問いしるべ
問いから始める物理 ゆらぎと拡散(発展)

ゆらぎと拡散(発展)

拡散の演習

著者:柚木芹香

自由行程と広がり,流束と濃度の変化を結びつけてください.一定に保つ量も確かめましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

気体の数密度は n=2.5×1025m−3,衝突断面積は σ=4.0×10−19m2,平均の速さは v¯=4.7×102ms−1 です.平均自由行程,衝突間の平均時間,拡散係数を見積もってください.

青い折れ線は,分子が衝突のたびに向きを変えて進む軌跡である.1歩の長さの平均が自由行程λにあたる.緑の破線の矢印は始点から終点への変位であり,進んだ道のり全体とは異なる. 青い折れ線は,分子が衝突のたびに向きを変えて進む軌跡である.1歩の長さの平均が自由行程λにあたる.緑の破線の矢印は始点から終点への変位であり,進んだ道のり全体とは異なる.
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考え方 掃く円柱に相手の分子が平均1個入る条件から自由行程を求める.

nσλ=1 より λ=1/(nσ)=1.0×10−7m.したがって τ=λ/v¯≈2.1×10−10s,D≈λv¯/3≈1.6×10−5m2s−1 である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

静止した液体中の粒子群は平均位置0で拡散します.1方向の幅 w=⟨x2⟩ は初め 0.20mm,160s 後に 0.60mm でした.D は一定で,壁の影響はありません.

  1. 拡散係数を求めてください.

  2. 幅が 1.0mm になる時刻を求めてください.

原点を中心とする初期の分布と160 s後の分布を重ねた.どちらも粒子数は同じで,幅は平均位置0から片側へ測る標準偏差である.初期幅w₀=0.20 mmに対し,160 s後はw=0.60 mmで,初期にも有限の広がりがある. 原点を中心とする初期の分布と160 s後の分布を重ねた.どちらも粒子数は同じで,幅は平均位置0から片側へ測る標準偏差である.初期幅w₀=0.20 mmに対し,160 s後はw=0.60 mmで,初期にも有限の広がりがある.
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考え方 初期幅を w0 とすると,増える分散は w2−w02=2Dt である.

  1. D=(0.602−0.202)×10−6/(2×160)=1.0×10−9m2s−1.

  2. t=(1.02−0.202)×10−6/(2D)=4.8×102s.初めから数えた時間で,個々の粒子の到達時刻ではない.

演習 3

オリジナル ★☆☆☆☆

同じ理想気体で衝突断面積を一定とします.次の各操作で,λ,v¯,τ,D が元の何倍になるか求めてください.

  1. 温度を保ち,圧力を2倍にします.

  2. 圧力を保ち,絶対温度を4倍にします.

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考え方 p=nkBT と v¯∝T を使い,数密度の変化も追う.

λ∝T/p,D∝T3/2/p である.

  1. n は2倍なので,順に 1/2,1,1/2,1/2 倍.

  2. n は 1/4 倍なので,順に4,2,2,8倍.等圧では自由行程も増す.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

同じ厚さ L,面積 S の膜A,Bを左から重ねます.拡散係数は各膜内で一定で,Aが D,Bが未知の DB です.両端の濃度を 3c0,c0 に保つと,定常状態の界面濃度は 5c0/2 でした.濃度は数密度で,界面で連続です.流れと反応はありません.

  1. 濃度が直線になる理由を述べ,DB と右向きの流束 J を求めてください.

  2. 膜の順序を交換したときの界面濃度と,毎秒通過する正味の粒子数を求めてください.

厚さL,断面積Sの膜A,Bを重ねた配置と,順序を交換した配置を並べる.両端の濃度はどちらも3c₀とc₀に保つ.交換前の界面濃度は測定値5c₀/2を示し,交換後は未知の界面濃度cₘを示す. 厚さL,断面積Sの膜A,Bを重ねた配置と,順序を交換した配置を並べる.両端の濃度はどちらも3c₀とc₀に保つ.交換前の界面濃度は測定値5c₀/2を示し,交換後は未知の界面濃度cₘを示す.
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考え方 定常では粒子がたまらず,同じ面積を通る流束は等しい.

  1. 各膜で ∂2c/∂x2=0 なので濃度は直線である.フィックの法則から

J=D3c0−5c0/2L=DB5c0/2−c0L

より J=Dc0/(2L),DB=D/3.勾配はAが −c0/(2L),Bが −3c0/(2L) で,流束が等しくても異なる.

  1. 全濃度差は 2c0=J(L/D+L/DB).順序を替えても和は同じで,J は変わらない.界面濃度は 3c0−JL/DB=3c0/2,毎秒の正味の粒子数は SJ=SDc0/(2L) 個である.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

温度 T=300K の静止した液体中で,粒子に正の x 方向の一定の力 F=5.0×10−15N を加えると,平均の速度は u=1.0×10−6ms−1 でした.移動度は一定で,慣性と壁の影響は無視します.kB=1.38×10−23JK−1 とします.

  1. 移動度と拡散係数を求めてください.

  2. 原点から出発した粒子群の平均位置の移動量が,中心からの幅 2Dt に等しくなる時刻を求めてください.

原点0から出発した粒子群に正のx方向の外力Fを加えると,分布の中心は平均速度uで移動する.原点から平均位置までの距離utと,平均位置を中心とする幅√(2Dt)を別の寸法線で示す. 原点0から出発した粒子群に正のx方向の外力Fを加えると,分布の中心は平均速度uで移動する.原点から平均位置までの距離utと,平均位置を中心とする幅√(2Dt)を別の寸法線で示す.
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考え方 u=μmF とアインシュタインの関係をつなぐ.

  1. μm=u/F=2.0×108ms−1N−1,D=μmkBT≈8.3×10−13m2s−1.

  2. 平均位置は ut だから,正の時刻では ut=2Dt より t=2D/u2≈1.7s.外力があると ⟨x2⟩=(ut)2+2Dt であり,2Dt は平均位置のまわりの分散である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

長さ L,断面積 S の閉じた管で,粒子の濃度が

c(x,t)=c0[1+ϵf(t)cos⁡2πxL],0≤x≤L, 0<ϵ<1, f(0)=1

の形を保つとします.D は一定で,流れと反応はありません.

  1. 拡散方程式から f(t) を求め,両端で流束が0であることを確かめてください.

  2. 最大濃度と最小濃度の差が半分になる時間と,総粒子数を求めてください.

長さL,断面積Sの管の両端を封じた配置と,余弦1周期の初期濃度分布を示す.濃度は両端で高く中央で低く,平均の高さはc₀である.両端を通る流束は0である. 長さL,断面積Sの管の両端を封じた配置と,余弦1周期の初期濃度分布を示す.濃度は両端で高く中央で低く,平均の高さはc₀である.両端を通る流束は0である.
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考え方 空間の形を代入すると,振幅の微分方程式になる.

  1. ∂2c/∂x2=−(2π/L)2(c−c0) を ∂c/∂t=D∂2c/∂x2 に入れると,df/dt=−4π2Df/L2.初期条件より f=e−4π2Dt/L2.∂c/∂x は sin⁡(2πx/L) に比例し,両端で0なので J=−D∂c/∂x=0 である.

  2. 差は 2c0ϵf.f=1/2 より t=L2ln⁡2/(4π2D).余弦の積分が0だから,N=S∫0Lcdx=Sc0L は一定で,粒子が失われずに均一化する.

ポイント 教える人へ

  • 自由行程と変位,幅と分散を区別させる.

  • 温度を変えるとき,保つ量を問う.

  • 定常なら濃度も一定というつまずきには,直線分布と一定の流束を描かせる.

  • 膜の順序で変わる量を,勾配と粒子保存で確かめる.

  • 平均位置と分散,局所濃度と総数を別々に説明させる.