問いしるべ
参考書

問いから始める物理

公式参考書

問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 17節
  1. 東大後期の過去問を発展させる(1)
  2. 東大後期の過去問を発展させる(2)
  3. 東大後期の過去問を発展させる(3)
  4. 東大後期の過去問を発展させる(4)
  5. 東大後期の過去問を発展させる(5)
  6. 力学の総合問題(1)
  7. 力学の総合問題(2)
  8. 熱と分子の総合問題(1)
  9. 熱と分子の総合問題(2)
  10. 電磁気の総合問題(1)
  11. 電磁気の総合問題(2)
  12. 光と原子の総合問題(1)
  13. 光と原子の総合問題(2)
  14. IPhO の問題を発展させる(1)
  15. IPhO の問題を発展させる(2)
  16. IPhO の問題を発展させる(3)
  17. APhO の問題を発展させる(1)

第33章  全範囲の総合演習

01東大後期の過去問を発展させる(1)

東大後期の回転,気体コンデンサー,発熱抵抗,電子捕獲を改題しました.第5〜8章の力学,第15〜17章の熱,第20・21章の電場と回路,第29・31章の原子を組み合わせます.最後に操作速度,温度限界,放射の待ち時間を調べます.

総合演習 1

東京大 1996 後期(改題) ★★★★★

回転する二体に接線方向の力積を加える

無重力空間で質量 m,2m の小球を,自然長 ℓ0,ばね定数 κ の軽いばねで結びます.初め距離 a>ℓ0 を保ち,静止した重心のまわりに角速度 Ω で回ります.両球に逆向きで等しい接線力積を加え,相対接線速度を 1+ϵ 倍にします.1≫ϵ>0 で,力積中の変位と散逸を無視します.距離を r,相対位置の角を θ,換算質量を mr=2m/3 とします.

  1. 相対運動の運動エネルギーと角運動量 J,Ω と仕事を求めよ.

  2. 力積後の有効ポテンシャルから,円軌道半径 a+δa を1次まで,半径振動の角振動数 ωr を最低次で求めよ.

  3. 力積直後を t=0 とし,r(t) と角速度を1次まで求めよ.a=2ℓ0,m=0.30kg,κ=12Nm−1,ℓ0=0.20m,ϵ=0.025 で角振動数と最大伸びを計算せよ.

  4. 半径振動のエネルギーを2次まで求めよ.同じ増分を時間 τ で与え,振動を小さくする条件を述べよ.

二球,間隔a,重心からの距離,接線速度を描く.逆向きの力積と角θを示す. 二球,間隔a,重心からの距離,接線速度を描く.逆向きの力積と角θを示す.
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考え方

全力積は0で重心は静止する.角運動量を固定し半径運動を調べる.

  1. 重心からの距離は 2r/3,r/3 だから

K=mr2[(drdt)2+r2(dθdt)2],J=mrr2dθdt

つり合いは mraΩ2=κ(a−ℓ0) より Ω2=κ(a−ℓ0)/(mra).J0=mra2Ω は J1=(1+ϵ)J0 となる.仕事は

W=mra2Ω22[(1+ϵ)2−1]=κa(a−ℓ0)(ϵ+ϵ22)
  1. Ueff=κ(r−ℓ0)2/2+J12/(2mrr2).最小の条件 κ(r−ℓ0)=J12/(mrr3) を初状態から展開すると

κ(4−3ℓ0a)δa=2κ(a−ℓ0)ϵ,δa=2a(a−ℓ0)4a−3ℓ0ϵ

曲率は d2Ueffdr2=κ+3J12/(mrr4).最低次では

ωr2=κmr(4−3ℓ0a)>0
  1. r(0)=a,dr/dt(0)=0 なので

r=a+δa(1−cos⁡ωrt),dθdt=J1mrr2≃Ω[1+ϵ−2δaa(1−cos⁡ωrt)]

mr=0.20kg,Ω=5.5s−1,ωr=12s−1,δa=4.0×10−3m.最大伸びの計算値は 0.208m で,有効数字2桁では 0.21m.

  1. 最小点からの初期変位が −δa だから

Er=12mrωr2δa2=2κa(a−ℓ0)24a−3ℓ0ϵ2

ωrτ≫1 としトルクの始終を滑らかにすれば,半径が動く最小点に追随し,振動を小さくできる.

近似は 1≫ϵ,|δa|/a,時間波形にはさらに 1≫ϵωrt が必要である.

総合演習 2

東京大 1994 後期(改題) ★★★★★

電源につなぐと気体の復元力はどう変わるか

水平筒の金属底面と質量 Mp,面積 S のピストンを極板とします.間隔 x>0,気体体積 Sx,容量 C=ε0S/x です.物質量 ν,比熱比 γ=7/5 の二原子理想気体を熱源 T0 に接し,外圧を pa>0 とします.無帯電の平衡間隔は x0=νRT0/(paS).摩擦,重力,漏電,放電,端の電場を無視し,気体の誘電率は ε0 とします.

  1. 電荷 ±Q 一定の引力をエネルギーから導き,等温の平衡位置と角振動数を求めよ.

  2. 電圧 V≥0 一定の引力を,電源の仕事を含めて導け.平衡位置,安定性,臨界電圧 Vc を求めよ.

  3. 振動中だけ可逆断熱になる場合の角振動数を求め,等温の臨界位置でも復元力があることを示せ.熱交換時間 τh,音速 vs で両近似の条件を述べよ.

水平筒の極板,気体,外圧p_aと間隔xを描く.電荷固定と電源接続を並べる. 水平筒の極板,気体,外圧p_aと間隔xを描く.電荷固定と電源接続を並べる.
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考え方

力の傾きで安定性を決める.電源も収支へ入れる.

  1. UQ=Q2x/(2ε0S) より外向きの力は −dUQ/dx=−Q2/(2ε0S)=−FQ.気体の力 νRT0/x とつり合わせ,ξ=x−xQ で線形化すると

xQ=νRT0paS+FQ,Mpd2ξdt2=−νRT0xQ2ξ,ωQ2=νRT0MpxQ2
  1. 電源の仕事 VdQ=V2dC から場の増加 V2dC/2 を引くと極板の仕事になる.外向きの力は V2dC/dx/2=−ε0SV2/(2x2).A=νRT0,P=paS,D=ε0SV2/2 とおくと合力は F=A/x−P−D/x2.従って

x±=x02[1±1−(VVc)2],Vc2=A22ε0paS2

平衡では D=Ax−Px2 なので dFdx=(A−2Px)/x2.x+>x0/2 は安定,x−<x0/2 は不安定.V=0 では x=x0 のみである.V>Vc なら平衡はない.臨界で F=−P(x−x0/2)2/x2≤0 で,安定な平衡ではない.

  1. 平衡圧を p∗,変位を ξ=x−x+ とし p=p∗[x+/(x++ξ)]γ≃p∗(1−γξ/x+).気体の力の傾きは −γA/x+2,電気力の傾きは 2D/x+3 だから

ωA2=(γ−2)A+2Px+Mpx+2

x+=x0/2 では ωA2=4(γ−1)P/(Mpx0)>0.圧縮で昇温するため復元力が残る.長時間の安定性は保証しない.

等温の角振動数は ωT2=(2Px+−A)/(Mpx+2).等温には 1≫ωTτh,断熱には ωAτh≫1 が必要で,圧力一様にはさらに 1≫ωx+/vs を要する.小振動は 1≫|ξ|/x+,平行板近似は 1≫x+/S が条件である.

総合演習 3

東京大 1995 後期(改題) ★★★★☆

発熱する抵抗の測定と熱暴走

温度一様な抵抗体の温度上昇を θ=T−T0,抵抗を R=R0(1+αθ),放熱率を Ghθ,熱容量を Ch とします.係数はすべて正です.表は独立な温度・抵抗・電力の定常測定値で,模型に一致します.

θ/K

R/Ω

電力 P/W

25

30

10

50

40

20

100

60

40

  1. 表から R0,α,Gh を決めよ.一定電流 I で加熱する場合の温度の微分方程式を立て,定常温度と安定性の条件を求めよ.

  2. 起電力 E,直列抵抗 Rs の電源につなぎます.r=R/R0,s=Rs/R0,β=αE2/(GhR0) で定常式を作り,解の一意性を示せ.

  3. 温度のずれが減る時定数を求めよ.Rs=20Ω,E=302V,Ch=12JK−1 で温度上昇,電流,時定数を求めよ.

  4. 定常温度上昇を 100K 以下とする最大起電力を求めよ.Rs→∞,E/Rs=Ib の極限と一定電流の暴走の関係を説明せよ.

電源,直列抵抗R_s,抵抗体を描く.外界への放熱G_hθを示す. 電源,直列抵抗R_s,抵抗体を描く.外界への放熱G_hθを示す.
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考え方

発熱と放熱の差を温度で微分し安定性を調べる.電源の条件も収支へ入れる.

  1. 表の傾きと切片より R0=20Ω,α=0.020K−1,P/θ より Gh=0.40WK−1.収支は

Chdθdt=I2R0+(αI2R0−Gh)θ

Gh>αI2R0 なら θ∗=I2R0/(Gh−αI2R0) は安定.等号では線形,逆なら指数的に昇温する.臨界は Ic=Gh/(αR0)=1.0A.

  1. 電流は I=E/(Rs+R),発熱は E2R/(Rs+R)2.定常式は

β=(r−1)(s+r)2r

右辺は r=1 で0,発散し,微分 (s+r)2/r2+2(r−1)(s+r)/r>0 より解は一つである.

  1. 発熱の温度微分 αE2R0(Rs−R)/(Rs+R)3 と定常式を使い

dδθdt=−δθτ,τ=ChGhr(s+r)s+2r2−r

s≥0,r≥1 で τ>0 だから安定である.数値は s=1,β=4.5,r=2,θ∗=50K,I=0.71A,τ=26s.発熱・放熱はともに 20W である.

  1. 上限で R=60Ω.温度は起電力とともに増すから

Emax=(Rs+R)GhθR=8023V≃65V

電流は 0.82A.有限の Rs では,高温で電流と発熱が下がる.一方,E=IbRs の極限では有限温度で I→Ib.Ib<Ic なら(1)の定常温度に近づき,Ib≥Ic なら定常温度は発散する.電流源の極限は特異である.

線形化には 1≫|αδθ|/r,電気応答時間が τ より短いことを要する.Ch/Gh の次元は時間である.

総合演習 4

東京大 1998 後期(改題) ★★★★★

電子捕獲のあとに出る光の反跳と待ち時間

静止した原子番号20,質量数43の原子模型 X が,電子捕獲で娘原子 Y と質量0の電子ニュートリノを作ると仮定します.Y の内側の空席へ n=2 の電子が移り光子を出します.準位は有効核電荷 Zeff=ZY−σ を使う En=−13.6Zeff2/n2eV とします.反跳質量は M,Mc2=4.00×104MeV .捕獲で運動へ分かれる量は Q=0.400MeV.Q は電子の結合と Y の励起を織り込んだ値で,後の光子を再び差し引きません.反跳は非相対論的です.

1eV=1.60×10−19J,kB=1.38×10−23JK−1 とします.

  1. ZY,AY を求め,反跳補正前の n=2 から n=1 への遷移エネルギー E∗=3.3048keV から σ を求めよ.

  2. ニュートリノのエネルギーと Y の反跳を,Q/(Mc2) の最初の補正まで求めよ.

  3. 原子の速度 u と射出光子の角を θ とします.ドップラー効果と光子反跳の1次までエネルギーを求め,捕獲直後の範囲を求めよ.

  4. 放射時刻の確率密度が e−t/τX/τX,媒質中で捕獲による速度が u0e−t/τs とします.一定方向の平均ドップラーずれを求め,τX=4τs の値と 300K の熱的な標準偏差を比べよ.

捕獲前後の原子,ニュートリノ,反跳するY,後から出る光子を描く.速度uと光子の角θを示す. 捕獲前後の原子,ニュートリノ,反跳するY,後から出る光子を描く.速度uと光子の角θを示す.
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考え方

核の変化,電子の準位,原子の反跳を数える.媒質は準位と放射率を変えないとする.

  1. 陽子が電子を捕獲して中性子に変わり,ZY=19,AY=43.準位差は E∗=E2−E1=13.6Zeff2(1−1/4)eV.従って Zeff=3304.8/10.2=18,σ=19−18=1.

  2. Y の運動量の大きさは Eν/c.保存則 Q=Eν+Eν2/(2Mc2) を1次補正まで解くと

Eν≃Q−Q22Mc2,KY≃Q22Mc2=2.00eV,u0c≃QMc2=1.00×10−5

Eν≃399.998keV は補正を含む値である.

  1. 原子の運動量は放射で Mu から Mu−pγ に変わる.運動エネルギーの差を含めると

E∗=Eγ−uEγccos⁡θ+Eγ22Mc2,Eγ≃E∗(1+uccos⁡θ)−E∗22Mc2

範囲は E∗−1.37×10−4eV を中心に ±0.0330eV.下方補正は光子反跳である.励起の慣性質量差は省略した.

  1. 時間で平均して

⟨u⟩=∫0∞u0τXe−t(1/τs+1/τX)dt=u01+τX/τs,⟨ΔED⟩=E∗u0cos⁡θc(1+τX/τs)

τX=4τs では最大平均ずれは 0.00661eV.等分配則 M⟨u∥2⟩=kBT を使うと σE=E∗kBT/(Mc2)=0.00266eV.等方的には平均ずれは0.

近似には 1≫Q/(Mc2),E∗/(Mc2),u/c を要し,各値は 10−5,8.3×10−8,10−5 程度.減速中は媒質へエネルギーが渡る.

02東大後期の過去問を発展させる(2)

東大後期の光による捕捉,屈折率分布のレンズ,巻線設計,計器の問題を改題します.第7章の振動,第14章の不確かさ,第17章の等分配則,第21〜23章の回路と磁場,第27・29章の光学と光子を組み合わせます.最適条件と,模型の適用範囲を調べてください.

総合演習 5

東京大 1991 後期(改題) ★★★★☆

光で捕まえた粒子の熱運動

半径 R,屈折率 n>1,質量 m の透明な円柱を,軸を z 方向に保って y 方向だけ動けるなめらかな案内に載せます.中心は (0,y) です.x 軸上を反対向きに進む2本の細い光線を当て,各光線のパワーを P とします.真空中の光速は c,光子のエネルギーと運動量は hν,hν/c です.反射と吸収を無視し,1≫|y|/R で幾何光学を使います.

  1. y>0 のとき,+x 方向へ入った光線が射出時に +y 側へ曲がる角を δ とします.入射角 α,屈折角 β を使って δ を求め,y/R の1次まで近似せよ.

  2. 力を求め,Fy=−Koy の Ko と振動数を求めよ.1本の照射で生じる x 方向の力は何次か.

  3. 弱い熱結合の平衡で ⟨y2⟩=kBT0/Ko とします.R=5.0×10−6m,n=1.50,m=2.0×10−13kg,P=5.0×10−4W,T0=300K,c=3.00×108ms−1,kB=1.38×10−23JK−1 で振動数と位置の標準偏差を求めよ.標準偏差を 0.050R 以下にする最小 P も求めよ.

中心がyだけずれた円柱と反対向きの入射光を描く.半径R,入射点の法線,入射角α,屈折角β,射出角δを示す. 中心がyだけずれた円柱と反対向きの入射光を描く.半径R,入射点の法線,入射角α,屈折角β,射出角δを示す.
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考え方

光の運動量変化を数える.対向照射で縦の力が消え,横の復元力が加わる.

  1. 円の幾何と屈折の法則より sin⁡α=y/R,sin⁡β=sin⁡α/n.入射・射出の両面で同じだけ曲がるので

δ=2(α−β)≃2(1−1n)yR

y<0 では符号が逆になる.

  1. 毎秒の光子数は P/(hν) だから,+x 方向の入射による力は Fx=P(1−cos⁡δ)/c,Fy=−Psin⁡δ/c.逆向きの入射では Fx が逆,Fy は同じである.従って

Fy≃−4PcR(1−1n)y,Ko=4P(n−1)ncR,f=12πKom

1本の Fx≃Pδ2/(2c) は2次である.光の通過中,円柱はほぼ静止するとした.

  1. Ko=4.4×10−7Nm−1,f=2.4×102Hz.標準偏差は

σy=kBT0Ko=9.7×10−8m,σyR=0.019

弱い減衰ならこの f を使える.

標準偏差の条件は kBT0/Ko≤(0.050R)2 なので

P≥nckBT04(n−1)(0.050)2R=7.5×10−5W

幾何光学では波長と光線幅が R より小さく,速さは 1≫v/c が必要である.小振幅には 1≫σy/R を要する.

総合演習 6

東京大 1993 後期(改題) ★★★★★

平面の位相板はどの距離でよいレンズになるか

厚さ d,半径 Rp の位相板を,光軸からの距離 r に応じて位相 2πd[n(r)−1]/λ を加える模型で扱います.両面は同じ平面とし,内部の横伝播を省略します.n(r) は有効な屈折率で,板の外は真空です.光軸上の距離 f の点光源を平面波に変える板を設計します.中心の値は n(0)=n0 です.展開には 1+z=1+z/2−z2/8+⋯ を使ってよいとします.

  1. 出口の位相がそろう n(r) を求め,r4 まで展開せよ.

  2. この板で距離 a>f の物点を距離 b の実像へ結びます.物点から像までの光学距離の2次の項を消す条件と,4次の係数 Γ を求めよ.

  3. a=b=2f,f=0.100m,d=1.00×10−3m,n0=1.60,λ=600nm とします.中心と縁の位相差を π/4 以下とする最大 Rp を求めよ.

  4. 同じ a,b で4次の項も消す屈折率分布の係数を求め,元の板との違いを示せ.開口を大きくするとき,次に調べるべき近似を述べよ.

位相板の中心と半径rの点を通る二つの経路,光軸上の物点と像を描く.距離a,b,板の半径R_pを示す. 位相板の中心と半径rの点を通る二つの経路,光軸上の物点と像を描く.距離a,b,板の半径R_pを示す.
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考え方

位相をそろえる.2次だけ一致する条件と,4次も一致する条件を区別する.

  1. 出口の光学距離は f2+r2+d[n(r)−1].中心と等置すれば

n(r)=n0−f2+r2−fd≃n0−r22df+r48df3

中心ほど位相を遅らせる.

  1. n=n0−αr2+βr4 と書く.物点から像までの光学距離は

L=a2+r2+b2+r2+d[n(r)−1]=L0+[12a+12b−dα]r2+[dβ−18(1a3+1b3)]r4+⋯

α=1/(2df) なので2次の条件は 1/a+1/b=1/f.元の板の β=1/(8df3) を使うと

Γ=18[(1a+1b)3−1a3−1b3]=38fab>0
  1. Γ=3/(32f3).位相差 2πΓRp4/λ≤π/4 より

Rp≤(4λf33)1/4=5.32×10−3m

Rp/f=0.0532 で近軸の条件を満たす.

  1. 2次の係数は変えず,βab=(a−3+b−3)/(8d) とすればよい.a=b=2f では βab=1/(32df3) で,元の板の4分の1となる.

近軸展開は 1≫Rp/a,Rp/b,Rp/f が条件であり,開口を増せば6次以降の位相誤差も検査する.厚い板には内部の光線の曲がりによる誤差もある.その光学距離誤差も λ/8 より小さいか確かめる.a→f,b→∞ では Γ→0 となり,設計条件へ戻る.

総合演習 7

東京大 1993 後期(改題) ★★★★★

交流で使うコイルの巻数を選ぶ

体積 V,抵抗率 ρ の銅線を,平均1周長 ℓ の巻枠に N 回巻きます.線の断面は一様で,長い空心ソレノイドの長さ ℓs,断面積 S は一定です.L=lN2,l=μ0S/ℓs,内部の磁場は B=μ0NI/ℓs と近似します.起電力 E(t)=2Vecos⁡ωt,直列抵抗 Rs>0 の交流電源につなぎます.銅の温度変化,表皮効果,寄生容量,放射を無視し,N は連続量として最適化します.

  1. コイル抵抗を R=rN2 の形にせよ.電流を I(t)=Re⁡[I^eiωt] とし,複素振幅 I^,磁場実効値 Be,位相の遅れを求めよ.

  2. q=r2+ω2l2 とおき,Be を最大にする巻数と最大値を求めよ.直流極限と高振動数極限を調べよ.

  3. 最適巻数での銅の発熱率を P∗ とします.発熱を P∗/2 以下に制限したとき,最大磁場を作る巻数を求めよ.r=4.0×10−4Ω,l=2.0×10−8H,ω=2.0×104s−1,Rs=4.0Ω,Ve=12V で巻数と P∗ を計算せよ.

    1. の二つの設計について,直列抵抗の損失と銅へ届く平均電力の割合を比べよ.

空心コイルと交流電源,直列抵抗R_sを描く.コイルの長さℓ_s,断面S,巻数N,1周長ℓを示す. 空心コイルと交流電源,直列抵抗R_sを描く.コイルの長さℓ_s,断面S,巻数N,1周長ℓを示す.
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考え方

抵抗とリアクタンスの巻数依存を,複素インピーダンスへ入れる.

  1. 導線長 Nℓ,断面積 V/(Nℓ) より r=ρℓ2/V.ZL=iωL を使うと

I^=2VeRs+(r+iωl)N2,Be=μ0VeℓsN(Rs+rN2)2+ω2l2N4,tan⁡ϕ=ωlN2Rs+rN2

電流は I(t)=2Iecos⁡(ωt−ϕ),Ie=|I^|/2 である.

  1. x=N2,D=Rs2+2Rsrx+q2x2 とおく.Be2 は x/D に比例し,微分の符号は Rs2−q2x2 で決まる.従って

N∗2=Rsq,B∗2=(μ0Veℓs)212Rs(r+q)

直流では q=r となり,コイル抵抗が Rs に等しいとき最大である.ωl≫r では N∗≃Rs/(ωl),B∗∝ω−1/2.

  1. 銅の発熱率は Pc=Ie2rN2=rVe2x/D だから,Pc/Be2=rℓs2/μ02 は一定である.従って制限下の最大磁場は B∗/2.t=N2/N∗2,ar=r/q とおけば

PcP∗=2(1+ar)t1+2art+t2,t2−(4+2ar)t+1=0

正根 t±=2+ar±(2+ar)2−1 から N±=N∗t±.数値は ar=1/2,N∗≃84,P∗=rVe2/[2Rs(r+q)]=7.5W,巻数の選定用に桁を残すと N−≃36.8,N+≃192.2.整数なら36以下か193以上を選ぶ.

  1. 同じ Be なら NIe は同じなので,損失 Ps=RsIe2 は N−2 に比例する.また銅へ届く平均電力の割合は

ηc=PcPc+Ps=rN2Rs+rN2

連続量としての N−,N+ では,銅の発熱はともに 3.7W,直列抵抗の損失はそれぞれ 28W,1.0W,ηc は 0.12,0.79 となる.巻数が多い方は損失が小さく,ηc は大きい.位相差は大きく,電源容量は平均電力だけでは決まらない.磁気エネルギーは周期ごとに戻り,平均供給電力は Pc+Ps である.

N→0 でも N→∞ でも磁場は0へ近づく.高振動数の近似は ωl/r≫1 と,装置寸法を ds とした 1≫ωds/c をともに満たす範囲で使う.寄生容量や表皮効果も小さい範囲に限る.

総合演習 8

東京大 1991 後期(改題) ★★★★☆

計器が変えた回路を測定値から復元する

起電力 E,内部抵抗 Rs の直流電源につながる抵抗 R の,計器を入れる前の電力を求めます.電流計の内部抵抗は RA=10.0Ω.電圧計を R に並列,電流計を全電流を測る位置に直列接続します.電圧計の内部抵抗を切り替え測りました.温度変化と電源の変動を無視し,計器抵抗は正確に既知とします.

電圧計の内部抵抗 RV/Ω

電圧 V/V

全電流 I/A

100

6.00

0.1200

300

7.20

0.0960

  1. 二つの測定から R が一致するか確かめよ.E,Rs を求めよ.

  2. 元の電力を求めよ.1回目の VI と抵抗の実際の電力を比べ,VI を使う問題点を述べよ.

  3. 各読みの独立な標準不確かさを σV=0.010V,σI=2.0×10−4A とします.Rs の標準不確かさと,1回目の R の標準不確かさを誤差伝播で求めよ.

  4. R に未知容量 C のコンデンサーを並列に追加します.無充電から接続した時定数は,RV=100Ω で 10.0ms,300Ω で 12.0ms でした.C を求め,測定の整合性を調べよ.RV を両方とも大きくすることが,Rs の推定には不利になる理由も述べよ.

電源,電流計,並列の抵抗Rと電圧計を描く.追加するコンデンサーCも別図に示す. 電源,電流計,並列の抵抗Rと電圧計を描く.追加するコンデンサーCも別図に示す.
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考え方

動作点から電源を決め,元の回路を復元する.

  1. IR=I−V/RV なので R=(I/V−1/RV)−1.1回目は IR=0.0600A,2回目は 0.0720A で,どちらも R=100Ω.回路の式は E=Vj+(Rs+RA)Ij だから

Rs=V2−V1I1−I2−RA=40.0Ω,E=V1+(Rs+RA)I1=12.0V
  1. 計器を外すと I0=E/(Rs+R),従って P0=E2R/(Rs+R)2=0.735W.1回目は VI=0.720W だが,抵抗の電力は V2/R=0.360W.残る 0.360W は電圧計が消費する.積が P0 に近いのは,回路の乱れと電圧計の消費が偶然相殺したためである.

  2. AV=V2−V1,AI=I1−I2,SR=Rs+RA=AV/AI とおく.独立な読みの差の分散は 2σV2,2σI2 だから

σRs2=2σV2AI2+2AV2σI2AI4,σRs=0.83Ω

(1)の偏微分は ∂R/∂I=−R2/V,∂R/∂V=R2I/V2.従って

σR=R2σI2V2+I2σV2V4=0.47Ω
  1. コンデンサーの電荷保存は CdV/dt=(E−V)/(Rs+RA)−V/R−V/RV.定常値からのずれは指数的に減り,時定数は

τ=C[1Rs+RA+1R+1RV]−1

並列抵抗は1回目が 25.0Ω,2回目が 30.0Ω なので,いずれも C=4.00×10−4F.両方の RV が非常に大きいと動作点が近づき,AI,AV が小さくなる.誤差式より,負荷を減らしても Rs の不確かさは増す.

誤差伝播には 1≫σV/V,σI/I,2σI/|AI| を要する.最後の比も 0.012 で小さい.τ/C の次元は抵抗である.

03東大後期の過去問を発展させる(3)

東大後期のローラー,電球,電子捕獲,コンデンサーを4題に組み直しました.第4〜8章の力学,第14章の測定,第15・16章の熱,第20・21章の電場と回路,第29・31章の原子を使います.系を選んでください.最後は近似の限界も調べます.

総合演習 9

東京大 1999 後期(改題) ★★★★☆

摩擦で振動する板の熱はどこから来るか

質量 M の薄い一様な板を,接触点 x=−ℓ,ℓ の2個のローラーで水平に支えます.重心位置を x,左・右の動摩擦係数を a=μL′,b=μR′ とします.ローラー上面の速度は左が +u,右が −u で,モーターが保ちます.板は長く,厚さによる摩擦力のモーメントと鉛直運動を無視します.重力加速度は g です.

  1. 支持力,合力,平衡位置 xe と角振動数 ω を求めよ.xe+A から静かに放した板が両ローラーに接し,滑りの向きが変わらない条件を示せ.

  2. g=9.8ms−2 で次の丸めた測定値を得ました.T2 と ℓ の直線化から a,b を推定せよ.

ℓ(m)

周期 T(s)

xe(m)

0.20

1.80

-0.040

0.30

2.20

-0.060

0.40

2.54

-0.080

  1. 板の速度を v として,各接触部の発熱率とモーターの供給仕事率を求め,1周期の仕事と熱を比べよ.

  2. 振幅 A を固定して発熱を抑えたい.M=2.0kg,ℓ=0.30m,a=0.20,b=0.30,A=0.040m,g=9.8ms−2 とする.滑りの向きを保つ u の下限と平均供給仕事率の下限を求めよ.下限を実現できるかも述べよ.

質量Mの板の重心位置はx,ローラーの接触点は−ℓとℓである.左の摩擦係数はa=μ′L,右はb=μ′Rで,上面速度はそれぞれ+u,−u.各ローラーはモーターで駆動される. 質量Mの板の重心位置はx,ローラーの接触点は−ℓとℓである.左の摩擦係数はa=μ′L,右はb=μ′Rで,上面速度はそれぞれ+u,−u.各ローラーはモーターで駆動される.
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考え方

薄板のつり合いから支持力を決め,駆動の仕事を含める.

  1. NL+NR=Mg,ℓ(NR−NL)=Mgx より

NL=Mg2(1−xℓ),NR=Mg2(1+xℓ)

v が −u,u の間なら,左の摩擦は右向き,右は左向きである.従って

Md2xdt2=aNL−bNR=Mg2[a−b−a+bℓx]=−Mω2(x−xe),xe=ℓ(a−b)a+b,ω2=g(a+b)2ℓ

初期条件から x=xe+Acos⁡ωt,v=−Aωsin⁡ωt.条件は A<ℓ−|xe| と Aω<u である.

  1. T2=8π2ℓ/[g(a+b)].最初と最後の点の傾きは (2.542−1.802)/0.20=16.1s2m−1 なので a+b≃0.50.全点で xe/ℓ=−0.20=(a−b)/(a+b) だから a≃0.20,b≃0.30.中間点も一致する.

  2. 滑り速度から

Ph,L=aNL(u−v),Ph,R=bNR(u+v),Pm=u(aNL+bNR)

合計を Ph とすると,Pm−Ph=(aNL−bNR)v=ddt(Mv2/2).1周期の板への仕事は0である.⟨x⟩=xe より a⟨NL⟩=b⟨NR⟩=Mgab/(a+b) なので

Qh=∫0TPhdt=∫0TPmdt=2Mguaba+bT>0

熱はモーターから来る.

  1. 平均供給仕事率は ⟨Pm⟩=2Mguab/(a+b) と u に比例する.滑りの向きには u>Aω を要するので

u∗=Aω≃0.11ms−1,P∗=2Mgaba+bAω=0.54W

下限に近づけられるが,等号では最大速度の瞬間に一方の滑り速度が0になる.下限の達成は保証できない.支持力の条件も A/(ℓ−|xe|)=0.17<1 を満たす.g/ℓ の次元は時間の逆二乗で,薄板近似には厚さと ℓ の比が十分小さいことを要する.

総合演習 10

東京大 2000 後期(改題) ★★★★★

同じ明るさの電球は安定か

2個の同じ電球を並列にし,一定電圧 Vb の電源へ直列抵抗 r を介してつなぎます.周囲温度を T0,電球の温度差を θi=Ti−T0,抵抗を Ri=R0(1+αθi) とします.各熱容量は Ch,放熱率は Hθi です.R0,α,H,Ch,r は正で一定,電気応答は速く,電球間の熱交換は無視します.共通端子電圧を V とします.

  1. V,各発熱率,温度の方程式を求め,電源の収支を示せ.

  2. 対称な定常状態 θ1=θ2=θ∗≥0 の方程式を立てよ.Vb=24V,r=20Ω,R0=10Ω,α=4.0×10−3K−1,H=0.020WK−1 で θ∗ を求めよ.

  3. 微小変化 δθ1=δθ2 と δθ1=−δθ2 の増減率を求め,安定性を判定せよ.Ch=0.10JK−1 で減衰時間も求めよ.

  4. 電源と r を,総電流 I0 を保つ理想電流源に置き換えます.対称な昇温と臨界電流を求め,発散を解釈せよ.初温度は T0 です.

電圧Vbの電源と直列抵抗rに,同じ2個の電球を並列につなぐ.電球の抵抗はR1,R2,温度はT1,T2,共通端子電圧はVである.周囲温度T0へHθ1,Hθ2の割合で放熱する. 電圧Vbの電源と直列抵抗rに,同じ2個の電球を並列につなぐ.電球の抵抗はR1,R2,温度はT1,T2,共通端子電圧はVである.周囲温度T0へHθ1,Hθ2の割合で放熱する.
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考え方

電気応答が速い模型で熱収支を線形化し,温度の和と差を分ける.

  1. I=V(1/R1+1/R2),Vb=V+rI より

V=Vb1+r(1/R1+1/R2),Chdθidt=V2Ri−Hθi

電源の仕事率は VbI=rI2+V2/R1+V2/R2 である.

  1. R∗=R0(1+αθ∗) とおけば

Vb2R∗(R∗+2r)2=Hθ∗

数値は θ∗≃1.5×102K.以下は未丸めの値と V∗=VbR∗/(R∗+2r) を使う.

  1. 共通モードでは P(R)=Vb2R/(R+2r)2 を微分する.差では抵抗逆数の変化が相殺し,δV=0.δθ∝est の率は

sc=1Ch[αR0Vb2(2r−R∗)(R∗+2r)3−H],sd=1Ch[−αR0V∗2R∗2−H]

数値は sc=−0.168s−1,sd=−0.274s−1,両モードは安定で,減衰時間 −1/s は 6.0s,3.7s.

  1. 対称なら各電流は I0/2.P0=I02R0/4,B=H−αP0 とすると

Chdθdt=P0−Bθ,θ=P0B(1−e−Bt/Ch)(B≠0)

B=0 では θ=P0t/Ch.有限の定常温度は B>0 のときだけで,Ic=2H/(αR0)=1.4A.I0>Ic では指数的に増温する.実際には放射,抵抗の非線形性,融解が模型を変える.線形化には α|δθ|/(1+αθ∗) が十分小さく,電気応答時間と熱応答時間の比も十分小さいことを要する.

総合演習 11

東京大 1999 後期(改題) ★★★★☆

電子捕獲の反跳が特性線を広げる

原子番号18,質量数37の模型原子 X が,内殻電子を捕獲して娘原子 Y とニュートリノを作ります.X は静止し,ニュートリノは質量0,娘原子の質量は M とします.電子配置を固定したとき,ニュートリノと反跳に分かれるエネルギーは Q です.娘原子が止まる前に,電子が n=2 から空席の n=1 へ移り光子を出します.自然幅は無視します.

有効核電荷を ze=(ZY−1)e とし,ボーア模型の準位を En=−EHz2/n2,EH=13.6eV とします.Mc2=37×931.5MeV,Q=0.75MeV,hc=1.24×103eVnm,1MeV=106eV を用います.

  1. Y の原子番号・質量数,準位差 ΔE,反跳を無視した光子の波長を求めよ.

  2. ニュートリノのエネルギー Eν と娘原子の反跳を,Q/(Mc2) の必要な次数まで求めよ.

  3. 捕獲直後の娘原子の速度を w,光子の単位方向を n,両者の角を θ とします.保存則から光子エネルギー Eγ を求め,最大値と最小値の差を求めよ.

  4. 分光器のエネルギー分解能が 0.010eV なら,反跳補正と線の広がりのどちらを見分けられるか.近似の適用条件も述べよ.

静止したXの電子捕獲で,ニュートリノと娘原子Yが反対向きに動く.下段は娘原子が止まる前の電子遷移で,捕獲直後の娘原子の速度wと光子の単位方向nのなす角θを示す. 静止したXの電子捕獲で,ニュートリノと娘原子Yが反対向きに動く.下段は娘原子が止まる前の電子遷移で,捕獲直後の娘原子の速度wと光子の単位方向nのなす角θを示す.
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考え方

捕獲と遷移を分け,娘原子は非相対論的,ニュートリノと光子は E=pc とする.

  1. 陽子が電子を捕獲して中性子になり ZY=17,AY=37,z=16.従って ΔE=E2−E1=3EH162/4=2.61×103eV,λ=hc/ΔE=0.475nm.有効核電荷は遮蔽を定数にまとめた仮定である.

  2. 娘原子とニュートリノの運動量は反対向きで,大きさは p=Eν/c.従って

Q=Eν+Eν22Mc2,Eν≃Q−Q22Mc2

2次項に Eν≃Q を代入した.反跳は Kν≃Q2/(2Mc2)=8.2eV,w/c=Eν/(Mc2)≃2.2×10−5.Q は後の遷移を含まない.

  1. 放出後の運動量は Mw−(Eγ/c)n.慣性質量の変化を無視すると

ΔE+12Mw2=Eγ+|Mw−(Eγ/c)n|22M,ΔE=Eγ(1−wccos⁡θ)+Eγ22Mc2

補正項に Eγ≃ΔE を入れれば

Eγ≃ΔE−ΔE22Mc2+ΔEwccos⁡θ

前方放出が最大,後方が最小で,差は 2ΔEQ/(Mc2)=0.11eV.静止原子からの光子の反跳補正は ΔE2/(2Mc2)=9.9×10−5eV である.

  1. 反跳補正は分解能より小さく,幅は分解能より大きい.他の広がりを無視すれば,幅を見分けられる.補正は ΔE/(Mc2),幅はより大きい Q/(Mc2) で決まる.両量と w/c が十分小さいことが近似条件である.

総合演習 12

東京大 2003 後期(改題) ★★★★★

気体が支える電極の限界電圧

平行板コンデンサーの上側電極を断面積 S の気密ピストンにします.電極間隔を d,封入理想気体の体積を Sd,外圧を pe 一定とします.ピストンの重さ,摩擦,端の場,装置の熱容量を無視します.気体の誘電率を ε0 と近似し,容量は C=ε0S/d.初め電圧0で d=d0,気体は pe,T0 です.電圧をゆっくり増し,接触・絶縁破壊は除きます.

  1. 電圧一定での引力を,電源の仕事を含めて導け.

  2. 気体を T0 に保ちます.y=d/d0,β=ε0V2/(2ped02) でつり合いを表し,安定な間隔と限界電圧を求めよ.変位も等温です.

  3. y=0.80 までの圧縮で,放出熱,電場エネルギー,電源の仕事 ∫VdQ を peSd0 を単位として求め,収支を確かめよ.

  4. 同じ初状態から可逆断熱で圧縮します.1<γ<2 で限界間隔・電圧を導き,γ=5/3 で等温の限界電圧との比と限界温度を求めよ.

断面積Sの上側電極は気密ピストンで,下側電極は固定される.外圧はpe,電極間隔はd,気体の体積はSd,誘電率はε0である.電圧Vの電源と,等温操作で接触する温度T0の熱源を示す. 断面積Sの上側電極は気密ピストンで,下側電極は固定される.外圧はpe,電極間隔はd,気体の体積はSd,誘電率はε0である.電圧Vの電源と,等温操作で接触する温度T0の熱源を示す.
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考え方

電源を含めて力を求め,圧力と引力の間隔依存を競わせる.

  1. 電圧一定なら U=CV2/2,dQ=VdC,電源の仕事 VdQ=V2dC の半分が場の増分 dU,残りが電気力の仕事なので

Fddd=VdQ−dU=12V2dC,Fd=−ε0SV22d2
  1. 等温の p=pe/y から外向き合力とつり合いは

F=peS(1y−1−βy2),y2−y+β=0

つり合いで ∂F∂d=peS(1−2y)/(d0y2).安定な枝は y=(1+1−4β)/2>1/2,小さい根は不安定.限界は βc=1/4,dc=d0/2,Vc=d0pe/(2ε0).限界を超すとつり合いはない.

  1. E0=peSd0 とおく.気体の内部エネルギー変化0より,放出熱は気体への仕事 −∫pSdd=−E0ln⁡y,有効数字2桁では 0.22E0.β=y−y2 を用いると

U=12CV2=E0βy=E0(1−y)=0.20E0

Q=S2ε0pe(1−y)/y,V=d02pe/ε0y(1−y) から VdQ=−E0dy/y.従って

Ws=−E0∫10.80dyy≃0.22E0

外圧の仕事 Wext=E0(1−y)=0.20E0 を含め,Ws+Wext=ΔU+Qout と一致する.

  1. 断熱では p=pey−γ なので β=y2−γ−y2.初状態の安定な枝はこの関数の極大までである.

dβdy=(2−γ)y1−γ−2y=0,yc=(2−γ2)1/γ,βc=γ2yc2−γ

固定電圧で合力を微分し,つり合い条件を入れると ∂F∂d=(peS/d0)[(2−γ)y−γ−1−2/y] で,y>yc なら負.限界電圧は d02peβc/ε0.γ=5/3 では yc=0.341,βc=0.582,電圧比は 0.582/0.25=1.53,Tc/T0=yc1−γ=2.05.γ→1 で等温に戻る.圧力一様には音の横断時間と操作時間の比,断熱には操作時間と熱漏れ時間の比,端の場の無視には d/S が十分小さいことを要する.

04東大後期の過去問を発展させる(4)

東大後期の軌道衝突,虹,移動波源,回路の切り替えを,保存則と観測の4題に組み直しました.第5〜10章の力学,第14章の測定,第21・23章の回路,第25・27章の波と光を使います.最後は最適方向,波の広がり,遅れ,共振を調べます.

総合演習 13

東京大 2001 後期(改題) ★★★★★

捕獲後の軌道と衝突熱

半径 R,質量 M の球形天体のまわりを,質量 m の宇宙機が半径 r0>R の円軌道で回ります.反動,空気抵抗,破片との相互重力を無視します.円軌道の速さを v0,外向き・進行方向の単位ベクトルを er,et とします.質量 ηm の破片が速度 u=v0(−aer+bet) で衝突して付着します.a,η>0,衝突時間は短いとします.

  1. v0,衝突後の速度,単位質量あたりの軌道エネルギー ϵ と角運動量 h を求めよ.A=ηa/(1+η),B=(1+ηb)/(1+η)>0 とする.

  2. 束縛軌道の条件と近点・遠点距離を求めよ.保存則から半径方向速度0の位置の方程式を導き,天体に衝突しない条件も示せ.

  3. 衝突のエネルギー損失を求めよ.η=0.10,a=0.60,b=−0.80,r0=2R,R=6.0×106m,GM=3.6×1014m3s−2 で,軌道の安全性と損失の宇宙機の初運動エネルギー比を求めよ.

  4. この小問では入射方向の制限 a>0 を外し,破片の速度を自由に選べるものとします.捕獲で脱出させる最小の破片速度と最適方向を求めよ.η→0 の極限も説明せよ.

半径R,質量Mの天体を,質量mの宇宙機が半径r0の円軌道で回る.宇宙機の速さv0,外向きer,進行方向etを示す.破片の質量はηm,入射速度はu=v0(−a er+b et).矢印の向きは小問 (3) のb=−0.80の場合である. 半径R,質量Mの天体を,質量mの宇宙機が半径r0の円軌道で回る.宇宙機の速さv0,外向きer,進行方向etを示す.破片の質量はηm,入射速度はu=v0(−a er+b et).矢印の向きは小問 (3) のb=−0.80の場合である.
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考え方

衝突では運動量,その後は中心力の保存則を使う.

  1. 向心力から v02=GM/r0.天体の力積を無視して

v+=mv0et+ηmum(1+η)=v0(−Aer+Bet),ϵ=v022(A2+B2−2),h=r0v0B

衝突点は転回点ではない.

  1. χ=2−A2−B2>0 が束縛条件.接線速度は h/r なので

ϵ=12(drdt)2+h22r2−GMr

drdt=0,z=r/r0 を代入して χz2−2z+B2=0.従って

e=1−χB2,rp=r0(1−e)χ=r0B21+e,ra=r0(1+e)χ

判別式は (1−B2)2+A2B2≥0.初め近点へ進む.非接触条件は rp>R.

  1. 重力位置エネルギーは不変で,相対運動の損失は

Qh=12mη1+η|v0et−u|2=mηv022(1+η)[a2+(b−1)2]

数値は v0=5.5×103ms−1,A=0.0545,B=0.836,e=0.304,rp=0.536r0=1.07R で衝突を免れる.損失の比は

Qhmv02/2=η1+η[a2+(b−1)2]=0.33

軌道の安全性と内部損傷は別である.

  1. 破片の速さを u とすると |v+|≤(v0+ηu)/(1+η).等号は同じ進行方向から追い付く場合.脱出速度 2v0 に達する最小値は

umin=2(1+η)−1ηv0

衝突点が近点の放物線軌道となる.数値は umin≃3.0×104ms−1.η→0 では (2−1)v0/η と発散するが,極端には u/c が小さいという条件が破れる.衝突時間と周期の比,物体寸法と r0 の比も十分小さいことを要する.

総合演習 14

東京大 2003 後期(改題) ★★★★★

虹の明るい縁と光の広がり

半径 a,屈折率 1<n<2 の透明球へ,空気中から平行な単色光を入射させます.入射角・屈折角を θ1,θ2,中心軸からの入射距離を b=asin⁡θ1 とします.球内で1回反射して出る光だけを考え,入射方向からの偏角を D,反太陽方向からの角距離を ρ=π−D とします.経路の割合 w は一定とし,吸収を無視します.入射強度 Iin は一様です.

  1. スネルの法則と幾何から D=π+2θ1−4θ2 を導き,最小偏角の入射角と角半径 ρ∗ を求めよ.

  2. n=1.330,1.340 の各 ρ∗ を求め,どちらの色が外側か説明せよ.

  3. 最小偏角の近くで D−D∗≃K(θ1−θ1∗)2/2 とする.K と,D∗<D<D∗+δ へ出る光量の入射光量 πa2Iin に対する比を求めよ.角度分布が発散しても積分は有限と示せ.

  4. 波動による角度の広がりを,本問では δw∼(λ/a)2/3 という見積もりを使ってよい.a=0.50mm,λ=550nm で2色の角半径の差と比べよ.(3)を δ=10−3rad まで使えるか検討せよ.

半径a,屈折率nの透明球へ平行光が入射する.中心軸から入射光までの距離b,入射点の法線に対する入射角θ1と屈折角θ2を示す.光線は球内で1回反射して出射し,矢印が進行方向を表す. 半径a,屈折率nの透明球へ平行光が入射する.中心軸から入射光までの距離b,入射点の法線に対する入射角θ1と屈折角θ2を示す.光線は球内で1回反射して出射し,矢印が進行方向を表す.
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考え方

方向変化の停留点を探し,入射面積から光量を数える.

  1. 入射・出射でそれぞれ θ1−θ2,内部反射で π−2θ2 だけ向きが変わるので,合計が指定の D.sin⁡θ1=nsin⁡θ2 から

q=dθ2dθ1=cos⁡θ1ncos⁡θ2,dDdθ1=2−4q

停留点の q=1/2 をスネルの法則と合わせると

sin2⁡θ1∗=4−n23,θ2∗=arcsin⁡sin⁡θ1∗n,ρ∗=4θ2∗−2θ1∗

q は入射角とともに 1/n から0へ減るため,唯一の最小である.

  1. 代入すると n=1.330 で ρ∗=42.52∘,1.340 で 41.07∘.屈折率の小さい色が外側へ来る.

  2. dqdθ1=q(−tan⁡θ1+qtan⁡θ2) より

K=−4dqdθ1∫|∗=2tan⁡θ1∗−tan⁡θ2∗=32tan⁡θ1∗>0

角度帯に対応する入射角は θ1∗±Δθ1,Δθ1=2δ/K.入射光の環状面積から

dP=2πwIinbdb=2πwIina2sin⁡θ1cos⁡θ1dθ1

両側の寄与を積分して

Pδπa2Iin≃4wsin⁡θ1∗cos⁡θ1∗2δK

微分した角度分布は (D−D∗)−1/2 に比例するが,積分は δ に比例し,有限である.光の集中が縁を明るくする.

  1. δw∼(550×10−9/(0.50×10−3))2/3=1.1×10−2rad.2色の差 1.45∘=2.52×10−2rad はこれより大きく,この模型では縁を分けられる.ただし δ=10−3rad は広がりより小さいので(3)の定量計算には使えない.幾何光学には λ/a が十分小さく,縁では δ≫δw も必要.二次展開には 2δ/K が十分小さく,範囲の端から離れることを要する.

総合演習 15

東京大 2005 後期(改題) ★★★★☆

往復する音源の位相と周波数

静かな空気中で点音源を xs(s)=Acos⁡Ωs に従って往復させます.s は発音時刻で,音源は一定振動数 f0 で鳴ります.観測点は x=D>A,受信時刻は t です.音速を v,β=AΩ/v<1 とします.反射,風,非線形性と反作用を無視し,外部装置で動かします.

  1. 両時刻を関係付け,位相 2πf0s から観測振動数を求めよ.最大・最小と変調の周期も示せ.

  2. 位相を 2πf0[t−(D−xs(t))/v] とする誤りを説明せよ.β の1次までの正しい振動数を求め,この置き換えの振幅・位相の誤差を示せ.v=340ms−1,D=17.0m,Ω=5πs−1 で位相誤差も求めよ.

  3. β→1 で最大振動数が大きくなる理由を波面の到達間隔から説明し,β>1 へ単純に延長できるか述べよ.

音源はxs(s)=A cos Ωsに従い−AからAの間を往復し,一定振動数f0で鳴る.発音時刻sの音源位置xs(s)と,D>Aにある観測点を示す.音速はvで,寸法線は発音位置から観測点までの伝播距離を表す. 音源はxs(s)=A cos Ωsに従い−AからAの間を往復し,一定振動数f0で鳴る.発音時刻sの音源位置xs(s)と,D>Aにある観測点を示す.音速はvで,寸法線は発音位置から観測点までの伝播距離を表す.
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考え方

到達時間を発音時刻で微分して周波数を求める.

  1. 伝播距離から

t=s+D−Acos⁡Ωsv,dtds=1+βsin⁡Ωs>0,fobs=12πddt(2πf0s)=f01+βsin⁡Ωs

最大は f+=f0/(1−β),最小は f−=f0/(1+β).Ts=2π/Ω とすれば t(s+Ts)=t(s)+Ts,周期も Ts.

  1. 誤りは受信時刻の位置を使う点である.τ=t−D/v とおけば s=τ+(A/v)cos⁡Ωs.β の1次まで

s≃τ+Avcos⁡Ωτ,fobs≃f0[1−βsin⁡Ω(t−D/v)]

誤った式の微分は f0(1−βsin⁡Ωt).1次の振幅は一致するが,位相を ΩD/v=π/4 誤る.有限の β では極値の分母 1∓β と,誤った極値 f0(1±β) の差が2次から現れる.

  1. 発音間隔 ds に対し dt=(1−x˙s/v)ds,ここで x˙s=dxsds.音速へ近づくと間隔が縮む.β=1 では一部で微分が0になり,β>1 では負の区間が生じ,発音時刻が多価となる.波面が重なるため,一価の周波数にはできない.1次展開には β が十分小さく,遅れを捨てるには ΩD/v も十分小さいことを要する.音波の線形近似には圧力変動と静圧の比も小さいことを要する.

総合演習 16

東京大 2007 後期(改題) ★★★★☆

自由振動から回路を決め,共振を予測

容量 C のコンデンサーを,電圧 Vb=4.00V の電源で十分充電し,電源を外して抵抗 R,自己インダクタンス L=0.100H のコイルとコンデンサーだけの直列回路へ切り替えます.この時を t=0,コイルの初期電流を0とします.素子は線形で,抵抗だけが散逸し,放電向きを電流 I の正方向,最初に正だった極板の電荷を q,電位差を VC=q/C とします.

  1. 切り替え後の方程式を立て,弱減衰の q(t),I(t) を,複素指数関数 est と初期条件から求めよ.

  2. 次の正の山から R,C を推定し,3点目を照合せよ.初電荷と全発熱も求めよ.

山の時刻(s)

VC(V)

0

4.000

0.006315

2.127

0.012630

1.131

  1. 同じ回路を Va(t)=V0cos⁡ωt,V0=2.00V の電源で駆動する.複素インピーダンスで定常電流と平均電力を求めよ.電流振幅最大の角振動数を求めよ.

  2. コンデンサー電圧振幅が最大の角振動数と振幅を求め,自由振動および電流共振と比較せよ.

上段は充電後に電源を外した抵抗R,コイルL,コンデンサーCの直列放電回路である.最初に正だった極板の電荷q,電位差VC,放電向きを正とする電流Iを示す.下段は同じ素子を交流電源Va(t)=V0 cos ωtで駆動する配置で,電流と電荷の符号の対応を保つ. 上段は充電後に電源を外した抵抗R,コイルL,コンデンサーCの直列放電回路である.最初に正だった極板の電荷q,電位差VC,放電向きを正とする電流Iを示す.下段は同じ素子を交流電源Va(t)=V0 cos ωtで駆動する配置で,電流と電荷の符号の対応を保つ.
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考え方

減衰と周期を測定から求め,線形回路の複素振幅で応答を予測する.

  1. I=−dqdt なので Ld2qdt2+Rdqdt+q/C=0.est を代入して Ls2+Rs+1/C=0.α=R/(2L),ω0=1/LC とすれば s=−α±iωd,ωd=ω02−α2.α<ω0 で複素解の実部を取り,q0=CVb,dqdt(0)=0 を使うと

q=q0e−αt(cos⁡ωdt+αωdsin⁡ωdt),I=q0ω02ωde−αtsin⁡ωdt
  1. 電圧極大では I=0.正の山の間隔 Td=2π/ωd,比 e−αTd から

ωd=2π0.006315s=9.95×102s−1,α=−ln⁡(2.127/4.000)0.006315s=1.00×102s−1

R=2Lα=20.0Ω,C=1/[L(ωd2+α2)]=1.00×10−5F.次の山は 4.000(2.127/4.000)2V=1.131V と一致する.q0=CVb=4.00×10−5C,Qd=CVb2/2=8.00×10−5J.dqdt を掛ければ ddt(LI2/2+q2/(2C))=−RI2 より,全エネルギーが熱になる.

  1. 電圧と電流を V^eiωt,I^eiωt の実部とし,V^=V0 と選ぶ.

Z=R+iωL+1iωC=R+iX,X=ωL−1ωC,I^=V0/Z

従って I(t)=Re⁡(I^eiωt),⟨P⟩=R|I^|2/2=RV02/[2(R2+X2)].電流最大は X=0 の ωI=ω0=1.00×103s−1.

  1. V^C=I^/(iωC) から

|V^C|=V0(1−LCω2)2+(RCω)2

分母の2乗の微分は 2ω[−2LC(1−LCω2)+R2C2] だから

ωC=ω02−2α2=9.90×102s−1<ωd<ωI

最大電圧振幅は VC,max=V0ω02/(2αωd).測定値から求めた丸め前の R,C を使うと 10.0V となる.非零の電圧共振には ω02>2α2 が必要.集中定数近似には回路寸法 ℓc に対し ωℓc/c が十分小さく,温度による抵抗の相対変化も十分小さいことを要する.

05東大後期の過去問を発展させる(5)

東大後期の未使用原題から,円錐面の運動,音が作る回折格子,相互誘導,小孔カメラを組み直しました.第6〜10章,第14〜16章,第23・25・27・29章を使います.最後は近似の限界と最適条件を調べます.

総合演習 17

東京大 2007 後期(改題) ★★★★☆

円軌道に戻っても,同じ場所には戻らない

頂点を下にした固定円錐の内面で,質量 m の小球を動かします.半頂角は 0<α<π/2,軸からの距離を r,方位角を ϕ とし,高さは z=rcot⁡α です.鉛直軸の円錐面は十分広いものとします.摩擦・空気抵抗・球の大きさを無視し,重力加速度を g とします.

  1. 半径 r0 の水平円運動の角速度 ω0,垂直抗力 N0,鉛直軸まわりの角運動量 J を求めよ.

  2. 円運動に母線方向の外向き速度 u を追加します.有効ポテンシャルを求め,小さい u での半径振動の角振動数 Ω,振幅 ε,一往復の方位角増分 Δϕ を求めよ. α=30∘,r0=0.30m,u=0.10ms−1,g=9.8ms−2 で近似を検算せよ.

  3. 小振幅極限で半径が q 回振動する間に p 回転して軌道が閉じる条件を整数 p,q で表せ.30∘ で閉じるか.有限振幅にも同じ条件を使えるか.

円錐面の断面と上面に,α,r₀,接線速度と母線方向の追加速度uを示す. 円錐面の断面と上面に,α,r₀,接線速度と母線方向の追加速度uを示す.
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考え方

角運動量保存と母線方向の慣性を使う.

  1. N0sin⁡α=mg,N0cos⁡α=mr0ω02 より

ω02=gcot⁡αr0,N0=mgsin⁡α,J=mr02ω0
  1. dzdt=cot⁡αdrdt,dϕdt=J/(mr2) を運動エネルギーに代入すると

E=m2sin2⁡α(drdt)2+U(r),U(r)=mgrcot⁡α+J22mr2

追加直後の半径速度は usin⁡α である.

U′(r0)=0,U″(r0)=3mgcot⁡α/r0.r=r0+δr としてエネルギー式を微分・線形化すると

msin2⁡αd2δrdt2=−U″(r0)δr,Ω=3sin⁡αω0,δr=usin⁡αΩsin⁡Ωt

従って ε=usin⁡α/Ω.方位角速度は ω0(1−2δr/r0+⋯).一往復の積分で1次の項は消え,Δϕ→2π/(3sin⁡α).ε≃7.7×10−3m,Δϕ≃7.26rad.ε/r0≃0.026 で近似はよい.

  1. qΔϕ=2πp より条件は 1/(3sin⁡α)=p/q.30∘ では 2/3 が無理数なので,振動と回転は有限回でそろわない.有限振幅では周期と平均角速度が変わり,再計算を要する.u=0 の円運動そのものは一回転で閉じる.Ω2 は時間の逆二乗.適用条件は 1≫ε/r0 である.

総合演習 18

東京大 1997 後期(改題) ★★★★☆

音の格子で気体の熱容量を測る

透明な希薄理想気体に振動数 fs,波数 ks の音の定常波を作り,屈折率を n=n0+δn0cos⁡ksycos⁡ωst,ωs=2πfs とします.波長 λ の光を y 軸に垂直に通し,焦点距離 F のレンズの後側焦点面で観測します.気体内の距離は d,β=2πdδn0/λ です.照明幅は音の波長より十分広く,透過光の複素振幅は exp⁡[iβcos⁡ksycos⁡ωst] とします.1≫|β| とし,吸収,音の減衰,気体内での光線の曲がりを無視します.

  1. 1次まで展開し,左右の一次回折光の位置 ±x1,入射光に対する強さの比,強さの変動の振動数を求めよ.格子の周期が音の半波長ではない理由も述べよ.

  2. fs=1.00×105Hz,λ=6.00×10−7m,F=1.00m で下表を得ました.モル質量を Mg=0.0300kgmol−1,気体定数 R=8.31Jmol−1K−1 とします.x1−2 を直線化に使って音速と比熱比 γ を求め,両端で決めた模型を中央の点で検算せよ.

T(K)

x1(mm)

250.0

0.19270

300.0

0.17591

350.0

0.16286

  1. F の相対標準不確かさが1 %,他は無視できるとします.γ の不確かさを求め,等温模型 γ=1 を判別できるか説明せよ.

気体セル,光,レンズ,焦点面に,音のy方向,d,F,測定位置±x₁を示す. 気体セル,光,レンズ,焦点面に,音のy方向,d,F,測定位置±x₁を示す.
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考え方

音は小振幅の可逆断熱圧縮,γ は一定とする.

  1. 指数を展開し,cos⁡ksy=(eiksy+e−iksy)/2 を使うと

1+iβ2cos⁡ωst(eiksy+e−iksy)

左右の波の角度は sin⁡θ=±ksλ/(2π)=±λ/λs.v=fsλs,G=Fλfs として近軸近似を使えば

x1=G/v,I±1Iin=β24cos2⁡ωst=β28(1+cos⁡2ωst)

位置は固定,強さは 2fs で変動する.半波長で屈折率変動の符号が反転するので,周期は λs.

  1. v=G/x1 より音速は順に約 311,341,368ms−1.断熱圧縮から v2=γRT/Mg.ゆえに

x1−2=γRMgG2T,γ=MgRv32−v12T3−T1≃1.40

中央では x1≃0.17591mm を予測し,表と一致する.

  1. (2)の式で γ∝F2.一次の伝播は δγ/γ=2δF/F=0.020.従って δγ=0.028.1との差0.400は不確かさの約14倍で,等温模型と区別できる.γ は無次元.近軸には λ/λs≃2×10−4,位相の展開には 1≫|β|,線形音波には密度の相対変動が小さいことを要する.

総合演習 19

東京大 1994 後期(改題) ★★★★★

動かしているのに電流が消える振動数

水平レールに長さ ℓ,質量 m の導体棒を渡し,ばね定数 k のばねでつなぎます.抵抗は R,自己インダクタンスは L,レール面に垂直な一様磁場は B です.自然長からの変位を x,棒を正方向に押す電流を I,bB=Bℓ とします.摩擦・回路容量・放射を無視し,L は位置によらず一定とします.

相互インダクタンス M>0 の固定一次コイルを,電流源で I1=−E0sin⁡ωt/(ωM) に保ちます.誘導起電力は −MdI1dt です.定常応答です.

  1. 連立方程式を立て,x,I を,複素振幅 X,Y に eiωt を掛けた実部で表し,両振幅を求めよ.

  2. ω0=k/m での電流と棒の運動,電流振幅最大の ωc を求めよ.E0 は振動数を変えても一定とします.

  3. m=0.020kg,k=2.0Nm−1,L=0.040H,R=0.40Ω,bB=0.20Tm,E0=0.020V で,ωc,そこでの棒の振幅と平均発熱率を求めよ.

  4. エネルギー収支を導き,電源の平均仕事率と発熱率を照合せよ.R→0 での ωc の定常公式を,無抵抗の実験に使えるか.

ばね付き棒とレール,R,L,垂直な磁場B,電流源につながる固定一次コイルと結合Mを描く.xとIの正方向を示す. ばね付き棒とレール,R,L,垂直な磁場B,電流源につながる固定一次コイルと結合Mを描く.xとIの正方向を示す.
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考え方

複素数で連立し,仕事率で収支を検算する.

  1. 誘導の法則とローレンツ力より

LdIdt+RI+bBdxdt=E0cos⁡ωt,md2xdt2+kx=bBI

D=k−mω2 とおく.コイルのインピーダンスは iωL なので (R+iωL)Y+iωbBX=E0,DX=bBY.H=D(R+iωL)+iωbB2 として連立すると

Y=E0DH,X=bBE0H
  1. D=0 では Y=0, x=E0sin⁡ω0t/(ω0bB).棒の運動起電力が誘導による駆動起電力を打ち消す.D≠0 では

Z=R+iω(L+bB2D),|Y|≤E0R

虚部が0となる ωc=(k+bB2/L)/m で上限に達する.ω0 は機械系だけ,ωc>ω0 は磁気エネルギーも交換する連成系の振動数である.

  1. ωc=150rads−1≃12rads−1.D=−bB2/L より

I0=E0R=0.050A,A=LE0RbB=0.010m,P―=RI022=5.0×10−4W
  1. 電気の式に I,力学の式に v=dxdt を掛けて足すと

ddt(12LI2+12mv2+12kx2)=E0Icos⁡ωt−RI2

bBIv は内部の交換として消える.周期平均で左辺は0.一次へ返る電圧は MdIdt.周期の部分積分から電源の追加仕事率は

MI1dIdt―=−MIdI1dt―=E0Icos⁡ωt―=RI2―

一次の磁気エネルギーの平均変化も0である.R=0,ω=ωc では分母が0となり,有界な定常解はない.共鳴を初期条件から解く必要があり,極限は交換できない.bB2/L はばね定数の次元である.模型は回路寸法 ac,光速 c に対し 1≫ωac/c,棒が一様磁場内,抵抗の相対変化が小さい範囲で使う.

総合演習 20

東京大 1996 後期(改題) ★★★★★

いちばん細い像と,いちばん正確な位置測定

円孔の代わりに,振幅透過率 t(u,w)=e−(u2+w2)/(4s2) の吸収マスクを使います.軸上の単色点光源からマスクまでを a,マスクから検出面までを b,波長を λ,ko=2π/λ とします.検出座標は x,他方向も同形です.近軸で光路長を横座標の2次まで残し,x に依存しない因子を除く振幅は

ψ(x)=∫−∞∞exp⁡[−u24s2+ikou22a+iko(x−u)22b]du

Re⁡z>0 で ∫−∞∞e−zu2+qudu=π/zexp⁡[q2/(4z)] を使ってよいものとします.像の幅は規格化した |ψ|2 の標準偏差 σx です.

  1. σx2 を導き,幾何光学と回折の寄与を区別せよ.

  2. 最小幅 σ0 と対応する s0 を求めよ.a=0.80m,b=0.20m,λ=6.0×10−7m で計算し,遠方回折の条件 1≫kos02(1/a+1/b) を検査せよ.

  3. マスク面への単位面積・単位時間の光子到達率を一定の Φ,検出効率を η,露光時間を τ とします.全透過光を検出し,位置は独立です.検出数の相対的なゆらぎを無視できるほど多数の光子を検出するものとします.検出数の期待値 N と中心の標本平均の不確かさ δx=σx/N を求めよ.σx≤1.10σ0 の制約下で δx が最小となる s と,s0 に対する精度の比を求めよ.

点光源,マスク,検出面にa,b,u,xを示す.透過率分布を添える. 点光源,マスク,検出面にa,b,u,xを示す.透過率分布を添える.
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考え方

振幅を積分してから2乗する.像の幅と中心位置の精度を分ける.

  1. H=1/a+1/b,z=1/(4s2)−ikoH/2 とし, q=−ikox/b を使うと

|ψ(x)|2∝exp⁡[−ko2x22b2Re⁡(1/z)]

σx2=b2/[ko2Re⁡(1/z)].[Re⁡(1/z)]−1=1/(4s2)+ko2H2s2 より

σx2=(1+ba)2s2+b24ko2s2

第1項は直進光線の x=(1+b/a)u,第2項は回折である.

  1. A=1+b/a,D=b/(2ko) とおくと σx2=A2s2+D2/s2.微分して 2A2s−2D2/s3=0 より

s02=DA=bλ4πA,σ02=2AD=Abλ2π

s0=8.7×10−5m,σ0=1.5×10−4m.kos02H=1/2 なので2次位相は捨てられない.

  1. 透過確率の面積積分は ∫0∞2πre−r2/(2s2)dr=2πs2 なので

N=Ks2,K=2πηΦτ,δx2=1K(A2+D2s4)

N≫1 で検出数を期待値に置き換える.δx は s とともに減るので,制約内の最大開口を選ぶ.qs=s2/s02 とすると制約は qs+qs−1≤2×1.102.解くと

qs,max=1.102+1.104−1≃1.891,sopt=s0qs,max≃1.2×10−4m

不確かさの比は δxopt/δx0=1.10/qs,max≃0.800.開口を広げると検出数が増し,中心の精度は上がる.分散の次元は長さの2乗.近軸には s/a,s/b,σx/b が小さいことに加え,4次位相も小さいことが必要である.今回は長さ比が 10−3 以下,無次元の4次位相の尺度 ko(s4/a3+σx4/b3) も 10−5 以下である.

06力学の総合問題(1)

回転する装置,天体の衝突,光の圧力の測定,棒の衝突の4題です.第5・6・8・10章の保存則を土台に,第7章の振動,第14章の測定,第25章の波,第26・29章の光を組み合わせます.拘束と境界の条件から,模型がどこまで使えるかも調べます.

総合演習 21

オリジナル ★★★★☆

筐体が回ると内部の時計はどう進むか

鉛直な同軸の筐体と回転子の慣性モーメントは J0,J,地上からの角度は β,α です.ねじりばねのエネルギーは κ(α−β)2/2 です.軸の位置は固定し,摩擦を無視します.重力の軸まわりのトルクは0です.S=J+J0 とし,ドットは時間微分です.

筐体,回転子,ばねを上から描く.角度 \(\alpha,\beta\) と地上へつなぐばね \(K\) を示す. 筐体,回転子,ばねを上から描く.角度 \(\alpha,\beta\) と地上へつなぐばね \(K\) を示す.
  1. 筐体固定時の周期 T0 と,自由な系の相対角 q=α−β の周期 T を求めよ.自由な系を α(0)=a,β(0)=0,両角速度0から放した後の両角度も求めよ.

  2. 自由な場合のエネルギーを相対運動で表せ.J0=4J の時計が,内部振動の1周期を T0 と数えるとき,経過時間を実際の何倍と表示するか.

  3. 筐体を地上へねじりばねでつなぎ,Kβ2/2 を加える.基準角振動数と,その2乗の K/κ の1次までの近似を求めよ.自由時の周期はどちらに受け継がれるか.

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考え方

摩擦のない線形ばねの模型で,総角運動量から相対角の慣性を求める.

  1. 固定時は Jα¨=−κα より T0=2πJ/κ.自由な場合は

Jα¨=−κq,J0β¨=κq,q¨=−κ(1J+1J0)q

したがって Jr=JJ0/S,Ω=κ/Jr とおけば T=2πJr/κ,q=acos⁡Ωt.初めの総角運動量が0なので Jα+J0β=Ja は一定であり,

α=JaS+J0aScos⁡Ωt,β=JaS(1−cos⁡Ωt)
  1. 総角運動量0より α˙=J0q˙/S,β˙=−Jq˙/S.運動エネルギーに代入して

E=12Jrq˙2+12κq2=12κa2

J0=4J では T/T0=4/5.実時間 t の表示は tT0/T,約 1.12 倍に進む.

  1. 筐体へ −Kβ を加え,α=Acos⁡ωt,β=Bcos⁡ωt を代入すると

(κ−Jω2)A−κB=0,−κA+(κ+K−J0ω2)B=0

D=κS+JK,x=ω2 とおけば,非零の振幅がある条件と根は

JJ0x2−Dx+κK=0,ω±2=D±D2−4JJ0κK2JJ0

K=0 の根は0と Ω2.根の積 κK/(JJ0) より ω−2≃K/S.根の和 D/(JJ0) から引き,ϵ=K/κ の1次まで求めると

ω−2≃KS,ω+2≃κSJJ0+KJJ0S

低い振動は A≃B の全体回転,高い振動は JA+J0B≃0 の内部振動で,時計の周期は後者に受け継がれる.展開には 1≫ϵ が必要で,K→0 で振動数は0と Ω に戻る.

総合演習 22

オリジナル ★★★★☆

重力が広げる天体の衝突断面積

質量・半径 M,R の球形天体へ,質量・半径 m,r の天体が遠方の相対速さ u で接近します.相対位置の原点と遠方の軌道の直線との距離を衝突径数 b とします.接触前は万有引力だけが働き,変形,自転,散逸を無視します.中心間距離 d=R+r で衝突と数えます.

遠方の相対軌道の直線,速さ \(u\),衝突径数 \(b\),曲がった軌道を描く.接触距離 \(R+r\) を示す. 遠方の相対軌道の直線,速さ \(u\),衝突径数 \(b\),曲がった軌道を描く.接触距離 \(R+r\) を示す.
  1. 保存則から衝突する最大の b と断面積 σ を求めよ.標的を固定した計算との違いも示せ.

  2. 同じ m,r,u の天体が数密度 n で一様に分布し,衝突は独立とする.時間 dt の衝突確率を Γdt として,未衝突確率,平均待ち時間,衝突確率が半分となる時間を求めよ.(M,m)=(2.0,1.0)×1030kg,(R,r)=(8.0,5.0)×108m,u=8.0×104ms−1,n=2.0×10−40m−3,G=6.67×10−11m3kg−1s−2,1yr=3.16×107s で数値も求めよ.

  3. 数密度を半分ずつ,速さ u/2,3u/2 の集団に分けると衝突率はどう変わるか.単一速さの場合の衝突率を最小にする速さも求め,低速ほど衝突が減るとは限らない理由を述べよ.

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考え方

無散逸の孤立二体運動を解き,断面積と遠方の流束を掛ける.

  1. 換算質量は mr=Mm/(M+m).接触ぎりぎりの軌道は最近接距離 d で半径方向の速度0となる.接線方向の速さを vd とすると

12mru2=12mrvd2−GMmd,mrbu=mrdvd

vd2=u2+2G(M+m)/d を角運動量の式へ代入して

bmax2=d2(1+2G(M+m)du2),σ=πd2(1+w2u2),w2=2G(M+m)d

b≤bmax で接触する.固定標的の GM は G(M+m) に変わる.

  1. 遠方の体積 σudt に含まれる個数より Γ=nσu=nπd2(u+w2/u).未衝突確率は dP0dt=−ΓP0,P0(0)=1 より P0=e−Γt.平均待ち時間は ∫0∞tΓe−Γtdt=1/Γ,半分になる時間は t1/2=ln⁡2/Γ.

数値は Γ=4.2×10−15s−1 より,平均 7.6×106yr,半分になる時間 5.3×106yr.

  1. それぞれの nσv を足すと

Γmix=nπd22[u2+3u2+w2(2u+23u)]=nπd2(u+4w23u)

逆数の平均が変わり,率は約 1.3 倍になる.dΓdu=nπd2(1−w2/u2) が負から正に変わる u=w で最小.低速側では重力集束が流束の減少を上回る.孤立二体近似には 1≫nbmax3 が必要で,u→0 の発散を延ばせるとは限らない.今回は約 1.5×10−10 である.

総合演習 23

オリジナル ★★★★★

光の運動量と温度上昇でパルスを測る

慣性モーメント J,ねじり定数 κ の振り子に,軸から距離 d の小鏡を付けます.ω=κ/J,T=2π/ω とします.初め静止した鏡へ垂直に,腕とも垂直な光パルスを入射します.エネルギー E の反射率は R,透過は0で,吸収分は熱容量 Ch の受光部を温めます.小角で腕の変化,減衰,熱損失,熱変形トルク,鏡の運動による光のエネルギー変化を無視します.光の運動量はエネルギーを c で割った値です.

吊り線,腕の長さ \(d\),鏡への垂直入射と反射,温度計を描く.時間幅 \(\tau\) の一定パワーのパルスも添える. 吊り線,腕の長さ \(d\),鏡への垂直入射と反射,温度計を描く.時間幅 \(\tau\) の一定パワーのパルスも添える.
  1. 瞬間的な照射の角力積,角振幅 A,温度上昇 ΔT を求めよ.測定から E,R を決める式と,模型と両立する条件も導け.

  2. J=1.50×10−5kgm2,T=6.00s,d=0.0400m,Ch=10.0JK−1,c=3.00×108ms−1 とする.測定値 A=3.40×10−5rad,ΔT=0.240K から E,R を求めよ.独立な A,ΔT の標準不確かさが1 %,2 %で,他の量は正確とする.推定値の標準不確かさも求めよ.偏微分と各標準不確かさの積の2乗を足し,平方根を取ってよい.

  3. 同じエネルギーを時間幅 τ の一定パワーで与える.照射中の角度と消灯後の振幅,τ=T/3 の倍率,瞬間的な式の誤差が約1 %以下となる条件,τ=T の測定の限界を求めよ.

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考え方

小角で熱損失を除き,熱と角力積を連立する.有限時間の照射には復元トルクを入れる.

  1. 吸収光は (1−R)E/c,反射光は 2RE/c の運動量を渡す.角力積 Λ と熱量 H は

Λ=d(1+R)Ec,A=ΛJω,H=ChΔT=(1−R)E

B=cJωA/d=(1+R)E とおくと

E=B+H2,R=B−HB+H

正の E では B>0,0≤H≤B が 0≤R≤1 と同値である.

  1. B=4.0055J,H=2.400J より E=3.20J,R=0.251.不確かさは sB=0.01B,sH=0.02H なので

sE=12sB2+sH2=0.0313J,sR=2H2sB2+B2sH2(B+H)2=0.0105

後者には ∂R∂B=2H/(B+H)2,∂R∂H=−2B/(B+H)2 を用いた.振動エネルギーの比 Jω2A2/(2E)≃3.0×10−15 は,光のエネルギー変化を捨てる近似と整合する.

  1. N0=Λ/τ とおくと,照射中は Jθ¨+κθ=N0.初期値0より

θ(t)=N0κ(1−cos⁡ωt),θ˙(t)=N0ωκsin⁡ωt

消灯時の位置と速度から

Aτ=θ(τ)2+θ˙(τ)2ω2=2N0κ|sin⁡ωτ2|=ΛJω|sin⁡zz|,z=ωτ2

τ=T/3 の倍率は 33/(2π)=0.827.小さい z で sin⁡z/z≃1−z2/6 より,相対補正は (ωτ)2/24.約1 %以下には τ/T≤0.078 が目安になる.τ=T では消灯時に原点で静止し,熱だけでは E,R を分けられない.短時間近似には 1≫ωτ,全体には小角 1≫|θ| と小さい熱損失が必要である.

総合演習 24

オリジナル ★★★★★

異なる材料の棒を,波の往復時間で組み合わせる

断面積 S の細い棒1,2を滑らかな水平面で一直線に衝突させます.棒1は右向きの速さ u,棒2は静止し,端面は平らです.密度,ヤング率,長さは ρj,Yj,Lj.軸方向変位 ξ の微小ひずみと引張応力を ε=∂ξ∂x,σ=Yjε とする1次元模型です.横運動,塑性変形,散逸を無視し,接触は圧縮力だけを伝え,両外端は自由です.

棒1と棒2の長さ,断面積,初速度を描く.接触面と外側の自由端を区別する. 棒1と棒2の長さ,断面積,初速度を描く.接触面と外側の自由端を区別する.
  1. 縦波の速さ vj=Yj/ρj を導け.Zj=ρjvj として,反射波が戻る前の共通接触速度 v∗ と圧縮応力の大きさ p∗ を求めよ.

  2. L1/v1=L2/v2=ta とする.自由端の反射から接触終了時刻と最終速度を求め,力積とエネルギーを検算せよ.

  3. ρ1=8.00×103kgm−3,Y1=2.00×1011Pa,ρ2=2.70×103kgm−3,Y2=9.72×1010Pa,L1=0.200m,S=2.00×10−5m2,u=6.00ms−1 とする.L2,接触時間,応力,最終速度を計算せよ.弾性限界は棒1で 1.20×108Pa,棒2で 8.00×107Pa として u の上限も求めよ.長さの条件を外しても同じ最終速度になるか.

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考え方

1次元線形弾性の模型で自由端の反射を追い,内部振動を除く.

  1. 微小部分の両端の応力差から

ρjSdx∂2ξ∂t2=S∂σ∂xdx,∂2ξ∂t2=Yjρj∂2ξ∂x2

波速は vj=Yj/ρj.棒2では質量 ρ2Sv2t が0から v∗ へ加速され,力積との等式 ρ2Sv2tv∗=p∗St より p∗=Z2v∗.棒1も同様に p∗=Z1(u−v∗).したがって

v∗=Z1Z1+Z2u,p∗=Z1Z2Z1+Z2u
  1. 圧縮波は ta に両自由端へ着く.応力0の条件から,反射波は圧縮応力を p∗ だけ減らし,速度を棒1で −p∗/Z1,棒2で +p∗/Z2 だけ変える.反射波は 2ta に接触面へ戻り,

v1f=v∗−p∗Z1=Z1−Z2Z1+Z2u,v2f=v∗+p∗Z2=2Z1Z1+Z2u

v2f−v1f=u>0 なので離れる.それまでの力は p∗S.質量 mj=ρjSLj=SZjta を使うと

m1(u−v1f)=m2v2f=2p∗Sta,12m1v1f2+12m2v2f2=12m1u2

後式は Z1(Z1−Z2)2+4Z12Z2=Z1(Z1+Z2)2 より成立する.最後は無応力で各棒の速度も一様となる.

  1. (v1,v2)=(5.00,6.00)×103ms−1 より L2=0.240m.Z2/Z1=0.405 から 2ta=8.00×10−5s,p∗=6.92×107Pa,(v1f,v2f)=(2.54,8.54)ms−1.

低い弾性限界から umax=(8.00×107Pa)(Z1+Z2)/(Z1Z2)=6.94ms−1.長さの条件を外すと片側の反射が先に戻り,応力が変わる.内部振動が残り得るため,剛体の弾性衝突式を使えない.今回は p∗/Yj が約 3.5×10−4,7.1×10−4,u/vj も小さく,線形化と整合する.1次元模型には横寸法と長さの比も小さいことが必要で,Z1=Z2 なら速度交換に戻る.

07力学の総合問題(2)

保存則と振動・回転・万有引力(第5〜11章)の問題を,測定の不確かさ(第14章),操作のタイミング,光子や原子核との衝突(第29・31章)へ広げた4題です.相対論(第13章)の式は問題の中で示します.条件が変わる区間ごとに収支を立ててください.

総合演習 25

オリジナル ★★★★☆

二つのすき間で粘性と装置の損失を分ける

ねじり定数 κ の線につるした水平円盤は,半径 R,慣性モーメント I です.上下の固定平板とのすき間 2h,h を,密度 ρ,粘性係数 η の液体で満たします.液体の速度分布は両面間で直線的とし,せん断応力は η と速度勾配の積です.縁の影響を無視し,支持部の抵抗トルクは −b0dθdt とします.b0 はすき間によらず一定です.

  1. 環の力を積分し,抵抗トルクと自由振動の方程式を求めてください.

  2. 包絡線を A0e−βt,山の間隔を Td とします.山の高さの比から β,周期から κ を求める式を導いてください.β 対 1/h の両端の2点から η,b0 を求め,中間点と照合してください.R=2.00×10−2m,I=2.00×10−5kgm2 とします.

h/(10−5m)

β/(s−1)

Td/(s)

2.50

7.790

0.3411

5.00

4.020

0.3207

7.50

2.763

0.3172

  1. β の独立な標準不確かさだけを 0.020s−1 とし,η,b0 の標準不確かさを求めてください.厚さ d のすき間の平衡化時間 ρd2/η は振動時間尺度より十分短い必要があります.ρ=9.0×102kgm−3 として最大厚さで確かめ,すき間を狭め続ける方法の限界を述べてください.

上下の固定平板と水平円盤の断面.上のすき間は2h,下のすき間はhで,円盤の半径はR.液体の密度はρ,粘性係数はη,つり線のねじり定数はκ.別の上面図にねじれ角θと,半径rの環およびその幅を示す.環の幅は模式的に拡大している. 上下の固定平板と水平円盤の断面.上のすき間は2h,下のすき間はhで,円盤の半径はR.液体の密度はρ,粘性係数はη,つり線のねじり定数はκ.別の上面図にねじれ角θと,半径rの環およびその幅を示す.環の幅は模式的に拡大している.
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考え方

慣性を無視した層流模型で環の抵抗を足し,減衰率の傾きと切片から粘性と支持部の損失を分ける.

  1. 半径 r,幅 dr の環の面積は 2πrdr,速さは rdθdt.厚さ d の側の抵抗トルクは −2πηr3dr(dθdt)/d.積分し両面を足すと

τv=−πηR42(1h+12h)dθdt=−3πηR44hdθdt

従って b=b0+3πηR4/(4h) とおけば,Id2θdt2+bdθdt+κθ=0 である.

  1. est の代入で Is2+bs+κ=0.振動解は s=−β±iωd,β=b/(2I),ωd2=κ/I−β2>0.山 An,An+1 は同位相なので

ln⁡AnAn+1=βTd,κ=I[(2πTd)2+β2]

x=1/h として β=a+Cx,a=b0/(2I),C=3πηR4/(8I).両端の値から

C=β1−β3x1−x3=1.8851×10−4ms−1,a=β3−Cx3=0.2495s−1

η=8IC/(3πR4),b0=2Ia となる.中間点の予測は 4.0198s−1 で測定と一致する.各行とも 8.00×10−3Nm にそろう.

  1. sβ=0.020s−1 とすると,差を取るので sC=2sβ/(x1−x3).切片は a=(x1β3−x3β1)/(x1−x3) だから

sa=x12+x32x1−x3sβ=52sβ

sη=8IsC/(3πR4),sb0=2Isa より η=(2.000±0.011)×10−2Pas,b0=(1.00±0.13)×10−5kgm2s−1 となる.

固有角振動数は ω0=20.0s−1.最大厚さ d=2h で ω0ρd2/η=0.020 は小さく,2h/R≤0.0075 も小さい.小振幅・層流・壁で滑らないことも仮定した.狭めすぎて β≥ω0 になると山が消え,この測定はできない.ηR4/h は抵抗係数の次元を持つ.

総合演習 26

オリジナル ★★★★☆

質量を失う時刻で,束縛軌道を残せるか

球対称な天体 M0 を探査機 m が半径 r0 の円軌道で回ります.m/M0 は十分小さく,重力定数は G です.天体は質量の 1/4 を失い,探査機が次の最遠点に来た瞬間,残存質量の割合 s を再び失います.0≤s<1 とします.中心は動かず,変化時の探査機の位置・速度は連続です.放出物質の重力と衝突を無視し,残存質量の重力だけを使います.

  1. 最初の変化後の比エネルギー ε1,比角運動量 ℓ,近点・遠点の距離,長半径を求めてください.

  2. 2回目以後の束縛条件と,変化地点が近点か遠点かを分類してください.s=1/2 で両端の距離と離心率を求めてください.

  3. s=1/2 と同じ最終質量まで一度で変える場合と,非常にゆっくり変える場合を比較してください.後者では円に近い軌道を仮定して半径と周期を求め,時間尺度の条件も示してください.

左に天体M_0,探査機mの初期円軌道,半径r_0と変化点Pを示す.Pにいるときに天体が初期質量の1/4を失う.右は次の最遠点Qで残存質量の割合sを失う配置を模式的に示す. 左に天体M_0,探査機mの初期円軌道,半径r_0と変化点Pを示す.Pにいるときに天体が初期質量の1/4を失う.右は次の最遠点Qで残存質量の割合sを失う配置を模式的に示す.
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考え方

中心力の角運動量保存と,各一定質量の区間のエネルギーで転回点を求める.

  1. 初速は v0=GM0/r0 であり,ℓ=r0v0=GM0r0.残存質量 M1=3M0/4 に対して

ε1=v022−GM1r0=−GM04r0,ε1=12(drdt)2+ℓ22r2−GM1r

半径速度0の方程式に z=r/r0 を入れると z2−3z+2=0.近点 r0,遠点 2r0,長半径 a1=3r0/2,遠点の速さ va=ℓ/(2r0)=v0/2 となる.

  1. M2=3(1−s)M0/4 とすると

ε2=va22−GM22r0=GM08r0(3s−2)

従って s<2/3 は楕円,s=2/3 は放物線,s>2/3 は双曲線となる.変化地点の半径加速度は

d2rdt2=ℓ2(2r0)3−GM2(2r0)2=GM016r02(3s−1)

s<1/3 なら遠点,s>1/3 なら近点であり,s=1/3 では円になる.s=1/2 の転回点は ε2=ℓ2/(2r2)−GM2/r に z=r/r0 を入れて z2−6z+8=0.近点 2r0,遠点 4r0,長半径 3r0,離心率 e=(4−2)/(4+2)=1/3 となる.

  1. 最終質量 3M0/8 に一度で変えると ε=v02/2−G(3M0/8)/r0=GM0/(8r0)>0 で脱出する.遠点で減らす方がエネルギー増加 GΔM/r は小さい.

ゆっくり減る場合にも ℓ は保存する.円軌道の関係 ℓ2=GMr から Mr=M0r0.従って rf=8r0/3.ケプラーの周期 T=2πr3/(GM) より Tf/T0=(M0/Mf)2=64/9.drdt=−rdMdt/M が公転速度より十分小さいには,|dMdt|/(Mω) が十分小さくで滑らかな変化を要する.さらに m/M と GM/(rc2)(c は光速)が小さいことを要する.急変は放出物質の通過時間が公転時間より十分短い極限の模型である.

総合演習 27

オリジナル ★★★★★

励起のしきい値と,戻ってくる光子のエネルギー

中性粒子 m が静止核 M を励起する反応 a+A→a+A∗ を考えます.粒子は変わらず,励起核の静止質量は M∗=M+Δ/c2 です.運動学的なしきい値だけを扱います.

相対論では E2=(pc)2+(mc2)2,全系の不変量 E2−c2|P|2,光子の E=pc を使えます.m=3.00u,M=12.0u,Δ=3.00MeV,1uc2=931.5MeV とします.

  1. 質量増加を慣性に入れない非相対論近似で,しきい入射エネルギー K∗,共通速度,各粒子の並進エネルギーを求めてください.

  2. 不変量から相対論的なしきい値を求め,(1)との差を数値で評価してください.

  3. しきい値で生じた核が,他の粒子と相互作用せずに光子1個を放出して基底状態に戻ります.核の静止系の光子エネルギー Eγ′,実験室で進行方向・逆方向の値 E+,E− を求め,E+>Δ の理由を説明してください.光子のローレンツ変換は E±=γEγ′(1±β),β=v/c,γ=1/1−β2 と与えます.

中性粒子a,質量mが,静止した標的核A,質量Mへ入射する.反応はa + A → a + A*.別の小図に励起核A*の進行方向と,進行方向および逆方向の検出器を示す.励起核の静止質量はM_* = M + Δ/c²である. 中性粒子a,質量mが,静止した標的核A,質量Mへ入射する.反応はa + A → a + A*.別の小図に励起核A*の進行方向と,進行方向および逆方向の検出器を示す.励起核の静止質量はM_* = M + Δ/c²である.
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考え方

重心運動のエネルギーを除いて励起へ回せる量を求め,光子放出では核の反跳を数える.

  1. 入射運動量を p,衝突後の速度を v1,v2 とする.mv1+Mv2=p の下で,運動エネルギーは

12mv12+12Mv22=p22(m+M)+mM2(m+M)(v1−v2)2

最小は共通速度 V=p/(m+M) のときである.p2=2mK より励起の上限は MK/(m+M) なので

K∗=(1+mM)Δ=3.75MeV

速度は V=2mK∗/(m+M).並進エネルギーは粒子が m2K∗/(m+M)2=0.150MeV,核が mMK∗/(m+M)2=0.600MeV で,励起と合わせて 3.75MeV に戻る.

  1. 入射エネルギーは mc2+K で,p2c2=K(K+2mc2).初期の不変量は

[(m+M)c2+K]2−p2c2=(m+M)2c4+2Mc2K

終状態の重心系で相対運動0が最小で,値は [(m+M)c2+Δ]2.等置して

K∗=(1+mM)Δ+Δ22Mc2≃3.75MeV

差を評価するために桁を残した計算値は 3.750403MeV で,補正は 4.03×10−4MeV である.

  1. 励起核の静止系で,基底核の反跳運動量の大きさも Eγ′/c だから

M∗c2=Eγ′+M2c4+(Eγ′)2

移項して2乗し,Eγ′=(M∗2−M2)c2/(2M∗)=Δ(2Mc2+Δ)/[2(Mc2+Δ)].共通速度は重心速度なので

β=pc(m+M)c2+K∗,pc=K∗(K∗+2mc2)

β=0.010362,Eγ′=2.999598MeV より E+=3.03MeV,E−=2.97MeV.核の静止系では反跳により Eγ′<Δ だが,実験室では前向き放出によって核の並進エネルギーの一部も光子へ渡る.

非相対論近似には K/(mc2) と Δ/(Mc2) が小さいことを要し,ともに 0.002 未満.Δ→0 でしきい値と光子エネルギーは0へ戻る.

総合演習 28

オリジナル ★★★★★

可変長振り子の仕事と,振幅が増える限界

鉛直面内の小球 m を軽い可変長棒で固定支点につなぎます.棒は押す力も伝え,長さを ℓ と qℓ(0<q<1)に切り替えます.切り替えは角度を変えず,前後の半径速度は0です.操作は十分速く重力の角方向の力積を無視します.駆動装置の仕事を含め,装置内の散逸を無視します.重力加速度は g です.

長さ ℓ,角度 0<θ0<π から静かに放し,最下点で qℓ に縮め,次の転回点で伸ばします.

  1. 短縮前後の接線速度の比と転回角 θ1 を,小角近似なしで求め,転回条件も示してください.

  2. 短縮・伸長の各仕事とその和を求めてください.m=0.50kg,ℓ=2.0m,q=0.90,θ0=0.30rad,g=9.8ms−2 で θ1 と正味の仕事を計算してください.

  3. 長い状態の転回点から最下点へ戻る間だけ,転回点の振動エネルギーの割合 1−r を失う模型へ変えます.0<r<1 とし,他の区間に散逸はありません.縮める直前の最下点のエネルギー En の漸化式と増幅条件を求めてください.r=0.96 で必要な短縮割合 1−q の下限を評価し,無限に続く指数増幅が物理的に成立するか調べてください.

左に長さℓの棒,小球m,鉛直から測った初期角θ_0を示す.中央は最下点でℓからqℓへの短縮,右は次の転回点でqℓからℓへの伸長.切り替え中は棒の角度を変えない.破線の小球は切り替え前,実線の小球は切り替え後で,角度と長さの比は模式的に描く. 左に長さℓの棒,小球m,鉛直から測った初期角θ_0を示す.中央は最下点でℓからqℓへの短縮,右は次の転回点でqℓからℓへの伸長.切り替え中は棒の角度を変えない.破線の小球は切り替え前,実線の小球は切り替え後で,角度と長さの比は模式的に描く.
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考え方

操作には角運動量保存,長さ一定の区間にはエネルギー保存を使う.

  1. 最下点を基準とし,E0=mgℓ(1−cos⁡θ0).最下点で mv02/2=E0,短縮中は mℓv0=mqℓv1 なので v1/v0=1/q.短い状態の上昇では

E0q2=mgqℓ(1−cos⁡θ1),1−cos⁡θ1=1−cos⁡θ0q3

従って θ1=arccos⁡[1−(1−cos⁡θ0)/q3].有限時間で上昇中に転回する条件は 1−cos⁡θ0<2q3.等号では上端へ無限時間で近づき,超えると回転して転回操作ができない.

  1. 最下点で縮めると運動エネルギーは E0 から E0/q2,高さは ℓ(1−q) だけ増す.従って

Ws=E0(q−2−1)+mgℓ(1−q)

転回点では伸長前後の速度0で,高さの変化から Wl=−mgℓ(1−q)cos⁡θ1.(1)で加えると

W=E0(q−2−1)+mgℓ(1−q)(1−cos⁡θ1)=E0(q−3−1)

伸長後のエネルギーの増加に等しい.

E0=0.43770J より θ1≈0.35rad,W≈0.16J.

  1. 操作後の転回点のエネルギーは En/q3.帰り道の散逸後は

En+1=rq3En,En=(rq3)nE0

E0 は最初の最下点の値である.増幅条件は q<r1/3,すなわち 1−q>1−r1/3.r=0.96 では下限は 0.01352,約1.4 %.

転回には En<2mgℓq3 が必要であり,倍率が1を超えると有限回後に手順が止まる.角振幅の倍率 r/q3 は角振幅の2乗が十分小さい範囲の近似である.瞬間切り替えには操作時間 τs に対する τsg/(qℓ) も小さいことを要する.q→1 で装置の仕事は0,倍率は r となり,駆動なしの減衰へ戻る.

08熱と分子の総合問題(1)

気体の流出,イオン,音速,相転移の4題です.熱(第15〜18章)を,測定(第14章),電磁気(第20・21章),音(第25章),2状態系(第30章)と組み合わせます.使う関係式は問題の中にも示します.最後の小問では,模型の適用条件を調べてください.

総合演習 29

オリジナル ★★★★☆

小孔が選ぶ分子と,壁が支える温度

容積 V の固定容器に,分子質量 m の単原子理想気体を N0 個,温度 T0=320K で入れます.外側は真空,壁は断熱し,面積 S の薄い孔を時刻0に開きます.気体は一様で,流出より速く熱平衡に戻るとします.孔の法線を x 方向とし,独立な成分の確率密度は

f(vj)=m2πkBTe−mvj2/(2kBT),j=x,y,z

とします.孔径 d,自由行程 λ,容器長 ℓ は 1≫d/λ,1≫λ/ℓ を満たします.

  1. 単位時間当たりの流出数と平均運動エネルギーを求めよ.α>0 に対し ∫0∞v2j+1e−αv2dv=j!/(2αj+1)(j=0,1)を用いてよい.

  2. 壁の熱容量を無視し,N(t),温度 T(t)を求めよ.初期の単位時間当たりの流出数は N0/τ0 とする.

  3. 壁が気体と同温で熱容量 Cw 一定なら T(N) を求めよ.Cw=3N0kB/2 で N=N0/8 の温度を熱容量0の場合と比較し,壁を無視できる条件を示せ.

容積Vの固定容器内に分子数N,温度Tの気体があり,断熱壁の面積Sの小孔の外側は真空である.孔の外向き法線をx方向とし,入射速度成分v_x,v_y,v_zを別の模式図に示す.初期条件はN_0,T_0=320 Kであり,小問(3)では壁の熱容量C_wを考える. 容積Vの固定容器内に分子数N,温度Tの気体があり,断熱壁の面積Sの小孔の外側は真空である.孔の外向き法線をx方向とし,入射速度成分v_x,v_y,v_zを別の模式図に示す.初期条件はN_0,T_0=320 Kであり,小問(3)では壁の熱容量C_wを考える.
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考え方

理想気体の分布を到達速度で重み付けし,開放系の収支を立てる.

  1. 到達する層の厚さは vxdt である.n=N/V,α=m/(2kBT) とおくと,流出率 J は

J=Sn∫0∞vxf(vx)dvx=Snαπ12α=SNVkBT2πm

流出集団では ⟨vx2⟩out=(1/(2α2))/(1/(2α))=1/α.横成分は各 1/(2α) だから,平均エネルギーは m(1/α+2/(2α))/2=2kBT.

  1. dN<0 として,剛体容器の収支は

d(32NkBT)=2kBTdN,dTT=dN3N,TT0=(NN0)1/3

τ0=(V/S)2πm/(kBT0),q=N/N0 とおけば,dqdt=−q7/6/τ0.積分して 6(q−1/6−1)=t/τ0 より

NN0=(1+t6τ0)−6,TT0=(1+t6τ0)−2
  1. 気体と壁を合わせ,d(3NkBT/2+CwT)=2kBTdN とすると

(3N+2CwkB)dTT=dN,TT0=(3N+2Cw/kB3N0+2Cw/kB)1/3

壁ありで T=T0(9/16)1/3≃264K,熱容量0なら T=T0/2=160K.壁を無視する条件は 1≫2Cw/(3NkB) で,N の減少で破れる.Cw→∞ では等温へ近づく.τ0 は時間の次元を持ち,流出中も 1≫d/λ,1≫λ/ℓ と,平衡化時間が流出時間より短い条件が必要である.

総合演習 30

オリジナル ★★★★☆

衝突するイオンの移動度と拡散の分解能

中性気体に,質量 m=3.32×10−26kg,電荷 +e のイオンを希薄に入れます.T=320K です.衝突確率は短時間 dt に dt/τ,衝突直後の速度は平均0の熱分布に戻るとします.イオン間の相互作用と空間電荷を無視します.x 方向の電場を E,平均速度を u とします.e=1.60×10−19C,kB=1.38×10−23JK−1 とします.

  1. 平均速度の式と,定常速度 u=βE の移動度を求めよ.

  2. 次の測定で ∑i(ui−βEi)2 を最小にし,β,τ と β の標準不確かさを求めよ.電場の誤差は無視し,各速度の独立な標準不確かさを σu=0.006ms−1 とする.

E/(Vm−1)

u/(ms−1)

1.00×103

0.300

2.00×103

0.600

3.00×103

0.900

  1. 数密度 n(x) の粒子流を jN=nβE−Ddndx とする.熱平衡で n∝exp⁡[−eV(x)/(kBT)],E=−dVdx から D を導け.電場 2.00×103Vm−1 で,薄い初期層を平均距離 L=1.00×10−2m 運ぶ時間と位置の標準偏差を求めよ.幅を L/10 未満にする電場と,熱分布を保つ弱電場の条件を比べよ.

中性気体中の電荷+eのイオンを薄い初期層として描く.電極間の電場Eはx方向を向き,初期層から観測面までの距離はLである.小問(3)の条件はE=2.00×10^3 V m^−1,L=1.00×10^−2 mである. 中性気体中の電荷+eのイオンを薄い初期層として描く.電極間の電場Eはx方向を向き,初期層から観測面までの距離はLである.小問(3)の条件はE=2.00×10^3 V m^−1,L=1.00×10^−2 mである.
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考え方

衝突による平均速度の減少を数え,平衡での粒子流0から拡散係数を決める.

  1. 衝突しない間の加速は eE/m,衝突による平均速度の減少は udt/τ である.従って

dudt=eEm−uτ,ust=eτmE,β=eτm
  1. 二乗和の β による微分を0とすると,∑iEiui=β∑iEi2.誤差を重み Ei/∑jEj2 で足すと

β=∑iEiui∑iEi2=3.00×10−4m2V−1s−1,σβ2=σu2∑iEi2

σβ=1.6×10−6m2V−1s−1,τ=mβ/e=6.23×10−11s.

  1. 平衡分布を微分すると dndx=neE/(kBT).jN=0 より D=βkBT/e=kBTτ/m である.分散は 2Dt 増し,

D=8.28×10−6m2s−1,tL=LβE=1.67×10−2s,σx=2DtL=5.25×10−4m

幅の条件 2DL/(βE)<L2/100 は E>200kBT/(eL)=5.52×102Vm−1.移動度と拡散係数が比例するため τ は消える.

熱速度を vth=3kBT/m,飛行距離を λ=vthτ とすると,弱電場には 1≫eEλ/(kBT) が必要である.最大測定電場でもこの比は 4.3×10−3 で,幅の条件と両立する.D は面積毎時間の次元を持ち,拡散模型には tL/τ≫1 と 1≫λ/L が必要である.

総合演習 31

オリジナル ★★★★★

臨界点で音が止まるとは限らない

一様な1相のファン・デル・ワールス気体です.モル体積 w,モル質量 μ,内部エネルギー um に対し,

p=RTw−b−aw2,um=CVT−aw,wc=3b,Tc=8a27Rb

を与えます.モル定積熱容量 CV>0 は定数,w>b,密度は ρ=μ/w.粘性を無視し,音速の2乗は対応する過程の dpdρ とします.

  1. 可逆断熱変化の dTdw を第一法則から求め,断熱音速 vS と等温の速さ vT を導け.

  2. w=wc,T=(1+ϵ)Tc で両速さを求め,ϵ→0+ の違いを説明せよ.a/b=9.0×103Jmol−1,μ=0.044kgmol−1,CV=3R/2,ϵ=0.040 として数値も求めよ.

  3. 波の角振動数 ω,局所平衡化時間 τi,熱交換時間 τh で両過程の条件を示せ.臨界点での断熱温度変化をモル体積変化 δw で表し,線形近似の条件を示せ.

1相の気体中の縦波を,粒子の密な圧縮部と疎な希薄部で示す.下の模式図はモル体積w,温度Tの局所の気体要素であり,破線は体積変化δwを表す.外界との熱交換を双方向の矢印で示し,熱交換時間をτ_hとする. 1相の気体中の縦波を,粒子の密な圧縮部と疎な希薄部で示す.下の模式図はモル体積w,温度Tの局所の気体要素であり,破線は体積変化δwを表す.外界との熱交換を双方向の矢印で示し,熱交換時間をτ_hとする.
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考え方

断熱線と等温線の傾きを別々に求める.

  1. モルあたり dum=−pdw とすると,CVdT+adw/w2=−[RT/(w−b)−a/w2]dw.引力の項が相殺され,dTdw=−RT/[CV(w−b)] となる.従って

(∂p∂w)T=−RT(w−b)2+2aw3,(dpdw)S=−RT(w−b)2(1+RCV)+2aw3

dρdw=−μ/w2 より,δp=v2δρ の係数は

vT2=w2μ[RT(w−b)2−2aw3],vS2=w2μ[RT(w−b)2(1+RCV)−2aw3]
  1. w=3b と RTc=8a/(27b) を代入すると

vT2=2a3μbϵ,vS2=2a3μb[ϵ+RCV(1+ϵ)]

臨界点では vT→0,一方 vS→2aR/(3μbCV).断熱圧縮で温度が上がるため,等温の圧力応答が0でも復元力が残る.数値は vT≃74ms−1,vS≃3.2×102ms−1.臨界点の断熱値は 3.0×102ms−1 である.

  1. 局所平衡には 1≫ωτi が必要である.ωτh≫1 なら断熱,1≫ωτh なら等温へ近づく.中間では位相差と減衰が生じ,両速さの平均では表せない.

断熱の式を積分すると T(w−b)R/CV=一定.臨界点で δT/T≃−Rδw/[CV(wc−b)] だから,s=δw/wc とすると δT/T≃−3Rs/(2CV).線形近似には 1≫|s| と 1≫3R|s|/(2CV) が必要である.希薄な極限 w/b≫1,1≫a/(RTw) では vS2→(1+R/CV)RT/μ となり,理想気体の断熱音速に戻る.

総合演習 32

オリジナル ★★★★★

固めて冷やす物質と,スピンの二つの状態

A3A223He を参考にした模型物質で,モルエントロピーは液体が sl=RT/Θ,無磁場の固体が ss=Rln⁡2,モル体積差は Δw=wl−ws>0 一定です.適用範囲は 0.030K≤T≤0.140K とし,エントロピーの圧力依存と,界面・装置の熱容量は無視します.Θ=0.200K,Δw=1.50×10−6m3mol−1,R=8.31Jmol−1K−1 とします.

  1. モル自由エネルギーを gl,gs とし,dg=−sdT+wdp,gl=gs から共存圧力 pm(T) の傾きを導け.圧力が最小になる温度と,Ti=0.100K から Tf=0.0600K への共存圧力の変化を求めよ.

  2. 物質量 ν=0.0200mol の液体を Ti の共存圧力から,可逆断熱で固める.固体の割合を x とし,T(x) と Tf に達する割合を求めよ.また Ti を保って全量を固める場合の吸熱を求め,冷却の理由を説明せよ.

  3. 固体原子の独立な2状態を磁場で −ε,+ε に分ける.確率は P±=e∓y/(ey+e−y),y=ε/(kBT),モルエントロピーは −R∑±P±ln⁡P± とする.液体への磁場の影響は無視し,磁場一定で固体のエントロピーを導き,ε/kB=0.100K のとき,磁場下の共存圧で Ti から微小量を断熱固化し,冷えるか判定せよ.

圧力pを受けるピストンをもつ断熱容器内に液相と固相を模式的に描き,温度Tと固体の割合xを記す.右側は磁場によって分かれた固体原子の二つの準位で,上が+ε,下が−εである. 圧力pを受けるピストンをもつ断熱容器内に液相と固相を模式的に描き,温度Tと固体の割合xを記す.右側は磁場によって分かれた固体原子の二つの準位で,上が+ε,下が−εである.
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考え方

可逆断熱で全エントロピーを保存し,2状態の占有からエントロピーを数える.

  1. 共存曲線で dgl=dgs とすると,(wl−ws)dp=(sl−ss)dT だから

dpmdT=RΔw(TΘ−ln⁡2)

傾きが負から正へ変わる最小は T∗=Θln⁡2=0.139K.傾きを積分すると

pm(Tf)−pm(Ti)=RΔw[Tf2−Ti22Θ−(Tf−Ti)ln⁡2]=6.50×104Pa

冷やすには共存圧力を上げる.

  1. 可逆断熱なら,全エントロピー ν[(1−x)sl+xss] は初期の νRTi/Θ に等しい.従って

(1−x)TΘ+xln⁡2=TiΘ,T(x)=Ti−xΘln⁡21−x,xf=Ti−TfΘln⁡2−Tf=0.509

dTdx=(Ti−Θln⁡2)/(1−x)2<0 なので固化で冷える.等温固化では,吸熱は

Q=νTi(ss−sl)=νRTi(ln⁡2−TiΘ)=3.21×10−3J>0

等温では固化で増すエントロピーを吸熱で,断熱では液体の冷却で補う.Q には体積仕事の分も含む.

  1. Z=ey+e−y とおく.ln⁡P±=∓y−ln⁡Z,P−−P+=tanh⁡y なので

ss(T)=R[ln⁡(ey+e−y)−ytanh⁡y]

y=0 で Rln⁡2 に戻り,分裂で占有が偏ると減る.x=0 で全エントロピー一定を微分すると

RΘdT+[ss(Ti)−sl(Ti)]dx=0,dTdx∫|x=0=ΘR[sl(Ti)−ss(Ti)]

磁場下では y=1,ss/R=0.365,sl/R=0.500.dTdx>0 で,無磁場と逆に昇温する.圧力差の次元はエネルギー毎体積である.等確率の近似には 1≫ε/(kBT) が必要であり,この模型を絶対零度まで延長できない.

09熱と分子の総合問題(2)

引っ張り,粘性のある流れ,振動の緩和,温度の調節の4題です.力学(第4・6・7章)と熱(第15〜18章)を中心に,測定(第14章),音と分子振動(第25・29章)も使います.散逸と,応答が安定かどうかを調べてください.

総合演習 33

オリジナル ★★★★☆

引くと冷える線の弾性と損失

金属線の長さを ℓ,引張力を F,温度を T とし,弾性範囲の自由エネルギーを

G(T,F)=G0(T)−Fℓ0[1+α(T−T0)]−F22K,dG=−SdT−ℓdF

とします.S はエントロピー,K は等温の弾性係数,C=−Td2G0dT2 は一定の熱容量です.一様な温度・応力で,ℓ0=0.50m,K=5.6×104Nm−1,C=0.48JK−1,α=2.4×10−5K−1,T0=300K とします.

長さℓの金属線を右向きの力Fで引く.温度計は線の温度Tを示す.小問(3)では温度T₀の熱源から線への熱流を−Hθとし,θ=T−T₀である. 長さℓの金属線を右向きの力Fで引く.温度計は線の温度Tを示す.小問(3)では温度T₀の熱源から線への熱流を−Hθとし,θ=T−T₀である.
  1. ℓ(T,F) と dS を導き,F=0,T=T0 から可逆断熱で F1=20N まで引いたときの温度変化と伸びを求めよ.

  2. T0 で予張力をかけた平衡のまわりの等温・断熱の微小な弾性係数を求めよ.χ=Kα2ℓ02T0/C で正の断熱弾性係数をもつ条件を示せ.

  3. 熱源 T0 からの熱流を −Hθ(H>0,θ=T−T0)とし,伸びの変動を x=Re⁡(Xeiωt) とする.力の複素振幅 F^ と X の比を求め,振幅一定で1周期の損失が最大になる ω を求めよ.予張力を上回る変動と線の慣性は除く.

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考え方

自由エネルギーの模型から熱膨張と弾性を連立する.

  1. a=αℓ0 とおく.微分して

ℓ=ℓ0+a(T−T0)+FK,S=−dG0dT+aF,dS=CTdT+adF

dS=0 を積分して,Cln⁡(Tf/T0)+aF1=0.よって Tf=T0e−aF1/C,伸びは F1/K+a(Tf−T0) である.aF1/C=5.0×10−4 より,ΔT=−0.15K,伸びは 3.6×10−4m.

  1. dℓ=adT+dF/K より,等温では係数は K.断熱では dT=−aT0dF/C を代入して

dℓ=1−χKdF,KS=K1−χ

0≤χ<1 が必要である.

  1. 変動を f と書くと f=K(x−aθ).熱収支は T0dSdt=−Hθ だから

Cdθdt+aT0dfdt=−Hθ

θ=Re⁡(Θeiωt) として,[H+iωC(1−χ)]Θ=−iωaT0KX.消去すると

F^X=KH+iωCH+iωC(1−χ)

周期平均は fdxdt―=(ω/2)Im⁡(F^X∗).周期 2π/ω を掛けて

Wloss=π|X|2KχωCHH2+ω2C2(1−χ)2

z=ωC(1−χ)/H とおくと z/(1+z2) が z=1 で最大となり,ω∗=H/[C(1−χ)],Wmax=πKχ|X|2/[2(1−χ)].両周波数極限で等温・断熱に戻り,損失は0になる.|θ|/T0,|x|/ℓ0 が十分小さく,音の伝播・温度一様化の時間が 1/ω より短い範囲で使う.

総合演習 34

オリジナル ★★★★☆

液面の記録から見えないすき間を測る

断面積 A の容器から大液槽へ,液体が幅 b,高さ δ,長さ d の水平なすき間を流れます.両口は水没し,液面差 h による圧力差は Δp=ρgh です.両液面は大気に開き,液槽の液面は一定です.粘性率 η 一定の層流で,入口の影響を無視します.壁面の流速は0,せん断応力は ηdvdz です.z は中央から高さ方向に測ります.

A=1.0×10−4m2,b=3.0×10−2m,d=2.0×10−2m,ρ=1.0×103kgm−3,η=2.0×10−2Pas,g=9.8ms−2 とします.

t

h

0s

0.200m

60s

0.100m

120s

0.050m

断面積Aの容器と液面一定の大液槽を,両口が水没した水平流路でつなぐ.両液面は大気に開き,液面差はhである.拡大した流路断面に幅b,高さδと,中央を原点とする高さ方向の座標zを示す.流路の長さはdである. 断面積Aの容器と液面一定の大液槽を,両口が水没した水平流路でつなぐ.両液面は大気に開き,液面差はhである.拡大した流路断面に幅b,高さδと,中央を原点とする高さ方向の座標zを示す.流路の長さはdである.
  1. 薄い流体層のつり合いから v(z) と体積流量 q を導け.

  2. h(t) を求め,表から δ を推定せよ.液面差の誤差 0.001m だけを考え,両端の値による推定の相対誤差上限も1次で求めよ.

  3. 液面差が4分の1になるまでの散逸を求めよ.すき間の高さを半分にした場合の所要時間と総散逸も比べよ.瞬時に流速分布が整う近似も検算せよ.

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考え方

定常流を仮定し,圧力仕事と体積保存を使う.

  1. 厚さ dz の層の力のつり合いより ηd2vdz2=−Δp/d.中央で dvdz=0,両壁で v=0 より

v(z)=Δp2ηd(δ24−z2),q=b∫−δ/2δ/2v(z)dz=bδ3ρgh12ηd
  1. Adhdt=−q より h=h0e−t/τ,τ=12ηdA/(bδ3ρg).ln⁡h と t は直線で,中間点も一致する.τ=120s/ln⁡4=86.6s なので

δ=(12ηdAbρgτ)1/3≃2.7×10−4m

対数比の誤差は両端の相対誤差の和以下.τ の相対誤差上限は (0.001/0.200+0.001/0.050)/ln⁡4=0.018,δ は3分の1の 0.0060 である.

  1. 散逸率は圧力仕事率 P=Δpq=−ρgAhdhdt である.積分して

Eloss=ρgA2(h02−hf2)=1.8×10−2J

半分のすき間では τ と時間は8倍だが,総散逸は同じ位置エネルギー差となる.速度分布が整う時間は ρδ2/η 程度で,ρδ2/(ητ)=4.1×10−5.初期の平均流速 q/(bδ)=0.029ms−1 から ρv¯δ/η=0.39,δ/d=0.013 であり,層流の近似と整合する.運動エネルギーと圧力仕事の比は v¯2/(2gh0)=2.1×10−4 程度で小さい.

総合演習 35

オリジナル ★★★★★

分子の中が温まると音が遅くなる

剛体の断熱容器に2原子分子の理想気体を ν=0.010mol 入れます.並進・回転の熱容量は 5νR/2 です.各分子の振動準位は Ej=(j+1/2)kBΘ(j=0,1,…,Θ=600K)で,振動の温度 Tv における確率は Pj=(1−q)qj,q=e−Θ/Tv です.初め T0=150K で平衡にあり,短い加熱で並進・回転だけを T1=900K にします.以後,熱・仕事の出入りなしに振動へエネルギーが移ります.解離・電子励起は無視します.

R=8.31Jmol−1K−1,kB=1.38×10−23JK−1 を使います.振動のエントロピーは Sv=−νR∑jPjln⁡Pj で計算します.

初めはT₀=150 Kで平衡にあり,短い加熱で並進・回転だけをT₁=900 Kにする.加熱直後の振動温度はTᵥ=T₀で,以後は断熱容器内で振動へエネルギーが移る.振動準位Eⱼ=(j+1/2)k_BΘは等間隔で,Θ=600 Kである. 初めはT₀=150 Kで平衡にあり,短い加熱で並進・回転だけをT₁=900 Kにする.加熱直後の振動温度はTᵥ=T₀で,以後は断熱容器内で振動へエネルギーが移る.振動準位Eⱼ=(j+1/2)k_BΘは等間隔で,Θ=600 Kである.
  1. Uv(Tv) と Sv(Tv) を求めよ.零点エネルギーを除いて表せ.

  2. 終温度 Tf を求めよ.加熱直後から平衡までのエントロピー増加を求め,エントロピー最大となる理由も示せ.

  3. 平衡後の音の周期に比べ,振動緩和が遅い場合と速い場合の音速比を求めよ.v2=γRTf/Mmol,γ=1+R/CV を使い,CV はモル定積熱容量,Mmol はモル質量とする.

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考え方

緩和前は二つの集団に別々の温度を割り当て,準位の確率から熱容量を出す.

  1. 等比級数を微分すると ∑jjqj=q/(1−q)2 なので,j¯=q/(1−q)=1/(eΘ/Tv−1).零点エネルギーを除いて

Uv=νRΘeΘ/Tv−1,SvνR=−ln⁡(1−q)−j¯ln⁡q=Θ/TveΘ/Tv−1−ln⁡(1−e−Θ/Tv)

Tv→0 で両者は0,高温では Uv≃νRTv に近づく.

  1. 定積・断熱のエネルギー保存より

52Tf+ΘeΘ/Tf−1=52T1+ΘeΘ/T0−1

左辺は単調増加し,T0<Tf<T1 に唯一の根をもつ.二分法で Tf=720K.s(T)=Sv(T)/(νR) とおくと

ΔS=νR[52ln⁡TfT1+s(Tf)−s(T0)]=4.7×10−2JK−1

並進・回転の温度を Te,振動への移動を dE とすると dS=(1/Tv−1/Te)dE.両熱容量は正だから係数は移動とともに減り,共通温度で0となって最大を与える.

  1. x=Θ/Tf とおき,微分すると

CVv=Rx2ex(ex−1)2=0.944R

速い音を h,遅い音を l とする.速い音では占有数が固定され,CV,h=5R/2,γh=7/5.遅い音では CV,l=5R/2+CVv,γl=1.290 なので

vhvl=1.4001.290=1.042

1≫|δp|/p,1≫ωτc(衝突時間 τc)が必要である.音の角振動数を ω,振動緩和時間を τv とすると ωτv≫1 と 1≫ωτv が各極限の条件で,中間では減衰も伴う.

総合演習 36

オリジナル ★★★★★

蒸気圧の温度調節器は振動しても安定か

液体と飽和蒸気を封じたじゃばらが冷却弁を開きます.有効面積は A,外圧は pe,変位 x≥0 に対する閉じる力は F0+κx です.共存時のモルギブズエネルギーは両相で等しく,dg=−sdT+wdp,蒸発時の sv−sl=L/T を使えます.蒸気は理想気体,液体体積は無視でき,モル蒸発熱 L は一定です.Tr=340K,pr=1.00×105Pa です.

L=3.20×104Jmol−1,R=8.31Jmol−1K−1,A=4.0×10−4m2,pe=pr,F0=12N,κ=3.0×103Nm−1 とします.

温度Tの物体内に液体と飽和蒸気を封じたじゃばらを置く.有効面積Aの端面が正の変位xで冷却弁を開き,外圧pₑと閉じる力F₀+κxを受ける.入力はP,周囲への熱流はH(T−Tₐ),弁による冷却はBxで,Tₐ=300 Kである. 温度Tの物体内に液体と飽和蒸気を封じたじゃばらを置く.有効面積Aの端面が正の変位xで冷却弁を開き,外圧pₑと閉じる力F₀+κxを受ける.入力はP,周囲への熱流はH(T−Tₐ),弁による冷却はBxで,Tₐ=300 Kである.
  1. 飽和圧 ps(T),開き始めの温度,T∗=360K の平衡変位 x∗ を求めよ.

  2. 装置の温度は CdTdt=P−H(T−Ta)−Bx に従うとします.C=200JK−1,H=4.0WK−1,B=4.0×103Wm−1,Ta=300K です.定常温度 T∗ の電力と,瞬時に動く弁による減衰時間を求めよ.

  3. 弁の摩擦による遅れを τdxdt+x=xeq(T) とします.xeq は(1)の平衡変位,τ>0 です.振動を伴う τ の範囲と,振動が成長する可能性を調べよ.機械的仕事・摩擦熱は無視し,C は相変化も含む局所的な有効熱容量です.

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考え方

両相の平衡を仮定し,温度と変位を連立する.

  1. 共存曲線で dgv=dgl なので,(wv−wl)dp=(sv−sl)dT.wv=RT/p を代入すると

dpsps=LRT2dT,ps=prexp⁡[LR(1Tr−1T)]

開き始めに A(ps−pe)=F0 である.よって

Ton=[1Tr−RLln⁡pe+F0/Apr]−1=348K

開放時は xeq=[A(ps−pe)−F0]/κ.ps(T∗)=1.876×105Pa,x∗=7.7×10−3m となる.

  1. 定常収支より P=H(T∗−Ta)+Bx∗=2.7×102W.平衡での D=dxeqdT は

D=Aps(T∗)LκRT∗2=7.43×10−4mK−1

θ=T−T∗,ξ=x−x∗ として,瞬時には ξ=Dθ.よって Cdθdt=−(H+BD)θ,減衰時間は C/(H+BD)=29s.

  1. 線形化で Cdθdt=−Hθ−Bξ,τdξdt=Dθ−ξ.eλt に比例する解を代入し,消去すると

λ2+(HC+1τ)λ+H+BDCτ=0

r=BD/H,u=Hτ/C とすると,判別式が負になる条件は (u+1)2<4(1+r)u.境界は u±=(1+r±r)2 だから,数値では 10.5s<τ<238s で振動する.どの τ>0 でも根の和は負,積は正で,根の実部は負となり,成長は起こらない.|ξ|/x∗,L|θ|/(RT∗2) が十分小さく,蒸気の平衡化が応答より速い範囲で使う.液体消失や弁の閉鎖で模型が変わる.

10電磁気の総合問題(1)

電場に集まる気体,薄い板の抵抗,回転する電場,共振する受電回路の4題です.熱・振動・測定と組み合わせ(第7・14・17・20〜23・29章),検出の限界と最適な条件を問います.

総合演習 37

オリジナル ★★★★☆

電場に集まる気体と個数のゆらぎ

温度 T の密閉容器に中性分子 N 個を入れます.行き来できる A,B の体積は V,3V.A の平行板は電圧 V 一定,間隔 d,面積 S,V=Sd です.電場は A で E=V/d,B で0,境目だけ滑らかに変わります.分極は電場に平行で p=ε0αE,内部エネルギーは p2/(2ε0α) とします.永久双極子,分子間力,重力,電場への気体の影響を無視します.

温度 T の密閉容器に中性分子 N 個を入れる.A,B の体積はそれぞれ 𝒱,3𝒱 で,破線の境界を分子が通過できる.A の面積 S の平行板は間隔 d,電圧 V 一定で,電場 E = V/d を青の矢印で示す.B の電場は 0 である. 温度 T の密閉容器に中性分子 N 個を入れる.A,B の体積はそれぞれ 𝒱,3𝒱 で,破線の境界を分子が通過できる.A の面積 S の平行板は間隔 d,電圧 V 一定で,電場 E = V/d を青の矢印で示す.B の電場は 0 である.
  1. 内部エネルギーと相互作用 −pE から,A の1分子の有効な位置エネルギーを求めよ.ボルツマン因子 e−U/(kBT) を使い,密度比 nA/nB と平均個数 N―A を求め,η=ε0αE2/(2kBT) が小さいときの N―A−N/4 を示せ.

  2. A の分子が ΔNA 増すと,容量は ΔC=ε0αΔNA/d2 増します.電源の仕事と容量のエネルギー増加を求め,差を(1)と照合せよ.

  3. 分子の在否は独立とします.個数の標準偏差と,平均の増加が無電場の標準偏差を超す条件を求めよ.N=4.0×1018,T=250K,E=5.0×106Vm−1,α=6.0×10−30m3,kB=1.38×10−23JK−1,ε0=8.85×10−12Fm−1 で検算せよ.

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考え方

希薄気体,線形分極を仮定し,電源を含める.

  1. 平衡の分極を代入すると

uA=(ε0αE)22ε0α−ε0αE2=−12ε0αE2

uA=−u0,uB=0 とおく.従って nA/nB=eη.全個数 N=VnA+3VnB から

N―A=Neη3+eη≃N4+3N16η
  1. 電源から来る電荷は ΔQ=VΔC.Wb=V2ΔC=2u0ΔNA.容量のエネルギー増加は ΔUC=V2ΔC/2=u0ΔNA.従って Wb−ΔUC=u0ΔNA が移動へ渡る仕事である.

  2. f=N―A/N とおくと,在否の分散は f(1−f).N 個を足して σN=Nf(1−f),無電場では σ0=3N/4.求める条件は

3Nη16>3N4,η>43N

値は η=1.92×10−7,増加個数は約 1.4×1011,σ0≃8.7×108 で,条件を満たす.条件は 1≫η,αnA,線形分極,電離なしである.

総合演習 38

オリジナル ★★★★☆

薄板の抵抗から接触と発熱を分ける

厚さ h,抵抗率 ρ の十分広い一様な薄板に,半径 a の円形電極2個を中心間距離 b で取り付けます.厚さ全体で接触し,電流は平面内を流れます.1≫h/a,1≫a/b とし,電極自体の抵抗は無視します.各接触抵抗は一定の Rc です.電極間に電流 I を流します.全抵抗の測定値を示します.

b/a

20

40

80

160

Rtot(Ω)

0.517

0.627

0.737

0.848

抵抗率 ρ,厚さ h の薄板に,半径 a の円形電極を中心間距離 b で取り付ける.平面図に電流 I の流入と流出を示し,流入側の周囲に半径 r の破線円を描く.下の断面は厚さを拡大し,電極が厚さ全体で接触する様子を示す.各電極の接触抵抗は R_c である. 抵抗率 ρ,厚さ h の薄板に,半径 a の円形電極を中心間距離 b で取り付ける.平面図に電流 I の流入と流出を示し,流入側の周囲に半径 r の破線円を描く.下の断面は厚さを拡大し,電極が厚さ全体で接触する様子を示す.各電極の接触抵抗は R_c である.
  1. 流入点近くの電流密度を求め,流入・流出の電位を重ね合わせよ.板の抵抗を主要項で求めよ.

  2. h=2.0×10−4m とします.両端を直線化し, ρ,Rc を決め,中間の2点と照合せよ.測定誤差が最大 0.001Ω なら, ρ の相対誤差の上限も求めよ.

  3. w=ρj2 の許容値を wmax とします.電流の上限を求めよ.接触抵抗0で厚さを2倍にした場合の電極近くの w を,電圧一定と電流一定で比べよ.

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考え方

板端と温度変化を無視し,電流保存を使う.

  1. 半径 r の円筒面を通る電流から 2πrhj=I,従って j=I/(2πhr),E=ρI/(2πhr).dVdr=−E を積分すると電位は対数になる.流入電極 A,流出電極 B からの距離を rA,rB とすれば

V=ρI2πhln⁡rBrA+定数

A 表面で rA=a,rB≃b,B 表面では逆になる.電位差は ΔV=ρIln⁡(b/a)/(πh),従って Rs=ΔV/I を得る.

  1. X=ln⁡(b/a) に対し Rtot=AX+B,A=ρ/(πh),B=2Rc.端点から

A=0.848−0.517ln⁡8Ω,ρ=πhA≃1.0×10−4Ωm

切片は B=0.517Ω−Aln⁡20,従って Rc≃0.020Ω.中間は 0.6273,0.7377Ω で,誤差内である.差の誤差は 0.002Ω なので,距離・厚さを正確とした ρ の相対誤差上限は 0.002/0.331≃0.0060.

  1. 電極のすぐ外の電流密度は主要項で I/(2πha).従って

Imax≃2πhawmax/ρ

接触抵抗0,電圧 V 一定なら I=πhV/[ρln⁡(b/a)],j(a)=V/[2ρaln⁡(b/a)] は h によらず,w も変わらない.電流一定なら j が半分で w は 1/4 になる.近似には h/a,a/b,b/板幅 が小さいことが要る.接触部の発熱は別である.

総合演習 39

オリジナル ★★★★★

回転電場で同位体を選ぶ

磁場 B=Bez 中で,電荷 q>0,質量 m のイオンを原点で静止させます.時刻0から

E(t)=E0(cos⁡ωtex−sin⁡ωtey)

を加えます.ex などは座標軸の単位ベクトルです.半径 R の円周で回収します.両場は一様と近似します.衝突,空間電荷,放射損失を無視し,運動は xy 平面内で非相対論的とします.Ω=qB/m,w=vx+ivy,z=x+iy,δ=Ω−ω とおきます.

xy 平面の原点で静止する電荷 q > 0,質量 m のイオンと,半径 R の回収円周を示す.緑の ⊙ は +z 方向の一様磁場 B を表す.青の直線矢印は時刻 0 の電場 E_0 e_x,青の円弧矢印は角振動数 ω の時計回りの電場回転を表す.電極は模式的に描く. xy 平面の原点で静止する電荷 q > 0,質量 m のイオンと,半径 R の回収円周を示す.緑の ⊙ は +z 方向の一様磁場 B を表す.青の直線矢印は時刻 0 の電場 E_0 e_x,青の円弧矢印は角振動数 ω の時計回りの電場回転を表す.電極は模式的に描く.
  1. ローレンツ力で w の微分方程式を作り,δ≠0 で解け.δ→0 の速度と,速さが増す理由も求めよ.

  2. g=z+w/(iΩ) と定義します.g(t) とその大きさの上限を求めよ.共鳴での到達時間の主要項と,非共鳴で回収されない十分条件を求めよ.

  3. q=e,質量 40u,42u の2種を同時に入れ,軽い方に共鳴させます.B=0.40T,R=2.5×10−2m,E0=1.0×102Vm−1,e=1.60×10−19C,1u=1.66×10−27kg で到達時間と重い方の距離上限を求めよ.選別可能な E0 の上限も求めよ.

  4. h=6.63×10−34Js,c=3.0×108ms−1 として,軽いイオンの回収時の波長と R の比を見積もり,軌道と非相対論の近似を確かめよ.

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考え方

一様場で複素速度を解き,旋回中心の移動も数える.

  1. mdvxdt=q(Ex+Bvy),mdvydt=q(Ey−Bvx).a0=qE0/m とおけば

dwdt+iΩw=a0e−iωt,w=e−iΩt∫0ta0eiδsds=a0iδ(e−iωt−e−iΩt)

|w|=2a0|sin⁡(δt/2)|/|δ|.共鳴では w=a0te−iΩt となる.電場と速度が同方向で,仕事率 qE⋅v=qE0a0t>0 が K=ma02t2/2 を増やす.磁場は仕事をしない.

  1. dzdt=w より dgdt=a0e−iωt/(iΩ).積分して

g=−a0Ωω(1−e−iωt),|g|≤2a0Ωω=2E0Bω

z=−w/(iΩ)+g より,共鳴では |z| は E0t/B に近い.従って tR≃BR/E0 で,誤差は最大 2/Ω.ϵ=E0/(BΩR) を小さいとした.非共鳴では

|z|≤2E0B(1|δ|+1ω)

右辺が R 未満なら回収されない.

  1. ω=Ω40=9.64×105s−1,|δ42|=4.59×104s−1.従って tR≃1.0×10−4s,重い方の距離上限の計算値は 1.14125×10−2m で,有効数字2桁では 1.1×10−2m.丸め前の上限も R 未満である.十分条件から

E0<BR2(1/|δ42|+1/ω)≃2.2×102Vm−1

弱電場ほど到達は遅い.

  1. 回収時の速さは v≃Ω40R=2.4×104ms−1.λ=h/(mv)≃4.1×10−13m,λ/R≃1.7×10−11 で,波長は小さい.さらに v/c≃8.0×10−5,ϵ≃0.010 で両近似は整合する.初期の広がりも R,mΩR より小さく,衝突間の平均自由時間は tR より十分長いことが要る.

総合演習 40

オリジナル ★★★★★

短絡で変わる共振と受電の最適負荷

直列回路は抵抗 R1,コイル L1,可変容量 C と電圧源 V(t)=V0cos⁡ωt です.相互インダクタンス M>0 で結合した二次コイル L2 を抵抗 R2 で閉じます.固定した線形コイルで,M2<L1L2 とします.相互項はともに +MdIdt となる電流の正方向を採用します.定常状態を扱い,寄生容量,放射,巻線抵抗を無視します.

一次は抵抗 R_1,コイル L_1,可変容量 C,交流電圧源 V(t) = V_0 cos ωt の直列回路である.二次はコイル L_2 と抵抗 R_2 の閉回路で,相互インダクタンスは M > 0 である.巻き方向の対応をコイル端子の黒丸で示し,両コイルの黒丸端子へ流れ込む向きを電流の正方向として矢印で示す. 一次は抵抗 R_1,コイル L_1,可変容量 C,交流電圧源 V(t) = V_0 cos ωt の直列回路である.二次はコイル L_2 と抵抗 R_2 の閉回路で,相互インダクタンスは M > 0 である.巻き方向の対応をコイル端子の黒丸で示し,両コイルの黒丸端子へ流れ込む向きを電流の正方向として矢印で示す.
  1. 複素電流の連立式と,入力の Zin を求めよ.二次の発熱を一次の実効抵抗 r で表せ.

  2. 共振を Im⁡Zin=0 と定義します.R2→0,∞ の共振角振動数を求め,比べよ.

  3. L1=0.040H,L2=M=0.010H,ω=1.0×103s−1,R1=2.0Ω,V0=8.0V を保ち,R2 を変えるたびに C を共振へ調整します.受電電力最大の負荷と容量をすべて求めよ.

  4. 二次電力を電源の平均電力で割った値を効率とします.効率最大の負荷,効率,二次の電力を求め,電力最大の条件と比較せよ.

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考え方

複素振幅と eiωt の実部を使う.集中定数回路とし,二次を消去する.

  1. インピーダンス iωL,1/(iωC) を用いると

V0=(R1+iωL1+1iωC)I^1+iωMI^2,0=(R2+iωL2)I^2+iωMI^1

二次から I^2=−iωMI^1/(R2+iωL2).従って

Zin=R1+i(ωL1−1ωC)+ω2M2R2+iωL2,r=ω2M2R2R22+ω2L22

二次の発熱は P2=R2|I^2|2/2=r|I^1|2/2.一次の発熱との和が供給電力である.

  1. 短絡極限では誘導項が −iωM2/L2 となる.従って

ωs=1C(L1−M2/L2),ωo=1CL1

L1L2>M2 より ωs>ωo である.短絡は磁束変化を打ち消す.

  1. 共振では I^1=V0/(R1+r) が実数で,

P2=V02r2(R1+r)2,dP2dr=V02(R1−r)2(R1+r)3

最大は r=R1.x=R2/(ωL2) なら r=10x/(1+x2)Ω,drdx=10(1−x2)/(1+x2)2Ω.従って最大 r=5.0Ω>R1 は x=1 で実現する.r=R1 は x2−5x+1=0,根は x=(5±21)/2.共振容量は

C=1ω2[L1−ω2M2L2/(R22+ω2L22)]

解は約 (2.1Ω,33×10−6F),(48Ω,25×10−6F).ともに P2,max=V02/(8R1)=4.0W,効率 1/2 である.

  1. 効率は η=r/(R1+r) で,r とともに増す.最大は R2=ωL2=10Ω,r=5.0Ω,従って ηmax=5/7≃0.71.このとき C≃29×10−6F,P2≃3.3W.効率は高いが,電力は減る.結合を0にすると r,P2→0 となる.集中定数近似には装置寸法 ℓ に対し 1≫ωℓ/c が必要で,調整後は過渡現象の減衰を待つ.

11電磁気の総合問題(2)

静電場,荷電粒子の運動,磁束の保存,共振の測定の4題です.電磁気(第20〜24章)を力学と測定(第14章)に組み合わせ,安定の限界や補償の条件を調べます.

総合演習 41

オリジナル ★★★★☆

鏡像への引力で支持が失われる

接地した導体平面を z=0 とし,高さ h に永久電気双極子を置きます.固定電荷 ±q を長さ a の剛体棒で結び,p=qa は一定です.p は xz 平面内で +z 方向と角 θ をなします.1≫a/h とし,双極子の場を

E=ker3[3(p⋅n)n−p],ke=14πε0

と与えます.r は距離,n は観測方向の単位ベクトルです.導体は即座に応答し,損失を無視します.

  1. 鏡像双極子の位置・モーメントと,相互作用エネルギー U(h,θ) を求めてください.無限遠を基準とし,電荷を0から増して係数を確かめてください.

  2. 高さ一定の安定な向きと鉛直力を求めてください.

  3. 向きを θ=0 に固定し,高さ可変の支持装置を付けます.重力を含む装置の上向き合力は κ(h0−h) です.安定条件と限界高さを求めてください.κ=0.20Nm−1,h0=0.040m,ke=8.99×109Nm2C−2 で限界の p も求めてください.

接地した導体平面 z=0 の上に,長さ a の棒で電荷 ±q を結んだ双極子を置く.中心の高さ h と,+z 方向からの角 θ を示す.右は小問(3)の θ=0 の設定で,支持装置の基準高さ h₀ と与えられた上向き合力 κ(h₀−h) を示す. 接地した導体平面 z=0 の上に,長さ a の棒で電荷 ±q を結んだ双極子を置く.中心の高さ h と,+z 方向からの角 θ を示す.右は小問(3)の θ=0 の設定で,支持装置の基準高さ h₀ と与えられた上向き合力 κ(h₀−h) を示す.
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考え方

実電荷一定,導体電位0で,誘導電荷を含むエネルギーを微分する.接地線の仕事は0である.

  1. 鏡像は電荷の符号を反転して位置を平面で反射するから,中心は z=−h,p′=−psin⁡θex+pcos⁡θez.実物の中心で

Eim=kep8h3(sin⁡θex+2cos⁡θez)

実電荷を s 倍すれば誘導電位も s 倍である.実電荷の自己エネルギーを除く仕事は,∑jqjVim(rj)=−p⋅Eim より

U=−∫01sdsp⋅Eim=−kep216h3(1+cos2⁡θ)

鏡像を実物と数えると2倍になる.

  1. U は θ=0,π で最小,π/2 で最大だから,平面に垂直な向きが安定である.そこで U=−kep2/(8h3) を微分して

Fz=−∂U∂h=−3kep28h4

負号は導体への引力を表す.

  1. D=3kep2/8 とおけば F=κ(h0−h)−D/h4.つり合いは D=κ(h0−h)h4,0<h<h0 を満たす.右辺の微分は κh3(4h0−5h) なので最大は h∗=4h0/5.つり合いで dFdh=κ(4h0/h−5) より,h>h∗ の枝が安定である.従って

0<p<p∗,p∗2=8κ3keh05(4h05)4

数値は p∗=7.1×10−10Cm.等号では合力が近傍で負となり,下へのずれを戻せない.p→0 の安定な高さは h0 に戻る.近似には a/h が小さいことが必要である.

総合演習 42

オリジナル ★★★★★

加速管の偏向を二つの磁場で補う

長さ ℓ の真空管で,電荷 +e,質量 m のイオンを原点から静かに放します.管軸を x とし,一様電場 Eex と横磁場 Bez を加えます.出口 x=ℓ で許すずれは b,管内でも |y|≤b が必要です.相互作用と端の場を無視し,a=eE/m,Ω=eB/m,B>0 とします.

  1. 速度と位置を時刻の関数として求め,出口に到達する条件を求めてください.到達時刻を tf とし,α=Ωtf で |y(tf)|/ℓ を表してください.壁の条件も調べてください.

  2. 小さい b/ℓ に対する磁場上限を求めてください.ℓ=0.40m,b=0.0020m,出口エネルギー Kf=eEℓ=8.0×103eV,m=6.64×10−27kg,e=1.60×10−19C で計算してください.1eV=1.60×10−19J,c=3.00×108ms−1 とし,非相対論的な近似を確認してください.

  3. 前半 0<x<ℓ/2 の磁場を B1,後半を B2 とします.磁場の1次で出口変位を0にする B2/B1 を求めてください.出口の横速度も0になりますか.

管軸 x に沿う一様電場 E と,+z 方向の磁場 B を示す.電荷 +e,質量 m のイオンは原点で静止している.管の長さは ℓ,管軸から壁までの距離は b である.下図では x=ℓ/2 を境に前半の磁場 B₁ と後半の磁場 B₂ の領域を示す. 管軸 x に沿う一様電場 E と,+z 方向の磁場 B を示す.電荷 +e,質量 m のイオンは原点で静止している.管の長さは ℓ,管軸から壁までの距離は b である.下図では x=ℓ/2 を境に前半の磁場 B₁ と後半の磁場 B₂ の領域を示す.
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考え方

磁場は仕事をしない.補償では早く受けた横向きの力ほど変位に寄与する.

  1. 運動方程式は dvxdt=a+Ωvy,dvydt=−Ωvx.u=vx+ivy とすれば dudt+iΩu=a,初速度0から u=a(1−e−iΩt)/(iΩ).成分を分けて積分すると

vx=aΩsin⁡Ωt,vy=aΩ(cos⁡Ωt−1),x=aΩ2(1−cos⁡Ωt),y=aΩ2(sin⁡Ωt−Ωt)

最大の x は 2a/Ω2 なので

B≤2mEeℓ,1−cos⁡α=Ω2ℓa,|y(tf)|ℓ=α−sin⁡α1−cos⁡α,0<α≤π

等号では出口で vx=0 となり折り返す.vy≤0 だから出口のずれが最大である.

  1. t0=2ℓ/a,vf=2Kf/m,s=Ωt0 とおく.到達式から α≃s,前問の比の分子・分母はそれぞれ α3/6,α2/2 なので,ずれの比は s/3.s=3b/ℓ,t0=2ℓ/vf より上限は

Bmax≃3mvfb2eℓ2=4.8×10−4T

vf=6.2×105ms−1,s=0.015 で小さい.m(vx2+vy2)/2=eEx にも合い,vf/c=0.0021 なので非相対論的である.

  1. 1次では vx=2ax.mdvydt=−eB(x)vx を位置で積分し,変位を積分すると

vy(x)=−em∫0xB(u)du,y(ℓ)=−2em2a∫0ℓB(u)(ℓ−u)du

前半と後半の重みは ℓ3/2(1/2−1/(32)),ℓ3/2(−1/6+1/(32)).これらと B1,B2 の積の和を0にして

B2=−(1+22)B1,vy(ℓ)=−eℓ2m(B1+B2)=eℓ2mB1

横速度は補償されない.近似には maxj|eBjt0/m| が小さいことが必要で,途中の最大変位も壁の制限内とする.

総合演習 43

オリジナル ★★★★★

磁気圧とつり合っても円筒は止まらない

長さ ℓ,初半径 r0,全質量 Ms の薄い導体円筒で,長さ一定,壁全体が同じ動径速度で動く模型です.内部の軸方向磁場は一様に B0,外部は0で,磁束は壁の円周電流で保たれます.電源はなく,抵抗,弾性,端の場を無視します.初め留め具で静止させ,時刻0に留め具を外すと同時に一定外圧 pe>B02/(2μ0) を加えます.

  1. ファラデーの法則で磁束保存を示し,半径 r での磁場,磁場エネルギー,磁気圧を求めてください.一定にする量も示してください.

  2. 等圧点の半径 re と,散逸なしで最初に内向き運動が止まる半径 rt を求めてください.B0=0.80T,r0=0.020m,ℓ=0.30m,pe=1.0×106Pa,μ0=4π×10−7NA−2 で両半径と折り返し時の磁場を計算してください.

  3. 弱い機械的減衰を加え,静止までの発熱を求めてください.外圧の仕事を含めてください.

薄い導体円筒の初半径 r₀,長さ ℓ,全質量 M_s,内部の一様な軸方向初磁場 B₀ を示す.外部の磁場は0である.一定外圧 p_e は壁の内向きに作用する.断面の両矢印は壁が動径方向に動く模型を表す. 薄い導体円筒の初半径 r₀,長さ ℓ,全質量 M_s,内部の一様な軸方向初磁場 B₀ を示す.外部の磁場は0である.一定外圧 p_e は壁の内向きに作用する.断面の両矢印は壁が動径方向に動く模型を表す.
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考え方

磁束一定の場と外圧の仕事を合わせる.等圧でも速度は残る.減衰は磁束を壊さない機械的散逸とする.

  1. 動く壁に沿って一周した E+v×B の積分は完全導体では0.ファラデーの法則から dΦdt=0,従って Φ=πr2B=πr02B0.

B=B0r02r2,UB=B2πr2ℓ2μ0=Φ2ℓ2μ0πr2

磁束一定での力 −dUBdr=Φ2ℓ/(μ0πr3) を側面積 2πrℓ で割れば pm=B2/(2μ0) となる.

  1. p0=B02/(2μ0) とおく.p0(r0/re)4=pe から re=r0(p0/pe)1/4.外圧の仕事は peπℓ(r02−r2) なので

Msd2rdt2=2πrℓ(pm−pe),12Ms(drdt)2+UB+peπℓr2=(p0+pe)πℓr02

折り返しでは z=r2/r02 により p0/z+pez=p0+pe,すなわち (z−1)(pez−p0)=0.別の根から

rt=r0p0pe<re,Bt=B0pep0

等圧点で内向き速度が最大となり,慣性で通過する.数値は re=0.014m,rt=0.010m,Bt=3.1T.

  1. Ueff=UB+peπℓr2 の最小値は 2πℓr02p0pe.従って発熱は

Q=πℓr02(pe−p0)2=93J

外圧の仕事から磁場エネルギーの増加を引いた値である.pe→p0 で両半径は r0,発熱は0となる.近似には壁厚と半径の比,r/ℓ,電磁場の伝播時間と運動時間の比が小さいことが必要である.有限抵抗なら観測時間と磁束減衰時間の比も小さくなければならない.

総合演習 44

オリジナル ★★★★☆

共振の頂点では振幅計が鈍くなる

電圧源 V0cos⁡ωt に抵抗 R,コイル L(x)=L0(1+ηx),容量 C を直列につなぎます.x は試料の変位,η は未知で,ω2L0C=1 に固定します.V0=6.0V,R=20Ω,L0=0.010H,C=1.0×10−8F とし,校正誤差は無視します.H=V^R/V0 とし,V^R は抵抗電圧の複素振幅です.定常状態を測り,コイル・試料の損失と測定器の負荷を無視します.

  1. 複素インピーダンスから H を求めてください.δ=(L−L0)/L0=ηx,Q=ωL0/R として,振幅の変化と直交成分の変化が δ の何次から始まるか比べてください.直交成分は入力に対する虚部です.

  2. 両端2点を直線化して η を求め,模型との整合を確かめてください.

x/(10−6m)

ReH

ImH

−20

0.96154

0.19231

0

1.00000

0.00000

20

0.96154

−0.19231

  1. 振幅の減少と直交成分を ΔV=3.0×10−4V まで検出できます.原点付近の最小変化率・変位を両方式で比べ,変化の符号も判別できるか答えてください.

電圧源 V₀ cos ωt,抵抗 R,コイル L(x)=L₀(1+ηx),容量 C を直列につなぐ.抵抗の両端に電圧測定端子を設け,試料の変位 x を添える.ω²L₀C=1 に固定する.下図は入力を実軸とする複素平面の両軸である. 電圧源 V₀ cos ωt,抵抗 R,コイル L(x)=L₀(1+ηx),容量 C を直列につなぐ.抵抗の両端に電圧測定端子を設け,試料の変位 x を添える.ω²L₀C=1 に固定する.下図は入力を実軸とする複素平面の両軸である.
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考え方

ZL=iωL,ZC=1/(iωC) を使う.電圧は複素振幅に eiωt を掛けた実部である.

  1. Z=R+i(ωL−1/(ωC)),I^=V0/Z,V^R=RI^.z=Qδ とおけば

H=11+iz=1−iz1+z2,|H|=11+z2,ImH=−z1+z2

小さい |z| に対し 1−|H|≃z2/2,ImH≃−z.振幅は2次,直交成分は1次である.数値は ω=1.0×105s−1,Q=50.

  1. A=ReH,D=ImH として

Y=Im1H=−DA2+D2=Qηx

表の両端で Y≃−0.200,0.200.傾きは 0.400/(40×10−6m)=1.00×104m−1 なので η=200m−1.原点で Y=0,全点で Re(1/H)≃1 となり,模型と合う.損失増加なら後者も変わる.

  1. ϵ=ΔV/V0=5.0×10−5 とする.振幅方式では 1−1/1+z2=ϵ より

|δ|A=(1−ϵ)−2−1Q≃2ϵQ=2.0×10−4

直交成分方式は |z|/(1+z2)=ϵ の原点に近い根で,|δ|P≃ϵ/Q=1.0×10−6.|x|=|δ|/|η| より最小変位はそれぞれ 1.0×10−6m,5.0×10−9m.直交成分は約200倍敏感で,虚部から δ の符号も分かる.近似に要る |Qδ| は両限界で 0.010,5.0×10−5 と小さい.1/H を用い,δ=0 で H=1 に戻ることも確かめられる.

12光と原子の総合問題(1)

分散と干渉から群遅延へ,動く鏡の反射から光子の反跳へ,電子の閉じこめから空洞の安定性へ,中性子の流出から寿命の測定へと広げる4題です.主に力学(第5・6章),相対論と測定(第13・14章),分子運動論(第15章),波と光(第25〜27章),原子(第29・31章)を使います.

総合演習 45

オリジナル ★★★★☆

すべての色で位相がそろう位置

間隔 d の細い二重スリットを正面から照らし,上側だけに厚さ ℓ の透明板を置きます.焦点距離 f のレンズの後方焦点面で,上向き座標を x とします.上側から下側を引いた幾何学的光路差は −dx/f,板の屈折率は n(λ)=A−Bλ です.A,B>0,λ=c/ν は真空波長とします.色収差・反射・吸収を無視し,振幅は等しいとします.

間隔 d の二重スリットを正面から照らし,上側の光だけが厚さ ℓ の透明板を通る.レンズから後方焦点面までの距離は f で,焦点面の座標 x は光軸から上向きを正とする.光線の矢印は光の進む方向を示す. 間隔 d の二重スリットを正面から照らし,上側の光だけが厚さ ℓ の透明板を通る.レンズから後方焦点面までの距離は f で,焦点面の座標 x は光軸から上向きを正とする.光線の矢印は光の進む方向を示す.
  1. 時間因子を e−iωt として,上側から下側を引いた位相差 δ(ν,x) を求め,振動数によらず位相差が一定になる位置 xg を求めよ.群遅延でこの位置を解釈せよ.

  2. f=0.600m,d=3.00×10−3m,ℓ=18.0×10−6m の装置で,xg=1.80×10−3m でした.位相差の次数も確定し,δ=−π/2 と分かりました.A,B と λ=600×10−9m での屈折率を求めよ.xg は明線か.

  3. 振動数ごとの強さは ν0−Δν から ν0+Δν まで一定で,それ以外では0とします.ν0>Δν で,異なる色の強さは足します.干渉なしで規格化した強さを求めよ.一経路に色によらない位相 ϕ を加えて走査したときの縞の可視度 V=(Imax−Imin)/(Imax+Imin) と,xg から最初に可視度が0になる距離を求めよ.Δν=2.00×1013s−1,c=3.00×108ms−1 とせよ.

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考え方

近軸の幾何光学で経路差を求め,同じ色の複素振幅を重ねてから色ごとの強さを積分する.

  1. D=ℓ(A−1)−dx/f とおくと

δ=2πλ[ℓ(n−1)−dxf]=2π(νDc−Bℓ)

D=0 なら色によらず,xg=fℓ(A−1)/d.相対群遅延は,ω=2πν として dδdω=D/c である.また ng=n+νdndν=A となり,板の群遅延 ℓ(A−1)/c が幾何学的な遅延で相殺される.

  1. 測定値から A=1+dxg/(fℓ)=1.500.残る位相 −2πBℓ=−π/2 より B=1/(4ℓ)=1.39×104m−1,したがって n=1.492.各色で cos⁡δ=0 なので明線ではない.位相が色によらず一定でも,0とは限らない.

  2. 同じ色では |1+ei(δ+ϕ)|2/2=1+cos⁡(δ+ϕ).s=2πD/c,δ0=sν0−2πBℓ とおけば

I(x,ϕ)Iinc=1+12Δν∫−ΔνΔνcos⁡(δ0+ϕ+su)du=1+sin⁡(sΔν)sΔνcos⁡(δ0+ϕ)

Iinc は干渉なしの強さで,s=0 では因子 sin⁡(sΔν)/(sΔν) の極限を1とする.位相走査より

V=|sin⁡(sΔν)sΔν|,|x−xg|zero=cf2dΔν=1.50×10−3m

単色極限 Δν→0 では全位置で V→1.近軸条件は 1≫|x|/f で,模型は使用帯域に限る.

総合演習 46

オリジナル ★★★★☆

中性子の寿命と壁の損失を分ける

同体積 V=2.00×10−3m3,壁面積 A1=0.100m2,A2=0.200m2 の二容器に,速さ v=4.00ms−1 の中性子を保存します.位置と方向は一様で,壁が方向を速く混ぜます.衝突ごとの損失確率 ϵ は両容器で等しく十分小さいとします.崩壊定数 λn は未知です.

壁の小窓の面積 S を変え,計数効率と背景を補正した減衰の傾き λ=−dln⁡Ndt を測りました.流出は同面積の壁損失を置き換えますが,ϵS の補正は無視します.

S(m2)

容器1の λ(s−1)

容器2の λ(s−1)

0

1.25×10−3

1.50×10−3

2.00×10−6

2.25×10−3

2.50×10−3

4.00×10−6

3.25×10−3

3.50×10−3

容器1と容器2はともに体積 V で,壁面積はそれぞれ 𝒜₁,𝒜₂ である.各容器の窓はふたで開く面積 S を変えられる.青い点は中性子,青い矢印は共通の速さ v と異なる進行方向を示す.容器と窓は模式図である. 容器1と容器2はともに体積 V で,壁面積はそれぞれ 𝒜₁,𝒜₂ である.各容器の窓はふたで開く面積 S を変えられる.青い点は中性子,青い矢印は共通の速さ v と異なる進行方向を示す.容器と窓は模式図である.
  1. 壁に向かう半球上の方向平均を行い,単位面積・単位時間に壁へ到達する数が Nv/(4V) になることを導け.N(t) と λ(S,A) を求めよ.

  2. 表の傾きが速さの測定値と整合するか調べ,ϵ と平均寿命 τn=1/λn を求めよ.窓を閉じた容器1だけから寿命を推定した場合の偏りも求めよ.

  3. 直線の切片 b1,b2 の標準不確かさが,独立に ub=1.00×10−5s−1 でした.面積などの不確かさは無視し,λn と τn の標準不確かさを求めよ.

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考え方

到達率を平均し,独立な損失率を足す.壁面積の異なる測定から崩壊の切片を分離する.

  1. 壁法線との角を θ とすると,方向の割合は dΩ/(4π).壁へ向かう方向だけを数えて

NV∫02π∫0π/2vcos⁡θ4πsin⁡θdθdϕ=Nv4V

したがって dNdt=−λN,λ=λn+v(ϵA+S)/(4V),N=N0e−λt である.窓補正を残せば括弧内は ϵA+(1−ϵ)S となる.

  1. 表の傾きは Δλ/ΔS=5.00×102s−1m−2=v/(4V) で整合する.切片の差から

ϵ=4V(b2−b1)v(A2−A1)=5.00×10−6,λn=2b1−b2=1.00×10−3s−1

よって τn=1.00×103s.容器1だけで壁損失を無視すると 1/b1=800s となり,20 %短く推定する.

  1. 独立な誤差の2乗和から uλn=4ub2+ub2=2.24×10−5s−1.dτndλn=−1/λn2 より uτn=uλn/λn2=22.4s,丸めれば τn=(1000±22)s である.

壁で方向が混ざる時間を tmix とすると,1≫λtmix が一様性の条件である.誤差伝播には 1≫uλn/λn,小窓近似には 1≫S/A を要し,窓補正の相対誤差は ϵ 程度である.

総合演習 47

オリジナル ★★★★★

動く鏡の反射と光子の反跳

静止質量 M の鏡が真空中で x 軸上を速度 v=βc で動きます.−1<β<1 とし,光子は正方向に進んで鏡へ垂直に入射し,負方向に反射します.入射・反射光子のエネルギーを ε=hν,ε′=hν′ とします.外力・吸収・内部励起はなく,鏡の静止質量は変わりません.鏡には E2−(pc)2=M2c4,E=γMc2,p=γMv,γ=1/1−β2 が成り立ちます.光子の運動量は入射で ε/c,反射で −ε′/c です.

右向きを x 軸の正方向とする.入射光子は正方向に進み,エネルギーは ε = hν である.反射光子は負方向に進み,エネルギーは ε′ = hν′ である.静止質量 M の鏡について,入射前の速度 v = βc が正の場合と負の場合を上下に示す.光子の線は方向を見分けるため上下にずらしてあり,入射と反射は鏡に垂直である. 右向きを x 軸の正方向とする.入射光子は正方向に進み,エネルギーは ε = hν である.反射光子は負方向に進み,エネルギーは ε′ = hν′ である.静止質量 M の鏡について,入射前の速度 v = βc が正の場合と負の場合を上下に示す.光子の線は方向を見分けるため上下にずらしてあり,入射と反射は鏡に垂直である.
  1. 保存則と鏡の不変量から r=ν′/ν を求めよ.η=ε/(Mc2) を用いてよい.

  2. 鏡の反跳を無視できる極限で r を求め,鏡の静止系への変換 ν∗=γν(1−β) と,戻す変換 ν′=γν∗(1−β) からも確かめよ.一次近似と厳密値の差も求めよ.

  3. 自由な鏡の反射で反射光が赤方偏移する条件と青方偏移する条件を求めよ.特に β<0 でも赤方偏移する場合はあるか.初め静止した鏡で光子が失うエネルギーを求め,1≫η で鏡の運動エネルギーと照合せよ.

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考え方

鏡を含む保存則で,ドップラー効果と反跳を同時に扱う.

  1. 反射後の鏡を添字 f で表すと,Ef=γMc2+ε−ε′,pfc=γMβc2+ε+ε′.これを Ef2−(pfc)2=M2c4 に入れ,初めの不変量を差し引くと

2γMc2[ε(1−β)−ε′(1+β)]−4εε′=0

従って

r=1−β1+β+2η/γ
  1. η→0 では r0=(1−β)/(1+β).静止系で反射前後の振動数が等しいとする二つの変換からも r0=γ2(1−β)2=(1−β)/(1+β) となる.小さい |β| で

r0=1−2β+2β21+β
  1. 分母は正なので,r<1 は β>−η/γ,r>1 は β<−η/γ と同値である.接近の効果より反跳が大きければ,赤方偏移する.等振動数となる負の速度は,β=−η1−β2 を解いて β=−η/1+η2.

β=0 なら r=1/(1+2η) で,鏡が得る運動エネルギーは

Kf=ε−ε′=2ε2Mc2+2ε

1≫η では Kf≈2ε2/(Mc2).力積 pf≈2ε/c より pf2/(2M) も一致する.反跳なしの条件は 1≫2η/[γ(1+β)],速度の一次近似の条件は 1≫|β| である.

総合演習 48

オリジナル ★★★★★

電子が作る空洞はどこまで耐えるか

液体中の電子1個が,半径 R の球形空洞に閉じこめられています.壁は電子を通さず,最低エネルギーは Ee=π2ℏ2/(2mR2) とします.表面エネルギーは表面張力 σ と球の表面積の積です.一定外圧 p の下で空洞を作る仕事は p と空洞体積の積です.分極と電気的な自己エネルギーの変化を無視し,電子は最低準位を保って半径の変化に速く追随します.

液体中の半径 R の球形空洞に電子1個が閉じこめられている.空洞の表面張力は σ である.赤い矢印は外圧 p が正のときに空洞の表面を内向きに押す方向を示す.電子の点は存在を模式的に表し,軌道を表さない. 液体中の半径 R の球形空洞に電子1個が閉じこめられている.空洞の表面張力は σ である.赤い矢印は外圧 p が正のときに空洞の表面を内向きに押す方向を示す.電子の点は存在を模式的に表し,軌道を表さない.
  1. 電子・表面・外圧の仕事を足した有効エネルギー U(R) を書き,p=0 での平衡半径 R0 と安定性を求めよ.m=9.11×10−31kg,h=6.63×10−34Js,ℏ=h/(2π),σ=3.80×10−4Jm−2 で R0 と電子のエネルギーを計算せよ.

  2. p>0 での平衡半径が唯一で安定であることを示せ.q=pR0/(2σ),y=R/R0 を使い,1≫q で半径の一次近似を求めよ.

  3. 液体を引っ張った状態を p<0 の一定圧力として模型化します.局所安定な空洞の圧力範囲と,平衡が消える臨界半径・圧力を求めよ.局所安定と無限膨張を区別せよ.

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考え方

閉じこめは空洞を広げ,表面と正の外圧は縮める.外圧の仕事を含むエネルギーの停留点と曲率を調べる.

  1. K=π2ℏ2/(2m) とおく.圧力を保つ外界の仕事を含めて

U=KR2+4πσR2+4πpR33,dUdR=−2KR3+8πσR+4πpR2

p=0 の停留条件は K=4πσR04 より R0=[K/(4πσ)]1/4.d2UdR2=6K/R4+8πσ は R0 で 32πσ>0 となり,安定である.R0=1.89×10−9m,Ee=K/R02=1.70×10−20J.電子と表面のエネルギーが等しい.

  1. 一般の停留条件と無次元形は

K=4πσR4+2πpR5,y4+qy5=1

p>0 では右辺の半径依存部分が0から単調に増すので,正の根は一つ.停留条件を曲率に代入すると d2UdR2=32πσ+20πpR>0 である.小さい q では y=1+aq と置き,一次まで 1+4aq+q=1 より y≈1−q/4.R≈R0[1−pR0/(8σ)].

  1. q<0 で F(y)=y4+qy5 とおく.F は ym=−4/(5q) まで増し,その後減少し,最大値は F(ym)=ym4/5.従って二つの停留点がある条件は ym4>5,すなわち

−455/4<q<0

小さい根は曲率正で局所安定,大きい根は曲率負で障壁となる.両根が合体する条件 F=1,dFdy=0 から

Rc=51/4R0,pc=−8σ55/4R0=−2.16×105Pa

よって負圧で局所安定な平衡があるのは pc<p<0.p=pc の点は極小でなく,p<pc では停留点もない.一方,負圧では R→∞ で U→−∞ なので,小さい根は障壁を越えると膨張する準安定状態である.寸法では K/σ が長さの4乗,σ/R0 が圧力となる.微小圧力近似には 1≫|q|,基底状態の仮定には 1≫kBT/ΔE を要し,ΔE は励起のエネルギー,T は温度,kB はボルツマン定数である.半径が分子間隔に近づくと,連続体模型は破れる.

13光と原子の総合問題(2)

分光連星,電子,半導体,中間子の4題です.第10・27・29〜31章の内容を,振動・測定・拡散・相対論と組み合わせ,最適な条件を調べます.発展の章から使う式は問題の中で示します.

総合演習 49

オリジナル ★★★★☆

分光連星の質量と,二本の線が見える時間

質量 M1,M2 の星が周期 P=12.0day で円運動します.軌道面の法線と視線の角は i,重心の視線速度は一定です.両星の水素線を識別し,中心波長を測りました.静止波長は λ0=656.28nm,誤差は丸めだけです.遠ざかる視線速度を正とし,vr=c(λ−λ0)/λ0 を使います.

t/P

星1の波長(nm)

星2の波長(nm)

0

656.2800

656.2800

1/4

656.4113

656.0831

3/4

656.1487

656.4769

水素の熱運動は温度 T=6000K,視線速度の標準偏差 kBT/mH のガウス分布です.次数 r,線条数 N の回折格子の装置応答もガウス形と近似し,半値全幅を wg=λ0/(rN) とします.中心間隔が合成幅以上なら分離できると定め,自転・圧力の幅は無視します.c=3.00×108ms−1,G=6.67×10−11m3kg−1s−2,kB=1.38×10−23JK−1,mH=1.67×10−27kg,1day=86400s です.

二星の円軌道を斜めから見た模式図.星の質量は M₁,M₂,周期は P.重心を通る軌道面の法線と視線の角が i である.右側には二星の光が線条数 N の回折格子へ入射する様子を別に示す.軌道の大きさと星の位置は模式的に描いている. 二星の円軌道を斜めから見た模式図.星の質量は M₁,M₂,周期は P.重心を通る軌道面の法線と視線の角が i である.右側には二星の光が線条数 N の回折格子へ入射する様子を別に示す.軌道の大きさと星の位置は模式的に描いている.
  1. 表から速度振幅 K1,K2 を決め,質量比と全質量・傾きの決まる組み合わせを求めよ.

  2. i=60.0∘ とわかったとき,星間距離と両質量を求めよ.

  3. 熱による半値全幅を導き,r=1,N=2.00×104 で線を分離できる時間の割合を求めよ.

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考え方

円軌道の速度を投影し,万有引力と結ぶ.低速近似と指定された線幅の模型を使う.

  1. 表の変位から K1≃60.0kms−1,K2≃90.0kms−1.重心の視線速度は0.重心からの距離を a1,a2,星間距離を a=a1+a2 とすると

M1a1=M2a2,Kj=2πajPsin⁡i,M1M2=K2K1=32

相対運動は (2π/P)2a=G(M1+M2)/a2.asin⁡i=P(K1+K2)/(2π) を代入して

(M1+M2)sin3⁡i=P(K1+K2)32πG

を得る.全質量には傾きの情報が要る.

  1. 速度振幅は表から求めた丸め前の値を使う.周期を秒へ換算して a=2.86×1010m,M1+M2=1.29×1031kg.質量比から M1=7.72×1030kg,M2=5.15×1030kg である.

  2. σv=kBT/mH とおく.exp⁡[−vr2/(2σv2)]=1/2 の両根の差は 22ln⁡2σv なので,波長幅は

wT=2λ0c2kBTln⁡2mH=0.0363nm

分散を加え,w=wT2+wg2=0.0489nm.中心間隔は Δλ=λ0(K1+K2)|sin⁡ϕ|/c,ϕ=2πt/P で,最大値は 0.328nm.s=w/Δλmax=0.149 とすると,分離できない位相の全長は 4arcsin⁡s.求める割合は 1−2arcsin⁡s/π=0.905 である.

低温ほど分離しやすい.近似には Kj/(csin⁡i) と kBT/mH/c が十分小さいことを要する.

総合演習 50

オリジナル ★★★★☆

電子を詰めると,壁のばねが硬くなる

区間 0<x<b に質量 m の電子を N 個閉じ込め,外のポテンシャルを無限大とします.準位は En=n2h2/(8mb2),n=1,2,… で,各空間状態に逆向きスピンの電子を2個まで入れられます.温度 0K,電子間相互作用・静電エネルギーは無視する模型です.左壁は固定し,質量 M の右壁を,自然な間隔 b0 に戻す定数 k のばねにつなぎます.電子数一定で電源はなく,壁は遅く動き,電子は常に最低エネルギー状態です.

左壁を固定し,質量 M の右壁を定数 k のばねで固定端につなぐ.二壁の間隔は b,内部の電子は N 個で,各電子の質量は m.破線はばねが自然長のときの右壁の位置で,左壁からの間隔は b₀.右壁は破線より右にあり,ばねは自然長より短い.電子の点は個数や位置を表すための模式的な例である. 左壁を固定し,質量 M の右壁を定数 k のばねで固定端につなぐ.二壁の間隔は b,内部の電子は N 個で,各電子の質量は m.破線はばねが自然長のときの右壁の位置で,左壁からの間隔は b₀.右壁は破線より右にあり,ばねは自然長より短い.電子の点は個数や位置を表すための模式的な例である.
  1. N=2q とする.C=h2/(8m) とおき,最低の全電子エネルギー UN=AN/b2 の AN を求めよ.∑n=1qn2=q(q+1)(2q+1)/6 を使ってよい.

  2. 電子が右壁を押す力,平衡間隔 b∗ の方程式を求め,唯一性・安定性を示せ.

  3. 小振動の角振動数を求めよ.N=6,k=7C/b04 では,平衡間隔と角振動数はどうなるか.

  4. 大きな N の間隔と角振動数を求めよ.排他律を外して全電子が n=1 を占めるなら,間隔の N 依存性はどう変わるか.

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考え方

粒子数一定でエネルギーを微分する.壁は古典的に扱い,電子の励起を無視する.

  1. 下から q 個の空間状態に各2個を詰め,

AN=2C∑n=1qn2=C3q(q+1)(2q+1)
  1. 電子の仕事 −dUN より,右向きの力は FN=−dUNdb=2AN/b3.全ポテンシャルは

U=ANb2+k2(b−b0)2,dUdb=−2ANb3+k(b−b0)

よって k(b∗−b0)=2AN/b∗3,b∗>b0.左辺は増加,右辺は減少するので交点は一つ.さらに d2Udb2=k+6AN/b4>0 で,この平衡は安定である.

  1. ξ=b−b∗ とおき,1次の展開は

Md2ξdt2=−(k+6ANb∗4)ξ,Ω2=kM(4−3b0b∗)

平衡条件で最後の式へ変形した.指定条件では A6=28C より b∗=2b0,Ω=5k/(2M) となる.

  1. AN≃CN3/12 である.b∗ が b0 より十分大きい極限では kb∗4≃2AN となり,

b∗≃(C6k)1/4N3/4,Ω→2k/M

排他律を外せば AN=NC で,間隔は N1/4 に比例する.角振動数の極限は同じ.

小振動には 1≫|ξ|/b∗,励起しない条件には kBT/ΔE と ℏΩ/ΔE が十分小さいことを要する.ΔE は最低励起エネルギーで,N=6 では 7C/b∗2 である.大 N の式も最高準位の En/(mc2) が小さい範囲で使う.

総合演習 51

オリジナル ★★★★★

よく吸収する厚さと,電荷を取り出せる厚さ

厚さ d の半導体膜の前面 x=0 に光子流束 Φ を入射させます.反射を無視し,吸収係数 α で一吸収につき正孔1個を作ります.生成率は g(x)=αΦe−αx,拡散係数は D,再結合までの平均寿命は τ です.過剰正孔密度を p(x),粒子流束を j=−Ddpdx とします.内部電場・空間電荷を無視し,電子は別の電極へ回収され,正孔だけが収集を制限する模型です.

定常収支から Dd2pdx2−p/τ+g(x)=0 が成り立ちます.前面は正孔を反射し dpdx∫|x=0=0,背面は完全に回収し p(d)=0 です.移動度 μ との関係 D=μkBT/e を使ってよい.μ=0.0800m2V−1s−1,T=300K,τ=5.00×10−6s,kB=1.38×10−23JK−1,e=1.60×10−19C です.

厚さ d の半導体膜に,前面 x=0 から光子流束 Φ が入射する.光吸収による生成率は g(x),再結合までの平均寿命は τ.白抜きの円は正孔,塗りつぶした円は電子を模式的に示す.前面は正孔を反射し,背面電極は正孔を回収する. 厚さ d の半導体膜に,前面 x=0 から光子流束 Φ が入射する.光吸収による生成率は g(x),再結合までの平均寿命は τ.白抜きの円は正孔,塗りつぶした円は電子を模式的に示す.前面は正孔を反射し,背面電極は正孔を回収する.
  1. 半無限媒質で生成がない場合の減衰長 ℓ を導き,数値を求めよ.

  2. Dd2Pdx2−P/τ=0,dPdx∫|x=0=0,P(d)=1 を満たす補助関数 P(x) を求めよ.定常方程式に P を掛けて積分し,背面の電流密度を J=e∫0dg(x)P(x)dx と表せ.

  3. αℓ=1 の材料について,入射光子の回収率 η=J/(eΦ) を z=d/ℓ の関数として求めよ.最適厚さと最大回収率を数値で求め,最大点の唯一性を示せ.

  4. 薄膜・厚膜の極限から,吸収率だけでは電流が決まらない理由を述べよ.

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考え方

生成数を回収確率で重み付けする.D,τ は一定,表面再結合はないとする.

  1. p∝e−x/ℓ を Dd2pdx2−p/τ=0 に入れると D/ℓ2=1/τ.よって ℓ=Dτ.D=2.07×10−3m2s−1,ℓ=1.02×10−4m となる.

  2. A(u)=(eu+e−u)/2 と定義する.解 P=C1ex/ℓ+C2e−x/ℓ と前面条件から C1=C2.背面条件から P(x)=A(x/ℓ)/A(d/ℓ) となる.二式を掛け合わせて引き,積分して

D(Pd2pdx2−pd2Pdx2)=−gP,D[Pdpdx−pdPdx]0d=−∫0dgPdx

前面の項は0,背面は Ddpdx∫|x=d=−j(d) だから,J=ej(d)=e∫0dgPdx.P は回収確率に対応する.

  1. u=x/ℓ,z=d/ℓ として e−uA(u)=(1+e−2u)/2 を積分すれば

η=1A(z)∫0ze−uA(u)du=F(z)A(z),F(z)=z2+1−e−2z4

微分が0となる条件 AdFdz=FdAdz は

1+e−2z2=F(z)ez−e−zez+e−z

根は z∗=1.02574,従って d∗=1.04×10−4m,ηmax=0.464.唯一性は H=AdFdz−FdAdz で示せる.d2Adz2=A より dHdz=A(d2Fdz2−F)<0,H(0)=1,大きな z で負なので,正の根は一つだけである.

  1. 小さい z では F=z−z2/2+z3/3+⋯,A=1+z2/2+⋯ より η=z−z2/2−z3/6+⋯.先頭は吸収率 1−e−z≃z と一致する.大きな z では F≃z/2+1/4,A≃ez/2 より η≃(z+1/2)e−z→0.前面で生成された正孔が背面までに再結合するためである.

Dτ は長さの2乗で,0<P≤1 より η≤1−e−z.展開は z が小さいか大きい範囲で使う.模型には自由行程の d,ℓ,1/α に対する比と,過剰密度の平衡多数キャリア密度に対する比が十分小さいことを要する.

総合演習 52

オリジナル ★★★★★

娘粒子も崩壊するビームの最適検出位置

x=0 で作った N0 個の π 中間子が真空中を右へ飛び,π→μ+ν と崩壊します.全エネルギーは Eπ=2.80GeV.各崩壊の割合 f=0.0250 が,右へ進む狭い帯 Eμ=1.80GeV の観測対象を供給します.選択割合は位置によらず,角度・散乱・吸収を無視します.x=L で生存した対象だけを数え,μ の崩壊生成物は数えません.

静止系の寿命・エネルギーは τπ0=2.60×10−8s,τμ0=2.20×10−6s,mπc2=0.140GeV,mμc2=0.106GeV とし,c=3.00×108ms−1 です.E=γmc2,v=c1−γ−2,寿命 τ=γτ0 を使ってよい.

生成点 x=0 で作った N₀ 個の π 中間子が真空中を右へ進む.位置 x で π→μ+ν と崩壊し,割合 f が観測対象の μ を供給する.検出器の位置は L で,娘粒子の残る距離は L−x.与えられた全エネルギー Eπ と Eμ を示す. 生成点 x=0 で作った N₀ 個の π 中間子が真空中を右へ進む.位置 x で π→μ+ν と崩壊し,割合 f が観測対象の μ を供給する.検出器の位置は L で,娘粒子の残る距離は L−x.与えられた全エネルギー Eπ と Eμ を示す.
  1. 両粒子の平均崩壊長 a,b を求めよ.時間の遅れを入れない計算では何倍の誤りになるか.

  2. 検出される個数 Nμ(L) を,生成位置についての積分から求めよ.

  3. 検出数を最大にする L∗ と Nμ(L∗)/N0 を計算せよ.最大点の生成と崩壊の収支も示せ.

  4. b/a≫1 で L∗ を近似せよ.μ の崩壊を無視する模型で有限の最適位置が消える理由と,崩壊を無視してよい無次元条件を述べよ.

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考え方

生成位置ごとに生存確率を掛ける.エネルギー幅と角度分布は無視する.

  1. 生存率は e−x/(vγτ0).各粒子の崩壊長は vγτ0=cτ0(E/mc2)2−1 なので,a=156m,b=1.12×104m.ローレンツ因子はそれぞれ 20.0,17.0 であり,時間の遅れを省くと崩壊長をこの因子で過小評価する.

  2. 親の生存数 Nπ=N0e−x/a,区間の崩壊数 Nπdx/a に選択割合 f と娘の生存率 e−(L−x)/b を掛け,

Nμ(L)=fN0ae−L/b∫0Lex(1/b−1/a)dx=fN0bb−a(e−L/b−e−L/a)
  1. 微分して e−L/a/a=e−L/b/b を解けば

L∗=abb−aln⁡ba

大小どちらの崩壊長でも,微分は根の前で正,後で負となる.r=b/a とおくと,最大点で e−L∗/a=e−L∗/b/r だから

Nμ(L∗)N0=fe−L∗/b=fr−1/(r−1)

数値は L∗=675m,Nμ(L∗)/N0=0.0235.

収支は dNμdL=fNπ(L)/a−Nμ(L)/b.最大点で Nμ=f(b/a)Nπ となり,生成と損失が釣り合う.

  1. ε=a/b とおけば L∗=aln⁡(b/a)/(1−ε)≃aln⁡(b/a).適用条件は 1≫ε である.b→∞ なら Nμ=fN0(1−e−L/a) と単調増加し,有限の最大点がなくなる.崩壊を無視する十分条件は 1≫L/b.

先頭近似は L∗≃666m である.近似には ΔEμ/Eμ と飛行角が十分小さいことを要する.

14IPhO の問題を発展させる(1)

連結ピストン,蛍光灯回路,惑星による重力アシスト,回折格子の原題を組み直しました.第7・10章の振動と中心力,第14・16章の測定と熱,第23・27章の交流と光を組み合わせます.第30章の振幅の規則にもつなげます.

総合演習 53

IPhO 1972 第2問(改題) ★★★★☆

熱量と圧力から気体の模型を決める

水平な2本のシリンダーのピストンを剛い棒で結び,断面積はともに A です.右向きの変位 z に対し,左の気体Aは VA=V0+Az,右の気体Bは VB=V0−Az です.各室の理想気体は同じ物質量 ν で,初状態は p0,V0,T0 です.Aは断熱し,比熱比 γ>1 は未知の定数です.Bは温度 T0 の熱源に接します.漏れ,摩擦,棒を通る熱伝導を無視します.外部駆動で準静的に右へ動かし固定しました.

p0=1.00×105Pa,V0=1.00×10−3m3,A=1.00×10−2m2 とします.熱源への熱はBからだけです.

測定量

値

熱源の受熱 Qb

22.31J

Aの終圧力 pA

7.380×104Pa

  1. 第一法則から pVγ 一定を導き,s=Az/V0 と γ を測定値から決めよ.

  2. 各気体と駆動装置の仕事を求め,収支も示せ.

  3. 駆動装置を一定の右向きの力 F∗ を与えるものに替え,固定を外す.連結体の質量は M=1.00kg とする.終位置を平衡に保つ F∗ と,Bが振動中も等温である場合の小振動周期を求めよ.条件も示せ.

剛い棒で結ばれた2本のピストンを外部駆動で右へ変位zだけ動かす.気体Aの壁は断熱され,気体Bは温度T₀の熱源に接する.両側の断面積はAで,破線は初位置を示す.初状態はp₀,V₀,T₀,変位後の体積はV_A=V₀+Az,V_B=V₀−Azである. 剛い棒で結ばれた2本のピストンを外部駆動で右へ変位zだけ動かす.気体Aの壁は断熱され,気体Bは温度T₀の熱源に接する.両側の断面積はAで,破線は初位置を示す.初状態はp₀,V₀,T₀,変位後の体積はV_A=V₀+Az,V_B=V₀−Azである.
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考え方

気体は一様,操作は可逆とする.Bの放熱から圧縮量,Aの圧力から比熱比を出す.

  1. CV,A=R/(γ−1),pV=νRT と,第一法則 νCV,AdT=−pdV より

dTT=−(γ−1)dVV,TVγ−1=一定,pVγ=一定

Bの等温仕事は WB=νRT0ln⁡(1−s),熱源の受熱は Qb=−WB.従って

s=1−e−Qb/(p0V0)≃0.2000,γ=−ln⁡(pA/p0)ln⁡(1+s)≃1.667

以下は γ=5/3,s=0.200 を使う.

  1. 圧力を体積で積分すると

WA=p0V0∫11+su−γdu=p0V0γ−1[1−(1+s)1−γ]=17.2J,WB=p0V0ln⁡(1−s)=−22.3J

静止状態間の外部仕事は Wd=−WA−WB=5.15J.Bの圧縮仕事がAの膨張仕事を上回る.ΔUA=−WA,ΔUB=0 だから,ΔUA+ΔUB=Wd−Qb とも一致する.

  1. pB=p0/(1−s)=1.25×105Pa である.従って F∗=A(pB−pA)=512N.終位置からの変位を η とすると,Aの圧力変化は −γpAAη/VA,等温Bは pBAη/VB.一定外力を加えると

Md2ηdt2=−Kη,K=A2(γpAVA+pBVB),T=2πMK=0.0391s

近似には A|η|/VA,A|η|/VB が十分小さいことを要する.ω=2π/T とし,熱交換時間 τh に対し等温は 1≫ωτh,断熱は ωτh≫1 を要する.気体の長さ ℓi,音速 vi に対し 1≫ωℓi/vi も必要である.K は Nm−1 の次元をもつ.

総合演習 54

IPhO 1982 第1問(改題) ★★★★☆

力率補償とヒーターの発熱

抵抗 Rh=60.0Ω のヒーターと,未知の抵抗 r,自己インダクタンス L をもつコイルを直列につなぎます.理想電源の電圧は V(t)=2Vecos⁡ωt,Ve=100V です.表は丸めた実効値です.測定器の負荷を無視し,素子は一定とします.

ω(rads−1)

Ie(A)

100

1.118

200

0.8839

400

0.5590

  1. 複素数を使い,(Ve/Ie)2 を ω2 に対して直線化して r,L を求めよ.

  2. ω=200rads−1 で,理想コンデンサーを電源に並列につなぎ,電源電流を電圧と同位相にする.容量,電源電流の実効値と各平均発熱を求めよ.

  3. 同じ振動数で温度 Ta=300K のヒーターを加熱する.熱容量は Ch=20.0JK−1,外への放熱仕事率は H(T−Ta),H=0.500WK−1 とする.電気の過渡を無視する.T(t) と,初めて 350K に達する時間を求めよ.抵抗の温度係数を α=2.0×10−4K−1 として,抵抗一定の近似を評価せよ.

交流電源V(t)=√2 V_e cos ωtに,電流計,抵抗rと自己インダクタンスLをもつコイル,抵抗R_h=60.0 Ωのヒーターを直列接続する.電流計は直列枝の実効電流I_eを測る.破線のコンデンサー枝は小問(2)で電源に並列接続する.V_e=100 Vである. 交流電源V(t)=√2 V_e cos ωtに,電流計,抵抗rと自己インダクタンスLをもつコイル,抵抗R_h=60.0 Ωのヒーターを直列接続する.電流計は直列枝の実効電流I_eを測る.破線のコンデンサー枝は小問(2)で電源に並列接続する.V_e=100 Vである.
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考え方

電圧・電流は複素振幅と eiωt の積の実部とする.負荷電圧は一定とし,周期平均の発熱を熱収支に入れる.

  1. Rt=Rh+r とすると,Z=Rt+iωL,I^=V^/Z.従って

Y=(VeIe)2=Rt2+L2ω2

Y は約 8000,12800,32000Ω2.最初の2点から傾きは 0.160H2,切片は 6.40×103Ω2 で,L=0.400H,Rt=80.0Ω,r=20.0Ω.3点目も一致する.

  1. コンデンサーは ZC=1/(iωC).電源の複素電流は

I^s=V^[1Rt+iωL+iωC]=V^[RtD+iω(C−LD)],D=Rt2+ω2L2

虚部0より C=L/D=3.13×10−5F.Is,e=VeRt/D=0.625A.直列枝は Ie=Ve/D のままで,

Ph=Ie2Rh=46.9W,Pr=Ie2r=15.6W

和は 62.5W=VeIs,e.コンデンサーの平均消費電力は0で,ヒーターの発熱は変わらない.

  1. 熱収支は ChdTdt=Ph−H(T−Ta).定常値は Ta+Ph/H,時定数 τ=Ch/H より

T(t)=Ta+PhH(1−e−t/τ),τ=40.0s,T∞=394K

丸め前の値でt=−40.0ln⁡(1−50.0/93.75)s=30.5s.抵抗の相対変化は最大で αPh/H=0.0188.約2 %の抵抗変化を捨てている.熱の近似には電気周期と内部平衡化時間が τ より十分短いこと,集中定数回路には配線長 ℓ に対し 1≫ωℓ/c が必要である.t→∞ で発熱と放熱がつり合う.

総合演習 55

IPhO 1985 第3問(改題) ★★★★★

重力アシストの最適な接近距離

恒星の周りを半径 a,速さ U で円運動する惑星の近くを,質量 m の探査機が通ります.惑星の速度は Uey と一定に扱い,相対入射速度を uex とします.ex,ey は軌道面内の直交単位ベクトルです.惑星の質量を Mp,重力定数を G とし,κ=GMp と置きます.安全距離の下限は R∗ です.m/Mp は十分小さく,推進と大気抵抗を無視します.恒星の潮汐力を無視し,相対速度を +y 側へ角 δ 曲げる側を通します.入射・出射速度は惑星の双曲線軌道の漸近速度です.

  1. 恒星系での単位質量あたりのエネルギー増加を U,u,δ で表せ.反作用を含め保存則を説明せよ.

  2. 衝突径数 b,最接近距離 rp と δ の関係を導け.中心力軌道の式

r=j2/κ1+ecos⁡ϕ,j=bu

を使ってよい.r は惑星からの距離,j は単位質量あたりの角運動量,e は離心率で,ϕ=0 が最接近点です.

  1. rp≥R∗ のもとでエネルギー増加を最大にする rp を求めよ.U=12.0kms−1,u=6.00kms−1,κ=4.00×1014m3s−2,R∗=4.00×103km の場合,恒星から脱出できるか判定せよ.無限遠での速さと条件も示せ.

惑星の位置を基準に直交方向e_x,e_yを示す.惑星速度はU e_y,相対入射速度はu e_xであり,探査機は惑星の下側から入り,+y側へ曲がる.入射漸近線と惑星の間が衝突径数b,惑星から最接近点までがr_pである.破線の円は半径R_*の安全境界を示す.軌道の形は模式的である. 惑星の位置を基準に直交方向e_x,e_yを示す.惑星速度はU e_y,相対入射速度はu e_xであり,探査機は惑星の下側から入り,+y側へ曲がる.入射漸近線と惑星の間が衝突径数b,惑星から最接近点までがr_pである.破線の円は半径R_*の安全境界を示す.軌道の形は模式的である.
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考え方

二体散乱と恒星周りの軌道を接続する.相対速度を回して恒星系へ戻し,公転方向の成分を最大にする.

  1. 惑星系のエネルギー保存から入射・出射の速さは u.恒星系では

vi=uex+Uey,vf=ucos⁡δex+(U+usin⁡δ)ey

恒星からの距離を同じと近似すると

Δϵ=vf2−vi22=Uusin⁡δ

惑星の運動量変化は −m(vf−vi),運動エネルギー変化は質量比の最低次で −mUusin⁡δ.増加分は公転から来る.

  1. 最接近点でのエネルギー・角運動量保存から

u22=j22rp2−κrp,b2=rp2+2κrpu2,e=1+rpu2κ

最後は軌道式の ϕ=0 と保存式を使う.漸近線は cos⁡ϕ∞=−1/e.入射速度は位置と逆向きなので偏向角は δ=2ϕ∞−π.従って

sin⁡δ2=1e=11+rpu2/κ
  1. δ は rp とともに減り,sin⁡δ は π/2 で最大なので

rp,opt=max[R∗,(2−1)κu2]

許される角が π/2 未満なら下限を使い,それ以外は δ=π/2 にする.今回は下限より遠い rp,opt=4.60×103km で δ=π/2 にできる.

円軌道から恒星の重力定数と質量の積は U2a で,位置 a での脱出速度は 2U.最適出口速度は U+u=18.0kms−1>2U.恒星の重力で

v∞=(U+u)2−2U2=6.00kms−1

U→0 で増加は0となる.接続半径 rm には κ/(rmu2),rm/a,潮汐力の比 U2rm3/(a2κ) が十分小さいことを要する.遭遇時間 τ に対し Uτ/a,反作用の近似には m/Mp も十分小さくする.

総合演習 56

IPhO 1986 第1問(改題) ★★★★★

交互の位相反転で分光する

幅 a,間隔 d の平行スリットを偶数 N 個並べ,j=0,1,…,N−1 と番号を付けます.同じ偏光の平面波を垂直入射します.奇数番だけに振幅を変えず位相を π ずらす素子を置きます.位相差は狭い波長範囲で一定とします.角 θ は法線から測り,隣接位相差を φ=2πdsin⁡θ/λ とします.遠方回折を考え,1本の法線強度を I1 とし,a=d/3,d=2.00×10−6m です.

  1. 複素振幅で強さ分布を導き,主極大の方向を求めよ.幅の効果は各点の振幅の積分で求めよ.

  2. 波長 λ=600nm と λ+Δλ,Δλ=1.00nm の光を分ける.主極大同士が最初の暗線まで離れれば分解可能とする.sin⁡θ=pλ/d,p>0 について一次近似の分解条件を求めよ.p=3/2 の方向,単スリットの強さ因子,必要な偶数の最小 N を求めよ.

  3. 強さと位相を保ち,偶数番を水平偏光,奇数番を鉛直偏光に替える.法線強度と主極大の方向を求めよ.水平・鉛直の振幅を同符号で足す 45∘ の検光子を後に置くと,最初の分布とどう関係するか.経路の記録を残す量子力学とも対応させよ.

上段は幅a,中心間隔dのN本のスリットを示す.Nは偶数で,奇数番に位相をπずらす素子を置く.平面波は垂直入射し,観測方向の角θは法線から測る.下段は小問(3)の偏光をスリット正面から見た図で,偶数番は水平,奇数番は鉛直であり,位相πの素子を保つ.光の後方に45°の検光子を置く.途中のスリットは省略している. 上段は幅a,中心間隔dのN本のスリットを示す.Nは偶数で,奇数番に位相をπずらす素子を置く.平面波は垂直入射し,観測方向の角θは法線から測る.下段は小問(3)の偏光をスリット正面から見た図で,偶数番は水平,奇数番は鉛直であり,位相πの素子を保つ.光の後方に45°の検光子を置く.途中のスリットは省略している.
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考え方

光路差を位置に比例させる.直交偏光は強さを足し,同じ偏光への投影後は振幅を足す.

  1. 中心の座標を x として,単独の振幅は法線の振幅 E1 に対して

E1a∫−a/2a/2ei2πxsin⁡θ/λdx=E1sin⁡ββ,β=πasin⁡θλ

q=φ+π とおくと (−1)jeijφ=eijq.等比級数から

E=E1sin⁡ββei(N−1)q/2sin⁡(Nq/2)sin⁡(q/2),I=I1(sin⁡ββ)2[sin⁡(Nq/2)sin⁡(q/2)]2

分母0は極限を取る.同位相になる q=2πk より,dsin⁡θ=(k−1/2)λ.正の p は半整数である.θ=0 では偶数・奇数が打ち消し0となる.主極大は格子因子の極大とする.

  1. 最初のゼロは |Δq|=2π/N より |Δ(sin⁡θ)|=λ/(Nd).極大の間隔は pΔλ/d なので

NpΔλ≥λ

p=3/2 では sin⁡θ=0.450,θ=26.7∘,β=π/2 より強さ因子は 4/π2=0.405.一次近似の最小偶数は N=400.

  1. n=N/2 とおく.偶数群と奇数群の振幅は

EH=E1sin⁡ββ∑l=0n−1ei2lφ,EV=−eiφEH

法線で各群の振幅は n|E1| で,強さの和は 2n2I1=N2I1/2.各群の主極大は φ=kπ,すなわち dsin⁡θ=kλ/2.検光子で両群は同じ偏光へ振幅 1/2 で投影され,振幅は (EH+EV)/2.強さは(1)の I/2 となり,法線は再び暗い.

量子力学でも偶奇の記録を残せば,群内は振幅,群間は確率を足す.検光子通過を選ぶと記録がそろい,振幅が干渉する.β→0 で幅の因子は1となる.遠方回折には観測距離 ℓ に対し 1≫(Nd)2/(λℓ),分光の一次近似には 1≫Δλ/λ を要する.素子の位相の波長依存も無視する.

15IPhO の問題を発展させる(2)

IPhO の衝突,原始星,大気電気,原子冷却を改題しました.第4〜8・10章,第15〜18章の熱,第20・21・23章の電場と回路,第26・29章の光と光子を組み合わせます.駆動の仕事,時間尺度,測定誤差,冷却の最適条件と,模型の適用範囲を調べてください.

総合演習 57

IPhO 1991 第1問(改題) ★★★★☆

動くベルトが跳ね返りに渡すエネルギー

質量 m,半径 r,慣性モーメント I=κmr2 の円板を,重心の並進速度0,時計回りの角速度 ω0≥0 で,最下点のベルトからの高さ h から落とします.水平ベルトは駆動装置で右向きの速さ U>0 を保ちます.重力加速度 g,鉛直反発係数 0<e<1,動摩擦係数 μ′.鉛直面内で動き,傾き,空気抵抗,接触中の重力の力積,接線の弾性変形を無視します.滑り停止後の接線力は0とします.

  1. 落下の速さ w,法線力積 JN,摩擦力積 J と滑りが止まる条件を求めよ.

  2. 衝突後の水平速度 vx,角速度 ω,次の接触までの水平移動距離を求めよ.

  3. 水平並進と回転のエネルギー Kt,駆動の仕事 Wb,摩擦熱 Qt の収支を導け.滑りが止まる場合に Kt が増す条件と,摩擦熱が正である理由を述べよ.

質量m,半径rの円板を,最下点とベルトの間の高さhから落とす初期配置.重心の並進速度は0,角速度ω_0は時計回りである.ベルトの速さUは右向きで,x軸は右,y軸は上を向く. 質量m,半径rの円板を,最下点とベルトの間の高さhから落とす初期配置.重心の並進速度は0,角速度ω_0は時計回りである.ベルトの速さUは右向きで,x軸は右,y軸は上を向く.
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考え方

滑りの停止で力積に上限を付け,駆動装置も収支に含める.

  1. mgh=mw2/2 より w=2gh.衝突後の上向き速度は ew なので JN=m(1+e)w.時計回りを正とすれば

vx=Jm,ω=ω0−rJI,vx−rω−U=−(rω0+U)+1+1/κmJ

初めの相対速度は負で,摩擦は右向きである.相対速度を0にする力積は J∗=mκ(rω0+U)/(1+κ).滑り中は摩擦力が μ′N だから

J=min(J∗,μ′JN),J∗≤μ′JN

なら滑りが止まる.等号は離れる瞬間に止まる境界である.

  1. 速度と角速度は(1)の J を最初の式に代入すればよい.飛行時間 2ew/g より D=2ewJ/(mg).

  2. 初終の運動エネルギーを引けば

ΔKt=J22m+I2(ω2−ω02)=−rω0J+1+1/κ2mJ2

ベルトへは左向きの摩擦が働き,駆動装置は同じ大きさの右向きの力を補うので Wb=UJ.滑りの速さと微小力積 dj の積から

Qt=∫0J[rω0+U−1+1/κmj]dj=(rω0+U)J−1+1/κ2mJ2=Wb−ΔKt≥0

J=J∗ なら

ΔKt=mκ2(1+κ)[U2−(rω0)2],Qt=mκ2(1+κ)(U+rω0)2

従って U>rω0 で増加し,増加分と摩擦熱を駆動装置が供給する.U→0 では ΔKt=−Qt.接触時間 τc に対し gτc/w が十分小さいことが,重力の力積を捨てる条件である.

総合演習 58

IPhO 2012 第3問(改題) ★★★★★

熱を放出すると温まる気体球

真空中の質量 M の気体球を,半径 r(t) だけで近似します.一様密度で,距離 s の要素の速度は sr˙/r,r˙=dr/dt.モル質量 Mmol,比熱比 γ>1 の理想気体で,質量平均の温度 T¯,気体定数 Rg に対し U=MRgT¯/[Mmol(γ−1)] です.圧力・温度は一様とは仮定せず,外圧,自転,核反応を無視します.安定性はこの一座標模型内で考えます.

  1. 球殻の積分で,重力エネルギー Ω=−a/r の a と巨視的運動のエネルギーを求めよ.

  2. 放射を止めた可逆断熱の変形で,U(r0)=U0 とする.U(r),平衡半径 re の温度,安定条件,小振動の角振動数を導け.

  3. γ=5/3 で平衡をほぼ保ち放射で収縮する.熱容量を無視できる外層が Ts=ηT¯(η 一定)を保ち,Prad=4πr2σTs4 を放射し,入熱は0とする.全エネルギーと温度の関係,半径の変化,r0/2 までの時間を,初期放射仕事率 P0 で表せ.

  4. τd=r3/(GM),τr=|U+Ω|/Prad の比で準静的近似を検査せよ.収縮中に条件は満たしやすくなるか.

一様密度の質量M,半径rの気体球を断面で示す.中心から距離sの球殻と半径rを示し,収縮時の内向き速度を青い矢印で表す.要素の速度はs ṙ/rで,半径に比例する.外層温度はT_sで,放射は外向きの矢印で示す. 一様密度の質量M,半径rの気体球を断面で示す.中心から距離sの球殻と半径rを示し,収縮時の内向き速度を青い矢印で表す.要素の速度はs ṙ/rで,半径に比例する.外層温度はT_sで,放射は外向きの矢印で示す.
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考え方

エネルギーの曲率で安定性を調べる.放射中はエントロピーが変わる平衡列を使う.

  1. M(s)=M(s/r)3,dM(s)=3Ms2ds/r3 だから

Ω=−∫0rGM(s)sdM(s)=−3GM2r6∫0rs4ds=−3GM25r,Kr=12∫0r(sr˙r)2dM(s)=310Mr˙2

a=3GM2/5,有効質量は 3M/5.

  1. 各要素の体積は r3 に比例する.断熱の TVγ−1 一定より U=U0(r0/r)b,b=3(γ−1).U=U−a/r とおけば

dUdr=−bU+a/rr,bUe=are,T¯e=GMMmol5Rgre

曲率は d2Udr2(re)=(b−1)a/re3.ξ=r−re に対し (3M/5)ξ¨=−(b−1)aξ/re3 より ωr2=(3γ−4)GM/re3.γ>4/3 なら安定,γ<4/3 は不安定.γ=4/3 は停留条件を満たす場合に中立である.

  1. b=2 なら U=a/(2r).従って

E=−U=−a2r=−3MRg2MmolT¯,dEdT¯=−3MRg2Mmol<0

放射で温度が上がる.負なのは重力を含む平衡列の熱容量である.Ts∝1/r より Prad=P0(r0/r)2.収支は

a2r2drdt=−P0r02r2,drdt=−2P0r02a,t1/2=a4P0r0=τr(r0)2

半径は等速で減る.放射中は断熱時の U0r02 は一定ではない.

  1. τr=ar/(2P0r02) より

τdτr=2P0r02raGM

比が十分小さければ準静的近似を使える.r1/2 に比例し,収縮中に減少する.小振動には |ξ|/re も十分小さいことを要する.比熱や放射の模型が変われば時間も変わる.

総合演習 59

IPhO 1993 第1問(改題) ★★★★☆

電場計の周波数応答から抵抗を決める

一様な上向き電場 E 中で,接地した可動遮蔽板が検出板の露出面積を A(t)=A0+A1cos⁡ωt,A0>A1>0 と変えます.短絡時の誘導電荷は qs=ε0EA(t),信号電流の向きは Is=dqs/dt と定義します.接地まで並列抵抗 R と容量 C をつなぎます.縁の場,検出板自身の容量,検出電圧による場の変化を無視し,遮蔽は指定の運動を保ちます.

  1. E 一定として複素インピーダンスで定常電圧 V(t)=Re⁡(V^eiωt) を求めよ.τ=RC とし,振幅と面積変化に対する位相を示せ.

  2. C=2.00×10−10F,A1=1.00×10−2m2,ε0=8.85×10−12Fm−1 とする.同じ電場・抵抗での測定から τ,R,E を決めよ.振幅に1 %の不確かさがあるとき,両周波数とも ωτ が小さい場合と大きい場合の推定の限界を説明せよ.

ω

電圧振幅 V0

100rads−1

2.37×10−2V

400rads−1

4.75×10−2V

  1. Eest=CV0/(ε0A1) の系統誤差を1 %以下にする条件と,今回の高い周波数での過小評価率を求めよ.電場の変化時間 τE,装置の大きさ d,光速 c を使い,周波数を上げる方法の条件も示せ.

上向きの一様電場E中に検出板と接地した可動遮蔽板を置く.検出板の露出面積はA(t)=A_0+A_1 cos ωtである.検出板から接地まで抵抗Rと容量Cを並列につなぎ,検出板の電圧をVとする.抵抗は長方形,コンデンサーは平行な2本の線で示す. 上向きの一様電場E中に検出板と接地した可動遮蔽板を置く.検出板の露出面積はA(t)=A_0+A_1 cos ωtである.検出板から接地まで抵抗Rと容量Cを並列につなぎ,検出板の電圧をVとする.抵抗は長方形,コンデンサーは平行な2本の線で示す.
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考え方

振幅比で時定数を決め,信号の絶対値で電場を決める.

  1. q1=ε0EA1 とすると I^s=iωq1.ZC=1/(iωC) より並列回路は Z=(1/R+iωC)−1 なので

V^=iωRq11+iωτ=q1Cx2+ix1+x2,V0=q1Cx1+x2,ϕ=arctan⁡1x,x=ωτ

実部に戻して V(t)=V0cos⁡(ωt+ϕ).A0 による一定の誘導電荷は信号電流を作らない.

  1. b=V02/V01,x1=ω1τ とする.周波数比は4なので

b2=16(1+x12)1+16x12,x12=16−b216(b2−1)

b=4.75/2.37 より x1=0.498,τ=x1/ω1=4.98×10−3s,R=τ/C=2.49×107Ω.さらに E=CV011+x12/(ε0A1x1)=1.20×102Vm−1.

低周波では V0≃ε0EA1ωR で積 ER しか決まらず,高周波では V0≃ε0EA1/C で R に依存しない.振幅比がそれぞれ ω2/ω1 と1に近づくと,測定誤差で時定数の逆算が不安定になる.今回は x1=0.498,x2=1.99 と応答が変わる範囲をはさむ.

  1. Eest/E=x/1+x2.これを0.99以上とする不等式を2乗して解くと x≥0.99/1−0.992=7.02.今回の x2 では比が0.894,約11 %の過小評価となる.電場一定と集中定数回路の近似には,2π/(ωτE) と ωd/c が十分小さいことを要する.検出電圧による場の変化も小さいことを要する.RC は時間の次元で,R→∞ の振幅は q1/C となる.

総合演習 60

IPhO 1991 第3問(改題) ★★★★★

冷却する光と反跳によるゆらぎ

質量 m の原子に,x 軸の正負から等強度の光を照射します.共鳴と光の角振動数は ωa,ω,離調は Δ=ω−ωa<0,波数は k=2π/λ.速度 v での各方向からの吸収・自発放出の率を

r±(v)=r01+4(Δ∓kv)2/Γ2

と与えます.Γ は線幅,r0/Γ は十分小さいとします.吸収力積は ±ℏk,放出光子の運動量の大きさは ℏk.放出は独立で等方的とし,方向余弦は ⟨nx⟩=0,⟨nx2⟩=1/3.各過程は確率 r±dt で起こり,原子間衝突,外力,再吸収を無視します.

  1. 平均力を F=−αv の形まで展開し,平均速度の減衰時間を求めよ.

  2. 1回の力積 Δp の2乗平均から,p=mv の2乗平均の方程式と定常値を導け.⟨p⟩=0,|kv|/Γ は十分小さいとする.kBTx=⟨p2⟩/m と定義する温度とその最低値を求めよ.

  3. 強さ一定で最も速く減衰させる離調と,その温度を求めよ.最低温度の状態で Er/(ℏΓ)=0.0010,r0/Γ=0.010 とし,kvrms/Γ,Er/(kBTx) で近似を検査せよ.Er=(ℏk)2/(2m),vrms=kBTx/m.平均力だけで温度0を予測する問題点も述べよ.

質量mの原子にx軸の両側から等強度のレーザー光を照射する.入射光の波数はkで,光の矢印は原子へ向く.原子の速度vはx軸に沿う.斜めの外向き矢印は運動量の大きさℏkの放出光子を示し,放出方向のx軸に関する方向余弦をn_xとする. 質量mの原子にx軸の両側から等強度のレーザー光を照射する.入射光の波数はkで,光の矢印は原子へ向く.原子の速度vはx軸に沿う.斜めの外向き矢印は運動量の大きさℏkの放出光子を示し,放出方向のx軸に関する方向余弦をn_xとする.
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考え方

吸収率の差による摩擦と反跳による加熱をつり合わせる.

  1. 放出の平均力積は0で F=ℏk(r+−r−).D0=1+4Δ2/Γ2 とし,率を展開すると r±=r0/D0±8r0Δkv/(Γ2D02).従って

F=16ℏk2r0ΔΓ2D02v=−αv,α=−16ℏk2r0ΔΓ2D02>0

md⟨v⟩dt=−α⟨v⟩ より減衰時間は τv=m/α.

  1. 1回の力積は Δp=ℏk(±1−nx) なので ⟨(Δp)2⟩=(4/3)(ℏk)2.(p+Δp)2−p2=2pΔp+(Δp)2 を各率で平均する.第1項は 2⟨pF⟩,第2項では率の和を速度0で評価して

d⟨p2⟩dt=−2αm⟨p2⟩+Bp,Bp=43(ℏk)22r0D0

定常値は ⟨p2⟩=mBp/(2α).従って

kBTx=Bp2α=−ℏΓ2D012Δ=ℏΓ6(z+1z),z=−2ΔΓ>0

z+1/z≥2 より,最低温度は Δ=−Γ/2 で Tmin=ℏΓ/(3kB).指定模型の1方向の温度で,3方向の熱平衡は仮定していない.

  1. α=(8ℏk2r0/Γ)z/(1+z2)2 の微分の符号は 1−3z2 で決まる.最大は z=1/3,従って Δ=−Γ/(23).温度比は Tx/Tmin=2/3≃1.15 で,最低温度とは異なる.最低温度では kvrms/Γ=2Er/(3ℏΓ)=0.026,Er/(kBTx)=3Er/(ℏΓ)=0.0030.速度の展開と反跳を微小変化とする近似は自己整合的である.平均力だけなら運動は0へ減衰するが,力積の2乗は0にならず反跳で加熱する.α の次元は質量を時間で割ったもの.Δ→0− では摩擦が消え,温度の式が発散して小速度近似も破れる.

16IPhO の問題を発展させる(3)

IPhO の浅水波,重いばね,金属微粒子,粒子検出を改題しました.第4〜7章の力学,第14章の測定,第18章の熱輸送を,第20〜26章の場・回路・波と組み合わせます.粒子検出では第13・31章の相対論も使います.境界条件と保存則で模型を閉じ,近似の限界と測定の曖昧さを調べてください.

総合演習 61

IPhO 2017 第2問(改題) ★★★★☆

狭く浅くなる水路と,急な段差

密度 ρ の非圧縮液体の水路を,周期 T,水面振幅 A の波が進みます.水深 d と幅 b は緩やかに変わります.水面と水平流速 u は幅方向に一様,u は深さによらず,鉛直方向は静水圧とします.平均流は0とし,粘性,表面張力,反射を無視し,A/d と kd は十分小さいとします.k=2π/λ です.

入口では d0=4.00×102m,A0=0.100m,T=600s です.幅は b/b0=(d/d0)1/4 に従います.g=9.80ms−2 を使え.

平面図は緩やかに狭くなる水路の幅 b と波の進行方向を示す.局所的な横断面は静水面から底までの深さ d と,静水面から測った水面変位 y を示す.別枠の縦断面は幅一定で水深が d₁ から d₂ へ急変する段差を示す. 平面図は緩やかに狭くなる水路の幅 b と波の進行方向を示す.局所的な横断面は静水面から底までの深さ d と,静水面から測った水面変位 y を示す.別枠の縦断面は幅一定で水深が d₁ から d₂ へ急変する段差を示す.
  1. 一定水深での質量保存と運動方程式は ∂y∂t=−d∂u∂x,∂u∂t=−g∂y∂x です.波の速さと進行波の u,y の関係を導け.

  2. 単位水平面積の平均エネルギーと仕事率保存から A(d) を導け.d=25.0m での振幅と波長も求めよ.

  3. 幅一定で水深が d1 から d2 へ急変します.境界で水面変位と体積流量が連続する1次元模型を用い,反射・透過の水面振幅比を求め,エネルギー保存を確かめよ.(2)を急変に使えない理由と,小振幅・緩やかな変化の条件も述べよ.

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考え方

反射を捨てられる区間と,境界条件で反射を求める区間を分ける.

  1. 第1式を時間,第2式を位置で微分して代入すると

∂2y∂t2=gd∂2y∂x2,v=gd,u=vdy

となる.右向き波では ∂y∂t=−v∂y∂x を第1式に入れ,平均流0として積分した.左向きなら符号が逆になる.

  1. 位置エネルギー密度は ρgy2/2,運動エネルギー密度は ρdu2/2.⟨y2⟩=A2/2 と(1)より,平均はどちらも ρgA2/4 である.分散のない波の平均仕事率は

P=bvρgA22,AA0=b0b(d0d)1/4=(d0d)3/8

指定点では A=0.283m,v=15.7ms−1,λ=vT=9.39×103m である.

  1. 複素振幅を Yi,Yr,Yt,速さを vj=gdj とする.時間因子 eiωt を除き,境界条件は

Yi+Yr=Yt,v1(Yi−Yr)=v2Yt

r=Yr/Yi=(v1−v2)/(v1+v2),t=Yt/Yi=2v1/(v1+v2).反射率と透過率は R=r2,T=(v2/v1)t2 なので,R+T=1.d2=d1 なら r=0,t=1 に戻る.変化の長さを ℓ とすると,増幅則は A/d,kd,1/(kℓ) が十分小さい範囲に限る.段差では最後の条件が破れる.指定点では A/d=0.0113,kd=0.0167.浅くなるほど振幅の条件は悪くなる.

総合演習 62

IPhO 2019 第1問(改題) ★★★★☆

重いばねの長さと周期

自然長 L0,ばね定数 k,質量 M の一様な鉛直ばねの下端に,質量 m を付けます.自然長では張力0です.自然長での上端からの座標を s とすると,微小区間 ds のばね定数は kL0/ds,質量は Mds/L0 です.横振れ,摩擦,巻き同士の接触を無視し,静的な伸びにもフックの法則を使います.

L0=0.3000m,g=9.80ms−2 を既知とし,次の全長 H を測りました.

m(kg)

H(m)

0.400

0.5254

0.600

0.6234

0.800

0.7214

左に張力0の自然長 L₀ を基準として,上端を0,下端を L₀ とする下向きの座標 s を示す.右に上端を固定した質量 M,ばね定数 k のばねと下端質量 m を示す.全長 H は固定上端からばね下端までの長さである. 左に張力0の自然長 L₀ を基準として,上端を0,下端を L₀ とする下向きの座標 s を示す.右に上端を固定した質量 M,ばね定数 k のばねと下端質量 m を示す.全長 H は固定上端からばね下端までの長さである.
  1. 張力と全長 H(m) を求め,両端の測定から k,M を決め,中央も確かめよ.

  2. 平衡からの下向き変位 ξ(s,t) の波動方程式と下端の境界条件を導け.

  3. 上端固定の振動 ξ=ϕ(s)cos⁡ωt を考えます.q=ωM/k とおき,基本振動の方程式と根の区間を求め,m=0.600kg の周期を数値で求めよ.

  4. 1≫M/m のとき,ばね質量を M/3 の集中質量で置き換えられることを示し,(3)と比較せよ.上端だけを短く微小に動かし戻すとき,下端の応答までの最短時間を求め,集中質量模型と比較せよ.

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考え方

静的張力と,ばね内部の分布した慣性を使う.

  1. 張力は S(s)=g[m+M(1−s/L0)] である.区間の伸びは S(s)ds/(kL0) なので

H=L0+∫0L0S(s)kL0ds=L0+gk(m+M2)

傾きは a=g/k=0.1960/0.400=0.490mkg−1,切片は 0.3294m.従って k=g/a=20.0Nm−1,M=2k(0.3294m−L0)/g=0.120kg.中央の予測は 0.6234m で一致する.

  1. 平衡の重力と張力差はつり合う.追加張力は kL0∂ξ∂s だから

ML0∂2ξ∂t2=kL0∂2ξ∂s2,vs=L0kM,m∂2ξ(L0,t)∂t2=−kL0∂ξ∂s(L0,t)

vs は自然長の座標で測った速度である.

  1. d2ϕds2=−(ω/vs)2ϕ,ϕ(0)=0 より ϕ=Csin⁡(qs/L0).下端条件は

kqcos⁡q=mω2sin⁡q,qtan⁡q=Mm

0<q<π/2 で左辺は0から無限大へ増加し,根は一つ.表の中心値で M/m=0.200 の根は q=0.43284,ω=5.58795rads−1,周期は 1.12s(近似との比較用に桁を残すと 1.1244s).

  1. 下端条件を mω2=kqcot⁡q と書き,qcot⁡q=1−q2/3+⋯ を使うと

(m+M3)ω2+⋯=k

主要項は ω≈k/(m+M/3).周期の近似値は,比較用に桁を残すと 1.1240s で,厳密値との差は約0.040 %である.

最短時間は L0/vs=M/k=0.0775s.到達前は下端は動かず,集中質量模型では表せない.実効質量は q2 が小さい低振動数に限り,短いパルスには使えない.追加ひずみ |∂ξ∂s| も十分小さい必要がある.

総合演習 63

IPhO 2013 第2問(改題) ★★★★★

光を熱に変える粒子には最適な半径があるか

真空中の半径 a の金属球を,E=−E0cos⁡ωtx^ の光で照らします.電子密度は n,電子の質量・電荷は m,−e.中性の粒子の正イオン球を固定し,電子雲は形を保って x(t) 動きます.|x|/a,ωa/c は十分小さいとします.粒子内の衝突による抵抗力は電子1個につき −mdxdt/τ です.

中心面を横切る分離電荷を Q=neπa2x,I=dQdt と定義します.電子数は N=4πa3n/3.振幅 A の平均放射率を Pr=(Ne)2A2ω4/(12πε0c3) と与えます.数値計算では固有角振動数 ω0=6.50×1015rads−1,ω0τ=52.0,c=3.00×108ms−1 を使います.

等価な直列回路は C=3πε0a/4,L=4m/(3πne2a),駆動電圧 V=V0cos⁡ωt,V0=4aE0/3 と与えます.

固定された半径 a の正イオン球と,形を保って x だけずれた電子雲,正イオン球の中心面を示す.外場は cos ωt が正の位相で負の x 方向を向く.別枠にコイル L,コンデンサー C,抵抗 Rₕ と Rᵣ,駆動電圧 V=V₀ cos ωt の交流電源を直列に描く. 固定された半径 a の正イオン球と,形を保って x だけずれた電子雲,正イオン球の中心面を示す.外場は cos ωt が正の位相で負の x 方向を向く.別枠にコイル L,コンデンサー C,抵抗 Rₕ と Rᵣ,駆動電圧 V=V₀ cos ωt の交流電源を直列に描く.
  1. ガウスの法則から復元力と固有角振動数 ω0 を求め,1/LC と一致することを示せ.

  2. 衝突と放射を直列抵抗 Rh,Rr で表し,複素インピーダンスから電流振幅と発熱率 Ph を求めよ.共鳴光の波長も求めよ.

  3. 共鳴で E0,n,τ を固定し,粒子1個の発熱を最大にする半径と Pr/Ph を求めよ.

  4. ω0a/c≤0.10 に制限した最適半径を求めよ.その粒子 N 個を互いに影響しないよう配置し,熱容量 Ch の等温板を加熱します.発熱だけが板へ入り,散乱光は逃げます.板を熱コンダクタンス G で熱源 Tb につなぎ,初め Tb としたときの昇温を求めよ.

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考え方

電子の慣性と復元力を等価回路に対応させ,熱と放射の損失を分ける.

  1. 球内で 4πr2E=4πr3ne/(3ε0) より,E=ner/(3ε0).電子雲への力は F=−Nne2x/(3ε0).球外の薄い部分は高次として捨てる.Nmd2xdt2=F から ω02=ne2/(3ε0m)=1/(LC) が得られる.

  2. 平均損失を Nm⟨(dxdt)2⟩/τ=Rh⟨I2⟩,Pr=Rr⟨I2⟩ と置く.⟨I2⟩=(neπa2)2ω2A2/2 より

Rh=Lτ,Rr=8a2ω227πε0c3,Z=Rh+Rr+iωL+1iωC

電流は I(t)=Re⁡[(V0/Z)eiωt].従って I0=V0/|Z|,Ph=RhV02/(2|Z|2).入力の平均仕事率は (Rh+Rr)I02/2=Ph+Pr となる.λ0=2πc/ω0=290nm.

  1. 共鳴では虚部が0.α=aRh,β=Rr/a2 は半径によらず,

Ph=8E029αa3(1+βa3/α)2

z=βa3/α に対し ddz[z/(1+z)2]=(1−z)/(1+z)3 なので,最大は z=1.a∗=(α/β)1/3=[3c3/(2τω04)]1/3=14.2nm,Rr=Rh,Pr/Ph=1 である.

  1. 無制限では ω0a∗/c=0.307 で近似の余裕が小さい.上限は amax=0.10c/ω0=4.62nm<a∗.この区間で発熱は増すので,上限が最適である.Pr/Ph=(amax/a∗)3=0.0347.

板の温度を Tb+θ と置くと,Chdθdt=NPh−Gθ,θ(0)=0 だから,θ=NPh(1−e−Gt/Ch)/G.G→0 では θ=NPht/Ch に戻る.n,τ の温度変化が小さく,|x|/a が小さく,板が等温を保つ範囲に限る.

総合演習 64

IPhO 2018 第2問(改題) ★★★★★

見えない粒子の縦運動量は一意に決まるか

入射方向を z 軸とし,衝突前の全横運動量は0です.親粒子 X が陽電子と,未検出の質量0の粒子へ崩壊しました.他に見落としはありません.磁場 B=Bz^ で陽電子の横平面への射影は半径 r の円となり,崩壊直後の横運動量は +x 方向です.p∗=1.00×10−20kgms−1 として,eBr=3p∗,陽電子の縦運動量は 4p∗,それ以外の検出粒子の横運動量の和は (−2p∗,−2p∗) でした.X の既知の静止エネルギーは 6cp∗ です.

陽電子には E=cp,親には EX2−c2pX2=MX2c4 を使います.e=1.60×10−19C,m=9.11×10−31kg,B=0.500T,c=3.00×108ms−1 とし,飛行中の放射と物質中での損失を無視してください.

衝突点に x,y,z 軸を置き,入射方向の正の z 軸に沿う磁場 B と陽電子のらせんを示す.陽電子の縦運動量は 4p*,横平面への射影は半径 r の円である.別枠には崩壊直後の陽電子の横運動量の向きが正の x 方向であることと,それ以外の検出粒子の横運動量の和(−2p*,−2p*)を示す.eBr=3p* は既知の条件である.横平面に垂直な磁場は ⊙ を並べて示す. 衝突点に x,y,z 軸を置き,入射方向の正の z 軸に沿う磁場 B と陽電子のらせんを示す.陽電子の縦運動量は 4p*,横平面への射影は半径 r の円である.別枠には崩壊直後の陽電子の横運動量の向きが正の x 方向であることと,それ以外の検出粒子の横運動量の和(−2p*,−2p*)を示す.eBr=3p* は既知の条件である.横平面に垂直な磁場は ⊙ を並べて示す.
  1. 相対論的な運動方程式 dpdt=ev×B から pT=eBr を導き,r と未検出粒子の横運動量を求めよ.

  2. 未検出粒子の縦運動量を zp∗ と置き,X の静止エネルギーを使って z の方程式を立て,すべての実数解を求めよ.2乗前の式を確かめ,解を選べるか説明せよ.陽電子の質量0近似の誤差も評価せよ.

  3. X の静止エネルギーが未知なら,測定からどんな下限を得ますか.z について不変量を最小化し,下限での2解の関係も説明せよ.

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考え方

横保存則と親の静止質量を使い,縦運動量は未定として残す.

  1. 磁場は pT の大きさを保ち,角速度 vT/r で回すので,|dpTdt|=pTvT/r=evTB より pT=eBr.r=3p∗/(eB)=0.375m である.検出された横運動量の総和は (p∗,−2p∗) なので,未検出粒子は pT(u)=(−p∗,2p∗) を持つ.

  2. 陽電子のエネルギーは 5cp∗,未検出粒子は cp∗5+z2.親の運動量は p∗(2,2,4+z) である.エネルギー・運動量保存を不変量へ代入すると

(5+5+z2)2−[8+(4+z)2]=36,55+z2−4z=15

平方根の式を2乗すると 9z2−120z−100=0.従って z=(20±105)/3 で,数値は −0.786893,14.1202.両根で 15+4z>0 となり,2乗前の式を満たす.

両根が保存則を満たし,この測定では選べない.独立の飛行方向測定などが必要である.

陽電子では mc/(5p∗)=5.47×10−3.p2c2+m2c4≈pc[1+(mc/p)2/2] より,エネルギー近似の相対誤差は約 1.49×10−5 である.

  1. 親の不変量を (cp∗)2 で割ると F(z)=2[55+z2−4z+3].微分すると dFdz=2[5z/5+z2−4],d2Fdz2=50/(5+z2)3/2>0 なので,唯一の最小点は z=45/3 である.従って

MXc2≥cp∗65+6=4.41cp∗

下限で2根は合流し,それ未満には実数解がない.合流付近は測定誤差に敏感である.不変量の次元もエネルギーの2乗で整合する.mc/p と飛行中の相対損失が十分小さい範囲での結果である.

17APhO の問題を発展させる(1)

APhO の4題を改題し,装置の限界を調べます.交流と薄膜の測定には第14〜17・23・27章を使います.双極子と光子の散乱には第5〜8・13・22・29章を使い,相対論の式も問題文に示します.

総合演習 65

APhO 2003 第1問(改題) ★★★★☆

交流測定で容量と内部抵抗を分ける

未知素子を容量 C と一定の直列内部抵抗 r≥0 で表します.外部抵抗 R=1.00×103Ω を直列接続し,実効値 Ve=6.00V の正弦波で駆動し,外部抵抗の実効値電圧 VR,e を測りました.電圧計の負荷と配線のインダクタンスは無視します.

ω(rads−1)

1.00×103

2.00×103

4.00×103

VR,e(V)

4.04

4.97

5.32

交流電源,外部抵抗 R,未知素子の内部抵抗 r と容量 C を直列につなぐ.電源の実効値は V_e=6.00 V,外部抵抗は R=1.00×10³ Ω である.電圧計は外部抵抗 R だけに並列接続し,実効値 V_{R,e} を測る. 交流電源,外部抵抗 R,未知素子の内部抵抗 r と容量 C を直列につなぐ.電源の実効値は V_e=6.00 V,外部抵抗は R=1.00×10³ Ω である.電圧計は外部抵抗 R だけに並列接続し,実効値 V_{R,e} を測る.
  1. 複素振幅を使い,VR,e の式を導け.Y=(Ve/VR,e)2,x=ω−2 を使う直線化を示せ.

  2. 両端の値から r,C を求め,中間の値を予測せよ.r=0 の模型も検討せよ.

  3. ω=2.00×103rads−1 で外部抵抗を交換する.外部抵抗の平均電力を最大にする条件と電力を求め,電源と比べよ.

解答を見る

考え方

集中定数回路を仮定し,傾きと切片で容量と損失を分ける.

  1. V(t),I(t) を V^eiωt,I^eiωt の実部とする.V^=2Ve,X=1/(ωC) とおけば

Z=R+r+1iωC=R+r−iX,I^=V^Z,VR,e=RVe(R+r)2+X2

従って Y=A+Bx,ただし A=(1+r/R)2,B=1/(R2C2) である.

  1. 表の両端を1,3と書くと,B=(Y1−Y3)/(x1−x3),A=Y3−Bx3.代入して A=1.20973,B=9.95935×105s−2 で,

r=R(A−1)≃1.00×102Ω,C=1RB≃1.00×10−6F

中間の電圧は 4.9678V で表と合う.r=0 では切片1となり,両端を説明できない.

  1. 交換後も R と書く.D=(R+r)2+X2,Ie=Ve/D より PR=Ve2R/D.微分すると

dPRdR=Ve2r2+X2−R2D2,R∗=r2+X2

微分は正から負へ変わる.R∗≃5.09×102Ω,PR,∗≃2.96×10−2W.容量の周期平均の仕事は0で,電源は内部損失も含め PR+Ie2r≃3.54×10−2W を供給する.配線長 ℓ,寄生インダクタンス Ls に対し ωℓ/c,ωLs/|Z| が十分小さいことが条件である.

総合演習 66

APhO 2002 第3問(改題) ★★★★☆

干渉縞で分子の付着障壁を測る

気体分子の付着で,屈折率 n=1.50 の一様な膜を作ります.気体圧力 p と基板温度は一定,気体温度 T は変更します.分子質量は m=5.00×10−26kg,1個あたりの膜体積は Ω=3.00×10−29m3 です.膜に向かう法線速度 vz>0 が mvz2/2≥Ea を満たす分子だけ付着します.再蒸発,表面拡散,気体の枯渇は無視します.

気体の数密度は ng=p/(kBT),法線速度の確率密度は

F(vz)=m2πkBTexp⁡(−mvz22kBT)

真空波長 λ=600nm の光を垂直入射させると,隣り合う反射極小の間隔は,T1=300K で Δt1=40.0s,T2=600K で Δt2=4.00s でした.空気,膜,基板の順に屈折率は大きく,多重反射と吸収を無視します.kB=1.38×10−23JK−1,1eV=1.60×10−19J とします.

法線速度 v_z>0 の分子が膜に向かう.膜の屈折率は n=1.50,膜厚は d で,その下に基板がある.真空波長 λ=600 nm の光は垂直に入射する.上面で反射する光と,膜を通って下面で反射する光を,横に分けて示す.各光路の入射光と反射光は同じ鉛直線上を逆向きに進む. 法線速度 v_z>0 の分子が膜に向かう.膜の屈折率は n=1.50,膜厚は d で,その下に基板がある.真空波長 λ=600 nm の光は垂直に入射する.上面で反射する光と,膜を通って下面で反射する光を,横に分けて示す.各光路の入射光と反射光は同じ鉛直線上を逆向きに進む.
  1. 分子の到達率 J と,付着する割合を積分から求め,膜厚の増加率 dddt を示せ.

  2. 反射の位相変化から,隣り合う極小の膜厚差を求めよ.極小で強度は必ず0になるか.

  3. Ea,p を求めよ.気体中の個数割合を付着割合に使えるかも述べよ.

  4. 模型を任意の T>0 へ延ばし,成長率が最大になる温度を求めよ.300〜600K に制限した場合と比べよ.

解答を見る

考え方

到達数を速度で重み付けする.干渉から成長率を決める.

  1. a=m/(2kBT),va=2Ea/m とおく.積分 ∫b∞ve−av2dv=e−ab2/(2a) を使うと

J=ng∫0∞vzF(vz)dvz=p2πmkBT,Ja=ng∫va∞vzF(vz)dvz=Je−Ea/(kBT)

付着割合は Ja/J=e−Ea/(kBT),成長率は u=dddt=Ωpe−Ea/(kBT)/2πmkBT となる.

  1. 両反射の位相変化はともに π で相殺される.往復の位相差 4πnd/λ が奇数倍の π で極小となり,厚さ差は δd=λ/(2n)=200nm.振幅が異なれば強度は0にならない.

  2. uj=δd/Δtj より u1=5.00×10−9ms−1,u2=5.00×10−8ms−1.比で圧力が消え,

ln⁡u2u1+12ln⁡T2T1=EakB(1T1−1T2)

従って Ea=2.19×10−20J=0.137eV.丸める前の値では e−Ea/(kBT1)=0.00500 であり,

p=u12πmkBT1Ωe−Ea/(kBT1)=1.20Pa

速い分子ほど頻繁に届くため,気体中の個数割合は使えない.

  1. dln⁡udT=−1/(2T)+Ea/(kBT2) は正から負へ変わり,最大は T∗=2Ea/kB=3.18×103K.低温の障壁と高温の数密度減少が成長を抑える.実験範囲では最大は 600K.高温の結果は再蒸発や物性変化を除く形式的な予測である.ΩJ は速度の次元を持つ.干渉では追加反射の振幅比と光学的吸収を十分小さいとしている.

総合演習 67

APhO 2001 第2問(改題) ★★★★★

仕事をしない磁場が回転を止める

質量 m,電荷 +q,−q の粒子を長さ ℓ の軽い剛い絶縁棒で結び,磁場 B=Bez に垂直な平面で動かします.−q から +q への相対位置を r=ℓ(cos⁡θ,sin⁡θ),重心速度を V とします.初期重心は原点,θ=0,V=Uey,dθdt=w>0 です.まず U≥0 とします.重力,抵抗,放射,相対論的効果を無視します.静電エネルギーは距離一定で変化しません.

質量 m の電荷 −q と +q を長さ ℓ の絶縁棒で結ぶ.初期重心は原点で,θ=0 の棒は x 軸に沿い,−q が左,+q が右にある.重心の初速度 U は +y 向き,初期角速度 w>0 は反時計回りである.緑の ⊙ は +z 向きに紙面から出る一様磁場 B を表す. 質量 m の電荷 −q と +q を長さ ℓ の絶縁棒で結ぶ.初期重心は原点で,θ=0 の棒は x 軸に沿い,−q が左,+q が右にある.重心の初速度 U は +y 向き,初期角速度 w>0 は反時計回りである.緑の ⊙ は +z 向きに紙面から出る一様磁場 B を表す.
  1. 全磁気力から P=2mV−qr×B が保存することを示せ.b=qBℓ/(2m) とおき,Vx,Vy を θ で表せ.

  2. エネルギー保存から θ だけの式を導き,一回転できる初期角速度の条件を求めよ.等号で有限時間内に裏返るか.

  3. 一回転しない場合の角振幅,小振幅の周期,回転の限界での周期の振る舞いを求めよ.

  4. U=−b に変更する.角速度と軌跡を求め,磁場の仕事0と角速度の変化を整合させよ.

解答を見る

考え方

棒は変形せず,内力の仕事の和は0である.相対位置を含む保存量で重心速度を消去する.

  1. 両粒子の速度は V±drdt/2.磁気力を加えると 2mdVdt=qdrdt×B だから,指定の P の微分は0になる.r×B=Bℓ(sin⁡θ,−cos⁡θ) より,初期値は P=2m(U+b)ey.従って

Vx=bsin⁡θ,Vy=U+b(1−cos⁡θ)
  1. 慣性モーメントは I=2m(ℓ/2)2=mℓ2/2.磁気力の仕事は0なので,全運動エネルギーが保存する.

|V|2=U2+2b(U+b)(1−cos⁡θ),I2(dθdt)2+2mb(U+b)(1−cos⁡θ)=I2w2

Ω02=4b(U+b)/ℓ2 とおけば,(dθdt)2=w2−4Ω02sin2⁡(θ/2).θ=π を通過する条件は w>2Ω0.等号では dθdt=2Ω0cos⁡(θ/2) である.δ=π−θ が小さいと dδdt≃−Ω0δ,従って δ は指数的に0へ近づき,有限時間では裏返らない.

  1. 0<w<2Ω0 では θmax=2arcsin⁡[w/(2Ω0)].小振幅では sin⁡θ≃θ.(2)の式を微分すると d2θdt2=−Ω02sin⁡θ≃−Ω02θ なので T≃2π/Ω0.限界では停止角が π に近づく.(2)の δ∝e−Ω0t より,δ を縮める時間は −ln⁡δ/Ω0 に比例して増す.従って周期は対数的に発散する.

  2. U=−b では P=0,|V|=b が一定となる.回転のエネルギーも一定で,θ=wt.原点から積分して

X=bw(1−cos⁡wt),Y=−bwsin⁡wt

中心 (b/w,0),半径 b/w の円を描く.(2)では並進の速さが増す分だけ回転が遅くなるので,磁場の仕事は0である.小振幅の条件は w/(2Ω0) が十分小さいことであり,各粒子の速さと光速の比も十分小さくする.

総合演習 68

APhO 2007 第3問(改題) ★★★★★

逆コンプトン光のエネルギーと検出角度

電子が +x 向きに全エネルギー E=γE0,運動量 p で進み,エネルギー ε=hc/λ の光子と正面衝突します.散乱光子のエネルギーは ε′,+x 軸との角は ϕ です.自由な電子と光子の1回の衝突を考えます.電子は E2=p2c2+E02,E0=mc2,光子には運動量の大きさ ε/c が成り立ち,0<ε<pc とします.

電子はエネルギー E=γE_0,運動量 p で +x 向きに進み,エネルギー ε=hc/λ の光子は逆向きに進んで正面衝突する.散乱光子のエネルギーを ε′ とし,その進行方向と +x 軸の間の角 φ を示す. 電子はエネルギー E=γE_0,運動量 p で +x 向きに進み,エネルギー ε=hc/λ の光子は逆向きに進んで正面衝突する.散乱光子のエネルギーを ε′ とし,その進行方向と +x 軸の間の角 φ を示す.
  1. 保存則から ε′(ϕ) と最大値を導け.

  2. γ≫1 として反跳補正 a=4γε/E0 を残した最大値を近似せよ.γ=150,λ=800nm,E0=0.511MeV,hc=1.24×103eVnm で,厳密な最大値と波長も求めよ.

  3. 小角でのエネルギーを近似し,検出光子がすべて最大値の0.90倍以上となる円錐の最大半角を求めよ.電子ビームのばらつきは無視せよ.

  4. 軸上の観測で,電子の相対エネルギー幅 s が光子の幅へどう伝わるか求めよ.波長一定で,a の大小を比べよ.

解答を見る

考え方

散乱電子の方向を消去し,質量一定の条件を使う.散乱確率は求めない.

  1. 散乱電子のエネルギーと運動量は

Ef=E+ε−ε′,pf2c2=(pc−ε)2+ε′2−2(pc−ε)ε′cos⁡ϕ

これを Ef2−pf2c2=E2−p2c2 に代入して展開すると

ε(E+pc)=ε′[E−pccos⁡ϕ+ε(1+cos⁡ϕ)]

H=E+pc,D=E−pc+2ε とおけば

ε′(ϕ)=εHD+(pc−ε)(1−cos⁡ϕ)

ϕ=0 で分母が最小となり, εmax′=εH/D.ϕ=π では ε′=ε に戻る.

  1. pc=E0γ2−1≃γE0−E0/(2γ) より H≃2γE0,D≃E0(1+a)/(2γ).従って

εmax′≃4γ2ε1+a

数値は ε=1.55eV,a=0.00182.厳密式は εmax′=0.139MeV,λ′=hc/εmax′=8.91×10−3nm を与える.

  1. 1−cos⁡ϕ≃ϕ2/2,pc−ε≃γE0 を(1)に代入して

ε′(ϕ)≃4γ2ε1+a+γ2ϕ2

最大値との比は (1+a)/(1+a+γ2ϕ2).これを0.90以上とすれば ϕ∗≃(1+a)/9/γ=2.22×10−3rad.縁でエネルギーが最小となる.収量は決まらない.

  1. a は γ に比例するので,(2)の対数微分は

dln⁡εmax′dln⁡γ=2−a1+a=2+a1+a

光子の幅は (2+a)s/(1+a).小さい a では約 2s,a≫1 では約 s である.後者では εmax′≃γE0=E となり,反跳が増幅を抑える.条件は 1/γ2,ϕ2,ε/E,s が十分小さいことである.4γ2ε の式にはさらに小さい a が必要で,数値例は満たす.