問いしるべ
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問いから始める物理

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問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 15節
  1. 運動起電力とレンツの法則
  2. 運動起電力の例題
  3. 運動起電力と導体の運動の演習
  4. 誘導電場とファラデーの法則
  5. 誘導電場の例題
  6. 磁束変化と誘導電場の演習
  7. インダクタンスと電気振動
  8. 2階の線形微分方程式と電気振動
  9. 自己誘導と電気振動の演習
  10. 交流回路と共振
  11. 複素数の計算と周波数応答
  12. 交流回路と共振の演習
  13. 第23章の章末問題
  14. 第23章の発展問題
  15. 第23章のまとめ

第23章  電磁誘導と交流

01運動起電力とレンツの法則

問い

自転車のハブの中やタイヤの横に付ける発電機は,走ると電灯をつけます.中には磁石とコイルが入っているだけで,電池はありません.電池なら化学反応が電荷を押し出しますが,発電機の中で導線の電荷を押しているのは何でしょうか.そして,発電機で電灯をつけるとペダルが少し重くなるのはなぜでしょうか.

ここから第23章「電磁誘導と交流」に入ります.第22章では,電流が磁場を作り,磁場が動く電荷に力を及ぼすことを見ました.この章では逆向きのつながり,つまり磁場と運動や磁場の変化から起電力が生まれる電磁誘導を扱います.起電力の生じ方は2つあります.1つは,磁場の中を動く導体の電荷が受けるローレンツ力で,この題材で扱います.もう1つは,時間とともに変わる磁場が周りに作る電場で,次の題材「誘導電場とファラデーの法則」で扱います.2つはまったく別の仕組みなのに,どちらも「回路を貫く磁束の変化の速さ」という1つの式で表せます.続く2つの題材では,回路が自分の電流の変化に逆らう自己誘導と,第7章の複素数を使った交流回路の解き方を学びます.第24章では,ここで出会う誘導電場の法則が,マクスウェル方程式の4つの法則の1つとして他の3つと並びます.題や段落に(発展)と付いた所(ファラデーの法則の微分形など)は,飛ばしても後を読めます.

ポイント 第23章で使う記号

記号

意味

B

磁束密度(本文では磁場と呼ぶ).単位 T

Φ

回路を貫く磁束.単位 Wb=Tm2

E

起電力.単位 V

n

回路の面の正の法線.回路を回る正の向きと右ねじの関係にとる

L, M

自己インダクタンス,相互インダクタンス.単位 H

τ

時定数

κ

電気伝導率(第21章の抵抗率 ρ の逆数).j=κE

V^, I^, E^

複素振幅.実際の値は V^eiωt などの実部

V0, I0,Ve, Ie

交流の振幅,実効値

Z, X

複素インピーダンス(大きさは |Z|),リアクタンス

i

虚数単位(電気工学では j と書くことが多い)

起電力の符号は,回路を回る向きを決めて初めて決まります.問題を解くときは,「反時計回りを正」のように,まず向きを決めてください.

考えてみる

導線の中の電荷を押す力として,第22章までに出てきたのは2つだけです.電場による力 qE と,磁場の中を動く電荷が受ける磁気力 qv×B です.止まった磁石のまわりに電荷を押す静電場はないので,候補は磁気力です.導線ごと磁場の中を動かせば,導線の中の電荷も一緒に動くので,磁気力を受けるはずです.まずこの場合を調べます.

ただし困ることが2つあります.第一に,磁気力は速度に垂直なので仕事をしません.それなら電灯を光らせる仕事はどこから来るのでしょうか.第二に,自転車の発電機では,ふつうコイルは止まっていて磁石のほうが回ります.止まった導線の電荷には磁気力が働かないのに,電灯はつきます.第一の問題はこの題材で解決し,第二の問題は最後に整理して,答えは次の題材で出します.

動く導体棒の起電力

水平に置いた2本の平行なレール(間隔 l)の端を抵抗 R で結び,レールの上に導体棒を渡します.鉛直な一様磁場 B の中で,棒をレールに沿って速さ v で動かします.棒の中の電荷 q は棒と一緒に速度 v で動くので,qv×B の力を受けます.棒・速度・磁場が互いに垂直なら,この力は棒に沿った向きで,単位電荷あたりの大きさ vB は棒のどこでも同じです.

[図:動く導体棒の力と誘導電流]

初期状態では棒が右へ動き,奥向きの磁場Bにより正電荷qが上へ押され,電流は反時計回りに流れる.速度vの符号と大きさを変えると,速度,力,電流の矢印が連動する.

回路を一周したとき,単位電荷あたりの力の接線成分を道に沿って積分したものを起電力といいます.電池では化学的な力,ここでは磁気力が電荷を押します.力が働くのは棒の中だけなので,起電力は vB に棒の長さを掛けたものです.

法則 運動起電力

導体が磁場 B の中を速度 v で動くとき,導体の中の電荷は単位電荷あたり v×B の力を受ける.これを導体に沿って積分したものが運動起電力で,長さ l の棒と速度と磁場が互いに垂直なら

E=vBl

である.

回路を開いておくと,押された電荷が棒の両端にたまり,その電荷の作る静電場が磁気力とつり合ったところで止まります.このとき棒の両端の電位差は vBl で,棒は起電力 vBl の電池と同じ働きをします.

磁束の変化で書き直す

回路を回る正の向きを決め,回路の面の正の法線 n をそれと右ねじの関係にとります.回路を貫く磁束を Φ=∫B⋅ndS と定めます.一様な磁場が面に垂直なら Φ=BS です.レールの回路では,棒が動くと面積が毎秒 lv ずつ増えるので,磁束の変化の速さ Blv は起電力の大きさと一致します.符号まで調べると,磁束が増えるとき起電力は正の向きと逆になります.

これは一般の形の回路でも成り立ちます.磁場が時間変化せず,回路が動いたり形を変えたりする場合を考えます.回路の小さな部分 dl が速度 v で動くと,時間 dt の間に面積ベクトル vdt×dl の細い平行四辺形を掃きます.そこを通る磁束の分だけ回路の磁束が増えるので,スカラー三重積の性質 a⋅(b×c)=c⋅(a×b) を使って

dΦ=∫一周B⋅(vdt×dl)=−dt∫一周(v×B)⋅dl

です.最後の積分は起電力そのものです.なお,回路を縁とする面の選び方によらず磁束が決まるのは,磁場に湧き出しがない(閉じた面を通る磁束が0,第22章)からです.

法則 磁束の法則(動く回路)

回路を回る正の向きと面の正の法線を右ねじの関係にとり,回路を貫く磁束を Φ とすると,正の向きの起電力は

E=−dΦdt

である.N 回巻きのコイルでは,各巻きの磁束の和を Φ とする.ここでは磁場が時間変化せず,回路の各部分が導体と一緒に動く場合に導いた.

レンツの法則とエネルギー

負号は,誘導電流が作る磁場が,回路の磁束の変化を妨げる向きになることを表します.これをレンツの法則といいます.レールの例では,電流 I=vBl/R が流れる棒に,第22章の力 IBl が運動と逆向きに働きます.棒を一定の速さで動かし続けるには,外から F=IBl=B2l2v/R で押さなければならず,その仕事率は

Fv=B2l2v2R=I2R=EI

で,抵抗の発熱とちょうど等しくなります.もし符号が逆なら,棒に働く力は運動を助け,棒はひとりでに加速して熱を出し続けます.レンツの法則は,エネルギーの保存がそうはさせないことの表れです.

では,仕事をしないはずの磁気力はどう関わっているのでしょうか.電流が流れているとき,棒の中の電荷は棒と一緒の速度 v に加えて,棒に沿った速度 u をもちます.磁気力 q(v+u)×B のうち,qv×B は棒に沿った向きで,電荷を押して毎秒 qvBu の正の仕事をします.qu×B は運動と逆向きで,毎秒 quBv の負の仕事をします.和は0です.磁気力は自分では仕事をせず,棒を押す手の仕事を,棒に沿って電荷を押す仕事へ受け渡しているのです.後半の力を棒の中の電荷について足したものが,棒に働く力 IBl です.

紙面の奥向きの磁場Bの中で,正電荷qは右向きの速度vと棒に沿う上向きの速度uをもつ.qv×Bは上向き,qu×Bは左向きで,合力はv+uに垂直である.左右の図は同じ電荷を示す. 紙面の奥向きの磁場Bの中で,正電荷qは右向きの速度vと棒に沿う上向きの速度uをもつ.qv×Bは上向き,qu×Bは左向きで,合力はv+uに垂直である.左右の図は同じ電荷を示す.

棒の運動と回路をつなぐ

棒の速さが変わる問題では,回路の式と棒の運動方程式を連立します.抵抗だけの回路で,棒に外力 F を加えると

mdvdt=F−B2l2Rv

です.磁気力は速さに比例する抵抗力として働き,第4章の空気抵抗と同じ形の式から,棒は時定数 τ=mR/(B2l2) で終端速度 vt=FR/(B2l2) に近づきます.棒をばねにつなげば,この力は第7章の減衰振動の速度に比例する抵抗力になります.抵抗の代わりにコンデンサー C をつなぐと,電荷 q=CBlv が速度に合わせて変わり,電流 I=CBldvdt が流れます.運動方程式は (m+CB2l2)dvdt=F となり,コンデンサーは棒の質量を増やしたように働きます.

回路の式 RI=−dΦdt を時間で積分すると,回路を通った電荷は

q=∫Idt=−ΔΦR

です.通った電荷は磁束の変化量だけで決まり,速く動かしても遅く動かしても変わりません.

ここまで,回路自身の電流が作る磁場を無視しました.その磁場による起電力(自己誘導)を考えた時定数 L/R が,扱う運動の時間(τ など)より十分短ければ,この近似が使えます.また,回路の大きさを d として,光が回路を渡る時間 d/c も運動の時間より十分短いとします(第21章の集中定数の近似).

回転するコイルと交流発電機

面積 S,巻数 N のコイルを,一様な磁場 B の中で角速度 ω で回します.面の正の法線と磁場のなす角が ωt なら,Φ=NBScos⁡ωt なので

E=−dΦdt=NBSωsin⁡ωt

です.長方形のコイルなら,磁場を横切る2辺の v×B を足しても同じ結果になります.コイルの両端をスリップリングで外へ出せば交流が,半回転ごとに接続を入れ替える整流子を使えば向きのそろった電流が得られます.同じ機械に電流を流せばモーターになり,回せば発電機になります.

[図:回転コイルの磁束と起電力]

初期の回転角はωt=π/4で,磁束と起電力がともに正である.角度を操作するとコイルの向き,磁束Φ=NBS cosωt,起電力ℰ=NBSω sinωtのグラフ上の点が連動する.スリップリングと外部抵抗Rを示す.

交流は,第7章のように複素数の実部で表すと扱いやすくなります.E0=NBSω として,sin⁡ωt は −ieiωt の実部なので,起電力は E^eiωt,E^=−iE0 の実部と書けます.E^ を複素振幅といいます.回路が抵抗 R だけなら,電流の複素振幅は I^=E^/Z,Z=R です.Z を複素インピーダンスといい,コイルやコンデンサーを含む回路の Z は題材「交流回路と共振」で学びます.発電機を回す人は,平均して発熱率 E02/(2R) と同じ仕事率を払っています.

磁石が動くときは

自転車の発電機に戻ると,多くは磁石が回り,コイルは止まっています.止まった導線の電荷に磁気力は働きません.それでもファラデーは,コイルを動かしても,磁石を動かしても,近くの別のコイルの電流を変えても,起電力は同じ式 E=−dΦdt で決まることを実験で見つけました.止まった電荷を押せるのは電場だけですから,磁場が変わると電場が生まれていることになります.これが次の題材の主題です.

磁石と一緒に動く人から見れば,動いているのはコイルで,電荷は磁気力で押されます.第22章の(発展)の題材「磁気の力の正体」で見たように,どちらの見方でも電荷の運動の予測は一致します.

問いに戻る

発電機のコイルが磁場の中を動くとき,導線の中の電荷を押しているのは磁気力 qv×B です.磁気力そのものは仕事をせず,コイルを回す仕事を電荷を押す仕事へ受け渡します.流れた電流には,レンツの法則により回転を妨げる力が働くので,電灯をつけるとペダルが重くなり,こぐ人の仕事が電灯の熱と光になります.自転車の発電機のように磁石が回る場合も,起電力は同じ磁束の法則で求められますが,電荷を押しているのは磁気力ではなく,変化する磁場が作る電場です.

ポイント ここまでのまとめ

  • 磁場の中を動く導体の電荷は qv×B を受け,長さ l の棒には E=vBl の起電力が生じる.

  • 動く回路では E=−dΦdt.負号は磁束の変化を妨げる向き(レンツの法則)で,エネルギーの保存と同じことである.

  • 磁気力は仕事をせず,棒を押す仕事を電荷へ受け渡す.回路を通る電荷は −ΔΦ/R で,動かし方によらない.

  • 棒の運動は回路の式と運動方程式を連立して解く.抵抗は速さに比例する抵抗力,コンデンサーは質量の増加として働く.

  • 回転するコイルの起電力は NBSωsin⁡ωt で,複素振幅 −iNBSω の実部として扱える.

02運動起電力の例題

導体の運動と回路を連立する典型的な設定を,例題で解きます.どの例題でも,回路の式,運動方程式,エネルギーの収支の3つをそろえて確かめます.回路自身の電流が作る磁場(自己誘導)と摩擦は無視します.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

水平と角 θ をなす斜面に,間隔 l の2本の平行なレールが斜面に沿って置かれ,上端は抵抗 R で結ばれています.斜面に垂直な一様な磁場 B の中で,質量 m の導体棒をレールに垂直に置き,静かに放します.棒はレールに垂直なまま滑り,抵抗 R 以外の抵抗は無視します.重力加速度を g とします.

斜面に沿う図と横からの図.間隔lのレールの上端を抵抗Rで結び,質量mの棒が斜面を下る.磁場Bは斜面に垂直で,斜面の傾きはθである. 斜面に沿う図と横からの図.間隔lのレールの上端を抵抗Rで結び,質量mの棒が斜面を下る.磁場Bは斜面に垂直で,斜面の傾きはθである.
  1. 棒の速さが v のときの電流と運動方程式を書き,終端速度 vt を求めよ.m=0.020kg,l=0.50m,B=0.40T,R=0.50Ω,θ=30∘,g=9.8ms−2 で値を求めよ.

  2. 放してからの速さ v(t) を求めよ.

  3. 放してから斜面に沿って距離 s だけ滑る間に,抵抗を通った電荷と発生したジュール熱を求めよ.s は十分大きく,棒はすでに終端速度に達しているとする.

解答を見る

考え方 運動起電力 vBl で電流を出し,電流が受ける力を運動方程式に入れる.形は第4章の空気抵抗と同じである.

  1. 起電力は vBl だから I=vBl/R.棒が受ける磁気力の大きさは IBl=B2l2v/R で,レンツの法則により斜面を上る向きである.斜面を下る向きを正として

mdvdt=mgsin⁡θ−B2l2Rv

である.右辺が0になる速さが終端速度で,vt=mgRsin⁡θ/(B2l2).数値を入れると

vt=0.020×9.8×0.50×0.50(0.40×0.50)2ms−1≈1.2ms−1

である.

  1. τ=mR/(B2l2) とおくと,運動方程式は dvdt=−(v−vt)/τ となる.v(0)=0 より v=vt(1−e−t/τ).数値では τ=0.25s である.

  2. 電荷は q=∫Idt=BlR∫vdt=BlsR で,回路の磁束の変化量 Bls を R で割ったものに等しい.エネルギーの収支は,重力のした仕事が運動エネルギーとジュール熱になるので

Q≈mgssin⁡θ−12mvt2

である.

確かめ:終端速度では I=mgsin⁡θ/(Bl) で,I2R=m2g2Rsin2⁡θB2l2=mgsin⁡θ⋅vt となり,重力の仕事率がすべて熱になっている.回路の大きさを 0.5m 程度とすると自己インダクタンスは 10−6H 程度で,L/R≈2×10−6s は τ=0.25s よりずっと短いので,自己誘導を無視してよい.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

水平な2本の平行なレールの上に,質量 m1 の棒1と質量 m2 の棒2をレールに垂直に置きます.鉛直な一様な磁場 B があり,回路の抵抗は2本の棒の抵抗の和 R だけです.初め棒2は静止しており,時刻0に棒1に右向きの速さ u を与えます.以後は両方の棒が自由に動くものとし,棒どうしの衝突は起こらないとします.

初期状態で棒1だけが右向きの速さuをもつ.左はどこでも間隔lのレール,右は棒2の側の間隔がl/2のレールである.磁場Bは鉛直下向きで,紙面の奥向きを⊗で示す. 初期状態で棒1だけが右向きの速さuをもつ.左はどこでも間隔lのレール,右は棒2の側の間隔がl/2のレールである.磁場Bは鉛直下向きで,紙面の奥向きを⊗で示す.
  1. レールの間隔がどこでも l のとき,2本の棒の運動量の和が保存されることを示し,十分時間がたった後の速さを求めよ.

  2. 2本の棒の速さの差 w=v1−v2 の時間変化と,発生するジュール熱の総量を求めよ.

  3. 棒1の所のレールの間隔が l,棒2の所の間隔が l/2 で,2つの部分はレールに垂直な短い導線の段でつながっているとする.棒はそれぞれの部分から出ないとして,十分時間がたった後の速さと発生する熱を求め,運動量の和が保存されない理由を述べよ.

解答を見る

考え方 2本の棒は同じ回路にあるので同じ電流が流れる.力の比はそれぞれの長さの比で決まる.終わりの状態は電流が0,つまり2つの起電力が打ち消し合う状態である.

  1. 2本とも右へ動くと,回路を貫く磁束は Bl(v2−v1) の速さで変わる.したがって電流の大きさは I=Bl(v1−v2)/R で,棒1には左向き,棒2には右向きに,同じ大きさ IBl の力が働く.

m1dv1dt=−IBl,m2dv2dt=IBl

を足すと ddt(m1v1+m2v2)=0 で,運動量の和は保存する.電流が0になる終わりの状態では v1=v2 だから,共通の速さは V=m1u/(m1+m2) である.

  1. 2つの式から dwdt=−IBl(1m1+1m2)=−B2l2μRw.ここで μ=m1m2/(m1+m2) は換算質量(第5章)である.よって w=ue−t/τ,τ=μR/(B2l2).熱は運動エネルギーの減少で

Q=12m1u2−12(m1+m2)V2=12μu2

である.直接積分しても ∫0∞I2Rdt=B2l2u2R∫0∞e−2t/τdt=B2l2u2τ2R=12μu2 で一致する.

  1. 磁束の変化の速さは B(lv1−lv2/2) の大きさで,電流が0になる終わりの状態では v2=2v1 である.棒1に働く力は IBl,棒2に働く力は IBl/2 だから,J=Bl∫Idt とおくと

m1(v1−u)=−J,m2v2=J2

である.v2=2v1 を使って J=4m2v1,したがって

v1=m1um1+4m2,v2=2m1um1+4m2

となる.運動量の和は m1u(m1+2m2)/(m1+4m2) で,初めの m1u より小さい.2本の棒に働く力の大きさが違い,差の分の力は段の導線に働くからである.段の導線にはレールに垂直な電流が流れ,レールに沿った向きの力を受けるが,段は固定されているので,その運動量は地面へ逃げる.熱は

Q=12m1u2−12m1v12−12m2v22=2m1m2u2m1+4m2

である.

確かめ:(3) で m2→0 なら Q→0,v1→u で,軽い棒2が抵抗なく速さ 2u についていく.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

鉛直な一様な磁場 B の中で,長さ a,質量 m の一様な導体棒OPが,端Oを通る鉛直な軸のまわりに水平面内で回ります.端Pは半径 a の円形のレールに接して滑り,Oとレールの間を抵抗 R でつなぎます.R 以外の抵抗と摩擦は無視します.時刻0に棒の角速度は ω0 で,その後は外から力を加えません.

長さaの棒OPが中心Oのまわりに角速度ωで回り,Pが円形レールに接する.固定された抵抗RがOとレールを結ぶ.磁場Bは紙面の奥向きである.Oからの配線とレールの交差は絶縁し,レールの上端で外部回路につなぐ. 長さaの棒OPが中心Oのまわりに角速度ωで回り,Pが円形レールに接する.固定された抵抗RがOとレールを結ぶ.磁場Bは紙面の奥向きである.Oからの配線とレールの交差は絶縁し,レールの上端で外部回路につなぐ.
  1. 角速度が ω のときの起電力を,棒の中の電荷に働く力から求め,磁束の法則でも確かめよ.

  2. 棒に働く磁気力のトルクを求め,角速度 ω(t) を求めよ.Oのまわりの棒の慣性モーメントは ma2/3 である.

  3. 止まるまでに棒が回る角度と,発生するジュール熱の総量を求めよ.

解答を見る

考え方 棒の各部分の速さは中心からの距離に比例するので,v×B を棒に沿って積分する.トルクも同じように積分する.

  1. Oから r の所の速さは ωr で,電荷は棒に沿って単位電荷あたり ωrB の力を受ける.

E=∫0aωrBdr=12Bωa2

磁束の法則では,回路(O,棒,レールの弧,抵抗)が囲む扇形の面積が毎秒 a2ω/2 ずつ変わるので,磁束の変化の速さは Ba2ω/2 で一致する.回路の各部分が導体と一緒に動くように道を選んでいるので,法則が使える.電流は I=Bωa2/(2R) である.

  1. 長さ dr の部分に働く力は棒に垂直で大きさ IBdr,向きはレンツの法則により回転を妨げる向きである.トルクの大きさは

∫0aIBrdr=12IBa2=B2a44Rω

である.回転の運動方程式 ma23dωdt=−B2a44Rω より,ω=ω0e−t/τ,τ=4mR3B2a2 である.

  1. 回る角度は ∫0∞ωdt=ω0τ=4mRω03B2a2.熱は初めの回転の運動エネルギーで,Q=12⋅ma23ω02=ma2ω026 である.

確かめ:直接積分すると ∫0∞I2Rdt=B2a44R∫0∞ω2dt=B2a44R⋅ω02τ2=ma2ω026 で一致する.磁場が強いほど早く止まるが,熱の総量は B にも R にもよらない.

ポイント ここまでのまとめ

  • 回路の式(起電力=電圧降下)と導体の運動方程式を連立する.磁気力は速さに比例する抵抗力として働く.

  • 通った電荷は ∫Idt で,磁束の変化量を抵抗で割ったものになる.

  • 2本の棒が同じ幅なら運動量の和が保存する.幅が違うと固定された導線にも力が働き,保存しない.終わりの状態は起電力が打ち消し合う状態である.

  • 回転する棒の起電力は Bωa2/2.エネルギーの収支(外力や重力の仕事=運動エネルギーの変化+熱)で答えを確かめる.

03運動起電力と導体の運動の演習

仕事と電気エネルギーを結び付けます.回路自身の磁場と摩擦を無視します.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

水平なレールの間隔は l=0.30m,左端を結ぶ抵抗は R=1.8Ω です.他は無抵抗です.導体棒を右へ v=2.0ms−1 で動かします.磁場は下向きで B=0.60T です.

  1. 棒のどちらの端へ正電荷が押されるか,電流の向きと大きさを求めよ.

  2. 等速を保つ外力とその仕事率を求め,抵抗の発熱と比較せよ.

レール,抵抗,棒と速度を上から描く.棒の上側をA,下側をDとし,磁場を示す. レール,抵抗,棒と速度を上から描く.棒の上側をA,下側をDとし,磁場を示す.
解答を見る

考え方 電荷への力と棒への力を分けて調べる.

  1. 正電荷はAへ,棒内の電流はDからAへ流れる.上から見て反時計回りである.起電力は E=Blv=0.36V,電流は I=E/R=0.20A である.

  2. 棒への磁気力は左向きで IBl.外力は右向きに F=IBl=0.036N,仕事率は Fv=0.072W.I2R=0.072W となる.外力がエネルギーを与え,Fv=IE の次元も仕事率で一致する.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

長さ l=0.400m の棒を,棒にも磁場にも垂直に動かし,静止したレールと高抵抗の電圧計で起電力を測ります.棒と磁場も互いに垂直で,電圧計の正端子は運動によって正電荷が押される側につなぎます.電流は無視します.読みには一定のずれ Vb が加わります.

v[ms−1]

0.500

1.000

1.500

V[V]

0.132

0.252

0.372

  1. V と v の関係から B,Vb を求めよ.

  2. 両端の値で,各読みの誤差が 0.003V 以下なら,B の誤差の最大値はいくらか.l,v の誤差は無視せよ.

解答を見る

考え方 傾きと切片で磁場と計器のずれを分ける.

  1. V=Blv+Vb.傾きは (0.372−0.132)/(1.500−0.500)=0.240Vsm−1 より,B=0.240/0.400=0.600T.切片は Vb=0.132−0.240×0.500=0.012V.

  2. 差の誤差は最大 0.006V なので,|δB|≤0.006/(0.400×1.000)=0.015T.速度反転で起電力の符号が変わり,切片は残る.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

横幅 a,縦の辺の長さ l,全抵抗 R の長方形コイルを右へ一定速度 v で動かします.0<x<w の帯状領域だけに紙面奥向きの一様磁場 B があり,w>a です.時刻0に右辺が x=0 に達します.

  1. 反時計回りを正として,電流を時刻で場合分けせよ.

  2. 通過中の総発熱量と外力の総仕事を求めよ.境界の幅は無視せよ.

帯状磁場とコイル,辺a,lと速度v,境界x=0,wを描く. 帯状磁場とコイル,辺a,lと速度v,境界x=0,wを描く.
解答を見る

考え方 磁場との重なり面積の変化を追う.

  1. 紙面手前を正の法線とすると,進入中の磁束は Φ=−Blvt.よって E=−dΦdt=Blv である.電流は

I={Blv/R0<t<a/v,0a/v<t<w/v,−Blv/Rw/v<t<(w+a)/v.

退出中は重なる面積が減るため符号が逆になる.

  1. 通電時間は 2a/v.したがって Q=(Blv/R)2R(2a/v)=2B2l2av/R.進入・退出とも磁気力は左向きに B2l2v/R であり,外力が働く距離は合計 2a.仕事も W=2B2l2av/R=Q となる.完全に磁場内なら両辺の起電力が相殺する.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

面積 S,巻数 N の長方形コイルを一様磁場 B の中で角速度 ω で回します.正の法線と磁場の角は ωt で,静止した抵抗を含む全抵抗は R です.

  1. 起電力と電流を複素振幅の実部で表せ.虚数単位は i.

  2. t=0 から t1=π/(2ω) までに流れる電荷と発熱量を求めよ.

回転軸,コイルと摺動接点,抵抗を描く.磁場,正の法線と角ωtを示す. 回転軸,コイルと摺動接点,抵抗を描く.磁場,正の法線と角ωtを示す.
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考え方 磁束を微分し,Z=R を使う.

  1. 磁束の総和は NSBcos⁡ωt.よって E=NSBωsin⁡ωt.E0=NSBω とおくと,複素振幅は E^=−iE0,I^=−iE0/R.各値は E^eiωt,I^eiωt の実部である.

  2. 積分すると q=∫0t1Idt=E0/(Rω)=NSB/R.また

Q=E02R∫0t1sin2⁡ωtdt=E02R[t2−sin⁡2ωt4ω]0t1=πN2S2B2ω4R.

q は回転の速さに依存せず,Q は遅く回すほど減る.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

間隔 l の水平レール上の質量 m の棒を,ばね定数 k のばねで固定壁につなぎます.端は抵抗 R>0 で結ばれ,それ以外の抵抗は0です.面に垂直な一様磁場の大きさは B>0 です.自然長からの変位を x とし,x(0)=A>0,v(0)=0 で放します.

  1. 減衰振動となる B の条件と x(t) を求めよ.

  2. (1)の減衰振動の条件を満たす場合,次の静止までの発熱量を求めよ.

壁,ばね,棒と抵抗,磁場を描く.自然長からの変位xと初期変位Aを示す. 壁,ばね,棒と抵抗,磁場を描く.自然長からの変位xと初期変位Aを示す.
解答を見る

考え方 速度に比例する磁気力を減衰力とする.

  1. I=Blv/R より磁気力は −B2l2v/R.b=B2l2/R とおくと md2xdt2+bdxdt+kx=0.x=est を代入すれば ms2+bs+k=0.b2<4mk,すなわち B2<2Rmk/l2 で根は −γ±iΩ,ただし γ=b/(2m),Ω=k/m−γ2.初期条件から

x=Ae−γt(cos⁡Ωt+γΩsin⁡Ωt),v=−AkmΩe−γtsin⁡Ωt.
  1. 次の静止は t∗=π/Ω,x(t∗)=−Ae−γπ/Ω.力学的エネルギー E=mv2/2+kx2/2 は dEdt=−bv2=−I2R を満たす.したがって Q=kA2(1−e−2γπ/Ω)/2.B→0 では発熱が0となる.回路長を d,光速を c として dmax(γ,Ω)/c が1より十分小さいことが近似条件である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

間隔 l の水平レールの端を容量 C のコンデンサーで結び,質量 m の棒を置きます.一様磁場 B は面に垂直です.初め静止,電荷0で,抵抗は無視します.一定の右向き外力 F で動かし,時刻 t1 にコンデンサーとの接続を開きます.切断の力積は無視します.

  1. 接続中の加速度,速度,正極板の電荷を求めよ.

  2. t1 までの外力の仕事の収支と,切断後の加速度を求めよ.

棒,レール,コンデンサーと直列スイッチを描く.右向きの外力Fと磁場を示す. 棒,レール,コンデンサーと直列スイッチを描く.右向きの外力Fと磁場を示す.
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考え方 起電力が電荷を決め,充電電流が棒を制動する.

  1. q/C=Blv より q=CBlv,I=dqdt=CBla.運動方程式は ma=F−IBl なので,m∗=m+CB2l2 とおけば a=F/m∗,v=Ft/m∗,q=CBlFt/m∗.

  2. x=Ft2/(2m∗).v1=Ft1/m∗,q1=CBlv1 とすると

Fx(t1)=F2t122m∗=12mv12+q122C.

切断後は I=0,q=q1,加速度は F/m.速度は連続である.追加項は質量の次元を持つ.電荷再分布時間と外力の立ち上がり時間の比が十分小さい近似であり,切替えの細部は扱わない.

ポイント 教える人へ

  • 電荷への力,電流,棒への力を順に問う.

  • 一様磁場内のコイルの両辺の起電力を比べさせる.

  • 複素振幅の実部で電流の符号を確認する.

  • 発熱と蓄積エネルギーを区別し,近似の時間尺度も説明させる.

04誘導電場とファラデーの法則

問い

IH調理器に鍋をのせてスイッチを入れると,鍋の底が熱くなります.天板の下のコイルは鍋に触れておらず,鍋も動いていません.天板のガラスが熱くなるのは,鍋から熱が伝わるからです.止まった鍋の中で電荷を押し,電流を流しているのは何でしょうか.

考えてみる

前の題材では,磁場の中を動く導体の電荷が磁気力で押されました.しかし鍋は止まっているので,電荷に磁気力 qv×B は働きません.止まった電荷に力を及ぼせるのは電場 E だけです.そこで,コイルの電流が変わって磁場が変わると,そのまわりに電場ができると考えるほかありません.

ところが,これまでの電場ではうまくいきません.電荷が作る静電場は,閉じた道に沿って一周した線積分が0です(第20章.第21章のキルヒホッフの第2法則の根拠でもありました).これでは,電荷を一周させて正味の仕事をすることができず,閉じた導体の中に電流を流し続けることができません.鍋の底をぐるりと回る電流を流すには,一周の線積分が0でない,新しい種類の電場が必要です.

変化する磁場が作る電場

ファラデーの実験が示す法則を,電場の言葉で書きます.

法則 ファラデーの電磁誘導の法則

空間に固定した閉じた道に沿って一周した電場の線積分は,その道を縁とする面を貫く磁束の減る速さに等しい.

∫一周E⋅dl=−dΦdt

回る向きと面の法線は右ねじの関係にとる.この法則は,道に沿って導線が無くても成り立つ.

磁場の変化が作るこの電場を誘導電場といいます.止まった回路では,左辺は回路の起電力そのものです.前の題材の運動起電力と合わせると,回路が動いても,磁場が変わっても,その両方でも,起電力は E=−dΦ/dt で決まります.これを磁束の法則と呼びます.ただし,回路が動く部分の起電力は v×B から,磁場が変わる部分は誘導電場から来ていて,2つはまったく別の仕組みです.別々の仕組みがたまたま1つの簡単な式にまとまるのは物理では珍しく,ファインマンも講義でこの点を強調しています.

対称な例で誘導電場を求めます.半径 a の長いソレノイドの中に軸に平行な一様な磁場 B があり,外の磁場は0とします.B が dB/dt で変わるとき,軸のまわりの対称性から,電場は軸を中心とする円に沿った向きで,大きさ E は軸からの距離 r だけで決まります.半径 r の円に法則を使うと,2πrE が円を貫く磁束の変化の速さに等しいので

E=r2|dBdt|(r<a),E=a22r|dBdt|(r≥a)

です.向きは,その電場が流す電流が磁束の変化を妨げる向き(レンツの法則)です.磁場が0のソレノイドの外にも電場があることに注意してください.

[図:ソレノイド内外の誘導電場]

初期状態は手前向きの磁場が増える場合で,電場Eは時計回り.dB/dtの符号と大きさを変えると内外の電場が反転し,Eの大きさのグラフも変わる.磁場の向きは⊙で固定して示す.

電位が決まらない電場

静電場では,点Aから点Bまで電荷を運ぶ仕事は道によらないので,電位が定義できました.誘導電場では一周の線積分が0でないので,AからBへの線積分は道によって違います.誘導電場があるところでは,電位は定義できません.

一般の電場は,電荷が作る静電場と誘導電場の和です.回路を一周すると,静電場の分は0になり,誘導電場の分だけが残ります.抵抗の中では電流に沿った電場の線積分が RI なので,回路の式は次のように直します.

ポイント 誘導があるときの回路の式

回路を正の向きに一周するとき,抵抗での電圧降下の和は,起電力の和に等しい.

∑kRkIk=∑kEk−dΦdt

Ek は電池などの起電力,−dΦ/dt は誘導起電力である.誘導が無ければ,第21章のキルヒホッフの第2法則にもどる.

電圧計は何を読むか

電圧計は,大きな内部抵抗 rm に流れる小さな電流 im を測り,rmim を表示する計器です.これは内部抵抗に沿った電場の線積分です.導線の中では電場がほぼ0なので,端子の導線と回路の一部が作る閉じた道に法則を使うと,読みは「端子の導線がたどる道に沿った電場の線積分」になります.道が囲む磁束が変われば,読みも変わります.

例として,抵抗 R1 と R2 の半円をつないだ円形の回路を考えます.上のつなぎ目をP,下のつなぎ目をQとし,左の半円を R1,右の半円を R2 とします.手前向きの磁場が増え,回路を貫く磁束が dΦ/dt>0 で増えると,回路の式から時計回りに I=(dΦ/dt)/(R1+R2) が流れます.電圧計の正端子をP,負端子をQにつなぎ,導線を左の半円にぴったり沿わせると,導線と左の半円が囲む磁束は0なので,読みは左の半円に沿ったPからQへの線積分 −R1I です.導線を右の半円に沿わせると,読みは +R2I です.2つの読みの差は (R1+R2)I=dΦ/dt で,2本の導線が囲む磁束の変化の速さです.R1=R2 でも,読みは符号が逆になります.

手前向きに増える磁場の中で時計回りの電流Iが流れる.抵抗R₁とR₂をもつ左右の半円に沿って,PとQを結ぶ電圧計の導線を描く.導線の離れは見やすさのために広げている. 手前向きに増える磁場の中で時計回りの電流Iが流れる.抵抗R₁とR₂をもつ左右の半円に沿って,PとQを結ぶ電圧計の導線を描く.導線の離れは見やすさのために広げている.

誘導があるときの「2点間の電圧」は,道を決めて初めて意味をもちます.交流回路でコイルの両端の電圧というときは,磁束の変わる場所を避け,コイルの外を通る道で測ることにしています.

微分形(発展)

第20章で導入し第22章でも使ったストークスの定理 ∫一周E⋅dl=∫(∇×E)⋅ndS を左辺に使い,固定した面の磁束の時間微分を ∫∂B/∂t⋅ndS と書きます.どんな面についても成り立つので,被積分関数どうしが等しく

∇×E=−∂B∂t

です.静電場では ∇×E=0 で,そのため電位が存在しました.磁場が変わる場所では電場に渦があります.第22章の ∇×B=μ0j と比べると,−∂B/∂t が電流密度の役をしています.直線電流の外でも磁場が 1/r で残るように,ソレノイドの外でも誘導電場が 1/r で残るのはこのためです.この式は第24章でマクスウェル方程式の1つになります.

渦電流と電磁制動

導線でなく金属の板やかたまりの中でも,誘導電場は電流を流します.局所的なオームの法則 j=κE に従って,金属の中を渦のように回る電流を渦電流といいます.発熱率は電流密度の2乗に比例するので,磁場の変化の速さの2乗と伝導率に比例します.同じ理由で,大きな板ほど電流の回る輪が長く,誘導電場も強くなって,発熱が急に増えます.変圧器の鉄心が薄い板を絶縁して重ねた形をしているのは,渦電流の輪を小さく切って損失を減らすためです.

金属板を磁石のすき間に通すと,板の中の渦電流に運動を妨げる力が働きます(レンツの法則).これが電磁制動で,電車のブレーキや運動器具に使われています.板が速いほど力は大きく,止まると力は0になるので,すり減る部品がありません.

渦電流は自分でも磁場を作り,もとの磁場の変化を打ち消そうとします.大きさ b の導体の中で磁場が時間 T で変わるとき,誘導電場は bB/T 程度,電流密度は κbB/T 程度,それが作る磁場は μ0κb2B/T 程度です.ここまでの扱いは,この比 μ0κb2/T が1より十分小さく,渦電流の磁場を無視できる場合です.比が1に近づくと,磁場は導体の表面近くしか入れなくなります.

磁束の法則が使えないとき

磁束の法則は,同じ導体の部分をたどって作った回路にだけ使えます.そうでない例を2つ挙げます(ファインマンによる).

1つ目は単極発電機(ファラデーの円板)です.一様な磁場の中で銅の円板を回し,軸と縁に当てた接点を止まった導線でつなぎます.電流が流れる場所は空間の中でいつも同じなので,その「回路」を貫く磁束は変わりません.それでも,円板と一緒に回る電荷は v×B で半径の向きに押され,電流が流れます.起電力は,前の題材の例題 3 の回転する棒と同じ計算で,円板の半径を a として Bωa2/2 です.2つ目はその逆です.一様な磁場の中で,縁の少し曲がった2枚の金属板を1点で触れ合わせ,わずかに揺すります.触れる点は大きく動くので,板を通る「回路」の磁束は大きく変わりますが,板はほとんど動かないので v×B は小さく,起電力はほとんど生じません.

左は磁場中で回る円板の軸と縁を固定した検流計で結ぶ.右はわずかに揺すった板の接点がPからP′へ移る模式図である.どちらも回路がたどる導体の部分が接点で入れ替わる. 左は磁場中で回る円板の軸と縁を固定した検流計で結ぶ.右はわずかに揺すった板の接点がPからP′へ移る模式図である.どちらも回路がたどる導体の部分が接点で入れ替わる.

迷ったときは,基本の2つの法則,電荷に働く力 F=q(E+v×B) と,固定した道についてのファラデーの法則に戻れば,必ず正しい答えが得られます.

問いに戻る

IH調理器のコイルには高い振動数の交流が流れ,その磁場が速く変わります.磁場の変化は,鍋の底を回る誘導電場を作ります.鍋は止まっているので,電荷を押しているのは磁気力ではなく,この誘導電場です.金属の鍋の底では誘導電場が渦電流を流し,その発熱で鍋が熱くなります.天板のガラスにも同じ電場はありますが,ガラスは絶縁体で κ がほぼ0なので,電流が流れず,熱くなりません.

ポイント ここまでのまとめ

  • 磁場が変わると,固定した閉じた道について ∫一周E⋅dl=−dΦ/dt を満たす誘導電場ができる(微分形は ∇×E=−∂B/∂t).

  • 運動起電力と誘導電場はまったく別の仕組みだが,どちらも磁束の法則 E=−dΦ/dt にまとまる.同じ導体をたどれない回路には使えない.

  • 誘導電場は一周の線積分が0でないので電位が決まらない.回路の式は「電圧降下の和=起電力の和」に直し,電圧計の読みは導線のたどる道で変わる.

  • 金属の中では誘導電場が渦電流を流し,発熱や電磁制動を起こす.IH調理器は止まった鍋の中の誘導電場で渦電流を流している.

05誘導電場の例題

ファラデーの法則で誘導電場そのものを求め,それが導体や荷電粒子に何をするかを例題で調べます.対称性で向きを決め,円に沿った線積分から大きさを出します.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

半径 a の長いソレノイドの中に,軸に平行で手前向きの一様な磁場があり,一定の割合 dB/dt=β>0 で増えています.ソレノイドの外の磁場は0です.軸に垂直な断面で考え,軸の位置をOとします.電荷は無く,誘導電場はOのまわりに対称とします.

左の棒PQは中心Oからa/2離れた弦で,右の棒は中心からd>a離れ,∠POQ=90°となる.磁場は手前向きに増える.点線は指定された三角形OPQで,誘導電場と起電力の答えは示していない. 左の棒PQは中心Oからa/2離れた弦で,右の棒は中心からd>a離れ,∠POQ=90°となる.磁場は手前向きに増える.点線は指定された三角形OPQで,誘導電場と起電力の答えは示していない.
  1. 中心から距離 r の所の誘導電場の大きさと向きを,r<a と r≥a について求めよ.

  2. 中心からの距離が a/2 で,両端P,Qがソレノイドの内面にある細い真っすぐな棒を置く.PからQへ向かう向きは,手前から見てOのまわりを時計回りに回る向きとする.棒に沿ってPからQへの誘導電場の線積分(棒の起電力)を,直接の積分と三角形OPQの磁束の2通りで求めよ.

  3. 中心からの距離が d>a で,∠POQ=90∘ となるように棒PQをソレノイドの外に置く.PからQへ向かう向きは (2) と同様に時計回りとする.同じ線積分を求め,d によらないことを示せ.

解答を見る

考え方 誘導電場はOを中心とする円に沿う.弦に沿った成分を取り出して積分する.三角形OPQで考えるときは,半径に沿った2辺が電場に垂直で寄与しないことを使う.

  1. 半径 r の円で 2πrE が磁束の変化の速さに等しいので,r<a では 2πrE=πr2β より E=rβ/2,r≥a では 2πrE=πa2β より E=a2β/(2r) である.手前向きの磁束が増えるので,電場は奥向きの磁場を作る電流を流す向き,つまり手前から見て時計回りである.

  2. 棒の中点をMとし,Mから棒に沿った座標を x とする.中心から r の点で,円に沿った電場の棒に沿う成分は E⋅a/2r=rβ2⋅a2r=aβ4 で,棒のどこでも同じである.棒の長さは 2a2−a2/4=3a だから

∫PQE⋅dl=aβ4⋅3a=34a2β

である.三角形OPQを手前から見て時計回り(O→P→Q→O)に一周すると,OPとQOの上では電場が辺に垂直なので寄与は無く,一周の積分はPQの部分だけになる.時計回りに対応する法線は奥向きなので,一周の積分は手前向きの磁束の増える速さ β×12⋅3a⋅a2=34a2β に等しく,一致する.

  1. 中点から x の所では r2=d2+x2 で,棒に沿う成分は a2β2r⋅dr=a2βd2(d2+x2).∠POQ=90∘ なので x は −d から d まで動き

∫PQE⋅dl=a2βd2∫−dddxd2+x2=a2β2[arctan⁡xd]−dd=πa2β4

である.三角形OPQはOのまわりに中心角 90∘ の扇形の磁場の領域を丸ごと含み,その外の磁場は0なので,磁束の増える速さは β⋅πa2/4 で一致する.d は答えに現れない.

確かめ:棒の所の磁場は0なのに,棒の両端には電荷が押し出される.誘導電場は磁場の変わる場所の外にも広がっている.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

内半径 a,肉厚 h,電気伝導率 κ の長い銅管を鉛直に立て,質量 M,磁気モーメント m の小さな磁石を,磁気モーメントを鉛直にして管の軸に沿って落とします.磁石の中心から軸に沿って z 離れた所の,半径 a の円を貫く磁石の磁束は

Φ(z)=μ0ma22(a2+z2)3/2

です.h は a より十分小さく,管の各部分の電流は軸のまわりを回る向きだけに流れ,渦電流自身が作る磁場は無視します.

磁気モーメントmを上向きにした磁石が,内半径a,肉厚hの銅管を速さvで下る.磁石からz離れた幅dzの輪を示す.渦電流の矢印は,上側と下側の輪の手前側を表す. 磁気モーメントmを上向きにした磁石が,内半径a,肉厚hの銅管を速さvで下る.磁石からz離れた幅dzの輪を示す.渦電流の矢印は,上側と下側の輪の手前側を表す.
  1. 磁石が一定の速さ v で落ちているとき,磁石から z の所にある幅 dz の輪の起電力と抵抗を求め,管全体の発熱率を求めよ.∫−∞∞z2(a2+z2)5dz=5π128a7 を使ってよい.

  2. 磁石の終端速度 vt を求めよ.

  3. M=3.8×10−3kg,m=0.50Am2,a=8.0×10−3m,h=1.5×10−4m,κ=5.9×107Ω−1m−1,g=9.8ms−2,μ0=4π×10−7TmA−1 で vt を求めよ.渦電流自身の磁場を無視する近似が成り立つことを,比 μ0κhvt で確かめよ.

解答を見る

考え方 磁石と一緒に動く座標で見ると,管の各輪を貫く磁束が時間とともに変わる.各輪を独立な回路とみなし,発熱率を管全体で足し合わせる.終端速度では重力の仕事率と発熱率がつり合う.

  1. ある輪の磁石からの距離 z は毎秒 v ずつ変わるので,起電力の大きさは |dΦ/dt|=|Φ′(z)|v である.

Φ′(z)=−3μ0ma2z2(a2+z2)5/2

輪の長さは 2πa,断面積は hdz なので,抵抗は 2πa/(κhdz) である.輪の発熱率は(起電力)2/(抵抗)で

dP=κhv22πaΦ′(z)2dz,P=κhv22πa⋅9μ02m2a44⋅5π128a7=45κhμ02m21024a4v2

となる.磁石の下の輪では磁束が増え,上の輪では減るので,渦電流は上下で逆向きに回る.どちらも磁石の運動を妨げる向きの力を磁石に及ぼす(レンツの法則).

  1. 磁石に働く制動力を F とすると,発熱率は Fv に等しい.終端速度では F=Mg なので Mgvt=P より

vt=1024Mga445κhμ02m2

である.

  1. 数値を入れると vt≈9.9×10−1ms−1,すなわち毎秒 1.0m ほどで,自由落下よりずっと遅い.終端速度に近づく時間は vt/g≈0.10s で,ほぼすぐに一定の速さになる.渦電流の面密度は κh と電場(vB 程度)の積なので,それが作る磁場ともとの磁場の比は μ0κhvt≈1.1×10−2 で,1より十分小さい.

確かめ:vt は κh と m2 に反比例し,よく導く厚い管ほど,強い磁石ほどゆっくり落ちる.実際の磁石の大きさは a と同程度なので,この値は見積もりである.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

ベータトロンは,誘導電場で電子を加速する装置です.軸のまわりに対称で軸に平行な磁場の中で,電子(電荷 −e)が軸を中心とする半径 r の円軌道を回ります.軌道の内側の磁場の平均を Bav(軌道を貫く磁束は πr2Bav),軌道の上の磁場を Borb とし,どちらも0から増やします.電子の運動量の大きさを p とすると,接線方向の力 F で dp/dt=F が,円運動について p=erBorb が,相対論でも成り立ちます(第13章).

電磁石のすき間を電子が回る.手前向きに増える磁場では誘導電場Eは時計回り,電子の速度vは反時計回りで,磁気力Fは中心向きである.内側の平均磁場B_avと軌道上の磁場B_orbの比の答えは記さない. 電磁石のすき間を電子が回る.手前向きに増える磁場では誘導電場Eは時計回り,電子の速度vは反時計回りで,磁気力Fは中心向きである.内側の平均磁場B_avと軌道上の磁場B_orbの比の答えは記さない.
  1. 電子が半径 r を保ったまま加速され続けるための,Bav と Borb の関係を求めよ.

  2. r=0.50m,Borb が 5.0ms の間に0から 0.40T まで一定の割合で増えるとする.放射によるエネルギー損失は無視する.最後の電子の運動量と運動エネルギーを求めよ.電子の静止エネルギーは mc2=0.511MeV,エネルギーは K+mc2=(pc)2+(mc2)2 で K が運動エネルギー,c=3.00×108ms−1,e=1.60×10−19C とする.

  3. 1周あたりに得る平均のエネルギーと,加速の間に回る回数を求めよ.回る道のりの合計を,光が 5.0ms に進む距離と比べよ.

解答を見る

考え方 誘導電場が運動量を増やし,軌道上の磁場が円軌道を保つ.2つの条件で決まる運動量が,いつも等しくなるようにする.

  1. 対称性から,誘導電場は軌道に沿って一定の大きさ E をもち,2πrE=πr2dBav/dt より E=r2dBav/dt である.dp/dt=eE を積分すると,静止に近い状態から始めて p=er2Bav.一方,半径 r を保つには p=erBorb が要る.両方がいつも成り立つ条件は

Bav=2Borb

で,軌道の内側の平均の磁場を,軌道上の磁場の2倍の割合で増やせばよい.

  1. p=erBorb=1.60×10−19×0.50×0.40kgms−1=3.2×10−20kgms−1.pc=9.6×10−12J=60MeV なので

K=602+0.5112MeV−0.511MeV≈5.9×101MeV

で,電子の速さはほぼ光の速さである.

  1. 1周の起電力は軌道を貫く磁束の変化の速さで,E=πr2⋅2⋅0.405.0×10−3V≈1.3×102V と一定である.1周で得るのは eE≈1.3×102eV で,回る回数は,丸める前の値を用いて K/(eE)≈4.7×105 回である.道のりは 4.7×105×2π×0.50m≈1.5×106m で,光が 5.0ms に進む 1.5×106m とほぼ等しい.電子はほとんどの時間を光の速さに近い速さで回っているからである.

確かめ:磁場を手前向きに増やすと,誘導電場は手前から見て時計回りで,電荷 −e の電子は反時計回りに押される.反時計回りに動く電子に手前向きの磁場が及ぼす力は中心向きで,向きも自動的にそろう.ここでは電子が放射で失うエネルギーを無視し,光が軌道を1周する時間(約 10−8s)が磁場の変化の時間よりずっと短いとした.

ポイント ここまでのまとめ

  • 対称な誘導電場は,円に沿った線積分 2πrE を磁束の変化の速さと等しいとおいて求める.電場は磁場の変わる場所の外にも広がる.

  • 渦電流の発熱を輪ごとに足すと,管の中を落ちる磁石の終端速度が求まる.渦電流自身の磁場は μ0κhv が小さいときに無視できる.

  • ベータトロンでは,軌道の内側の平均の磁場を軌道上の磁場の2倍の割合で増やすと,電子は同じ半径のまま加速される.

06磁束変化と誘導電場の演習

磁束変化から起電力を求めます.回路自身の磁場を無視し,誘導電場と静電場を比較します.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

半径 a,抵抗 R の静止円形回路に,紙面手前向きの一様磁場があり,0≤t≤T に B=B0+βt2 と変化します.B0,β>0 です.

  1. 反時計回りを正として電流を求めよ.

  2. t=0 から T までに導線の断面を通過する符号付き電荷と,その間の発熱量を求めよ.

静止した円形回路,半径a,抵抗Rと磁場の向きを描く. 静止した円形回路,半径a,抵抗Rと磁場の向きを描く.
解答を見る

考え方 磁束の値ではなく時間変化率が電流を決める.

  1. Φ=πa2(B0+βt2) より E=−dΦdt=−2πa2βt.したがって I=−2πa2βt/R で時計回りに流れる.

  2. q=∫0TIdt=−πa2βT2/R,発熱は

Q=∫0TI2Rdt=4π2a4β2R∫0Tt2dt=4π2a4β2T33R.

B0 は答えに現れない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

軸対称な磁場が紙面手前を向き,半径 r≤a での変化率が ∂B∂t=β(1−αr2/a2) と表せます.β>0,0≤α≤1 は未知です.同心の検出コイルの起電力の大きさを測りました.各コイルは1巻きで電流を無視します.

半径

a/2

a

起電力の大きさ

7.0mV

16mV

a=0.100m として,α,β を求めよ.一様な変化率で説明できますか.

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考え方 円環の磁束変化を足し,2つの測定を説明する.

半径 r のコイルでは

|E(r)|=∫0rβ(1−αs2/a2)2πsds=πβr2(1−αr22a2).

K=πβa2 とおけば,K(1−α/2)=16mV,K(1−α/8)=28mV.差から 3Kα/8=12mV,つまり Kα=32mV.よって K=32mV,α=1.0,β=0.032/(π×0.1002)≈1.0Ts−1.一様なら起電力比は4だが,測定比は 16/7 なので説明できない.α は仮定の範囲内である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

半径 a の長いソレノイドの内側だけの磁場が,B(t)=βt と増えます.外側の半径 r>a のなめらかな円形の絶縁ガイド上に,質量 m,電荷 q>0 の小球を置き,時刻0に静止から放します.軸を上から見ると磁場は手前向きです.小球の場は無視します.

  1. 反時計回りの電場成分と,小球の速度成分を求めよ.

  2. 時刻 T の運動エネルギーとその供給元を求めよ.

ソレノイド半径a,外側のガイド半径r,小球と磁場を描く. ソレノイド半径a,外側のガイド半径r,小球と磁場を描く.
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考え方 円周が囲む磁束変化から電場を求める.

  1. 円周上での対称性から 2πrEθ=−πa2β,よって Eθ=−a2β/(2r).接線方向の運動方程式 mdvθdt=qEθ を積分すると,vθ=−qa2βt/(2mr) となり,時計回りである.

  2. K=q2a4β2T2/(8mr2).誘導電場はソレノイドの外にも存在し,仕事率 qEθvθ は正である.ガイドは仕事をしない.磁場を増す装置がエネルギーを与え,β→0 では加速も消える.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

内半径 a,外半径 b,厚さ h の静止した金属環板に,垂直な一様磁場を加えます.磁場は一定の割合 β で変わり,局所的なオームの法則は j=κE です.κ は電気伝導率で,温度によらないとします.

  1. 半径 r の細い円環を独立した閉回路として扱い,全発熱率を求めよ.

  2. a=0.020m,b=0.040m,h=1.0×10−3m,κ=5.0×107Ω−1m−1,β=0.20Ts−1 で評価せよ.

環板のa,b,hと,半径r,幅drの細い円環,磁場を描く. 環板のa,b,hと,半径r,幅drの細い円環,磁場を描く.
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考え方 各円環の発熱を半径方向に積分する.

  1. 円環の起電力の大きさは πr2|β|.長さ 2πr,断面積 hdr より抵抗は 2πr/(κhdr).よって

dP=πκhβ22r3dr,P=πκhβ22∫abr3dr=πκhβ28(b4−a4).

中央の穴にも磁場があるので,囲む面積から穴を引いてはいけない.

  1. b4−a4=2.4×10−6m4 を代入して P≈1.9×10−3W.a→b で発熱は0になる.回路自身の磁場を無視する十分条件は,磁場の変化時間を Ts として μ0κb2/Ts が1より十分小さいことである.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

半径 b の導体円板を,軸に平行な一様磁場 B 中で角速度 ω>0 で回します.B と回転の向きは右手の関係です.中心軸と外周の摺動接点を,磁場外の静止した抵抗 R で結びます.円板と接点の抵抗は無視し,電子の遠心力は無視します.

  1. 外周から抵抗へ流れる電流を求めよ.

  2. 等速回転を保つ外力のトルクと仕事率を求めよ.

  3. 閉路の磁束が一定でも電流が流れる理由を述べよ.

円板,摺動接点,抵抗と半径b,磁場,回転の向きを描く. 円板,摺動接点,抵抗と半径b,磁場,回転の向きを描く.
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考え方 動く電荷への力から起電力を求める.

  1. 半径 r の速度は ωr で,v×B は外向き.中心から外周への起電力は E=∫0bBωrdr=Bωb2/2.外周が高電位となり,I=Bωb2/(2R) が抵抗へ流れる.

  2. 各半径での全電流は I.幅 dr の部分への接線方向の磁気力は回転を妨げる向きに IBdr である.トルクの大きさは ∫0bIBrdr=IBb2/2.外力のトルクは回転と同方向に T=B2ωb4/(4R),仕事率は Tω=I2R となる.

  3. 円板を通る幾何学的な経路は,同じ導体部分を追う閉路ではない.磁束の時間微分だけでは運動起電力を数えられず,電荷へのローレンツ力を含める必要がある.ω→0 で電流も外力の仕事率も0となる.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

半径 a の静止した円形導線を,直径の両端A,Dで2つの半円に分けます.左半円の抵抗は R,右半円は 3R です.面に垂直で手前向きの一様磁場が dBdt=β>0 で増えます.電圧計の正端子をA,負端子をDにつなぎ,測定経路を左半円のすぐそばにした読みを VL,右半円のすぐそばにした読みを VR とします.計器の電流と,導線との隙間の磁束は無視します.

  1. 時計回りの電流と両方の読みを求めよ.

  2. 読みの差を磁束変化で確かめ,電位差が経路による理由を述べよ.Aは円の上端です.

上端A,下端D,半円抵抗,磁場と電圧計の左右の導線経路を描く. 上端A,下端D,半円抵抗,磁場と電圧計の左右の導線経路を描く.
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考え方 回路に沿う導線では抵抗の電圧降下を読む.経路を変えると囲む磁束が変わる.

  1. 時計回りの起電力は πa2β,よって I=πa2β/(4R).左半円では電流はDからAなので VL=−IR=−πa2β/4.右半円ではAからDなので VR=3IR=3πa2β/4.

  2. 読みは経路に沿うAからDへの電場の線積分である.左をAからDへ,右をDからAへ進む閉路は反時計回りで,その周回積分は

VL−VR=−4IR=−πa2β=−dΦdt.

非零の周回積分があるため,2点だけで定まる電位差では両方を表せない.β→0 では読みの差が消え,静電場の場合と一致する.

ポイント 教える人へ

  • 法線と周回方向を対応させ,起電力の符号を問う.

  • 磁場の外にも誘導電場があることを円周積分で確かめる.

  • 微小断面の抵抗と発熱の供給元を説明させる.

  • 測定経路と,円板で追う導体部分を図で指定させる.

07インダクタンスと電気振動

問い

コイルと電池をつないで電流を流しておき,スイッチを切ります.するとスイッチの接点の間に,小さな火花が飛ぶことがあります.電池の電圧はたった数ボルトなのに,空気の中で火花を飛ばすには数千ボルト以上が要ります.この高い電圧はどこから来るのでしょうか.また,火花で光や熱になったエネルギーは,スイッチを切る前にはどこにあったのでしょうか.

考えてみる

素朴には,スイッチを切れば電流はすぐに0になり,それで終わりのはずです.しかし前の題材で見たとおり,回路を貫く磁束が変われば起電力が生じます.コイルに電流が流れていると,コイル自身の中に磁場があり,コイル自身を貫く磁束があります.電流を減らせばこの磁束も減るので,コイル自身に起電力が生じます.レンツの法則から,その向きは電流の減少を妨げる向き,つまり電流を流し続けようとする向きです.しかも起電力は磁束の変化の速さに比例するので,電流を急に断ち切るほど大きくなります.エネルギーについても,電流を流し続けようとする起電力が火花の中で仕事をするのですから,その源がどこかにあるはずです.電池はもう切り離されているので,残る候補はコイルの中の磁場です.これを順に式にします.

自己誘導

1つの回路に電流 I が流れると,その電流が作る磁場の磁束が回路自身を貫きます.ビオ・サバールの法則から磁場は I に比例するので,この磁束も I に比例します.N 巻きのコイルなら,1巻きを貫く磁束 Φ を巻数の分だけ足した NΦ が,回路全体を貫く磁束です.これを鎖交磁束といいます.

定義 自己インダクタンス

回路自身の電流 I が作る鎖交磁束を NΦ=LI と書き,比例定数 L を自己インダクタンスという.単位は H(ヘンリー)で,1H=1WbA−1=1VsA−1 である.電流が変わると,電流の正の向きに測って

E=−LdIdt

の起電力が回路に生じる.これを自己誘導という.

長さ l,断面積 S,巻数 N の細長いソレノイドでは,中の磁場は B=μ0NI/l(第22章)で,1巻きの磁束は Φ=BS なので

L=μ0N2Sl=μ0n2Sl(n=Nl)

です.L は巻数の2乗に比例します.巻数が2倍になると,磁場が2倍になり,その磁場を貫かれる巻きの数も2倍になるからです.鉄心を入れれば磁場が μr 倍になり,L も μr 倍です.例えば N=1000,S=1.0×10−3m2,l=0.10m なら L≈1.3×10−2H です.この式は,コイルの半径が長さより十分小さく,端で磁場が広がる効果を無視できるときの近似です.

回路の式には,自己誘導の起電力を電池の起電力と並べて入れます.起電力 E0 の電池,抵抗 R,コイル L を直列にした回路では,「抵抗での電圧降下=起電力の和」から RI=E0−LdI/dt,つまり

LdIdt+RI=E0

です.抵抗の無い理想的なコイルでは導線の中の電場が0なので,コイルの外を通る道に沿って測った端子の間の電圧は LdI/dt になります.入試で「コイルの電圧降下 LdI/dt」と呼ぶのはこれです.

電流は急には変われない

スイッチを入れた直後を考えます.電流が一瞬で有限の値に跳ぶと dI/dt が無限大になり,無限大の起電力が必要になります.だからコイルを流れる電流は連続に変わります.スイッチを入れた直後は I=0 のままで,電池の電圧はすべてコイルにかかります.上の式は第4章の空気抵抗や第21章のコンデンサーの充電と同じ1階の線形微分方程式で,I(0)=0 の解は

I=E0R(1−e−t/τ),τ=LR

です.時定数 τ=L/R の間に,電流は最終値 E0/R の約63 %に達します.十分時間がたつと dI/dt=0 で,コイルはただの導線と同じになります.

[図:RL回路の電流の立ち上がり]

初期設定はℰ₀=1 V,L=1 H,R=1 Ωで,時刻0にスイッチを閉じる.LとRを操作すると同じ時間軸上で最終電流ℰ₀/Rと時定数L/Rが変わる.

電流 I0 が流れている所でコイルを電池から外し,抵抗 R だけの閉回路に切り替えると,LdI/dt+RI=0 から I=I0e−t/τ です.電流はすぐには消えず,時定数 L/R で減っていきます.

コイルのエネルギーと磁場のエネルギー

回路の式 LdI/dt+RI=E0 の両辺に I を掛けると

E0I=RI2+ddt(12LI2)

です.左辺は電池が毎秒する仕事,右辺の第1項はジュール熱です.残りの第2項は,電池の仕事のうち熱にならずに蓄えられる分です.

定理 コイルのエネルギー

電流 I が流れる自己インダクタンス L のコイルは,エネルギー U=12LI2 を蓄えている.

このエネルギーはどこにあるのでしょうか.ソレノイドでは L=μ0N2S/l,B=μ0NI/l なので

12LI2=B22μ0×Sl

です.Sl は磁場がある空間の体積です.つまり,磁場のある空間に単位体積あたり B2/(2μ0) のエネルギーがあると考えると,ちょうど合います.第20章で静電エネルギーを電場のエネルギー密度 ε0E2/2 と見たのと同じで,磁場もエネルギーの入れ物です.この見方は第24章で一般の場に広げます.

法則 磁場のエネルギー密度

磁場 B のある真空の空間には,単位体積あたり B22μ0 のエネルギーがある.

相互誘導

2つのコイルを近くに置くと,コイル1の電流 I1 が作る磁束がコイル2も貫きます.その鎖交磁束を M21I1 と書くと,I1 が変わればコイル2に −M21dI1/dt の起電力が生じます.逆に I2 がコイル1に作る鎖交磁束を M12I2 とします.

コイル1の磁力線の一部がコイル2を貫く.両コイルの手前側の正の電流I₁,I₂は下向きで,それぞれ軸に沿って右向きの磁場B₁,B₂を作る. コイル1の磁力線の一部がコイル2を貫く.両コイルの手前側の正の電流I₁,I₂は下向きで,それぞれ軸に沿って右向きの磁場B₁,B₂を作る.

M12 と M21 は,コイルの形が違っても必ず等しくなります.エネルギーから確かめます.はじめに I2=0 のまま I1 を0から最終値まで増やすと,電池1の仕事は 12L1I12 です.次に I1 を一定に保って I2 を増やすと,電池2の仕事 12L2I22 のほかに,コイル1に生じる起電力 −M12dI2/dt に逆らって I1 を保つ電池1の仕事 ∫I1M12dI2=M12I1I2 が要ります.増やす順を逆にすれば,相互の項は M21I1I2 です.最後の状態が同じなら蓄えたエネルギーも同じはずなので(そうでなければ,順序を変えて往復するだけでエネルギーを取り出せてしまいます),M12=M21 です.

定理 相互インダクタンス

2つの回路の間の相互インダクタンス M=M12=M21 は1つの値に決まる.電流 I1,I2 が流れる2つのコイルのエネルギーは

U=12L1I12+MI1I2+12L2I22

である.M の符号は電流の正の向きの選び方と巻き方で決まり,正の電流どうしが同じ向きの磁場を作るとき正である.

磁場のエネルギーは B2/(2μ0) を空間で積分したものなので,どんな電流でも U≥0 です.U を I1 の2次式と見て判別式を考えると,M2≤L1L2 が出ます.k=M/L1L2 を結合の割合といい,一方の磁束がすべて他方を貫く理想的な場合に |k|=1 です.2つのコイルを直列につなぐと I1=±I2 で,合成の自己インダクタンスは L1+L2±2M になります.

抵抗が0の回路,例えば超伝導のリングでは,外から貫く磁束を Φext として,回路の式は 0=−ddt(LI+Φext) です.外部の磁束と自分の電流の磁束の和が一定に保たれ,外の磁場を変えても,リングは電流を流して貫く磁束を元のまま保ちます.

電気振動

電荷 q を蓄えたコンデンサー C をコイル L につなぎます.電流 I の正の向きを,q の極板へ流れ込む向きにとると I=dq/dt で,回路の式は LdI/dt+q/C=0,つまり

Ld2qdt2+qC=0

です.これは第7章のばね振り子の mx¨+kx=0 と同じ形です.抵抗 R もあれば Lq¨+Rq˙+q/C=0 で,速度に比例する抵抗のある振動と同じ形になります.

力学の振動

電気振動

変位 x

電荷 q

速度 v=x˙

電流 I=q˙

質量 m

自己インダクタンス L

ばね定数 k

1/C

抵抗の比例定数 b

抵抗 R

運動エネルギー 12mv2

コイルのエネルギー 12LI2

ばねのエネルギー 12kx2

コンデンサーのエネルギー q22C

コイルは電流の変化を嫌うので質量の役,コンデンサーは電荷をためるほど押し返すのでばねの役です.第7章と同じく q=est を代入すると,微分が s の掛け算になり,Ls2+Rs+1/C=0 が出ます.R=0 なら s=±iω0,ω0=1/LC で,電荷は角振動数 ω0 で振動します.R が小さければ s=−γ±iω′,γ=R/(2L),ω′=ω02−γ2 で,振幅が e−γt で減る減衰振動です.解き方の詳細は数学の節で扱います.

ポイント 電気振動

LC回路の電荷と電流は角振動数 ω0=1/LC で振動し,12LI2+q22C が一定に保たれる.抵抗があると ddt(12LI2+q22C)=−RI2 でエネルギーが熱になり,R が 2L/C より小さければ減衰振動,2L/C 以上なら振動せずに0へ近づく.

[図:LRC回路の電気振動とエネルギー]

初期設定はR=0,t=π/4に相当する状態で,電荷と電流のエネルギーが等しい.初期電荷q(0)=1,I(0)=0,L=C=1を基準に示す.時間のスライダーまたは再生でエネルギーの移り変わりを見られ,Rを2以上にすると電荷は振動しなくなる.

ここまでは,回路のどこでも電流が同じ瞬間に同じ値をとるとしてきました.これは第21章で見た集中定数の近似で,電磁場の変化が回路を伝わる時間 td(大きさが数メートルの回路なら 10−8s ほど)が,L/R や 1/ω0 より十分短いときに使えます.振動数が高く ω0td が1に近づくと,回路は電磁波を出し,導線に沿って電流の波が伝わるので,この扱いは破れます.

問いに戻る

コイルの電流を断ち切ろうとすると,自己誘導の起電力 −LdI/dt が電流を流し続ける向きに生じます.例えば L=0.10H のコイルに流れていた 2A の電流が 10μs で消えれば,起電力はおよそ 0.10×2/(1×10−5)=2×104V で,空気の中で火花を飛ばすのに十分です.電池が数ボルトでも,電流の変化が急なら電圧はいくらでも大きくなります.火花で放出されるエネルギーは 12LI2=0.2J で,スイッチを切る前はコイルの中の磁場に,密度 B2/(2μ0) で蓄えられていました.コイルと並列に抵抗をつないで電流の逃げ道を作っておけば,電流は時定数 L/R で減り,火花は飛ばずにエネルギーは抵抗の熱になります.

ポイント ここまでのまとめ

  • 自己インダクタンス L は NΦ=LI で定義し,起電力は −LdI/dt.細長いソレノイドでは L=μ0N2S/l.

  • コイルの電流は連続に変わる.RL回路の時定数は L/R.

  • コイルのエネルギーは 12LI2 で,磁場にエネルギー密度 B2/(2μ0) で蓄えられる.

  • 相互インダクタンスは M12=M21,エネルギーは 12L1I12+MI1I2+12L2I22 で,M2≤L1L2.抵抗0の回路では鎖交磁束が保たれる.

  • LC回路は ω0=1/LC で振動し,L が質量,1/C がばね定数の役をする.

  • 問いの答え:電流を急に断ち切ると −LdI/dt が非常に大きくなって火花が飛ぶ.そのエネルギー 12LI2 は磁場に蓄えられていた.

082階の線形微分方程式と電気振動

本体の節では,LC回路とLRC回路の振動を結果だけ示しました.ここで,第7章で使った est を代入する方法をまとめ直し,回路の切り替えの問題に使います.第7章では指数を λ と書きましたが,回路の話ではふつう s と書きます.中身は同じです.

定理 数学の道具:定数係数の線形微分方程式を est で解く

a,b,c を実数の定数として,aq¨+bq˙+cq=0 を考える(q˙=dq/dt).

重ね合わせ. 左辺は q について1次なので,q1 と q2 が解なら Aq1+Dq2 も解である.

特性方程式. q=est を代入すると q˙=sq,q¨=s2q なので (as2+bs+c)est=0,すなわち as2+bs+c=0.異なる2つの根 s1,s2 から,一般解 q=Aes1t+Des2t が得られる.

複素数の根. 根が s=−γ±iω′ のとき,e(−γ+iω′)t=e−γt(cos⁡ω′t+isin⁡ω′t) の実部と虚部は,どちらも実数の解である.係数が実数なので,u+iv を代入した式の実部と虚部がそれぞれ0になるからである.よって実数の一般解は q=e−γt(Acos⁡ω′t+Dsin⁡ω′t).

重解. s1=s2=s0 のときは q=(A+Dt)es0t.

右辺が定数. aq¨+bq˙+cq=f(f は定数)なら,qe=f/c が1つの解で,q−qe が右辺0の式をみたす.

定数 A,D は2つの初期条件で決める.回路では,コンデンサーの電荷とコイルの電流が切り替えの前後で連続であることを使う.1階の式 LI˙+RI=E0 も同じで,Ls+R=0 から s=−R/L,I=E0/R+Ae−Rt/L となる.

LRC回路 Lq¨+Rq˙+q/C=0 の特性方程式は Ls2+Rs+1/C=0 で,根は

s=−R2L±R24L2−1LC

です.γ=R/(2L),ω0=1/LC とおくと第7章と同じ形で,R<2L/C なら弱減衰,R=2L/C なら臨界減衰(重解),R>2L/C なら過減衰です.第7章の Q=ω0/(2γ) は回路では Q=ω0L/R です.

ポイント 数学の道具:エネルギーの式を作る

回路の式 Lq¨+Rq˙+q/C=0 に q˙=I を掛けると,Lq¨q˙=ddt(12Lq˙2),qq˙C=ddt(q22C) なので

ddt(12LI2+q22C)=−RI2

となる.第6章で運動方程式に速度を掛けて力学的エネルギーの式を作ったのと同じ操作である.電源があれば,右辺に電源の仕事率 EI が加わる.

練習1 L=10mH,C=1.0μF,R=40Ω の直列LRC回路の特性方程式の根を求め,減衰振動かどうかを答えよ.

練習2 q¨+6q˙+9q=18,q(0)=0,q˙(0)=0 を解け(単位は省く).

答え 練習1:s2+4.0×103s+1.0×108=0 より s=−2.0×103±i1.0×108−4.0×106≈(−2.0±9.8i)×103s−1.根が複素数なので減衰振動で,2L/C=200Ω より R が小さいことと合う.練習2:s2+6s+9=0 は重解 s=−3,qe=2 なので q=2+(A+Dt)e−3t.q(0)=0 から A=−2,q˙(0)=D−3A=0 から D=−6 で,q=2−(2+6t)e−3t.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

起電力 E0=12V で内部抵抗の無視できる電池にスイッチ S を直列につなぎ,その先に,自己インダクタンス L=0.60H,内部抵抗 r=4.0Ω のコイルと,抵抗 R=96Ω を並列につなぐ.S を閉じて十分時間がたった後,時刻0に S を開く.

  1. S を開く直前の,コイルと抵抗 R を流れる電流を求めよ.

  2. S を開いた直後に,抵抗 R の両端にかかる電圧の大きさを求めよ.

  3. S を開いた後のコイルの電流を求めよ.また,S を開いてから抵抗 R で発生する熱の総量を求めよ.

電池ℰ₀とスイッチSの先に,内部抵抗rをもつコイルLと抵抗Rを並列に置く.矢印はSを開く前のコイルの電流の向きで,電流や電圧の求める値は示していない. 電池ℰ₀とスイッチSの先に,内部抵抗rをもつコイルLと抵抗Rを並列に置く.矢印はSを開く前のコイルの電流の向きで,電流や電圧の求める値は示していない.
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考え方 十分時間がたった後はコイルの自己誘導による電圧 LdI/dt が0である.S を開いた瞬間もコイルの電流は連続で,その電流は抵抗 R を通る道しか残らない.

  1. コイルの電流は E0/r=3.0A,抵抗 R の電流は E0/R≈0.13A である.

  2. S を開くと,コイルと R だけの閉回路になる.コイルの電流 3.0A がそのまま R を流れる(R の中の向きは開く前と逆になる)ので,電圧の大きさは 3.0×96≈2.9×102V で,電池の電圧の24倍である.

  3. 閉回路の式は LI˙+(r+R)I=0.s=−(r+R)/L より I=3.0e−t/τA,τ=L/(r+R)=6.0ms である.コイルの初めのエネルギー 12LI02=12×0.60×3.02=2.7J が r と R の熱になり,同じ電流が流れるので熱は抵抗に比例して分かれる.R の熱は 2.7×96100≈2.6J である.

確かめ:R を大きくするほど (2) の電圧は大きくなり,R→∞(逃げ道なし)では電圧が限りなく大きくなる.これがスイッチの火花である.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

電気容量 C=4.0μF のコンデンサーを V0=10V に充電し,時刻0に自己インダクタンス L=25mH のコイルにつなぐ.q は初めに正の電荷をもつ極板の電荷,I=q˙ とする.

  1. 回路の抵抗を無視して q(t),I(t) を求めよ.電流の大きさの最大値と,初めてエネルギーがすべてコイルに移る時刻も求めよ.

  2. 回路に R=10Ω の抵抗があるとき,γ と ω′ を求めよ.また,電荷の振幅(包絡線)が初めの半分になる時刻を求めよ.

電流Iの正方向はqの極板へ流れ込む向き.右は抵抗の有無による電荷qの時間変化と,抵抗がある場合の包絡線を示す模式図である.求める電流や時刻,減衰定数の値は示していない. 電流Iの正方向はqの極板へ流れ込む向き.右は抵抗の有無による電荷qの時間変化と,抵抗がある場合の包絡線を示す模式図である.求める電流や時刻,減衰定数の値は示していない.
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考え方 初期条件は q(0)=CV0 と,コイルの電流の連続性から q˙(0)=0 である.

  1. Ls2+1/C=0 より s=±iω0,ω0=1/LC=1/1.0×10−7≈3.2×103s−1.q=Acos⁡ω0t+Dsin⁡ω0t に初期条件を入れると A=CV0=4.0×10−5C,D=0.よって

q=CV0cos⁡ω0t,I=−CV0ω0sin⁡ω0t

電流の大きさの最大値は CV0ω0≈0.13A.エネルギーがすべてコイルに移るのは q=0 のときで,初めては t=π/(2ω0)≈5.0×10−4s である.

  1. γ=R/(2L)=2.0×102s−1,ω′=ω02−γ2=1.0×107−4×104≈3.2×103s−1 で,ω0 とほとんど変わらない.解は q=e−γt(Acos⁡ω′t+Dsin⁡ω′t) で,初期条件から A=CV0,D=γCV0/ω′.包絡線は e−γt に比例するので,半分になるのは t=ln⁡2/γ≈3.5×10−3s,周期 2π/ω′≈2.0ms の約1.7倍である.

確かめ:(1) で 12CV02=2.0×10−4J と 12L(CV0ω0)2=12CV02 は等しい.(2) は γ/ω0≈0.063 が小さい弱減衰で,Q=ω0L/R≈7.9 である.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

例題 2 と同じコンデンサーとコイルに抵抗 R を直列に入れ,同じ初期条件で放電させる.

  1. 振動せずに最も速く放電させる R の値を求めよ.

    1. のときの q(t) と I(t) を求め,電流の大きさが最大になる時刻とその値を求めよ.

  2. 抵抗で発生する熱の総量を,電流の2乗を積分して求め,初めの静電エネルギーと比べよ.

直列LRC回路と,振動せずに減る電荷q,負方向へ流れた後に0へ戻る電流Iの模式図.比較用に抵抗なしのqを薄く重ねる.問題で求める極値の時刻や値は示していない. 直列LRC回路と,振動せずに減る電荷q,負方向へ流れた後に0へ戻る電流Iの模式図.比較用に抵抗なしのqを薄く重ねる.問題で求める極値の時刻や値は示していない.
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考え方 振動しない範囲で最も速く0へ近づくのは臨界減衰で,特性方程式が重解をもつ.

  1. Ls2+Rs+1/C=0 の判別式が0になる R=2L/C=26.25×103≈1.6×102Ω である.

  2. 重解は s=−R/(2L)=−1/LC=−ω0 なので q=(A+Dt)e−ω0t.q(0)=CV0 から A=CV0,q˙(0)=D−ω0A=0 から D=ω0CV0.よって

q=CV0(1+ω0t)e−ω0t,I=q˙=−CV0ω02te−ω0t

te−ω0t を微分すると (1−ω0t)e−ω0t なので,|I| は t=1/ω0≈3.2×10−4s で最大になり,その値は CV0ω0/e≈4.7×10−2A である.

  1. ∫0∞t2e−2ω0tdt=2(2ω0)3 を使うと

∫0∞RI2dt=RC2V02ω04⋅14ω03=RC2V02ω04

Rω0=2L/C⋅1LC=2C なので,これは 12CV02=2.0×10−4J に等しく,初めの静電エネルギーがすべて熱になる.

確かめ:電流の最大値は抵抗の無い例題 2 の 1/e 倍になっている.q は t=0 から単調に減り,符号を変えない.

ポイント ここまでのまとめ

  • 定数係数の線形微分方程式は est を代入して特性方程式にする.複素数の根 −γ±iω′ からは減衰振動,重解からは (A+Dt)es0t が出る.

  • 右辺が定数なら,つり合いの解 qe からのずれを考える.定数は電荷と電流の連続性で決める.

  • LRC回路は R<2L/C で減衰振動,R=2L/C で臨界減衰.Q=ω0L/R.

  • 回路の式に I を掛けると,コイルとコンデンサーのエネルギーの和の変化が熱と電源の仕事で表される.

09自己誘導と電気振動の演習

電流と磁束の正方向を決め,切り替えを初期条件でつないでください.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

空心ソレノイドの半径,断面積,長さ,巻数を a,S,l,N,電流を I とします.a/l は十分小さく,内部の磁場を B=μ0NI/l,外部の磁場を0と近似します.

  1. 自己インダクタンス L を鎖交磁束 NΦ=LI から求めよ.

  2. エネルギー密度 B2/(2μ0) を体積にわたって積分し,コイルのエネルギーを求めよ.

ソレノイドの半径,長さ,巻数,電流方向を示す. ソレノイドの半径,長さ,巻数,電流方向を示す.
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考え方 1巻の磁束と全巻の鎖交磁束を区別する.

  1. Φ=BS=μ0NIS/l より,LI=μ0N2SI/l,したがって L=μ0N2S/l である.

  2. 内部で密度は一定だから

U=∫B22μ0dV=B2Sl2μ0=μ0N2S2lI2=12LI2

端の効果を無視する近似は,a/l が十分小さい場合に使える.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

自己インダクタンス L=0.12H,内部抵抗 r=3.0Ω のコイルを, E=6.0V の理想電源で定常状態にします.時刻0に電源を外し,コイルと R=9.0Ω の抵抗だけからなる閉回路へ切り替えます.電流の経路は切り替え中も確保します.

  1. 切り替え後の電流 I(t) と時定数を求めよ.

  2. 内部抵抗と外部抵抗で発生する全熱量をそれぞれ求めよ.

電源とコイルの接続,切り替え後の閉回路,電流の正方向を示す. 電源とコイルの接続,切り替え後の閉回路,電流の正方向を示す.
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考え方 電流の連続性を使い,切り替え後の熱を積分する.

  1. I(0)=E/r=2.0A.回路の式は LdIdt+(r+R)I=0.積分して ln⁡(I/I(0))=−(r+R)t/L より,I(t)=I(0)e−t/τ,τ=L/(r+R)=0.010s である.

  2. 初期エネルギーは U0=LI(0)2/2=0.24J.例えば

Qr=∫0∞rI(0)2e−2t/τdt=rI(0)2τ2=rr+RU0=0.060J

同様に QR=0.18J.和は初期エネルギー U0 に一致する.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

理想コイル L=8.0mH とコンデンサー C=20μF の閉回路を考えます.時刻0でコンデンサーの電荷は0,コイルの電流は I∗=0.30A です.抵抗と電源はなく,電流が流れ込む極板の電荷を q として I=dqdt とします.

  1. est を使って q(t),I(t) を求めよ.

  2. 最大電圧と,初めて両エネルギーが等しくなる時刻を求めよ.

LC閉回路に初期電流と電荷qの極板を示す. LC閉回路に初期電流と電荷qの極板を示す.
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考え方 初期電流から電荷の時間微分を決める.

  1. Ld2qdt2+q/C=0 に q∝est を代入すると Ls2+1/C=0.根は s=±iω0,ω0=1/LC.実部を重ねた q=Acos⁡ω0t+Dsin⁡ω0t に初期条件を入れ,A=0,D=I∗/ω0 を得る.よって q=(I∗/ω0)sin⁡ω0t,I=I∗cos⁡ω0t である.

  2. V=q/C より Vmax=I∗L/C=6.0V.UC=LI∗2sin2⁡ω0t/2,UL=LI∗2cos2⁡ω0t/2 なので,初めて等しくなるのは t=πLC/4=0.31ms.電圧最大時には電流が0である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

C=10.0μF のコンデンサーを含む直列LRC閉回路で,電源を外した後の同じ向きの電流の山を測りました.L,R は一定で,測定器の影響を無視します.

tn(ms)

In(mA)

1.00

50.0

3.00

40.0

5.00

32.0

  1. q∝est から減衰率 γ と角振動数 ω′ の関係式を導き,表から L,R を決めよ.

  2. 最初の山の高さの半分以下になるのは,その何周期後の山からか.

LRC閉回路と測定器,表の観測点を示す. LRC閉回路と測定器,表の観測点を示す.
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考え方 同位相の山の比は指数因子だけで決まる.

  1. 回路の式 Ld2qdt2+Rdqdt+q/C=0 の特性方程式は Ls2+Rs+1/C=0.根を −γ±iω′ と書くと,γ=R/(2L),ω′2=1/(LC)−γ2.電流も同じ率で減衰するので

γ=−ln⁡0.8002.00×10−3s=112s−1,ω′=2π2.00×10−3s

したがって L=1/[C(ω′2+γ2)]=10.1mH,R=2γL=2.26Ω.3点目も高さの比0.800を満たす.

  1. 0.800n≤1/2 より n≥ln⁡(1/2)/ln⁡0.800=3.11.答えは4周期後である.γ/ω′=0.0355 が小さい弱減衰であるが,計算は近似していない.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

長さ l,巻数 N が等しい空心ソレノイドを同軸に重ねます.断面積は内側が S,外側が 4S で,端の効果を無視します.各電流の正方向は内部に同じ向きの磁場を作る方向です.内側を1,外側を2とします.

  1. L1,L2,M と結合の割合 k=M/L1L2 を求めよ.

  2. 直列で磁場を強め合う場合と弱め合う場合の合成インダクタンスを求め,エネルギーの非負性を確かめよ.

断面積Sと4Sの同軸コイルと電流方向,直列の2通りの端子接続を示す.内側のコイル1を青の太線で区別し,Sと4Sの矢印で断面の対応を示す. 断面積Sと4Sの同軸コイルと電流方向,直列の2通りの端子接続を示す.内側のコイル1を青の太線で区別し,Sと4Sの矢印で断面の対応を示す.
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考え方 共通に鎖交する断面は S である.

  1. L1=μ0N2S/l,L2=4L1.外側の電流が内側に与える鎖交磁束は N(μ0NI2/l)S=MI2 だから M=L1.内側の磁場がある断面は S だけなので同じ値になる.k=1/2 である.

  2. 強め合う接続では I1=I2=I,弱め合う接続では I1=I,I2=−I.

U=12L1I12+MI1I2+12L2I22=12LeqI2

に代入すると Leq=L1+L2±2M,順に 7L1,3L1.任意の電流でも U=L1(I1+I2)2/2+3L1I22/2≥0 である.端を無視するには外側半径と l の比が十分小さいことが必要である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

面積 S,一定の自己インダクタンス L をもつ細い超伝導リングを,一様な外部磁場 B の中でゆっくり回します.抵抗0の閉回路として扱い,初めは電流0で正の法線は磁場と同方向です.法線と磁場の角を θ とし,正の電流の磁気モーメントは正の法線を向くものとします.

  1. 外部磁束と自己磁束の和が保存されることを示し,I(θ) を求めよ.

  2. 0 から π/2 まで回す外力の仕事を求めよ.リングの運動エネルギーの変化は無視します.

一様磁場中のリング,法線,θ,Sと電流の正方向を示す. 一様磁場中のリング,法線,θ,Sと電流の正方向を示す.
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考え方 外部磁束と自己磁束の和を保存する.

  1. 回路の式は 0=−ddt(LI+BScos⁡θ).初期値から LI+BScos⁡θ=BS,よって I=BS(1−cos⁡θ)/L.

  2. 磁気モーメントの大きさは IS.磁気トルクは角を戻す方向に −ISBsin⁡θ なので,外力の仕事は

W=∫0π/2B2S2L(1−cos⁡θ)sin⁡θdθ=B2S22L

終状態の LI2/2 に等しい.電流は一定でなく,エネルギーは機械的な仕事から来る.

ポイント 教える人へ

  • 素子ごとに電流と電圧の連続性を問う.

  • LC振動の初期エネルギーの所在を問う.

  • 山の高さを片対数で直線化し,周期とは別の情報を読む.

  • 相互誘導の符号と保存する磁束を図で点検する.

10交流回路と共振

問い

ラジオのアンテナには,いくつもの放送局の電波が同時に届いていて,アンテナの導線にはそれらすべてによる電流が重なって流れています.それなのにラジオは,つまみを回すだけで,その中から1つの局だけを選び出して鳴らします.どうやって選んでいるのでしょうか.

考えてみる

それぞれの局は,決まった振動数の電波を出しています.局を選ぶには,ある振動数の信号にだけ大きく応える回路があればよいはずです.第7章のブランコは,固有の振動数で押したときだけ大きく揺れました.前の題材で,LC回路はばねとおもりと同じ形の式に従い,固有の角振動数 1/LC で振動することを見ました.だから,LC回路に交流の電圧を加えれば,共鳴が起こるはずです.問題は計算です.コイルの電圧は電流の微分,コンデンサーの電圧は電流の積分で決まるので,素子が増えるたびに微分方程式を解き直すのは大変です.第7章で強制振動を複素数で解いたように,振動する量を複素数で表すと,微分が掛け算に変わり,交流回路は直流回路と同じ手順で解けるようになります.

交流と実効値

電圧が V(t)=V0cos⁡(ωt+ϕ) と変わるものを交流といい,V0 を振幅,f=ω/(2π) を周波数といいます.抵抗 R にこの電圧を加えると,消費電力 V2/R は時間とともに変わり,cos2 の平均が 1/2 なので,平均は V02/(2R) です.

定義 実効値

交流の電圧と電流の振幅を V0,I0 とするとき,Ve=V0/2,Ie=I0/2 を実効値という.抵抗での平均の消費電力は VeIe=Ve2/R で,直流と同じ形になる.

家庭のコンセントの 100V は実効値で,電圧の振幅は約 141V です.

複素数で表す

線形な素子(抵抗,コイル,コンデンサー)だけの回路に角振動数 ω の電圧を加えると,初めの過渡的な振動は第7章の減衰振動と同じように消え,やがてすべての電圧と電流が同じ ω で振動する定常状態になります.そこで,電圧と電流を

V(t)=Re⁡(V^eiωt),I(t)=Re⁡(I^eiωt)

と書きます.複素数 V^=V0eiϕ を複素振幅といい,その絶対値が振幅,偏角が位相です.回路の式は実数の係数の線形な式なので,複素数のまま解いて最後に実部をとればよいのでした(第7章).このとき時間の微分は iω の掛け算になります.

  • 抵抗:V=RI から V^=RI^.

  • コイル:V=LdI/dt から V^=iωLI^.

  • コンデンサー:I=CdV/dt から I^=iωCV^,つまり V^=I^/(iωC).

定義 複素インピーダンス

素子の両端の電圧と電流の複素振幅の比 Z=V^/I^ を複素インピーダンスという.

ZR=R,ZL=iωL,ZC=1iωC=−iωC

Z=R+iX と書くとき X をリアクタンスという.|Z| は電圧と電流の振幅の比 V0/I0,Z の偏角は電圧が電流より進む位相である.逆数 Y=1/Z をアドミタンスといい,I^=YV^ である.

i=eiπ/2 なので,コイルの電圧は電流より π/2 進み,コンデンサーの電圧は π/2 遅れます.|ZL|=ωL は周波数が高いほど大きく,|ZC|=1/(ωC) は小さくなります.コイルは速い変化を通しにくく,コンデンサーは速い変化ほど通しやすいのです.なお,電気工学では電流の記号 i と区別するため,虚数単位を j と書きます.電圧が sin⁡ωt で与えられたときは sin⁡ωt=Re⁡(−ieiωt) を使い,Iccos⁡ωt+Issin⁡ωt の複素振幅は Ic−iIs です.

直流と同じ規則で解く

節点に流れ込む電流の和が0であることは,すべての時刻で Re⁡(∑I^keiωt)=0 ということなので,∑I^k=0 と同じです.閉じた道に沿った電圧の和も同じです.したがって,キルヒホッフの法則は複素振幅についてそのまま成り立ち,各素子は V^=ZI^ という「複素数のオームの法則」に従います.直列の合成は Z=Z1+Z2,並列の合成は 1/Z=1/Z1+1/Z2,分圧やブリッジの平衡の条件も直流と同じ形で使えます.違うのは,抵抗の代わりに複素数を足したり割ったりすることだけです.

[図:回転する複素振幅と実際の電圧・電流]

初期設定はω/ω₀=1.5,ωt=π/4.電源の振幅を一定にした直列RLC回路で,全ての複素振幅が同じ角度だけ回転する.実軸への影と時間波形を示し,ωと時刻を変えるとリアクタンスによる振幅と位相の変化を見られる.

複素平面に矢印を描いたこの図をベクトル図(位相図)といいます.矢印の和が複素数の和で,振幅の比と位相のずれが一目で分かります.

この扱いは,第21章の集中定数の近似の上に立っています.回路の大きさが波長 c/f より十分小さい必要があり,50Hz なら波長は 6000km で何の問題もありませんが,1GHz では 30cm なので,ふつうの導線の回路としては扱えません.また,素子が線形であること(鉄心が飽和しないことなど)も必要です.

直列共振とQ値

抵抗 R,コイル L,コンデンサー C を直列にして V0cos⁡ωt を加えると,Z=R+i(ωL−1ωC) で,電流の振幅は

I0=V0R2+(ωL−1ωC)2

です.リアクタンスが0になる ω0=1/LC で Z=R になり,電流は最大値 V0/R をとり,電源の電圧と同じ位相になります.これが直列共振です.電荷 q で書けば Lq¨+Rq˙+q/C=V0cos⁡ωt で,第7章の強制振動そのものです.電流は速度にあたるので,その振幅はちょうど ω0 で最大になります.

定理 共振の鋭さ

直列RLC回路で,消費電力が共振のときの半分になる2つの角振動数 ω−<ω+ では |X|=R で,

ω+−ω−=RL,ω+ω−=ω02

が成り立つ.Q値 Q=ω0LR=ω0ω+−ω− が大きいほど共振は鋭い.

[図:直列RLC回路の共振と位相]

初期設定はR/(ω₀L)=0.5.固定した電源振幅の下でRを変えると,電流振幅の共振曲線の高さと幅,電圧が電流より進む位相φが変化する.半電力の2点を結ぶ幅はω₊−ω₋=R/Lである.

共振のとき,コイルとコンデンサーの電圧の振幅はどちらも ω0LI0=QV0 で,電源の電圧の Q 倍にもなります.2つは逆の位相なので打ち消し合い,電源から見ると抵抗だけが残ります.

コイルとコンデンサーを並列につなぐと,アドミタンスが Y=i(ωC−1ωL) で,ω0 で0になります.このとき電源からはほとんど電流が流れないのに,コイルとコンデンサーの間を大きな電流が行き来します.これが並列共振です.コイルの抵抗があると,同位相になる角振動数は ω0 から少しずれます.

電力と力率

電力 VI は積なので,実部をとってから掛けなければなりません.Re⁡a=12(a+a∗)(a∗ は複素共役)を使うと,V(t)I(t) は e±2iωt の項と 14(V^I^∗+V^∗I^) の和になり,前者は1周期で平均すると0です.

定理 交流の平均電力

P=12Re⁡(V^I^∗)=VeIecos⁡φ

φ は Z の偏角(電圧と電流の位相のずれ)で,cos⁡φ=R/|Z| を力率という.V^=ZI^ を入れると P=12Re⁡(Z)|I^|2=RIe2 で,電力を消費するのは抵抗だけである.

コイルとコンデンサーは Z が純虚数なので平均の電力は0で,1周期の間にエネルギーを蓄えては返すだけです.力率が小さい負荷は,同じ電力を使うのに大きな電流が要り,送電線の損失を増やします.

変圧器と送電

1つの鉄心に巻数 N1 と N2 の2つのコイルを巻いたものが変圧器です.各コイルの電流 I^1,I^2 を端子からコイルへ流れ込む向きにとると,相互誘導を含めた回路の式は

V^1=iωL1I^1+iωMI^2,V^2=iωMI^1+iωL2I^2

です.鉄心が磁束をすべて閉じこめれば,1巻きあたりの磁束は共通で,L は巻数の2乗に比例し,M=L1L2 です.n=N2/N1 とおくと L2=n2L1,M=nL1 なので,2つ目の式は V^2=n(iωL1I^1+iωMI^2)=nV^1 になります.1つ目の式から I^1=V^1/(iωL1)−nI^2 で,第1項を磁化電流といいます.ωL1 が1次側から見た負荷のインピーダンスの大きさより十分大きければ磁化電流は無視でき,I^1=−nI^2 です.

ポイント 理想変圧器

V^2=nV^1,2次側から負荷へ流れ出す電流を I^2′ として I^1=nI^2′.入る電力と出る電力は等しい.2次側にインピーダンス Z の負荷をつなぐと,1次側からは Z/n2 に見える.

巻数N₁とN₂のコイルが共通の鉄心を通る磁束Φで結ばれる.1次側に交流電源,2次側に負荷Zを接続する.Î₁とÎ₂はコイルへ流れ込む正方向で,Î₂′は負荷へ流れ出す方向である. 巻数N₁とN₂のコイルが共通の鉄心を通る磁束Φで結ばれる.1次側に交流電源,2次側に負荷Zを接続する.Î₁とÎ₂はコイルへ流れ込む正方向で,Î₂′は負荷へ流れ出す方向である.

発電所から電力 P を電圧の実効値 Ve で送ると,抵抗 r の送電線を流れる電流は P/Ve(力率1のとき)で,損失は r(P/Ve)2 です.電圧を10倍にすれば損失は100分の1になります.変圧器は磁束が変化しないと働かず,直流には使えません.交流なら変圧器で電圧を自由に上げ下げできることが,送電に交流を使う大きな理由です.

問いに戻る

ラジオの入口には,コイルと可変のコンデンサーの共振回路があります.アンテナから来るいろいろな周波数の信号のうち,ω0=1/LC に近いものに対してだけ回路のインピーダンスが小さくなり,大きな電流が流れ,コンデンサーには信号の Q 倍の電圧が現れます.離れた周波数の信号には大きなリアクタンスが立ちはだかり,ほとんど応えません.つまみを回すと C が変わり,ω0 を聞きたい局の周波数に合わせられます.どれだけ近い局まで分けられるかは,共振の幅 ω0/Q で決まります.

ポイント ここまでのまとめ

  • 実効値は振幅の 1/2.抵抗の平均電力は Ve2/R.

  • 電圧と電流を Re⁡(V^eiωt) と書くと,微分は iω の掛け算になる.ZR=R,ZL=iωL,ZC=1/(iωC).

  • 複素振幅でキルヒホッフの法則と V^=ZI^ が成り立ち,直流と同じ手順で解ける.|Z| が振幅の比,偏角が位相のずれ.

  • 直列RLCは ω0=1/LC で共振し,半電力の幅は R/L,Q=ω0L/R.

  • 平均電力は 12Re⁡(V^I^∗)=VeIecos⁡φ.理想変圧器は V^2=nV^1,I^1=nI^2′.

  • 問いの答え:LC共振回路で ω0 を局の周波数に合わせ,その周波数の信号だけに大きく応えさせる.

11複素数の計算と周波数応答

交流回路を複素インピーダンスで解くと,最後は複素数の掛け算と割り算,そして実部をとる計算になります.ここでは,その計算を極形式で手早く行う方法と,共振曲線の幅,周波数によって振幅と位相がどう変わるか(周波数応答)をまとめます.

定理 数学の道具:複素数の極形式

極形式. 複素数 z=a+bi は,絶対値 |z|=a2+b2 と偏角 θ(cos⁡θ=a/|z|,sin⁡θ=b/|z|)を使って z=|z|eiθ と書ける.

積と商. z1z2=|z1||z2|ei(θ1+θ2),z1z2=|z1||z2|ei(θ1−θ2).掛けると絶対値は掛け算,偏角は足し算になる.

複素共役. z∗=a−bi=|z|e−iθ.zz∗=|z|2,Re⁡z=12(z+z∗) で,分母を実数にするには 1z=z∗|z|2 を使う.

実部に戻す. Re⁡(|z|eiθeiωt)=|z|cos⁡(ωt+θ).複素振幅の絶対値が振幅,偏角が位相になる.

練習1 Z=(30+40i)Ω の素子に 100cos⁡ωtV を加えた.電流 I(t) を求めよ.

練習2 R=100Ω の抵抗と,リアクタンスの大きさが 1/(ωC)=100Ω のコンデンサーを並列にしたときの合成インピーダンスを求め,極形式で表せ.

答え 練習1:I^=10030+40i=100(30−40i)2500=(1.2−1.6i)A.|I^|=2.0A,偏角は −θ(tan⁡θ=4/3,θ≈0.93rad)なので I≈2.0cos⁡(ωt−0.93)A.練習2:1Z=1100+i100 より Z=1001+i=(50−50i)Ω=502e−iπ/4Ω.

定理 数学の道具:共振曲線の幅

直列RLC回路のリアクタンス X=ωL−1ωC について,|X|=R となる正の ω は,Lω2−Rω−1C=0 と Lω2+Rω−1C=0 の正の根で

ω±=±R+R2+4L/C2L

である.よって ω+−ω−=RL,ω+ω−=1LC=ω02 が厳密に成り立つ.また X=L(ω2−ω02)ω=L(ω−ω0)(ω+ω0)ω なので,ω が ω0 に近いとき X≈2L(ω−ω0) で

I0I0,max=RR2+X2≈11+(2Qω−ω0ω0)2

となる.この近似は |ω−ω0|/ω0 が十分小さいときに使える.

定理 数学の道具:周波数応答

入力の電圧の複素振幅 V^in と出力の V^out の比 H(ω)=V^out/V^in の絶対値が振幅の比,偏角が位相のずれである.抵抗 R とコンデンサー C を直列にし,C の両端を出力とすると,分圧から

H=1/(iωC)R+1/(iωC)=11+iω/ωc,ωc=1RC

で,|H|=1/1+(ω/ωc)2,位相は −arctan⁡(ω/ωc) だけ遅れる.低い周波数を通し高い周波数を弱めるのでローパスフィルターといい,ωc を遮断角振動数という(|H|=1/2).R の両端を出力にすると H=iω/ωc1+iω/ωc のハイパスフィルターになる.入力がいくつもの周波数を含むときは,回路が線形なので,周波数ごとに H を掛けて足せばよい.

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

抵抗 R=30Ω とコイル(抵抗は無視できる)を直列にし,実効値 100V,周波数 50Hz の正弦波の交流電圧を加えたところ,コイルのリアクタンスは 40Ω だった.

  1. コイルの自己インダクタンスを求めよ.

  2. 電流の実効値と,電源の電圧に対する電流の位相のずれを求めよ.

  3. 抵抗とコイルの両端の電圧の実効値をそれぞれ求めよ.2つの和が 100V にならない理由を述べよ.

  4. 平均の消費電力と力率を求めよ.

抵抗RとコイルLを直列につなぎ,それぞれの両端に電圧計を置く.右は抵抗の電圧と直交するコイルの電圧の和が電源電圧になる模式図.求める実効値や位相角の値は示していない. 抵抗RとコイルLを直列につなぎ,それぞれの両端に電圧計を置く.右は抵抗の電圧と直交するコイルの電圧の和が電源電圧になる模式図.求める実効値や位相角の値は示していない.
解答を見る

考え方 Z=R+iωL を極形式にする.電圧の和は複素振幅(ベクトル図の矢印)の和で,実効値の和ではない.

  1. ωL=40Ω,ω=2π×50s−1 より L=40/(100π)≈0.13H.

  2. Z=(30+40i)Ω,|Z|=50Ω なので Ie=100/50=2.0A.Z の偏角 φ は tan⁡φ=4/3 で φ≈0.93rad(約 53∘).電流は電圧より 0.93rad 遅れる.

  3. 抵抗は 30×2.0=60V,コイルは 40×2.0=80V.抵抗の電圧は電流と同位相,コイルの電圧は π/2 進むので,ベクトル図で2本の矢印は直交し,和の長さは 602+802=100V である.実効値は各電圧の振幅を 2 で割ったもので,位相が違う電圧の実効値は足せない.

  4. P=VeIecos⁡φ=100×2.0×0.60=1.2×102W,力率は R/|Z|=0.60.

確かめ:RIe2=30×2.02=120W と一致し,コイルは平均では電力を使わない.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

抵抗 R=1.0kΩ とコンデンサー C=0.10μF のローパスフィルターに,入力

Vin=V1cos⁡ω1t+V1cos⁡ω2t,V1=1.0V,ω1=1.0×103s−1,ω2=1.0×105s−1

を加える.出力端には何もつながない.

  1. 遮断角振動数を求めよ.

  2. 定常状態の出力 Vout(t) を求めよ.

  3. ω2 の成分の振幅を ω1 の成分の振幅で割った比は,出力では入力の何倍になったか.

入力端と無負荷の出力端をもつRC回路.右は速い成分と遅い成分が重なる入力と,遅い成分が主に残る出力の模式図で,求める振幅比や位相,遮断角振動数は記していない. 入力端と無負荷の出力端をもつRC回路.右は速い成分と遅い成分が重なる入力と,遅い成分が主に残る出力の模式図で,求める振幅比や位相,遮断角振動数は記していない.
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考え方 回路が線形なので,2つの周波数の成分を別々に扱い,それぞれに H(ω) を掛けて実部をとり,最後に足す.

  1. ωc=1/(RC)=1/(1.0×103×1.0×10−7)=1.0×104s−1.

  2. ω1 では H=11+0.10i,|H|=1/1.01≈0.995,偏角 −arctan⁡0.10≈−0.10rad.ω2 では H=11+10i,|H|=1/101≈0.0995,偏角 −arctan⁡10≈−1.47rad.よって

Vout≈1.0cos⁡(ω1t−0.10)+0.10cos⁡(ω2t−1.5)[V]
  1. 入力では比が1だったのが,出力では 0.0995/0.995≈0.10 で,速い成分が約10分の1に弱まった.

確かめ:ω が ωc より十分大きいと |H|≈ωc/ω,位相の遅れは π/2 に近づく.コンデンサーのインピーダンスが抵抗よりずっと小さくなり,出力端が短絡されたように見えるからである.出力端に負荷をつなぐと H が変わる(演習で扱う).

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

ラジオの同調回路を,アンテナの信号を電源とする直列RLC回路とみなす.L=200μH,R=10Ω で,可変コンデンサーを調整して周波数 1.000MHz の局に共振させる.

  1. C と Q を求めよ.

  2. この局の信号の振幅が 1.0mV のとき,回路の電流の振幅とコンデンサーの電圧の振幅を求めよ.

  3. 同じ振幅で周波数 1.009MHz の別の局の信号が来ている.この信号による電流の振幅は,(2) の何倍か.

アンテナを電源とみなす直列RLC回路で,可変コンデンサーCを調節する.共振曲線の横軸に1.000 MHzと1.009 MHzを示す.求める容量,Q,電流や電圧,応答比の数値は示していない.共振曲線の幅は誇張している. アンテナを電源とみなす直列RLC回路で,可変コンデンサーCを調節する.共振曲線の横軸に1.000 MHzと1.009 MHzを示す.求める容量,Q,電流や電圧,応答比の数値は示していない.共振曲線の幅は誇張している.
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考え方 共振では Z=R.ずれた周波数ではリアクタンスを計算する.近似 X≈2L(ω−ω0) でも確かめる.

  1. ω0=2π×1.000×106≈6.283×106s−1.C=1ω02L=1(6.283×106)2×2.00×10−4≈1.27×10−10F,約 127pF.Q=ω0L/R=1256.6/10≈1.3×102.

  2. 電流の振幅は V0/R=1.0×10−3/10=1.0×10−4A.コンデンサーの電圧の振幅は I0/(ω0C)=ω0LI0=QV0≈0.13V で,信号の約130倍である.

  3. ω1=2π×1.009×106s−1 では ω1L≈1267.9Ω,1ω1C=ω0L⋅ω0ω1=1256.61.009≈1245.4Ω で,X≈22.5Ω.よって

I0(ω1)I0(ω0)=RR2+X2=10100+507≈0.41

近似では X≈2L(ω1−ω0)=2×2.00×10−4×2π×9×103≈22.6Ω で,ほぼ同じである.

確かめ:半電力の幅は R/L=5.0×104s−1,周波数で 8.0kHz なので,9kHz 離れた局は半電力の点より外にあり,比 0.41 が 1/2 より小さいことと合う.電力では約0.16倍にしかならず,共振回路1段では隣の局を十分には消せない.実際の受信機は,同調回路を何段も重ねたり,信号を一定の周波数に変えてから鋭いフィルターを通したりして,選択性を高めている.

ポイント ここまでのまとめ

  • 複素数は極形式 |z|eiθ で掛け算・割り算をする.1/z=z∗/|z|2 で分母を実数にし,Re⁡(|z|ei(ωt+θ))=|z|cos⁡(ωt+θ) で実際の値に戻す.

  • 直列RLCの半電力の2点は ω+−ω−=R/L,ω+ω−=ω02 をみたす.Q=ω0L/R.

  • 周波数応答 H(ω) の絶対値が振幅の比,偏角が位相のずれ.RCのローパスは H=1/(1+iω/ωc),ωc=1/(RC).

  • いくつもの周波数を含む入力は,周波数ごとに解いて足す.

12交流回路と共振の演習

複素振幅を実部へ戻してください.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

R=60Ω,C=12.5μF を直列にし,V(t)=V0cos⁡ωt,V0=10V,ω=1.0×103s−1 を加えます.定常状態とします.

  1. インピーダンスと複素振幅,実際の電流を求めよ.

  2. 電流の実効値,力率,平均消費電力を求めよ.

直列RC回路の電源と電流方向を示す. 直列RC回路の電源と電流方向を示す.
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考え方 複素振幅を実部へ戻す.

  1. Z=R+1/(iωC)=(60−80i)Ω.V^=V0 とすると

I^=1060−80iA=(0.060+0.080i)A

実部は I(t)=(0.060cos⁡ωt−0.080sin⁡ωt)A.

  1. Ie=|I^|/2=0.071A,力率は R/|Z|=0.60.P=Re⁡(V^I^∗)/2=0.30W=RIe2.星印は複素共役.C→∞ で位相差が消える.

演習 2

東京大 1990 後期(改題) ★★☆☆☆

実効電圧 100V の電源から理想変圧器と往復抵抗 R=10.0Ω の送電線を経て抵抗負荷へ送電します.受電電力は P=2.25kW,受電電圧は Vr,e=450V,巻数比は n=N2/N1.磁化電流は0とします.

  1. 送電電流,2次電圧,1次電流の実効値と,巻数比,線路の損失を求めよ.

  2. 負荷と巻数比を変え,同じ受電電力を受電電圧 150V で送るとき,送電線の損失は何倍になるか.

変圧器,往復の送電線,抵抗負荷と電圧の測定端を示す. 変圧器,往復の送電線,抵抗負荷と電圧の測定端を示す.
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考え方 受電電圧に電圧降下を足す.

  1. 回路の式は V^2=V^r+RI^2.全て実数に取れる.I2,e=P/Vr,e=5.00A,V2,e=450+10.0×5.00=500V より n=5.00.1次へ流入,2次から流出を正として V^2=nV^1,I^1=nI^2.したがって I1,e=25.0A,Ploss=RI2,e2=250W.

  2. I2,e=2250/150=15.0A となり,損失は 2.25kW,9倍である.損失は受電電圧の2乗に反比例する.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

理想電源から抵抗 R を経た出力端と接地の間に,C と負荷抵抗 R を並列につなぎます.入力は V0cos⁡ωt,出力は接地基準です.

  1. 出力と入力の複素振幅比 H と,ωRC=2 での実際の出力を求めよ.

  2. 出力の振幅が低周波極限の 1/2 になる遮断角振動数を求めよ.

直列抵抗と並列RC,接地と出力端を示す. 直列抵抗と並列RC,接地と出力端を示す.
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考え方 負荷を含めて並列合成する.

  1. 並列部分は Zp=(1/R+iωC)−1=R/(1+iωRC).分圧から

H=ZpR+Zp=12+iωRC

ωRC=2 なら H=(1−i)/4.実部へ戻すと Vout=V0cos⁡(ωt−π/4)/(22).

  1. |H|=1/4+ω2R2C2,低周波極限は 1/2 なので,4+ωc2R2C2=8 より ωc=2/(RC).無負荷の場合の2倍である.ω→∞ で出力は0になる.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

直列RLC回路に振幅 V0=4.50V 一定の交流電圧を加えます.電流の最大振幅は I0,max=0.100A,その 1/2 となる角振動数は表の値です.素子定数は一定,電源・計器の抵抗は0です.

測定点

ω(s−1)

低周波側

8.00×102

高周波側

1.25×103

  1. 共振角振動数,R,L,C を求めよ.

  2. Q=ω0L/R を求め,共振幅から読む値と比べよ.

直列RLC回路と両測定点を示す.頂点の周波数は記さない. 直列RLC回路と両測定点を示す.頂点の周波数は記さない.
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考え方 半電力点ではリアクタンスの絶対値は抵抗に等しい.

  1. Z=R+iX,X=ωL−1/(ωC) より I0=V0/R2+X2.最大値は X=0 で,R=V0/I0,max=45.0Ω.両側で X=∓R だから

Lω−2+Rω−−1/C=0,Lω+2−Rω+−1/C=0

差と代入から L(ω+−ω−)=R, ω−ω+=1/(LC)=ω02.したがって ω0=1.00×103s−1,L=0.100H,C=10.0μF.

  1. Q=1000×0.100/45.0=2.22.Δω=450s−1 より ω0/Δω=2.22.半電力幅の厳密な関係である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

ブリッジのAD間に交流電源をつなぎます.ABは未知の抵抗 r とコイル L の直列,BDは R2,ACは R3,CDは R4 とコンデンサー C の並列です.BC間の検出器は平衡時に電流0です.

  1. 平衡条件から r,L を求めよ.

  2. (R2,R3,R4)=(200,300,600)Ω,C=0.50μF で r,L を求めよ.周波数を2倍にしても平衡するか.

四辺の素子,ADの電源,BCの検出器を示す. 四辺の素子,ADの電源,BCの検出器を示す.
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考え方 平衡時の枝の分圧を等置する.

  1. Dを電圧の基準とすると Z1=r+iωL,Z4=R4/(1+iωR4C).平衡は

V^R2Z1+R2=V^Z4R3+Z4

なので Z1Z4=R2R3,r+iωL=R2R3/R4+iωR2R3C.実部・虚部から r=R2R3/R4,L=R2R3C.

  1. r=100Ω,L=0.030H.周波数によらず平衡する.R2C の次元も H に一致する.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

内部抵抗 r>0,自己インダクタンス L のコイルと C を並列にし,V0cos⁡ωt を加えます.並列共振は電源の電圧と電流が同位相になる正の角振動数です.

  1. 共振角振動数と存在条件を求めよ.

  2. 共振時の各電流の複素振幅と平均電力を求めよ.

並列LCと内部抵抗,電源と各電流方向を示す. 並列LCと内部抵抗,電源と各電流方向を示す.
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考え方 逆数を足し,枝電流の虚部を打ち消す.

  1. I^=YV^ と置くと

Y=1r+iωL+iωC=rr2+ω2L2+i(ωC−ωLr2+ω2L2)

虚部0から r2+ωp2L2=L/C,ωp=1/(LC)−r2/L2.条件は r2C/L<1 である.

  1. V^=V0 として,共振条件から

I^L=V0(rCL−iωpC),I^C=iωpCV0,I^=rCLV0

P=Re⁡(V^I^∗)/2=V02rC/(2L).コイルの発熱も rV02/[2(r2+ωp2L2)]=P と一致する.ωp≈1/LC とするには,r2C/L が十分小さいことが必要である.また信号伝達時間 td に対し,ωtd が小さい集中定数近似である.

ポイント 教える人へ

  • 実部へ戻して位相を確かめる.

  • 実効値と振幅を電力で区別する.

  • 送電の比較で一定にした量を問う.

  • 負荷や抵抗による共振と遮断の変化を問う.

13第23章の章末問題

磁束の変化,電流の過渡応答,導体の運動,交流の電力を組み合わせて考えます.交流は複素振幅の実部で表し,素子定数は一定,回路内の信号伝達時間は扱う時間尺度より十分短いとします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

固定された2つのコイルの相互インダクタンスを M>0 とし,正の電流が作る磁束は強め合うものとします.2次コイルは自己インダクタンス L,全抵抗 R の閉回路です.1次電流を0から Ip まで変え,その後は一定に保ちます.2次電流は初め0で,操作後も十分長く待ちます.

  1. 2次回路の式を立て,全時間に通過する符号付き電荷 qtot を求めよ.

  2. M=6.0mH,R=3.0Ω,Ip=2.0A で評価せよ.1次電流を増す速さだけを変えると,答えは変わるか.

固定した1次コイルと閉じた2次コイルを描く.正の電流が同じ向きの磁束を作る巻き方向と,2次回路のL,Rを示す. 固定した1次コイルと閉じた2次コイルを描く.正の電流が同じ向きの磁束を作る巻き方向と,2次回路のL,Rを示す.
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考え方 回路の式を操作前から電流が消えるまで積分する.

  1. 1次電流を I1(t),2次電流を I(t) とすれば,LdIdt+RI=−MdI1dt である.両辺を全時間にわたって積分すると

L[I(∞)−I(0)]+R∫0∞Idt=−M[I1(∞)−I1(0)].

両端で2次電流は0だから,qtot=−MIp/R となる.負号は増加した1次磁束を打ち消す向きに電荷が通過することを示す.

  1. qtot=−(6.0×10−3H)(2.0A)/(3.0Ω)=−4.0mC.電流の波形は変わっても積分値は変わらない.単位も HAΩ−1=C となり,電流が消えるまで待つ条件が重要である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

静止した N=100 巻の検出コイルの1巻の面積は S=2.0×10−3m2 です.正の法線方向の外部磁場を B(t)=B0sin⁡ωt,B0=0.010T,ω=1.0×103s−1 とします.検出コイルを含む閉回路の全抵抗は R=30Ω,自己インダクタンスは L=40mH です.定常状態を扱います.

  1. 誘導起電力と電流の複素振幅を求め,実際の電流を表せ.正の電流は正の法線方向に磁場を作ります.

  2. 平均発熱率と,磁場を変える装置が回路に与える1周期あたりのエネルギーを求めよ.

静止コイル,抵抗,磁場を変える外部装置を描く.S,N,正の法線と正の電流の対応を示す. 静止コイル,抵抗,磁場を変える外部装置を描く.S,N,正の法線と正の電流の対応を示す.
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考え方 外部磁束の変化を電源に相当する起電力とし,自己誘導はインピーダンスに含める.

  1. 外部の鎖交磁束は NSB0sin⁡ωt だから,E=−NSB0ωcos⁡ωt=−2.0cos⁡ωtV.複素振幅は E^=−2.0V,Z=R+iωL=(30+40i)Ω である.したがって

I^=−2.030+40iA=(−0.024+0.032i)A,I(t)=(−0.024cos⁡ωt−0.032sin⁡ωt)A.
  1. Ie=|I^|/2=0.040/2A より,P=RIe2=0.024W.回路の式に I を掛けると EI=RI2+ddt(LI2/2).1周期でコイルのエネルギーは元に戻るので,装置からの供給は W=PT=2πP/ω=1.5×10−4J となる.自己磁束を外部磁束と二重に数えておらず,L→0 では電流が起電力と同位相になる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

自己インダクタンス L,抵抗 R>0 の静止した1巻き閉回路を考えます.正の法線方向の外部磁束を,時刻0から T の間だけ一定の割合 −E0 で減らし,それ以外では一定に保ちます.E0>0,初め電流0です.

  1. 時刻0以後の電流を求めよ.

  2. t=0 から電流が消えるまでの全発熱量を求め,起電力がする仕事と比較せよ.

  3. 外部磁束変化量の大きさ ΔΦ=E0T を固定して T を変えるとき,T→0 の発熱量を求めよ.

閉回路のLとR,正の周回方向を描く.外部磁束の時間グラフに初期値,傾き,変化時間Tだけを示す. 閉回路のLとR,正の周回方向を描く.外部磁束の時間グラフに初期値,傾き,変化時間Tだけを示す.
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考え方 起電力の有無で解をつなぎ,コイルに残るエネルギーも最終的には熱になると考える.

  1. τ=L/R とおく.0<t<T では LdIdt+RI=E0 だから,定常解と斉次解を加えて I=E0(1−e−t/τ)/R.電流の連続性より IT=E0(1−e−T/τ)/R.t≥T では I=ITe−(t−T)/τ である.

  2. 初めも終わりも磁気エネルギーは0なので,全発熱量は起電力の仕事に等しい.直接積分すると

Qtot=∫0TE0Idt=E02R[T−τ(1−e−T/τ)].

発熱を別々に積分しても,操作中は E02[T−2τ(1−e−T/τ)+τ(1−e−2T/τ)/2]/R,操作後は LIT2/2 であり,和は上式になる.

  1. E0=ΔΦ/T を代入する.u=T/τ が小さいとき 1−e−u=u−u2/2+⋯ なので,Qtot→ΔΦ2/(2L).この極限では直後の電流が ΔΦ/L となり,その磁気エネルギーが熱になる.極限は集中定数模型での値であり,実際に速い操作を近似するには信号伝達時間と T の比も十分小さくなければならない.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

相互誘導のない理想コイル L1=L,L2=2L と抵抗 R を,同じ端子A,Dの間に並列につなぎます.時刻0に電源から切り離された直後の電流は,コイル1でAからDへ I∗>0,コイル2で0です.切り替え中もコイルの電流経路を確保します.以後,外部電源はありません.

  1. 両コイルの電流の和と,それぞれの電流を求めよ.両電流の正方向はAからDです.

  2. 十分時間がたった後の電流と,全発熱量を求めよ.

AとDの間の3本の並列枝にL,2L,Rを配置する.両コイルの電流の正方向と初期電流I_*を示す. AとDの間の3本の並列枝にL,2L,Rを配置する.両コイルの電流の正方向と初期電流I_*を示す.
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考え方 並列枝の電圧は共通である.電流の和は減衰するが,コイルどうしを循環する電流は残りうる.

  1. J=I1+I2 とおく.抵抗電流はAからDへ −J,共通電圧は V=−RJ である.LdI1dt=2LdI2dt=V より,dJdt=−3RJ/(2L).したがって J=I∗e−t/τ,τ=2L/(3R).一方,LI1−2LI2=LI∗ が保存される.これと和の式から

I1=I∗+2J3,I2=J−I∗3.
  1. J→0 なので I1→I∗/3,I2→−I∗/3.初期エネルギーは LI∗2/2,終状態では L(I∗/3)2/2+2L(I∗/3)2/2=LI∗2/6 である.全発熱量は差の Q=LI∗2/3.直接積分しても ∫0∞RJ2dt=RI∗2τ/2=LI∗2/3 となる.抵抗電流が消えても,各理想コイルの電流が0になるとは限らない.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

開放時の実効電圧 Ve=100V,内部抵抗 r=2.0Ω の交流電源に理想変圧器の1次側をつなぎます.巻数比 n=N2/N1 を可変とし,2次側には R=200Ω,L=0.40H,可変容量 C を直列につなぎます.角振動数は ω=5.0×102s−1,磁化電流は無視します.

  1. 抵抗 R に供給する平均電力を n,C の関数として表せ.

  2. この電力を最大にする C,n と最大電力を求め,電源の内部抵抗の発熱も求めよ.

内部抵抗付き交流電源,巻数比nの変圧器,2次側の直列RLC負荷を描く.電源の起電力と1次端子電圧を区別する. 内部抵抗付き交流電源,巻数比nの変圧器,2次側の直列RLC負荷を描く.電源の起電力と1次端子電圧を区別する.
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考え方 負荷を1次側へ換算し,リアクタンスを消してから巻数比を選ぶ.

  1. X=ωL−1/(ωC),負荷の複素インピーダンスを Z=R+iX とする.1次側から見た負荷は Z/n2.起電力の複素振幅を 2Ve と取ると,I^1=2Ve/(r+Z/n2),I^2=I^1/n だから

PR=R2|I^2|2=Ve2n2R(R+rn2)2+X2.
  1. 固定した n では X=0 が最適で,C=1/(ω2L)=10μF.y=n2>0 とすれば dPRdy=Ve2R(R−ry)/(R+ry)3 なので,最大は y=R/r=100,n=10 である.PR,max=Ve2/(4r)=1.3×103W.丸める前の値は 1250W で,I1,e=Ve/(2r)=25A,内部の発熱も rI1,e2=1250W となる.電源が与える VeI1,e=2500W の半分が負荷へ渡ることが検算になる.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

2端子の箱には,抵抗 r と理想コイル L,または抵抗 r とコンデンサー C が直列に入っています.V(t)=V0cos⁡ωt,V0=10.0V を加え,定常電流を I(t)=Iccos⁡ωt+Issin⁡ωt として測定しました.表は表示桁に丸めた値で,箱と計器の温度は一定です.

ω[s−1]

Ic[mA]

Is[mA]

1.00×103

80.0

60.0

2.00×103

38.5

57.7

  1. 中の素子を判別し,最初の行から各定数を求め,2行目を予測せよ.

  2. 最初の周波数で cos⁡ωt=1 となる瞬間に電源を外し,箱の両端を短絡します.切り替えで電流の経路は途切れません.以後の電流と全発熱量を求めよ.

2端子の箱,交流電源,電流計と,電源を外して箱を短絡する切り替えを描く.箱の中の素子の種類は記さない. 2端子の箱,交流電源,電流計と,電源を外して箱を短絡する切り替えを描く.箱の中の素子の種類は記さない.
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考え方 正弦項の符号を複素振幅へ正しく移し,求めた定数を過渡応答でも使う.

  1. 実部に戻すときの符号から I^=Ic−iIs.したがって

Z=V0Ic−iIs=V0(Ic+iIs)Ic2+Is2=(80.0+60.0i)Ω.

虚部が正なのでコイルであり,r=80.0Ω,L=60.0/(1.00×103)H=60.0mH.次の周波数では Z=(80.0+120i)Ω,I^=10.0/(80.0+120i)A=(0.03846−0.05769i)A.よって表の2行目を表示精度内で説明する.

  1. 切り替え直後の電流は I(0)=Ic=0.0800A である.以後 LdIdt+rI=0 を積分し,I(t)=0.0800e−t/τA,τ=L/r=0.750ms.全発熱量は ∫0∞rI(0)2e−2t/τdt=rI(0)2τ/2=LI(0)2/2=1.92×10−4J となる.切り替えに使うのは振幅でなくその瞬間の電流であり,信号伝達時間を td とすれば td/τ と ωtd が十分小さい範囲の模型である.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

間隔 l の水平レール上の導体棒の質量を m とします.レールの左端を抵抗 R>0 とコンデンサー C の直列で結び,面に垂直な一様磁場 B を加えます.レールと棒の抵抗は0です.時刻0に,無電荷のコンデンサーを接続したまま棒へ右向きの速度 u>0 を与えます.以後外力はなく,摩擦と自己誘導を無視します.正の電荷 q は,右向きの運動が充電する極板の電荷です.

  1. q(t),v(t) と,十分時間がたった後の速度を求めよ.

  2. 全発熱量を求め,棒が停止しない理由を述べよ.

水平レール,棒,左端の直列RCを描く.磁場,初速度u,充電される極板のqと電流の正方向を示す. 水平レール,棒,左端の直列RCを描く.磁場,初速度u,充電される極板のqと電流の正方向を示す.
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考え方 棒の運動量変化と通過電荷を結び付け,回路の式を電荷だけの方程式にする.

  1. b=Bl とおく.I=dqdt,回路の式は RI+q/C=bv,棒の式は mdvdt=−bI.後者を積分すると mv+bq=mu.これを前者へ代入して

Rdqdt+(1C+b2m)q=bu.

τ=RmC/(m+b2C),q∞=mCbu/(m+b2C) とおけば,初期条件より q=q∞(1−e−t/τ).したがって

v=mum+b2C+b2Cum+b2Ce−t/τ,v∞=mum+b2C.
  1. 初期エネルギーから最終の運動エネルギーと静電エネルギーを引くと

Q=mu22−mv∞22−q∞22C=mb2Cu22(m+b2C).

直接積分でも Q=∫0∞R(q∞/τ)2e−2t/τdt=Rq∞2/(2τ) となり一致する.充電後は運動起電力とコンデンサー電圧がつり合い,電流も制動力も消える.自己誘導の無視には,無視したインダクタンスを Ls として Ls/(Rτ) が十分小さいことが必要である.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

間隔 l の水平レールの左端を,理想コイル L とコンデンサー C の直列で結びます.L は一定で,レールと棒の自己誘導は無視します.質量 m の導体棒に右向きの初速度 u>0 を与え,時刻0に放します.一様磁場 B は面に垂直で,初め電流も電荷も0,抵抗,摩擦,外力はありません.q は右向きの運動が充電する極板の電荷です.

  1. q(t),I(t),v(t) を複素指数関数を用いて求めよ.

  2. 棒が左向きに動く時刻が存在するための条件を求めよ.また運動エネルギー,コイルとコンデンサーのエネルギーの和が保存されることを示せ.

棒とレール,直列LCを描く.初速度u,磁場,qの極板,正の充電電流を示す. 棒とレール,直列LCを描く.初速度u,磁場,qの極板,正の充電電流を示す.
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考え方 棒の速度は通過電荷で変わるため,電気振動の復元項に運動の効果が加わる.

  1. b=Bl,I=dqdt とおく.回路と棒の式は Ld2qdt2+q/C=bv,mdvdt=−bdqdt.積分して v=u−bq/m を代入すると

Ld2qdt2+(1C+b2m)q=bu.

qe=mCbu/(m+b2C),Ω=(1/C+b2/m)/L とする.q−qe∝est の特性方程式は Ls2+1/C+b2/m=0,根は s=±iΩ.初期条件から

q=qe(1−cos⁡Ωt),I=qeΩsin⁡Ωt,v=u[1−α+αcos⁡Ωt],α=b2Cm+b2C.
  1. 最小速度は u(1−2α)=u(m−b2C)/(m+b2C) だから,左向きになる条件は b2C>m.等号では瞬間的に静止するが,左向きにはならない.また

ddt(12mv2+12LI2+q22C)=−bvI+I(LdIdt+q/C)=0.

初期値は mu2/2 であり,制動が続いた後にはコイルとコンデンサーから棒へエネルギーが戻る.微小な残留抵抗を Rs とすると,無減衰の1周期を近似するには Rs/(LΩ) が十分小さいことが必要である.

演習 9

オリジナル ★★★☆☆

面積 S,巻数 N の発電コイルを,一様磁場 B の中で一定の角速度 ω>0 で回します.正の法線と磁場の角は ωt です.静止した負荷を含む全回路は直列RLCで,R,L,C>0 は回転速度によらず一定,定常状態とします.

  1. 電流の複素振幅と,回転を保つ外力の平均仕事率を求めよ.

  2. N,S,B,R,L,C を固定し,平均仕事率を最大にする有限の ω が存在する条件と,その値を求めよ.電流の振幅を最大にする回転速度も求めよ.

  3. ω→∞ の模型内の極限を求め,(2)の回転速度を 1/LC で近似する条件を述べよ.

回転コイルの磁場,法線,角ωt,摺動接点と静止した直列RLC負荷を描く. 回転コイルの磁場,法線,角ωt,摺動接点と静止した直列RLC負荷を描く.
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考え方 回転を速めると起電力の振幅も増す.電圧振幅を一定にした共振条件をそのまま使わない.

  1. K=NSB とおけば,E=Kωsin⁡ωt,E^=−iKω.したがって

I^=−iKωR+i(ωL−1/(ωC)),P=R2|I^|2=K2Rω22[R2+(ωL−1/(ωC))2].

実際の電流は I^eiωt の実部である.1周期で回路の蓄積エネルギーは元に戻るので,外力の平均仕事率も P となる.

  1. y=ω2,a=R2−2L/C とおくと,P=K2Ry2/[2(L2y2+ay+C−2)].微分すると

dPdy=K2R2y(ay+2C−2)(L2y2+ay+C−2)2.

有限の最大点が存在するのは a<0,すなわち R2C<2L の場合で,ω∗2=1/(LC−R2C2/2).それ以外では単調増加して極限値へ近づく.P=RI02/2 だから,電流振幅の最大点も同じである.

  1. P→K2R/(2L2),I0→K/L.ϵ=R2C/(2L) が十分小さいとき,ω∗=(LC)−1/2(1−ϵ)−1/2≈(LC)−1/2(1+ϵ/2).この近似の小さい量は ϵ である.無限大の周波数の極限はあくまで回路模型内の値で,実際の集中定数近似には,回路内の信号伝達時間を td として ωtd が十分小さいことも必要である.

14第23章の発展問題

誘導と力学の連成,磁束の保存,結合回路の振動を,エネルギーの収支とともに調べます.LCはしご回路も各素子の回路の式から考え,波の公式は前提にしません.

演習 1

東京大 2001 前期(改題) ★★★★☆

質量 m,面積 S=ad,自己インダクタンス L>0,抵抗 R>0 の長方形コイルが,面を水平に保って鉛直に落ちます.下向きを z の正方向とし,磁場の成分を

Bx=−βx2,By=−βy2,Bz=B0+βz

とします.β>0 は一定で,a,d はそれぞれ x,y 方向の辺の長さです.コイルの中心は z 軸上,初め z=0,速度も電流も0です.回転を防ぐ案内は仕事をせず,空気抵抗は無視します.重力加速度の大きさは g です.

  1. 下向きの速度を v,上向きの磁場を作る電流を I とし,回路と運動の連立方程式を立てよ.磁気力は各辺について計算せよ.

  2. 終端速度を求め,減衰振動の条件を満たす場合の v(t) を求めよ.

  3. エネルギーの収支を示せ.また自己誘導を無視する近似の条件と,R=0 にした場合の運動を求め,長時間の極限との関係を説明せよ.

水平な長方形コイルの辺a,d,中心の下向き座標zと,磁場の各成分の向きを描く.上向きの磁場を作る正の電流と落下方向を示す. 水平な長方形コイルの辺a,d,中心の下向き座標zと,磁場の各成分の向きを描く.上向きの磁場を作る正の電流と落下方向を示す.
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考え方 磁束の変化が電流を作り,水平方向の磁場成分が鉛直の制動力を作る.自己誘導を残すと速度にも2階の方程式が生じる.

  1. 正の電流に対応する上向きの外部磁束は Φ=−S(B0+βz).b=βS とおけば起電力は −dΦdt=bv であり,LdIdt+RI=bv.x,y,z を右手系に取ると,y=d/2 の辺では電流が +x へ,By=−βd/4 により Fz=IaBy=−Iβad/4 となる.y=−d/2 の辺では電流が −x へ,By=βd/4 より Fz=−IaBy=−Iβad/4.x=a/2 の辺では電流が −y へ,Bx=−βa/4 より Fz=IdBx=−Iβad/4.x=−a/2 の辺では電流が +y へ,Bx=βa/4 より Fz=−IdBx=−Iβad/4.いずれも上向きである.Bz による水平な力は向かい合う辺で相殺する.合力は上向きに bI だから,

mdvdt=mg−bI,LdIdt+RI=bv.
  1. 定常値は I∞=mg/b,v∞=Rmg/b2.第1式から I=m(g−dvdt)/b を第2式へ代入すると

mLd2vdt2+mRdvdt+b2v=Rmg.

v−v∞∝est の根は s=−γ±iΩ,γ=R/(2L),Ω=b2/(mL)−γ2 であり,条件は mR2<4Lb2.v(0)=0,dvdt(0)=g を使うと

v(t)=v∞+e−γt[−v∞cos⁡Ωt+g−γv∞Ωsin⁡Ωt].

両方の根の実部が負だから,R>0 では終端値へ近づく.

  1. 回路の式に I,運動の式に v を掛けて加えると

ddt(12mv2+12LI2−mgz)=−RI2.

終端状態では mgv∞=RI∞2 である.自己誘導を無視した速度の緩和時間は tm=mR/b2,電流の緩和時間は τ=L/R だから,ϵ=τ/tm=Lb2/(mR2) が十分小さく,かつ t/τ が十分大きい範囲で I≈bv/R,v≈v∞(1−e−t/tm) が使える.

R=0 では初期値から LI=bz.したがって md2zdt2=mg−b2z/L.ωm=b/mL として,z∝est の根は ±iωm であり,

z=gωm2(1−cos⁡ωmt),v=gωmsin⁡ωmt.

抵抗0では往復し,終端速度は存在しない.R>0 で長時間待ってから R→0 とすると終端速度は0へ近づくが,先に R=0 とした速度には長時間の極限がない.近似を使うには,上の ϵ に加え,信号伝達時間と最短の応答時間の比が十分小さく,磁場の模型が移動範囲全体で成り立つことが必要である.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

質量 m,一定の自己インダクタンス L の小さい超伝導リングが,摩擦のない直線ガイドに沿って外部コイルの軸を通ります.リングの向きと形は一定で,正の法線方向の外部磁束は

Φ(z)=Φ0[1+(z/a)2]3/2,Φ0>0

です.外部コイルは一定電流 Is に保ち,その自己インダクタンスは一定とします.相互インダクタンスは M(z)=Φ(z)/Is,リングに働く軸方向の力は F=IdΦdz としてよいものとします.リングは抵抗0の閉回路として扱い,初め z→−∞ で電流0,速度 u>0 です.

  1. I(z) と有効な位置エネルギーを求め,リングが右側へ通過できる u の条件を求めよ.

  2. 通過できず反転する場合の反転位置を求めよ.

  3. その反転位置までに定電流電源がする仕事と,全磁場のエネルギー変化を求め,力学的エネルギーとの収支を示せ.さらに,通過速度のしきい値に一致した場合,中心へ有限時間で到達するか調べよ.

外部コイルの軸と直線ガイド,左から進むリングを描く.z=0,長さ尺度a,速度u,正の法線と外部電流I_sを示す. 外部コイルの軸と直線ガイド,左から進むリングを描く.z=0,長さ尺度a,速度u,正の法線と外部電流I_sを示す.
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考え方 保存するのは外部磁束と自己磁束の和である.外部電流を一定に保つ電源の仕事を含めると,リングの自己エネルギーが有効な位置エネルギーになる.

  1. 回路の式は ddt(LI+Φ)=0.初期値から LI+Φ=0,I=−Φ/L である.力は F=−ΦdΦdz/L=−ddz(Φ2/(2L)) だから,Ueff=Φ2/(2L) とおける.その最大値は中心で Φ02/(2L).したがって通過には

12mu2>Φ022L,u>uc=Φ0mL

が必要である.等号の場合は(3)で調べる.

  1. 0<u<uc では,反転時に Φ(zt)2/(2L)=mu2/2.磁束の式から [1+(zt/a)2]3=uc2/u2 なので,左側の反転位置は

zt=−a(ucu)2/3−1.
  1. 外部コイルにリングが与える鎖交磁束は MI.外部電流一定だから,電源の仕事は

Ws=∫Isd(MI)=Δ(ΦI)=−Φ(zt)2L=−mu2.

負号は電源がエネルギーを受け取ることを表す.外部コイルの自己エネルギーは一定だが,全磁場には相互項がある.初期状態との差は

ΔUmag=Δ(12LI2+ΦI)=−Φ(zt)22L=−12mu2.

ΔK=−mu2/2 と合わせると ΔK+ΔUmag=Ws となる.リングだけの自己エネルギーは増えており,それを全磁場のエネルギー変化と混同してはいけない.

u=uc で中心に近づくと,Φ2=Φ02[1+(z/a)2]−3≈Φ02[1−3(z/a)2].エネルギー保存から v≈3uc|z|/a なので,到達時間の積分は ∫dz/|z| を含んで発散する.中心に有限時間では達しない.この展開は |z|/a が十分小さい範囲で使い,集中定数近似には信号伝達時間 td と a/u の比 utd/a が十分小さいことが必要である.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

同じ L,C をもつ2つの理想LC閉回路を磁気的に結合します.各回路では,指定した極板へ流れ込む電流を Ij=dqjdt とし,この正の電流どうしの相互インダクタンスを M,0<M<L とします.抵抗と電源はありません.初め q1=Q0>0,q2=0,電流はともに0です.

  1. 連立方程式を立て,2つの固有角振動数と q1(t),q2(t) を求めよ.

  2. M=3L/5 のとき,回路1の電荷と電流が同時に初めて0になる時刻を求め,そのとき全エネルギーが回路2だけにあることを示せ.

  3. 一般の M/L で同じ完全な移動が起こる条件を,2つの角振動数の比で表せ.弱結合でのうなりの時間尺度と比べ,包絡線が0になるだけでは完全な移動を保証しない理由を述べよ.

独立した2つのLC閉回路を並べ,巻き方向,M,指定極板のq_1,q_2と流れ込む電流を示す.初期電荷は回路1だけに記す. 独立した2つのLC閉回路を並べ,巻き方向,M,指定極板のq_1,q_2と流れ込む電流を示す.初期電荷は回路1だけに記す.
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考え方 電荷の和と差をそれぞれ単振動に分ける.完全なエネルギー移動には,電荷と電流が同時に0になる必要がある.

  1. 回路の式は

Ld2q1dt2+Md2q2dt2+q1C=0,Md2q1dt2+Ld2q2dt2+q2C=0.

q+=q1+q2,q−=q1−q2 とすると,(L+M)d2q+dt2+q+/C=0,(L−M)d2q−dt2+q−/C=0.est の特性方程式より根はそれぞれ ±iωs,±iωa,

ωs=1C(L+M),ωa=1C(L−M).

初期値は q+(0)=q−(0)=Q0,両方の時間微分は0だから,

q1=Q02(cos⁡ωst+cos⁡ωat),q2=Q02(cos⁡ωst−cos⁡ωat).
  1. M=3L/5 では ωa=2ωs.x=ωst とおけば q1=0 は cos⁡x+cos⁡2x=0,すなわち cos⁡x=1/2 または −1.一方 I1=−Q0ωs(sin⁡x+2sin⁡2x)/2=−Q0ωssin⁡x(1+4cos⁡x)/2.最初に両方が0となるのは x=π であり,

t∗=πωs=π8LC5.

このとき q2=−Q0,I2=0.保存エネルギー

U=q12+q222C+L2(I12+I22)+MI1I2

は全て回路2の静電エネルギー Q02/(2C) である.

  1. a=ωst,b=ωat とすると q1=0 から cos⁡b=−cos⁡a,したがって sin2⁡b=sin2⁡a.I1=0 は ωssin⁡a+ωasin⁡b=0 であり,ωs≠ωa なので両方の正弦は0でなければならない.ゆえに a=nπ,b=pπ で,余弦が逆符号になるには n,p の偶奇が異なる必要がある.完全な移動の条件は,ωa/ωs が,既約分数にしたとき分子と分母の偶奇が異なる有理数となることである.

k=M/L が十分小さいと ωa−ωs≈k/LC.q1=Q0cos⁡[(ωa−ωs)t/2]cos⁡[(ωa+ωs)t/2] の包絡線は tb=π/(ωa−ωs) で初めて0になる.しかし微分すると,そこに I1=−Q0(ωa−ωs)cos⁡[(ωa+ωs)tb/2]/2 が一般に残る.弱結合の近似条件は k が十分小さいことで,包絡線による「ほぼ移動」と完全な移動は区別する.

演習 4

IPhO 1987 第3問(改題) ★★★★★

同じ理想コイル L とコンデンサー C を使い,右へ無限に続くはしご回路を作ります.各節点と共通の帰線との間に C,隣接節点の間に L をつなぎます.入力端から最初の節点までだけは L/2 です.回路を遠方まで駆動した後の応答を扱い,遠方から入力へ戻るエネルギーはないものとします.この条件は各コイルに微小な正の抵抗を加え,無限回路の定常状態を取った後に抵抗を0へ近づけることで選ぶものとします.

  1. 入力インピーダンスを Z0 として,自己相似性から Z0 を求めよ.入力の平均電力が正になる角振動数の範囲を求めよ.

  2. 節点 n の電圧の複素振幅を V^n とします.隣接節点への倍率 λ=V^n+1/V^n が一定の応答について,回路の式から λ を求めよ.(1)の範囲内では λ=e−iθ,0<θ<π と表し,その範囲を超える場合は振幅が右へ減る根を選べ.

  3. ある節点間のコイルを2つの L/2 に分け,その中点より右の回路を外して,中点と帰線の間に抵抗をつなぎます.(1)の範囲内の指定周波数で,同じ左側の応答を保つ抵抗を求めよ.この抵抗を周波数によらない L/C で近似したときの相対差の先頭項を求めよ.

入力側のL/2と,節点ごとのC,節点間のL,帰線を描く.右端には続くことを示す省略記号を置き,切断するコイルの中点を記す. 入力側のL/2と,節点ごとのC,節点間のL,帰線を描く.右端には続くことを示す省略記号を置き,切断するコイルの中点を記す.
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考え方 回路の右側を同じ入力インピーダンスで置き換える.無限回路で正の実部が現れるのは,入力したエネルギーが遠方へ運ばれる応答を選ぶためである.

  1. 最初の L/2 の後には,C と,さらに L/2 を経て同じ回路へ入る枝が並列にある.したがって

Z0=iωL2+[iωC+1iωL/2+Z0]−1.

A=iωL/2 とおき整理すると,(Z0−A)[iωC(Z0+A)+1]=Z0+A.ゆえに iωC(Z02−A2)=2A=iωL だから

Z02=LC−ω2L24.

0<ω<ωc=2/LC では,正の抵抗からの極限により Z0=L/C−ω2L2/4>0 を選ぶ.入力電圧の振幅を V0 とすれば P=V02/(2Z0)>0.ω>ωc では Z0=iω2L2/4−L/C となり,P=Re⁡(V^I^∗)/2=0.ω=ωc では入力インピーダンスが0になるため,有限振幅の理想電圧源では有限電流の応答を持たず,端点は別扱いである.

  1. 節点 n へ左から流れ込む電流は (V^n−1−V^n)/(iωL),右へ流れ出す電流は (V^n−V^n+1)/(iωL).差がコンデンサー電流 iωCV^n だから

V^n+1−2V^n+V^n−1=−ω2LCV^n,λ+λ−1=2−ω2LC.

ω<ωc では λ=e−iθ を代入して,cos⁡θ=1−ω2LC/2,すなわち ω=2sin⁡(θ/2)/LC.負の位相を選ぶと右へ平均電力を運ぶ.実際に V^n+1=e−iθV^n,右向きの電流 I^=(1−e−iθ)V^n/(iωL) から

12Re⁡(V^nI^∗)=|V^n|2sin⁡θ2ωL>0

となる.逆の位相では符号が逆になる.

ω>ωc では A1=ω2LC/2−1>1 とおくと λ2+2A1λ+1=0.減少する根は λ=−A1+A12−1 で,−1<λ<0 である.隣接節点で符号を交互に変え,振幅は |λ|n に比例して減る.この場合には隣接電圧が実数倍で,コイル電流は電圧に対して純虚数倍となるため,平均電力は0である.

  1. 切断した中点から見た元の右側も同じ対称な回路である.したがって置き換える抵抗は Rend=Z0=L/C1−ω2LC/4.ϵ=ωLC とすれば,ϵ が十分小さいとき Rend≈L/C(1−ϵ2/8).周波数一定で L/C を用いた過大評価の相対差は ϵ2/8 が先頭項になる.これは低周波の近似であり,さらに各素子の内部の信号伝達時間 td に対し ωtd が十分小さいことが必要である.無限回路がエネルギーを受け取る応答は,有限回路の遠端を単に開放した定常応答とは異なる.

演習 5

オリジナル ★★★★★

2つのコイル L1,L2 の相互インダクタンスを M>0,M2<L1L2 とします.1次閉回路は理想交流電源 V0cos⁡ωt,抵抗 r1>0,コイル L1,可変コンデンサー C1 の直列です.2次閉回路は抵抗 r2>0,負荷抵抗 R>0,コイル L2,可変コンデンサー C2 の直列です.電源の内部抵抗は r1 に含め,素子定数は振幅によらないとします.定常状態を扱います.

  1. 2次回路のリアクタンスを0にし,1次から見たインピーダンスも実数になるように C1,C2 を調整します.両電流の複素振幅と,負荷の平均電力 PR を求めよ.

  2. この調整を保ち,R を変えて PR を最大にする負荷抵抗を求めよ.

  3. 電源が供給する平均電力に対する PR の比を効率 η とします.効率を最大にする負荷抵抗と最大効率を求め,(2)との違いを説明せよ.最大効率が1へ近づくための無次元条件と,2次側の調整が少しずれた場合の入力インピーダンスも求めよ.

1次の電源付き直列回路と,2次の負荷付き直列回路を描く.Mの正符号に対応する巻き方向と,両電流の正方向,r_1,r_2,R,C_1,C_2を示す. 1次の電源付き直列回路と,2次の負荷付き直列回路を描く.Mの正符号に対応する巻き方向と,両電流の正方向,r_1,r_2,R,C_1,C_2を示す.
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考え方 2次電流を消去すると,1次側には2次負荷を反映した実効的な抵抗が現れる.電力の最大化と効率の最大化では分母が異なる.

  1. Xj=ωLj−1/(ωCj),r=r2+R とおく.相互項の符号を正に取ると

V0=(r1+iX1)I^1+iωMI^2,0=(r+iX2)I^2+iωMI^1.

2次の調整は X2=0,すなわち C2=1/(ω2L2).このとき1次インピーダンスは r1+(ωM)2/r+iX1 だから,C1=1/(ω2L1) とすればよい.K=(ωM)2 とおくと

I^1=V0rr1r+K,I^2=−iωMV0r1r+K,PR=V02KR2[r1(r2+R)+K]2.

実電流は各複素振幅に eiωt を掛けた実部である.両回路の式から,電源の平均電力は r1|I^1|2/2+(r2+R)|I^2|2/2 となる.

  1. A=r1r2+K とおけば PR=V02KR/[2(A+r1R)2].微分は

dPRdR=V02K2A−r1R(A+r1R)3.

したがって最大電力の負荷は RP=r2+K/r1,最大電力は PR,max=V02K/[8r1(r1r2+K)] である.

  1. 電源の平均電力 Pin=V0I^1/2 で割ると

η=KR(r2+R)[r1(r2+R)+K].

分母を D として,微分の符号は D−RdDdR=r2(r1r2+K)−r1R2 の符号に等しい.よって Rη=r22+Kr2/r1.A2=1+K/(r1r2)>1 とおけば Rη=r2A2.K=r1r2(A22−1) を代入すると ηmax=(A22−1)A2/[(1+A2)(A22+A2)] だから,

ηmax=A2−1A2+1,RP=r2A22>Rη.

効率では供給電力に対する損失の割合を最小にするため,負荷へ渡す電力そのものの最大点と一致しない.χ=K/(r1r2) が十分大きいとき 1−ηmax=2/(1+χ+1)≈2/χ.ここで小さい量は χ−1/2 である.

調整がずれて X2≠0 になると,

Zin=r1+iX1+Kr+iX2=r1+Krr2+X22+i(X1−KX2r2+X22).

C1 を調整すれば虚部を打ち消せる範囲では打ち消せるが,実部も変わる.調整点の式をそのまま近似する条件は |X2|/r が十分小さいことで,1次側を調整し直さないなら残る虚部の大きさと r1+K/r の比も十分小さくなければならない.さらに,回路内の信号伝達時間を td として ωtd が十分小さい集中定数近似の範囲であり,M はエネルギーの正値性の制限 M2<L1L2 の内側で選ぶ.

15第23章のまとめ

この章では,磁場と運動や磁場の変化から起電力が生まれる電磁誘導を扱いました.起電力の生じ方は2つあり,1つは磁場の中を動く導体の電荷が受ける磁気力,もう1つは時間とともに変わる磁場が周りに作る誘導電場です.まったく別の仕組みなのに,どちらも「回路を貫く磁束の変化の速さ」という1つの式 E=−dΦ/dt にまとまりました.回路が自分の電流の変化に逆らう自己誘導からは,コイルのエネルギーと磁場のエネルギー密度,そしてばね振り子と同じ形の電気振動が出てきました.最後に,振動する量を複素数で表すと微分が掛け算に変わり,交流回路が直流回路と同じ手順で解けることを見ました.

定義と法則

定義 起電力と磁束

  • 回路を一周したとき,単位電荷あたりの力の接線成分を道に沿って積分したものを起電力という.符号は,回路を回る正の向きを決めて初めて決まる.

  • 回路を回る正の向きと面の正の法線 n を右ねじの関係にとり,回路を貫く磁束を Φ=∫B⋅ndS と定める.単位は Wb=Tm2.磁場に湧き出しが無いので,回路を縁とする面の選び方によらない.

  • N 回巻きのコイルでは各巻きの磁束の和 NΦ を使い,これを鎖交磁束という.

法則 運動起電力

導体が磁場 B の中を速度 v で動くとき,導体の中の電荷は単位電荷あたり v×B の力を受ける.これを導体に沿って積分したものが運動起電力で,長さ l の棒と速度と磁場が互いに垂直なら E=vBl である.磁気力は自分では仕事をせず,導体を動かす仕事を,導体に沿って電荷を押す仕事へ受け渡す.

法則 ファラデーの電磁誘導の法則

空間に固定した閉じた道について

∫一周E⋅dl=−dΦdt

が成り立つ(回る向きと面の法線は右ねじの関係).道に沿って導線が無くても成り立つ.磁場の変化が作るこの電場を誘導電場といい,一周の線積分が0でないので電位は定義できない.微分形(発展)は ∇×E=−∂B/∂t で,第24章でマクスウェル方程式の1つになる.

法則 磁束の法則とレンツの法則

  • 回路が動いても,磁場が変わっても,その両方でも,回路の正の向きの起電力は

E=−dΦdt

である.回路が動く部分の起電力は v×B から,磁場が変わる部分は誘導電場から来る.

  • 負号は,誘導電流が作る磁場が磁束の変化を妨げる向きになることを表す(レンツの法則).符号が逆なら導体はひとりでに加速して熱を出し続けるので,これはエネルギーの保存の表れである.

  • 同じ導体の部分をたどって作った回路にだけ使える.単極発電機(ファラデーの円板)のように使えない場合は,電荷に働く力 F=q(E+v×B) と,固定した道についてのファラデーの法則に戻る.

ポイント 誘導があるときの回路の式

回路を正の向きに一周するとき,抵抗での電圧降下の和は起電力の和に等しい.

∑kRkIk=∑kEk−dΦdt

誘導が無ければキルヒホッフの第2法則にもどる.電圧計の読みは端子の導線がたどる道に沿った電場の線積分で,道が囲む磁束が変われば読みも変わる.誘導があるときの「2点間の電圧」は,道を決めて初めて意味をもつ.

定義 自己インダクタンスと相互インダクタンス

  • 回路自身の電流 I が作る鎖交磁束を NΦ=LI と書き,L を自己インダクタンスという.単位は H=WbA−1=VsA−1.電流が変わると,電流の正の向きに E=−LdI/dt の起電力が生じる(自己誘導).このため,コイルを流れる電流は連続に変わる.

  • コイル1の電流がコイル2に作る鎖交磁束を M21I1,逆を M12I2 とすると,エネルギーの考察から M12=M21=M で,M を相互インダクタンスという.正の電流どうしが同じ向きの磁場を作るとき M>0.

  • M2≤L1L2.k=M/L1L2 を結合の割合といい,一方の磁束がすべて他方を貫くとき |k|=1.

法則 コイルのエネルギーと磁場のエネルギー

  • 電流 I が流れるコイルはエネルギー U=12LI2 を蓄えている.2つのコイルでは U=12L1I12+MI1I2+12L2I22.

  • このエネルギーは磁場にあり,真空の空間には単位体積あたり B22μ0 のエネルギーがある.

  • 抵抗が0の回路では,外から貫く磁束と自分の電流の磁束の和 LI+Φext が一定に保たれる.

定義 交流の表し方

  • V(t)=V0cos⁡(ωt+ϕ) の V0 を振幅,f=ω/(2π) を周波数という.Ve=V0/2,Ie=I0/2 を実効値といい,抵抗での平均の消費電力は VeIe=Ve2/R.

  • 定常状態の電圧と電流を V(t)=Re⁡(V^eiωt),I(t)=Re⁡(I^eiωt) と書き,V^=V0eiϕ を複素振幅という.絶対値が振幅,偏角が位相である.

  • Z=V^/I^ を複素インピーダンス,Z=R+iX の X をリアクタンス,Y=1/Z をアドミタンスという.|Z|=V0/I0 で,Z の偏角は電圧が電流より進む位相である.

交流回路を解く手順

ポイント 交流回路を複素インピーダンスで解く手順

  1. 使ってよいかを確かめる.素子が線形で,回路の大きさが波長 c/f より十分小さい(集中定数の近似)こと.過渡的な振動が消えた定常状態だけを考える.

  2. 電源を複素振幅で書く.cos⁡ωt は Re⁡(eiωt),sin⁡ωt は Re⁡(−ieiωt) で,Iccos⁡ωt+Issin⁡ωt の複素振幅は Ic−iIs.

  3. 各素子を複素インピーダンスに置き換える.時間の微分は iω の掛け算なので ZR=R,ZL=iωL,ZC=1/(iωC)=−i/(ωC).相互誘導があれば V^1=iωL1I^1+iωMI^2,V^2=iωMI^1+iωL2I^2 を使う.

  4. 直流回路と同じ規則で解く.キルヒホッフの法則は複素振幅についてそのまま成り立ち,各素子は V^=ZI^ に従う.直列は Z=Z1+Z2,並列は 1/Z=1/Z1+1/Z2,分圧やブリッジの平衡の条件も同じ形で使える.

  5. 複素数の掛け算・割り算は極形式 |z|eiθ で行い,絶対値は掛け算,偏角は足し算にする.分母を実数にするには 1/z=z∗/|z|2 を使う.

  6. 実部に戻す.Re⁡(|z|eiθeiωt)=|z|cos⁡(ωt+θ) で,複素振幅の絶対値が振幅,偏角が位相になる.

  7. 電力は積なので,実部をとってから掛ける.平均電力は P=12Re⁡(V^I^∗) で求める.

  8. 位相の違う電圧の実効値は足せない.電圧の和は複素振幅の和(ベクトル図の矢印の和)である.

  9. 入力がいくつもの周波数を含むときは,周波数ごとに解いて足す.

主な公式

  • 運動起電力:棒 E=vBl,回転する長さ a の棒 12Bωa2,回転するコイル E=NBSωsin⁡ωt(複素振幅 −iNBSω)

  • レールの上の棒(抵抗 R):I=vBl/R,制動力 B2l2v/R,外力の仕事率 B2l2v2/R=I2R=EI.運動方程式 mdv/dt=F−B2l2v/R,時定数 mR/(B2l2),終端速度 FR/(B2l2)

  • 抵抗の代わりにコンデンサー C:(m+CB2l2)dv/dt=F

  • 回路を通った電荷:q=−ΔΦ/R(動かし方によらない)

  • 長いソレノイドの誘導電場:E=r2|dB/dt|(r<a),E=a22r|dB/dt|(r≥a)

  • ベータトロンの条件:Bav=2Borb

  • 渦電流自身の磁場を無視できる条件:μ0κb2/T が1より十分小さい

  • 細長いソレノイド:L=μ0N2S/l=μ0n2Sl

  • RL回路:LdI/dt+RI=E0,I=E0R(1−e−t/τ),τ=L/R.電源を外すと I=I0e−t/τ

  • 直列のコイル:L1+L2±2M

  • LRC回路:Lq¨+Rq˙+q/C=0,ω0=1/LC,γ=R/(2L),ω′=ω02−γ2,Q=ω0L/R.R<2L/C で減衰振動,R=2L/C で臨界減衰,R>2L/C で過減衰

  • 回路のエネルギー:ddt(12LI2+q22C)=−RI2(電源があれば右辺に EI が加わる)

  • 直列RLCの交流:Z=R+i(ωL−1ωC),I0=V0R2+(ωL−1/(ωC))2.共振のとき Z=R で,コイルとコンデンサーの電圧の振幅は QV0

  • 共振の幅:ω+−ω−=R/L,ω+ω−=ω02,Q=ω0/(ω+−ω−).ω0 の近くで X≈2L(ω−ω0)

  • 並列のLC:Y=i(ωC−1ωL) が ω0 で0(並列共振)

  • 平均電力:P=12Re⁡(V^I^∗)=VeIecos⁡φ=RIe2,力率 cos⁡φ=R/|Z|

  • 理想変圧器:n=N2/N1 として V^2=nV^1,I^1=nI^2′.負荷 Z は1次側から Z/n2 に見える.送電線の損失は r(P/Ve)2

  • RCローパス:H=11+iω/ωc,ωc=1/(RC),|H|=1/1+(ω/ωc)2.ハイパスは H=iω/ωc1+iω/ωc

各題材の問いへの答え

  • 運動起電力とレンツの法則:発電機のコイルが磁場の中を動くとき,導線の電荷を押しているのは磁気力 qv×B である.磁気力は仕事をせず,コイルを回す仕事を電荷を押す仕事へ受け渡す.流れた電流にはレンツの法則により回転を妨げる力が働くので,電灯をつけるとペダルが重くなる.磁石が回る発電機でも起電力は同じ磁束の法則で求まるが,電荷を押しているのは変化する磁場が作る電場である.

  • 誘導電場とファラデーの法則:IH調理器のコイルの速く変わる磁場が,止まった鍋の底を回る誘導電場を作り,それが渦電流を流して鍋を熱くする.ガラスの天板にも同じ電場はあるが,絶縁体なので電流が流れず,熱くならない.

  • インダクタンスと電気振動:コイルの電流を急に断ち切ると,自己誘導の起電力 −LdI/dt が電流を流し続ける向きに非常に大きく生じ,火花が飛ぶ.火花のエネルギー 12LI2 は,スイッチを切る前にはコイルの中の磁場に密度 B2/(2μ0) で蓄えられていた.

  • 交流回路と共振:ラジオの入口のLC共振回路は,ω0=1/LC に近い周波数の信号にだけ小さなインピーダンスで大きく応え,コンデンサーには信号の Q 倍の電圧が現れる.つまみで C を変えて ω0 を局の周波数に合わせる.どれだけ近い局まで分けられるかは,共振の幅 ω0/Q で決まる.

この章で使った数学

運動起電力を磁束の変化で書き直すのにスカラー三重積を,対称な誘導電場を求めるのに円に沿った線積分を使い,微分形(発展)ではストークスの定理を使いました.電気振動では,第7章の方法を回路に使い,定数係数の線形微分方程式に est を代入して特性方程式にしました.複素数の根からは減衰振動が,重解からは (A+Dt)es0t が出て,定数はコンデンサーの電荷とコイルの電流の連続性で決めました.回路の式に電流を掛けるとエネルギーの式ができることも,第6章の力学と同じでした.交流では,複素数の極形式と複素共役で掛け算・割り算と実部への戻しを行い,周波数応答 H(ω) で振幅の比と位相のずれを表しました.第24章では,ここで出会った誘導電場の法則がマクスウェル方程式の1つとして他の3つと並び,磁場のエネルギーの見方も一般の場に広がります.