の左0.060 mにある物体に,左向き0.40 m/sの初速度を与える.青い矢印は既知の速度だけを示す. 原点の左0.060 mにある物体に,左向き0.40 m/sの初速度を与える.青い矢印は既知の速度だけを示す.
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考え方 正弦の係数は初速度を角振動数で割った値である.位相は正接の値だけでなく,正弦と余弦の符号を合わせて決める.

  1. x(0)=C1,v(0)=ωC2 より C1=−0.060m,C2=−0.080m.したがって x=−0.060cos⁡5t−0.080sin⁡5t である.

  2. A=C12+C22=0.10m.cos⁡ϕ=−0.60,sin⁡ϕ=0.80 なので第2象限にあり,ϕ≈2.21rad.左端では位相が π となるので,最初の到達時刻は (π−ϕ)/5.0≈0.19s である.時刻0で左へ動くことと,直後に左端へ達することが整合する.ϕ に 2π の整数倍を足しても運動は同じである.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

質量 m,ばね定数 k の水平ばね振動で,振幅を A とする.抵抗はない.

  1. x=A/2 での運動エネルギーと弾性エネルギーの比,速さを求めよ.

  2. x=A から静かに放したとき,初めて x=A/2 に達するまでの時間を求めよ.振幅を2倍にし,同じ割合の位置へ達する時間はどう変わるか.

一直線上に−A,0,A/2,Aを示す.物体は右の転回点Aで静かに放される. 一直線上に−A,0,A/2,Aを示す.物体は右の転回点Aで静かに放される.
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考え方 速さにはエネルギー保存が使えるが,到達時刻には位相の情報が必要である.問題ごとに使う式を選ぶ.

  1. 全エネルギーは E=kA2/2.x=A/2 では U=kA2/8=E/4,K=E−U=3E/4 だから K:U=3:1.mv2/2=3kA2/8 より速さは 3Aω/2,ただし ω=k/m である.この位置で右へ進む場合も左へ進む場合も速さは等しい.

  2. x=Acos⁡ωt に代入すると cos⁡ωt=1/2.最初は ωt=π/3 なので t=π/(3ω)=T/6.振幅を2倍にして x=A まで戻る場合も位相条件は同じで,時間は変わらない.移動距離だけでなく速さも2倍になるためであり,エネルギーは4倍になる.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

鉛直につるした軽いばねの定数を k,物体の質量を m とする.自然長からの下向きの伸びを y とし,t=0 に y=0 から下向きに速さ u>0 を与える.ばねは圧縮時にもフックの法則に従い,物体は鉛直の案内に沿って動く.

  1. つり合いの伸び d と,X=y−d の時間変化を求めよ.

  2. 振幅と最大の伸びを求めよ.また,物体が自然長より上へ達するか判定せよ.

天井からつるしたばねの自然長の位置で,物体へ下向きの初速度uを与える.下向き座標yとつり合い位置dを示す. 天井からつるしたばねの自然長の位置で,物体へ下向きの初速度uを与える.下向き座標yとつり合い位置dを示す.
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考え方 重力を含むつり合いの位置へ原点を移すと,定数の力が消える.自然長から測った伸びと振幅を区別する.

  1. kd=mg より d=mg/k.my¨=mg−ky=−kX だから X¨=−ω2X,ω=k/m.X(0)=−d,X˙(0)=u より X=−dcos⁡ωt+(u/ω)sin⁡ωt である.

  2. 合成した振幅は A=d2+(u/ω)2,最大の伸びは ymax=d+A.最小は d−A<0 なので自然長より上へ達する.これは圧縮も許す仮定による.つり合いから測るエネルギー kX2/2+mX˙2/2 の初期値が kd2/2+mu2/2=kA2/2 となることでも検算できる.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

水平ばねにつながる質量 m の物体が,x=A から静かに出発した.初めて原点を通る瞬間に,右向きの短い力積 J>0 を加える.作用時間中の変位とばねの力積は無視できる.

  1. 力積直後の速度と新しい振幅を求めよ.

  2. 完全に停止させる J と,振幅が元と等しくなる正の J を求めよ.それぞれの力学的エネルギーの変化も求めよ.

水平ばねの物体が原点を左向きに通るとき,右向きに短い力積Jを加える.青が作用前の速度,赤が力積である. 水平ばねの物体が原点を左向きに通るとき,右向きに短い力積Jを加える.青が作用前の速度,赤が力積である.
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考え方 短い作用の前後は運動量変化でつなぎ,その後の振動は直後の位置と速度から決める.力積の作用中に力学的エネルギーは保存しない.

  1. ω=k/m とすると直前の速度は −Aω.m(v++Aω)=J より v+=J/m−Aω.原点で速度を与えた単振動の振幅は A+=|v+|/ω=|J/(mω)−A| である.

  2. 停止には J=mAω が必要で,その後はつり合い位置にとどまる.エネルギー変化は −kA2/2.A+=A の正の解は J=2mAω で,速度が −Aω から +Aω に反転し,エネルギー変化は0である.一般には ΔE=J2/(2m)−JAω となるので,右向きの力積を加えても必ずエネルギーが増えるわけではない.

ポイント 教える人へ

  • 原点で力が0になることと,原点で止まることを区別させる.

  • 初期位相は正弦と余弦の両方の符号から説明させる.

  • 鉛直ばねでは自然長,つり合い位置,転回点を別々に示させる.

  • 力積の前後にエネルギー保存を使わず,運動量変化を使う理由を問う.