鉛直投げ上げ
地面から初速度 𝑣0 で真上に投げた物体を考えます.最高点では,上昇から下降に変わる瞬間に速度が0になります.𝑣 =𝑣0 −𝑔𝑡 =0 より,最高点に達する時刻は
𝑡1=𝑣0𝑔
です.最高点の高さは 𝑦 =𝑣0𝑡1 −12𝑔𝑡21 =𝑣202𝑔.これは3つ目の式で 𝑣 =0 とおいても得られます.地面に戻る時刻は 𝑦 =0 より 𝑣0𝑡 −12𝑔𝑡2 =𝑡(𝑣0 −12𝑔𝑡) =0 で 𝑡2 =2𝑣0/𝑔,最高点に達する時刻のちょうど2倍です.戻ってきたときの速度は 𝑣0 −𝑔 ⋅2𝑣0/𝑔 = −𝑣0 で,大きさは初速度と同じです.
数値で確かめます.𝑣0 =9.8 ms−1 で投げると,最高点まで1.0 s,最高点の高さは 9.822×9.8 =4.9 m,地面に戻るのは2.0 s後です.
同じ高さを通るときの速さは,上りでも下りでも等しくなります.3つ目の式は 𝑣2 =𝑣20 −2𝑔(𝑦 −𝑦0) の形で,時間が入らず,高さ 𝑦 だけで 𝑣2 が決まるからです.速度の向きだけが逆になります.v-tグラフでは,上りの正の面積と下りの負の面積が打ち消し合うので,地面に戻ったときの変位は0です.
ポイント 数学の道具:2次方程式の解の選び方
この節に新しい公式は出てきません.積分で式を作り,あとは2次方程式を解くだけです.注意すべきは解の選び方です.例えば 𝑦 =ℎ となる時刻を求める式は 𝑡 の2次式で,解が2つ出ます.地面から投げ上げた物体は,0 <ℎ <𝑣20/(2𝑔) の高さなら上りと下りで ℎ を2度通るので,2つとも意味があります.ℎ =𝑣20/(2𝑔)(最高点)では解は1つ(重解)で,ℎ >𝑣20/(2𝑔) では実数解がなく,その高さには届きません.落下時間のように,負の解や条件に合わない解は捨てます.
2次方程式 𝐴𝑡2 +𝐵𝑡 +𝐶 =0(𝐴 ≠0)の解は 𝑡 =−𝐵±√𝐵2−4𝐴𝐶2𝐴 で,判別式 𝐵2 −4𝐴𝐶 が正なら2つ,0なら1つ(重解),負なら実数の解はありません.
練習. 地面から初速度 14 ms−1 で真上にボールを投げる(𝑔 =9.8 ms−2).(1) 高さ 5.0 m を通る時刻をすべて求め,それぞれ上りか下りかを答えよ.(2) 高さ 12 m を通るか,判別式で調べよ.(3) 高さ 10 m を通る時刻を求めよ.
答え:(1) 14𝑡 −4.9𝑡2 =5.0 より 4.9𝑡2 −14𝑡 +5.0 =0.𝑡 =14±√196−989.8 =14±9.909.8 で,𝑡 ≈0.42 s(上り)と 2.4 s(下り).(2) 4.9𝑡2 −14𝑡 +12 =0 の判別式は 196 −235.2 <0 なので通らない(最高点は 142/(2 ×9.8) =10 m).(3) 判別式が 196 −196 =0 で重解 𝑡 =14/9.8 ≈1.4 s.ちょうど最高点である.
重力加速度の測り方
𝑔 はどのように測るのでしょうか.最も素朴な方法は,高さ ℎ から物体を静かに落とし,落下にかかる時間 𝑡 を測ることです.ℎ =12𝑔𝑡2 より
𝑔=2ℎ𝑡2
です.ところが時間の測定は誤差が大きく,高さ1.0 mなら落下時間は約0.45 sで,0.01 sの誤差は約 2 % です.𝑔 は 𝑡2 に反比例するので,𝑔 の誤差はその2倍の約 4 % になります.そこで,いくつかの高さ ℎ について時間を測り,ℎ を縦軸,𝑡2 を横軸にとってグラフにします.点が原点を通る直線に並べば等加速度の確認になり,傾きが 𝑔/2 です.誤差が平均されて,よい値が得られます.
例題
地面から真上に,初速度 𝑣0 でボールを投げた.空気の抵抗は無視できる.(1) 最高点の高さと,そこに達する時刻を求めよ.(2) 最高点の高さの 34 の高さを通る時刻を,𝑣0 と 𝑔 で表せ.(3) 𝑣0 =19.6 ms−1,𝑔 =9.8 ms−2 のとき,(1),(2) の数値を求めよ.
[図:地面からの投げ上げ]地面から鉛直上向きの初速度v₀でボールを投げる.重力加速度gを示す.
解答を見る
考え方 鉛直上向きを正にとり,𝑎 = −𝑔 として式を立てる.最高点では速度が0.高さを指定された時刻は2次方程式の2つの解になる.
𝑣 =𝑣0 −𝑔𝑡 =0 より 𝑡1 =𝑣0/𝑔.高さは 𝐻 =𝑣202𝑔.
34𝐻 =3𝑣208𝑔 とおくと,𝑣0𝑡 −12𝑔𝑡2 =3𝑣208𝑔.𝑡 =𝜏𝑣0/𝑔 と置いて整理すると 𝜏 −12𝜏2 =38,すなわち 𝜏2 −2𝜏 +34 =0.これは (𝜏 −12)(𝜏 −32) =0 と因数分解でき,𝜏 =12, 32 である.よって 𝑡 =𝑣02𝑔 と 3𝑣02𝑔.前者は上りの途中,後者は下りの途中である.
数値を直接代入する.𝑡1 =19.6ms−19.8ms−2 =2.0 s,𝐻 =(19.6ms−1)22×9.8ms−2 =19.6 m.(2) の時刻は 𝑣02𝑔 =1.0 s と 3𝑣02𝑔 =3.0 s,そのときの高さは 34𝐻 =14.7 m.
橋の上から石を静かに放したところ,3.0 s後に水面に着いた.空気の抵抗と音の伝わる時間は無視する.(1) 橋の高さ (2) 水面に着く直前の速さ (3) 着水までの最後の1.0 sに落ちる距離を求めよ.
[図:橋から放す石]橋から石を静かに放す.着水まで3.0 sであることだけを示す.
解答を見る
考え方 落下を「放した点から測った距離」で表し,その時刻の値を引き算する.
鉛直下向きを正にとると,放した点からの落下距離は 𝑦 =12𝑔𝑡2,速度は 𝑣 =𝑔𝑡 である.
ℎ =12 ×9.8 ms−2 ×(3.0 s)2 =44.1 m.有効数字2桁で約 44 m.
𝑣 =9.8 ms−2 ×3.0 s =29.4 ms−1.約 29 ms−1.
2.0 sまでの落下距離は 12 ×9.8 ×(2.0)2 =19.6 m.最後の1.0 sに落ちる距離は 44.1 −19.6 =24.5 m.約 25 m.
質量の違う2つの球を,同じ高さ ℎ から同時に静かに放す.また,高さ ℎ と高さ 4ℎ から,同じ球を静かに放す.空気の抵抗は無視する.(1) 2つの球の落下時間と着地速度を比べよ.(2) 高さ ℎ と 4ℎ から放したときの,落下時間の比と着地速度の比を求めよ.
[図:高さと質量を変えた落下]同じ高さの異なる質量の球と,高さhと4hの同じ球を並べる.落下後の位置は示さない.
解答を見る
考え方 自由落下の加速度は質量によらない.落下時間は 𝑡 =√2ℎ/𝑔,着地速度は 𝑣 =√2𝑔ℎ である.
式 ℎ =12𝑔𝑡2,𝑣 =𝑔𝑡 のどこにも質量が入らないので,2つの球は同時に着地し,速さも等しい.
高さ ℎ のとき 𝑡 =√2ℎ/𝑔,4ℎ のとき √8ℎ/𝑔 =2√2ℎ/𝑔 なので,落下時間の比は 1 :2.着地速度も √2𝑔ℎ と √8𝑔ℎ =2√2𝑔ℎ で比は 1 :2 である.
ポイント ここまでのまとめ
鉛直投げ上げは,上向きを正にとって 𝑎 = −𝑔 とおく.最高点は 𝑣 =0 より 𝑡1 =𝑣0/𝑔,高さは 𝑣20/(2𝑔),地面に戻る時刻は 2𝑣0/𝑔 で,戻るときの速さは初速度と同じである.
高さを指定された時刻は2次方程式の解で,地面から投げ上げて最高点より低い高さ(0 <ℎ <𝑣20/(2𝑔))なら2つあり,上りと下りに対応する.最高点では重解,それより高い所には届かない.落下時間を求めるときは,条件に合わない解を捨てる.
落下は放した点からの距離で表し,時刻ごとの値を引き算すると区間の距離が出る.
重力加速度は 𝑔 =2ℎ/𝑡2 で測れる.いくつかの高さで ℎ を 𝑡2 に対してグラフにすると,傾きが 𝑔/2 になる.