問いしるべ
問いから始める物理 力と運動の法則

力と運動の法則

力の三角形と例題

著者:柚木芹香

ラミの定理を使うときに必要な,三角形の辺と角の関係を確かめます.そのあと,つり合いの例題を解きます.

定理 数学の道具:力の三角形と正弦定理

三角形の辺 a,b,c と,その向かい側の角 A,B,C について,正弦定理 asin⁡A=bsin⁡B=csin⁡C と,余弦定理 c2=a2+b2−2abcos⁡C がなりたつ.力の三角形では,辺の長さが力の大きさに,内角が「力どうしのなす角の補角」に当たる.

練習 1. 3N,4N,5N の3力がつり合っているとき,3N と 4N の力のなす角を求めよ.

答え:F3=−(F1+F2) の大きさが 5 なので,52=32+42+2⋅3⋅4cos⁡γ.よって cos⁡γ=0,γ=90∘.

練習 2. 重さ 10N のおもりを,水平と 30∘ をなす糸Aと,水平と 60∘ をなす糸B(左右に分かれる)でつるした.力の三角形と正弦定理から,2本の張力を求めよ.

答え:力の三角形の内角は,重力の向かいが 90∘,糸Aの張力の向かいが 30∘,糸Bの張力の向かいが 60∘ になる.正弦定理より 10sin⁡90∘=TAsin⁡30∘=TBsin⁡60∘ で,TA=5.0N,TB≈8.7N.

使い分けの目安は,力が3つで角度がきれいなら三角形やラミの定理,4つ以上や座標軸に沿った力が多いなら成分,です.どちらでも答えは同じになるので,片方で解いて片方で検算できます.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

ハンモックの問いを数値で確かめる.体重 70kg の人が乗る.左右のロープは同じ角 θ で張られ,各ロープが耐えられる張力は 3.0kN までとする.(1) θ=8∘ のとき,張力はいくらか.(2) ロープが切れないために,θ は最小でどれだけ必要か.

左右のロープが水平と同じ角θをなし,中心に体重W,両側に張力Tが働く. 左右のロープが水平と同じ角θをなし,中心に体重W,両側に張力Tが働く.
解答を見る

考え方 人を質点とみなし,鉛直方向のつり合いだけを書く.水平方向は左右で打ち消し合う.

  1. W=70×9.8=686N.2Tsin⁡θ=W より

T=6862sin⁡8∘=6862×0.139≈2.5×103N

体重の約3.6倍で,限度 3.0kN の内側である.

  1. T≤3000N より sin⁡θ≥6862×3000=0.114,したがって θ≥6.6∘.これより水平に近く張ると切れる.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

質量 m のおもりを,結び目 O から糸3で吊るす.結び目 O は,水平に壁へ張った糸1と,天井から斜めに張った糸2(水平面と角 θ をなす)で支えられ,全体が静止している.糸1,2,3の張力 T1,T2,T3 を求めよ.

結び目Oを水平な糸1と斜めの糸2で支え,糸3でおもりを吊るす. 結び目Oを水平な糸1と斜めの糸2で支え,糸3でおもりを吊るす.
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考え方 結び目 O を質点として,O に働く3力(糸1,糸2,糸3の張力)のつり合いを成分で書く.おもりに注目すれば,糸3の張力がわかる.

おもりのつり合いより T3=mg.O について,水平方向と鉛直方向のつり合いはそれぞれ

T2cos⁡θ−T1=0,T2sin⁡θ−T3=0

である.よって

T2=mgsin⁡θ,T1=mgtan⁡θ

検算:θ=90∘(糸2が鉛直)では T1=0,T2=mg で,確かに糸2だけでおもりを吊るす場合に一致する.θ→0 では T1,T2→∞.これはハンモックと同じで,糸を水平に近く張るほど大きな張力が要ることを表している.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

質量 m,半径 R の球を,長さ l の軽い糸で,滑らかな鉛直の壁の点 P から吊るす.球は壁に接して静止している.糸の延長線は球の中心を通る.糸の張力 T と,壁からの垂直抗力 N を求めよ.また R=0.10m,l=0.30m,m=0.50kg のとき,その値を求めよ.

滑らかな鉛直の壁の点Pから長さlの軽い糸で球が吊るされ,球は壁に接している.球の中心は壁から距離Rにあり,糸の延長線は球の中心を通る(Pから中心までは l+R).糸が壁となす角はθ.球の中心から,重力mgが下向き,糸の張力Tが糸に沿ってPの向き,壁の垂直抗力Nが壁から離れる水平向きに働く. 滑らかな鉛直の壁の点Pから長さlの軽い糸で球が吊るされ,球は壁に接している.球の中心は壁から距離Rにあり,糸の延長線は球の中心を通る(Pから中心までは l+R).糸が壁となす角はθ.球の中心から,重力mgが下向き,糸の張力Tが糸に沿ってPの向き,壁の垂直抗力Nが壁から離れる水平向きに働く.
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考え方 球に働く力は重力,糸の張力,壁の垂直抗力の3つで,向きがはっきりしている.糸が壁となす角 θ を図形から決め,ラミの定理か成分でつり合いを書く.

球の中心は壁から R の距離にあり,P から中心までは l+R なので

sin⁡θ=Rl+R

である.水平方向,鉛直方向のつり合いは

Tsin⁡θ=N,Tcos⁡θ=mg

よって

T=mgcos⁡θ,N=mgtan⁡θ

である.R=0.10, l=0.30 では sin⁡θ=0.25,cos⁡θ=0.968,tan⁡θ=0.258.mg=4.9N より

T≈5.1N,N≈1.3N

である.糸を長くすると θ→0 で N→0,T→mg(壁に接さず,ただ吊るされた状態)に近づき,予想どおりである.

ポイント ここまでのまとめ

  • 力の三角形では,辺の長さが力の大きさに,内角が力どうしのなす角の補角に当たる.正弦定理と余弦定理で未知の力や角が求まる.

  • 力が3つで角度がきれいなら三角形やラミの定理,4つ以上や軸に沿う力が多いなら成分で解く.一方で解き,他方で検算できる.

  • 結び目や球のように,注目する物体を決めて水平・鉛直のつり合いを書く.糸を水平に近づけるほど(θ→0)張力が大きくなる傾向は,どの例題でも現れる.