問いしるべ
参考書

問いから始める物理

公式参考書

問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 18節
  1. 波動方程式と音の速さ
  2. 偏微分と波のグラフの読み方
  3. 波動方程式と音の伝わり方の演習
  4. 波の重ね合わせとドップラー効果
  5. うなりとドップラー効果の例題
  6. 波の重ね合わせとうなりの演習
  7. 反射と定常波
  8. 反射と定常波の例題
  9. 波の反射と定常波の演習
  10. 倍音と音色
  11. フーリエ級数と直交性
  12. 倍音と音色の演習
  13. 波が運ぶエネルギーと分散
  14. 群速度・次元解析・境界の条件
  15. 分散と波のエネルギー流の演習
  16. 第25章の章末問題
  17. 第25章の発展問題
  18. 第25章のまとめ

第25章  波と音

01波動方程式と音の速さ

問い

遠くで稲妻が光り,3秒ほどたってからゴロゴロと雷鳴が聞こえました.光はほとんど一瞬で届くので,遅れは音が伝わるのにかかった時間です.では,1 km 先の空気が押し流されて耳元まで運ばれてきたのでしょうか.もしそうなら,耳元には秒速 300 m を超える猛烈な風が吹くはずです.音として伝わってくるのはいったい何で,その速さは何で決まるのでしょうか.

ここから波の章に入ります.第24章のマクスウェル方程式からは,電荷も電流もない所を場の変化が自分で伝わる解,つまり電磁波が出てきます.その前にこの章では,目で見え耳で聞こえる弦・空気・水面の波で波を語る言葉を作り,第26章(電磁波)と第27章(光)でそのまま使います.題材は,波動方程式(この題材),重ね合わせとうなり,反射とモード,倍音,分散とエネルギーの5つです.(発展)と付いた所(3次元の波,波が運ぶ運動量)は飛ばしても後が読めます.入試の範囲を先に固めたいなら,各題材の本体と例題を読み,数学の節の導出は後回しにしてかまいません.

ポイント 第25章で使う記号

記号

意味

y, ξ

媒質の変位(弦などの横の変位は y,音の縦の変位は ξ)

A

振幅

λ, k=2π/λ

波長,波数

T, f, ω=2πf

周期,振動数,角振動数

v, vg

波の速さ(位相速度),群速度

S, μ

弦の張力,弦の線密度(単位 kgm−1)

ρ, p, δp

媒質の密度,平衡の圧力,圧力のずれ

γ

比熱比

I

音(波)の強さ(単位 Wm−2)

この章では張力を S と書き,周期の T と区別します.T は音速の式でだけ絶対温度に使います.λ は第20章の線電荷密度ではなく波長,μ は透磁率ではなく線密度です.正弦波は y=Asin⁡(ωt−kx) を標準の形にします.

考えてみる

素直に考えると,音は空気が流れて運ぶものに思えます.けれど,スピーカーの前に置いたろうそくの炎は,大きな音でも少し震えるだけで吹き流されません.空気は行き来しているだけで,どこかへ流れてはいないのです.

伝わっているのは「押し縮められた状態」です.押された空気が隣の空気を押し,それがまた隣を押して,状態が次々に受け渡されます.第7章の連成振動で,おもりをばねでつないだ列の端を揺らしたときと同じです.そうだとすると,伝わる速さは「隣を押す強さ」と「押される側の重さ」で決まるはずです.これを式にしてみます.

波は形が伝わる

定義 波,横波と縦波

  • 媒質のある所に生じた変形(変位)が,媒質を次々に伝わっていく現象を波という.媒質の各部分はもとの位置のまわりを行き来するだけで,運ばれていくのは変形の形とエネルギーである.

  • 媒質の変位が波の進む向きに垂直な波を横波(弦の波),平行な波を縦波(音)という.縦波では媒質の詰まった所(密部)とまばらな所(疎部)が交互に並んで進む.

ばねの列から波動方程式へ

質量 m のおもりを,ばね定数 K のばねで間隔 a ごとにつないだ長い列を考えます(ばね定数を K と書くのは,波数の k と区別するためです).n 番目のおもりのつり合いの位置からの変位を yn とすると,両隣のばねから受ける力を足して,運動方程式は

md2yndt2=K(yn+1−yn)−K(yn−yn−1)=K(yn+1−2yn+yn−1)

です.第7章ではおもりが N 個の基準振動を調べました.ここでは,変位がおもりからおもりへゆっくり変わる場合を考えます.

[図:ばねの列から連続な媒質へ]

初期状態は13個のおもりが左右に変位し,詰まった部分が右へ進む長波長の模式図.下の曲線は同じ変位yを縦軸に描いたもの.時刻を動かすと左端の振動と圧縮の伝わり方が分かる.個数を増やすと間隔aが小さくなり,点が曲線y(x,t)に近づく.

つり合いの位置 x=na の関数として変位 y(x,t) を考え,yn±1=y(x±a,t) をテイラー展開すると,y(x±a)≈y±a∂y/∂x+12a2∂2y/∂x2 なので,yn+1−2yn+yn−1≈a2∂2y/∂x2 です(変数が2つあるので,片方を止めて微分する偏微分を使いました.数学の節).運動方程式は

m∂2y∂t2=Ka2∂2y∂x2,つまり∂2y∂t2=v2∂2y∂x2,v=aKm

になります.捨てた項の割合は間隔と波長の比の2乗程度なので,この式は波長が間隔 a よりずっと長いときに成り立ちます.波長が a に近づくと速さが波長によって変わり(分散),ある振動数より上では波が伝わらなくなります(第5題材).

法則 1次元の波動方程式

∂2y∂t2=v2∂2y∂x2

左辺は媒質の加速度,右辺は曲がり具合に比例する復元力を表す.v が波の速さになる.

弦を伝わる横波

張力 S,線密度 μ の弦が x 軸に沿って張られ,小さく横に振れているとします.x から x+dx の小さな部分は,両端で張力に引かれます.弦の傾き ∂y/∂x が1よりずっと小さければ,張力の大きさは S のままで,横向きの成分は S∂y/∂x です.両端の差が合力なので

μdx∂2y∂t2=S∂y∂x(x+dx)−S∂y∂x(x)=S∂2y∂x2dx

となり,波動方程式で v=S/μ です.張力が大きいほど速く,弦が重いほど遅くなります.

青い弦の部分はxからx+dxまで.張力Sは両端から外向きの接線方向に働く.この形では左端のy方向の成分は下向き,右端では上向きで,右端の傾きが大きいため合力は上向きになる. 青い弦の部分はxからx+dxまで.張力Sは両端から外向きの接線方向に働く.この形では左端のy方向の成分は下向き,右端では上向きで,右端の傾きが大きいため合力は上向きになる.

音の波動方程式と音速

断面積が一様な管の中の空気を考え,つり合いの位置 x にあった空気の薄い層の変位を ξ(x,t) とします.厚さ dx の層は,両面が ξ(x) と ξ(x+dx) だけずれるので,厚さが (1+∂ξ/∂x)dx になります.体積の変化の割合は ∂ξ/∂x で,質量は変わらないので密度のずれは δρ/ρ=−∂ξ/∂x です.

上は平衡の厚さdxの空気層,下は両面がξ(x),ξ(x+dx)だけ右へずれた同じ層.破線は平衡位置を示す.図の例では左面の変位が大きく,層が薄くなる.圧力p+δpは左面を右へ,右面を左へ押す. 上は平衡の厚さdxの空気層,下は両面がξ(x),ξ(x+dx)だけ右へずれた同じ層.破線は平衡位置を示す.図の例では左面の変位が大きく,層が薄くなる.圧力p+δpは左面を右へ,右面を左へ押す.

音の圧縮は速いので,熱が出入りする暇がなく,断熱変化(第16章)とみなせます.pVγ が一定なので δp/p=−γδV/V で,

δp=−γp∂ξ∂x

です.層の両面の圧力の差が層を動かすので,単位断面積あたり ρdx∂2ξ/∂t2=−∂δp/∂xdx で,これに代入すると

∂2ξ∂t2=γpρ∂2ξ∂x2,v=γpρ=γRTMmol

を得ます.2つ目の形は理想気体の p=ρRT/Mmol(Mmol はモル質量)を使いました.

空気(γ=1.40,Mmol=2.90×10−2kgmol−1)で T=293K なら,v=1.40×8.31×293/0.0290ms−1≈343ms−1 です.音速は圧力にはよらず,絶対温度の平方根に比例します.

ニュートンは圧縮が等温だとして v=p/ρ を出し,測定より約15 % 小さい値を得ました.しかし 1kHz の音の半周期の間に熱が拡散で届く距離(Dt≈0.1mm,D は熱拡散率,第18章)は,密部と疎部の距離(半波長,約 17cm)よりはるかに短く,熱は間に合わないので変化は断熱です.

δp=−γp∂ξ/∂x から,変位が0で傾きが最大の所で圧力のずれが最大になり,変位が最大の所では0です.この「変位の節が圧力の腹」という関係は,第3題材の気柱で使います.

進む波の形

波動方程式は,どんな形の関数 F についても y=F(x−vt) を解にもちます(代入して確かめるのは数学の節).時刻 t の波形は時刻0の波形を vt だけ右へずらしたもので,形を保ったまま速さ v で右へ進む波です.同じように G(x+vt) は左へ進む波で,一般の解はこの2つの和です.

[図:形が進み,媒質の点は上下に動く]

初期状態ではパルスが時刻0の破線から右へずれ,橙の印は同じ位置xに留まる.時刻tを動かすと,F(x−vt)の形が保たれたまま右へ進み,橙の印は上下だけに動く.再生は右端まで進むと止まる.

公式 正弦波

y=Asin⁡(ωt−kx),k=2πλ,ω=2πT=2πf,v=fλ=ωk

ωt−kx を位相という.入試で使う y=Asin⁡2π(tT−xλ) と同じものである.

sin⁡(ωt−kx)=−sin⁡(k(x−vt)) なので,これは F(x−vt) の形です.交流(第23章)と同じく,Aei(ωt−kx) の実部と考えて計算してもかまいません.媒質の速度 ∂y/∂t=Aωcos⁡(ωt−kx) の最大値 Aω と波の速さ v は別のもので,比 Aω/v=Ak は弦の傾きの最大値です.小振幅の近似では,これが1よりずっと小さいとしています.

3次元の波(発展)

四方に広がる音の圧力のずれ δp は,3次元の波動方程式

∂2(δp)∂t2=v2∇2⁡(δp),∇2=∂2∂x2+∂2∂y2+∂2∂z2

を満たします(∇2 は第20章の電位で出てきたラプラシアン).点音源から出る球面波は δp=F(r−vt)/r(r は音源からの距離)の形で,振幅が 1/r で減ります.

波が運ぶエネルギーと音の強さ

媒質は流れていかなくても,エネルギーは運ばれます.音の進む向きに垂直な単位面積を考えると,左側の空気は右側の空気を圧力のずれ δp で押しながら速度 ∂ξ/∂t で動かすので,単位時間に δp∂ξ/∂t の仕事を渡します.右へ進む波 ξ=F(x−vt) では ∂ξ/∂x=−1v∂ξ/∂t なので,これは ρv(∂ξ/∂t)2 です.正弦波 ξ=Asin⁡(ωt−kx) で時間平均をとります(cos2 の平均は 1/2).

公式 音の強さ

単位時間に単位面積を通るエネルギーを強さという.正弦波の音では

I=12ρvω2A2=pA22ρv,pA=ρvωA

で,pA は圧力のずれの振幅である.強さは振幅の2乗と振動数の2乗に比例する.

人の耳は 10−12Wm−2 ほどから 1Wm−2 ほどまで,12けたにわたる強さを聞き分けるので,強さを対数で表します.

定義 音の強さのレベル(デシベル)

L=10log10⁡II0 dB,I0=1.0×10−12Wm−2

強さが10倍になると 10dB,2倍になると約 3dB 上がる.

吸収も反射もなく四方へ一様に広がる音源なら,出力 P は半径 r の球面全体を通るので P=4πr2I で,強さは 1/r2 で減ります.距離が10倍になるとレベルは 20dB 下がります.

ここまでの式は,弦の傾き |∂y/∂x|,音の |∂ξ/∂x| と |δp|/p(会話の音で 10−7 程度)が1よりずっと小さいとして,2乗以上を捨てた近似です.爆発のすぐ近くのように圧力のずれが大気圧に迫ると,密部ほど音速が速くなって波形が崩れ,衝撃波になります.

問いに戻る

雷鳴として届いたのは空気そのものではなく,押し縮められた状態です.その速さ v=γp/ρ は「押し返す強さ」γp と「慣性」ρ で決まり,常温で約 340ms−1 なので,3秒の遅れなら雷は約 1km 先です.

空気の動きも見積もれます.1 km 先で 100dB(I=1.0×10−2Wm−2)の雷鳴なら,ρ=1.2kgm−3,v=343ms−1 として pA=2ρvI≈3Pa で,空気の速さの振幅は pA/(ρv)≈7×10−3ms−1,振動数 100Hz なら変位の振幅は約 1×10−5m です.耳元の空気は 0.01 mm ほど行き来するだけで,暴風は吹きません.

ポイント ここまでのまとめ

  • 波では媒質は行き来するだけで,運ばれるのは形とエネルギーである.

  • ばねの列で間隔を小さくした極限から波動方程式 ∂2y/∂t2=v2∂2y/∂x2 が出る.弦では v=S/μ.

  • 音は断熱的な圧縮が伝わる縦波で,v=γp/ρ=γRT/Mmol,δp=−γp∂ξ/∂x.変位の節が圧力の腹.

  • F(x−vt) は右へ進む波.正弦波 y=Asin⁡(ωt−kx),v=fλ=ω/k.

  • 音の強さ I=12ρvω2A2=pA2/(2ρv),レベル L=10log10⁡(I/I0)dB.

  • どれも小振幅(傾きや |δp|/p が1よりずっと小さい)の近似である.

02偏微分と波のグラフの読み方

本体の節では,波動方程式を導き,F(x−vt) が解になることを結果だけ述べました.ここでは2つの変数をもつ関数の微分(偏微分)を使って解を確かめ,正弦波の2種類のグラフの読み方と,ばねの列を連続な媒質とみなす近似の精度を練習します.

定理 数学の道具:偏微分と進む波

y(x,t) のように2つの変数をもつ関数で,t を止めて x で微分したものを ∂y/∂x,x を止めて t で微分したものを ∂y/∂t と書き,偏微分という.2回続けたものが ∂2y/∂x2,∂2y/∂t2 である.∂y/∂x はある時刻の波形の傾き,∂y/∂t はある場所の媒質の速度を表す.

u=x−vt とおいて y=F(u) とすると,合成関数の微分から

∂y∂x=F′(u),∂y∂t=−vF′(u),∂2y∂x2=F″(u),∂2y∂t2=v2F″(u)

なので,y=F(x−vt) は形 F によらず ∂2y/∂t2=v2∂2y/∂x2 を満たす.G(x+vt) も同じである.また,右へ進む波では

∂y∂t=−v∂y∂x

が成り立つ.

最後の式は「媒質の速度は,波形の傾きに −v を掛けたもの」と読めます.波形が右上がり(傾きが正)の所では媒質は下へ動き,右下がりの所では上へ動きます.右へ進む波形を少しだけ右へずらして描き,各点がどちらへ移るかを見るのと同じことです.

練習1 y=Asin⁡(ωt−kx) が波動方程式を満たすための v を求めよ.

練習2 y=Asin⁡kxcos⁡ωt を2つの進む波の和に書き直し,波動方程式を満たす条件を求めよ.

答え 練習1:∂2y/∂t2=−ω2y,∂2y/∂x2=−k2y なので,−ω2y=−v2k2y から v=ω/k.練習2:積和の公式で y=A2sin⁡(kx+ωt)+A2sin⁡(kx−ωt).1つ目は左へ,2つ目は右へ進む速さ ω/k の波で,ω=vk なら両方とも解である.直接代入しても −ω2y=−v2k2y となる.これは場所によって振幅が決まった定常波で,第3題材で使う.

2つのグラフ

波を表す y(x,t) は2つの変数の関数なので,1枚のグラフには描けません.そこで片方を止めて描きます.

ポイント 数学の道具:y-x 図と y-t 図

  • y-x 図:時刻を止めて,各場所の変位を描いたもの(波の写真).山から次の山までが波長 λ.

  • y-t 図:場所を止めて,その点の変位の時間変化を描いたもの(1点の記録).山から次の山までが周期 T.

  • y=Asin⁡(ωt−kx) では,Δx だけ離れた2点の位相は kΔx=2πΔx/λ だけずれ,進む向きの先にある点ほど遅れる.

  • 媒質の速度は ∂y/∂t,加速度は ∂2y/∂t2=−ω2y(正弦波では,加速度はいつもつり合いの位置を向く).

  • 縦波は,右向きの変位を上向きに描き直して ξ-x 図にする.密度のずれは δρ/ρ=−∂ξ/∂x なので,ξ が x とともに減る(右下がりの)所が密,増える所が疎で,最も密なのは右下がりに0を横切る点である.

左は時刻0のyとxの関係で,山と次の山の間が波長λ.破線は少し後に右へ移った波形で,矢印は選んだ媒質の点の速度を示す.右はx=0のyとtの関係で,山と次の山の間が周期T.時刻0の左の傾きは負,右の傾きは正になる. 左は時刻0のyとxの関係で,山と次の山の間が波長λ.破線は少し後に右へ移った波形で,矢印は選んだ媒質の点の速度を示す.右はx=0のyとtの関係で,山と次の山の間が周期T.時刻0の左の傾きは負,右の傾きは正になる.

ばねの列はどこまで連続か

本体の節では yn+1−2yn+yn−1≈a2∂2y/∂x2 としました.どれだけ正確かを調べます.

定理 数学の道具:差分と2階微分

テイラー展開を4次まで書くと,奇数次の項が打ち消し合って

y(x+a)−2y(x)+y(x−a)=a2∂2y∂x2+a412∂4y∂x4+⋯

となる.波数 k の正弦波では ∂4y/∂x4=−k2∂2y/∂x2 なので,2項目と1項目の比は −(ka)2/12 である.したがって ka=2πa/λ が1よりずっと小さいとき,つまり波長が間隔の数倍より十分長いとき,ばねの列は波動方程式に従う連続な媒質とみなせる.

練習3 波長がおもりの間隔の10倍のとき,2項目は1項目の何 % か.

答え ka=2π/10≈0.628,2項目と1項目の比は −(ka)2/12≈−0.033 で,逆符号で大きさは約3.3 % である.この分だけ復元力が弱まり,波は少し遅くなる(速さの変化はこの半分ほど).

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

x 軸の正の向きに速さ 2.0ms−1 で進む正弦波がある.時刻0の波形は,原点で変位が0で,そこから右へ進むと変位が減少し,最初に x=0.50m で谷(変位 −0.030m)になる.

  1. 波長,周期,角振動数,波数を求め,波の式を y=Asin⁡(ωt−kx) の形で書け.

  2. 時刻0に x=0,0.50m,1.0m にある媒質の速度の向きと大きさ,加速度の向きを答えよ.

  3. x=1.5m の点の変位を時刻の関数で表し,y-t 図の形を述べよ.

時刻0に原点で変位が0の波形を,0から2.0 mまで描く.最初の谷はx=0.50 mで変位−0.030 m,振幅は0.030 m.波はxの正の向きに速さ2.0 m s⁻¹で進む. 時刻0に原点で変位が0の波形を,0から2.0 mまで描く.最初の谷はx=0.50 mで変位−0.030 m,振幅は0.030 m.波はxの正の向きに速さ2.0 m s⁻¹で進む.
解答を見る

考え方 原点から谷までが λ/4.媒質の速度は ∂y/∂t で,波形を進む向きに少しずらして確かめる.

  1. λ=4×0.50m=2.0m,T=λ/v=1.0s,ω=2π/T=2πs−1,k=2π/λ=πm−1.時刻0で y=−Asin⁡kx となり,x=λ/4 で谷になるから A=0.030m で

y=0.030sin⁡(2πt−πx)(m)

である.

  1. ∂y/∂t=0.030×2πcos⁡(2πt−πx).時刻0で,x=0 では cos⁡0=1 で上向きに 0.19ms−1,x=0.50m では cos⁡(−π/2)=0 で速度0,x=1.0m では cos⁡(−π)=−1 で下向きに 0.19ms−1 である.加速度 −ω2y は,x=0 と x=1.0m では変位0なので0,谷の x=0.50m では上向きである.

  2. y=0.030sin⁡(2πt−1.5π)=0.030cos⁡2πt(m).y-t 図は t=0 で山(0.030m)から始まる周期 1.0s の余弦の形である.

確かめ:時刻0の波形 y=−0.030sin⁡πx は x=1.5m で +0.030m の山であり,(3) と合う.原点のすぐ左は変位が正なので,波形を右へずらすと原点は上がり,(2) と合う.最大の傾き Ak=0.094 は1よりかなり小さい.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

空気の詰まった長い管の中を,x 軸の正の向きに縦波が進んでいる.右向きの変位を正として,時刻0の変位は ξ=−Asin⁡kx で,波長は λ=0.80m である.

  1. 0≤x<λ で最も密な位置と最も疎な位置を求めよ.変位の大きさが最大の位置はどちらでもないことを確かめよ.

  2. 最も密な位置の空気の速度の向きを答えよ.圧力のずれはどこで最大か.

  3. 時刻 T/4 に,0≤x<λ で最も密な位置はどこか.

上は時刻0のξ=−A sin kxを1波長分描いた変位グラフ.右向きの変位を縦軸の正の向きに描く.下の灰色の印は平衡の位置,青い印は変位した後の同じ空気層を表し,細い破線で対応を示す. 上は時刻0のξ=−A sin kxを1波長分描いた変位グラフ.右向きの変位を縦軸の正の向きに描く.下の灰色の印は平衡の位置,青い印は変位した後の同じ空気層を表し,細い破線で対応を示す.
解答を見る

考え方 密度のずれは δρ/ρ=−∂ξ/∂x.変位の向きで隣の層との間隔が縮むか伸びるかを考える.

  1. ξ=Asin⁡(ωt−kx) の時刻0の形である.δρ/ρ=−∂ξ/∂x=Akcos⁡(ωt−kx) は時刻0で Akcos⁡kx なので,最も密なのは x=0,最も疎なのは x=λ/2=0.40m である.x=0 のすぐ左では ξ>0(右へずれる),すぐ右では ξ<0(左へずれる)ので,層が原点へ寄り集まっていて確かに密である.変位の大きさが最大の x=λ/4, 3λ/4(0.20m,0.60m)では ∂ξ/∂x=0 で,密度は平衡と同じである.

  2. ∂ξ/∂t=Aωcos⁡(ωt−kx) は時刻0の x=0 で +Aω なので,密な所の空気は波の進む向き(右)に最も速く動いている.疎な所では左向きに最も速い.δp=−γp∂ξ/∂x=γpAkcos⁡(ωt−kx) なので,圧力のずれは密な所で最大である.

  3. 波形は vT/4=λ/4 だけ右へ進むので,x=0.20m である.

確かめ:密な所では圧力のずれも空気の速度も正なので,その積 δp∂ξ/∂t(単位面積あたりの仕事率)は正で,エネルギーが右へ運ばれる.本体の節の強さの式と合う.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

なめらかな床の上で,やわらかいつるまきばね(全質量 M)を長さ L まで一様に伸ばして両端を固定した.この状態から両端の距離を変えたときのばね全体のばね定数を K0 とする.ばねを,質量 M/N のおもり N 個を同じばね N 本でつないだ列とみなし,縦波を考える.

  1. 1本のばねのばね定数とおもりの間隔を N で表し,連続な媒質とみなす近似で縦波の速さ v を求めよ.v は N によるか.

  2. L=3.0m,M=0.20kg,K0=0.80Nm−1 のとき,一方の端のすぐ近くで作った縦のパルスが反対の端に着くまでの時間を求めよ.パルスの幅はおもりの間隔より十分広く,L より十分短いとする.

  3. ばねの巻き数を N=80 とする.波長 0.30m の正弦波について,連続な媒質とみなす近似の誤差の目安 (ka)2/12 を求めよ.

上は長さLに伸ばして両端を固定した全質量Mのつるまきばね.全体のばね定数はK₀.下は質量M/NのおもりN個を同じばねN本でつないだ模式図で,中間の部分を省略している.隣り合うおもりの平衡の間隔をaとする. 上は長さLに伸ばして両端を固定した全質量Mのつるまきばね.全体のばね定数はK₀.下は質量M/NのおもりN個を同じばねN本でつないだ模式図で,中間の部分を省略している.隣り合うおもりの平衡の間隔をaとする.
解答を見る

考え方 N 本のばねの直列が全体のばね定数 K0 になる.本体の節の v=aK/m を使う.

  1. N 本の直列で K0=K/N だから K=NK0,間隔は a=L/N,おもりの質量は m=M/N である.

v=aKm=LNNK0M/N=LK0M

で,N によらない.連続な媒質の性質(全体の質量と硬さ)だけで決まる.

  1. v=3.0×0.80/0.20ms−1=6.0ms−1.時間は L/v=M/K0=0.50s である.

  2. a=3.0/80m=0.0375m,ka=2π×0.0375/0.30=0.785 で,(ka)2/12≈0.051,約5 % である.

確かめ:単位は Nm−1/kg=s−1 に m を掛けて ms−1.(3) の誤差は波長が短いほど大きく,波長が巻きの間隔の数倍まで縮むと連続の近似は使えない.パルスの幅が巻きの間隔よりずっと広く,伸び縮みがばねの弾性の範囲にあるときに (2) が成り立つ.

ポイント ここまでのまとめ

  • 偏微分 ∂y/∂x は波形の傾き,∂y/∂t は媒質の速度.F(x−vt) を代入すると波動方程式を満たす.

  • 右へ進む波では ∂y/∂t=−v∂y/∂x.波形を進む向きに少しずらすと,媒質の動く向きが分かる.

  • y-x 図は波の写真(波長),y-t 図は1点の記録(周期).進む先の点ほど位相が kΔx 遅れる.

  • 縦波では δρ/ρ=−∂ξ/∂x.ξ が右下がりに0を横切る所が最も密で,変位が最大の所ではない.

  • ばねの列は ka が1よりずっと小さいとき連続とみなせ,誤差の目安は (ka)2/12.

03波動方程式と音の伝わり方の演習

波形の移動と媒質の運動を区別し,線形近似の条件も確かめましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

右へ進む弦の正弦波は,時刻0に原点を右下がりに横切り,最初の谷は x=0.20m,次の山は x=0.60m にあります.振幅は A=2.0×10−3m です.線密度は μ=5.0×10−3kgm−1 です.原点が次に上向きに0を横切る時刻は 0.040s です.

  1. 波長,周期,振動数,波の速さ,張力を求めよ.

  2. 波の式を書き,時刻0の x=0.10m における媒質の速度と加速度の向きを求めよ.

振幅A,谷の位置0.20 m,山の位置0.60 mと右向きの進行を示す.原点では時刻0と0.040 sの上向きの零交差だけを示す. 振幅A,谷の位置0.20 m,山の位置0.60 mと右向きの進行を示す.原点では時刻0と0.040 sの上向きの零交差だけを示す.
解答を見る

考え方 谷から山までが半波長であり,媒質の運動は時間微分する.

  1. λ=2(0.60−0.20)m=0.80m,T=0.040s.よって f=1/T=25Hz,v=λ/T=20ms−1.v2=S/μ より S=μv2=2.0N である.

  2. ω=2π/T,k=2π/λ とすれば y=Asin⁡(ωt−kx) である.速度は ∂y∂t=Aωcos⁡(ωt−kx),加速度は ∂2y∂t2=−ω2y.指定点では位相が −π/4 で,変位は負,余弦は正だから速度も加速度も上向きである.最大傾き Ak=0.016 は十分小さく,弦の小振幅近似と整合する.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

空気中を ξ=Asin⁡(ωt−kx) の平面音波が進みます.A=2.0×10−6m,f=5.0×102Hz,v=3.4×102ms−1,平衡圧力 p=1.0×105Pa,比熱比 γ=1.4 とします.平衡時の密度を ρ とし,右向きを正とします.δp=−γp∂ξ∂x を使えます.

  1. 質量保存から密度のずれ δρ と変位の関係を導け.時刻0の1波長内の密部・疎部を求めよ.

  2. 圧力のずれと媒質の速度を求め,密部の変位と速度の向きを答えよ.

与えられた式による時刻0のξとxのグラフを1波長分示す.粒子の変位は右向きを正とする. 与えられた式による時刻0のξとxのグラフを1波長分示す.粒子の変位は右向きを正とする.
解答を見る

考え方 疎密は粒子間隔の変化で決まる.

  1. 平衡時の長さ dx は (1+∂ξ/∂x)dx になる.質量保存から (ρ+δρ)(1+∂ξ/∂x)=ρ.小さい量の積を捨てると δρ/ρ=−∂ξ∂x=Akcos⁡(ωt−kx).λ=v/f=0.68m なので,0≤x<λ では密部は x=0,疎部は x=λ/2=0.34m である.

  2. δp=γpAkcos⁡(ωt−kx),∂ξ∂t=Aωcos⁡(ωt−kx).k=2π/λ より圧力振幅は 2.6Pa,速度振幅は 6.3×10−3ms−1.時刻0の密部では変位0で,速度は右向きである.Ak=1.8×10−5 と |δp|/p≤2.6×10−5 はともに小さく,線形化は妥当である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

管内の距離 d=3.40m を短い音が伝わる時間を測りました.反射と装置の遅延は除いています.v2=γRT/Mmol,R=8.31Jmol−1K−1,Mmol=2.90×10−2kgmol−1 とし,T は絶対温度,γ は一定です.

T(K)

伝播時間 τ(s)

289

0.0100

361

0.00894

  1. v2 と T のグラフの形を述べ,第1点から γ を求め,第2点と比較せよ.

  2. 第1点の時間が ±0.0001s の不確かさをもち,他は誤差なしとして,γ の相対不確かさを一次近似で求めよ.

一様な温度Tの管内で,送信器と受信器の間隔dは3.40 mである.音は送信器から受信器へ進む. 一様な温度Tの管内で,送信器と受信器の間隔dは3.40 mである.音は送信器から受信器へ進む.
解答を見る

考え方 速さの2乗を温度と比較する.

  1. v=d/τ なので v2=(γR/Mmol)T は原点を通る直線.第1点では v=340ms−1,γ=Mmold2/(RTτ2)=1.40.第2点の予測は τ=0.0100289/361s=0.00895s で,表との差は約 7×10−6s である.

  2. γ∝τ−2 より Δγ/γ≈−2Δτ/τ.不確かさは 2×0.0001/0.0100=0.020,約2 %,絶対不確かさは約 0.03 である.この展開には |Δτ|/τ=0.010 が十分小さいことを使った.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

一様な媒質中で等方的な音源から,反射・吸収なしで正弦波の音が広がります.両測定点は音源から波長に比べて十分遠く,局所的な平面進行波として扱います.距離 r=2.0m で音の強さのレベルが L=80dB でした.L=10log10⁡(I/I0)dB,I0=1.0×10−12Wm−2 とします.

  1. 強さと音響出力 P を求めよ.

  2. r=10m でのレベルと,最初の地点に対する変位振幅の比を求めよ.

解答を見る

考え方 球面に広がる出力を保存し,強さは振幅の2乗に比例する.

  1. I/I0=1080/10 より I=1.0×10−4Wm−2.P=4πr2I=5.0×10−3W である.

  2. I′/I=(2.0/10)2=0.040.したがって L′=80dB+10log10⁡(0.040)dB=66dB.遠方近似では A′/A=I′/I=0.20.4πr2I は距離によらない.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

長さ l,線密度 μ の一様な縄を鉛直につるし,下端に質量 m>0 のおもりを付けます.伸びは無視し,下端から上向きに x を測ります.短い横向きのパルスの局所的な速さを v(x)=S(x)/μ とします.

  1. 張力 S(x) を求め,下端から上端までの伝播時間を積分で求めよ.

  2. l=3.00m,μ=0.200kgm−1,m=0.200kg,g=9.80ms−2 で時間を求めよ.全長を上端の速さで進む見積もりは長すぎるか.

長さl,線密度μの縄の下端に質量mのおもりをつける.座標xは縄の下端を原点として上向きに測る. 長さl,線密度μの縄の下端に質量mのおもりをつける.座標xは縄の下端を原点として上向きに測る.
解答を見る

考え方 張力は下側の重さを支え,微小時間は dx/v(x) になる.

  1. S(x)=(m+μx)g.a=m/μ とおくと v(x)=g(x+a) だから

τ=∫0ldxg(x+a)=2g(l+a−a)
  1. a=1.00m,τ=2(2−1)/9.80s=0.639s.上端の v(l)=6.26ms−1 より見積もりは l/v(l)=0.479s と短すぎる.a が l より十分大きい極限では τ≈l/ga と一定張力の結果に戻る.局所近似には小さい傾きと,パルスの幅 d に対して d/(x+a) の小ささが必要である.

ポイント 教える人へ

  • 波形を右へずらし,媒質の動く向きを説明させる.

  • 粒子間隔から密部を判定し,変位最大の位置と区別させる.

  • 測定時間を二乗して使う際の不確かさと,絶対温度を使う理由を問う.

  • 張力が変わる縄では,微小時間を積分する理由を問う.

04波の重ね合わせとドップラー効果

問い

振動数がわずかに違う2本の音叉を並べて同時に鳴らします.片方ずつ鳴らすとどちらも一定の大きさの音なのに,一緒に鳴らすと「ウォン,ウォン」と音が大きくなったり小さくなったりを繰り返します.音叉はどちらも一定の強さで振動しているのに,聞こえる音の大きさが変わるのはなぜでしょうか.また,救急車が目の前を通り過ぎるとサイレンの高さが急に下がって聞こえるのは,サイレンが音を変えているからではありません.何が起きているのでしょうか.

考えてみる

2つの音が同時に来れば,2つの音が別々に聞こえるか,混ざって大きな1つの音に聞こえるか,そのどちらかだと思うのが素朴な考えです.どちらにしても,音の大きさが時間とともに周期的に変わる理由にはなりません.手がかりは,空気の変位や圧力のずれは正にも負にもなる量で,2つの波がある点に同時に来れば,その点の変位は2つの変位の和になる,ということです.同じ向きにずらす瞬間には強め合い,逆向きにずらす瞬間には打ち消し合います.振動数がわずかに違えば,この「そろう時」と「逆になる時」がゆっくり入れ替わるはずです.これを式で確かめ,次に音源や聞く人が動くと振動数そのものが変わる,ドップラー効果へ進みます.

重ね合わせの原理

前の題材で,弦の小さな振れも空気の小さな変位も,波動方程式

∂2y∂t2=v2∂2y∂x2

に従うことを見ました.この方程式は y について1次(線形)なので,y1 と y2 が解なら,その和 y1+y2 も解です.両辺を足せばすぐ確かめられます.

法則 重ね合わせの原理

線形な波動方程式に従う媒質では,2つ以上の波が同じ場所に来たとき,媒質の変位はそれぞれの波が単独で来たときの変位の和になる.重なったあと,それぞれの波は互いに影響を受けずに,元の形のまま進む.

線形になったのは,前の題材で弦の傾きや |δp|/p が十分小さいとして,2次以上の項を捨てたからでした.非常に大きな音や大きく振った弦では捨てた項が効いて,重ね合わせは近似でしか成り立ちません.この節の最後の衝撃波は,その近似が破れる例です.

弦の上を,右向きのパルスと左向きのパルスがすれ違う様子を考えます.重なっている間の形は2つの変位を各点で足したもので,重なり終わると,どちらのパルスも何事もなかったように元の形で進んでいきます.高さが同じで符号が逆のパルスがちょうど重なった瞬間には,弦は一瞬まっすぐになります.それでも波のエネルギーは消えていません.その瞬間,弦の各部分は上下に動いていて,エネルギーはすべて運動エネルギーになっています.変位が0でも速度は0でないので,次の瞬間には2つのパルスが再び現れます.

[図:正と負のパルスの重ね合わせ]

初期状態では正のパルスが右へ,負のパルスが左へ近づく.点線はそれぞれの変位y₁,y₂,実線は弦の変位y₁+y₂である.時刻のスライダーを中央にすると完全に打ち消し合い,その後は元の形で分かれて進む.

同じ振動数の波を足す

ある1点で,同じ角振動数 ω の2つの振動

y=A1cos⁡(ωt+ϕ1)+A2cos⁡(ωt+ϕ2)

が重なったとします.sin で書いた波も位相を π/2 ずらせば同じ形です.第7章のように,それぞれを複素数 A1ei(ωt+ϕ1) の実部と見れば,和は

y=Re[(A1eiϕ1+A2eiϕ2)eiωt]

です.時間に関係する eiωt は共通なので,複素平面の上で2つの矢印 A1eiϕ1 と A2eiϕ2 を足せば,合成した振動の振幅 B と位相が分かります.矢印の和の長さは余弦定理から

B2=A12+A22+2A1A2cos⁡(ϕ2−ϕ1)

です.位相差が0なら B=A1+A2 で強め合い,π なら B=|A1−A2| で弱め合います.振幅が違うと,弱め合っても0にはなりません.

複素平面で原点Oから出る矢印A₁eⁱφ₁とA₂eⁱφ₂を足す.点線は平行移動した矢印で,対角線が和の矢印である.その長さをB,2つの矢印の間の角をφ₂−φ₁とする. 複素平面で原点Oから出る矢印A₁eⁱφ₁とA₂eⁱφ₂を足す.点線は平行移動した矢印で,対角線が和の矢印である.その長さをB,2つの矢印の間の角をφ₂−φ₁とする.

振動数がわずかに違う波を足す:うなり

次に,振動数が f1 と f2 の音が1点に届く場合です.まず振幅が等しく,時刻0に位相がそろっているとします.三角関数の和を積に直す公式から

Acos⁡ω1t+Acos⁡ω2t=2Acos⁡(ω1−ω22t)cos⁡(ω1+ω22t)

です.ω1 と ω2 が近ければ,右辺の後ろの因子は平均の角振動数で速く振動し,前の因子 2Acos⁡(ω1−ω22t) はゆっくり変わります.ゆっくり変わる因子を振幅と見れば,「平均の高さの音が,振幅をゆっくり変えながら鳴っている」と読めます.

音の大きさは振幅の絶対値で決まります.|cos⁡θ| は θ が π 進むごとに同じ形を繰り返すので,大きな音が来る間隔は π/(|ω1−ω2|/2)=1/|f1−f2| です.

法則 うなり

振動数 f1,f2 の近い2つの音を重ねると,音の大きさが1秒あたり

fbeat=|f1−f2|

回の割合で強弱を繰り返す.これをうなりという.

[図:振動数の差とうなりの間隔]

初期設定はf₁=20 Hz,f₂=21 Hzで,振幅Aの2つの波を上に,和と包絡線を下に示す.強い所の間隔は1 sである.f₂のスライダーを20 Hzに近づけると間隔が長くなり,等しくなるとうなりが消える.波形は両方とも時刻0に位相がそろう余弦で描く.

振幅が違う場合は複素数の方が見通しがよくなります.

A1eiω1t+A2eiω2t=eiω1t[A1+A2ei(ω2−ω1)t]

と書くと,角括弧の中は,長さ A1 の矢印の先に長さ A2 の矢印がつながり,その矢印が角振動数 ω2−ω1 でゆっくり回る形です.同じ振動数の式で ϕ2−ϕ1 を (ω2−ω1)t に置き換えればよく,

B2=A12+A22+2A1A2cos⁡[2π(f2−f1)t]

です.振幅は A1+A2 と |A1−A2| の間を周期 1/|f1−f2| で行き来します.強さは B2 に比例するので,B2 を長い時間で平均すると A12+A22 です.振動数の違う音を長い時間で見れば,強さは単純に足し算になり,うなりは強さを時間の上で配り直しているだけです.

ここで「振幅がゆっくり変わる」と言えるのは,|f1−f2| が f1,f2 よりずっと小さく,うなりの1周期の間に何回も振動するときです.人の耳がうなりとして数えられるのは,差がおよそ10 Hz以下のときです.差が大きくなると「ざらついた音」に,さらに大きくなると2つの別の高さの音に聞こえます.

音源や聞く人が動くと:ドップラー効果

音は空気に対して速さ v で進みます.空気が静止しているとして,振動数 f0 の音源が観測者へ向かって速さ us で動く場合を考えます.音源が波の山を出してから次の山を出すまでの時間 1/f0 の間に,先の山は v/f0 進み,音源は us/f0 進みます.前方の山の間隔,つまり波長は

λ′=v−usf0

に縮みます.空気の中の音速は音源の速さによらないので,静止した観測者には f=v/λ′=f0v/(v−us) の振動数で山が届きます.

観測者が音源から遠ざかる向きに速さ uo で動くと,波長 λ′ は変わりませんが,山が観測者を追い越す相対速度が v−uo になり,1秒あたりに受け取る山の数は (v−uo)/λ′ です.まとめると次の式になります.

法則 ドップラー効果

空気に対する音速を v,音源から観測者へ向かう向きを正として,音源の速度の成分を us,観測者の速度の成分を uo とすると,振動数 f0 の音源の音は

f=f0v−uov−us

の振動数で聞こえる.速度はすべて空気に対するもので,風が吹いていれば地面に対する速度を使い v を v+w(w は風速の同じ向きの成分)に置き換える.

音源と観測者が近づけば高く,遠ざかれば低く聞こえます.救急車が目の前を通り過ぎるとき,us が正から負へ変わるので,音が急に低くなるのです.

us と uo が v よりずっと小さければ,f≈f0[1+(us−uo)/v] で,近づく相対速度だけで決まります.しかし厳密な式では音源の動きと観測者の動きの役割は違います.音には空気という媒質があり,どちらが空気に対して動いているかに意味があるからです.光には媒質が無く,相対速度だけで決まります(第26章).

斜めに動く場合も考え方は同じです.音源が時刻 te に出した音が,距離 R(te) 離れた静止した観測者に届く時刻は tr=te+R(te)/v です.この式を te で微分すると

dtrdte=1+1vdRdte

で,受信する振動数は f=f0dte/dtr です.−dR/dte は音を出した時刻の音源の速度の,観測者へ向かう成分なので,上の式の us を視線方向の成分に置き換えればよいことが分かります.真横を通る瞬間に出た音は f0 で聞こえますが,それが届く時には音源はもう少し先へ進んでいます.

壁や動く板で反射した音は,反射体をまず観測者として受け取る振動数を出し,次にその振動数で音を出す音源として扱えば求められます.反射音と直接の音が重なれば,その振動数の差でうなりが聞こえます.

[図:動く音源の波面と衝撃波の円錐]

初期設定はuₛ/v=0.60で,右へ進む音源の前方では波面が詰まり,後方では広がっている.円の中心は過去の放射位置である.速さの比を0から1.5まで変えると,1で前方の波面が音源の位置で接し,1を超えると後方に円錐状の包絡面ができる.球面と円錐を,運動方向を含む断面で示す.

音より速い音源:衝撃波

us が v に近づくと前方の波長は0に近づき,us≥v では音源が自分の出した音を追い越します.時刻 Δt 前に出た音は半径 vΔt の球面に広がり,その間に音源は usΔt 進んでいます.いろいろな時刻に出た球面の包絡面は音源を頂点とする円錐で,その半頂角 α は

sin⁡α=vus

です.比 us/v をマッハ数といいます.円錐の面にはたくさんの波面が同じ位相で重なり,圧力が急に跳ね上がります.これが衝撃波で,超音速機が通ったあと地上で聞こえる「ドン」という音(ソニックブーム)です.ここでは圧力のずれが小さいという近似が破れていて,詳しくは非線形な扱いが要りますが,円錐の角は上の作図で決まります.船の後ろにできるV字形の波も似ていますが,水の波は波長によって速さが変わる(第5題材の分散)ので,角は別の考えで決まります.

問いに戻る

2本の音叉の音は,耳の位置で圧力のずれとして足し合わされます.振動数が f1,f2 とわずかに違うと,2つの振動の位相差 2π(f2−f1)t がゆっくり増えていき,位相がそろう時刻には振幅が A1+A2,逆になる時刻には |A1−A2| になります.音叉はどちらも一定の強さで振動していますが,重ね合わせた振動の振幅が1秒に |f1−f2| 回の割合で大きくなったり小さくなったりします.これがうなりです.救急車の音は,近づくときは前方の波長が縮み,遠ざかるときは後方の波長が伸びるので,通り過ぎる時に振動数 f0v/(v−us) から f0v/(v+us) へ変わって聞こえます.

ポイント ここまでのまとめ

  • 波動方程式は線形なので,重なった波の変位は和になり,重なり終わった波は元の形で進む.大振幅では成り立たない.

  • 同じ振動数の振動の和は,複素平面の矢印の和で求められ,B2=A12+A22+2A1A2cos⁡(ϕ2−ϕ1).

  • 振動数の近い2つの音はうなりを生じ,強弱の回数は1秒に |f1−f2| 回.振幅は A1+A2 と |A1−A2| の間を行き来する.

  • ドップラー効果 f=f0(v−uo)/(v−us).速度は空気に対するもので,音を出した時刻の視線方向の成分を使う.反射は「観測者として受けてから音源として出す」.

  • 音源が音より速いと,波面の包絡面が半頂角 sin⁡α=v/us の円錐になり,衝撃波ができる.

05うなりとドップラー効果の例題

うなりの問題では,聞こえた強弱の回数から振動数の差の大きさだけが分かり,どちらが高いかは分かりません.もう1つの手がかり(おもりを付ける,張力を変える)で符号を決めます.ドップラー効果の問題では,次の手順を守ると符号の間違いが減ります.

ポイント ドップラー効果の手順

  1. 音源から観測者へ向かう向きを正と決め,音源と観測者の速度の成分 us,uo を符号つきで書く.

  2. 速度はすべて空気に対するものに直す.風があれば地面に対する速度のまま音速を v+w にする.

  3. 斜めに動くときは,音を出した時刻の視線方向の成分を使う.

  4. 反射体は,まず観測者として振動数を受け取り,次にその振動数の音源として音を出す.

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

振動数 440Hz の音叉 A と,振動数が分からない音叉 B を同時に鳴らすと,1秒間に4回のうなりが聞こえた.

  1. B の振動数として考えられる値を2つ挙げよ.

  2. B の先に少量の粘土を付けて振動数を少し下げてから同時に鳴らすと,うなりは1秒間に2回になった.粘土を付ける前の B の振動数を求めよ.

  3. 次に,ギターの弦を A と同時に鳴らすと,1秒間に3回のうなりが聞こえた.弦の張力を少し強めると,うなりは1秒間に5回になった.張力を強める途中でうなりが消えることはなかった.うなりを消すには,張力を最初の値から何 % 変えればよいか.弦の長さで決まる波長は張力によらないので,弦の音の振動数 f=v/λ は波の速さ v=S/μ に比例するとしてよい.

振動数440 Hzの音叉Aと,振動数不明の音叉Bを並べ,Bの先に付ける粘土を示す.下の波形は粘土を付ける前の観測に対応し,強い所の間隔は毎秒4回から1/4 sである.和の細かな振動は模式的に描く. 振動数440 Hzの音叉Aと,振動数不明の音叉Bを並べ,Bの先に付ける粘土を示す.下の波形は粘土を付ける前の観測に対応し,強い所の間隔は毎秒4回から1/4 sである.和の細かな振動は模式的に描く.
解答を見る

考え方 うなりの回数は振動数の差の絶対値だけを教える.どちらに動かすとうなりが減るかで,差の符号が決まる.

  1. |fB−440Hz|=4Hz なので,fB=444Hz か 436Hz である.

  2. 粘土を付けると B の振動を担う部分の質量が増え,振動数は下がる.fB=444Hz なら下げると 440 Hz に近づき,うなりは減る.fB=436Hz なら 440 Hz から遠ざかり,うなりは増える.うなりが減ったので fB=444Hz である.粘土を付けたあとの振動数は 442Hz または 438Hz である.

  3. 張力を強めると v が増えて弦の振動数は上がる.それでうなりが増えたので,弦はもともと A より高く,振動数は f=443Hz である.張力を強めたあとは 445Hz である.うなりを消すには 440Hz にすればよい.f∝S より

S′S=(440443)2=0.9865

なので,張力を最初の値から約 1.3 % 弱めればよい.

確かめに,振動数の変化が小さいときは ΔSS≈2Δff=2×−3443=−0.0135 で一致する.うなりは振動数の差が小さいほど遅くなり,0 で消えるので,調律は「うなりが遅くなる向き」に合わせればよい.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

サイレンを鳴らした救急車がまっすぐな道路を一定の速さ u で走っている.道路のわきに立つ人には,十分遠くから近づいてくるときのサイレンが 1000Hz,十分遠くまで遠ざかったときが 880Hz に聞こえた.音速を v=340ms−1 とし,風はないとする.

  1. 救急車の速さ u と,サイレンの振動数 f0 を求めよ.

  2. 人は道路から d=20m 離れて立っていた.救急車が人に最も近い点を通る時刻を0とする.サイレンが f0 の振動数で聞こえる時刻と,そのときの救急車の位置を求めよ.

  3. 救急車から人へ引いた線が道路と 45∘ をなす位置(近づく側)で出た音は,何 Hz に聞こえるか.

救急車は道路に沿って右へ速さuで進み,人は道路から距離d=20 m離れて静止している.救急車が音を出す位置から人へ引く線と道路のなす角をθとする.青の斜めの矢印は,速度の視線方向の成分u cos θである.風はなく,音速はv=340 m/sである. 救急車は道路に沿って右へ速さuで進み,人は道路から距離d=20 m離れて静止している.救急車が音を出す位置から人へ引く線と道路のなす角をθとする.青の斜めの矢印は,速度の視線方向の成分u cos θである.風はなく,音速はv=340 m/sである.
解答を見る

考え方 十分遠くでは視線が道路にほぼ平行なので,近づくときは us=u,遠ざかるときは us=−u とする.途中の音は,音を出した時刻の視線方向の成分 ucos⁡θ で決まる.

  1. 静止した観測者には

1000Hz=f0vv−u,880Hz=f0vv+u

である.辺々を割ると v+uv−u=1000880=2522 で,22(v+u)=25(v−u) より

u=347v=21.7ms−1

(時速約 78 km)である.すると

f0=1000Hz×v−uv=1000Hz×4447=936Hz

となる.確かめに,880Hz×v+uv=880×5047Hz=936Hz で一致する.2つの式から f0=2×1000×8801000+880Hz と,聞こえた2つの振動数だけで f0 を出すこともできる.

  1. 振動数が f0 になるのは視線方向の成分が0のとき,つまり救急車が最も近い点(時刻0)で出した音である.この音は距離 d を進んで

t=dv=20340s=0.059s

に届く.そのとき救急車は最も近い点から ud/v=21.7×0.059m=1.3m 先へ進んでいる.f0 が聞こえるのは,救急車が人の前を少し通り過ぎてからである.

  1. 視線方向の成分は us=ucos⁡45∘=15.3ms−1 なので

f=f0vv−ucos⁡45∘=936Hz×340324.7=980Hz

である.1000Hz と f0 の間にあり,近づく途中で振動数がなめらかに下がっていくことが分かる.道路から離れて立つほど,振動数の変化はゆるやかになる.サイレンの1周期の間に救急車の向きの角がほとんど変わらないこと,つまり u/(f0d) が十分小さいことが,各時刻の振動数を考えてよい条件である.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

振動数 f0=680Hz の音叉を鳴らしながら,人が速さ u=1.0ms−1 で大きな壁へまっすぐ歩いて近づく.壁は静止しており,音速は v=340ms−1,風はない.

  1. 壁で反射した音の振動数を,壁の位置で受け取る振動数から順に求め,人が聞くうなりの回数を求めよ.

  2. 人の後方(壁と反対側)に静止して立つ別の観測者は,音叉から直接来る音と壁で反射した音を聞く.1秒あたりのうなりの回数を求めよ.

  3. (1)のうなりの回数は,u が v より十分小さいとき近似的に 2uf0/v になることを示し,うなりの回数が毎秒 1.0 回なら歩く速さはいくらか答えよ.

右側に静止した壁,その左に振動数f₀=680 Hzの音叉を持って右へ速さu=1.0 m/sで歩く人,さらに左に静止した観測者がいる.音叉から壁への音は右向き,壁から戻る反射音と後方への直接音は左向きである. 右側に静止した壁,その左に振動数f₀=680 Hzの音叉を持って右へ速さu=1.0 m/sで歩く人,さらに左に静止した観測者がいる.音叉から壁への音は右向き,壁から戻る反射音と後方への直接音は左向きである.
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考え方 壁は静止した観測者として音を受け取り,同じ振動数の静止した音源として音を返す.反射音を聞く人は,その音源へ近づく観測者である.

  1. 壁から見ると,音源(人)は速さ u で近づくので,壁が受け取る振動数は

f1=f0vv−u

である.壁はこの振動数の静止した音源となる.人は壁へ向かって速さ u で動く観測者で,壁から人へ向かう向きを正とすると uo=−u なので

f2=f1v+uv=f0v+uv−u=680Hz×341339=684.0Hz

である.人の耳には音叉の音も直接届き,音叉と人は一緒に動くので,その振動数は f0 のままである.うなりの回数は

f2−f0=f02uv−u=680×2.0339Hz=4.0Hz

で,1秒に4回である.

  1. 後方の観測者には,音叉から直接の音が,音源が遠ざかる向きに動くので f0vv+u で届く.反射音は静止した壁から静止した観測者へ届くので f1=f0vv−u のままである.うなりの回数は

f0(vv−u−vv+u)=f02uvv2−u2=4.0Hz

で,(1) とほとんど同じ1秒に4回である.

  1. u/v が十分小さければ 2uv−u=2uv⋅11−u/v≈2uv なので,うなりの回数は 2uf0/v である.(1) と (2) の違いは u/v=0.003 程度の割合で,数値には現れない.うなりが毎秒 1.0 回なら

u=v×1.0Hz2f0=3401360ms−1=0.25ms−1

である.うなりの回数は速さに比例するので,ゆっくり歩くだけで速さが測れる.同じ原理で,反射波と送った波のうなりから速さを測るのが,野球のスピードガンや血流計である.

ポイント ここまでのまとめ

  • うなりの回数は |f1−f2| で,差の符号は「振動数を少し動かしたとき,うなりが増えるか減るか」で決める.

  • 弦の振動数は S に比例するので,わずかな調整では ΔS/S≈2Δf/f.

  • 近づくときと遠ざかるときの2つの振動数から,音源の速さと本来の振動数が求められる.

  • 斜めに動く音源では,音を出した時刻の視線方向の成分を使う.f0 が聞こえるのは最接近より少し後である.

  • 反射は観測者と音源の2段階に分けて扱い,直接の音との差がうなりになる.u が v より十分小さければ,うなりの回数は 2uf0/v.

06波の重ね合わせとうなりの演習

変位や圧力を符号つきで足し,放射時刻と受信時刻を区別してください.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

長い弦を速さ v で進む2つの三角形パルスがあります.時刻0に,右向きのパルスの中心は −2d,高さは A,左向きのパルスの中心は 2d,高さは −A/2 です.幅はともに 2d,外側の変位は0です.A/d は十分小さいとします.

  1. t=2d/v と t=3d/v の合成波形を描け.

  2. 重なって高さが減ると,通過後もパルスが弱まるか.

時刻0の三角形パルスの中心は−2dと2dで,高さはAと−A/2,幅はともに2dである.二つのパルスは速さvで互いに向かって進む. 時刻0の三角形パルスの中心は−2dと2dで,高さはAと−A/2,幅はともに2dである.二つのパルスは速さvで互いに向かって進む.
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考え方 各パルスを平行移動して足す.

  1. 中心は −2d+vt,2d−vt.t=2d/v では両中心が0なので高さを足して,中心0,高さ A−A/2=A/2,幅 2d の三角形になる.t=3d/v では中心が d,−d に移る.区間 [−2d,0] に中心 −d,高さ −A/2,区間 [0,2d] に中心 d,高さ A の三角形を描く.

  2. 意味しない.線形な波動方程式では各パルスが独立に進み,元の形と高さを保つ.変位だけでエネルギーの消失を判断できない.A/d が小さいことが弦の線形近似を保証する.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

同じ向きへ進む2つの音を固定マイクで記録し,低い方は f1=400Hz でした.圧力振幅は A1>A2>0 とし,振動数は近く,時刻0で同位相です.表は合成圧力の振幅 B の極大・極小を交互にすべて記録したものです.

t(s)

0

0.125

0.250

0.375

B(Pa)

0.50

0.10

0.50

0.10

  1. f2,A1,A2 を求めよ.

  2. 複素振幅から B2(t) を求め,強さの最大値と最小値の比を求めよ.

固定マイクと,合成圧力の振幅Bの四つの観測点を示す.時刻0,0.125,0.250,0.375 sで,Bは順に0.50,0.10,0.50,0.10 Paである. 固定マイクと,合成圧力の振幅Bの四つの観測点を示す.時刻0,0.125,0.250,0.375 sで,Bは順に0.50,0.10,0.50,0.10 Paである.
解答を見る

考え方 極大の間隔がうなりの周期で,最小振幅は振幅の差である.

  1. f2−f1=1/(0.250s)=4.0Hz なので f2=404Hz.A1+A2=0.50Pa,A1−A2=0.10Pa より A1=0.30Pa,A2=0.20Pa.

  2. 圧力を eiω1t[A1+A2ei(ω2−ω1)t] の実部で表す.角括弧の絶対値を二乗すると

B2=A12+A22+2A1A2cos⁡[2π(f2−f1)t]

となる.同じ媒質で強さは B2 に比例するため,比は (0.50/0.10)2=25.時間平均の窓は音の周期より長く,うなりの周期より短く取る.|f2−f1|/f1=0.010 が小さいので,両時間尺度を分けられる.

演習 3

東京大 2002 後期(改題) ★★☆☆☆

固定音源が振動数 f0 の音を右へ出し,速さ u で右へ動く板からの反射音を受信します.空気に対する音速を v,右向きの風速を w とし,0<w<v,0<u<v−w とします.板・受信器・風の速度はすべて地面に対するものです.板から見て反射前後の振動数は等しいとします.

  1. 板が受け取る振動数と戻る音の振動数を導け.

  2. 板より左の受信器だけを右向きに速さ 0<uo<v−w で動かす.受信振動数を求めよ.v=340ms−1,w=10ms−1,u=5.0ms−1,uo=2.0ms−1,f0=1.00×103Hz で評価せよ.

固定音源の右に反射板を置き,音の往路と復路を示す.風速w,板の速さu,板より左の受信器の速さu_oは,いずれも右向きである. 固定音源の右に反射板を置き,音の往路と復路を示す.風速w,板の速さu,板より左の受信器の速さu_oは,いずれも右向きである.
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考え方 地面に対する音速は往路で v+w,復路で v−w になる.板を観測者,次に音源として扱う.

  1. 往路の波長は λ+=(v+w)/f0.板に波面が追いつく相対速度は v+w−u なので,fm=f0(v+w−u)/(v+w).反射音の波面は間隔 1/fm で板から出て,復路の波長は λ−=(v−w+u)/fm.固定受信器では

fr=v−wλ−=f0v+w−uv+wv−wv−w+u

となる.

  1. 左へ来る波面との相対速度は v−w+uo だから,fo=f0v+w−uv+wv−w+uov−w+u.数値では fo=1000×(345/350)×(332/335)Hz=977Hz.u=uo=0 なら風があっても fo=f0 に戻る.速度について近似していない.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

静止した空気中で,音源が半径 a,角速度 Ω で円運動し,振動数 f0 の音を出します.中心を原点,観測者を (D,0)(D>a)とし,放射時刻 te の音源の位置は (acos⁡Ωte,asin⁡Ωte) です.音速は v,aΩ<v とします.

  1. 受信時刻 tr と te の関係から受信振動数を導け.

  2. 最大・最小の受信振動数と,最近点からの音の到達時刻・振動数を求めよ.時刻0に最近点を通ります.

半径aの円軌道上の放射位置と角Ωt_eを示す.観測者は中心から距離Dの位置にあり,音源の放射位置から観測者へ音が進む. 半径aの円軌道上の放射位置と角Ωt_eを示す.観測者は中心から距離Dの位置にあり,音源の放射位置から観測者へ音が進む.
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考え方 位相は放射時刻で決まり,その進む速さを受信時刻で求める.

  1. R=D2+a2−2Dacos⁡Ωte とすれば tr=te+R/v.dRdte=DaΩsin⁡Ωte/R より

fr=f0dtedtr=f01+DaΩsin⁡Ωte/(vR)

である.分母は正で両時刻は一対一に対応する.

  1. dR/dte は速度の視線方向成分である.絶対値は aΩ 以下で,観測者から引いた接線の接点では速度と視線が平行となり等号が成り立つ.よって fmax=f0v/(v−aΩ),fmin=f0v/(v+aΩ).te=0 で出た音は tr=(D−a)/v に届き,この音の dR/dte=0 なので fr=f0.aΩ/v→0 では両極値も f0 に戻る.音の瞬時振動数には,Ω/(2πf0) の小ささも前提とする.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

飛行機が高さ H を保ち,音速 v より大きい速さ u で水平に飛びます.遠い過去から等速飛行し,地上の観測者の真上を時刻0に通ります.風はありません.衝撃波の円錐の半頂角を α とします.

  1. マッハ円錐の幾何から sin⁡α=v/u と衝撃波の到達時刻を求めよ.H=1.50×103m,u=680ms−1,v=340ms−1 で評価せよ.

  2. 放射時刻 te の音の到達時刻を最小にすることで,最初に届く音の放射時刻を求めよ.

時刻0に飛行機は高度Hで観測者の真上にあり,右向きに速さuで飛ぶ.後方の円錐の半頂角αを模式的に定義する. 時刻0に飛行機は高度Hで観測者の真上にあり,右向きに速さuで飛ぶ.後方の円錐の半頂角αを模式的に定義する.
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考え方 音の球面波の包絡面がマッハ円錐になり,最初に届く音が衝撃波を作る.

  1. 時間 Δt 前に出た球面波の半径は vΔt,機体の移動距離は uΔt.接する円錐との直角三角形より sin⁡α=v/u.到達時は tan⁡α=H/(utr) なので tr=Hu2−v2/(uv)=3.82s である.

  2. tr=te+H2+u2te2/v を微分して,1+u2te/(vH2+u2te2)=0.負の根は te=−Hv/(uu2−v2)=−1.27s.二階微分は u2H2/[v(H2+u2te2)3/2]>0 だから最小である.代入すると(1)の時刻に一致する.真上からの音の所要時間 H/v とは異なり,この模型には u/v>1 が必要である.

ポイント 教える人へ

  • 重なる時刻の波形と,通過後の各パルスの形を別々に描かせる.

  • うなりの山と谷の間隔を周期と取り違えないか確かめる.

  • 速度が地面,空気,反射板のどれに対するものかを問う.

  • 放射時刻を図に記し,受信時刻へ直させる.

07反射と定常波

問い

ギターの弦をはじくと,弦は決まった高さの音を出します.指で強くはじいても弱くはじいても,ピックで弾いても指で弾いても,音の高さは変わりません.変わるのは,フレットを押さえて弦の長さを変えたときと,糸巻きを回して張力を変えたときだけです.弦の上を伝わる波は,第1題材で見たように,どんな形でもどんな振動数でも進めるはずでした.それなのに,弦が鳴るときだけ振動数が決まってしまうのはなぜでしょうか.

考えてみる

はじいた弦の形は,波動方程式に従って左右に分かれて進みます.無限に長い弦ならそのまま遠くへ去るだけですが,ギターの弦は両端を留めてあるので,波は端に着くたびに跳ね返ります.長さ l の弦を速さ v の波が往復すると,かかる時間は 2l/v です.あとで見るように,固定した端で跳ね返るたびに波形は上下が裏返るので,往復して2回裏返った波形は元と同じ形で戻ってきます.すると弦の運動は,はじき方によらず周期 2l/v で繰り返すはずで,振動数は v/(2l) に決まりそうです.

この見通しは正しいのですが,これだけでは「端でどう跳ね返るのか」「振動数 v/(2l) の何倍の音が混ざるのか」「指で軽く触れると何が変わるのか」が分かりません.端で何が起こるかを式にし,行きの波と帰りの波を重ねる必要があります.

境界条件と反射

x≤0 にある弦を,正弦波 yi=Asin⁡(ωt−kx) が右へ進み,端 x=0 に着くとします.跳ね返った波は左へ進むので,同じ振動数で yr=Bsin⁡(ωt+kx) と置きます.弦の変位は重ね合わせ y=yi+yr です.B を決めるのは,端で何が決まっているか,つまり境界条件です.

固定端では,端が動かないので,すべての時刻で x=0 の変位が0です.y(0,t)=(A+B)sin⁡ωt=0 から B=−A で,反射波は yr=−Asin⁡(ωt+kx)=Asin⁡(ωt+kx+π).反射で位相が π ずれ,山は谷になって戻ります.

自由端は,質量の無視できる小さな輪に弦を結び,輪を滑らかな縦の棒に通したものです.輪にはたらく横向きの力は張力 S の横成分 −S∂y∂x だけで,質量0の輪に力が残れば加速度が無限大になるので,端では ∂y∂x=0(傾きが0)です.∂y∂x=k(B−A)cos⁡ωt が x=0 で0になるから B=A で,反射波は位相を変えずに戻ります.

パルスで考えると,固定端の反射は,端の向こう側から上下を裏返した鏡像のパルスが近づいてきて,元のパルスと重なっていく様子と同じです.端ではちょうど打ち消し合って変位が0に保たれます.自由端では裏返さない鏡像が近づき,端で重なって変位が一時的に2倍になります.

[図:固定端と自由端で反射するパルス]

初期状態では左の山形パルスが右へ進み,右の点線の鏡像は左へ進む.上段の鏡像は上下が逆,下段は同じ向きである.時刻を進めると,実線の和は固定端で変位0,自由端で傾き0を保ちながら反射する.

法則 端での反射

  • 固定端:変位が0.反射波は位相が π ずれる(山が谷になって戻る).

  • 自由端:傾きが0(横向きの力が0).反射波は同じ位相で戻る.

気柱の中の音でも同じことが言えます.音の変位を ξ とすると,第1題材で見た圧力のずれは δp=−γp∂ξ∂x でした.管の閉口端では空気が壁より先へ動けないので ξ=0 で,変位について固定端と同じです.そこでは ∂ξ∂x は0とは限らず,圧力は大きく変わります.開口端では管の中の空気が大気につながっているので δp=0,つまり ∂ξ∂x=0 で,変位について自由端と同じです.閉口端は変位の節で圧力の腹,開口端は変位の腹で圧力の節になります.圧力の波で見ると,閉口端では同じ位相で,開口端では位相が π ずれて反射します.

開口端の条件は近似です.管の口の外の空気も少しは押し動かされるので,圧力がちょうど大気圧になる面は口よりわずかに外にあります.この補正を開口端補正といい,半径 r の管ではおよそ 0.6r です.管の半径が波長よりずっと小さいときに,この簡単な補正で足ります.

定常波

固定端に入射した波と反射波を足すと,三角関数の差を積に直して

y=Asin⁡(ωt−kx)−Asin⁡(ωt+kx)=−2Asin⁡kxcos⁡ωt

となります.この式では,場所の関数 sin⁡kx と時間の関数 cos⁡ωt が分かれています.どの点も同じ振動数で振動し,振幅 2A|sin⁡kx| だけが場所によって違い,波形はどちらへも進みません.このような波を定常波といいます.

振幅が0の点を節,最大の点を腹といいます.固定端の場合,節は kx=−nπ,つまり端から λ/2 ごとにあり,腹はその中央です.隣り合う節と腹の間隔は λ/4 です.節をはさんだ両側は逆向きに振れ,節と節の間はすべて同じ向きに振れます.媒質の速度は ∂y∂t=2Aωsin⁡kxsin⁡ωt で,弦全体がまっすぐになる瞬間(cos⁡ωt=0)に,腹の点が最も速く動きます.自由端の場合は y=2Acos⁡kxsin⁡ωt で,端が腹になり,端から λ/4 の所に最初の節があります.

[図:入射波と反射波からできる定常波]

初期状態はωt = π/6.右へ進む入射波を青の点線,左へ進む反射波を赤の点線,和を実線で示す.時刻を変えても黒い節は動かず,橙の印の腹がその場で振動する.節の間隔はλ/2,節と腹の間隔はλ/4である.

定常波では,右向きと左向きに同じ大きさのエネルギーが流れているので,平均すると正味のエネルギーは運ばれません.エネルギーは節と節の間に閉じ込められ,運動のエネルギーと弾性のエネルギーの間を行き来します.

弦のモード

両端 x=0 と x=l を固定した弦を考えます.x=0 が節になる定常波は y=Csin⁡kxcos⁡(ωt+ϕ) と書けます.x=l も節であるには sin⁡kl=0,つまり kl=nπ(n=1,2,3,…)でなければなりません.波数が飛び飛びの値に限られ,ω=vk から振動数も決まります.

定理 両端固定の弦のモード

長さ l の弦で許される定常波は

λn=2ln,fn=nv2l=n2lSμ(n=1,2,3,…)

である.n=1 を基本振動,n≥2 を n 倍振動という.n 番目のモードには腹が n 個あり,弦の長さは半波長の整数倍になっている.

n = 1,2,3,4のモードを上から並べる.黒い点が節,橙の丸が腹である.両端は節で,腹がn個ある.青線は最大変位の瞬間,薄い線は半周期後を表し,長さlは半波長λₙ/2のn倍である. n = 1,2,3,4のモードを上から並べる.黒い点が節,橙の丸が腹である.両端は節で,腹がn個ある.青線は最大変位の瞬間,薄い線は半周期後を表し,長さlは半波長λₙ/2のn倍である.

1つ1つのモードは,振動数 fn で単振動する1つの振動子です.第7章の連成振動では,N 個のおもりをばねでつなぐと N 個の基準振動ができました.弦はおもりを細かくした極限なので,基準振動が無限にあり,それが fn の並びです.波動方程式は線形なので,弦のどんな運動もモードの重ね合わせで書けます.どのモードの周期も 1/f1=2l/v の整数分の1なので,全体は周期 2l/v で繰り返します.はじいた直後の形がどうであっても,聞こえる音の高さは基本振動数 f1 で決まり,はじき方で変わるのはモードの混ざり方,つまり音色です(次の題材).

指で軽く触れた点は,振れられないので節になります.弦の長さの 1/3 の点に触れると,その点が節であるモード,つまり n=3,6,9,… だけが残り,基本振動の3倍の音が出ます.これがきりたんの話した「ハーモニクス」です.

第7章の共鳴も,モードごとに起こります.弦を振動数 f で揺すると,f がどれかの fn に近いとき,そのモードの振幅が大きくなります.振動子が1つの場合と違って,共鳴する振動数がたくさんあるのが弦や気柱の特徴です.弦を一方の端の近くで揺すって共鳴させるのがメルデの実験で,揺する端の振幅は小さいので,近似的に節とみなせます.

ここまでの近似の条件も確かめておきます.波動方程式を使えるのは,弦の傾きが十分小さく(振幅と波数の積 Ak が小さく),張力が一定とみなせるときです.また,固定端は端の支えが弦に比べて十分重く硬いという近似です.本物のギターではブリッジがわずかに動き,その動きが胴を揺らして音を大きくしています.完全な固定端なら,弦のエネルギーは外へ出ていきません.

気柱のモード

管の中の空気の変位 ξ にも同じ考え方が使えます.閉口端を x=0 とすると ξ=Asin⁡kxcos⁡ωt で,開口端 x=l で変位が腹,つまり cos⁡kl=0 です.

定理 気柱のモード(開口端補正を無視)

  • 閉管(一端が閉じ,他端が開く):kl=(2n−1)π2 より f=(2n−1)v4l(n=1,2,…).基本振動の奇数倍だけが出る.

  • 開管(両端が開く):両端とも変位の腹なので f=nv2l(n=1,2,…).すべての整数倍が出る.

  • 開口端補正 Δl を入れるときは,開いた端ごとに l に Δl を足す.

左右に閉管と開管の低い3つのモードを並べる.変位ξの振幅の上下の包絡線は青の実線,圧力のずれδpは赤の点線で,縦の尺度はそれぞれ規格化している.閉口端は変位の節・圧力の腹,開口端は変位の腹・圧力の節になる.開口端補正は無視する. 左右に閉管と開管の低い3つのモードを並べる.変位ξの振幅の上下の包絡線は青の実線,圧力のずれδpは赤の点線で,縦の尺度はそれぞれ規格化している.閉口端は変位の節・圧力の腹,開口端は変位の腹・圧力の節になる.開口端補正は無視する.

同じ長さなら,閉管の基本振動数は開管の半分で,音は1オクターブ低くなります.クラリネットが同じくらいの長さのフルートより低い音を出し,奇数倍の音が強いのはこのためです.

2次元の膜でも,周りを固定すると飛び飛びのモードができます.太鼓の膜では,節は点ではなく線(節線)になり,モードの振動数は基本振動の整数倍に並びません.太鼓の音の高さがはっきりしないのはそのためです.金属板に砂をまいて揺すると,砂が節線に集まってクラドニ図形が見えます.

周りを固定した円形膜の低い4つのモードを示す.内部の節線は,なし,直径1本,直径2本,同心円1本で,振動数は基本振動の約1.000,1.593,2.136,2.295倍である.+と−は同じ瞬間の変位の向きを示す.右の正方形の板は砂が節線に集まるクラドニ図形の模式図である. 周りを固定した円形膜の低い4つのモードを示す.内部の節線は,なし,直径1本,直径2本,同心円1本で,振動数は基本振動の約1.000,1.593,2.136,2.295倍である.+と−は同じ瞬間の変位の向きを示す.右の正方形の板は砂が節線に集まるクラドニ図形の模式図である.

平面の波の反射と屈折

水面の波のように平面に広がる波では,同じ位相の点を結んだ線(波面)が進みます.ホイヘンスの原理では,波面の上の各点から小さな円い波(素元波)が出て,それらに共通に接する線が次の波面になると考えます.

[図:素元波の共通接線と屈折波面]

初期状態では入射角θ₁ = 35°,速さの比v₂/v₁ = 0.70で,屈折波は法線に近づく.境界に到着した点から順に緑の素元波が広がり,橙の共通接線が屈折波面になる.入射角,速さの比,経過時刻を変えると波面の形成と屈折角θ₂の変化が分かる.

速さ v1 の領域から v2 の領域へ,入射角 θ1(波の進む向きと境界の法線のなす角)で波が入るとします.境界の点は1つの振動数で揺れるので,振動数は両側で同じです.さらに,境界に沿って並ぶ波面の間隔も両側で等しくなければ,境界で波がつながりません.その間隔は λ1/sin⁡θ1 と λ2/sin⁡θ2 なので,次の関係が出ます.同じ領域へ戻る反射波は速さが変わらないので,反射角は入射角に等しくなります.

法則 屈折の法則

sin⁡θ1sin⁡θ2=v1v2=λ1λ2

振動数は境界の両側で変わらない.

式で書くと,平面に広がる正弦波は,進む向きの単位ベクトルの成分を使って y=Asin⁡[ωt−k(xsin⁡θ+zcos⁡θ)] です(z 軸を境界の法線,x 軸を境界に沿ってとる).境界 z=0 で入射波と屈折波の位相がいつも合うことは,境界に沿う波数の成分が等しいこと,k1sin⁡θ1=k2sin⁡θ2 と同じです.

2つの波源の干渉

水面の2点 S1,S2 から,同じ振動数の波を出します.点 P までの距離を r1,r2 とし,P での2つの波を y1=A1sin⁡(ωt−kr1),y2=A2sin⁡(ωt−kr2+α) とします.α は波源の初期位相の差です.前の題材の複素数の足し算から,合成の振幅 B は

B2=A12+A22+2A1A2cos⁡δ,δ=k(r1−r2)+α

です.位相差 δ は,経路差による分 k(r1−r2)=2π(r1−r2)/λ と,初期位相の差 α の和です.

ポイント 2つの波源の干渉の条件

  • 強め合う:δ=2mπ,弱め合う:δ=(2m+1)π(m は整数).

  • 同位相の波源(α=0)なら,経路差 |r1−r2| が mλ で強め合い,(m+1/2)λ で弱め合う.逆位相(α=π)なら逆になる.

  • 弱め合う所の振幅は |A1−A2| で,振幅が等しいときだけ0になる.

経路差が一定の点を結ぶと,S1,S2 を焦点とする双曲線になります.水面では,弱め合う双曲線に沿って水面がほとんど揺れない線(節線)が並んで見えます.実際の水面の波は広がるにつれて振幅が小さくなるので,2つの波源から遠さが違う点では振幅がずれ,節線の上でも完全には0になりません.

同位相の波源S₁,S₂から出る円い波の山を実線,谷を点線で示す.青と緑は各波源の波,橙の双曲線は山と谷が重なる節線である.緑の一点鎖線の垂直二等分線では2波が強め合う.図は振幅が等しい場合を示す. 同位相の波源S₁,S₂から出る円い波の山を実線,谷を点線で示す.青と緑は各波源の波,橙の双曲線は山と谷が重なる節線である.緑の一点鎖線の垂直二等分線では2波が強め合う.図は振幅が等しい場合を示す.

問いに戻る

弦の上の波は,両端で跳ね返り,行きの波と帰りの波が重なって定常波を作ります.両端が節であるという境界条件を満たすのは,弦の長さが半波長の整数倍のときだけで,振動数は fn=nv/(2l) の飛び飛びの値に限られます.どんなはじき方でも弦の運動はこれらのモードの重ね合わせで,全体は周期 2l/v で繰り返すので,音の高さは基本振動数 f1=12lS/μ で決まります.フレットを押さえて l を短くするか,糸巻きで S を大きくすると,音は高くなります.はじく強さで変わるのは振幅だけで,はじく場所で変わるのはモードの混ざり方です.

ポイント ここまでのまとめ

  • 固定端(変位0)では反射波の位相が π ずれ,自由端(傾き0)では同じ位相で戻る.気柱の閉口端は変位の節・圧力の腹,開口端は変位の腹・圧力の節.

  • 逆向きに進む同じ振幅の波の和は定常波で,節の間隔は λ/2,節と腹の間隔は λ/4.

  • 両端固定の弦と開管は fn=nv/(2l),閉管は f=(2n−1)v/(4l).開口端補正は開いた端ごとに l に足す.

  • モードは1つ1つが振動子で,弦や気柱は多くの振動数で共鳴する.ギターの音の高さは基本振動数で決まる.

  • 屈折では振動数が変わらず sin⁡θ1/sin⁡θ2=v1/v2.2つの波源の干渉は,経路差の位相に初期位相の差を足して判定する.

08反射と定常波の例題

弦のモードと張力,気柱の共鳴による音速の測定,2つの波源の干渉を,例題で確かめます.どの例題も,境界条件や経路差から「どこが節になるか」を先に決めるのが出発点です.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

ギターの1本の弦は,両端を固定した長さ l=0.650m の部分が振動し,線密度は μ=3.60×10−3kgm−1 である.調律が済んだとき,基本振動数は 110Hz になる.

ナットとブリッジで固定された長さl = 0.650 mの弦を,2つの場合に分ける.上段は途中のフレットを押さえ,下段はナットからl/4の点に指を軽く触れる.フレットの位置は模式的に描く.線密度と調律後の基本振動数を示す. ナットとブリッジで固定された長さl = 0.650 mの弦を,2つの場合に分ける.上段は途中のフレットを押さえ,下段はナットからl/4の点に指を軽く触れる.フレットの位置は模式的に描く.線密度と調律後の基本振動数を示す.
  1. 調律が済んだときの弦を伝わる波の速さと,張力 S を求めよ.

  2. フレットを押さえて基本振動数を 165Hz にするには,振動する部分の長さをいくらにすればよいか.張力と線密度は変わらないとする.

  3. 押さえずに,端から l/4 の点に指を軽く触れたまま弦をはじく.聞こえる音のうち最も低い振動数を求めよ.

  4. 調律の前,弦と 110.0Hz の音叉を同時に鳴らすと,毎秒 2.0 回のうなりが聞こえた.張力を少し大きくすると,うなりの回数は減った.調律を済ませるには,張力を何倍にすればよいか.また,何 N 増やせばよいか.

解答を見る

考え方 両端固定の弦の基本振動では l=λ/2 である.軽く触れた点は節になり,その点が節であるモードだけが残る.

  1. λ1=2l=1.30m なので,v=f1λ1=110×1.30ms−1=143ms−1 である.v=S/μ から

S=μv2=3.60×10−3×1432N=73.6N

である.

  1. 張力と線密度が同じなら v は変わらず,f1=v/(2l) は長さに反比例する.l′=0.650×110165m=0.433m である.振動数の比 3/2 は完全5度で,弦の長さは 2/3 倍になる.

  2. 両端固定の n 番目のモードは y∝sin⁡(nπx/l)cos⁡(ωnt+ϕn) で,x=l/4 が節になるのは sin⁡(nπ/4)=0,つまり n=4,8,12,… のときである.残る最も低い音は n=4 で,f4=4×110Hz=440Hz である.

  3. うなりが毎秒 2.0 回なので,弦の振動数は 108.0Hz か 112.0Hz である.張力を大きくすると f1∝S は高くなり,うなりが減ったのだから,元は 108.0Hz で 110.0Hz より低かった.張力は振動数の2乗に比例するので,必要な倍率は

SS0=(110.0108.0)2=1.037

である.調律の前の張力は S0=μ(2l×108.0Hz)2≈71.0N で,増やす張力は S−S0=μ(2l)2[(110.0Hz)2−(108.0Hz)2]≈2.7N(3.7 %)である.

確かめ:振動数の変化が小さいとき,f∝S1/2 から Δf/f≈12ΔS/S である.Δf/f=2.0/108≈1.9 % の2倍が 3.7 % で,上の結果と合う.弦の振れが小さく張力が一定とみなせること,弦の両端が動かないことを仮定した.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

上端が開いたガラス管に水を入れ,水面の高さを変えられるようにする.管口の近くで振動数 500Hz の音叉を鳴らしながら水面を管口から下げていくと,管口から水面までの距離が L1=0.155m と L2=0.495m のときに,それぞれ1回目と2回目の共鳴が起こり,音が大きく響いた.

上端が開いたガラス管と水だめをゴム管でつなぎ,管口の上に500 Hzの音叉を置く.管口から下に測った1回目と2回目の共鳴の水面の位置はL₁ = 0.155 m,L₂ = 0.495 mである.点線は1回目,実線は2回目の水面を示す.管内の橙は1回目,青は2回目の変位の振幅で,水面が節,腹は管口の少し上にある. 上端が開いたガラス管と水だめをゴム管でつなぎ,管口の上に500 Hzの音叉を置く.管口から下に測った1回目と2回目の共鳴の水面の位置はL₁ = 0.155 m,L₂ = 0.495 mである.点線は1回目,実線は2回目の水面を示す.管内の橙は1回目,青は2回目の変位の振幅で,水面が節,腹は管口の少し上にある.
  1. 音の波長と音速を求めよ.

  2. 開口端補正 Δl を求めよ.開口端補正が管の半径の 0.6 倍だとすると,管の半径はいくらか.

  3. 水面をさらに下げたとき,次に共鳴する水面の位置を求めよ.また,L2 で共鳴しているとき,管の中で圧力のずれの振幅が最大になる位置をすべて答えよ.

  4. 0∘C(273K)での音速を 331ms−1 とし,音速は絶対温度の平方根に比例するとする.実験室の温度を求めよ.

解答を見る

考え方 水面は閉口端で変位の節,管口は開口端で,変位の腹は管口より Δl だけ上にある.共鳴は,水面から腹までの長さが λ/4 の奇数倍のときに起こる.

  1. 1回目と2回目の共鳴では,水面から腹までの長さが λ/4 と 3λ/4 で,その差 λ/2 が水面の位置の差に等しい.

λ=2(L2−L1)=2×0.340m=0.680m,v=fλ=340ms−1

である.差をとったので,分からない Δl が消えている.

  1. 1回目の共鳴では L1+Δl=λ/4 だから,Δl=0.170−0.155m=0.015m である.管の半径は r=0.015/0.6m=0.025m ほどになる.

  2. 次の共鳴では腹までの長さが 5λ/4 なので,L3=L1+λ=0.835m である.圧力のずれの振幅が最大になるのは,δp=−γp∂ξ∂x から変位の節の位置である.L2 の共鳴では,変位の節は水面(管口から 0.495m)と,そこから λ/2=0.340m 上の点(管口から 0.155m)の2か所である.

  3. v∝T より

T=273×(340331)2K=288K

で,およそ 15∘C である.

確かめ:Δl>0 で,L1 は λ/4 よりわずかに短く,管口の外まで空気が動くという補正の向きと合う.開口端補正を 0.6r とする近似は,管の半径が波長よりずっと小さいとき(ここでは r/λ≈0.04)に使える.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

水槽の水面の2点 S1,S2 を,d=5.0cm 離して同じ振動数で上下に振動させ,波長 λ=1.2cm の円い波を出す.はじめ2つの波源は同じ位相で振動する.2つの波の振幅は,考える範囲で等しいとする.

同じ位相で振動する波源S₁,S₂を間隔d = 5.0 cmで配置し,波長λ = 1.2 cmの波の山を同心円で描く.橙の曲線は節線の例で,全部は描いていない.破線はそのうち1本の漸近線で,θは垂直二等分線からその漸近線までの角である.節線の本数とθの値は示さない. 同じ位相で振動する波源S₁,S₂を間隔d = 5.0 cmで配置し,波長λ = 1.2 cmの波の山を同心円で描く.橙の曲線は節線の例で,全部は描いていない.破線はそのうち1本の漸近線で,θは垂直二等分線からその漸近線までの角である.節線の本数とθの値は示さない.
  1. 線分 S1S2 を横切る節線は何本あるか.線分の上での節の位置を,線分の中点からの距離で答えよ.

  2. 波源から十分遠い所で,節線の向きは垂直二等分線から角 θ の方向に近づく.θ をすべて求めよ.

  3. 2つの波源を逆位相で振動させると,線分を横切る節線は何本になるか.

  4. 同位相に戻し,S2 の波の振幅だけを S1 の半分にした.(1) の節の位置の振幅は,強め合う位置の振幅の何倍になるか.

解答を見る

考え方 点 P での位相差は δ=k(r1−r2)+α である.同位相なら経路差 r1−r2 が半波長の奇数倍の所が節になる.三角形の2辺の差は第3辺より小さいので,経路差は −d から d の範囲を動く.

  1. 節線は |r1−r2|=(m+1/2)λ を満たす双曲線である.(m+1/2)×1.2cm<5.0cm を満たすのは 0.6,1.8,3.0,4.2cm の4つで,経路差の正負それぞれにあるから節線は8本である.線分の上で中点から S2 の側へ x の点では r1=d/2+x,r2=d/2−x で,経路差は 2x である.節は x=±0.3,±0.9,±1.5,±2.1cm である.間隔 0.6cm は λ/2 で,線分の上では逆向きに進む2つの波が定常波を作っていることと合う.

  2. 波源からの距離が d より十分大きいと,S1 と S2 から P へ向かう線はほぼ平行で,経路差は r1−r2≈dsin⁡θ である.節線の方向は dsin⁡θ=(m+1/2)λ より sin⁡θ=0.12,0.36,0.60,0.84 で,θ=6.9∘,21∘,37∘,57∘(垂直二等分線の両側)である.

  3. 逆位相では α=π で,節は経路差が mλ の所になる.mλ<5.0cm を満たすのは 0,1.2,2.4,3.6,4.8cm で,経路差0の垂直二等分線と,その両側に4本ずつで,節線は9本である.

  4. 振幅を A と A/2 とすると,弱め合う所は A−A/2=A/2,強め合う所は A+A/2=3A/2 で,1/3 倍である.振幅が違うと,弱め合っても0にはならず,節線は「揺れの小さい線」になる.

確かめ:(1) で m=4 とすると経路差 5.4cm は d を超えるので除いた.sin⁡θ≤1 の範囲の本数は (1) と同じ8本で,遠方の向きと線分の上の節が1対1に対応している.(2) は d/r が十分小さい遠方での近似で,水面の波の振幅が距離とともに減るので,現実には波源の近くほど節がはっきりする.

ポイント ここまでのまとめ

  • 弦の基本振動数は f1=12lS/μ.長さに反比例し,張力の平方根に比例する.軽く触れた点が節になるモードだけが残る.

  • 気柱の共鳴の位置の差は λ/2 で,差をとると開口端補正が消える.圧力のずれの振幅が最大になるのは変位の節.

  • 2つの波源の干渉では,経路差の位相に初期位相の差を足す.節線は経路差が一定の双曲線で,その本数は経路差が −d から d の範囲にある節の条件の数.

  • 振幅が違う2つの波は,弱め合っても0にならない.

09波の反射と定常波の演習

境界条件と波源の位相差を確かめましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

x≤0 の弦を入射波 yi=Asin⁡(ωt−kx) が進み,x=0 で反射します.固定端と自由端を考えます.波長は λ,周期は T です.

  1. 反射波と合成波,端に最も近い変位の節を求めよ.

  2. 固定端では,t=T/4 には弦全体の変位が0になる.このとき,x=−λ/4 の媒質は静止するか.

xが0以下の弦を,原点の端へ向かって入射波が進む.固定端と,軽い輪が弦に対して横向きに動ける自由端を並べる. xが0以下の弦を,原点の端へ向かって入射波が進む.固定端と,軽い輪が弦に対して横向きに動ける自由端を並べる.
解答を見る

考え方 固定端は変位0,自由端は張力の横成分0,つまり傾き0になる.

  1. 反射波は左向きなので yr=Bsin⁡(ωt+kx) とする.固定端では A+B=0,したがって yr=−Asin⁡(ωt+kx),y=−2Acos⁡ωtsin⁡kx.節は x=−nλ/2(n=0,1,…),端も節である.自由端では ∂y/∂x|x=0=k(B−A)cos⁡ωt=0 から B=A.y=2Asin⁡ωtcos⁡kx で,端に最も近い節は x=−λ/4 となる.

  2. 固定端の媒質の速度は ∂y∂t=2Aωsin⁡ωtsin⁡kx.指定点では −2Aω なので,下向きに最大の速さで動く.線形近似には Ak が十分小さい必要がある.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

気体を入れた長さ l=0.680m の管で,閉管は x=0 が閉口,x=l が開口で,開管は両端開口です.開口端補正を無視します.温度 289K で音速は 340ms−1 です.

  1. 低い3つの共鳴振動数を求めよ.

  2. 閉管の3番目の変位を ξ=Asin⁡kxcos⁡ωt として,圧力振幅が最大の位置を求めよ.δp=−γp∂ξ∂x を使える.

  3. 温度を 324K にする.音速は絶対温度の平方根に比例し,伸びは無視する.元の3番目の音で閉管は共鳴するか.

長さlが0.680 mの閉管と開管を並べる.閉管のx=0は閉口で,x=lは開口である.開管は両端とも開口である. 長さlが0.680 mの閉管と開管を並べる.閉管のx=0は閉口で,x=lは開口である.開管は両端とも開口である.
解答を見る

考え方 開口は圧力0,閉口は変位0で,圧力と変位の節・腹は入れ替わる.

  1. 閉管では kl=(2n−1)π/2 なので fn=(2n−1)v/(4l).順に 125,375,625Hz.開管では kl=nπ,fn=nv/(2l) なので 250,500,750Hz となる.

  2. k=5π/(2l),δp=−γpAkcos⁡kxcos⁡ωt.|cos⁡kx|=1 の位置は x=0,2l/5,4l/5,つまり 0,0.272,0.544m.開口は圧力の節である.

  3. 速さと各共鳴振動数は 324/289=18/17 倍になる.3番目は 662Hz へ移る.(2n−1)×125×18/17=625 を満たす整数 n はなく,元の音では共鳴しない.端補正と熱膨張を無視し,圧縮 Ak が小さい範囲である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

メルデの実験で,有効長 l=1.05m の弦を f=50.0Hz で振りました.滑らかな滑車に質量 m をつるし,張力は S=mg です.g=9.80ms−2 です.両端を変位の節と近似し,共鳴時の腹の個数 n を記録しました.伸びと張力の変動は無視します.

m(kg)

0.0125

0.0500

0.1125

n

6

3

2

  1. m と 1/n2 の関係を導き,線密度 μ を求めよ.

  2. 腹4個の質量を予測せよ.腹を増やすには張力をどう変えるか.

駆動装置で有効長lが1.05 mの弦を振動数50.0 Hzで振る.弦は滑らかな滑車を介して質量mのおもりにつながる. 駆動装置で有効長lが1.05 mの弦を振動数50.0 Hzで振る.弦は滑らかな滑車を介して質量mのおもりにつながる.
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考え方 振動数を保つと張力が腹の個数を決める.

  1. l=nλ/2,f=v/λ,v2=mg/μ より m=4μl2f2/(gn2).m と 1/n2 は原点を通る直線で,表では mn2=0.450kg なので

μ=gmn24l2f2=4.00×10−4kgm−1

となる.

  1. m=0.450/42kg=0.0281kg.n∝1/m だから腹を多くするには張力を減らす.gmn2/(l2f2) の次元は線密度である.駆動端を節とするには,駆動端と腹の振幅比も十分小さい必要がある.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

水面波が速さ v1=0.30ms−1 の領域から v2=0.20ms−1 の帯へ進みます.幅は b=0.60m,両境界は平行で,帯の外では速さが v1 に戻ります.振動数は f=10Hz,入射角は法線から θ1=30∘ です.

  1. 境界に沿う波面の間隔が共通になることから,屈折角 θ2 と波長を求めよ.

  2. 出射方向と,後の境界上での直進位置からのずれを求めよ.

幅bが0.60 mの帯を示す.入射波は法線から角θ_1が30°の向きに進み,波面は進行方向に垂直である.帯の外の速さはv_1,帯の中はv_2である. 幅bが0.60 mの帯を示す.入射波は法線から角θ_1が30°の向きに進み,波面は進行方向に垂直である.帯の外の速さはv_1,帯の中はv_2である.
解答を見る

考え方 境界上の波の周期と交点は両側で等しい.

  1. 境界に沿う間隔は λ1/sin⁡θ1=λ2/sin⁡θ2.振動数は一定で λj=vj/f なので sin⁡θ2=(v2/v1)sin⁡θ1=1/3,θ2=19∘.波長は λ2=v2/f=0.020m である.

  2. 出射角を θ3 とすると sin⁡θ3=(v1/v2)sin⁡θ2=sin⁡θ1,よって θ3=30∘.出射波は入射波と平行.ずれは丸める前の角度で

Δ=b(tan⁡θ1−tan⁡θ2)=0.60(13−18)m=0.13m

である.v2→v1 なら差は0になる.小振幅で,λ2/b=0.033 も小さいことを使った.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

水路の x=0,d の波源が,同じ振動数の波を逆位相で内側へ出します.d=5λ/4 で,λ は波長です.振幅は一定ですが異なり,反射・吸収を無視します.0<x<d で合成波の振幅は最大 0.90mm,最小 0.30mm でした.

  1. 各振幅を大小で求め,合成振幅 B(x) の式を導け.

  2. 振幅の極値の位置をすべて求めよ.節はあるか.

  3. 速さ・振幅・逆位相を保ち,振動数を2倍にする.元の最大位置はどうなるか.

x=0とx=dの波源が逆位相の波を内側へ出す.間隔はd=5λ/4で,測定点xは二つの波源の間にある. x=0とx=dの波源が逆位相の波を内側へ出す.間隔はd=5λ/4で,測定点xは二つの波源の間にある.
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考え方 位相差 π に経路差の位相を足して合成する.

  1. A1>A2 とすれば A1+A2=0.90mm,A1−A2=0.30mm より A1=0.60mm,A2=0.30mm.大小の波源は特定できない.2波は A1sin⁡(ωt−kx),A2sin⁡[ωt+π−k(d−x)] と書ける.位相差は π+k(2x−d) なので

B2=A12+A22−2A1A2cos⁡[k(2x−d)]

である.

  1. 最小は 2x−d=nλ,つまり x=λ/8,5λ/8,9λ/8.最大は 2x−d=(n+1/2)λ,つまり x=3λ/8,7λ/8.整数 n は 0<x<5λ/4 から選ぶ.最小でも B=A1−A2>0 なので変位の節はない.

  2. 波数は 2k.元の最大位置で k(2x−d)=±π を2倍すると ±2π.余弦は1となり,両方とも最小になる.A1=A2 なら最小値は0となり,節が現れる.

ポイント 教える人へ

  • 変位または傾きの境界条件を書かせる.

  • 変位の節と圧力の節を別々に示させる.

  • 測定値を直線化する理由を問う.

  • 経路差,初期位相,振幅差の効果を確かめる.

10倍音と音色

問い

ピアノとフルートで同じ高さのド(振動数 262Hz)を鳴らします.音の高さも大きさもそろえたのに,目を閉じて聞いてもどちらの楽器かすぐ分かります.同じ振動数の音なのに,何が違って聞こえるのでしょうか.

考えてみる

マイクで2つの音の圧力のずれ δp を記録すると,どちらも周期 T=1/(262Hz)≈3.8ms で同じ形をくり返します.高さが同じとは,この周期が同じということです.ところが1周期の中の形はまったく違います.フルートはなめらかな正弦波に近く,ピアノはでこぼこした形です.

周期が同じで形が違う.この違いを数で表すには,どうすればよいでしょうか.形をそのまま比べるのは難しそうです.前の題材で,弦や気柱には f1,2f1,3f1,… という飛び飛びのモードがあると学びました.周期 T の音には,周期が T,T/2,T/3,… の正弦波が混ざっていてもよいはずです.どれがどれだけ混ざっているかで形が決まる,と考えてみましょう.

弦の運動はモードの和

両端を固定した長さ l の弦(波の速さ v=S/μ)のモードは,kn=nπ/l,ωn=nπv/l として sin⁡knxcos⁡ωnt と sin⁡knxsin⁡ωnt でした.波動方程式は線形なので,これらの和

y(x,t)=∑n=1∞sin⁡nπxl(Bncos⁡ωnt+Ansin⁡ωnt)

も解です.実は弦の小さな振れの運動は,どれもこの形に書けます.係数は初めの形と初めの速度で決まり,t=0 を代入すると

y(x,0)=∑n=1∞Bnsin⁡nπxl,∂y∂t(x,0)=∑n=1∞ωnAnsin⁡nπxl

です.数学の節の直交性 ∫0lsin⁡(mπx/l)sin⁡(nπx/l)dx=(l/2)δmn(δmn は m=n で1,それ以外で0)を使うと,係数は1つずつ取り出せます.

Bn=2l∫0ly(x,0)sin⁡nπxldx,ωnAn=2l∫0l∂y∂t(x,0)sin⁡nπxldx

第3題材で見たとおり,どの項も時間 T=2π/ω1=2l/v で元に戻るので,弦が空気を押して作る音も周期 T で,高さは基本振動数 f1=v/(2l) で決まります.n≥2 の成分を倍音(第 n 倍音)といい,その混ざり方が形を決めます.

定義 倍音とスペクトル

振動数 f1 の整数倍 nf1 の成分を倍音という.音を倍音に分け,各成分の振幅(または強さ)を振動数に対して並べたものをスペクトルという.音の高さは基本振動数で,音色は主にスペクトルの形で決まる.

周期関数は正弦波の和

弦に限らず,周期 T の関数は,基本角振動数 ω=2π/T の整数倍の正弦波の和に書けます.

定理 フーリエ級数

周期 T の関数 f(t) は

f(t)=a02+∑n=1∞(ancos⁡nωt+bnsin⁡nωt),ω=2πT

と表せる.係数は an=2T∫0Tf(t)cos⁡nωtdt,bn=2T∫0Tf(t)sin⁡nωtdt で求まる.2乗の周期平均は成分ごとの和になる(パーセバルの等式).

⟨f2⟩=a024+∑n=1∞an2+bn22

導き方は数学の節に回します.大事なのは2点です.1つは,係数が積分1回で求まり,形が決まればスペクトルが決まることです.もう1つは,音の強さに比例する ⟨δp2⟩ が,倍音ごとの強さの和に分かれることです.異なる倍音の積は周期平均が0なので,強さの配分を倍音ごとに言えます.

[図:倍音の配分と1周期の波形]

初期状態は基本音が強い「フルートに近い」配分で,上段に1周期の関数f(t),下段に第1〜第8倍音の相対振幅b_nを示す.8本のスライダーと3つの配分ボタンで,周期Tを保ったまま波形が変わる.位相をそろえた正弦成分だけを合成する模式図である.

人の耳は,各倍音の強さには敏感ですが,倍音どうしの位相のずれにはあまり敏感ではありません.波形の見た目が違っても,スペクトルが同じなら似た音に聞こえます.音色を比べるにはスペクトルを比べればよい,というのが問いへの答えの骨組みです.ピアノは高い倍音まで強く,フルートは基本音が強くて倍音が弱い,というのが2つの楽器の差です.なお,実際の楽器の音色は,鳴り始めと減り方,雑音,倍音ごとの減衰の速さにもよります.ここではくり返す部分だけを扱います.

形の対称性と欠ける倍音

奇数倍音だけの音. 半周期進めると符号が反転する音,つまり f(t+T/2)=−f(t) を満たす音を考えます.sin⁡nω(t+T/2)=(−1)nsin⁡nωt なので,偶数倍音は半周期後に符号を変えず,奇数倍音は変えます.全体が反転するには偶数倍音が0でなければなりません.逆に偶数倍音が混ざると,半周期後の形は反転にはなりません.方形波がこの例で,1,3,5,… 倍の成分だけをもちます.

第3題材で見たように,閉管のモードは fn=(2n−1)v/(4l) で奇数倍の並びです.閉管に近い円筒の管をもつクラリネットの低い音域で偶数倍音が弱いのは,このためです.ここで区別したいのは,管の共鳴の並び(管の性質)と,演奏した音のスペクトル(どのモードをどれだけ揺らしたか)です.共鳴があっても揺らされないモードは音に出ません.

はじく場所で欠ける倍音. 弦の左端から b の点をつまんで高さ a まで引き,静かに放します.初めの形は b で折れた三角形,初速度は0なので An=0 で,Bn を上の積分で計算すると次のようになります(計算は演習).

Bn=2al2π2b(l−b)⋅1n2sin⁡nπbl

sin⁡(nπb/l)=0 のモード,つまりはじいた点が節になるモードは鳴りません.節は動かない点なので,そこをつまんで引いてもそのモードは揺らせない,と考えると納得できます.中央ではじけば偶数倍音がすべて消え,端から l/5 ではじけば第5・10・15倍音が消えます.

[図:はじく位置と欠ける倍音]

初期状態はb/l = 0.50で,中央を高さaに引いた両端固定の弦と,第1〜第12倍音の振幅の大きさ|B_n|を示す.縦方向は拡大している.はじく位置b/lを変えると三角形の頂点と棒の高さが変わる.中央では偶数番,b/l = 0.20では第5・第10倍音が0になる.

係数はおおよそ 1/n2 で減ります.ところが端の近く(b が小さい所)ではじくと,nπb/l が小さい間は sin⁡(nπb/l)≈nπb/l なので,Bn は 1/n でしか減りません.高い倍音の割合が増えて硬い音になります.ギターで駒の近くを弾くと音が硬く,指板の上で弾くと柔らかくなるのはこのためです.形に鋭い折れ目や段差があるほど,高い倍音の割合が増えます.なめらかな形なら係数は速く減り,柔らかい音になります.

モードのエネルギー

倍音の強さの配分は,弦のエネルギーでも言えます.弦の小さな部分 dx の運動エネルギーは μ2(∂y/∂t)2dx です.傾き ∂y/∂x の部分の長さは 1+(∂y/∂x)2dx≈(1+12(∂y/∂x)2)dx で,張力 S に逆らって伸ばした仕事が位置エネルギー S2(∂y/∂x)2dx になります.1つのモード y=Bnsin⁡knxcos⁡ωnt なら,∫0lsin2⁡knxdx=∫0lcos2⁡knxdx=l/2 と Skn2=μωn2 から

En=μlωn2Bn24(sin2⁡ωnt+cos2⁡ωnt)=μlωn2Bn24

で,時間によりません.sin の項も入れると En=μlωn2(An2+Bn2)/4 です.いくつものモードが重なっても,異なるモードの積は x で積分すると0になるので,全エネルギーは E=∑En です.各モードは独立な振動子で,それぞれのエネルギーを保ちます(第7章の連成振動の基準振動と同じです).

ポイント 適用の条件

弦の運動をモードの和に分けられるのは,波動方程式が線形のときである.そのためには傾き |∂y/∂x| が1より十分小さく,張力が変わらないとみなせる必要がある.はじいた弦なら a/b と a/(l−b) が小さいことである.また弦の曲げにくさを無視している.太いピアノの低音弦では曲げにくさのために高いモードの振動数が nf1 より少し高くずれ,倍音が整数倍からわずかに外れる.振幅が大きいと方程式が非線形になり,2つの音から f1+f2 や f1−f2 の音(結合音)が生じるが,ここでは扱わない.

音程と振動数の比

2つの音の高さの関係(音程)は,振動数の差ではなく比で決まります.比が2の音程がオクターブで,ドとその上のドです.比が 3/2 の音程を完全5度,4/3 を完全4度といいます.

これらがよく溶け合って聞こえる理由の1つは倍音にあります.基本振動数 f と 3f/2 の2つの音の倍音は f,2f,3f,4f,… と 1.5f,3f,4.5f,6f,… で,3f と 6f で重なります.重ならない倍音どうしも振動数が十分離れていて,第2題材のうなりが目立ちません.比が簡単な整数比から少しずれると,近い倍音どうしがうなりを生じ,濁って聞こえます.

鍵盤楽器では,オクターブを12の等しい比 21/12≈1.0595 に分ける平均律がふつうです.すると5度は 27/12≈1.4983 で,3/2 とわずかに違います.どの調でも同じように弾ける代わりに,5度をほんの少し狭くしているわけです.

問いに戻る

ピアノとフルートの同じ高さの音は,周期(基本振動数)が同じで,1周期の形が違います.周期 T の形はフーリエ級数で振動数 f1,2f1,3f1,… の正弦波に分けられ,各倍音の強さを並べたスペクトルが音色を決めます.フルートは基本音が強く倍音が弱い,ピアノは高い倍音まで強い,というスペクトルの違いを耳は聞き分けています.スペクトルは楽器の共鳴の並び(閉管なら奇数倍)と,どこをどう揺らしたか(はじいた点が節のモードは鳴らない,鋭い折れ目ほど高い倍音が強い)で決まります.

ポイント ここまでのまとめ

  • 両端固定の弦の運動はモードの和 ∑sin⁡(nπx/l)(Bncos⁡ωnt+Ansin⁡ωnt) で,係数は初めの形と初めの速度から直交性で決まる.

  • 周期 T の関数はフーリエ級数で倍音に分かれる.音の高さは基本振動数,音色は主にスペクトル.

  • f(t+T/2)=−f(t) なら奇数倍音だけ.閉管の共鳴は奇数倍の並び.

  • はじいた点が節になるモードは鳴らない.形が鋭いほど高い倍音が強い.

  • 各モードのエネルギーは En=μlωn2(An2+Bn2)/4 で,全エネルギーはその和.

  • 音程は振動数の比で決まる(オクターブ2,完全5度 3/2).平均律の半音は 21/12.

11フーリエ級数と直交性

本体の節で使った,周期関数を倍音に分ける式と,強さが倍音ごとの和に分かれる式を,三角関数の直交性から導きます.

定理 数学の道具:三角関数の直交性

m,n を正の整数とする.

∫02πsin⁡mxsin⁡nxdx=∫02πcos⁡mxcos⁡nxdx=πδmn,∫02πsin⁡mxcos⁡nxdx=0

ここで δmn は m=n なら1,m≠n なら0.また ∫02πcos⁡nxdx=∫02πsin⁡nxdx=0 である.

積を和に直すと sin⁡mxsin⁡nx=12[cos⁡(m−n)x−cos⁡(m+n)x] です.0でない整数 j について ∫02πcos⁡jxdx=[sin⁡jx/j]02π=0 なので,m≠n なら両方の項が消えます.m=n なら cos⁡0=1 の項だけが残り,12⋅2π=π です.ほかの組も同じように和に直せば分かります.

ベクトルの成分を内積で取り出すのと同じ見方ができます.関数 f,g の「内積」を ∫fgdx とすると,sin⁡nx と cos⁡nx は互いに直交する軸です.ある軸との内積をとれば,その軸の成分だけが残ります.

変数を変えれば,ほかの区間でも同じことが言えます.x=ωt とおくと周期 T=2π/ω の区間で ∫0Tsin⁡mωtsin⁡nωtdt=(T/2)δmn です.弦のモードでは x→πx/l として,0≤x≤l の半周期だけで ∫0lsin⁡(mπx/l)sin⁡(nπx/l)dx=(l/2)δmn が成り立ちます(cos⁡(m±n)πx/l を 0 から l まで積分すると,m±n≠0 なら0).

定理 数学の道具:フーリエ係数

周期 T(ω=2π/T)の関数を f(t)=a02+∑n=1∞(ancos⁡nωt+bnsin⁡nωt) と表すとき

an=2T∫0Tf(t)cos⁡nωtdt(n≥0),bn=2T∫0Tf(t)sin⁡nωtdt

積分は長さ T のどの区間でとってもよい.a0/2 は f の平均である.

級数の両辺に cos⁡mωt を掛けて1周期で積分すると,直交性で n=m の cos の項だけが残り,∫0Tfcos⁡mωtdt=amT/2 です.a0 に 1/2 を付けておくと,n=0 でも同じ式が使えます.

対称性があると計算が減ります.f が偶関数(f(−t)=f(t))なら bn=0,奇関数なら an=0 です.f(t+T/2)=−f(t) なら偶数番の係数がすべて0です.

跳びのある関数(方形波など)も,区分的になめらかなら級数で表せます.跳びの点では級数は左右の値の平均になり,有限個の項で打ち切ると跳びの近くに跳びの大きさの約9 % のはみ出しが残ります(ギブズの現象).

定理 数学の道具:複素形とパーセバルの等式

オイラーの式で cos⁡nωt と sin⁡nωt を e±inωt に直すと

f(t)=∑n=−∞∞cneinωt,cn=1T∫0Tf(t)e−inωtdt

となる.実数の f では c−n は cn の複素共役で,cn=(an−ibn)/2(n≥1),c0=a0/2 である.2乗の周期平均は

⟨f2⟩=1T∫0Tf2dt=∑n=−∞∞|cn|2=a024+∑n=1∞an2+bn22

cos⁡θ=(eiθ+e−iθ)/2,sin⁡θ=(eiθ−e−iθ)/(2i) から,einωt の係数は (an−ibn)/2 です.複素形の直交性は 1T∫0Tei(m−n)ωtdt=δmn の1本で済み,cn の式はこれから出ます.パーセバルの等式は,f2 を級数の積に展開して周期平均をとると,異なる番号の積がすべて消えることから出ます.

練習1 f(t)=cos2⁡ωt のフーリエ係数を求めよ.

練習2 f(t)=3sin⁡ωt+4cos⁡2ωt の ⟨f2⟩ を,パーセバルの等式で求めよ.

答え 練習1:cos2⁡ωt=12+12cos⁡2ωt なので a0=1,a2=12,ほかは0.積分しなくても,有限個の項の和に書ければそれが答えである.練習2:(32+42)/2=12.5.直接計算しても 3sin⁡ωt⋅4cos⁡2ωt の平均は0である.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

周期 T の方形波 f(t) を,0<t<T/2 で f=1,T/2<t<T で f=−1 とする(ω=2π/T).

  1. フーリエ係数を求めよ.

  2. パーセバルの等式を使って,1+132+152+⋯ を求めよ.また,⟨f2⟩ のうち基本音が占める割合を求めよ.

[図:方形波と有限個の項の部分和]

初期状態はN = 5で,0 < t < T/2では1,T/2 < t < Tでは−1となる方形波に,5項を足した部分和を重ねる.Nのスライダーを1〜25で変えると,跳びから離れた所で方形波に近づく一方,跳びの近くにはみ出しが残る様子が見える.白抜きの丸は区間の端を表す.

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考え方 f は奇関数で,f(t+T/2)=−f(t) も満たす.対称性で消える係数を先に決める.

  1. 原点のまわりで奇関数なので an=0(a0 も0).q=nω とおくと,qT/2=nπ より

bn=2T[∫0T/2sin⁡qtdt−∫T/2Tsin⁡qtdt]=2T⋅2(1−cos⁡nπ)q=2nπ[1−(−1)n]

偶数の n では0,奇数の n では bn=4/(nπ) である.

f(t)=4π(sin⁡ωt+13sin⁡3ωt+15sin⁡5ωt+⋯)
  1. f2=1 なので ⟨f2⟩=1.パーセバルの等式から

1=∑n奇数bn22=8π2(1+132+152+⋯)

よって 1+132+152+⋯=π28.基本音の割合は b12/2=8/π2≈0.81 である.

確かめ:偶数倍音が無いのは f(t+T/2)=−f(t) から予想どおり.t=T/4 で級数は 4π(1−13+15−⋯)=4π⋅π4=1 で,f と合う.跳びの点 t=0 では級数は0で,左右の値 ±1 の平均である.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

周期 T ののこぎり波 f(t) を,−T/2<t<T/2 で f=2t/T とし,周期的に延長する(ω=2π/T).複素形の係数 cn を求め,実数の形の an,bn に直せ.また ⟨f2⟩ のうち基本音が占める割合を求めよ.1+122+132+⋯=π26 を使ってよい.

のこぎり波f(t)を−T/2から3T/2までの2周期分示す.−T/2 < t < T/2ではf(t) = 2t/Tで,−1から1へ直線的に増える.T/2で−1へ跳んで戻り,同じ形をくり返す.破線は跳びの位置,白抜きの丸は区間の端を表す. のこぎり波f(t)を−T/2から3T/2までの2周期分示す.−T/2 < t < T/2ではf(t) = 2t/Tで,−1から1へ直線的に増える.T/2で−1へ跳んで戻り,同じ形をくり返す.破線は跳びの位置,白抜きの丸は区間の端を表す.
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考え方 ∫te−iqtdt を部分積分で求める.奇関数なので an=0 が予想できる.

c0 は平均で0.n≠0 では q=nω とおくと,部分積分で

∫−T/2T/2te−iqtdt=[ite−iqtq]−T/2T/2+[e−iqtq2]−T/2T/2

qT/2=nπ より e∓inπ=(−1)n なので,第1項は iT(−1)nq,第2項は0.よって

cn=1T⋅2T⋅iT(−1)nq=i(−1)nnπ

cn=(an−ibn)/2 と比べると an=0,bn=−2Im⁡cn=2(−1)n+1nπ.

f(t)=2π(sin⁡ωt−12sin⁡2ωt+13sin⁡3ωt−⋯)

直接計算すると ⟨f2⟩=1T∫−T/2T/24t2T2dt=13.パーセバルの等式でも ∑bn2/2=2π2⋅π26=13 で合う.基本音の割合は 2/π21/3=6π2≈0.61 である.

確かめ:c−n=−i(−1)n/(nπ) は cn の複素共役で,f が実数であることと合う.方形波と違ってすべての倍音を含み,基本音の割合も小さい.弓でこする弦の波形はのこぎり波に近く,バイオリンの音が倍音に富むことと対応する.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

両端固定の弦(長さ l,線密度 μ,張力 S,v=S/μ)の中央を高さ a まで引いて,静かに放す.a/l は十分小さい.

  1. 初めの弾性エネルギー E=∫0lS2(∂y∂x)2dx を求めよ.

  2. 初めの傾き ∂y/∂x は x の方形波である.このことと例題1を使って,モードの係数 Bn を求めよ.

  3. 各モードのエネルギー En=μlωn2Bn2/4 の和が E に等しいことを確かめ,基本振動が占める割合を求めよ.

両端固定の弦をx = l/2で高さaに引いた,静かに放す直前の三角形を上段に示す.縦方向は拡大している.下段の初めの傾き∂y/∂xは,左半分で2a/l,右半分で−2a/lとなる.中央の折れ目では傾きが跳び,白抜きの丸で区間の端を示す. 両端固定の弦をx = l/2で高さaに引いた,静かに放す直前の三角形を上段に示す.縦方向は拡大している.下段の初めの傾き∂y/∂xは,左半分で2a/l,右半分で−2a/lとなる.中央の折れ目では傾きが跳び,白抜きの丸で区間の端を示す.
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考え方 y=∑Bnsin⁡knx を x で微分すると ∂y/∂x=∑knBncos⁡knx で,傾きの余弦級数の係数から Bn が出る.傾きは方形波を4分の1周期ずらしたものである.

  1. 傾きの大きさはどこでも 2a/l なので E=S2⋅4a2l2⋅l=2Sa2l.

  2. 傾きは周期 2l の関数とみると,0<x<l/2 で 2a/l,l/2<x<l で −2a/l,x<0 側へは偶関数として延長したものである.例題1の方形波を4分の1周期ずらすと sin が cos に変わり,奇数 n で係数の符号が sin⁡(nπ/2) だけ交互になる.t→x,T→2l,ω→π/l と読みかえて

∂y∂x=2al⋅4π∑n奇数sin⁡(nπ/2)ncos⁡nπxl

これを knBn=(nπ/l)Bn と比べて

Bn=8aπ2⋅sin⁡(nπ/2)n2(n 奇数),Bn=0(n 偶数)

本体の節の式で b=l/2 とおいたものと一致する.

  1. ωn=nπv/l,μv2=S より,奇数 n で

En=μl4⋅n2π2v2l2⋅64a2π4n4=16Sa2π2l⋅1n2

例題1の 1+132+152+⋯=π28 を使うと ∑En=16Sa2π2l⋅π28=2Sa2l=E.基本振動の割合は E1/E=8/π2≈0.81 である.

確かめ:中央が腹になる奇数のモードだけが揺れ,中央が節の偶数モードは鳴らない.モードのエネルギーの和が全体に等しいのは,弦についてのパーセバルの等式である.小さい傾き 2a/l が1より十分小さいときに成り立つ.

ポイント ここまでのまとめ

  • sin⁡nx,cos⁡nx は1周期の積分で互いに直交する.弦のモード sin⁡(nπx/l) も 0≤x≤l で直交する.

  • フーリエ係数は an=2T∫0Tfcos⁡nωtdt,bn=2T∫0Tfsin⁡nωtdt.複素形は cn=1T∫0Tfe−inωtdt.

  • 偶関数は cos だけ,奇関数は sin だけ,f(t+T/2)=−f(t) なら奇数番だけ.

  • パーセバルの等式 ⟨f2⟩=∑|cn|2 で,強さやエネルギーが倍音ごとに分かれる.

  • 方形波は奇数倍音が 1/n,のこぎり波は全倍音が 1/n,はじいた弦は 1/n2 で減る.

12倍音と音色の演習

波形と倍音の並びから,励起と境界条件が音色をどう変えるか調べてください.音の圧力のずれを δp,弦の張力を S,線密度を μ とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

ある点の音圧が δp=p∗(sin⁡ωt+12sin⁡2ωt) と測定された.p∗>0,ω=2πf,f=240Hz とする.

  1. 含まれる振動数と波形の最小周期 T を求めよ.

  2. t=0,T/8,T/4,3T/8,T/2 の値を求め,1周期の波形を描け.半周期後の波形は符号を反転したものか.

横軸t/T,縦軸δp/p*の作図用座標.横軸には1周期を8等分した目盛りを付ける. 横軸t/T,縦軸δp/p*の作図用座標.横軸には1周期を8等分した目盛りを付ける.
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考え方 各成分の位相を進め,圧力を足す.

  1. 振動数は 240Hz と 480Hz.基本音が存在するので,最小周期は T=1/f≈4.17×10−3s である.

  2. 指定時刻の δp/p∗ は順に 0,(2+1)/2,1,(2−1)/2,0.残り半周期では t=5T/8,3T/4,7T/8,T に順に (1−2)/2,−1,−(1+2)/2,0 を通る滑らかな曲線となる.半周期後は sin⁡ωt の符号だけが変わり,sin⁡2ωt は変わらないので,全体の符号反転ではない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

周期 T の音圧を,−T/2≤t≤T/2 で δp=p∗(1−4|t|/T) とし,周期的に延長する.p∗>0,ω=2π/T とする.

  1. δp=a0/2+∑n=1∞(ancos⁡nωt+bnsin⁡nωt) の係数を求めよ.

  2. 圧力の2乗の周期平均を求め,そのうち基本音が占める割合を求めよ.

周期Tのうち−T/2からT/2の音圧を示す.頂点は音圧p*,両端は音圧−p*で,その間は直線である. 周期Tのうち−T/2からT/2の音圧を示す.頂点は音圧p*,両端は音圧−p*で,その間は直線である.
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考え方 偶関数の対称性で正弦成分を消し,直交性で2乗平均を成分ごとに分ける.

  1. 平均は0だから a0=0,偶関数だから bn=0.q=nω とおくと

an=4p∗T∫0T/2(1−4tT)cos⁡qtdt=16p∗T2q2[1−(−1)n].

ここで ∫tcos⁡qtdt=tsin⁡qt/q+cos⁡qt/q2 を使った.よって偶数 n では0,奇数 n では an=8p∗/(π2n2) である.

  1. 波形を直接積分すると ⟨δp2⟩=2p∗2T∫0T/2(1−4t/T)2dt=p∗2/3.基本音の2乗平均は a12/2=32p∗2/π4 なので割合は 96/π4≈0.986.直交性から ⟨δp2⟩=∑an2/2 とも求まる.割合は1未満で,高い倍音の寄与は小さい.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

理想的な一様気柱の共鳴を掃引測定した.最も低い共鳴から連続する3つの値は次の表であり,各値の誤差の限界は ±1Hz である.この間に他の共鳴はない.音速 v=340ms−1 は既知とし,開口端補正を無視する.

共鳴の順

1

2

3

f(Hz)

205

615

1025

  1. 両端開管と一端閉管のどちらの模型が合うか.基本振動数 f0 の許される範囲を求めよ.

  2. 有効長 l を推定せよ.この結果だけで実際の楽器名を特定できるか.

長さlの両端開管と一端閉管を候補として並べ,開口端と閉口端を示す. 長さlの両端開管と一端閉管を候補として並べ,開口端と閉口端を示す.
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考え方 強い音のピークではなく,欠落のない共鳴の並びを境界条件の予言と比べる.

  1. 比は 1:3:5 であり,閉管の fn=(2n−1)v/(4l) に合う.開管の連続する共鳴の比 1:2:3 には合わない.3点が要求する範囲は順に 204≤f0≤206,614/3≤f0≤616/3,1024/5≤f0≤1026/5(単位は Hz).共通範囲は 204.8≤f0≤205.2(Hz)である.

  2. 中心値から l=v/(4f0)=340/820≈0.415m.限界値は約 0.4142m と 0.4150m である.実際の楽器では形状や開口端補正も効くので,名前までは決まらない.通常の演奏音のスペクトルなら,励起されない倍音もあり,この共鳴掃引と同じ推定はできない.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

両端固定の長さ l の弦を,左端から b=l/4 の点で高さ a>0 まで引き,静かに放す.初期波形は 0≤x≤b で y0=ax/b,b≤x≤l で y0=a(l−x)/(l−b) である.小さな傾きの近似を用いる.

  1. 初期波形のモード係数 Bn=2l∫0ly0sin⁡(nπx/l)dx を求めよ.

  2. 欠ける倍音と B2/B1,B3/B1 を求めよ.

両端固定の弦をx=b=l/4で高さaまで引く.与えられた初期波形は二つの直線をつないだ三角形である. 両端固定の弦をx=b=l/4で高さaまで引く.与えられた初期波形は二つの直線をつないだ三角形である.
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考え方 はじいた点で積分を分ける.波形の折れ曲がりが各モードへの射影を決める.

  1. q=nπ/l とおく.部分積分で端点項は0となり,傾きが一定の区間を積分すると

∫0ly0sin⁡qxdx=1q[ab∫0bcos⁡qxdx−al−b∫blcos⁡qxdx]=alsin⁡qbb(l−b)q2.

したがって Bn=2al2sin⁡(nπb/l)/[n2π2b(l−b)]=32asin⁡(nπ/4)/(3π2n2).運動は y=∑Bnsin⁡(nπx/l)cos⁡ωnt,ωn=nπS/μ/l となる.

  1. n=4,8,12,… の成分が欠ける.比は B2/B1=2/4,B3/B1=1/9.欠けるモードははじく点に節をもつ.近似条件は両側の傾き,特に a/b=4a/l が1より十分小さいことである.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

両端固定の一様な弦(長さ l,線密度 μ,張力 S)が初め真っすぐだった.短い打撃により,l/3<x<2l/3 だけに一様な上向き速度 u>0 を与え,他は初速度0とする.運動は線形な弦の模型に従う.

  1. y=∑Ansin⁡(nπx/l)sin⁡ωnt,ωn=nπS/μ/l の係数と,励起されないモードを求めよ.

  2. 基本振動と第3モードのエネルギーの和は,全エネルギーの何割か.各モードについて En=μlωn2An2/4 を初期運動エネルギーから導いて用いよ.

初め真っすぐな両端固定の弦の中央3分の1だけに,一様な上向き初速度uを与える.区間の外では初速度は0である. 初め真っすぐな両端固定の弦の中央3分の1だけに,一様な上向き初速度uを与える.区間の外では初速度は0である.
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考え方 初速度を正弦級数に分け,変位の振幅へ直すには角振動数で割る.

  1. cn=ωnAn とすれば,直交性から

cn=2ul∫l/32l/3sin⁡nπxldx=2unπ(cos⁡nπ3−cos⁡2nπ3)=4unπsin⁡nπ2sin⁡nπ6.

よって An=cn/ωn.偶数モードはすべて欠け,奇数モードはすべて励起される.

  1. ∫0lsin2⁡(nπx/l)dx=l/2 より,時刻0の各モードのエネルギーは En=μ2cn2l2=μlcn2/4.全体は E=μ2u2l3=μlu2/6.c1=2u/π,c3=−4u/(3π) だから (E1+E3)/E=26/(3π2)≈0.878,約8.8割である.係数の符号はエネルギーに影響しない.小振幅の条件は u/S/μ が1より十分小さいことであり,実際には打撃区間の縁も滑らかになる.

ポイント 教える人へ

  • 半周期後の符号反転が,偶数倍音の有無とどう関係するか問います.

  • 波形の係数,音圧の2乗平均,弦のモードのエネルギーを区別させます.

  • 共鳴を掃引した測定と,演奏音のスペクトルの違いを確かめます.

  • 初期変位と初速度のどちらを展開しているか,係数の単位で確認させます.

13波が運ぶエネルギーと分散

問い

海底の地震で生まれた津波は,水深 4000 m ほどの外洋をジェット機に近い速さで進みます.外洋では波の高さは数十 cm しかなく,船の上ではほとんど気づかないほどです.ところが海岸に近づいて水深が浅くなると,津波は遅くなり,同時に何倍もの高さに盛り上がります.波の速さは何で決まるのでしょうか.また,遅くなるとなぜ高くなるのでしょうか.

考えてみる

これまでの弦や音では,波の速さは媒質だけで決まっていました.弦なら v=S/μ,空気なら v=γp/ρ で,波長にはよりません.ところが水面の波は違います.池に石を投げると,波長の長い波が先に広がり,短い波が後から来ます.水面の波の速さは,波長と水深によって変わるのです.

高さについては,エネルギーの保存から考えたくなります.しかし「波のエネルギーが一定」と言うだけでは足りません.波は進みながら,後ろから前へエネルギーを渡していきます.保存するのは,ある場所を単位時間に通り過ぎるエネルギー,つまりエネルギーの流れです.この節では,まずエネルギーの流れを式にし,次に速さが波長によって変わる波(分散のある波)でエネルギーが何の速さで進むかを調べます.

波が運ぶエネルギーの流れ

張力 S,線密度 μ の弦で考えます.第4題材で見たように,単位長さあたりのエネルギー(線エネルギー密度)は,横に動く運動エネルギーと,傾いて伸びた分の弾性エネルギーの和

e=μ2(∂y∂t)2+S2(∂y∂x)2

です.

点 x の左側の弦は,右側の弦を張力で引いています.その横向きの成分は −S∂y/∂x で,その点は速度 ∂y/∂t で動くので,左から右へ渡す仕事率は

P=−S∂y∂x∂y∂t

です.右へ進む波 y=f(x−vt) では ∂y/∂t=−v∂y/∂x なので,S=μv2 を使うと

P=Sv(∂y∂x)2

となります.一方,同じ関係をエネルギー密度に入れると,運動エネルギーの項は 12μv2(∂y/∂x)2=12S(∂y/∂x)2 で弾性エネルギーの項と等しく,e=S(∂y/∂x)2 です.よって P=ev です.

定理 波のエネルギーの流れ

形を変えずに速さ v で進む波では,ある点を単位時間に通るエネルギーは P=ev(エネルギー密度×波の速さ)である.弦の正弦波 y=Asin⁡(ωt−kx) では,時間平均が

⟨e⟩=12μω2A2,⟨P⟩=12μvω2A2=12Zω2A2,Z=μv=Sμ

となる.Z を弦のインピーダンスという.

P=Z(∂y/∂t)2 と書けば,Z は「弦の端を速度 ∂y/∂t で動かすのに要る力」の比例定数で,右へ進む波では −S∂y/∂x=Z∂y/∂t です.交流回路の V=ZI と同じ役目をする量で,あとで境界での反射を決めます.

右へ進む波では,傾きが正なら左側の弦の張力Sの横成分と点の速度はともに下向き,傾きが負ならともに上向きになる.赤は力,青は速度で,仕事率Pは負にならない.横方向は弦に垂直なy方向である. 右へ進む波では,傾きが正なら左側の弦の張力Sの横成分と点の速度はともに下向き,傾きが負ならともに上向きになる.赤は力,青は速度で,仕事率Pは負にならない.横方向は弦に垂直なy方向である.

水面の波でも同じです.水面が y だけ上がった所では,単位面積あたり質量 ρy の水を高さ y/2 まで持ち上げているので,位置エネルギーは単位面積あたり 12ρgy2 です.y=Asin⁡(ωt−kx) で平均すると単位面積あたり 14ρgA2 で,運動エネルギーの平均も同じだけあるので,水面の単位面積あたりの平均エネルギーは 12ρgA2 です.

分散:速さが波長で変わる

ei(ωt−kx) の形の波が進むとき,媒質の運動方程式から決まる ω と k の関係を分散関係といいます.波の山が進む速さ v=ω/k を位相速度とよびます.弦や音では ω=vk で,ω/k は k によりません.このとき波は分散が無いといいます.ω/k が k によって変わる波を,分散のある波といいます.プリズムで光が色に分かれる「分散」と同じ言葉です.

第1題材で波動方程式を導いたおもりとばねの列(質量 m,間隔 a,ばね定数 K)を,連続の極限をとらずにそのまま調べてみます.j 番目のおもりの変位を yj=Aei(ωt−kja) の実部として運動方程式 my¨j=K(yj+1−2yj+yj−1) に代入すると,共通の因子が消えて

ω=2Kmsin⁡ka2(0≤ka≤π)

が出ます.ka が小さい(波長が間隔よりずっと長い)ときは ω≈aK/mk で分散の無い波に戻りますが,波長が間隔に近づくと ω/k は小さくなり,ω には上限 2K/m があります.分散は,媒質の粒々の間隔のような「長さの目盛り」が波長と比べられるときに現れるのです.

水面の波では,その長さの目盛りが水深 h です.流体力学で解くと ω2=gktanh⁡kh になりますが,2つの極限は次元解析で見当がつきます(数学の節).

法則 水面の重力波の分散関係

  • 深い水の波(kh が十分大きい.水深が波長の半分ほどより深い):ω2=gk,位相速度 v=g/k=gλ/2π.波長の長い波ほど速い.

  • 浅い水の波(kh が十分小さい.水深が波長の20分の1ほどより浅い):v=gh.波長によらず,水深だけで決まる.

どちらも表面張力を無視し,振幅 A が水深と波長より十分小さいとしている.

[図:水深を変えて見る分散関係]

初期水深hは1 m.青い厳密な曲線に,橙の深い水の近似と緑の浅い水の近似を重ねる.水深を小さくすると,浅い水の直線に沿う波数kの範囲が広がる.縦軸の範囲を超える直線は切って表示する.

津波の波長は数十 km から数百 km あり,水深 4000 m の外洋でも「浅い水の波」です.速さは 9.8×4000≈200ms−1,時速にして約 700 km になります.水深 10 m の岸近くでは 9.8×10≈10ms−1 まで遅くなります.

群速度:エネルギーはどの速さで進むか

分散のある波では,「波の速さ」が1つに決まりません.波数の近い2つの正弦波 k0±Δk/2(角振動数 ω0±Δω/2)を重ねると,第2題材のうなりと同じように

y=2Acos⁡Δωt−Δkx2sin⁡(ω0t−k0x)

となります.細かい山は位相速度 ω0/k0 で進みますが,振幅のふくらみ(包絡線)は Δω/Δk で進みます.Δk を小さくした極限が群速度です.

定義 群速度

波数 k の近くの波を集めてできる波のかたまり(波束)の包絡線が進む速さ

vg=dωdk

を群速度という.分散が無ければ vg=ω/k=v である.

深い水の波では ω=gk を微分して vg=12g/k=v/2 で,群速度は位相速度の半分です.池に石を投げてできた波の輪をよく見ると,一つ一つの山は輪の後ろの端で生まれ,輪の中を前へ進み,前の端で消えていきます.山が波束を追い越していくのです.

[図:位相の山と包絡線の山を追う]

初期状態は深い水の波で,時刻tは規格化した1.5.橙の印が位相の山,緑の輪が包絡線の山を表す.時刻を進めると橙の印が包絡線を追い越す.分散なしでは2つの印が同じ速さで進み,ばねの列では群速度が位相速度より小さい.狭い波数幅の近似で包絡線の広がりは省く.

エネルギーは振幅の2乗に比例するので,エネルギーがあるのは包絡線のふくらんだ所です.だから分散のある波では,エネルギーは群速度で運ばれます.エネルギーの流れも P=⟨e⟩vg で,分散の無い波の P=ev はその特別な場合です.ばねの列では vg=aK/mcos⁡(ka/2) で,上限の振動数(ka=π)で vg=0 になります.その振動数の波はその場で揺れるだけでエネルギーを運ばず,上限を超える振動数では進む波がありません.端を速く揺すっても,揺れは少し入った所で消えてしまいます.

この結論は,ここで扱う保存的な(摩擦や吸収の無い)模型で,波束の波数の幅が狭いときのものです.波数の幅が広いと,ω(k) の曲がり方のために波束は進むにつれて広がっていきます.

浅瀬で波が高くなる

津波が水深のゆっくり変わる海を進むとき,反射が小さく,散逸も無視できれば,波の進む向きに幅 1 m の帯を通るエネルギーの流れは場所によらず一定です.浅い水の波では vg=v=gh なので

12ρgA2gh=一定,A∝h−1/4

です.これをグリーンの法則といいます.水深が 4000 m から 10 m になると,振幅は (4000/10)1/4≈4.5 倍になります.同じエネルギーの流れを遅い波で運ぶには,エネルギー密度を上げる,つまり振幅を大きくするしかないのです.周期は変わらないので,波長 λ=vT も縮み,波は前後に詰まって高くなります.湾の奥のように幅 b が狭まる所では,同じ考えで A∝b−1/2h−1/4 となり,さらに高くなります.

沖から岸の手前へ右向きに進む波.水深hが小さくなると速さ√(gh)が下がり,周期Tは変わらないため波長λが短くなる.エネルギーの流れが一定なら振幅Aは大きくなる.海底と水面は模式図で,砕波する直前の領域は含めない. 沖から岸の手前へ右向きに進む波.水深hが小さくなると速さ√(gh)が下がり,周期Tは変わらないため波長λが短くなる.エネルギーの流れが一定なら振幅Aは大きくなる.海底と水面は模式図で,砕波する直前の領域は含めない.

使った近似は,水深の変化が1波長の間で小さいこと(|dh/dx|/(kh) が十分小さい),振幅が水深より小さいこと(A/h が十分小さい)の2つです.岸のごく近くでは A/h が1に近づき,波の山の方が速く進んで前のめりになり,砕けます.ここでは線形の波の理論が成り立ちません.

境界での反射と透過

水深や線密度が波長に比べて急に変わると,波の一部が反射します.線密度 μ1 と μ2 の弦を同じ張力 S で結び,左から振幅 Ai の波が来るとします.結び目で成り立つのは,弦が切れないこと(変位がつながる)と,質量の無い結び目に働く横向きの力がつり合うこと(傾きがつながる)の2つです.この2つの条件から反射波と透過波の振幅が決まります(導き方は数学の節).

定理 弦の接続点での反射と透過

インピーダンスを Z1=Sμ1,Z2=Sμ2 とすると,入射波の振幅 Ai に対する反射波 Ar・透過波 At の比は

ArAi=Z1−Z2Z1+Z2,AtAi=2Z1Z1+Z2

である.エネルギーの流れの割合は反射率 R=(Ar/Ai)2,透過率 T=(Z2/Z1)(At/Ai)2 で,R+T=1 となる.

Z2 が非常に大きい(重い弦や壁につながる)と Ar/Ai→−1 で,第3題材の固定端の反射(位相が π ずれる)になります.Z2→0 なら Ar/Ai→1 で自由端です.固定端と自由端は,この式の両極限だったのです.また,Z1=Z2 なら反射は起こりません.反射を決めるのは媒質の違いそのものではなく,インピーダンスの違いです.第26章では,ガラスの表面での光の反射をこれと同じ考えで求めます.

[図:線密度を変えて見るパルスの反射と透過]

初期状態はμ₂/μ₁が4で,入射前の上向きのパルスと,反射後の下向きのパルス・上向きの透過パルスを上下に示す.時刻を0に戻すと入射から接続点を通る過程を追える.線密度比を0.1から10まで変えると,反射の符号と振幅,透過の振幅と幅が変わる.

波が運ぶ運動量(発展)

波がエネルギーを運ぶなら,運動量も運ぶでしょうか.光(電磁波)では,エネルギーの流れ P に伴って運動量の流れ P/c が運ばれ,光を吸収する面は力を受けます.これは第26章で場の方程式から確かめます.弦や水面の波でも,波を吸収する壁には平均して押す力が働きます.ただし,この力は振幅の2乗に比例する量で,振幅の1次までしか扱わない線形の波の理論だけでは決まらず,媒質の性質の細部によります.水面の波では,水の粒子が円を描きながら少しずつ前へ流される(ストークスの漂流)ことが,運ぶ運動量の一つの現れです.

問いに戻る

津波は波長が水深よりずっと長いので,外洋でも浅い水の波で,速さは v=gh です.水深 4000 m では約 200ms−1 で,太平洋を1日ほどで渡ります.浅い水の波には分散がほとんど無いので,波の形は崩れにくく,エネルギーは遠くまで届きます.岸に近づいて水深が浅くなると速さが落ちますが,運ぶエネルギーの流れ 12ρgA2gh は変わらないので,振幅は h−1/4 に比例して大きくなります.湾の幅が狭まればさらに高くなり,最後は振幅が水深に近づいて砕けます.

ポイント ここまでのまとめ

  • 波が運ぶエネルギーの流れは,分散が無ければ P=ev.弦の正弦波では ⟨P⟩=12Zω2A2,Z=Sμ.水面では単位面積あたり 12ρgA2.

  • 分散関係 ω(k).深い水 ω2=gk,浅い水 v=gh.ばねの列は ω=2K/msin⁡(ka/2) で上限がある.

  • 包絡線とエネルギーは群速度 vg=dω/dk で進む.深い水の波では vg=v/2.

  • 浅瀬ではエネルギーの流れが一定なので A∝h−1/4(グリーンの法則).津波が岸で高くなる理由.

  • 接続点の反射 Ar/Ai=(Z1−Z2)/(Z1+Z2).固定端・自由端はその両極限.

14群速度・次元解析・境界の条件

本体の節の群速度・水面の波の速さ・反射の式を導きます.

定理 数学の道具:近い波数の波の和と群速度

分散関係 ω(k) に従う2つの波 ei(ω±t−k±x)(k±=k0±Δk/2,ω±=ω(k±))を足し,ei(ω¯t−k0x)(ω¯=(ω++ω−)/2)でくくると,Δω=ω+−ω− として

ei(ω+t−k+x)+ei(ω−t−k−x)=2cos⁡Δωt−Δkx2ei(ω¯t−k0x)

である.ゆっくり変わる振幅が一定の点は Δωt−Δkx=一定 の上を速さ Δω/Δk で進む.Δk が k0 より十分小さければ,テイラー展開 ω±≈ω(k0)±ω′(k0)Δk/2 から

vg=ΔωΔk→dωdk(k=k0 での値)

第2題材のうなりは,同じ場所で時間だけを見た場合(Δk=0)にあたります.

練習1 分散関係が ω2=ωc2+c2k2(ωc,c は正の定数)の波について,位相速度 v と群速度 vg の積を求めよ.

答え 両辺を k で微分すると 2ωdω/dk=2c2k なので vg=c2k/ω,vvg=ωk⋅c2kω=c2.位相速度は c より大きく,群速度は c より小さい(ω→ωc で vg→0).

定理 数学の道具:次元解析

物理量の関係式では,両辺の次元(長さ L,質量 M,時間 T の指数)が一致する.関係しそうな量のべきの積で答えを書き,次元が合うように指数を決める.数の係数は決まらない.

深い水の波.水深が波長に比べて十分深ければ,波は底を感じず,ω を決めうるのは g(LT−2),k(L−1),水の密度 ρ(ML−3)です.ω=Cgakbρc とおくと,M から c=0,T から −1=−2a,L から 0=a−b で,a=b=12,ω=Cgk です(流体力学では C=1).密度が入らないのは,重力も慣性も密度に比例するからです.

浅い水の波.波長が水深より十分長ければ,水は底から水面まで一様に前後に動き,速さは g と h で決まるので,次元を合わせて v=Cgh(C=1)です.kh が中くらいなら kh の関数が掛かり,次元解析では決まりません.本体の節の ω2=gktanh⁡kh は,tanh⁡kh が kh の小さいとき kh,大きいとき1に近づくので,2つの極限に戻ります.

定理 数学の道具:境界の条件と複素振幅

波動方程式に従う2つの領域が点 x=0 でつながっているとき,入射波・反射波・透過波を同じ角振動数 ω の複素数の波

y1=(Aie−ik1x+Areik1x)eiωt(x<0),y2=Atei(ωt−k2x)(x>0)

の実部で表す.境界の条件はすべての時刻で成り立つので eiωt が消え,Ar,At の連立1次方程式になる.答えの絶対値が振幅の比,偏角が位相のずれを表す.

弦の接続点.張力 S,線密度 μ1,μ2 の弦を質量の無い結び目でつなぎます(kj=ωμj/S).

  • 弦は切れないので,変位がつながる:y1(0,t)=y2(0,t) から Ai+Ar=At.

  • 結び目に質量が無いので,左右の弦が引く横向きの力 −S∂y1/∂x と S∂y2/∂x の和が0:∂y1/∂x=∂y2/∂x(x=0)から −ik1Ai+ik1Ar=−ik2At,つまり k1(Ai−Ar)=k2At.

2式から At を消して

ArAi=k1−k2k1+k2,AtAi=1+ArAi=2k1k1+k2

です.Zj=Sμj=Skj/ω は kj に比例するので,本体の式と一致します.エネルギーの流れ 12Zω2|A|2 から,反射率と透過率は

R=(Z1−Z2)2(Z1+Z2)2,T=Z2Z1⋅4Z12(Z1+Z2)2=4Z1Z2(Z1+Z2)2

で,R+T=1 となり,エネルギーが保存しています.結び目に質量があると Ar/Ai は複素数になり,位相が0や π 以外の値だけずれます(例題3).

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

南米沖の地震で生じた津波が,平均の水深 4.0×103m の太平洋を 1.7×104km 進んで日本の沖に届いた.津波の周期を 20 分,g=9.8ms−2 とする.

  1. 外洋での津波の速さと波長を求め,浅い水の波とみなしてよいことを確かめよ.また到達までの時間を求めよ.

  2. 外洋での振幅が 0.50m のとき,水深 10m の所での振幅をグリーンの法則で見積もれ.海岸線に沿う幅は変わらず,反射と散逸は無いとする.この見積もりの信頼性について述べよ.

南米沖から日本の沖へ向かう模式的な経路に,距離1.7×10⁴ kmを示す.下の断面では左が岸,右が外洋で,水深10 mと4.0×10³ m,外洋の振幅0.50 mを示す.周期は20分.岸での振幅や速さ,到達時間などの求める値は記さない. 南米沖から日本の沖へ向かう模式的な経路に,距離1.7×10⁴ kmを示す.下の断面では左が岸,右が外洋で,水深10 mと4.0×10³ m,外洋の振幅0.50 mを示す.周期は20分.岸での振幅や速さ,到達時間などの求める値は記さない.
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考え方 波長と水深の比 kh で浅い水か深い水かを判断する.浅い水なら v=gh.岸に近づく間はエネルギーの流れ 12ρgA2gh が一定.

  1. v=9.8×4.0×103≈2.0×102ms−1.周期 T=1.2×103s なので,波長は λ=vT≈2.4×105m=240km.kh=2π×4.0×103/(2.4×105)≈0.11 で十分小さく(tanh⁡0.11≈0.11 で,tanh⁡kh と kh の差は 0.4 % ほど),浅い水の波としてよい.到達時間は

t=1.7×1079.8×4.0×103≈8.6×104s≈24時間

である.

  1. A∝h−1/4 より

A2=0.50×(4.0×10310)1/4=0.50×4001/4≈0.50×4.47≈2.2m

である.

確かめ:水深 10m では A/h≈0.22 で,振幅が水深に比べて十分小さいとは言えず,線形の理論の限界に近い.また実際の海では,湾の形による幅の変化(A∝b−1/2),海底の急な所での反射,海底との摩擦が効く.グリーンの法則は「数倍に高くなる」という見当を与える式で,岸での波高を精密に予測するものではない.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

遠くの嵐で生じたうねりが,2.0×103km 離れた海岸に届いた.うねりは深い水の波 ω2=gk に従うとし,g=9.8ms−2 とする.

  1. 周期 12s のうねりの波長,位相速度,群速度を求めよ.

  2. 嵐で同時に生じた周期 12s と 8.0s のうねりは,海岸に何時間の差で届くか.海岸で最初に観測されるのはどちらか.

嵐から海岸までの距離は2.0×10³ km.周期12 sと8.0 sの波束を上下の独立した模式図で示す.緑の包絡線と青い山はともに海岸へ進み,山は包絡線を追い越す.上下の波束の位置は到着順を表さず,求める波長,速さ,到着時間の差は記さない. 嵐から海岸までの距離は2.0×10³ km.周期12 sと8.0 sの波束を上下の独立した模式図で示す.緑の包絡線と青い山はともに海岸へ進み,山は包絡線を追い越す.上下の波束の位置は到着順を表さず,求める波長,速さ,到着時間の差は記さない.
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考え方 エネルギー(観測される波の高まり)は群速度で届く.深い水では vg=v/2=g/(2ω) で,周期に比例する.

  1. ω=2π/12≈0.524rads−1.k=ω2/g≈0.0280m−1 で,波長 λ=2π/k≈2.2×102m.位相速度 v=ω/k=g/ω≈1.9×101ms−1,群速度 vg=g/(2ω)≈9.4ms−1.

  2. 群速度は vg=gT/(4π) と周期 T に比例する.T=8.0s では vg≈6.2ms−1.到達時間は

t12=2.0×1069.36≈2.1×105s≈59時間,t8=2.0×1066.24≈3.2×105s≈89時間

で,差は約30時間.周期の長い 12 s のうねりが先に届く.

確かめ:深い水とみなす条件は水深が波長の半分(約 110m)より深いことで,外洋では成り立つ.位相速度で計算すると到達時間は半分になってしまうが,個々の山は波束の前の端で消えるので,その速さでは何も届かない.海岸で観測するうねりの周期が時間とともに短くなっていくことから,逆に嵐までの距離を見積もることができる.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

張力 S,線密度 μ の同じ弦2本を,質量 M の小さな玉を結び目にしてつなぐ.左から y=Re[Aiei(ωt−kx)] の波が来る(Ai は正の実数,k=ωμ/S).玉は弦に垂直な向きにだけ動き,重力は無視する.

  1. 玉の位置 x=0 での2つの条件を書き,透過波の複素振幅の比 At/Ai と反射波の比 Ar/Ai を求めよ.q=Mω/(2Z),Z=Sμ を使って表せ.

  2. 反射率 R と透過率 T を求め,和が1になることを確かめよ.q=1 のとき,透過波の位相は入射波からどれだけずれるか.

  3. 振動数が低いときと高いときに,それぞれどんな反射になるか説明せよ.

同じ張力Sと線密度μの弦を質量Mの玉でつなぎ,左から波が入射する.反射は左向き,透過は右向きである.下の拡大図では玉が山の側にある瞬間を描き,左右の張力は弦に沿って外向き,横成分はともに下向きである.反射・透過の振幅比や位相,運動方程式は記さない. 同じ張力Sと線密度μの弦を質量Mの玉でつなぎ,左から波が入射する.反射は左向き,透過は右向きである.下の拡大図では玉が山の側にある瞬間を描き,左右の張力は弦に沿って外向き,横成分はともに下向きである.反射・透過の振幅比や位相,運動方程式は記さない.
解答を見る

考え方 変位がつながる条件は同じだが,力の条件は玉の運動方程式になる.複素振幅で書けば,時間で微分することは iω を掛けることになり,連立1次方程式になる.

  1. y1=(Aie−ikx+Areikx)eiωt,y2=Atei(ωt−kx) とする.変位がつながる条件は Ai+Ar=At.玉の運動方程式は,右の弦が引く横向きの力 S∂y2/∂x と左の弦が引く力 −S∂y1/∂x から

M∂2y2∂t2=S(∂y2∂x−∂y1∂x)(x=0)

である.代入すると

−Mω2At=S(−ikAt+ikAi−ikAr)

となる.Ar=At−Ai を入れると右辺は 2ikS(Ai−At) なので

AtAi=2ikS2ikS−Mω2=11+iMω2/(2kS)

である.Z=Sk/ω より Mω2/(2kS)=Mω/(2Z)=q なので

AtAi=11+iq,ArAi=AtAi−1=−iq1+iq

である.

  1. 両側の弦が同じなので,エネルギーの流れの比は振幅の比の絶対値の2乗である.

T=|11+iq|2=11+q2,R=|−iq1+iq|2=q21+q2

で,R+T=1.玉は弦からエネルギーを受け取っても同じだけ返すので,平均では吸収しない.q=1 では At/Ai=1/(1+i)=12e−iπ/4 で,透過波の振幅は 1/2 倍,位相は π/4 遅れる.エネルギーの半分が反射する.

  1. 振動数が低く q が小さいと(Mω が 2Z より十分小さい),At/Ai≈1 で波はほとんどそのまま通る.玉の慣性が弦の張力に比べて効かないからである.振動数が高く q が大きいと,At/Ai→0,Ar/Ai→−1 で固定端の反射に近づく.速く揺すられた玉は慣性のために動けず,壁のようにふるまう.

確かめ:M=0 なら q=0 で全部透過し,同じ弦をただつないだだけの結果に戻る.q の次元は kg⋅s−1/(kgs−1) で無次元である(Z=Sμ の単位は kgs−1).玉の大きさは波長より十分小さいとした.

ポイント ここまでのまとめ

  • 近い波数の2つの波の和の包絡線は vg=dω/dk で進む.

  • 次元解析:深い水 ω∝gk,浅い水 v∝gh.係数と kh の関数は決まらない.

  • 境界の条件(変位がつながる,力のつり合いか運動方程式)を複素振幅に課すと連立1次方程式になる.接続点では Ar/Ai=(Z1−Z2)/(Z1+Z2),R+T=1.

  • 結び目に質量があると反射の係数は複素数になり,位相がずれる.高い振動数ほど固定端に近づく.

15分散と波のエネルギー流の演習

波の速さを比べましょう.張力は S,線密度は μ とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

弦を y=Asin⁡(ωt−kx) が進む.v=S/μ=ω/k とし,線エネルギー密度は

e=μ2(∂y∂t)2+S2(∂y∂x)2

とする.

  1. 平均 ⟨e⟩ と仕事率 P=v⟨e⟩ を求めよ.

  2. μ=2.0×10−3kgm−1,v=80ms−1,ω=200rads−1,A=1.0×10−3m で P を求めよ.

線密度μの弦を波が右向きに進む.橙で示した微小区間の両端に,弦の接線方向に張力Sが働く. 線密度μの弦を波が右向きに進む.橙で示した微小区間の両端に,弦の接線方向に張力Sが働く.
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考え方 運動と変形のエネルギーを平均する.

  1. ∂y/∂t=Aωcos⁡(ωt−kx),∂y/∂x=−Akcos⁡(ωt−kx).Sk2=μω2 と ⟨cos2⟩=1/2 より ⟨e⟩=μω2A2/2,P=μvω2A2/2.

  2. 代入すると P=3.2×10−3W.近似条件 kA=Aω/v=2.5×10−3 は十分小さい.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

幅一定の水路を長い波が x=0 から x=L へ進む.水深は h=h1−(h1−h2)x/L,h1=100m,h2=25m,L=3.0×105m である.g=10ms−2,周期 T=2.0×103s,入口の水面変位の振幅 A1=0.10m とする.v=vg=gh,単位水面積の平均エネルギーは ρgA2/2 とする.反射・散逸はないとする.

  1. 到達時間を積分で求めよ.

  2. 出口の振幅と近似条件を求めよ.

距離Lの水路で水深が入口のh_1から出口のh_2へ直線的に減る.入口の水面変位振幅A_1と入口から出口への進行方向を示す. 距離Lの水路で水深が入口のh_1から出口のh_2へ直線的に減る.入口の水面変位振幅A_1と入口から出口への進行方向を示す.
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考え方 時間を積分し,仕事率一定.

  1. dt=dx/gh と dx=−Ldh/(h1−h2) から

t=Lg(h1−h2)∫h2h1h−1/2dh=2Lg(h1+h2)≈1.3×104s.
  1. 流れは ρgA2gh/2 なので A2/A1=(h1/h2)1/4=2,A2≈0.14m.k=2π/(Tv) から,浅水の条件 kh は最大0.010,小振幅条件 A/h は最大0.0057.緩やかな変化の条件 |dh/dx|/(kh) も最大0.050で,いずれも十分小さい.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

水面波を測定した.波数の誤差を無視し,角振動数の誤差を ±0.01rads−1 とする.g=9.80ms−2 とし,候補は浅水模型 ω2=ghk2 と深水模型 ω2=gk とする.

k(m−1)

0.25

1.00

4.00

ω(rads−1)

1.57

3.13

6.26

  1. 直線化の方法を示し,誤差を考慮して模型を選べ.

  2. k0=1.00m−1 の近くの2波 y±=Asin⁡(ω±t−k±x) の和を積にし,包絡線の速さと位相速度を求めよ.k±=k0±Δk/2,Δk/k0 は十分小さい.

横軸k,縦軸ωの座標に,表の三つの測定点を示す.角振動数の誤差は±0.01 rad s⁻¹である. 横軸k,縦軸ωの座標に,表の三つの測定点を示す.角振動数の誤差は±0.01 rad s⁻¹である.
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考え方 波数依存性と包絡線を調べる.

  1. ω2 を k または k2 に対して描く.深水の予測 1.565,3.130,6.261rads−1 は誤差の範囲内.ω2/k2 は約 39.4,9.80,2.45m2s−2 で一定ではない.深水模型が合う.

  2. ω¯=(ω++ω−)/2,Δω=ω+−ω− とすると

y++y−=2Acos⁡Δωt−Δkx2sin⁡(ω¯t−k0x).

包絡線は Δω/Δk→dω/dk=g/k0/2=vg≈1.57ms−1.位相速度は v=ω/k0=g/k0≈3.13ms−1 で群速度の2倍.条件は Δk/k0 と kA が十分小さく,kh が十分大きいことである.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

張力 S,線密度 μ1,9μ1 の長い弦を,質量のない点 x=0 で結ぶ.左から波が入射する.変位は

Y1=(Aie−ik1x+Areik1x)eiωt,Y2=Atei(ωt−k2x)

の実部で,Ai>0,μ2=9μ1,kj=ωμj/S とする.

  1. 変位の連続と力のつり合いから Ar/Ai,At/Ai を求めよ.

  2. 反射・透過の仕事率の割合 R,T と保存を確かめよ.

線密度μ_1の左側の弦と線密度9μ_1の右側の弦を,質量のないx=0の点でつなぐ.張力は共通にSで,波は左から入射する. 線密度μ_1の左側の弦と線密度9μ_1の右側の弦を,質量のないx=0の点でつなぐ.張力は共通にSで,波は左から入射する.
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考え方 複素振幅に境界条件を課し,仕事率を比較する.

  1. 連続条件は Ai+Ar=At.力のつり合いは S∂Y1/∂x=S∂Y2/∂x なので k1(Ai−Ar)=k2At.解くと

ArAi=k1−k2k1+k2=−12,AtAi=2k1k1+k2=12.

k2=3k1 を使った.反射の負の係数は位相差 π を表す.

  1. 右向き波の平均仕事率は Pj=Sωkj|Aj|2/2 である.演習1に vj=ω/kj,S=μjvj2 を入れれば得られる.よって R=|Ar/Ai|2=1/4,T=(k2/k1)|At/Ai|2=3/4,和は1となる.各波で kj|Aj| が十分小さいこと.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

質量 m の質点を間隔 d で無限に並べ,隣同士をばね定数 κ で結ぶ.列に沿う変位は yj とする.

  1. yj=Aei(ωt−kjd) の実部を代入し,0≤kd≤π での分散関係を導け.

  2. 長波長の速さ v0,角振動数の上限,kd=2π/3 での群速度を求めよ.上限を超す進行波はあるか.

質量mの質点を間隔dで並べ,隣同士をばね定数κのばねでつなぐ.中央の質点の変位y_jは列に沿う右向きを正とする. 質量mの質点を間隔dで並べ,隣同士をばね定数κのばねでつなぐ.中央の質点の変位y_jは列に沿う右向きを正とする.
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考え方 隣との位相差を残し,連続近似を調べる.

  1. md2yjdt2=κ(yj+1−2yj+yj−1).共通因子を消すと −mω2=κ(eikd+e−ikd−2)=−4κsin2⁡(kd/2).よって ω=2κ/msin⁡(kd/2) である.

  2. kd が小さければ sin⁡(kd/2)≈kd/2 より v0=dκ/m.よって ωmax=2v0/d.微分すると vg=v0cos⁡(kd/2) なので指定点では vg=v0/2.上限を超すと実数の k はなく,進行波はない.上限では vg=0 で,エネルギー流も0.連続近似には kd,線形近似には |yj+1−yj|/d が十分小さいことが必要である.

ポイント 教える人へ

  • 位相,包絡線,媒質の速さを区別させます.

  • 弦と水面波のエネルギー密度の単位を確かめます.

  • 境界の変位と力から反射の符号を問います.

  • 波長との比から近似の限界を問います.

16第25章の章末問題

波形,境界条件,音の測定を結びつけて考えましょう.特に断らない限り,波は小振幅で,媒質の吸収と散逸を無視します.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

一様な弦の範囲は x≤0 で,右端 x=0 は固定されています.波の速さを v とします.右へ進むパルスの変位は yi=F(x−vt+3d) で,d>0,A/d は十分小さいとします.関数 F は

F(s)={Acos2⁡(πs2d)|s|≤d,0|s|>d

です.

  1. 境界条件を満たす反射波を求め,t=2d/v,4d/v の合成波形を描け.

  2. t=3d/v の変位と媒質の速度を求めよ.弦全体の変位が0なら,波のエネルギーも0か.

時刻0のパルスは中心−3d,高さA,幅2dで,両端が滑らかな与えられた余弦二乗の形をもつ.速さvで原点の固定端へ向かう. 時刻0のパルスは中心−3d,高さA,幅2dで,両端が滑らかな与えられた余弦二乗の形をもつ.速さvで原点の固定端へ向かう.
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考え方 固定端で打ち消し合うように波形を反転し,速度は重ね合わせた変位の時間微分から求める.

  1. 左向きの反射波は yr=−F(−x−vt+3d) である.原点では常に yi+yr=0 となる.t=2d/v では y=F(x+d)−F(d−x).x≤0 で第2項は0なので,区間 −2d≤x≤0 に高さ A,中心 −d の正のパルスを描く.t=4d/v では y=F(x−d)−F(−x−d)=−F(x+d) となり,同じ区間に高さ −A のパルスを描く.

  2. F は偶関数なので y=F(x)−F(−x)=0.G(s)=dF/ds は奇関数なので

∂y∂t=−vG(x)+vG(−x)=−2vG(x)=πAvdsin⁡(πxd)(−d<x<0)

で,それ以外は0である.区間内の媒質は下向きに動いている.傾きと弾性エネルギーはこの瞬間0だが,運動エネルギーは残る.例えば x=−d/2 の速度は −πAv/d であり,静止していない.最大傾きの尺度 A/d が十分小さい範囲で,この重ね合わせは有効である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

同じ振動数 f の2つの固定音源が,向かい合う平面音波を出しています.右向き波と左向き波の圧力のずれは,それぞれ δp+=p∗sin⁡(ωt−kx),δp−=p∗sin⁡(ωt+kx) です.ω=2πf,k=ω/v,p∗>0 とします.マイクは時刻0に原点を通り,右向きに一定速度 u<v で動きます.

  1. マイクが記録する2つの振動数とうなりの振動数を求めよ.

  2. f=400Hz,v=320ms−1,u=4.0ms−1 で数値を求め,圧力を積の形に表せ.固定マイクでも時間的なうなりが生じるか.

同じ振動数fの固定音源が右向きと左向きの平面波を出す.マイクは時刻0に原点を通り,右向きに一定速度uで動く. 同じ振動数fの固定音源が右向きと左向きの平面波を出す.マイクは時刻0に原点を通り,右向きに一定速度uで動く.
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考え方 動くマイクの位置を各波の式に代入する.定常波の空間的な振幅分布を横切る運動が,時間的な強弱になる.

  1. x=ut を代入すると位相は (ω−ku)t,(ω+ku)t.したがって f+=f(1−u/v),f−=f(1+u/v),fbeat=f−−f+=2fu/v である.

  2. 順に 395Hz,405Hz,10Hz.和積の公式から

δp=2p∗sin⁡ωtcos⁡kut

となる.振幅の大きさ 2p∗|cos⁡kut| の極大は 0.10s ごとである.固定マイクでは δp=2p∗cos⁡kxsin⁡ωt となり,時間的なうなりはない.u→0 でうなりの振動数も0となる.ここでは u/v=0.0125 が小さいため,音の周期とうなりの周期を分けて観測できる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

両端固定の弦の有効長は ls=0.500m,線密度は μ=2.50×10−3kgm−1,張力は S=25.0N です.別に,一端閉管の有効長 la=0.425m,音速 va=340ms−1 を与えます.弦と気柱は直接には結合していません.

  1. 弦と気柱の双方で共鳴する振動数を小さい方から3つ求め,それぞれのモード番号を答えよ.

  2. 張力と線密度を変えず,弦の途中を押さえて有効長を 0.400m にする.双方の最も低い共通共鳴振動数を求めよ.

長さl_sが0.500 m,張力Sが25.0 Nの弦と,長さl_aが0.425 mの一端閉管を示す.途中を押さえた弦の有効長は0.400 mである. 長さl_sが0.500 m,張力Sが25.0 Nの弦と,長さl_aが0.425 mの一端閉管を示す.途中を押さえた弦の有効長は0.400 mである.
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考え方 固定端・閉口端・開口端の条件から,各共鳴列を作って共通部分を探す.

  1. 弦の速さは vs=S/μ=100ms−1.弦では ls=nλs/2 より fs,n=nvs/(2ls)=n×100Hz.気柱では閉口が変位の節,開口が変位の腹なので la=(2m−1)λa/4,fa,m=(2m−1)×200Hz.等しい条件は n=2(2m−1).よって共通振動数は 200,600,1000Hz,弦の番号は 2,6,10,気柱の番号は 1,2,3 である.

  2. 弦の基本振動数は 100/(2×0.400)=125Hz.125n=200(2m−1) から 5n=8(2m−1).最小の正の整数解は n=8,m=3 なので,最も低い共通振動数は 1000Hz である.共通共鳴があることは,各基本振動数が等しいことを意味しない.各モードで変位振幅と波数の積が小さく,管の有効長に端補正を含めた範囲である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

直線上の未知の位置 x=−a(a>0)に小さな音源があります.固定マイクで同じ振動数の音圧振幅 pA を測りました.候補は,平面波の pA=一定 と,吸収のない等方的な球面波の pA=B/(x+a) です.B>0 とし,音源から十分離れた範囲を測っています.表の値は丸めを除いて正確とします.

x(m)

0.00

2.00

4.00

pA(Pa)

0.600

0.300

0.200

音速 v=320ms−1,密度 ρ=1.25kgm−3,平衡圧力 p=1.00×105Pa を与えます.遠方の進行音波では I=pA2/(2ρv) です.

  1. 直線化して模型を選び,a,B を求め,第3点を検算せよ.

  2. 音響出力を求めよ.第1点の音圧だけに ±0.006Pa の誤差があるとき,第1・第2点から求める a の一次近似での不確かさを求めよ.

音源位置−aと,xが0.00,2.00,4.00 mのマイクの測定値を示す.下にxと1/p_Aの作図用座標を用意する. 音源位置−aと,xが0.00,2.00,4.00 mのマイクの測定値を示す.下にxと1/p_Aの作図用座標を用意する.
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考え方 振幅の逆数を取ると,球面波の幾何学的な減衰が直線になる.不確かさは推定式を微分して求める.

  1. 1/pA=x/B+a/B で,傾きは 1/B,切片は a/B.最初の2点から傾きは (1/0.300−1/0.600)/2.00=0.8333Pa−1m−1,切片は 1.6667Pa−1.よって B=1.20Pam,a=2.00m.第3点の予測 1.20/(4.00+2.00)Pa=0.200Pa は一致する.一定振幅の平面波模型には合わない.

  2. 距離を r=x+a とすると,出力は

P=4πr2I=2πB2ρv=2π×1.2021.25×320W=2.26×10−2W.

第1・第2点の振幅を p1,p2,間隔を d=2.00m とすれば a=dp2/(p1−p2).p2 は正確なので Δa≈−dp2Δp1/(p1−p2)2.不確かさは 2.00×0.300×0.006/0.3002m=0.04m.この展開では |Δp1|/(p1−p2)=0.020 の小ささを使う.また pA/p≤6.0×10−6 で音の線形近似に整合し,出力は距離によらない.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

水面の平面波が,水平面内の境界 z=0 を越えて,波の速さ v1=0.600ms−1 の領域から v2=0.300ms−1 の領域へ進みます.境界の法線は +z 向きです.振動数 f=10.0Hz の2波を,法線の左右から入射角 30.0∘ で入射させます.透過後の変位振幅はともに A=1.0×10−4m で,原点での第2波の位相は第1波より π/3 進んでいます.y は鉛直な水面変位,x は境界に沿う座標です.第1波は +x 向き,第2波は −x 向きの波数成分をもち,第1波の原点での位相を ωt とします.

  1. 透過波の屈折角 θ2 と波長 λ2 を求め,2波の変位を式にせよ.

  2. 合成波を積の形にし,x≥0 で原点に近い2本の節線の位置と,隣り合う節線の間隔を求めよ.

水平面内の境界z=0を上から見る.z軸の正方向と境界の法線は上向きで,z>0の入射側の速さはv_1,z<0の透過側の速さはv_2である.二つの波はz成分が負の方向へ,法線の左右から30.0°で入射する. 水平面内の境界z=0を上から見る.z軸の正方向と境界の法線は上向きで,z>0の入射側の速さはv_1,z<0の透過側の速さはv_2である.二つの波はz成分が負の方向へ,法線の左右から30.0°で入射する.
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考え方 境界に沿う位相の連続から屈折角を決め,透過後の位相差に初期位相差を足す.

  1. 境界に沿う波数成分が等しいので k1sin⁡30.0∘=k2sin⁡θ2.振動数は共通だから sin⁡θ2=(v2/v1)sin⁡30.0∘=1/4,θ2=14.5∘.λ2=v2/f=0.0300m.k2=2π/λ2 とすれば

y1=Asin⁡[ωt−k2(xsin⁡θ2+zcos⁡θ2)],y2=Asin⁡[ωt−k2(−xsin⁡θ2+zcos⁡θ2)+π/3].
  1. 和積の公式で

y1+y2=2Acos⁡(k2xsin⁡θ2+π/6)sin⁡(ωt−k2zcos⁡θ2+π/6)

となる.節線は k2xsin⁡θ2+π/6=π/2+nπ.よって x=λ2(n/2+1/6)/sin⁡θ2,x≥0 では n=0,1,… であり,最初の2本は x=0.0200,0.0800m.間隔は λ2/(2sin⁡θ2)=0.0600m である.位相差を変えると節線は平行移動するが間隔は変わらない.各波の傾きの尺度 k2A=0.021 は小さく,合成しても小振幅の範囲である.

演習 6

オリジナル ★★☆☆☆

有効長 l の両端開管で,最初の5つのモードが同時に鳴っています.音速は v=330ms−1 です.開口を x=0,l とし,変位を

ξ(x,t)=∑n=15Ancos⁡(nπxl)sin⁡(nω1t+ϕn),ω1=πvl

とします.A>0,各 ϕn は一定で,平衡時の気体の密度を ρ とします.音圧は δp=−ρv2∂ξ/∂x です.中央 x=l/2 の小さなマイクでは,300,900,1500Hz の3成分だけが検出されました.

  1. 管の長さを求めよ.中央のスペクトルを見て,一端閉管だと結論してよいか.

  2. マイクを x=l/4 へ移したとき,検出される振動数を求めよ.音圧の2乗の周期平均は,中央の値の何倍か.マイクは音場を乱さないとします.

長さlの両端開管で,中央l/2と移動先l/4のマイク位置を示す.中央では300,900,1500 Hzの三つの成分が観測された. 長さlの両端開管で,中央l/2と移動先l/4のマイク位置を示す.中央では300,900,1500 Hzの三つの成分が観測された.
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考え方 励起されたモードでも,マイクがその音圧の節にあると検出されない.異なる振動数の成分は周期平均で交差項が消える.

  1. 微分すると

δp=P∗∑n=15sin⁡(nπxl)sin⁡(nω1t+ϕn),P∗=ρv2πAl.

中央では sin⁡(nπ/2)=0 となる偶数モードが消える.残るのは n=1,3,5 なので f1=300Hz,l=v/(2f1)=0.550m.奇数倍の成分だけを測っても,閉管の共鳴列か,開管を特定の位置で測った結果かは区別できない.

  1. sin⁡(nπ/4) は n=4 でだけ0になる.検出されるのは 300,600,900,1500Hz.T1=2π/ω1 で平均すると ⟨δp2⟩=P∗2∑n=15sin2⁡(nπx/l)/2.中央は 3P∗2/2,l/4 は (1/2+1+1/2+0+1/2)P∗2/2=5P∗2/4.比は 5/6 である.この局所的な音圧の2乗を,そのまま定常波のエネルギー流とはみなさない.線形近似には,5成分を足した最大の |∂ξ/∂x| が十分小さいことが必要である.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

断面積 A,長さ l の一端閉管で,閉口は x=0,開口は x=l です.音速 v,密度 ρ とし,端補正を無視します.2つのモードを

ξ=Asin⁡qxsin⁡ωt+A3sin⁡3qxsin⁡3ωt,q=π2l,ω=vq

のように励起しました.音圧は δp=−ρv2∂ξ/∂x,運動と圧縮のエネルギー密度は,それぞれ eK=ρ(∂ξ/∂t)2/2,eU=ρv2(∂ξ/∂x)2/2 です.

  1. 閉口での音圧を求め,その絶対値の最大値を求めよ.各成分の振幅の和に等しいか.

  2. 各モードの全エネルギーと,両者のエネルギーの比を求めよ.音圧の最大値だけからエネルギー配分を決められるか.

断面積𝒜,長さlの一端閉管を示す.閉口をx=0,開口をx=lとし,2成分の変位振幅はAとA/3である. 断面積𝒜,長さlの一端閉管を示す.閉口をx=0,開口をx=lとし,2成分の変位振幅はAとA/3である.
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考え方 時間的な最大値は位相を含めて求める.エネルギーは各モードを空間積分し,直交性で交差項を消す.

  1. P∗=ρv2Aq とすると δp(0,t)=−P∗(sin⁡ωt+sin⁡3ωt).s=sin⁡ωt とおけば sin⁡ωt+sin⁡3ωt=4s(1−s2).微分は 4−12s2 なので,−1≤s≤1 で絶対値が最大なのは s=±1/3.よって

|δp|max=8P∗33

であり,振幅の和 2P∗ より小さい.2成分が同時に正または負の最大値を取る時刻がないためである.

  1. 第 n 成分の変位振幅を An,角振動数を ωn とする.∫0lsin2⁡(nqx)dx=∫0lcos2⁡(nqx)dx=l/2(n=1,3)から

EK,n=ρAlωn2An24cos2⁡ωnt,EU,n=ρAlωn2An24sin2⁡ωnt.

したがって En=ρAlωn2An2/4.ω3=3ω,A3=A/3 より E1=E3=ρAlω2A2/4.異なる成分の積の空間積分は0なので,全エネルギーはこの和である.音圧の瞬間最大値は位相でも変わるが,各モードのエネルギーは変わらず,最大値だけでは配分は決まらない.エネルギーの次元は J となり,圧縮の最大尺度 2Aq が小さい範囲である.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

一様な弦の両端 x=0,l を固定し,張力 S,線密度 μ,波の速さ v=S/μ とします.分布した外力で弦を y0(x)=4ax(l−x)/l2 に曲げ,時刻0に外力を取り去ります.初速度は全点で0,a/l は十分小さいとします.

  1. y=∑n=1∞Bnsin⁡(nπx/l)cos⁡(nπvt/l) と表し,係数 Bn を求めよ.

  2. 弦全体の変位が同時に0になる最初の正の時刻と,初期波形の上下を反転した形になる最初の時刻を求めよ.

  3. 初期の弾性エネルギーを積分し,基本振動が占める割合を求めよ.各モードのエネルギーは En=μl(nπv/l)2Bn2/4 です.

両端固定の長さlの弦の初期波形は与えられた放物線で,中央の高さはaである.両端の張力Sと,全点で初速度0の条件を示す. 両端固定の長さlの弦の初期波形は与えられた放物線で,中央の高さはaである.両端の張力Sと,全点で初速度0の条件を示す.
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考え方 初期変位を正弦級数に分ける.残るモードの位相をそろえて,弦全体の形を判定する.

  1. qn=nπ/l とおく.直交性から Bn=(2/l)∫0ly0sin⁡qnxdx.y0(0)=y0(l)=0,d2y0dx2=−8a/l2 を使って2回部分積分すると

∫0ly0sin⁡qnxdx=−1qn2∫0ld2y0dx2sin⁡qnxdx=8al2qn3[1−(−1)n].

よって Bn=16a[1−(−1)n]/(n3π3).偶数モードは0,奇数モードは 32a/(n3π3) である.

  1. t=l/(2v) では,すべての奇数 n に対して cos⁡(nπ/2)=0.全変位は0になる.全変位0には直交性から基本成分も0でなければならず,これが最初の正の時刻である.t=l/v では cos⁡nπ=−1 なので y=−y0.基本成分が初めて符号反転した最大値になる時刻でもあり,これも最初である.全変位0の時刻に弦全体が静止するわけではない.

  2. 初期には速度0なので

E=S2∫0l[4al(1−2x/l)]2dx=8Sa23l.

基本成分は B1=32a/π3 だから E1=256Sa2/(lπ4),E1/E=96/π4≈0.986.高いモードも波形には必要だが,エネルギーの大部分は基本振動に入る.全エネルギーは Sa2/l の次元をもち,初期の最大傾き 4a/l が十分小さいことを近似に使った.

17第25章の発展問題

伝播の遅れ,分散,動く境界や異なる振動系の接続を扱います.必要な模型は問題文で与えるので,適用条件を確かめながら,波形とエネルギーの両方から考えてください.

演習 1

東京大 2010 前期(改題) ★★★★☆

静止した空気中で,振動数 f0 の音源が (x,z)=(ute,0) を右へ進みます.te は放射時刻,0<u<v,v は音速です.音源は必要な時刻より前から鳴り続けています.観測者は O=(0,H),固定中継器は M=(D,0) にあり,H,D>0 です.中継器は受け取った音を一定時間 τ≥0 後にスピーカーから出し,受信した位相をそのまま再現します.観測者は直接音と中継音を分離して記録できます.反射,中継器への音の回り込み,風は無視します.

  1. 直接音の放射時刻 te と受信時刻 t の関係を書き,瞬時振動数 fd(t) を求めよ.中継音を最初に出した音源の時刻を ts とし,uts<D の範囲で中継音の瞬時振動数 fr を求めよ.

  2. t∗=H/v における両音の振動数差を b>0 とする.b から u を決めよ.f0=600Hz,v=340ms−1,b=12.0Hz で評価せよ.

  3. 直接音が x=−a と x=a(a>0)で放射された2つの時刻に対応する受信時刻を t−,t+ とする.この間は中継器への接近が続くとして,両音の相対位相が何周期分進むか求めよ.

  4. u/v が小さいときの b の一次近似を示し,その相対誤差を求めよ.瞬時振動数の差を,いつでも一定のうなりとみなしてよいか.

右向きに動く音源の放射位置ut_eとut_sを分けて示す.観測者Oは高さH,中継器Mはx=Dにあり,直接経路と遅延τを伴う中継経路で音を受け取る. 右向きに動く音源の放射位置ut_eとut_sを分けて示す.観測者Oは高さH,中継器Mはx=Dにあり,直接経路と遅延τを伴う中継経路で音を受け取る.
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考え方 2つの経路で同じ受信時刻に届く音は,別々の放射時刻をもつ.位相の時間微分と,相対位相の累積を分けて求める.

  1. R(te)=H2+u2te2 とすれば t=te+R(te)/v.dR/dte=u2te/R だから

fd=f0dtedt=f01+u2te/(vR).

u<v なので分母は正で,時刻の対応は一対一である.中継器と観測者の距離を RM=D2+H2 とすると

t=ts+D−utsv+τ+RMv=(1−u/v)ts+D+RMv+τ.

中継音の位相は 2πf0ts なので fr=f0/(1−u/v).固定遅延は位相に影響するが,この接近区間の振動数には影響しない.

  1. t=t∗ の直接音は te=0 に出ており,fd=f0.中継音の ts=(H−D−RM−vτ)/(v−u)<0 は接近区間にある.よって b=fr−f0=f0u/(v−u).これを解いて u=vb/(f0+b).数値は 340×12.0/612.0ms−1=6.67ms−1 である.

  2. 直接経路の長さは両端で同じ H2+a2 なので,t+−t−=2a/u,te,+−te,−=2a/u.一方,中継経路の時刻式から ts,+−ts,−=2a/[u(1−u/v)].中継音の位相から直接音の位相を引いた量の増分を 2π で割ると

N=f0[2au(1−u/v)−2au]=2af0v−u.

これは相対位相の進みを周期数で表した実数であり,振幅の極大を数えた整数とは端点の位相に応じて異なる.

  1. ϵ=u/v とすると b=f0ϵ/(1−ϵ)≈f0ϵ.一次近似値は厳密値より小さく,厳密値を分母とする相対誤差は −ϵ.数値では ϵ=0.0196,誤差の大きさは約2.0 %である.一般には fd(t) が変わるため振動数差も変わり,一定のうなりではない.局所的なうなりの観測には,音の周期より長く,差の振動数が変化する時間より短い窓が必要で,その窓内に十分な強弱の周期が入ることも要る.位相の瞬時微分を音高とみなす条件は u/(f0R) が十分小さいことであり,速度についての一次近似にはさらに u/v の小ささが必要である.

演習 2

東京大 1994 後期(改題) ★★★★☆

音を反射する鉛直な平面壁を x=0,地面を z=0 とします.音源は壁から未知の距離 a>0 の鉛直線を上向きに動き,高さ h>0 で短い音を出しました.その瞬間の上向き速度は u,音源自身の振動数は f0 です.観測者は (a+d,0),d>0 は既知です.風はなく,音速は v,0<u<v とします.地面からの反射は無視し,壁での鏡面反射だけを考えます.直接音と壁からの反射音は分離でき,振動数は fd,fr,反射音の到着の遅れは Δ>0 と測定されました.音を出す間の高さと速度の変化は,まず無視します.

  1. 反射を壁の向こうの鏡像音源で表し,2つの経路長 Rd,Rr と受信振動数を求めよ.

  2. ηd=f0/fd−1,ηr=f0/fr−1,q=ηd/ηr を使い,h,u,a を測定値で表せ.この模型と両立するための条件も述べよ.

  3. 音源の発音時間を τb,その間の加速度の大きさの上限を α とする.多くの音の周期を含む短い発音として(1)を使い,2つの音を時間的に分離する条件を示せ.h→0 でこの逆算のどこが不安定になるかも調べよ.

壁x=0,音源(a,h),観測者(a+d,0)を示す.音源の速度uは上向きである.音は直接経路と壁で1回反射する経路を進む.壁の向こうの鏡像音源(−a,h)と,対応する補助線を薄い破線で示す. 壁x=0,音源(a,h),観測者(a+d,0)を示す.音源の速度uは上向きである.音は直接経路と壁で1回反射する経路を進む.壁の向こうの鏡像音源(−a,h)と,対応する補助線を薄い破線で示す.
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考え方 経路長の時間変化がドップラー効果を決める.振動数の比で経路長の比を求め,到着時間差で絶対的な長さを決める.

  1. 鏡像は (−a,h) にあり,実際の音源と同じ上向き速度をもつ.したがって

Rd=d2+h2,Rr=(2a+d)2+h2.

どちらも音源が上へ動くと伸び,放射時刻 te に関して dRj/dte=uh/Rj.受信時刻は t=te+Rj/v なので

fd=f01+uh/(vRd),fr=f01+uh/(vRr),vΔ=Rr−Rd.

壁の一定の反射位相は振動数を変えない.Rr>Rd だから fd<fr<f0 となる.

  1. ηj=uh/(vRj) より q=Rr/Rd>1.時間差の式と合わせると

Rd=vΔq−1,Rr=qRd,h=Rd2−d2,
u=vRdηdh,a=Rr2−h2−d2.

測定値は ηd>ηr>0,Δ>0,Rd>d,0<Rdηd/h<1 を満たす必要がある.前の条件から最後の式の a も正になる.経路長は vΔ の次元をもち,速度も v の次元で得られる.

  1. 発音中に h と u を一定とみなす十分条件は,uτb/h,ατb/u がともに十分小さいことである.一方,音高を測るためには f0τb が十分大きい必要がある.受信する音の長さは一次近似で τb(1+ηd),τb(1+ηr).例えば τb(1+ηd)/Δ を十分小さくすれば,両音を分離できる.h→0 では ηd,ηr→0 となり,q は小さな測定値同士の比になる.さらに h=Rd2−d2 は近い数の差で,Δh/h≈RdΔRd/h2 の誤差増幅がある.高さ0では鉛直速度が視線に直交し,この瞬間の振動数から u を決めることはできない.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

深い水の重力波は ω(k)=gk に従います.g は重力加速度で,表面張力を無視します.0<q<k0 とし,波数 k0,k0+q,k0−q の3波を,振幅 A,A/2,A/2,時刻0・原点で同位相として右向きに重ねます.すなわち

y=Asin⁡(ω0t−k0x)+A2sin⁡(ω+t−(k0+q)x)+A2sin⁡(ω−t−(k0−q)x)

で,ω0=ω(k0),ω±=ω(k0±q) です.q/k0 は十分小さいとします.

  1. k0 のまわりで ω を2次まで展開し,vg=dω/dk,β=d2ωdk2 を求めよ.

  2. X=x−vgt,δ=βq2/2 とおく.2次近似で,速い振動の包絡振幅 B(X,t) を求めよ.初め包絡振幅が0の X=π/q は,その後も0か.

  3. 初めの包絡振幅の極大位置 X=0 と極小位置 X=π/q の役割が初めて完全に入れ替わる時刻を求めよ.その時刻まで2次展開を使える条件を,省いた位相から確かめよ.

時刻0の波形y=−A(1+cos qx)sin k_0xを示す.速い振動の波長2π/k_0と,遅い包絡線の間隔2π/qを記す.波は右向きに進む. 時刻0の波形y=−A(1+cos qx)sin k_0xを示す.速い振動の波長2π/k_0と,遅い包絡線の間隔2π/qを記す.波は右向きに進む.
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考え方 分散関係の1次の項は包絡線の移動を,2次の項は波数の異なる成分の位相のずれを生む.

  1. 微分すると vg=ω0/(2k0),β=−ω0/(4k02).したがって ω±≈ω0±vgq+βq2/2.位相速度 v=ω0/k0 に対して vg=v/2 である.

  2. 実際の変位を,次の複素量の実部で表す.

Y=−iAei(ω0t−k0x)[1+12eiδt−iqX+12eiδt+iqX]=−iAei(ω0t−k0x)[1+eiδtcos⁡qX].

よって包絡振幅は

B2=A2[1+cos2⁡qX+2cos⁡qXcos⁡δt].

X=0 では B=2A|cos⁡(δt/2)|,X=π/q では B=2A|sin⁡(δt/2)|.初め0の場所にも時間とともに振幅が生じ,単に初期包絡線を vg で移動するだけではない.この包絡線の0を,定常波の永久的な節と混同しない.

  1. 完全な入れ替わりは初めて |δ|t∗=π となるときである.そのとき B=A|1−cos⁡qX|=A(1−cos⁡qX) なので

t∗=2π|β|q2=8πk02ω0q2.

3階微分は d3ωdk3=3ω0/(8k03).省いた各側波の角振動数の先頭項は ±ω0q3/(16k03) なので,t∗ までに蓄積する位相誤差の大きさは πq/(2k0).これが十分小さければ入れ替わりの予測は有効である.長時間では小さな角振動数誤差も累積するため,q/k0 だけでなく位相誤差を確かめる必要がある.深水の条件は最小波数でも (k0−q)h が十分大きいことであり,線形近似には Ak0 の小ささも必要である.ここで h は水深である.

演習 4

オリジナル ★★★★★

鉛直な縄を上端で支え,下端に質量 m0=μ0a のおもりを付けます.下端から上へ x を測り,0≤x≤l の線密度は μ(x)=μ0ex/a です.a,μ0>0,重力加速度は g,伸びを無視します.静的な張力を S(x) とすると,横変位の線形な方程式は

μ(x)∂2y∂t2=∂∂x[S(x)∂y∂x]

です.上端では横波を吸収できる装置を用い,下端の駆動で右向き,すなわち上向きに進む成分を作ります.おもりは静的な張力を定める役割をもち,下端の駆動変位は外から指定します.

  1. S(x) と局所的な速さ v0=S(x)/μ(x) を求めよ.

  2. y=e−x/(2a)ψ と置いて ψ の方程式を導き,ψ を Cei(ωt−kx) の実部とする波の分散関係を求めよ.実数の k をもつ波の角振動数の下限を求めよ.

  3. k>0 の狭い波数帯をもつ波束の伝播時間と,変位振幅の上下端での比を求めよ.平均仕事率 P=−⟨S∂y/∂x∂y/∂t⟩ が高さによらないことも確かめよ.

  4. 局所速さだけから見積もる l/v0 と波束の時間を比べ,両者が近い条件と先頭の相対補正を求めよ.

長さlの縄の線密度はμ(x)=μ_0e^(x/a)で,下端のおもりはm_0=μ_0aである.下端の駆動が上向きに波を送り,上端の装置が波を吸収する. 長さlの縄の線密度はμ(x)=μ_0e^(x/a)で,下端のおもりはm_0=μ_0aである.下端の駆動が上向きに波を送り,上端の装置が波を吸収する.
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考え方 張力の変化は,速さの比だけでなく運動方程式の空間微分にも現れる.振幅の高さ依存を取り除いてから,伝播とエネルギーを調べる.

  1. 高さ x の張力はその下にある質量の重さなので

S(x)=g[m0+∫0xμ0es/ads]=μ0agex/a.

したがって v0=ag は高さによらない.

  1. 方程式を μ で割ると ∂2y∂t2=v02(∂2y∂x2+a−1∂y/∂x).置換後は

∂y∂x=e−x/(2a)(∂ψ∂x−ψ2a),∂2y∂x2=e−x/(2a)(∂2ψ∂x2−1a∂ψ∂x+ψ4a2).

代入して ∂2ψ∂t2=v02(∂2ψ∂x2−ψ/(4a2)).調和解から

ω2=v02(k2+14a2),ωc=v02a=12ga.

実数の k は ω≥ωc で存在し,進行する波には ω>ωc が必要である.下限未満では k は純虚数になり,この模型の進行波ではない.

  1. 群速度は vg=dω/dk=v02k/ω なので,波束の時間は tg=lω/(v02k).y=A0e−x/(2a)cos⁡(ωt−kx) と書くと,振幅比は A(l)/A(0)=e−l/(2a).位相を θ=ωt−kx として

∂y∂t=−ωA(x)sin⁡θ,∂y∂x=−A(x)2acos⁡θ+kA(x)sin⁡θ.

⟨sin⁡θcos⁡θ⟩=0,⟨sin2⁡θ⟩=1/2 から

P=12S(x)ωkA(x)2=12μ0agωkA02.

変位振幅は減っても,仕事率は保存されている.

  1. 比は tg/(l/v0)=ω/(v0k)=1+1/(4a2k2).1/(ka) が十分小さいと

tg≈lv0(1+18a2k2).

局所速さの見積もりは短すぎ,角振動数が下限に近づくと vg→0 になって大きく外れる.狭い波数帯には Δk/k の小ささが必要で,小振幅近似には A0k2+1/(4a2) の小ささが必要である.伝播時間の見積もりには,さらに 1/(ka) が小さいことを使った.

演習 5

オリジナル ★★★★★

長さ 2l,張力 S,線密度 μ の弦を x=−l,l で固定し,中央を質量 M のピストンに軽い剛い棒でつなぎます.棒は弦中央の横変位 Y(t)=y(0,t) を,管の入口のピストン変位に同じ向き・同じ大きさで伝えます.管の断面積は A,平衡長は L,奥は固定壁です.管に沿って奥向きに z を測り,ピストンが奥へ動くとき Y>0 とします.気体の密度 ρ,音速 va,平衡圧力 p,比熱比 γ を与え,ρva2=γp とします.ピストンの外側は平衡圧力 p に保たれ,平衡の力は相殺しています.

弦の速さは vs=S/μ,気体の変位は ξ(z,t),音圧は δp=−ρva2∂ξ/∂z です.気体は断熱的に振動し,摩擦・漏れ・散逸を無視します.

  1. Y≠0 の左右対称な調和モードを考える.ks=ω/vs,ka=ω/va とし,sin⁡ksl≠0,sin⁡kaL≠0 の範囲で,弦と気体の変位を中央の複素振幅 Y0 で表せ.

  2. 中央へ働く弦の力と気体の力を求め,角振動数 ω を決める方程式を導け.

  3. 弦が左右反対向きに振動する反対称モードで,気体が静止するものの振動数を求めよ.ピストンに力が残らないことを確かめよ.

  4. ωl/vs,ωL/va がともに十分小さいモードについて,ω2 の先頭の近似を求めよ.気体を単なるばね,弦を単なる2本のばねとする近似の次に,どんな慣性が現れるか,エネルギーからも確かめよ.qcot⁡q=1−q2/3+4次以降 を使えます.

x=−lとx=lで固定した弦の中央を,軽い剛い棒で質量Mのピストンにつなぐ.断面積𝒜,平衡長Lの管の奥は固定壁で,座標zと変位Yの正方向はともに管の奥向きである. x=−lとx=lで固定した弦の中央を,軽い剛い棒で質量Mのピストンにつなぐ.断面積𝒜,平衡長Lの管の奥は固定壁で,座標zと変位Yの正方向はともに管の奥向きである.
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考え方 接続点では変位を共通にし,張力と圧力の力をピストンの運動方程式へ入れる.固有振動でも,接続点を節と決めつけない.

  1. y,ξ をそれぞれ y^eiωt,ξ^eiωt の実部で表す.両端固定,奥の固定壁,接続点の変位条件から

y^(x)=Y0sin⁡[ks(l−|x|)]sin⁡ksl,ξ^(z)=Y0sin⁡[ka(L−z)]sin⁡kaL.

これらは各区間の波動方程式と,y^(0)=ξ^(0)=Y0,y^(±l)=ξ^(L)=0 を満たす.

  1. 中央の左右の傾きは +ksY0cot⁡ksl,−ksY0cot⁡ksl.張力の横成分を足すと,弦の力の複素振幅は −2SksY0cot⁡ksl.気体については ∂ξ^/∂z|z=0=−kaY0cot⁡kaL なので,入口の音圧は ρva2kaY0cot⁡kaL.圧力はピストンを外へ押すから,力は −Aρva2kaY0cot⁡kaL.ピストンの運動方程式から

Mω2=2Skscot⁡ksl+Aρva2kacot⁡kaL.

これが指定した Y0≠0 の対称モードの条件である.分母が0の特殊なモードは,この式で割り算をする前の境界条件から別に調べる必要がある.

  1. 反対称な弦の形は y=Csin⁡(nπx/l)cos⁡ωnt,n=1,2,… と書ける.中央は変位0で,ωn=nπvs/l,fn=nvs/(2l).中央の左右の傾きは等しいので S[∂y/∂x|0+−∂y/∂x|0−]=0.気体を ξ=0 とすれば圧力のずれも0で,ピストンは静止できる.したがってこの一群の振動数は気柱と M によらない.

  2. kscot⁡ksl≈1/l−ks2l/3,kacot⁡kaL≈1/L−ka2L/3 を(2)に代入すると

(M+2μl3+AρL3)ω2≈2Sl+Aρva2L.

よって

ω2≈2S/l+γpA/LM+2μl/3+AρL/3.

低い振動数では y≈Y(1−|x|/l),ξ≈Y(1−z/L).その運動エネルギーは

EK=12[M+2μ∫0l(1−x/l)2dx+ρA∫0L(1−z/L)2dz](dYdt)2=12(M+2μl3+ρAL3)(dYdt)2.

弦と気体の弾性エネルギーは EU=(2S/l+ρva2A/L)Y2/2 なので,同じ角振動数が得られる.分母には動く弦と気体の有効質量が現れる.得られた ω を使って ωl/vs,ωL/va の小ささを事後に確かめる必要があり,M→0 でこの条件を満たさないなら近似式は使えない.さらに |Y|/l,|Y|/L,および管の横寸法と音の波長の比が小さく,振動中の熱交換が断熱近似を破らない範囲を前提とした.

18第25章のまとめ

この章では,弦・空気・水面の波を使って,波を語る言葉を作りました.出発点は第7章の連成振動で,ばねでつないだおもりの列の間隔を細かくした極限から波動方程式が出ます.波動方程式は線形なので,重なった波の変位は足し算になり,そこからうなりと干渉が出てきます.端で何が決まっているか(境界条件)を課すと,行きの波と帰りの波が定常波を作り,弦や気柱の振動数は飛び飛びのモードに限られます.どんな運動もモードの和で書け,その混ざり方(スペクトル)が音色を決めます.最後に,波が運ぶエネルギーの流れと,速さが波長で変わる分散のある波を扱い,エネルギーは群速度で運ばれることを見ました.

定義と法則

定義 波,横波と縦波

媒質のある所に生じた変形が,媒質を次々に伝わっていく現象を波という.媒質の各部分はもとの位置のまわりを行き来するだけで,運ばれるのは変形の形とエネルギーである.変位が進む向きに垂直な波を横波(弦の波),平行な波を縦波(音)という.縦波では密部と疎部が交互に並んで進む.

法則 1次元の波動方程式

∂2y∂t2=v2∂2y∂x2

v は「隣を押す強さ」と「慣性」の比の平方根で,波の速さである.

  • ばねの列(質量 m,ばね定数 K,間隔 a):v=aK/m.波長が a よりずっと長いときの近似で,誤差の目安は (ka)2/12.

  • 弦(張力 S,線密度 μ):v=S/μ.

  • 音(断熱変化):v=γp/ρ=γRT/Mmol.音速は圧力によらず,絶対温度の平方根に比例する.

y=F(x−vt) は形 F によらず解で,形を保って右へ進む波である.G(x+vt) は左へ進む波で,一般の解はこの2つの和である.どれも傾き |∂y/∂x| や |δp|/p が1よりずっと小さい小振幅の近似である.

公式 正弦波と音の圧力

y=Asin⁡(ωt−kx),k=2πλ,ω=2πT=2πf,v=fλ=ωk

ωt−kx を位相という.音の変位 ξ について δρ/ρ=−∂ξ/∂x,δp=−γp∂ξ/∂x=−ρv2∂ξ/∂x で,変位の節が圧力の腹になる.

法則 重ね合わせの原理

線形な波動方程式に従う媒質では,2つ以上の波が同じ場所に来たときの変位は,それぞれの波が単独で来たときの変位の和になる.重なったあと,それぞれの波は元の形のまま進む.大振幅では近似でしか成り立たない.

法則 うなり

振動数 f1,f2 の近い2つの音を重ねると,音の大きさが1秒に fbeat=|f1−f2| 回の割合で強弱を繰り返す.振幅は A1+A2 と |A1−A2| の間を行き来し,強さを長い時間で平均すると A12+A22 に比例する.

法則 ドップラー効果

空気に対する音速を v,音源から観測者へ向かう向きを正として,音源と観測者の速度の成分を us,uo とすると

f=f0v−uov−us

の振動数で聞こえる.速度はすべて空気に対するもので,風があれば v を v+w にする.斜めに動くときは,音を出した時刻の視線方向の成分を使う.音源が音より速いと,波面の包絡面が半頂角 sin⁡α=v/us の円錐になり,衝撃波ができる.

法則 端での反射と定常波

  • 固定端(変位が0):反射波の位相が π ずれる.自由端(傾きが0):同じ位相で戻る.

  • 気柱の閉口端は変位の節・圧力の腹,開口端は変位の腹・圧力の節.開口端補正は半径 r の管でおよそ 0.6r.

  • 逆向きに進む同じ振幅の波の和 y=−2Asin⁡kxcos⁡ωt は進まない定常波で,節の間隔は λ/2,節と腹の間隔は λ/4.平均すると正味のエネルギーは運ばれない.

定理 弦と気柱のモード

  • 両端固定の弦:λn=2l/n,fn=nv2l=n2lSμ(n=1,2,3,…).n=1 が基本振動.

  • 開管:f=nv/(2l).閉管:f=(2n−1)v/(4l) で奇数倍だけ.開口端補正は開いた端ごとに l に足す.

1つ1つのモードは独立な振動子で,弦や気柱は多くの振動数で共鳴する.弦のどんな運動もモードの重ね合わせで,全体は周期 2l/v で繰り返す.

法則 屈折の法則と干渉

  • 境界の両側で振動数は変わらず,sin⁡θ1sin⁡θ2=v1v2=λ1λ2.反射角は入射角に等しい.

  • 2つの波源の干渉では,位相差 δ=k(r1−r2)+α が 2mπ で強め合い,(2m+1)π で弱め合う.合成の振幅は B2=A12+A22+2A1A2cos⁡δ で,弱め合う所も振幅が等しいときだけ0になる.節線は経路差が一定の双曲線である.

定義 倍音とスペクトル

基本振動数 f1 の整数倍 nf1 の成分を倍音といい,各成分の振幅(または強さ)を振動数に対して並べたものをスペクトルという.音の高さは基本振動数で,音色は主にスペクトルの形で決まる.音程は振動数の比で決まり,オクターブは2,完全5度は 3/2,完全4度は 4/3,平均律の半音は 21/12 である.

定理 波のエネルギーの流れ

弦のエネルギー密度は e=μ2(∂y/∂t)2+S2(∂y/∂x)2,左から右へ渡す仕事率は P=−S∂y/∂x∂y/∂t である.形を変えずに進む波では運動と弾性のエネルギーが等しく,P=ev.正弦波では ⟨P⟩=12Zω2A2 で,Z=μv=Sμ を弦のインピーダンスという.

定義 分散関係と群速度

ei(ωt−kx) の形の波について,運動方程式から決まる ω と k の関係を分散関係という.v=ω/k を位相速度といい,ω/k が k によって変わる波を分散のある波という.波束の包絡線が進む速さ vg=dω/dk を群速度といい,分散のある波ではエネルギーは群速度で運ばれる(P=⟨e⟩vg).

定理 接続点での反射と透過

インピーダンス Z1,Z2 の弦の接続点では

ArAi=Z1−Z2Z1+Z2,AtAi=2Z1Z1+Z2

で,反射率 R=(Ar/Ai)2,透過率 T=(Z2/Z1)(At/Ai)2 の和は1である.Z2→∞ が固定端,Z2→0 が自由端,Z1=Z2 なら反射しない.

手順

ポイント 波の問題を解く手順

  1. 波形が与えられたら,y-x 図(波の写真,山から山が λ)か y-t 図(1点の記録,山から山が T)かを確かめる.媒質の動く向きは,波形を進む向きに少しずらして決める(∂y/∂t=−v∂y/∂x).

  2. うなりの回数からは振動数の差の大きさだけが分かる.振動数を少し動かしてうなりが増えるか減るかで,差の符号を決める.

  3. ドップラー効果では,音源から観測者へ向かう向きを正として us,uo を符号つきで書き,空気に対する速度に直す.反射体は,まず観測者として受け取り,次にその振動数の音源として出す.

  4. 定常波とモードでは,境界条件から節と腹の位置を先に決め,長さと λ/4 や λ/2 の関係を図に描く.気柱の共鳴の位置の差をとると開口端補正が消える.

  5. 境界の反射と透過は,複素振幅に「変位がつながる」「力がつり合う」の2条件を課して解く.

主な公式

  • 媒質の速度の最大値 Aω と波の速さ v は別で,比 Ak は傾きの最大値

  • 音の強さ:I=12ρvω2A2=pA22ρv,pA=ρvωA.レベル L=10log10⁡(I/I0)dB,I0=1.0×10−12Wm−2.点音源では P=4πr2I

  • 等振幅のうなり:2Acos⁡(ω1−ω22t)cos⁡(ω1+ω22t)

  • ドップラー効果の近似:us,uo が v より十分小さければ f≈f0[1+(us−uo)/v].動く人が壁の反射音と聞くうなりの回数は f0⋅2u/(v−u)≈2uf0/v

  • はじいた弦(端から b を高さ a まで引く):Bn=2al2π2b(l−b)⋅1n2sin⁡nπbl.はじいた点が節のモードは鳴らない.端の近くでは 1/n でしか減らず硬い音になる

  • 弦のモードのエネルギー:En=μlωn2(An2+Bn2)/4,全エネルギーは E=∑En.方形波は奇数倍音が 1/n,のこぎり波は全倍音が 1/n で減る

  • 水面の波:単位面積あたりの平均エネルギー 12ρgA2.深い水 ω2=gk,vg=v/2.浅い水 v=gh.一般に ω2=gktanh⁡kh.さざ波 ω∝σk3/ρ,vg=32v

  • ばねの列(質量 m,ばね定数 K,間隔 a):ω=2K/msin⁡(ka/2),上限 2K/m を超える振動数の波は進まない

  • グリーンの法則:A∝h−1/4,幅 b が狭まる湾では A∝b−1/2h−1/4

各題材の問いへの答え

  • 波動方程式と音の速さ:雷鳴として届くのは空気そのものではなく,押し縮められた状態である.空気の層が隣の層を押し,形とエネルギーだけが伝わる.速さは v=γp/ρ で,常温で約 340ms−1 なので,3秒の遅れなら雷は約 1km 先である.耳元の空気は 0.01 mm ほど行き来するだけである.

  • 重ね合わせとうなり:2本の音叉の音は耳の位置で足し合わされ,位相差 2π(f2−f1)t がゆっくり増えるので,振幅が1秒に |f1−f2| 回の割合で大きくなったり小さくなったりする.救急車の音は,近づくときは前方の波長が縮み,遠ざかるときは後方の波長が伸びるので,通り過ぎる時に f0v/(v−us) から f0v/(v+us) へ変わる.

  • 反射と定常波:弦の両端が節であるという境界条件を満たすのは,弦の長さが半波長の整数倍のときだけで,振動数は fn=nv/(2l) に限られる.どうはじいても運動はモードの和で,周期 2l/v で繰り返すので,音の高さは f1=12lS/μ で決まる.はじく強さは振幅を,はじく場所はモードの混ざり方を変えるだけである.

  • 倍音と音色:ピアノとフルートの同じ高さの音は,周期が同じで1周期の形が違う.形はフーリエ級数で倍音に分けられ,そのスペクトルが音色を決める.フルートは基本音が強く倍音が弱く,ピアノは高い倍音まで強い.

  • エネルギーと分散:津波は波長が水深よりずっと長いので外洋でも浅い水の波で,v=gh は水深 4000 m で約 200ms−1 である.浅くなると遅くなるが,エネルギーの流れ 12ρgA2gh は変わらないので,振幅は h−1/4 に比例して大きくなる.最後は振幅が水深に近づいて砕ける.

この章で使った数学

偏微分(∂y/∂x は波形の傾き,∂y/∂t は媒質の速度),差分のテイラー展開,複素数の矢印の和がありました.倍音では,三角関数の直交性からフーリエ係数 an=2T∫0Tfcos⁡nωtdt,bn=2T∫0Tfsin⁡nωtdt とパーセバルの等式 ⟨f2⟩=∑|cn|2 を導きました.分散では,近い波数の2つの波の和から群速度を出し,次元解析で水面の波の速さの形を決め,境界の条件を複素振幅に課して反射と透過を求めました.

発展の内容

  • 3次元の波(発展):四方に広がる音の圧力のずれは ∂2(δp)/∂t2=v2∇2⁡(δp) を満たす.点音源の球面波は δp=F(r−vt)/r で,振幅は 1/r,強さは 1/r2 で減る.

  • 波が運ぶ運動量(発展):光ではエネルギーの流れ P に伴って運動量の流れ P/c が運ばれる(第26章).弦や水面の波でも吸収する壁には平均して押す力が働くが,この力は振幅の2乗の量で,線形の理論だけでは決まらない.水面ではストークスの漂流がその一つの現れである.

波動方程式,重ね合わせ,境界条件とモード,インピーダンスと反射,分散と群速度は,どれも媒質の種類によらない言葉です.第26章では,ガラスの表面での光の反射をこの章の接続点と同じ考えで求めます.