問いしるべ
問いから始める物理 波と音

波と音

うなりとドップラー効果の例題

著者:柚木芹香

うなりの問題では,聞こえた強弱の回数から振動数の差の大きさだけが分かり,どちらが高いかは分かりません.もう1つの手がかり(おもりを付ける,張力を変える)で符号を決めます.ドップラー効果の問題では,次の手順を守ると符号の間違いが減ります.

ポイント ドップラー効果の手順

  1. 音源から観測者へ向かう向きを正と決め,音源と観測者の速度の成分 us,uo を符号つきで書く.

  2. 速度はすべて空気に対するものに直す.風があれば地面に対する速度のまま音速を v+w にする.

  3. 斜めに動くときは,音を出した時刻の視線方向の成分を使う.

  4. 反射体は,まず観測者として振動数を受け取り,次にその振動数の音源として音を出す.

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

振動数 440Hz の音叉 A と,振動数が分からない音叉 B を同時に鳴らすと,1秒間に4回のうなりが聞こえた.

  1. B の振動数として考えられる値を2つ挙げよ.

  2. B の先に少量の粘土を付けて振動数を少し下げてから同時に鳴らすと,うなりは1秒間に2回になった.粘土を付ける前の B の振動数を求めよ.

  3. 次に,ギターの弦を A と同時に鳴らすと,1秒間に3回のうなりが聞こえた.弦の張力を少し強めると,うなりは1秒間に5回になった.張力を強める途中でうなりが消えることはなかった.うなりを消すには,張力を最初の値から何 % 変えればよいか.弦の長さで決まる波長は張力によらないので,弦の音の振動数 f=v/λ は波の速さ v=S/μ に比例するとしてよい.

振動数440 Hzの音叉Aと,振動数不明の音叉Bを並べ,Bの先に付ける粘土を示す.下の波形は粘土を付ける前の観測に対応し,強い所の間隔は毎秒4回から1/4 sである.和の細かな振動は模式的に描く. 振動数440 Hzの音叉Aと,振動数不明の音叉Bを並べ,Bの先に付ける粘土を示す.下の波形は粘土を付ける前の観測に対応し,強い所の間隔は毎秒4回から1/4 sである.和の細かな振動は模式的に描く.
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考え方 うなりの回数は振動数の差の絶対値だけを教える.どちらに動かすとうなりが減るかで,差の符号が決まる.

  1. |fB−440Hz|=4Hz なので,fB=444Hz か 436Hz である.

  2. 粘土を付けると B の振動を担う部分の質量が増え,振動数は下がる.fB=444Hz なら下げると 440 Hz に近づき,うなりは減る.fB=436Hz なら 440 Hz から遠ざかり,うなりは増える.うなりが減ったので fB=444Hz である.粘土を付けたあとの振動数は 442Hz または 438Hz である.

  3. 張力を強めると v が増えて弦の振動数は上がる.それでうなりが増えたので,弦はもともと A より高く,振動数は f=443Hz である.張力を強めたあとは 445Hz である.うなりを消すには 440Hz にすればよい.f∝S より

S′S=(440443)2=0.9865

なので,張力を最初の値から約 1.3 % 弱めればよい.

確かめに,振動数の変化が小さいときは ΔSS≈2Δff=2×−3443=−0.0135 で一致する.うなりは振動数の差が小さいほど遅くなり,0 で消えるので,調律は「うなりが遅くなる向き」に合わせればよい.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

サイレンを鳴らした救急車がまっすぐな道路を一定の速さ u で走っている.道路のわきに立つ人には,十分遠くから近づいてくるときのサイレンが 1000Hz,十分遠くまで遠ざかったときが 880Hz に聞こえた.音速を v=340ms−1 とし,風はないとする.

  1. 救急車の速さ u と,サイレンの振動数 f0 を求めよ.

  2. 人は道路から d=20m 離れて立っていた.救急車が人に最も近い点を通る時刻を0とする.サイレンが f0 の振動数で聞こえる時刻と,そのときの救急車の位置を求めよ.

  3. 救急車から人へ引いた線が道路と 45∘ をなす位置(近づく側)で出た音は,何 Hz に聞こえるか.

救急車は道路に沿って右へ速さuで進み,人は道路から距離d=20 m離れて静止している.救急車が音を出す位置から人へ引く線と道路のなす角をθとする.青の斜めの矢印は,速度の視線方向の成分u cos θである.風はなく,音速はv=340 m/sである. 救急車は道路に沿って右へ速さuで進み,人は道路から距離d=20 m離れて静止している.救急車が音を出す位置から人へ引く線と道路のなす角をθとする.青の斜めの矢印は,速度の視線方向の成分u cos θである.風はなく,音速はv=340 m/sである.
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考え方 十分遠くでは視線が道路にほぼ平行なので,近づくときは us=u,遠ざかるときは us=−u とする.途中の音は,音を出した時刻の視線方向の成分 ucos⁡θ で決まる.

  1. 静止した観測者には

1000Hz=f0vv−u,880Hz=f0vv+u

である.辺々を割ると v+uv−u=1000880=2522 で,22(v+u)=25(v−u) より

u=347v=21.7ms−1

(時速約 78 km)である.すると

f0=1000Hz×v−uv=1000Hz×4447=936Hz

となる.確かめに,880Hz×v+uv=880×5047Hz=936Hz で一致する.2つの式から f0=2×1000×8801000+880Hz と,聞こえた2つの振動数だけで f0 を出すこともできる.

  1. 振動数が f0 になるのは視線方向の成分が0のとき,つまり救急車が最も近い点(時刻0)で出した音である.この音は距離 d を進んで

t=dv=20340s=0.059s

に届く.そのとき救急車は最も近い点から ud/v=21.7×0.059m=1.3m 先へ進んでいる.f0 が聞こえるのは,救急車が人の前を少し通り過ぎてからである.

  1. 視線方向の成分は us=ucos⁡45∘=15.3ms−1 なので

f=f0vv−ucos⁡45∘=936Hz×340324.7=980Hz

である.1000Hz と f0 の間にあり,近づく途中で振動数がなめらかに下がっていくことが分かる.道路から離れて立つほど,振動数の変化はゆるやかになる.サイレンの1周期の間に救急車の向きの角がほとんど変わらないこと,つまり u/(f0d) が十分小さいことが,各時刻の振動数を考えてよい条件である.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

振動数 f0=680Hz の音叉を鳴らしながら,人が速さ u=1.0ms−1 で大きな壁へまっすぐ歩いて近づく.壁は静止しており,音速は v=340ms−1,風はない.

  1. 壁で反射した音の振動数を,壁の位置で受け取る振動数から順に求め,人が聞くうなりの回数を求めよ.

  2. 人の後方(壁と反対側)に静止して立つ別の観測者は,音叉から直接来る音と壁で反射した音を聞く.1秒あたりのうなりの回数を求めよ.

  3. (1)のうなりの回数は,u が v より十分小さいとき近似的に 2uf0/v になることを示し,うなりの回数が毎秒 1.0 回なら歩く速さはいくらか答えよ.

右側に静止した壁,その左に振動数f₀=680 Hzの音叉を持って右へ速さu=1.0 m/sで歩く人,さらに左に静止した観測者がいる.音叉から壁への音は右向き,壁から戻る反射音と後方への直接音は左向きである. 右側に静止した壁,その左に振動数f₀=680 Hzの音叉を持って右へ速さu=1.0 m/sで歩く人,さらに左に静止した観測者がいる.音叉から壁への音は右向き,壁から戻る反射音と後方への直接音は左向きである.
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考え方 壁は静止した観測者として音を受け取り,同じ振動数の静止した音源として音を返す.反射音を聞く人は,その音源へ近づく観測者である.

  1. 壁から見ると,音源(人)は速さ u で近づくので,壁が受け取る振動数は

f1=f0vv−u

である.壁はこの振動数の静止した音源となる.人は壁へ向かって速さ u で動く観測者で,壁から人へ向かう向きを正とすると uo=−u なので

f2=f1v+uv=f0v+uv−u=680Hz×341339=684.0Hz

である.人の耳には音叉の音も直接届き,音叉と人は一緒に動くので,その振動数は f0 のままである.うなりの回数は

f2−f0=f02uv−u=680×2.0339Hz=4.0Hz

で,1秒に4回である.

  1. 後方の観測者には,音叉から直接の音が,音源が遠ざかる向きに動くので f0vv+u で届く.反射音は静止した壁から静止した観測者へ届くので f1=f0vv−u のままである.うなりの回数は

f0(vv−u−vv+u)=f02uvv2−u2=4.0Hz

で,(1) とほとんど同じ1秒に4回である.

  1. u/v が十分小さければ 2uv−u=2uv⋅11−u/v≈2uv なので,うなりの回数は 2uf0/v である.(1) と (2) の違いは u/v=0.003 程度の割合で,数値には現れない.うなりが毎秒 1.0 回なら

u=v×1.0Hz2f0=3401360ms−1=0.25ms−1

である.うなりの回数は速さに比例するので,ゆっくり歩くだけで速さが測れる.同じ原理で,反射波と送った波のうなりから速さを測るのが,野球のスピードガンや血流計である.

ポイント ここまでのまとめ

  • うなりの回数は |f1−f2| で,差の符号は「振動数を少し動かしたとき,うなりが増えるか減るか」で決める.

  • 弦の振動数は S に比例するので,わずかな調整では ΔS/S≈2Δf/f.

  • 近づくときと遠ざかるときの2つの振動数から,音源の速さと本来の振動数が求められる.

  • 斜めに動く音源では,音を出した時刻の視線方向の成分を使う.f0 が聞こえるのは最接近より少し後である.

  • 反射は観測者と音源の2段階に分けて扱い,直接の音との差がうなりになる.u が v より十分小さければ,うなりの回数は 2uf0/v.