問いしるべ
参考書

問いから始める物理

公式参考書

問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 15節
  1. 何をどう測るか
  2. 何をどう測るかの例題
  3. 何をどう測るかの演習
  4. ばらつきと偏り
  5. ばらつきと平均の計算
  6. ばらつきと偏りの演習
  7. 計算した量の不確かさ
  8. 不確かさの伝わり方と偏微分
  9. 計算した量の不確かさの演習
  10. グラフでモデルを確かめる
  11. 最小二乗法と両対数グラフ
  12. グラフでモデルを確かめる演習
  13. 第14章の章末問題
  14. 第14章の発展問題
  15. 第14章のまとめ

第14章  測定と不確かさ(発展)

01何をどう測るか

この章は発展の章です.受験だけが目的なら飛ばして構いませんが,前提は第3章までなので,第3章の後ならどこで読んでも構いません.実験のレポートを書くとき,共通テストなどで実験の結果やグラフを読むときに役立ちます.章全体を通して,振り子の周期から重力加速度 g を求める実験を例にします.周期の式 T=2πl/g(l は振り子の長さ)は第7章で導く式で,ここでは結果だけを使います.この章に出てくる測定値は,説明のために作った例の値です.

問い

長さ 80cm ほどの糸に金属のおもりをつるして揺らし,ストップウォッチで1往復の時間(周期)を測ります.周期はおよそ 1.8s ですが,ボタンを押すのは人なので,押すのが早すぎたり遅すぎたりして,1回だけの測定では 0.1s ほどずれます.周期が 0.1s ずれると,そこから計算する g は 1 割ほどもずれてしまいます.同じ振り子と同じストップウォッチを使って,どう測れば,もっと信じられる値になるでしょうか.

考えてみる

まず思いつくのは,何回も測って平均することです.10回測って平均すれば,早すぎた回と遅すぎた回が打ち消し合って,1回よりは良くなりそうです.ただし,人の癖で毎回同じ向きにずれているなら,平均してもそのずれは残ります.

もう1つの考えは,ストップウォッチをもっと細かいものに替えることです.しかし,表示が 0.01s まで出ても,ボタンを押す人の手が 0.1s ほどずれるのなら,細かい表示は役に立ちません.表示の細かさと,値の確かさは別のものです.

大事なのは,ずれがどこから来るかを見きわめ,ずれの影響が小さくなるように測り方を組み立てることです.この節では,測る前に決めておくことを順に見ます.

測る量をはっきり決める

周期の式の l は,糸の長さではなく,支点からおもりの中心(重心)までの長さです.糸を測っただけでは,おもりの半径の分だけ短くなります.メートル尺では支点からおもりの上端までの長さ l′ を測り,おもりの直径 D をノギスで測って,l=l′+D/2 とします.

周期の式は,振れ角が小さいときの近似です.第7章で示すように,振れ角 θ0 で揺らすと周期はおよそ θ02/16 の割合(θ0 はラジアン)だけ長くなり,10∘ で約 0.19 %,30∘ で約 1.7 % です.振れ角を 5∘ ほどにそろえれば,この延びは 0.05 % ほどで済みます.ほかにも,支点がぐらつかない,おもりが円を描くように回らない,風が当たらない,といった測定条件をそろえます.何を測るのかを言葉で決めておかないと,どれだけ丁寧に測っても,違うものを測ってしまいます.

目盛りと分解能

測定器には,読み取れる細かさの限りがあります.メートル尺の最小目盛りは 1mm,ノギスは 0.05mm です.デジタルの表示で区別できる最小の差を分解能といい,ストップウォッチなら 0.01s です.

アナログの目盛りは,最小目盛りの 110 まで目分量で読むのがふつうです.786.2mm と読んだら,最後の 2 は目分量の桁で,確かではないが意味のある数です.目盛りは真正面から読みます.斜めから見ると,目盛りと物の間のすき間のために読みがずれます(視差).

測った値は,どれくらい確かかと組にして初めて意味を持ちます.「786.2mm,ただし支点の位置の見きわめで 1mm ほど違いうる」のように書きます.測った結果がどれだけ疑わしいかを表す数を不確かさといいます.不確かさを数で決める方法は次の題材で扱います.

実は,第1章「記号と単位の約束」の有効数字は,不確かさを大まかに伝える書き方です.0.7989m と書けば,「最後の桁の 9 は数単位くらい違いうるが,その前の桁は確か」という意味になります.この章では,その「数単位くらい」を,はっきりした数にします.

まとめて測る

人がストップウォッチを押すと,押し始めと押し終わりのそれぞれで時刻が少しずれます.このずれは,1往復を測っても10往復を測っても,ほとんど同じ大きさです.そこで,10周期の時間 t10 をまとめて測って T=t10/10 とすれば,1周期あたりのずれは 110 になります.0.1s のずれは,周期にすると 0.01s です.

ポイント まとめて測る

押し始めと押し終わりのずれ δ が測る時間の長さによらないなら,n 周期をまとめて測ると,1周期あたりのずれは δ/n になる.

いくらでも増やせばよいわけではありません.振り子は空気の抵抗で少しずつ振れ幅が小さくなり,何百周期も測ると振れ角の条件が変わります.周期を数え違えると,周期まるごと1つ分の大きなずれになります.測る時間も長くなります.10〜20周期ほどが手ごろです.

時刻を取る瞬間は,おもりが最下点を通るときにします.最下点ではおもりが最も速く動くので,目印を通過した瞬間がはっきりします.折り返し点ではおもりがほとんど止まって見えるので,どの瞬間に折り返したかが分かりにくくなります.最下点の真後ろに目印の線を置き,おもりが同じ向きに通過するたびに「0,1,2,…」と数えます.押し始めを「1」と数えると,1周期少なく数えてしまいます.

測定の計画と記録

測り始める前に,次のことを決めて,ノートに書いておきます.

  1. 何を求めるか(ここでは g)と,そのために何を測るか(l′,D,t10).

  2. それぞれを何で測るか,最小目盛り・分解能はいくつか.

  3. 何をそろえるか(振れ角,支点,時刻を取る位置).

  4. 何回繰り返すか.条件を変える測定(長さを変えるなど)をするか.

記録には,計算した結果だけでなく,読んだ値そのもの,単位,測定器,気づいたこと(「3回目は数え違えたかもしれない」など)を残します.あとでずれの原因を探すとき,手がかりは生の記録にしかありません.測り始めたら,すぐに g を大まかに計算してみるのも大切です.9.8ms−2 から大きく外れていれば,周期の数え違いや長さの取り違えにすぐ気づけます.

ポイント ここまでのまとめ

  • 測る量を言葉ではっきり決める.振り子の l は支点からおもりの中心まで.振れ角を小さくそろえる.

  • 最小目盛り・分解能は測定器の読みの限り.アナログは最小目盛りの 110 まで読み,視差に注意する.表示の細かさと値の確かさは別.

  • 測った値には不確かさを添える.有効数字は不確かさの大まかな表し方である.

  • 問いの答え:10周期ほどをまとめて測り,時刻は最下点を通る瞬間に取る.押すずれが1周期あたり 110 になる.繰り返して平均すればさらに良くなるが,毎回同じ向きのずれは平均では消えない(次の題材).

02何をどう測るかの例題

前の節で,測る量を決め,目盛りの読み方とまとめて測る理由を見ました.この節には新しい数学は出てきません.振り子の実験の計画を,数で確かめていきます.使う測定値は,説明のために作った例の値です.

ポイント 例題に入る前に

  • 値は「読んだ値そのもの」と「どれくらい違いうるか」を組で考える.

  • 足し算・引き算では,最後の桁の位置が最も粗いものに合わせる(第1章の有効数字の規則).

  • ずれの大きさを比べるときは,ずれそのものより,値に対する割合(相対的なずれ)で比べると,何が効いているかが分かりやすい.

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

振り子の長さを測る.鉛直に立てたメートル尺(最小目盛り 1mm)で,支点からおもりの上端までを l′=786.2mm と読んだ.おもりは金属の球で,直径をノギス(最小の読み 0.05mm)で測ると D=25.40mm だった.

  1. 周期の式に入れる長さ l を,m を単位として,桁をそろえて求めよ.

  2. l′ の読み 786.2mm のうち,目分量で読んだ桁はどれか.

  3. おもりの半径を足し忘れて l′ をそのまま l として使うと,g は何 % ずれるか.g は l に比例する(g=4π2l/T2).

解答を見る

考え方 周期の式の l は,支点からおもりの中心までである.足し算なので,粗いほうの最後の桁の位置にそろえる.

  1. 半径は D/2=12.70mm.

l=l′+D2=786.2+12.70=798.90mm

l′ の最後の桁は 0.1mm の位なので,そこにそろえて l=798.9mm=0.7989m.ここでは目盛りを読んだ桁に合わせた.支点の位置の見きわめで 1mm ほど違いうることは,「計算した量の不確かさ」の題材で数に入れる.

  1. 最小目盛りは 1mm なので,786mm までは目盛りで読み,最後の 0.2mm が目分量の桁である.この桁は確かではないが,786mm と 787mm の間のどのあたりかという情報を持っている.

  2. 使う長さが 12.70mm 短くなるので,相対的なずれは

12.70798.9=0.0159

である.g は l に比例するので,g も約 1.6 % 小さく出る.たとえば正しい値が 9.80ms−2 なら 9.64ms−2 になる.これは,何回測り直しても同じ向きに出るずれで,測る量の決め方の誤りから来る.確かめると,ノギスの読みのわずかなずれ(0.05mm 程度)は l の 10−4 以下で,半径の足し忘れに比べてずっと小さい.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

周期がおよそ 1.8s の振り子で,ストップウォッチの押し始めと押し終わりのずれを合わせて,1回の測定に 0.1s ほどのずれがあるとする.このずれは,測る時間の長さによらないとする.

  1. 1周期,10周期,50周期をまとめて測るとき,1周期あたりのずれはそれぞれいくらか.

  2. 50周期を測るつもりで,実際には49周期で止めてしまったとする.10周期の測定から周期は 1.794s と分かっていて,49周期の時間は 87.9s だった.これを50で割ると周期はいくらになり,何秒ずれるか.

    1. の数え違いに気づくには,どうすればよいか.10周期の測定の1周期あたりのずれ((1) の値)を使って説明せよ.

解答を見る

考え方 ずれ δ が長さによらないなら,n 周期で割ると δ/n になる.一方,数え違いは周期1つ分という大きなずれになる.

  1. 0.1s,0.110=0.01s,0.150=0.002s.

  2. 87.950=1.758s.正しい周期 1.794s より 0.036s 短い.これは T50 に当たり,(1) の 0.002s の約 18 倍である.数え違いが1回でも起きると,まとめて測った利点は消えてしまう.

  3. 10周期の測定から,周期は 1.794s で,1周期あたり 0.01s ほどずれうる.したがって50周期の時間は 50×1.794=89.7s と予想でき,そのずれは 50×0.01=0.5s ほどである.49周期なら 49×1.794=87.9s,51周期なら 51×1.794=91.5s で,予想から 1.8s ほど外れる.0.5s より十分大きいので,数え違いだと分かる.1周期 → 10周期 → 50周期と段階を踏んで測れば,前の段階の結果で次の段階の数え違いを見つけられる.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

長さ 0.80m,周期 1.794s の振り子を,おもりの水平方向の振れ幅 A=0.070m(振れ角は約 5∘)で揺らす.おもりの水平の位置は x=Acos⁡ωt(ω=2π/T)で表せる(第7章で示す).これは,半径 A,角速度 ω の等速円運動を真横から見た影の動きと同じである.目でおもりの位置を見きわめられるのは 2mm ほどまでとする.

[図:円運動の影で見る最下点と折り返し点]

半径 A の円周上の点を水平軸に投影すると,影は中央で速く,両端でゆっくり動く.初期位相は45°.再生または位相の操作で動きを確かめられる.周期は例題の1.794 s.

  1. 最下点を通るときのおもりの速さを求めよ.目印から 2mm の範囲を通り過ぎるのにかかる時間はどれだけか.

  2. 折り返し点の近くでは,おもりは大きさ Aω2 の加速度で,等加速度運動をしているとみなせる.おもりが折り返し点から 2mm 以内にいる時間は,折り返しの前後それぞれどれだけか.

  3. 時刻を取る瞬間として,最下点と折り返し点のどちらがよいか.

解答を見る

考え方 影の速度は,円運動の速度の水平成分である.中央では円運動の速度がちょうど水平を向くので,影の速さは最大の Aω になる.端では影が止まり,円運動の加速度 Aω2(第3章)がちょうど水平を向く.

  1. ω=2π1.794=3.50rads−1.最下点での速さは

Aω=0.070×3.50=0.245ms−1

2mm を通るのにかかる時間は 0.0020.245=0.0082s,およそ 0.008s である.

  1. 加速度の大きさは Aω2=0.070×3.502=0.858ms−2.折り返し点で速度が0の等加速度運動なので,折り返しから時間 t で進む距離は 12Aω2t2 である.これが 2mm になる時間は

t=2×0.0020.858=0.068s

折り返しの前後それぞれ約 0.07s,合わせて 0.14s ほどの間,おもりは折り返し点から 2mm 以内にいて,止まっているように見える.

  1. 最下点のほうがよい.目で見きわめられる時刻の幅は,最下点では約 0.008s,折り返し点では約 0.07s で,8倍ほど違う.確かめとして,0.068s の間に円周上の点が回る角は ωt=0.24rad(約 14∘)と小さく,円運動の加速度の向きはほとんど水平のままである.したがって (2) で等加速度とみなしたのは妥当である.

ポイント ここまでのまとめ

  • 周期の式の l は支点からおもりの中心まで.半径を足し忘れると,何回測っても g は同じ向きに 1.6 % ずれる.

  • 押すずれが測る時間の長さによらなければ,n 周期まとめて測ると1周期あたり 1/n になる.ただし数え違いは周期1つ分のずれになるので,1周期 → 10周期 → 50周期と段階を踏んで確かめる.

  • 時刻は,おもりが速く動く最下点で取る.折り返し点では見きわめの幅が8倍ほど大きい.

03何をどう測るかの演習

測定器を選ぶ前に,測る量と測定の始め・終わりを決めましょう.以下の数値は練習のための架空の値です.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

端が欠けたものさしで,細い棒の長さを測ります.棒の左端の読みは 18.6cm,右端は 51.2cm でした.最小目盛りは 1mm です.

棒の両端をものさしの途中の目盛りに合わせる.読みは左18.6 cm,右51.2 cm.棒の長さは示していない. 棒の両端をものさしの途中の目盛りに合わせる.読みは左18.6 cm,右51.2 cm.棒の長さは示していない.
  1. 棒の長さを求めよ.

  2. ものさしの端に棒を合わせるより,この測り方がよい理由を述べよ.小数第2位までの cm を記録することに意味はあるか.

解答を見る

考え方 長さは両端の位置の差であり,ものさしの端からの距離とは限らない.

  1. L=51.2−18.6=32.6cm=0.326m.両方の読みの桁にそろえた.

  2. 欠けた端と目盛りの0が一致するとは限らないが,途中の目盛りを使えば端の欠けを避けられる.最小目盛りの 1/10 は 0.1mm=0.01cm なので,真正面から目分量で読めるなら小数第2位にも意味がある.ただし今回の記録にはその桁がなく,計算の後から0を足して読みの情報を増やすことはできない.確かめとして,ものさし全体の読みが同じだけずれても差は変わらない.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

毎秒250枚を等間隔に撮る動画で,台車の先端が線Aを通るのが120枚目,線Bを通るのが195枚目でした.両線の間隔は 0.600m です.時刻は各画像を撮った瞬間とします.

台車の同じ先端が線Aを通る画像と線Bを通る画像を示す.線の間隔は0.600 m. 台車の同じ先端が線Aを通る画像と線Bを通る画像を示す.線の間隔は0.600 m.
  1. 通過にかかった時間と,区間の平均の速さを求めよ.

  2. 195枚目の判定を196枚目に変えたとき,時間はどれだけ変わるか.250枚毎秒という表示だけから,通過時刻が必ず正確だといえるか.

解答を見る

考え方 画像の枚数そのものではなく,画像間の時間間隔の個数を数える.

  1. 間隔は 195−120=75 個なので,t=75/250=0.300s,v¯=0.600/0.300=2.00ms−1.

  2. 1画像間隔の 1/250=0.00400s 長くなる.撮影の露光中に先端がぼけることや,線を斜めから見て位置がずれることがある.撮影間隔の正しさも確かめる必要がある.確かめとして,1画像の違いは75間隔の約1.3 % に当たり,表示の細かさだけではこの判定の違いは消せない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

滑らずに転がる車輪の外周の長さを C=0.480m と測りました.車輪が一定の速さで12回転する時間は 9.60s でした.時間の読みには,全体で 0.06s 程度のずれがあり,回転数によらないとします.外周の測定のずれは無視します.

車輪の周上の印と,その印を数える固定の目印を示す.外周はC.速さの答えは示していない. 車輪の周上の印と,その印を数える固定の目印を示す.外周はC.速さの答えは示していない.
  1. 車輪の並進の速さを求めよ.

  2. 1回転だけ測る場合と12回転の場合で,時間の相対的なずれを比べよ.測定の始めと終わりに同じ印を同じ向きで合わせる理由も述べよ.

解答を見る

考え方 滑らない車輪は1回転で外周分だけ進む.回転数を増やせば,測る距離も時間も同じ割合で増える.

  1. 道のりは 12C=5.760m,速さは v=12C/t=0.600ms−1.

  2. 1回転の時間は 9.60/12=0.800s で,相対的なずれは 0.06/0.800=0.075,つまり7.5 %.12回転では 0.06/9.60=0.00625,つまり0.63 % ほどになる.同じ印・同じ向きを使うと,始めと終わりの間が整数回転と定まる.ただし車輪が滑れば 12C が道のりにならず,時間だけ丁寧に測っても直せない.確かめとして,C/t の単位は速さの単位になる.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

小球を静かに放し,高さ h から落ちる時間を手動の時計で測る計画です.空気抵抗を無視すると h=gt2/2 で,g=9.8ms−2 とします.手動の時間のずれは全体で 0.08s 程度です.

小球の落下距離hと,放す瞬間から床に達するまでを測る時計を示す. 小球の落下距離hと,放す瞬間から床に達するまでを測る時計を示す.
  1. h=0.30m と 1.20m の落下時間を見積もり,時間の相対的なずれを比べよ.

  2. 高さを4倍にすれば相対的なずれは4分の1になる,という意見は正しいか.安全な高さの範囲で,測り方の改善を1つ提案せよ.

解答を見る

考え方 落下時間は高さではなく高さの平方根に比例する.短い時間を手動で測ることの限界を考える.

  1. t=2h/g より,それぞれ 0.247s,0.495s.相対的なずれは 0.08/0.247≈0.32 と 0.08/0.495≈0.16 で,約32 % と16 % である.

  2. 時間は2倍にしかならないので,相対的なずれは半分である.例えば,放す瞬間と基準線を通過する瞬間を動画で判定すれば,手動の反応を避けられる.同じ小球を用い,高さは小球の同じ点の移動距離として決める.確かめとして,h→0 で時間が短くなり,一定の時間のずれの割合が大きくなるのは自然である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

壁から L=17.0m 離れた位置で短い音を出し,同じ位置で直接音と反射音を録音します.音は壁まで行って戻り,往復距離は 2L です.音速を c=340ms−1 として計画を立てます.手動の時間判定のずれは 0.05s,録音の波形による判定のずれは 0.001s 程度とします.

壁までの距離Lと,音源から壁まで行きマイクに戻る音の往復経路を示す. 壁までの距離Lと,音源から壁まで行きマイクに戻る音の往復経路を示す.
  1. 直接音と反射音の間隔を予測し,2つの測り方の相対的なずれを比べよ.

  2. 反射音の山がいくつも現れたとき,最も大きい山を選ぶだけではいけない理由と,確認のための測定を提案せよ.

解答を見る

考え方 音が通る道を決めてから,その道に対応する2つの時刻を選ぶ.音の強さだけでは道は決まらない.

  1. τ=2L/c=34.0/340=0.100s.手動では 0.05/0.100=0.50,つまり50 %,録音では 0.001/0.100=0.010,つまり1 % 程度になる.

  2. 天井や別の壁からの音が重なると,大きい山が目的の壁の反射とは限らない.壁までの距離を変えて録音し,選んだ山の遅れが 2L/c に従って変わるか調べる.音源とマイクは互いに近く置き,配置と波形を保存する.確かめとして,距離を 3.4m 増やすと遅れは 0.020s 増えると予測できる.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

斜面上の台車について,時刻 t の位置が x=v0t+αt2/2 で表せるとします.α は一定の加速度です.動画で t1=0.200s,t2=0.600s の位置を読み,その区間の平均速度を求める計画です.

固定カメラから斜面の台車を撮る.同じ先端の位置を時刻t₁とt₂で読む. 固定カメラから斜面の台車を撮る.同じ先端の位置を時刻t₁とt₂で読む.
  1. この平均速度は,どの時刻の瞬間速度に等しいか.

  2. v0=1.00ms−1,α=1.00ms−2 で値を確かめよ.区間を短くする利点と,位置の読みのずれが一定なら生じる不利を述べよ.

解答を見る

考え方 位置の式の差を時間差で割り,t22−t12=(t2−t1)(t2+t1) を使う.

  1. v¯=v0+α(t1+t2)/2.瞬間速度は v(t)=v0+αt なので,時間の中点 0.400s に等しい.位置の中点とは限らない.

  2. x1=0.220m,x2=0.780m より,v¯=0.560/0.400=1.40ms−1=v(0.400).区間を短くすると,加速度が一定でない運動でも中点の速度に近づく.一方,同程度の位置のずれをより短い時間で割るため,速度のずれは大きくなる.カメラを固定し,目盛りを台車と同じ面に置く.確かめとして,α=0 では区間の選び方によらず v0 に戻る.

ポイント 教える人へ

「測定の始めと終わりは,何がどこに来た瞬間か」を言葉で答えてもらってください.細かい表示の器械を選ぶだけで安心していないか,条件の一定性と測る量の定義を確かめます.演習6では,時間の中点と位置の中点を区別できれば,平均速度の理解も確かめられます.

04ばらつきと偏り

問い

前の題材の振り子(l=0.7989m)で,10周期の時間 t10 を,同じ人が同じやり方で10回測りました.結果は次のとおりです(説明のために作った例の値です).

回

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

t10[s]

17.91

18.00

17.95

17.86

17.99

17.93

18.01

17.90

17.97

17.88

同じものを同じように測ったのに,値は 17.86s から 18.01s まで散らばっています.どれが正しい値なのでしょうか.正しい値は,このどれかなのでしょうか.

考えてみる

10個の値のどれかを選ぶ理由はありません.どれも同じ手順で得た,同じ資格を持つ値です.そこで平均を取るのは自然ですが,2つの疑問が残ります.1つは,平均がどれだけ確かなのかです.10個の値の散らばりが 0.15s ほどあるからといって,平均も 0.15s ほど違いうるのでしょうか.もう1つは,10個すべてが同じ向きにずれていたら,平均してもそのずれは見えない,ということです.散らばりは表から見えますが,全体の偏りは表を見ても分かりません.この節では,この2つを分けて考えます.

誤差と不確かさ

測る量のほんとうの値を真の値といい,測定値と真の値の差を誤差といいます.ところが,真の値を知る方法はないので,誤差そのものも知ることができません.知ることができるのは,「測った結果がどれだけ疑わしいか」です.これを数で表したものが不確かさです.測定の結果は,値と不確かさの組で報告します.

計測の国際的な指針(GUM と呼ばれます)は,この区別を大切にしています.「誤差が 0.02」とは言えませんが,「不確かさが 0.02」とは言えます.

平均とばらつき

N 個の測定値 x1, …, xN の平均を

x¯=1N∑i=1Nxi

とします.各値の平均からのずれ xi−x¯ を偏差といいます.偏差は正にも負にもなり,その和は必ず0なので,ばらつきの大きさは偏差の2乗を使って測ります.

定義 標準偏差

測定値 x1, …, xN の標準偏差を

s=1N−1∑i=1N(xi−x¯)2

で定める.1回の測定値が,平均のまわりにどれだけ散らばるかの目安である.

N ではなく N−1 で割る理由は,次の節で説明します.問いのデータでは t¯10=17.940s,s=0.052s です(計算は次の節).

測定を何回も繰り返すと,値のヒストグラムは,平均のところが高い釣り鐘の形に近づくことが多く,この形を正規分布といいます.正規分布では,平均から ±s の範囲に約 68 %,±2s の範囲に約 95 % の値が入ります.問いのデータでも,偏差が ±0.052s 以内の値は10個中6個,±0.104s 以内は10個すべてです.

[図:測定値のばらつきと平均の不確かさ]

初期状態は本文の10回の測定で,平均17.940 s,標準偏差約0.052 s,平均の標準不確かさ約0.0165 s.青の帯は平均±s,緑の帯は平均±s/√N.回数を追加するとヒストグラムと帯が変わる.11回目以降は固定した乱数の種による模擬測定.

平均はどれだけ確かか

s は1回の測定値の散らばりです.平均は,散らばった値を N 個まとめたものなので,1回の値よりも散らばりにくくなります.10回の平均を取る実験を何度も繰り返したとすると,平均の値どうしの散らばりは s よりずっと小さく,およそ s/N になります.理由は次の節で示します.

定義 標準不確かさ

不確かさを標準偏差の形で表したものを標準不確かさといい,u(x) と書く.評価の方法は2つある.

  • タイプA:繰り返し測定の統計から求める.N 回の平均の標準不確かさは u(x¯)=sN.

  • タイプB:それ以外の情報(目盛り・分解能,測定器の仕様,過去の経験など)から求める.

問いのデータでは u(t¯10)=0.05210=0.017s です.10周期で割ると,周期は T=1.7940s,標準不確かさは u(T)=0.0017s となります.問いへの答えは,「どれか1つが正しい値なのではなく,平均 17.940s が最も信じられる値で,その標準不確かさが 0.017s」です.

N で減るということは,不確かさを半分にするには回数を4倍に,110 にするには100倍にしなければならないということです.回数を増やす効き目は,だんだん小さくなります.

偶然誤差と系統誤差

定義 偶然誤差と系統誤差

測るたびに向きも大きさも変わるずれを偶然誤差,同じ条件で測るといつも同じ向きに同じくらい出るずれを系統誤差という.繰り返して平均すると偶然誤差の影響は 1/N で小さくなるが,系統誤差は繰り返しても減らない.

ストップウォッチを押すずれには,両方が混じっています.押す瞬間が毎回少しずつ違うのは偶然誤差です.一方,振り子が目印を通るのを見てから押し始めると反応の分だけ遅れ,止めるときは次の通過を予測して押せるのでほとんど遅れない,という癖があると,毎回 t10 が短く出ます.これは系統誤差です.ほかにも,端がすり減ったものさしで端から測る,前の題材の例題のようにおもりの半径を足し忘れる,といったずれは,何回測っても同じように出ます.

系統誤差は,同じやり方を繰り返しても見えません.見つけるには,やり方を変えて測ります.別の人が測る,別の測定器を使う,測る周期の数を変える,などです.やり方を変えて結果が変わるなら,どこかに系統誤差があります.原因が分かったら補正し(半径を足す,ものさしの端を使わない),補正しきれない分は,その大きさを見積もって不確かさに含めます.

ポイント ここまでのまとめ

  • 誤差(真の値とのずれ)は知りえない.測った結果がどれだけ疑わしいかを数で表したものが不確かさで,標準偏差の形で表したものが標準不確かさである.

  • 繰り返し測定では,平均 x¯ を値とし,1回の散らばりを標準偏差 s,平均の標準不確かさを s/N とする(タイプA).目盛りや仕様からの評価がタイプB.

  • 偶然誤差は平均で減るが,系統誤差は繰り返しても減らない.やり方を変えて見つけ,補正する.

  • 問いの答え:どれか1つが正しいのではない.平均 17.940s が最も信じられる値で,標準不確かさは 0.017s.ただし,全部が同じ向きにずれていないかは,別の方法で確かめる.

05ばらつきと平均の計算

前の節で,平均・標準偏差・平均の標準不確かさ s/N を使いました.この節では,それらを手で計算する方法と,N で割る理由,N−1 で割る理由を確かめます.

定理 数学の道具:平均と標準偏差,N で減る理由

基準値を引いて計算する. 測定値 xi から,適当な基準値 c を引いた di=xi−c で計算すると,数が小さくなって楽になる.平均は x¯=c+d¯ である.偏差の2乗の和は,次の式で求められる.

∑i=1N(xi−c)2=∑i=1N(xi−x¯)2+N(x¯−c)2

導出:xi−c=(xi−x¯)+(x¯−c) を2乗して足すと,交差項は 2(x¯−c)∑(xi−x¯)=0 となって消える(偏差の和は0).

N で減る理由. 真の値を μ とし,i 回目の測定値を xi=μ+εi と書く.偶然誤差 εi は,正にも負にも同じように出て,2乗を多数回にわたって平均すると σ2 になるとする.多数回の繰り返しについての平均を ⟨ ⟩ で表すと,⟨εi⟩=0,⟨εi2⟩=σ2 である.平均のずれは x¯−μ=1N∑εi で,その2乗は

(∑iεi)2=∑iεi2+∑i≠jεiεj

と書ける.各回のずれが互いに関係しない(独立)なら,εiεj(i≠j)は正にも負にも同じように出るので,⟨εiεj⟩=0 である.よって

⟨(x¯−μ)2⟩=1N2⋅Nσ2=σ2N

となり,平均のずれの大きさは σ/N である.N 個のずれは,足すと一部が打ち消し合うので,和は N 倍ではなく N 倍にしかならない.これを N で割るから 1/N が出る.

N−1 で割る理由. 上の恒等式で c=μ とおいて,⟨ ⟩ を取ると

Nσ2=⟨∑(xi−x¯)2⟩+N⋅σ2N

よって ⟨∑(xi−x¯)2⟩=(N−1)σ2 である.偏差を,真の値ではなくデータ自身の平均から測ると,平均がデータの真ん中に寄っている分だけ2乗の和が小さく出る.その不足がちょうど1回分なので,N−1 で割ると σ2 の見積もりになる.

一様に散らばるずれの標準偏差. デジタル表示の丸めのように,ずれが −a から a までのどこにも同じ確からしさで出るとき,2乗の平均を求める.区間の上で連続的に変わる量の平均は,区間全体での積分を区間の幅で割ったもの(短い区間に分けて足した平均の極限)なので,

12a∫−aaε2dε=12a⋅2a33=a23

したがって標準不確かさは a/3 である(タイプBの評価でよく使う).

練習. 測定値 2.3, 2.5, 2.4, 2.6 の平均と標準偏差を求めよ.また,この4回の平均の標準不確かさを求めよ.さらに,各値が 0.1 刻みの表示を丸めたもので,丸めのずれが ±0.05 の範囲に一様に散らばるとき,丸めによる標準不確かさを求めよ.

答え:c=2.4 とすると di=−0.1, 0.1, 0, 0.2.d¯=0.05 より x¯=2.45.∑di2=0.06 から ∑(xi−x¯)2=0.06−4×0.052=0.05.s=0.05/3=0.13.平均の標準不確かさは s/4=0.13/2=0.065.丸めによる標準不確かさは 0.05/3=0.029 で,ばらつき s より小さい.

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

前の節の問いの10個の t10(17.91, 18.00, 17.95, 17.86, 17.99, 17.93, 18.01, 17.90, 17.97, 17.88s)について,平均 t¯10,標準偏差 s,平均の標準不確かさ u(t¯10) を求めよ.また,周期 T とその標準不確かさ u(T) を求めよ.

解答を見る

考え方 基準値 c=17.90s を引き,0.01s を単位にして整数で計算する.

di は 0.01s 単位で 1, 10, 5, −4, 9, 3, 11, 0, 7, −2.和は 40 なので,d¯=4,つまり t¯10=17.90+0.04=17.940s.∑di2=406 より

∑(ti−t¯10)2=406−10×42=246(単位 10−4s2)

すなわち 0.0246s2.よって

s=0.02469=0.052s,u(t¯10)=0.052310=0.017s

周期は T=t¯10/10=1.7940s,u(T)=0.0017s である.確かめとして,偏差 ti−t¯10 を直接書くと −3, 6, 1, −8, 5, −1, 7, −4, 3, −6(0.01s 単位)で,和は0,2乗の和は246となって一致する.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

例題 1 の測り方(1回の t10 の標準偏差 s=0.052s)を続ける.

  1. 平均の標準不確かさ u(t¯10) を 0.005s 以下にするには,何回測ればよいか.

  2. 同じ合計時間で比べる.t10 を50回測る場合と,t50 を10回測る場合で,周期の標準不確かさ u(T) はそれぞれいくらか.ただし t50 の1回の標準偏差も 0.052s とする.

  3. ストップウォッチの表示は 0.01s 刻みで,真の時間は表示から ±0.005s の範囲のどこかにあるとする.この丸めによる標準不確かさを求め,s と比べよ.

解答を見る

考え方 繰り返しの効き目は 1/N,まとめて測る効き目は 1/n である.丸めのずれは一様に散らばるとして a/3 を使う.

  1. 0.052N≤0.005 より N≥10.4,N≥108.2,つまり109回以上で,110回ほど要る.10回の11倍の手間で,不確かさは 13 ほどにしかならない.

  2. t10 を50回:u(T)=0.05250÷10=0.00074s.t50 を10回:u(T)=0.05210÷50=0.00033s.合計時間は同じでも,長くまとめて測るほうが約2.2倍よい.回数の効き目は 5 倍,まとめる効き目は5倍だからである(ただし前の題材のとおり,数え違いと振れ幅の減りに注意する).

  3. a=0.005s なので u=0.0053=0.0029s.s=0.052s の約18分の1で,人の手のばらつきに比べて無視できる.表示を 0.001s まで細かくしても,結果はほとんど良くならない.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

別の人が,同じ振り子(l=0.7989m)で t10 と t20 をそれぞれ何回か測り,平均が t¯10=17.99s,t¯20=35.93s になった.この人の押し方には,押し始めと押し終わりの反応の違いによる一定のずれがあるかもしれない.そこで,どの測定にも同じ系統誤差 δ(正にも負にもなりうる一定の値)が入るとして,n 周期の時間を tn=nT+δ と表して調べる.

横軸は周期の数 n,縦軸は測った時間 t_n.横軸に0,10,20の目盛りを置く.例題の測定点と直線は示していない. 横軸は周期の数 n,縦軸は測った時間 t_n.横軸に0,10,20の目盛りを置く.例題の測定点と直線は示していない.
  1. T と δ を求めよ.

  2. この人が t¯10/10 を周期として g=4π2l/T2 を計算すると,g はいくらになるか.(1) の T を使うとどうなるか.

  3. t10 だけを何百回測っても δ が見つからない理由を述べよ.

解答を見る

考え方 tn=nT+δ の2つの式を引けば δ が消える.これは tn と n のグラフの傾きが T,切片が δ ということでもある.

  1. t¯20−t¯10=10T より T=35.93−17.9910=1.794s.δ=t¯10−10T=17.99−17.94=0.05s.毎回 0.05s 長く測っていた(止めるのが遅れる癖だった).

  2. t¯10/10=1.799s を使うと g=4π2×0.79891.7992=9.745ms−2.(1) の T=1.794s を使うと 9.800ms−2 になる.δ による g のずれは 0.055ms−2 で,次の題材で求める,t10 10回の偶然誤差による g の不確かさ(0.02ms−2 ほど)より大きい.確かめとして,第2章の一次近似を使うと,T が 0.0051.794=0.28 % 長いとき g∝T−2 は約 0.56 % 小さくなり,9.800×(1−0.0056)=9.745 と一致する.

  3. どの t10 にも同じ δ が入っているので,平均もちょうど δ だけずれたままである.繰り返しで小さくなるのは,回ごとに変わるずれだけである.δ を見つけるには,測る周期の数を変えるように,やり方を変える必要がある.

ポイント ここまでのまとめ

  • 基準値を引いて計算すると楽になる.∑(xi−c)2=∑(xi−x¯)2+N(x¯−c)2.

  • 独立なずれの和は,2乗の平均が足し算になる(交差項の平均が0).だから N 回の平均のずれは σ/N,偏差の2乗の和は平均して (N−1)σ2 になる.

  • ±a に一様に散らばるずれの標準不確かさは a/3.

  • 同じ時間をかけるなら,回数を増やす(1/N)より,まとめて測る(1/n)ほうが効く.一定の系統誤差は,周期の数を変えて引き算すると見つかる.

06ばらつきと偏りの演習

ばらつきの小ささと,偏りの小ささを分けて考えましょう.以下は架空の測定記録で,標準偏差は N−1 で割って求めます.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

同じ高さから小球を落とし,自動計時で次の5つの時間を得ました.各回の偶然のずれは独立で,落下条件は変わらないとします.

回

1

2

3

4

5

t[s]

0.448

0.452

0.450

0.454

0.446

横軸は測定回,縦軸は落下時間.問題の5つの記録だけを描き,平均は示していない. 横軸は測定回,縦軸は落下時間.問題の5つの記録だけを描き,平均は示していない.
  1. 平均,標準偏差,平均の標準不確かさを求めよ.

  2. この標準不確かさを添えた報告を書け.

解答を見る

考え方 基準 0.450s からの偏差で計算すると,小さい整数だけで足し算できる.

  1. 平均は t¯=0.450s.偏差は 10−3s 単位で −2,2,0,4,−4 なので,∑(ti−t¯)2=40×10−6s2.s=40×10−6/4=0.00316s,u(t¯)=s/5=0.00141s.

  2. 「平均の落下時間 0.4500s,タイプAの標準不確かさ 0.0014s」と書ける.自動計時の系統的な効果をまだ評価していないので,これを全体の不確かさとは呼ばない.確かめとして,偏差の和は0,不確かさの単位は時間である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

表示が 0.2g 刻みの電子てんびんで,物体の質量が 125.4g と出ました.ほかの効果を無視し,丸め前の値は表示から ±0.1g の範囲に一様にあるとします.物体を動かさず,表示を10回写してもすべて同じ値でした.

てんびんの125.4 gの表示と,丸め前の値が入りうる125.3〜125.5 gの範囲を示す. てんびんの125.4 gの表示と,丸め前の値が入りうる125.3〜125.5 gの範囲を示す.
  1. 表示の丸めによる標準不確かさを求めよ.

  2. 同じ表示を10回写したので,この不確かさを 10 で割ってよいか.

解答を見る

考え方 半幅からのタイプBの評価と,独立な繰り返しのタイプAの評価を区別する.

  1. u(m)=0.1/3=0.058g.

  2. 割ってはいけない.同じ丸め前の値を同じ境界で丸めた表示を写しており,新しい独立なずれを10個得たわけではない.記録の標準偏差が0でも,丸め前の値が 125.400g だと確定しない.確かめとして,不確かさは半幅 0.1g より小さいが0ではなく,表示刻みを細かくしたときだけこのモデルの不確かさも小さくなる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

温度計を,温度 20.00∘C の一定の水槽に入れ,20.8,20.9,20.7,20.8∘C と読みました.水槽の温度の不確かさは無視します.温度計には温度によらない加算の偏りがあると仮定します.

温度20.00 °Cの一定の水槽に,基準と調べる温度計を入れる.補正値は示していない. 温度20.00 °Cの一定の水槽に,基準と調べる温度計を入れる.補正値は示していない.
  1. 読みの平均,標準偏差,平均の標準不確かさと,加算の偏りの見積もりを求めよ.

  2. 別の水槽で 24.6∘C と読んだときの補正後の値を求めよ.ここから全体の不確かさまで決まるか.

解答を見る

考え方 基準との差の平均を,既知の系統的な効果の補正として使う.補正値にも有限の測定回数から来る不確かさが残る.

  1. x¯=20.80∘C,偏差の2乗の和は 0.020(∘C)2.s=0.020/3=0.082∘C,u(x¯)=s/2=0.041∘C.偏りは 20.80−20.00=+0.80∘C と見積もる.

  2. 補正後は 24.6−0.80=23.8∘C.別の読み自身のばらつきや,偏りが温度によらないという仮定も確かめる必要があり,全体の不確かさはまだ決まらない.確かめとして,元の水槽の平均に同じ補正をすると 20.00∘C に戻る.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

同じ棒を8回続けて測り,1.002,1.004,1.006,1.008,1.010,1.012,1.014,1.016m を得ました.測定の途中で室温も上昇していました.ある人は,全8回の標準偏差を 8 で割れば,最初の時点の棒の長さの不確かさになると考えています.

8回の長さの読みを測定順に並べた.平均線や原因の説明は描いていない. 8回の長さの読みを測定順に並べた.平均線や原因の説明は描いていない.
  1. 前半4回と後半4回の平均を比べよ.

  2. 上の考え方の問題点を説明し,次に何を記録・測定すべきか提案せよ.

解答を見る

考え方 平均の不確かさの式は,同じ量を一定の条件で測り,独立なずれが出るときの式である.測定順を消さずに見る.

  1. 前半は 1.005m,後半は 1.013m,差は 0.008m.全体の平均は 1.009m だが,最初の時点の長さとは限らない.

  2. 増加が温度による棒の変化なのか,器械の変化なのか,この記録だけでは分からない.同じ平均の周囲に独立に散らばっているとは見なせず,単に 8 で割って最初の値を報告できない.時刻・棒と器械の温度を記録し,条件が落ち着くのを待つか,安定した基準棒も交互に測る.確かめとして,8点は平均の上下に不規則に散らばらず,順番と読みが強く結び付いている.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

基準長さ 2.000m の棒を,器械AとBで各5回測りました.基準長さの不確かさは無視します.

器械

読み [m]

A

2.03,2.05,2.01,2.04,2.02

B

2.20,2.19,2.21,2.20,2.20

AとBの5つの読みを同じ長さの軸に並べ,基準2.000 mを緑の線で示す.同じ値のBの点は上下にずらして区別した.平均は描いていない. AとBの5つの読みを同じ長さの軸に並べ,基準2.000 mを緑の線で示す.同じ値のBの点は上下にずらして区別した.平均は描いていない.
  1. 各器械の平均,標準偏差,平均の標準不確かさを求めよ.

  2. 「Bのほうがばらつきが小さいので,補正せず使っても基準に近い」といえるか.

解答を見る

考え方 平均からの散らばりと,平均の基準からの隔たりは別に計算する.

  1. Aは x¯=2.030m,偏差の2乗の和 0.0010m2 より s=0.0158m,u(x¯)=0.0071m.Bは x¯=2.200m,2乗の和 0.00020m2 より s=0.00707m,u(x¯)=0.0032m.

  2. いえない.Bは繰り返しのばらつきが小さいが,平均は基準より 0.200m 大きい.Aの隔たりは 0.030m で,補正前はAのほうが基準に近い.器械の読みを細かくすることと,既知の偏りを補正することの両方が必要である.確かめとして,Bの基準との差は平均のタイプAの不確かさの約63倍で,単なる小さな散らばりとは区別できる.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

変位計を基準で調べ,読みから基準を引いた差が 0.08,0.12,0.10,0.06,0.14mm でした.各回のずれは独立で,同じ加算の偏りが全測定に入るとします.この5回の平均で補正値を決め,別の試料の平均の読み 23.40mm を補正します.試料は20回測り,1回の標準偏差は 0.040mm でした.

基準の5回から決めた一つの補正値を,試料の20回の読み全体に使う.補正後の答えは示していない. 基準の5回から決めた一つの補正値を,試料の20回の読み全体に使う.補正後の答えは示していない.
  1. 補正値とその標準不確かさ,試料の補正後の平均を求めよ.

  2. 試料の平均自身のタイプAの不確かさを求め,補正値の不確かさと比べよ.試料だけの測定回数を増やせば両方とも減るか.

解答を見る

考え方 補正値を決めた測定と,試料の読みを決めた測定の回数を混同しない.

  1. 差の平均は 0.100mm,偏差の2乗の和は 0.0040mm2.s=0.0040/4=0.0316mm,補正値の標準不確かさは s/5=0.014mm.読みが大きく出るので引き,23.40−0.100=23.30mm.

  2. 試料の平均のタイプAの不確かさは 0.040/20=0.0089mm.補正値の寄与のほうが大きい.同じ補正値を全20回に使うので,試料の回数だけ増やしても補正値の 0.014mm は減らない.基準での測定を改善する必要がある.確かめとして,差がすべて正なので,補正の符号は負でなければならない.

ポイント 教える人へ

標準偏差と平均の標準不確かさのどちらを報告するか,測る量に戻って選んでもらってください.「同じ表示の転記」「時間とともに変わる値」「共通の補正値」は,独立な繰り返しとは異なります.平均を計算する前に,測定順と基準との比較を見る習慣を確かめます.

07計算した量の不確かさ

問い

ここまでの題材で,振り子の長さは l=0.7989m(標準不確かさ u(l)=0.0010m.支点の位置の見きわめが主),周期は T=1.7940s(u(T)=0.0017s)と分かりました.ここから

g=4π2lT2=9.800ms−2

と計算できます.長さにも周期にも不確かさがあるのだから,g にも不確かさがあるはずです.それはどれだけでしょうか.また,g をもっと確かにしたいとき,長さと周期のどちらを測り直すのがよいでしょうか.

考えてみる

u(l)=0.0010m と u(T)=0.0017s をそのまま足すことはできません.単位が違うからです.比べるには,値に対する割合(相対標準不確かさ)u(x)/|x| にします.長さは 0.00100.7989=0.125 %,周期は 0.001651.794=0.092 % です(途中の計算では1桁多く u(T)=0.00165s を使います).

では,g の相対不確かさは 0.125+0.092 % でよいのでしょうか.2つ気になることがあります.g の式には T が2乗で入っているので,周期のずれは2倍に効きそうです.また,長さのずれと周期のずれは互いに関係なく出るので,両方が同時に最大の向きにずれることはまれで,単純に足すと大きすぎそうです.

1つの量から計算するとき

量 x から y=f(x) を計算するとします.x が小さく Δx だけずれると,y のずれは,グラフの接線で近似して Δy≈f′(x)Δx です(第3章の微分).ずれが小さければ,ずれは傾き f′(x) 倍されて伝わります.したがって

u(y)=|f′(x)|u(x)

です.特に y=Cxn(C は定数)なら f′(x)=nCxn−1=ny/x なので(n が負や分数でもこの微分の公式が成り立つことは,次の節で確かめます)

u(y)|y|=|n|u(x)|x|

となり,相対不確かさが |n| 倍になります.T2 の相対不確かさは T の2倍,l なら半分です.

[図:接線を通して伝わる不確かさ]

曲線の接点で,横軸の±u(x)を接線へ投影し,縦軸の±u(y)を読む.接点を右へ動かすと傾きが増し,縦の幅が広がる.初期状態は緩やかな部分と急な部分の間.

2つ以上の量から計算するとき

長さのずれと周期のずれのように,互いに関係なく出るずれを独立といいます.前の題材の数学の節で,独立なずれの和は,2乗の平均が足し算になることを見ました(交差項の平均が0になるから).同じ理由で,独立な不確かさは2乗して足し,平方根を取って合わせます.

公式 不確かさの伝わり方(独立な場合)

  • 和・差 y=x1±x2:u(y)2=u(x1)2+u(x2)2

  • 積・商・べき y=Cx1px2q:

(u(y)y)2=(pu(x1)x1)2+(qu(x2)x2)2

こうして合わせた不確かさを合成標準不確かさ uc(y) という.

和・差では不確かさそのものを,積・商では相対不確かさを合わせます.導き方は次の節で示します.

g の不確かさ

g=4π2lT−2 は p=1,q=−2 の形です.

量

相対標準不確かさ

指数

g への寄与

l

0.125 %

1

0.125 %

T

0.092 %

−2

0.184 %

合成

0.1252+0.1842=0.223 %

よって uc(g)=9.800×0.00223=0.022ms−2 です.周期の相対不確かさは長さより小さいのに,2乗で効くので,寄与は周期のほうが大きくなりました.

このような表を不確かさの内訳といいます.内訳を作ると,どこを良くすればよいかが分かります.長さの不確かさを半分にしても,合成は 0.06252+0.1842=0.194 % にしかなりません.周期の不確かさを半分にすれば 0.1252+0.0922=0.155 % になります.2乗の和では,大きいほうの寄与が全体を決めるので,一番大きな寄与から減らすのが近道です.周期なら,前の題材で見たように,まとめて測る周期の数を増やすのが効きます.

報告の書き方と有効数字

不確かさは1桁か2桁で書き,値はその桁にそろえて丸めます.この実験の結果は

g=9.800ms−2,合成標準不確かさ 0.022ms−2

と書きます.短く g=9.800(22)ms−2 とも書き,括弧の中は最後の2桁に対する標準不確かさです.± を使うときは,それが何の不確かさかを必ず書き添えます.

第1章の有効数字の規則「掛け算・割り算は桁数の最も少ないものに合わせる」は,相対不確かさの伝え方を大まかにしたものです.桁数は相対不確かさのおおよその目安だからです.ただし,規則はべきの倍率(T2 で2倍)も2乗の和も見ないので,大まかにしか合いません.4桁の 0.7989 と 1.794 から規則どおりに4桁の 9.800 を書くと,最後の桁まで確かに見えますが,実際には小数第2位がもう 0.02 ほど違いうるのです.

最後に,結果を基準の値と比べます.合成標準不確かさに係数 k(包含係数.ふつう k=2)を掛けたものを拡張不確かさ U=kuc といいます.k=2 では U=0.044ms−2 で,正規分布なら約 95 % の確からしさで値が入る範囲の目安になります.東京付近の重力加速度 9.798ms−2 は 9.800±0.044 の範囲に入るので,この実験は基準の値と合っているといえます.差が U よりずっと大きければ,見落とした系統誤差を疑います.

ポイント ここまでのまとめ

  • 1つの量からなら u(y)=|f′(x)|u(x).べき xn では相対不確かさが |n| 倍になる.

  • 独立な不確かさは2乗の和の平方根で合わせる.和・差では不確かさそのもの,積・商・べきでは相対不確かさを合わせる.

  • 内訳の表を作り,一番大きな寄与から減らす.有効数字の規則は,この伝え方の大まかな版である.

  • 問いの答え:g=9.800ms−2,合成標準不確かさ 0.022ms−2.周期の寄与(0.184 %)が長さ(0.125 %)より大きいので,周期を良くするのが先である.

08不確かさの伝わり方と偏微分

前の節では,不確かさの伝わり方の規則を使いました.この節では,その規則を微分から導きます.2つ以上の量に関係する関数を1つずつの量について微分する「偏微分」を,ここで導入します.

定理 数学の道具:1次近似と偏微分

どんな指数でも (xn)′=nxn−1. 第3章では n が自然数の場合を示した.第2章の一次近似 (1+ε)n≈1+nε(ε が十分小さいとき.n は負でも分数でもよい)を使うと,x>0 で

(x+h)n−xnh=xnh[(1+hx)n−1]≈xnh⋅nhx=nxn−1

となり,h→0 で同じ公式が成り立つ.たとえば (T−2)′=−2T−3,(l)′=12l.

1次近似. y=f(x) で x が Δx だけ変わると,Δy≈f′(x)Δx.Δx が小さいほど良く成り立つ(接線で曲線を近似している).

偏微分. 2つの量 x1,x2 で決まる y=f(x1,x2) で,x2 を定数とみて x1 で微分したものを,x1 による偏微分といい ∂f∂x1 と書く.x2 による偏微分も同様である.たとえば g(l,T)=4π2lT−2 では

∂g∂l=4π2T2,∂g∂T=−8π2lT3

2つの量が同時に変わるとき. x1 と x2 が Δx1,Δx2 だけ変わるとき,まず x1 だけを変え,次に x2 を変えると考えると

Δy≈∂f∂x1Δx1+∂f∂x2Δx2

となる(2段目の偏微分を取る点が Δx1 だけずれる違いは,Δx1Δx2 の程度で,1次の近似では無視できる).

独立な不確かさの合成. 両辺を2乗して,多数回の繰り返しについて平均する.Δx1 と Δx2 が独立なら,前の題材と同じく交差項 Δx1Δx2 の平均は0なので

uc(y)2=(∂f∂x1)2u(x1)2+(∂f∂x2)2u(x2)2

量が3つ以上でも同じ形に項を足す.y=x1±x2 なら偏微分は ±1 で,和・差の規則になる.y=Cx1px2q なら ∂y∂x1=pyx1,∂y∂x2=qyx2 なので,両辺を y2 で割ると積・商・べきの規則になる.

練習. 長方形の板の縦が a=20.0cm(u=0.1cm),横が b=30.0cm(u=0.1cm)である.面積 S=ab の合成標準不確かさを,偏微分の式と相対不確かさの式の2通りで求めよ.

答え:∂S∂a=b=30.0cm,∂S∂b=a=20.0cm より uc(S)=(30.0×0.1)2+(20.0×0.1)2=13=3.6cm2.相対では 0.52+0.3332=0.60 % で,600×0.0060=3.6cm2.一致する.

練習2. a=2.00(u=0.01),b=3.00(u=0.01)から y=a/b2 を求める.∂y∂a,∂y∂b を求め,y の相対標準不確かさを求めよ.

答え:∂y∂a=1b2,∂y∂b=−2ab3.両辺を y で割ると,相対の寄与は a が 0.5 %,b が 2×0.333=0.667 % で,合わせて 0.52+0.6672=0.83 %.負の指数でも,効くのは指数の大きさ 2 である.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

前の節の問いの値 l=0.7989m,u(l)=0.0010m,T=1.7940s,u(T)=0.00165s を使う.g=4π2l/T2 の偏微分を数で求め,長さと周期のそれぞれが g に与える不確かさと,合成標準不確かさ uc(g) を求めよ.前の節の相対不確かさによる結果と一致することを確かめよ.

解答を見る

考え方 偏微分に各量の標準不確かさを掛けたものが,その量の寄与である.寄与どうしを2乗の和で合わせる.

∂g∂l=4π2T2=39.483.2184=12.27s−2,∂g∂T=−8π2lT3=−2gT=−10.92ms−3

長さの寄与は 12.27×0.0010=0.0123ms−2,周期の寄与は 10.92×0.00165=0.0180ms−2.合わせて

uc(g)=0.01232+0.01802=0.022ms−2

確かめると,相対不確かさでは 0.01239.800=0.125 %,0.01809.800=0.184 % で,前の節の内訳の表と一致する.偏微分の単位も確かめておく.∂g∂l に m を,∂g∂T に s を掛けると,どちらも ms−2 になる.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

振り子のおもりの密度を求める.質量は電子てんびん(表示 0.1g 刻み)で m=66.9g,直径はノギス(0.05mm 刻み)で D=25.40mm と読んだ.どちらも,読みの不確かさは表示の刻みの半分 a に一様に散らばるとして,標準不確かさを a/3 とする.

左はノギスの外側の測定面で球を挟む図.赤い印が測定面と球の接点.右は同じ球を電子てんびんに載せる図.読みの値や密度は示さない. 左はノギスの外側の測定面で球を挟む図.赤い印が測定面と球の接点.右は同じ球を電子てんびんに載せる図.読みの値や密度は示さない.
  1. 密度 ρ=6mπD3 を求めよ.

  2. m と D の標準不確かさを求め,ρ の相対標準不確かさへのそれぞれの寄与と,ρ の合成標準不確かさを求めよ.

解答を見る

考え方 ρ∝m1D−3 なので,直径の相対不確かさは3倍に効く.

  1. D=2.540cm として,ρ=6×66.9π×2.5403=401.451.48=7.797gcm−3.

  2. u(m)=0.053=0.029g,u(D)=0.0253=0.0144mm.寄与は,質量が 0.02966.9=0.043 %,直径が 3×0.014425.40=0.170 %.合わせて 0.0432+0.1702=0.176 %,uc(ρ)=7.797×0.00176=0.014gcm−3.結果は ρ=7.797(14)gcm−3 である.直径の読みの相対不確かさ(0.057 %)は質量(0.043 %)と同じ程度だが,3乗で効くので3倍の 0.170 % になり,質量の寄与の約4倍になる.確かめとして,鉄の密度はおよそ 7.8gcm−3 で,鉄の球として妥当である.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

支点の位置がはっきり分からない振り子で,メートル尺の目盛りを使い,おもりの上端の位置を2通りに変えて周期を測る.上端の読みの差を Δl′=l1′−l2′ とすると,支点の位置もおもりの半径も差では消えて,g=4π2Δl′T12−T22 となる.各読みの標準不確かさは 0.0005m,各周期の標準不確かさは 0.0017s で,すべて独立とする.

  1. l1′=1.200m,T1=2.211s,l2′=0.200m,T2=0.928s のとき,g と uc(g) を求めよ.

  2. 2つの長さを近づけて l1′=0.800m,T1=1.807s,l2′=0.600m,T2=1.572s としたときの g の相対標準不確かさを求め,(1) と比べよ.

解答を見る

考え方 分子の差と分母の差のそれぞれに和・差の規則を使い,最後に商の規則で合わせる.支点の位置のように両方の読みに同じだけ入るずれは,差を取ると消える.

  1. 分子:Δl′=1.000m,u(Δl′)=2×0.0005=0.00071m,相対 0.071 %.分母:T12−T22=4.8885−0.8612=4.0273s2.u(T2)=2Tu(T) より u(T12)=0.0075s2,u(T22)=0.0032s2.差の不確かさは 0.00752+0.00322=0.0082s2,相対 0.20 %.よって

g=4π2×1.0004.0273=9.803ms−2

相対標準不確かさは 0.0712+0.202=0.21 % なので,uc(g)=0.021ms−2 である.

  1. Δl′=0.200m で相対 0.35 %.T12−T22=3.2652−2.4712=0.7941s2,不確かさは (2×1.807×0.0017)2+(2×1.572×0.0017)2=0.0081s2,相対 1.03 %.合わせて 0.352+1.032=1.08 % で,(1) の約5倍になる.差の不確かさはあまり変わらないのに,差そのものが小さくなったからである.近い値どうしの差は相対不確かさが大きくなるので,2つの長さはできるだけ離す.確かめとして,(2) の値から計算すると g=9.94ms−2 で,9.80ms−2 との差 0.14ms−2 は,その不確かさ 0.11ms−2 と同じ程度である.

ポイント ここまでのまとめ

  • 一次近似から,どんな指数 n でも (xn)′=nxn−1.

  • 偏微分は,ほかの量を定数とみて1つの量で微分したもの.Δy≈∑∂f∂xkΔxk.

  • 独立なら uc(y)2=∑(∂f∂xk)2u(xk)2.和・差,積・商・べきの規則はこの特別な場合である.

  • 同じずれが両方に入る量どうしの差では,そのずれが消える.ただし近い値の差は相対不確かさが大きい.

09計算した量の不確かさの演習

値だけでなく,どの読みが結果の不確かさを決めるかを調べます.以下の値は架空で,特に断らない限り入力の不確かさは独立です.括弧の中は標準不確かさを表します.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

ばねの自然長を l0=0.2500m,おもりをつるした長さを l1=0.2820m と測りました.各長さの標準不確かさは 0.0005m です.両方の読みのずれは独立とします.

ばねの自然長l₀と,おもりをつるした長さl₁を示す.伸びの値は描いていない. ばねの自然長l₀と,おもりをつるした長さl₁を示す.伸びの値は描いていない.
  1. 伸び d=l1−l0 とその合成標準不確かさを求めよ.

  2. 伸びの相対標準不確かさを,長さ l1 の相対標準不確かさと比べよ.

解答を見る

考え方 差では不確かさそのものを2乗して足す.大きい量どうしの差は,値が小さくても不確かさが小さくなるとは限らない.

  1. d=0.0320m,uc(d)=0.00052+0.00052=0.00071m.結果は d=0.03200(71)m.

  2. u(d)/d=0.000707/0.0320≈0.022,つまり2.2 %.一方 u(l1)/l1=0.0005/0.2820≈0.0018,つまり0.18 % である.確かめとして,伸びが0に近づいても差の絶対不確かさは変わらず,相対不確かさは大きくなる.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

等速で走る台車が,間隔 L=0.750m の2つの光センサーを t=0.2500s で通過しました.u(L)=0.002m,u(t)=0.0010s です.

間隔Lの光センサーA・Bを台車が通過する時間tを測る.速さの値は示していない. 間隔Lの光センサーA・Bを台車が通過する時間tを測る.速さの値は示していない.
  1. 速さ v=L/t とその合成標準不確かさを求めよ.

  2. 時間の不確かさだけが0になったとき,速さの不確かさはいくら残るか.

解答を見る

考え方 商の相対不確かさは,分子・分母の相対不確かさの2乗の和の平方根である.

  1. v=3.000ms−1.u(v)/v=(0.002/0.750)2+(0.0010/0.2500)2=0.00481 より,uc(v)=0.014ms−1.報告は v=3.000(14)ms−1.

  2. u(v)=u(L)/t=0.0080ms−1 残る.時間を良くしても距離の寄与は消えない.確かめとして,距離の不確かさを時間で割った単位は速さの単位になる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

静かに放した小球の落下距離を h=0.800m,落下時間を t=0.4040s と測りました.u(h)=0.001m,u(t)=0.0020s です.空気抵抗は無視し,g=2h/t2 を使います.

小球を放す装置と下のセンサーを示す.球の同じ点が移動する距離hを測る. 小球を放す装置と下のセンサーを示す.球の同じ点が移動する距離hを測る.
  1. g とその合成標準不確かさを求めよ.

  2. 距離または時間の不確かさの一方だけを半分にできます.どちらを改善すべきか,両方の案を計算して比べよ.

解答を見る

考え方 g∝ht−2 なので,時間の相対不確かさは2倍に効く.

  1. g=2×0.800/0.40402=9.803ms−2.距離の寄与は 0.001/0.800=0.00125,時間は 2×0.0020/0.4040=0.00990.uc(g)=9.8030.001252+0.009902=0.098ms−2.g=9.803(98)ms−2 と報告する.

  2. 距離を改善すると u(g)=9.8030.0006252+0.009902=0.097ms−2,時間を改善すると 9.8030.001252+0.004952=0.050ms−2.時間の改善が有効である.確かめとして,時間が長めに出ると g は小さくなり,微分の負の符号と一致する.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

円柱の直径を D=2.000cm,高さを H=5.000cm と測りました.u(D)=0.020cm,u(H)=0.020cm です.体積は V=πD2H/4 です.

円柱の直径Dと高さHを示す.体積や不確かさの答えは描いていない. 円柱の直径Dと高さHを示す.体積や不確かさの答えは描いていない.
  1. 体積と合成標準不確かさを求めよ.

  2. 直径を2回掛けるので,独立な2つの測定として寄与を足してよいか.

解答を見る

考え方 同じ測定値の2乗は,1つの量のべきとして扱う.同じ値を式に2回書いても,測定が2つになったわけではない.

  1. V=π×2.0002×5.000/4=15.708cm3.直径の寄与は 2u(D)/D=0.0200,高さは u(H)/H=0.00400.uc(V)=15.7080.02002+0.004002=0.32cm3.V=15.71(32)cm3 と報告する.

  2. いけない.D のずれは2つの因子に同時に入るので,相対的なずれは2倍である.2 倍ではない.確かめとして,D が1 % 増えれば D2 は 1.012=1.0201 倍で,約2 % 増える.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

壁までの距離 L=12.00m,直接音から反射音までの間隔 τ=0.07060s を得ました.u(L)=0.020m,u(τ)=0.00020s です.音源とマイクは同じ位置にあり,c=2L/τ を使います.比較する基準の音速を 343.0ms−1 とし,その不確かさは無視します.

壁までの距離Lと往復経路,直接音と反射音の山の間隔τを示す.時間差の数値は描いていない. 壁までの距離Lと往復経路,直接音と反射音の山の間隔τを示す.時間差の数値は描いていない.
  1. 音速と合成標準不確かさ,k=2 の拡張不確かさを求めよ.

  2. 基準は c±U の範囲に入るか.この比較だけで測定ミスと断定してよいか.

解答を見る

考え方 2は正確な定数で,不確かさを持ち込まない.比較では,何倍の標準不確かさの幅かを明示する.

  1. c=24.00/0.07060=339.94ms−1.uc(c)=c(0.020/12.00)2+(0.00020/0.07060)2=1.1ms−1.U=2uc=2.2ms−1.標準不確かさで c=339.9(11)ms−1 と報告する.

  2. 丸め前の値では範囲は約 337.71〜342.18ms−1 で,基準は入らない.ただし包含係数2の範囲は必ず真の値を含む境界ではない.室温などの条件が基準と同じか,反射経路の選択や器械の時間尺度に見落としがないかを調べる.確かめとして,往復距離を片道と取り違えると約半分の値になり,今回の差よりはるかに大きい.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

斜面の高さと斜面に沿った長さの比 q=h/L を測ります.h=0.0800m,L=0.4000m で,各読みの独立な標準不確かさは 0.0005m です.さらに,同じものさしの目盛り間隔には,共通の小さな倍率のずれ ε があり,u(ε)=0.010 とします.このずれだけなら,両方の読みは (1+ε)h,(1+ε)L になります.

直角三角形の高さhと斜辺の長さLを,同じものさしで測る.比の値は示していない. 直角三角形の高さhと斜辺の長さLを,同じものさしで測る.比の値は示していない.
  1. 共通の倍率のずれが q にどう入るか,分数を直接計算して調べよ.

  2. 独立な読みの不確かさだけから u(q) を求めよ.倍率のずれまで独立として合成すると,なぜ過大評価になるか.

解答を見る

考え方 同じ原因によるずれは独立ではない.先に同じ ε を式に入れ,消えるかどうかを確かめる.

  1. q′=(1+ε)h/[(1+ε)L]=h/L.共通の倍率は,このモデルでは厳密に消える.独立な読みの小さなずれとの積は1次近似では無視する.

  2. q=0.2000,u(q)=q(0.0005/0.0800)2+(0.0005/0.4000)2=0.0013.q=0.2000(13) と報告する.倍率を独立として入れると,消えるはずの u(ε)2 を2つ足してしまう.ここでは共分散の一般式を使わず,共通の原因を式に表して判断した.確かめとして,q は長さ同士の比なので無次元であり,ものさしの単位を変えても値は変わらない.

ポイント 教える人へ

まず式に入る測定値を列挙し,同じ読みを2回使っていないかを調べてもらってください.相対不確かさを比べるときは指数も含めます.演習6では,独立な場合の公式を機械的に当てはめず,同じ原因のずれを同じ文字で書けることが理解の目安です.

10グラフでモデルを確かめる

問い

ここまで,周期の式 T=2πl/g が正しいものとして,長さと周期から g を求めてきました.しかし,この式そのものは正しいのでしょうか.1つの長さで周期を測るだけでは,式は確かめられません.l と T を測れば,式から何かしらの g が必ず計算できてしまうからです.周期の式が正しいことを,測定からどうやって確かめればよいでしょうか.

考えてみる

式を確かめるには,条件を変えて測り,同じ1つの定数で全部の結果が説明できるかを調べます.おもりの上端までの読み l′ を 0.200m から 1.200m まで6通りに変え,それぞれ振れ角を約 5∘ にそろえて,10周期の時間から周期を求めました(説明のために作った例の値です).

l′[m]

0.200

0.400

0.600

0.800

1.000

1.200

T[s]

0.928

1.288

1.572

1.807

2.020

2.211

T2[s2]

0.861

1.659

2.471

3.265

4.080

4.889

T を l′ に対してグラフにすると,上に凸の曲線になります.しかし,曲線が l の形なのか,l0.4 の形なのか,目で見分けるのは困難です.曲線は,形の違いが見えにくいのです.

直線になる軸を選ぶ

周期の式を2乗すると T2=4π2gl です.T2 を縦軸に,長さを横軸にとれば,式が正しいなら直線になります.直線かどうかなら,定規を当てるだけで目で判断できます.

横軸は,実際に読んだ l′ のままにします.l=l′+r(r はおもりの半径)なので

T2=4π2gl′+4π2gr

となり,傾きは b=4π2g,縦軸の切片は a=4π2rg です.傾きから g=4π2b が求まります.直線が横軸と交わる点は l′=−r で,これは l=0 の点です.

ここに大事な利点があります.長さの読みに一定のずれ(おもりの半径,支点の位置の見誤り,ものさしの端のすり減り)があっても,直線が横にずれるだけで,傾きは変わりません.1組の測定から g=4π2l/T2 を計算すると,一定のずれはそのまま g に入りますが,傾きから求めればそのずれを避けられます.

本文の6点を最小二乗直線に重ねる.傾き b はΔ(T²)/Δl′.原点の近くを拡大して縦の切片 a と横軸との交点 l′ = −r を示す.拡大図は上下の縮尺が全体図と異なる. 本文の6点を最小二乗直線に重ねる.傾き b はΔ(T²)/Δl′.原点の近くを拡大して縦の切片 a と横軸との交点 l′ = −r を示す.拡大図は上下の縮尺が全体図と異なる.

直線を当てはめる

測った点は少しずつ散らばるので,全部の点を通る直線はありません.そこで,各点の縦のずれ(残差)ei=yi−(a+bxi) の2乗の和が最小になるように a,b を決めます.これを最小二乗法といい,計算は次の節で行います.表のデータでは

b=4.028s2m−1,a=0.0511s2

となり,g=4π24.028=9.801ms−2,標準不確かさは 0.017ms−2 です.横軸との交点は −ab=−0.0127m で,おもりの半径 1.27cm とよく合います.

残差を見る

直線に乗っているように見えても,それだけでは安心できません.当てはめた後の残差を,横軸に対して並べてみます.

l′[m]

0.200

0.400

0.600

0.800

1.000

1.200

残差 [s2]

+0.004

−0.003

+0.003

−0.009

+0.001

+0.004

残差の符号に決まった並びはなく,大きさは 0.01s2 以下です.どの長さでも前の題材と同じ測り方(t10 を10回)をしたとして,周期の標準不確かさを 0.0017s とすると,T2 の標準不確かさは 2Tu(T),つまり 0.003〜0.008s2 ほどと見込まれるので,残差はその程度に収まっています.これで初めて,「この範囲の長さで,周期の式は測定の精度の範囲で成り立つ」といえます.

測り方を変えてみます.どの長さでも,おもりを水平に 15cm 引いて放したとします.すると短い振り子ほど振れ角が大きくなり,l′=0.200m では約 45∘ にもなります.第7章で見るように,振れ角が大きいと周期は長くなるので,短い振り子の T2 だけが大きく出ます.この測定に直線を当てはめると,残差は左から +0.018, −0.011, −0.012, −0.006, +0.001, +0.010s2 と,両端で正,中ほどで負の弓なりになります.左端の点が持ち上がった分だけ直線の傾き b が緩やかになるので,傾きから出した g=4π2/b は大きく出て,9.93ms−2 へずれます.1点だけで測るなら周期が延びた分 g は小さく出ますが,傾きで求めると逆向きにずれることに注意してください.点の並びを眺めただけでは直線に見えても,残差に形があれば,モデル(振れ角の小さい単振り子)が測定の条件に合っていないと分かります.

ポイント モデルを確かめる手順

  1. 条件(ここでは長さ)を広い範囲で変えて測る.

  2. モデルが正しければ直線になる軸を選ぶ.

  3. 直線を当てはめ,傾きと切片の物理的な意味を確かめる.

  4. 残差を並べ,形が無く,大きさが測定の不確かさ程度かを見る.形があれば,モデルか測り方を疑う.

ポイント ここまでのまとめ

  • 1組の測定からは,式が正しくなくても何かの定数が出てしまう.条件を変えて,同じ定数で全部が説明できるかを見る.

  • 直線になる軸(T2 と l′)を選ぶ.傾き 4π2/g から g を求めると,長さの一定のずれは切片に入り,傾きには入らない.

  • 残差に形が無く,大きさが不確かさ程度なら,モデルはその範囲で成り立つ.弓なりなどの形は,モデルのずれを教える.

  • 問いの答え:長さを変えて T2 と l′ のグラフが直線になること,残差に形が無いことを確かめる.傾きから g=9.801ms−2(標準不確かさ 0.017),切片からおもりの半径が読み取れた.

11最小二乗法と両対数グラフ

前の節では,測った点に直線を当てはめ,その傾きから g を求めました.この節では,当てはめの式(最小二乗法)を偏微分で導き,傾きの不確かさも出します.最後に,べきの指数を読む両対数グラフを扱います.

定理 数学の道具:最小二乗法と両対数グラフ

最小二乗法. 点 (xi,yi)(i=1,…,N)に直線 y=a+bx を当てはめる.縦のずれ(残差)ei=yi−a−bxi の2乗の和

S(a,b)=∑i=1N(yi−a−bxi)2

を最小にする a,b を選ぶ.S は a についても b についても2次式で,a,b を大きく動かすといくらでも大きくなるので,最小の点では両方の偏微分が0になる.

∂S∂a=−2∑(yi−a−bxi)=0,∂S∂b=−2∑xi(yi−a−bxi)=0

1つ目から y¯=a+bx¯,つまり直線は点 (x¯,y¯) を通る.これを2つ目に入れて ∑xi[(yi−y¯)−b(xi−x¯)]=0.∑x¯(yi−y¯)=0,∑x¯(xi−x¯)=0 を引いてよいので

b=∑(xi−x¯)(yi−y¯)∑(xi−x¯)2,a=y¯−bx¯

分母を Sxx=∑(xi−x¯)2 と書く.定数 c だけを当てはめる(b=0)なら c=y¯ になり,平均は最小二乗法の特別な場合である.

傾きと切片の不確かさ. ∑(xi−x¯)y¯=0 なので,b=∑wiyi,wi=xi−x¯Sxx と,b は yi の1次式である.各 yi が独立に同じ標準不確かさ σ を持つなら,前の題材の合成の式(偏微分は wi)から

u(b)2=∑wi2σ2=σ2Sxx

同様に a=∑(1N−x¯wi)yi で,∑wi=0 を使うと u(a)2=σ2(1N+x¯2Sxx).σ は残差から se=∑ei2N−2 で見積もる.N−2 で割るのは,データから a,b の2つを決めた分だけ残差が小さく出るからである(平均の1つを決めたときの N−1 と同じ考え方).x を広い範囲に散らすほど Sxx が大きくなり,傾きは確かになる.

常用対数. x=10p となる指数 p を log10⁡x と書き,x の常用対数という.log10⁡1=0,log10⁡10=1,log10⁡0.1=−1 である.第4章の自然対数 ln と同じく,指数法則から log10⁡(AB)=log10⁡A+log10⁡B,log10⁡xn=nlog10⁡x が成り立つ.2つの対数は log10⁡x=ln⁡x/ln⁡10 と定数倍だけ違う.

両対数グラフ. y=Cxn の常用対数を取ると

log10⁡y=log10⁡C+nlog10⁡x

log10⁡x を横軸,log10⁡y を縦軸にとると直線になり,傾きが指数 n,切片が log10⁡C である.指数が分からないべきの関係は,両対数グラフの傾きで読む.

練習1. 3点 (0,1),(1,3),(2,4) に直線を当てはめよ.また,残差から se と u(b) を求めよ.

練習2. y=Cxn のグラフが (x,y)=(1,2) と (10,200) を通る.両対数グラフの傾きと切片から n と C を求めよ.

答え:x¯=1,y¯=83,Sxx=2,∑(xi−x¯)(yi−y¯)=(−1)(−53)+0+1⋅43=3.よって b=1.5,a=83−1.5=76≈1.17.残差は ei=−16, 13, −16 で,∑ei2=16.N−2=1 なので se=1/6≈0.41,u(b)=se/Sxx=1/12≈0.29.

練習2の答え:log10⁡x は 0 と 1,log10⁡y は log10⁡2 と log10⁡2+2.傾きは n=2,切片は log10⁡C=log10⁡2 で C=2.つまり y=2x2.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

前の節の表(x=l′,y=T2)について,x¯,y¯,Sxx,∑(xi−x¯)(yi−y¯) を計算し,傾き b,切片 a と,g=4π2/b を求めよ.

x[m]

0.200

0.400

0.600

0.800

1.000

1.200

y[s2]

0.861

1.659

2.471

3.265

4.080

4.889

解答を見る

考え方 ∑(xi−x¯)y¯=0 なので,分子は ∑(xi−x¯)yi で計算してよい.

x¯=0.700m.xi−x¯=−0.5, −0.3, −0.1, 0.1, 0.3, 0.5m なので Sxx=2×(0.25+0.09+0.01)=0.70m2.y¯=17.2256=2.8708s2.

∑(xi−x¯)yi=−0.4305−0.4977−0.2471+0.3265+1.2240+2.4445=2.8197ms2

よって

b=2.81970.70=4.028s2m−1,a=y¯−bx¯=2.87083−2.81970=0.0511s2

g=4π24.0281=9.801ms−2 である.確かめとして,単位は b が s2m−1 なので 4π2/b は ms−2 になる.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

例題 1 の当てはめについて答えよ.

横軸に上端までの長さ l′ の6つの目盛り,縦軸に残差 e_i を示す.残差0の水平線がある.残差の点と縦軸の数値目盛りは示していない. 横軸に上端までの長さ l′ の6つの目盛り,縦軸に残差 e_i を示す.残差0の水平線がある.残差の点と縦軸の数値目盛りは示していない.
  1. 各点の残差 ei と,残差の標準偏差 se を求めよ.

  2. 傾きの標準不確かさ u(b) と,g の標準不確かさを求めよ.

  3. 切片の標準不確かさ u(a) を求めよ.横軸との交点 −a/b から読んだおもりの半径は,ノギスで測った r=1.270cm と合っているか.b の不確かさは小さいので無視してよい.

解答を見る

考え方 残差から se を出し,σ の代わりに使う.g∝b−1 なので,g の相対不確かさは b と同じである.

  1. ei=yi−0.05113−4.02814xi を計算すると,10−3s2 単位で 4.2, −3.4, 3.0, −8.6, 0.7, 4.1.∑ei2=1.30×10−4s4 より

se=1.30×10−46−2=0.0057s2

確かめとして,残差の和は0になる(直線が (x¯,y¯) を通るから).

  1. u(b)=0.005710.70=0.0068s2m−1.相対で 0.00684.028=0.17 % なので,u(g)=9.801×0.0017=0.017ms−2.結果は g=9.801(17)ms−2.

  2. u(a)=0.00571×16+0.490.70=0.00571×0.931=0.0053s2.交点から読む半径は ab=0.051134.0281=0.0127m,その不確かさは 0.00534.028=0.0013m.つまり 1.27cm(標準不確かさ 0.13cm)で,ノギスの 1.270cm と合っている.グラフの切片は,長さの読みに一定のずれがあることを数で教えてくれる.ただし不確かさはノギスよりずっと大きく,半径そのものを測る方法としては粗い.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

周期の式を知らないものとして,振り子の長さ l(おもりの中心まで)を変えて周期 T を測った.T=Cln の形を仮定して,両対数グラフから n と C を求めよ.さらに C=2π/g として g を求めよ.

l[m]

0.100

0.200

0.400

0.800

1.600

T[s]

0.635

0.898

1.269

1.795

2.539

解答を見る

考え方 長さは2倍ずつなので,log10⁡l は等間隔に並ぶ.両端の2点で傾きを見積もり,全体で確かめる.

log10⁡l=−1.000, −0.699, −0.398, −0.097, 0.204,log10⁡T=−0.1972, −0.0467, 0.1035, 0.2541, 0.4047.log10⁡T も 0.1505 ほどずつ等間隔に増えるので,点は直線に乗る.両端から

n=0.4047−(−0.1972)0.204−(−1.000)=0.60191.204=0.500

5点に最小二乗法を使っても n=0.4998 となる.n=0.5 として,切片は log10⁡C=log10⁡T―−0.5×log10⁡l―=0.1036+0.1990=0.3026,C=2.007sm−1/2.g=4π2C2=39.484.028=9.80ms−2.確かめとして,l=1m では log10⁡l=0 なので,C は長さ 1m の振り子の周期(約 2.0s)に当たる.また n=12 は,第2章の次元解析で出した T∝l/g と一致する.

ポイント ここまでのまとめ

  • 最小二乗法は,残差の2乗の和を最小にする.偏微分を0とおいて b=∑(xi−x¯)(yi−y¯)∑(xi−x¯)2,a=y¯−bx¯.直線は (x¯,y¯) を通る.

  • b は yi の1次式なので,u(b)=se/Sxx.se は残差の2乗の和を N−2 で割って求める.x を広く散らすほど傾きは確かになる.

  • y=Cxn は両対数グラフで直線になり,傾きが n である.

12グラフでモデルを確かめる演習

グラフの傾きに,何の量がどの単位で現れるかを考えましょう.データはすべて架空で,最小二乗法を使う問題では横軸の不確かさを無視し,縦軸の偶然のずれは独立で同じ大きさとします.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

小球を静かに放し,落下時間 t と落下距離 h を測ります.空気抵抗を無視したモデルは h=gt2/2 です.

落下する小球と,横軸t²,縦軸hの空のグラフを示す.測定点と直線は描いていない. 落下する小球と,横軸t²,縦軸hの空のグラフを示す.測定点と直線は描いていない.
  1. 直線にするには何を横軸・縦軸にすればよいか.傾きの意味と単位を答えよ.

  2. 距離の読みに一定の加算のずれが入ると,直線のどこが変わるか.時間の始めのずれも同じように扱えるか.

解答を見る

考え方 実際に器械が読む量をモデルの式に代入し,直線の傾き・切片に分ける.

  1. 横軸 x=t2[s2],縦軸 y=h[m] とすると,y=bx,b=g/2 で単位は ms−2.

  2. 距離のずれ d は y=d+(g/2)x の切片に入る.一方,読んだ時間が t′=t+δ なら,h=g(t′−δ)2/2 となり,t′2 に対する切片だけでは表せない項が残る.確かめとして,d=0,δ=0 なら原点を通る直線に戻る.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

音源から距離 x を変えてマイクを置き,到達時間の読み y を得ました.音は等速で進み,器械には一定の時間のずれ δ があるとして,y=δ+x/c を仮定します.

x[m]

1.00

2.00

3.00

4.00

5.00

y[s]

0.010

0.012

0.016

0.018

0.022

横軸xは音源からマイクまでの距離,縦軸yは時間の読み.問題の5点を示し,直線は描いていない. 横軸xは音源からマイクまでの距離,縦軸yは時間の読み.問題の5点を示し,直線は描いていない.
  1. 最小二乗直線 y=a+bx を求め,c と δ を求めよ.

  2. 原点を必ず通る直線を使うと問題になる理由を述べよ.

解答を見る

考え方 傾きは音速ではなく音速の逆数である.器械の時間のずれもデータから決める.

  1. x¯=3.00m,y¯=0.0156s,Sxx=10.0m2,∑(xi−x¯)(yi−y¯)=0.0300ms.したがって b=0.00300sm−1,a=0.00660s.c=1/b=333.3ms−1,δ=a=0.00660s.残差は順に 0.0004,−0.0006,0.0004,−0.0006,0.0004s.

  2. 原点を通すと一定の時間のずれを傾きで説明することになり,音速が変わってしまう.確かめとして,残差の和は0で,1/b の単位は速さである.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

静止から等加速度で動く台車について,横軸を x=t2,縦軸を位置の読み y とします.モデルは y=y0+αt2/2 で,α が加速度です.

x[s2]

0.00

1.00

2.00

3.00

4.00

y[m]

0.02

0.49

1.02

1.49

2.02

横軸t²と縦軸の位置の読みyの5点を示す.当てはめ直線と加速度は示していない. 横軸t²と縦軸の位置の読みyの5点を示す.当てはめ直線と加速度は示していない.
  1. a,b,残差の標準偏差 se,傾きの標準不確かさを求めよ.

  2. 加速度とその標準不確かさを報告せよ.

解答を見る

考え方 直線の傾きは加速度の半分なので,傾きだけでなくその不確かさも2倍する.

  1. x¯=2.00s2,y¯=1.008m,Sxx=10.0s4,分子は 5.00ms2.b=0.500ms−2,a=0.008m.残差は 0.012,−0.018,0.012,−0.018,0.012m で,2乗の和は 0.00108m2.se=0.00108/3=0.0190m,u(b)=se/10.0=0.0060ms−2.

  2. α=2b=1.000ms−2,u(α)=2u(b)=0.012ms−2.結果は α=1.000(12)ms−2.確かめとして,位置の一定のずれは a に入り,ここで求めた加速度を変えない.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

ある小球の落下について,時間 t=0.100,0.200,0.400s に対する距離が h=0.0490,0.196,0.784m でした.h=Ktn の形を仮定します.

時刻を1 s,距離を1 mで割った無次元の数の常用対数を軸にする.与えられた3点だけを描き,傾きは示していない. 時刻を1 s,距離を1 mで割った無次元の数の常用対数を軸にする.与えられた3点だけを描き,傾きは示していない.
  1. 両対数グラフの傾きから n を求めよ.

  2. K を求め,その単位と g との関係を答えよ.

解答を見る

考え方 対数を取る量は,単位で割った無次元の数にする.比から傾きを計算すれば単位の選択は傾きに入らない.

  1. 時間が2倍になると距離は4倍なので,n=log10⁡4/log10⁡2=2.両端でも n=log10⁡16/log10⁡4=2 になる.

  2. K=h/t2=0.0490/0.1002=4.90ms−2.静止からの自由落下なら K=g/2,よって g=9.80ms−2.確かめとして,3点すべてで h/t2 が同じである.ただし3点だけの一致から,任意の距離で空気抵抗がないことまでは証明できない.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

水平に進む台車の位置を,次のように動画で読みました.各位置の標準不確かさは 0.010m 程度です.等速モデル y=a+bt を確かめたいと考えています.

t[s]

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

y[m]

0.00

0.40

0.80

1.08

1.32

上は位置の5つの記録,下は残差を描くための空の枠.直線と残差の答えは示していない. 上は位置の5つの記録,下は残差を描くための空の枠.直線と残差の答えは示していない.
  1. 最小二乗直線と残差を求めよ.

  2. 残差の大きさを位置の不確かさと比べ,前半と後半の区間速度も使って,等速モデルを評価せよ.

解答を見る

考え方 全体の傾きだけでは,途中から速度が変わることを見逃す.残差と局所的な区間速度を両方見る.

  1. t¯=0.40s,y¯=0.720m,Sxx=0.400s2,分子は 0.664ms.b=1.660ms−1,a=0.0560m.残差は −0.056,+0.012,+0.080,+0.028,−0.064m.

  2. 最大の残差は 0.080m で,標準不確かさの約8倍もある.前半 0〜0.40s の速度は 2.00ms−1,後半 0.40〜0.80s は 1.30ms−1.この記録を等速とは見なせず,台車の減速や動画の読み方の変化を調べる.確かめとして,残差の和は0であるが,それだけでモデルが正しいとはいえない.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

一定の速さの台車を光センサーで調べ,距離 x と通過時間 y の傾きから速さを求めます.6点に直線を当てはめます.候補Aの距離は 0.40,0.45,0.50,0.55,0.60,0.65m,候補Bは 0.10,0.30,0.50,0.70,0.90,1.10m です.どちらも残差の標準偏差を se=0.0060s と見込みます.

候補Aの6距離と候補Bの6距離を同じ軸に並べる.縦の位置は候補を分けるためのもの.傾きや不確かさの答えは示していない. 候補Aの6距離と候補Bの6距離を同じ軸に並べる.縦の位置は候補を分けるためのもの.傾きや不確かさの答えは示していない.
  1. それぞれの Sxx と,傾きの標準不確かさを求めよ.

  2. 候補Bを選ぶ前に確かめるべき条件を挙げよ.測定の速さが途中で変わる場合にも同じ比較が使えるか.

解答を見る

考え方 回数だけでなく,横軸の平均からの広がりが傾きの不確かさを決める.

  1. Aは x¯=0.525m,Sxx=0.04375m2,u(b)=0.0060/0.04375=0.029sm−1.Bは x¯=0.600m,Sxx=0.700m2,u(b)=0.0072sm−1.Bでは不確かさが4分の1になる.

  2. 広い範囲でも同じ速さか,センサーの条件が一定か,距離の不確かさを無視できるかを確認する.途中で速度が変わると直線モデルが合わず,傾きの不確かさだけを比較して選べない.残差を見てから範囲を決める.確かめとして,Sxx は距離の2乗の単位を持つので,se/Sxx は傾きと同じ単位になる.

ポイント 教える人へ

グラフを描く前に,軸の単位と傾きの物理的な意味を説明してもらってください.残差の和が0になるのは当てはめの性質で,モデルの正しさの証拠ではありません.「データが直線に見える」と「残差が想定したばらつきに収まる」を区別できるか確かめます.

13第14章の章末問題

測る量の定義から,記録の整理と結果の報告までをつなげます.データはすべて架空です.不確かさは標準不確かさで,特に断らない限り独立とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

板の厚さについて,計算機の出力は d=0.0413723m,合成標準不確かさは uc(d)=0.0008267m でした.

  1. 不確かさを2桁に丸め,値の桁をそろえて報告せよ.括弧を使う形と,言葉で不確かさを明示する形の両方を書け.

  2. k=2 の拡張不確かさも報告せよ.「誤差は必ずこの範囲内である」といってよいか.

解答を見る

考え方 値の最後の桁は,不確かさの最後の桁に合わせる.包含係数は,幅が何の幅かを伝える情報である.

  1. uc=0.00083m,d=0.04137m.括弧では d=0.04137(83)m.言葉では「厚さ 0.04137m,合成標準不確かさ 0.00083m」と書く.

  2. 丸め前から U=2×0.0008267=0.0016534m なので,U=0.0017m(包含係数2)と報告する.これは必ず含む境界ではない.正規分布で近似できる場合の約95 % の範囲の目安であり,見落とした系統的な効果まで保証しない.確かめとして,括弧の83は 83×10−5m を意味し,単位も桁も一致する.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

ばねの長さを,12.01,11.99,12.03,11.97,12.00cm と5回読みました.読みの偶然のずれは独立です.器械の読みには +0.020cm の加算の偏りがあると別に分かっており,この偏りの見積もりの標準不確かさは 0.005cm です.

ばねの長さを測る装置と5回の読みを示す.補正後の平均は示していない. ばねの長さを測る装置と5回の読みを示す.補正後の平均は示していない.
  1. 読みの平均,標準偏差,平均のタイプAの標準不確かさを求めよ.

  2. 偏りを補正し,補正後の平均の合成標準不確かさを求めよ.測定回数を増やすだけでは消えない寄与は何か.

解答を見る

考え方 読みの平均から偏りを引く.補正値は全5回で共通なので,その不確かさをさらに 5 で割らない.

  1. l¯=12.000cm.偏差の2乗の和は 0.0020cm2,s=0.0020/4=0.0224cm,u(l¯)=0.0100cm.

  2. 補正後は l=12.000−0.020=11.980cm.uc(l)=0.01002+0.0052=0.011cm,よって l=11.980(11)cm.補正値の寄与 0.005cm は,ばねの測定回数だけ増やしても消えない.確かめとして,正の偏りを引いたので,補正後の長さは読みより小さい.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

小球を静かに放す装置で,高さ h=1.200m の落下時間を5回測りました.u(h)=0.002m,時間の記録は 0.494,0.498,0.496,0.492,0.500s です.時間の独立な偶然のずれ以外は無視し,空気抵抗も無視します.

小球を静かに放す装置と下のセンサー,球の移動距離hを示す. 小球を静かに放す装置と下のセンサー,球の移動距離hを示す.
  1. 時間の平均,標準偏差,平均の標準不確かさを求めよ.

  2. g=2h/t¯2 とその合成標準不確かさを求めよ.一定の初速度が入る可能性を,繰り返しだけで否定できるか.

解答を見る

考え方 5回のばらつきを平均の不確かさに変えてから,g に伝える.静かに放すという条件も式の一部である.

  1. t¯=0.4960s,偏差の2乗の和は 4.00×10−5s2.s=0.00316s,u(t¯)=0.00141s.

  2. g=2.400/0.49602=9.755ms−2,uc(g)=g(0.002/1.200)2+(2×0.001414/0.4960)2=0.058ms−2.g=9.755(58)ms−2 と報告する.毎回同じ初速度が入れば,時間は同じ向きに変わるので,繰り返しだけでは否定できない.放し方や高さを変える測定が必要になる.確かめとして,g の単位は距離を時間の2乗で割った単位である.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

台車が静止から斜面を下る実験で,モデルとして斜面方向の加速度を α=gh/L と仮定します.L は斜面に沿った長さ,h はその高さです.抵抗や回転の影響があればこのモデルから外れるので,ここではそれらを無視します.斜面上を距離 s 進む時間は s=αt2/2 に従うとします.

斜面の高さh,全長L,台車が計時中に進む距離sを区別して示す. 斜面の高さh,全長L,台車が計時中に進む距離sを区別して示す.
  1. g を s,L,h,t で表せ.s=0.5000m,L=1.000m,h=0.1000m,t=1.010s で値を求めよ.

  2. 独立な標準不確かさが順に 0.0010m,0.002m,0.0010m,0.003s であるとき,g の不確かさを求めよ.最も大きい寄与はどれか.

解答を見る

考え方 斜面の運動のモデルは問題で与えられている.その式を組み合わせ,指数を含む相対不確かさを足す.

  1. α=2s/t2 なので,g=2sL/(ht2)=9.803ms−2.

  2. 相対寄与は順に 0.00200,0.00200,0.0100,0.00594.uc(g)=9.8030.002002+0.002002+0.01002+0.005942=0.12ms−2.g=9.80(12)ms−2 と報告する.高さの読みが最大の寄与で,斜面が低すぎるとその相対不確かさが大きくなる.確かめとして,2sL/(ht2) は ms−2 の次元を持つ.モデルの抵抗の無視を確かめるには,斜面の高さを変えて同じ g が出るか調べる.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

鉛直なばねにおもりをつるし,質量 m を変えて,固定した上端から下端までの長さ l を測った.モデルは l=l0+mg/k である.l0 は自然長,k はばね定数である.重力加速度は g=9.80ms−2 とし,その不確かさは無視する.質量の不確かさは無視し,各長さの偶然のずれは独立で同じ大きさとする.

m[kg]

0.200

0.300

0.400

0.500

0.600

l[m]

0.220

0.264

0.318

0.362

0.416

上は固定した上端から下端までの長さ l を測るばねとおもり.中は質量 m と長さ l の5点,下は空の残差の枠.当てはめた直線と残差の値は描いていない. 上は固定した上端から下端までの長さ l を測るばねとおもり.中は質量 m と長さ l の5点,下は空の残差の枠.当てはめた直線と残差の値は描いていない.
  1. 最小二乗直線 l=a+bm を求め,k と l0 を求めよ.

  2. 残差,se,u(b),u(a) から k と l0 の標準不確かさを求めよ.残差が小さいことだけで,質量の目盛りの倍率が正しいと確かめられるか.

解答を見る

考え方 傾きは g/k,切片は自然長である.質量の目盛り全体の倍率は傾きに入り,残差には出ない.

  1. m¯=0.400kg,l¯=0.316m,Sxx=0.100kg2,分子は 0.0490mkg.b=0.490mkg−1,a=0.120m.k=g/b=9.80/0.490=20.0Nm−1,l0=a=0.120m.

  2. 残差は 0.002,−0.003,0.002,−0.003,0.002m.2乗の和は 3.00×10−5m2,se=1.00×10−5=0.00316m.u(b)=1.00×10−5/0.100=0.0100mkg−1.u(k)=ku(b)/b=20.0×0.0100/0.490=0.408Nm−1 で,2桁に丸めて 0.41Nm−1.u(l0)=se1/5+0.4002/0.100=1.80×10−5=0.00424m で,2桁に丸めて 0.0042m.報告は k=20.00(41)Nm−1,l0=0.1200(42)m.残差だけでは確かめられない.全質量の読みが同じ倍率でずれても点は直線上に残り,ずれは傾きに入って k が変わる.この倍率だけでは l0 は変わらない.質量は別の基準と比べる.確かめとして,残差の和と ∑(mi−m¯)ei は0になる.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

同じ動画と目盛りを使い,台車の2区間の平均の速さを比べます.距離の読みは L1=0.400m,L2=0.600m,時間は t1=t2=0.2000s でした.距離の独立な読みの不確かさは無視しますが,両距離には同じ倍率のずれがあり,その相対標準不確かさは1 % です.各時間の標準不確かさは独立に 0.0010s です.

台車の二つの測定区間L₁とL₂,それぞれの時間t₁とt₂を示す.両距離の目盛りは共通.速さの比は描いていない. 台車の二つの測定区間L₁とL₂,それぞれの時間t₁とt₂を示す.両距離の目盛りは共通.速さの比は描いていない.
  1. 速さの比 R=v2/v1 とその標準不確かさを求めよ.

  2. 目盛りの倍率を調べ直さなくても,速さが変わったと判断できるか.これだけで加速度が一定ともいえるか.

解答を見る

考え方 比を入力の読みの式に戻すと,共通の距離の倍率が消える.2つの速さの不確かさを独立として足さない.

  1. R=L2t1/(L1t2)=1.500.L1,L2 の両方に (1+ε) を掛けても比は変わらない.したがって u(R)=R(0.0010/0.2000)2+(0.0010/0.2000)2=0.011.R=1.500(11) と報告する.

  2. 比と1との差 0.500 は 2u(R)≈0.021 より十分大きいので,この測定モデルの範囲では速さが変わったと判断できる.ただし2区間の平均の速さだけでは,一定加速度かどうかは決まらない.時刻と位置をさらに記録してモデルを確かめる必要がある.確かめとして,R は無次元で,距離を cm に換算しても同じ値である.

14第14章の発展問題

装置の計画とデータ処理を一続きで考えます.必要な運動のモデルや新しい処理方法は問題中で与えます.データは架空で,標準不確かさは1次近似で評価します.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

ばねにつるす質量 m を変え,振動の周期 T を測って,ばね定数 k を求めます.ばね定数は「ばねの伸び1 mあたりの力」で,単位は Nm−1=kgs−2 です.ここでは第7章で導く周期の式を拡張したモデル T2=4π2(m+m0)/k を与えます.m0 は,ばね自身や取付具の動きをまとめた一定の有効質量で,未知です.

ばね,取付具,交換する質量mを示す.下は与えられたmとT²の5点で,直線は描いていない. ばね,取付具,交換する質量mを示す.下は与えられたmとT²の5点で,直線は描いていない.

m[kg]

0.100

0.200

0.300

0.400

0.500

T2[s2]

0.240

0.440

0.646

0.840

1.046

  1. 測る量,そろえる条件,記録すべき生の値を挙げよ.

  2. 横軸の不確かさを無視し,各 T2 の独立な偶然のずれが同じ大きさとして直線を当てはめ,k,m0,当てはめからの u(k) を求めよ.m0 の不確かさは求めなくてよい.

  3. 時計の全測定に共通する倍率の相対標準不確かさが0.2 % と分かった.これを含む k の合成標準不確かさを求めよ.切片を0と決めつけると何が起こるか.

解答を見る

考え方 周期の2乗と質量を直線にし,傾きから k,切片と傾きの比から m0 を出す.時計の倍率は繰り返しのばらつきとは別に残る.

  1. おもりの質量と,例えば10振動分の時間 t10 を測り,T=t10/10 にする.支点・取付具・振れ幅の条件をそろえ,ばねが伸び切らない範囲を使う.質量,時間の各読み,回数,振れ幅,器械の分解能を残す.同じ向きの通過を数え,質量を戻したときにも周期が再現するか調べる.

  2. m¯=0.300kg,y¯=0.6424s2,Sxx=0.100kg2,分子 0.2012kgs2.b=2.012s2kg−1,a=0.0388s2.k=4π2/b=19.621Nm−1,m0=a/b=0.0193kg.残差は 0,−0.0012,0.0036,−0.0036,0.0012s2,2乗の和は 2.88×10−5s4.se=0.00310s2,u(b)=0.00980s2kg−1,u(k)=ku(b)/b=0.096Nm−1.

  3. 時間の倍率は T2 に2倍効き,k への相対寄与は0.4 %.uc(k)=0.095552+(19.621×0.004)2=0.12Nm−1.k=19.62(12)Nm−1 と報告する.原点を強制すると有効質量を傾きで説明するため,k を小さく見積もる.確かめとして,m0→0 なら切片が消え,4π2/b の単位は kgs−2 になる.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

音の反射を使う装置で,壁までの距離 L と,出力音から反射音までの時間の読み y を測りました.音源とマイクは同じ位置にあります.一定の電子回路の遅れを δ として,モデルは y=δ+2L/c です.

L[m]

0.500

1.000

1.500

2.000

2.500

y[s]

0.00495

0.00784

0.01085

0.01374

0.01675

音源とマイク,壁までの距離L,往復する音の経路を示す.波形には出力と反射音の山だけを描く. 音源とマイク,壁までの距離L,往復する音の経路を示す.波形には出力と反射音の山だけを描く.
  1. 直線を当てはめ,c,δ,残差の標準偏差,当てはめからの u(c) を求めよ.横軸の不確かさを無視し,縦軸の偶然のずれは独立で同じ大きさとする.

  2. 距離の共通の倍率の相対標準不確かさ0.3 % と,時計の共通の倍率の相対標準不確かさ0.2 % を加えて,c を報告せよ.2つの倍率のずれと当てはめの偶然のずれは独立とする.

  3. 残差が小さいことだけで δ が電子回路の遅れだと断定できるか.室温がゆっくり変わる場合の測定順序も提案せよ.

解答を見る

考え方 一定の時間の効果は切片,長さと時間の倍率の効果は傾きに入る.原因の種類ごとに不確かさを分ける.

  1. L¯=1.500m,y¯=0.010826s,Sxx=2.500m2,分子 0.014750ms.b=0.005900sm−1,a=0.001976s.c=2/b=338.983ms−1.1ms=10−3s,1μs=10−6s として,δ=1.976ms.残差は 24,−36,24,−36,24μs,se=37.95μs,u(b)=24.0μsm−1.u(c)=cu(b)/b=1.38ms−1.

  2. c は長さに比例し時間に反比例するので,相対寄与はそれぞれ0.3 % と0.2 %.uc(c)=c(0.0000240/0.005900)2+0.0032+0.0022=1.8ms−1.c=339.0(18)ms−1 と報告する.

  3. 断定できない.距離の基準位置の一定のずれも切片に入る.電子回路の遅れは別の電気的な信号で調べ,距離の基準は音源・マイクの位置に合わせる.温度変化と距離が結び付かないよう,距離を小さい順だけに測らず,順を入れ替え,同じ中間距離を測定の途中に繰り返す.確かめとして,距離を 0.500m 増やすと,遅れは傾きから 2.950ms 増える.

演習 3

オリジナル ★★★★★

自由落下する球を動画で追い,下向きの位置 h を読みます.撮影開始の位置と初速度は未知で,モデルは h(t)=h0+v0t+gt2/2 です.時刻の間隔は Δ=0.1000s,各位置の独立な標準不確かさは σ=0.0020m とします.

t[s]

0.1000

0.2000

0.3000

0.4000

0.5000

h[m]

0.080

0.244

0.512

0.873

1.336

等間隔の時刻で読む球の5位置を示す.時刻と位置は問題の生の記録だけで,差や加速度は示していない. 等間隔の時刻で読む球の5位置を示す.時刻と位置は問題の生の記録だけで,差や加速度は示していない.
  1. 連続する3点から gj=(hj−2hj+1+hj+2)/Δ2 を作ると,h0,v0 が消えることを示せ.3つの gj と,1つの gj の標準不確かさを求めよ.

  2. g¯=(g1+g2+g3)/3 を,元の5つの読みの1次式として書き直し,標準不確かさを求めよ.3つの gj を独立として計算してはいけない理由を説明せよ.

  3. 時計の全時刻に共通する倍率の相対標準不確かさが0.1 % ある.これを含めて g¯ を報告せよ.位置の共通の加算のずれと倍率のずれのうち,消えるのはどちらか.測定の改善案も述べよ.

解答を見る

考え方 隣り合う差は同じ画像の読みを共有する.新しい量の独立性を仮定せず,独立と分かっている元の読みへ戻して合成する.

  1. 定数項は 1−2+1=0,時間の1次項も t−2(t+Δ)+(t+2Δ)=0.2次項だけが gΔ2 残る.3つの値は 10.4,9.3,10.2ms−2.1つの値の不確かさは u(gj)=12+(−2)2+12σ/Δ2=0.490ms−2.

  2. 足して整理すると g¯=(h1−h2−h4+h5)/(3Δ2)=9.9667ms−2.h3 は消える.独立な4つの読みの係数の2乗を足すので,u(g¯)=2σ/(3Δ2)=0.1333ms−2.0.490/3=0.283ms−2 とは異なる.各 gj には同じ読みが異なる符号で入り,ずれが互いに関係するからである.

  3. 時計の相対寄与は 2×0.001=0.002.uc(g¯)=0.13332+(9.9667×0.002)2=0.13ms−2.結果は g¯=9.97(13)ms−2.位置の加算のずれは係数の和が0なので消えるが,位置の倍率は残る.改善には位置の読みを良くするか,等間隔を保って Δ を広げる方法がある.ただし空気抵抗や画面外への落下が問題にならない範囲にする.確かめとして,u(g¯)∝Δ−2 で,間隔を2倍にできれば位置由来の寄与は4分の1になる.

演習 4

オリジナル ★★★★★

一定の速さの台車を2つの方法で測り,y1=1.020ms−1,y2=0.980ms−1 を得ました.独立な偶然のずれの標準不確かさは u1=0.020ms−1,u2=0.040ms−1 です.不確かさの違う読みをまとめる方法として,重みつき最小二乗法をここで導入します.候補の速さ v に対し,S(v)=∑i=12(yi−v)2/ui2 を最小にします.

二つの方法の読みと,独立な偶然のずれの標準不確かさの幅を示す.共通の補正値の不確かさはこの幅に含めていない.合成した答えは示していない. 二つの方法の読みと,独立な偶然のずれの標準不確かさの幅を示す.共通の補正値の不確かさはこの幅に含めていない.合成した答えは示していない.
  1. S を微分し,最小にする v と,独立な偶然のずれからの標準不確かさを求めよ.単純な算術平均の標準不確かさと比べよ.

  2. 両方法には同じ補正値を使い,補正後にも共通の加算のずれ β が残ります.その見積もりは0,標準不確かさは u(β)=0.030ms−1 です.yi=vtrue+β+εi と書き,β と各偶然のずれ εi は独立とします.これを含む合成標準不確かさを求めよ.

  3. 各方法の測定回数を増やし,u1,u2 だけを十分小さくできたときの限界と,次に改善する測定を答えよ.

解答を見る

考え方 不確かさの小さい読みを重く扱う.共通のずれは読みの差では見えず,重みを変えても打ち消せない.

  1. dSdv=−2∑(yi−v)/ui2=0 より,v=∑yi/ui2/∑1/ui2.重みは w1=0.8,w2=0.2 で,v=0.8×1.020+0.2×0.980=1.012ms−1.d2Sdv2=2∑1/ui2>0 なので最小である.u(v)=w12u12+w22u22=1/1/u12+1/u22=0.0179ms−1.算術平均は 1.000ms−1,標準不確かさ u12+u22/2=0.0224ms−1 である.

  2. w1y1+w2y2=vtrue+(w1+w2)β+w1ε1+w2ε2.w1+w2=1 なので,β はそのまま残る.uc(v)=0.0178892+0.0302=0.035ms−1.v=1.012(35)ms−1 と報告する.

  3. 極限は uc(v)→0.030ms−1.共通の補正値を決める基準の測定を改善する.確かめとして,同じずれが2つに加わっても y1−y2 は変わらないので,2つの方法が一致することだけでは共通の偏りを否定できない.

15第14章のまとめ

この章では,振り子の周期から重力加速度を求める実験を通して,測る量を決め,測り方を計画し,繰り返してばらつきを数にし,計算した量の不確かさを出し,グラフでモデルを確かめるところまでを一続きで行いました.測った値は,どこまで信じてよいかを表す数と組にして初めて意味を持ちます.ここで定義と公式を一覧にし,各題材の最初の問いに短く答えます.

定義

定義 誤差と不確かさ

  • 測る量のほんとうの値を真の値,測定値と真の値の差を誤差という.真の値は知りえないので,誤差も知りえない.

  • 測った結果がどれだけ疑わしいかを表す数を不確かさ,それを標準偏差の形で表したものを標準不確かさ u(x) という.値に対する割合 u(x)/|x| が相対標準不確かさである.

  • 繰り返し測定の統計から求めるのがタイプAの評価,目盛り・分解能・仕様などそれ以外の情報から求めるのがタイプBの評価である.

  • 測るたびに向きも大きさも変わるずれが偶然誤差,同じ条件ならいつも同じ向きに出るずれが系統誤差である.偶然誤差は平均で減るが,系統誤差は繰り返しても減らない.

定義 測定器と記録

  • 最小目盛り・分解能は読みの細かさの限りで,値の確かさとは別である.アナログの目盛りは最小目盛りの 110 まで目分量で読み,視差に注意する.

  • 有効数字は不確かさの大まかな表し方である.この章では,それを標準不確かさという数にした.

主な公式

  • 平均 x¯=1N∑xi,標準偏差 s=∑(xi−x¯)2N−1,平均の標準不確かさ u(x¯)=sN.

  • ±a に一様に散らばるずれ(表示の丸めなど)の標準不確かさは a/3.

  • 正規分布では,平均 ±s に約 68 %,±2s に約 95 % の値が入る.拡張不確かさ U=2uc は約 95 % の範囲の目安.

  • 1つの量から:u(y)=|f′(x)|u(x).べき y=Cxn では相対不確かさが |n| 倍.

  • 独立な量から:uc(y)2=∑(∂f∂xk)2u(xk)2.和・差は u の2乗の和,積・商・べき y=Cx1px2q は (uc(y)y)2=(pu(x1)x1)2+(qu(x2)x2)2.

  • 最小二乗法:b=∑(xi−x¯)(yi−y¯)∑(xi−x¯)2,a=y¯−bx¯,u(b)=se∑(xi−x¯)2,se=∑ei2N−2.

  • 振り子:g=4π2lT2,(uc(g)g)2=(u(l)l)2+(2u(T)T)2.T2 と l′ のグラフの傾きは 4π2/g.

手順

ポイント 測定から結論までの手順

  1. 求める量と,測る量を言葉で決める(振り子の l は支点からおもりの中心まで,振れ角は小さく).

  2. 測定器の最小目盛り・分解能を確かめ,何をそろえ,何回,何周期まとめて測るかを計画する.生の読みと条件を記録し,すぐに大まかな値を計算して大きな誤りを見つける.

  3. 繰り返した値から平均・標準偏差・平均の標準不確かさを出す(タイプA).目盛りや仕様からの不確かさも見積もる(タイプB).

  4. 測り方を変えて系統誤差を探し,分かったものは補正する.

  5. 計算した量の不確かさを,偏微分か相対不確かさの規則で合成し,内訳の表を作る.一番大きな寄与から減らす.

  6. 不確かさを1〜2桁にし,値をその桁にそろえて報告する.何の不確かさかを書き添える.

  7. 条件を変えて,直線になる軸でグラフを描き,当てはめた直線の残差に形が無いかを見る.

各題材の問いへの答え

  • 何をどう測るか:10周期ほどをまとめて測り,時刻はおもりが速く動く最下点で取る.押すずれが1周期あたり 110 になる.数え違いは,1周期 → 10周期 → 50周期と段階を踏んで確かめる.

  • ばらつきと偏り:どれか1つが正しい値なのではない.10個の平均 17.940s が最も信じられる値で,標準不確かさは s/10=0.017s.ただし全部が同じ向きにずれる系統誤差は,平均では見えないので,やり方を変えて確かめる.

  • 計算した量の不確かさ:g=9.800ms−2,合成標準不確かさ 0.022ms−2.周期は2乗で効くので,周期の寄与(0.184 %)が長さ(0.125 %)より大きく,周期を良くするのが先である.

  • グラフでモデルを確かめる:長さを変えて T2 と l′ のグラフが直線になり,残差に形が無いことを確かめる.傾きから g=9.801ms−2(標準不確かさ 0.017ms−2),横軸との交点からおもりの半径が読める.同じ距離だけ引いて放すと残差が弓なりになり,大きな振れ角でモデルが合わないことが分かる.

この章で使った数学

平均と標準偏差,独立なずれの和の2乗の平均が足し算になること(交差項の平均が0),一様分布の2乗の平均を積分で出すこと,任意の指数での (xn)′=nxn−1(第2章の一次近似から),1次近似と偏微分,最小二乗法(偏微分を0とおく),常用対数と両対数グラフを使いました.どれも「小さなずれが,計算を通ってどう伝わるか」を数で追うための道具です.