問いしるべ
問いから始める物理 確率振幅から組み立てる量子力学(発展)

確率振幅から組み立てる量子力学(発展)

2状態系の準位と遷移の演習

著者:柚木芹香

準位の分裂と確率の振動を結びつけましょう.直交基底 |1⟩,|2⟩ の振幅列 C=(C1C2) は iℏdCdt=HC を満たします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

2地点間を行き来する模型を H=(E0−A−AE0),A>0 とします.

  1. (11) と (1−1) に行列を掛け,エネルギーと規格化した定常状態を求めよ.

  2. |1⟩ から出発したときの P2 と,最初の完全移行時刻を求めよ.

場所1,2に対応する直交基底|1⟩,|2⟩を示す.各対角成分はE₀で,2地点の結合は−Aである.固有準位と遷移時刻は描かない. 場所1,2に対応する直交基底|1⟩,|2⟩を示す.各対角成分はE₀で,2地点の結合は−Aである.固有準位と遷移時刻は描かない.
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考え方 定常状態に分け,位相を付けて基底へ戻す.

  1. 行列を掛けるとそれぞれ (E0−A)(11),(E0+A)(1−1).したがって |s⟩=(|1⟩+|2⟩)/2 のエネルギーは E0−A,|a⟩=(|1⟩−|2⟩)/2 は E0+A である.

  2. |1⟩=(|s⟩+|a⟩)/2 より

|ψ(t)⟩=e−iE0t/ℏ[cos⁡(At/ℏ)|1⟩+isin⁡(At/ℏ)|2⟩]

よって P2=sin2⁡(At/ℏ),最初の完全移行は t=πℏ/(2A).確率の往復周期は πℏ/A で,A→0 では行き来が消える.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

外場中で反転する分子の行列は H=(E0+δ−A−AE0−δ),A>0,δ は実数です.

  1. 行列式から準位とその間隔を求めよ.

  2. 下の定常状態の振幅比 C2/C1 を求めよ.δ>0 でどちらの場所の確率が大きいか.

  3. |δ|/A が十分小さい場合の準位間隔を2次まで求めよ.1+x≈1+x/2 を使ってよいとします.

外場中の2基底の対角成分E₀+δ,E₀−δと結合−Aを同じ高さの箱に示す.δの符号に応じた準位の大小は描かない. 外場中の2基底の対角成分E₀+δ,E₀−δと結合−Aを同じ高さの箱に示す.δの符号に応じた準位の大小は描かない.
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考え方 対角差と結合を含めて固有値を求める.

  1. det⁡(H−EI)=(E0−E)2−δ2−A2=0 なので,D=A2+δ2 とおけば E=E0±D.準位間隔は 2D≥2A,外場で広がる.I は単位行列である.

  2. 下の準位では (δ+D)C1−AC2=0 より r=C2/C1=(δ+D)/A.δ>0 なら r>1 なので場所2の確率が大きい.

  3. 2D=2A1+δ2/A2≈2A+δ2/A.2次の補正に対する捨てた項の比は δ2/A2 程度で,1≫|δ|/A が必要である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

未知の2状態系で H=(δ−A−A−δ),A>0,δ≥0 とします.|1⟩ から出発したとき,P2 の最初の最大は tm=2.0×10−11s,最大値が Pm=0.64 でした.ℏ=1.05×10−34Js とします.

  1. D=A2+δ2 とおき,連立方程式から P2(t) を導け.

  2. 測定値から A,δ を推定せよ.最大値が1未満なのは A が小さいためか.

P₂対tの座標に初期点(0,0)と,測定された最初の最大t_m=2.0×10⁻¹¹ s,P_m=0.64を示す.測定点を結ぶ曲線は描かない. P₂対tの座標に初期点(0,0)と,測定された最初の最大t_m=2.0×10⁻¹¹ s,P_m=0.64を示す.測定点を結ぶ曲線は描かない.
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考え方 周期と最大値から2つの未知量を決める.

  1. iℏdC1dt=δC1−AC2,iℏdC2dt=−AC1−δC2.後式を微分すると iℏd2C2dt2=−AdC1dt−δdC2dt.両式を代入して −ℏ2d2C2dt2=(A2+δ2)C2.初期条件は C2(0)=0,dC2dt(0)=iA/ℏ なので C2=i(A/D)sin⁡(Dt/ℏ),P2=(A2/D2)sin2⁡(Dt/ℏ).

  2. Dtm/ℏ=π/2 より D=πℏ/(2tm)≈8.25×10−24J.丸める前の D を用いて,A=DPm≈6.6×10−24J,δ=D1−Pm≈4.9×10−24J.δ=0 なら,A は周期だけを変える.P1+P2=1 であり,粒子は失われていない.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

水素分子イオンを,電子の左右の局在を表す直交基底で模型化します.距離 R>0,x=e−R/a とし,電子の行列を

H(R)=(E0+2A0x2−A0x−A0xE0+2A0x2)

とします.正の対角項は短距離の反発です.A0=8.0eV,a=8.0×10−11m とします.電子は下の定常状態です.

  1. 下の準位と平衡距離の有無を求めよ.

  2. 平衡距離と結合エネルギーを数値で求めよ.分離した極限を基準とします.上の準位にも極小はあるか.

距離Rの2陽子と左右に局在する電子基底を示す.対角成分E₀+2A₀x²,反発項2A₀x²,結合−A₀x,x=e^{−R/a}は問題で与えられた成分である. 距離Rの2陽子と左右に局在する電子基底を示す.対角成分E₀+2A₀x²,反発項2A₀x²,結合−A₀x,x=e^{−R/a}は問題で与えられた成分である.
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考え方 下の準位を核間距離のポテンシャルとして調べる.

  1. 対称な状態のエネルギーは E−=E0+2A0x2−A0x.dxdR=−x/a より dE−dR=(A0/a)x(1−4x).停留点は e−R/a=1/4,Re=aln⁡4.そこで d2E−dR2=A0/(4a2)>0 なので安定である.

  2. Re≈1.1×10−10m,E−(Re)−E0=A0/8−A0/4=−A0/8.結合エネルギーは正の 1.0eV.上の準位は E+=E0+2A0x2+A0x,dE+dR=−(A0/a)x(4x+1)<0 で,極小はない.遠方で両準位は E0 に戻る.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

静磁場に回転する磁場を加えたスピン1/2の模型を,基底 |+⟩,|−⟩ で

H(t)=(−ℏω0/2geiωtge−iωtℏω0/2)

とします.g>0,ω0>0 は定数,g はエネルギーの次元を持ちます.t=0 に |+⟩ から出発します.

  1. C+=eiωt/2a,C−=e−iωt/2b と変数を変え,行列を求めよ.

  2. Δ=ω−ω0,Ω=Δ2+4g2/ℏ2 とおき,− にある確率を求めよ.

  3. 共鳴時の最初の完全移行時刻を求めよ.|Δ|=2g/ℏ での最大確率も求めよ.

時刻0の|+⟩を,静磁場とそれに垂直な面で回転する磁場の領域へ入れる.磁場を緑の矢印で示し,回転の角振動数ωとz方向の分析を付す. 時刻0の|+⟩を,静磁場とそれに垂直な面で回転する磁場の領域へ入れる.磁場を緑の矢印で示し,回転の角振動数ωとz方向の分析を付す.
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考え方 回転する位相を変数に吸収する.

  1. 代入すると iℏdadt=ℏΔa/2+gb,iℏdbdt=ga−ℏΔb/2.行列は H′=(ℏΔ/2gg−ℏΔ/2) である.

  2. H′2=ℏ2Ω2I/4 より d2bdt2=−Ω2b/4.b(0)=0,dbdt(0)=−ig/ℏ なので b=−2igsin⁡(Ωt/2)/(ℏΩ).位相の絶対値は1なので

P−=4g2ℏ2Ω2sin2⁡(Ωt/2)
  1. 共鳴では Δ=0,P−=sin2⁡(gt/ℏ),最初の完全移行は πℏ/(2g).指定のずれでは Ω2=8g2/ℏ2 なので最大値は 1/2.この行列に対して厳密で,gt/ℏ の小ささは不要である.g=0 なら遷移は起こらず,g/ℏ の次元は角振動数である.

ポイント 教える人へ

  • 基底と定常状態,周期と移行時刻を区別させます.

  • 対角差が最大確率にどう現れるか問います.

  • 周期と振幅から模型を決めさせます.

  • 完全移行の条件と模型の限界を問います.