第32章 原子の総合演習
01光子と物質のやりとり
第29章の
総合演習 1
光電子の
仕事関数
次に
静止した自由な金属膜へ光が右向きに入射する.反射光と放出電子は左向きである.膜の質量Mと電気容量Cを示す.
,放出電子数 ,電子1個の速さと 運動量を 求めよ.入射光の 電力が 同じなら,光子の エネルギーを 変えても は同じか. が一定の 場合に ついて 答えよ. 膜が
受ける 光だけの 力積と,電子放出も 含めた 力積を 求め,パルス直後の 膜の 速度を 計算せよ.膜の 並進エネルギーを 無視できる 精度で,膜に 残る 内部エネルギー増分を 求めよ.電子を 取り去る 仕事 が内部に 蓄えられると すると,残りの 熱エネルギーは いくらか. 最後に
帯電の 影響を 入れる.膜の 正電荷と 電位を 求め,電子の 脱出に 必要な 追加エネルギーが に比べて 小さい ことを 確かめよ.同じ膜に 当てる 光子数を 増す場合,帯電を 無視する 条件と,電子が 出なくなる 光子数の 目安を 求めよ.膜を 含む系全体に ついて,電子の 反動が 光だけの 力積より 大きくても 運動量保存に 反しない 理由を 述べよ.
解答を見る
考え方
光電流が
毎秒の
入射光子数は だから, となる.したがって
電子の
一定の
吸収される
光子は 個で,1個あたり の力積を 与える.反射される 光子は 個で,1個あたり を与える.光だけでは
電子が
膜の
電子の
電子が
出る たびに 膜に 正電荷が 残る. , だから,最後に出る 電子の 追加脱出エネルギーは 程度. との比は である.一般に
が
膜の
総合演習 2
散乱光と
静止した
静止電子に光子が+x向きに入射し,散乱光子は+y側へ出る.EとE′は測定値,φとθは未知の角であり,角度は模式的に描いている.
エネルギー・
運動量保存から を導け.測定値から 散乱角 ,電子の運動エネルギー ,反跳方向の角 を求めよ. 電子の
運動量と 速さを 求め, を運動エネルギーと する 近似の 誤差を 調べよ.この 事象だけから 電子の 静止エネルギーを 測定するには,光子の エネルギー以外に 何を 独立に 測れば よいか. を独立に 測り, を得たとする. の誤差を 無視して,静止エネルギーの 推定値と 不確かさを 求めよ.この 角度分解能で 標的の 有効散乱粒子が 電子より1 %重いと 判別できるか.また,同じ に対し または となったら,何を 再検討すべきか.
解答を見る
考え方
標的の
光子の
運動量は エネルギーを で割った ものである.電子の 成分は
したがって
左辺の
電子の
相対論では
である.全エネルギーは だから
したがって
であり,真の
分母は
なので,推定値は .一次の誤差伝播では
不確かさに
総合演習 3
同じ
内部の2準位の
励起原子Sと基底原子Aは初め静止している.光子はSからAへ進む.別枠に準位差Δと,Aに与える速度uの正方向を示す.
放出光子の
エネルギー と,静止原子Aが吸収するのに 必要な エネルギー を厳密に 求めよ. として 差の 主要項を 求め,反跳エネルギー で表せ. 原子Aに
光子の 進行方向の 速度 を与える.Aの 静止系で 見た 光子エネルギーを 一次まで として,吸収の 中心を 一致させる の向きと 大きさを 求めよ.原子の 一次元熱 運動の 速さの 標準偏差を としたとき,この 速さと 等しくなる 温度も 求めよ. 励起状態の
寿命を とし,線幅の エネルギー尺度を と見積もる.放出中心と 吸収中心の 差が この 幅より 大きい ことを, と で判定せよ.反跳差を 観測するには,熱運動と 寿命に どの 条件が 必要か.原子が 非常に 重い支持体と 一体で 反動するとした 場合の 極限とも 比較せよ.
解答を見る
考え方
内部準位差は
Sの
静止系で エネルギー保存は .光子を左辺へ移して2乗すると
吸収後の
両方の
より
Aは
より,幅は順に , .いずれも反跳差より 大きい.したがって,この 尺度の 範囲では 中心の ずれが あると いうだけで 吸収を 禁じる ことは できない.反跳差を 分離するには,少なくとも
が
02原子のエネルギー準位
第29章の
総合演習 4
スペクトルの
電荷
核質量が
電子m,−eと原子核M_N,+eは重心まわりに円運動し,両者の距離はr,相対運動の角速度はωである.2種類の原子のn=4からn=3への放出線を分光器へ導く.距離は模式的である.
重心から
電子・原子核までの 距離を 求め,相対 運動に 現れる 換算質量 を導け.ボーアの 条件 から,軌道半径とエネルギー準位を 求めよ.有限の 核質量での リュードベリ定数も 表せ. の場合,両放出線の 波長,波長差,それらを 分離するのに 必要な を求めよ.照明する 溝数が4000の 格子は,指定された 理想的な 分解基準を 満たすか. 実測では
だった. と一次の 不確かさを 求め,核質量が という 模型と 両立するか 判定せよ.核を 完全に 固定した 模型で この 差を 説明できるか. が上限に 近づく 場合には,なぜ質量推定が 難しくなるかも 説明せよ.
解答を見る
考え方
核と
距離は
, .速度はそれぞれ だから,運動エネルギーと角運動量は
電子の
したがって
今回の
準位差の 係数は .無限大の核質量での 波長を とおくと
丸めると
, とおくと, .したがって
測定の
よって
固定核模型では
総合演習 5
磁場で
質量
電子m,−eを電圧Vで加速して磁場B中の円軌道の半径を測る.磁場のない別の衝突部では静止原子Mに衝突させ,電子の運動量p,p′と散乱角θを測る.軌道と角度は模式的である.
衝突前の
電子の 運動エネルギーと 円軌道半径を 求めよ.電子と 原子の 重心 運動を 分け,励起が 可能に なる 最小加速電圧 を導け.しきい値で 電子と 原子は 衝突後に 静止するか. 衝突前後の
電子の 運動量の 大きさを ,散乱角を とする.測定値から を求める 式を 導け. の前方 散乱で,固定核近似の をまず 使い,原子の 反跳エネルギーと,衝突後の 電子を 再び同じ強さ の磁場へ 垂直に 入射させた ときの 円軌道半径を 求めよ.反跳補正を 求める 精度も 示せ. 同じ
加速電圧で 後方散乱 を選ぶと,前方 散乱より 電子の エネルギー損失が 大きくなる.この 差を の一次まで 求め,準位差が 方向に よって 変わったと 解釈して よいか 答えよ.励起原子の 静止系での 放出光子の 反跳補正と 比較し,電子の 衝突で 準位を 測る ときに 何を 同時に 測る 必要が あるか 説明せよ.
解答を見る
考え方
磁場は
加速で
, .円運動の 式 から である.数値では , , .
衝突前の
指定の
原子の
運動量は だから,エネルギー保存は
右辺の
電子の
後方
反跳は .その値は となり,電子の 損失の 差は
これは
総合演習 6
ホール電圧と
長さ
磁場を
電圧
n型半導体の長さℓ,幅w,厚さdと軸を示す.Iは+x向き,Bは+z向きで,V_Hはy=w側が正,V_xは長さ方向の電圧降下である.別枠の読み出し回路は電流変化を入力する理想定電流源と並列のR_L,C_Lからなり,出力はV_oである.
ローレンツ力の
つり合いから を導き, を求めよ.ホール電圧の 極性は 電子の 運動方向と どう 対応するか. 生成率の
小さな 正弦変化を とする.余分な 密度,電流変化,出力電圧の 複素振幅を 求めよ.測定で の出力振幅が 準静的な 振幅の 倍となった. と出力位相の 遅れを 求めよ. 吸収光電力が
の場合の 定常 を求め,弱い光の 近似を 検査せよ.出力の 遅れを すべて 電子寿命に よる ものと 誤認すると,(2)の 振幅から どの 寿命を 推定するか.位相も 測れば,その 誤認を 識別できるか.
解答を見る
考え方
単一キャリア模型で
ドリフト速度は
.横方向の力の つり合い から .よって
縦方向の
電子は
密度の
変動を と書くと, である.したがって
容量の
体積は
.毎秒の生成数は 吸収電力を で割った だから, .定常密度は , で,弱い光の近似は よい.
回路を
03原子核のエネルギー
第31章の
総合演習 7
崩壊熱と
静止した
各時刻
線源ありの | 背景のみの | |
|---|---|---|
全粒子を
計数では線源からの粒子を検出し,窓の開始時刻tから幅Δtの間を数える.別の熱測定では全粒子を止める断熱吸収体に線源を封じ,合計熱容量C_hと初期発熱率P_0が与えられる.
α粒子の
運動量,娘核の 反跳エネルギー,1崩壊の 全エネルギー を求めよ. 正味計数
を崩壊定数 と初期放射能 で表し,半減期, , を求めよ.計数を 単に で割る 場合の 時間平均と,窓の 開始時の 計数率を 区別せよ. 最初と
最後の 行から 半減期の 標準不確かさを 一次まで 求めよ.断熱での 後の温度上昇も 求めよ.計数データだけで 初期放射能と 検出効率を それぞれ決められるか,また 測定窓を 短くすれば 必ず半減期の 精度が 上がるかを 説明せよ.
解答を見る
考え方
親核静止の2体崩壊を
, より, .娘核にも同じ 大きさの 運動量が ある ため
放射能は
.測定窓の間に 起こる 崩壊を 積分すると
背景を
これを
正味計数の
分散は 両計数の 分散の 和である.したがって , . の誤差伝播は
断熱吸収体では
計数だけが
総合演習 8
中性子の
質量
熱エネルギーに
実験室系では中性子m_nが静止核Am_nへ入射する.重心速度の向きと,重心系で定義する未知の散乱角χを示す.別枠の経路は多数の別の核と起こる衝突の模式図であり,必要な衝突回数を表さない.
速度を
重心速度と 相対速度に 分けて を導け. が一様分布する 区間を 求め,平均残留比 と,平均対数減少量 を求めよ. 回後の平均エネルギーと,対数の 平均から 定義する エネルギー を求めよ.重水素と 炭素に ついて,それぞれが 以下となる 最小整数 を比較せよ.この2種類の 回数は,個々の 初到達回数を 表すか. では は0から1の一様分布と なる.2回の 衝突後に となる 確率を, で表せ.平均だけでは 速い 粒子の 残存を 決められない ことを 説明せよ.毎秒 個の中性子を ほぼ熱エネルギーまで 減速させる 装置の 発熱率を 見積もれ.反跳核の 運動エネルギーは すべて 装置内で 熱に なる ものとする.また,標的の 温度 で静止核近似が 破れる 条件も 述べよ.
解答を見る
考え方
重心系での
衝突前の
中性子速度を とすると,重心速度は ,中性子の重心系速度の 大きさは .弾性衝突後も後者は 同じであり,実験室の 速度の2乗は
積分には
で,独立性から
速い
2回後の
比は . の面積を 積分すると
今回は
反跳が
総合演習 9
恒星の
太陽に
内部では,水素核4個から
球形恒星の内部では水素核4個からヘリウム核1個を作る反応系列が働き,1系列でニュートリノ2個を放出する.恒星の半径R_*,中心から観測点までの距離dと光の流束Fを示す.配置は模式的である.
恒星の
光の 全出力 ,表面温度,毎秒の系列数 を求めよ.ニュートリノへ 出る エネルギーを 無視すると,反応率を どれだけ 誤るか.ここで は毎秒の 数を 表す記号である. 観測点での
ニュートリノの 全数流束と,恒星の 毎秒の 質量減少を 求めよ.毎秒消費する 水素の 質量と 比べ,消費燃料と 質量欠損が 違う量である ことを 示せ.反応できる 水素が あるとして,現在の 反応率を 一定に 保つ燃焼期間を 見積もれ. ニュートリノ流束が(2)の
定常予測より5.0 %大きいと 測定された.検出と 反応系列の 模型が 正しく, が同じで,重力エネルギーの 変化を 無視できるなら,恒星内部の エネルギーは 増えているか 減っているか.その 変化率を 求めよ.また,「(1)(2)の 定常模型の 全出力で 質量が 減る時間」を 外挿し,有限の 水素燃料と 両立するか検討せよ.
解答を見る
考え方
単一系
観測点を
通る 球面の 面積を 掛けると
黒体の
1系列が2個出すので
質量減少率の
水素消費は
ニュートリノが
示す系列数は .熱の生成率は だが,表面から出る 光は のままである.重力エネルギーの 変化を 無視すると
表面の
定常時の
04東大の原子の過去問を発展させる
東京大の
総合演習 10
光電管の
光電管で
以下では
光電管の光電子放出電極を正,集電子極を負とした減速電圧Vを,並列の容量Cと抵抗Rにも与える.下段には問題文で与えた光電流I_phの電圧特性を示す.I_0とV_sは特性の目盛りである.
阻止電圧から
プランク定数 と仕事関数 を求め, での電子の 最大速さを 計算せよ. 電荷保存で
を求め,定常電圧・電流と, に達する 時刻 を求めよ. 照射中の
給電が 容量と 抵抗に 分かれる エネルギー収支を 示せ. で照射を 止めた 後,抵抗へ 渡る エネルギーも 求めよ.
解答を見る
考え方
与えた
の差を 取ると
充電電流と
抵抗電流に 分けると
初期条件から
で暗く すると 電流源は0に なり, .抵抗へ渡る エネルギーは
電荷保存式に
総合演習 11
日陰の
太陽電池2個を
です.
電池1に
照射の弱い太陽電池1と太陽電池2を直列にし,負荷R_Lと容量Cを並列につなぐ.保護素子は電池1と並列で,V_1が−V_Dに達するとオンになる.各電池と負荷の電圧の正方向を示す.
保護素子が
ない 定常状態の 電流と 両電圧を 求めよ.電池1の 電力の 符号と,特性の 枝も 調べよ. 保護素子付きの
電流,負荷電力,迂回電流を 求めよ.電池1と 保護素子の 消費電力も 含めて 収支を 確認せよ. 保護素子を
付けたまま,負荷と 並列に を接続する.初電圧は であり,時刻0で照射を 上記へ 変える.保護素子が オンに なる 時刻を 求めよ.電源全体の 出力電流 と微分抵抗 も,オンになる 前後で 連続か.
解答を見る
考え方
共通電流と
の枝では .電池2は . より
(1)の
電圧は より負なので,保護素子は オンと なる. , を使い
電池1は
電池2は
負荷電圧が
から の範囲では,平坦な 枝で , .電荷保存は . とすると
オン条件は
オン後は
オン直前の
総合演習 12
崩壊の
真
α粒子は
正電荷が上へ曲がる垂直磁場B中で,上に曲がる単色線,下に曲がる連続線,直進線を示す.半径r_αと最大半径r_maxは問題文の測定値である.軌道の縮尺は模式的で,下段の電子・娘核の測定部とは別の配置図である.
各線を
識別し,α粒子の 運動量と 運動エネルギー,α崩壊の 値を求めよ.β線の 最大運動量・ 運動エネルギーと,反跳を 含めたβ崩壊の 値を求めよ. β線の
一事象で,電子は ,娘核は だった.ニュートリノのエネルギーと,電子との 角を 求めよ.(1)で 得た は丸めず 使え. 2体崩壊だけで
連続したβ線を 説明できるか.(2)の 事象で ニュートリノの 存在を 運動量から 検査するには,娘核の 運動量の 大きさ以外に 何を 測る 必要が あるか.
解答を見る
考え方
親核静止,娘核は
上がα線,下がβ線,直進がγ線.
より
娘核は
端点では
娘核は
.エネルギー保存から .電子の運動量は である. , より,角 は
2体なら
逆向きの 同じ 運動量が で一意に 決まる.ニュートリノを 含めると,運動量の 三角形と エネルギー配分が 変わる.
両粒子の
総合演習 13
対消滅と
静止電子と
運動エネルギーKの陽電子が+x向きに静止電子へ入射する.+y軸上に光子検出器を置く.2光子のエネルギーやなす角は示していない.
全エネルギーと
全運動量を 求め,自由な1光子消滅が 不可能な ことを 示せ. 光子が
向きへ出る 事象を 選ぶ.その エネルギー,もう1個の エネルギー,2光子のなす角を 求めよ. 静止した
電子と 陽電子が,静止物体へ 運動量を 渡して1光子へ 消滅する.物体の 静止エネルギーは で,内部状態は変わらない.光子エネルギーを 厳密に,反跳エネルギーを 近似して 求めよ.(1)と 矛盾するか.
解答を見る
考え方
光子の
, .1光子には が必要で,不可能である. 向きの光子の エネルギーを とすると,残りは .エネルギー より
他方は
入射
とおく.全運動量0より,物体は 光子と 逆に の運動量を 持つ.物体の エネルギーも 含めて
平方根を