問いしるべ
問いから始める物理 力と運動の法則

力と運動の法則

第4章のまとめ

著者:柚木芹香

この章では,力と運動の関係を3つの法則にまとめ,力を見つけて運動方程式に入れる手順を身につけました.そのうえで,垂直抗力・張力・摩擦・空気抵抗という具体的な力を調べ,つり合いに進みました.最後に,流体が面を押す圧力から浮力を導きました.ここで法則と公式を一覧にし,各節の最初の問いに短く答えます.

法則

法則 力と運動の3法則

  • 第1法則(慣性の法則):合力が 0 のとき,物体は静止し続けるか等速直線運動を続ける.成り立つ基準系を慣性系といい,慣性系に対して等速直線運動をする基準系もまた慣性系である.

  • 第2法則(運動方程式):ma=F(F は合力).力の単位は 1N=1kgms−2 である.運動方程式は法則であって,力の法則と初期条件を組み合わせて初めて運動を予言できる.

  • 第3法則(作用反作用):FB→A=−FA→B.別々の物体に働く同種の力で,いつでも成り立つ.同じ物体に働く力のつり合いとは別のものである.粒子1組ごとの重力と電気の力が対になることに由来し,接触力はそれを境目の原子の組について足し合わせたものである.

力の一覧

力

向きと大きさ

注意

重力

鉛直下向き,mg

質量は変わらず,重さは場所で変わる

垂直抗力 N

面に垂直,必要なだけ(N≥0)

常に mg とは限らない

張力 T

糸に沿って引く向き

切り口の両側で等しいのは第3法則,軽い糸でどこでも同じなのは糸の運動方程式による.押せない

静止摩擦力 f

相対運動を妨げる向き,0≤f≤μN

滑っていない間,運動方程式から決まる(加速度0ならつり合い)

動摩擦力 f′

滑る向きと逆,f′=μ′N

速さにほとんどよらない

抵抗力

流体に対する相対速度と逆向き,kv または cv2

終端速度に近づくと重力とほぼつり合う

浮力

鉛直上向き,ρVg(押しのけた流体の重さ)

表面を押す圧力の合計.V は沈んでいる部分の体積

手順

ポイント 力学の問題を解く手順

  1. 注目する物体を1つ決め,まず重力を描く.

  2. 触れているものを数え,垂直抗力・張力・摩擦力などを描く.相手の物体を言えない力は描かない.

  3. 座標軸を選び,成分ごとに ma=F(つり合いなら ∑F=0)を書く.

  4. 糸の長さが一定などの束縛条件から,加速度の関係を作る.未知数と式の数を数える.

  5. 摩擦では,滑っていないと仮定して f≤μN を確かめ,だめなら動摩擦力に置き直す.

  6. 極端な場合(角が0や90°,質量が非常に大きい,t→0,t→∞)で検算する.

主な公式

  • 滑らかな斜面:a=gsin⁡θ,N=mgcos⁡θ

  • エレベーター(上向き正):N=m(g+a)

  • アトウッドの機械:a=M−mM+mg,T=2MmM+mg

  • 斜面で滑り出す角:μ=tan⁡θ0

  • 線形抵抗の落下:v=v∞(1−e−t/τ),v∞=mgk,τ=mk.2乗抵抗の終端速度:v∞=mgc

  • 静止した液体の圧力:p=p0+ρgh(微分形 dpdz=−ρg,z は上向き).圧力 p=F/S,単位 1Pa=1Nm−2

  • 浮力(アルキメデスの原理):F=ρVg.浮かんだ物体の沈む割合は ρs/ρ

  • 質点のつり合い:∑F=0.同一直線上にない3力ではラミの定理 F1sin⁡α=F2sin⁡β=F3sin⁡γ

各節の問いへの答え

  • 慣性の法則:摩擦も空気抵抗もない氷の上のパックは,水平方向の合力が0なので同じ速さでどこまでも進む.物を動かし続けるのに力が要るように見えるのは,摩擦や空気抵抗を打ち消すために押しているからである.

  • 運動方程式:質量を2倍にすると,同じ力での加速度は半分になる.力の大きさは,同じばねの伸びを基準にして数で表せる.

  • 作用と反作用:押し合う2人が受ける力は,押したつもりかどうかによらず等しい.加速度は質量に反比例するので,軽い子どもの方が速く離れていく.壁を押して手が痛むのは,壁の表面の原子に押し返されて,手の中の原子の結合が縮むからである.

  • 力の種類:机の上の本に働く力は,重力と垂直抗力の2つだけである.本が机を押す力は,机の自由体図に描くものである.

  • 垂直抗力と張力:エレベーターが上昇し始めると体重計の目盛りは増え,等速では変わらず,止まる直前は減る.垂直抗力は N=m(g+a) のように,必要なだけ現れる.

  • 摩擦:動き出す前は,摩擦力が押す力に合わせて増えるので動かない.静止摩擦力が μN になるのは動き出す限界の瞬間だけで,滑っているときの摩擦力は μ′N である.

  • 空気抵抗と終端速度:半径 1mm の雨粒のモデルは,空気抵抗とほぼつり合う約 7ms−1 で落ちる.抵抗のない自由落下の約 200ms−1 の,約30分の1である.

  • 力のつり合い:ハンモックのロープは,鉛直成分だけが体重を支えるので T=W2sin⁡θ.水平に近いほど張力が大きくなり,完全に水平には張れない.

  • 圧力と浮力:同じ深さなら,細い管の底でもプールの底でも,形の違う容器の底でも,圧力は p0+ρgh で同じである.底が受ける力が水の重さと違う分は,斜めの壁が支えたり押し下げたりしている.

この章で使った数学

斜面での力の分解(三角関数),三角関数の合成(最大・最小),指数関数と対数の微分・積分,1階の微分方程式(変数分離),正弦定理,薄い流体の柱から作る微分方程式 dpdz=−ρg,面にわたって力を足す積分がありました.