問いしるべ
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問いから始める物理

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問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 18節
  1. ケプラーの法則と万有引力
  2. 円軌道の運動方程式と比の計算
  3. ケプラーの法則と万有引力の演習
  4. 極座標で運動を記述する
  5. 単位ベクトルの微分と極座標の加速度
  6. 極座標の演習
  7. 重力のポテンシャルとエネルギー
  8. 広義積分と実効ポテンシャル図の読み方
  9. 重力のポテンシャルとエネルギーの演習
  10. 軌道
  11. 軌道の方程式と保存則の連立
  12. 軌道の演習
  13. 球対称な質量分布と潮汐
  14. 置換積分による球殻の定理と潮汐の近似
  15. 球対称な質量分布と潮汐の演習
  16. 第10章の章末問題
  17. 第10章の発展問題
  18. 第10章のまとめ

第10章  万有引力と天体

01ケプラーの法則と万有引力

問い

木から離れたリンゴは,地球に引かれて真下に落ちます.では夜空の月はどうでしょうか.月も同じ地球の引力を受けているなら,月は地球に向かって落ち続けているはずです.ところが,月が地面に落ちてくることはありません.なぜ月は落ちてこないのでしょうか.また,リンゴを落とす力と月を引く力は,同じ力なのでしょうか.

考えてみる

リンゴを手から離すと真下に落ち,水平に投げると放物線を描いて少し離れた所に落ちます.強く投げるほど遠くに落ちるので,もっと強く投げれば,もっと遠くに落ちるはずです.地球は丸いので,地面は遠くへ行くほど下へ曲がっていきます.落ちる間に地面のほうが先に遠ざかるほど速く投げたら,ボールはどうなるのでしょうか.

球形の地表から同じ点で水平投射する.2つの落下軌道と円軌道を描く. 球形の地表から同じ点で水平投射する.2つの落下軌道と円軌道を描く.

月に当てはめると,月は慣性で直進しようとし,その進路が地球の引力で曲げられ続けているとも読めます.これが正しいかは,引力の大きさが距離とともにどう変わるかで決まります.それを教えてくれたのが,惑星の運動の観測です.

ケプラーの3法則

ケプラーは,ティコ・ブラーエが長年かけて集めた火星などの精密な観測を整理して,惑星の運動に3つの規則を見つけました.

法則 ケプラーの3法則

第1法則 惑星は,太陽を1つの焦点とする楕円軌道を描く.

第2法則 太陽と惑星を結ぶ線分は,等しい時間に等しい面積を掃く.すなわち,単位時間あたりに掃く面積(面積速度)は一定である.

第3法則 惑星の公転周期 T の2乗は,軌道の長半径 a の3乗に比例する.すなわち T2/a3 は,すべての惑星で同じ値である.

これらは観測から見つかった事実で,当時はなぜそうなるのかが分かっていませんでした.第2法則は,近日点(太陽に近い点)では速く,遠日点では遅く動くことを意味します.なお第3法則の共通の値は,惑星の質量が太陽よりずっと小さく,太陽が動かないとみなせる近似での関係です.

厳密な楕円の焦点を基準に,同じ平均近点角の幅に対応する等面積の領域を示す. 厳密な楕円の焦点を基準に,同じ平均近点角の幅に対応する等面積の領域を示す.

第8章で見たとおり,中心力だけを受ける質点では角運動量 L が保存し,面積速度 L/(2m) が一定です.逆にいえば,面積速度が一定だという第2法則は,惑星に働く力が常に太陽と惑星を結ぶ直線に沿うこと(中心力であること)を教えています.太陽に向かう引力か,遠ざける斥力かは第2法則だけでは決まらず,惑星が太陽のまわりに曲がって回ることから,引力だと分かります.

第3法則から逆2乗則を読む

ほとんどの惑星の軌道は円に近いので,半径 r,周期 T の等速円運動で近似します.向心加速度の大きさは a向心=rω2=4π2r/T2 です.第3法則を,すべての惑星に共通の定数 k を使って T2=kr3 と書くと

a向心=4π2rkr3=4π2k⋅1r2

となり,加速度は距離の2乗に反比例します.惑星の質量を m とすれば,太陽が惑星に及ぼす力は F=ma向心=(4π2/k)m/r2 で,m に比例します.作用・反作用により,惑星が太陽を引く力も同じ大きさです.惑星の質量に比例するなら,太陽の質量 M にも比例すると考えるのが対称的です.ニュートンはこれをすべての物体に広げました.

法則 万有引力の法則

質量 m1,m2 の2つの質点が距離 r だけ離れているとき,互いに引き合う力の大きさは

F=Gm1m2r2

である.向きは2点を結ぶ直線に沿う.G=6.67×10−11Nm2kg−2 を万有引力定数という.

「万有」とは,あらゆる物体の間に働くという意味です.リンゴと地球の間にも,机の上の2冊の本の間にも働きますが,後者は小さすぎて気づきません.地球のような球は,外から見ると全質量が中心に集まった質点と同じに扱えます.この事実は,この章の後の節で証明します.

地表の重力と地球の質量

質量 m の物体が地表(地球の中心から R)で受ける重力が万有引力だとすれば,地球の質量を M として mg=GMm/R2 です.

g=GMR2

重力加速度 g は,物体の質量によらず,地球の質量と半径だけで決まります.これで,質量によらず同じ加速度で落ちる理由もわかります.高さ h では g は GM/(R+h)2 に減ります.月の距離は地球の半径の約60倍なので,そこでの値は g の 1/602 のはずで,約 2.7×10−3ms−2 です.これが月の実際の向心加速度と合うことは,次の節で確かめます.

重ね合わせの原理

物体が3つ以上あるときは,その物体が受ける力を,ほかの物体それぞれからの万有引力のベクトル和として求めます.

ポイント 重ね合わせの原理

質点が受ける万有引力は,ほかの各質点が単独でいるときの万有引力の和(ベクトル和)である.第三の物体が現れても,2つの物体の間の力は変わらない.

月は地球に引かれると同時に太陽にも引かれ,その合力で動きます.

キャベンディッシュの実験

ニュートンの時代には,G の値は測られていませんでした.1798年にキャベンディッシュは,細い糸で水平につるした棒の両端に小さな鉛球をつけ,大きな鉛球を近づけて,棒がわずかにねじれるのを測りました.

棒の両端の小球が近くの大球へ引かれ,つり糸を軸に棒がねじれる. 棒の両端の小球が近くの大球へ引かれ,つり糸を軸に棒がねじれる.

質量 1kg の2つの物体を 1m 離したときの力は 6.67×10−11N にすぎず,これを測るのは大変な仕事でした.G が分かると,g=GM/R2 から地球の質量 M=gR2/G が求まります.この実験が「地球の重さを量った」と言われるのはそのためです.

月は落ち続けている

地表すれすれを水平に飛ぶ物体が円軌道を描くとして,運動方程式 mv2/R=mg を解くと,v=gR≈7.9×103ms−1(第一宇宙速度)です.これより遅ければ地面に落ち,この速さなら落ち続けながら地面に届きません.月の場合は,中心までの距離 r=3.84×108m での円運動の式から v=GM/r になります.地表では GMm/R2=mg なので GM=gR2 で,月までの距離は地球の半径の約60倍(r≈60R)だから,v=gR2/r=gR/60≈7.9×103/7.7≈1.0×103ms−1 です.月は,地球に引かれて落ち続けながら,横向きに進む速さのために地面に届かないのです.

ポイント ここまでのまとめ

  • ケプラーの3法則:楕円軌道,面積速度一定,T2/a3 が共通.第2法則は,力が中心力であること(角運動量の保存)を表す.

  • 円軌道と第3法則から,力は距離の2乗に反比例する.万有引力の法則は F=Gm1m2/r2,g=GM/R2.力はベクトルとして足し合わせる(重ね合わせ).

  • 問いの答え:月は地球に向かって落ち続けているが,横向きに十分な速さで進んでいるため,落ちた先の地面がいつも遠ざかる.リンゴを落とす力と月を回す力は,同じ万有引力である.

02円軌道の運動方程式と比の計算

円運動の運動方程式から第3法則を導き,ニュートンの「月の落下」を数で確かめます.

定理 数学の道具:べき乗則と比の計算

べき乗の比. ある量が y=Cxn(C は定数)と表されるとき,x を k 倍にすると y は kn 倍になる.2つの場合の比をとると,比例定数 C は消える.

y2y1=(x2x1)n

y2∝x3 なら y∝x3/2 のように,n が分数でもそのまま使える.

練習 1. (1) 木星の軌道の長半径は地球の 5.2 倍である.第3法則を使って,木星の公転周期は何年か.(2) 万有引力は距離の2乗に反比例する.地球の中心から 2R の点(R は地球の半径)の重力加速度は,地表の何倍か.

答え:(1) T∝a3/2 より (5.2)3/2≈11.9 倍.約12年. (2) 距離が2倍なので 1/22=14 倍.

練習 2. (1) 火星の軌道の長半径は地球の 1.52 倍である.公転周期は何年か.(2) 公転周期が 8 年の小惑星の軌道の長半径は,地球の何倍か.

答え:(1) 1.523/2≈1.9 年.(2) a∝T2/3 より 82/3=4 倍.

円軌道の運動方程式

質量 M の天体のまわりを,質量 m の物体が半径 r の等速円運動をしているとします.m は M よりずっと小さく,天体は動かないとみなします.向心方向の運動方程式は

mv2r=GMmr2

です.m が消えて v=GM/r.周期は T=2πr/v なので

T=2πr3GM,T2r3=4π2GM

です.この近似のもとで,右辺は m にも r にもよらず,中心の天体の質量 M だけで決まります(天体の動きまで考えると M は M+m になり,周回する物体の質量もわずかに入ります).太陽のまわりの惑星では M が共通なので,これがケプラーの第3法則です.楕円軌道では r が長半径 a に変わって同じ式が成り立ちます(後の節).

ニュートンの月の落下

月までの距離 r=3.84×108m は,地球の半径 R=6.37×106m の約 60.3 倍です.力が距離の2乗に反比例するなら,月の位置での重力加速度は地表の値 g=9.8ms−2 の 1/60.32 倍なので

a予想=9.860.32≈2.70×10−3ms−2

です.一方,月の公転周期は約 27.3 日 =2.36×106s なので,実際の値は

a実測=4π2rT2=4π2×3.84×108(2.36×106)2≈2.72×10−3ms−2

です.2つの値はよく一致し,地表の重力と月を回す力は同じ万有引力で説明できます.

1秒間の接線方向の進行と,直進位置から中心側へ落ちる変位.落下量は大きく誇張した模式図である. 1秒間の接線方向の進行と,直進位置から中心側へ落ちる変位.落下量は大きく誇張した模式図である.

1秒間に月は接線方向に約 1.0km 進み,その間に地球へ 12at2≈1.4mm だけ落ちます.この小さな落下が毎瞬続くので,月は直進せず円を描きます.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

地表の重力加速度を g=9.8ms−2,地球の半径を R=6.37×106m とする.自転の影響は無視し,万有引力定数を G=6.67×10−11Nm2kg−2 とする.

地表の質量mの物体に中心向きの重力mgが働く.中心から表面までがRである. 地表の質量mの物体に中心向きの重力mgが働く.中心から表面までがRである.
  1. 地球の質量 M を求めよ.

  2. 地球の平均密度を求めよ.

解答を見る

考え方 地表の重力が万有引力であるとして,mg=GMm/R2 を M について解く.

  1. M=gR2G=9.8×(6.37×106)26.67×10−11≈5.96×1024kg.

  2. 体積 43πR3≈1.08×1021m3 で割って 5.5×103kgm−3.地表の岩石(約 3×103kgm−3)より大きく,内部はもっと密だと分かる.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

地球は太陽のまわりを半径 1.50×1011m,周期 1 年 =3.16×107s の円軌道で回っているとする.万有引力定数を G=6.67×10−11Nm2kg−2,地球の質量を 5.97×1024kg とする.

円軌道の地球の速度は接線方向,万有引力は太陽へ向かう. 円軌道の地球の速度は接線方向,万有引力は太陽へ向かう.

太陽の質量を求め,地球の質量の何倍かを答えよ.

解答を見る

考え方 円軌道の式を,中心の天体(太陽)の質量 M について解く.

M=4π2r3GT2=4π2×(1.50×1011)36.67×10−11×(3.16×107)2≈2.0×1030kg.地球の質量の 2.0×10305.97×1024≈3.4×105 倍.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

赤道上空で,地上から見て静止して見える人工衛星(静止衛星)を考える.地球の質量を 5.97×1024kg,半径を 6.37×106m とし,衛星の周期は地球の自転周期に等しく 24 時間(8.64×104s)としてよい.

赤道上の地点と衛星が中心から同じ方向を保ち,地球と同じ角速度で公転する. 赤道上の地点と衛星が中心から同じ方向を保ち,地球と同じ角速度で公転する.
  1. 軌道半径 r(地球の中心から)を求めよ.

  2. 地表からの高さを求めよ.

  3. 衛星の速さを求めよ.

解答を見る

考え方 円軌道の式 T2/r3=4π2/(GM) を r について解く.

  1. GM=6.67×10−11×5.97×1024=3.98×1014m3s−2.

r3=GMT24π2=3.98×1014×(8.64×104)24π2≈7.53×1022m3

より,r≈4.22×107m.

  1. r−R≈3.6×107m(約 36000km).

  2. v=2πrT=2π×4.22×1078.64×104≈3.1×103ms−1.

ポイント ここまでのまとめ

  • 円軌道では v=GM/r,T2/r3=4π2/(GM).質量 m は消え,中心の天体の質量 M だけが残る.

  • 月の向心加速度は地表の g の 1/602 程度で,実測と合う.リンゴと月は同じ万有引力で動く.

  • 周期と軌道半径から中心天体の質量が求まる.べき乗の関係は,比をとると定数が消える.

03ケプラーの法則と万有引力の演習

距離は天体の中心から測り,力と加速度を区別して考えましょう.特に断らない限り,天体は球対称で自転せず,衛星の質量は中心天体に比べて十分小さいとします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

半径 R の惑星の地表で,重力加速度は g=9.8ms−2 である.

  1. 地表から高さ R の点での重力加速度を求めよ.

  2. その点にある質量 2.0kg と 6.0kg の物体について,重力の大きさと落下加速度を比べよ.

半径Rの惑星の外,中心距離2Rの位置で質量の異なる物体を比較する. 半径Rの惑星の外,中心距離2Rの位置で質量の異なる物体を比較する.
解答を見る

考え方 逆2乗則に入れる距離は高度ではない.まず中心距離を r=R+h と書き,g=GM/R2 との比をとる.

  1. h=R では r=2R だから,g(r)/g=R2/(2R)2=1/4.よって g(r)=2.45ms−2,与えられた精度では約 2.5ms−2 である.

  2. 力は F=mg(r) なので,順に 4.9N,約 15N であり,質量の比と同じく1対3である.一方,運動方程式で力をそれぞれの質量で割ると,加速度は両方とも g(r) になる.重い物体ほど強く引かれることと,同じ場所で同じ加速度をもつことは両立する.高さが変われば共通の加速度そのものは変わる.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

同じ恒星を回る惑星A,Bの軌道の長半径は aA=a,aB=4a であり,Aの周期は T である.

  1. Bの周期を求めよ.

  2. 両軌道が円なら,公転の速さの比 vB/vA と,向心加速度の大きさの比を求めよ.

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考え方 周期には長半径の3乗が,円運動の速さには軌道の周長も関わる.周期の比をそのまま速さの比にしない.

  1. ケプラーの第3法則から (TB/T)2=(4a/a)3=64.周期は正なので TB=8T.この結果は,恒星の質量が支配的なら楕円でも使える.

  2. 円の周長は4倍,1周に要する時間は8倍だから vB/vA=4/8=1/2.向心加速度の大きさは v2/r なので,その比は (1/2)2/4=1/16 である.これは万有引力による加速度 GM/r2 の比とも一致する.外側の惑星は遅く進むだけでなく,進行方向を曲げる加速度も小さい.楕円で瞬間の速さを比較するには,長半径に加えてその瞬間の中心距離が必要になる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

地球のまわりを半径 r=8.0×106m の円軌道で回る衛星を考える.GM=3.98×1014m3s−2 とする.

  1. 速さと周期を求めよ.

  2. 衛星内で自由に浮いている小球に重力は働いているか.「無重量」と円運動の関係を説明せよ.

衛星の接線方向の速度と中心向きの重力.軌道半径は8.0×10⁶ mである. 衛星の接線方向の速度と中心向きの重力.軌道半径は8.0×10⁶ mである.
解答を見る

考え方 衛星を円運動させる力が万有引力である.室内の小球にもほぼ同じ重力加速度が働くため,床で支える必要がない.

  1. mv2/r=GMm/r2 から v=GM/r=4.975×107≈7.1×103ms−1.したがって T=2πr/v≈7.1×103s,約 1.2×102 分である.周期の式 T=2πr3/(GM) に直接代入してもよい.

  2. 小球の重力加速度は GM/r2≈6.2ms−2 で,0ではない.衛星も小球も地球へ落下し続け,ほぼ同じ軌道を進むので,小球を床へ押し付ける支えの力がほとんど生じない.体重計が測るのはこの支えの力である.室内の大きさによる重力の差を無視する範囲で無重量となるのであり,地球の引力が消えるわけではない.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

同じ恒星を回る彗星の近日点距離は rp=d,遠日点距離は ra=5d である.近日点の速さを vp とする.

  1. 遠日点の速さ va を求めよ.

  2. 近日点と遠日点のまわりの十分短い等時間に進む弧の長さの比と,中心から見た角変位の比を求めよ.

太陽を焦点とし,近点距離d,遠点距離5dの楕円.速度の数値や比は記さない. 太陽を焦点とし,近点距離d,遠点距離5dの楕円.速度の数値や比は記さない.
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考え方 保存されるのは速さではなく面積速度である.両端点で速度は中心からの位置ベクトルと直交するので,L=mrv を使える.

  1. mdvp=m(5d)va より va=vp/5.引力が常に中心を向くので,その中心まわりの力のモーメントが0になることが保存の根拠である.

  2. 同じ短時間 Δt の弧長は vΔt だから,近日点側対遠日点側は5対1である.一方,角変位は Δθ≈vΔt/r なので比は (vp/d)/(va/(5d))=25.角運動量を L=mr2θ˙ と書けば,角速度が距離の2乗に反比例することからも求まる.面積は近似的に r2Δθ/2 であり,半径の2乗の比と角度の比が打ち消す.有限の長い時間では速さの変化を含めた面積で比較しなければならない.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

一直線上の x=0 に質量 M,x=d に質量 4M の質点を固定する.その間に質量の無視できる試験粒子を置く.

  1. 重力がつり合う位置 x0 を求めよ.

  2. その位置から直線に沿って微小変位 ξ を与えると,つり合いは安定か.加速度を ξ の1次まで求めよ.|ε| が1より十分小さいとき (1+ε)−2≈1−2ε,または f(x0+ξ)≈f(x0)+f′(x0)ξ を使ってよい.

Mと4Mの間隔はd.その間の試験粒子の座標をxとする.図の位置は未知のつり合い位置を示さない. Mと4Mの間隔はd.その間の試験粒子の座標をxとする.図の位置は未知のつり合い位置を示さない.
解答を見る

考え方 向きの異なる2つの重力を引き算し,つり合い点の近くでどちらが強まるかを調べる.ここで天体は外部の装置で固定されており,公転する2天体ではない.

  1. 右向き加速度は f(x)=4GM/(d−x)2−GM/x2.f(x0)=0 から 2/(d−x0)=1/x0 となり,x0=d/3 である.重い天体から遠い側に位置する.

  2. 微分すると f′(x)=8GM/(d−x)3+2GM/x3.x0=d/3 で f′(x0)=27GM/d3+54GM/d3=81GM/d3 なので,ξ¨≈(81GM/d3)ξ.右へずれると右向き,左へずれると左向きに加速し,ずれが拡大するので不安定である.つり合いとはその点で合力が0という条件であり,戻す力があるという意味ではない.粒子の質量は加速度の式から消えるため,この安定性は試験粒子の質量によらない.

ポイント 教える人へ

  • 距離が高度か中心距離かを,計算の前に図で確認させることが重要である.

  • 力と加速度,速さと角速度を別々の量として説明させる.

  • 面積速度から角運動量,中心力へと説明を戻せるかが理解の目安である.

  • つり合いと安定性は別の条件であり,微小なずれの向きを問うとよい.

04極座標で運動を記述する

問い

なめらかな水平の板の穴に糸を通し,板の上で円運動する小球の糸を下からゆっくり引くと,小球はだんだん速く回ります.第8章では,角運動量の保存から,半径を3分の1にすると速さが3倍になることを確かめました.ところが,糸が小球を引く力はいつも穴の方を向いていて,小球が回る向きの成分はありません.回る向きに押す力がないのに,なぜ速さが増えるのでしょうか.

考えてみる

中心のまわりを回る運動は,x,y の成分より,「中心からの距離 r」と「向き θ」で表すほうが自然です.素朴には,回る向きの加速度は第3章の円運動の接線加速度 rdωdt だと考えたくなります.もしそうなら,回る向きの力がない小球の角速度は変わらないはずです.しかし実際には,半径が3分の1になると角速度は9倍になります.

困った原因は,「中心向き」と「回る向き」という向きそのものが,小球が動くにつれて回っていくことにあります.x 軸,y 軸の向きは場所によらないので,成分を微分すればそのまま加速度の成分になりました.向きが変わる方向に分けるときは,向きの変化まで微分に入れなければなりません.

極座標と単位ベクトル

平面上の点 P の位置を,原点 O からの距離 r と,x 軸から反時計回りに測った角 θ(ラジアン)で表すのが極座標です.直交座標とは x=rcos⁡θ,y=rsin⁡θ の関係にあります.たとえば (r,θ)=(2,π3) の点は (x,y)=(1,3) です.

定義 極座標の単位ベクトル

点 P (r,θ) で,O から P へ向かう単位ベクトルを er,それを反時計回りに90度回した単位ベクトル(θ が増える向き)を eθ とする.

er=(cos⁡θ, sin⁡θ),eθ=(−sin⁡θ, cos⁡θ)

P の位置ベクトルは r=rer である.

θ=0 の点では er=(1,0),eθ=(0,1) ですが,θ=π2 の点では er=(0,1),eθ=(−1,0) です.同じ名前の単位ベクトルでも,場所によって向きが違います.

[図:極座標の回る単位ベクトル]

初期角は35°.角θを変えるとPと,互いに垂直な単位ベクトルeᵣ,eθが向きを変える.

単位ベクトルの時間変化

短い時間 Δt に角が Δθ だけ増えたとします.er は長さ1のまま Δθ だけ回るので,その先端は半径1の円の上を弧の長さ Δθ だけ,ほぼ eθ の向きに動きます.よって Δer≈Δθeθ です.同じように eθ の先端は −er の向きに動き,Δeθ≈−Δθer です.Δt で割って Δt→0 とすると次の式になります.成分の計算での確かめは次の節で行います.

定理 単位ベクトルの微分

θ˙=dθdt として

e˙r=θ˙eθ,e˙θ=−θ˙er
単位ベクトルの小さな変化を示す模式図. 単位ベクトルの小さな変化を示す模式図.

速度と加速度

r=rer を積の微分で時間微分すると,v=r˙er+re˙r=r˙er+rθ˙eθ です.r˙ は中心から離れていく速さ,rθ˙ は回る向きの速さで,v2=r˙2+r2θ˙2 です.r が一定なら第3章の v=rω に戻ります.もう一度微分した結果は次のとおりです(計算は次の節).

法則 極座標での速度と加速度

v=r˙er+rθ˙eθ
a=(r¨−rθ˙2)er+(rθ¨+2r˙θ˙)eθ,rθ¨+2r˙θ˙=1rddt(r2θ˙)

−rθ˙2 は第3章の向心加速度,rθ¨ は角速度の変化による項です.素朴な予想になかったのが 2r˙θ˙ で,半分は動径方向の速度 r˙er が er とともに回されて eθ の向きに曲がる分,残りの半分は半径が変わって回る向きの速さ rθ˙ が変わる分です.r が一定なら a=−rθ˙2er+rθ¨eθ となり,第3章の円運動の式(中心向きに rω2,接線方向に rdωdt)に戻ります.

中心力と r2θ˙

中心力 F=Fer では,運動方程式の eθ 成分が mrddt(r2θ˙)=0 なので,r2θ˙ は一定です.位置ベクトルに垂直な速度成分は rθ˙ なので,角運動量の大きさは L=mr2θ˙ で,これは第8章の角運動量の保存そのものです.短い時間 dt に位置ベクトルが掃く細い扇形の面積は 12r2dθ なので,面積速度 12r2θ˙=L2m も一定です.er 成分の式 m(r¨−rθ˙2)=F は,このあとの題材で軌道を調べるのに使います.

問いに戻る

糸の力は中心向きなので r2θ˙ が一定で,半径が3分の1になれば θ˙ は9倍,rθ˙ は3倍です.回る向きの加速度 rθ¨+2r˙θ˙ は0ですが,ddt(rθ˙)=r˙θ˙+rθ¨=−r˙θ˙ で,糸を引いている間(r˙<0)は正です.eθ の向きが回っているので,その成分の加速度が0でも,速度の eθ 成分は一定ではないのです.

エネルギーで見ると,糸を引いている間の小球は円ではなく内向きのうずまきを描き,速度には中心向きの成分 r˙ があります.速度は糸に垂直ではなく,張力 T の仕事率 −Ter⋅v=−Tr˙ は正です.「回る向きの成分がない」のは正しくても,小球が進む向きは円の接線方向ではなかったのです.

[図:糸で引く小球の速度の分解]

時間を手動で進めると,小球は内向きに進み,回る向きの速度成分が増える.初期状態では動径の内向き成分と回る向きの成分を持つ.

ポイント ここまでのまとめ

  • 極座標の単位ベクトル er,eθ は場所で向きが変わり,e˙r=θ˙eθ,e˙θ=−θ˙er.

  • v=r˙er+rθ˙eθ,a=(r¨−rθ˙2)er+1rddt(r2θ˙)eθ.r 一定で円運動の式に戻る.

  • 中心力では r2θ˙=L/m が一定(角運動量の保存,面積速度一定).

  • 問いの答え:糸を引いている間,小球は内向きに動くので,速度は糸に垂直でなく,糸の力が仕事をする.回る向きの加速度が0でも,eθ の向きが回るので rθ˙ は増える.

05単位ベクトルの微分と極座標の加速度

前の節で図から読んだ単位ベクトルの微分を成分で確かめ,加速度と面積速度の式を導きます.

定理 数学の道具:単位ベクトルの微分

角が時間とともに変わるとき. θ が時刻 t の関数なら,cos⁡θ は合成関数である.第3章の連鎖律で y=cos⁡u,u=θ(t) とすると

ddtcos⁡θ=−θ˙sin⁡θ,ddtsin⁡θ=θ˙cos⁡θ

となる.θ=ωt なら第3章の ddtcos⁡ωt=−ωsin⁡ωt に戻り,θ=t2 なら ddtcos⁡t2=−2tsin⁡t2 である.

単位ベクトルの微分. 成分ごとに微分すると

e˙r=(−θ˙sin⁡θ, θ˙cos⁡θ)=θ˙eθ,e˙θ=(−θ˙cos⁡θ, −θ˙sin⁡θ)=−θ˙er

er⋅er=1 を微分すると 2er⋅e˙r=0 となるように,長さが変わらないベクトルの微分は,もとのベクトルに垂直である.

練習 1. (1) θ=3t2 のとき,t=1 での e˙r を eθ で表せ.(2) r=2t,θ=t で動く点の t=1 での速さを求めよ.

答え:(1) θ˙=6t より 6eθ.(2) v=2er+2teθ より 22.

練習 2. (1) r=1.0,θ=2t の点の速度と加速度を er,eθ で表せ.(2) r=t2,θ=t の点の t=1 での速さを求めよ.

答え:(1) v=rθ˙eθ=2.0eθ,a=−rθ˙2er=−4.0er(等速円運動).(2) v=r˙er+rθ˙eθ=2er+1eθ より 5.

加速度の式を導く

v=r˙er+rθ˙eθ を項ごとに積の微分で微分します.第2項は r,θ˙,eθ の3つの積なので,1つずつ微分して足します.

ddt(r˙er)=r¨er+r˙θ˙eθ,ddt(rθ˙eθ)=r˙θ˙eθ+rθ¨eθ−rθ˙2er

足して向きごとにまとめると a=(r¨−rθ˙2)er+(rθ¨+2r˙θ˙)eθ です.r˙θ˙ が2回現れたのが 2r˙θ˙ の2の出どころです.ddt(r2θ˙)=2rr˙θ˙+r2θ¨ なので,eθ 成分は 1rddt(r2θ˙) とも書けます.

直交座標からも確かめられます.x=rcos⁡θ を2回微分すると x¨=(r¨−rθ˙2)cos⁡θ−(rθ¨+2r˙θ˙)sin⁡θ で,y¨ も同様です.これは er,eθ の x 成分にそれぞれの係数を掛けた和で,上の結果と一致します.

面積速度との関係

第8章の面積速度 12(xy˙−yx˙) に,x˙=r˙cos⁡θ−rθ˙sin⁡θ,y˙=r˙sin⁡θ+rθ˙cos⁡θ を代入すると,r˙ の項は打ち消し合って

xy˙−yx˙=r2θ˙

となります.面積速度は 12r2θ˙ で,前の節の扇形の考え方と一致します.逆に,直交座標で与えられた運動の θ˙ を,角を求めずに θ˙=xy˙−yx˙r2 と計算することもできます.

面積速度を表す細い扇形を示す模式図. 面積速度を表す細い扇形を示す模式図.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

なめらかな水平の板の穴 O に通した糸の先に質量 m の小球を結び,穴の下で糸を一定の速さ u で引き続ける.小球の O からの距離は r=r0−ut で,t=0 での角速度は ω0 である.

一定の速さで糸を引く小球を示す模式図. 一定の速さで糸を引く小球を示す模式図.
  1. 角速度 θ˙ と糸の張力 T を r で表せ.

  2. 運動エネルギー K の増える割合が,糸の力の仕事率に等しいことを確かめよ.

解答を見る

考え方 糸の力は O を向くので r2θ˙ が一定.張力は er 成分の運動方程式から出す.

  1. r2θ˙=r02ω0 より θ˙=r02ω0r2.r˙=−u,r¨=0 なので,m(r¨−rθ˙2)=−T より T=mrθ˙2=mr04ω02r3.

  2. K=12m(r˙2+r2θ˙2)=12m(u2+r04ω02r2).u は一定なので,連鎖律で dKdt=12mr04ω02⋅(−2r3)r˙=mr04ω02ur3.糸の力の仕事率は −Ter⋅v=−Tr˙=Tu で,(1)の T を入れると一致する.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

水平面内で,質量 m の小さな台車 P が,一定の角速度 ω で回る棒に沿って,中心 O から一定の速さ u で外へ走る.P の位置は r=ut,θ=ωt である.

回る棒に沿って走る台車を示す模式図. 回る棒に沿って走る台車を示す模式図.
  1. P の速度と加速度を er,eθ で表せ.

  2. P に働く力の合力の eθ 成分を求め,それを及ぼしているものを答えよ.

解答を見る

考え方 r˙=u,r¨=0,θ˙=ω,θ¨=0 を極座標の式に入れる.

  1. v=uer+uωteθ,a=−uω2ter+2uωeθ.軌跡 r=uωθ は,1周ごとに 2πuω ずつ広がるうずまきである.

  2. Fθ=2muω.角速度が一定でも,外へ出るほど回る向きの速さ rω が増えるので,回る向きの力が要る.それを及ぼすのは棒で,棒が P を回る向きに押している.この 2muω は,第11章で回る棒の上から見た運動を考えるとき,もう一度現れる.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

力を受けない点 P が,時刻 t に (b, v0t)(b>0)にあり,直線 x=b の上を一定の速さ v0 で進む.原点 O を中心とする極座標で見る.

等速直線運動の面積速度を示す模式図. 等速直線運動の面積速度を示す模式図.
  1. r2θ˙ が一定であることを示し,図の三角形を使って面積速度が一定であることを説明せよ.

  2. r¨ は0でないのに,r¨−rθ˙2=0 であることを確かめよ.

解答を見る

考え方 r2θ˙=xy˙−yx˙ を使えば角を求めずにすむ.r=b2+v02t2 は連鎖律で微分する.

  1. x˙=0,y˙=v0 より r2θ˙=bv0 で一定.時間 Δt に P が進む区間 v0Δt を底辺とする三角形の高さは,いつも O から直線までの距離 b なので,面積は 12bv0Δt で変わらない.力が0は中心力の特別な場合である.

  2. r˙=v02tr.積の微分と ddt1r=−r˙r2 を使って

r¨=v02r−v02tr˙r2=v02(r2−v02t2)r3=b2v02r3

である.平方根や分数を微分せずに,r2=b2+v02t2 の両辺を t で微分してもよい.2rr˙=2v02t より rr˙=v02t,これをもう一度積の微分で微分すると r˙2+rr¨=v02 なので

r¨=v02−r˙2r=v02r(1−v02t2r2)=b2v02r3

となり,同じ結果になる.

一方 θ˙=bv0r2 より rθ˙2=b2v02r3 で,r¨−rθ˙2=0 となり,力が無いことと合う.r¨ だけを動径方向の加速度と思うと,ありもしない力を考えてしまう.

ポイント ここまでのまとめ

  • 連鎖律で ddtcos⁡θ=−θ˙sin⁡θ.これから e˙r=θ˙eθ,e˙θ=−θ˙er.

  • 速度を積の微分でもう一度微分すると,r˙θ˙ が2回現れて a=(r¨−rθ˙2)er+(rθ¨+2r˙θ˙)eθ.

  • xy˙−yx˙=r2θ˙.面積速度は 12r2θ˙ で,中心力なら一定.

  • 動径方向の加速度は r¨ ではなく r¨−rθ˙2 である.

06極座標の演習

動径方向と回る向きの成分は,場所とともに向きを変えます.r˙,rθ˙,r¨−rθ˙2,rθ¨+2r˙θ˙ を分け,成分の変化とベクトルの変化を区別してください.ドットは時間微分を表します.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

原点Oのまわりの極座標で,ある瞬間の運動が r=2.0m,θ=π/2,r˙=−0.50ms−1,θ˙=0.75rads−1,r¨=0,θ¨=0.20rads−2 と測定された.

  1. 速度を直交座標の成分で表し,速さを求めよ.

  2. 加速度を直交座標の成分で表せ.

y軸上の点での単位ベクトルを示す模式図. y軸上の点での単位ベクトルを示す模式図.
解答を見る

考え方 まず極座標の成分を計算し,この位置の単位ベクトルへ掛ける.

  1. er=(0,1),eθ=(−1,0) なので v=−0.50er+1.5eθ=(−1.5,−0.50)ms−1.速さは 1.52+0.502≈1.6ms−1.

  2. ar=−2.0×0.752=−1.125ms−2,aθ=2.0×0.20+2(−0.50)×0.75=−0.35ms−2.したがって a=(0.35,−1.125)ms−2≈(0.35,−1.1)ms−2.rθ˙ は速度,rθ˙2 と r˙θ˙ は加速度の次元である.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

原点Oから +x 方向に距離 a の点Cを中心とする半径 a の円上を,点Pが一定角速度 Ω で反時計回りに動く.時刻 t=0 にPは (2a,0) にある.0≤Ωt<π を考える.

  1. Oを原点とする極座標で r,θ を表せ.必要なら 1+cos⁡ϕ=2cos2⁡ϕ2,sin⁡ϕ=2sin⁡ϕ2cos⁡ϕ2 を使ってよい.二等辺三角形 OCP の幾何から求めてもよい.

  2. 極座標の速度の式から,Pの速さが aΩ で一定であることを示せ.

円の中心と極座標の原点を示す模式図. 円の中心と極座標の原点を示す模式図.
解答を見る

考え方 円の中心から測った角と,Oから測った角は同じではない.半角の公式で x,y を同じ係数でくくる.

  1. x=a(1+cos⁡Ωt)=2acos2⁡(Ωt/2),y=asin⁡Ωt=2asin⁡(Ωt/2)cos⁡(Ωt/2).指定した区間では cos⁡(Ωt/2)>0 だから r=2acos⁡(Ωt/2),θ=Ωt/2.

  2. r˙=−aΩsin⁡(Ωt/2),rθ˙=aΩcos⁡(Ωt/2).よって v2=r˙2+r2θ˙2=a2Ω2,v=aΩ.Oからの距離は変わっても,速さは一定である.t→π/Ω ではPがOへ近づき,極座標は原点で定義できなくなるが,速さは有限のままである.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

質量 m の小球が,鉛直線 x=b>0 上を x=b,y=v0t−gt2/2 と運動する.上向きが +y で,力は鉛直下向きの重力だけである.Oを原点とする極座標で考える.

  1. Oのまわりの角運動量 L と,面積速度を求めよ.

  2. dLdt=rFθ が成り立つことを,重力の成分から確かめよ.

原点からずれた鉛直の運動を示す模式図. 原点からずれた鉛直の運動を示す模式図.
解答を見る

考え方 直交座標で角運動量を求めてから,極座標の成分の式と照合する.等速運動の例題と違って,Oまわりのトルクは0ではない.

  1. L=m(xy˙−yx˙)=mb(v0−gt).面積速度は符号つきで L/(2m)=b(v0−gt)/2.上昇中は正,頂点で0,下降中は負である.幾何学的な面積の増加率を求める場合は絶対値をとる.

  2. F=(0,−mg),eθ=(−sin⁡θ,cos⁡θ) より Fθ=−mgcos⁡θ.rcos⁡θ=b なので rFθ=−mgb=dLdt.L の単位は kgm2s−1,その微分は Nm.g→0 では角運動量と面積速度が一定になり,等速直線運動の結果に戻る.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

平面内で質量 m の粒子が r=r0eλt,θ=ωt と動く.r0,λ,ω は正の定数で,λ,ω の単位は s−1 である.この曲線は,半径が角に対して指数関数的に増すらせんである.ddteλt=λeλt を使ってよい.

  1. 速度,加速度を極座標の成分で表せ.

  2. 必要な合力は中心力か.λ=ω の場合,力の動径成分が0でも半径が増す理由を説明せよ.

指数関数的に広がるらせんを示す模式図. 指数関数的に広がるらせんを示す模式図.
解答を見る

考え方 r の時間微分は r˙=λr,r¨=λ2r.速度の成分の変化だけで加速度を判断しない.

  1. v=r(λer+ωeθ),a=r[(λ2−ω2)er+2λωeθ].速さは rλ2+ω2 で増える.

  2. Fθ=2mλωr≠0 だから中心力ではない.λ=ω なら r¨=rω2 で,動径方向の加速度 r¨−rω2 は0でも,距離の2階微分 r¨ は正である.向きが回る分が差を生む.λ→0 で半径一定の円運動となり,a=−r0ω2er に戻る.λωr の単位は加速度である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

質量 m の粒子が,原点Oを向く力だけを受けて平面内を動く.Oからの距離は r=r0(1+ϵcos⁡νt) である.0<ϵ<1,ν>0,r2θ˙=h>0 が一定とする.

  1. θ˙ と,必要な力の外向き成分 Fr を時刻の関数で表せ.

  2. 距離が最小になる瞬間にも力がOを向くための h の条件を求めよ.その条件だけで全時刻にわたって力がOを向くと言えるか調べ,全時刻での条件も求めよ.

中心力運動での距離の範囲を示す模式図. 中心力運動での距離の範囲を示す模式図.
解答を見る

考え方 中心力の角方向の式から角速度が決まる.動径の2階微分が正でも,力が外向きとは限らない.

  1. θ˙=h/r2,r¨=−r0ϵν2cos⁡νt より Fr=m[−r0ϵν2cos⁡νt−h2/r3].r2θ˙ が一定なので Fθ=0 である.

  2. 最小距離では cos⁡νt=−1.Fr<0 の条件は h2>r04ϵν2(1−ϵ)3.ただしこれは全時刻の条件とは限らない.q=−cos⁡νt とすれば,外向きの項が生じる半周期で必要な条件は h2>r04ϵν2q(1−ϵq)3(0≤q≤1).ddq[q(1−ϵq)3]=(1−ϵq)2(1−4ϵq) より,最大値は ϵ≤1/4 なら (1−ϵ)3,ϵ>1/4 なら 27/(256ϵ).したがって全時刻の条件は,それぞれ h2>r04ϵν2(1−ϵ)3,h2>27r04ν2/256 である.最小距離だけを調べれば十分なのは ϵ≤1/4 の場合である.h2 と r04ν2 はともに m4s−2 の次元をもち,ϵ→0 で円運動に戻る.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

Oを通る半径 a の円の一部を,質量 m の粒子が r=2acos⁡θ,−π/2<θ<π/2 に沿って動く.今度は円周上の速さを一定にせず,r2θ˙=h>0 を一定に保つ.

  1. r˙ と r¨ を r,θ で表せ.

  2. 必要な合力が中心力であることを示し,その大きさの r への依存性を求めよ.

面積速度を一定に保つ円の軌道を示す模式図. 面積速度を一定に保つ円の軌道を示す模式図.
解答を見る

考え方 θ˙=h/r2 を使って角に関する微分を時間微分へ直す.演習2と同じ幾何学的な円でも,時間の進み方が違えば力も違う.

  1. r˙=(−2asin⁡θ)h/r2.θ¨=−2hr˙/r3 なので,r¨=−rθ˙2−2asin⁡θθ¨=−h2/r3−8a2h2sin2⁡θ/r5.4a2sin2⁡θ=4a2−r2 を入れると r¨=h2/r3−8a2h2/r5.

  2. aθ=r−1ddt(r2θ˙)=0.ar=r¨−rθ˙2=−8a2h2/r5 より,力はOを向き,大きさは 8ma2h2/r5 で,距離の5乗に反比例する.h の単位は m2s−1 だから,a2h2/r5 は加速度である.Oへ近づくと力は発散するので,Oそのものを通過する運動まではこの模型で扱えない.

ポイント 教える人へ

  • 速度の成分を,その位置の単位ベクトルと一緒に図へ描かせる.

  • r¨ と動径加速度の違いを,円の中心と極座標の原点が異なる例で説明させる.

  • 面積速度が一定かどうかは,原点のまわりのトルクで判断させる.

  • 演習5では,1つの特別な瞬間の条件が全時刻の条件になるかを確かめさせる.

07重力のポテンシャルとエネルギー

問い

ロケットを地上から打ち出すとき,どれだけ速く飛び出せば,二度と地球に戻ってこないでしょうか.空気抵抗は考えず,エンジンは最初の一瞬だけ働くものとします.速く打ち出すほど高くまで昇りますが,どこまで昇っても,いつかは引き戻されそうにも思えます.引き戻されない速さというものは,本当にあるのでしょうか.

考えてみる

地表付近では,高さ h の位置エネルギーは mgh です.高さ h まで昇るには 12mv2=mgh より v=2gh が必要で,h を大きくすればいくらでも大きな速さが要ります.無限遠まで行くには,無限に大きなエネルギーが必要に見えます.

ただしこの計算は,重力が高さによらず一定だと仮定しています.実際には,遠くへ行くほど万有引力は距離の2乗に反比例して弱まります.弱まる力に逆らってする仕事の総和は,有限になるかもしれません.確かめるために,まず万有引力の位置エネルギーを正しく求めましょう.

万有引力の位置エネルギー

質量 M の天体は動かないものとし,その中心から r の位置にある質量 m の物体を考えます.万有引力は中心力で,大きさは距離だけで決まるので保存力です.第6章で見たとおり,位置エネルギー U(r) は,基準点までの移動で力がする仕事として決まります.基準点を無限遠にとり,半径方向外向きを正とすると,力は F=−GMm/r2 です.

U(r)=∫r∞(−GMmr′2)dr′=[GMmr′]r∞=0−GMmr=−GMmr

経路によらないので,半径方向に動く経路で計算してかまいません.

法則 万有引力の位置エネルギー

無限遠を基準とするとき,質量 M と m の質点が距離 r だけ離れているときの位置エネルギーは

U(r)=−GMmr

である.

U=−GMm/rを数値計算して描いた曲線.地表から単調に増加し無限遠で0に近づく. U=−GMm/rを数値計算して描いた曲線.地表から単調に増加し無限遠で0に近づく.

値が負なのは,基準の無限遠より低い位置にいるからです.離れるほど U は増えて 0 に近づきます.F=−dUdr を計算すると −GMm/r2 になり,確かに引力です.

地表付近の mgh との関係も見ておきます.r=R+h で h が R より十分小さいなら

U(R+h)−U(R)=GMmR−GMmR+h=GMmhR(R+h)≈GMR2mh=mgh

です.mgh は,U(r) の差を地表のすぐ近くで見た近似でした.

力学的エネルギーと軌道の種類

万有引力だけが働くなら,力学的エネルギー E は保存します.

E=12mv2−GMmr

12mv2≥0 より U(r)≤E でなければ運動できません.これは,中心を通る直線上を動く(角運動量が0の)場合には動ける範囲そのものを決め,横向きの速さがあるときは必要条件にとどまります.以下の分類のうち軌道の形(円・楕円・放物線・双曲線)は,角運動量が0でない場合のものです.

  • E<0:−GMm/r≤E より r≤GMm/|E| で,遠くへ行けない.束縛された運動で,角運動量が0でなければ軌道は円か楕円になる.

  • E=0:無限遠にちょうど速さ 0 で届く.軌道は放物線になる.

  • E>0:無限遠でも速さが残る.軌道は双曲線になる.

L=0の半径方向の運動では,負のエネルギー線とUの交点が最高点となる.角運動量がある場合の転回点には実効ポテンシャルを用いる. L=0の半径方向の運動では,負のエネルギー線とUの交点が最高点となる.角運動量がある場合の転回点には実効ポテンシャルを用いる.

角運動量が0なら,この交点が最も遠い点です.横向きの速さがあると,交点に届く前に折り返します.その一般の転回点は,あとの実効ポテンシャルの図で読みます.軌道の形そのものは,この章の後の節で詳しく調べます.

脱出速度

地表(中心から R)から速さ v0 で打ち出した物体が無限遠まで行ける条件は E≥0 です.

12mv02−GMmR≥0⟹v0≥2GMR=2gR

定義 脱出速度

天体の表面から打ち出した物体が,二度と戻らず無限遠へ行ける最小の速さ

vesc=2GMR=2gR

を脱出速度(第二宇宙速度)という.打ち出す向きにはよらない(地面にぶつからない向きなら).

地球では vesc≈1.12×104ms−1(約 11kms−1)です.地表すれすれの円軌道の速さ gR≈7.9×103ms−1 の 2 倍にあたります.必要なエネルギーが有限なのは,U が無限遠で 0 に近づくからです.質量 m の物体には GMm/R=mgR のエネルギーが必要で,m=1kg なら gR≈6.2×107J です.これは,重力が一定のまま半径ぶん R だけ持ち上げる仕事 mgR と同じです.

重力ポテンシャル

位置エネルギーを質量 m で割ると,物体の質量によらず,場所だけで決まる量になります.

Φ(r)=U(r)m=−GMr(単位 Jkg−1=m2s−2)

これを重力ポテンシャルといいます.質量 m の物体の位置エネルギーは U=mΦ,重力加速度は −dΦdr です.電気の電位は,これと同じ考え方で定義されます.

実効ポテンシャル:角運動量を含めた1次元化

楕円軌道では r も θ も変わります.前の題材の極座標で,速度は v=r˙er+rθ˙eθ で,速さの2乗は r˙2+r2θ˙2 です.中心力なら角運動量 L=mr2θ˙ が一定なので,回る向きの速さは rθ˙=Lmr と r だけで書けます.万有引力に限らず,位置エネルギーが距離だけで決まる U(r) の中心力(力の er 成分は F(r)=−dUdr)で考えると

E=12mr˙2+L22mr2+U(r)

となり,θ が式から消えます.

定義 実効ポテンシャル

位置エネルギー U(r) の中心力のもとで,角運動量 L で運動する質点について

Ueff(r)=L22mr2+U(r)

を実効ポテンシャルという.力学的エネルギーは E=12mr˙2+Ueff(r) で,動径方向の運動は,ポテンシャル Ueff の中の1次元の運動として扱える.

運動方程式の er 成分 m(r¨−rθ˙2)=F(r) で,mrθ˙2=L2mr3 を右辺へ移しても

mr¨=F(r)+L2mr3=−dUeffdr

となります.L22mr2 は,回っているために外向きの力 mrθ˙2 が働くかのように見える分で,第11章の遠心力と同じ形です.L≠0 なら,r が小さいところでこの項が急に大きくなり,中心に近づくのを妨げる壁になります.

読み方は第6章のポテンシャル図と同じです.E=Ueff(r) の点が転回点で,r˙=0 になりますが,rθ˙ は残るので,物体は止まらず,近づく動きから遠ざかる動きへ移るだけです.転回点が2つあれば r はその間を往復し(束縛された運動),1つなら壁で跳ね返って遠くへ去ります.谷の底は r が一定の円軌道です(安定性は次の節).

万有引力では Ueff(r)=L22mr2−GMmr で,近くは壁,遠くは 0 に近づく裾の谷です.底に E を合わせれば円軌道,少し高ければ近点と遠点の間を r が往復する楕円,E≥0 なら遠くへ去ります.L=0 では壁がなく,中心へ落ちていきます.

Ueff/A=1/(2x²)−1/xを数値計算した.負のエネルギーには2つの転回点があり,極小は円軌道に対応する. Ueff/A=1/(2x²)−1/xを数値計算した.負のエネルギーには2つの転回点があり,極小は円軌道に対応する.

ばねのように距離に比例する引力(U=12kr2)なら,Ueff=L22mr2+12kr2 は遠くでも上がり続け,どんな E でも転回点が2つで,遠くへは去れません.万有引力で脱出ができるのは,谷の高さに上限があるからです.

同じ横軸rで,万有引力とばね型の中心力の実効ポテンシャルを並べる.橙のエネルギー線と曲線の交点が転回点になる.縦軸の縮尺はパネルごとに違う. 同じ横軸rで,万有引力とばね型の中心力の実効ポテンシャルを並べる.橙のエネルギー線と曲線の交点が転回点になる.縦軸の縮尺はパネルごとに違う.

ポイント ここまでのまとめ

  • 万有引力は保存力で,無限遠を基準にすると位置エネルギーは U(r)=−GMm/r.力学的エネルギーは E=12mv2−GMm/r.

  • 角運動量が0でないとき,E<0 は束縛(円・楕円),E=0 は放物線,E>0 は双曲線.重力ポテンシャルは Φ=−GM/r.

  • 中心力 U(r) のもとでは Ueff=L22mr2+U(r) を使って,動径方向を1次元の運動として扱える.転回点,束縛と非束縛,円軌道を図から読む.

  • 問いの答え:地表から無限遠までのエネルギーは有限なので,vesc=2GM/R≈11kms−1 以上で打ち出せば二度と戻らない.

08広義積分と実効ポテンシャル図の読み方

広義積分を整理し,一般の中心力の実効ポテンシャルの図から,円軌道の条件と安定性を読み取ります.

定理 数学の道具:広義積分とべき乗の近似

広義積分. 上端が無限大の積分は,上端を b として計算してから b→∞ とする.n>1 のとき

∫r∞dxxn=limb→∞[x1−n1−n]rb=r1−nn−1

と有限の値に収束する.n=1 では ∫rbdx/x=ln⁡b−ln⁡r となり b→∞ で発散する.万有引力は n=2 で収束し,無限遠までの仕事が有限になる.力が 1/r でしか弱まらなければ,無限遠基準の位置エネルギーは定義できない.

小さい量の近似. |x| が十分小さいとき,(1+x)n≈1+nx.

練習 1. (1) ∫r∞dxx3 を求めよ.(2) 高さ h=1.0km での位置エネルギーの増加の厳密な値は GMmhR(R+h) である.R=6.37×106m として,mgh は厳密な値より何パーセント大きいか.

答え:(1) n=3 より 12r2. (2) 厳密な値と mgh の比は RR+h≈1−hR.h/R≈1.6×10−4 なので,mgh は約 0.016 % 大きいだけである.

練習 2. (1) ∫R∞GMmx2dx を求めよ.(2) (1+x)−1/2≈1−x2 を使って,x=0.010 のときの値を求めよ.(3) 2gR を g=9.8ms−2,R=6.37×106m で計算せよ.

答え:(1) [−GMmx]R∞=GMmR.(2) 1−0.005=0.995.(3) 2×9.8×6.37×106≈1.1×104ms−1.

実効ポテンシャルの図の読み方

前の節の E=12mr˙2+Ueff(r) を,第6章のポテンシャル図と同様に,次の手順で読みます.

  • E の水平線と Ueff の交点が転回点で,12mr˙2=E−Ueff≥0 となる範囲だけを動く.

  • 谷の底(dUeffdr=0)が円軌道の半径.底の Ueff の値が円軌道のエネルギー.

  • 底で下に凸(d2Ueffdr2>0)なら安定.少しずれても谷の中で振動する.

一般の Ueff(r)=L22mr2+U(r) で式にすると,次のようになります.底では

dUeffdr=−L2mr3+dUdr=0

です.L=mr2θ˙ を入れると mrθ˙2=dUdr で,これは中心向きの引力の大きさ dUdr が向心力 mrθ˙2 に等しいという,円運動の運動方程式そのものです.dUdr>0(引力)の場所でなければ,円軌道はありません.底の半径を r0 とし,L2=mr03U′(r0) を使うと,底での2階微分は

d2Ueffdr2=3L2mr04+U″(r0)=3U′(r0)r0+U″(r0)

です(U′,U″ は r での1階,2階微分).これが正なら円軌道は安定で,少しずれた軌道では r が r0 のまわりを角振動数 ωr=1md2Ueffdr2 で単振動します(第7章).

万有引力 U=−GMmr では,dUeffdr=−L2mr3+GMmr2=0 より底は r0=L2GMm2 で,エネルギーは Ueff(r0)=−GMm2r0 です.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

地球の質量を 5.97×1024kg,半径を 6.37×106m,万有引力定数を 6.67×10−11Nm2kg−2 とする.空気抵抗と自転は無視する.

地表から半径方向に初速v₀で投射する.最高点までの中心距離をrmaxとする. 地表から半径方向に初速v₀で投射する.最高点までの中心距離をrmaxとする.
  1. 脱出速度を求めよ.

  2. 地表から鉛直上向きに速さ 8.0×103ms−1 で打ち出した物体が達する,最高点の地表からの高さを求めよ.

解答を見る

考え方 力学的エネルギー保存 12mv2−GMm/r=E を使う.最高点では速さが 0 である.

  1. vesc=2GMR=2×3.98×10146.37×106≈1.12×104ms−1.

  2. 単位質量あたり E/m=12(8.0×103)2−3.98×10146.37×106=3.2×107−6.25×107=−3.05×107m2s−2.最高点では −GM/rmax=E/m なので rmax=3.98×10143.05×107≈1.31×107m.高さは rmax−R≈6.7×106m で,地球の半径ほどある.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

質量 m の人工衛星が,質量 M の地球のまわりを半径 r の円軌道で回っている.

円軌道の半径と速度を示す.K,U,Eの値と棒の長さは読者が求めるため,解答を示す棒グラフは置かない. 円軌道の半径と速度を示す.K,U,Eの値と棒の長さは読者が求めるため,解答を示す棒グラフは置かない.
  1. 運動エネルギー K,位置エネルギー U,力学的エネルギー E を GMm/r で表せ.

  2. 薄い大気の抵抗で衛星のエネルギーがわずかに減り,軌道が円に近い形のまま半径が小さくなった.速さは増えるか減るか.

解答を見る

考え方 円軌道の運動方程式から v2 を出し,K と U を比べる.

  1. mv2r=GMmr2 より K=12mv2=GMm2r.U=−GMmr=−2K.よって E=K+U=−GMm2r=−K.

  2. K=−E なので,E が減ると K は増える.半径が小さくなると E=−GMm/(2r) はより負になり,速さは増える.抵抗を受けて速くなるのは,位置エネルギーが,運動エネルギーの増えた分の2倍だけ減るからである.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

質量 m の物体が,質量 M の動かない天体のまわりを角運動量 L で運動する.実効ポテンシャルは Ueff(r)=L22mr2−GMmr である.

数値計算した実効ポテンシャルと,極小より高いエネルギー線を示す.r₀,r₁,r₂の値は示さない. 数値計算した実効ポテンシャルと,極小より高いエネルギー線を示す.r₀,r₁,r₂の値は示さない.
  1. 円軌道の半径 r0 を求めよ.

  2. この円軌道が安定であることを示し,r0 のまわりの小さな動径方向の振動の角振動数を求めよ.

  3. 万有引力の代わりに,大きさ krn(k>0)の中心向きの引力が働くとする.円軌道が安定になる n の範囲と,ωr と円運動の角速度 θ˙ の比を求めよ.また n=1(ばねのような力)のとき,1周の間に r は何回最小になるか.

解答を見る

考え方 底の位置は dUeffdr=0.安定性は 2階微分の符号で調べる.小さな振動は第7章の単振動として扱う.

  1. dUeffdr=−L2mr3+GMmr2=0 より r0=L2GMm2.

  2. d2Ueffdr2=3L2mr4−2GMmr3.L2=GMm2r0 を代入すると r=r0 で GMmr03>0 となり,下に凸なので安定である.動径方向の運動方程式は mr¨≈−GMmr03(r−r0) なので,単振動で ωr=GMr03.円運動の角速度 θ˙=Lmr02=GMr03 と一致する.1周する間に動径方向もちょうど1往復する.

  3. U′(r)=krn,U″(r)=nkrn−1 なので,本文の式から d2Ueffdr2=3kr0n−1+nkr0n−1=(n+3)kr0n−1.安定なのは n>−3 のときである.円運動の式 mr0θ˙2=kr0n より θ˙2=kr0n−1m,また ωr2=(n+3)kr0n−1m なので ωrθ˙=n+3.万有引力(n=−2)では1で,(2)と合う.n=1 では2で,1周の間に r は2回最小になる(中心 O が楕円の中心にある楕円軌道).比が整数でないと,最も近づく点の向きが1周ごとにずれていく.

ポイント ここまでのまとめ

  • ∫r∞dx/xn は n>1 で収束する.万有引力は 1/r2 で弱まるので,無限遠基準の位置エネルギーが決まる.

  • 実効ポテンシャル Ueff=L2/(2mr2)+U(r) の底が円軌道で,その条件 dUeffdr=0 は円運動の運動方程式と同じ.d2Ueffdr2>0 なら安定.万有引力では r0=L2/(GMm2),エネルギーは −GMm/(2r0).

  • 引力が krn なら,円軌道は n>−3 で安定で,ωr/θ˙=n+3.

  • 円軌道では K=−E,U=−2K.弱い抵抗で軌道がほぼ円のまま少しずつ縮むときは,エネルギーが減って半径が小さくなり,速さは大きくなる(抵抗は直接には速さを減らすが,低い円軌道ほど速いため).

09重力のポテンシャルとエネルギーの演習

無限遠で位置エネルギーを0とし,初めと終わりの状態を式にしましょう.天体は質量 M,半径 R の球対称な静止天体とし,空気抵抗と他天体の引力は無視します.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

質量 m の荷物を,天体の表面から中心距離 2R までゆっくり運ぶ.地表の重力加速度を g=GM/R2 とする.

  1. 外力がする仕事と,重力がする仕事を求めよ.

  2. 地表の値を用いた mgh による計算と比較せよ.

地表から中心距離2Rの点へ運ぶ. 地表から中心距離2Rの点へ運ぶ.
解答を見る

考え方 ゆっくり運ぶので運動エネルギーの変化は無視できる.外力の仕事は位置エネルギーの増加に等しく,重力の仕事はその符号を逆にしたものである.

  1. U(R)=−GMm/R,U(2R)=−GMm/(2R) より W外=ΔU=GMm/(2R)=mgR/2.重力の仕事は W重力=−mgR/2 である.位置エネルギーの値は両地点とも負だが,差は正になる.

  2. 高度の増加は h=R なので,重力を一定とした値は mgR.これは厳密な仕事の2倍で,厳密な値を基準にすると100 %過大である.実際には上昇するほど重力が弱まり,最終地点では地表の4分の1になる.mgh は高さが R より十分小さいときの近似であり,今回の距離へそのまま延長できない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

地表から小球を半径方向外向きに速さ v0=GM/R で打ち出す.

  1. 到達する最大の中心距離と高度を求めよ.

  2. 中心距離 3R/2 を上昇中に通るときの速さを求め,下向きに通る場合と比べよ.

初速度v₀と中心距離3R/2の観測点を示す.到達点は描かない. 初速度v₀と中心距離3R/2の観測点を示す.到達点は描かない.
解答を見る

考え方 半径方向だけの運動なので,最高点では速さ全体が0になる.楕円軌道の遠点では接線速度が残ることとの違いに注意する.

  1. 初めのエネルギーは E=mv02/2−GMm/R=−GMm/(2R).最高点で −GMm/rmax=E だから rmax=2R,高度は hmax=R である.脱出速度は初速の 2 倍なので,この小球は無限遠へは行けない.

  2. 保存則に r=3R/2 を入れると v2/2−2GM/(3R)=−GM/(2R).よって v=GM/(3R)=v0/3.下降時にも同じ位置で同じ位置エネルギーをもち,運動エネルギーも同じなので速さは等しい.ただし速度の向きは逆である.この往復の比較は,途中で衝突や抵抗による損失がないという仮定に依存する.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

地球から十分離れた所でも v∞=3.0×103ms−1 の速さを残すように,地表から半径方向外向きに物体を打ち出す.GM=3.98×1014m3s−2,R=6.37×106m とする.

  1. 必要な初速を求めよ.

  2. 脱出速度に v∞ を加える計算が正しくない理由を説明せよ.

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考え方 無限遠の運動エネルギーを0と置かず,残したい速さを含める.保存されるのは速さの和ではなく,運動エネルギーと位置エネルギーの和である.

  1. mv02/2−GMm/R=mv∞2/2 より v0=2GM/R+v∞2.2GM/R≈1.25×108m2s−2 に 9.0×106m2s−2 を足して平方根をとると,v0≈1.16×104ms−1 である.

  2. 脱出速度は約 1.12×104ms−1 だが,必要な初速はこれに 3.0×103ms−1 を足した値ではない.条件は v02=vesc2+v∞2 である.初めから大きな運動エネルギーがあるので,比較的小さい速さの追加でも無限遠に有限の運動エネルギーを残せる.次元が合うだけでは足し算の根拠にならない.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

質量 m の衛星が半径 r の円軌道にある.接線方向に1回だけ瞬間的な噴射を行い,ちょうど脱出させる.

  1. 必要な速度増分 Δv を求めよ.

  2. 噴射が衛星に与える力学的エネルギーの増加を求め,m(Δv)2/2 と等しいか調べよ.噴射中の衛星の質量変化は無視する.

噴射前の円軌道と接線速度v_cを示す.脱出後の軌道は示さない. 噴射前の円軌道と接線速度v_cを示す.脱出後の軌道は示さない.
解答を見る

考え方 噴射の前後は同じ位置にあるため,位置エネルギーは変わらない.噴射後のエネルギーを0にするには,円軌道の束縛エネルギーを補えばよい.

  1. 円軌道の速さは vc=GM/r.脱出の境界は v′=2GM/r=2vc だから,進行方向への噴射で Δv=(2−1)vc となる.これは地表から静止状態で脱出するときの初速とは異なる.

  2. 初め E=−GMm/(2r),後で E′=0 なので ΔE=GMm/(2r)=mvc2/2.直接計算しても ΔE=m{(vc+Δv)2−vc2}/2=mvcΔv+m(Δv)2/2 である.したがって m(Δv)2/2 だけでは足りず,初速度に依存する交差項が必要になる.同じ速度増分でも速い場所での順行噴射ほどエネルギー増加は大きい.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

角運動量 L≠0 が一定の質点について,r0=L2/(GMm2),A=GMm/r0,x=r/r0 と置く.エネルギーは E=−3A/8 である.

  1. 実効ポテンシャルを A,x で表し,許される r の範囲を求めよ.

  2. 転回点で速さ全体は0になるか.両転回点での速さの比を求めよ.

Ueff/A=1/(2x²)−1/xとE/A=−3/8を数値計算した.交点の座標は示さない. Ueff/A=1/(2x²)−1/xとE/A=−3/8を数値計算した.交点の座標は示さない.
解答を見る

考え方 実効ポテンシャルには接線方向の運動エネルギーが含まれる.水平線との交点で0になるのは動径方向の運動エネルギーだけである.

  1. L2=GMm2r0 を代入すると Ueff/A=1/(2x2)−1/x.許される条件は −3/8≥1/(2x2)−1/x なので,正の 8x2 を掛けて 3x2−8x+4≤0.因数分解すると (3x−2)(x−2)≤0 より 2r0/3≤r≤2r0 である.

  2. 転回点で r˙=0 だが,接線速度 v=L/(mr) は0ではない.内側と外側の速さの比は (2r0)/(2r0/3)=3.内側を近点,外側を遠点とすれば,長半径は a=4r0/3 であり,−GMm/(2a)=−3A/8 と元のエネルギーに一致する.単なる U=−GMm/r と E の交点だけで遠点を求めると,接線運動を取り落とす.

ポイント 教える人へ

  • 無限遠基準の負の値と,移動による正の増加を区別させる.

  • 最高点で速さが0と言えるのは,半径方向だけの投射である.

  • 速度増分による仕事は,噴射前の速度にも依存することを確認させる.

  • 実効ポテンシャルでは動径速度と接線速度を別々に説明させる.

10軌道

問い

地球を回る円軌道の人工衛星が,進行方向へロケットを少し噴射して,速さを1 %だけ上げたとします.衛星は高い軌道へ移るのでしょうか.それとも,同じ高さのまま速く回るようになるのでしょうか.

考えてみる

この章のはじめに見たように,半径 r の円軌道の速さは v=GM/r で,高い軌道ほど遅くなります.そこで「加速すれば高い軌道に移り,そこでは遅くなる」と考えたくなります.ところが噴射の直後,衛星は同じ高さで円軌道より速く動いています.この速さの円軌道は存在しないので,衛星は円軌道には残れません.

では,どんな軌道になるのでしょうか.円でなければ,万有引力のもとで横向きの速さをもつ束縛された運動(E<0)は楕円のはずです.この節では,楕円になることを運動方程式から導き,楕円軌道を数で扱えるようにして,加速のあとの軌道を決めます.

楕円軌道の要素

楕円は,2つの焦点からの距離の和が一定の点の集まりです.万有引力の中心(地球や太陽)は,一方の焦点にあります.

定義 楕円軌道の要素

  • 長半径 a:長い方の軸の長さの半分.

  • 離心率 e:焦点が中心から ae だけずれているとき,e を離心率と呼ぶ(衝突の反発係数とは別の量).e=0 が円で,0<e<1 が楕円.

  • 近点(中心に最も近い点)までの距離 rp=a(1−e),遠点(最も遠い点)までの距離 ra=a(1+e).したがって rp+ra=2a.

地球のまわりなら近点・遠点を近地点・遠地点,太陽のまわりなら近日点・遠日点と呼びます.

天体は楕円の一方の焦点にある.長半径a,焦点のずれae,近点距離rₚと遠点距離rₐを示す. 天体は楕円の一方の焦点にある.長半径a,焦点のずれae,近点距離rₚと遠点距離rₐを示す.

軌道の形を導く

ケプラーの第1法則は,観測から見つかった事実でした.ここでは万有引力の運動方程式から軌道の形を導きます.「極座標で運動を記述する」の題材の式を使うと,運動方程式の2つの成分は

m(r¨−rθ˙2)=−GMmr2,r2θ˙=Lm(一定)

です.知りたいのは時刻ごとの位置ではなく軌道の形,つまり r と θ の関係なので,時刻 t を消して θ を変数にします.このとき r の代わりに逆数 u=1r を使うと,式がぐっと簡単になります.第2式で θ˙ を消し,連鎖律で t の微分を θ の微分に書き換えると(計算は次の節),第1式は

d2udθ2+u=1ℓ,ℓ=L2GMm2

になります.

これは第7章の単振動の式と同じ形です.w=u−1ℓ とおけば d2wdθ2=−w で,角振動数1の単振動なので,w=Acos⁡(θ−θ0) です.θ を r が最小になる向き(近点)から測れば θ0=0,A≥0 で,A=eℓ と書くと次の式が得られます.

定理 軌道の式

万有引力のもとで角運動量 L で運動する物体の軌道は,近点から測った角 θ を使って

r=ℓ1+ecos⁡θ,ℓ=L2GMm2,e≥0

と表される.

e は積分で現れた定数で,軌道ごとに違います.次の節で直交座標に直すと,0≤e<1 のときこの曲線は O を焦点とする楕円で,その離心率がちょうど e,長半径が a=ℓ1−e2 であることが確かめられます.e=1 では θ=π の向きで分母が0になり,r が限りなく大きくなる放物線です.e>1 では 1+ecos⁡θ>0 の向きにしか曲線がなく,遠くからやって来て O のそばを回り,再び遠くへ去る双曲線です.e=0 なら r=ℓ の円で,前の題材の実効ポテンシャルの底の半径 r0=L2GMm2 と一致します.θ=0,π を入れると rp=ℓ1+e,ra=ℓ1−e で,足すと 2ℓ1−e2=2a となり,ℓ=a(1−e2) です.

[図:離心率を変えた円錐曲線の軌道]

ℓを一定にし,離心率eを0から1.5まで変える.初期状態はe=0.50の楕円.Oの上下の距離ℓの2点は固定され,軌道は円,楕円,放物線,双曲線と変わる.遠方へ伸びる部分は画面の外へ続く.

どの形になるかは,エネルギーで決まります.近点では r˙=0 なので,E=Ueff(rp)=L22mrp2−GMmrp です.L2=GMm2ℓ と 1rp=1+eℓ を入れると

E=GMm2ℓ[(1+e)2−2(1+e)]=GMm2ℓ(e2−1)

です.

離心率

軌道

エネルギー

e=0

円

E=−GMm2ℓ(最小)

0<e<1

楕円

E<0

e=1

放物線

E=0

e>1

双曲線

E>0

重力のポテンシャルの題材で述べた,エネルギーの符号による軌道の分類は,ここから出てきます.円と楕円の束縛された軌道では ℓ=a(1−e2) を入れて E=−GMm2a です.

軌道を決める量

楕円を決めるのに,エネルギーと角運動量の2つが働きます.

法則 楕円軌道のエネルギーと速さ

質量 m の物体が,質量 M の天体(m は M よりずっと小さく,天体は動かないとみなす)のまわりで長半径 a の楕円軌道を描くとき

  • 力学的エネルギーは E=−GMm2a.長半径だけで決まり,離心率にはよらない.

  • 距離 r の点での速さは v2=GM(2r−1a).

  • 近点と遠点では速度が中心からの位置ベクトルに垂直なので,角運動量の大きさは mrv となり,その保存から rpvp=rava.近点が最も速い.

  • 周期は T=2πa3GM(ケプラーの第3法則の一般形).

1番目の式は,上で導いたとおりです.円軌道(r=a)の E=−GMm2r の r が a に置き換わった形です.近点・遠点での保存則の連立から出す方法も,次の節で示します.2番目の式は,E=12mv2−GMmr に1番目を入れれば出ます.

周期の式は,面積速度から出せます.質点の面積速度は L2m で一定でした.1周で楕円の面積 πab を掃くので,T=2πabmL です.短半径 b については b2=a2(1−e2)=aℓ だから

T2=4π2a2⋅aℓm2L2=4π2a3GM

となります.円軌道で学んだ T2∝r3 の r を,長半径 a に置き換えた形です.

速さを上げると

円軌道の半径を r,その速さを vc=GM/r とし,噴射で速さが v=(1+ε)vc(ε は 0.01 程度)になったとします.向きは変わらないので,この点は新しい軌道の近点です.エネルギーは

E=12m(1+ε)2vc2−mvc2=−12mvc2(1−2ε−ε2)

で,E=−GMm/2a と比べると,長半径は a=r1−2ε−ε2≈r(1+2ε) です.遠点までの距離は ra=2a−r≈r(1+4ε).速さを 1 %上げると,反対側の遠点の中心からの距離は約 4 %増えます(地表からの高度の増え方は,この距離から地球半径を引いて考えます).

元の円と加速後の楕円は噴射点で接し,天体は楕円の焦点に位置する.変化を見やすく誇張した. 元の円と加速後の楕円は噴射点で接し,天体は楕円の焦点に位置する.変化を見やすく誇張した.

高度 400km(r=6.77×106m)の円軌道で vc=7.67kms−1,周期は約 92 分です.ここで 1 %加速すると,遠点は約 280km 高くなり,周期は約 3 %延びて 95 分ほどになります.近点では円軌道より速く,遠点では va=rprav≈0.97vc と,その高さの円軌道の速さ(約 0.98vc)よりも遅くなります.

この性質は,軌道の乗り換えに使われます.半径 r1 の円軌道から,より大きな半径 r2 の円軌道へ移るには,まず r1 で加速して,遠点が r2 になる楕円軌道に入ります.このホーマン遷移軌道の長半径は a=r1+r22 で,遠点に着いたら,もう一度加速して円軌道に入ります.遠点では円軌道の速さに足りないので,加速が必要になるのです.

2円に接する半楕円を通る.1では上向き,2では下向きの接線方向に加速する. 2円に接する半楕円を通る.1では上向き,2では下向きの接線方向に加速する.

逆に減速すれば近点が下がり,大気の中に入れば帰還できます.同じ軌道上で前を飛ぶ衛星に追いつきたいとき,加速するとかえって遠ざかります.加速で高い軌道に移り,周期が長くなるからです.先に減速して低い軌道で追い付き,再び元の軌道に戻る手順になります.

ポイント ここまでのまとめ

  • 楕円軌道は,長半径 a,離心率 e で決まる.rp=a(1−e),ra=a(1+e).

  • u=1/r は d2udθ2+u=1ℓ を満たし,軌道の式 r=ℓ1+ecos⁡θ(ℓ=L2GMm2)が導ける.E=GMm2ℓ(e2−1) なので,e=0 円,e<1 楕円,e=1 放物線,e>1 双曲線.

  • エネルギーは E=−GMm2a.速さは v2=GM(2r−1a).近点と遠点では rpvp=rava.

  • 周期は T=2πa3/GM.円軌道の r を a に替えた形である.

  • 問いの答え:円軌道で速さを少し上げると,その点を近点とする楕円軌道になる.反対側の遠点が高くなり,周期も延びる.速くなるのは近点付近だけで,遠点付近ではむしろ遅い.

11軌道の方程式と保存則の連立

運動方程式を u=1/r と θ で書き直して軌道の式を導き,それが楕円などの曲線になることを確かめます.また,近点と遠点で角運動量保存とエネルギー保存を連立して,軌道の大きさと速さを決めます.

定理 数学の道具:θ を変数にする微分と軌道の方程式

時刻を消して θ で微分する. L>0(反時計回り)とし,u=1r とおくと,r2θ˙=Lm より θ˙=Lmu2 である.軌道の上では r は θ の関数なので,連鎖律で r˙=drdθθ˙.さらに r=1u を連鎖律で微分して drdθ=−1u2dudθ.合わせると

r˙=−1u2dudθ⋅Lmu2=−Lmdudθ

で,u2 が打ち消し合う.これが u を使う理由である.r˙ をもう一度,θ を通して時間で微分すると

r¨=ddθ(−Lmdudθ)⋅θ˙=−L2m2u2d2udθ2

となる.また rθ˙2=1u⋅L2m2u4=L2m2u3 である.

軌道の方程式. 中心力の er 成分を F として,m(r¨−rθ˙2)=F に入れると

−L2mu2(d2udθ2+u)=F

万有引力 F=−GMmu2 なら,両辺を −L2mu2 で割って d2udθ2+u=GMm2L2=1ℓ である.w=u−1ℓ は d2wdθ2=−w を満たすので,第7章の単振動の一般解と同じく w=Acos⁡(θ−θ0) と書ける.

どんな曲線か. r(1+ecos⁡θ)=ℓ で rcos⁡θ=x だから r=ℓ−ex.両辺を2乗して r2=x2+y2 を使うと

(1−e2)x2+2eℓx+y2=ℓ2
  • e<1:a=ℓ1−e2 とおいて x について平方完成すると,(x+ae)2a2+y2aℓ=1.中心が (−ae,0),長半径 a,短半径 b=aℓ=a1−e2 の楕円で,O は中心から ae ずれた焦点にある.

  • e=1:y2=ℓ2−2ℓx で,放物線.

  • e>1:x2 と y2 の係数の符号が逆になり,双曲線.1+ecos⁡θ=0 となる2つの角では分母が0で,r→∞ となる.この2つの角の向きが,遠方での漸近線の向きを表す.

練習 1. (1) u が一定の解から,円軌道の半径を求めよ.(2) e=2 の双曲線軌道で,r が限りなく大きくなる θ を求め,物体の進む向きが全体で何度曲げられるかを求めよ.

答え:(1) u=1ℓ より r=ℓ=L2GMm2.(2) 1+2cos⁡θ=0 より θ=±120∘.物体は θ=−120∘ の向きの遠くから来て,θ=120∘ の向きへ去る.来るときの進む向きは −120∘+180∘=60∘ の向き,去るときは 120∘ の向きなので,60∘ 曲げられる.

練習 2. e=0.50 の楕円軌道 r=ℓ1+ecos⁡θ で,r の最小値と最大値を ℓ で表し,その比を求めよ.

答え:θ=0 で rmin=ℓ1.5=23ℓ,θ=180∘ で rmax=ℓ0.50=2ℓ.比は 3.

定理 数学の道具:楕円の幾何と保存則の連立

楕円の幾何. 長半径 a,短半径 b,離心率 e の楕円では rp=a(1−e),ra=a(1+e),rp+ra=2a,b2=a2(1−e2)=rpra.離心率は e=ra−rpra+rp で求められる.

近点・遠点の連立. 質量 M の天体のまわりの質点について,近点と遠点で

rpvp=rava,12vp2−GMrp=12va2−GMra

が成り立つ.第1式で va を消し,1−rp2ra2=(ra−rp)(ra+rp)ra2 を使って ra−rp で割ると

vp2=2GMrarp(ra+rp),va2=2GMrpra(ra+rp)

が得られる.エネルギーは Em=12vp2−GMrp=−GMra+rp=−GM2a で,前の節で軌道の式から出した E=−GMm/2a と一致する.

使い方. 近点の速さを vp とし,k=rpvp2GM(円軌道の速さの2乗との比)とおくと,ra=krp2−k である.1<k<2 が楕円で,k=2 で遠点が無限大になり放物線に変わる.

練習 3. ra=3rp の楕円の a,e,vp/va,および近点の速さが円軌道の速さ GM/rp の何倍かを求めよ.

答え:a=2rp,e=12,vpva=3.vp2=32GMrp より 3/2≈1.22 倍.

練習 4. ra=2rp の楕円について,a,e,vp/va と,近点の速さが GM/rp の何倍かを求めよ.

答え:a=32rp,e=ra−rpra+rp=13,vpva=2.vp2=2GMrp⋅rara+rp=43GMrp より 4/3≈1.15 倍.

例題

地球の GM=3.98×1014m3s−2,半径は R=6.37×106m とする.

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

地球のまわりを楕円軌道で回る衛星の近地点の高度が 300km,そこでの速さが 8.50kms−1 である.

焦点に地球を置く楕円と,両端での接線方向の速度を示す.遠地点の未知の高度は記さない. 焦点に地球を置く楕円と,両端での接線方向の速度を示す.遠地点の未知の高度は記さない.
  1. 遠地点の高度を求めよ.

  2. 遠地点での速さを求めよ.

解答を見る

考え方 k から ra を出し,va=vprp/ra を使う.

  1. rp=6.37×106+3.0×105=6.67×106m.

k=rpvp2GM=6.67×106×(8.50×103)23.98×1014=1.21,ra=krp2−k=1.02×107m

高度は ra−R≈3.9×106m(約 3900km).

  1. va=vprpra=8.50×6.6710.2≈5.5kms−1.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

高度 300km(半径 r1=6.67×106m)の円軌道から,静止衛星の軌道(半径 r2=4.22×107m)へ,ホーマン遷移軌道で移る.加速は瞬間的に接線方向に行う.

2円に接する半楕円と2つの加速点.半径比は指定されたr₂/r₁に合わせた. 2円に接する半楕円と2つの加速点.半径比は指定されたr₂/r₁に合わせた.
  1. 遷移軌道の近地点・遠地点の速さを求めよ.

  2. 2回の加速の Δv1,Δv2 と合計を求めよ.

  3. 遷移にかかる時間を求めよ.

解答を見る

考え方 遷移軌道は近地点 r1,遠地点 r2 の楕円で,円軌道の速さとの差が Δv になる.

  1. 遷移軌道では,rp=r1,ra=r2 だから

vp=2GMr2r1(r1+r2)≈1.02×104ms−1
va=vpr1r2≈1.6×103ms−1
  1. 半径 r1,r2 の円軌道の速さは,それぞれ 7.73×103ms−1,3.07×103ms−1.よって

Δv1=vp−7.73×103≈2.4×103ms−1,Δv2=3.07×103−va≈1.5×103ms−1.合計は約 3.9×103ms−1.

  1. 遷移軌道の長半径は a=r1+r22=2.44×107m.半周するので t=πa3GM≈1.9×104s,約 5.3 時間である.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

太陽のまわりを回る彗星の近日点距離が 0.40 天文単位(地球の公転半径が 1 天文単位),遠日点距離が 40 天文単位である.地球は半径 1 天文単位の円軌道を速さ 29.8kms−1 で公転している.

近日点0.40天文単位,遠日点40天文単位の楕円と,半径1天文単位の地球軌道を同じ縮尺で描いた. 近日点0.40天文単位,遠日点40天文単位の楕円と,半径1天文単位の地球軌道を同じ縮尺で描いた.
  1. 彗星の長半径,離心率,公転周期(年)を求めよ.

  2. 近日点と遠日点での速さを求めよ.

解答を見る

考え方 太陽の質量を知らなくても,地球の公転から GM⊙=vE2×1 天文単位と書ける.周期は地球との比で出す.

  1. a=0.40+402=20.2 天文単位.e=40−0.4040+0.40=0.980.地球(a=1,T=1 年)と第3法則で比べて,T=20.23/2≈91 年.

  2. 地球の公転速さ vE について vE2=GM⊙/(1 天文単位).単位を天文単位でとると

vp2vE2=2rarp(ra+rp)=2×400.40×40.4=4.95 より vp=2.22vE≈66kms−1.遠日点では va=vprpra=66×0.4040≈0.66kms−1.

ポイント ここまでのまとめ

  • r˙=−Lmdudθ(u=1/r)を使うと,運動方程式は d2udθ2+u=1ℓ になり,解 r=ℓ1+ecos⁡θ は e<1 で楕円(a=ℓ1−e2),e=1 で放物線,e>1 で双曲線.

  • 楕円では rp+ra=2a,rpra=b2,e=ra−rpra+rp.

  • 近点・遠点の rpvp=rava とエネルギー保存の連立から,vp2=2GMrarp(ra+rp),E=−GMm2a が得られる.

  • ホーマン遷移では,遷移軌道の速さと円軌道の速さの差が Δv.周期は長半径だけで決まる.

  • 地球の公転との比で,太陽の質量を知らなくても彗星の周期や速さが出せる.

12軌道の演習

円と楕円を見分け,近点・遠点の距離を中心から測りましょう.中心天体の質量を M,衛星の質量を m とし,噴射のない区間では万有引力だけが働くものとします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

楕円軌道の近点距離が 2d,遠点距離が 6d である.

  1. 長半径 a,離心率 e,短半径 b を求めよ.

  2. 長半径と同じ半径の円軌道に比べて,周期と力学的エネルギーはどう違うか.

近点距離2d,遠点距離6dの楕円.2つの焦点を示す. 近点距離2d,遠点距離6dの楕円.2つの焦点を示す.
解答を見る

考え方 近点・遠点の距離の和が長軸の長さであり,天体は楕円の中心ではなく焦点にある.周期とエネルギーは長半径だけで決まる.

  1. a=(2d+6d)/2=4d,e=(6d−2d)/(6d+2d)=1/2.また b2=rpra=12d2 より b=23d.焦点の中心からのずれは ae=2d である.ここで a を近点距離と取り違えないようにする.

  2. 両軌道とも a=4d に対応するため,周期は T=2π(4d)3/(GM),エネルギーは E=−GMm/(8d) で等しい.ただし楕円では速さが場所によって変化し,円では一定である.周期が等しいことは,各点での速さが等しいことや,軌道の周長が等しいことを意味しない.離心率を変えても長半径を保つ限り,この2量は変わらない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

半径 r の円軌道を進む衛星の速さを,瞬間的な接線噴射で v′=3/2GM/r に増やす.

  1. 噴射後の長半径と遠点距離を求めよ.

  2. 遠点での速さと,新旧の周期の比を求めよ.

元の円軌道と,その接線方向に向けた噴射後の既知の速度.新軌道は示さない. 元の円軌道と,その接線方向に向けた噴射後の既知の速度.新軌道は示さない.
解答を見る

考え方 噴射中に位置は変わらず,噴射後のエネルギーから長半径が求まる.速さが円軌道より大きく脱出速度より小さいので,噴射点は楕円の近点になる.

  1. E′/m=3GM/(4r)−GM/r=−GM/(4r).これを −GM/(2a) と比較して a=2r.近点は rp=r なので,ra=2a−r=3r.実際,噴射直後の動径加速度は v′2/r−GM/r2=GM/(2r2)>0 で,中心距離は増え始める.

  2. 噴射後は L が保存するから rv′=3rva より va=v′/3=GM/(6r).周期は長半径の 3/2 乗に比例するので T′/T=23/2=22.噴射直後に速くなっても,周回の大部分を遠方で過ごすため1周は長くなる.噴射をまたいで角運動量が保存するとしてはいけない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

半径 r の円軌道で接線方向に減速し,速さを v′=2/3GM/r にする.中心天体の半径は R<r である.

  1. 噴射点は近点と遠点のどちらか.新しい近点距離を求めよ.

  2. 地表と接触しないための r の条件を求めよ.

半径Rの天体と半径rの円軌道.噴射後の接線速度だけを示す. 半径Rの天体と半径rの円軌道.噴射後の接線速度だけを示す.
解答を見る

考え方 減速すると半径一定の円運動を支える速さが不足し,中心距離は減り始める.したがって噴射点は遠点として扱う.

  1. E′/m=GM/(3r)−GM/r=−2GM/(3r) より a=3r/4.遠点距離は ra=r だから rp=2a−r=r/2 である.また噴射直後に r˙=0,r¨=v′2/r−GM/r2=−GM/(3r2)<0 なので,遠点という判断も確認できる.近点速さは角運動量保存から噴射直後の2倍になる.

  2. 接触を避けるには rp>R,すなわち r>2R が必要である.r=2R なら理想的には地表に接するが,接触しないという条件は満たさない.r<2R なら計算上の楕円は地球の内部を通るため,外部の逆2乗力だけで楕円を1周するという予測は適用できない.実際に地表へ達するまでの外部軌道にだけこの解を使える.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

半径 r の円軌道から半径 4r の同一平面・同方向の円軌道へ,ホーマン遷移で移る.vc=GM/r,元の円軌道の周期を Tc とする.

  1. 2回の速度増分とその合計を vc で表せ.

  2. 遷移時間を Tc で表し,外側でも加速が必要な理由を説明せよ.

半径rと4rの円に接する半楕円と2つの噴射点. 半径rと4rの円に接する半楕円と2つの噴射点.
解答を見る

考え方 遷移楕円の両端の速さと,それぞれの円軌道の速さとの差をとる.噴射は瞬間的とし,飛行時間は楕円の半周期で求める.

  1. a=5r/2 なので,近点で vp2=GM{2/r−2/(5r)}=8vc2/5.遠点では角運動量保存から va=vp/4=vc/10.外側の円速度は vc/2 である.したがって

Δv1=(8/5−1)vc,Δv2=(1/2−1/10)vc

となる.合計は約 0.449vc で,両方とも進行方向への速度増分である.

  1. t=π(5r/2)3/(GM)=12(5/2)3/2Tc≈1.98Tc.遠点速度は約 0.316vc で,そこにとどまる円速度 0.500vc より遅い.2回目を省けば再び内側へ落ちて元の近点へ戻るため,遠点での加速が必要になる.軌道が高くなるにつれ円速度が小さくなることだけから,2回目を減速と判断してはいけない.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

質量の等しい2機の衛星が,同じ長半径 a をもつ別々の楕円軌道を進む.離心率はそれぞれ e1=1/5,e2=3/5 である.

  1. エネルギーと角運動量の大きさの比 E2/E1,L2/L1 を求めよ.

  2. 両衛星が中心距離 r=a を通るとき,速さは同じか.外向きに通る場合の動径速度と接線速度をそれぞれ求めよ.

同じ焦点と長半径aをもち,離心率が1/5と3/5の2軌道.補助円の半径もaである. 同じ焦点と長半径aをもち,離心率が1/5と3/5の2軌道.補助円の半径もaである.
解答を見る

考え方 エネルギーは速さ全体を決め,角運動量はそのうち接線方向の成分を決める.同じ場所で同じ速さでも,速度の向きまで同じとは限らない.

  1. E=−GMm/(2a) より E2/E1=1.L2=GMm2a(1−e2) より L2/L1=(16/25)/(24/25)=2/3.離心率が大きい方の角運動量は小さい.

  2. v2=GM(2/a−1/a)=GM/a なので,共通の速さを v∗=GM/a と書ける.接線速度は vt=L/(ma)=v∗1−e2.外向きの動径速度は vr=v∗2−vt2=ev∗ である.したがって1機目は (vr,vt)=(v∗/5,26v∗/5),2機目は (3v∗/5,4v∗/5).内向きなら動径成分だけが負になる.エネルギーの等しさだけから軌道が同じだとは結論できない.

ポイント 教える人へ

  • 噴射の前後と,噴射のない区間で保存する量を分けさせる.

  • 速度は軌道の接線方向であり,近点・遠点では位置ベクトルに垂直である.

  • 数学上の近点が地表より内側なら,外部軌道の式の適用範囲を確認させる.

  • 同じエネルギーでも角運動量により軌道の形が変わることが重要である.

13球対称な質量分布と潮汐

問い

地球に,中心を通るまっすぐなトンネルを掘ったとします.空気抵抗も摩擦もなく,地球は密度が一様な球だとします.地表の入口から静かに飛び込むと,どんな運動をするでしょうか.

考えてみる

万有引力の法則 F=Gm1m2/r2 は,大きさの無い質点どうしの式でした.地球は無数の質点の集まりなので,本来は各部分からの力を全て足さなければなりません.これまで g=GM/R2 を使えたのは,地球全体の質量が中心に集まったものとして扱ったからで,その根拠は確かめていません.

トンネルの中では,もっと困ります.中心からの距離が r の点で,中心に質量が集まったと考えて GMm/r2 とすると,r→0 で力が無限大になってしまいます.しかし実際には,まわり中から引かれて打ち消し合うはずです.どこまでが中心に集まったと見なせて,どこから打ち消し合うのでしょうか.

球殻の定理

球を同心の薄い殻に分けて考えると,答えが単純になります.

定理 球殻の定理

質量 Ms,半径 a の一様な薄い球殻が,中心から距離 r の質量 m の質点に及ぼす万有引力は

  • 殻の外(r>a):中心に質量 Ms が集まった質点と同じ.大きさ GMsmr2,向きは中心向き.

  • 殻の内(r<a):0.

位置エネルギーは,外で U=−GMsmr,内で一定値 U=−GMsma である.

殻の内側で力が0になるわけは,次のように見えます.殻の内側の点 P から,ごく小さな同じ開き角(立体角)の円錐を,反対向きに2本伸ばします.円錐が殻を切り取る面積は,P からの距離の2乗に比例します(殻に斜めに当たる角度は,両側で等しくなります).近い側の面積は小さいのですが,近い分だけ力が強く,その質量が及ぼす力は距離の2乗に反比例するので,両側の力は同じ大きさになります.向きは逆なので,力は消えます.面積が距離の2乗に比例し,力が距離の2乗に反比例するからで,万有引力が 1/r2 だから成り立つ性質です.

殻内の点から反対向きに伸びる円錐の断面を示す.遠い切り口ほど大きく,距離による減衰と打ち消し合う. 殻内の点から反対向きに伸びる円錐の断面を示す.遠い切り口ほど大きく,距離による減衰と打ち消し合う.

殻の外では,この打ち消しは起きませんが,積分すると中心に集まった質点と同じ結果になります.その証明は次の節で,位置エネルギーを使って行います.

一様な球の内部

球殻の定理から,一様な球(質量 M,半径 R)の内部の重力が決まります.中心から r の点を考えると,r より外側の殻は力を及ぼさず,内側の殻は合わせて質量

M(r)=Mr3R3

が中心に集まった質点として働きます.よって

F=GM(r)mr2=GMmR3r=mgRr(r≤R)

です.g=GM/R2 を使いました.外(r≥R)では F=GMm/r2 です.内部の重力は中心からの距離に比例し,地表で最大の mg になります.

内部のF/mg=r/Rと外部のF/mg=(R/r)²を数値計算し,表面で連続につないだ. 内部のF/mg=r/Rと外部のF/mg=(R/r)²を数値計算し,表面で連続につないだ.

トンネルの中の運動

中心を原点にトンネルに沿って x 軸をとります.このとき質点に働く力は中心向きで,F=−mgRx です.運動方程式は

mx¨=−mgRx

で,これはばねと同じ形です.よって単振動で,角振動数と周期は

ω=gR,T=2πRg

となります.R=6.37×106m,g=9.8ms−2 を入れると T≈5.1×103s,つまり約 84 分です.振幅は R なので,反対側の出口にちょうど届いて止まります.片道は約 42 分です.中心を通るときの速さが最大で,ωR=gR≈7.9kms−1 です.

物体は位置xから中心向きにF=−mgx/Rの力を受ける. 物体は位置xから中心向きにF=−mgx/Rの力を受ける.

この周期 84 分は,地表すれすれを回る人工衛星の周期 2πR/gR=2πR/g と同じです.偶然ではありません.一様な球の内部では,半径 r の円運動の角速度も,力 mgRr=mω2r から ω=g/R で,r によりません.円運動を横から見た影が単振動になるので,トンネルを往復する運動は,この円運動を射影したものになっているのです.

実際の地球は一様ではなく,中心ほど密度が高くなっています.そのため内部の重力は中心近くまであまり弱まらず,周期は 84 分より少し短くなります.ここで使った一様な球は,その近似にすぎません.

潮汐

球殻の定理は,球対称な天体なら点とみなせることを保証しました.ただし地球には大きさがあるので,月や太陽の引力は,地球の場所によってわずかに違います.この差が潮汐を生みます.

地球全体は月の引力で,月の方へ加速されています.その加速度は,地球の中心での値 GMm/r2 です.地球の月側の海は,中心より月に近く,より強く引かれます.反対側の海は,中心より遠く,弱く引かれます.中心を基準に見ると,月側は月へ向かって余分に引かれ,反対側は月と逆に取り残されるので,海水は両側に盛り上がります.

この「中心での引力との差」が潮汐力です.月による潮汐の目安として,多くの海域では約 12 時間 25 分ごとに満潮が来ます(地球が自転して月に再び同じ向きになるまでに約 24 時間 50 分かかり,その半分です).ただし,1日に1回だけの海域や両者の混ざった海域もあり,実際の満潮の時刻や回数は海域によって異なります.潮汐力は距離の3乗に反比例します(次の節で示す).太陽の引力は月の約 180 倍ですが,太陽は月よりずっと遠いので,潮汐力は月の方が約 2 倍大きくなります.新月と満月では太陽と月が一直線に並び,潮汐力が重なって大潮になります.

ポイント ここまでのまとめ

  • 一様な薄い球殻は,外の質点には中心に質量が集まった質点として,内の質点には力を及ぼさない(球殻の定理).万有引力が 1/r2 だから成り立つ.

  • 一様な球の内部では,内側の質量だけが中心に集まったものとして働き,重力は F=mgRr と中心からの距離に比例する.

  • トンネルの中の運動は,T=2πR/g≈84 分の単振動で,地表すれすれの円軌道と周期が等しい.

  • 潮汐力は,月や太陽の引力の,場所による差である.

  • 問いの答え:地球を一様な球と見なすと,トンネル内の質点は中心を中心に単振動する.約 84 分で往復し,中心を通るとき最も速い.

14置換積分による球殻の定理と潮汐の近似

球殻の定理は位置エネルギーの積分で,潮汐力はテイラー展開の最初の項で示せます.

定理 数学の道具:球殻の定理の証明と潮汐力の近似

球殻の定理の証明. 質量 Ms,半径 a の薄い球殻の中心 O から距離 r に,質点 m の点 P を置く.殻を,OP 軸からの角が α から α+dα の輪に分ける.面密度 Ms4πa2 と輪の面積 2πa2sin⁡αdα から,輪の質量は

dM=Ms2sin⁡αdα

である.輪の上の点は P から同じ距離 s にあり,余弦定理より s2=a2+r2−2arcos⁡α.これを微分して sin⁡αdα=sdsar.無限遠を基準にした位置エネルギーは,輪の寄与 −GmdMs の和で

U=−GMsm2∫0πsin⁡αdαs=−GMsm2ar∫sminsmaxds=−GMsm2ar(smax−smin)

となる.外(r>a)では s は r−a から r+a までで差は 2a,U=−GMsmr.内(r<a)では a−r から a+r までで差は 2r,U=−GMsma で一定になる.力は F=−dUdr なので,外では −GMsmr2(中心向き),内では 0 である.

潮汐力の近似. 質量 M の天体から距離 r にある物体の中心から,天体の方へ d(r より十分小さい)進んだ点の引力による加速度と,中心での値 GMr2 との差は

GM(r−d)2−GMr2=GMr2[(1−dr)−2−1]≈2GMdr3

である((1+h)n≈1+nh).反対側の −d の点では向きが逆になる.質量 m には潮汐力 2GMmdr3 が働き,r の3乗に反比例する.

練習 1. (1) 一様な地球で,深さ 100km の重力加速度は,地表より何 %小さいか.(2) 月が今の半分の距離にあると,潮汐力は何倍か.

答え:(1) grR より 1006370≈1.6 %. (2) r−3 に比例するので 8 倍.

練習 2. (1) 一様な地球で,重力加速度が地表の半分になる深さを求めよ(R=6370km).(2) 月の質量が2倍で距離も2倍なら,潮汐力は何倍か.

答え:(1) r=R/2 なので深さは約 3.2×103km.(2) 質量に比例し r−3 に比例するので 2/23=14 倍.

練習 3. (1) r>a>0 のとき,証明と同じ置換 s2=a2+r2−2arcos⁡α を使って,∫0π/2sin⁡αdαa2+r2−2arcos⁡α を求めよ.これは,P に近い側の半分の殻が P に作る位置エネルギーに現れる積分である.(2) 天体に近い側の点(距離 r−d)と遠い側の点(距離 r+d)での引力による加速度の差 GM(r−d)2−GM(r+d)2 を,(1+h)n≈1+nh を使って d の1次まで求めよ.

答え:(1) sin⁡αdα=sdsar で,α=0 のとき s=r−a,α=π2 のとき s=a2+r2 だから,1ar∫r−aa2+r2ds=a2+r2−(r−a)ar.(2) GMr2[(1−dr)−2−(1+dr)−2]≈GMr2[(1+2dr)−(1−2dr)]=4GMdr3.中心に対して,近い側は天体の方へ,遠い側は反対へ,質量あたり 2GMdr3 ずつ引かれるので,その差が2倍の 4GMdr3 になる.

例題

地球について,g=9.8ms−2,半径 R=6.37×106m とし,地球は密度が一様な球とする.

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

地球の中心を通る直線のトンネルがあり,地表の入口から静かに質点を放す.空気抵抗と摩擦は無視する.

入口A,中心O,出口Bと途中の質点を示す. 入口A,中心O,出口Bと途中の質点を示す.
  1. 周期を求めよ.

  2. 中心から R/2 の位置を通るときの速さを求めよ.

解答を見る

考え方 内部の重力 F=−mgRx による,中心を原点とする単振動である.

  1. ω=g/R,T=2πR/g≈5.1×103s(約 84 分).

  2. 振幅は R なので,位置 x での速さは v=ωR2−x2.x=R/2 のとき v=gR⋅32R=32gR≈6.8×103ms−1.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

地表の2点 A,B を結ぶ,なめらかな直線のトンネルがある.トンネルは地球の中心 O から最短距離 d=R/2 の所を通る.A から静かに質点を放す.

中心から距離dを隔てた弦ABと,中心向きの重力の沿う成分・垂直成分を示す. 中心から距離dを隔てた弦ABと,中心向きの重力の沿う成分・垂直成分を示す.
  1. A から B まで進むのに要する時間を求めよ.

  2. 最大の速さを求めよ.

  3. 中点 C で質点がトンネルの壁から受ける垂直抗力の大きさを求めよ.

解答を見る

考え方 力 F=−mgRr を,トンネルに沿う成分と垂直な成分に分ける.

中点 C を原点にトンネルに沿って x をとると,位置ベクトルの成分は沿う方向に x,垂直方向に d.力の成分は沿う方向に −mgRx,垂直方向に −mgRd で,後者は壁の垂直抗力が打ち消す.

  1. 沿う方向の運動方程式は mx¨=−mgRx で,中心を通るトンネルと同じ ω=g/R.周期は約 84 分で,A から B までは半周期の約 42 分である.弦の長さによらない.

  2. 振幅は弦の長さの半分 R2−d2=32R で,最大の速さは C を通るときの ω⋅32R=32gR≈6.8×103ms−1.

  3. 垂直方向には動かないので N=mgRd=mg2.位置によらない.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

月による地球の潮汐力を見積もる.月の質量 Mm=7.35×1022kg,月までの距離 rm=3.84×108m,太陽の質量 M⊙=1.99×1030kg,太陽までの距離 r⊙=1.50×1011m を使え.

上段はすべて月向きの引力による加速度,下段は中心の加速度を引いた差.長さは違いを誇張している. 上段はすべて月向きの引力による加速度,下段は中心の加速度を引いた差.長さは違いを誇張している.
  1. 月の引力による,地球の中心での加速度を求めよ.

  2. 月に最も近い地表の点の,中心に対する加速度の差(潮汐加速度)と,g との比を求めよ.

  3. 太陽による潮汐加速度は,月による潮汐加速度の何倍か.

解答を見る

考え方 潮汐加速度 2GMdr3 で d=R とおく.

  1. GMmrm2=6.67×10−11×7.35×1022(3.84×108)2≈3.3×10−5ms−2.

  2. 2GMmRrm3=2×6.67×10−11×7.35×1022×6.37×106(3.84×108)3≈1.1×10−6ms−2.g との比は約 1.1×10−7.

  3. 太陽による潮汐加速度は同様に約 5.0×10−7ms−2.比は M⊙/r⊙3Mm/rm3≈0.45 倍で,月の方が約 2.2 倍大きい.

ポイント ここまでのまとめ

  • 球殻の定理は,輪の寄与を s で置換積分して示せる.smax−smin は外で 2a,内で 2r なので,U は外で −GMsm/r,内で一定.

  • 一様な球の内部の重力は mgRr.中心を通らない弦のトンネルでも,周期は 2πR/g(約 84 分)である.

  • 潮汐力 2GMmdr3 は,引力の差を (1+h)n≈1+nh で近似して得られる.

15球対称な質量分布と潮汐の演習

球殻の定理を使う前に,観測点より内側の質量を数えましょう.天体の自転,空気抵抗,トンネルを掘ったことによる質量の減少は無視します.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

質量 Ms,半径 R の一様な薄い球殻がある.中心距離 R/2 の点Pと 2R の点Qに,質量 m の粒子を置く.

  1. P,Qで働く重力を求めよ.

  2. 無限遠基準の位置エネルギーを各点で求め,殻の内部で重力が0なのに位置エネルギーが0でない理由を述べよ.

Pは中心距離R/2,Qは中心距離2Rにある. Pは中心距離R/2,Qは中心距離2Rにある.
解答を見る

考え方 球殻の内側では各部分の引力が打ち消し合う.ただし力は位置エネルギーの微分に関係するので,力が0でも位置エネルギーの定数値は残る.

  1. Pでは重力は0.Qは殻の外なので,全質量を中心に置いたものと同じになり,大きさ GMsm/(4R2) の中心向きの力が働く.近い側の殻だけを見て判断せず,殻全体の寄与を足す必要がある.

  2. Qでは UQ=−GMsm/(2R).殻内部では一定で,表面の値につながるので UP=−GMsm/R.内部の2点間では仕事は0だが,内部から無限遠へ運ぶには殻の外側で正の仕事が必要である.そのため無限遠基準では内部の値は負になる.位置エネルギーの0点を別に選んでも力は変わらないが,この問題では無限遠を0と指定している.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

半径 R,質量 M の一様な球を考える.表面の重力加速度を g とする.

  1. 深さ R/4 での重力加速度を求めよ.

  2. 球の外でこれと同じ重力加速度になる高度を求めよ.

地中の点は深さR/4にあり,外部の点の高度hは未知である. 地中の点は深さR/4にあり,外部の点の高度hは未知である.
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考え方 内部では観測点より外の球殻が力を及ぼさない.外部では全質量を使えるので,内側と外側で異なる距離依存性を使う.

  1. 深さ R/4 は中心距離 r=3R/4 に対応する.内側の質量は M(r)=M(r/R)3 であり,g(r)=GM(r)/r2=gr/R.したがって g(r)=3g/4 となる.もし g=9.8ms−2 なら約 7.4ms−2 である.

  2. 外部の中心距離を s とすれば,gR2/s2=3g/4 だから s=2R/3.求める高度は h=s−R=(2/3−1)R≈0.155R である.内部の深さと外部の高度は等しくない.一様な球では地表で重力が最大となるので,最大値より小さい重力に対応する位置は,通常は内外に1つずつ存在する.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

一様な球の中心を通る細い直線トンネルがある.中心から A=R/2 の位置で物体を静かに放す.表面の重力加速度は g である.

  1. 運動の周期と最大速度を求めよ.

  2. 初めて中心に着くまでの時間を求め,地表から放した場合と比べよ.

直径トンネル内の中心からR/2の位置で静かに放す. 直径トンネル内の中心からR/2の位置で静かに放す.
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考え方 内部の力は変位に比例するので,振幅を変えても角振動数は変わらない.位置の原点を球の中心にとり,初期条件を入れる.

  1. 運動方程式は mx¨=−mgx/R.したがって ω=g/R,x=Acos⁡ωt である.周期は T=2πR/g,最大速度は中心で vmax=Aω=gR/2 となる.最大速度は振幅に比例するので,地表から放した場合の半分である.

  2. 最初の x=0 は ωt=π/2 なので t=πR/g/2=T/4.地表から放しても同じである.R=6.37×106m,g=9.8ms−2 なら約 1.3×103s,約21分となる.距離が半分でも,重力も弱く,速さが全過程で半分になるので所要時間は変わらない.この結論には一様密度という条件が不可欠である.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

半径 R の球は半径 R/2 の核と,その外の層からなる.核の密度は 2ρ,外層の密度は ρ である.

  1. 全質量と,0≤r≤R/2,R/2≤r≤R の重力加速度を求めよ.

  2. 核の境界と表面の重力加速度の比を求め,境界で重力が連続か確かめよ.

半径R/2の核の密度は2ρ,外層はρ. 半径R/2の核の密度は2ρ,外層はρ.
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考え方 球全体を平均密度の一様球に置き換えると,内部の重力を誤る.各半径までの質量を体積で積算する.

  1. 全質量は M=(4π/3)ρ{R3+(R/2)3}=3πρR3/2.核内では M(r)=8πρr3/3 より g(r)=8πGρr/3.外層では M(r)=(4πρ/3)(r3+R3/8) なので

g(r)=4πGρ3(r+R38r2)

である.ここでは g(r) は中心向き加速度の大きさを表し,中心で0とする.

  1. 内外の式に r=R/2 を入れると,どちらも g(R/2)=4πGρR/3.表面では g(R)=3πGρR/2 なので比は 8/9 である.密度が跳んでも,厚さ0の境界に有限の質量が集中していなければ,内包質量も重力も連続になる.ただし重力の傾きは連続とは限らず,外層で常に単純な比例になるわけでもない.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

質量 M の遠方の天体が,原点Oから x 軸の正方向へ距離 D にある.Oとともに自由落下する,回転しない座標系で考える.|x|,|y| は D より十分小さい.

  1. (x,0) の点とOとの重力加速度の差を1次まで求めよ.

  2. (0,y) での加速度の差を1次まで求め,天体へ向かう方向とそれに垂直な方向の違いを説明せよ.

Oから距離Dの天体と,Oの近傍の2点を示す.座標間隔は誇張している. Oから距離Dの天体と,Oの近傍の2点を示す.座標間隔は誇張している.
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考え方 潮汐は重力そのものではなく,共通に落下する原点の重力を引いた差である.垂直方向では力の大きさだけでなく向きの違いを考える.

  1. x 方向の差は GM/(D−x)2−GM/D2.(1−x/D)−2≈1+2x/D を用いて δax≈2GMx/D3.正負どちらの x でも原点から離れる向きであり,天体と結ぶ方向には引き伸ばす作用をする.

  2. 点 (0,y) の加速度は GM(D,−y)/(D2+y2)3/2.x 成分とOの値の差は y の2次から始まるため,1次では0.y 成分は δay≈−GMy/D3 となる.こちらは原点の方へ戻す向きで,横方向には圧縮する.同じ微小距離なら大きさは(1)の半分である.潮汐をあらゆる向きに一様に引き伸ばす力として描くことはできない.

ポイント 教える人へ

  • 球殻内部で力が0でも,無限遠基準のポテンシャルは負である.

  • 一様密度でのみ内部の重力が距離に比例することを確認させる.

  • トンネルの所要時間は,中心までなら4分の1周期,反対側までなら半周期である.

  • 潮汐では中心の加速度を差し引き,方向ごとの違いを説明させる.

16第10章の章末問題

円運動,保存則,球対称な天体の重力を使い,観測値からの質量の推定,微弱な力,放出や捕獲による軌道の変化を調べます.中心距離と保存する量を選び,特に断らない限り天体の自転・空気抵抗・他天体の引力を無視し,探査機の質量は天体に比べて無視できるものとします.数値計算では G=6.67×10−11m3kg−1s−2 を使います.

演習 1

オリジナル ★★☆☆☆

半径 R=2.00×106m の惑星を回る探査機について,近点高度 hp=1.00×106m,遠点高度 ha=7.00×106m,周期 T=2.40×104s が測定された.

  1. 軌道の長半径と惑星の質量を求めよ.

  2. 半径と高度が正確で,周期だけが真値より1.0 %大きく測定されたとする.推定質量のずれを厳密な比と一次近似で示せ.

惑星を焦点とする楕円と近点・遠点.高度は表面から,距離は中心から測ることを示す. 惑星を焦点とする楕円と近点・遠点.高度は表面から,距離は中心から測ることを示す.
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考え方 高度をそのままケプラーの第3法則に代入せず,中心からの距離に直す.

  1. rp=R+hp=3.00×106m,ra=R+ha=9.00×106m なので,a=(rp+ra)/2=6.00×106m.周期の式から

M=4π2a3GT2=2.22×1023kg

a3/(GT2) の単位は質量になる.

  1. 推定値と真値の比は Mest/Mtrue=(1.010)−2=0.980296….したがって約1.97 %小さく出る.一次近似では ΔM/M≈−2ΔT/T=−0.020,すなわち約2.0 %の過小評価である.周期が長いほど,同じ軌道を保つ引力は弱いという向きとも一致する.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

自転も大気もない球形天体AとBの平均密度が,それぞれ ρA=3.00×103kgm−3,ρB=1.20×104kgm−3 である.表面すれすれを回る質点衛星を考える.

  1. 周期を平均密度で表し,半径が消える理由を説明せよ.

  2. A,Bの周期とその比を計算せよ.

大きさの異なる球形天体A,Bと表面直上の円軌道.半径と平均密度を記す. 大きさの異なる球形天体A,Bと表面直上の円軌道.半径と平均密度を記す.
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考え方 円運動の周期に M=4πρR3/3 を入れる.内部が一様でなくても,球対称なら平均密度でよい.

  1. T=2πR3/(GM)=3π/(Gρ).同じ密度で半径を増やすと質量も R3 に比例して増すため,周期に含まれる R3/M は変わらない.Gρ の単位は s−2 である.

  2. TA=6.86×103s,TB=3.43×103s,TB/TA=0.500.密度が4倍なら周期は半分になる.これはニュートン力学の模型であり,極端に高密度な天体に無条件で外挿する式ではない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

未知の惑星の半径を R,表面の重力加速度を g とする.高度 R の円軌道を回る衛星の周期が T と観測された.

  1. R と惑星の質量 M を g,T,G で表せ.

  2. 惑星の平均密度を求め,g に依存するか調べよ.

惑星の半径R,円軌道の半径2R,観測周期Tを示す. 惑星の半径R,円軌道の半径2R,観測周期Tを示す.
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考え方 軌道半径は 2R である.表面重力と円運動の2式から GM を消し,次に質量を体積で割る.

  1. GM=gR2 と T2=4π2(2R)3/(GM) より T2=32π2R/g.よって R=gT2/(32π2),M=gR2/G=g3T4/(1024π4G).

  2. ρ¯=3M/(4πR3)=3g/(4πGR) に代入して ρ¯=24π/(GT2).g は消える.表面から何半径分上かという軌道の相対的な大きさが分かれば,周期は平均密度を決める.密度分布が内部で一様である必要はなく,球対称なら外部重力に全質量だけが現れる.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

2機の衛星A,Bが同一平面で同方向に円運動する.軌道半径は r,4r,Aの周期は T である.初め両衛星は中心天体から同じ方向に見える.

  1. 再び同じ方向に並ぶまでの最短時間を求めよ.

  2. その間に各衛星が回る角度と,衛星間の最小・最大距離を求めよ.

半径rと4rの円軌道上で,両衛星は初め同じ方向に見える. 半径rと4rの円軌道上で,両衛星は初め同じ方向に見える.
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考え方 最接近は相対角が1周するごとに起こる.外側の公転周期を出した後,角速度の差を用いる.

  1. TB=43/2T=8T.相対角速度は 2π/T−2π/(8T)=7π/(4T) だから,最短時間は 2π/{7π/(4T)}=8T/7.

  2. 角度はAが 16π/7,Bが 2π/7 で,差は 2π.相対角を ϕ とすれば,衛星間距離は s2=r2+16r2−8r2cos⁡ϕ.最小は 3r,最大は 5r である.同じ方向に並んでも半径が違うため衝突しない.この計算は中心天体の質量や衛星の質量を数値で知らなくても行える.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

半径 R,質量 M の天体の表面から,物体を局所水平となす角 α(0<α<π/2) で速さ GM/R により打ち出す.

  1. 外部軌道の長半径と角運動量を求めよ.

  2. 最大の中心距離を求めよ.その点で速さは0か.

局所水平から角αだけ外向きに初速度を与える.その後の軌道は示さない. 局所水平から角αだけ外向きに初速度を与える.その後の軌道は示さない.
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考え方 初速の大きさからエネルギーを,接線成分から角運動量を別々に求める.角運動量が0でなければ最高点でも接線速度が残る.

  1. E=−GMm/(2R) だから a=R.L=mRGM/Rcos⁡α=mGMRcos⁡α.

  2. L2=GMm2a(1−e2) より e=sin⁡α.したがって ra=R(1+sin⁡α).遠点の速さは va=L/(mra)=GM/Rcos⁡α/(1+sin⁡α)>0 である.計算上の近点 R(1−sin⁡α) は天体内にあるが,実際の運動は上昇して遠点を通り,表面に戻るまでで終わる.楕円全体を貫通する軌道と解釈してはいけない.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

半径 r の円軌道を動く質量 m の衛星が,ごく弱い抵抗を受け,常に円に近い軌道のまま半径 r/2 まで下がる.両軌道とも地表より外側にある.

  1. 失われた力学的エネルギーと,運動・位置エネルギーの変化を求めよ.

  2. 角運動量の変化率と速さの比を求め,抵抗があるのに速さが増す理由を説明せよ.

初めの半径rと後の半径r/2を示す.途中の経路や速度は示さない. 初めの半径rと後の半径r/2を示す.途中の経路や速度は示さない.
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考え方 短時間の抵抗による減速と,長時間かけて到達する低い円軌道の速さは別に比較する.両端の円軌道の状態量を使う.

  1. Ei=−GMm/(2r),Ef=−GMm/r より,失われた量は GMm/(2r).K=GMm/(2r) なので ΔK=GMm/(2r),U=−GMm/r より ΔU=−GMm/r.和は ΔE=−GMm/(2r) になる.

  2. L=mGMr より Lf/Li=1/2,相対変化は (Lf−Li)/Li=1/2−1.速さは vf/vi=2.落下によって減った位置エネルギーの一部が運動エネルギーへ移り,残りが散逸する.エネルギーが減ることは,運動エネルギーだけが減ることを意味しない.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

半径 R の一様な球から,中心 O より距離 d の点 C を中心とする半径 a の球を取り除き,空洞にする.a+d<R とする.取り除く前の一様球の,表面での重力加速度を g とし,O から C へ向かうベクトルを d とする.重力は質量について重ね合わせられる.

  1. 空洞内の重力加速度を求めよ.空洞の半径 a に依存するか.

  2. 空洞の中心に静止していた質点を放す.空洞の壁に達するまでの時間と,その直前の速さを求めよ.空気抵抗は無視し,壁に達するまでは空洞の中だけを考える.

  3. R=6.40×106m,g=9.80ms−2,d=R/2,a=R/4 のとき,(2)の時間と速さを求めよ.

半径Rの球の断面.中心Oから距離dの点Cを中心とする半径aの空洞.青い点がCの質点.重力の矢印はない. 半径Rの球の断面.中心Oから距離dの点Cを中心とする半径aの空洞.青い点がCの質点.重力の矢印はない.
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考え方 空洞は,一様な球から同じ密度の小球を除いたものとして扱う.空洞内の点は大きい球にとっても除いた小球にとっても内部なので,どちらも中心距離に比例する重力を使う.差は位置によらない.

  1. 取り除く前の球の内部では,O からの位置 r での重力加速度は gfull=−(g/R)r である.除く小球の質量は全体の (a/R)3 倍であり,同じ密度なので,C からの位置 r′=r−d での内部加速度は grem=−(g/R)r′ である.空洞内ではこれを引いて

g=gfull−grem=−gRd

大きさは gd/R で,向きは C から O へ向かう.位置にも半径 a にも依存しない.d→0 で加速度は 0 になり,同心の空洞で内部の重力が消えることと合う.

  1. 加速度の大きさ α=gd/R は一定で,C から O の向きである.その向きに壁までの距離は a だから,静止から放すと

t=2aRgdv=2gadR

である.

  1. d=R/2,a=R/4 では t=R/g.数値は t=808s,v=3.96×103ms−1 である.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

質量 M の惑星から中心距離 D に,半径 s,密度 ρ の小さな一様球がある.s/D は十分小さい.小球の中心とともに落下する回転しない座標系を用いる.

  1. 惑星側の表面での潮汐加速度を求めよ.

  2. それが小球自身の表面重力と等しくなる D を求めよ.これを実在天体の厳密な破壊距離と呼べるか.

惑星Mと密度ρの小球の中心距離はD.小球の半径はsである. 惑星Mと密度ρの小球の中心距離はD.小球の半径はsである.
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考え方 外部重力の差を自己重力と比較する.球全体の引力による共通の並進加速度は差し引く.

  1. GM/(D−s)2−GM/D2≈2GMs/D3.中心から惑星側へ引き離す向きである.

  2. 小球の質量は 4πρs3/3 なので,自己重力は 4πGρs/3.等置して D3=3M/(2πρ),よって D=(3M/(2πρ))1/3.この比較では小球の大きさ s が消える.ただし球の変形,内部の強度,自転,軌道に伴う回転の影響を扱っていないため,これは引き離しの起こりやすさの目安であり,厳密な破壊距離ではない.また得た距離で s/D が十分小さいか確認する必要がある.

演習 9

オリジナル ★★★☆☆

ばね秤につるした小さい試験質量 m の真下に,密度 ρ=8.00×103kgm−3,半径 a の一様な球を置く.試験質量から球表面までのすき間は d=0.0200m である.球を遠ざけたときとの力の差の測定不確かさを ηmg,η=1.00×10−8,g=9.80ms−2 とする.幾何と密度の誤差は無視する.

  1. 球による力と,その測定から求める G の相対不確かさを表せ.

  2. 相対不確かさを δ=0.100 以下にする最小の a と球質量を求めよ.設計値として冒頭の G を使う.

  3. η を半分にしたときの必要質量を計算し,すき間を無視する近似と比較せよ.

秤の試験質量とその下の球.中心までの距離a+dと表面のすき間dを区別する. 秤の試験質量とその下の球.中心までの距離a+dと表面のすき間dを区別する.
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考え方 秤の誤差は元の重さに対して与えられている.測りたい小さな引力に対する誤差とは異なる.

  1. 球の質量 M=4πρa3/3 より F=GmM/(a+d)2.求める相対不確かさは ηmg/F であり,m は消える.

  2. 必要条件は

a3(a+d)2≥CC=3ηg4πGρδ=0.438m

左辺は a>0 で単調増加するので,等号の正の根が最小半径である.数値的に a=0.476m,M=3.62×103kg.C が長さであることも確かめられる.

  1. C が半分になるので,根は a=0.255m,M=5.55×102kg.必要質量は元の約0.154倍となる.d=0 なら a=C,M∝η3 なので0.125倍だが,有限のすき間が改善効果を弱める.d→0 の極限でこの立方則に戻る.

演習 10

オリジナル ★★★☆☆

母船が中心天体のまわりを半径 r=8.00×106m の円軌道で回っている.GM=4.00×1014m3s−2 とし,質量 m=40.0kg の観測機を長さ l=80.0m の軽い綱でつなぐ.母船の質量は観測機に比べて十分大きく,その軌道の変化を無視する.

  1. 綱が半径方向で,観測機が外側または内側にあり,母船と同じ角速度で円運動するときの張力を求め,l/r の一次まで近似せよ.

  2. 両者が同一半径の円上で少し離れ,綱が弦に沿う場合,同じ角速度で綱を張ったまま定常運動できるか.両者の相互引力は無視する.

内側・外側の半径方向の綱と,同一半径の弦に沿う綱を別々に示す. 内側・外側の半径方向の綱と,同一半径の弦に沿う綱を別々に示す.
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考え方 回転系の見かけの力は使わず,慣性系で必要な向心加速度と実際の引力を比べる.ω2=GM/r3 である.

  1. 外側では引力と張力がともに内向きなので

Tout=m[ω2(r+l)−GM(r+l)2]

内側では張力は外向きなので

Tin=m[GM(r−l)2−ω2(r−l)]

(1±l/r)−2≈1∓2l/r と展開すると,どちらも T≈3mGMl/r3=7.50×10−3N.引力の差だけの係数2に,必要な向心加速度の差の係数1が加わる.厳密には内側の張力がわずかに大きい.l→0 なら張力も0になる.

  1. 同一半径では各々の引力だけで必要な向心加速度が足りる.弦方向の正の張力を加えると,接線方向にも加速度が生じて定常な等角速度運動を保てない.張力0なら同じ円軌道上の一定の位相差を保てるので,綱は引っ張る必要がない.

演習 11

オリジナル ★★★☆☆

外部の支えで固定された球形天体A,Bの中心間距離を D=1.00×107m とする.Aの半径は 5.00×105m,Bの半径は b=2.00×105m,GMB=1.00×109m3s−2,MA=qMB である.AのB側表面から,質点探査機を中心線に沿ってBへ打ち出し,以後は推進しない.

  1. A中心からの距離 x での単位質量当たりのポテンシャルと,その極大点を求めよ.

  2. Bの手前側表面への衝突速度の下限を,q=4.00 と q=9.00 について計算せよ.下限が有限時間で実現できるかも説明せよ.

固定した二天体と中心線上の座標x,間隔D,Bの半径b. 固定した二天体と中心線上の座標x,間隔D,Bの半径b.
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考え方 Bまで届くには,途中のポテンシャルの山を越す必要がある.Bだけの脱出速度で決めてはいけない.

  1. 天体の間では Φ(x)=−GMB[q/x+1/(D−x)].Φ′(x)=0 より x∗=Dq/(1+q).また Φ″(x)<0 なので極大で,Φ∗=−GMB(1+q)2/D.両例とも極大点は天体の外にある.

  2. 単位質量当たりの全エネルギーを Φ∗ に上から近づけると

vinf=2GMB[qD−b+1b−(1+q)2D]

q=4.00 では 95.0ms−1,q=9.00 では 92.9ms−1.括弧は長さの逆数なので平方根は速度になる.山頂と同じエネルギーでは,山頂へ近づく速さが0に近づき,通過に無限の時間がかかる.したがって実際に到達する速度はこの下限より大きい.b/D→0 ならBの表面脱出速度 2GMB/b に近づく.

演習 12

オリジナル ★★★☆☆

半径 r=7.00×106m のほぼ円軌道を回る質量 m=20.0kg,正面断面積 S=0.400m2 の衛星を考える.GM=4.00×1014m3s−2 である.軌道付近には密度 ρd=2.00×10−12kgm−3 の微粒子群があり,遭遇時の粒子速度は天体に対して0とする理想模型を使う.衛星は粒子を吸収した直後,衛星に対する平均相対速度0で放出し,質量を一定に保つ.粒子群の長期的な維持機構は扱わない.

  1. 抵抗力を求めよ.

  2. 1周当たりの平均軌道半径と円軌道速度の変化を一次近似で求め,数値を評価せよ.抵抗が弱く,長期的には円軌道の系列として扱えるとする.

  3. S を2倍にするとどうなるか.抵抗があるのに速度が増す理由も説明せよ.

円軌道上の衛星が断面積Sで微粒子を取り込み,共動速度で放出する局所模型. 円軌道上の衛星が断面積Sで微粒子を取り込み,共動速度で放出する局所模型.
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考え方 一瞬の減速と,長時間で低い軌道へ移った後の円軌道速度を区別する.

  1. 取込率は m˙d=ρdSv.静止粒子を速度 v にする運動量が必要で,放出の追加推力は0だから F=m˙dv=ρdSv2.v=GM/r=7.56×103ms−1 より F=4.57×10−5N で,向きは運動と逆である.

  2. E=−GMm/(2r),E˙=−Fv から r˙=−2ρdSGMr/m.1周期 2πr/v を掛けると

Δr≈−4πρdSr2m=−24.6mΔv≈−v2rΔr=1.33×10−2ms−1

|Δr|/r=3.52×10−6 なので,1周での小変化の近似に矛盾しない.

  1. この近似内では抵抗も両変化量も2倍になる.低い円軌道では位置エネルギーの減少が運動エネルギーの増加を上回り,全エネルギーは減る.抵抗による瞬間の接線加速度は負でも,円軌道系列の速度変化は正である.ρd→0 で変化はすべて0に戻る.

演習 13

オリジナル ★★★☆☆

質量 M の中心星のまわりを,衛星が半径 r0 の円軌道で回っている.中心星の質量が一瞬で (1−f)M に変わった.0≤f<1 とし,中心星は反跳せず,放出物の引力や衛星との衝突も無視する模型である.

  1. 変化直後の単位質量当たりのエネルギーを求め,束縛と脱出の境界を決めよ.

  2. 束縛されるときの長半径,離心率,近点・遠点距離を求めよ.

  3. f=0.200,r0=1.00×107m のときに数値を評価せよ.

質量変化の直前と直後に,同じ位置・速度をもつ衛星と中心星.変化後の軌道は描かない. 質量変化の直前と直後に,同じ位置・速度をもつ衛星と中心星.変化後の軌道は描かない.
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考え方 衛星に力積を与えないので位置と速度は連続だが,ポテンシャルは変わる.

  1. v02=GM/r0 のままであり,ε=v02/2−G(1−f)M/r0=(f−1/2)GM/r0.f<1/2 なら楕円,f=1/2 なら放物線,f>1/2 なら双曲線である.

  2. ε=−G(1−f)M/(2a) より a=(1−f)r0/(1−2f).減少後の円軌道速度より現在の速度が大きいので,現在位置は近点である.rp=r0=a(1−e) から e=f/(1−f),ra=a(1+e)=r0/(1−2f).

  3. a=1.33×107m,e=0.250,rp=1.00×107m,ra=1.67×107m.f=0 なら円に戻り,f→1/2 の下側極限では遠点が無限遠へ向かう.a,rp,ra は長さ,e は無次元である.

演習 14

オリジナル ★★★☆☆

半径 R=6.00×105m,GM=2.40×1011m3s−2 の天体へ,探査機が放物線軌道で接近する.近点は中心から rp=8.00×105m である.そこで短時間の逆噴射を行い,同じ半径の円軌道へ移る.排気速度は機体に対して u=1.50×103ms−1 で一定である.

  1. 必要な速さの減少量を求めよ.

  2. 噴射前の全質量に対する消費燃料の割合を求めよ.噴射中の位置変化と重力の力積は無視する.一定の排気速度 u で速さを Δv だけ変えるとき,噴射前後の質量比は mi/mf=eΔv/u,すなわち Δv=uln⁡(mi/mf) となることを使ってよい.

放物線から半径rpの円へ移る近点と,進行方向への排気. 放物線から半径rpの円へ移る近点と,進行方向への排気.
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考え方 まず軌道が要求する速度差を決め,次に質量変化を伴うロケットの式に入れる.

  1. 放物線のエネルギーは0なので vp=2GM/rp=775ms−1.円軌道速度は vc=GM/rp=548ms−1.したがって Δv=(2−1)GM/rp=227ms−1 の減速が必要である.

  2. Δv=uln⁡(mi/mf) より,燃料割合は 1−mf/mi=1−exp⁡(−Δv/u)=0.140,約14.0 %である.指数は無次元で,u→∞ なら必要燃料割合は0に近づく.噴射は接線方向であり,円軌道に入る瞬間に動径速度を消す追加操作は要らない.

17第10章の発展問題

★4・★5の発展問題で,衝突や噴射による軌道変更,推進中の運動,軌道や重力のわずかな変化を扱います.保存則を使う時間区間と座標系を明示し,先に厳密な式を立ててから,どの小さい量について近似するかを決めてください.数値計算では G=6.67×10−11m3kg−1s−2 を用い,特に断らない限り天体の自転と大気を無視し,中心天体を回る探査機の質量は中心天体に比べて無視できるものとします.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

質量 M,半径 R の天体の外側で,質量がともに m の2衛星が半径 r>R の円軌道を進む.軌道面は異なり,交点で2つの速度がなす角は β(0<β<π) である.交点で完全非弾性衝突して合体する.衝突中の重力の力積と衛星間の引力は無視する.

  1. 合体直後の速さと失われる運動エネルギーを求めよ.

  2. 合体後の軌道の近点距離を求め,地表と接触しない条件を示せ.

同じ円速度をもつ2つの速度ベクトルが角βをなす.合体後の速度は示さない. 同じ円速度をもつ2つの速度ベクトルが角βをなす.合体後の速度は示さない.
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考え方 衝突では運動量をベクトルとして足す.その後は合体物体のエネルギーと角運動量を用いる.衝突の前後で力学的エネルギーは保存しない.

  1. 円速度を vc=GM/r,c=cos⁡(β/2) とする.対称な2速度の平均は角の二等分線を向き,大きさは v′=vcc.初めの運動エネルギーの和は mvc2,合体後は mvc2c2 なので,損失は mvc2(1−c2)=GMmsin2⁡(β/2)/r.

  2. 両速度はともに衝突点の半径に垂直で,平均も垂直である.v′<vc だから衝突点は新軌道の遠点.単位質量当たりのエネルギーは GM(c2/2−1)/r=−GM/(2a) より a=r/(2−c2).したがって rp=2a−r=rc2/(2−c2).接触しない条件は rp>R,すなわち c2>2R/(r+R).等号は地表に接する場合である.β→π では合体速度と角運動量が0へ近づき,直線落下の極限となる.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

質量 M1,M2 の2恒星が,共通の重心のまわりを周期 T で円運動する.両者の距離は一定の d で,速さの比は v1/v2=2 と測定された.他の天体の引力は無視する.

  1. 重心からの距離と,T と全質量の関係を求めよ.

  2. d,T,G から各質量を求めよ.距離 d を片方の軌道半径としてよいか.

重心Cの両側に2恒星を置く.星間距離dは両者の軌道半径の和である.比の解答は描かない. 重心Cの両側に2恒星を置く.星間距離dは両者の軌道半径の和である.比の解答は描かない.
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考え方 両星が動くので,一方を固定した衛星公式へ単独の質量を代入してはいけない.重心条件と共通の角速度を使う.

  1. M1r1=M2r2,r1+r2=d より r1=M2d/(M1+M2),r2=M1d/(M1+M2).角速度 ω=2π/T として,星1の運動方程式は M1ω2r1=GM1M2/d2.代入して ω2=G(M1+M2)/d3,すなわち T2=4π2d3/[G(M1+M2)].

  2. v1/v2=r1/r2=M2/M1=2 なので,M2=2M1.全質量 S=4π2d3/(GT2) とおけば M1=S/3,M2=2S/3.それぞれの半径は 2d/3,d/3 であり,d ではない.d は相対運動の円の半径で,その運動に対して全質量を用いたケプラー則が成り立つ.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

恒星の慣性系で,惑星が短い遭遇の間ほぼ一定の速度 V=(V,0) で動く.探査機の質量は惑星に比べて無視でき,惑星系で十分遠方の入射速度は uin=(0,−u) である.重力によって偏向した後の遠方速度を uout=(usin⁡δ,−ucos⁡δ) とする.0≤δ≤π で,選ぶ衝突径数によってこの範囲の偏向が可能と仮定する.

  1. 恒星系での単位質量当たりのエネルギー増加を求めよ.

  2. それを最大にする δ と,そのときの出射速度を求めよ.エネルギーの供給源を説明せよ.

惑星系で同じ速さの入射・出射速度と,恒星系への変換に加える惑星速度を示す. 惑星系で同じ速さの入射・出射速度と,恒星系への変換に加える惑星速度を示す.
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考え方 惑星系では入射と出射の速さは等しいが,恒星系へ戻すと惑星の速度との内積が変わる.両端では惑星のポテンシャルを同じ0の極限として比べる.

  1. 恒星系の速度は v=V+u.したがって Δε=(|V+uout|2−|V+uin|2)/2=V⋅(uout−uin)=Vusin⁡δ.

  2. 最大は δ=π/2 で Δεmax=Vu.出射速度は (V+u,0),入射の速さは V2+u2 である.探査機が得たエネルギーは惑星の公転のエネルギーに由来し,有限の探査機質量を考えれば惑星がごくわずかに減速する.惑星速度一定という近似は,その微小変化を無視したものである.実際に可能な偏向角には惑星半径などの制限があり,この最大値は問題で指定した理想的な範囲内の結論である.

演習 4

東京大 1991 後期(改題) ★★★★☆

半径 R,質量 Mc の小惑星を,母船と子機が一体となって半径 r0=λR,λ>1 の円軌道で回っている.全質量を M,子機の質量を αM,0<α<1 とする.子機を接線前方へ放出し,放出直後の子機と母船の相対速度を w>0 とする.放出は瞬間的で,互いの引力は無視する.円軌道速度を v0,s=w/v0 と書く.

  1. v0 と,放出直後の両機の速度を求めよ.

  2. 子機が脱出するための s の下限を求めよ.

  3. 母船が逆行せず,小惑星表面にも接しない条件を (α,s) 平面の領域として表せ.この条件と(2)が両立する α の範囲を示せ.

  4. λ=2.00,α=0.200,R=5.00×105m,GMc=1.00×1011m3s−2 で,最小脱出放出時の w と母船の近点高度を求めよ.

円軌道上の放出点で接線方向へ分かれる母船と子機.横軸α,縦軸sの空の座標枠も添え,安全領域を記入できるようにする. 円軌道上の放出点で接線方向へ分かれる母船と子機.横軸α,縦軸sの空の座標枠も添え,安全領域を記入できるようにする.
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考え方 放出の短い間は2機の運動量を保存させる.その後は各々の軌道エネルギーと角運動量を使う.全質量 M と中心天体の質量 Mc を区別する.

  1. 円運動より v0=GMc/r0.子機と母船の速度を vs,vb とすれば αvs+(1−α)vb=v0,vs−vb=w.したがって

vs=v0[1+(1−α)s]vb=v0(1−αs)
  1. 子機の単位質量当たりのエネルギーは vs2/2−GMc/r0.これが0以上なら脱出するので s≥(2−1)/(1−α).等号は無限遠で速さが0となる放物線である.母船の反跳があるため,子機だけを固定台から打ち出す計算とは異なる.

  2. β=vb/v0=1−αs とおく.逆行しない枝 0<β<1 では放出点が遠点である.近点を rp,近点速度を vp とすると,r0βv0=rpvp と

β2v022−GMcr0=vp22−GMcrp

を連立し,放出点とは異なる根を取って rp/r0=β2/(2−β2) を得る.表面に接しない条件 rp>R は β>c,c=2/(λ+1) である.求める領域は

2−11−α≤s<1−cα

横軸 α,縦軸 s に,下側の曲線を実線,上側を境界を含まない破線で描き,その間を塗る.両曲線が交わるより左側に限られ,

0<α<1−c2−c

が両立条件である.接触を許す模型なら上側と質量比の境界も含むが,本問では除く.

  1. v0=316ms−1,c=0.816497…,質量比の上限は 0.307007… なので可能である.smin=0.517767…,w=164ms−1,β=0.896447….rp=6.72×105m より高度は 1.72×105m となる.s→0 では rp→r0,λ→1 では安全な放出余地が消えるという極限も合う.

演習 5

東京大 2001 後期(改題) ★★★★☆

自転しない球形天体の半径は R=1.00×106m,重力定数と質量の積は GM=8.00×1011m3s−2 である.質量 m=300kg の探査機を表面から鉛直に打ち出し,中心距離 r0=2.00×106m で静止した瞬間に接線方向へ加速して円軌道へ入れる.噴射燃料の質量はここでは無視する.その後,進行方向と逆向きに速さ u=200ms−1 で来た岩石を中心で捕獲した.捕獲後も順行し,軌道の近点距離は b=1.50×106m と測定された.

  1. 最初の打上げ速度と円軌道速度 v0 を求めよ.

  2. 捕獲直後の速さ V と,近点での速さ W を求め,W=(2v02−V2)/V を示せ.

  3. 岩石の質量を逆算し,捕獲で熱や変形に変わったエネルギーも求めよ.

  4. 船内で岩石をばねにつけて質量を確かめる方法と,主な誤差要因を説明せよ.

円軌道上のPに逆向きから近づく岩石と,捕獲後の遠点P・近点Q.添図に岩石とばねを描く. 円軌道上のPに逆向きから近づく岩石と,捕獲後の遠点P・近点Q.添図に岩石とばねを描く.
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考え方 打上げ,短い捕獲,捕獲後の周回は別の過程である.捕獲で力学的エネルギーは保存しないが,衝突時間中の運動量は保存する.

  1. 鉛直上昇のエネルギー保存から vlaunch=2GM(1/R−1/r0)=894ms−1.最高点では速度0であり,接線方向へ v0=GM/r0=632ms−1 を与える.

  2. 逆向きの岩石の捕獲で速さが下がるため,Pが遠点となる.r0V=bW と,単位質量当たりのエネルギー保存

V22−GMr0=W22−GMb

を使う.b=r0V/W を代入して整理すると (W−V)[W+V−2v02/V]=0.今回は円ではないため W≠V であり,指定された式が得られる.また

V=2GMbr0(r0+b)=586ms−1W=r0bV=781ms−1

ここで左辺は近点速度 W であり,捕獲前の円軌道速度とは違う.

  1. 岩石の質量を md とすれば mv0−mdu=(m+md)V.よって

md=mv0−Vu+V=17.9kg

捕獲前後で位置エネルギーは変わらない.相対運動の運動エネルギーが失われるので,Q=12mmdm+md(v0+u)2=5.86×106J.これは重心運動と内部運動の分解を使った結果でもある.b→r0 なら V→v0,推定岩石質量も0へ近づく.

  1. 校正済みのばね定数 k のばねに岩石をつけ,小振幅で振動させて周期 Ts を測る.船体を十分重い固定端とみなせれば md=k(Ts/2π)2 で,重さを量る必要はない.支持側の質量が無視できなければ測れるのは換算質量なので補正する.ばね自体の有効質量,ばね定数の校正,周期の読取り,空気抵抗,船体の振動が主な誤差となる.軌道の潮汐の影響を無視できるほど短い周期の装置を選ぶ.

演習 6

オリジナル ★★★★☆

半径 R=1.00×103m,密度 ρ=3.00×103kgm−3 の同じ小天体が,数密度 n=1.00×10−18m−3 でまばらに分布している.衝突に至るまで変形せず,互いに接触したら衝突と数える.各対の十分遠方での相対速度を u とし,他の天体からの引力は無視する.

  1. 遠方での相対軌道のずれを b とし,接触できる最大値 bmax を2体問題から求めよ.

  2. 1個に注目した衝突率が nπbmax2u となる理由を説明し,平均待ち時間を u=1.00ms−1 と u=10.0ms−1 で求めよ.

相対軌道の遠方のずれbと,接触時の中心間距離2R. 相対軌道の遠方のずれbと,接触時の中心間距離2R.
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考え方 重力が軌道を曲げるため,衝突断面積は幾何学的な面積より大きくなる.各天体の質量を m=4πρR3/3 とする.

  1. 換算質量は m/2.すれすれ接触時の相対速さを vc とすると,エネルギー保存から vc2=u2+2Gm/R,角運動量保存から bmaxu=2Rvc.したがって

σ=πbmax2=4πR2(1+2GmRu2)

u が大きければ 4πR2,小さければ σ∝u−2 である.

  1. 時間 Δt に相対運動が掃く体積は σuΔt なので,そこにある相手の平均個数は nσuΔt.遭遇が独立で率が一定という模型では平均待ち時間は τ=1/(nσu) となる.全体の対の数を数えるのではないので,ここに 1/2 は付けない.m=1.26×1013kg,2Gm/R=1.68m2s−2 より,低速の場合 σ=3.36×107m2,τ=2.97×1010s.高速の場合 σ=1.28×107m2,τ=7.83×109s.nσu の単位は s−1 である.低速極限の増大は孤立した2体近似の範囲での結果である.

演習 7

オリジナル ★★★★☆

半径 r0=1.00×107m,GM=1.00×1014m3s−2 の同じ円軌道をA,Bが順行している.初めにBはAより ϕ=0.100rad 前方にいる.Aだけが接線方向に2回噴射し,一時的な楕円軌道を整数 k 周した後,最初の噴射位置で元の円軌道に復帰してBと同じ位置・速度になる.天体半径は 2.00×106m.1回の速度変更の上限は 10.0ms−1 である.

  1. Bが k 周に少し足りない角度を進む間に会う「内側の楕円」の周期と長半径を求めよ.

  2. Aが1周だけ余計に遅れる「外側の楕円」では,Bが k+1 周に少し足りない角度を進んで会う.その周期と長半径を求めよ.

  3. 各計画で上限を守る最小の整数 k と会合時間を求め,比較せよ.

同一円上のAと前方のB,位相差φ,Aの位置における接線方向の噴射. 同一円上のAと前方のB,位相差φ,Aの位置における接線方向の噴射.
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考え方 位置だけでなく周期を合わせる.最後の逆向き噴射で速度も円軌道の値へ戻す.T0=2πr03/(GM),v0=GM/r0,q=ϕ/(2π) とする.

  1. Bの位相条件 ϕ+2πkT−/T0=2πk より T−/T0=1−q/k,a−/r0=(1−q/k)2/3.最初に減速すると噴射点が遠点となる.

  2. 同様に ϕ+2πkT+/T0=2π(k+1) より T+/T0=1+(1−q)/k,a+/r0=[1+(1−q)/k]2/3.こちらは最初に加速し,噴射点が近点となる.

  3. 噴射点速度は v±/v0=2−r0/a± なので,各噴射量は Δv±=|v±−v0|.帰還時の速さも同じで,2回の噴射量の大きさは等しい.内側は k=1 で 17.0ms−1 と上限を超え,k=2 なら 8.46ms−1 で足りる.会合時間は (2−q)T0=3.94×104s.近点は 2a−−r0=9.89×106m で衝突しない.

外側では k=102 の 10.1ms−1 は丸め前には 10.072… で不可,k=103 の 9.98ms−1 が最初に可能となる.会合時間は (104−q)T0=2.07×106s.どちらも k を増すほど噴射量は単調に減るので,直前の整数との比較で最小性を確かめられる.この2計画では内側が大幅に早い.ϕ→0 なら内側計画の噴射量は0に近づき,位相を詰める必要がなくなる.

演習 8

オリジナル ★★★★☆

中心天体の表面直上,中心距離 r=4.00×105m を一定に保って,ロケットが静止状態から接線方向に加速する.この位置の重力加速度は g=0.250ms−2 である.排気は機体に対して速さ u=1.00×103ms−1,後方水平線から内向きに角 ϕ(0<ϕ<π/2)をなす.したがって推力は前方かつ外向きである.燃料は必要なだけ積めるとし,質量を m(t),初期質量を m0 とする.

  1. 推力の大きさ F と速度の微分方程式を求めよ.

  2. 円軌道速度 vc=gr への到達時間と,速度 v までに残る質量の割合を求めよ.積分 ∫0zdx1−x2=12ln⁡1+z1−z を使ってよい.

  3. ϕ=0.200rad のとき,v=0.990vc までの時間と残存質量割合を求めよ.乗員が受ける座席からの力を乗員質量で割った荷重加速度の最大値と,それを 1.00ms−2 以下にする角度の条件も求めよ.

一定半径を進むロケット,前方外向きの推力と後方内向きの排気,角φ. 一定半径を進むロケット,前方外向きの推力と後方内向きの排気,角φ.
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考え方 半径一定でも動径加速度は0ではなく,内向きに v2/r ある.動径方向の式で推力を決め,接線方向の式で加速を求める.

  1. mg−Fsin⁡ϕ=mv2/r,mv˙=Fcos⁡ϕ なので

Fm=g−v2/rsin⁡ϕv˙=gcot⁡ϕ(1−v2vc2)

F=−um˙ とも表せる.

  1. 変数分離して

t=vctan⁡ϕ2gln⁡1+v/vc1−v/vc

v→vc では対数が発散するため,厳密な到達には無限の時間がかかる.一方,mdv=−ucos⁡ϕdm より m/m0=exp⁡[−v/(ucos⁡ϕ)].したがって

v(t)=vcexp⁡(2t/τ)−1exp⁡(2t/τ)+1m(t)=m0exp⁡[−v(t)ucos⁡ϕ]τ=vctan⁡ϕg

時間は発散しても,漸近的な残存質量割合は正である.

  1. vc=316ms−1,所要時間は 679s,残存割合は 0.727.荷重加速度は重力を除いた加速度 F/m であり,始動時に最大の g/sin⁡ϕ=1.26ms−2 となる.上限条件は sin⁡ϕ≥0.250,すなわち ϕ≥0.253rad.ϕ→0 では必要荷重が発散し,v→vc では推力が0になる.vc/g が時間,v/u が無次元という次元も合う.

演習 9

オリジナル ★★★★☆

質量 m=100kg の衛星が,GM=4.00×1014m3s−2 の天体を半径 r0=8.00×106m の円軌道で回っている.質量 md=0.0200kg の粒が,半径内向きに速さ u=2.00×104ms−1 で中心に衝突して付着した.衛星の自転は生じない.ϵ=md/m,v0=GM/r0,q=u/v0 とする.

  1. 衝突後の速度の接線成分と動径成分を求めよ.

  2. 束縛軌道について遠点と近点の差を厳密に求め,ϵ の一次近似を導け.q は固定して展開する.

  3. 数値を比較せよ.天体の半径は 6.00×106m とし,衝突後の周回軌道は天体を横切らないものとする.

円軌道の衛星に半径内向きの粒が付着する直前の速度ベクトル. 円軌道の衛星に半径内向きの粒が付着する直前の速度ベクトル.
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考え方 衝突点は新軌道の近点でも遠点でもない.半径方向の速度が生まれるため,エネルギーと角運動量から軌道全体を復元する.

  1. 運動量の成分保存より vt=v0/(1+ϵ),vr=−ϵu/(1+ϵ).

  2. A=vt/v0=1/(1+ϵ),B=vr/v0=−ϵq/(1+ϵ),D=2−A2−B2 とおく.エネルギーは −Dv02/2 なので D>0 が束縛条件で,a=r0/D.単位質量当たりの角運動量は h=r0v0A.転回点では動径速度0だから,ε=h2/(2r2)−GM/r を解くと

e=1−DA2=(1−A2)2+A2B2ra−rp=2r0D1−DA2

1−A2≈2ϵ,B≈−ϵq より e≈ϵ4+q2,したがって ra−rp≈2r0ϵ4+q2.動径速度だけでなく,付着に伴う接線速度の低下も同じ一次の寄与をもつ.

  1. ϵ=2.00×10−4,q=2.83.厳密式は 1.10766×104m,一次式は 1.10851×104m で,一次式が約0.077 %大きい.比較用に桁を多く残したが,入力の精度ではどちらも 1.11×104m である.近点は約 7.991×106m で天体の外にある.ϵ→0 で差は0となり,u=0 でも接線速度低下による楕円化は残る.

演習 10

オリジナル ★★★★☆

半径 R,重力定数と質量の積 GM の天体のまわりを,質量 m の探査機が半径 r0=λR(λ>1)の円軌道で回っている.円軌道の速さを v0 とする.ある瞬間に,接線速度は変えず,動径内向きの速度 sv0(s>0)だけを加える.噴射は瞬間的で,噴射に伴う質量の変化は無視する.

  1. 噴射直後の単位質量当たりのエネルギーと,中心のまわりの角運動量を求めよ.

  2. s<1 として,その後の軌道の近点距離と遠点距離を r0 と s で表せ.

  3. 天体の表面に達する条件を s と λ で表せ.達するときの速さと,局所水平から下向きに測った角 γ を求めよ.

  4. λ=1.50,R=8.00×105m,GM=2.00×1011m3s−2 とする.s=0.400 と s=0.800 のそれぞれについて,表面に達するかを答えよ.達する場合は,その速さと γ を求めよ.

円軌道上の探査機.接線速度と,加える動径内向きの速度.噴射後の軌道と入射角は描かない. 円軌道上の探査機.接線速度と,加える動径内向きの速度.噴射後の軌道と入射角は描かない.
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考え方 接線速度を変えないので角運動量は円軌道のままである.動径速度の分だけエネルギーが増え,噴射点は近点でも遠点でもない.

  1. v0=GM/r0 より,単位質量当たりのエネルギーは v02(1+s2)/2−GM/r0 である.v02=GM/r0 を入れると

ε=GM2r0(s2−1)

角運動量には接線速度だけが寄与し,L=mr0v0=mGMr0 である.s<1 なら ε<0 で,軌道は束縛される.

  1. 転回点では動径速度が 0 なので,単位質量当たりで ε=h2/(2r2)−GM/r である.h=L/m とおくと h2=GMr0 だから

s2−12r0=r02r2−1r

u=r0/r とおけば (u−1)2=s2 となり,半径は r0/(1+s) と r0/(1−s) である.内向きに加速した直後は中心距離が減り始めるので,近点は rp=r0/(1+s),遠点は ra=r0/(1−s) である.

  1. 表面に達するのは rp≤R,すなわち s≥λ−1 のときである.等号は表面に接する場合である.達するときの速さ vR は,エネルギーから

vR=v0s2+2λ−1

接線成分は角運動量から vt=λv0 である.局所水平から下向きの角は

cos⁡γ=λs2+2λ−1

を満たし,動径成分は vr=−vR2−vt2 である.s=λ−1 では γ=0 となる.

  1. r0=1.20×106m,v0=408ms−1 である.s=0.400 では rp/R=λ/(1+s)=1.07>1 なので表面に達しない.遠点は ra/R=2.50 である.s=0.800 では rp/R=0.833<1 なので,近点に着く前に表面へ達する.vR=663ms−1,cos⁡γ=0.923,γ=22.6∘ である.

演習 11

オリジナル ★★★★☆

水平な長い円柱状の坑道が,地表の振り子時計の真下を通っている.坑道半径は a=4.00m,軸の深さは h=20.0m,除去した岩石の密度は ρ=2.40×103kgm−3 である.掘削前の重力加速度を g=9.80ms−2 とし,地表の変形は無視する.坑道は無限に長いと近似する.

  1. 線密度 Λ の無限直線から距離 h の点の重力加速度の大きさを,軸方向の座標 x に関する積分で導け.必要なら ∫−∞∞dx(x2+h2)3/2=2h2 を使ってよい.x=htan⁡θ の置換でもよい.断面内の線を重ね合わせると,一様円柱の外部重力は中心軸に Λ=πa2ρ を集めた場合と等しくなる結果を使ってよい.

  2. 掘削による周期の相対変化を求めよ.

  3. 掘削前に正しく動いていた時計が,実時間 86400s の間に何秒進むか,または遅れるかを評価せよ.

地表の振り子と深さhの坑道断面,半径a.添図で軸方向の微小線要素と距離を示す. 地表の振り子と深さhの坑道断面,半径a.添図で軸方向の微小線要素と距離を示す.
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考え方 穴の重力を新たに加えるのではなく,取り除いた岩石が以前に及ぼしていた引力を差し引く.

  1. 対称な軸方向成分は相殺され,線へ向かう成分は

gline=GΛ∫−∞∞hdx(x2+h2)3/2=GΛh[xx2+h2]−∞∞=2GΛh

与えられた円柱外部の関係を使うと,失われた下向き重力は Δg=2πGρa2/h=8.05×10−7ms−2.したがって現在の重力は g−Δg である.Gρa2/h の単位は加速度になる.

  1. 振り子の長さが同じなら T′/T=g/(g−Δg).Δg/g が小さいので (T′−T)/T≈Δg/(2g)=4.11×10−8.周期は長くなる.

  2. 実時間 t に時計が示す時間は tT/T′ だから,遅れは t(1−T/T′)≈tΔg/(2g)=3.55×10−3s.1日に約3.55ミリ秒遅れる.a→0 や h→∞ で影響が消える.有限長の坑道なら端の効果を考慮する必要があり,この数値は無限円柱模型での評価である.

演習 12

オリジナル ★★★★☆

動かない天体(質量 M,半径 R)へ,小天体が十分遠方から速さ v∞>0 で近づく.重力がなければ通る直線と中心Oとの距離 b>0 を衝突径数という.入射速度と出射速度の方向がなす角を偏向角 δ(0<δ<π) とする.小天体は質点とみなし,接触しない限り外部の重力は −GMm/r2 である.

  1. 双曲線軌道の離心率 e,近点距離 rp,偏向角 δ を b,v∞,GM で表せ.

  2. GM=8.0×1012m3s−2,v∞=2.0×103ms−1,b=2.0×106m,R=5.0×105m のとき,偏向角と近点での速さを求め,天体へ衝突しないことを確かめよ.

遠方の入射直線から中心Oまでの距離bと,入射方向と出射方向の間の角δを示す.縮尺は模式的. 遠方の入射直線から中心Oまでの距離bと,入射方向と出射方向の間の角δを示す.縮尺は模式的.
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考え方 遠方でエネルギーと角運動量を決め,軌道の遠方の向きを求める.位置ベクトルの方向と入射速度の方向は逆である.

  1. E=mv∞2/2,|L|=mbv∞,ℓ=b2v∞2/(GM).軌道の式から e=1+b2v∞4/(GM)2>1,rp=ℓ/(1+e).a∞=GM/v∞2 とおけば rp=a∞[1+(b/a∞)2−1] である.近点方向から測る角を ψ とすれば,遠方では cos⁡ψ∞=−1/e.入射速度は遠方の位置ベクトルと反対を向くので,δ=2ψ∞−π,sin⁡(δ/2)=1/e.よって

δ=2arctan⁡GMbv∞2
  1. a∞=2.0×106m,e=2,δ=90∘.rp=2.0×106(2−1)≈8.3×105m>R なので衝突しない.エネルギー保存より vp=v∞2+2GM/rp≈4.8×103ms−1.rpvp=bv∞ でも確かめられる.GM/(bv∞2) は無次元で,b→∞ では δ→0.小さい b での δ→π は,中心天体の表面に当たらないという条件内でのみ意味をもつ.

演習 13

オリジナル ★★★★☆

質量 m の粒子に,原点Oへ向く大きさ κ/r の力が働く.κ>0 の単位は Nm,角運動量は L>0.円軌道の半径を r0 とし,そこからごくわずかにずれた軌道を考える.

  1. r0 と,u=1/r=u0+w,u0=1/r0 としたときの w の軌道の方程式を一次近似で求めよ.

  2. 連続する2つの近点の間の角 Δθ を求め,近点の向きが1動径周期ごとに進むか戻るか答えよ.ずれの角を度で計算せよ.

逆二乗でない中心力の近点を示す模式図. 逆二乗でない中心力の近点を示す模式図.
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考え方 軌道の形を角の関数として調べる.w が最大になる点が,r が最小の近点である.

  1. 円運動の式 L2/(mr03)=κ/r0 より r0=L/mκ.軌道の式へ F=−κu を入れると u″+u=mκ/(L2u)(プライムは θ 微分).mκ/L2=u02 であり,u02/(u0+w)≈u0−w だから w″+2w=0.よって w=Acos⁡[2(θ−θ0)].

  2. 連続する最大値の間は Δθ=2π/2.1周の 2π との差は 2π(1/2−1)≈−1.8403rad≈−105.4∘ で,近点は戻る向きに移る.ここで比較しているのは1動径周期ごとの近点で,1周する間の振動数は 2 である.一次近似の 2 は有理数でないので,この近似の軌道は有限回の動径周期で閉じない.有限の振幅まで厳密に同じずれとは主張していない.L/mκ は長さの次元で,角の周期は無次元になる.

演習 14

オリジナル ★★★★★

半径 r の円軌道から半径 16r の同一平面・同方向の円軌道へ移る.次の2方式だけを比較する.Aは通常のホーマン遷移,Bは共通の遠点 b≥16r をもつ2つの楕円をつなぐ3回噴射の遷移である.Bでは r から b へ上がり,そこで近点を 16r に上げ,戻った近点で円軌道に合わせる.噴射は接線方向に瞬間的に行う.同じ一定排気速度で質量比が exp⁡(∑|Δv|/u) となる理想ロケットとする.

  1. Aの総速度増分を vc=GM/r で表せ.

  2. Bの総速度増分を x=b/r の関数で表し,x→∞ の極限をAと比較せよ.有限時間の燃料最小解まで証明したことになるか.

Aは近点rと遠点16rの楕円.Bは同じ焦点と共通遠点bをもつ2楕円.各パネル内では同じ縮尺で描く. Aは近点rと遠点16rの楕円.Bは同じ焦点と共通遠点bをもつ2楕円.各パネル内では同じ縮尺で描く.
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考え方 同じ排気速度では総速度増分が小さいほど燃料の割合も小さい.ただし許した軌道の種類と飛行時間の制約を明示しなければ,大域的な最小燃料とは言えない.

  1. 第1の楕円の長半径は 17r/2.近点速度は vc32/17,遠点速度はその16分の1,外円速度は vc/4 である.よって

ΔvAvc=32/17−1+14−1/136≈0.5362

となる.

  1. 最初の噴射は vc(2x/(1+x)−1).共通遠点で,第1楕円の速度は vc2/[x(1+x)],第2楕円では vc32/[x(x+16)] であり,差だけ加速する.第2楕円の近点速度は vcx/[8(x+16)] で,最後はこれを vc/4 に減速する.したがって

ΔvBvc=2x1+x−1+32x(x+16)−2x(1+x)+x8(x+16)−14

である.極限は (2−1)(1+1/4)≈0.5178 でAより小さい.連続性により十分大きい有限の b でもAより燃料を減らせるが,極限では飛行時間が発散する.ここでは有限時間の最適な b や,任意の噴射方式を含む大域的な最小値は証明していない.ホーマン遷移を条件なしに最小燃料と呼べないことが結論である.

演習 15

オリジナル ★★★★★

質量 M と μM(0<μ<1)の2天体が,距離 D を保って共通の重心のまわりを円運動する.μ は1より十分小さいとする.軽い天体から重い天体の側へ距離 s の点に試験粒子を置き,2天体と同じ角速度で重心のまわりを円運動させる.

  1. 慣性系で,試験粒子が共通の重心のまわりをこの角速度で円運動するための運動方程式を書け.

  2. s/D と μ が小さいとして,主要項から s を求めよ.この点は,2つの重力が打ち消す点か.

重い天体と軽い天体の間に試験粒子Pがあり,軽い天体からの距離をsとする. 重い天体と軽い天体の間に試験粒子Pがあり,軽い天体からの距離をsとする.
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考え方 試験粒子を2天体と同じ角速度の円運動に乗せるには,慣性系で重力の合力が,共通重心へ向かう向心加速度をちょうど与えればよい.

  1. 共通重心を原点とし,重い天体を x=−μD/(1+μ),軽い天体を x=D/(1+μ) に置く.角速度は ω2=GM(1+μ)/D3 である.粒子は軽い天体から重い天体側へ距離 s の位置 x=D/(1+μ)−s にある.質量 m の試験粒子について,右向きを正とすると,重い天体までの距離は D−s なので運動方程式は

mx¨=−GMm(D−s)2+GμMms2

円運動では x¨=−ω2x であるから

GM(D−s)2−GμMs2=ω2(D1+μ−s)

左辺は,重い天体へ向かう引力から,軽い天体へ向かう引力を引いた加速度である.

  1. s/D が小さいとして (D−s)−2≈D−2(1+2s/D) を使う.左辺の先頭の GM/D2 は,右辺の ω2D/(1+μ)=GM/D2 と打ち消す.残る式は

GμMs2≈GM(3+μ)sD3

μ も1より十分小さいなら s≈D(μ/3)1/3 である.得られた s/D は μ とともに小さくなるので,展開の仮定と合う.2つの重力が打ち消す条件 GM/(D−s)2=GμM/s2 では s はおよそ Dμ であり,上の位置とは異なる.ここで求めたのは,合力が共通の円運動に必要な向心加速度と一致する位置である.ずれたあとの安定性は,この式だけでは分からない.

演習 16

オリジナル ★★★★★

半径 R の球対称な天体の密度は ρ(r)=ρ0(1−r/R)(0≤r≤R) である.

  1. 全質量 M と内部の重力加速度 g(r) を求め,g(r) が最大となる半径を求めよ.

  2. 無限遠基準の内部ポテンシャル Φ(r) を求め,中心を通る細いトンネルで地表から静かに放した物体の中心での速さを求めよ.

密度ρ/ρ₀はr/Rに対して1から0へ直線的に減る.重力の分布は解答として求める. 密度ρ/ρ₀はr/Rに対して1から0へ直線的に減る.重力の分布は解答として求める.
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考え方 まず密度を球殻ごとに積分して内包質量を求める.ポテンシャルは表面の外部解につながるように積分定数を決める.

  1. M(r)=4πρ0∫0r(1−s/R)s2ds=4πρ0(r3/3−r4/(4R)).よって M=πρ0R3/3,g(r)=4πGρ0(r/3−r2/(4R)).微分して g′(r)=4πGρ0(1/3−r/(2R))=0 より最大は r=2R/3.その値は 4πGρ0R/9,表面値 GM/R2=πGρ0R/3 の 4/3 倍である.

  2. dΦdr=g(r) と Φ(R)=−GM/R=−πGρ0R2/3 を用いる.

Φ(r)=Φ(R)−∫rRg(s)ds=−2πGρ0R23+2πGρ0r23−πGρ0r33R

となり,表面値と表面での傾きが外部の −GM/r に一致する.エネルギー保存より vO2/2=Φ(R)−Φ(0)=πGρ0R2/3=GM/R だから vO=2GM/R.内部の重力は r に比例するだけではないため,全振幅の運動を単振動として周期を計算することはできない.

演習 17

オリジナル ★★★★★

質量 m の粒子に,F(r)=−κ/r2−η/r3(外向きが正,κ,η>0)の中心力が働く.角運動量は L>0.q=1−mη/L2 とする.

  1. q>0 の場合の軌道を u=1/r で解き,束縛された軌道の連続する近点の角度差を求めよ.積分定数を使ってよい.

  2. q=0.96 のとき,1動径周期ごとの近点の進む角を度で求めよ.

  3. 無限遠を基準とする実効ポテンシャルを求め,q≤0 で安定な円軌道がない理由を説明せよ.

逆二乗でない中心力の近点を示す模式図. 逆二乗でない中心力の近点を示す模式図.
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考え方 距離の3乗に反比例する力の項は,u の軌道方程式で u に比例する項になる.小振幅近似を使わず解ける.

  1. −(L2/m)u2(u″+u)=−κu2−ηu3 より u″+qu=mκ/L2.q>0 なら

u=mκqL2{1+ecos⁡[q(θ−θ0)]}

束縛された非円軌道は 0<e<1.連続する近点の角度差は Δθ=2π/q,1周からのずれは 2π(1/q−1)>0 で,運動と同じ向きに進む.e=0 では円となり,近点の向き自体を定義しない.

  1. 360∘(1/0.96−1)≈7.4∘.η→0 では q→1,ずれが消え,逆二乗の力の楕円軌道へ戻る.

  2. U(r)=−κ/r−η/(2r2) だから Ueff=qL2/(2mr2)−κ/r.q>0 では r0=qL2/(mκ) に極小がある.q≤0 なら Ueff′=−qL2/(mr3)+κ/r2>0 で停留点がなく,r→0 で Ueff→−∞.遠心項が引力の 1/r2 の位置エネルギーを上回れず,安定な円軌道を作れない.η と L2/m はともに kgm4s−2 の次元をもち,q は無次元である.原点付近の特異性まで現実の物体を表すとは限らない.

18第10章のまとめ

この章では,ケプラーが観測から見いだした3つの法則を出発点に,万有引力の法則を導きました.中心力の運動を調べるために極座標を導入し,位置エネルギーと脱出速度,実効ポテンシャル,軌道の形の導出と楕円軌道の乗り換え,球対称な天体の重力と潮汐へと進みました.ここで法則を一覧にし,各題材の最初の問いに短く答えます.

定義と法則

法則 ケプラーの法則と万有引力

  • ケプラーの法則:(1) 惑星は太陽を一方の焦点とする楕円を描く.(2) 太陽と惑星を結ぶ線分が単位時間に掃く面積(面積速度)は一定.これは中心力による角運動量の保存である.(3) 周期の2乗は長半径の3乗に比例する.

  • 万有引力の法則:質量 m1,m2 の質点が距離 r で引き合う力は F=Gm1m2r2(G=6.67×10−11Nm2kg−2).複数の質点からの力は,ベクトルとして足し合わせる(重ね合わせ).地表の重力加速度は g=GMR2.

法則 極座標での運動

  • 単位ベクトル er=(cos⁡θ,sin⁡θ),eθ=(−sin⁡θ,cos⁡θ) は場所で向きが変わり,e˙r=θ˙eθ,e˙θ=−θ˙er.

  • 速度は v=r˙er+rθ˙eθ,加速度は a=(r¨−rθ˙2)er+1rddt(r2θ˙)eθ.r 一定で円運動の式に戻る.

  • 中心力では r2θ˙=L/m が一定(角運動量の保存,面積速度 12r2θ˙ が一定).

法則 重力のポテンシャルと軌道のエネルギー

  • 無限遠を基準にした位置エネルギーは U=−GMmr.万有引力は保存力である.

  • 半径 r の円軌道の速さは v=GMr,力学的エネルギーは E=−GMm2r(運動エネルギーの符号を変えたもの).

  • 角運動量が0でないとき,E<0 は束縛された楕円(円を含む),E=0 は放物線,E>0 は双曲線.E=0 となる地表での速さが脱出速度で,vesc=2GMR.

  • 位置エネルギー U(r) の中心力のもとで角運動量 L をもつ運動の動径方向は,実効ポテンシャル Ueff(r)=L22mr2+U(r) の中の1次元運動として読める.E=Ueff が転回点,谷の底が円軌道(dUeffdr=0 は円運動の運動方程式と同じ),d2Ueffdr2>0 なら安定.万有引力では Ueff=L22mr2−GMmr.

法則 楕円軌道

  • u=1/r を θ の関数とみると,運動方程式は d2udθ2+u=1ℓ(ℓ=L2GMm2)となり,軌道の式 r=ℓ1+ecos⁡θ(θ は近点から)が導ける.E=GMm2ℓ(e2−1) で,e=0 円,0<e<1 楕円,e=1 放物線,e>1 双曲線.

  • 長半径 a,離心率 e のとき,近点 rp=a(1−e),遠点 ra=a(1+e),ℓ=a(1−e2).

  • E=−GMm2a,距離 r での速さは v2=GM(2r−1a).近点と遠点では rpvp=rava.

  • 周期は T=2πa3GM.半径 r1 の円軌道から半径 r2 の円軌道への乗り換え(ホーマン遷移)は,長半径 r1+r22 の半楕円を通り,高い軌道(r2>r1)へ移るときは接点で2回加速し,低い軌道へ移るときは2回減速する.

法則 球対称な質量分布

  • 球殻の定理:一様な球殻は,外の質点には中心に集まった質点として働き,内の質点には力を及ぼさない.

  • 一様な球(半径 R)の内部では,内側の質量だけが中心に集まったものとして働き,F=mgRr.中心を通るトンネルでは周期 2πR/g の単振動になる.

  • 潮汐力は,天体(質量 M,距離 r)の引力の,中心との差である.天体と中心を結ぶ軸上で中心から d(r より十分小さい)の点では,大きさ 2GMmdr3 で,天体側は天体向き,反対側は逆向きに働く(軸に垂直な方向では,大きさ GMmdr3 で中心向き).

手順

ポイント 天体の運動の問題を解く手順

  1. 円軌道なら,万有引力 = 向心力(GMmr2=mv2r).地表では GM=gR2 で M を消せることが多い.

  2. 楕円軌道では,近点・遠点の角運動量保存 rpvp=rava とエネルギー保存を連立する.長半径 a が分かれば,E,T が決まる.

  3. 軌道の種類や脱出は,E の符号で判断する(E=0 の境目).万有引力以外の中心力では,実効ポテンシャルの図で転回点と円軌道を読む.

  4. 球対称な天体の内部では,内側の質量だけを中心に置く.外では全質量を中心に置く.

  5. 検算は,g=GM/R2,第一宇宙速度 7.9kms−1,地表すれすれの周期 84 分と比べる.

主な公式

  • 万有引力:F=Gm1m2r2,U=−GMmr

  • 極座標:v=r˙er+rθ˙eθ,ar=r¨−rθ˙2,aθ=rθ¨+2r˙θ˙,L=mr2θ˙

  • 実効ポテンシャル:Ueff=L22mr2+U(r)

  • 円軌道:v=GMr,E=−GMm2r

  • 脱出速度:vesc=2GMR

  • 軌道の式:r=ℓ1+ecos⁡θ,ℓ=L2GMm2,E=GMm2ℓ(e2−1)

  • 楕円軌道:E=−GMm2a,v2=GM(2r−1a),T=2πa3GM

  • 一様な球の内部:F=mgRr,潮汐力(軸上,d は r より十分小さい):2GMmdr3

各題材の問いへの答え

  • ケプラーの法則と万有引力:月は地球の引力を受けて,常に地球の方へ落ち続けている.ただし横向きの速さが大きく,落ちた分だけ地球の表面が曲がって遠ざかるので,ぶつからずに回り続ける.月は地球半径の約 60 倍の距離にあり,向心加速度は地表の g の約 602 分の1である.

  • 極座標で運動を記述する:糸を引いている間,小球は内向きに動くので速度は糸に垂直でなく,糸の力が仕事をする.加速度で見ると,回る向きの成分 rθ¨+2r˙θ˙ が0でも,eθ の向きが回るので回る向きの速さ rθ˙ は増える.r2θ˙ が一定なので,半径が3分の1なら速さは3倍になる.

  • 重力のポテンシャルとエネルギー:地表から打ち出して無限遠でちょうど止まるには,12mv2=GMmR.よって v=2GM/R≈11.2kms−1 で,地表すれすれの円軌道の速さの 2 倍である.

  • 軌道:円軌道で速さを少し上げると,その点を近点とする楕円になる.反対側の遠点が高くなり,周期も延びる.速くなるのは近点付近だけで,遠点付近ではむしろ遅い.

  • 球対称な質量分布と潮汐:一様な地球を貫くトンネルでは,重力が中心からの距離に比例するので,約 84 分の単振動になる.地表すれすれの円軌道と周期が等しく,中心を通るとき最も速い.

この章で使った数学

円運動と面積速度,極座標の単位ベクトルの微分(連鎖律と三角関数の微分),保存力とポテンシャル(線積分,広義積分),θ を変数にした微分と軌道の方程式,楕円の幾何,置換積分,テイラー展開による近似,単振動の微分方程式がありました.