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問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 4節
  1. 光子と物質のやりとり
  2. 原子のエネルギー準位
  3. 原子核のエネルギー
  4. 東大の原子の過去問を発展させる

第32章  原子の総合演習

01光子と物質のやりとり

第29章の光電効果・散乱を,第26章の光圧と第5・6章の保存則に結び付けます.光子数とエネルギーの重みを区別してください.原子の反跳は吸収・放出の中心を変えます.最後には帯電,相対論,線幅の限界を調べます.

総合演習 1

オリジナル ★★★★☆

光電子の収量と薄膜の反動

仕事関数 W=2.00eV の薄い金属膜に,光子のエネルギー Eγ=5.00eV の光を垂直に当てます.膜の反射率は r=0.250,透過はありません.膜を固定し,弱い光で飽和光電流を測ると,入射光の電力 P に対する電流 I の比は I/P=0.0400AW−1 でした.入射光子1個から電子が出る確率を η とします.

次に質量 M=1.00×10−12kg の電荷0の膜を静止させ,外部回路から切り離して,平均 Nγ=1.00×103 個の光子を含む短いパルスを当てます.光は +x 向きに進み,放出電子はすべて −x 向きに最大運動エネルギーで出る理想模型とします.反射光は正反射し,パルス中の膜の移動,熱放射,電子間の相互作用はまず無視します.膜の電気容量は C=1.00×10−12F です.e=1.60×10−19C,m=9.11×10−31kg,c=3.00×108ms−1,1eV=1.60×10−19J とします.以下では平均値を扱ってください.

静止した自由な金属膜へ光が右向きに入射する.反射光と放出電子は左向きである.膜の質量Mと電気容量Cを示す. 静止した自由な金属膜へ光が右向きに入射する.反射光と放出電子は左向きである.膜の質量Mと電気容量Cを示す.
  1. η,放出電子数 Ne,電子1個の速さと運動量を求めよ.入射光の電力が同じなら,光子のエネルギーを変えても I/P は同じか.η が一定の場合について答えよ.

  2. 膜が受ける光だけの力積と,電子放出も含めた力積を求め,パルス直後の膜の速度を計算せよ.膜の並進エネルギーを無視できる精度で,膜に残る内部エネルギー増分を求めよ.電子を取り去る仕事 NeW が内部に蓄えられるとすると,残りの熱エネルギーはいくらか.

  3. 最後に帯電の影響を入れる.膜の正電荷と電位を求め,電子の脱出に必要な追加エネルギーが Eγ−W に比べて小さいことを確かめよ.同じ膜に当てる光子数を増す場合,帯電を無視する条件と,電子が出なくなる光子数の目安を求めよ.膜を含む系全体について,電子の反動が光だけの力積より大きくても運動量保存に反しない理由を述べよ.

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考え方

光電流が数えるのは電子数,光の電力が数えるのは光子のエネルギーである.膜の反動は,反射光と放出電子が持ち去る運動量を符号付きで引いて求める.単一光子過程,指定された放出方向とエネルギー,弱い帯電を仮定する.

  1. 毎秒の入射光子数は P/Eγ だから,I=eηP/Eγ となる.したがって

η=EγeIP=(5.00V)(0.0400AW−1)=0.200,Ne=ηNγ=2.00×102

電子の運動エネルギーは K=Eγ−W=3.00eV=4.80×10−19J.非相対論的に K=mve2/2 と書いて

ve=2Km=1.03×106ms−1,pe=2mK=9.35×10−25kgms−1

一定の η なら I/P=eη/Eγ であり,光子のエネルギーが大きいほど電力あたりの電子数は減る.

  1. 吸収される光子は (1−r)Nγ 個で,1個あたり Eγ/c の力積を与える.反射される光子は rNγ 個で,1個あたり 2Eγ/c を与える.光だけでは

Jγ=(1+r)NγEγc=3.33×10−24kgms−1

電子が負方向へ出るため,膜は正方向へ Nepe を受ける.総力積は

J=Jγ+Nepe=1.90×10−22kgms−1,vfilm=JM=1.90×10−10ms−1

膜の並進エネルギー J2/(2M)=1.81×10−32J は入射エネルギー 8.00×10−16J より十分小さい.反射光のエネルギー変化もこの精度で無視すると,内部増分は

ΔU=(1−r)NγEγ−NeK=6.00×10−16−9.60×10−17=5.04×10−16J

電子の除去に蓄えられる NeW=6.40×10−17J を引くと,熱に変わる量は 4.40×10−16J である.放出に使われなかった吸収光子が熱になる模型である.

  1. 電子が出るたびに膜に正電荷が残る.Q=Nee=3.20×10−17C,VC=Q/C=3.20×10−5V だから,最後に出る電子の追加脱出エネルギーは eVC=3.20×10−5eV 程度.K との比は 1.07×10−5 である.一般に

1≫ηNγe2C(Eγ−W)

が帯電を無視する条件となる.等号程度になる入射光子数は Nγ≃CK/(ηe2)=9.38×107 個である.その近くでは収量も減る.帯電の場のエネルギー Q2/(2C)=5.12×10−22J も今回の収支の精度では小さい.

膜の正方向の運動量と電子の負方向の運動量がほぼ相殺し,その和は光子が失った運動量 Jγ となる.確かめとして,電子の ve/c=3.42×10−3,膜の vfilm/c,帯電の無次元比はいずれも小さく,質量損失 Nem/M も無視できる.

総合演習 2

オリジナル ★★★★☆

散乱光と反跳電子で自由電子模型を検査する

静止した電子を含む薄い標的に,エネルギー E=0.300MeV の単色光子を +x 向きに入射させます.xy 平面の +y 側へ散乱した光子のエネルギーは E′=0.200MeV でした.電子の束縛と初期運動を無視し,1個の光子が1個の電子に一度だけ散乱するものとします.電子の全エネルギーと運動量の関係は Ee2=(pec)2+(mc2)2,静止エネルギーは mc2=0.511MeV です.c=3.00×108ms−1,1MeV=1.60×10−13J とします.

静止電子に光子が+x向きに入射し,散乱光子は+y側へ出る.EとE′は測定値,φとθは未知の角であり,角度は模式的に描いている. 静止電子に光子が+x向きに入射し,散乱光子は+y側へ出る.EとE′は測定値,φとθは未知の角であり,角度は模式的に描いている.
  1. エネルギー・運動量保存から 1/E′−1/E=(1−cos⁡ϕ)/(mc2) を導け.測定値から散乱角 ϕ,電子の運動エネルギー K,反跳方向の角 θ を求めよ.

  2. 電子の運動量と速さを求め,pe2/(2m) を運動エネルギーとする近似の誤差を調べよ.この事象だけから電子の静止エネルギーを測定するには,光子のエネルギー以外に何を独立に測ればよいか.

  3. ϕ を独立に測り,cos⁡ϕ=0.148±0.010 を得たとする.E,E′ の誤差を無視して,静止エネルギーの推定値と不確かさを求めよ.この角度分解能で標的の有効散乱粒子が電子より1 %重いと判別できるか.また,同じ E,E′ に対し cos⁡ϕ>1 または cos⁡ϕ<−1 となったら,何を再検討すべきか.

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考え方

標的の束縛エネルギーと初期運動を無視する自由電子模型を使う.電子へ渡ったエネルギーだけでなく,光子の運動量のベクトル差を用いると,模型が予言する散乱角まで決まる.相対論的な関係は問題文で与えられている.

  1. 光子の運動量はエネルギーを c で割ったものである.電子の成分は

pexc=E−E′cos⁡ϕ,peyc=−E′sin⁡ϕ,Ee=mc2+E−E′

したがって (pec)2=E2+E′2−2EE′cos⁡ϕ.これを相対論的な式へ代入して

(mc2+E−E′)2−(mc2)2=E2+E′2−2EE′cos⁡ϕ

左辺の (E−E′)2 と右辺の同じ部分を消すと mc2(E−E′)=EE′(1−cos⁡ϕ) であり,指定式となる.数値では

cos⁡ϕ=1−(0.511)(10.200−10.300)=0.1483,ϕ=81.5∘,K=E−E′=0.100MeV

電子の運動量の成分は pexc=0.2703MeV,peyc=−0.1978MeV.よって tan⁡θ=|pey|/pex=0.7316,θ=36.2∘ で,電子は入射軸の負の y 側へ進む.

  1. 相対論では pe=Eeve/c2 である.全エネルギーは 0.611MeV だから

pec=K(K+2mc2)=0.335MeV,pe=1.79×10−22kgms−1,vec=pecK+mc2=0.548

したがって ve=1.64×108ms−1.相対論的な運動量に非相対論式を適用すると

pe22m=K+K22mc2≃0.110MeV

であり,真の値より9.78 %大きい.近似の支配量は K/(mc2) である.静止エネルギーの独立な測定には散乱角も測る.(1)で既知の質量を使って計算した角度を再びこの式に入れても,独立の質量測定にはならない.

  1. 分母は D=1/E′−1/E=1.6667MeV−1 なので,推定値は mc2=0.852/D=0.5112MeV.一次の誤差伝播では

δ(mc2)=δ(cos⁡ϕ)D=0.0060MeV,δ(mc2)mc2=0.0100.852=0.0117

不確かさに合わせて報告すると mc2=(0.511±0.006)MeV である.相対不確かさは約1.2 %であり,1 %の質量差をこの測定だけで判別できない.角度からの不確かさだけでも差より大きく,エネルギーの誤差も加わる.許されない余弦が出た場合には,多重散乱,初期電子の運動,束縛,エネルギーの校正などを再検討する.確かめとして,ϕ→0 なら E′→E,反跳は消え,今回の近似検査でも K/(mc2)=0.196 を小さいとする精度の限界が数値に現れている.

総合演習 3

オリジナル ★★★★★

同じ原子が出した光を別の原子は吸えるか

内部の2準位の間隔が Δ=2.00eV,基底状態の質量が M=1.00×10−25kg の自由な原子を考えます.励起状態の質量は M∗=M+Δ/c2 です.静止した励起原子Sが光子を出し,遠くで静止している同種の基底原子Aがそれを吸収できるか調べます.外力と衝突はなく,光子のエネルギーと運動量は Eγ,Eγ/c です.原子の全エネルギーには E2=(pc)2+(Mc2)2 を使います.h=6.63×10−34Js,c=3.00×108ms−1,kB=1.38×10−23JK−1,1eV=1.60×10−19J とします.

励起原子Sと基底原子Aは初め静止している.光子はSからAへ進む.別枠に準位差Δと,Aに与える速度uの正方向を示す. 励起原子Sと基底原子Aは初め静止している.光子はSからAへ進む.別枠に準位差Δと,Aに与える速度uの正方向を示す.
  1. 放出光子のエネルギー Eem と,静止原子Aが吸収するのに必要なエネルギー Eabs を厳密に求めよ.1≫Δ/(Mc2) として差の主要項を求め,反跳エネルギー Er=Δ2/(2Mc2) で表せ.

  2. 原子Aに光子の進行方向の速度 u を与える.Aの静止系で見た光子エネルギーを一次まで Eem(1−u/c) として,吸収の中心を一致させる u の向きと大きさを求めよ.原子の一次元熱運動の速さの標準偏差を σu=kBT/M としたとき,この速さと等しくなる温度も求めよ.

  3. 励起状態の寿命を τ とし,線幅のエネルギー尺度を Γ=ℏ/τ と見積もる.放出中心と吸収中心の差がこの幅より大きいことを,τ=1.00×10−8s と 1.00×10−6s で判定せよ.反跳差を観測するには,熱運動と寿命にどの条件が必要か.原子が非常に重い支持体と一体で反動するとした場合の極限とも比較せよ.

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考え方

内部準位差は静止質量の差に対応する.自由な原子は光子と反対の運動量を受け取るため,放出時には準位差の一部が反跳へ行き,吸収時には反跳分まで光子から受け取る.熱幅と寿命幅の比較は尺度の比較であり,吸収確率の厳密な形は仮定しない.

  1. Sの静止系でエネルギー保存は M∗c2=Eem+M2c4+Eem2.光子を左辺へ移して2乗すると

Eem=(M∗2−M2)c22M∗=Δ2Mc2+Δ2(Mc2+Δ)

吸収後の原子は光子の運動量を持つので,Mc2+Eabs=M∗2c4+Eabs2.これを2乗して

Eabs=(M∗2−M2)c22M=Δ+Δ22Mc2

ϵ=Δ/(Mc2) の一次までなら,Eem≃Δ−Er,Eabs=Δ+Er.差は 2Er≃Δ2/(Mc2) である.数値は

Er=5.69×10−30J=3.56×10−11eV,Eabs−Eem≃7.11×10−11eV

両方の中心エネルギーが異なるので,線幅0で両原子が静止している極限では共鳴しない.

  1. Eem(1−u/c)=Eabs より

u≃−c2ErΔ=−ΔMc=−1.07×10−2ms−1

Aは光子へ向かって動く必要がある.σu=|u| となる温度は T=Mu2/kB=8.24×10−7K.熱運動による光子エネルギーの幅の尺度は ΔkBT/M/c であり,この温度で反跳差と同程度となる.中心を合わせる速度制御は別途必要である.

  1. Γ=h/(2πτ) より,幅は順に 6.59×10−8eV,6.59×10−10eV.いずれも反跳差より大きい.したがって,この尺度の範囲では中心のずれがあるというだけで吸収を禁じることはできない.反跳差を分離するには,少なくとも

ℏτ<Δ2Mc2,ΔckBTM<Δ2Mc2

が必要である.数値では τ>9.27×10−6s,T<8.24×10−7K.分離には装置の分解能も要る.支持体全体が反動する理想模型では,反跳エネルギーの分母が全質量になり,重い支持体の極限で差は0へ近づく.その過程が実際に起こる確率まではこの模型は与えない.確かめとして,ϵ=3.56×10−11,|u|/c=3.56×10−11 は小さく,質量一定と一次ドップラー近似が整合する.

02原子のエネルギー準位

第29章の原子準位と半導体を,第5章の重心運動と第20〜22章の電磁気に結び付けます.核を固定する場合と原子が反動する場合を区別してください.光,電子衝突,電流応答で準位を調べます.最後には測定精度と応答の遅れを検査します.

総合演習 4

オリジナル ★★★★★

スペクトルの小さな差から原子核の質量を決める

電荷 +e,質量 MN の原子核と,質量 m,電荷 −e の電子からなる水素型原子を考えます.両者は重心のまわりを円運動するものとし,両者の距離を r,相対運動の角速度を ω,クーロン定数を ke=1/(4πε0) とします.相対運動の角運動量にボーアの条件を適用してよいものとします.h=6.63×10−34Js,c=3.00×108ms−1 とし,原子核の質量が無限大の極限でのリュードベリ定数を R∞=1.10×107m−1 と与えます.核の大きさ,相対論,光子の反跳は無視します.

核質量が M1=1800m と既知の原子と,未知の M2>M1 の原子の,同じ n=4 から n=3 への放出線を測ります.波長を λ1,λ2 とします.分光器の分解能は R=λ/δλ と定義し,1次の回折格子では照明された溝数に等しいものとします.

電子m,−eと原子核M_N,+eは重心まわりに円運動し,両者の距離はr,相対運動の角速度はωである.2種類の原子のn=4からn=3への放出線を分光器へ導く.距離は模式的である. 電子m,−eと原子核M_N,+eは重心まわりに円運動し,両者の距離はr,相対運動の角速度はωである.2種類の原子のn=4からn=3への放出線を分光器へ導く.距離は模式的である.
  1. 重心から電子・原子核までの距離を求め,相対運動に現れる換算質量 mr を導け.ボーアの条件 mrr2ω=nℏ から,軌道半径とエネルギー準位を求めよ.有限の核質量でのリュードベリ定数も表せ.

  2. M2=2M1 の場合,両放出線の波長,波長差,それらを分離するのに必要な R を求めよ.照明する溝数が4000の格子は,指定された理想的な分解基準を満たすか.

  3. 実測では s=λ1/λ2−1=(2.78±0.03)×10−4 だった.M2/m と一次の不確かさを求め,核質量が 2M1 という模型と両立するか判定せよ.核を完全に固定した模型でこの差を説明できるか.s が上限に近づく場合には,なぜ質量推定が難しくなるかも説明せよ.

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考え方

核と電子の2体模型に相対運動の量子条件を使う.

  1. 距離は re=MNr/(MN+m),rN=mr/(MN+m).速度はそれぞれ reω,rNω だから,運動エネルギーと角運動量は

K=12(mre2+MNrN2)ω2=12mrr2ω2,L=mrr2ω,mr=mMNm+MN

電子の円運動の式 mreω2=kee2/r2 は mrrω2=kee2/r2 となる.量子条件と合わせると

rn=n2ℏ2mrkee2,Kn=kee22rn,En=Kn−kee2rn=−mrke2e42n2ℏ2

したがって 1/λ=RN(1/nf2−1/ni2),RN=(mr/m)R∞=R∞/(1+m/MN) である.

  1. 今回の準位差の係数は 1/32−1/42=7/144.無限大の核質量での波長を λ∞=144/(7R∞)=1.87013×10−6m とおくと

λ1=λ∞(1+11800),λ2=λ∞(1+13600),λ1−λ2=λ∞3600

丸めると両波長はともに 1.87×10−6m,差は 5.19×10−10m である.λ2 を基準にした必要分解能は R=3601 で,4000の溝なら理想基準を満たす.

  1. q1=m/M1=1/1800,q2=m/M2 とおくと,1+s=(1+q1)/(1+q2).したがって

q2=q1−s1+s,M2m=1+sq1−s

測定の中心値を入れると M2/m=3.60×103.s の不確かさは δs=3.0×10−6 であり,微分で

δ(M2m)=1+q1(q1−s)2δs=3.90×101

よって M2/m=(3.60±0.04)×103 程度であり,2M1/m=3600 と両立する.

固定核模型では RN=R∞ が両原子で同じになり,波長差は0なので説明できない.M2→∞ で s→q1 となり,M2/m の分母 q1−s が小さくなるため不確かさが増幅する.確かめとして,MN→∞ では mr→m に戻り,有限質量の式は固定核近似を含む.精密測定には,無視した補正の波長差への寄与が δs より小さいことも別途確かめる必要がある.

総合演習 5

オリジナル ★★★★☆

磁場で選んだ電子の衝突と励起のしきい値

質量 m,電荷 −e の電子を,初速を無視できる状態から電圧 V で加速します.磁場 B に垂直に入射させて円軌道の半径を測り,その後,磁場のない領域で静止原子に一度だけ衝突させます.原子の質量は M=2.00×104m,基底状態からの励起に必要な内部エネルギーは Δ=5.00eV です.励起後の質量増加 Δ/c2 は運動の計算で無視します.衝突は非相対論的で,電子の散乱方向も測定できるものとします.

e=1.60×10−19C,m=9.11×10−31kg,c=3.00×108ms−1 とします.磁場の大きさは B=1.00×10−3T,数値計算では V=20.0V を使ってください.衝突後の原子は長時間後に1個の光子を出して基底状態へ戻ります.

電子m,−eを電圧Vで加速して磁場B中の円軌道の半径を測る.磁場のない別の衝突部では静止原子Mに衝突させ,電子の運動量p,p′と散乱角θを測る.軌道と角度は模式的である. 電子m,−eを電圧Vで加速して磁場B中の円軌道の半径を測る.磁場のない別の衝突部では静止原子Mに衝突させ,電子の運動量p,p′と散乱角θを測る.軌道と角度は模式的である.
  1. 衝突前の電子の運動エネルギーと円軌道半径を求めよ.電子と原子の重心運動を分け,励起が可能になる最小加速電圧 Vth を導け.しきい値で電子と原子は衝突後に静止するか.

  2. 衝突前後の電子の運動量の大きさを p,p′,散乱角を θ とする.測定値から Δ を求める式を導け.θ=0 の前方散乱で,固定核近似の K′=eV−Δ をまず使い,原子の反跳エネルギーと,衝突後の電子を再び同じ強さ B の磁場へ垂直に入射させたときの円軌道半径を求めよ.反跳補正を求める精度も示せ.

  3. 同じ加速電圧で後方散乱 θ=π を選ぶと,前方散乱より電子のエネルギー損失が大きくなる.この差を m/M の一次まで求め,準位差が方向によって変わったと解釈してよいか答えよ.励起原子の静止系での放出光子の反跳補正と比較し,電子の衝突で準位を測るときに何を同時に測る必要があるか説明せよ.

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考え方

磁場は半径から運動量を測る.励起に使えるエネルギーは,重心の並進を除いて求める.単一励起・単一衝突と,励起中の原子の質量一定を仮定する.

  1. 加速で K=eV,p=2meV.円運動の式 mv2/r=evB から r=p/(eB) である.数値では K=20.0eV,p=2.41×10−24kgms−1,r=1.51×10−2m.

衝突前の全運動量は p,重心速度は p/(M+m).重心の並進エネルギーは Kcm=p2/[2(M+m)]=mK/(M+m).内部に使える相対運動エネルギーは Krel=MK/(M+m) だから

MM+meV≥Δ,Vth=Δe(1+mM)=5.00025V

指定の桁では 5.00V と報告するが,模型が予言する補正は 0.000250V である.しきい値では衝突後の相対速度が0になり,両者は共通の重心速度で動く.全運動量が正なので,実験室で静止することはない.

  1. 原子の運動量は p−p′ だから,エネルギー保存は

p22m=p′22m+Δ+p2+p′2−2pp′cos⁡θ2M

右辺の励起以外の2項を引けば Δ が得られる.固定原子の近似では K0′=15.0eV,p0′/p=15/20=3/2.前方反跳は

KN,+=(p−p0′)22M=mM(K−K−Δ)2=1.79×10−5eV

電子のエネルギーは K′=K−Δ−KN,+.半径は r′=2mK′/(eB)=1.31×10−2m.精密には r′/r0′≃1−KN,+/(2K0′) で,相対補正は 5.98×10−7.反跳式に近似値 p0′ を入れた誤差は m/M の二次からである.

  1. 後方反跳は KN,−=(p+p0′)2/(2M).その値は 3.48×10−3eV となり,電子の損失の差は

KN,−−KN,+=2pp0′M=4mMK(K−Δ)=3.46×10−3eV

これは同じ Δ に対して原子へ渡る運動量が違うためである.損失だけを準位差とみなすと,方向に依存する準位を誤って推定する.励起原子の静止系での光子放出の反跳エネルギーの尺度は Δ2/(2Mc2)=1.22×10−9eV であり,電子衝突の反跳の方が大きい.前後の運動量,散乱角,原子質量も要る.確かめとして,m/M=5.00×10−5,K/(mc2)=3.90×10−5 は小さく,励起の質量増加の比 Δ/(Mc2) はさらに小さい.ただし,前方反跳による半径の相対変化 5.98×10−7 は,半径に対する相対論的な運動量の式 p2=2mK+K2/c2 から得られる相対論補正 K0′/(4mc2)≃7.32×10−6 より小さい.ここでの反跳補正は指定された非相対論模型内の結果であり,その小さな変化を実測で検出するには相対論補正も必要となる.

総合演習 6

オリジナル ★★★★★

ホール電圧と光への応答は同じ時間を測るか

長さ ℓ=2.00×10−2m,幅 w=5.00×10−3m,厚さ d=1.00×10−4m の一様なn型半導体を使います.長さ方向を +x,幅方向を +y,厚さ方向を +z とし,電流 I=1.00×10−3A を +x に流します.+z 向きの磁場 B=0.200T のもとで,VH=V(y=w)−V(y=0)=+2.00×10−2V,長さ方向の電圧降下は Vx=0.200V でした.暗状態では電子だけが電流を運び,移動度を be,電子密度を n0 とします.e=1.60×10−19C です.

磁場を外して弱い光を当て,試料全体で生成率が一様になるものとします.バンドギャップを超える光子が作る電子の増分密度 δn は,生成率 G と寿命 τ を使って dδndt=G−δn/τ に従うものとします.正孔の電流と移動度の変化は無視します.光子のエネルギーは Eγ=2.00eV,1eV=1.60×10−19J,吸収光子から電子を作る収量は1です.

電圧 Vx を一定に保って光による電流変化を測り,次の独立した読み出し回路に入力します.回路は入力電流を与える理想電流源と,並列の抵抗 RL=1.00×103Ω・容量 CL=1.00×10−6F からなり,電圧出力を Vo とします.回路は半導体へ作用しません.

n型半導体の長さℓ,幅w,厚さdと軸を示す.Iは+x向き,Bは+z向きで,V_Hはy=w側が正,V_xは長さ方向の電圧降下である.別枠の読み出し回路は電流変化を入力する理想定電流源と並列のR_L,C_Lからなり,出力はV_oである. n型半導体の長さℓ,幅w,厚さdと軸を示す.Iは+x向き,Bは+z向きで,V_Hはy=w側が正,V_xは長さ方向の電圧降下である.別枠の読み出し回路は電流変化を入力する理想定電流源と並列のR_L,C_Lからなり,出力はV_oである.
  1. ローレンツ力のつり合いから VH を導き,n0,be を求めよ.ホール電圧の極性は電子の運動方向とどう対応するか.

  2. 生成率の小さな正弦変化を G(t)=G0+Re⁡[G^eiωt] とする.余分な密度,電流変化,出力電圧の複素振幅を求めよ.測定で ω=1.00×103s−1 の出力振幅が準静的な振幅の 1/10 倍となった.τ と出力位相の遅れを求めよ.

  3. 吸収光電力が 2.00×10−8W の場合の定常 δn/n0 を求め,弱い光の近似を検査せよ.出力の遅れをすべて電子寿命によるものと誤認すると,(2)の振幅からどの寿命を推定するか.位相も測れば,その誤認を識別できるか.

解答を見る

考え方

単一キャリア模型で横電流0の電場を求める.光と回路の一次応答は複素振幅で掛け合わせる.移動度一定を仮定する.

  1. ドリフト速度は vx=−I/(en0wd).横方向の力のつり合い Ey+(v×B)y=0 から Ey=vxB<0.よって

VH=−Eyw=IBen0d,n0=IBedVH=6.25×1020m−3

縦方向の場の大きさは Vx/ℓ.I=en0be(Vx/ℓ)wd より

be=Iℓen0wdVx=2.00m2V−1s−1

電子は −x へ動き,磁気力は −y 向きとなる.負電荷が y=0 側にたまるため,y=w 側の電位が高い.与えた正のホール電圧と整合する.

  1. 密度の変動を Re⁡[n^eiωt] と書くと,iωn^=G^−n^/τ である.したがって

n^=τG^1+iωτ,I^=ebeVxwdℓn^

容量の複素インピーダンスは 1/(iωCL).並列回路のアドミタンスは 1/RL+iωCL だから,τL=RLCL とおいて

V^o=RLI^1+iωτL=RLebeVxwdτG^/ℓ(1+iωτ)(1+iωτL)

τL=1.00×10−3s なので,振幅比の2乗から [1+(ωτ)2](1+1)=10.よって ωτ=2,τ=2.00×10−3s.位相遅れは arctan⁡2+arctan⁡1=1.89rad=108.4∘ となる.

  1. 体積は ℓwd=1.00×10−8m3.毎秒の生成数は吸収電力を Eγ で割った 6.25×1010s−1 だから,G0=6.25×1018m−3s−1.定常密度は δn=τG0=1.25×1016m−3,δn/n0=2.00×10−5 で,弱い光の近似はよい.

回路を無視した一つの応答なら 1+(ωτwrong)2=10 と誤って置き,τwrong=3.00×10−3s を得る.その位相遅れは arctan⁡3=71.6∘ で,実測の108.4度とは異なるため識別できる.確かめとして,ω→0 で両応答は準静的な値へ戻る.近似には δn/n0 が小さいこと,回路の伝搬時間が 1/ω より十分短いこと,キャリアの運動が各周期でドリフト状態へ速く緩和することが必要である.

03原子核のエネルギー

第31章の崩壊・反応を,第5章の衝突,第15・16章の熱,第14章の測定に結び付けます.放射能と計数率,全エネルギーと熱を区別してください.減速の算術平均と対数平均を比べます.最後には測定時間,熱運動,有限燃料による限界を調べます.

総合演習 7

オリジナル ★★★★☆

崩壊熱と計数から検出効率を測る

静止した仮想的な親核が,娘核とα粒子だけに崩壊します.α粒子の質量は mα=4u,娘核の質量は M=96u,放出α粒子の運動エネルギーは Kα=4.80MeV です.娘核は基底状態に生じ,光子は出しません.α粒子と娘核の運動は非相対論的に扱います.1u=1.66×10−27kg,1MeV=1.60×10−13J,c=3.00×108ms−1 とします.

各時刻 t は測定窓の開始時刻で,窓の幅は Δt=60.0s です.背景は線源を外し,各行で独立に同時間測定しました.検出効率 η は一定で,数え落としと娘核の崩壊はありません.計数 N の標準偏差を N とします.

t(s)

線源ありの計数

背景のみの計数

0

12600

600

600

6600

600

1200

3600

600

全粒子を止める吸収体に線源を封じると,t=0 の崩壊による発熱率は P0=8.00×10−9W でした.熱測定の誤差は無視します.吸収体と線源の合計熱容量は Ch=1.00×10−5JK−1 で一定です.

計数では線源からの粒子を検出し,窓の開始時刻tから幅Δtの間を数える.別の熱測定では全粒子を止める断熱吸収体に線源を封じ,合計熱容量C_hと初期発熱率P_0が与えられる. 計数では線源からの粒子を検出し,窓の開始時刻tから幅Δtの間を数える.別の熱測定では全粒子を止める断熱吸収体に線源を封じ,合計熱容量C_hと初期発熱率P_0が与えられる.
  1. α粒子の運動量,娘核の反跳エネルギー,1崩壊の全エネルギー Q を求めよ.

  2. 正味計数 S(t) を崩壊定数 λ と初期放射能 A0 で表し,半減期,A0,η を求めよ.計数を単に Δt で割る場合の時間平均と,窓の開始時の計数率を区別せよ.

  3. 最初と最後の行から半減期の標準不確かさを一次まで求めよ.断熱での 1200s 後の温度上昇も求めよ.計数データだけで初期放射能と検出効率をそれぞれ決められるか,また測定窓を短くすれば必ず半減期の精度が上がるかを説明せよ.

解答を見る

考え方

親核静止の2体崩壊を非相対論的に扱う.全粒子の熱と検出計数を合わせる.単一指数崩壊と独立の計数ゆらぎを仮定する.

  1. mα=6.64×10−27kg,Kα=7.68×10−13J より,p=2mαKα=1.01×10−19kgms−1.娘核にも同じ大きさの運動量があるため

KN=p22M=mαMKα=0.200MeV,Q=Kα+KN=5.00MeV=8.00×10−13J
  1. 放射能は A(t)=A0e−λt.測定窓の間に起こる崩壊を積分すると

S(t)=η∫tt+ΔtA0e−λsds=ηA0e−λt1−e−λΔtλ

背景を引いた値は 12000,6000,3000.窓の積分因子は共通で,600s 遅れるごとに半分になる.T1/2=600s,λ=ln⁡2/T1/2=1.16×10−3s−1.真の放射能は熱測定から

A0=P0Q=1.00×104Bq

これを計数式へ入れると

η=12000λA0(1−e−λΔt)=0.0207

S(0)/Δt=200s−1 は窓内の平均である.窓の始点の計数率 ηA0=207s−1 に対して,平均は (1−e−λΔt)/(λΔt)=0.966 倍になる.

  1. 正味計数の分散は両計数の分散の和である.したがって δS0=12600+600,δS2=3600+600.λ=ln⁡(S0/S2)/(1200s) の誤差伝播は

δλ=11200s13200120002+420030002=1.97×10−5s−1

T1/2=ln⁡2/λ より,δT1/2/T1/2=δλ/λ,したがって δT1/2=10.2s.T1/2=(600±10)s 程度である.

断熱吸収体では ChdTdt=P0e−λt.積分して

ΔT=P0Chλ(1−e−λt)=0.519K(t=1200s)

計数だけが決める初期振幅は ηA0 であり,両者を分離できない.短い窓は補正を減らすが,計数の相対ゆらぎを増す.確かめとして,Kα/(mαc2)=1.29×10−3 は小さい.今回の λΔt=0.0693 は高精度で無視せず積分した.温度式には熱損失と熱容量の変化が無視できる条件も必要である.

総合演習 8

オリジナル ★★★★★

中性子の減速回数

質量 mn,初期エネルギー E0=2.00MeV の中性子が,質量 Amn の静止核と弾性衝突を繰り返します.A は質量数を近似する質量比で,重水素では A=2,炭素では A=12 とします.運動は非相対論的に扱います.各衝突は別の核と起こり,吸収,内部励起,衝突間の相関を無視します.重心系での中性子の散乱角を χ とし,cos⁡χ が −1 から1まで一様に分布する模型を与えます.中性子の残留エネルギー比を r=E′/E とします.

熱エネルギーに近づく目安を Eth=0.0400eV とし,1MeV=106eV,1eV=1.60×10−19J,mn=1.67×10−27kg,kB=1.38×10−23JK−1,c=3.00×108ms−1 とします.

実験室系では中性子m_nが静止核Am_nへ入射する.重心速度の向きと,重心系で定義する未知の散乱角χを示す.別枠の経路は多数の別の核と起こる衝突の模式図であり,必要な衝突回数を表さない. 実験室系では中性子m_nが静止核Am_nへ入射する.重心速度の向きと,重心系で定義する未知の散乱角χを示す.別枠の経路は多数の別の核と起こる衝突の模式図であり,必要な衝突回数を表さない.
  1. 速度を重心速度と相対速度に分けて r=(A2+1+2Acos⁡χ)/(A+1)2 を導け.r が一様分布する区間を求め,平均残留比 r― と,平均対数減少量 ξ=ln⁡(E/E′)― を求めよ.

  2. n 回後の平均エネルギーと,対数の平均から定義するエネルギー Eg=E0exp⁡(ln⁡(En/E0)―) を求めよ.重水素と炭素について,それぞれが Eth 以下となる最小整数 n を比較せよ.この2種類の回数は,個々の初到達回数を表すか.

  3. A=1 では r は0から1の一様分布となる.2回の衝突後に E2≤Eth となる確率を,a=Eth/E0 で表せ.平均だけでは速い粒子の残存を決められないことを説明せよ.毎秒 1.00×1012 個の中性子をほぼ熱エネルギーまで減速させる装置の発熱率を見積もれ.反跳核の運動エネルギーはすべて装置内で熱になるものとする.また,標的の温度 300K で静止核近似が破れる条件も述べよ.

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考え方

重心系での等方的な弾性散乱と独立な衝突を仮定する.平均エネルギーは平均比の積,対数平均は平均減少量の和で求める.

  1. 衝突前の中性子速度を v とすると,重心速度は v/(A+1),中性子の重心系速度の大きさは Av/(A+1).弾性衝突後も後者は同じであり,実験室の速度の2乗は

v′2=v2(A+1)2(1+A2+2Acos⁡χ)

E′/E=v′2/v2 から指定式を得る.cos⁡χ に対して一次なので,r は α≤r≤1,α=[(A−1)/(A+1)]2 の一様分布となる.よって

r―=1+α2,ξ=−11−α∫α1ln⁡rdr=1+αln⁡α1−α

積分には ∫ln⁡rdr=rln⁡r−r を用いた.A=1 では αln⁡α→0 として ξ=1 となる.

  1. En=E0∏j=1nrj で,独立性から

En―=E0(r―)n,ln⁡(En/E0)―=−nξ,Eg=E0e−nξ

L=ln⁡(E0/Eth)=ln⁡(5.00×107)=17.7.算術平均では n≥L/[−ln⁡r―],対数の平均では n≥L/ξ を満たす最小値である.重水素は α=1/9,r―=5/9,ξ=1−(ln⁡9)/8=0.725.したがって必要回数は順に31回,25回.炭素は α=121/169,r―=145/169,ξ=0.158 で,順に116回,113回となる.

速い粒子が算術平均を引き上げるため,対数平均のエネルギーは低い.両回数は固定回数後の集団の指標であり,個々の初到達回数の平均や,全粒子が減速する回数ではない.

  1. 2回後の比は r1r2.r1r2≤a の面積を積分すると

P(E2≤Eth)=∫0adr1+∫a1ar1dr1=a(1−ln⁡a)

今回は a=2.00×10−8 で,確率は 3.75×10−7 程度.平均だけでは分布の裾を決められない.

反跳が装置内で熱になるなら,1個が E0 を渡すので,発熱率は 1012(2.00×106)(1.60×10−19)=0.320W.熱エネルギーの残りを入射エネルギーに比べて無視した.300K の核の典型的な熱速度は kBT/(Amn),中性子速度は 2E/mn であり,比の2乗は kBT/(2AE).これが十分小さくなければ静止核近似は破れる.特に熱エネルギー付近では中性子が核からエネルギーを受け取ることもあり,同じ減速則を無限に続けられない.確かめとして,入射時の E0/(mnc2)=2.13×10−3 は小さいが,終盤の熱速度の比は別途検査しなければならない.

総合演習 9

オリジナル ★★★★☆

恒星の燃料収支

太陽に似た球形恒星から距離 d=1.50×1011m にある観測点で,放射エネルギー流束 F=1.40×103Wm−2 を測りました.恒星の半径は R∗=7.00×108m,質量は M∗=2.00×1030kg です.表面は一様な黒体,放射は等方的とします.σ=5.67×10−8Wm−2K−4,c=3.00×108ms−1,mp=1.67×10−27kg,1MeV=1.60×10−13J とします.

内部では,水素核4個からヘリウム核1個を作る一つの反応系列が働きます.電子・陽電子の収支も含めて1系列あたりの全解放エネルギーを Q=26.7MeV,放出するニュートリノ数を2個,ニュートリノが持ち去る全エネルギーの平均を qν=0.700MeV と与えます.残りは恒星内で熱になります.恒星の内部エネルギーと重力エネルギーは一定で,核反応による発熱が表面の放射とつり合う定常模型をまず使います.

球形恒星の内部では水素核4個からヘリウム核1個を作る反応系列が働き,1系列でニュートリノ2個を放出する.恒星の半径R_*,中心から観測点までの距離dと光の流束Fを示す.配置は模式的である. 球形恒星の内部では水素核4個からヘリウム核1個を作る反応系列が働き,1系列でニュートリノ2個を放出する.恒星の半径R_*,中心から観測点までの距離dと光の流束Fを示す.配置は模式的である.
  1. 恒星の光の全出力 Lγ,表面温度,毎秒の系列数 N˙ を求めよ.ニュートリノへ出るエネルギーを無視すると,反応率をどれだけ誤るか.ここで N˙ は毎秒の数を表す記号である.

  2. 観測点でのニュートリノの全数流束と,恒星の毎秒の質量減少を求めよ.毎秒消費する水素の質量と比べ,消費燃料と質量欠損が違う量であることを示せ.反応できる水素が 0.100M∗ あるとして,現在の反応率を一定に保つ燃焼期間を見積もれ.

  3. ニュートリノ流束が(2)の定常予測より5.0 %大きいと測定された.検出と反応系列の模型が正しく,F が同じで,重力エネルギーの変化を無視できるなら,恒星内部のエネルギーは増えているか減っているか.その変化率を求めよ.また,「(1)(2)の定常模型の全出力で質量が 0.0100M∗ 減る時間」を外挿し,有限の水素燃料と両立するか検討せよ.

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考え方

単一系列,等方放射,重力エネルギー一定を仮定する.光は熱となった分,ニュートリノ数は系列数を測る.

  1. 観測点を通る球面の面積を掛けると

Lγ=4πd2F=3.96×1026W

黒体の式 Lγ=4πR∗2σTs4 より,Ts=[Lγ/(4πR∗2σ)]1/4=5.80×103K.1系列の熱は Q−qν=26.0MeV=4.16×10−12J だから

N˙=LγQ−qν=9.52×1037s−1

Q 全体を熱として使うと,反応率は真値の (Q−qν)/Q=0.974 倍となり,約2.6 %低い.

  1. 1系列が2個出すので

Φν=2N˙4πd2=2FQ−qν=6.73×1014m−2s−1

質量減少率の大きさは

−dM∗dt=N˙Qc2=4.52×109kgs−1

水素消費は 4mpN˙=6.36×1011kgs−1.両者の比は Q/(4mpc2)=0.00711 で,残りはヘリウムになる.燃焼期間は

tf=0.100M∗4mpN˙=3.15×1017s
  1. ニュートリノが示す系列数は 1.050N˙.熱の生成率は 1.050Lγ だが,表面から出る光は Lγ のままである.重力エネルギーの変化を無視すると

dU∗dt=1.050N˙(Q−qν)−Lγ=0.050Lγ≃2.0×1025W>0

表面の光から核反応率を決める定常模型が成立しない.

定常時の質量減少率を丸めずに使う形式的な時間は t1=0.0100M∗c2/(N˙Q)=4.43×1018s.与えた燃料をすべて使ったときの欠損は 0.100M∗×0.00711=0.000711M∗ にすぎず,指定された燃料だけでは1 %の減少に到達しない.確かめとして,反応率を消去した数流束の式は m−2s−1 の次元を持つ.一定出力を外挿するには燃料消費割合と内部エネルギーの蓄積が小さい期間に限る必要がある.

04東大の原子の過去問を発展させる

東京大の光電効果,太陽電池,崩壊,対消滅を改題しました.第29・31章と第20〜22章の電磁気,第5章の保存則を組み合わせます.電流と軌道からエネルギーを測ってください.過渡応答と第三の物体も調べます.

総合演習 10

東京大 1989 前期(改題) ★★★★☆

光電管の充電と電力

光電管で容量 C=2.00×10−6F を充電します.容量の電圧 V≥0 は光電子を減速する向きで,接触電位差は無視します.電流の特性を Iph=I0(1−V/Vs)(0≤V≤Vs),Iph=0(V>Vs)と与えます.Vs は阻止電圧です.波長 λ1=400nm,λ2=600nm の単色光で,阻止電圧はそれぞれ Vs1=2.00V,Vs2=0.960V でした.1nm=10−9m,e=1.60×10−19C,c=3.00×108ms−1,電子の質量は m=9.11×10−31kg です.

以下では波長を 400nm,I0=4.00×10−6A とし,初め無電荷の容量と並列に R=1.00×106Ω を接続して時刻0から照射します.漏れ,配線抵抗,光電管の遅れを無視します.

光電管の光電子放出電極を正,集電子極を負とした減速電圧Vを,並列の容量Cと抵抗Rにも与える.下段には問題文で与えた光電流I_phの電圧特性を示す.I_0とV_sは特性の目盛りである. 光電管の光電子放出電極を正,集電子極を負とした減速電圧Vを,並列の容量Cと抵抗Rにも与える.下段には問題文で与えた光電流I_phの電圧特性を示す.I_0とV_sは特性の目盛りである.
  1. 阻止電圧からプランク定数 h と仕事関数 W を求め,V=0 での電子の最大速さを計算せよ.

  2. 電荷保存で V(t) を求め,定常電圧・電流と,1.00V に達する時刻 t∗ を求めよ.

  3. 照射中の給電が容量と抵抗に分かれるエネルギー収支を示せ.t∗ で照射を止めた後,抵抗へ渡るエネルギーも求めよ.

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考え方

与えた光電流と電荷保存を連立する.光電管の遅れを無視する集中定数模型を使う.

  1. eVs=hc/λ−W の差を取ると

h=e(Vs1−Vs2)c(1/λ1−1/λ2)=6.66×10−34Js

W=hc/λ1−eVs1=1.12eV.Kmax=eVs1 より vmax=2eVs1/m=8.38×105ms−1.

  1. 充電電流と抵抗電流に分けると

CdVdt=I0−(I0Vs+1R)V,V∞=I0I0/Vs+1/R,τ=CI0/Vs+1/R

初期条件から V=V∞(1−e−t/τ).今回 V∞=4/3V<Vs,τ=2/3s で,定常電流は V∞/R=1.33×10−6A.1.00/(4/3)=3/4 より t∗=τln⁡4=0.924s となる.

  1. t∗ で暗くすると電流源は0になり,CdVdt=−V/R.抵抗へ渡るエネルギーは

∫t∗∞V2Rdt=12CV(t∗)2=1.00×10−6J

電荷保存式に V を掛けると d(CV2/2)/dt=VIph−V2/R となり収支も合う.検算では,R→∞ なら阻止電圧へ近づき電流は消える.近似には eVs/(mc2) と回路伝搬時間を τ で割った比が小さいことが必要である.

総合演習 11

東京大 2014 前期(改題) ★★★★★

日陰の電池と保護素子

太陽電池2個を直列にし,抵抗 RL=400Ω へつなぎます.電池jの出力電流と電圧は

Ij(Vj)={Isj−Vj/RsVj<0,Isj0≤Vj≤V0,Isj−(Vj−V0)/rVj>V0

です.V0=0.400V,r=100Ω,Rs=1.00×103Ω,照射の弱い電池1は Is1=1.00×10−3A,電池2は Is2=3.00×10−3A とします.逆電圧でも使えます.

電池1に並列の保護素子を付けます.素子は通常オフで,V1=−VD,VD=0.100V に達するとオンになり,逆電圧を制限します.オンでは電池1を補う電流を同じ向きへ流します.電池と保護素子の内部容量・応答の遅れは無視します.

照射の弱い太陽電池1と太陽電池2を直列にし,負荷R_Lと容量Cを並列につなぐ.保護素子は電池1と並列で,V_1が−V_Dに達するとオンになる.各電池と負荷の電圧の正方向を示す. 照射の弱い太陽電池1と太陽電池2を直列にし,負荷R_Lと容量Cを並列につなぐ.保護素子は電池1と並列で,V_1が−V_Dに達するとオンになる.各電池と負荷の電圧の正方向を示す.
  1. 保護素子がない定常状態の電流と両電圧を求めよ.電池1の電力の符号と,特性の枝も調べよ.

  2. 保護素子付きの電流,負荷電力,迂回電流を求めよ.電池1と保護素子の消費電力も含めて収支を確認せよ.

  3. 保護素子を付けたまま,負荷と並列に C=1.00×10−6F を接続する.初電圧は V(0)=0.800V であり,時刻0で照射を上記へ変える.保護素子がオンになる時刻を求めよ.電源全体の出力電流 I と微分抵抗 −dVdI も,オンになる前後で連続か.

解答を見る

考え方

共通電流と特性の枝を連立する.準静的な特性を使い,素子内部の遅れを無視する.

  1. I>Is1 の枝では V1=Rs(Is1−I)=1.00V−RsI<0.電池2は V2=V0+r(Is2−I)=0.700V−rI.V1+V2=RLI より

I=1.70VRs+r+RL=1.13×10−3A,V1=−0.133V,V2=0.587V

I>Is1,V2>V0 で仮定と合う.電池1の電力 IV1=−1.51×10−4W は負で,消費する.

  1. (1)の電圧は −VD より負なので,保護素子はオンとなる.V1=−0.100V,V2=0.700V−rI を使い

I=0.600VRL+r=1.20×10−3A,V2=0.580V,PL=I2RL=5.76×10−4W

電池1は I1=Is1+VD/Rs=1.10×10−3A で,迂回電流は I−I1=1.00×10−4A.I≥I1,V2>V0 でオンと枝の条件を満たす.

電池2は IV2=6.96×10−4W.電池1は VDI1=1.10×10−4W,保護素子は VD(I−I1)=1.00×10−5W を消費し,差は負荷電力に等しい.

  1. 負荷電圧が 0.600 から 1.00V の範囲では,平坦な枝で I=Is1,V2=0.600V.電荷保存は CdVdt=Is1−V/RL.τ1=RLC=0.400ms とすると

V(t)=0.400V+0.400Ve−t/τ1

V=0.600V で逆電圧へ移り,t1=τ1ln⁡2=0.277ms.次の枝では I=(1.70V−V)/(Rs+r) だから

V(t)=Va+(0.600V−Va)e−(t−t1)/τ2,Va=0.453333V,τ2=C1/(Rs+r)+1/RL=0.293333ms

オン条件は I=I1 で,電圧は 0.490V.よって

tD=t1+τ2ln⁡0.600V−Va0.490V−Va=t1+τ2ln⁡4=0.684ms

オン後は I=(0.600V−V)/r.
オン直前の電流は (1.70V−0.490V)/(Rs+r)=1.10×10−3A,オン直後も (0.600V−0.490V)/r で同じ値になる.したがって dVdt も連続である.一方,電源全体の微分抵抗は −dVdI=Rs+r=1.10×103Ω から r=100Ω へ変わり,不連続である.近似には伝搬と素子の遅れが最短時定数 C/(1/r+1/RL)=0.0800ms より十分短い条件が要る.

総合演習 12

東京大 2000 後期(改題) ★★★★★

崩壊の運動量

真空中の平行な放射線ビームに,垂直な磁場 B=0.200T をかけます.正電荷が上へ曲がる向きです.上の単色線は rα=1.00m,下の連続線は最大半径 rmax=1.00×10−2m,直進する線もあります.α線,β線,γ線を含みます.e=1.60×10−19C,c=3.00×108ms−1,1MeV=1.60×10−13J,1u=1.66×10−27kg,電子の静止エネルギー mc2=0.511MeV とします.

α粒子は 4u,娘核は 196u です.βの娘核の静止エネルギーは MDc2=1.00×105MeV とします.α崩壊とβ崩壊では親核は静止し,娘核は基底状態です.電子は (pec)2=Ke(Ke+2mc2),α粒子と娘核には非相対論式を使い,ニュートリノの質量は0とします.

正電荷が上へ曲がる垂直磁場B中で,上に曲がる単色線,下に曲がる連続線,直進線を示す.半径r_αと最大半径r_maxは問題文の測定値である.軌道の縮尺は模式的で,下段の電子・娘核の測定部とは別の配置図である. 正電荷が上へ曲がる垂直磁場B中で,上に曲がる単色線,下に曲がる連続線,直進線を示す.半径r_αと最大半径r_maxは問題文の測定値である.軌道の縮尺は模式的で,下段の電子・娘核の測定部とは別の配置図である.
  1. 各線を識別し,α粒子の運動量と運動エネルギー,α崩壊の Q 値を求めよ.β線の最大運動量・運動エネルギーと,反跳を含めたβ崩壊の Q 値を求めよ.

  2. β線の一事象で,電子は Ke=0.100MeV,娘核は pDc=0.400MeV だった.ニュートリノのエネルギーと,電子との角を求めよ.(1)で得た Q は丸めず使え.

  3. 2体崩壊だけで連続したβ線を説明できるか.(2)の事象でニュートリノの存在を運動量から検査するには,娘核の運動量の大きさ以外に何を測る必要があるか.

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考え方

親核静止,娘核は基底状態とする.運動量と3粒子の収支を使う.

  1. 上がα線,下がβ線,直進がγ線.p=|q|Br より

pα=2eBrα=6.40×10−20kgms−1,Kα=pα22(4u)=1.93MeV

娘核は反対の同じ運動量を持つので,Qα=Kα(1+4/196)=1.97MeV.電子は pmax=eBrmax=3.20×10−22kgms−1,pmaxc=0.600MeV.したがって

Kmax=(pmaxc)2+(mc2)2−mc2=0.277MeV

端点ではニュートリノのエネルギーが0へ近づき,娘核が逆の運動量を持つ.Qβ=Kmax+(pmaxc)2/(2MDc2) であり,反跳は 1.80×10−6MeV.丸めると Qβ=0.277MeV となる.

  1. 娘核は KD=(pDc)2/(2MDc2)=8.00×10−7MeV.エネルギー保存から Eν=Qβ−Ke−KD≃0.177MeV.電子の運動量は pec=Ke(Ke+2mc2)=0.335MeV である.pD=−(pe+pν),pνc=Eν より,角 θ は

cos⁡θ=(pDc)2−(pec)2−Eν22(pec)Eν=0.138,θ=82.0∘
  1. 2体なら逆向きの同じ運動量が Q=Ke+KD で一意に決まる.ニュートリノを含めると,運動量の三角形とエネルギー配分が変わる.

両粒子の方向も測り,pmiss=−(pe+pD) を構成する.大きさを Eν/c と照合する.検算では,αの Kα/(mαc2) と娘核の KD/(MDc2) は小さいが,電子の運動には非相対論式を用いていない.

総合演習 13

東京大 1981 前期(改題) ★★★★☆

対消滅と第三の物体

静止電子と+x向きの陽電子が2光子へ消滅します.陽電子の運動エネルギーは K=0.100MeV,両者の静止エネルギーは mc2=0.511MeV です.陽電子には E+2=(pc)2+(mc2)2 を使い,外部への運動量移動はないものとします.

運動エネルギーKの陽電子が+x向きに静止電子へ入射する.+y軸上に光子検出器を置く.2光子のエネルギーやなす角は示していない. 運動エネルギーKの陽電子が+x向きに静止電子へ入射する.+y軸上に光子検出器を置く.2光子のエネルギーやなす角は示していない.
  1. 全エネルギーと全運動量を求め,自由な1光子消滅が不可能なことを示せ.

  2. 光子が +y 向きへ出る事象を選ぶ.そのエネルギー,もう1個のエネルギー,2光子のなす角を求めよ.

  3. 静止した電子と陽電子が,静止物体へ運動量を渡して1光子へ消滅する.物体の静止エネルギーは Mc2=1.00×105MeV で,内部状態は変わらない.光子エネルギーを厳密に,反跳エネルギーを近似して求めよ.(1)と矛盾するか.

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考え方

光子の運動量 E/c と全エネルギーを同時に保存させる.

  1. ET=2mc2+K=1.122MeV,pc=K(K+2mc2)=0.335MeV.1光子には ET=pc が必要で,不可能である.

  2. +y 向きの光子のエネルギーを E⟂ とすると,残りは (p,−E⟂/c).エネルギー ET−E⟂ より

(ET−E⟂)2=(pc)2+E⟂2,E⟂=ET2−(pc)22ET=mc2=0.511MeV

他方は E2=mc2+K=0.611MeV.2光子の角 ψ は,+y の単位方向と残りの運動量の内積から

cos⁡ψ=−E⟂E2=−0.5110.611,ψ=146.8∘

入射運動量が正で,等エネルギーの逆向き放出はできない.K→0 の極限では,両光子が mc2 を持ち,角は180度へ戻る.

  1. E0=2mc2 とおく.全運動量0より,物体は光子と逆に Eγ/c の運動量を持つ.物体のエネルギーも含めて

Mc2+E0=Eγ+M2c4+Eγ2

平方根を移して2乗すると

Eγ=E0(2Mc2+E0)2(Mc2+E0),KM=E0−Eγ=E022(Mc2+E0)

1≫E0/(Mc2) なら KM≃E02/(2Mc2)=5.22×10−6MeV=5.22eV.物体が運動量を受け取るため,(1)と矛盾しない.検算では,E0/(Mc2)=1.02×10−5 は小さく,重い物体ほど反跳のエネルギー費用が小さくなる.