問いしるべ
問いから始める物理 波と音

波と音

波動方程式と音の伝わり方の演習

著者:柚木芹香

波形の移動と媒質の運動を区別し,線形近似の条件も確かめましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

右へ進む弦の正弦波は,時刻0に原点を右下がりに横切り,最初の谷は x=0.20m,次の山は x=0.60m にあります.振幅は A=2.0×10−3m です.線密度は μ=5.0×10−3kgm−1 です.原点が次に上向きに0を横切る時刻は 0.040s です.

  1. 波長,周期,振動数,波の速さ,張力を求めよ.

  2. 波の式を書き,時刻0の x=0.10m における媒質の速度と加速度の向きを求めよ.

振幅A,谷の位置0.20 m,山の位置0.60 mと右向きの進行を示す.原点では時刻0と0.040 sの上向きの零交差だけを示す. 振幅A,谷の位置0.20 m,山の位置0.60 mと右向きの進行を示す.原点では時刻0と0.040 sの上向きの零交差だけを示す.
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考え方 谷から山までが半波長であり,媒質の運動は時間微分する.

  1. λ=2(0.60−0.20)m=0.80m,T=0.040s.よって f=1/T=25Hz,v=λ/T=20ms−1.v2=S/μ より S=μv2=2.0N である.

  2. ω=2π/T,k=2π/λ とすれば y=Asin⁡(ωt−kx) である.速度は ∂y∂t=Aωcos⁡(ωt−kx),加速度は ∂2y∂t2=−ω2y.指定点では位相が −π/4 で,変位は負,余弦は正だから速度も加速度も上向きである.最大傾き Ak=0.016 は十分小さく,弦の小振幅近似と整合する.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

空気中を ξ=Asin⁡(ωt−kx) の平面音波が進みます.A=2.0×10−6m,f=5.0×102Hz,v=3.4×102ms−1,平衡圧力 p=1.0×105Pa,比熱比 γ=1.4 とします.平衡時の密度を ρ とし,右向きを正とします.δp=−γp∂ξ∂x を使えます.

  1. 質量保存から密度のずれ δρ と変位の関係を導け.時刻0の1波長内の密部・疎部を求めよ.

  2. 圧力のずれと媒質の速度を求め,密部の変位と速度の向きを答えよ.

与えられた式による時刻0のξとxのグラフを1波長分示す.粒子の変位は右向きを正とする. 与えられた式による時刻0のξとxのグラフを1波長分示す.粒子の変位は右向きを正とする.
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考え方 疎密は粒子間隔の変化で決まる.

  1. 平衡時の長さ dx は (1+∂ξ/∂x)dx になる.質量保存から (ρ+δρ)(1+∂ξ/∂x)=ρ.小さい量の積を捨てると δρ/ρ=−∂ξ∂x=Akcos⁡(ωt−kx).λ=v/f=0.68m なので,0≤x<λ では密部は x=0,疎部は x=λ/2=0.34m である.

  2. δp=γpAkcos⁡(ωt−kx),∂ξ∂t=Aωcos⁡(ωt−kx).k=2π/λ より圧力振幅は 2.6Pa,速度振幅は 6.3×10−3ms−1.時刻0の密部では変位0で,速度は右向きである.Ak=1.8×10−5 と |δp|/p≤2.6×10−5 はともに小さく,線形化は妥当である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

管内の距離 d=3.40m を短い音が伝わる時間を測りました.反射と装置の遅延は除いています.v2=γRT/Mmol,R=8.31Jmol−1K−1,Mmol=2.90×10−2kgmol−1 とし,T は絶対温度,γ は一定です.

T(K)

伝播時間 τ(s)

289

0.0100

361

0.00894

  1. v2 と T のグラフの形を述べ,第1点から γ を求め,第2点と比較せよ.

  2. 第1点の時間が ±0.0001s の不確かさをもち,他は誤差なしとして,γ の相対不確かさを一次近似で求めよ.

一様な温度Tの管内で,送信器と受信器の間隔dは3.40 mである.音は送信器から受信器へ進む. 一様な温度Tの管内で,送信器と受信器の間隔dは3.40 mである.音は送信器から受信器へ進む.
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考え方 速さの2乗を温度と比較する.

  1. v=d/τ なので v2=(γR/Mmol)T は原点を通る直線.第1点では v=340ms−1,γ=Mmold2/(RTτ2)=1.40.第2点の予測は τ=0.0100289/361s=0.00895s で,表との差は約 7×10−6s である.

  2. γ∝τ−2 より Δγ/γ≈−2Δτ/τ.不確かさは 2×0.0001/0.0100=0.020,約2 %,絶対不確かさは約 0.03 である.この展開には |Δτ|/τ=0.010 が十分小さいことを使った.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

一様な媒質中で等方的な音源から,反射・吸収なしで正弦波の音が広がります.両測定点は音源から波長に比べて十分遠く,局所的な平面進行波として扱います.距離 r=2.0m で音の強さのレベルが L=80dB でした.L=10log10⁡(I/I0)dB,I0=1.0×10−12Wm−2 とします.

  1. 強さと音響出力 P を求めよ.

  2. r=10m でのレベルと,最初の地点に対する変位振幅の比を求めよ.

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考え方 球面に広がる出力を保存し,強さは振幅の2乗に比例する.

  1. I/I0=1080/10 より I=1.0×10−4Wm−2.P=4πr2I=5.0×10−3W である.

  2. I′/I=(2.0/10)2=0.040.したがって L′=80dB+10log10⁡(0.040)dB=66dB.遠方近似では A′/A=I′/I=0.20.4πr2I は距離によらない.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

長さ l,線密度 μ の一様な縄を鉛直につるし,下端に質量 m>0 のおもりを付けます.伸びは無視し,下端から上向きに x を測ります.短い横向きのパルスの局所的な速さを v(x)=S(x)/μ とします.

  1. 張力 S(x) を求め,下端から上端までの伝播時間を積分で求めよ.

  2. l=3.00m,μ=0.200kgm−1,m=0.200kg,g=9.80ms−2 で時間を求めよ.全長を上端の速さで進む見積もりは長すぎるか.

長さl,線密度μの縄の下端に質量mのおもりをつける.座標xは縄の下端を原点として上向きに測る. 長さl,線密度μの縄の下端に質量mのおもりをつける.座標xは縄の下端を原点として上向きに測る.
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考え方 張力は下側の重さを支え,微小時間は dx/v(x) になる.

  1. S(x)=(m+μx)g.a=m/μ とおくと v(x)=g(x+a) だから

τ=∫0ldxg(x+a)=2g(l+a−a)
  1. a=1.00m,τ=2(2−1)/9.80s=0.639s.上端の v(l)=6.26ms−1 より見積もりは l/v(l)=0.479s と短すぎる.a が l より十分大きい極限では τ≈l/ga と一定張力の結果に戻る.局所近似には小さい傾きと,パルスの幅 d に対して d/(x+a) の小ささが必要である.

ポイント 教える人へ

  • 波形を右へずらし,媒質の動く向きを説明させる.

  • 粒子間隔から密部を判定し,変位最大の位置と区別させる.

  • 測定時間を二乗して使う際の不確かさと,絶対温度を使う理由を問う.

  • 張力が変わる縄では,微小時間を積分する理由を問う.