問いしるべ
問いから始める物理 運動を記述する

運動を記述する

速度と微分

著者:柚木芹香

前の節で,瞬間速度は極限で定義できることを見ました.位置が時刻の式で与えられているとき,その極限を毎回計算するのは大変です.そこで公式にまとめた道具が微分です.

微分を使って速度を求める

まず,微分の定義と,よく使う関数の微分の公式を整えます.

定理 数学の道具:微分

定義 関数 f(t) の導関数を

f′(t)=dfdt=limh→0f(t+h)−f(t)h

で定める.f′(t) は y=f(t) のグラフの接線の傾き(瞬間的な変化率)である.f′ を求めることを微分するという.

導出(tn の微分) 定義のとおりに計算する.

  • 定数 f=c:c−ch=0.よって f′=0.

  • f=t:(t+h)−th=1.よって f′=1.

  • f=t2:(t+h)2−t2h=2th+h2h=2t+h→2t.

  • f=t3:(t+h)3−t3h=3t2+3th+h2→3t2.

  • 一般の自然数 n:二項定理より (t+h)n=tn+ntn−1h+(h2 を含む項).これを使うと (t+h)n−tnh=ntn−1+(h を含む項)→ntn−1.

公式

(tn)′=ntn−1,(cf)′=cf′,(f+g)′=f′+g′

(c は定数).後ろの2つは,極限が定数倍や和でそのまま成り立つことから従う.

上では n を自然数として導いたが,(tn)′=ntn−1 は n が負の整数や分数でも(t>0 で)成り立つ(一般の場合の証明は省く.n=−1 は練習 (3) で確かめる).たとえば (1t)′=(t−1)′=−1t2,(t)′=(t1/2)′=12t.

積の微分 f(t+h)g(t+h)−f(t)g(t) を,間に f(t)g(t+h) を足し引きして

f(t+h)g(t+h)−f(t)g(t)h=f(t+h)−f(t)hg(t+h)+f(t)g(t+h)−g(t)h

と変形する.h→0 で g(t+h)→g(t) なので,

(fg)′=f′g+fg′

である.

練習.

  1. x=3t2+2t の速度 v=dxdt を求め,t=2 のときの値を求めよ.

  2. x=(t+1)(t2−2t) を,積の微分と,先に展開してからの微分の2通りで計算し,一致を確かめよ.

  3. 定義にしたがって f=1t の導関数を求め,(tn)′=ntn−1 の n=−1 の場合と一致することを確かめよ.

  4. 次の関数を t で微分せよ.(a) 4t3−5t+7 (b) 2t (c) 3t2 (d) t2(t−1)2

  5. 位置が x=5t−t2[m] の物体について,t=1.0s から 1.1s までの平均速度と,t=1.0s の瞬間速度を求めて比べよ.

答え:(1) 和と定数倍の公式より v=3⋅2t+2⋅1=6t+2.t=2 のとき v=14. (2) 積の微分:1⋅(t2−2t)+(t+1)(2t−2)=3t2−2t−2.展開:x=t3−t2−2t より x′=3t2−2t−2.一致する. (3) 1h(1t+h−1t)=−1t(t+h)→−1t2.n=−1 の公式 −t−2 と一致する. (4) (a) 12t2−5 (b) 2⋅12t=1t (c) 3⋅(−2)t−3=−6t3 (d) 展開して t4−2t3+t2 を微分すると 4t3−6t2+2t=2t(t−1)(2t−1)(積の微分でも同じ). (5) x(1.0)=4.0m,x(1.1)=4.29m より平均速度は 0.29/0.1=2.9ms−1.v=5−2t より瞬間速度は 3.0ms−1.区間を短くすると平均速度は 3.0 に近づく.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

直線上を動く物体の位置が x=t3−6t2+9t[m](t は秒)で表される.

問題で与えられたxと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない. 問題で与えられたxと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない.
  1. 速度 v(t) を求め,t=0,2,4s の値を求めよ.

  2. 速度が0になる時刻と,そのときの位置を求めよ.

  3. t=0 から t=4s までの平均速度と平均の速さを求めよ.

解答を見る

考え方 位置の式を時間で微分すれば速度である.折返しの位置を調べると,道のりが分かる.

  1. v=dxdt=3t2−12t+9=3(t−1)(t−3)[ms−1].したがって v(0)=9,v(2)=3⋅1⋅(−1)=−3,v(4)=3⋅3⋅1=9(いずれも ms−1).

  2. v=0 より t=1s と t=3s.位置は x(1)=1−6+9=4m,x(3)=27−54+27=0m.v の符号は,t<1 で正,1<t<3 で負,t>3 で正なので,t=1,3 で向きを変える.

  3. x(0)=0,x(4)=64−96+36=4m.平均速度は 4−04=1ms−1.

道のりは,0→4m,4→0m,0→4m と動いた合計で 4+4+4=12m.平均の速さは 124=3ms−1.

例題 2

オリジナル ★☆☆☆☆

直線上を動く物体の x-t グラフが,次の3本の線分をつないだものである.t=0 で x=0,t=2s で x=6m,t=4s でも x=6m,t=8s で x=−2m.

  1. 各区間(0〜2 s,2〜4 s,4〜8 s)の速度を求めよ.

  2. 物体が原点を通る時刻をすべて求めよ.

  3. 0〜8 s の平均速度と平均の速さを求めよ.

横軸t(0〜8 s),縦軸x(−2〜6 m)のx-tグラフ.(0,0),(2,6),(4,6),(8,−2)を直線で結んだ折れ線で,0〜2 sでは右上がり,2〜4 sでは水平,4〜8 sでは右下がりになる. 横軸t(0〜8 s),縦軸x(−2〜6 m)のx-tグラフ.(0,0),(2,6),(4,6),(8,−2)を直線で結んだ折れ線で,0〜2 sでは右上がり,2〜4 sでは水平,4〜8 sでは右下がりになる.
解答を見る

考え方 直線の区間では,傾きが速度である.

  1. 0〜2 s:6−02=3ms−1.2〜4 s:位置が変わらないので 0.4〜8 s:−2−64=−2ms−1.

  2. t=0 と,最後の区間で x=6−2(t−4)=0 となる t=7s.

  3. 平均速度は −2−08=−0.25ms−1.道のりは 6+8=14m なので,平均の速さは 148=1.75ms−1.

折れ線の角では速度が一瞬で変わっており,接線の傾きは決まらない.これは現実を簡単にした理想化である.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

平面上を動く物体の位置が r=(2t, 4t−t2)[m] で表される.

位置r=(2t,4t−t²)で与えられる平面運動の軌道と座標軸を示す.速度は描かない. 位置r=(2t,4t−t²)で与えられる平面運動の軌道と座標軸を示す.速度は描かない.
  1. 速度ベクトル v(t) を求めよ.

  2. t=1s の速度ベクトル,速さ,向きを求めよ.

解答を見る

考え方 成分ごとに微分する.

  1. vx=d(2t)dt=2,vy=d(4t−t2)dt=4−2t より,v=(2, 4−2t)ms−1.

  2. t=1 で v=(2,2)ms−1.速さは 22+22=22≈2.8ms−1.向きは x 軸から 45∘ 上向き.

ポイント ここまでのまとめ

  • 導関数 f′(t)=limh→0f(t+h)−f(t)h は,グラフの接線の傾きである.位置を微分すれば速度になる.

  • 公式:(tn)′=ntn−1(n は負の整数や分数でもよい),(cf)′=cf′,(f+g)′=f′+g′,(fg)′=f′g+fg′.

  • v の符号が変わる時刻(v=0)で向きを変える.道のりは,向きを変える位置で区間を分けて求める.

  • 平面運動の速度ベクトルは,位置の成分をそれぞれ微分して得る.