問いしるべ
問いから始める物理 対称性から組み立てる力学(発展)

対称性から組み立てる力学(発展)

空間と時間の対称性の演習

著者:柚木芹香

自由な粒子の L を異なる座標で書き,停留経路を調べましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

慣性系の平面内で,質量 0.40kg の自由な粒子の速度は (vx,vy)=(3.0,−4.0)ms−1 です.軸を反時計回りに90度回して x′=y,y′=−x とします.

  1. 新しい速度成分と,両座標での L の値を求めてください.

  2. L が変わらないことは,どの対称性に対応しますか.

x 軸は右向き,y 軸は上向き.新しい x′ 軸は上向き,y′ 軸は左向きである.同じ速度ベクトルを右下へ描く. x 軸は右向き,y 軸は上向き.新しい x′ 軸は上向き,y′ 軸は左向きである.同じ速度ベクトルを右下へ描く.
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考え方 変換を微分し,速度の2乗の和を比べる.

  1. (vx′,vy′)=(−4.0,−3.0)ms−1.両方とも速さの2乗は25で,L=0.40×25/2=5.0J となる.

  2. 空間の等方性に対応する.速さは変わらない.

確かめ:逆変換で元の速度に戻る.軸の回転は加速ではない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

慣性系の自由な粒子の L=mx˙2/2 を,原点が X(t)=bsin⁡Ωt と動く,軸の向きが同じ座標系で書きます.q=x−X(t),b,Ω>0 とします.

  1. L を q,q˙,t で書き,運動方程式を求めてください.

  2. x(0)=x0,x˙(0)=u を満たす q(t) を求め,新しい系が慣性系か判断してください.

固定原点 O から動く原点 O′ までが X(t),O′ から P までが q である.O から P までの座標 x も示す. 固定原点 O から動く原点 O′ までが X(t),O′ から P までが q である.O から P までの座標 x も示す.
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考え方 一定でない原点の速度も加える.

  1. x˙=q˙+bΩcos⁡Ωt より

L=m2(q˙+bΩcos⁡Ωt)2

である.∂L/∂q=0,∂L/∂q˙=m(q˙+bΩcos⁡Ωt) から,q¨=bΩ2sin⁡Ωt.

  1. 慣性系では x=x0+ut なので q=x0+ut−bsin⁡Ωt.等速に見えず,慣性系ではない.交差項は

mbΩq˙cos⁡Ωt=ddt(mbΩqcos⁡Ωt)+mbΩ2qsin⁡Ωt

となり,全微分を除いても位置に依存する項が残る.時刻だけの項は全微分として除ける.

確かめ:解の2回微分は,原点の加速度 X¨ と逆符号である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

平面内の自由な粒子について,

L0=m2(x˙2+y˙2),L1=L0+αx˙+βy˙

を比較します.m>0,α,β は定数で,最後の2項もエネルギーの次元を持ちます.

  1. 同じ運動を与えることを示してください.

  2. x′=y,y′=−x と軸を回し,L1 を書き直してください.線形の項があっても等方性を失わない理由を説明してください.

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考え方 式の見た目と,選ばれる運動を区別する.

  1. 増えた項は d(αx+βy)/dt.方程式も d(mx˙+α)/dt=0,d(my˙+β)/dt=0 から x¨=y¨=0 で,L0 と同じになる.

  2. 書き直すと m(x˙′2+y˙′2)/2+βx˙′−αy˙′.同じ形の L1(x′,y′,x˙′,y˙′) との差は

(β−α)x˙′−(α+β)y˙′=ddt[(β−α)x′−(α+β)y′]

である.作用の差は両端だけで決まり,同じ等速運動を選ぶ.

確かめ:α=β=0 なら式そのものも回転で不変.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

自由粒子の候補 L=(Ax˙2+By˙2)/2 を考えます.A,B>0 は質量の次元を持ちます.

  1. 運動方程式を求め,x=x′+Vxt,y=y′+Vyt による変化が全微分になることを示してください.

  2. 軸を90度回した場合も,同じ形の候補との差が全微分になるには,どの条件が要りますか.等速運動になることだけでその条件は決まりますか.

同じ速さ u の運動を x 方向と y 方向に分けて描く.各方向の候補の係数 A,B を添える.作用の比較結果は示さない. 同じ速さ u の運動を x 方向と y 方向に分けて描く.各方向の候補の係数 A,B を添える.作用の比較結果は示さない.
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考え方 各対称性を分けて調べる.

  1. 方程式は Ax¨=By¨=0 で,等速になる.変換による差は

AVxx˙′+BVyy˙′+12(AVx2+BVy2)=ddt[AVxx′+BVyy′+12(AVx2+BVy2)t]

で,全微分となる.これだけなら A≠B も許される.

  1. 回転後は (Ay˙′2+Bx˙′2)/2.同じ形の候補との差は (A−B)(y˙′2−x˙′2)/2.一方,dF(x′,y′,t)/dt=Fx′x˙′+Fy′y˙′+Ft は速度について1次式なので,2次の項が消える A=B が必要である.このとき L=mv2/2 になる.等速運動だけでは係数の等しさは決まらない.

確かめ:同じ速さ u で時間 T 進む2つの作用は Au2T/2,Bu2T/2.等速でも,作用に向きの違いが残りうる.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

影響し合わない,十分離れた2粒子に対して候補

Lκ=m2(x˙12+x˙22)+κ2(x˙1−x˙2)2(m>0, κ≥0)

を考えます.m,κ は質量の次元を持ちます.

  1. 両粒子が等速になることを示してください.

  2. 同じ速度でガリレイ変換すると,κ の項は変わりますか.

  3. 「影響し合わない系の L は各粒子の L の和」という条件も課すと,κ はどうなりますか.この項を全微分として除けますか.

十分離れた2粒子を x₁,x₂ に置く.初期速度はそれぞれ独立に選べる.粒子間の相互作用を示す線は付けない. 十分離れた2粒子を x₁,x₂ に置く.初期速度はそれぞれ独立に選べる.粒子間の相互作用を示す線は付けない.
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考え方 方程式の和と差,加法性を調べる.

  1. 方程式は

(m+κ)x¨1−κx¨2=0,(m+κ)x¨2−κx¨1=0

である.和は m(x¨1+x¨2)=0,差は (m+2κ)(x¨1−x¨2)=0 なので,両加速度は0.

  1. x˙a=x˙a′+V では速度差も κ の項も変わらない.残りの変化は d[mV(x1′+x2′)+mV2t]/dt である.

  2. 展開すると −κx˙1x˙2 があり,各粒子だけの関数の和には分けられない.加法性から κ=0 を選ぶ.交差項は速度について2次で,全微分としても除けない.

確かめ:κ=0 で独立な2粒子の和に戻る.

ポイント 教える人へ

変換,回転,加速する原点を区別し,全微分の自由も確認してください.★3では,相対性,等方性,加法性がそれぞれどの係数を制限したかを問います.