問いしるべ
問いから始める物理 全範囲の総合演習

全範囲の総合演習

東大後期の過去問を発展させる(4)

著者:柚木芹香

東大後期の軌道衝突,虹,移動波源,回路の切り替えを,保存則と観測の4題に組み直しました.第5〜10章の力学,第14章の測定,第21・23章の回路,第25・27章の波と光を使います.最後は最適方向,波の広がり,遅れ,共振を調べます.

総合演習 13

東京大 2001 後期(改題) ★★★★★

捕獲後の軌道と衝突熱

半径 R,質量 M の球形天体のまわりを,質量 m の宇宙機が半径 r0>R の円軌道で回ります.反動,空気抵抗,破片との相互重力を無視します.円軌道の速さを v0,外向き・進行方向の単位ベクトルを er,et とします.質量 ηm の破片が速度 u=v0(−aer+bet) で衝突して付着します.a,η>0,衝突時間は短いとします.

  1. v0,衝突後の速度,単位質量あたりの軌道エネルギー ϵ と角運動量 h を求めよ.A=ηa/(1+η),B=(1+ηb)/(1+η)>0 とする.

  2. 束縛軌道の条件と近点・遠点距離を求めよ.保存則から半径方向速度0の位置の方程式を導き,天体に衝突しない条件も示せ.

  3. 衝突のエネルギー損失を求めよ.η=0.10,a=0.60,b=−0.80,r0=2R,R=6.0×106m,GM=3.6×1014m3s−2 で,軌道の安全性と損失の宇宙機の初運動エネルギー比を求めよ.

  4. この小問では入射方向の制限 a>0 を外し,破片の速度を自由に選べるものとします.捕獲で脱出させる最小の破片速度と最適方向を求めよ.η→0 の極限も説明せよ.

半径R,質量Mの天体を,質量mの宇宙機が半径r0の円軌道で回る.宇宙機の速さv0,外向きer,進行方向etを示す.破片の質量はηm,入射速度はu=v0(−a er+b et).矢印の向きは小問 (3) のb=−0.80の場合である. 半径R,質量Mの天体を,質量mの宇宙機が半径r0の円軌道で回る.宇宙機の速さv0,外向きer,進行方向etを示す.破片の質量はηm,入射速度はu=v0(−a er+b et).矢印の向きは小問 (3) のb=−0.80の場合である.
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考え方

衝突では運動量,その後は中心力の保存則を使う.

  1. 向心力から v02=GM/r0.天体の力積を無視して

v+=mv0et+ηmum(1+η)=v0(−Aer+Bet),ϵ=v022(A2+B2−2),h=r0v0B.

衝突点は転回点ではない.

  1. χ=2−A2−B2>0 が束縛条件.接線速度は h/r なので

ϵ=12(drdt)2+h22r2−GMr.

drdt=0,z=r/r0 を代入して χz2−2z+B2=0.従って

e=1−χB2,rp=r0(1−e)χ=r0B21+e,ra=r0(1+e)χ.

判別式は (1−B2)2+A2B2≥0.初め近点へ進む.非接触条件は rp>R.

  1. 重力位置エネルギーは不変で,相対運動の損失は

Qh=12mη1+η|v0et−u|2=mηv022(1+η)[a2+(b−1)2].

数値は v0=5.5×103ms−1,A=0.0545,B=0.836,e=0.304,rp=0.536r0=1.07R で衝突を免れる.損失の比は

Qhmv02/2=η1+η[a2+(b−1)2]=0.33.

軌道の安全性と内部損傷は別である.

  1. 破片の速さを u とすると |v+|≤(v0+ηu)/(1+η).等号は同じ進行方向から追い付く場合.脱出速度 2v0 に達する最小値は

umin=2(1+η)−1ηv0.

衝突点が近点の放物線軌道となる.数値は umin≃3.0×104ms−1.η→0 では (2−1)v0/η と発散するが,極端には u/c が小さいという条件が破れる.衝突時間と周期の比,物体寸法と r0 の比も十分小さいことを要する.

総合演習 14

東京大 2003 後期(改題) ★★★★★

虹の明るい縁と光の広がり

半径 a,屈折率 1<n<2 の透明球へ,空気中から平行な単色光を入射させます.入射角・屈折角を θ1,θ2,中心軸からの入射距離を b=asin⁡θ1 とします.球内で1回反射して出る光だけを考え,入射方向からの偏角を D,反太陽方向からの角距離を ρ=π−D とします.経路の割合 w は一定とし,吸収を無視します.入射強度 Iin は一様です.

  1. スネルの法則と幾何から D=π+2θ1−4θ2 を導き,最小偏角の入射角と角半径 ρ∗ を求めよ.

  2. n=1.330,1.340 の各 ρ∗ を求め,どちらの色が外側か説明せよ.

  3. 最小偏角の近くで D−D∗≃K(θ1−θ1∗)2/2 とする.K と,D∗<D<D∗+δ へ出る光量の入射光量 πa2Iin に対する比を求めよ.角度分布が発散しても積分は有限と示せ.

  4. 波動による角度の広がりを,本問では δw∼(λ/a)2/3 という見積もりを使ってよい.a=0.50mm,λ=550nm で2色の角半径の差と比べよ.(3)を δ=10−3rad まで使えるか検討せよ.

半径a,屈折率nの透明球へ平行光が入射する.中心軸から入射光までの距離b,入射点の法線に対する入射角θ1と屈折角θ2を示す.光線は球内で1回反射して出射し,矢印が進行方向を表す. 半径a,屈折率nの透明球へ平行光が入射する.中心軸から入射光までの距離b,入射点の法線に対する入射角θ1と屈折角θ2を示す.光線は球内で1回反射して出射し,矢印が進行方向を表す.
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考え方

方向変化の停留点を探し,入射面積から光量を数える.

  1. 入射・出射でそれぞれ θ1−θ2,内部反射で π−2θ2 だけ向きが変わるので,合計が指定の D.sin⁡θ1=nsin⁡θ2 から

q=dθ2dθ1=cos⁡θ1ncos⁡θ2,dDdθ1=2−4q.

停留点の q=1/2 をスネルの法則と合わせると

sin2⁡θ1∗=4−n23,θ2∗=arcsin⁡sin⁡θ1∗n,ρ∗=4θ2∗−2θ1∗.

q は入射角とともに 1/n から0へ減るため,唯一の最小である.

  1. 代入すると n=1.330 で ρ∗=42.52∘,1.340 で 41.07∘.屈折率の小さい色が外側へ来る.

  2. dqdθ1=q(−tan⁡θ1+qtan⁡θ2) より

K=−4dqdθ1∫|∗=2tan⁡θ1∗−tan⁡θ2∗=32tan⁡θ1∗>0.

角度帯に対応する入射角は θ1∗±Δθ1,Δθ1=2δ/K.入射光の環状面積から

dP=2πwIinbdb=2πwIina2sin⁡θ1cos⁡θ1dθ1.

両側の寄与を積分して

Pδπa2Iin≃4wsin⁡θ1∗cos⁡θ1∗2δK.

微分した角度分布は (D−D∗)−1/2 に比例するが,積分は δ に比例し,有限である.光の集中が縁を明るくする.

  1. δw∼(550×10−9/(0.50×10−3))2/3=1.1×10−2rad.2色の差 1.45∘=2.52×10−2rad はこれより大きく,この模型では縁を分けられる.ただし δ=10−3rad は広がりより小さいので(3)の定量計算には使えない.幾何光学には λ/a が十分小さく,縁では δ≫δw も必要.二次展開には 2δ/K が十分小さく,範囲の端から離れることを要する.

総合演習 15

東京大 2005 後期(改題) ★★★★☆

往復する音源の位相と周波数

静かな空気中で点音源を xs(s)=Acos⁡Ωs に従って往復させます.s は発音時刻で,音源は一定振動数 f0 で鳴ります.観測点は x=D>A,受信時刻は t です.音速を v,β=AΩ/v<1 とします.反射,風,非線形性と反作用を無視し,外部装置で動かします.

  1. 両時刻を関係付け,位相 2πf0s から観測振動数を求めよ.最大・最小と変調の周期も示せ.

  2. 位相を 2πf0[t−(D−xs(t))/v] とする誤りを説明せよ.β の1次までの正しい振動数を求め,この置き換えの振幅・位相の誤差を示せ.v=340ms−1,D=17.0m,Ω=5πs−1 で位相誤差も求めよ.

  3. β→1 で最大振動数が大きくなる理由を波面の到達間隔から説明し,β>1 へ単純に延長できるか述べよ.

音源はxs(s)=A cos Ωsに従い−AからAの間を往復し,一定振動数f0で鳴る.発音時刻sの音源位置xs(s)と,D>Aにある観測点を示す.音速はvで,寸法線は発音位置から観測点までの伝播距離を表す. 音源はxs(s)=A cos Ωsに従い−AからAの間を往復し,一定振動数f0で鳴る.発音時刻sの音源位置xs(s)と,D>Aにある観測点を示す.音速はvで,寸法線は発音位置から観測点までの伝播距離を表す.
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考え方

到達時間を発音時刻で微分して周波数を求める.

  1. 伝播距離から

t=s+D−Acos⁡Ωsv,dtds=1+βsin⁡Ωs>0,fobs=12πddt(2πf0s)=f01+βsin⁡Ωs.

最大は f+=f0/(1−β),最小は f−=f0/(1+β).Ts=2π/Ω とすれば t(s+Ts)=t(s)+Ts,周期も Ts.

  1. 誤りは受信時刻の位置を使う点である.τ=t−D/v とおけば s=τ+(A/v)cos⁡Ωs.β の1次まで

s≃τ+Avcos⁡Ωτ,fobs≃f0[1−βsin⁡Ω(t−D/v)].

誤った式の微分は f0(1−βsin⁡Ωt).1次の振幅は一致するが,位相を ΩD/v=π/4 誤る.有限の β では極値の分母 1∓β と,誤った極値 f0(1±β) の差が2次から現れる.

  1. 発音間隔 ds に対し dt=(1−x˙s/v)ds,ここで x˙s=dxsds.音速へ近づくと間隔が縮む.β=1 では一部で微分が0になり,β>1 では負の区間が生じ,発音時刻が多価となる.波面が重なるため,一価の周波数にはできない.1次展開には β が十分小さく,遅れを捨てるには ΩD/v も十分小さいことを要する.音波の線形近似には圧力変動と静圧の比も小さいことを要する.

総合演習 16

東京大 2007 後期(改題) ★★★★☆

自由振動から回路を決め,共振を予測

容量 C のコンデンサーを,電圧 Vb=4.00V の電源で十分充電し,電源を外して抵抗 R,自己インダクタンス L=0.100H のコイルとコンデンサーだけの直列回路へ切り替えます.この時を t=0,コイルの初期電流を0とします.素子は線形で,抵抗だけが散逸し,放電向きを電流 I の正方向,最初に正だった極板の電荷を q,電位差を VC=q/C とします.

  1. 切り替え後の方程式を立て,弱減衰の q(t),I(t) を,複素指数関数 est と初期条件から求めよ.

  2. 次の正の山から R,C を推定し,3点目を照合せよ.初電荷と全発熱も求めよ.

山の時刻(s)

VC(V)

0

4.000

0.006315

2.127

0.012630

1.131

  1. 同じ回路を Va(t)=V0cos⁡ωt,V0=2.00V の電源で駆動する.複素インピーダンスで定常電流と平均電力を求めよ.電流振幅最大の角振動数を求めよ.

  2. コンデンサー電圧振幅が最大の角振動数と振幅を求め,自由振動および電流共振と比較せよ.

上段は充電後に電源を外した抵抗R,コイルL,コンデンサーCの直列放電回路である.最初に正だった極板の電荷q,電位差VC,放電向きを正とする電流Iを示す.下段は同じ素子を交流電源Va(t)=V0 cos ωtで駆動する配置で,電流と電荷の符号の対応を保つ. 上段は充電後に電源を外した抵抗R,コイルL,コンデンサーCの直列放電回路である.最初に正だった極板の電荷q,電位差VC,放電向きを正とする電流Iを示す.下段は同じ素子を交流電源Va(t)=V0 cos ωtで駆動する配置で,電流と電荷の符号の対応を保つ.
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考え方

減衰と周期を測定から求め,線形回路の複素振幅で応答を予測する.

  1. I=−dqdt なので Ld2qdt2+Rdqdt+q/C=0.est を代入して Ls2+Rs+1/C=0.α=R/(2L),ω0=1/LC とすれば s=−α±iωd,ωd=ω02−α2.α<ω0 で複素解の実部を取り,q0=CVb,dqdt(0)=0 を使うと

q=q0e−αt(cos⁡ωdt+αωdsin⁡ωdt),I=q0ω02ωde−αtsin⁡ωdt.
  1. 電圧極大では I=0.正の山の間隔 Td=2π/ωd,比 e−αTd から

ωd=2π0.006315s=9.95×102s−1,α=−ln⁡(2.127/4.000)0.006315s=1.00×102s−1.

R=2Lα=20.0Ω,C=1/[L(ωd2+α2)]=1.00×10−5F.次の山は 4.000(2.127/4.000)2V=1.131V と一致する.q0=CVb=4.00×10−5C,Qd=CVb2/2=8.00×10−5J.dqdt を掛ければ ddt(LI2/2+q2/(2C))=−RI2 より,全エネルギーが熱になる.

  1. 電圧と電流を V^eiωt,I^eiωt の実部とし,V^=V0 と選ぶ.

Z=R+iωL+1iωC=R+iX,X=ωL−1ωC,I^=V0/Z.

従って I(t)=Re⁡(I^eiωt),⟨P⟩=R|I^|2/2=RV02/[2(R2+X2)].電流最大は X=0 の ωI=ω0=1.00×103s−1.

  1. V^C=I^/(iωC) から

|V^C|=V0(1−LCω2)2+(RCω)2.

分母の2乗の微分は 2ω[−2LC(1−LCω2)+R2C2] だから

ωC=ω02−2α2=9.90×102s−1<ωd<ωI.

最大電圧振幅は VC,max=V0ω02/(2αωd).測定値から求めた丸め前の R,C を使うと 10.0V となる.非零の電圧共振には ω02>2α2 が必要.集中定数近似には回路寸法 ℓc に対し ωℓc/c が十分小さく,温度による抵抗の相対変化も十分小さいことを要する.