問いしるべ
問いから始める物理 物理の見方

物理の見方

次元解析と冪の計算

著者:柚木芹香

前の節で,次元が合わない式は間違いだと確かめました.この節では,その向きを逆にして,次元から式の形を絞り込みます.

次元解析:式の形を当てる

次元が合うことを逆に使うと,式の形を絞り込めます.

ポイント 次元解析の手順

  1. 求めたい量が,どの量に関係しそうかを挙げる.

  2. 求めたい量を,関係する量のべき乗の積 Cx1ax2b⋯ とおく(C は無次元の定数).

  3. 両辺の L,M,T の指数を別々に比べ,指数の連立方程式を解く.

L,M,T を別々に比べてよいのは,どの単位を取り替えても式が成り立つ必要があるからです.長さの単位だけを m から cm に変えても,式は同じ形で成り立たねばなりません.

次元解析で決まるのは指数だけで,無次元の係数 C は決まりません.重要な量を入れ忘れると,答えも誤ります.

無次元量.角度(弧÷半径),長さの比,質量の比などは次元がありません.無次元量は単位の取り方によらず,数値そのものに意味があります.関係する量の中に無次元量が含まれると,その関数の形までは次元解析では決まりません.たとえば振り子の振れの角度 θ0 は無次元なので,一般には T=Cl/gf(θ0) となり,f は別に調べます.

定理 数学の道具:冪の計算と指数の比較

次元解析で使う数学は,冪の計算と連立方程式です.a>0 とします.

aman=am+n,(am)n=amn,a−n=1an,a1/2=a

次元の比較では,L,M,T それぞれの指数が両辺で等しい,という連立方程式を作ります.たとえば T=Clambgc の次元を比べましょう.[g]=LT−2 だから

T1=LaMb(LT−2)c=La+cMbT−2c

T の指数から −2c=1,L の指数から a+c=0,M の指数から b=0 となります.

練習. (1) x3⋅x−5÷x1/2 を簡単にせよ.(2) p+q=1, −q=−2 を解け.(3) 82/3 と (127)−1/3 を求めよ.(4) a3⋅a−1/2 を簡単にせよ.(5) 2p+q=1, p−q=2 を解け.(6) (LT−1)2÷(LT−2) を簡単にせよ.

答え:(1) x3−5−1/2=x−5/2.(2) q=2, p=−1.(3) 82/3=(81/3)2=4,271/3=3.(4) a3/2−1/2=a.(5) 足して 3p=3 より p=1, q=−1.(6) L2−1T−2+2=L.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

長さ l の軽い糸に質量 m のおもりをつけた振り子が小さく振れるとき,周期 T は l,m,g だけで決まるとする.

長さlの糸に質量mのおもりをつけ,小さく傾けた振り子を示す. 長さlの糸に質量mのおもりをつけ,小さく傾けた振り子を示す.
  1. 次元解析で T の l,m,g への依存の形を求めよ.

  2. l=0.25m で T=1.00s と測れた.係数 C を求めよ(g=9.8ms−2).

  3. 周期が 2.0s の振り子の長さを求めよ.

解答を見る

考え方 T=Clambgc とおき,L,M,T の指数を比べる.C は実験値から決める.

  1. 上の連立方程式を解く.b=0,c=−12,a=−c=12 である.よって

T=Clg

である.質量には依存しない.

  1. C=Tg/l=1.00×9.8/0.25=6.26 である.2π=6.28 に近い.

  2. l=gT2/C2=9.8×2.02/6.262≈1.0m である.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

高さ h から石を静かに放したとき,落下にかかる時間 t を考える.空気抵抗は無視でき,t は h,石の質量 m,g だけで決まるとする.

  1. t の形を次元解析で求めよ.

  2. h=4.9m から落とすと t=1.00s だった.h=19.6m では何秒か.

地面から高さhの石を静かに放す.重力加速度gは下向き. 地面から高さhの石を静かに放す.重力加速度gは下向き.
解答を見る

考え方 (1) は振り子と同じ手順.(2) は係数 C を求めなくても,比を取れば消える.

  1. t=Chambgc とおく.M から b=0.T から −2c=1,L から a+c=0 だから c=−12, a=12 である.

t=Chg

石の質量には依らない.空気抵抗を無視するモデルの中では,重い石も軽い石も同時に落ちる(このモデルをどこまで使ってよいかは,この章の「モデルと問題の解き方」の節で確かめる).

  1. 高さが4倍だから,時間は 4=2 倍で t=2.00s である.

ポイント ここまでのまとめ

  • 次元解析は,求める量を Cx1ax2b⋯ とおき,L,M,T の指数を別々に比べて連立方程式を解く方法である.

  • 決まるのは指数だけで,無次元の係数 C は決まらない.無次元量が関係すると,その関数の形も決まらない.

  • 振り子の周期は T=Cl/g,落下時間は t=Ch/g で,どちらも質量によらない.

  • 係数は,1回の測定か比を取ることで,別に処理する.