問いしるべ
問いから始める物理 仕事とエネルギー

仕事とエネルギー

仕事と運動エネルギーの演習

著者:柚木芹香

力と変位の向きを確かめてから,仕事を計算してみましょう.仕事・仕事率・運動エネルギーの違いも言葉で説明してください.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

質量 2.0kg の箱を,水平から上向きに 60∘ 傾いた一定の力 10N で引き,水平に 3.0m 動かした.床は滑らかで,箱は初め静止していた.g=9.8ms−2 とする.

  1. 引く力,重力,垂直抗力の仕事をそれぞれ求めよ.

  2. 最後の速さを求めよ.

斜めの力で引く箱.水平な床上の箱と,水平から60°上向きの力F,水平変位sを示している. 斜めの力で引く箱.水平な床上の箱と,水平から60°上向きの力F,水平変位sを示している.
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考え方 変位に平行な力の成分だけが仕事に寄与する.力の大きさをそのまま距離に掛けず,まず角度を確かめる.

  1. 引く力の仕事は WF=10×3.0cos⁡60∘=15J.重力と垂直抗力は鉛直で,水平変位との内積が0なので Wg=WN=0 である.鉛直方向では N=mg−Fsin⁡60∘≈11N>0 となり,箱が床に接触し続けるという前提も満たされる.

  2. 合力の仕事が運動エネルギーの増加なので 12mv2=15J.よって v=15≈3.9ms−1.引く力には上向き成分もあるが,上向きには変位しないので,その成分は運動エネルギーを増やさない.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

質量 8.0kg の荷物を,初めと終わりで静止させて高さ 1.5m だけ持ち上げる.空気抵抗はなく,g=10ms−2 とする.

  1. 手のした仕事と重力のした仕事を求めよ.途中で速さが変わっても答えは同じか.

  2. 所要時間が 3.0s のとき,手の平均仕事率を求めよ.時間を半分にすると,仕事と平均仕事率はどう変わるか.

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考え方 仕事の定理は始めと終わりの運動エネルギーの差を結ぶ.平均仕事率は仕事を所要時間で割る.

  1. 重力の仕事は Wg=−mgh=−120J.始めも終わりも静止しているので ΔK=0=W手+Wg より,手の仕事は 120J である.途中で加速して運動エネルギーを増やしても,最後には減速して元に戻すため,結果は変わらない.手の力が全行程で mg に等しいと仮定する必要はない.

  2. P―=120/3.0=40W.時間を半分にしても同じ高さで静止させるなら仕事は 120J のままで,平均仕事率は 80W に倍増する.平均の値から瞬間の最大仕事率までは決められない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

滑らかな直線レール上の質量 m の物体に,位置で変わる接線方向の合力 F(x)=F0(1−x/L) が働く.F0,L>0 とし,物体を x=0 から右向きの速さ v0>0 で出発させる.

  1. x=L および x=2L までの仕事と,それぞれの速さを求めよ.

  2. 0≤x≤2L で速さが最大になる位置を説明せよ.

位置に応じて減少する力.横軸x,縦軸Fとして,F₀から傾き一定で減る直線を2Lまで描く.Lと2Lを軸に記す. 位置に応じて減少する力.横軸x,縦軸Fとして,F₀から傾き一定で減る直線を2Lまで描く.Lと2Lを軸に記す.
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考え方 力の符号つき面積を足す.負の仕事が始まる位置と,物体が止まる位置は同じではない.

  1. 任意の位置までの仕事は

W(x)=∫0xF0(1−ξ/L)dξ=F0(x−x22L)

である.したがって W(L)=F0L/2,W(2L)=0.仕事の定理から v(L)=v02+F0L/m,v(2L)=v0 となる.この区間では W(x)≥0 なので,初速が正の物体は途中で止まらず,両方の位置に到達する.

  1. x<L では力が右向きで運動エネルギーが増え,x>L では左向きで減る.よって最大は x=L.そこで力は0だが,速さは0ではない.グラフの前半の正の三角形と後半の負の三角形の面積が等しいことも,x=2L で初速に戻ることを示している.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

質量 m の物体が,粗い水平面上を初速 v0 で滑って止まる.動摩擦係数は一定の μ′ である.

  1. 停止距離 d と停止までの時間 t を求めよ.

  2. 摩擦力の瞬間仕事率を速さ v で表し,停止までの平均仕事率を求めよ.

  3. 初速を2倍にしたとき,停止距離,時間,平均仕事率の大きさは何倍か.

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考え方 停止距離は仕事,時間は加速度から求める.摩擦の仕事率には負号をつけ,熱の発生率と区別する.

  1. N=mg より動摩擦力の大きさは μ′mg で一定である.0−12mv02=−μ′mgd から d=v02/(2μ′g).運動方程式では進行方向の加速度が −μ′g なので,0=v0−μ′gt より t=v0/(μ′g) となる.

  2. 瞬間仕事率は P=−μ′mgv.初めは −μ′mgv0 で,停止時には0になる.平均値は

P―=−mv02/2v0/(μ′g)=−12μ′mgv0

である.速さが時間に対して直線的に減るため,始めと終わりの仕事率の平均にも一致する.

  1. 距離は4倍,時間は2倍,平均仕事率の大きさは2倍である.エネルギーの減少は4倍でも,それにかかる時間が2倍なので平均の減少率は2倍となる.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

平面内で力 F=c(y,x) が働く.c>0 の単位は Nm−1 である.O(0,0) から B(L,L) まで,経路Aでは (L,0) を経由して軸に平行に進み,経路Bでは y=x2/L に沿って進む.

  1. 各経路でこの力がする仕事を求めよ.

  2. 質量 m の物体を初速 v0 で,各経路を形作る滑らかな固定レールへ送り込む.終点の速さを比較せよ.レールの垂直抗力は仕事をしないとする.

折れ線と曲線の経路.O,B(L,L),折れ線経路Aと放物線経路Bをxy平面に描く. 折れ線と曲線の経路.O,B(L,L),折れ線経路Aと放物線経路Bをxy平面に描く.
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考え方 曲線上では y だけでなく dy も x で表す.レールが方向を変えても,仕事をしなければ速さの計算には寄与しない.

  1. 経路Aの水平部分では y=0,dy=0 なので仕事は0.鉛直部分では x=L より WA=∫0LcLdy=cL2.経路Bでは dy=2xdx/L だから

WB=∫0Lc(ydx+xdy)=∫0L3cx2Ldx=cL2

となる.異なる経路でも,この2本では仕事が等しい.これだけであらゆる経路について証明したことにはならないが,ydx+xdy=d(xy) と気づけば一般の経路でも始点と終点だけで決まると分かる.

  1. 12m(v2−v02)=cL2 から,どちらも v=v02+2cL2/m.曲がり角は仕事をしない理想的な案内で進行方向だけを変えるとする.移動時間は経路で異なり得るが,終点の速さは等しい.

ポイント 教える人へ

  • 力ごとに仕事の符号を答えさせてから,合計を取らせるのがよい.

  • 力が0であることと速さが0であることの違いを,演習3のグラフで確認する.

  • 平均仕事率を求めるときは,何秒間の平均かを明示させる.

  • 曲線の積分では,座標と微小変位を同時に置き換えられるかが理解の目安である.