問いしるべ
問いから始める物理 物理の見方

物理の見方

単位と次元の演習

著者:柚木芹香

単位の換算と,次元による検算・式の形の予想を練習します.式を立てる前に,各量の次元を L,M,T で書き出す習慣をつけてください.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

次の換算をせよ.(a) 108km/h を ms−1 で.(b) 1.00gcm−3 を kgm−3 で.(c) 1kWh を J で.(d) 光が1年(3.16×107s)に進む距離を m で(光速 3.00×108ms−1).

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考え方 1に等しい比を掛ける.

(a) 108×1000/3600=30ms−1.(b) 1.00g=10−3kg,1cm3=10−6m3 だから 10−3/10−6=1.00×103kgm−3.(c) 1kWh=1000W×3600s=3.6×106J.(d) 3.00×108×3.16×107≈9.48×1015m(およそ 9.5×1015m).

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

次の式のうち,次元が合わないものはどれか.理由も述べよ.ただし x は位置,v, v0 は速さ,a は加速度,t は時刻,m は質量,K はエネルギー,F は力,r は半径,l は長さ,A は長さ,T は振り子の周期,g は重力加速度で,ω の次元は T−1 とする.

(a) v=v0+at2 (b) K=12mv (c) T=2πg/l (d) x=Asin⁡(ωt) (e) F=mv2r

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考え方 各項の次元を L,M,T で書いて比べる.

(a) 右辺第2項は LT−2⋅T2=L で,v の次元 LT−1 と合わない.誤り.(b) 右辺は MLT−1,K は ML2T−2 で合わない.誤り.(c) g/l は T−1 で,周期 T と合わない(l/g が正しい).誤り.(d) ωt は無次元で,A は長さなので合う.(e) ML2T−2/L=MLT−2 で力と合う.よって誤りは (a)(b)(c) である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

なめらかな水平面上で,ばね定数 k のばねにつないだ質量 m の物体が振動している.ばね定数の次元は,F=kx から [k]=MT−2 である.

  1. 周期 T が m と k だけで決まるとして,その形を求めよ.

  2. m を4倍,k を9倍にすると,周期は何倍か.

  3. m=0.20kg,k=8.0Nm−1 で T=0.99s だった.係数 C を求めよ.

  4. 振幅 A(長さ)も関係するとして次元解析すると,周期は振幅によるか.

ばね定数kのばねと質量mの物体.自然長の位置からの変位Aを示す. ばね定数kのばねと質量mの物体.自然長の位置からの変位Aを示す.
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考え方 (4) は A だけが長さの次元をもつことに注目する.

  1. T=Cmakb.M から a+b=0,T から −2b=1.よって b=−12, a=12,T=Cm/k である.

  2. 4/9=23 倍である.

  3. 0.20/8.0=0.158 だから C=0.99/0.158=6.26≈2π である.

  4. T=CmakbAd とおくと,L の次元をもつのは A だけなので d=0 である.周期は振幅によらない(等時性).ただし鉛直につるすと g も長さを含み,無次元の組 kA/(mg) ができるので,次元解析だけでは結論できない.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

波長 λ の水面の波が,水深に比べて十分に短く,表面張力と粘性が無視できる場合を考える(深い水の波).速さ v が λ,重力加速度 g,水の密度 ρ だけで決まるとして,v の形を求めよ.また,実際は v=gλ/2π として,波長 25m のうねりの速さと周期を求めよ.

隣り合う山の間隔λと波の進む向きを示す. 隣り合う山の間隔λと波の進む向きを示す.
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考え方 ρ だけが質量を含む点に注目する.

v=Cλagbρc とおく.M の指数から c=0.T の指数から −2b=−1,L の指数から a+b=1.よって b=a=12,v=Cgλ で,密度に依らない.

λ=25m では v=9.8×25/(2π)≈6.2ms−1.周期は T=λ/v≈25/6.24≈4.0s である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

質量 M の太陽のまわりを,半径 r の円軌道で回る惑星の公転周期 T が,r,M,万有引力定数 G(次元は L3M−1T−2)だけで決まるとする.(1) T の形を求めよ.(2) 太陽からの距離が地球の 5.2 倍である木星の周期を求めよ.(3) 係数が 2π として,地球(r=1.50×1011m,T=3.16×107s)から GM を求めよ.

質量Mの太陽を中心とする半径rの円軌道.周期をTとする. 質量Mの太陽を中心とする半径rの円軌道.周期をTとする.
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考え方 指数の連立方程式を三つ作る.惑星の質量は太陽に比べ無視できる(無次元の比 m/M が 1 よりずっと小さい)ので入れない.

  1. T=CraGbMc とおく.L:a+3b=0.M:−b+c=0.T:−2b=1.よって b=−12, c=−12, a=32 で

T=Cr3GM

である.T2∝r3(ケプラーの第3法則)が出る.

  1. T∝r3/2 だから,地球の 1 年に対して 5.23/2=5.2×2.28≈11.9 年である.

  2. GM=4π2r3/T2=39.5×(1.50×1011)3/(3.16×107)2≈1.3×1020m3s−2 である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

水素原子の半径 a を,プランク定数 h(次元は ML2T−1),電子の質量 me,電気素量 e,真空の誘電率 ε0 から作りたい.クーロンの法則 F=e2/(4πε0r2) より,[e2/ε0]=ML3T−2 である.次元解析で a の形を求め,数値を計算せよ(h=6.63×10−34Js,me=9.11×10−31kg,e=1.60×10−19C,ε0=8.85×10−12Fm−1).実際の値は 5.3×10−11m である.

原子核と電子の距離aを模式的に示す.軌道の模型は長さの尺度を表すためのもの. 原子核と電子の距離aを模式的に示す.軌道の模型は長さの尺度を表すためのもの.
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考え方 e と ε0 は e2/ε0 の形でしか現れないと考えて,三つの量の積を作る.

a=Chpmeq(e2/ε0)s とおく.L:2p+3s=1.M:p+q+s=0.T:−p−2s=0.p=−2s を L に入れて −s=1,よって s=−1, p=2, q=−1 である.

a=Cε0h2mee2

数値は 8.85×10−12×(6.63×10−34)29.11×10−31×(1.60×10−19)2≈1.7×10−10m である.実際の値は C=1/π に相当し,桁が合っている.

ポイント 教える人へ

  • 先に振り子の式を教えず,「質量は効くか」とだけ聞く.直感は割れる.次元で「質量を消せない」と示すと,理由が見える.

  • つまずきは,g の次元(LT−2),  と指数 12 の対応,連立方程式の立て方である.L,M,T ごとに指数の式を1本ずつ書かせる.

  • 次元解析は係数を与えない.「次元が合えば正しい」と誤解させず,2π や 12 は別の方法で決めると伝える.

  • 確かめ:任意の式を渡して,次元の合否を理由つきで述べられるか,未知の式について「関係しそうな量」を自分で挙げられるかを見る.