問いしるべ
参考書

問いから始める物理

公式参考書

問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 8節
  1. 観測から運動を組み立てる
  2. 接触と拘束が切り替わる運動
  3. 鎖と成長する物体の力学
  4. 衝突の先にある運動
  5. 回転・摩擦・振動をつなぐ
  6. 軌道と潮汐の総合問題
  7. 東大の過去問を発展させる(1)
  8. 東大の過去問を発展させる(2)

第12章  力学の総合演習

01観測から運動を組み立てる

観測値から未知の質量や力を逆算し,結論が測定誤差に耐えるかを調べます.第3章の運動の記述,第5章の運動量,第6章のニュートンダイアグラム,第7章の振動,第9章の外部運動と内部運動を組み合わせてください.

総合演習 1

オリジナル ★★★★☆

ストロボ写真から衝突を復元する

水平な無摩擦面で滑らかな2円盤A,Bが一度だけ衝突しました.半径はいずれも 0.030m,質量は未知です.接触中は中心線方向だけに力積が働き,接触時間は撮影間隔より十分短いとします.接触時を t=0 とする中心座標の測定値は次のとおりです.座標の単位は m,時刻の単位は s です.

t

Aの (x,y)

Bの (x,y)

−0.20

(−0.630,−0.200)

(0.030,0.200)

−0.10

(−0.330,−0.100)

(0.030,0.100)

0.10

(−0.130,0.100)

(0.230,−0.100)

0.20

(−0.230,0.200)

(0.430,−0.200)

  1. 衝突前後の速度,接触時の中心位置,質量比を求めてください.

  2. 重心速度と相対速度を求め,ニュートンダイアグラムで弾性衝突か判定してください.

  3. 各座標には独立に最大 0.001m の読取誤差があります.質量比を別測定で正確に得た場合でも,相対運動エネルギーの1 %の損失をこの写真だけで識別できますか.誤差の上限から検討してください.

問題図.4時刻の観測座標を表示します.衝突の速度や質量比は示しません. 問題図.4時刻の観測座標を表示します.衝突の速度や質量比は示しません.
解答を見る

考え方 等時間隔の変位が速度を与える.次に速度変化の比から質量比を求め,並進する重心を取り除いて衝突の内部運動を調べる.

  1. 各2点の差を 0.10s で割ると,単位 ms−1 で

vA=(3,1),vB=(0,−1),uA=(−1,1),uB=(2,−1)

となる.直線を t=0 まで延長すると中心は (−0.030,0),(0.030,0).中心間距離は直径に一致し,法線は x 方向である.運動量保存は −4mA+2mB=0 より mB=2mA.両者の y 成分が変わらないことも法線力積の仮定と合う.

  1. mA=m と置くと,重心速度は V=(1,−1/3).Aの重心系速度は衝突前 (2,4/3),後 (−2,4/3) で,速さは等しい.速度空間では中心 V,半径 52/3ms−1 の同じ円上にある.Bの半径はその半分で,重心速度の先端を挟んで常に反対側にある.相対速度は (3,2) から (−3,2) となり,その大きさの2乗はともに13.換算質量 2m/3 による内部エネルギー Krel=13m/3m2s−2 は保存し,法線の反発係数も1である.

  2. 1速度成分の誤差上限は 2(0.001)/0.10=0.020ms−1.相対速度の各成分では 0.040ms−1 となる.前後それぞれの速さの2乗は,単位 m2s−2 で

2.962+1.962=12.6032 ≤ w2 ≤ 3.042+2.042=13.4032

という保守的な範囲にある.差の不確かさは最大 0.8000,公称13の約6.2 %で,1 %の散逸は識別できない.実際にも前後の法線相対速度を 3 と −8.87 に変え,運動量を保存するよう両円盤へ分配した1 %損失のデータも誤差内で作れる.公称値がエネルギー保存と一致することと,損失が正確に0だと証明することは異なる.

総合演習 2

APhO 2004 第1問(改題) ★★★★☆

宇宙船そのものも揺れる質量計

質量 m0=12.0kg の計量台をばねで船体に結び,1方向だけに動かします.ばねの質量と摩擦を無視し,測定時間は軌道周期より十分短いとします.船体の質量 M は,台と試料を含めず,試料搭載の前後で変わりません.地上で船体を固定した空台,軌道上の自由な空台,別の容器から試料を搭載した台で,相対変位の周期 Tg,T0,T1 を測りました.測定結果を q=T2/(4π2) で整理すると qg=0.100s2,q0=0.0800s2,q1=0.133333s2 です.

  1. 2物体の運動方程式から相対変位の周期を導き,ばね定数,船体質量,試料質量を求めてください.

  2. 船体を固定とみなして搭載後の周期だけから試料質量を出すと,どれだけ誤りますか.

  3. qg を正確とし,q0 に小さな誤差 δq0 がある場合の船体質量の相対誤差を求め,重い船体での測定の難しさを説明してください.

問題図.船体と台をばねで結び,相対変位を測ります. 問題図.船体と台をばねで結び,相対変位を測ります.
解答を見る

考え方 台の変位だけでなく船体の反動もばねの伸びに寄与する.周期が測る質量は台の質量そのものではなく換算質量である.

  1. 自然長からの伸びを z=x−X−ℓ とすれば mx¨=−kz,MX¨=kz.引いて z¨=−k(1/m+1/M)z だから q=Mm/[k(M+m)].固定時は qg=m0/k より k=120Nm−1.空台から

M=m0q0qg−q0=48.0kg,m=kq1MM−kq1=24.0kg

となり,試料は m−m0=12.0kg.周期は順に約 1.987,1.777,2.294s であり,自由な空台の周期が固定時より短いという予想に合う.kq の次元は質量である.

  1. 固定と誤認すると mwrong=kq1=16.0kg.試料を 4.0kg と推定し,真値より 8.0kg,約67 %小さい.

  2. M=m0q0/(qg−q0) を微分して

δMM≃qgq0(qg−q0)δq0=qgqg−q0δq0q0

を得る.今回の相対誤差の増幅率は5.M→∞ では q0→qg となり,ほとんど等しい2量の差を分母にするため増幅率が発散する.台の質量測定には固定近似がよくなる一方,船体の質量測定は難しくなる.

[図:船体の反動と台の振動]

解答図.初期状態は相対変位が最大です.再生すると全重心を固定した逆向きの運動が分かります.

総合演習 3

オリジナル ★★★★☆

最大空気荷重はどの高度で生じるか

観測機が地上で静止した状態から鉛直に,正味加速度 a=12ms−2 を一定に保って上昇します.g=9.8ms−2,密度の測定模型は ρ(h)=ρ0e−h/H,ρ0=1.1kgm−3,H=6.0km です.抗力は D=CρAv2/2,正面積 A=0.080m2,係数は 0.50≤C≤0.70 とします.排気の機体に対する速さは u=2.2×103ms−1,初期質量は 160kg です.

  1. 抗力が最大になる高度と,そこでの速さ,抗力の範囲を求めてください.抗力に逆らう仕事率が最大になる高度も求めてください.

  2. 質量と推力の方程式を立て,C=0.60 について最大抗力の時刻での質量,推力,燃料流量を数値積分で求めてください.

  3. 推力上限が 5.2kN なら,地上から最大抗力高度まではこの飛び方が可能であることを,係数の全範囲に対して保証できますか.燃料は少なくとも 60kg 積んでいるとします.

問題図.指定された一定加速度の上昇と,推力・重力・抗力の方向を示します. 問題図.指定された一定加速度の上昇と,推力・重力・抗力の方向を示します.
解答を見る

考え方 まず指定された運動から抗力を求め,その運動を実現する推力を逆算する.最大抗力,最大仕事率,最大推力は同じ条件ではない.

  1. v2=2ah より D=Cρ0Aahe−h/H.微分は D′=Cρ0Aae−h/H(1−h/H) なので最大は h=H.そこで v=2aH≃3.8×102ms−1,Dmax=Cρ0AaH/e は 1.2〜1.6kN.Dv は h3/2e−h/H に比例し,対数微分 3/(2h)−1/H=0 から最大高度は 3H/2=9.0km である.C=0.60 の h=H での Dv は 0.53MW.これは抗力に対する機械的仕事率で,エンジンの全出力ではない.

  2. 燃料流量を q=−m˙>0 とすると F=uq,ma=F−mg−D.したがって

m˙+a+gum=−D(t)u,D(t)=Cρ0Aa2t22exp⁡(−at22H).

b=(a+g)/u とおき,積分因子を掛けると

m(t)=e−bt[m0−1u∫0tebsD(s)ds].

tH=2H/a=31.6s まで積分すると m=107.5kg,F=(a+g)m+D=3.74kN,q=F/u=1.70kgs−1.質量を初期値のまま入れると推力を過大評価する.

  1. 質量は単調に減るので,全区間で F≤(a+g)m0+Dmax(C=0.70)=5.12kN<5.2kN.さらに質量式の積分の抗力項は C に比例する.C=0.70 では m(tH)≃105.9kg で消費量は約 54.1kg.燃料も足りる.これは指定区間での十分条件であり,推力が実際に5.12 kNへ達するという意味ではない.C→0 なら質量式は m=m0e−bt に戻り,抗力の有無による差の符号も正しい.

ポイント この節のふり返り

速度の変化から質量比を求め,重心系で衝突の内部エネルギーを調べました.
周期から未知量を読むときには,測っている座標と換算質量を対応させます.
運動を指定した逆問題では,必要な推力と燃料が実現可能かも検査します.
測定値への一致と,誤差を含めた結論の確かさを区別してください.

02接触と拘束が切り替わる運動

衝突の直前直後と,その後の連続した運動では,使える保存則が変わります.第4章の力,第6章のエネルギー,第7章の振動,第8章の剛体,第9章の外部運動と内部運動をつなぎ,仮定した拘束が本当に保たれるかまで調べてください.

総合演習 4

オリジナル ★★★★☆

転がる車輪は段差を越えられるか

半径 r,質量 m,中心まわりの慣性モーメント I=βmr2 の車輪が,水平面を速さ v で右向きに純転がりし,高さ h=sr(0<s<1) の段差角Pに当たります.短い衝突中には重力の力積を無視し,床から追加の力積は受けず,Pで直ちに滑りが止まる模型とします.その後も滑らずPを支点に回れるものとして,この仮定の成立条件を調べます.衝突の接線力積の上限は法線力積の μJ 倍,衝突後の静止摩擦係数は μ とします.

  1. 衝突後の中心の速さ w0 と失われる運動エネルギーを求めてください.

  2. 角を支点とする乗越えに必要なエネルギー条件と,途中で角から離れない条件を求めてください.等号で有限時間に頂上を通過するかも調べてください.

  3. 必要な力積の比と,衝突後の摩擦条件を求めてください.β=1/2,s=0.10,μJ=0.10,μ=0.50 の場合,許される v/gr の範囲を数値で示してください.

問題図.床で転がる車輪が段差角へ初めて触れた位置です.衝突後の運動は描いていません. 問題図.床で転がる車輪が段差角へ初めて触れた位置です.衝突後の運動は描いていません.
解答を見る

考え方 衝突中にはPまわりの角運動量を,その後にはエネルギーを使う.最後に力積と接触力が片側接触と摩擦の条件を満たすかを点検する.

  1. 初めの中心とPを結ぶ線が上向き鉛直となす角を θ0 とすると c0=cos⁡θ0=1−s,sin⁡θ0=2s−s2.時計回りのPまわりの角運動量は mvrc0+Iv/r.衝突後は (I+mr2)w0/r だから

w0=Av,A=β+c01+β=1−s1+β,ΔK=12m(1+β)v2(1−A2).

s→0 では A→1,損失は0になる.

  1. 上昇中の角を 0≤θ≤θ0 とすれば,高さの増加は r(cos⁡θ−c0).したがって

w2=w02−2gr1+β(cos⁡θ−c0).

頂上まで達するための境界は w02≥2gh/(1+β).等号では頂上近くで w が θ に比例し,所要時間 ∫rdθ/w が対数発散する.有限時間で乗り越えるには厳密な不等号が要る.Pから中心向きの抗力は N=m(gcos⁡θ−w2/r).上昇中は cos⁡θ が増え,w2 が減るので,N は増える.よって接触維持の条件は w02≤grc0.両条件が両立するには s<(1+β)/(3+β) が必要である.

  1. 初速度を接触点からの半径方向と,上昇する接線方向に分解する.半径成分 −vsin⁡θ0 を0にする力積は Jn=mvsin⁡θ0.接線成分の変化は

Jt=m(w0−vc0)=mvβs1+β,JtJn=βs(1+β)2s−s2.

これが μJ 以下でなければ,仮定した衝突は起きない.その後の接線方向の運動方程式と自転の式は mw˙=−mgsin⁡θ+f,Iw˙/r=−rf.消去して f=mgβsin⁡θ/(1+β).上昇につれて f は減り N は増えるので,摩擦条件も出発直後が最も厳しく,

w02gr≤c0−βsin⁡θ0(1+β)μ

となる.数値では A=14/15,Jt/Jn=0.0765<0.10.摩擦を無視した上限は v/gr≤1.016 だが,摩擦を含めると

0.391<vgr≤0.836

に狭まる.各式は速度を gr で無次元化している.この範囲外で別の滑りや飛行による乗越えが可能かは,ここで解いた支点回転の模型とは別問題である.

総合演習 5

オリジナル ★★★★☆

自由に回る外筒と内筒の微小振動

鉛直面内で回転できる半径 R,慣性モーメント J の外筒があります.その中心軸は固定されていますが,軸の摩擦はありません.内側を半径 r,質量 m,慣性モーメント I=βmr2 の小ドラムが滑らず転がります.中心間距離を d=R−r,下向き鉛直から測った小ドラム中心の角を θ とします.両筒の自転の正方向を反時計回りとし,外筒・内筒の角速度を Ω,ω とします.初めは小さな θ から,すべて静止して放します.

  1. 接点速度の条件と,接線方向の運動方程式を立ててください.

  2. 微小振動の周期を求め,外筒を固定した周期と比較してください.

  3. β=1/2,d=0.24m で,自由時と固定時の周期の2乗比が 8/9 でした.J を求めてください.微小振幅 θa で必要な静止摩擦係数の主要項も求めてください.

問題図.外筒中心は固定されますが,外筒は軸まわりに自由に回ります. 問題図.外筒中心は固定されますが,外筒は軸まわりに自由に回ります.
解答を見る

考え方 自由な外筒は接触摩擦によって反動する.接点速度の一致を微分し,摩擦を消去すれば,内筒中心の振動を1本の式にできる.

  1. θ が増える向きの接線力を f とする.接点は内筒中心から外側へ距離 r の点にあるから,速度の条件は dθ˙+rω=RΩ.各運動方程式は

mdθ¨=−mgsin⁡θ+f,Iω˙=rf,JΩ˙=−Rf.

最後の負号は外筒が受ける力が −f であることによる.

  1. S=r2/I+R2/J とおく.拘束を微分して dθ¨=−Sf.よって (m+1/S)dθ¨=−mgsin⁡θ となり,微小角では

T=2πdg(1+1mS),Tfixed=2πdg(1+β).

J→∞ なら固定時に一致する.J→0 なら外筒が容易に回り,内筒を自転させる摩擦が弱くなるため T→2πd/g.1/(mS) は無次元である.

  1. 周期比から 1+1/(mS)=(8/9)(3/2)=4/3,すなわち mS=3.mr2/I=2 なので mR2/J=1,したがって J=mR2.g=9.8ms−2 なら T=1.14s,固定時は 1.20s である.また f=mgsin⁡θ/(1+mS),抗力は N=mgcos⁡θ+mdθ˙2.微小振幅では N=mg まで取ればよく,必要な係数は μ≥θa/(1+mS)=θa/4 が主要項である.周期だけが合っても摩擦不足なら模型は成立しない.

[図:内筒の公転と両筒の自転]

解答図.初期状態は傾けて静止させた状態です.再生すると小振幅での接点速度の一致を確認できます.

総合演習 6

APhO 2005 第1問B(改題) ★★★★☆

長さを切り替えて振り子を育てる

小球の振り子を長さ L,振幅角 α の転回点から放します.最下点で長さを ℓ=qL(0<q<1) に急速に縮め,次の転回点で L に戻します.この半往復を1操作と呼びます.長さの変更は径方向に行い,操作前後の径方向速度は0とします.その間の重力トルクの力積は無視できます.長さ変更以外では摩擦はありません.

  1. 次の振幅角 α′ と α の正確な関係を求め,微小振幅での増幅率を示してください.

  2. 2回の長さ変更で装置が小球にする仕事をそれぞれ求め,振り子のエネルギー増加と照合してください.

  3. 実際には各操作の最後に,長さ L で測る振動エネルギーが割合 η だけ失われます.増幅の条件を求めてください.q=0.90,η=0.10 のとき,微小振幅を2倍以上にする最小の操作回数はいくつですか.

問題図.最下点で短くし,次の転回点で元の長さへ戻します.最終振幅は未指定です. 問題図.最下点で短くし,次の転回点で元の長さへ戻します.最終振幅は未指定です.
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考え方 瞬間的な径方向操作では支点まわりの角運動量を保存するが,力学的エネルギーは装置の仕事によって変わる.位置エネルギーの基準は長さ変更の前後で統一する.

  1. A=1−cos⁡α と置く.最下点直前は v2=2gLA.角運動量 mLv=mℓv′ から v′=v/q.短い振り子として転回点へ上るので gqL(1−cos⁡α′)=v′2/2.したがって

1−cos⁡α′=q−3(1−cos⁡α),α′≃q−3/2α.

ここでは糸が張った振動を扱い,たとえば q−3A<1 として転回点を水平より下に制限する.振幅が大きくなった後まで微小角の増幅率を反復してはいけない.

  1. 支点の高さを基準に U=−mgℓcos⁡θ とする.巻取り時の仕事は運動エネルギーと位置エネルギーの増加の和で

W1=mgLA(q−2−1)+mgL(1−q).

転回点での繰出し時は速度が0のままで,W2=−mgL(1−q)cos⁡α′.和を取り,1−cos⁡α′=A/q3 を代入すると

W1+W2=mgLA(q−3−1).

これは長さ L の最下点基準のエネルギー mgL(1−cos⁡α) の増加に等しい.繰出しで回収する仕事も含めることが必要である.

  1. 振動エネルギーの倍率は B=(1−η)/q3.増幅する条件は q<(1−η)1/3.微小角では角振幅の倍率が B なので Bn/2≥2,すなわち n≥2ln⁡2/ln⁡B.数値では B=0.90/0.903=1.23457,n≥6.579 より最小7回である.q=1 なら長さ変更の仕事は0となり,損失がある限り振幅は減るという極限とも合う.

[図:長さ変更による振幅の増加]

解答図.小振幅の転回点から始めます.再生すると巻取りと繰出しを含む1操作を確認できます.

ポイント この節のふり返り

衝突中の角運動量保存と,衝突後のエネルギー保存を時間区間で分けました.
拘束から出した解には,抗力が負にならず摩擦が足りるという条件が付きます.
接点速度を一致させると,自由な支持体の反動も振動の周期に入ります.
長さを変える装置の仕事を含めれば,振幅の増減を保存則と矛盾なく追えます.

03鎖と成長する物体の力学

運動する部分の質量が変わるときには,その部分へ流れ込む運動量も数えます.第3章の運動の記述,第4章の接触力,第5章の質点系,第6章のエネルギー,第7章のばね,第9章の重心と内部運動を組み合わせます.同じ物体でも,選ぶ系の境界によって式の書き方が変わることを確かめてください.

総合演習 7

オリジナル ★★★★☆

積もったロープを拾い上げながら走る台車

水平な滑らかな床に,線密度 λ,全長 L の柔らかいロープを小さく積み,その一端を質量 M の台車に結びます.台車に初速 v0 を与え,その後は外から引きません.進んだ距離 x と同じ長さのロープが水平に伸び,速さ v で台車とともに動きます.拾い上げ境界は固定位置にあり,積まれた部分は直前まで静止し,境界通過は完全非弾性的とします.ロープの伸び,空気抵抗,境界の高さを無視します.

  1. 0<x<L での速さと加速度を求めてください.

  2. 台車側の張力 Tc と,拾い上げ境界直後の張力 Tb を求めてください.なぜ両者は同じでないのですか.

  3. 散逸率と距離 x までの散逸量を求めてください.M=1.5kg,λ=0.30kgm−1,L=5.0m,v0=4.0ms−1 の終端直前の値を計算してください.

問題図.静止部分と運動部分を色分けし,二つの張力を区別します. 問題図.静止部分と運動部分を色分けし,二つの張力を区別します.
解答を見る

考え方 台車だけは一定質量だが,台車と動くロープを合わせた系には静止ロープが入る.張力を求めるには,この二つの系を使い分ける.

  1. 外力の水平成分がない全系の運動量は (M+λx)v=Mv0.従って

v=Mv0M+λx,a=vdvdx=−λv2M+λx.

動く系への質量流入 m˙=λv を用いれば,(M+λx)a=−vm˙=−λv2 と同じ式になる.

  1. 台車単独の式 Ma=−Tc から Tc=Mλv2/(M+λx).境界では毎秒 λv の質量に速度 v を与えるので Tb=λv2.運動中のロープの各部分について積分すると Tc−Tb=λxa であり,減速するため Tc<Tb となる.台車に −Tb を直接代入すると,ロープ自身の運動量変化を落としてしまう.

  2. K=(M+λx)v2/2=M2v02/[2(M+λx)] より

−K˙=12λv3,Q(x)=12Mv02λxM+λx.

境界で張力が供給する仕事率 Tbv=λv3 の半分は新しい部分の運動エネルギー,半分は散逸となる.数値では x→L で v=2.0ms−1,a=−0.40ms−2,Tb=1.2N,Tc=0.60N,Q=6.0J,散逸率 1.2W.λ→0 では速度一定,張力と散逸は0になる.最後の端が入った後は流入が止まり,全体が等速運動する.

総合演習 8

オリジナル ★★★★☆

鎖は案内輪からいつ浮くか

線密度 λ の鎖を半径 R の滑らかな半円形案内面に掛けます.案内面は固定され,鎖との接線方向の摩擦はありません.左右の鉛直部分の長さは L−x,L+x,円弧部分は長さ πR です.初め x=x0>0 で静止させ,右側が下がるように放します.鎖は伸びず,曲げの剛性は無視します.g=9.8ms−2,L=2.0m,R=0.030m,x0=0.10m とします.

  1. 接触が保たれる間の加速度 a=x¨,速さ v=x˙,時刻と x の関係を求めてください.

  2. 頂上の張力と単位長さ当たりの抗力を求め,初めて浮く位置と時刻を計算してください.頂上以外が先に浮かないかも検査してください.

  3. 左端が案内面に届く前に浮くことを確認し,円弧の質量を無視する近似の誤差を見積もってください.

問題図.円弧部分の長さと質量も残す模型です.鎖が離れる場所は示していません. 問題図.円弧部分の長さと質量も残す模型です.鎖が離れる場所は示していません.
解答を見る

考え方 鎖全体の仕事から速さを出し,局所的な向心加速度から接触力を出す.円弧の質量を残すと,頂上が最初に離れるかを直接確かめられる.

  1. 円弧部分の位置エネルギーは配置が同じなら変わらない.鉛直部分のエネルギーは,案内面の左右の端を高さ0として U=−λg[(L−x)2+(L+x)2]/2.全質量は λ(2L+πR).B=L+πR/2 と置くと,エネルギー保存から

v2=gB(x2−x02),a=gxB,x=x02(eg/Bt+e−g/Bt).

最後の式は x¨=(g/B)x,x˙(0)=0 の解である.

  1. 右の鉛直部では λ(L+x)a=λ(L+x)g−TR より TR=λ(L+x)(g−a).頂上から右側へ測る角を ϕ とすると,円弧の接線方向の式は dTdϕ=λR(a−gsin⁡ϕ).従って

T(ϕ)=T0+λR[aϕ+g(cos⁡ϕ−1)].

ϕ=π/2 で T=TR を使うと T0=λ[g(L+R)−ax].外向きの単位長さ当たり抗力を n(ϕ) とすれば λv2/R=T/R+λgcos⁡ϕ−n だから,

n(ϕ)λ=gL−ax−v2R+aϕ+2gcos⁡ϕ.

この式は −π/2≤ϕ≤π/2 で2階微分が −2gcos⁡ϕ≤0.したがって最小値は端点にあり,a>0 なので左端 ϕ=−π/2 が先に0になる.頂上だけを調べると誤る.左端の条件は

v2=(L−x)(g+a),2x2+πR2x−BL−x02=0.

正の根は x∗≃1.421m,v∗≃3.10ms−1,t∗≃1.529s.この瞬間にも頂上の抗力は n(0)/λ=2g+πa/2>0 である.頂上の式だけを形式的に0とした値 x≃1.454m は,既に失われた接触を仮定して延長した値であり,実際の最初の離脱ではない.

  1. x∗<L なので,左側にはまだ約 0.579m 残っている.円弧を無視する R/L→0 の主要項では x∗→(L2+x02)/2=1.416m,相対差は約0.3 %.円弧質量は鉛直部質量の πR/(2L)≃2.4 %で,加速度などの係数の補正もこの程度である.小さい案内輪を点として扱う近似は離脱位置の主要項にはよいが,有限の輪のどこが最初に浮くかまでは決めない.この違いが深めるべき点である.

総合演習 9

オリジナル ★★★★☆

下端が止まったまま縮むばね

質量 M,全体のばね定数 k の一様な柔らかいばねを鉛直につり下げます.自然長と縮み切った長さを無視します.上端から数えた質量の割合を s(0≤s≤1) とし,微小区間 ds のばね定数を k/ds とします.静止時の全長を ℓ とします.上端を解放すると,下端がその場に止まったまま上から収縮し,時刻 tc に全体が初めの下端へ集まることを観察事実として与えます.収縮中の波の伝わり方は問わず,外力は重力だけとします.

  1. 初めの位置分布,ℓ,重心位置,弾性エネルギーを求めてください.

  2. tc と収縮直後の重心速度を求めてください.

  3. 収縮直後を内部の運動が止まった小さな塊とする模型で,失われた機械的エネルギーを求めてください.M=0.30kg,k=1.5Nm−1 の数値を示し,全エネルギーを並進運動へ移す計算と比較してください.

問題図.静止時のばねは上ほど大きく伸びています.下端が止まることは問題の観察条件です. 問題図.静止時のばねは上ほど大きく伸びています.下端が止まることは問題の観察条件です.
解答を見る

考え方 収縮中の形を知らなくても,全重心は自由落下する.観察された集合位置と重心の運動を合わせれば,時刻と並進エネルギーが決まる.

  1. 上端を原点に下向きを y とする.区間 s の張力は下につるされた質量の重さ T=Mg(1−s).区間の伸びは dy=Tds/k だから

y(s)=Mgk(s−s22),ℓ=Mg2k,yG=∫01y(s)ds=2ℓ3.

弾性エネルギーは各区間の T2/(2k/ds) を足して Us=M2g2/(6k)=Mgℓ/3.全長に一律の張力を掛ける計算ではない.

  1. yG(t)=2ℓ/3+gt2/2.全体が y=ℓ に集まるとき重心もそこにあるため

tc=2ℓ3g=M3k,Vc=gtc=2gℓ3.

重心の運動方程式には内部のばね力が現れない.

  1. 重力によって解放されるエネルギーは Mg(ℓ−2ℓ/3)=Mgℓ/3.初めの弾性エネルギーを足すと 2Mgℓ/3 だが,重心の並進エネルギーは MVc2/2=Mgℓ/3 にすぎない.差の

Q=Mgℓ3

は,塊模型では散逸し,実物で内部振動が残ればその分も含む.数値は ℓ=0.98m,tc=0.258s,Vc=2.53ms−1,Q=0.960J.全エネルギーを並進に入れると速さが 2Vc となり,外力だけで決まる重心の運動と矛盾する.k→∞ では長さと収縮時刻,放出エネルギーはいずれも0へ向かい,次元も M/k が時間の2乗となる.

[図:収縮中の重心の自由落下]

解答図.初めの重心は全長の3分の2の位置です.再生では重心だけを動かし,未知の収縮前線は描きません.

ポイント この節のふり返り

運動量流入のある系では,質量一定の運動方程式をそのまま使えません.
張力は位置によって異なり,局所的な向心加速度が接触喪失を決めます.
小さな円弧を無視する近似と,有限の円弧上の離脱位置の判定を区別しました.
重心の運動と全エネルギーの収支を併用すると,内部運動や散逸に残る量が分かります.

04衝突の先にある運動

衝突の瞬間に得た速度は,次の飛行や振動の初期条件になります.第5章の力積,第6章のニュートンダイアグラムと相対運動エネルギー,第7章の振動,第8章の自転,第9章の外部運動と内部運動を合わせて考えます.一度目の衝突を解いた後も,接触の切替えや次の衝突の有無を確認してください.

総合演習 10

IPhO 1991 第1問(改題) ★★★★★

跳ね返る途中で滑りが止まる回転球

半径 r,質量 m,慣性モーメント I=βmr2 の球が水平な床に衝突します.直前の水平速度は u>0,鉛直速度は下向きに w>0 です.時計回りの角速度を正として ω0 とし,接点の滑り速度は s0=u−rω0>0 とします.法線の反発係数は e,滑り中の摩擦係数は μ′ です.接線方向の弾性はなく,滑り速度が0になれば以後接線力積は増えない模型を採用します.衝突中の重力の力積は無視します.

  1. 累積法線力積を p として,接点の滑り速度を求め,滑りが途中で止まる条件を示してください.

  2. 衝突後の水平速度,回転,エネルギー損失,次の着地点までの水平距離を求めてください.β=2/5,u=2.0ms−1,rω0=−3.0ms−1,w=3.0ms−1,e=0.60,μ′=0.30,m=0.20kg で計算してください.

  3. 他の数値を保ち,逆回転だけを変えて真上へ跳ね返すことはできますか.摩擦係数も変更できるなら,必要な最小値とそのときの初回転を求めてください.

問題図.水平速度と下向き速度,角速度の符号を示します.衝突後の状態は示しません. 問題図.水平速度と下向き速度,角速度の符号を示します.衝突後の状態は示しません.
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考え方 衝突時間の力の波形を知らなくても,累積力積を変数にできる.摩擦力積には法線力積による上限と,滑り停止による上限の両方がある.

  1. 左向きの摩擦力積の大きさを J とすると u(p)=u−J/m,ω(p)=ω0+rJ/I.滑り中は J=μ′p だから

s(p)=s0−1+1/βmμ′p.

全法線力積は pf=m(1+e)w.滑り停止に必要なのは J∗=mβs0/(1+β) で,J∗≤μ′pf が停止条件である.等号は離床の瞬間に停止する境界である.実際の力積は J=min(μ′pf,J∗).

  1. 結果は uf=u−J/m,rωf=rω0+J/(βm),鉛直速度は上向き ew.接線方向のエネルギーを展開して引けば,全損失は

Q=12m(1−e2)w2+Js0−J22m(1+1β).

滑りが止まる場合,第2,第3項の和は mβs02/[2(1+β)].空中で抵抗がなければ次に同じ高さへ戻る時間は 2ew/g,水平距離は X=2ewuf/g である.数値では s0=5.0ms−1,J∗/m=10/7ms−1,μ′pf/m=1.44ms−1 なので離床直前に滑りが止まる.uf=rωf=4/7ms−1,Q=1.29J,X=0.210m となる.μ′=0 なら接線損失は0で,水平速度と自転は変わらないという極限に合う.

  1. uf=0 には J=mu が必要だが,今の上限は 1.44m<2.0m なので回転だけでは実現できない.摩擦係数を変えるなら μ′≥u/[(1+e)w]=5/12≃0.417 が必要である.この最小値で,ちょうど滑りも止める初回転は J∗=mu,すなわち rω0=−u/β=−5.0ms−1.このとき uf=ωf=0.さらに強い逆回転なら最小摩擦係数でも水平速度だけを0にできるが,自転と滑りは残る.

[図:力積による滑り停止]

解答図.初期状態は接触開始です.前半は累積法線力積,後半は離床後の飛行を再生します.二つの時間尺度は別です.

総合演習 11

オリジナル ★★★★★

ばねで結ばれた的への再衝突

滑らかな直線上で,質量 m の台車B,Cを自然長 ℓ,ばね定数 k のばねで結び,静止させます.左から質量 γm の台車Aが速さ u でBへ弾性衝突します.台車は点質量として扱い,AとBの衝突中のばねの力積を無視します.t=0 を最初の衝突直後とし,xA=xB=0,xC=ℓ とします.ω=2k/m とし,2u/ω<ℓ を満たすものとします.

  1. 最初の衝突直後の各速度と,その後の xA,xB,xC を,次の衝突まで求めてください.

  2. AとBが再衝突する質量比の閾値を数値で求めてください.位置の一致だけでなく接近速度も検討してください.

  3. 閾値を γc,γ=γc+ε(ε>0) とします.最初の再衝突時刻が閾値での接触時刻からどのようにずれるか,ε の主要項を求めてください.

問題図.入射台車と,自然長のばねでつながる2台の静止台車です. 問題図.入射台車と,自然長のばねでつながる2台の静止台車です.
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考え方 第1衝突は2体の速度円で解ける.その後はB,Cの重心等速運動と相対振動を重ね,Aとの位置差の最小値を調べる.

  1. 2体の重心速度 V=γu/(γ+1) のまわりで速度を反転させれば,a=(γ−1)u/(γ+1),b=2γu/(γ+1) がA,Bの直後の速度となる.Cは0.B,Cの重心は速度 b/2 で動き,相対伸び z=xC−xB−ℓ は z¨=−ω2z,z(0)=0,z˙(0)=−b を満たす.よって

xA=at,xB=bt2+b2ωsin⁡ωt,xC=ℓ+bt2−b2ωsin⁡ωt.

ℓ−b/ω>0 は与えた条件から保証され,BとCは接触しない.

  1. τ=ωt として位置差は

xB−xA=u(γ+1)ωF(τ),F(τ)=τ+γsin⁡τ.

0<τ≤π では正である.負の正弦の最初の区間で曲線が初めて0に接するとき,F=F′=0.したがって tan⁡τc=τc,π<τc<3π/2,γc=−1/cos⁡τc.数値解は τc=4.493409,γc=4.603339.後の負の区間で必要な γ=τ/(−sin⁡τ) は少なくとも 3π>γc なので,これが全時刻での閾値である.γ<γc では再接触せず,等号では相対速度0の接触だけで力積はない.γ>γc の最初の零点では F′<0 なので,本当の再衝突が起こる.

  1. τ=τc+δ として2次まで展開すると,定数項と δ の項は消え,

F≃εsin⁡τc−12γcsin⁡τcδ2.

よって δ≃±2ε/γc.最初の零点は負の枝なので

thit≃1ω(τc−2εγc).

根の時刻は質量比に線形ではなく平方根で変わる.1/ω が時間の次元を担い,閾値へ近づくと接近速度も0へ近づく.再衝突後にはこの自由振動の式を使い続けず,新しい速度を初期条件にし直す必要がある.

[図:重心移動と内部振動から再衝突へ]

解答図.初期状態は第1衝突直後です.再生はγ=5の最初の再衝突直前で停止します.台車の幅は見やすさのための表示です.

総合演習 12

オリジナル ★★★★★

多数の小さな衝突で進路を反転させる

無摩擦水平面で,質量 m の円盤を初速 v0 で入射させます.静止した同じ質量 qm(0<q<1) の的を N 個置き,弾性衝突を1個につき1回ずつ行わせます.各回に同じ角 δ=Θ/N<π/2 だけ同じ側へ偏向させます.各的の位置は実際の出射方向に合わせて設計し,的同士の衝突や再接触はないものとします.円盤と的の自転はなく,接触法線方向だけに力積が働きます.

  1. 1回の衝突の速度円から,指定角へ曲げられる最小の q と,そのときの速さの倍率を求めてください.

  2. この最小質量を各回に採用したとき,的の総質量と最後の速さを求め,N→∞ の極限を計算してください.

  3. Θ=π で N=6,12 と極限を比較してください.的の総質量を固定したまま N を増やすことと,今回の最小質量列は同じですか.また入射円盤のエネルギー減少は散逸ですか.

問題図.1回に指定する偏向角を示します.的の質量と出射速度は未知です. 問題図.1回に指定する偏向角を示します.的の質量と出射速度は未知です.
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考え方 原点から速度円へ引いた接線が最大偏向を与える.その境界を各衝突で使えば,速度の倍率を掛け合わせる問題になる.

  1. 入射速度を v とすると,速度円の中心は入射方向へ c=v/(1+q),半径は b=qv/(1+q).原点から引く接線は sin⁡δmax=b/c=q を満たす.従って最小は q=sin⁡δ.接線の長さが出射速度なので

v′v=1−q21+q=1−q1+q.

この条件は衝突法線を適切に選べば実現できる.

  1. q=sin⁡(Θ/N) を各回に使うから

Mtargets=Nmsin⁡ΘN,vNv0=[1−sin⁡(Θ/N)1+sin⁡(Θ/N)]N/2.

sin⁡z=z+⋯,ln⁡[(1−z)/(1+z)]=−2z+⋯ を用いると Mtargets→mΘ,ln⁡(vN/v0)→−Θ.従って vN→v0e−Θ,入射円盤に残るエネルギーの割合は e−2Θ である.角度はラジアンで無次元である.

  1. N=6 では q=1/2,総質量は 3m,vN/v0=(1/3)3=0.03704.N=12 では総質量 3.1058m,速さの割合 0.04166.極限では πm,e−π=0.04321 となる.この列では総質量が一定なのではなく,下から πm へ増加する.総質量を Qm に固定するなら q=Q/N で,実現条件は Narcsin⁡(Q/N)≥Θ.多数回極限では Q≥Θ が必要になる.また全衝突は弾性なので,全系の運動エネルギーは保存する.円盤から失われたエネルギーは動き出した的に移るのであって,摩擦の散逸ではない.「細かく曲げれば円盤の速さはほとんど減らない」という予想は,有限の総質量という条件のもとでは成立しない.

[図:最大偏向を決める速度円の接線]

解答図.初期状態は入射速度とコース入口です.前半は速度円の接線を作図し,後半は6回偏向する経路を順に再生します.衝突位置を点で示し,各区間の再生時間はそろえています.

ポイント この節のふり返り

法線力積と滑り停止の条件を合わせると,衝突中の摩擦の切替えを追えます.
衝突後は重心運動と内部振動に分け,再接触を位置差の零点として調べました.
速度円の接線条件を繰り返すと,多数回の散乱の有限な効果が現れます.
部分系のエネルギー減少と,全系での散逸を区別してください.

05回転・摩擦・振動をつなぐ

摩擦があるから必ず減衰するとは限らず,駆動装置からエネルギーを受け取る場合もあります.第4章の力と摩擦,第6章の仕事,第7章の振動,第8章の剛体,第9章の内部運動,第11章の回転する座標系を使い,接点の速度と仕事の供給源を確かめます.

総合演習 13

オリジナル ★★★★★

二つの回転ローラーと梁の滑り・固着

水平な一様の梁を,中心の水平座標が −d,+d の2個の駆動ローラーで支えます.両ローラーの半径は等しく,上面の速度は左が右向き U1,右が左向き U2 です.梁の重心座標を x,質量を m とし,梁は水平を保ちます.梁の半長は 1.0m,d=0.50m,U1=0.20ms−1,U2=0.80ms−1,動摩擦係数 μ′=0.20,静止摩擦係数 μ=0.40 です.x(0)=−0.30m,x˙(0)=0,g=9.8ms−2 とします.ローラーの回転速度は駆動装置が一定に保ちます.

  1. 両抗力と,−U2<x˙<U1 の運動を求め,最初にどちらの接点で相対速度が0になるかを計算してください.

  2. そこで固着が可能か判定し,可能なら固着の終了位置と継続時間を求めてください.その直後の運動と,右接点でも固着するかを調べてください.

  3. 両側が滑る間と左側が固着する間について,駆動装置の仕事率,散逸率,梁の運動エネルギー変化率を照合してください.

問題図.接触面の速度を示します.梁は水平を保ち,重心は支持点の間にあります. 問題図.接触面の速度を示します.梁は水平を保ち,重心は支持点の間にあります.
解答を見る

考え方 まず鉛直力とモーメントのつり合いから抗力を出す.摩擦方向は梁の速度そのものではなく,ローラーに対する相対速度で決まる.

  1. N1+N2=mg,N1(d+x)=N2(d−x) より N1=mg(d−x)/(2d),N2=mg(d+x)/(2d).両側が指定方向に滑る間は mx¨=μ′(N1−N2)=−μ′mgx/d.ω=μ′g/d=1.980s−1,A=0.30m として x=−Acos⁡ωt,x˙=Aωsin⁡ωt.最大速度の候補 Aω=0.594ms−1 が U1 より大きいので,先に左で相対速度が0になる.その位置と時刻は

xs=−A2−(U1/ω)2=−0.2825m,ts=1ωarcsin⁡U1Aω=0.173s.
  1. 左で固着すれば x˙=U1 一定だから,右の滑り摩擦 −μ′N2 を打ち消す f1=μ′N2 が必要である.f1≤μN1 は

x≤xr=dμ−μ′μ+μ′=0.1667m

となり,xs では満たされる.固着時間は (xr−xs)/U1=2.246s.それより右では必要な静止摩擦が上限を超え,梁は U1 より遅くなって両側滑りに戻る.新しい単振動は x=xrcos⁡ωτ+(U1/ω)sin⁡ωτ で,振幅 Ar=xr2+(U1/ω)2=0.1949m,最大速さ ωAr=0.386ms−1<U2.右には固着しない.次に右向き速度が U1 になるのは x=−xr で,左固着へ戻る.全区間で |x|<d かつ d+|x|<1.0m なので抗力は正で,梁は両支持点に載っている.

  1. 両側滑りでは駆動から接触を通じて供給される仕事率と散逸率は

Pdrive=μ′N1U1+μ′N2U2,Ploss=μ′N1(U1−x˙)+μ′N2(U2+x˙).

差は μ′(N1−N2)x˙=mx¨x˙=K˙ である.左固着では Pdrive=μ′N2(U1+U2).左での散逸は0,右での散逸は同じ μ′N2(U1+U2) なので K˙=0.固着中も静止摩擦は地上系で仕事をしている.μ′→0 で振動角振動数も駆動からの仕事率も0となることが検算になる.

[図:梁の滑りと固着の切替え]

解答図.左へずれた静止状態から始めます.再生で左接点の滑りが止まり,再び滑り始める過程を確認できます.

総合演習 14

オリジナル ★★★★★

回る台の上を転がる球の軌道

水平な円板が鉛直単位ベクトル ez の向きに一定角速度 Ω>0 で回っています.半径 r,質量 m,慣性モーメント I=βmr2 の球を載せ,点接触で滑らず転がらせます.地上の慣性系で球中心の水平位置を R,速度を v,角速度を ω とします.初期値 R0,v0 は任意で,水平軸まわりの初回転は滑りなし条件を満たすよう準備します.鉛直軸まわりの初回転は任意です.

  1. 接点の速度条件と並進・自転の式から,v の運動方程式を導いてください.

  2. 慣性系での軌道を求め,円板と同心の円になる初速度を示してください.その初速度を逆向きにすると円の中心と最大距離はどう変わりますか.

  3. 滑らないための摩擦条件と,球の全運動エネルギーの変化を求めてください.β=2/3,Ω=2.0s−1,|R0|=0.25m の同心円運動で必要な摩擦係数を計算してください.

問題図.任意の水平初速度を与えます.初回転は滑りなし条件を満たすよう準備します. 問題図.任意の水平初速度を与えます.初回転は滑りなし条件を満たすよう準備します.
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考え方 接点の速度は0ではなく,その位置の円板の速度に等しい.慣性系で拘束を微分すれば,回転系の見かけの力を個別に計算せず軌道を求められる.

  1. 接点の速度条件は v+rez×ω=Ωez×R.水平摩擦力を f とすると mv˙=f,Iω˙=−rez×f.拘束を微分し,ez×(ez×f)=−f を使うと

(1+1β)v˙=Ωez×v,v˙=νez×v,ν=β1+βΩ.

鉛直トルクはないので ωz は初期値を保つ.

  1. 速度は大きさ一定で角速度 ν で回る.積分すると

R=R0+sin⁡νtνv0+1−cos⁡νtνez×v0.

中心は C=R0+ez×v0/ν,半径は |v0|/ν.v0=0 の場合だけは地上で静止する点軌道となる.同心円の条件は v0=νez×R0.これを逆向きにすると C=2R0,半径 R0,原点から最大 3R0 まで達する.円板がそれ以上に広いことも必要である.円板系で見る軌道は地上の軌道を角 −Ωt 回したものなので,一般に同じ円ではない.

  1. |f|=mνv0,N=mg より μ≥νv0/g.球の全運動エネルギーに対する接触力の仕事率は,接点速度を用いて

K˙=f⋅(Ωez×R)=mνΩv⋅R=mνΩ2ddtR2.

よって K−mνΩR2/2 が一定である.並進の速さは一定でも,自転エネルギーは変わりうる.エネルギーの供給源は円板の駆動装置である.数値では ν=0.80s−1,v0=0.20ms−1,μ≥0.0163.同心円なら R も一定で,全運動エネルギーは変わらない.Ω→0 の極限で sin⁡νt/ν→t となり,静止面上の直線等速転がりに戻る.

[図:転がる球を二つの座標系で見る]

解答図.初期位置は台中心の右側です.逆向きの初速度を与えた球の軌道を,地上系と円板系で同期再生します.

総合演習 15

APhO 2007 第1問(改題) ★★★★★

内部ローターを連結すると転がり振動はどう変わるか

鉛直断面が半径 R の円弧の固定した溝を,半径 r の円形の殻が滑らず転がります.中心の軌道半径は d=R−r です.殻の中心に,同軸の自由ローターを組み込みます.全並進質量は M,殻だけの中心まわりの慣性モーメントは Is,ローターの慣性モーメントは J です.クラッチ開放時にローターは慣性系で回転せず,連結すると殻と一体になります.ローターの質量は M に含まれています.連結は振動周期より十分短いが有限の時間で行い,その間の姿勢変化と重力の接線力積を無視します.摩擦はこの連結中も転がりを保つのに十分とし,クラッチ以外の損失は無視します.微小振幅のみ扱います.

  1. 開放時と連結時の周期を,力とトルクから求めてください.

  2. 開放状態で振幅 α の転回点から放し,最下点で短時間に連結します.直後の速度,次の転回点の振幅,失われたエネルギーを求めてください.床からの力積を無視してよいでしょうか.

  3. 次の転回点で開放し,同じ操作を繰り返します.半往復を1操作として振幅と所要時間を求めてください.Is=0.20Mr2,J=0.60Mr2,d=0.40m で,振幅が初めの半分以下になる最小操作回数を求めてください.

問題図.固定した溝の内側を転がる殻と,同軸の内部ローターを示します. 問題図.固定した溝の内側を転がる殻と,同軸の内部ローターを示します.
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考え方 連続運動では転がりによる有効な慣性を使う.短時間の連結では接点まわりの角運動量を使い,その後にエネルギーの差を計算する.

  1. 中心の接線加速度を a,上り方向の角を θ とし,接線摩擦を f とする.Ma=−Mgsin⁡θ+f,転がりと殻の回転の式から Isa/r=−rf.従って (M+Is/r2)dθ¨=−Mgsin⁡θ.連結時は Is を Is+J に置き換える.

A=M+Isr2,B=M+Is+Jr2,To=2πdAMg,Tc=2πdBMg.

開放したローターは並進するので,その質量を M から取り除いてはいけない.

  1. 最下点直前の中心速度を v とすると Av2/2=Mgdα2/2.瞬間の接点まわりの角運動量は,殻の回転方向を正に取れば直前 (Mr+Is/r)v=Arv,直後 Brv′.床の力積はこの点まわりにモーメントを持たないので

v′=qv,q=AB,K′=qK,α′=qα,Q=(1−q)Mgdα22.

中心の運動量変化は M(v′−v) であり,これが床の接線力積である.床からの力積を0とすると v′=v になってしまうため,無視できない.外部からエネルギーを加えるクラッチではなく,内部の相対回転を非弾性的に止めるクラッチを仮定した結果である.なお有限の摩擦係数で連結時間を厳密に0にすることはできない.連結時間を δt,静止摩擦係数を μ とすると,微小振幅で N≃Mg を用いた力積の上限から δt≥(1−q)v/(μg) が必要となる.この下限を守りながら δt を周期に比べ十分短くできる範囲の近似である.

  1. 転回点では殻もローターも静止しているので,開放しても力積とエネルギー変化はない.従って n 操作後の振幅は αn=qn/2α0,エネルギーは qn 倍.各操作は開放の4分の1周期と連結の4分の1周期で,tn=n(To+Tc)/4.数値では q=2/3,To=1.391s,Tc=1.703s.(2/3)n/2≤1/2 から n≥3.419,最小4操作,時間約 3.09s となる.J→0 なら q→1,周期差も損失も消える.

[図:クラッチ連結による振幅の変化]

解答図.開放状態の転回点から始めます.下降と上昇を別々の位相で再生し,連結後に小さい振幅へ到達します.

ポイント この節のふり返り

摩擦方向と固着の可否は,各接点の相対速度と静止摩擦の上限で決まります.
駆動面との接触では,滑りがなくても物体へ仕事が供給されます.
並進の速さが一定でも,自転エネルギーまで一定とは限りません.
内部状態を瞬時に変えるときには,床の力積を含めた角運動量と損失を別々に調べます.

06軌道と潮汐の総合問題

重力のわずかな場所の違いは,長時間の軌道のずれや内部運動との交換を生みます.第6章のエネルギー,第7章の振動,第8章の角運動量,第9章の外部運動と内部運動,第10章の万有引力,第11章の非慣性系を組み合わせます.小さい量の一次近似と,それを長時間へ延長できる範囲を区別してください.

総合演習 16

オリジナル ★★★★★

軌道上で離した荷物は戻ってくるか

重力定数と天体質量の積が GM=3.60×1014m3s−2 の球対称天体のまわりを,無人ステーションが半径 a=7.20×106m の円軌道で進みます.ステーションとともに回る座標系を取り,外向き動径方向を x,進行方向を y とします.原点から小さなカプセルを相対速度 (u,v) で放します.軌道面外の運動,ステーションの反動と引力は無視します.n=GM/a3,|x|,|y| は a より十分小さいとします.

  1. 重力差,遠心加速度,コリオリ加速度を一次まで取り,相対運動方程式を導いてください.

  2. 初期位置0に対する x(t),y(t) を求め,v=0 の帰還と,v≠0 の1公転後のずれを比較してください.u=0.20ms−1,v=0.0050ms−1 で数値を示してください.

  3. v=0 でも,厳密な二体軌道で1公転後に完全帰還するとは限りません.カプセルの長半径と周期を u/(na) の2次まで求め,線形模型で消えた効果を説明してください.

問題図.共回転する動径方向と進行方向を示します.放出後の軌道は未知です. 問題図.共回転する動径方向と進行方向を示します.放出後の軌道は未知です.
解答を見る

考え方 ステーション自体の自由落下を差し引いてから回転座標へ移る.接線方向の式を一度積分すると,残りは定数項のある単振動になる.

  1. 重力加速度の差は (2n2x,−n2y).相対座標にかかる遠心加速度は (n2x,n2y),コリオリ加速度は (2ny˙,−2nx˙) なので

x¨−2ny˙−3n2x=0,y¨+2nx˙=0.

接線方向の重力差と遠心項が消え,動径方向には 3n2x が残る.

  1. 第2式から y˙+2nx=v.第1式へ代入して x¨+n2x=2nv.初期条件を使い,さらに y を積分すると

x=unsin⁡nt+2vn(1−cos⁡nt),y=2un(cos⁡nt−1)+4vnsin⁡nt−3vt.

v=0 では T=2π/n ごとに位置も相対速度も初期値へ戻り,相対軌道は中心 (0,−2u/n) の楕円となる.v≠0 では x(T)=0,y(T)=−3vT.数値は n=9.821×10−4s−1,T=6.398×103s.u/n≃204m,動径放出だけの場合の最大後方距離 4u/n≃815m,今回の接線誤差によるずれは −96.0m である.いずれも1周期では a に比べ小さい.

  1. v=0 の地上系初速度は接線成分 na と動径成分 u.単位質量当たりエネルギーは −GM/(2a)+u2/2 だから,新しい長半径 ac は

1ac=1a−u2GM,ac≃a[1+(una)2],TcT≃1+32(una)2.

線形近似で捨てた2次の周期差があり,多数周期後には位相差が蓄積する.今回の u では Tc−T≃7.68×10−6s と極小だが,正確に0ではない.また v≠0 の一次のずれ自体も 3|v|t が a に近づけば近似範囲を外れる.線形模型の周期的帰還を永久に正確な会合と解釈してはいけない.

[図:放出後の近傍相対軌道]

解答図.初期状態は放出点です.再生すると動径放出だけの帰還と,接線誤差を含む場合のずれを比較できます.

総合演習 17

APhO 2001 第1問(改題) ★★★★★

潮汐による同期までの道のりを見積もる

架空の惑星の GM=4.0×1014m3s−2,慣性モーメントは I=2.0×1037kgm2 です.質量 m=1.0×1022kg の衛星が半径 r0=1.0×108m の円軌道を進みます.惑星質量は衛星より十分大きく,衛星の自転角運動量は無視します.初期自転角速度は Ω0=2n0,n0=GM/r03 です.外部トルクはなく,潮汐でゆっくり半径が増えても軌道は円のままと近似します.現在の増加率は a0=1.0m年−1 です.

  1. 保存する全角運動量を使い,z=r/r0 に対する自転角速度と,同期 Ω=n の半径を求めてください.内側にも同期解があれば,今回の進化がどちらへ向かうかを説明してください.

  2. 惑星の自転と衛星の公転のエネルギーの和が,現在から同期までどれだけ変わるかを求めてください.

  3. 衛星へ与えるトルクを τ=τ0z−6 と外挿する模型で,同期半径までの時間を見積もり,増加率一定の推定と比べてください.さらに τ=τ0z−6(Ω−n)/(Ω0−n0) に変更すると,正確な同期に達する時間はどう変わりますか.

問題図.速く自転する惑星と円軌道の衛星を示します.同期距離は示しません. 問題図.速く自転する惑星と円軌道の衛星を示します.同期距離は示しません.
解答を見る

考え方 角運動量の交換先は自転と公転である.角運動量保存で同期位置を先に決め,その後にエネルギー差とトルク則に依存する時間を計算する.

  1. 全角運動量は L=IΩ+mGMr.I/(mr02)=0.20,Ω0/n0=2 なので,mr02n0 を単位にすると L=1.40.従って

w(z)=Ωn0=7−5z,n/n0=z−3/2,0.20z−3/2+z=1.40.

左辺の微分は (z2−0.60)/(2z5/2) で,z=0.60 に最小値がある.数値解は内側 z≃0.411,外側 zs=1.71951 の2個.現在の z=1 は両者の間にあり Ω>n なので,自転から公転へ角運動量を渡し,外側の rs=1.72×108m に向かう.n0=2.0×10−5s−1 である.

  1. エネルギーは E=IΩ2/2−GMm/(2r).E0∗=GMm/r0=4.0×1028J を単位にすれば E/E0∗=0.10w2−1/(2z).現在は −0.100,同期時は 0.10zs−3−1/(2zs)=−0.271112.従って減少量は 6.84×1027J.公転エネルギーは増すが,自転エネルギーがそれ以上に減る.直接にも E˙=−Ωτ+nτ=−(Ω−n)τ≤0 と確かめられる.

  2. Lorb=mGMr を微分すると τ=mGMr˙/(2r).現在の値で規格化すれば r˙=a0z−11/2.従って

t=r0a0∫1zsz11/2dz=r0a0zs13/2−113/2=5.06×108年.

一定増加率なら (rs−r0)/a0=7.20×107年 なので約7.03倍の違いである.ただし最初のトルク則は同期時にも正のトルクを残すため,その先へ外挿できない.変更後は r˙=a0z−11/2[w(z)−z−3/2].外側の根では括弧の導関数が負で,括弧は zs−z に比例して0へ向かう.時間積分は ∫dz/(zs−z) の形で対数発散し,正確な同期には無限時間を要する.有限の許容差まで近づく時間なら有限である.同期半径は保存則の結果だが,時間の値は採用した経験則に依存する.

[図:保存則が決める同期位置]

解答図.現在の距離から開始します.再生では半径を走査し,自転と公転の角速度が等しくなる交点へ進みます.潮汐進化の実時間表示ではありません.

総合演習 18

IPhO 1992 第1問(改題) ★★★★★

伸縮する衛星は自転と公転を交換できるか

円軌道を進む小さな衛星を,直交する2組の質量のない伸縮アームと,各先端の質量 m の4個のおもりで模型化します.中心は半径 r0,角速度 n=GM/r03 で自由落下します.一組の半長を a,他方を b(a>b) とし,a,b は r0 より十分小さいとします.第1組が動径方向となす角を θ,慣性系での自転角速度を ω とします.アームは張力だけでなく圧縮も支えられます.

  1. 伸縮しない瞬間の各おもりに必要な内向き軸力と,中心まわりの重力トルクを,潮汐の一次近似で求めてください.特に ω=n,θ=0 ではどうなりますか.

  2. ω>n とし,σ=ω−n の変化を1操作中の主要項では無視できる場合を考えます.θ=0 で第1組が長い状態から始め,θ=π/2 で2組の長さを交換し,θ=π で再び交換して初めの配置へ戻します.交換は姿勢がほとんど変わらない短時間に行い,常に2組の半長の2乗和を一定に保ちます.径方向の運動エネルギーは装置が回収し,操作前後には残しません.装置がおもりにする正味の仕事と,自転角運動量の変化を求めてください.

  3. 全角運動量と全エネルギーの収支を照合してください.m=5.0kg,a=21m,b=20m,r0=7.0×106m,n=1.0×10−3s−1,ω=4n で,回収できる仕事と近似の精度の目安を計算してください.

問題図.中心の円軌道と衛星の内部構造を別縮尺で示します.動径に対する姿勢角を使います. 問題図.中心の円軌道と衛星の内部構造を別縮尺で示します.動径に対する姿勢角を使います.
解答を見る

考え方 中心の自由落下を引いた重力差は方向によって異なる.伸縮の仕事と重力トルクを別々に積分し,公転への反作用まで含めると両者の収支が一致する.

  1. 中心とともに並進する慣性方向の軸で,動径・接線方向の重力差は n2(2x,−y).動径となす角 ϕ,中心からの距離 l のおもりへの軸方向重力差は mn2l(3cos2⁡ϕ−1).必要な向心加速度は −ω2l だから内向き軸力は

T(l,ϕ)=ml[ω2+n2(3cos2⁡ϕ−1)].

第1組は (l,ϕ)=(a,θ),第2組は (b,θ+π/2) を使う.ω=n,θ=0 では動径の各腕で T=3mn2a,接線の各腕で T=0.一般には負の値なら圧縮を要する.1個への重力トルクは −3mn2l2sin⁡ϕcos⁡ϕ.対向する2個ずつを足すと

τ=−3mn2(a2−b2)sin⁡2θ,I=2m(a2+b2),ddt(Iω)=τ.
  1. D=a2−b2>0 と置く.1回目の交換では動径を向く第2組が b→a,接線を向く第1組が a→b と変わる.装置の仕事は各おもりについて −∫Tdl.2個ずつを数え,a2+b2 一定によって ω2 の項が打ち消されることを使えば

W1=−mn2[2(a2−b2)−(b2−a2)]=−3mn2D.

径方向の加速・減速に関する項は,始めと終わりの径方向運動エネルギーがともに0なので正味で消える.2回目も同じで Wact=−6mn2D.装置は正の 6mn2D を回収する.一方,最初の四分回転では dt=dθ/σ より ΔL1=−3mn2D/σ.次の四分回転では長さの差と sin⁡2θ がともに反転するので,同じ負の変化となり,

ΔLspin=−6mn2Dσ.

長さ交換の間は I が一定で,内部操作は角運動量を直接増やさない.

  1. 外部の中心力は天体中心まわりの全角運動量を変えないので ΔLorb=−ΔLspin.円軌道の E=−GM(4m)/(2r),L=4mGMr を微分すると dE/dL=n.自転側では ΔEspin≃ωΔLspin なので,元の姿勢・長さに戻った1操作では

ΔEspin+ΔEorb=(ω−n)ΔLspin=−6mn2D=Wact.

公転の変化を無視して自転だけから仕事を数えると,係数 ω/σ だけ誤る.数値では回収仕事 1.23×10−3J,ΔLspin=−0.410kgm2s−1.I=8410kgm2,初めの Iω=33.64kgm2s−1 なので,自転角運動量の相対変化は約1.2 %で,σ の相対変化は約1.6 %.一定 σ の計算はこの程度の補正を捨てた主要項である.潮汐展開の長さ比は a/r0=3.0×10−6 とさらに小さい.相対姿勢の1回転周期は 2π/σ,慣性系の自転周期は 2π/ω,今回の操作時間は π/σ≃1.05×103s で,三者を区別する必要がある.a=b ならトルクも回収仕事も0となる.

[図:潮汐を利用する長さ交換の1操作]

解答図.初期状態は長い組が動径方向です.再生で半回転と2回の長さ交換を示し,2乗和一定の条件を保ちます.

ポイント この節のふり返り

共回転系では,重力差と遠心項とコリオリ項を同じ次数で数えます.
一次近似で消えた周期差も,長時間では会合のずれを生みます.
潮汐進化の到達位置は保存則で,所要時間はトルクの模型で決まります.
伸縮装置の仕事は,自転と公転の角運動量・エネルギーの両方を数えると整合します.

07東大の過去問を発展させる(1)

力学の全章を終えた皆さんに向けて,東大前期の問題の設定と問いを組み直しました.重心と内部運動の分解,エネルギー図,単振動を,同じ現象の別々の見方として使います.各題の後半では,原題の計算を越えて,最適条件や繰り返しの極限まで調べてください.

総合演習 19

東京大 2015 前期 第1問(改題) ★★★★☆

質量 m の小球 A と質量 M の小球 B を,長さ ℓ の軽い糸で結びます.B を原点に固定し,A を B と同じ高さの左側から静かに放します.A が最下点を右向きに通る瞬間,B の固定を衝撃なしに外します.この瞬間を t=0 とし,右向きを x,上向きを y とします.重力加速度は g,空気抵抗と球の大きさは無視します.その後は床や天井に衝突しないものとします.

B の固定を外す瞬間.A は糸の真下から右へ動きます.点線は解放前の支点の高さです. B の固定を外す瞬間.A は糸の真下から右へ動きます.点線は解放前の支点の高さです.
  1. 解放直前の A の速さ u と糸の張力を求めてください.

  2. 解放後の重心の軌跡,二球の相対位置,各球の軌跡を求めてください.

  3. 解放直後に張力が変わる理由と,その後の張力の時間変化を説明してください.二球が最初に同じ高さになる時刻も求めてください.

  4. 解放直後の運動エネルギーを外部運動と内部運動に分けてください.速度空間では,各球の速度の端点は重心速度の端点を中心にどんな円を描きますか.M=2m,ℓ=0.80m,g=9.8ms−2 のとき,同じ高さになる時刻を計算してください.

解答を見る

考え方 一様な重力は重心を加速するが,相対加速度には現れない.自由落下する重心から見ると,糸の張力だけが働く二体の回転になる.

  1. 高さ ℓ の下降から u=2gℓ.最下点の半径方向の式 T−mg=mu2/ℓ より,解放直前は T=3mg である.

  2. S=m+M,ω=u/ℓ とおく.初期の重心位置と速度から

R(t)=(muSt,−mℓS−12gt2).

相対位置を r=rA−rB とすると,初期値は (0,−ℓ),相対速度は (u,0).相対角運動量が保存し,距離は一定なので

r=ℓ(sin⁡ωt,−cos⁡ωt),rA=R+MSr,rB=R−mSr.

これが地上での両軌跡であり,円そのものではない.

  1. 換算質量 mr=mM/S の運動方程式より,解放後は T=mru2/ℓ=2mMg/S で一定.固定中には支点の反力があったが,解放後は B も加速する.力は不連続に変わってよく,有限の力の跳びで速度は跳ばない.高さが等しい最初の時刻は t∗=π/(2ω).

  2. 初期のエネルギーは

Kext=m2u22S,Kint=mMu22S,Kext+Kint=12mu2.

ニュートンダイアグラムで,A と B の相対速度の半径はそれぞれ Mu/S,mu/S.端点は反対方向にあり,円の中心 R˙=(mu/S,−gt) 自体が下へ動く.数値は u=3.96ms−1,t∗=0.317s.周期は質量比によらないが,軌跡と張力は質量比による.M→∞ でも解放後の B は落下するため,固定支点の 3mg に戻るとは限らず,張力は 2mg に近づく.

総合演習 20

東京大 2014 前期 第1問(改題) ★★★★☆

角度 θ を調整できる滑らかな直線レールで,質量 m の粒子をばね定数 k のばねに押し付けます.ばねは粒子に接着せず,自然長の端がレール出口 A です.圧縮量 a から静かに放し,A から射出します.着地面は A と同じ高さにあり,飛行を妨げる物体はありません.0<θ<π/2,重力加速度は g とします.

圧縮されたばねで粒子を出口 A へ押し出します.着地面は出口と同じ高さです. 圧縮されたばねで粒子を出口 A へ押し出します.着地面は出口と同じ高さです.
  1. A での速さと,そこに正の速さで到達する条件を求めてください.圧縮量を座標とする有効な位置エネルギーの最小点も示してください.

  2. 飛距離 D を求め,λ=ka/(2mg),s=sin⁡θ により,飛距離を最大にする条件を三次方程式で表してください.最大点がただ一つであることも説明してください.

  3. λ→0 と λ→∞ のそれぞれで,最適角の主要な近似を求めてください.小さい λ でも射出できるのはなぜですか.

  4. λ=3/2,a=0.15m,g=9.8ms−2 の最適角と最大飛距離を数値で求めてください.

解答を見る

考え方 蓄えたばねのエネルギーの一部は,出口までの上昇に使われる.射出速度を一定として角度だけ最適化してはいけない.

  1. 圧縮量 q の位置エネルギーを A 基準で U(q)=kq2/2−mgqsin⁡θ とおくと,最小点は q0=mgsin⁡θ/k.保存則から

v2=ka2m−2gasin⁡θ=2ga(λ−s).

条件は a>2q0,すなわち s<λ である.等号では出口で速さがゼロになり,射出にはならない.

  1. 飛行時間 2vsin⁡θ/g より

D=v2gsin⁡2θ=4a(λ−s)s1−s2.

微分すると停留条件は

3s3−2λs2−2s+λ=0.

正の距離を与える区間 0<s<min(1,λ) で,log⁡D の微分は 1/s−1/(λ−s)−s/(1−s2).その微分は −1/s2−1/(λ−s)2−(1+s2)/(1−s2)2<0 であり,両端で正から負へ変わる.したがって最大点は一つ.また λ=s(2−3s2)/(1−2s2) で,最大点は s<1/2,つまり 45∘ 未満である.

  1. 小さい λ では s≃λ/2,したがって θ∗≃λ/2(ラジアン),Dmax≃aλ2.レールを十分寝かせれば上昇に要するエネルギーを小さくできる.大きい λ では s=1/2−1/(8λ)+⋯ なので

θ∗≃π4−142λ.

圧縮量を増すほど,射出速度の角度依存が相対的に小さくなる.

  1. 三次方程式の該当する根は s≃0.54676.したがって θ∗≃33.1∘,Dmax≃0.262m.距離の式の次元は長さで,端の s=0 や s=λ<1 では距離がゼロになる.

総合演習 21

東京大 2017 前期 第1問(改題) ★★★★☆

底面の進行方向の長さが b,高さが h,質量が m の同じ積木を n 個重ねます.底の積木を水平な糸で引き,軽い固定滑車を経て質量 Q のおもりにつなぎます.糸は伸びず,おもりは床に着かないものとします.積木の前端の位置を x とし,床は x<0 で滑らか,x≥0 で粗くなっています.積木が一体で動く間,床からの動摩擦力を f=μ′nmgmin(x/b,1) とモデル化します.x=0 で右向きの速さ v0≥0 を与えます.転倒は側方ガイドで防ぎ,ガイドは進行方向の力を及ぼしません.

前端が粗面に x だけ入り,右の滑車を介しておもり Q が引きます.図は四段の例で,転倒防止ガイドは省略しています. 前端が粗面に x だけ入り,右の滑車を介しておもり Q が引きます.図は四段の例で,転倒防止ガイドは省略しています.
  1. 0≤x≤b での運動方程式を求め,単振動型の式にしてください.この式が単振動に似ていても,機械的エネルギー保存を意味しない理由を述べてください.

  2. A=μ′nmg,B=Qg,S=nm+Q とおきます.最初に速さがゼロになる位置を求め,部分進入で止まる場合,全体が粗面に入った後に止まる場合,止まらない場合を分類してください.

  3. 積木間の静止摩擦係数を μi,粗面と底の積木の静止摩擦係数を μ≥μ′ とします.得られた停止位置まで積木間が滑らず,停止後も動き出さない条件を求めてください.

  4. n=4,Q=m,b=0.40m,h=0.10m,μ′=0.60,v0=0,g=9.8ms−2 で,停止位置,そこまでの時間,必要な μi の下限を計算してください.

解答を見る

考え方 糸でつながった系全体の加速にはおもりの慣性も含める.摩擦の仕事を位置で積分すれば,途中で摩擦の式が切り替わっても停止条件をつなげられる.

  1. Sx¨=B−Ax/b=−SΩ2(x−c),ただし Ω2=A/(Sb),c=Bb/A.右へ滑る区間では x=c(1−cos⁡Ωt)+(v0/Ω)sin⁡Ωt.熱に変わるエネルギーは Ax2/(2b) で正である.左へ動けば摩擦の向きが変わるため,この式をそのまま一周期に延長できない.

  2. K(x)=Sv02/2+Bx−Ax2/(2b) より,部分進入の候補は

xs=c+c2+SbAv02.

xs≤b ならここで停止.同値な条件は Sv02≤b(A−2B).これを満たさず A>B なら,Kb=Sv02/2+Bb−Ab/2>0 を使って xs=b+Kb/(A−B).A≤B なら全進入後も減速せず,有限の停止位置はない.v0=0 の出発点そのものは停止位置に数えない.

  1. どの接触面でも,上側の積木全体の加速に必要な摩擦力をその重さで割ると |x¨|/g となる.したがって

μi≥max{B,|B−Amin(xs/b,1)|}Sg.

加速度が進入中は単調に減るので,始点と終点を調べればよい.停止を保持する条件は B≤μnmgmin(xs/b,1).有限の停止点では動摩擦の値が既に駆動力以上なので,μ≥μ′ なら保持できる.

  1. c=b/2.4,xs=2c=0.333m.v0=0 なので初めて止まるまで ts=π/Ω=0.916s.加速度の絶対値の最大は g/5 で,μi≥0.20.停止保持には μ≥0.30 で足りるので,仮定を満たす粗面なら静止する.h が結果に入らないのは,転倒をガイドで除いた模型だからである.A→B+0 では全進入後の停止距離が発散する.

総合演習 22

東京大 2013 前期 第1問(改題) ★★★★☆

一直線上で動く等質量 m の二つの小球を,左壁と右壁にそれぞればねでつなぎます.自然長での位置は左球が x=0,右球が x=d>0.ばね定数は左が k,右が 4k です.壁は十分遠く,球の大きさとばねの質量は無視します.左球を x=−s から放し,右球は自然長で静止させます.球同士の衝突は瞬間的で完全弾性とします.

左のばね定数は k,右は 4k.自然長の位置の間隔は d で,左球だけを s だけ引いて放します. 左のばね定数は k,右は 4k.自然長の位置の間隔は d で,左球だけを s だけ引いて放します.
  1. 滑らかな床で s=2d とします.最初の衝突の直前・直後の速度を求めてください.

  2. 最初の衝突を t=0,ω=k/m として,再衝突前の両球の位置を求めてください.再衝突時刻を決める方程式を書き,最初の正の根を数値で求めてください.それ以前に別の衝突がないことも確かめてください.

  3. 再衝突までの各ばねの最大圧縮量と,再衝突直前・直後の速度を dω 単位で求めてください.速度交換をニュートンダイアグラムで説明してください.

  4. 今度は床を粗くし,両球に静止摩擦係数 μ,動摩擦係数 μ′ を与えます.初期変位 s を変え,左球が動き出して正の速さで右球に衝突するための条件を求めてください.衝突後の運動は問わず,μ≥μ′ とします.

解答を見る

考え方 衝突中は外力の力積を無視できるが,衝突と衝突の間には壁につながるばねが系の運動量を変える.二つの異なる周期を,球間距離のゼロという条件で結びつける.

  1. 保存則より左球の入射速度は ωs2−d2=dω.等質量の一次元弾性衝突では速度を交換し,直後は左球が 0,右球が dω となる.

  2. z=ωt とすると

x1=dcos⁡z,x2=d+d2sin⁡2z,x2−x1d=F(z)=1−cos⁡z+sin⁡zcos⁡z.

求める根は z∗=5.28722,したがって t∗=5.28722/ω.最初の半周期 0<z<π では,cos⁡z≥0 なら各項が非負,cos⁡z<0 なら F=1+cos⁡z(sin⁡z−1)≥1.π≤z≤3π/2 でも F≥1.最後の四分周期で z=2π−2arctan⁡q,0<q<1 とおくと,ゼロ条件は q3+q2+q−1=0.左辺が単調増加なので根は一つであり,これが最初の再衝突である.

  1. 左ばねの最大圧縮は z=π で d,右ばねの最大圧縮は z=π/4 で d/2.速度は v1=−dωsin⁡z,v2=dωcos⁡2z なので,再衝突直前は約 (0.83929,−0.40880)dω,直後はその逆.速度図の中心は衝突瞬間の (v1+v2)/2 で,相対速度の端点を中心の反対側へ移す操作が速度交換になる.全エネルギーは最初から kd2 で,式を代入しても一定である.

  2. 動き出すには ks>μmg.右へ動く間の仕事から

v2(x)=km(s2−x2)−2μ′g(x+s)=km(s+x)(s−x−2μ′mgk).

−s<x≤d で正を保つには s>d+2μ′mg/k.従って二つの厳密な不等式 s>μmg/k,s>d+2μ′mg/k が必要十分である.等号は動き出しの限界または速度ゼロの接触であり,正の入射速度を保証しない.摩擦ゼロなら s>d に戻り,mg/k は長さの次元を持つ.

総合演習 23

東京大 2005 前期 第1問(改題) ★★★★☆

半径 R,一様な密度 ρ の自転しない球形天体に,直径に沿った細いトンネルを通します.中心を x=0,一方の入口を x=R とします.内部の重力は半径 r 以内の質量が中心に集中したものと等しく,トンネルの質量欠損は無視できます.等質量 m の小球 P を時刻ゼロに入口から静かに放し,Q を Δ=ϕ/ω 後に同じ入口から放します.ただし 0<ϕ<π,ω=4πGρ/3 です.球同士の反発係数は 0<e<1,他の摩擦・抵抗・相互重力は無視します.

中心 O を通るトンネル.右の入口 R から P を先に,Q を時間差で放します.球の位置は放出順を示す模式図です. 中心 O を通るトンネル.右の入口 R から P を先に,Q を時間差で放します.球の位置は放出順を示す模式図です.
  1. 単球の運動方程式と周期を導き,二球の最初の衝突時刻・位置・直前の速度を求めてください.

  2. Q の放出後,重心座標 X と相対座標 r=xP−xQ に運動を分けてください.衝突によるエネルギー損失は,どちらの運動に属しますか.

  3. 衝突はどの間隔で,どこで起こりますか.第 N 回の衝突直後の内部エネルギーと,長時間後の各球の運動を求めてください.有限時間で衝突が無限回起こるかも答えてください.

  4. ϕ=π/2,e=0.60,ρ=4.0×103kgm−3,G=6.67×10−11m3kg−1s−2 とします.周期を分で,第4回衝突後の内部エネルギーを衝突前の内部エネルギーとの比で示してください.

解答を見る

考え方 同じ角振動数の外力は,重心と相対座標を独立な振動に分ける.衝突は重心運動を変えず,相対速度だけを反転・縮小する.

  1. 内部質量 4πρr3/3 より x¨=−ω2x,周期 T=2π/ω=3π/(Gρ).放出後の自由軌跡は xP=Rcos⁡ωt,xQ=Rcos⁡(ωt−ϕ).最初の交点は

tc=π+ϕ/2ω,xc=−Rcos⁡ϕ2,(vP,vQ)=(Rωsin⁡ϕ2,−Rωsin⁡ϕ2).

Q の放出時には P は既に内側にあり,それから tc まで二つの余弦に別の交点はない.

  1. 衝突間は X¨=−ω2X,r¨=−ω2r.重心は衝突を通して滑らかで

X=Rcos⁡ϕ2cos⁡(ωt−ϕ2).

ポテンシャルの定数を除いたエネルギーは

E=m(X˙2+ω2X2)+m4(r˙2+ω2r2).

衝突時は r=0,r˙+=−er˙−.損失 m(1−e2)r˙−2/4 は全て内部運動から出る.

  1. 各衝突直後から相対位置は正弦関数となるので,次のゼロは必ず π/ω=T/2 後.第 N 回は tN=tc+(N−1)T/2,位置は xN=(−1)NRcos⁡(ϕ/2).初回直前の内部エネルギーを E0=mR2ω2sin2⁡(ϕ/2) とすれば,Eint,N=e2NE0.両球の差はゼロへ近づくが,重心は振幅 Rcos⁡(ϕ/2) で振動を続ける.衝突間隔は縮まらないので,有限時間内の無限回衝突はない.e→1 なら内部運動は減衰せず,ϕ→π なら重心振幅がゼロに近づく.

  2. T=5.94×103s=99min,Eint,4/E0=0.608=0.0168(約 1.7 %).Gρ の次元は時間の逆二乗であり,周期が R や m に依存しないこととも整合する.

ポイント この節のふり返り

  • 同じ運動を重心と相対運動に分けると,拘束力や衝突の役割が見えます.

  • エネルギーで求めた到達候補には,接触・静止・射出の条件を添えます.

  • 最適化や再衝突では,方程式の根だけでなく,許される区間と最初の事象を確かめます.

  • 繰り返しで失われる内部エネルギーと,残る重心運動を区別します.

08東大の過去問を発展させる(2)

この節も力学全章の知識を使います.回転する拘束系から始めて,接触の切替えと平面衝突を含む問題へ進みます.保存則を立てる前に,どの力が外力か,どの拘束がその瞬間に有効かを図に書き込んでください.

総合演習 24

東京大 1986 前期 第4問(改題) ★★★★☆

半径 a の円筒に,1回転で高さが 2πb だけ下がる滑らかな針金を4回巻きます.針金と支持具の鉛直軸まわりの慣性モーメントは I で,軸受は高さを固定します.質量 m のビーズを上端から静かに放します.針金に沿った角度を q とすると,下向きの落下距離は z=bq,最下端は q=8π です.針金全体の回転角を ψ とし,ビーズの地上での方位角は q+ψ とします.重力加速度は g です.

半径 a,一巻きの落差 2πb の四巻きらせん.鉛直軸は固定位置で回転でき,上端のビーズを静かに放します. 半径 a,一巻きの落差 2πb の四巻きらせん.鉛直軸は固定位置で回転でき,上端のビーズを静かに放します.
  1. 軸を固定した場合の落下時間 tf と最下端の速さを求めてください.

  2. 軸を自由にし,全体を静止から放します.角運動量保存により ψ˙ を消去し,q の運動方程式,落下時間 tr,ビーズの最下端の速さを求めてください.

  3. a=2b,I=ma2/3 のとき,tr/tf と自由時・固定時のビーズの速さの比を求めてください.自由時のほうが早く着くのに,ビーズの最終速度が小さくなり得る理由を,エネルギーの分配で説明してください.

  4. 自由な軸のまま,ビーズに下向き座標 z に対して上向きの力 Kz を及ぼす理想ばねを追加します.ばねは鉛直力だけを及ぼし,軸まわりのトルクを持ちません.平衡位置がらせんの内部にあるときの微小振動周期を求め,I→0 と I→∞ を比較してください.

解答を見る

考え方 自由な軸はビーズと逆向きに回る.地上でのビーズの方位角速度と,針金に対する移動速度を区別して運動エネルギーを書く.

  1. 固定時のエネルギーは m(a2+b2)q˙2/2−mgbq.従って q¨=gb/(a2+b2),高さ H=8πb から

tf=2Hg1+a2b2,vf=2gH.
  1. 鉛直軸まわりの外力トルクがゼロなので

(I+ma2)ψ˙+ma2q˙=0.

γ=I/(I+ma2),D=b2+a2γ とおくと,q˙+ψ˙=γq˙ で,系全体の運動エネルギーは mDq˙2/2.従って

q¨=gbD,tr=2HgDb,vr=2gHb2+a2γ2b2+a2γ.

ビーズの速さには z˙=bq˙ と地上での接線速度 aγq˙ を使った.

  1. γ=1/4,D=2b2 なので,tr/tf=2/5=0.632,vr/vf=5/8=0.791.失った重力位置エネルギーの 5/8 がビーズ,3/8 が支持具の回転に入る.速さは小さくても鉛直速度の割合が大きいので,早く着く.

  2. 有効な鉛直方向の慣性質量は mD/b2.(mD/b2)z¨=mg−Kz より,平衡は z0=mg/K,周期は

T=2πmDKb2.

小振幅で端に届かないことが条件で,この理想模型ではその範囲で厳密な単振動となる.I→0 では支持具が逆回転し,ビーズは地上で鉛直に動く極限となり T→2πm/K.I→∞ では固定軸と同じ T→2πm/K1+a2/b2.D の次元は長さの二乗であり,どちらも周期の次元を持つ.

総合演習 25

東京大 1983 前期 第3問(改題) ★★★★☆

滑らかな水平板上の質点 m を,板の小孔を通る軽く伸びない糸で,板の下のおもり M に結びます.おもりは小孔の真下の台に載り,初めの板上の半径は b,板下面とおもりの距離は s です.糸の全長は b+s.板上の質点に,糸に垂直な初速度 v0 を与えます.おもりは鉛直にのみ動き,初め糸は張っています.重力加速度は g とします.

板上の質点 m と台上のおもり M を糸で結びます.初速度は板内で糸と垂直,おもりの上には距離 s の余裕があります. 板上の質点 m と台上のおもり M を糸で結びます.初速度は板内で糸と垂直,おもりの上には距離 s の余裕があります.
  1. おもりが浮き上がる速さの閾値 u1 を求めてください.浮上後の半径 r とおもりの上昇量 y の関係,角運動量,半径方向の運動方程式を求めてください.

  2. 有効ポテンシャルを書き,おもりが板下面に達する速さの閾値 u2 を求めてください.v0 による運動の分類を示してください.板に届いた後の衝突は扱いません.

  3. 同じ角運動量で準備した円運動の半径 rc と,そのまわりの小さな半径振動の角振動数 ν を求めてください.円運動の角速度 Ωc と比較し,一回の半径振動で方位角がどれだけ進むかを答えてください.ただし b<rc<b+s とします.

  4. M=2m,b=0.30m,s=0.20m,g=9.8ms−2,v0=3.0ms−1 とします.二つの閾値と初回の最大上昇量を計算してください.

解答を見る

考え方 おもりが上がると,板下の糸は短くなる分だけ板上の半径が増す.角運動量保存による接線運動を,有効ポテンシャルに含める.

  1. 台上にある間は T=mv02/b.台の抗力 Mg−T が非負であるための上限は u1=Mgb/m.浮上後は r=b+y,L=mr2θ˙=mbv0.板上の半径方向とおもりの鉛直方向について

m(r¨−rθ˙2)=−T,Mr¨=T−Mg.

加えると (m+M)r¨=L2/(mr3)−Mg.張力は T=M(g+r¨)>0 なので,途中で糸がたるむこともない.

  1. U(r)=L2/(2mr2)+Mgr とすれば,(m+M)r˙2/2+U(r)=U(b).U″(r)=3L2/(mr4)>0 なので,浮上後に越える障壁は終点の値を調べればよい.U(b+s)≤U(b) より

u22=2Mg(b+s)2m(2b+s).

v0≤u1 は台上の円運動,u1<v0<u2 は浮上して板に達する前に折り返す.v0=u2 は速度ゼロで板下面に達する限界,v0>u2 は正の上昇速度で衝突する.u22/u12=2(b+s)2/[b(2b+s)]>1 である.

  1. U′(rc)=0 より rc=(L2/(mMg))1/3.r=rc+η として一次まで残すと

ν2=3Mg(m+M)rc,Ωc2=Mgmrc,Δθ≃2πΩcν=2πm+M3m.

従って一般の質量比では,一回の半径振動で軌道は閉じない.これは初めの放出軌道が円運動だという意味ではなく,別に円運動を準備して近傍を調べた結果である.

  1. u1=2.42ms−1,u2=3.50ms−1.折返点 rt>b は U(rt)=U(b) の自明でない根であり

2Mgrt2=mv02(rt+b),rt=mv02+m2v04+8Mmgv02b4Mg.

これから ymax=rt−b=0.101m.与えた数値の精度では約 0.10m で,s より小さい.小さい s の極限では u2→u1,ν2 は加速度÷長さの次元となる.

総合演習 26

東京大 2016 前期 第1問(改題) ★★★★★

鉛直に並ぶ上球 m,下球 M を高さ H から落とします.両球の間隔は落下高さに比べて無視でき,下球と床,球同士は完全弾性衝突します.床との衝突と球同士の衝突は順に起こる瞬間衝突として扱います.重力加速度は g です.

次に独立した実験として,下球を床に置き,上球をその真上の高さ ℓ に置きます.両球は自然長 ℓ の軽いゴムでつながれ,伸び x>0 に対して張力 kx,たるめば張力ゼロです.上球に上向き速度 w を与え,下球は静止から始めます.球の大きさは無視します.

独立したゴムの実験の初期状態.下球は床上,上球は自然長 ℓ の位置で上向き速度 w を持ちます. 独立したゴムの実験の初期状態.下球は床上,上球は自然長 ℓ の位置で上向き速度 w を持ちます.
  1. 落下実験で,床反射直後の速さを v=2gH とします.球同士の衝突後の速度を求め,下球が上向きに動く質量比の条件を求めてください.

  2. ゴムの実験で,下球が浮上する条件を k の不等式で求め,浮上時の伸び x0 と上球の速度 W を求めてください.

  3. 浮上からゴムが最初にたるむまでの時間 τ と,その瞬間の両球の速度を厳密に求めてください.この区間で下球が床に戻らないほど k が大きい場合を扱います.

  4. k→∞ で τ と速度はどうなりますか.「伸びない糸で二球の速度を同じにする」という模型とのエネルギーの違いを説明してください.m=0.10kg,M=0.20kg,w=4.0ms−1,k=200Nm−1,g=9.8ms−2 で τ を計算してください.

解答を見る

考え方 床から離れるまでは床が外力を及ぼす.離れてから初めて,重心の自由落下と換算質量のばね振動に分けられる.硬い弾性体の極限も,非弾性的な糸の緊張とは区別する.

  1. 上向きを正とし,入射速度は (−v,v).運動量保存と相対速度反転から,衝突後は

um=3M−mm+Mv,uM=M−3mm+Mv.

下球が上へ動くのは M>3m.M=3m なら直後に静止する.この計算は最初の球同士の衝突までを扱い,その後の床との再衝突は含めない.

  1. 下球が床上にある間は kx≤Mg.浮上候補 x0=Mg/k で上球がまだ上昇しているには

W2=w2−2gx0−kx02m=w2−M(M+2m)g2mk>0.

従って k>kc=M(M+2m)g2/(mw2).等号では上球がその場で折り返し,浮上を継続できない.

  1. S=m+M,mr=mM/S,ν=k/mr とおく.浮上を時刻ゼロに取り直すと,x¨=−ν2x,初期値は x0,W なので

x(t)=x0cos⁡νt+Wνsin⁡νt,τ=π−arctan⁡(νx0/W)ν.

A=W2+ν2x02 とおけば,たるむ瞬間の相対速度は −A.重心速度 V=mW/S−gτ より

um=V−MSA,uM=V+mSA.

床への再接触の確認には,下球の上昇量 yM(t)=m[Wt−x(t)+x0]/S−gt2/2 を用い,0<t≤τ で正であることを調べる.この条件が破れる場合は,途中で床との衝突を入れ直す必要がある.

  1. x0→0,W→w,A→w,τ≃πmr/k→0.従って

um→m−MSw,uM→2mSw.

重心速度は保存され,相対速度が反転するので,内部運動エネルギー mrw2/2 も残る.対して,速度を等しくする非弾性的な糸の模型では,この内部エネルギーを失い,両球とも mw/S となる.「伸びない」だけでは衝撃時のエネルギー条件まで決まらない.数値では kc=4.80Nm−1,τ≃0.0549s.上昇量の式でも再接触しないことを確認できる.mr/k は時間の次元である.

総合演習 27

東京大 2012 前期 第1問(改題) ★★★★★

東を x の正方向,北を y の正方向とする滑らかな低い水平面で,質量 M の球 B が西向き速度 (−u,0) で進んでいます.質量 qM の球 C を入射させて完全弾性衝突させます.球は滑らかで回転を無視でき,衝突法線は狙い方で選べます.東側には南北に延びる完全弾性の壁があります.衝突後,B だけが一度壁で反射し,その後の B と C の速度が共に (−a,b)(a,b>0)となるようにします.配置と発射時刻は,その後二球が再衝突しないように調整します.

西側には高さ h だけ高い水平面へ続く滑らかな坂があり,坂の断面は南北方向に一様で,接続は滑らかです.二球は常に面に沿って動くとします.重力加速度は g です.

B は西向きに進み,C が斜めに入射します.東には南北方向の壁,西には高い面に続く坂があります. B は西向きに進み,C が斜めに入射します.東には南北方向の壁,西には高い面に続く坂があります.
  1. 衝突直前の C の速度を q,u,a,b で表し,エネルギー保存が要求する条件を求めてください.a,b,u>0 の解が存在する質量比の範囲も求めてください.

  2. この衝突を実現する法線方向を求め,ニュートンダイアグラムで相対速度がその法線について弾性反射していることを示してください.

  3. 坂を上り切る条件と,高い面での速さ・西から北への角度 α を求めてください.C を高い面から低い面へ入射させる場合の初速と東から北への角度 θ も求めてください.

  4. q=1/2,u=gh,a=4u,h=0.80m,g=9.8ms−2 とします.必要な b,高い面での二球の速さと α,C の発射速度と θ を計算してください.

解答を見る

考え方 壁は東西成分だけを反転する.坂では南北成分が変わらない.この二つを衝突そのものと分け,まず低い面で運動量とエネルギーを両立させる.

  1. 壁反射前の B は (a,b),C は (−a,b).入射 C の速度を (cx,cy) とすると

cx=(1−q)a+uq,cy=1+qqb.

これを q(cx2+cy2)+u2=(1+q)(a2+b2) に代入すると

(1−3q)a2+2(1−q)au+(1+q)(u2+b2)=0.

0<q≤1/3 では左辺が正なので不可能.q>1/3 なら

b2=(3q−1)a2−2(1−q)au−(1+q)u21+q>0

となる十分大きい a を選べる.必要十分な下限は a>(1+q)u/(3q−1) である.

  1. B の力積は M(a+u,b) なので,法線を n=(a+u,b)/(a+u)2+b2 に取る.相対速度を C 引く B とすると,衝突前は w−=(cx+u,cy),後は w+=(−2a,0).上の条件から |w−|=|w+|=2a で,差は w−−w+=(1+q)(a+u,b)/q.従って接線成分は不変,法線成分は符号反転する.重心速度を中心に半径 2a の相対速度の円を描けば,二つの端点を結ぶ弦が法線方向となる.初めの接近成分 w−⋅n>0 も満たすので,適切な接触配置で実現できる.

  2. 坂で y 方向に力はなく,東西の運動エネルギーだけで高さを稼ぐ.上り切るには a2>2gh.上の面では

Vf=a2+b2−2gh,tan⁡α=ba2−2gh.

C の入射を上の面から準備するには 東向き成分について cx>2gh とし,発射速度と角度は Vi=cx2+cy2−2gh,tan⁡θ=cy/cx2−2gh.全速さだけが大きくても,東西成分が不足すれば坂を上り切れない.

  1. b=5/3u,(cx,cy)=(6u,15u).従って u=2.80ms−1,b=3.61ms−1,Vf=47/3u=11.1ms−1,α=arctan⁡5/42=19.0∘.C は Vi=7u=19.6ms−1,θ=arctan⁡15/34=33.6∘ で発射する.h→0 なら坂の変換は恒等変換に戻る.

総合演習 28

東京大 2011 前期 第1問(改題) ★★★★★

滑らかな床上の質点 A(質量 M>m)と質点 B(質量 m)を,長さ ℓ の軽い剛体棒でつなぎます.棒は両端で自由に回転できます.初め A は左側の鉛直な壁に接し,B は A の真上です.鉛直姿勢から右側へ倒れる微小な変位を与え,その変位をゼロに近づける極限を考えます.棒と上向き鉛直のなす角を θ とし,A は床から離れないものとします.棒は軸方向の力だけを伝えます.B と床の反発係数は 0≤e≤1,床との接線方向の力積はゼロです.重力加速度は g です.

壁に接する A と,棒でつながれた B.角 θ は上向き鉛直から測り,点線は B が床へ達する姿勢です. 壁に接する A と,棒でつながれた B.角 θ は上向き鉛直から測り,点線は B が床へ達する姿勢です.
  1. A が壁に接している間の B の速さと,棒が B を押す向きを正とした軸力を求めてください.A が壁から離れる角 α と,その瞬間の水平運動量 P を求めてください.

  2. 壁から離れた後,A の水平位置を x とします.水平重心速度と θ˙ で運動エネルギーを表し,B が床に達する直前の両球の速度を求めてください.

  3. 床衝突で失うエネルギーを求め,その後初めて B が最高点に達するときの角 β を求めてください.なぜ系の全運動エネルギーを単に e2 倍してはいけないのですか.

  4. M=3m,e=0.80 で α,β を計算してください.e=0,e=1,M/m→∞ の極限を調べ,e=1 でも B が元の高さに戻らない理由を説明してください.

解答を見る

考え方 壁との接触,自由な水平運動,床での衝撃を分ける.床衝突で減るのは鉛直の内部運動であり,水平重心運動は残る.

  1. 固定された A のまわりで v2=2gℓ(1−cos⁡θ).棒に沿う外向きの式 F−mgcos⁡θ=−mv2/ℓ より,F=mg(3cos⁡θ−2).壁の抗力は Fsin⁡θ なので,これがゼロになる cos⁡α=2/3 で離れる.この瞬間の水平運動量は

P=mvcos⁡α=2m32gℓ3.

壁は接触中に水平運動量を与えるが,接点が動かないので仕事をしない.厳密な鉛直姿勢で静止させたままなら倒れないため,問題文の極限操作が必要である.

  1. S=M+m とすると P=Sx˙+mℓcos⁡θθ˙.両球の速度から二乗を整理して

K=P22S+mℓ22M+msin2⁡θSθ˙2.

第一項が水平重心のエネルギー.K+mgℓcos⁡θ=mgℓ なので,E=mgℓ−P2/(2S) とおくと,床直前の θ=π/2 では

vA=(P/S,0),vB=(P/S,−2E/m).

この時点では棒が水平なため,棒の長さの拘束は両球の水平速度が等しいことを要求する.

  1. 衝突で B の鉛直速度は e2E/m となる.水平速度は元から等しく,床の水平力積もないので変わらない.損失は (1−e2)E.衝突後に最高点で θ˙=0 となっても,両球は水平速度 P/S で動いている.従って

mgℓcos⁡β=e2E,cos⁡β=e2(1−4m27(M+m)).

e が縮めるのは B の床法線方向の速度であり,重心の水平速度ではない.上昇中は A が壁からさらに遠ざかるので,壁への再接触を挟む必要もない.

  1. α=48.2∘,cos⁡β=0.64×26/27,β=52.0∘.e=0 では β=π/2 で上昇せず,水平なまま並進する.e=1 でも有限の M では cos⁡β<1.初めの位置エネルギーの一部が,壁を離れた後に保存される水平重心運動に残るためである.M/m→∞ では P2/(2S)→0,cos⁡β→e2 となり,弾性なら元の高さに近づく.速度の尺度が gℓ,エネルギーの尺度が mgℓ であることも各式から確認できる.

ポイント この節のふり返り

  • 拘束が動くときは,地上の速度と拘束に対する速度を区別します.

  • 有効ポテンシャルは到達条件と安定性を一緒に示します.

  • 衝撃では保存される運動と失われる内部運動を分けます.

  • 無限に硬い弾性体と非弾性的な拘束は,同じ極限とは限りません.