問いしるべ
問いから始める物理 振動

振動

第7章のまとめ

著者:柚木芹香

この章では,復元力が変位に比例すると単振動になることを出発点に,2階の微分方程式を初めて本格的に解きました.そして,振り子や浮かぶ物体などへの応用,抵抗と外力が加わった減衰・強制振動,複数の物体がつながった連成振動まで広げました.ここで定義と法則を一覧にし,各題材の最初の問いに短く答えます.

定義と法則

法則 フックの法則と単振動

  • 復元力 F=−kx のとき,運動方程式 mx¨=−kx の一般解は x=Acos⁡(ωt+ϕ).角振動数 ω=k/m,周期 T=2πω.振幅 A と初期位相 ϕ は初期条件で決まる.

  • 周期は振幅によらない(等時性).速度は −Aωsin⁡(ωt+ϕ),加速度は −ω2x.力学的エネルギー 12kx2+12mv2=12kA2 は一定である.

法則 いろいろな単振動

  • 単振り子は,小さい振れ(sin⁡θ≈θ)で単振動になり,T=2πL/g.ポテンシャルの極小 x0(U″(x0)>0)のまわりの小振動は,近似的に k=U″(x0) の単振動である.

  • ばねの並列は k=k1+k2,直列は 1k=1k1+1k2.鉛直ばねや浮かぶ物体では,つり合いの位置から測った変位が単振動になる(断面積 S の円柱が密度 ρ の液体に浮くとき k=ρgS).

法則 減衰振動と強制振動

  • 抵抗 −bx˙ のとき x¨+2γx˙+ω02x=0(γ=b2m,ω0=k/m).γ<ω0 は弱減衰 x=Ae−γtcos⁡(ω′t+ϕ),ω′=ω02−γ2.γ=ω0 は臨界減衰,γ>ω0 は過減衰である.

  • 外力 F0cos⁡ωt を加えると,定常振動は外力と同じ ω で振幅 A=f(ω02−ω2)2+4γ2ω2(f=F0/m).弱減衰では ω≈ω0 で共鳴し,ω=ω0 で位相の遅れが π/2(速度が外力と同位相)になる.Q値は Q=ω0/2γ(共鳴での振幅と F0/k の比)である.

法則 連成振動

  • 入れ替えて同じ形(対称)な2質点の連立方程式は,和と差で独立な方程式に分かれ,係数が正なら単振動になる.すべての質点が同じ角振動数で振動する運動が基準振動で,一般の運動はその重ね合わせである.

  • 質量 m の2質点を,ばね定数 k のばね2本と結合ばね κ でつなぐと,同位相は ω1=k/m,逆位相は ω2=(k+2κ)/m.結合が弱いとき,片方だけ動かすと,エネルギーはほぼ π/(ω2−ω1) かけて他方に移る.

手順

ポイント 振動の問題を解く手順

  1. つり合いの位置を決め,そこからの変位 x をとる.復元力を x の1次式で書き,mx¨=−Kx の形(K は実質のばね定数)にして ω=K/m.

  2. 振り子や浮かぶ物体は,微小な変位で1次近似する(sin⁡θ≈θ,U″>0 の極小でのポテンシャルの2次展開).

  3. 初期条件(位置と速度)から A と ϕ を決める.エネルギー保存が使える設問では,それで最大速さを求める.

  4. 抵抗があれば γ と ω0 を比べて型を決める.外力があれば定常解の A と位相を使う.

  5. 質点が複数あれば,対称性を見て和と差(または同位相と逆位相)に分ける.

主な公式

  • 単振動:ω=k/m,x=Acos⁡(ωt+ϕ),T=2π/ω,E=12kA2

  • 単振り子:T=2πL/g

  • 減衰:γ=b2m,x=Ae−γtcos⁡(ω′t+ϕ),振幅が 1/e になる時間 1/γ

  • 強制振動:A(ω)=f(ω02−ω2)2+4γ2ω2,Q=ω02γ

  • 連成:ω1=k/m,ω2=(k+2κ)/m

各題材の問いへの答え

  • フックの法則と単振動:振幅を2倍にすると,往復の時間は変わらない.T=2πm/k に振幅は入っておらず,大きく引くと復元力も大きくなり,遠くまで速く動いて周期が保たれる.

  • いろいろな単振動:振り子時計の周期は 2πL/g で振れ幅によらないので,振れ幅が少し変わっても時刻は狂わない.ただし振れが大きいと,周期はわずかに長くなる(振れ角 θ0 でおよそ θ02/16 の割合).

  • 減衰振動と強制振動:ブランコは,動く向きに合わせて,自分の周期で押すと最も大きく揺れる.そのとき外力は常に仕事をし,抵抗で失う分とつり合った振幅で落ち着く.

  • 連成振動:糸でつながれた振り子は,同位相と逆位相の2つの基準振動をもち,その角振動数が少し違う.片方だけ揺らすと2つの位相差が進み,結合が弱ければ一方の揺れがほぼ消えて他方が最大になることを繰り返し,エネルギーがほぼ往復する.

この章で使った数学

2階線形微分方程式の一般解,三角関数の合成,テイラー展開と小振動の近似,複素数とオイラーの式,特性方程式,連立の微分方程式を和と差で分ける方法がありました.