問いしるべ
問いから始める物理 運動を記述する

運動を記述する

等加速度運動と自由落下の演習

著者:柚木芹香

まず座標軸の向きを決めて,符号を書いてから式を立ててください.等加速度運動の3つの式のうち,聞かれていない量が入らない式を選ぶと,計算が短くなります.

演習

演習 1

オリジナル ★★☆☆☆

斜面上で静止していた球を放し,水時計の水が流れ出た重さ w で時間を測った.水は毎秒 20g の割合で流れ出る.w=10,20,30,40g の時刻の球の位置は,出発点から順に 5,20,45,80cm だった.(1) 球は等加速度運動をしていると考えてよいか,理由とともに答えよ.(2) 加速度の大きさを求めよ.

斜面の出発点からの測定位置と,毎秒20 gずつ流出する水時計を示す. 斜面の出発点からの測定位置と,毎秒20 gずつ流出する水時計を示す.
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考え方 等加速度で静止から出発するなら x=12at2 なので,x は t2 に比例し,時間は w に比例する.x/w2 が一定かを調べる.

  1. x/w2 は 5/100=0.05,20/400=0.05,45/900=0.05,80/1600=0.05cmg−2 と一定である.x が w2,つまり t2 に比例するので,等加速度運動と考えてよい.隣り合う区間の距離も 5,15,25,35cm で,1:3:5:7 に並ぶ.

  2. w=10g は t=10/20=0.50s に当たる.x=0.05m より,a=2xt2=2×0.050.25=0.40ms−2.自由落下の加速度のおよそ4 %で,球の動きは自由落下よりずっとゆっくりである.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

高さ 44.1m のビルの屋上から,石Aを静かに放した.その1.0 s後に,同じ点から石Bを初速度 v0 で真下に投げ下ろしたところ,AとBは同時に地面に着いた.空気の抵抗は無視する.(1) v0 を求めよ.(2) 地面に着く直前のA,Bの速さを求めよ.

同じ高さ44.1 mからAを静かに放し,1.0 s後にBを下向きの初速度v₀で投げる. 同じ高さ44.1 mからAを静かに放し,1.0 s後にBを下向きの初速度v₀で投げる.
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考え方 Aの落下時間から着地時刻を出し,Bはその1.0 s前から動いているとして立式する.鉛直下向きを正にとる.

  1. Aは 44.1=12gtA2 より tA=3.0s で着く.Bの落下時間は tB=3.0−1.0=2.0s.Bについて 44.1=v0⋅2.0+12g(2.0)2=2v0+19.6 なので,v0=12.25ms−1,約 12ms−1.

  2. A:vA=gtA=29.4ms−1.B:vB=v0+gtB=12.25+19.6=31.85ms−1.約 29ms−1 と 32ms−1 で,後から投げたBのほうが少し速い.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

高さ H=40m の位置から球Pを静かに放すと同時に,真下の地面から球Qを初速度 v0=20ms−1 で真上に投げた.(1) PとQが出会う時刻と高さを求めよ.(2) PとQが空中で出会うために,v0 が満たすべき条件を求めよ.

高さHの球Pを静かに放すと同時に,真下の地面から球Qを上向きに投げる. 高さHの球Pを静かに放すと同時に,真下の地面から球Qを上向きに投げる.
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考え方 2つの球の高さを同じ時刻で等しいとおく.重力の項は共通なので打ち消し合う.

  1. 上向きを正とし,地面を原点にとる.Pの高さは yP=H−12gt2,Qの高さは yQ=v0t−12gt2.yP=yQ とおくと 12gt2 が消えて H=v0t となり,出会う時刻は t=H/v0=2.0s.高さは y=40−12⋅9.8⋅4.0=40−19.6=20.4m.

  2. 出会う高さが0以上であればよい.y=H−gH22v02≥0 より v02≥gH2,v0≥gH/2.H=40m なら v0≥196=14ms−1.出会う時刻が g によらないのは,Qから見るとPが一定の速さ v0 で近づいてくるからである(相対運動はこの章の「相対運動」の節で扱う).

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

深い井戸の口から石を静かに落としたところ,落としてから3.0 s後に水面に当たる音が聞こえた.空気の抵抗を無視し,音の速さを V=340ms−1 とする.井戸の深さ h を求めよ.また,音の伝わる時間を無視した場合の値と比べよ.

井戸の口から落とす石と,水面から口へ伝わる音を示す.深さをhとする. 井戸の口から落とす石と,水面から口へ伝わる音を示す.深さをhとする.
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考え方 音が聞こえるまでの時間は,石が落ちる時間 t1 と,音が上ってくる時間 h/V の和である.t1 について2次方程式を立てる.

石の落下は h=12gt12,音が上る時間は h/V.合計が T=3.0s なので

t1+gt122V=T

である.数値を入れて整理すると 4.9t12+340t1−1020=0.解の公式より

t1=−340+3402+4×4.9×10202×4.9=−340+1355929.8≈−340+368.29.8≈2.88s

である(負の解は捨てる).深さは h=12⋅9.8⋅2.882≈40.7m,有効数字2桁で約 41m.音が上る時間は 40.7/340≈0.12s である.

音の時間を無視すると h=44.1m となり,約 8 % 大きく見積もる.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

一定の加速度 1.0ms−2 で上昇を始めたエレベーターの,床から天井までの高さは 2.4m である.出発してから2.0 s後に,天井からボルトが外れて落ち始めた.ボルトは外れた瞬間に,エレベーターと同じ速度で上向きに動いていたものとして,地上に固定した座標系で次を求めよ.(1) ボルトが床に着くまでの時間 (2) その間のボルトの変位と道のり

高さ2.4 mのエレベーターで,天井のボルトが外れる瞬間を示す.ボルトは上向きの速度を引き継ぐ. 高さ2.4 mのエレベーターで,天井のボルトが外れる瞬間を示す.ボルトは上向きの速度を引き継ぐ.
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考え方 外れた瞬間を時刻0とし,その時刻の床の位置を原点にとる.ボルトは加速度 −g の運動,床は加速度 +1.0ms−2 の運動をする.

外れた瞬間のエレベーターの速度は u=1.0×2.0=2.0ms−1(上向き)である.上向きを正にとる.

  1. 床の高さは yF=ut+12(1.0)t2,ボルトの高さは yB=2.4+ut−12gt2.ボルトが床に着くのは yB=yF のときで,u の項が消えて

2.4=12(g+1.0)t2

となる.g+1.0=10.8ms−2 を用いると,t2=4.810.8=49,t=23s≈0.67s.

  1. 変位は ut−12gt2=2.0⋅23−4.9⋅49≈1.333−2.178=−0.84m,すなわち下向きに 0.84m である.ボルトは初め上向きに動くので,最高点までの時間 u/g≈0.20s は 23s より短く,いったん上がってから落ちる.上昇する高さは u22g≈0.204m.最高点から終点まで下がる距離は 0.204+0.84≈1.05m.道のりは 0.204+1.05≈1.25m,約 1.3m である.

床が上がってくるぶん,中の人にはボルトの落下の加速度が g+1.0ms−2 に見える(相対運動はこの章の「相対運動」の節で扱う).

ポイント 教える人へ

  • 問いかけ:「時計がないとき,何を比べれば等加速度だと言えるか」と聞く.時間そのものでなく時間の比で足りること,距離の比が 1:3:5:7 になることに気づくかを見る.

  • つまずき:符号である.上向きを正にとったら a=−g になること,最高点で0になるのは速度だけで加速度は −g のままであることを,式と図で確認させる.

  • 2次方程式の解:高さを指定された時刻が2つ出る理由を「上りと下りで2度通る」と説明させ,落下時間で負の解を捨てる理由も問う.

  • 理解の確かめ:「2倍の高さから落とすと,落下時間は何倍か」を式を書かずに答えさせる.2 倍と答えられれば t∝h が分かっている.