問いしるべ
問いから始める物理 力と運動の法則

力と運動の法則

力のつり合いの演習

著者:柚木芹香

成分に分ける方法と,力の三角形を使う方法の両方で解ける問題があります.自由体図に力を全部描き,軸を選んでから解答を見てください.極端な角(0°や90°)での検算を,各問の仕上げにしましょう.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

物体に力 F1=(3.0,4.0)N と F2=(−1.0,2.0)N が働いている.第3の力 F3 を加えて物体をつり合わせたい.F3 の成分と大きさを求めよ.

原点の物体に働くF₁=(3.0,4.0) NとF₂=(−1.0,2.0) Nを示す.第三の力は描かない. 原点の物体に働くF₁=(3.0,4.0) NとF₂=(−1.0,2.0) Nを示す.第三の力は描かない.
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つり合いの条件 F1+F2+F3=0 を成分ごとに書く.x 成分は 3.0−1.0+F3x=0,y 成分は 4.0+2.0+F3y=0 なので

F3=(−2.0,−6.0)N,F3=2.02+6.02≈6.3N

である.F1+F2=(2.0,6.0)N の逆向きになっている.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

質量 3.0kg の物体を,同じ長さの2本の糸で天井の2点から吊るす.2本の糸のなす角(頂角)を (1) 120∘,(2) 160∘ にしたとき,糸の張力をそれぞれ求めよ.

同じ長さの二本の糸で質量3.0 kgの物体を吊るす.二本のなす角をθとする. 同じ長さの二本の糸で質量3.0 kgの物体を吊るす.二本のなす角をθとする.
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各糸は鉛直から頂角の半分だけ傾いている.傾きを φ とすると,鉛直方向のつり合いは 2Tcos⁡φ=mg,mg=29.4N である.

  1. φ=60∘:T=29.42cos⁡60∘=29.4≈29N(ちょうど mg).

  2. φ=80∘:T=29.42cos⁡80∘=29.40.347≈85N.開き方を大きくすると張力が急に大きくなる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

傾き α=30∘ の滑らかな斜面上に,質量 m=2.0kg の物体を置き,斜面に平行な糸で支える.

  1. 糸の張力と垂直抗力を求めよ.

  2. 糸を斜面から角 φ だけ持ち上げる向きに引いても静止させるとき,張力と垂直抗力を φ の式で表し,垂直抗力が0になる φ を求めよ.

30°の斜面に平行な糸と,斜面から角φだけ持ち上げた糸で支える場合を並べる. 30°の斜面に平行な糸と,斜面から角φだけ持ち上げた糸で支える場合を並べる.
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  1. 斜面に平行な方向のつり合いは T=mgsin⁡α=2.0×9.8×0.50=9.8N,垂直な方向のつり合いは N=mgcos⁡α=2.0×9.8×0.866≈17N である.

  2. 斜面に平行な方向:Tcos⁡φ=mgsin⁡α.垂直な方向:N+Tsin⁡φ=mgcos⁡α.よって

T=mgsin⁡αcos⁡φ,N=mgcos⁡α−mgsin⁡αtan⁡φ

N=0 とすると tan⁡φ=cot⁡α,すなわち φ=90∘−α=60∘ である.このとき糸は鉛直で,T=mgsin⁡αcos⁡(90∘−α)=mg となる.物体は糸で吊られて斜面に触れるだけであり,正しい結果である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

長さ L の軽い糸の両端を,同じ高さにある水平距離 d の2点に固定し,滑らかな小さな輪を糸に通して質量 m のおもりを吊るす.輪は糸の上を自由に動ける.d=0.60m,L=1.0m のとき,糸の張力を求めよ.また d→0 と d→L の極限を調べよ.

同じ高さの二点に固定した長さLの糸に輪を通し,質量mのおもりを吊るす.支持点間の距離dを示す. 同じ高さの二点に固定した長さLの糸に輪を通し,質量mのおもりを吊るす.支持点間の距離dを示す.
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滑らかな輪を通る糸の張力は左右で等しく T である.左右の糸が鉛直となす角は,つり合いの対称性から等しい(水平方向の成分 Tsin⁡θ が左右で打ち消し合うため).左右の糸の長さの和が L で,水平方向の幅の和が d なので Lsin⁡θ=d,sin⁡θ=0.60,cos⁡θ=0.80 である.鉛直方向のつり合い 2Tcos⁡θ=mg より

T=mg2cos⁡θ=mg1.6=0.625mg

である.d→0:θ→0,T→mg/2(糸が鉛直に2本並ぶ).d→L:θ→90∘,T→∞.糸を水平に近づけるほど張力が大きくなる.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

質量 m の滑らかな球を,鉛直面内で左右に傾いた2つの滑らかな斜面の間(V字の溝)に置く.左の斜面は水平から角 α,右の斜面は水平から角 β 傾いている.球が各斜面から受ける垂直抗力 N1,N2 を求めよ.また α=30∘,β=60∘ のときの値を求め,α=β の場合と β→90∘ の場合を調べよ.

V字の溝に滑らかな球が置かれている.左の斜面は水平から角α,右の斜面は水平から角β.球の中心から,重力mgが下向き,左の斜面からの垂直抗力N1が斜面に垂直で鉛直から右へα傾いた向き,右の斜面からの垂直抗力N2が斜面に垂直で鉛直から左へβ傾いた向きに働く. V字の溝に滑らかな球が置かれている.左の斜面は水平から角α,右の斜面は水平から角β.球の中心から,重力mgが下向き,左の斜面からの垂直抗力N1が斜面に垂直で鉛直から右へα傾いた向き,右の斜面からの垂直抗力N2が斜面に垂直で鉛直から左へβ傾いた向きに働く.
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球に働く力は mg,N1,N2 の3つ.斜面に垂直な力 N1 は鉛直から α 傾き,N2 は鉛直から逆向きに β 傾いている.水平方向と鉛直方向のつり合いは

N1sin⁡α=N2sin⁡β,N1cos⁡α+N2cos⁡β=mg

である.第1式から N2=N1sin⁡α/sin⁡β.第2式に入れて

N1(cos⁡α+sin⁡αcos⁡βsin⁡β)=mg ⟹ N1=mgsin⁡βsin⁡(α+β),N2=mgsin⁡αsin⁡(α+β)

である(sin⁡αcos⁡β+cos⁡αsin⁡β=sin⁡(α+β) を使った).ラミの定理でも同じ式になる.

α=30∘,β=60∘ では sin⁡90∘=1 なので N1=mgsin⁡60∘≈0.87mg,N2=mgsin⁡30∘=0.50mg(2つの斜面が直交しているので,重力を2つの垂線方向に分けた結果になる).

検算:α=β では N1=N2=mg2cos⁡α.これは 2Ncos⁡α=mg で,確かにつり合っている.β→90∘(右が鉛直な壁)では N1=mg/cos⁡α,N2=mgtan⁡α.斜面と壁の間に球を置いた場合の結果に一致する.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

同じ高さの2点に,線密度(単位長さあたりの質量)λ が一様な鎖をたるませて吊るす.鎖は滑らかに曲がり,全質量は M,両端での鎖の向きは水平から角 θ である.

  1. 鎖の各点での張力の水平成分は一定であることを示せ.

  2. 最も低い点での張力 T0 と,端での張力 T端 を M,g,θ で表せ.

  3. 鎖上の点で,鎖の向きが水平から角 φ のとき,その点の張力 T を T0 と φ で表せ.

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鎖の最低点から弧長sの部分を取り出し,両端の張力T₀,Tと重力λsgを示す. 鎖の最低点から弧長sの部分を取り出し,両端の張力T₀,Tと重力λsgを示す.

鎖の一部分を考える.最低点から鎖に沿って距離 s までの部分(質量 λs)に働く力は,最低点側の張力(水平向き,大きさ T0),その点での張力 T(向きは水平から φ 上向き),重力 λsg である.

  1. この部分が静止していることから,水平方向のつり合いは Tcos⁡φ=T0.重力に水平成分がないので,どの点でも張力の水平成分は T0 で一定である.

  2. 同じ部分の鉛直方向のつり合いは Tsin⁡φ=λsg.鎖の端(片側全体,質量 M/2)では T端sin⁡θ=Mg/2 なので

T端=Mg2sin⁡θ,T0=T端cos⁡θ=Mg2tan⁡θ

である.

    1. より T=T0/cos⁡φ.また T2=T02+(λsg)2 とも書ける.φ が大きい点(端に近い点)ほど張力が大きい.θ→0(水平に近づける)で T0,T端→∞ になるのは,ハンモックの結果と同じである.

ポイント 教える人へ

  • 導入のハンモックは,式を出す前に「なぜだと思うか」と聞く.「体重を支える役に立つ成分は鉛直成分だけ」に自分で気づけると,この節の半分は終わっている.

  • 多い間違いは,力を分解せずに大きさだけ足し合わせることと,角度の取り方(水平から測るか,鉛直から測るか)の取り違えである.sin と cos のどちらが付くかは,極端な角(0°や90°)で確かめさせると身につく.

  • つり合いの問題は,本文の手順(物体を決める,自由体図に力を全部描く,軸ごとに合力が0,極端な場合で検算)で確かめさせる.

  • 理解の確かめ:糸の張力が「糸のどこでも同じ」でなくなるのはいつか(糸の質量が無視できないとき,例えば鎖の演習)を聞くと,仮定の意味が見える.剛体のつり合い(トルク)は後の章で扱うと,予告しておく.