問いしるべ
参考書

問いから始める物理

公式参考書

問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 12節
  1. 真空を伝わる電磁波
  2. 電磁波の波動方程式と時間平均
  3. 電磁波の場と光圧の演習
  4. 電荷の放射と光の散乱
  5. 放射と散乱の例題
  6. 加速する電荷の放射と散乱の演習
  7. 電磁波の反射と透過
  8. 複素振幅で反射と透過を解く
  9. 電磁波の反射と透過の演習
  10. 第26章の章末問題
  11. 第26章の発展問題
  12. 第26章のまとめ

第26章  電磁波(発展)

01真空を伝わる電磁波

問い

音は空気がなければ伝わりません.第25章で見たように,音は空気の圧縮と膨張が隣へ次々に伝わる波だからです.ところが太陽の光は,ほとんど何もない宇宙空間を1億5千万 km 渡って地球に届きます.途中には揺れる媒質も,電荷も電流もありません.光は何が揺れて,どうやって伝わってくるのでしょうか.

この章では,第24章でそろえた電場と磁場の4つの法則と,第25章で作った波の言葉(波動方程式,重ね合わせ,定在波)を合わせて,電磁波を導きます.この題材では,真空を伝わる電磁波の速さ,場の向き,運ぶエネルギーと運動量を調べます.次の題材「電荷の放射と光の散乱」では,電磁波がどうやって生まれるか,空が青い理由と屈折率の起源を見ます.最後の題材「電磁波の反射と透過」では,物質の境界での反射と透過を,境界で場がつながる条件から出します.ここで光が電磁波だと分かれば,第27章で光の進み方と干渉を調べる準備が整います.微分形による波動方程式の導出は数学の節にあり,本体の積分形の議論だけで先へ進んでもかまいません.「(発展)」と付けた所(光のドップラー効果,数学の節の回転の回転を使う導出)は飛ばしても後が読めます.

ポイント 第26章で使う記号

記号

意味

E, B

電場,磁場(磁束密度)

c=1/ε0μ0

真空中の光の速さ

λ, ν, ω=2πν

波長,振動数,角振動数.光の振動数は f でなく ν と書く

k=2π/λ

波数.ω=ck

E0, B0

正弦波の電場と磁場の振幅

u=uE+uB

場のエネルギー密度(単位 Jm−3)

⟨ ⟩

1周期についての時間平均

S=E×B/μ0

ポインティングベクトル(第24章,単位 Wm−2)

I

電磁波の強さ.進む向きに垂直な単位面積を単位時間に通るエネルギーの時間平均(単位 Wm−2)

E^

複素振幅.電場を E^eiωt の実部で表す(第7章・第23章と同じ)

p, P

電気双極子モーメント,放射される電力(次の題材)

n

屈折率(最後の題材)

ex, ey, ez

右手系の直交座標の単位ベクトル

面積は第24章と同じく A と書きますが,問題によっては S と書くことがあります.太字の S とその成分 Sx はポインティングベクトルです.光の圧力(放射圧)には記号を付けず,I/c のように書きます.

考えてみる

波と聞くと,揺れる何か(媒質)を思い浮かべます.19世紀の物理学者も,光を伝える見えない媒質「エーテル」が宇宙を満たしていると考えました.しかし,エーテルに対する地球の動きを光の速さの違いとして捉えようとする実験は,どれも失敗しました.光の速さはどう動く人が測っても同じで(第13章),媒質は要らないのです.

手がかりは第24章の「場は自分で伝わる」で見たことです.電荷も電流もない真空では,渦の2つの法則が「変化する磁場が電場を作る」「変化する電場が磁場を作る」と言っています.どこかで場が変化すれば,その変化がまわりに新しい場を作り,それがまた変化して…と,場が自分で自分を運んでいけそうです.けれど,言葉だけではそれが本当に成り立つのか,どんな速さで進むのかが分かりません.いちばん簡単な場合で,積分形の法則を使って確かめます.

突然流れ始めた電流が作る場

yz 平面に置いた無限に広い板に,時刻 t=0 から +y 向きの一様な電流を流し始めます.流れの向きに垂直な幅 1m あたりの電流を K(単位 Am−1)とします.もし磁場が一瞬で全空間にできるなら,板をまたぐ長方形の道にアンペールの法則(第22章)を使って,板の両側に大きさ μ0K/2 の一様な磁場ができるはずです(下で確かめます).しかし実際には,場は板から有限の速さ v で広がっていくと考えて,x>0 の側で,板から波面 x=vt までの間にだけ一様な場があり,その先は場がない,と仮定してみます.

[図:電流の板から広がる場と波面]

初期状態では波面が板の右側にあり,電場Eは−y向き,磁場Bは−z向きである.同じ領域をxy平面とxz平面から示し,破線の長方形の道が波面をまたぐ.丸の中の点は手前向き,十字は奥向きを示す.時刻tを増すと波面x = vtが右へ進み,場の領域が広がる.

対称性から,磁場は z 方向で,x>0 では −z 向きです(+y 向きの電流に右ねじの規則を使うと,ey×ex=−ez).大きさを B とします.電場は y 方向で,大きさを E とします.向きは,エネルギーが板から外へ流れ出す,つまり E×B が +x 向きになることから −y 向き,電流と逆向きです.板の電流は自分の作った電場に逆らって流れることになり,電流を流し続ける電源は仕事をしなければなりません.その仕事が,広がっていく場のエネルギーになります(数学の節の例題1).

まずファラデーの法則です.xy 平面に,y 方向の長さ L の長方形の道を,波面をまたぐように置きます.時間 dt の間に波面は vdt 進むので,道を貫く磁束は BLvdt だけ増えます.道に沿った電場の線積分は,波面の後ろの辺だけが EL を与え,x 方向の辺は電場に垂直なので寄与しません.したがって EL=BLv,つまり

E=vB

です.次にアンペール・マクスウェルの法則です.xz 平面に,z 方向の長さ L の長方形の道を,同じく波面をまたぐように置きます.板から離れているので電流は貫かず,電束が ELvdt だけ増えます.磁場の線積分は波面の後ろの辺の BL だけなので,BL=μ0ε0ELv,つまり

B=vc2E

です.2つを掛け合わせると v2=c2 で,場の面は

v=c=1ε0μ0,E=cB

で進むときに限って,2つの法則を同時に満たします.他の速さではつじつまが合いません.場の大きさは,板をまたぐ長方形の道にアンペールの法則を使えば,2BL=μ0KL から B=μ0K/2 で,E=cμ0K/2 です.

この結果は大事なことを言っています.電流が流れ始めたという知らせは,速さ c で広がります.波面の先では,場はまだ何も知りません.そして,電流を時刻 t1 に変えれば,その変化も遅れて t1+x/c に位置 x に届きます.板の電流が時間とともに K(t) と変わるなら,位置 x の電場は板の x/c だけ前の電流で決まり,E は t−x/c だけの関数,つまり第25章の f(x−vt) の形の波になります.電流を正弦波で往復させれば,正弦波の電磁波が出ていきます.

電磁波の性質

電荷も電流もない真空では,マクスウェル方程式から場の波動方程式

∇2⁡E=1c2∂2E∂t2,∇2⁡B=1c2∂2B∂t2

が出ます(数学の節).x だけによる場なら ∂2Ey∂x2=1c2∂2Ey∂t2 で,第25章の弦や音の波動方程式と同じ形です.違うのは,揺れているのが媒質ではなく場そのものであることです.

法則 真空中の平面電磁波

真空中を進む平面電磁波について

  • 速さはどの波長でも c=1/ε0μ0=3.00×108ms−1 で,c=λν=ω/k.

  • 電場と磁場は進む向きに垂直で(横波),互いにも垂直で,E×B が進む向きを向く.

  • 各点・各時刻で E=cB.

横波であることは,ガウスの法則から分かります.x 方向に進む平面波で電場に x 成分があると,x 方向に並んだ薄い箱の左右の面で電束が違い,箱の中に電荷がないことと矛盾します(一様で変わらない成分は波ではありません).磁場も同じです.電場が振動する向きを偏光の向きといい,第27章で使います.

第24章で ε0 と μ0 から計算した c が,実際に測った光の速さと一致したことから,マクスウェルは光が電磁波だと考えました.電波,赤外線,可視光,X 線はすべて同じ方程式に従う電磁波で,違うのは波長だけです.

名前

波長のおよその範囲

例

電波

1mm 以上

ラジオ,携帯電話,電子レンジ(12cm)

赤外線

1mm から 770nm

体温の熱放射(第18章)

可視光

770nm から 380nm

赤から紫

紫外線

380nm から 10nm

日焼け

X 線・γ 線

10nm 以下

レントゲン,原子核から出る光

エネルギーと強さ

第24章の場のエネルギー密度に B=E/c を入れると,uB=E22μ0c2=12ε0E2=uE で,電磁波では電場と磁場がエネルギーを各瞬間に等しく分け合います.合わせて u=ε0E2 です.ポインティングベクトルの大きさは S=EB/μ0=ε0cE2=cu で,エネルギーが速さ c で運ばれることを表します.

正弦波 Ey=E0sin⁡(ωt−kx) では sin2 の時間平均が 1/2 なので(数学の節),強さは

I=⟨S⟩=12ε0cE02=c⟨u⟩

です.大気の外の太陽光は I≈1.4×103Wm−2 です.これを1つの正弦波とみなすと E0=2I/(ε0c)≈1.0×103Vm−1,B0=E0/c≈3.4×10−6T で,地磁気の10分の1ほどの磁場が 1015Hz ほどで振動しています.

運動量と光の圧力

電磁波が電荷 q に当たると,電場が電荷を y 方向に揺すって速度 vy を与え,磁場 Bz が力 qv×B を及ぼし,その x 成分は qvyBz=qvyEy/c です.一方,電場が電荷にする仕事率は qEyvy です.したがって,各瞬間に

(進む向きの力)=(電荷が受け取る仕事率)c

が成り立ちます.電荷がエネルギー U を吸収すれば,進む向きに運動量 U/c を受け取ります.電磁波はエネルギー U とともに運動量 U/c を運ぶのです.これは第24章の場の運動量密度 g=S/c2 とも,第13章の質量のない粒子の E=pc とも合っています.

ポイント 光の圧力

強さ I の光が面に垂直に当たるとき,面が受ける圧力は

  • すべて吸収する面で I/c,

  • すべて正反対に反射する面で 2I/c(運動量が逆向きになるので変化は2倍).

斜めに当たるときは,光を受ける面積と,運動量の法線成分の両方が入射角の余弦倍になる.

太陽光の圧力は I/c≈5×10−6Pa で,大気圧の 10−11 倍ほどしかありません.それでも,薄い大きな帆を広げて進む宇宙船(ソーラーセイル)や,彗星の尾が太陽と反対へ伸びることに効いています.ここでは物体の速さが c より十分小さいとしました.速さが c に近いと,反射した光の振動数が変わり(ドップラー効果),受け取る運動量も変わります.

電子レンジの中の定在波

金属の壁に電磁波が当たると,壁の表面では電場の壁に沿う成分が0になるので(第20章の導体),向きが逆の反射波ができます.入射波と反射波が重なると,第25章の弦と同じく定在波になり,電場の節は壁から λ/2 おきに並びます.電子レンジの電波は ν=2.45×109Hz,λ=c/ν≈12cm なので,庫内には約 6cm おきに温まりにくい所ができます.ターンテーブルが食品を回すのはこのためです.

[図:反射する電場と定在波]

初期状態はt/T = 1/8で,右へ進む入射波と左へ進む反射波の和に定在波ができている.3段の縦の尺度は共通で,金属の壁では電場の和が常に0になる.時刻のスライダーと再生・停止で,節が動かず,隣り合う節の間隔がλ/2であることを確かめられる.Tは波の周期である.

光のドップラー効果(発展)

光源と観測者が速さ V で遠ざかると,観測される振動数 ν′ は光源の振動数 ν より小さくなります.音(第25章)と違い,光には媒質がないので,光源が動くか観測者が動くかの区別はなく,相対速度だけで決まります.相対論から得られる結果は,β=V/c として

ν′=ν1−β1+β

です.β が十分小さければ ν′≈ν(1−β),波長の相対変化は Δλ/λ≈β で,音のドップラー効果の式と同じ形に戻ります.遠くの銀河の光の波長は長い方へずれていて(赤方偏移),宇宙が膨張していることを示します.

近似の適用条件

この題材の平面波は理想化です.光源からの距離が考えている領域よりずっと大きく,光の束の幅が波長よりずっと大きいとき,波面を平面とみなせます.電球のすぐそばや,波長ほどの小さな穴を通った後では,この近似は使えません(次の題材と第27章).また,ここでの式は真空中のもので,物質の中では速さが c/n に変わります(最後の題材).

問いに戻る

光は電場と磁場が揺れる波です.揺れているのは物質ではなく場そのもので,変化する電場が磁場を作り,変化する磁場が電場を作ることで,場は媒質なしに自分で伝わります.その速さはマクスウェル方程式から c=1/ε0μ0 と決まり,光の速さと一致します.太陽の光は,宇宙空間を電場と磁場のエネルギーと運動量として運ばれてくるのです.

ポイント ここまでのまとめ

  • 真空では,マクスウェル方程式から場の波動方程式が出て,電磁波は速さ c=1/ε0μ0 で進む.光は電磁波である.

  • 電場と磁場は進む向きに垂直な横波で,E=cB,E×B が進む向き.

  • 電場と磁場のエネルギー密度は等しく,強さは I=12ε0cE02=c⟨u⟩.

  • 電磁波はエネルギー U とともに運動量 U/c を運び,吸収面に I/c,反射面に 2I/c の圧力を及ぼす.

  • 金属の壁で反射すると定在波ができ,電場の節は λ/2 おきに並ぶ.

02電磁波の波動方程式と時間平均

本体の節では,突然流れ始めた電流の板が作る場の面から,電磁波の速さが c になることを見ました.ここでは,場の波動方程式を,細長い長方形の道に積分形を使う方法と,微分形とベクトル解析の公式を使う方法(発展)の2通りで導きます.あわせて,強さの計算に使う正弦波の2乗の時間平均を確かめます.

定理 数学の道具:細長い長方形の道から1次元の波動方程式へ

真空中で,場が x と t だけによって,電場が y 成分 Ey(x,t),磁場が z 成分 Bz(x,t) だけをもつとき,ファラデーの法則とアンペール・マクスウェルの法則は

∂Ey∂x=−∂Bz∂t,∂Bz∂x=−1c2∂Ey∂t

となり,組み合わせると Ey と Bz はどちらも1次元の波動方程式 ∂2Ey∂x2=1c2∂2Ey∂t2 に従う.

本体の節の2つの長方形の道を,波面をまたぐ代わりに x から x+dx までの幅,高さ h にとります.xy 平面の道(面の向きは +z)では,電場の線積分に効くのは y 方向の2辺だけで [Ey(x+dx,t)−Ey(x,t)]h=∂Ey/∂xdxh です.これが磁束 Bzhdx の減る速さに等しいことが1つ目の式です.xz 平面の道(面の向きは +y)では,右ねじの関係から x の辺を +z 向きにたどるので,磁場の線積分は −∂Bz/∂xdxh で,これが μ0ε0 と電束 Eyhdx の増える速さの積に等しいことが2つ目の式です.1つ目の式を x で微分し,偏微分の順序を入れ替えて2つ目の式を使うと

∂2Ey∂x2=−∂∂t∂Bz∂x=1c2∂2Ey∂t2

で,Bz も同じです.第25章で見たように,この方程式の解は f(x−ct) と g(x+ct) の和です.

Ey=f(x−ct)(+x 向きに進む波)なら,1つ目の式から ∂Bz/∂t=−f′(x−ct) で,Bz=f(x−ct)/c です(場のない所につながるので,時間によらない定数は0とする).Ey=g(x+ct)(−x 向き)なら同じく Bz=−g(x+ct)/c です.どちらでも E=cB で E×B が進む向きを向きますが,−x 向きの波では,電場が同じ向きでも磁場の向きが逆になります.

定理 数学の道具:回転の回転(発展)

どんなベクトル場 F についても

∇×(∇×F)=∇⁡(∇⋅F)−∇2⁡F

が成り立つ.右辺の ∇2⁡F は,F の各成分にラプラシアン ∇2=∂2∂x2+∂2∂y2+∂2∂z2 を働かせたベクトルである.

x 成分を書き出し,∂2Fx∂x2 を足して引くと確かめられます.真空ではファラデーの法則 ∇×E=−∂B/∂t の回転をとり,時間微分と回転の順序を入れ替えて ∇×B=1c2∂E/∂t を使うと

∇×(∇×E)=−∂∂t(∇×B)=−1c2∂2E∂t2

で,左辺は公式と ∇⋅E=0 から −∇2⁡E なので,本体の節の波動方程式が出ます.B も ∇⋅B=0 を使って同じです.平面波 E=E0f(x−ct) では ∇⋅E=E0xf′=0 から E0x=0 で,横波であることもガウスの法則から出ます.

定理 数学の道具:正弦波の2乗の時間平均

周期 T=2π/ω にわたる平均を ⟨ ⟩ と書くと,どんな ϕ についても

⟨sin2⁡(ωt+ϕ)⟩=⟨cos2⁡(ωt+ϕ)⟩=12,⟨sin⁡(ωt+ϕ)cos⁡(ωt+ϕ)⟩=0

である.複素振幅で E=Re(E^eiωt),F=Re(F^eiωt) と書くと

⟨EF⟩=12Re(E^F^∗)

である.F^∗ は F^ の共役複素数.

sin2⁡θ=12(1−cos⁡2θ) の cos⁡2θ は平均が0だからです.複素数の式は,E=12(E^eiωt+E^∗e−iωt) と F の同じ形を掛けると,e±2iωt の項の平均が0で,14(E^F^∗+E^∗F^) が残ることから出ます.第23章の交流の平均電力 12Re(V^I^∗) と同じ形です.

練習 真空中の平面電磁波の電場が Ez=E0cos⁡(ωt−ky),Ex=Ey=0(ω=ck)である.磁場を求め,ファラデーの法則の微分形を満たすことを確かめよ.

答え 位相が一定の点は +y 向きに速さ c で進む.ez×ex=ey なので,磁場は Ez が正のとき +x 向きで,Bx=E0cos⁡(ωt−ky)/c,By=Bz=0.確かめ:(∇×E)x=∂Ez/∂y=kE0sin⁡(ωt−ky),−∂Bx/∂t=ωE0sin⁡(ωt−ky)/c=kE0sin⁡(ωt−ky) で一致し,他の成分は両辺とも0.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

yz 平面に置いた無限に広い板に,時刻 t=0 から +y 向きの一様な電流を流し始め,その後は一定に保つ.電流を流す前は電場・磁場とも0とする.流れに垂直な幅 1m あたりの電流は K=1.0Am−1 である.真空中で,μ0=1.26×10−6Hm−1,c=3.00×108ms−1 とする.

  1. t=1.0μs で,場がある領域の範囲と,そこでの磁場と電場の大きさを求めよ.

  2. 板の電流が自分の作った電場に逆らって流れるために,電源が板の単位面積あたりにする仕事率を求めよ.これが,板の両側へ流れ出すエネルギーの流れに等しいことを確かめよ.

yz平面の板に+y向きの電流Kが流れる.電場Eは板の両側で−y向きで,磁場Bは左側で+z向き,右側で−z向きである.ポインティングベクトルSは左右へ外向きである.+zを紙面の手前にとり,丸の中の点と十字で磁場の向きを示す. yz平面の板に+y向きの電流Kが流れる.電場Eは板の両側で−y向きで,磁場Bは左側で+z向き,右側で−z向きである.ポインティングベクトルSは左右へ外向きである.+zを紙面の手前にとり,丸の中の点と十字で磁場の向きを示す.
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考え方 本体の節で求めたとおり,場の面は速さ c で板の両側へ広がり,その内側では B=μ0K/2,E=cB である.電場は電流と逆向きなので,電源は単位面積あたり EK の仕事率で電流を押し続ける.

  1. 波面は x=±ct=±3.0×102m にあり,場は |x|<3.0×102m にある.

B=μ0K2=1.26×10−6×1.02=6.3×10−7T,E=cB=1.9×102Vm−1
  1. 板の面積 A を流れる電流の電荷は,電場から −EKA の仕事率を受ける(電場と逆向きに動くので負).電源がする仕事率は単位面積あたり

EK=cμ0K22=3.00×108×1.26×10−6×1.022≈1.9×102Wm−2

である.一方,片側のポインティングベクトルの大きさは EB/μ0=cμ0K2/4 で,両側の合計は cμ0K2/2 となり,一致する.

確かめ:場のある領域は単位時間に両側を合わせて 2c ずつ広がり,そこのエネルギー密度は u=ε0E2=B2/μ0 なので,増える場のエネルギーは単位面積あたり 2c⋅μ0K2/4=cμ0K2/2 で,これも一致する.なお,cμ0≈378Ω は抵抗の次元をもち,真空のインピーダンスと呼ばれる.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

金属の壁 x=0 に,x<0 の側から真空中の平面波 Ey=E0cos⁡(ωt−kx) が垂直に当たり,完全に反射される.壁の表面では電場の y 成分が0である.

  1. 反射波の電場と,入射波・反射波それぞれの磁場を書き,合成した電場と磁場を求めよ.

  2. 電場の節と磁場の節の位置を答え,ポインティングベクトルの時間平均を求めよ.

  3. 電子レンジ(ν=2.45×109Hz)の庫内に板チョコを置いて回転を止めて温めると,溶けた点の間隔が 6.1cm だった.庫内の電場は1次元の定在波とみなし,溶けた点は隣り合う電場の腹に対応するとする.この測定から光の速さを求めよ.

右端の金属の壁x = 0の左側に,電場の定在波の包絡線を実線,磁場の定在波の包絡線を破線で描く.壁で電場は節,磁場は腹になる.隣り合う節の間隔はλ/2である. 右端の金属の壁x = 0の左側に,電場の定在波の包絡線を実線,磁場の定在波の包絡線を破線で描く.壁で電場は節,磁場は腹になる.隣り合う節の間隔はλ/2である.
解答を見る

考え方 反射波は −x 向きに進むので,Ey と Bz の関係は Bz=−Ey/c になる.壁で電場の和が0になるように反射波を決める.

  1. 反射波は Ey(r)=−E0cos⁡(ωt+kx) とすれば,x=0 で入射波と打ち消し合う.磁場は,入射波が Bz(i)=E0cos⁡(ωt−kx)/c,反射波が Bz(r)=−Ey(r)/c=E0cos⁡(ωt+kx)/c である.和積の公式から

Ey=2E0sin⁡ωtsin⁡kx,Bz=2E0ccos⁡ωtcos⁡kx
  1. 電場の節は sin⁡kx=0,すなわち x=0, −λ/2, −λ, … で,壁は電場の節である.磁場の節は cos⁡kx=0,すなわち x=−λ/4, −3λ/4, … で,電場の腹と一致する.ポインティングベクトルは

Sx=EyBzμ0=4E02μ0csin⁡ωtcos⁡ωtsin⁡kxcos⁡kx

で,⟨sin⁡ωtcos⁡ωt⟩=0 から時間平均は0である.エネルギーは電場の腹と磁場の腹の間を4分の1周期ごとに行き来するだけで,正味には流れない.

  1. チョコを温めるのは電場なので,溶けるのは電場の腹で,その間隔は λ/2 である.λ=2×6.1cm=0.122m から

c=λν=0.122×2.45×109≈3.0×108ms−1

確かめ:電場と磁場は時間でも sin⁡ωt と cos⁡ωt で4分の1周期ずれているので,uE と uB は交互に最大になる.定在波では,進む波のように各瞬間に uE=uB とはならない.実際の庫内は3次元のモードが重なるので,間隔の測定には数 % の誤差がある.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

太陽の放射の全電力は L=3.8×1026W,GM=1.33×1020m3s−2(G は万有引力定数,M は太陽の質量)とし,c=3.0×108ms−1 とする.太陽は等方的に放射し,塵や地球の速さは c より十分小さいとする.

  1. 太陽から距離 r にある,半径 s,密度 ρm=3.0×103kgm−3 の球形の塵が,当たる光をすべて吸収する.光の圧力による力と太陽の引力の比を求め,それが r によらないことを示せ.

  2. 比が1になる塵の半径を求めよ.地球(半径 6.4×106m,平均密度 5.5×103kgm−3)ではこの比はいくらか.

    1. の塵の半径の値について,この計算の近似が成り立つかを論じよ.

太陽から距離rの所にある半径sの球形の塵に,ほぼ平行な光が当たる.光の圧力による力は太陽から外向き,引力は太陽向きで,矢印は方向を示す.下段は光を受ける半径sの円板を拡大した模式図で,円板は光に垂直である. 太陽から距離rの所にある半径sの球形の塵に,ほぼ平行な光が当たる.光の圧力による力は太陽から外向き,引力は太陽向きで,矢印は方向を示す.下段は光を受ける半径sの円板を拡大した模式図で,円板は光に垂直である.
解答を見る

考え方 距離 r での強さは,全電力を半径 r の球面の面積で割った I=L/(4πr2) である.塵が光を受けるのは断面積 πs2 の部分で,吸収した電力の 1/c が力になる.

  1. 光の圧力による力と引力は

Flight=L4πr2⋅πs2c=Ls24cr2,Fg=GMr2⋅43πs3ρm

で,比は

FlightFg=3L16πcGMρms

となる.どちらの力も r−2 に比例するので,比は r によらない.

  1. 比が1になる半径は

s=3L16πcGMρm=3×3.8×102616π×3.0×108×1.33×1020×3.0×103≈1.9×10−7m

である.地球では,同じ式の s と ρm を入れかえて

FlightFg=1.9×10−7×3.0×1036.4×106×5.5×103≈1.6×10−14

で,地球の運動には光の圧力はまったく効かない.

  1. 光を断面積だけで受け止めるという見方は,物体が波長よりずっと大きいときの近似である.太陽光の波長は 0.5μm 程度で,s=0.19μm はそれより小さい.この大きさでは,光は回り込み,塵が受け取る運動量は断面積からの見積もりとずれる(次の題材の散乱).したがって,「およそ 0.1μm から 1μm ほどの塵で,光の圧力が引力と同程度になる」という程度の結論にとどめるべきである.塵の速さは c よりずっと小さいので,ドップラー効果による補正は無視してよい.

確かめ:比は 1/s に比例するので,小さい塵ほど光の圧力が効く.彗星から放たれた細かい塵が太陽と反対へ押し流されて尾を作ることと合っている.

ポイント ここまでのまとめ

  • 細長い長方形の道に2つの渦の法則を使うと ∂Ey/∂x=−∂Bz/∂t,∂Bz/∂x=−1c2∂Ey/∂t で,組み合わせると1次元の波動方程式.±x 向きの波は Bz=±Ey/c.

  • (発展)∇×(∇×F)=∇⁡(∇⋅F)−∇2⁡F から3次元の波動方程式が出て,∇⋅E=0 から横波.

  • 正弦波の2乗の時間平均は 1/2 で,複素振幅では ⟨EF⟩=12Re(E^F^∗).

  • 金属の壁で反射した定在波では,壁は電場の節・磁場の腹で,エネルギーの正味の流れは0.

03電磁波の場と光圧の演習

場の向き,時間平均,運動量の流れを結びつけてください.以下,強さ I は単位面積あたりの平均通過電力を表し,真空中の光速を c=3.0×108ms−1 とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

真空中の平面波の電場は Ey=E0sin⁡(ωt+kx),Ex=Ez=0 です.E0,ω,k>0,ω=ck とします.

  1. 進行方向と磁場の各成分を求めよ.

  2. 電場と磁場のエネルギー密度 uE=ε0E2/2,uB=B2/(2μ0) を比較し,平均全エネルギー密度を求めよ.ε0μ0c2=1 を使ってよい.

解答を見る

考え方 同じ位相の点が動く向きを求め,外積 E×B をその向きにそろえる.

  1. 位相一定では ωdt+kdx=0 だから dxdt=−c.磁場は Bx=By=0,Bz=−E0sin⁡(ωt+kx)/c である.電場の正負が変わると磁場も反転し,外積は常に負のx方向になる.

  2. uB=E2/(2μ0c2)=ε0E2/2=uE.よって u=ε0E02sin2⁡(ωt+kx) で,1周期平均は ⟨u⟩=ε0E02/2.電場と磁場は瞬間ごとにも等分され,平均だけの一致ではない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

大気外のある場所の太陽光を,同じ平均強度の正弦平面波に置き換えます.I=7.2×102Wm−2,ε0=8.9×10−12Fm−1 とします.

  1. S=E×B/μ0 から I と電場振幅の関係を導き,電場・磁場の振幅を求めよ.

  2. 波に垂直な面積 S=2.0m2 の完全吸収板が受ける力を求めよ.エネルギー U の光は進行方向に運動量 U/c を運びます.

平行な入射光が板へ垂直に入る.入射光の強さIと,完全吸収板の面積Sを示す. 平行な入射光が板へ垂直に入る.入射光の強さIと,完全吸収板の面積Sを示す.
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考え方 強さは場の振幅の2乗の時間平均であり,吸収板の力は毎秒受け取る運動量である.

  1. B=E/c より Sx の大きさは E2/(μ0c)=ε0cE2.したがって I=ε0cE02/2,E0=2I/(ε0c)=7.3×102Vm−1,B0=E0/c=2.4×10−6T.

  2. 時間 Δt に届くエネルギーは ISΔt だから,F=IS/c=4.8×10−6N.光圧 I/c=2.4×10−6Pa と面積の積に等しい.ここでの振幅は,多くの振動数を含む実際の太陽光の単一の振幅ではなく,指定した置換の値である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

真空中の薄い板に,電力 P=0.36W のレーザーを τ=2.0×10−2s 照射します.光は板へ垂直に当たり,全て板の中に収まります.入射エネルギーの 1/3 を吸収し,残りを正反対に反射します.板の質量は M=1.2×10−8kg,初速度は0です.外力,照射中の再放射,運動による光の変化を無視します.

  1. 平均の力と,照射終了時の速度を求めよ.

  2. 板の運動エネルギーと入射エネルギーの比を求め,近似を確かめよ.

電力Pの入射光が,質量Mの初め静止した板に垂直に当たる.吸収は1/3,残りを正反対へ反射するという条件を示す.照射時間はτである. 電力Pの入射光が,質量Mの初め静止した板に垂直に当たる.吸収は1/3,残りを正反対へ反射するという条件を示す.照射時間はτである.
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考え方 吸収では U/c,反射では 2U/c の運動量が板へ渡る.

  1. F=(1/3+2×2/3)P/c=2.0×10−9N.力積 Fτ=Mv より v=3.3×10−3ms−1 で,入射光の向きである.

  2. U=Pτ=7.2×10−3J,K=Mv2/2=6.7×10−14J.したがって K/U=9.3×10−12.吸収エネルギーの大部分は板の内部に残る.無次元量 v/c=1.1×10−11 が十分小さく,反射光のエネルギー変化を無視する近似も整合する.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

真空中の同振幅の対向波を,Ey(+)=E0sin⁡(ωt−kx),Ey(−)=−E0sin⁡(ωt+kx) とします.ω=ck,λ=2π/k です.弱い探針で測った,隣り合う3つの電場強度の極大位置は次の通りでした.各位置の誤差の絶対値は 0.10cm 以下とします.

極大

位置 x(cm)

A

3.05

B

9.15

C

15.25

  1. 合成電場を求め,極大位置の間隔から波長と振動数 ν を決めよ.

  2. AとCを使った波長の最大誤差と,振動数の相対誤差の1次近似を求めよ.

同振動数・同振幅の対向波を矢印で示す.x軸上の測定位置はAが3.05 cm,Bが9.15 cm,Cが15.25 cmで,探針は軸に沿って走査する. 同振動数・同振幅の対向波を矢印で示す.x軸上の測定位置はAが3.05 cm,Bが9.15 cm,Cが15.25 cmで,探針は軸に沿って走査する.
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考え方 電場を足してから2乗平均をとる.腹の間隔は波長そのものではない.

  1. 和積の公式から Ey=−2E0cos⁡ωtsin⁡kx,⟨Ey2⟩=2E02sin2⁡kx.極大の間隔は π/k=λ/2 である.AとCは2間隔離れているので,λ=xC−xA=12.20cm,ν=c/λ=2.5×109Hz.Bも中点にあり,等間隔の模型と合う.

  2. 差の誤差は両端の誤差の和以下だから Δλ=0.20cm.dνdλ=−c/λ2 より Δν/ν≈Δλ/λ=0.016,約1.6 %である.これは最大誤差の評価であり,二乗和ではない.捨てた高次項は (Δλ/λ)2 程度で十分小さい.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

等方的に電力 P∗ を放射する恒星のまわりで,面積 S,面積あたりの質量 σm の平らな帆を考えます.帆は恒星から距離 r にあり,法線は半径方向です.入射エネルギーの割合 α を吸収し,残りを正反対へ反射します.透過,吸収後の再放射による合力,他の力は無視します.恒星の質量は M∗ です.

  1. 光圧の力と重力の比を導き,半径方向の合力が外向きになる σm の条件を求めよ.

  2. P∗=3.6×1026W,GM∗=1.3×1020m3s−2,α=1/4,σm=8.0×10−4kgm−2 で比を評価せよ.恒星へ近づくだけで,合力の向きは逆転しますか.

質量M_*,放射電力P_*の恒星と,距離rに置かれた帆を示す.帆は半径方向に垂直で,面積S,面密度σ_m,吸収割合αを記す. 質量M_*,放射電力P_*の恒星と,距離rに置かれた帆を示す.帆は半径方向に垂直で,面積S,面密度σ_m,吸収割合αを記す.
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考え方 球面に広がる光の強さと,帆全体への万有引力を同じ距離で比較する.

  1. I=P∗/(4πr2) なので,Flight=(2−α)P∗S/(4πcr2).帆の質量は σmS だから Fg=GM∗σmS/r2.従って

FlightFg=(2−α)P∗4πcGM∗σm,σm<(2−α)P∗4πcGM∗

なら合力は外向きである.

  1. 境目の面密度は 1.3×10−3kgm−2,比は丸める前の値で約1.6.両方が r−2 に比例するため,近づくだけでは向きは逆転しない.右辺は面密度の次元を持つ.恒星と帆の大きさが r より十分小さく,帆の速さと c の比も十分小さい範囲での結論である.

ポイント 教える人へ

  • 電場と磁場の外積から,波の進行方向を説明させます.

  • 振幅の2乗とその時間平均,腹の間隔と波長を区別させます.

  • 吸収と反射で力積が違う理由を,光の運動量の変化から問います.

  • 誤差や運動の近似は,小さいとした無次元量で確かめさせます.

04電荷の放射と光の散乱

問い

晴れた日の空は青く,夕日は赤く見えます.太陽の光はいろいろな色を含んだ白い光で,空気は無色透明な気体です.それなのに,太陽から離れた方向の空からは青い光が届き,地平線近くの太陽からは赤い光が届きます.空気は光に何をしていて,なぜ色によって振る舞いが違うのでしょうか.

考えてみる

空気の分子が光を「はね返している」と考えたくなります.しかし分子の大きさ 10−10m は光の波長 4×10−7∼7×10−7m の数千分の1しかなく,小石が波をはね返すような描像では色による違いも出てきません.

前の題材では,真空を電場と磁場が E=cB を保って伝わることを見ました.では,その波を最初に作るのは何でしょうか.止まった電荷や一定の速さで動く電荷は,クーロンの場を作り,持ち運ぶだけです.波を出すのは加速する電荷です.光が分子に当たると,分子の中の電子が光の電場で揺すられて加速し,四方へ新しい電磁波を出します.これが散乱です.散乱の強さが色でどう変わるかを知るには,加速する電荷がどんな場を出すかを知る必要があります.

加速する電荷が作る場

静止していた電荷 q が,時刻0から短い時間 τ だけ加速度 a で加速され,その後は小さな速さ v=aτ で等速に動くとします.電荷の様子が変わったという知らせは速さ c で広がります.時刻 t には,半径 ct より外の場はまだ「止まった電荷」のクーロンの場で,中心は元の位置です.半径 c(t−τ) より内側の場は「動いている電荷」のクーロンの場で,中心は今の電荷の位置です.その間の厚さ cτ の殻の中で,電気力線は2つをつなぐためにほぼ横向きに折れ曲がります.

[図:加速した電荷の力線と広がる殻]

初期状態はt = 24τ,v/c = 0.06で,正の電荷は右へ動く.外側の力線は元の位置,内側は現在の電荷を中心とし,厚さcτの殻で接続する.時刻を進めると殻の半径ctが増え,拡大図で横向きと半径方向の電場の比が増す.力線は低速近似の模式図で,拡大図のずれはvt sinθで近似する.

加速度の向きと観測の向きのなす角を θ とします.殻の中で力線は,横方向に vtsin⁡θ だけずれながら,半径方向に cτ だけ進みます.力線の傾きが電場の横の成分 E⟂ と半径方向の成分 Er の比なので

E⟂Er=vtsin⁡θcτ=atsin⁡θc

です.殻の中でも半径方向の成分はクーロンの場 Er=q/(4πε0r2) と同じで,r=ct を使うと

E⟂=qasin⁡θ4πε0c2r

が出ます.クーロンの場は 1/r2 で弱まりますが,この横向きの場は 1/r でしか弱まりません.遠くでは横向きの場が圧倒的に強く,これが放射の場です.

法則 加速する電荷の放射の場

電荷 q が加速度 a で運動するとき,距離 r の遠方の点の電場は

Erad(t)=−qa⟂(t−r/c)4πε0c2r,|Erad|=|q||a(t−r/c)|sin⁡θ4πε0c2r

である.a⟂ は加速度のうち観測の向きに垂直な成分,θ は加速度と観測の向きのなす角.磁場は大きさ Erad/c で,電場と進む向きの両方に垂直.

この式で読むべき点は3つです.1つめは遅れで,時刻 t の場は光が距離 r を進む時間 r/c だけ前の加速度で決まります.2つめは横向きで,加速度のうち視線に沿う成分は放射を作らず,加速度の向き(θ=0)には何も放射されません.3つめは1/r で,強さは 1/r2 で弱まり,半径 r の球面全体を通るエネルギーの流れは r によりません.エネルギーが電荷から離れて,どこまでも運ばれていくのです.

この式が使えるのは,電荷の速さが c より十分小さく(そうでないと場の形が歪む),距離 r が電荷の動く範囲や波長より十分大きい(遠方場)ときです.近い所では,クーロンの場や,同じく 1/r2 で弱まる別の項も効きます.

放射の向きとラーモアの式

放射の場が運ぶエネルギーの流れ(ポインティングベクトルの大きさ)は,B=E/c から EB/μ0=ε0cE2 です.したがって,遠方の強さは

I(r,θ)=ε0cErad2=q2a2sin2⁡θ16π2ε0c3r2

で,加速度の向きを軸とするドーナツ形に広がります.全放射電力は,これを半径 r の球面で積分します.θ と θ+dθ の間の帯の面積は 2πr2sin⁡θdθ で,∫0πsin3⁡θdθ=4/3 なので

P=∫0πI⋅2πr2sin⁡θdθ=q2a216π2ε0c3⋅2π⋅43=q2a26πε0c3

です.同じ計算から,赤道(θ=90∘)での強さを I⟂ とすると I=I⟂sin2⁡θ,P=8π3r2I⟂ という関係も分かります.

定理 ラーモアの式

非相対論的に運動する電荷 q が,加速度 a のときに全方向へ放射する電力は

P=q2a26πε0c3

放射の強さの向きによる分布は sin2⁡θ に比例する.

アンテナは,この放射を意図して起こす装置です.まっすぐな導線に角振動数 ω の交流を流すと,中の電子が往復して加速します.電荷 q が x=x0cos⁡ωt と振動すれば加速度は −ω2x で,cos2 の時間平均が 1/2 なので,双極子モーメントの振幅を p0=qx0 として

⟨P⟩=q2ω4x0212πε0c3=p02ω412πε0c3

です(⟨P⟩ は時間平均).同じ振幅でも振動数が2倍なら放射は16倍です.アンテナの向きには電波が出ず,垂直な向きに一番強く出ます.この式は,x0 が波長 λ=2πc/ω より十分小さい場合(小さな双極子)に使えます.

z軸に沿う小さな双極子を中心に,放射の強さI⊥ sin²θを極座標の半径で示す.z軸のまわりに回転するとドーナツ形になり,軸方向は0,赤道面で最大となる.遠方の電場は視線に垂直で,正の電荷の加速度が+z向きの瞬間にはその垂直成分と逆向きになる. z軸に沿う小さな双極子を中心に,放射の強さI⊥ sin²θを極座標の半径で示す.z軸のまわりに回転するとドーナツ形になり,軸方向は0,赤道面で最大となる.遠方の電場は視線に垂直で,正の電荷の加速度が+z向きの瞬間にはその垂直成分と逆向きになる.

原子の電子を振動子とみる

原子の中の電子は原子核に引かれて束縛されています.第7章のように,電子を固有角振動数 ω0 のばねでつながれた振動子とみなします.電子の質量を m,電荷を −e,入射光の電場を E0cos⁡ωt とすると

md2xdt2+mω02x=−eE0cos⁡ωt

です.減衰は小さいとして省きます.第7章の方法で,x を Xeiωt の実部,電場を E0eiωt の実部として代入すると m(ω02−ω2)X=−eE0 なので

X=−eE0m(ω02−ω2)

です.加速度の振幅は ω2|X| なので,揺すられた電子の平均放射電力は

⟨P⟩=e26πε0c3⋅ω4|X|22=e4E02ω412πε0m2c3(ω02−ω2)2

です.これを入射光の強さ I=ε0cE02/2 で割ると,電子1個が入射光から取り除いて四方へ送り出す分を面積で表した量になります.これを散乱断面積といいます.

定義 散乱断面積

入射光の強さ I と,1個の散乱体が散乱する平均電力 ⟨P⟩ の比 σsc=⟨P⟩/I.束縛された電子の模型では

σsc=e46πε02m2c4⋅ω4(ω02−ω2)2

空気の分子の電子の固有振動は紫外線の領域にあり,可視光では ω が ω0 より十分小さいので,分母はほぼ ω04 で σsc∝ω4 になります.これをレイリー散乱といいます.波長でいえば λ−4 に比例し,青い光(450nm)は赤い光(700nm)の (700/450)4≈6 倍も強く散乱されます.逆に,束縛のない自由な電子(ω0=0)では σsc は振動数によらない一定値になります.

散乱体が数密度 N で不規則に並ぶ気体では,分子ごとの散乱光の位相はそろわないので強さをそのまま足せます.厚さ dz の層では,単位面積あたり Ndz 個の分子がそれぞれ σscI の電力を横へ散らすので,まっすぐ進む光は dI=−NσscIdz だけ弱まり,厚さ d を通ると I=I0e−Nσscd になります.

この模型が使えるのは,ω が ω0 に近すぎず(共鳴の近くでは省いた減衰が効く),散乱体が波長より十分小さい(中の電子が同じ位相で揺れる)ときです.雲の水滴は波長より大きいので,色によらずに散乱して白く見えます.

散乱光の偏光

太陽の光は,電場の向きがいろいろに入りまじった偏光していない光です.真横(散乱の角 90∘)から散乱光を見るとします.入射光は横波なので,電子が揺すられる向きは入射の向きに垂直な面の中に限られます.そのうち視線に沿う揺れは,放射の「横向き」の性質から視線の向きへは何も出しません.残るのは入射の向きと視線の両方に垂直な揺れだけなので,真横に散乱された光はその向きに電場をもつ直線偏光になります.偏光サングラスで空の明るさが変わるのはこのためです.散乱の角が 90∘ からずれると,偏光は部分的になります.

左から右へ進む偏光していない光の電場を,紙面内の上下方向と紙面に垂直な方向に分ける.分子から上へ進む散乱光には紙面に垂直な電場だけが残る.上下の揺れは視線に沿うため上へは放射しない.⊙と⊗は手前向きと奥向きを表す. 左から右へ進む偏光していない光の電場を,紙面内の上下方向と紙面に垂直な方向に分ける.分子から上へ進む散乱光には紙面に垂直な電場だけが残る.上下の揺れは視線に沿うため上へは放射しない.⊙と⊗は手前向きと奥向きを表す.

屈折率の起源

前へ出る散乱光は,どの分子からのものも入射光と位相がそろって足し合わされます(横へ出る光は位相がそろわず,ガラスのように密な物質では打ち消し合います).これが物質の中で光が遅く進む理由です.

薄い板(厚さ Δz,電子の数密度 N)を考えます.板の中の電子は一斉に速度 dx/dt で揺れるので,板には単位幅あたり K=−NeΔzdx/dt の面電流が流れます.前の題材と同じく,アンペール・マクスウェルの法則を板を囲む長方形の道に使うと,板の両側の磁場は μ0K/2,電場は c 倍の μ0cK/2=K/(2ε0c) で,電流と逆向きです.板が出す波の複素振幅は,dx/dt の複素振幅 iωX を使って

Eplate=−K2ε0c=NeΔz⋅iωX2ε0c=−iωNe2Δz2ε0mc(ω02−ω2)E0

です.−i が付いているので,板から出る波は入射光より位相が 90∘ 遅れています.

一方,屈折率 n の板を通ると,光は真空より ω(n−1)Δz/c だけ余分に位相が遅れます.遅れが小さければ E0e−iω(n−1)Δz/c≈E0−iω(n−1)ΔzcE0 で,入射光に 90∘ 遅れた小さな波を足したものと同じ形です.2つを比べると

n=1+Ne22ε0m(ω02−ω2)

が出ます.

入射光の複素振幅E₀は実軸の正方向である.ω < ω₀の場合,板の波Eplateは−iの方向を向き,E₀の先端から下へ足される.和は時計回りにわずかに回り,eⁱωᵗの表現で位相の遅れを示す. 入射光の複素振幅E₀は実軸の正方向である.ω < ω₀の場合,板の波Eplateは−iの方向を向き,E₀の先端から下へ足される.和は時計回りにわずかに回り,eⁱωᵗの表現で位相の遅れを示す.

ポイント 屈折率の起源と分散

物質の中の電子が入射光に揺すられて出す波は,前方では入射光に 90∘ 遅れて足され,光の位相を遅らせる.これが屈折率 n>1 の正体で,希薄な気体では n−1 は N に比例し,ω が ω0 に近づくほど大きくなる.

可視光では ω0 に近い紫の光ほど屈折率が大きく,プリズムで色が分かれます(分散).ω>ω0 では n<1 で,X 線に対するガラスの屈折率は1よりわずかに小さくなります(位相の速さ c/n は c を超えますが,信号やエネルギーが c より速く伝わるわけではありません).この式は,周りの分子が作る場を無視できる希薄な物質で,共鳴から離れた振動数に使えます.

問いに戻る

空気の分子の中の電子は,太陽の光に揺すられて四方へ光を出し直します.その強さは ω4 に比例するので,青い光は赤い光の約6倍も強く散乱され,太陽から離れた方向の空は散乱された青い光で満たされます.夕方は光が大気を斜めに長く通るので,途中で青い光が抜け落ち,まっすぐ届くのは赤い光が中心になります.太陽から 90∘ 離れた方向の空の光は,放射の横向きの性質のために強く偏光しています.

ポイント ここまでのまとめ

  • 加速する電荷は遠方に Erad=−qa⟂(t−r/c)/(4πε0c2r) の横向きの場を作る.遅れ r/c があり,1/r で弱まるのでエネルギーが遠くへ運ばれる.

  • 放射の強さは sin2⁡θ に比例し,全電力はラーモアの式 P=q2a2/(6πε0c3).振動する双極子では ω4 に比例する.

  • 束縛された電子の散乱断面積は ω4/(ω02−ω2)2 に比例し,ω が ω0 より十分小さいとレイリー散乱になって青い光ほど強く散る.空が青く,夕日が赤い.真横に散乱された光は直線偏光する.

  • 前方への散乱光が入射光に 90∘ 遅れて足されることが屈折率の起源で,n=1+Ne2/(2ε0m(ω02−ω2)).

05放射と散乱の例題

本体の節の3つの結果を使います.放射の強さの向きによる分布 I=I⟂sin2⁡θ と全電力 P=8π3r2I⟂,レイリー散乱の ω4 則と弱まり方 I=I0e−Nσscd,そして「加速度の視線に沿う成分は放射しない」という横向きの性質です.どの例題でも,答えを出したあとで近似の条件を点検してください.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

鉛直に立てた短い送信アンテナが,振動数 100MHz の電波を平均電力 P=1.0kW で放射している.アンテナは振動する小さな双極子とみなせ,地面の影響は無視する.ε0=8.85×10−12Fm−1,c=3.0×108ms−1 とする.

  1. アンテナから水平に r=10km 離れた地点での電波の平均の強さと,電場の振幅を求めよ.

  2. アンテナから同じ距離 10km で,水平から 60∘ 上を見上げた向きにある飛行機での強さは,(1) の何倍か.

    1. の地点で,長さの短いまっすぐな受信アンテナを使う.アンテナを電波の進む向きに垂直な面の中で鉛直から角 φ だけ傾けると,受信電力は鉛直のときの何倍になるか.受信電力が最大になる向きも答えよ.

鉛直な送信アンテナから水平にr = 10 km離れた受信点と,同じ距離で水平から60°上にある飛行機を示す.水平の視線とz軸は直角で,飛行機への視線とz軸のなす角をθで示す.下段は地上の受信点を電波の進む向きに見た図で,受信アンテナは電波に垂直な面内で鉛直からφだけ傾いている. 鉛直な送信アンテナから水平にr = 10 km離れた受信点と,同じ距離で水平から60°上にある飛行機を示す.水平の視線とz軸は直角で,飛行機への視線とz軸のなす角をθで示す.下段は地上の受信点を電波の進む向きに見た図で,受信アンテナは電波に垂直な面内で鉛直からφだけ傾いている.
解答を見る

考え方 小さな双極子の強さは軸との角 θ について I=I⟂sin2⁡θ,全電力は P=8π3r2I⟂.アンテナは鉛直なので,軸はz軸である.受信アンテナでは,導線に沿う電場の成分だけが電子を動かす.

  1. 水平な向きは θ=90∘ なので,平均の強さは

I⟂=3P8πr2=3×1.0×1038π×(1.0×104)2=1.2×10−6Wm−2

である.正弦波の強さは I=ε0cE02/2 なので

E0=2I⟂ε0c=2×1.19×10−68.85×10−12×3.0×108=3.0×10−2Vm−1

となる.

  1. 水平から 60∘ 上の向きは,z軸との角が θ=30∘ である.距離が同じなので,強さの比は sin2⁡30∘/sin2⁡90∘=1/4 で,0.25 倍である.真上(θ=0)では電波はほとんど届かない.

  2. 水平な向きに届く放射の電場は,z軸を含み視線に垂直な向き,つまり鉛直である.受信アンテナの導線に沿う成分は E0cos⁡φ なので,アンテナに生じる起電力は cos⁡φ 倍,受信電力は電場の2乗に比例して cos2⁡φ 倍になる.最大になるのは送信アンテナと平行な鉛直の向き(φ=0)で,φ=90∘(水平)では受信できない.

確かめ:波長は λ=c/ν=3.0m で,r/λ≈3×103 は十分大きいので遠方場の式が使える.小さな双極子の式はアンテナの長さが波長より十分短いときのもので,実際によく使う半波長のアンテナでは向きによる分布が少し鋭くなるが,軸の向きに放射が無く赤道面で最大という性質は同じである.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

空気の分子によるレイリー散乱を考える.青い光(波長 450nm)と赤い光(波長 700nm)を比べる.

  1. 同じ強さで入射したとき,1個の分子が散乱する電力の比(青/赤)を求めよ.

  2. 鉛直に大気全体を通るとき,青い光の Nσscd は 0.21 である.赤い光の Nσscd を求め,太陽が真上にあるときにまっすぐ地上に届く割合を,それぞれの色について求めよ.

  3. 夕方,太陽の光が大気を通る道のりが真上のときの20倍になったとする.光路に沿った平均の分子数密度は,真上のときと同じとする.まっすぐ届く割合をそれぞれの色について求め,届いた光の赤と青の強さの比が,太陽を出たときの何倍になるかを答えよ.

左は太陽が真上にあり,大気を短い道で通って地上の観測者へ届く.右は地平線近くから斜めに入り,大気の中を長く進む.丸い地球の外側に薄い大気の層を示し,道の途中から青い光が横へ散乱する矢印を添える.大気の厚さと道の長さは模式的である. 左は太陽が真上にあり,大気を短い道で通って地上の観測者へ届く.右は地平線近くから斜めに入り,大気の中を長く進む.丸い地球の外側に薄い大気の層を示し,道の途中から青い光が横へ散乱する矢印を添える.大気の厚さと道の長さは模式的である.
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考え方 可視光の角振動数は空気の分子の固有角振動数より十分小さいので,σsc∝ω4∝λ−4.まっすぐ届く割合は e−Nσscd で,道のりが20倍なら指数も20倍になる.

  1. 散乱電力は σscI なので,比は

σsc(450nm)σsc(700nm)=(700450)4=5.9

である.

  1. 赤い光の Nσscd は 0.21/5.86=0.036 である.まっすぐ届く割合は,青が e−0.21=0.81,赤が e−0.036=0.96 である.真上の太陽はほとんど白く見え,散乱された約2割の青い光が空を青くする.

  2. 指数が20倍になるので,青は e−4.2=0.015,赤は e−0.72=0.49 である.届いた光の赤と青の比は,太陽を出たときの 0.49/0.015≈33 倍になる.青い光はほとんど散乱されて抜け落ち,夕日は赤く見える.

確かめ:空気の分子の固有振動の波長を 100nm 程度とすると,分母の (ω02−ω2)2 による補正は青で 1/(1−(100/450)2)2=1.11,赤で 1.04 倍である.(1) の比は 6.2 程度に増すが,ω4 則で大筋は正しい.散乱光がまた別の分子で散乱されてビームに戻る分は無視したが,まっすぐ届く光の量を問う限りこれでよい.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

太陽が西の地平線にあるとき,真上の空を見る.太陽の光は偏光しておらず,空の光は空気の分子で1回だけ散乱された光とする.

  1. 真上の空の光の電場はどの向きに振動しているか.偏光板の透過軸を水平面内で回すと,透過する光の強さはどう変わるか.透過軸と南北の向きのなす角を φ として答えよ.偏光板は電場のうち透過軸に沿う成分だけを通す.

  2. 一般に,入射の向きと視線のなす角(散乱の角)を Θ とする.入射光を,散乱の面(入射の向きと視線を含む面)に垂直な電場をもつ光と,散乱の面内に電場をもつ光の,同じ強さの2つに分けて考え,それぞれの散乱光の強さの比を求めよ.

  3. 散乱の角が Θ=60∘ の方向の空を偏光板を通して見る.偏光板を回したときの透過光の強さの最大と最小の比を求めよ.また,偏光度 Imax−IminImax+Imin を求めよ.

上段では,西の地平線の太陽から東へ進む光が観測者の真上の分子に当たり,散乱光が下向きに進む.散乱光の電場は南北向きで,紙面に垂直である.下段では,入射方向の延長と散乱方向のなす角Θを示し,入射光の電場を散乱面内と散乱面に垂直な2成分に分ける.⊙と⊗は紙面の手前向きと奥向きを示す. 上段では,西の地平線の太陽から東へ進む光が観測者の真上の分子に当たり,散乱光が下向きに進む.散乱光の電場は南北向きで,紙面に垂直である.下段では,入射方向の延長と散乱方向のなす角Θを示し,入射光の電場を散乱面内と散乱面に垂直な2成分に分ける.⊙と⊗は紙面の手前向きと奥向きを示す.
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考え方 分子の中の電子は入射光の電場の向きに揺れ,加速度の視線に垂直な成分だけが視線の向きへ放射する.強さは,揺れの向きと視線のなす角を α として sin2⁡α に比例する.

  1. 入射光は東向きに進むので,電子は入射の向きに垂直な面,つまり南北と上下を含む面の中で揺れる.視線は上下の向きなので,上下の揺れは観測者に向けて放射しない.届くのは南北の揺れによる放射だけで,真上の空の光の電場は南北に振動する直線偏光である.偏光板を通るのは Ecos⁡φ の成分なので,透過光の強さは cos2⁡φ に比例する.透過軸が南北のとき最も明るく,東西のとき真っ暗になる.

  2. 散乱の面に垂直な電場で揺れる電子は,揺れの向きが視線と常に垂直(α=90∘)なので,散乱光の強さは sin2⁡90∘=1 に比例する.散乱の面内の電場は入射の向きに垂直なので,視線に垂直な成分の大きさは |cos⁡Θ| 倍で,強さは cos2⁡Θ に比例する.入射光の2つの部分は同じ強さなので,散乱光の強さの比は(面に垂直):(面内)=1:cos2⁡Θ である.

  3. 2つの部分は位相が無関係なので強さを足せ,偏光板を回したときの最大は面に垂直な成分だけを通すとき,最小は面内の成分だけを通すときである.Θ=60∘ では cos2⁡Θ=1/4 なので,最大と最小の比は 4 である.偏光度は

1−cos2⁡Θ1+cos2⁡Θ=1−1/41+1/4=0.60

となる.

確かめ:Θ=90∘ では偏光度は1となり (1) と一致する.Θ=0(太陽の方向)では0で,偏光していない.実際の空では,何回も散乱された光や地面からの反射光が混じり,分子の形も球対称でないので,90∘ の方向でも偏光度は0.7程度にとどまる.

ポイント ここまでのまとめ

  • 小さな双極子の放射は,軸の向きに0,軸に垂直な向きに最大で,I=I⟂sin2⁡θ,P=8π3r2I⟂.受信アンテナは届く電場の向きにそろえる.

  • レイリー散乱では青は赤の約6倍強く散乱される.道のりが長いと e−Nσscd の指数が大きくなり,夕日では青がほとんど抜け落ちる.

  • 散乱光の偏光は,入射光を散乱の面に垂直な部分と面内の部分に分けると分かる.強さの比は 1:cos2⁡Θ で,90∘ の方向で完全な直線偏光になる.

06加速する電荷の放射と散乱の演習

遅れ,放射の向き,振動数依存性を確かめましょう.以下,c=3.0×108ms−1,非相対論的な運動とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

小さな領域にある電荷 q が,時刻0から τ=1.0×10−7s の間,z方向に一定の加速度 a0 を受け,それ以外の時刻の加速度は0です.遠方の放射電場の大きさを

Erad(r,θ,t)=|q||a(t−r/c)|sin⁡θ4πε0c2r

とします.θ はz軸との角です.Aは距離 r=6.0×103m,角 30∘,Bは距離 2r,角 90∘ にあります.

  1. 各点に放射が届き始める時刻と継続時間を求めよ.

  2. 各点でパルスが届いている間の放射の強さの比 IA/IB と,z軸上の放射電場を求めよ.I は Erad2 に比例します.

電荷qから正のz方向へ加速度a_0を示す.観測点Aはz軸となす角30°,距離rにあり,Bは角90°,距離2rにある. 電荷qから正のz方向へ加速度a_0を示す.観測点Aはz軸となす角30°,距離rにあり,Bは角90°,距離2rにある.
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考え方 到達の遅れと,角度・距離による強さの変化を分ける.

  1. Aでは r/c=2.0×10−5s,Bでは 2r/c=4.0×10−5s から始まる.継続時間はどちらも τ である.

  2. IA/IB=(sin⁡30∘/r)2/(sin⁡90∘/(2r))2=1.z軸上は sin⁡θ=0 だから放射電場は0である.これは静電場も0という意味ではない.遠方場では源の大きさと r の比,および cτ/r=5.0×10−3 が小さく,運動の速さと c の比も小さいことを前提とする.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

電荷の絶対値がともに e,質量が m と 4m の2粒子を,それぞれ同じ運動エネルギー K で運動させます.瞬間の放射電力はラーモアの式 P=e2a2/(6πε0c3) に従います.

  1. 同じ一様電場に入れた直後の,軽い粒子と重い粒子の放射電力の比を求めよ.

  2. 同じ一様磁場に,磁場へ垂直に入れた直後の比を求めよ.初めの放射損失は無視できるとします.

質量mと4m,電荷の絶対値e,運動エネルギーKの2粒子を二つの場合に示す.左は青い一様電場,右は緑の⊙で表す一様磁場への垂直な入射である.右の矢印は入射方向だけを示す. 質量mと4m,電荷の絶対値e,運動エネルギーKの2粒子を二つの場合に示す.左は青い一様電場,右は緑の⊙で表す一様磁場への垂直な入射である.右の矢印は入射方向だけを示す.
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考え方 等しいエネルギーから各速さを決め,電場と磁場の加速度を比較する.

  1. am=eE/m,a4m=eE/(4m) より Pm/P4m=42=16.

  2. vm=2K/m,v4m=vm/2.a=eBv/M だから am/a4m=4×2=8,Pm/P4m=64.磁場は仕事をしないが,運動の向きを変えて加速度を生じさせる.適用条件は 2K/(mc2) が十分小さいことで,重い粒子についても同時に満たされる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

希薄な気体を異なる振動数の光で照らし,同じ方向・同じ距離の検出器が受ける散乱電力 Psc を測りました.入射電場振幅は E0 です.基準値 ν0,Eref を使い,Psc=P0(E0/Eref)2(ν/ν0)p という模型を調べます.

ν/ν0

E0/Eref

Psc(10−12W)

1.0

1.0

2.0

1.5

1.0

10.1

2.0

0.50

8.0

  1. 1行目と3行目から P0,p を求め,2行目を確かめよ.

  2. ν=1.2ν0,E0=0.75Eref での散乱電力を予測せよ.入射振幅の変化を無視すると,1行目と3行目から p をいくつと誤りますか.

振動数ν,電場振幅E_0の光を希薄気体に入射させる.同じ方向・同じ距離に固定した検出器が散乱光を受ける. 振動数ν,電場振幅E_0の光を希薄気体に入射させる.同じ方向・同じ距離に固定した検出器が散乱光を受ける.
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考え方 入射振幅の2乗で割って振動数依存性を調べる.

  1. P0=2.0×10−12W.3行目との比は 8.0/2.0=0.502×2p より 2p=16,p=4.2行目の予測は 2.0×1.54=10.125 で,測定の桁で10.1に一致する.

  2. Psc=2.0×10−12×0.752×1.24=2.3×10−12W.振幅変化を無視すると 2p=4 として p=2 を得る.4乗則は測定範囲では支持されるが,共鳴へ近づく範囲までの外挿はできない.レイリー近似では光の角振動数と電子の固有角振動数の比が十分小さいことも必要である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

束縛された電子の変位 x が

md2xdt2+mω02x=−eE0cos⁡ωt

に従います.共鳴を避け,強制振動だけを扱います.減衰と放射による運動の変化は無視し,平均放射電力は ⟨P⟩=e2⟨a2⟩/(6πε0c3) とします.

  1. x を複素振幅 X を用いた Xeiωt の実部として解き,平均放射電力を求めよ.

  2. 同じ E0 で ω=ω0/2 と ω0/3 の放射電力の比を求め,単純な ω4 則と比較せよ.

固定した束縛中心からx方向に変位した電子を示す.固有角振動数はω_0で,青い入射電場の駆動角振動数はωである. 固定した束縛中心からx方向に変位した電子を示す.固有角振動数はω_0で,青い入射電場の駆動角振動数はωである.
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考え方 加速度の複素振幅は −ω2X である.変位振幅自身も駆動振動数に依存する.

  1. 代入すると m(ω02−ω2)X=−eE0,従って X=−eE0/[m(ω02−ω2)].正弦振動の2乗平均から

⟨a2⟩=ω4|X|22,⟨P⟩=e4E02ω412πε0m2c3(ω02−ω2)2

となる.

  1. 分母も比較すると,比は (3/2)4[(1−1/9)/(1−1/4)]2=64/9≈7.1.4乗則だけなら (3/2)4≈5.1 である.ω2/ω02 が十分小さい場合にのみ分母を一定とみなせる.ここでは最大1/4なのでその近似は粗く,さらに ω|X|/c が小さい範囲で放射式を使う.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

固定した電荷 +e のまわりを電子がほぼ円軌道で運動し,放射により軌道半径 r がゆっくり縮む古典模型を考えます.κ=e2/(4πε0)=2.3×10−28Jm,電子質量 m=9.1×10−31kg,初期半径 r0=6.0×10−11m とします.放射電力は P=2κa2/(3c3) です.

  1. 円軌道の力学的エネルギー U(r) と放射電力 P(r) を導け.

  2. dUdt=−P から,半径が r0/2 になるまでの時間を求めよ.この範囲で速さが光速より十分小さく,1周中のエネルギー損失も十分小さいか確かめよ.

固定した正電荷+eのまわりの,初期半径r_0の円軌道を破線,一般の半径rの円軌道を実線で示す.一般の軌道上の電子と質量mを記す. 固定した正電荷+eのまわりの,初期半径r_0の円軌道を破線,一般の半径rの円軌道を実線で示す.一般の軌道上の電子と質量mを記す.
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考え方 各瞬間の円運動からエネルギーと放射電力を半径だけで表し,エネルギー収支を半径の微分方程式へ直す.

  1. mv2/r=κ/r2 だから v2=κ/(mr),a=κ/(mr2).運動エネルギーと電位エネルギーの和は U=κ/(2r)−κ/r=−κ/(2r),P=2κ3/(3m2c3r4).

  2. κdrdt/(2r2)=−P より drdt=−4κ2/(3m2c3r2).積分すると

t1/2=3m2c34κ2∫r0/2r0r2dr=7m2c3r0332κ2=2.0×10−11s

となる.速さは縮むほど増すが,最後でも v/c=2κ/(mr0c2)=9.7×10−3.周期 T=2πr/v を使うと PT/|U|=(8π/3)(v/c)3 で,最大でも 7.6×10−6.両無次元量が小さく,この範囲では近似が整合する.半径0まで同じ近似は延ばせない.

ポイント 教える人へ

  • 遅れを含む時刻と,電荷が加速した時刻を区別させます.

  • 放射電場のない方向にも静電場は存在しうることを問います.

  • 散乱の測定では,入射光の振幅をそろえた比較になっているか確かめさせます.

  • 古典原子の収縮では,速さと1周期の変化の両方から近似を点検させます.

07電磁波の反射と透過

問い

昼間は窓ガラスの向こうの景色がよく見えるのに,夜になって部屋の明かりをつけると,窓に部屋の中と自分の姿が映ります.ガラスはほとんど光を吸収しない透明な物質です.それでも光の一部は表面で跳ね返っています.窓ガラス1枚で,光の何割が反射しているのでしょうか.また,透明なのになぜ反射が起こるのでしょうか.

考えてみる

「透明」とは吸収しないということで,入った光がすべて向こうへ抜けるという意味ではありません.似たことを第25章の弦で見ました.線密度の違う2本の弦をつなぐと,接続点で波の一部が跳ね返り,残りが先へ進みます.どちらの弦もエネルギーを失わないのに反射が起こったのは,接続点で「変位がつながる」「張力の横向きの成分がつり合う」という2つの条件を,入射波と透過波だけでは同時に満たせなかったからです.

光でも,空気からガラスへ入ると波の速さが c から c/n に変わります.前の題材で見たように,これはガラスの中の電子が入射波に揺すられて出す波が重なった結果です.その電子は後ろ向きにも波を出すので,それが反射波になります.ただし電子の放射を全部足し合わせるのは大変です.弦のときと同じく「境界で何がつながるか」から出すのが近道です.

境界で何がつながるか

屈折率 n の透明な物質(磁性はなく,吸収もないとします)の中を,x 方向に進む正弦波を考えます.波の速さは v=c/n です.ファラデーの法則は物質の中でも同じ形なので,最初の題材で E=cB を出したのと同じ計算で E=vB,つまり B=nE/c となります.物質の中では電場に比べて磁場の割合が n 倍に大きくなるのです.強さ(時間平均のポインティングベクトルの大きさ)は EB/μ0 の時間平均で,正弦波の2乗の平均が 1/2 であることを使うと次のようになります.

定義 物質の中の平面波と強さ

屈折率 n の非磁性で透明な物質を進む平面波では,磁場の大きさは B=nE/c で,電場・磁場・進む向きは右手系をなす.電場の振幅を E0 とすると,強さは

I=12nε0cE02

である.

境界の条件は,第20章で誘電体の境界を調べたときと同じく,境界をまたぐ細い長方形の道で調べます.長い辺 ℓ を境界に沿わせ,短い辺を0に近づけます.ファラデーの法則で道を一周する電場の線積分は,道を貫く磁束の時間変化で決まりますが,長方形の面積が0に近づくので磁束も0になり,E1t=E2t です.静電場のときは「保存場だから」でしたが,時間変化する場でも同じ結論になります.アンペール・マクスウェルの法則でも同じように,道を一周する磁場の線積分は,道を貫く電流と電束の変化で決まります.誘電体の中の分極の変化による電流も,電束の変化も,面積あたりでは有限なので,面積が0に近づけば消えます.境界に表面電流が流れていなければ,磁場の接線成分もつながります.

左は電場,右は磁場の接線成分.平らな境界の両側で上向きの接線成分を描く.長方形の長い辺ℓは境界に平行で,短い辺を0に近づける. 左は電場,右は磁場の接線成分.平らな境界の両側で上向きの接線成分を描く.長方形の長い辺ℓは境界に平行で,短い辺を0に近づける.

定理 電磁波の境界の条件

表面電流の無い非磁性の物質の境界では,電場の接線成分と磁場の接線成分がそれぞれつながる.

垂直入射の反射率と透過率

屈折率 n1 の物質(x<0)から n2 の物質(x>0)へ,平面波が垂直に入射するとします.電場を y 方向,磁場を z 方向にとります.交流と同じく,場を複素数の実部で表し,入射・反射・透過の電場の複素振幅を E^i,E^r,E^t とします.境界 x=0 では3つの波がどれも同じ eiωt で振動します.反射しても透過しても振動数は変わらないからです.

電場はどの波も y 方向で,境界に平行(接線成分そのもの)なので,1つ目の条件は E^i+E^r=E^t です.磁場は少し注意が要ります.E×B が進む向きを向くので,+x へ進む波では cBz=nEy ですが,−x へ戻る反射波では cBz=−n1Ey と符号が逆になります.したがって2つ目の条件は n1(E^i−E^r)=n2E^t です.2つを連立して解くと(数学の節)次の結果になります.

定理 垂直入射の反射と透過

電場の振幅の比(振幅反射率・振幅透過率)は

r=E^rE^i=n1−n2n1+n2,t=E^tE^i=2n1n1+n2

である.強さの比(反射率・透過率)は

R=r2=(n1−n2n1+n2)2,T=n2n1t2=4n1n2(n1+n2)2

で,R+T=1 が成り立つ.

透過率に n2/n1 が付くのは,強さが nE02 に比例するからです.振幅の比をそのまま2乗しても透過率にはなりません.実際に R+T={(n1−n2)2+4n1n2}/(n1+n2)2=1 で,境界で吸収が無いことと合っています.

弦の接続点の結果と並べると,対応がよく分かります.弦では変位 y と張力の横向きの成分 S∂y/∂x がつながり,反射の振幅比は (Z1−Z2)/(Z1+Z2) でした.張力が同じなら Z=Sμ は波数 k に比例するので,これは (k1−k2)/(k1+k2) です.光では E が変位に,B が張力の横向きの成分にあたり,波数 k=nω/c が屈折率に比例するので,k を n に置き換えると同じ式です.どちらも「波の速さが変わる所では反射が起こる」という同じ現象なのです.

[図:垂直入射の電場と反射・透過の割合]

初期状態はn₂/n₁ = 1.50,ωt = 0.入射波と透過波を上段,左向きに進む反射波を下段に描く.屈折率の比で反射波の符号と振幅,透過波の振幅と波長が変わる.右の棒はRとTで,和は1.時刻の操作と再生・停止ができる.

空気(n1=1.00)からガラス(n2=1.50)へ入ると,r=−0.20,R=0.040,T=0.96 です.水(n=1.33)なら R≈0.020,ダイヤモンド(n=2.42)なら R≈0.17 で,屈折率の大きい宝石ほどよく光ります.

反射で位相が反転する

n2>n1 のとき r は負で,反射波の電場は境界で入射波と逆向き,つまり位相が π ずれます.n1>n2(ガラスから空気へ出る所での反射)では r は正で,位相は変わりません.透過波は t>0 なので,どちらの場合も位相は変わりません.

これも弦と同じ見方ができます.n2 が非常に大きい極限では r→−1 で,境界の電場がほとんど0になります.これは第25章の固定端(変位が0)にあたります.n2 が非常に小さい極限は r→+1 で,自由端にあたります.屈折率の大きい側が「重い弦」,小さい側が「軽い弦」です.反射で位相が反転するかどうかは,第27章の薄膜の干渉で色が決まる所で効いてきます.

金属がよく光を反射するのも,この極限に近いからです.金属の中の自由電子は電場に素早く応じて動き,第20章の導体と同じく,中の電場を打ち消そうとします.そのため境界の電場はほとんど0になり,r≈−1 の固定端に近くなって,入射した光の大部分が跳ね返されます.場は金属の表面からわずかな深さにしか入らないので,吸収される割合も小さくなります.

斜めに入射すると

斜めに入射すると,反射率は電場の向きによって変わります.入射光と境界の法線を含む面を入射面といい,電場が入射面に垂直な光をs偏光,入射面に平行な光をp偏光と呼びます.どんな光も2つの成分に分けられ,それぞれ別々に反射・透過します.入射角を θ1,屈折角を θ2(n1sin⁡θ1=n2sin⁡θ2)とすると,境界の条件を同じように使って次の結果が得られます(導出は省きます).

定理 フレネルの式(結果)

s偏光の振幅反射率と,2つの偏光の反射率は

rs=n1cos⁡θ1−n2cos⁡θ2n1cos⁡θ1+n2cos⁡θ2,Rs=rs2,Rp=(n2cos⁡θ1−n1cos⁡θ2n2cos⁡θ1+n1cos⁡θ2)2

である.θ1=0 では2つとも垂直入射の R に一致する.

[図:入射角によるs偏光とp偏光の反射率]

初期状態はn₂/n₁ = 1.50.実線がRs,破線がRpで,θBの印はp偏光の反射率が0になる角を示す.屈折率の比を変えると曲線と印が動き,比が1未満では臨界角から先が全反射になる.

Rs は入射角とともに増えて,すれすれの入射では1に近づきます.水面を斜めに見ると空がよく映るのはこのためです.一方 Rp は,ある角で0になります.

法則 ブルースター角

入射角が

tan⁡θB=n2n1

を満たすとき,p偏光は反射しない(Rp=0).このとき反射光と屈折光は直交し(θB+θ2=π/2),反射光はs偏光だけになる.

tan⁡θ1=n2/n1 とスネルの法則を使うと cos⁡θ1=sin⁡θ2 となるので,θ1+θ2=π/2 です.この角で Rp=0 になる理由は,前の題材の放射から分かります.反射光はガラスの中の電子が後ろ向きに出す波です.p偏光で揺すられた電子は屈折光に垂直で入射面内の向きに振動しますが,θ1+θ2=π/2 のとき,その向きはちょうど反射光の進む向きです.振動する双極子は振動の向きには波を出さないので,p偏光の反射光は生まれません.偏光サングラスはs偏光を通さない向きに作ってあり,水面やガラスの照り返しを大きく減らします.

ブルースター角θBで入射すると反射光と屈折光は直交する.入射面は紙面であり,p偏光による電子の振動は屈折光に垂直で反射光に平行.赤い両向き矢印で振動を示す.反射光はs偏光だけになる. ブルースター角θBで入射すると反射光と屈折光は直交する.入射面は紙面であり,p偏光による電子の振動は屈折光に垂直で反射光に平行.赤い両向き矢印で振動を示す.反射光はs偏光だけになる.

n1>n2 のとき(水やガラスの中から外へ出る光)は,sin⁡θ1>n2/n1 では屈折角が存在せず,Rs=Rp=1 となって光はすべて反射します.これが全反射です.全反射のときも,境界の向こう側の場が0になるわけではありません.境界から波長程度の距離で指数関数的に弱まる場が染み出しています(エバネッセント波).エネルギーは向こうへ流れ去りませんが,すぐ近くに別のガラスを置くと,光の一部がそこへ移ります.

ここまでの式で使った近似もまとめておきます.物質は非磁性(比透磁率が1)で吸収が無く,屈折率は実数としました.境界は平らで,境界の凹凸や,屈折率が移り変わる層の厚さは波長に比べて十分小さいとしました.ガラスの研磨面ではよく成り立ちますが,すりガラスでは光が乱反射します.また,物質の応答は電場に比例するとしました.

問いに戻る

窓ガラスには表と裏の2つの面があります.空気からガラスへ入る面でも,ガラスから空気へ出る面でも反射率は R=0.040 です.厚い窓ガラスでは,2つの面で反射した光の干渉は目立たず(干渉が見えるのは第27章の薄膜のときです),強さを足し合わせてよいので,反射は約 2R=0.08 です.中で何度も往復する光まで数えると 2R/(1+R)≈0.077 になります(演習で確かめます).つまり窓ガラス1枚で約8 %の光が反射し,約92 %が透過します.

昼間は外の景色の光が部屋の明かりよりずっと強いので,透過してくる92 %の光が,部屋側から反射した8 %の光を圧倒します.夜は外が暗いので,部屋の明かりの8 %が反射した像の方が目立ちます.反射そのものは昼も夜も同じだけ起こっていて,比べる相手が変わるだけなのです.

反射を減らしたいときは,ガラスの表面に薄い膜をつけ,膜の表と裏で反射した波を打ち消し合わせます.これが眼鏡やカメラのレンズの反射防止膜で,数学の節の例題で扱います.

ポイント ここまでのまとめ

  • 非磁性で吸収の無い物質の境界では,電場の接線成分と磁場の接線成分がつながる.物質の中の平面波では B=nE/c,強さは I=nε0cE02/2.

  • 垂直入射では r=(n1−n2)/(n1+n2),t=2n1/(n1+n2),R=r2,T=(n2/n1)t2,R+T=1.弦の接続点の式で波数を屈折率に置き換えたものと同じ.

  • 屈折率の大きい物質で反射すると電場の位相が π ずれる(固定端にあたる).金属は r≈−1 に近く,よく反射する.

  • 斜め入射では,s偏光の反射率が角度とともに増え,p偏光はブルースター角 tan⁡θB=n2/n1 で反射しない.屈折率の大きい側から入ると全反射が起こり,場は波長程度だけ染み出す.

  • 窓ガラスは1つの面で4 %,2つの面で約8 %の光を反射する.夜に部屋が映るのは,比べる外の光が弱くなるからである.

08複素振幅で反射と透過を解く

本体の節では,垂直入射の反射率と透過率を結果だけ示しました.ここでは,境界の2つの条件を複素振幅の連立方程式として解き,強さの比に直す方法を練習します.あわせて,場の比を境界から境界へ受け渡す見方を作り,反射防止膜の条件を導きます.

定理 数学の道具:複素振幅で境界の条件を解く

同じ角振動数 ω の場を Re[A^eiωt] と表す.

  1. すべての t で Re[A^eiωt]=Re[B^eiωt] なら A^=B^ である.したがって境界の条件は,複素振幅どうしの等式としてそのまま書ける.

  2. 時間平均は ⟨Re[A^eiωt]Re[B^eiωt]⟩=12Re[A^B^∗] で,特に2乗の平均は |A^|2/2 である(最初の題材の数学の節).

1つ目は,ωt=0 と ωt=π/2 を代入すると実部どうしと虚部どうしが等しくなることから分かります.

垂直入射の振幅比を出す

屈折率 n1 の側(x<0)と n2 の側(x>0)で,電場(y 方向)と磁場(z 方向)の複素振幅を書きます.波数は kj=njω/c です.

E^1=E^ie−ik1x+E^reik1x,cB^1=n1(E^ie−ik1x−E^reik1x),E^2=E^te−ik2x,cB^2=n2E^te−ik2x

反射波の磁場に負号が付くのは,−x 向きに進む波だからです.x=0 で電場と磁場がつながる条件は

E^i+E^r=E^t,n1(E^i−E^r)=n2E^t

です.1つ目を2つ目に代入すると n1E^i−n1E^r=n2E^i+n2E^r,つまり (n1−n2)E^i=(n1+n2)E^r で

r=E^rE^i=n1−n2n1+n2,t=E^tE^i=1+r=2n1n1+n2

です.強さの比は,強さ I=nε0c|E^|2/2 に屈折率が含まれることに注意して

R=IrIi=|r|2,T=ItIi=n2n1|t|2

とします.反射波は入射波と同じ物質を進むので n が打ち消し合いますが,透過波は違う物質を進むので打ち消し合いません.

場の比を受け渡す

境界の条件は「E^ と cB^ がそれぞれつながる」なので,その比 Y=cB^/E^ も境界でつながります.+x 向きに進む波だけがある所では Y=n です.境界のすぐ右側での比を Y とすると,左側の条件 n1(E^i−E^r)/(E^i+E^r)=Y から

r=n1−Yn1+Y

です.右側が一様な物質なら Y=n2 で前の結果に戻ります.右側に薄い膜などがあって Y が n2 と違う値になっても,その Y さえ分かれば反射率が出ます.

練習1 空気(n1=1.00)から水(n2=1.33)へ垂直に光が入る.r,t,R,T を求め,R+T=1 を確かめよ.

練習2 水から空気へ垂直に光が出る.r,t,R,T を求めよ.t が1を超えるのは,エネルギーの保存と矛盾しないか.

答え 練習1:r=−0.33/2.33≈−0.142,t=2/2.33≈0.858,R≈0.0201,T=1.33(2/2.33)2≈0.980.丸める前の値で R+T=1.練習2:r=0.33/2.33≈0.142,t=2.66/2.33≈1.14,R≈0.0201,T=(2.66/2.33)2/1.33≈0.980.屈折率の小さい物質では同じ強さを運ぶのに大きな電場の振幅が要るので,t>1 でも透過するエネルギーは入射より小さく,矛盾しない.反射率はどちら向きでも同じである.

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

空気(屈折率1.00)から,厚いガラスの水槽の壁(屈折率1.50)を垂直に通って,水(屈折率1.33)へ光が入る.ガラスの中での多重反射は無視し,2つの面の反射は強さで扱ってよい.

  1. 空気とガラスの面,ガラスと水の面の反射率をそれぞれ求めよ.反射で電場の位相が反転するのはどちらの面か.

  2. 水へ入る光の割合を求め,ガラスが無く空気から直接水へ入る場合と比べよ.

空気,厚いガラスの壁,水の順に屈折率1.00,1.50,1.33の層を描く.光は境界に垂直に右へ進み,各面での反射光は左へ進む.入射・透過・反射の矢印は見分けられるように高さをずらしてある. 空気,厚いガラスの壁,水の順に屈折率1.00,1.50,1.33の層を描く.光は境界に垂直に右へ進み,各面での反射光は左へ進む.入射・透過・反射の矢印は見分けられるように高さをずらしてある.
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考え方 各面で R=[(n1−n2)/(n1+n2)]2 を使い,位相は r の符号で判断する.面を通るたびに強さに 1−R が掛かる.

  1. 空気とガラスの面は r=(1.00−1.50)/2.50=−0.20,R1=0.040.ガラスと水の面は r=(1.50−1.33)/2.83≈0.060,R2≈0.0036.位相が反転するのは r<0 の空気とガラスの面で,屈折率の小さい側から大きい側へ向かう光の反射である.ガラスから水へは屈折率が下がるので反転しない.

  2. 水へ入る割合は (1−R1)(1−R2)=0.960×0.9964≈0.957.空気から直接水へ入る場合は練習1から0.980なので,ガラスの壁があると反射が約2倍になる.ガラスと水の面の反射が小さいのは,屈折率の差が小さいからである.

確かめ:屈折率の差が0なら R=0 で,境界は見えなくなる.水に沈めたガラスが見えにくいのはこのためである.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

空気から屈折率 n=1.50 の厚いガラスへ,真空中の波長 λ の光が垂直に入射する.ガラスの裏面からの反射は無視する.ガラスの表面を x=0,空気側を x<0 とし,入射波の電場の複素振幅を E^i(実数で正)とする.

  1. 空気側の電場の2乗の時間平均 ⟨E2⟩ を x の関数として求めよ.

  2. ⟨E2⟩ が最大・最小になる位置と,その比を求めよ.

  3. 空気側の時間平均のエネルギーの流れ(ポインティングベクトルの x 成分)を求め,x によらないことを示せ.

[図:境界の左側に現れる電場の縞]

初期状態はガラスの屈折率n = 1.50.空気側の数波長にわたって電場の2乗の時間平均〈E²〉を描く.入射波の振幅と縦軸の尺度を固定し,nを1から4まで変えて縞のコントラストを比べられる.

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考え方 入射波と反射波の複素振幅を足してから2乗の平均をとる.エネルギーの流れは電場と磁場の積の平均で,道具の2つ目を使う.

  1. r=(1−1.50)/(1+1.50)=−0.20,空気中の波数は k=2π/λ.空気側の電場の複素振幅は E^=E^i(e−ikx+reikx) なので

⟨E2⟩=E^i22|e−ikx+reikx|2=E^i22(1+r2+2rcos⁡2kx)=E^i22(1.04−0.40cos⁡2kx)

である.

  1. 最小は cos⁡2kx=1,つまり x=0,−λ/2,−λ,… で 0.64×E^i2/2.最大は cos⁡2kx=−1,つまり x=−λ/4,−3λ/4,… で 1.44×E^i2/2.比は 1.44/0.64=2.25 である.反射で位相が反転するので,境界の位置で入射波と反射波が弱め合い,極小になる.縞の間隔は λ/2 である.

  2. 空気側の磁場は cB^=E^i(e−ikx−reikx).道具の2つ目から

⟨Sx⟩=1μ0c⋅12Re[E^(cB^)∗]=E^i22μ0cRe[1−r2−re−2ikx+re2ikx]

で,−re−2ikx+re2ikx=2irsin⁡2kx は純虚数なので実部に寄与しない.1/(μ0c)=ε0c を使うと ⟨Sx⟩=(1−r2)ε0cE^i2/2=(1−R)Ii=0.96Ii で,x によらない.これはガラスへ透過する強さ TIi に等しい.

確かめ:電場の2乗は場所によって変わるが,正味のエネルギーの流れは一定である.r=0 なら縞は消え,r=−1(完全な反射)なら流れは0で,弦の固定端の定常波と同じになる.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

空気(屈折率 n1=1.00)からガラス(n3=1.50)へ垂直に入る光の反射を減らすため,ガラスの表面に屈折率 n,厚さ d の透明な膜をつける.ガラスの裏面からの反射は無視する.光の真空中の波長を λ=550nm とする.

  1. 膜の表と裏での反射がどちらも小さいとして,多重反射を無視し,膜の表面を往復して透過する際の振幅透過率の積を1と近似する.2つの反射波が打ち消し合う n と,最も薄い d を求めよ.

  2. 多重反射まで含めて考える.膜の中の波数を k=nω/c とし,kd=π/2 のとき,膜の表面(x=0)での比 Y=cB^/E^ が n2/n3 になることを示せ.反射率を求め,(1) の条件で反射が厳密に0になることを示せ.

  3. 実際によく使われるフッ化マグネシウム(n=1.38)で kd=π/2 にしたときの反射率を求め,膜が無いときと比べよ.

空気n₁ = 1.00,屈折率nで厚さdの膜,ガラスn₃ = 1.50を左から並べる.x = 0とx = dを境界に記す.右へ進む入射光と,表で反射する波,膜の裏で反射して左へ戻る波を高さの異なる矢印で示す. 空気n₁ = 1.00,屈折率nで厚さdの膜,ガラスn₃ = 1.50を左から並べる.x = 0とx = dを境界に記す.右へ進む入射光と,表で反射する波,膜の裏で反射して左へ戻る波を高さの異なる矢印で示す.
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考え方 (1) は2つの反射波の振幅と位相をそろえる.(2) は膜の中の場を右向きと左向きの波の和で書き,裏の面から表の面へ比 Y を受け渡す.

  1. 表の面の振幅反射率は (1−n)/(1+n),裏の面は (n−n3)/(n+n3).1<n<n3 なら2つとも負で,反射による反転は両方に起こるので,反転による位相の差は生じない.裏で反射した波は膜を往復する分だけ位相が 2kd 遅れるので,打ち消し合う条件は 2kd=π,つまり 2nd=λ/2 である.振幅が等しい条件は

1−n1+n=n−n3n+n3

で,分母を払うと n3−n2=n2−n3,すなわち n=n3≈1.22.最も薄い膜は d=λ/(4n)=550/(4×1.225)≈112nm である.

  1. 膜の中の場を E^=ae−ikx+beikx,cB^=n(ae−ikx−beikx) とおく.kd=π/2 では e−ikd=−i,eikd=i なので,x=d で E^=−i(a−b),cB^=−in(a+b).ガラスの中は透過波だけなので,x=d で比は n3 につながり

n(a+b)a−b=n3

で,(a−b)/(a+b)=n/n3 である.x=0 では E^=a+b,cB^=n(a−b) なので

Y=n(a−b)a+b=n2n3

となる.場の比を受け渡す式から

R=(n1−n2/n3n1+n2/n3)2=(n1n3−n2n1n3+n2)2

で,n2=n1n3 なら厳密に R=0 である.n1=1 では (1) の n=n3 と一致する.多重反射を含めても条件は変わらない.

  1. n2≈1.904 より R=[(1.50−1.904)/(1.50+1.904)]2≈(0.119)2≈0.014.膜が無いときの R=0.040 の約3分の1になる.膜の厚さは d=550/(4×1.38)≈100nm である.

確かめ:n=1(膜が無いのと同じ)なら R=[(n3−1)/(n3+1)]2=0.040 に戻る.kd=π/2 は1つの波長でしか成り立たないので,ほかの色では反射が少し残る.レンズの反射が紫や緑に色づいて見えるのはこのためである.ここでは垂直入射で,膜の厚さが一様で吸収が無いとした.

ポイント ここまでのまとめ

  • 同じ ω で振動する場の境界の条件は,複素振幅どうしの等式として書ける.時間平均は ⟨Re[A^eiωt]Re[B^eiωt]⟩=Re[A^B^∗]/2.

  • 垂直入射では E^i+E^r=E^t と n1(E^i−E^r)=n2E^t を解いて r,t を出し,強さの比は R=|r|2,T=(n2/n1)|t|2 に直す.

  • 比 Y=cB^/E^ は境界でつながり,r=(n1−Y)/(n1+Y).膜が重なっていても,奥から比を受け渡せば反射率が出る.

  • 反射がある側では電場の2乗が λ/2 間隔の縞を作るが,正味のエネルギーの流れは一定で (1−R)Ii に等しい.

  • 厚さが λ/(4n) の膜は,n2=n1n3 のとき反射を0にする(反射防止膜).

09電磁波の反射と透過の演習

場の振幅の比とエネルギーの比を区別してください.以下の媒質は非磁性・透明で吸収がなく,垂直入射では複素電場振幅 E^ に対する強さが I=nε0c|E^|2/2 となります.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

屈折率 n1=1.25 の媒質から n2=1.75 の媒質へ平面波を垂直に入射させます.境界を x=0,入射方向を正のx方向,電場方向をy方向とします.共通の時間因子 eiωt の実部をとり,入射・反射・透過の複素電場振幅を E^i,E^r,E^t とします.

  1. 接線成分の連続条件

E^i+E^r=E^t,n1(E^i−E^r)=n2E^t

から振幅比を求め,反射による位相の変化を答えよ.

  1. 反射率 R,透過率 T を求めよ.

x=0の境界の左に屈折率n_1,右にn_2の媒質を示す.入射と透過は正のx方向,反射は負のx方向に進む.進行方向を見やすくするため上下に分けて表示する. x=0の境界の左に屈折率n_1,右にn_2の媒質を示す.入射と透過は正のx方向,反射は負のx方向に進む.進行方向を見やすくするため上下に分けて表示する.
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考え方 反射波は進行方向が逆なので磁場の符号が反転する.強さを求めるときは屈折率の係数も含める.

  1. 第1式を第2式へ入れると (n1−n2)E^i=(n1+n2)E^r.従って E^r/E^i=−1/6,E^t/E^i=1−1/6=5/6.反射波の電場は境界で入射波に対して位相が π ずれる.

  2. R=|E^r/E^i|2=1/36,T=(n2/n1)|E^t/E^i|2=(7/5)(5/6)2=35/36.R+T=1 でエネルギー保存が成り立つ.透過振幅の2乗だけを透過率にすると,この保存則を満たさない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

空気中の厚い平行ガラス板へ,エネルギー U0 の短い光パルスを垂直に入射させます.空気の屈折率は1,ガラスは n=1.50 です.各面の反射率は,どちら側から入射しても R=[(n−1)/(n+1)]2 です.板の厚さ d とパルスの時間幅 τ は cτ/(2nd) が十分小さく,各出射パルスは重なりません.

  1. 最初に裏面から出るパルスと,内部をさらに1往復して出るパルスのエネルギーを求めよ.

  2. 裏側に最終的に届く総エネルギーと,前側へ戻る総エネルギーを求めよ.

エネルギーU_0,時間幅τの短いパルスが,厚さd,屈折率nのガラス板に垂直に入る.板内の往復経路は重なりを避けて上下にずらし,矢印で進行方向を示す.前面で直接反射する光と内部から前側へ戻る光も,上下にずらした矢印で示す. エネルギーU_0,時間幅τの短いパルスが,厚さd,屈折率nのガラス板に垂直に入る.板内の往復経路は重なりを避けて上下にずらし,矢印で進行方向を示す.前面で直接反射する光と内部から前側へ戻る光も,上下にずらした矢印で示す.
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考え方 面を通過するたびにエネルギーへ 1−R,反射するたびに R を掛ける.

  1. R=0.0400.最初の出射は U1=(1−R)2U0≈0.922U0.追加の1往復で2回反射するため,次は U2=R2(1−R)2U0≈1.47×10−3U0.

  2. 等比級数の和は

Uback=(1−R)2U0∑j=0∞R2j=1−R1+RU0=1213U0

である.前側は直接反射した RU0 と,内部から戻る (1−R)2RU0/(1−R2) の和だから Ufront=2RU0/(1+R)=U0/13.両者の和は U0.パルスの分離には cτ/(2nd) が小さいという条件が必要である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

空気から未知の透明媒質へ垂直に光を入れ,最初の境界の反射光だけを測りました.媒質の屈折率は n>1 で,検出値 Pdet は Pdet=RPin+b に従うとします.b は一定の背景電力です.入射電力の誤差は無視でき,検出値の誤差はそれぞれ 0.005mW 以下です.

Pin(mW)

Pdet(mW)

4.00

0.270

8.00

0.520

12.00

0.770

  1. 両端の点から R,b,n を求め,中点を確かめよ.R=[(n−1)/(n+1)]2 を使ってよい.

  2. R の最大誤差と,微分による n の誤差の1次評価を求めよ.

電力P_inを変えられる光源から未知媒質へ垂直に光を入れる.最初の境界から戻る反射光だけを検出器が受け,背景bも検出器へ入る.入射と反射の経路は上下に分けて表示する. 電力P_inを変えられる光源から未知媒質へ垂直に光を入れる.最初の境界から戻る反射光だけを検出器が受け,背景bも検出器へ入る.入射と反射の経路は上下に分けて表示する.
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考え方 背景を含む検出値をそのまま割らず,直線の傾きから反射率を決める.

  1. R=(0.770−0.270)/(12.00−4.00)=0.0625,b=0.270−0.0625×4.00=0.020mW.s=R=0.25 とおくと s=(n−1)/(n+1) より n=(1+s)/(1−s)=5/3≈1.67.中点の予測は 0.0625×8.00+0.020=0.520mW で一致する.

  2. 差の最大誤差は 0.010mW だから ΔR=0.010/8.00=0.00125.dnds=2/(1−s)2,dsdR=1/(2s) より Δn≈ΔR/[s(1−s)2]=0.0089,約0.009である.ΔR/R=0.020 が小さく,1次近似はよい.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

屈折率 n1=1.20 の媒質から n2=1.60 の媒質へ光を入れます.入射面に平行な電場をp偏光,垂直な電場をs偏光とします.ブルースター角では

tan⁡θB=n2n1,Rp=0,Rs=(n12−n22n12+n22)2

となります.入射光は両偏光に強さを等分しています.

  1. θB と反射光全体の強さの割合,反射光の電場の向きを求めよ.

  2. 媒質2から媒質1へ入れる場合のブルースター角 θB′ を求め,θB+θB′ を示せ.

境界と法線,入射光と反射光を示す.入射面は紙面である.入射角の記号θ_Bを記し,角度は模式的に示す.p,sの電場方向を書き込む余白を添える. 境界と法線,入射光と反射光を示す.入射面は紙面である.入射角の記号θ_Bを記し,角度は模式的に示す.p,sの電場方向を書き込む余白を添える.
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考え方 p偏光が反射されなくても,s偏光まで反射されないわけではない.

  1. θB=arctan⁡(4/3)≈53.1∘.Rs=(−7/25)2=49/625=0.0784 なので,全入射強さに対する反射の割合は (Rp+Rs)/2=0.0392,約3.9 %である.反射光はs偏光だけとなり,電場は入射面に垂直である.

  2. tan⁡θB′=3/4 より θB′≈36.9∘.両角が0と π/2 の間にあり,tan⁡(π/2−θB)=1/tan⁡θB=3/4 だから θB+θB′=π/2.正の屈折率を交換すると2つの角が補い合う.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

空気のすき間を隔てて,同じ厚いガラス板を N 枚並べ,光を垂直に入れます.吸収はなく,全ての多重反射を集めます.異なる経路は強さを足して扱えるとします.1枚の板全体の透過率と反射率を t=(1−R)/(1+R),ρ=1−t とし,R は各面の反射率です.N 枚全体の透過率は TN,反射率は 1−TN です.

  1. N 枚の後に1枚加えるとき,間の往復を足して TN+1 を求めよ.1/TN−1 の漸化式から TN を導け.

  2. R=0.0400 で,総透過率を0.80以上に保てる最大枚数を求めよ.単に tN とする計算との違いを説明せよ.

N枚の板をひとまとめにした板群と,追加する1枚を示す.板群の透過率T_Nと追加する板の透過率t,反射率ρを記す.間の往復経路を上下にずらし,進行方向を矢印で示す. N枚の板をひとまとめにした板群と,追加する1枚を示す.板群の透過率T_Nと追加する板の透過率t,反射率ρを記す.間の往復経路を上下にずらし,進行方向を矢印で示す.
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考え方 最後の板で反射された光は,前の板群で再反射されて再び透過を試みる.

  1. 最初の透過は TNt,1往復ごとの係数は (1−TN)ρ だから

TN+1=TNt1−(1−TN)(1−t),1TN+1−1=(1TN−1)+(1t−1)

となる.T1=t より 1/TN−1=N(1/t−1)=2NR/(1−R),従って TN=(1−R)/[1+(2N−1)R].

  1. TN=12/(12+N)≥0.80 より N≤3,最大3枚である.tN は板群の間を戻る経路を除外し,3枚では (12/13)3≈0.787 と過小評価する.R→0 で TN→1,大きい N では TN は 1/N に比例する.経路間の干渉を無視できるという模型の範囲での結論である.

ポイント 教える人へ

  • 境界の磁場条件で,反射波の符号が変わる理由を問います.

  • 振幅比から透過率へ直す際に,屈折率の係数を含めさせます.

  • 背景のある測定では,原点からの比と直線の傾きを区別させます.

  • 板の多重反射は,どの経路まで数えたかを図で説明させます.

10第26章の章末問題

場の振幅,エネルギー,運動量,境界条件を結びつけて考えてください.特に断らない限り,強さ I は時間平均した単位面積あたりの通過電力で,c=3.0×108ms−1,ε0=8.9×10−12Fm−1,ε0μ0c2=1 とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

真空中を正のx方向へ進む電磁波のパルスを考えます.固定した観測面での電場は Ey=E0g(t)cos⁡ωt です.包絡線 g は時刻0から τ/2 まで0から1へ直線的に増し,τ/2 から τ まで1から0へ直線的に減り,それ以外では0です.ωτ≫1 とし,包絡線の変化に比べて速い振動について平均をとります.パルスの断面積は S,断面内の場は一様です.

  1. 包絡線が最大のときの磁場振幅と平均全エネルギー密度を求めよ.

  2. パルス全体のエネルギーと運動量を求めよ.同じ S で E0 を2倍,τ を半分にすると,それぞれ何倍になりますか.

正のx方向へ進むパルスと,断面積Sの固定観測面を示す.別のグラフに,与えられた包絡線gの時刻0,τ/2,τにおける値0,1,0を示す. 正のx方向へ進むパルスと,断面積Sの固定観測面を示す.別のグラフに,与えられた包絡線gの時刻0,τ/2,τにおける値0,1,0を示す.
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考え方

速い振動の2乗を平均した後で,包絡線の2乗を時間について積分する.

  1. 正のx方向へ進む波では Bz=Ey/c なので磁場振幅は B0=E0/c.電場と磁場のエネルギー密度はそれぞれ ε0Ey2/2 であり,最大包絡線の位置では ⟨u⟩=ε0E02/2 である.

  2. I(t)=c⟨u⟩=ε0cE02g(t)2/2 である.両半分の積分は等しいので

∫0τg(t)2dt=2∫0τ/2(2tτ)2dt=τ3,U=ε0cE02Sτ6,p=Uc=ε0E02Sτ6.

変更後は振幅の2乗が4倍,時間幅が半分だから,エネルギーも運動量も2倍になる.ISτ はエネルギーの次元を持つ.平均の近似には 1/(ωτ) が小さいことが必要で,変更後もその条件を満たす範囲で比較する.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

面積 S=3.0×10−3m2 の完全反射鏡に,真空中の平面波が法線となす角 θ=60∘ で当たります.鏡全体が一様に照らされ,鏡は静止しています.波の進行方向に垂直な面で測った強さは I=2.0×103Wm−2 です.鏡へ向かう法線方向を正とします.

  1. 鏡に届く電力と,鏡が受ける力の法線成分・接線成分を求めよ.光のエネルギー U に対応する運動量の大きさは U/c です.

  2. この波の電場振幅を求めよ.入射角を0に変えたとき,鏡に届く電力と法線方向の力は何倍になりますか.

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考え方

届く電力には投影面積を使い,運動量の変化には法線方向の成分を使う.

  1. 鏡の投影面積は Scos⁡θ なので P=IScos⁡θ=3.0W.反射により法線方向の運動量だけが反転し,単位エネルギーあたりの変化は 2cos⁡θ/c.従って

Fn=2IScos2⁡θc=1.0×10−8N,Ftan=0.
  1. I=ε0cE02/2 から E0=2I/(ε0c)=1.2×103Vm−1.垂直入射では電力は 1/cos⁡60∘=2 倍,力は 1/cos2⁡60∘=4 倍となる.すれすれの入射の極限では,投影面積も法線方向の運動量変化も0に近づくので,力は0になる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

真空 x<0 から,屈折率 n>1 の非磁性・透明な半無限媒質 x>0 へ平面波を垂直に入射させます.電場はy方向です.入射波と反射波が重なる真空側を弱い電場探針で走査し,次の値を得ました.Eref=1.0×102Vm−1 です.端点と表に示す交互の極大・極小の間に,他の極値はありません.位置の誤差は無視でき,各測定値の誤差の絶対値は0.04以下です.

x(cm)

⟨Ey2⟩/Eref2

0.0

1.00

−3.0

9.00

−6.0

1.00

−9.0

9.00

  1. 境界での電場の振幅反射係数を −ρ とし,ρ=(n−1)/(n+1) を使って,波長,ρ,n を求めよ.複素振幅を足して測定値の位置依存性を導け.

  2. 入射電場振幅 E0 と,媒質へ入る正味の強さを求めよ.

  3. 1つの極大値と1つの極小値から n を推定するとき,最大誤差を1次近似で評価せよ.

x=0に真空と未知媒質の境界を示す.真空側の測定位置はx=−9.0,−6.0,−3.0,0.0 cmで,光は正のx方向へ入射する.電場探針とその走査方向を示す. x=0に真空と未知媒質の境界を示す.真空側の測定位置はx=−9.0,−6.0,−3.0,0.0 cmで,光は正のx方向へ入射する.電場探針とその走査方向を示す.
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考え方

極値の比は反射振幅を,極値の絶対値は入射振幅を決める.局所的な電場の2乗を,正味のエネルギー流と区別する.

  1. 共通の eiωt の実部をとると,合成電場の複素振幅は E^y=E0(e−ikx−ρeikx).従って

⟨Ey2⟩=E022(1+ρ2−2ρcos⁡2kx).

隣り合う極小と極大の間隔は λ/4 なので λ=12cm.最大・最小を M,m と書くと M/m=(1+ρ)/(1−ρ)=n.よって n=3.00,ρ=(n−1)/(n+1)=0.500 である.

  1. 極小から E02(1−ρ)2/2=Eref2 なので E0=22Eref≈2.8×102Vm−1.入射強さは Ii=ε0cE02/2=4ε0cEref2 である.反射率は ρ2=1/4 だから,正味は Inet=(1−ρ2)Ii≈8.0×101Wm−2.

  2. n=M/m の微分から dn/n=(dM/M−dm/m)/2.両誤差が逆向きになる場合をとると

Δn≈32(0.049.00+0.041.00)=0.067.

従って最大誤差の1次評価は約0.07である.Δm/m=0.04,ΔM/M=0.0044 が小さい範囲の評価である.反射を0にすると合成場の位置依存性が消え,入射強さと正味の強さが一致する.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

自由電子が,一様な平面電磁波の電場 Ey=E0cos⁡ωt によって振動します.電子の質量は m,電荷は −e です.固定した正電荷の背景が系全体を中性に保ち,電子の束縛と電子間の力は無視します.非相対論的な小振幅の強制振動だけを扱い,磁場の力と放射による運動の変化を無視します.平均放射電力は ⟨P⟩=e2⟨a2⟩/(6πε0c3) です.

  1. 運動を複素数で解き,散乱断面積 σsc=⟨P⟩/I を求めよ.

  2. 電子数密度 Ne,厚さ d の希薄な層を波が通ります.異なる電子の散乱は位相がそろわず,散乱された光は細い入射ビームから失われ,再びビームに戻らないとします.境界での反射を無視して,透過強さの式を導け.Neσscd=0.020 の場合の透過割合も求めよ.

厚さd,電子数密度N_eの希薄な層を示す.入射電場E_yはy方向で,直進ビームの外へ出る散乱光を矢印で示す. 厚さd,電子数密度N_eの希薄な層を示す.入射電場E_yはy方向で,直進ビームの外へ出る散乱光を矢印で示す.
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考え方

1個の電子の放射電力を入射強さで割ると,有効な面積が得られる.層の薄片ごとにエネルギーの流出を数える.

  1. y を Yeiωt の実部とすると −mω2Y=−eE0,従って Y=eE0/(mω2).加速度の複素振幅は −eE0/m だから

⟨P⟩=e4E0212πε0m2c3,I=ε0cE022,σsc=e46πε02m2c4.

束縛のないこの模型では,断面積は振動数によらない.

  1. 面積 S,厚さ dx の薄片内の電子数は NeSdx.損失電力は NeSσscIdx だから SdI=−NeSσscIdx.積分すると I(d)=I(0)e−Neσscd で,指定の場合は e−0.020=0.980,約98.0 %が残る.断面積の次元は面積,指数は無次元である.運動の近似には ω|Y|/c=eE0/(mωc) と ⟨P⟩/[ωmω2|Y|2/2] が十分小さいことが必要である.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

z方向に振動する小さな双極子の遠方放射の強さが I(r,θ)=I⟂sin2⁡θ です.r は固定した観測球の半径,θ はz軸との角で,I⟂ は同じ球上の赤道で測った強さです.観測球の 0≤θ≤Θ を覆う検出面があり,入射放射の 1/5 を反射して,残りを吸収します.検出面は球面に沿い,放射は各点へ垂直に入ります.

  1. 双極子の全放射電力と,検出面へ届く電力を求めよ.球面の帯の面積は 2πr2sin⁡θdθ です.

  2. Θ=60∘ の検出面が吸収する電力を,全放射電力の割合で表せ.同じ赤道の強さを持つ等方的な光源と,全放射電力を比較せよ.

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考え方

各方向の強さにその方向の面積を掛けて足す.赤道の測定値を球面全体の強さに置き換えない.

  1. 全放射電力は

Pall=2πr2I⟂∫0πsin3⁡θdθ=8π3r2I⟂.

u=cos⁡θ で積分すると,北側へ届く電力は

Pcap=2πr2I⟂(23−cos⁡Θ+cos3⁡Θ3),PcapPall=2−3cos⁡Θ+cos3⁡Θ4.
  1. cos⁡Θ=1/2 では届く割合は 5/32 である.吸収する割合は (4/5)(5/32)=1/8,吸収電力は πr2I⟂/3.等方光源なら全電力は 4πr2I⟂ なので,双極子はその 2/3 である.Θ→0 で捕集電力は0,Θ=π で全電力となる.源の大きさを a とすると,双極子・遠方場の近似には a/λ,a/r,λ/r が十分小さいことが必要である.

演習 6

オリジナル ★★☆☆☆

ねじりばねで水平に保たれた軽い腕の先に,小さな板を固定します.回転軸から照射点までの距離は d=4.0×10−2m,ねじりばねの定数は κ=2.0×10−8Nmrad−1 です.腕へ直角に進む光を板へほぼ垂直に当てます.光の電力は P=0.60W,照射面積は S=2.0×10−3m2 で,光は全て板に当たります.静止したときの回転角は ϕ=4.4×10−3rad でした.別の熱測定で,光による吸収電力は H=0.18W と分かりました.

板のエネルギー吸収率,反射率,透過率を α,R,T とし,α+R+T=1 とします.反射は正反対,透過は元の方向で,いずれも振動数を変えません.熱放射による合力は無視します.

  1. α,R,T を決めよ.

  2. この光を同じ強さの正弦平面波とみなしたときの電場振幅と,板の受ける圧力を求めよ.力の測定だけで R を決められるかも述べよ.

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考え方

熱測定で吸収率を決め,トルクの測定で運動量を渡す割合を決める.透過光は板へ正味の運動量を渡さない.

  1. α=H/P=0.30.小角近似で光のトルクは Fd だから F=κϕ/d=2.2×10−9N.光の運動量収支から F=(α+2R)P/c なので

α+2R=cκϕdP=1.10,R=1.10−0.302=0.40,T=1−0.30−0.40=0.30.
  1. I=P/S=3.0×102Wm−2 から E0=2I/(ε0c)=4.7×102Vm−1.圧力は F/S=1.1×10−6Pa である.力だけからは α+2R が分かるだけで,吸収と反射を分離できない.求めた割合はいずれも0から1の間にあり,和が1である.角度による入射面積と腕の長さの補正は ϕ2 程度で,ϕ2=1.9×10−5 が小さいので無視できる.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

x軸上の x=0,L に,等方的に電力 P,4P を放射する固定光源があります.その間で,質量 M,面積 S の板がx軸に沿って動きます.板の両面はx軸に垂直で,反射率はともに R,残りは吸収します.両光源の位相は互いに無関係で,平均の力を足せます.再放射は両面で対称,外からの力と回転は無視します.板は各光源との距離に比べて小さく,光の強さは板上で一様です.板の速さは光速より十分小さいとします.

  1. 平衡位置とその安定性を求めよ.

  2. 平衡からの変位 ξ が小さい場合の振動の角振動数を求めよ.反射率を0から1へ変えると,角振動数は何倍になりますか.

x=0とx=Lに,電力Pと4Pの固定光源を置く.質量M,面積Sの可動板をその間の一般の座標xに示す. x=0とx=Lに,電力Pと4Pの固定光源を置く.質量M,面積Sの可動板をその間の一般の座標xに示す.
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考え方

左右の光圧の差が位置によって変わる.平衡位置では強さが一致し,その近くの力の傾きが復元力を決める.

  1. AF=(1+R)PS/(4πc) とすると,右向きの力は

F(x)=AF(1x2−4(L−x)2).

0<x<L で 1/x=2/(L−x) より xe=L/3.また

dFdx=AF(−2x3−8(L−x)3)<0

なので,右へずれると左向き,左へずれると右向きの力を受け,平衡は安定である.

  1. x=xe+ξ として1次まで展開すると F≈F′(xe)ξ=−81AFξ/L3.従って Md2ξdt2=−81AFξ/L3 より

Ω=81(1+R)PS4πcML3.

反射率を0から1へ変えると 2 倍になる.平衡位置は共通の係数 1+R に依存しないが,復元力は変わる.AF/(ML3) の次元は時間の逆数の2乗である.線形化には |ξ|/L が十分小さいことが必要である.固定光源の放射は定常なので,到達の遅れだけでは強さは変わらない.ここでは板の速さと c の比に比例する光圧の補正を無視している.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

真空中をx方向へ進む平面波の電場が Ey=E0cos⁡ωt,磁場が Bz=Ey/c となる位置に,小さな1巻きの受信ループを置きます.ループの面はxy平面で,面積は A,代表的な長さは ℓ です.ωℓ/c が十分小さく,ループ内では場を一様とみなせます.ループには自己インダクタンス L,内部抵抗 r>0,コンデンサー C,負荷抵抗 R>0 が直列につながっています.内部抵抗には負荷以外の損失を全て含め,入射波は受信によって変化しない模型とします.

  1. ファラデーの法則から起電力の複素振幅を求め,負荷の平均消費電力を導け.

  2. ω,L,C,r を固定したとき,負荷の電力を最大にする R を求めよ.共振時に,最大負荷電力を入射強さ I で割った有効な捕集面積を求めよ.

  3. この入射波が,遠方の小さな振動双極子から届く放射だとします.全放射電力は Ps,源からの距離は ds,双極子の軸と源から受信器へ向かう方向は直交します.遠方の強さは I(ds,θ)=3Pssin2⁡θ/(8πds2) で,θ は双極子の軸との角です.共振時の最大負荷電力を Ps の割合で表せ.

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考え方

入射波の磁束が交流の起電力を作る.電流は複素インピーダンスで解き,負荷の抵抗だけに生じる熱を取り出す.

  1. 正のz方向を磁束の正とすると Φ^=AE0/c.E=−dΦdt より E^=−iωAE0/c である.X=ωL−1/(ωC) とおけば

Z=r+R+iωL+1iωC=r+R+iX,I^=−iωAE0/cr+R+iX.

実際の電流は I^eiωt の実部であり,⟨I(t)2⟩=|I^|2/2.よって負荷電力は

PR=Rω2A2E022c2[(r+R)2+X2].
  1. R に依存する因子を微分すると

ddR(R(r+R)2+X2)=r2+X2−R2[(r+R)2+X2]2.

小さい R で正,大きい R で負だから,最大は R=r2+X2.共振 X=0 では R=r,PR,max=ω2A2E02/(8rc2) である.入射強さ I=ε0cE02/2 で割ると

Seff=PR,maxI=ω2A24rε0c3.

これは面積の次元を持ち,負荷の電力を入射強さと比較する量である.R→0 と R→∞ の両極限で負荷電力は0になる.ループの一様場・集中定数近似は ωℓ/c が小さい範囲でのみ使える.

  1. θ=π/2 では I=3Ps/(8πds2).従って PR,max=ISeff を使うと

PR,maxPs=3Seff8πds2=3ω2A232πrε0c3ds2.

局所的な場を平面波とみなすには ℓ/ds と λ/ds も小さいことが必要である.捕集する割合が十分小さい範囲で,源の放射を受信によって変化しないとする模型と整合する.

演習 9

オリジナル ★★★☆☆

同一直線上の2粒子を,ばね定数 K,自然長 ℓ0 の軽いばねで結びます.質量と電荷はそれぞれ m,q と 3m,2q です.粒子間の静電力の効果は無視でき,ばねの復元力だけで相対運動が決まるものとします.重心は静止し,ばねの伸びは初め A,相対速度は0です.0<A<ℓ0 とし,粒子の順序は変わりません.源の大きさと波長の比,速さと光速の比は十分小さく,放射による運動の変化を無視します.

この範囲で,系全体の平均双極放射電力は ⟨P⟩=⟨|d2pdt2|2⟩/(6πε0c3) です.

  1. 相対振動の角振動数と,時間変化する双極子モーメントを求め,平均放射電力を導け.

  2. 各粒子のラーモアの電力を別々に計算して足すと,(1)の何倍になりますか.その計算が正しくない理由を述べよ.

  3. 第2粒子の電荷だけを 3q に変えると,双極放射はどうなりますか.粒子の運動自体が止まるかも答えよ.

同一直線上の質量・電荷m,qと3m,2qの粒子をばね定数Kのばねで結ぶ.初めの粒子間距離を自然長ℓ_0と伸びAに分けて示し,重心や各変位を書き込める基準線を添える. 同一直線上の質量・電荷m,qと3m,2qの粒子をばね定数Kのばねで結ぶ.初めの粒子間距離を自然長ℓ_0と伸びAに分けて示し,重心や各変位を書き込める基準線を添える.
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考え方

近接した2粒子の放射は位相がそろうので,放射電場に比例する双極子の加速度を足してから2乗する.

  1. 位置を x1,x2,伸びを ξ=x2−x1−ℓ0 とすると md2x1dt2=Kξ,3md2x2dt2=−Kξ.従って

d2ξdt2=−4K3mξ,Ω=4K3m,ξ=Acos⁡Ωt.

重心一定より各変位は −3ξ/4,ξ/4.双極子モーメントの変化部分は px=q(−3ξ/4)+2q(ξ/4)=−qξ/4 である.定数部分は放射に寄与しない.よって d2pxdt2=qΩ2Acos⁡Ωt/4,平均電力は

⟨P⟩=q2Ω4A2192πε0c3.
  1. 加速度振幅は 3Ω2A/4,Ω2A/4 なので,個別の電力の和は

Ω4A212πε0c3[q2(34)2+4q2(14)2]=13q2Ω4A2192πε0c3.

これは正しい値の13倍である.放射電場には互いに逆向きの加速度による干渉があり,個別の強さを足すと交差項を失う.

  1. q2=3q では px=q(−3ξ/4)+3q(ξ/4)=0 となり,変化部分が消えるので双極放射は0である.ばねによる振動は続く.これは双極子近似の結論で,高次の放射まで0とは断定できない.近似には Ω(ℓ0+A)/c,ΩA/c が小さいことが必要であり,(1)での1周期の放射損失と振動エネルギーの比 ⟨P⟩(2π/Ω)/(KA2/2) も十分小さくなければならない.

11第26章の発展問題

放射による減衰,光圧で変わる軌道,物質の応答を,エネルギーと運動量の収支から調べます.各問題の最後では,近似の範囲や測定の限界,最適な条件を確かめてください.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

質量 m,電荷 −e の粒子を,固定した中心へ向かう復元力 −mω02x で束縛します.初め x=A0,速度0で放し,他の抵抗はありません.非相対論的な運動の放射電力は P=e2a2/(6πε0c3) です.放射は弱く,振幅 A(t) は1周期の間にほとんど変わらないとします.

  1. 振動エネルギー U と平均放射電力を A で表し,エネルギーと振幅の時間変化を導け.τe=e2/(6πε0mc3) とおけ.

  2. 周期平均の損失を同じにする速度比例抵抗 −bradv を求めよ.この有効な抵抗を入れた運動方程式を,複素指数関数で初期条件まで解け.この式が瞬間ごとのラーモアの損失まで再現するかも述べよ.

  3. e=1.6×10−19C,m=9.1×10−31kg,ε0=8.9×10−12Fm−1,c=3.0×108ms−1,ω0=4.0×1014rads−1,A0=8.0×10−11m のとき,包絡線振幅の半減時間を求めよ.1周期あたりのエネルギー損失割合と最大速度から,近似を検証せよ.

固定した束縛中心とx方向に振動する粒子を示す.初めの変位はA_0で速度は0である.外へ出る放射は模式的な光の矢印で示す. 固定した束縛中心とx方向に振動する粒子を示す.初めの変位はA_0で速度は0である.外へ出る放射は模式的な光の矢印で示す.
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考え方

周期内では振幅を固定して放射を平均し,その平均をエネルギーのゆっくりした減少に結びつける.有効な摩擦はその平均だけを表す.

  1. x≈Acos⁡ω0t とすると U=mω02A2/2,⟨a2⟩=ω04A2/2.従って

⟨P⟩=mτeω04A22=τeω02U,dUdt=−τeω02U.

積分すると U(t)=U(0)e−τeω02t.エネルギーは振幅の2乗に比例するので A(t)=A0e−τeω02t/2 である.これらは周期でならした量についての式である.

  1. 摩擦による平均損失は brad⟨v2⟩=bradω02A2/2.(1)と一致させると brad=mτeω02.γ=τeω02/2 とおくと,有効な方程式は d2xdt2+2γdxdt+ω02x=0 である.x∝est を代入すると

s2+2γs+ω02=0,s=−γ±iΩ,Ω=ω02−γ2.

共役な解を足し,初期条件を入れると

x=A0e−γt(cos⁡Ωt+γΩsin⁡Ωt).

有効な方程式の中ではこの解は厳密だが,放射を平均摩擦へ置き換えた段階に近似がある.実際,転回点では摩擦の損失 bradv2 は0だが,ラーモアの放射は加速度が最大なので0ではない.従って瞬間の損失まで同じにはならない.

  1. τe=6.2×10−24s,γ=5.0×105s−1.包絡線半減時間は

tA=ln⁡2γ=2ln⁡2τeω02=1.4×10−6s.

1周期の損失割合は弱い減衰の範囲で ⟨P⟩(2π/ω0)/U=2πτeω0=1.6×10−8.最大速度の尺度は ω0A0/c=1.1×10−4 である.τeω0 と ω0A0/c がともに小さく,緩やかな減衰と非相対論的な運動の条件を満たす.e→0 では減衰が消えて単振動に戻る.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

質量 M∗,放射電力 P∗ の恒星のまわりを,質量 M の探査機が半径 r0 の円軌道で回っています.展開前の光圧は無視でき,恒星の重力だけで円運動しています.時刻0に面積 S の薄い帆を瞬時に展開します.展開による力積はなく,探査機の質量も変わりません.帆の法線は常に半径方向で,反射率は R,残りを吸収します.吸収後の再放射による合力を無視し,恒星は等方的に放射する点光源とみなします.速度と光速 c の比は十分小さいとします.

  1. 光圧と重力の比を β として,展開後の中心力と,重力と光圧を合わせたポテンシャルを単位質量あたりで求めよ.ポテンシャルは無限遠を0とし,遠心項は含めません.

  2. 0<β<1/2 の場合,展開後の軌道の最遠距離,長半径,離心率,周期を求めよ.展開位置が近点になる理由も述べよ.

  3. 脱出する β の範囲と,正の終速度がある場合の無限遠での速さを求めよ.

  4. 小さい β について,最遠距離と周期の変化率を1次まで求めよ.また,展開から距離 r まで光圧がする仕事を求め,実際の重力だけを含む力学的エネルギーが増えることと,有効なエネルギー保存が両立する理由を述べよ.

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考え方

光圧も重力も距離の2乗に反比例するため,中心力の強さだけが変わる.展開直後の速度は,弱まった引力で円運動するには大きすぎる.

  1. I=P∗/(4πr2) より Flight=(1+R)P∗S/(4πcr2).従って

β=(1+R)P∗S4πcGM∗M,F=−GM∗M(1−β)r2er.

ここで er は外向きの単位ベクトルである.有効ポテンシャルエネルギーを Ueff とすると,単位質量あたりでは Ueff/M=−GM∗(1−β)/r である.

  1. 初期速度は v0=GM∗/r0,単位質量あたりの角運動量は h=r0v0=GM∗r0.展開後の有効エネルギーは

UM=v022−GM∗(1−β)r0=GM∗r0(β−12).

ここで U は展開後の有効な力学的エネルギーである.転回点では半径方向の速度が0だから U/M=h2/(2r2)−GM∗(1−β)/r.u=r/r0 を代入すると

(2β−1)u2+2(1−β)u−1=0.

1つの根は u=1,他方は u=1/(1−2β)>1 である.また展開直後の半径方向の加速度は v02/r0−GM∗(1−β)/r02=βGM∗/r02>0 なので,初期位置は近点である.よって

rmax=r01−2β,a=r0(1−β)1−2β,e=rmax−r0rmax+r0=β1−β.

引力定数を GM∗(1−β) に置き換えたケプラーの周期から,初期周期 T0=2πr03/(GM∗) に対して

T=2πa3GM∗(1−β)=T01−β(1−2β)3/2.
  1. U≥0,すなわち β≥1/2 で脱出する.β=1/2 では引力が残る放物線軌道で終速度は0.β>1/2 では,無限遠で有効ポテンシャルが0になるので v∞=GM∗(2β−1)/r0.β≥1 でもこのエネルギー式は使えるが,中心力は0または外向きになり,引力のケプラー軌道とは区別する.

  2. β が小さいと rmax/r0≈1+2β,T/T0≈(1−β)(1+3β)≈1+2β.光圧の仕事は

Wlight=∫r0rβGM∗Mr′2dr′=βGM∗M(1r0−1r).

これは光から探査機へ渡るエネルギーである.有効ポテンシャルは光圧の仕事も位置だけの関数として組み込むため,その有効エネルギーは保存する.1次展開で捨てた項は β2 程度であり,β→1/2 へは延ばせない.点光源と静止帆の近似には,恒星と帆の大きさを r0 で割った量,および v0/c,v∞/c が十分小さいことも必要である.

演習 3

IPhO 1992 第3問(改題) ★★★★☆

宇宙空間で面積 S の薄い帆を光で照らします.入射光は半径方向 er に進み,その強さは I です.帆の法線を n=cos⁡θer+sin⁡θet とします.et は進行方向に垂直な所望の接線方向で,0≤θ≤π/2 です.入射エネルギーの割合 α を吸収し,残りを鏡面反射します.透過はありません.

帆は一様な温度 T,両面の熱放射率はともに ϵ,全熱容量は Cth です.熱放射の電力は各面で ϵσSBST4 です.両面の放射による合力は打ち消し合い,周囲からの熱放射,内部発熱,光圧がする仕事による入射エネルギーの変化は無視します.ϵ は熱放射の振動数帯に対する値で,入射光の吸収率 α とは別に与えます.

  1. u=cos⁡θ として,光による力の半径方向成分と接線方向成分,および平衡温度を求めよ.

  2. 帆の向きを固定し,平衡温度が正の場合に,平衡温度からの小さな温度差の緩和時間を導け.

  3. I=1.0×103Wm−2,S=2.0m2,α=0.20,ϵ=0.10,σSB=5.7×10−8Wm−2K−4,c=3.0×108ms−1,Cth=40JK−1 とします.平衡温度を Tlim=300K 以下に保って,接線方向の力を最大にする角度と,その力を求めよ.温度制限が最適角を変える一般条件も示せ.

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考え方

吸収は入射方向の運動量を渡し,鏡面反射は法線方向の運動量を渡す.温度制限を投影面積の上限へ直してから力を最大化する.

  1. 届く電力は ISu.吸収の力は αISuer/c,反射の力は 2(1−α)ISu2n/c である.従って

Fr=ISc[αu+2(1−α)u3],Ft=2(1−α)IScu21−u2.

吸収電力と両面の熱放射をつり合わせると αISu=2ϵσSBSTe4 だから

Te=(αIu2ϵσSB)1/4.
  1. 熱収支は CthdTdt=αISu−2ϵσSBST4.T=Te+δT として T4≈Te4+4Te3δT と展開すると

dδTdt=−8ϵσSBSTe3CthδT,τT=Cth8ϵσSBSTe3.

温度のずれは指数的に減り,平衡は安定である.

  1. Te≤Tlim は u≤uT=2ϵσSBTlim4/(αI) となる.f(u)=u21−u2 は

f′(u)=u(2−3u2)1−u2

なので,制限がなければ u0=2/3 で最大である.0<α<1 では最適値は uopt=min(uT,2/3).従って uT<2/3 のとき温度制限が最適角を変える.指定の数値では uT=0.4617 なので

θopt=arccos⁡0.4617≈63∘,Ft,max=2×0.80×ISc(0.4617)21−(0.4617)2=2.0×10−6N.

このとき Te=Tlim,τT=16s.姿勢の変更中も温度を各姿勢の平衡値で近似するには,姿勢を変える時間が τT より十分長いことが必要である.緩和の線形化には |δT|/Te が小さいこと,光圧の静止近似には帆の速さと c の比が小さいことが必要である.u=0,1 の両極限で接線力は0となる.

演習 4

IPhO 1981 第3問(改題) ★★★★★

実験室で,遠くの送信源からの電波を,水平な反射面の上方にある受信器で測ります.電波の進む向きが水平面となす角は α,受信器の平均の高さは h です.電場は入射面に垂直です.直接波と反射波は同じ振動数・同じ偏光で,到達する電場の複素振幅をそれぞれ E0,rE0e−iδ とします.δ=4πhsin⁡α/λ,r=ρeiϕ,0<ρ<1 です.λ は真空波長です.

反射面は測定中に水平を保ってゆっくり上下し,平均位置からの高さ ζ が変動します.反射係数は変わらず,経路差の変化だけを考えます.ζ の平均は0,標準偏差は σh で,任意の実数 a に対して ⟨eiaζ⟩=e−a2σh2/2 が成り立つとします.各高さでは多くの変動を平均して測り,受信信号は電場の2乗を時間平均した値に比例します.

  1. 直接波だけの信号を1として,平均信号 J(h) と,コントラスト V=(Jmax−Jmin)/(Jmax+Jmin) を求めよ.

  2. sin⁡α=1/2 で高さを走査すると,次のコントラストが得られました.この2波長では ρ,ϕ,σh は共通です.波長 λ1 の信号は h=3.15m で極大になります.ρ,σh,ϕ を求めよ.測定値は示す桁に丸められています.

波長

λ(m)

V

λ1

0.300

0.400

λ2

0.600

0.673

  1. 反射面が,真空と屈折率 n>1 の非磁性・透明媒質の境界だとします.入射面に垂直な電場の反射係数は

r=−n2−cos2⁡α−sin⁡αn2−cos2⁡α+sin⁡α

です.測定と位相が整合するか調べ,n を推定せよ.

  1. 波長1種類のコントラストだけで,反射率と高さの揺らぎを分けて決められますか.σh→0 の極限と,この模型に σh/λ が小さいという条件が必要かも論じよ.

平均反射面から高さhの受信器に,水平面となす角αの直接波と反射波が届く.水平を保って上下する反射面の変位ζと,受信器の高さを走査する方向を示す.図の角度と高さは模式的である. 平均反射面から高さhの受信器に,水平面となす角αの直接波と反射波が届く.水平を保って上下する反射面の変位ζと,受信器の高さを走査する方向を示す.図の角度と高さは模式的である.
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考え方

複素振幅の和を2乗してから高さの変動について平均する.位相の揺らぎは干渉項だけを弱めるので,波長を変えると反射振幅と分離できる.

  1. 反射面の変位により δ は δ−aζ,a=4πsin⁡α/λ に変わる.従って各瞬間の信号は |1+ρei(ϕ−δ+aζ)|2.与えた平均の式を使うと

J(h)=1+ρ2+2ρDcos⁡(ϕ−δ),D=exp⁡(−8π2σh2sin2⁡αλ2).

Jmax=1+ρ2+2ρD,Jmin=1+ρ2−2ρD より V=2ρD/(1+ρ2) である.

  1. C=2ρ/(1+ρ2),Ah=8π2σh2sin2⁡α/λ12 とおく.波長が2倍になるので V1=Ce−Ah,V2=Ce−Ah/4.対数をとると

Ah=43ln⁡V2V1≈0.694,C=V2eAh/4≈0.800.

Cρ2−2ρ+C=0 を解き,ρ<1 の根を選ぶと

ρ=1−1−C2C≈0.500,σh=λ1sin⁡αAh8π2=5.6×10−2m.

極大では ϕ−δ が 2π の整数倍である.h=3.15m では δ=4π×3.15×0.5/0.300=21π なので,ϕ=π を 2π の整数倍の違いを除いて得る.

  1. 与えた反射係数は負の実数なので,位相 π と整合する.b=n2−cos2⁡α とすると ρ=(b−sin⁡α)/(b+sin⁡α).従って

b=sin⁡α1+ρ1−ρ,n=cos2⁡α+sin2⁡α(1+ρ1−ρ)2≈3≈1.73.

数値は丸められた測定からの推定である.

  1. 1波長では C と D の積しか分からず,反射率 ρ2 と高さの揺らぎを分離できない.σh→0 なら D→1 となり,コントラストだけから ρ が決まる.ここでは位相平均を展開せず厳密に使ったため,σh/λ が小さいことは必要ない.ただし面の傾きと反射係数の変化を無視でき,σh/h が小さく,変動速度と光速の比も十分小さいという設定が必要である.推定値は 0<ρ<1 を満たし,揺らぎが増す極限では V→0 となる.

演習 5

オリジナル ★★★★★

希薄な非磁性媒質を,固定した中心に束縛された電子の集まりとみなします.電子の数密度は Ne,質量は m,電荷は −e,固有角振動数は ω0 です.外からの電場の複素振幅を E^ とし,実際の場は E^eiωt の実部です.電子の電場方向の変位 y は

d2ydt2+γdydt+ω02y=−emE(t)

に従います.γ>0 はこの振動数での損失を表す係数です.局所的な場と巨視的な場の違いを無視し,分極は P^=−Neey^=ε0χE^ とします.電子の位置は不規則で,前方以外への散乱の強さは各電子の分を足せるものとします.散乱光が直進ビームへ戻る効果と,境界での反射は無視します.真空の定数は ε0,μ0,c=1/ε0μ0 です.

  1. 複素感受率 χ を導け.マクスウェル方程式から非磁性媒質の平面波には n2=1+χ が成り立つことを示し,|χ| が小さいとき,n=nr−ina の nr,na を求めよ.ωp2=Nee2/(ε0m) とおけ.

  2. 電場を E^(x)eiωt の実部,E^(x)=E0e−inωx/c とするとき,細い直進ビームの強さの減衰係数 κI を求めよ.単位体積あたりの平均損失 Nemγ⟨v2⟩ と,ビームから失われる電力が一致するか,χ の1次までで確かめよ.

  3. 損失は放射だけとし,γ=γrad をラーモアの平均放射電力 e2⟨a2⟩/(6πε0c3) から決めよ.この場合の κI が,独立な電子の散乱断面積 σsc=⟨Prad⟩/I に対して Neσsc と χ の1次までで一致することを示せ.

  4. 放射だけの損失で ω/ω0 が十分小さいとします.厚さ d の媒質で真空に対して位相を Δϕ=ω(nr−1)d/c だけ遅らせるとき,散乱による光学的厚さ κId を Δϕ と振動数で表せ.同じ Δϕ を得るために密度と厚さを調整しても,損失を減らせますか.振動数を変える効果と近似の条件も述べよ.

厚さd,電子数密度N_eの希薄媒質を角振動数ωの光が通る.位相と振幅が変化する電場を模式図で示し,固定中心からの電子の変位yと固有角振動数ω_0を別の拡大図に記す.波形は定量的な解を表さない. 厚さd,電子数密度N_eの希薄媒質を角振動数ωの光が通る.位相と振幅が変化する電場を模式図で示し,固定中心からの電子の変位yと固有角振動数ω_0を別の拡大図に記す.波形は定量的な解を表さない.
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考え方

電子の複素応答の実部は位相を遅らせ,虚部はビームからエネルギーを失わせる.同じ損失を,巨視的な波と電子の運動の両方で数える.

  1. D0=ω02−ω2,Q=D02+γ2ω2 とおく.複素振幅を代入すると

(D0+iγω)y^=−emE^,χ=ωp2D0+iγω=ωp2(D0−iγω)Q.

巨視的な電束密度は D^y=ε0(1+χ)E^y.x方向へ進む,y方向の電場とz方向の磁場をとると,ファラデーとアンペール・マクスウェルの法則は,長方形の道を縮めた形で

∂Ey∂x=−∂Bz∂t,−∂Bz∂x=μ0∂Dy∂t

となる.平面波の空間因子 e−ikx を入れると kE^y=ωB^z,kB^z=μ0ωD^y.両式より k2=ω2(1+χ)/c2,n=ck/ω だから n2=1+χ である.|χ| が小さければ n≈1+χ/2 なので

nr=1+ωp2D02Q,na=ωp2γω2Q>0.
  1. −in=−inr−na だから |E^(x)|=E0e−naωx/c.強さは振幅の2乗に比例し,I(x)=I(0)e−κIx で

κI=2ωnac=ωp2γω2cQ.

電子の速度の複素振幅は iωy^ なので,体積あたりの平均損失は

qloss=Nemγω2|y^|22=Nee2γω2|E^|22mQ.

一方,χ の0次の強さ I≈ε0c|E^|2/2 に κI を掛けると同じ値になる.従って薄片のエネルギー収支 −dIdx=qloss が1次の精度で成り立つ.

  1. ⟨Prad⟩=e2ω4|y^|2/(12πε0c3) を mγradω2|y^|2/2 と等しくする.τe=e2/(6πε0mc3) とすると

γrad=τeω2,κI=Nee4ω46πε02m2c4Q.

同じ複素応答から,0次の強さ I≈ε0c|E^|2/2 で放射電力を割ると σsc≈e4ω4/(6πε02m2c4Q) なので,χ の1次までで κI=Neσsc と一致する.この損失は熱への吸収ではなく,直進ビームから他方向への散乱である.γrad は振動数に依存し,ここでは単一振動数での有効係数として使う.

  1. 低振動数では D0≈ω02,Q≈ω04 なので

Δϕ≈ωωp2d2cω02,κId≈ωp2τeω4dcω04=2τeω3ω02Δϕ.

密度と厚さは Ned の積だけで両方に入るため,同じ振動数と位相遅れを保つ限り,それらの調整だけでは損失を減らせない.振動数を下げれば,同じ位相遅れでの光学的厚さは ω3 に比例して減るが,必要な Ned は 1/ω に比例して増える.ω2/ω02,τeω3/ω02,|χ| と電子の振動速度の振幅を c で割った量が小さいことが適用条件である.長い伝播距離で位相の1次式を使うには,捨てた位相 ωd|χ|2/c も十分小さくなければならない.κI の次元は長さの逆数で,γ→0 なら減衰は消える.

12第26章のまとめ

この章では,第24章でそろえた電場と磁場の法則と,第25章の波の言葉を合わせて,電磁波を扱いました.出発点は,突然流れ始めた電流の板が作る場の面です.積分形のファラデーの法則とアンペール・マクスウェルの法則は,場の面が速さ c=1/ε0μ0 で E=cB を保って進むときに限って同時に満たされ,光はこの電磁波だと分かりました.電磁波は媒質なしに伝わり,エネルギーと運動量を運びます.次に,電磁波を生むのは加速する電荷であることを電気力線の折れ曲がりから導き,原子の中の電子を振動子とみて,空が青いことと屈折率の起源を説明しました.最後に,物質の境界で電場と磁場の接線成分がつながることから,反射と透過の割合を求めました.

定義と法則

法則 真空中の平面電磁波

  • 電荷も電流もない真空では,マクスウェル方程式から波動方程式 ∇2⁡E=1c2∂2E∂t2 が出る.B も同じ方程式に従う.

  • 速さはどの波長でも c=1/ε0μ0=3.00×108ms−1 で,c=λν=ω/k.

  • 電場と磁場は進む向きに垂直で(横波),互いにも垂直で,E×B が進む向きを向く.各点・各時刻で E=cB.x 方向に進む波では,+x 向きなら Bz=Ey/c,−x 向きなら Bz=−Ey/c.

  • 横波であることはガウスの法則(真空で ∇⋅E=0)から分かる.電場が振動する向きを偏光の向きという.

  • 電波,赤外線,可視光(770nm から 380nm),紫外線,X 線・γ 線は同じ方程式に従う電磁波で,違うのは波長だけである.

定義 電磁波のエネルギーと強さ

電磁波では電場と磁場のエネルギー密度が各瞬間に等しく(uE=uB=ε0E2/2),合わせて u=ε0E2 である.ポインティングベクトルの大きさは S=EB/μ0=cu で,エネルギーは速さ c で運ばれる.電磁波の強さ I は,進む向きに垂直な単位面積を単位時間に通るエネルギーの時間平均で,正弦波では

I=⟨S⟩=12ε0cE02=c⟨u⟩

である.

法則 電磁波の運動量と光の圧力

電磁波が電荷に及ぼす進む向きの力は,電荷が受け取る仕事率の 1/c 倍である.したがって電磁波はエネルギー U とともに運動量 U/c を運ぶ.強さ I の光が面に垂直に当たるとき,すべて吸収する面が受ける圧力は I/c,すべて正反対に反射する面では 2I/c である.斜めに当たるときは,光を受ける面積と運動量の法線成分の両方が入射角の余弦倍になる.

法則 加速する電荷の放射の場

電荷 q が加速度 a で運動するとき,距離 r の遠方の電場は

Erad(t)=−qa⟂(t−r/c)4πε0c2r

である.a⟂ は加速度のうち観測の向きに垂直な成分で,大きさは加速度と観測の向きのなす角 θ について sin⁡θ 倍になる.磁場は大きさ Erad/c で,電場と進む向きの両方に垂直である.場は r/c だけ前の加速度で決まり(遅れ),加速度の向きには放射が無く(横向き),1/r でしか弱まらないのでエネルギーが遠くへ運ばれる.電荷の速さが c より十分小さく,r が電荷の動く範囲や波長より十分大きいときの式である.

定理 ラーモアの式

非相対論的に運動する電荷 q が加速度 a のときに全方向へ放射する電力は

P=q2a26πε0c3

で,強さは向きによって sin2⁡θ に比例する.

定義 散乱断面積とレイリー散乱

入射光の強さ I と,1個の散乱体が散乱する平均電力 ⟨P⟩ の比 σsc=⟨P⟩/I を散乱断面積という.固有角振動数 ω0 の振動子とみた束縛電子では

σsc=e46πε02m2c4⋅ω4(ω02−ω2)2

である.ω が ω0 より十分小さいと σsc∝ω4∝λ−4 となり,これをレイリー散乱という.自由な電子(ω0=0)では振動数によらない.

定理 屈折率の起源と分散

物質の中の電子が入射光に揺すられて出す波は,前方では入射光に 90∘ 遅れて足され,光の位相を遅らせる.これが屈折率 n>1 の正体で,希薄な物質では

n=1+Ne22ε0m(ω02−ω2)

である.ω が ω0 に近づくほど n が大きいので,可視光では紫ほど屈折率が大きい(分散).ω が ω0 を超えると n<1 になるが,信号やエネルギーが c より速く伝わるわけではない.

定理 物質の中の平面波と境界の条件

屈折率 n の非磁性で透明な物質では,波の速さは c/n,磁場は B=nE/c,強さは I=nε0cE02/2 である.表面電流の無い境界では,電場の接線成分と磁場の接線成分がそれぞれつながる.境界をまたぐ細い長方形の道にファラデーの法則とアンペール・マクスウェルの法則を使うと,道の面積が0に近づくので磁束も電束も消えることから分かる.

定理 垂直入射の反射と透過

屈折率 n1 の側から n2 の側へ垂直に入射するとき,振幅反射率・振幅透過率は

r=n1−n2n1+n2,t=2n1n1+n2

で,反射率・透過率は R=r2,T=(n2/n1)t2,R+T=1 である.弦の接続点の式で波数を屈折率に置き換えたものと同じ形で,n2>n1 の反射では電場の位相が π ずれる(固定端にあたる).n1>n2 の反射と透過波では位相は変わらない.金属は r≈−1 に近く,よく反射する.

定理 斜め入射:フレネルの式(結果)とブルースター角

入射光と境界の法線を含む面を入射面といい,電場が入射面に垂直な光をs偏光,平行な光をp偏光という.入射角 θ1,屈折角 θ2(n1sin⁡θ1=n2sin⁡θ2)について

Rs=(n1cos⁡θ1−n2cos⁡θ2n1cos⁡θ1+n2cos⁡θ2)2,Rp=(n2cos⁡θ1−n1cos⁡θ2n2cos⁡θ1+n1cos⁡θ2)2

である.Rs は入射角とともに増える.tan⁡θB=n2/n1 のブルースター角では Rp=0 で,反射光と屈折光が直交し,反射光はs偏光だけになる.n1>n2 で sin⁡θ1>n2/n1 なら全反射が起こり,向こう側には波長程度の距離で弱まる場(エバネッセント波)が染み出す.

手順

ポイント 電磁波の問題を解く手順

  1. 進む向きと電場の向きを決め,E×B が進む向きを向くように磁場の向きを決める.逆向きに進む波では,電場が同じ向きでも磁場が逆になる.

  2. 強さとエネルギー密度は I=ε0cE02/2=c⟨u⟩,点光源なら I=L/(4πr2),光の力は吸収した電力の 1/c 倍で,受ける面積は断面積で数える.

  3. 放射は加速度の視線に垂直な成分で決まる.小さな双極子では I=I⟂sin2⁡θ,P=8π3r2I⟂.散乱光の偏光は,入射光を散乱の面に垂直な部分と面内の部分に分けて考える.

  4. 境界では,同じ ω の場の複素振幅について「E^ がつながる」「cB^ がつながる」の2式を立てて解く.強さの比は屈折率を含めて R=|r|2,T=(n2/n1)|t|2 に直す.

  5. 膜が重なるときは,比 Y=cB^/E^ を奥の境界から手前へ受け渡し,r=(n1−Y)/(n1+Y) で反射率を出す.

主な公式

  • 真空の平面波:c=1/ε0μ0,E=cB,u=ε0E2,S=cu,I=12ε0cE02

  • 電流の板(単位幅あたり K)を流し始めたとき:波面は x=±ct,その内側で B=μ0K/2,E=cB.電源の仕事率は単位面積あたり cμ0K2/2 で,両側へ流れ出すエネルギーに等しい

  • 光の圧力:吸収面 I/c,反射面 2I/c

  • 金属の壁での定在波:壁は電場の節・磁場の腹,電場の節は λ/2 おき,正味のエネルギーの流れは0

  • 光のドップラー効果(発展):遠ざかる速さ V,β=V/c で ν′=ν1−β1+β.β が小さければ Δλ/λ≈β

  • 放射の強さ:I=q2a2sin2⁡θ16π2ε0c3r2,振動する双極子(振幅 p0)の平均電力 ⟨P⟩=p02ω412πε0c3

  • 散乱による弱まり:I=I0e−Nσscd.青(450nm)は赤(700nm)の約6倍強く散乱される

  • 散乱光の偏光:散乱の角 Θ で(面に垂直):(面内)=1:cos2⁡Θ,90∘ で完全な直線偏光

  • 空気からガラス(n=1.50):r=−0.20,R=0.040.窓ガラス1枚の反射は約 2R,多重反射まで数えて 2R/(1+R)≈0.077

  • 反射がある側の電場の2乗:⟨E2⟩∝1+r2+2rcos⁡2kx(間隔 λ/2 の縞).正味の流れは (1−R)Ii

  • 反射防止膜:厚さ d=λ/(4n)(kd=π/2)で Y=n2/n3,n2=n1n3 なら R=0

各題材の問いへの答え

  • 真空を伝わる電磁波:光は電場と磁場が揺れる波である.揺れているのは物質ではなく場そのもので,変化する電場が磁場を作り,変化する磁場が電場を作ることで,場は媒質なしに自分で伝わる.その速さはマクスウェル方程式から c=1/ε0μ0 と決まり,光の速さと一致する.太陽の光は,宇宙空間を電場と磁場のエネルギーと運動量として運ばれてくる.

  • 電荷の放射と光の散乱:空気の分子の中の電子が太陽の光に揺すられて加速し,四方へ光を出し直す.その強さは ω4 に比例するので,青い光は赤い光の約6倍強く散乱され,太陽から離れた方向の空は散乱された青い光で満たされる.夕方は光が大気を長く通るので青が抜け落ち,まっすぐ届く光は赤が中心になる.太陽から 90∘ 離れた空の光は,放射の横向きの性質のために強く偏光している.

  • 電磁波の反射と透過:透明でも屈折率が変わる所では,入射波と透過波だけでは境界の2つの条件を同時に満たせず,反射が起こる.ガラスの1つの面で4 %,表と裏の2つの面で約8 %の光が反射する.夜に部屋が映るのは,反射が増えるからではなく,比べる外の光が弱くなるからである.

この章で使った数学

細長い長方形の道に積分形の法則を使って偏微分の関係を出し,組み合わせて1次元の波動方程式にする方法は,第25章の弦の波動方程式の導き方と同じ考え方です.微分形からは,回転の回転の公式で3次元の波動方程式がまとめて出ます(発展).こちらは飛ばして,本体の積分形の議論だけで先へ進んでもかまいません.時間平均と境界の条件には,第7章・第23章と同じ複素振幅を使いました.

定理 数学の道具:電磁波の章の道具

  • 真空で場が x と t だけによるとき,∂Ey/∂x=−∂Bz/∂t,∂Bz/∂x=−1c2∂Ey/∂t.組み合わせると ∂2Ey∂x2=1c2∂2Ey∂t2.

  • (発展)回転の回転:∇×(∇×F)=∇⁡(∇⋅F)−∇2⁡F.真空のマクスウェル方程式に使うと ∇2⁡E=1c2∂2E∂t2.

  • 正弦波の2乗の時間平均は 1/2,⟨sin⁡ωtcos⁡ωt⟩=0.複素振幅では ⟨EF⟩=12Re(E^F^∗).

  • すべての t で Re[A^eiωt]=Re[B^eiωt] なら A^=B^.境界の条件は複素振幅どうしの等式として書ける.

この章で,光が電場と磁場の波であることと,境界での反射の振る舞いが分かりました.次の第27章では,光の進み方と干渉を調べます.反射で位相が反転するかどうかは薄膜の干渉の色を決め,偏光の向きもそこで使います.