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問いから始める物理

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問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 27節
  1. 位置とベクトル
  2. ベクトルの道具
  3. 位置とベクトルの演習
  4. 速度
  5. 速度と微分
  6. 速度の演習
  7. 加速度
  8. 加速度と微分の道具
  9. 加速度の演習
  10. 速度から位置へ
  11. 速度から位置へと積分
  12. 速度から位置への演習
  13. 等加速度運動と自由落下
  14. 等加速度運動と自由落下の例題
  15. 等加速度運動と自由落下の演習
  16. 放物運動
  17. 放物運動と加法定理
  18. 放物運動の演習
  19. 相対運動
  20. 相対運動と最接近
  21. 相対運動の演習
  22. 円運動の運動学
  23. 円運動と弧度法
  24. 円運動の演習
  25. 第3章の章末問題
  26. 第3章の発展問題
  27. 第3章のまとめ

第3章  運動を記述する

01位置とベクトル

問い

友だちに「駅から500 mのところにいるよ」とメッセージを送りました.友だちはすぐに見つけられるでしょうか.

もう少し伝わるメッセージにするには,何を足せばよいでしょうか.駅ではなく郵便局を基準にしたら,同じ場所を伝える言葉はどう変わるでしょうか.

考えてみる

「駅から500 m」だけでは,駅を中心とした半径500 mの円周上のどこにいても当てはまります.これでは探せません.足りないのは向きです.「駅から東へ400 m,そこから北へ300 m」と言えば,場所は1点に決まります.

大事なことが3つあります.第1に,場所を伝えるには基準になる点(駅)と,向きを測る約束(東と北)がセットで必要です.これが座標系の考え方です.第2に,「東へ400 m,北へ300 m」は2つの数の組で,この組から「まっすぐ測った距離」も出せます(4002+3002=500m).つまり「駅から500 m」という最初の言葉は,この組の大きさだけを取り出したものでした.第3に,基準を郵便局に替えれば,同じ場所でも数の組は変わります.しかし場所そのものや「ここからそこへの移動」は変わりません.

向きと大きさをあわせもつ量を扱う道具がベクトルです.この節では,物体の位置と移動をベクトルで書き表します.速度や加速度も,これを土台にして次の節以降で作っていきます.

座標系と位置ベクトル

位置を数で表すには,まず原点(基準の点)と座標軸(向きの約束)を決めます.

  • 直線上の運動なら,原点と,正の向きを1つ決めて,位置を1つの数 x で表します.

  • 平面上の運動なら,原点で直交する2本の軸 x 軸と y 軸をとり,位置を (x,y) で表します.

  • 空間なら,もう1本の z 軸を加えて (x,y,z) です.

原点Oから物体のいる点Pへ向かう矢印を,P の位置ベクトル r→ といいます.成分で書けば r→=(x,y)(空間では (x,y,z))です.手書きではこのように文字の上に矢印をつけて書きます.

定義 位置ベクトルと変位

原点Oから点Pへのベクトル r→=OP→ を,点Pの位置ベクトルという.時刻 t1 に r→1,時刻 t2 に r→2 にいた物体の変位は

Δr→=r→2−r→1

で,始点から終点へ向かうベクトルである.

印刷ではベクトルを r のように太字で書くのがふつうで,この本もここから先は太字で統一します.上の定義の r→,Δr→ は,以後 r,Δr と書きます.矢印と太字は同じものだと思ってください.

平面に原点Oと直交するx軸,y軸があり,点P1と点P2がある.Oから各点へ向かう位置ベクトルr1とr2を黒い矢印で,P1からP2へ向かう変位ベクトルΔr(=r2−r1)を橙の矢印で描く.灰色の破線は実際に動いた道のりで,変位とは別のものである. 平面に原点Oと直交するx軸,y軸があり,点P1と点P2がある.Oから各点へ向かう位置ベクトルr1とr2を黒い矢印で,P1からP2へ向かう変位ベクトルΔr(=r2−r1)を橙の矢印で描く.灰色の破線は実際に動いた道のりで,変位とは別のものである.

変位は「どこからどこへ動いたか」を表すもので,道のりとは別物です.たとえば家を出て1周して戻れば,変位は 0 です.

原点の取り方を替えると,位置ベクトルは変わります.原点をOからO'に移すと,どの点の位置ベクトルも同じベクトル c=O′O→ だけ変わるからです.しかし2点の位置ベクトルの差は変わりません.実際,新しい位置ベクトルを r′ として r1′=r1+c,r2′=r2+c とすれば r2′−r1′=r2−r1 です.位置は原点の選び方に依存し,変位は依存しません.力学で意味をもつのは,位置の差(変位)やその時間変化のほうです.

ベクトルの和・差・実数倍

2つの変位を続けて行うと,全体の変位は2つのベクトルの和になります.図形では,1つ目の矢印の終点に2つ目の矢印の始点をつなぎ,1つ目の始点から2つ目の終点へ引いた矢印が和です.

ベクトルAの終点にベクトルBの始点をつなぐと,Aの始点からBの終点へ引いた橙の矢印が和A+Bになる.同じAとBを始点をそろえて平行四辺形に並べた別の見方も灰色の破線で薄く重ねてあり,対角線として同じ和になる. ベクトルAの終点にベクトルBの始点をつなぐと,Aの始点からBの終点へ引いた橙の矢印が和A+Bになる.同じAとBを始点をそろえて平行四辺形に並べた別の見方も灰色の破線で薄く重ねてあり,対角線として同じ和になる.

差 A−B は,A+(−B) のことです.−B は B と大きさが同じで向きが逆のベクトルです.同じ始点から出る A,B があるとき,A−B は B の終点から A の終点へ向かう矢印になります.先ほどの変位 r2−r1 がちょうどこの形です.

実数倍 kA は,k>0 なら同じ向きで長さが k 倍,k<0 なら逆向きで長さが |k| 倍のベクトルです.

成分で位置を書く

ベクトルは,座標軸の向きに分けた成分を並べて書くと,数として扱えます.たとえば東向きを x 軸,北向きを y 軸にとれば,「東へ400 m,北へ300 m」は r=(400, 300)m です.成分を使った和・差・大きさ・向きの計算は,次の節でまとめます.

問いの答え

「駅から500 m」は,位置ベクトルの大きさ |r| だけを伝えた言葉でした.場所を1点に決めるには向き,つまり r の成分(または大きさと角)が要ります.また,基準の点(原点)と軸の向きを共有していなければ,数の組は相手に通じません.「駅から東へ400 m,北へ300 m」は,駅を原点,東を x 軸,北を y 軸の正の向きとする座標系で r=(400,300)m と言ったことになります.大きさ 500m,向きは東から北へ約 37∘ で,友だちは迷わず着けます.

ポイント ここまでのまとめ

  • 位置は,原点と座標軸を決めて初めて数で表せる.直線では x,平面では (x, y) である.

  • 原点から点Pへのベクトル r が位置ベクトル.変位は Δr=r2−r1 で,始点から終点へ向かう.

  • 位置は原点の選び方で変わるが,変位は変わらない.

  • ベクトルの和は矢印をつなぎ,差は終点どうしを結び,実数倍は長さを変える.

  • 問いの答え:「駅から500 m」は大きさだけの情報.向きと基準(座標系)があれば場所が決まる.

02ベクトルの道具

前の節で,位置と変位をベクトルで表しました.ここでは,ベクトルを成分で計算する道具を整え,例題で使います.

定理 数学の道具:ベクトルの成分計算と内積

定義 ベクトル A の x 成分を Ax,y 成分を Ay として A=(Ax,Ay) と書く.空間ではさらに Az を加える.

成分での計算 A=(Ax,Ay),B=(Bx,By),実数 k について

A±B=(Ax±Bx, Ay±By),kA=(kAx, kAy)

和と差は,同じ成分どうしを足し引きするだけである.

大きさ 三平方の定理より

A=|A|=Ax2+Ay2(空間では Ax2+Ay2+Az2)

向き x 軸の正の向きから反時計回りに測った角を θ とすると,

Ax=Acos⁡θ,Ay=Asin⁡θ,tan⁡θ=AyAx

(tan⁡θ から角を決めるときは,成分の符号で象限を確かめる.)

単位ベクトル 大きさ1のベクトル.x,y 軸の正の向きの単位ベクトルを ex=(1,0),ey=(0,1) と書くと,A=Axex+Ayey である.また A≠0 と同じ向きの単位ベクトルは A/A である.

内積(スカラー積)の定義 成分で

A⋅B=AxBx+AyBy(空間では +AzBz)

と定める.結果はベクトルではなくただの数である.

導出:内積と角 A−B の大きさの2乗を成分で展開すると

|A−B|2=(Ax−Bx)2+(Ay−By)2=|A|2+|B|2−2A⋅B

一方,A,B のなす角を θ とすると,この3辺 |A|,|B|,|A−B| の三角形に余弦定理を使って

|A−B|2=|A|2+|B|2−2|A||B|cos⁡θ

2式を比べて

A⋅B=|A||B|cos⁡θ

したがって,A⟂B(A,B≠0)と A⋅B=0 は同値である.

練習.

  1. A=(1,2),B=(3,−1) のとき,A+2B,|A|,A⋅B を求めよ.また,なす角 θ の余弦を求めよ.

  2. A=(2,k) と B=(3,−1) が垂直になるように k を定めよ.

  3. A=(3,4) と同じ向きの単位ベクトルを求めよ.また,大きさ 10,x 軸から反時計回りに 150∘ の向きのベクトルの成分を求めよ.

  4. 空間のベクトル A=(1,2,2),B=(2,−1,2) について,|A|,A⋅B,なす角 θ を求めよ.

  5. A=(2,1),B=(−1,3) のとき,|A−B| を,成分から直接と,|A|2+|B|2−2A⋅B からの2通りで求めよ.

答え:(1) A+2B=(7,0),|A|=5,A⋅B=3−2=1.|B|=10 なので cos⁡θ=1/(510)=1/(52)≈0.14(θ≈82∘). (2) A⋅B=6−k=0 より k=6. (3) |A|=5 なので (0.6, 0.8).(10cos⁡150∘, 10sin⁡150∘)=(−53, 5)≈(−8.7, 5). (4) |A|=3,A⋅B=2−2+4=4,|B|=3 なので cos⁡θ=49≈0.44,θ≈64∘. (5) A−B=(3,−2) より 13.別の方法では 5+10−2×1=13 で,同じく 13≈3.6.

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

ドローンが出発点Oから,東から北へ 30∘ の向きに 80m 飛び,次に西へ 50m 飛んだ.出発点から見た最終位置の変位の大きさと向きを求めよ.東を x 軸,北を y 軸の正の向きとする.

原点から東より北へ30°の向きに80 m,次に西へ50 m進む経路を示す. 原点から東より北へ30°の向きに80 m,次に西へ50 m進む経路を示す.
解答を見る

考え方 2回の移動をそれぞれ成分で書き,足せば合成した変位が成分で得られる.

1回目の変位は

d1=(80cos⁡30∘, 80sin⁡30∘)m=(403, 40)m≈(69.3, 40)m

2回目は西向きなので d2=(−50, 0)m.したがって合成した変位は

d=d1+d2=(403−50, 40)m≈(19.3, 40)m

大きさは

d=19.32+402m≈44m

向きは,x 軸(東)から北へ測った角 θ について tan⁡θ=40/19.3≈2.07 より θ≈64∘.

答え:東から北へ約 64∘ の向きに約 44m.なお,道のりは 80+50=130m であり,変位の大きさより大きい.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

座標が x 軸東向き,y 軸北向きの地図上で,点Pの位置ベクトルが rP=(1, 2)km,点Qの位置ベクトルが rQ=(4, 6)km である.

東向きをx,北向きをyとしてP(1,2)とQ(4,6)を示す. 東向きをx,北向きをyとしてP(1,2)とQ(4,6)を示す.
  1. PからQへの変位 Δr の成分,大きさ,および向きの単位ベクトルを求めよ.

  2. 原点を点Pに移した座標系(軸の向きは同じ)で,Qの位置ベクトルを求めよ.(1) の変位と比べて,何がいえるか.

解答を見る

考え方 変位は「終点の位置ベクトル−始点の位置ベクトル」.原点を替えても,この差は変わらないはずである.

Δr=rQ−rP=(4−1, 6−2)km=(3, 4)km

大きさは 32+42=5km.向きの単位ベクトルは Δr/5=(3/5, 4/5)=(0.6, 0.8).これは東から北へ約 53∘ の向きである.

  1. 新しい座標系の原点はPなので,Qの新しい位置ベクトルは PからQへのベクトルそのもので (3, 4)km.Pの新しい位置ベクトルは 0.

比べると,Qの位置ベクトル(座標)は原点の取り方で (4,6) から (3,4) に変わったが,PからQへの変位は (3,4)km のまま変わっていない.位置の成分は座標系に依存し,変位は依存しない.

ポイント ここまでのまとめ

  • 和・差・実数倍は成分ごとに計算する.大きさは A=Ax2+Ay2,向きは Ax=Acos⁡θ,Ay=Asin⁡θ.

  • A≠0 と同じ向きの単位ベクトルは A/A.零ベクトルには向きがない.

  • 内積 A⋅B=AxBx+AyBy=|A||B|cos⁡θ はただの数で,A,B≠0 のとき,0なら垂直である.なす角を扱うときも両方が零ベクトルでないとする.

  • 2回の移動の合成は,それぞれを成分に分けて足す.変位は「終点−始点」の成分で,原点の取り方によらない.

03位置とベクトルの演習

位置・変位・ベクトルの成分計算を練習します.まず自分で解き,そのあとで解答と見比べてください.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

駅Aを原点,東を x 軸,北を y 軸の正の向きとする地図(単位 km)で,図書館Lは (3, 1),公園Pは (−1, 4),郵便局Qは (1, −2) にある.

東をx軸,北をy軸として駅A,図書館L,公園P,郵便局Qを配置する.座標の単位はkm. 東をx軸,北をy軸として駅A,図書館L,公園P,郵便局Qを配置する.座標の単位はkm.
  1. LからPへの変位の成分と大きさを求めよ.

  2. 郵便局Qを原点に取り替えたとき,LとPの位置ベクトルをそれぞれ求めよ.また,LからPへの変位を求め,(1) と比べよ.

解答を見る
  1. Δr=rP−rL=(−1−3, 4−1)km=(−4, 3)km.大きさは 16+9=5km.

  2. 新しい原点がQなので,各点の新しい位置ベクトルは元の位置ベクトルから rQ=(1,−2) を引いて得られる.

rL′=(3−1, 1+2)=(2, 3)km,rP′=(−1−1, 4+2)=(−2, 6)km

LからPへの変位は rP′−rL′=(−4, 3)km で,(1) と一致する.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

次のベクトルの成分を求めよ.ただし,水平右向きを x,鉛直上向きを y の正の向きとする((3) だけは東を x,北を y とする).

投射速度,成分が与えられたベクトル,北西へ進む船の速度を別々に示す.成分の答えは記入しない. 投射速度,成分が与えられたベクトル,北西へ進む船の速度を別々に示す.成分の答えは記入しない.
  1. 水平から 30∘ 上向きに投げた,速さ 20ms−1 のボールの速度ベクトル.

  2. 成分が (12, 5) のベクトルの大きさと,x 軸となす角(tan の値でよい).

  3. 北西に 6.0ms−1 で進む船の速度ベクトル.

解答を見る
  1. v=(20cos⁡30∘, 20sin⁡30∘)ms−1=(103, 10)ms−1≈(17, 10)ms−1.

  2. 大きさは 122+52=13,tan⁡θ=5/12.

  3. 北西は東から反時計回りに 135∘ の向きなので

v=(6.0cos⁡135∘, 6.0sin⁡135∘)ms−1=(−32, 32)ms−1≈(−4.2, 4.2)ms−1

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

三角形ABCで,辺BCの中点をMとし,原点Oに対する各点の位置ベクトルを a,b,c(Mは m)とする.

三角形ABC,BCの中点M,中線AM上の点Gを示す.AG:GM=2:1である. 三角形ABC,BCの中点M,中線AM上の点Gを示す.AG:GM=2:1である.
  1. m を b,c で表せ.

  2. 中線AMを 2:1 に内分する点Gの位置ベクトルを求めよ.

    1. の結果から,3本の中線は1点で交わることを説明せよ.

解答を見る
  1. 中点の位置ベクトルは m=b+c2.

  2. AからMへ向かうベクトルは m−a.Aからこのベクトルの 2/3 だけ進んだ点がGなので

g=a+23(m−a)=a+2m3=a+b+c3
  1. g の式は a,b,c について対称である.B から出る中線についても同じ手順で 2:1 の内分点を求めると,同じ a+b+c3 になる.したがって3本の中線は同じ点Gを通り,Gは各中線を頂点側から 2:1 に内分する.この点が重心である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

原点Oから点Pへのベクトルを a=(1, 2, 2),点Qへのベクトルを b=(2, −3, 6) とする.

共通の原点Oから点Pと点Qへ向かうベクトルを示す.投影図の見かけの角度は実際の角度ではない. 共通の原点Oから点Pと点Qへ向かうベクトルを示す.投影図の見かけの角度は実際の角度ではない.
  1. 角 ∠POQ の余弦を求め,角度を小数第1位まで求めよ.

  2. c=(2, k, −1) が a に垂直になるように k を定めよ.

解答を見る
  1. |a|=1+4+4=3,|b|=4+9+36=7,a⋅b=2−6+12=8.したがって

cos⁡∠POQ=a⋅b|a||b|=821≈0.381

で,角はおよそ 67.6∘.

  1. a⋅c=2+2k−2=2k=0 より k=0.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

平行四辺形で,隣り合う2辺を表すベクトルを a,b とする.2本の対角線は a+b と a−b で表される.

隣り合う辺a,bと,二つの対角線a+b,a−bを示す. 隣り合う辺a,bと,二つの対角線a+b,a−bを示す.
  1. |a+b|2+|a−b|2=2(|a|2+|b|2) を示せ.

  2. 2本の対角線の長さが等しい平行四辺形は長方形であることを,内積を使って示せ.

解答を見る
  1. 内積の性質 |X|2=X⋅X と,成分で確かめられる分配法則を使う.

|a+b|2=|a|2+2a⋅b+|b|2,|a−b|2=|a|2−2a⋅b+|b|2

2式を足すと a⋅b の項が消えて,2(|a|2+|b|2) になる.これは「平行四辺形の対角線の2乗の和は,4辺の2乗の和に等しい」という関係である.

  1. |a+b|=|a−b| なら2乗も等しいので,上の展開から 2a⋅b=−2a⋅b,すなわち a⋅b=0.a⟂b なので,隣り合う辺が直角になり,この平行四辺形は長方形である.逆に長方形なら a⋅b=0 で対角線の長さは等しい.

ポイント 教える人へ

  • 最初に「駅から500 m」を示し,何が足りないかを自分の言葉で言わせる.「向き」と答えが出たら,「向きを測る基準は何か」と重ねて,座標系の必要を引き出す.

  • よくあるつまずきは,位置と変位の混同である.位置は原点に依存し,変位は依存しないことを,前の節の例題2のように原点を替えて数値で確かめさせる.

  • 理解の確認には,「東へ3,北へ4進んだ後,西へ3進む.変位と道のりは」のような短い問いが有効である.

  • 内積は式の暗記ではなく,成分の定義と cos⁡θ が一致する理由(余弦定理)まで一度たどらせる.

04速度

問い

車のスピードメーターには「60」と出ています.この数字は,いったい何をどう測った量でしょうか.

「60 km/h」というのは,1時間走ればちょうど60 km進むという意味でしょうか.でも運転手はまだ1時間走っていません.ある一瞬の数字は,どうやって決まるのでしょうか.また,「東京から大阪まで,平均の速さは時速80 km」というときの「平均の速さ」とは,どこが違うのでしょうか.

考えてみる

素朴な考えは「速さ=進んだ距離÷かかった時間」です.これは,ある区間をひとまとめにして見た平均の速さには使えます.しかし,一瞬には距離も時間も測れそうにありません.

そこで,短い時間で考えることにします.スタートから ts 後の位置が x=2t2m で表される物体で,t=1s の速さを知りたいとします.t=1 から t=1+h までの平均の速さは

2(1+h)2−2h=4+2h  [ms−1]

です.h=1,0.1,0.01 なら,順に 6,4.2,4.02ms−1 です.区間を短くするほど,平均の値は 4ms−1 に近づいていきます.この「限りなく近づく値」を,その瞬間の速さと定義するのが自然です.

スピードメーターが示そうとするのも,この極限の値です.一方「平均の速さ」は,全体の距離を全体の時間で割った値で,途中の速さの変化はならされてしまいます.

平均速度と瞬間速度

直線上の運動を考えます.時刻 t1 の位置を x1,時刻 t2 の位置を x2 とします.

定義 平均速度と瞬間速度

平均速度は,変位を所要時間で割った量

v¯=ΔxΔt=x2−x1t2−t1

瞬間速度は,Δt→0 の極限

v=limΔt→0x(t+Δt)−x(t)Δt=dxdt

である.単位は ms−1.

平均速度の分子は変位で,道のりではありません.x 軸の負の向きに進んでいれば v<0 です.速度の符号は向きを表します.

単位の感覚もつかんでおきましょう.1ms−1=3.6km/h なので,人が歩く速さ(時速5 km 弱)は約 1.4ms−1,時速60 km の車は約 17ms−1 です.

速度ベクトル

平面や空間の運動では,位置ベクトル r の変化を同じように考えます.時間 Δt の間の変位 Δr を Δt で割ると,平均の速度ベクトルになります.その極限が瞬間の速度ベクトルです.

定義 速度ベクトルと速さ

v=limΔt→0ΔrΔt=drdt=(dxdt, dydt)

成分ごとに微分すればよい.速度の大きさ v=|v|=vx2+vy2 を速さという.

Δt→0 とすると,軌道上の2点を結ぶ矢印 Δr の向きは,軌道の接線の向きに近づきます.したがって速度ベクトルは,いつも軌道の接線方向を向きます.

曲がった軌道上の点Pと,Pより先の点Qを結ぶ変位ベクトルΔr(橙の矢印).QをPに少しずつ近づけると,変位ベクトルの向きは軌道のPでの接線(青の破線)の向きに近づく.極限では速度ベクトルvが接線の向きを向く. 曲がった軌道上の点Pと,Pより先の点Qを結ぶ変位ベクトルΔr(橙の矢印).QをPに少しずつ近づけると,変位ベクトルの向きは軌道のPでの接線(青の破線)の向きに近づく.極限では速度ベクトルvが接線の向きを向く.

速さと速度の違い

速度はベクトル(直線上では符号つきの数)で,速さはその大きさです.家から店まで行って同じ道で戻ると,変位は 0 なので平均速度も 0 です.ところが,平均の速さは道のり÷時間で,0 ではありません.

ポイント 速度と速さ

  • 速度:向きをもつ(ベクトル).平均速度=変位÷時間.

  • 速さ:速度の大きさ.平均の速さ=道のり÷時間.

  • 平均速度の大きさと平均の速さは,一般には等しくない.

x-tグラフの傾き

位置 x を縦軸,時刻 t を横軸にしたグラフが x-t グラフです.2点 (t1,x1),(t2,x2) を結ぶ線分の傾きが,平均速度 Δx/Δt です.点を近づけていくと,この線分は,その点での接線に近づきます.つまり,

  • 瞬間速度は,x-tグラフの接線の傾き

  • 右上がりなら v>0,右下がりなら v<0,山や谷の頂点では v=0

  • 傾きが急なところほど速さが大きい

[図:x-tグラフの割線と接線]

山と谷のある曲線のx-tグラフ(x=t^3−6t^2+9t,tは0〜4 s).曲線上の2点(t1,t2)を結ぶ橙の割線と,t1での青い接線を描く.割線の傾きが平均速度,接線の傾きが瞬間速度である.スライダーでt1と間隔Δtを変えると,Δtを小さくするほど割線が接線に重なる.

最初の問いの答えをまとめます.スピードメーターの数字は,ごく短い時間の変位を時間で割った値の極限の大きさで,x-tグラフの接線の傾きの大きさに当たります.「平均の速さ」は区間全体の道のり÷時間で,途中の速さの変化は見えません.

ポイント ここまでのまとめ

  • 平均速度は変位÷時間.瞬間速度はその Δt→0 の極限で,v=dxdt である.

  • 速度はベクトル(直線上では符号つきの数)で,速さはその大きさ.平均の速さは道のり÷時間なので,往復では平均速度が0でも0にならない.

  • 速度ベクトルは,軌道の接線の向きを向く.x-tグラフの接線の傾きが瞬間速度である.

  • 問いの答え:メーターの数字は,短い時間の変位を時間で割った値の極限の大きさ.平均の速さは区間全体の道のり÷時間で,途中の変化は見えない.

05速度と微分

前の節で,瞬間速度は極限で定義できることを見ました.位置が時刻の式で与えられているとき,その極限を毎回計算するのは大変です.そこで公式にまとめた道具が微分です.

微分を使って速度を求める

まず,微分の定義と,よく使う関数の微分の公式を整えます.

定理 数学の道具:微分

定義 関数 f(t) の導関数を

f′(t)=dfdt=limh→0f(t+h)−f(t)h

で定める.f′(t) は y=f(t) のグラフの接線の傾き(瞬間的な変化率)である.f′ を求めることを微分するという.

導出(tn の微分) 定義のとおりに計算する.

  • 定数 f=c:c−ch=0.よって f′=0.

  • f=t:(t+h)−th=1.よって f′=1.

  • f=t2:(t+h)2−t2h=2th+h2h=2t+h→2t.

  • f=t3:(t+h)3−t3h=3t2+3th+h2→3t2.

  • 一般の自然数 n:二項定理より (t+h)n=tn+ntn−1h+(h2 を含む項).これを使うと (t+h)n−tnh=ntn−1+(h を含む項)→ntn−1.

公式

(tn)′=ntn−1,(cf)′=cf′,(f+g)′=f′+g′

(c は定数).後ろの2つは,極限が定数倍や和でそのまま成り立つことから従う.

上では n を自然数として導いたが,(tn)′=ntn−1 は n が負の整数や分数でも(t>0 で)成り立つ(一般の場合の証明は省く.n=−1 は練習 (3) で確かめる).たとえば (1t)′=(t−1)′=−1t2,(t)′=(t1/2)′=12t.

積の微分 f(t+h)g(t+h)−f(t)g(t) を,間に f(t)g(t+h) を足し引きして

f(t+h)g(t+h)−f(t)g(t)h=f(t+h)−f(t)hg(t+h)+f(t)g(t+h)−g(t)h

と変形する.h→0 で g(t+h)→g(t) なので,

(fg)′=f′g+fg′

である.

練習.

  1. x=3t2+2t の速度 v=dxdt を求め,t=2 のときの値を求めよ.

  2. x=(t+1)(t2−2t) を,積の微分と,先に展開してからの微分の2通りで計算し,一致を確かめよ.

  3. 定義にしたがって f=1t の導関数を求め,(tn)′=ntn−1 の n=−1 の場合と一致することを確かめよ.

  4. 次の関数を t で微分せよ.(a) 4t3−5t+7 (b) 2t (c) 3t2 (d) t2(t−1)2

  5. 位置が x=5t−t2[m] の物体について,t=1.0s から 1.1s までの平均速度と,t=1.0s の瞬間速度を求めて比べよ.

答え:(1) 和と定数倍の公式より v=3⋅2t+2⋅1=6t+2.t=2 のとき v=14. (2) 積の微分:1⋅(t2−2t)+(t+1)(2t−2)=3t2−2t−2.展開:x=t3−t2−2t より x′=3t2−2t−2.一致する. (3) 1h(1t+h−1t)=−1t(t+h)→−1t2.n=−1 の公式 −t−2 と一致する. (4) (a) 12t2−5 (b) 2⋅12t=1t (c) 3⋅(−2)t−3=−6t3 (d) 展開して t4−2t3+t2 を微分すると 4t3−6t2+2t=2t(t−1)(2t−1)(積の微分でも同じ). (5) x(1.0)=4.0m,x(1.1)=4.29m より平均速度は 0.29/0.1=2.9ms−1.v=5−2t より瞬間速度は 3.0ms−1.区間を短くすると平均速度は 3.0 に近づく.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

直線上を動く物体の位置が x=t3−6t2+9t[m](t は秒)で表される.

問題で与えられたxと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない. 問題で与えられたxと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない.
  1. 速度 v(t) を求め,t=0,2,4s の値を求めよ.

  2. 速度が0になる時刻と,そのときの位置を求めよ.

  3. t=0 から t=4s までの平均速度と平均の速さを求めよ.

解答を見る

考え方 位置の式を時間で微分すれば速度である.折返しの位置を調べると,道のりが分かる.

  1. v=dxdt=3t2−12t+9=3(t−1)(t−3)[ms−1].したがって v(0)=9,v(2)=3⋅1⋅(−1)=−3,v(4)=3⋅3⋅1=9(いずれも ms−1).

  2. v=0 より t=1s と t=3s.位置は x(1)=1−6+9=4m,x(3)=27−54+27=0m.v の符号は,t<1 で正,1<t<3 で負,t>3 で正なので,t=1,3 で向きを変える.

  3. x(0)=0,x(4)=64−96+36=4m.平均速度は 4−04=1ms−1.

道のりは,0→4m,4→0m,0→4m と動いた合計で 4+4+4=12m.平均の速さは 124=3ms−1.

例題 2

オリジナル ★☆☆☆☆

直線上を動く物体の x-t グラフが,次の3本の線分をつないだものである.t=0 で x=0,t=2s で x=6m,t=4s でも x=6m,t=8s で x=−2m.

  1. 各区間(0〜2 s,2〜4 s,4〜8 s)の速度を求めよ.

  2. 物体が原点を通る時刻をすべて求めよ.

  3. 0〜8 s の平均速度と平均の速さを求めよ.

横軸t(0〜8 s),縦軸x(−2〜6 m)のx-tグラフ.(0,0),(2,6),(4,6),(8,−2)を直線で結んだ折れ線で,0〜2 sでは右上がり,2〜4 sでは水平,4〜8 sでは右下がりになる. 横軸t(0〜8 s),縦軸x(−2〜6 m)のx-tグラフ.(0,0),(2,6),(4,6),(8,−2)を直線で結んだ折れ線で,0〜2 sでは右上がり,2〜4 sでは水平,4〜8 sでは右下がりになる.
解答を見る

考え方 直線の区間では,傾きが速度である.

  1. 0〜2 s:6−02=3ms−1.2〜4 s:位置が変わらないので 0.4〜8 s:−2−64=−2ms−1.

  2. t=0 と,最後の区間で x=6−2(t−4)=0 となる t=7s.

  3. 平均速度は −2−08=−0.25ms−1.道のりは 6+8=14m なので,平均の速さは 148=1.75ms−1.

折れ線の角では速度が一瞬で変わっており,接線の傾きは決まらない.これは現実を簡単にした理想化である.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

平面上を動く物体の位置が r=(2t, 4t−t2)[m] で表される.

位置r=(2t,4t−t²)で与えられる平面運動の軌道と座標軸を示す.速度は描かない. 位置r=(2t,4t−t²)で与えられる平面運動の軌道と座標軸を示す.速度は描かない.
  1. 速度ベクトル v(t) を求めよ.

  2. t=1s の速度ベクトル,速さ,向きを求めよ.

解答を見る

考え方 成分ごとに微分する.

  1. vx=d(2t)dt=2,vy=d(4t−t2)dt=4−2t より,v=(2, 4−2t)ms−1.

  2. t=1 で v=(2,2)ms−1.速さは 22+22=22≈2.8ms−1.向きは x 軸から 45∘ 上向き.

ポイント ここまでのまとめ

  • 導関数 f′(t)=limh→0f(t+h)−f(t)h は,グラフの接線の傾きである.位置を微分すれば速度になる.

  • 公式:(tn)′=ntn−1(n は負の整数や分数でもよい),(cf)′=cf′,(f+g)′=f′+g′,(fg)′=f′g+fg′.

  • v の符号が変わる時刻(v=0)で向きを変える.道のりは,向きを変える位置で区間を分けて求める.

  • 平面運動の速度ベクトルは,位置の成分をそれぞれ微分して得る.

06速度の演習

平均速度と瞬間速度,速さと速度の違いを,式とグラフの両方から確かめます.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

位置が x=2t2+t[m] の物体について,次を求めよ.

問題で与えられたxと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない. 問題で与えられたxと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない.
  1. t=1s から 2s,1s から 1.1s,1s から 1.01s の平均速度.

  2. t=1s の瞬間速度.(1) の値とどう関係するか.

解答を見る

x(1)=3m.

  1. x(2)=10 より 10−31=7ms−1.x(1.1)=2(1.21)+1.1=3.52 より 3.52−30.1=5.2ms−1.x(1.01)=2(1.0201)+1.01=3.0502 より 0.05020.01=5.02ms−1.

  2. v=dxdt=4t+1 より v(1)=5ms−1.区間の幅 h の平均速度は 5+2h と書け,h→0 で 5ms−1 に近づく.(1) の値もそうなっている.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

家から店までの道のりを L とし,行きは速さ 6.0km/h,帰りは同じ道を速さ 4.0km/h で,それぞれ一定の速さで歩く.

距離Lの同じ道を,行き6.0 km/h,帰り4.0 km/hで歩く. 距離Lの同じ道を,行き6.0 km/h,帰り4.0 km/hで歩く.
  1. 往復全体の平均の速さを求めよ.

  2. 往復全体の平均速度を求めよ.

  3. 行きの速さを v1,帰りの速さを v2 として,(1) を文字で表せ.v1 と v2 の平均 (v1+v2)/2 とは同じか.

解答を見る
  1. 行きの時間は L/6.0,帰りは L/4.0.合計の時間は L(16.0+14.0)=5L12h.道のりは 2L.平均の速さは 2L5L/12=245=4.8km/h.L によらない.

  2. 出発点に戻るので変位は 0.平均速度は 0.

  3. 時間の合計は L(1v1+1v2)=Lv1+v2v1v2 で,平均の速さは 2LL(v1+v2)/(v1v2)=2v1v2v1+v2.算術平均 5.0 とは異なる(遅い速さの時間のほうが長いため).v1=v2 のときだけ一致する.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

位置が x=Asin⁡ωt(A>0,ω>0 は定数.t は秒,x は m)で表される振動を考える.三角関数の微分は加速度の節で学ぶので,ここでは θ→0 で sin⁡θθ→1 となることだけを認める.

x軸上の振動の範囲と原点を示す.速度と加速度は描かない. x軸上の振動の範囲と原点を示す.速度と加速度は描かない.
  1. t=0 の速度を,微分の定義にしたがって求めよ.

  2. 周期 T を求めよ.また x-t グラフの形から,v=0 になる時刻と,速さが最大になる時刻を T で表せ(0≤t≤T).

  3. 速さの最大値を求めよ.

解答を見る
  1. v(0)=limh→0Asin⁡(ωh)−0h=limh→0Aωsin⁡(ωh)ωh=Aω.

  2. ωT=2π より T=2π/ω.x-t グラフは t=0 で原点を通り,t=T/4 で最大値 A,t=T/2 で再び原点,t=3T/4 で最小値 −A をとる.接線が水平になるのは山と谷の頂点なので,v=0 は t=T/4, 3T/4.傾きが最も急なのは原点を横切る t=0, T/2, T で,このとき速さが最大.

  3. t=0 の速度が Aω だった.t=T/2 ではグラフが点対称なので,傾きの絶対値は同じ.速さの最大値は Aω.加速度の節で v=Aωcos⁡ωt と求めるものと,この最大値は一致する.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

位置が x=t3−9t2+24t[m] で表される物体がある.

問題で与えられたxと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない. 問題で与えられたxと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない.
  1. 速度が0になる時刻と,そのときの位置を求めよ.

  2. t=0 から 5s までの変位,道のり,平均速度,平均の速さを求めよ.

解答を見る
  1. v=3t2−18t+24=3(t−2)(t−4).v=0 は t=2s と 4s.x(2)=8−36+48=20m,x(4)=64−144+96=16m.

  2. v の符号は t<2 で正,2<t<4 で負,t>4 で正.よって 0→20m(t=0 から 2),20→16m(2 から 4),16→x(5)(4 から 5)と動く.x(5)=125−225+120=20m.

変位:x(5)−x(0)=20m.道のり:20+4+4=28m.平均速度:20/5=4ms−1.平均の速さ:28/5=5.6ms−1.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

一直線上の道路で,車Aが位置 xA=15+2t[m](等速),その後ろから車Bが位置 xB=8t−t2[m] で動く(0≤t≤4s).

時刻0でBは原点,Aはその15 m前方にいる.位置の時間変化は問題文で与えられる. 時刻0でBは原点,Aはその15 m前方にいる.位置の時間変化は問題文で与えられる.
  1. 2台の速度 vA,vB を求めよ.

  2. 2台の距離 d=xA−xB が最小になる時刻と,その最小値を求めよ.

    1. の時刻に2台の速度にどんな関係が成り立つか.d を時間で微分して説明せよ.

解答を見る
  1. vA=2ms−1,vB=8−2t[ms−1].

  2. d=15+2t−(8t−t2)=t2−6t+15=(t−3)2+6.t=3s で最小値 6m.d>0 なので,BはAに追いつかない.

  3. t=3 で vB=2=vA,すなわち速度が等しい.d を微分すると

dddt=dxAdt−dxBdt=vA−vB

で,これは2台が近づく・離れる割合を表す.t<3 では vB>vA なので d は減り,t>3 では vB<vA なので d は増える.減る状態から増える状態に移る瞬間に最小になり,その瞬間は dddt=0,つまり速度が等しい.

ポイント 教える人へ

  • 問いの「メーターの数字」は,何を測った量かを言葉で言わせる.「1時間後に進む距離」と答えが出たら,その時間がまだ経っていないことを指摘して,短い時間の平均を縮める流れへ誘導する.

  • h=1,0.1,0.01 と表を作らせると,極限を実感できる.

  • よくあるつまずきは,速度と速さの混同(特に往復)と,dxdt を単なる割り算と読むことである.

  • 確かめには,x-tグラフに接線を引き,傾きが公式の値と合うかを見させるのが有効である.

07加速度

問い

電車の中で立っていると,体が押されると感じることがあります.どんなときに,どちら向きに押されるでしょうか.

もう1つ考えてください.電車が一定の速さのままカーブを曲がるときも,体は押されます.速さが変わっていないのに「押される」ことは,あるのでしょうか.

考えてみる

思い出してみてください.発車するとき,体は後ろへ押されます.ブレーキをかけると前へ,カーブでは外側へ押されます.一方,まっすぐ一定の速さで走っているときは,止まっているのと区別がつきません.

つまり,押される感覚は「速さ」そのものではなく,速度が変わることと結びついているようです.しかも発車・ブレーキは速さが変わる場合,カーブは速さが同じで向きが変わる場合です.速度は向きをもつベクトルなので,向きだけが変わっても「速度が変わった」ことになります.この節では,速度の変化の割合を表す量,加速度を作ります.そうすれば,カーブで押される理由も,加速度の向きとして整理できます.(なぜ体が「押される」と感じるのかは,第4章「力と運動の法則」の慣性の節で扱います.ここでは,感じる向きが加速度と逆向きだと覚えておいてください.)

加速度の定義

位置の変化の割合が速度でした.その速度が変化する割合が加速度です.

定義 加速度

時刻 t1 の速度が v1,t2 の速度が v2 のとき,平均加速度は

a¯=ΔvΔt=v2−v1t2−t1

瞬間加速度(加速度)は,その極限

a=dvdt=(dvxdt, dvydt)

単位は ms−2.直線上では a=dvdt である.

速度は位置の時間微分,加速度は速度の時間微分なので,位置を2回微分したものが加速度です.これを2階微分といい,

a=ddt(dxdt)=d2xdt2

と書きます.d2xdt2 は「d の2乗」ではなく,2回微分を表す記号です.

単位 ms−2 は,「1秒あたりに速度が何 ms−1 変わるか」を表します.たとえば通勤電車の発車時の加速度は 1ms−2 弱で,1秒ごとに速度がそのくらいずつ増えます.落下する物体の加速度は約 9.8ms−2 で,1秒ごとに速度が約 9.8ms−1 ずつ増えます.

加速度の向き

直線上では,速度の符号と加速度の符号を組にして考えます.v と a が同符号なら速さは増え,異符号なら速さは減ります.たとえば v<0(負の向きに進む)で a>0 なら,減速しています.「a>0=加速」とは限りません.

平面では,平均加速度の向きは Δv の向きです.a を速度に平行な成分と垂直な成分に分けて考えると,平行な成分は速さの変化を,垂直な成分は向きの変化を表します.

  • 発車・ブレーキ:a は速度に平行(進行方向,またはその逆).

  • 一定の速さのカーブ:a は速度に垂直で,曲がる側(カーブの内側)を向く.

左は曲がる道路を走る車の軌道で,点1の速度v1と点2の速度v2を青い矢印で示す.右はv2をv1と同じ始点に移し,v1の先からv2の先へ緑の矢印でΔv=v2−v1を引く.Δvは軌道の内側(曲がる側)を向き,加速度の向きと一致する. 左は曲がる道路を走る車の軌道で,点1の速度v1と点2の速度v2を青い矢印で示す.右はv2をv1と同じ始点に移し,v1の先からv2の先へ緑の矢印でΔv=v2−v1を引く.Δvは軌道の内側(曲がる側)を向き,加速度の向きと一致する.

最初の問いの答えは次のようになります.カーブで押されるのは,速さが一定でも速度の向きが変わるので,加速度(内向き)があるからです.感じる向きは加速度と逆の外向きになります.

グラフの対応

速度が x-t グラフの接線の傾きであったのと同様に,加速度は v-t グラフの接線の傾きです.x-t,v-t,a-t の3つのグラフは,次のように対応します.

グラフ

値

傾きは

x-t

位置 x

速度 v

v-t

速度 v

加速度 a

a-t

加速度 a

(この本では扱わない)

x-t が下に凸(傾きが増える)なら a>0,上に凸なら a<0 です.

ポイント ここまでのまとめ

  • 加速度は速度の時間変化率で,a=dvdt.位置を2回微分したもの(a=d2xdt2)でもある.

  • 直線上では,v と a が同符号なら加速,異符号なら減速.a>0 だけでは加速と決まらない.

  • 速さが一定でも,向きが変われば Δv≠0 なので加速度がある.カーブでの加速度は曲がる側(内側)を向く.

  • v-tグラフの接線の傾きが加速度である.

  • 問いの答え:カーブで押されるのは,速度の向きが変わる(内向きの加速度がある)から.感じる向きは加速度と逆の外向き.

08加速度と微分の道具

微分のさらなる道具

位置が sin⁡ωt のような形で書ける運動を扱うために,2つの道具を用意します.

定理 数学の道具:合成関数の微分と三角関数の微分

連鎖律 y=f(u),u=g(t) のとき,

dydt=dydu⋅dudt

導出 t が Δt 変わったとき u が Δu,y が Δy 変わるとすると,ΔyΔt=ΔyΔu⋅ΔuΔt.Δt→0 で Δu→0 なので,右辺は f′(u)g′(t) に近づく(ここでは Δu≠0 の場合を示した.u が定数のときは y も定数で,両辺とも 0 なので公式は成り立つ). たとえば x=(3t+1)2 は u=3t+1 として 2u⋅3=6(3t+1).展開して x=9t2+6t+1 を微分した 18t+6 と一致する.

三角関数の微分(角はラジアンで測る)

(sin⁡θ)′=cos⁡θ,(cos⁡θ)′=−sin⁡θ

導出 高校で学ぶ加法定理 sin⁡(α+β)=sin⁡αcos⁡β+cos⁡αsin⁡β(放物運動の節で復習します.まだ習っていなければ,ここでは認めて進んでください)で α=θ,β=h とおくと sin⁡(θ+h)−sin⁡θ=sin⁡θ(cos⁡h−1)+cos⁡θsin⁡h.両辺を h で割り,次の2つの極限を使う.

単位円の第1象限に角h(ラジアン)の扇形を描き,同じ弧を持つ3つの図形を並べる.左は扇形に内接する三角形で面積は½sin h,中央は扇形で面積は½h,右は外接する三角形で面積は½tan h.面積の大小は½sin h<½h<½tan h. 単位円の第1象限に角h(ラジアン)の扇形を描き,同じ弧を持つ3つの図形を並べる.左は扇形に内接する三角形で面積は½sin h,中央は扇形で面積は½h,右は外接する三角形で面積は½tan h.面積の大小は½sin h<½h<½tan h.
  • limh→0sin⁡hh=1(図の面積の大小 sin⁡h<h<tan⁡h より cos⁡h<sin⁡hh<1,h→0 で cos⁡h→1 から,挟み込みで従う.)

  • cos⁡h−1h=−sin⁡hh⋅sin⁡h1+cos⁡h→−1⋅0=0

よって (sin⁡θ)′=cos⁡θ.また cos⁡θ=sin(θ+π2) に連鎖律を使うと (cos⁡θ)′=cos(θ+π2)=−sin⁡θ.

角速度を含む形 ω を,角が時間とともに増える割合を表す定数とします(くわしい定義はこの章の最後の円運動の節で扱います).u=ωt として連鎖律を使うと

ddtsin⁡ωt=ωcos⁡ωt,ddtcos⁡ωt=−ωsin⁡ωt

練習.

  1. ddtsin⁡3t,ddtcos⁡(2t+1) を求めよ.

  2. ddt(sin⁡t)2 を求めよ.

  3. ddt(2t2+1)3 と ddt(tsin⁡t) を求めよ.

  4. 位置が x=0.20sin⁡(5.0t)[m](t は秒)の運動について,速度 v と加速度 a を求め,速さの最大値と加速度の大きさの最大値を答えよ.

答え:(1) 3cos⁡3t,−2sin⁡(2t+1). (2) u=sin⁡t とすると u2 の微分は 2u で dudt=cos⁡t なので,2sin⁡tcos⁡t. (3) u=2t2+1 として 3u2⋅4t=12t(2t2+1)2.積の微分で sin⁡t+tcos⁡t. (4) v=0.20×5.0cos⁡(5.0t)=1.0cos⁡(5.0t)ms−1,a=−5.0sin⁡(5.0t)ms−2.速さの最大値は 1.0ms−1,加速度の大きさの最大値は 5.0ms−2.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

直線上を動く物体の v-t グラフが,次の折れ線である.t=0 で v=0,t=2s で v=4ms−1,t=6s で v=4ms−1,t=10s で v=0(各区間は直線).t=0 の位置を x=0 として,a-t グラフと x-t グラフの形を求めよ.

解答を見る

考え方 加速度は v-t グラフの傾き.位置は,傾きが速度になるように x-t を作る(面積の考え方は「速度から位置へ」で学ぶ).

加速度(v-t の傾き):0〜2 s は 4−02=2ms−2,2〜6 s は 0,6〜10 s は 0−44=−1ms−2.

位置:0〜2 s は v=2t なので x=t2(微分すると 2t,x(0)=0).x(2)=4m.2〜6 s は等速で x=4+4(t−2),x(6)=20m.6〜10 s は v=4−(t−6) なので,x=20+4(t−6)−12(t−6)2(微分すると 4−(t−6) になる).x(10)=20+16−8=28m.

x-t は,0〜2 s で下に凸,2〜6 s で直線,6〜10 s で上に凸になり,つなぎ目で傾きがなめらかに接続する.最後は傾きが 0 になる(停止).a-t は v の傾きが急に変わるところで,値が飛ぶ.

既知の速度と時刻の関係だけを示す.加速度と位置のグラフは設問で求める. 既知の速度と時刻の関係だけを示す.加速度と位置のグラフは設問で求める.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

速さ 20ms−1 で東へ走る車が,交差点で曲がり,5.0 s 後には速さ 20ms−1 で北へ走っていた.この間の平均加速度ベクトルの大きさと向きを求めよ.速さは変わっていないのに,加速度は0か.

東向きと北向きの速度を共通の始点から描く.両方の速さは20 m s⁻¹で,時間差は5.0 s. 東向きと北向きの速度を共通の始点から描く.両方の速さは20 m s⁻¹で,時間差は5.0 s.
解答を見る

考え方 平均加速度は速度ベクトルの差を時間で割る.差はベクトルとして計算する.

東を x,北を y の正の向きとすると,v1=(20,0)ms−1,v2=(0,20)ms−1.

Δv=v2−v1=(−20, 20)ms−1,a¯=Δv5.0s=(−4.0, 4.0)ms−2

大きさは 4.02≈5.7ms−2,向きは北西(x 軸から 135∘).

速さは同じでも,向きが変わったので Δv≠0 であり,加速度は0でない.北西は,東から北へ曲がる車の曲がる側(内側)にあたる.

ポイント ここまでのまとめ

  • 連鎖律:y=f(u),u=g(t) のとき dydt=dydu⋅dudt.

  • 三角関数の微分(角はラジアン):(sin⁡θ)′=cos⁡θ,(cos⁡θ)′=−sin⁡θ.角速度を含む形は ddtsin⁡ωt=ωcos⁡ωt,ddtcos⁡ωt=−ωsin⁡ωt.

  • v-tグラフの傾きから a-t グラフができ,x-tグラフは傾きが v になるようにつないで描く.

  • 平面運動の平均加速度は,速度の差をベクトルとして計算して Δt で割る.速さが同じでも0とは限らない.

09加速度の演習

加速度の符号とグラフの対応,向きだけが変わる運動の加速度を確かめます.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

x-t グラフが,0≤t≤3s で x=t2[m],3≤t≤6s で x=9+6(t−3)[m] である.v-t グラフと a-t グラフを求めよ.

問題で与えられたxと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない. 問題で与えられたxと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない.
解答を見る

0〜3 s:v=dxdt=2t,a=dvdt=2ms−2.t=3 で v=6ms−1.
3〜6 s:v=6ms−1(一定),a=0.

v-t は原点から傾き 2 で直線的に増え,t=3 以降は水平.v は t=3 でつながっている(x の傾きに飛びがないため).a-t は,a=2 が t=3 で 0 に飛ぶ階段状.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

位置が x=2t2−8t[m] の物体について,v と a を求め,t=1s,2s,3s のそれぞれで,加速と減速のどちらかを答えよ.

問題で与えられたxと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない. 問題で与えられたxと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない.
解答を見る

v=4t−8[ms−1],a=4ms−2(一定).
t=1:v=−4,a=4 で異符号なので減速(負の向きに進みながら速さが減る).t=2:v=0(折返し).t=3:v=4,a=4 で同符号なので加速.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

位置が x=Acos⁡ωt(A,ω は正の定数)で表される運動の速度 v と加速度 a を求めよ.また,a が x を使って a=−ω2x と書けることを示し,この式の意味を述べよ.

x軸上の振動の範囲と原点を示す.速度と加速度は描かない. x軸上の振動の範囲と原点を示す.速度と加速度は描かない.
解答を見る

連鎖律と (cos⁡θ)′=−sin⁡θ より

v=dxdt=−Aωsin⁡ωt,a=dvdt=−Aω2cos⁡ωt

Acos⁡ωt=x なので a=−ω2x.

意味:加速度は,原点からのずれ x に比例し,常に原点向き(x と逆符号)である.x>0 では a<0 で原点へ戻され,x<0 では a>0 でやはり原点へ戻される.この形の運動を単振動といい,第4章以降で力の法則と結びつく.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

速さ 15ms−1 で東へ走る車が,3.0 s かけて曲がり,速さ 15ms−1 のまま東から北へ 60∘ だけ向きを変えた.

曲がる前後の速さ15 m s⁻¹の速度を共通の始点から描く.二つの向きの角は60°. 曲がる前後の速さ15 m s⁻¹の速度を共通の始点から描く.二つの向きの角は60°.
  1. この間の平均加速度ベクトルの大きさと向きを求めよ.

  2. 速さが一定の運動では,加速度(瞬間)は速度に垂直であることを,v2=vx2+vy2 を時間で微分して示せ.

  3. ブレーキを踏みながら曲がるとき,加速度は,速度に垂直な向きからどちら側に傾くか.

解答を見る
  1. 東を x,北を y の正の向きとして,v1=(15,0),v2=(15cos⁡60∘, 15sin⁡60∘)=(7.5, 13.0).Δv=(−7.5, 13.0)ms−1 なので

a¯=Δv3.0=(−2.5, 4.3)ms−2

大きさは 2.52+4.32≈5.0ms−2.向きは x 軸から約 120∘(北から西へ約 30∘).これは v1 と v2 の中間の向き(30∘)に垂直で,曲がる側(左)を向く.

  1. v2=vx2+vy2 の両辺を t で微分する.連鎖律より左辺は 2vdvdt,右辺は 2vxax+2vyay=2v⋅a.よって

dvdt=v⋅av

速さが一定なら dvdt=0 なので v⋅a=0,すなわち a⟂v.

    1. の式から,速さが減る(dvdt<0)とき v⋅a<0.したがって a は,垂直な向き(曲がる側)に加え,速度と逆向きの成分ももつ.曲がる側を向いたまま,後ろ側に傾く.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

物体の位置ベクトルが r=(3cos⁡ωt, 2sin⁡ωt)[m],ω=2.0rads−1 で表される(楕円上の運動).

x方向の半径3 m,y方向の半径2 mの楕円と,中心から点への位置ベクトルを示す. x方向の半径3 m,y方向の半径2 mの楕円と,中心から点への位置ベクトルを示す.
  1. 速度 v と加速度 a を求めよ.

  2. a=−ω2r を示せ.この運動の加速度は一定か.

  3. 加速度の大きさが最大・最小になる位置と,その値を求めよ.

解答を見る
  1. 成分ごとに連鎖律で微分して

v=(−3ωsin⁡ωt, 2ωcos⁡ωt),a=(−3ω2cos⁡ωt, −2ω2sin⁡ωt)
  1. a=−ω2(3cos⁡ωt, 2sin⁡ωt)=−ω2r.加速度は常に原点(楕円の中心)を向くが,大きさ ω2|r| と向きは時間とともに変わるので,一定ではない.等加速度運動の公式は使えない.

  2. |a|=ω2|r|=ω29cos2⁡ωt+4sin2⁡ωt.|r| は,長軸の端 (±3,0) で最大,短軸の端 (0,±2) で最小である.したがって最大は 4.0×3=12ms−2((±3,0) のとき),最小は 4.0×2=8.0ms−2((0,±2) のとき).

ポイント 教える人へ

  • 問いでは,電車で押される向きを実際に思い出して答えさせ,「速さが同じカーブでも押されるのはなぜか」と重ねて尋ねる.ここから「加速度は速度の変化の割合で,速度はベクトル」へ導く.

  • つまずきやすいのは,「a>0 なら加速」と決めつけることと,「速さが一定なら加速度は0」と思うことである.前の節の例題2で,速度の差をベクトルとして計算させる.

  • 連鎖律は,sin⁡3t の微分で 3 が出る理由を,「3t が t の3倍の速さで進むから」と言葉で説明させると定着する.

  • 確かめには,v-t グラフを描かせて,傾きから a-t グラフを作れるかを見る.

10速度から位置へ

問い

電車の速度計の記録だけが残っています.駅を出てから次の駅に止まるまでの40秒間について,横軸に時刻 t,縦軸に速度 v をとったv-tグラフを描いたところ,次のようになりました.出発から10 sまでは速度が0から 20ms−1 まで一定の割合で増え,10 sから30 sまでは 20ms−1 のまま,30 sから40 sまでは一定の割合で減って0になります.

横軸が時刻t(単位s),縦軸が速度v(単位m/s)のグラフ.原点から点(10,20)まで直線で上がり,(30,20)まで水平に進み,(40,0)まで直線で下がる台形の折れ線. 横軸が時刻t(単位s),縦軸が速度v(単位m/s)のグラフ.原点から点(10,20)まで直線で上がり,(30,20)まで水平に進み,(40,0)まで直線で下がる台形の折れ線.

この電車は40秒間に何m走ったでしょうか.グラフに書かれているのは速度だけで,位置は書かれていません.それでも距離は分かるのでしょうか.分かるなら,グラフのどこを見ればよいのでしょうか.まず自分で考えてみてください.

考えてみる

速度が一定の区間なら,話は簡単です.速度 v で時間 Δt だけ進めば,進んだ距離は vΔt です.これはv-tグラフでは,高さ v,幅 Δt の長方形の面積にあたります.10 sから30 sの区間は,高さ20,幅20の長方形なので,20×20=400m です.

速度が変わる区間はどうでしょうか.0 sから10 sは速度が一定の割合で増えるので,平均の速度は真ん中の 10ms−1 で,10×10=100m 進みます.これは三角形の面積 12×10×20 と同じです.30 sから40 sも同じ形で100 mです.合計は

100+400+100=600m

となり,台形の面積と一致します.問いの答えは「v-tグラフと横軸で囲まれた面積」でした.

では,速度が曲線を描いて変わるときはどうでしょうか.面積は公式では求まりません.そこでこの節では,面積を「細かく切って足し合わせる」という考え方で一般の場合に広げます.計算の道具である積分は,次の節で整えます.ここまでの微分は位置から速度を求める操作でした.積分はその逆向きの道具です.

面積が変位になるわけ

位置 x(t) が分からず,速度 v(t) だけ分かっているとします.時刻 t1 から t2 までの変位 x(t2)−x(t1) を知りたいとき,この時間を短い区間に細かく刻みます.1つの区間の幅 Δt が十分に小さければ,その間に速度はほとんど変わらないので,その区間の速度を v とみなして

Δx≈vΔt

と近似できます.これは幅 Δt,高さ v の細い長方形の面積です.全区間の変位は,各区間の変位の和なので,細い長方形の面積をすべて足せば,求める変位が近似的に得られます.区間を細かくするほど近似はよくなります.

定義 定積分(区分求積)

区間 a≤t≤b を n 等分し,幅を Δt=b−an,分点を tk=a+kΔt とする.このとき

∫abv(t)dt=limn→∞∑k=1nv(tk)Δt

を,v(t) の a から b までの定積分という.v-tグラフと横軸にはさまれた部分の面積を表す.ただし横軸より下にある部分の面積は負として数える.

物理では ∫abvdt が「a から b までの変位」です.記号 ∫ は和(Sum)の頭文字Sを縦に伸ばしたもので,dt は「限りなく小さくした幅 Δt」を表します.

例として v=3t2 の0 sから1 sまでを,4等分,10等分,100等分で計算してみます.tk=k/n,Δt=1/n なので,和は

∑k=1n3(kn)21n=3n3⋅n(n+1)(2n+1)6=(n+1)(2n+1)2n2

です.n=4 なら1.406,n=10 なら1.155,n=100 なら1.015で,n→∞ で 1 に近づきます.つまり ∫013t2dt=1 です.毎回このように和をとるのは大変なので,次に近道を探します.

変位と道のりのちがい

定積分は,横軸より下の部分を負の面積として数えます.速度が負とは逆向きに進むことなので,往復すれば行きと帰りの変位は打ち消し合います.一方,動いた長さの合計である道のりは,戻る間も増え続けます.

ポイント 変位と道のり

変位は ∫abvdt,道のりは ∫ab|v|dt である.速度が途中で符号を変えるときは,符号が変わる時刻で区間を分け,区間ごとに面積の大きさを足し合わせて道のりを求める.

ポイント ここまでのまとめ

  • 速度が一定なら変位は vΔt.v-tグラフでは高さ v,幅 Δt の長方形の面積にあたる.

  • 速度が変わるときも,時間を細かく刻んで長方形の面積を足し合わせれば変位が得られる.その極限が定積分 ∫abvdt で,v-tグラフと横軸で囲まれた面積(横軸の下は負)である.

  • 変位は ∫vdt,道のりは ∫|v|dt.速度が符号を変えるときは区間を分ける.

  • 問いの答え:台形の面積から,電車は40秒間に 600m 走った.

11速度から位置へと積分

前の節で,v-tグラフの面積が変位になることを見ました.毎回細い長方形を足し合わせるのは大変なので,ここでは微分の逆向きの操作を使った近道を作り,積分の道具として整えます.

原始関数と微積分学の基本定理

前の節の結果をよく見てください.v=3t2 の0から1までの変位が1でした.ところが x=t3 を微分すると 3t2 になり,x(1)−x(0)=1−0=1 と一致します.これは偶然ではありません.

定義 原始関数と不定積分

微分すると f(t) になる関数 F(t),すなわち F′(t)=f(t) を満たす F を,f の原始関数という.原始関数は定数だけの違いを除いて決まるので,

∫f(t)dt=F(t)+C(C は積分定数)

と書き,不定積分という.

定理 微積分学の基本定理

F が v の原始関数であるとき,

∫abv(t)dt=F(b)−F(a)

が成り立つ.右辺を [F(t)]ab とも書く.

証明の筋だけ述べます(v は連続とします).定積分の上端を動かして S(t)=∫atv(s)ds という関数を作ります.時刻が h だけ進むと,S は幅 h の細い帯の面積だけ増えます.h が小さければ帯はほぼ長方形で,高さは v(t) なので

S(t+h)−S(t)≈v(t)h⟹S(t+h)−S(t)h→v(t)(h→0)

となり,S′(t)=v(t) です.すなわち S は v の原始関数の1つです.ほかの原始関数 F との差 F−S は,微分すると0になるので定数であり,F(b)−F(a)=S(b)−S(a)=S(b) となります.これが定理の中身です.

運動の言葉に直すと,「位置を微分すると速度」の逆として「速度を積分すると位置の変化」が成り立ちます.時刻 t の位置は,初めの位置に,そこまでの変位を加えて

x(t)=x(0)+∫0tv(s)ds

と書けます.不定積分で書くなら x(t)=F(t)+C で,積分定数 C を決めるのが初期条件 x(0)=x0 です.速度から位置を求めるには,速度だけでは足りず,出発点の位置という情報が1つ必要です.同じ速度でも,どこから出発したかで位置は変わるからです.加速度 a(t) から速度を求めるときも同じで,v(t)=v(0)+∫0ta(s)ds となり,初速度が必要です.

定理 数学の道具:積分

べき関数,三角関数,指数関数の原始関数は,微分の公式を逆に読んで得られる.C は積分定数,k は0でない定数,ω も0でない定数とする(k=0 なら ekt=1 で ∫dt=t+C,ω=0 なら sin⁡(ωt)=0 で積分は定数 C となる).指数関数の微分 (ekt)′=kekt は高校数学の結果としてそのまま使う.

∫tndt=tn+1n+1+C (n≠−1),∫sin⁡tdt=−cos⁡t+C,∫cos⁡tdt=sin⁡t+C,∫ektdt=ektk+C

定数倍と和は項ごとに積分できます.

∫(αf+βg)dt=α∫fdt+β∫gdt

確かめ方は,右辺を微分して被積分関数に戻ることを見るだけです.また sin⁡(ωt) のように中身が ωt のときは,微分で ω が出てくることを逆に使って

∫sin⁡(ωt)dt=−cos⁡(ωt)ω+C

です.定積分は,原始関数を1つ見つけて端点の値の差をとります.

∫132tdt=[t2]13=9−1=8

練習 1. ∫02(3t2−4t+1)dt を求めよ.

練習 2. ∫0π/2cos⁡tdt と ∫0πsin⁡tdt を求めよ.

練習 3. ∫14tdt,∫0πsin⁡2tdt,∫01e2tdt を求めよ(∫tndt の公式は n=12 のような分数でも使える).

練習 4. 速度が v=4−2t[ms−1] の物体について,t=0 から 3s までの変位と道のりを求めよ.

答え:(1) 原始関数は t3−2t2+t なので,8−8+2=2.(2) [sin⁡t]0π/2=1,[−cos⁡t]0π=1−(−1)=2.(3) [23t3/2]14=23(8−1)=143.[−12cos⁡2t]0π=−12+12=0.[12e2t]01=e2−12≈3.19.(4) 変位は [4t−t2]03=3m.t=2 で v=0 となって向きを変えるので,道のりは 0→2s の 4m と 2→3s の 1m を足して 5m.

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

x軸上を運動する物体の速度が v=3t2(ms−1,t の単位は s)で表されるとき,t=1s から t=3s までの変位を求めよ.さらに t=0 の位置が x=2m のとき,x(t) を求めよ.

問題で与えられたvと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない. 問題で与えられたvと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない.
解答を見る

考え方 速度の積分が変位になる.原始関数を見つけて端点の値の差をとる.位置そのものは初期条件で積分定数を決める.

3t2 の原始関数の1つは t3 なので,

Δx=∫133t2dt=[t3]13=27−1=26m

である.位置は x(t)=t3+C と書け,x(0)=2 から C=2 であるので,x(t)=t3+2(m).

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

x軸上を運動する物体の加速度が a(t)=6t−4(ms−2)で,t=0 での速度が v(0)=2ms−1,位置が x(0)=1m である.速度 v(t) と位置 x(t) を求めよ.また,速度が最小になる時刻と,そのときの速度を求めよ.

問題で与えられたaと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない. 問題で与えられたaと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない.
解答を見る

考え方 加速度を積分して速度,速度を積分して位置を得る.そのつど初期条件で積分定数を決める.速度の最小は a=0 の時刻に現れる.

v(t)=∫(6t−4)dt=3t2−4t+C1.v(0)=2 から C1=2 なので

v(t)=3t2−4t+2

である.次に x(t)=∫(3t2−4t+2)dt=t3−2t2+2t+C2.x(0)=1 から C2=1 で,

x(t)=t3−2t2+2t+1

となる.速度の最小は a=6t−4=0 より t=23s.このとき v=3⋅49−83+2=43−83+2=23ms−1 で,a が負から正に変わるので最小である.

ポイント ここまでのまとめ

  • F′(t)=f(t) となる F が原始関数.定積分は ∫abvdt=F(b)−F(a)(微積分学の基本定理).

  • 公式:∫tndt=tn+1n+1+C(n≠−1),∫sin⁡tdt=−cos⁡t+C,∫cos⁡tdt=sin⁡t+C,∫ektdt=ektk+C(k≠0).sin⁡(ωt) のように中身が ωt のときは ω≠0 の定数として −cos⁡(ωt)/ω を使う.

  • x(t)=x(0)+∫0tv(s)ds,v(t)=v(0)+∫0ta(s)ds(積分変数は s,上端の t と区別する).積分定数は初期条件(初めの位置・初速度)で決める.

  • 位置を求めるには,速度のほかに出発点の位置が1つ要る.

12速度から位置への演習

v-tグラフの面積と積分で,変位・道のり・位置を求めます.積分定数と初期条件を忘れないようにしてください.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

直線上を走る自転車のv-tグラフは,0 sから3 sまで速度が0から 6ms−1 まで直線的に増え,3 sから8 sまで 6ms−1 で一定,8 sから10 sまで直線的に減って0になる.この10 sの間の変位,道のり,平均の速度を求めよ.

横軸が時刻t(単位s),縦軸が速度v(単位m/s)のグラフ.(0,0),(3,6),(8,6),(10,0)を折れ線で結んだ台形. 横軸が時刻t(単位s),縦軸が速度v(単位m/s)のグラフ.(0,0),(3,6),(8,6),(10,0)を折れ線で結んだ台形.
解答を見る

考え方 面積を3つの部分に分けて足す.速度は負にならないので,変位と道のりは等しい.

0〜3 sは三角形で 12×3×6=9m,3〜8 sは長方形で 5×6=30m,8〜10 sは三角形で 12×2×6=6m である.合計は 45m で,これが変位であり,速度が負にならないので道のりも 45m である.平均の速度は 45/10=4.5ms−1 である.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

一直線上を速度 v0 で進む物体が,ブレーキをかけると v=v0−kt(k は正の定数)で速度が減っていく.ブレーキをかけ始めた時刻を t=0,位置を x=0 とする.(1) 止まるまでの時間 (2) 止まるまでに進む距離を,積分で求めよ.(3) v0=20ms−1,k=4ms−2 の数値を代入せよ.

原点でブレーキをかけ始める物体と初速度v₀を示す. 原点でブレーキをかけ始める物体と初速度v₀を示す.
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考え方 停止は v=0 の時刻.位置は速度を積分して,停止の時刻での値を読む.

  1. v0−kt=0 より t1=v0/k.

  2. x(t)=∫0t(v0−ks)ds=v0t−12kt2 である.t1 を代入すると

x(t1)=v02k−k2⋅v02k2=v022k
  1. t1=20/4=5s,x=400/8=50m.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

物体が静止の状態から,加速度 a=αt(α は正の定数,単位は ms−3)で直線上を動き始める.時刻 t=0 の位置を原点とする.(1) 速度と位置を時刻の関数として求めよ.(2) α=4ms−3 のとき,速さが 18ms−1 になる時刻と,その間に進む距離を求めよ.

原点に静止した物体と,正のx方向に増す加速度a=αtを示す. 原点に静止した物体と,正のx方向に増す加速度a=αtを示す.
解答を見る

考え方 加速度を積分して速度,もう一度積分して位置を得る.初期条件は v(0)=0,x(0)=0.

  1. v(t)=∫0tαsds=12αt2.x(t)=∫0t12αs2ds=16αt3.

  2. v=2t2=18 より t=3s.距離は x=16⋅4⋅27=18m.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

原点から出発して正のx方向に動き始める質点の速度が,v=v0(1−t/τ) で与えられる.ただし v0=15cms−1,τ=6.0s である.(1) 位置 x(t) を求めよ.(2) 位置が x=40cm になる時刻をすべて求めよ.(3) t=12s までの道のりを求めよ.

時刻0に原点から正のx方向へ出発する質点を示す. 時刻0に原点から正のx方向へ出発する質点を示す.
解答を見る

考え方 速度は t=τ で符号が変わる.位置は積分で求め,道のりは符号が変わる時刻で区間を分ける.

  1. x(t)=∫0tv0(1−sτ)ds=v0(t−t22τ)=15t−54t2(cm).

  2. 15t−54t2=40 より t2−12t+32=0,(t−4)(t−8)=0.よって t=4s と 8s.1度目は行きの途中,2度目は折り返したあとである.

  3. t=6s で v=0 になり,それ以降は v<0 である.x(6)=90−45=45cm.x(12)=180−180=0.6 sまでに45 cm進み,6 s以降に同じ距離だけ戻るので,道のりは 45+45=90cm で,変位は0である.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

x軸上の物体の速度が v(t)=t2−4t+3(ms−1)で,t=0 に原点にある.0≤t≤4s について,(1) 変位 (2) 道のり (3) x(t) の極値となる時刻を求めよ.

問題で与えられたvと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない. 問題で与えられたvと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない.
解答を見る

考え方 v=0 となる時刻で区間を分ける.速度の符号が変わる時刻は,位置の極値の時刻である.

v=(t−1)(t−3) で,0<t<1 で正,1<t<3 で負,3<t<4 で正である.位置は

x(t)=t33−2t2+3t

であり,x(1)=13−2+3=43,x(3)=9−18+9=0,x(4)=643−32+12=43(m).

  1. 変位は x(4)−x(0)=43m.

  2. 区間ごとの変位は +43,−43,+43 なので,道のりは各絶対値の和で 43×3=4m.

  3. 極大は t=1s,極小は t=3s である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

抵抗を受けて減速する物体の加速度が,速度に比例して a=−kv(k は正の定数) と表されるとする.時刻 t=0 に原点を速度 v0 で通過した.(1) v(t)=v0e−kt がこの関係を満たすことを微分で確かめよ(指数関数の微分 (ekt)′=kekt を使ってよい).(2) 位置 x(t) を求めよ.(3) 止まるまでに進む距離はいくらか.また,物体は有限の時間で止まるか.

速度と逆向きに加速度が働く物体の初期状態を示す. 速度と逆向きに加速度が働く物体の初期状態を示す.
解答を見る

考え方 (1) は微分して確かめる.(2) は (1) の速度を積分する.

  1. dvdt=−kv0e−kt=−kv となり,a=−kv を満たす.初期条件 v(0)=v0 も満たす.

  2. x(t)=∫0tv0e−ksds=v0k(1−e−kt).

  3. t→∞ で e−kt→0 となり,x→v0/k.進む距離は v0/k を超えない.v0e−kt は有限の時刻では0にならないので,有限の時間では止まらず,限りなくゆっくり v0/k に近づく.演習 2 の一定の加速度の減速とは,この点が違う.

ポイント 教える人へ

  • 問いかけ:「速度計の記録だけで走った距離は分かるか」と聞き,台形のグラフを見せる.面積が変位になる理由を,「短い時間なら速度は一定とみなせる」という言い方で,教わる人自身に言わせる.

  • つまずき:定積分(面積という数)と不定積分(関数)が混ざる.積分定数を入れ忘れて初期条件を使わない誤りも多いので,位置を求めるときは必ず「初めの位置は?」と聞き返す.

  • 変位と道のり:速度が負の区間の扱いで混乱する.往復運動の図を描かせ,戻ったぶんをどう数えるかを言葉で説明させる.

  • 理解の確かめ:v=3t2 の0から1までの変位を,区分求積の和(n=4 など)と原始関数の両方で求めさせる.「a=−kv は止まるか」と問い,第4章の空気抵抗への関心につなげる.

13等加速度運動と自由落下

問い

ガリレオは,斜面を転がる球の運動を調べて,落下のような運動では速度が時間に比例して増える,つまり加速度が一定だと結論しました.ところが当時は,秒を正確に刻む時計がありませんでした.振り子時計もまだ実用になっていません.

時計のない時代に,球の動きが「一定の加速度」だと,どうやって確かめたのでしょうか.また,真下に落とした石の運動は速すぎて測れないのに,なぜ斜面なら測れるのでしょうか.少し考えてみてください.

考えてみる

ガリレオは,管の中で水を流し出す水時計を使ったと伝えられています.球が転がり始めると同時に水を出し,球が目印を通る瞬間に水を止め,流れ出た水の重さを量ります.水が一定の割合で流れるなら,水の重さは経過時間に比例します.大切なのは,水の重さが何秒にあたるかを知らなくても,時間の比さえ分かれば用が足りることです.

静止から等加速度で出発したとき,出発点から測った変位が時間の2乗に比例すること(このあと導きます)に注目します.時間が 1:2:3:4 の比で進むなら,出発点からの距離は 1:4:9:16,隣り合う時間ごとに進む距離は 1:3:5:7 になります.水の重さを 1,2,3,4 単位と決め,その時刻の球の位置を印で測って,距離の比がこの通りになれば「等加速度らしい」と確かめられます.落下そのものは速すぎるので,ガリレオは斜面をゆるやかにして,加速度を小さくしました.

問いの答えは,時間の比だけで検証できる関係(静止から出発したときの x∝t2)を調べた,ということです.この節では等加速度運動の式を「速度から位置へ」の節の積分で導き,自由落下に使います.投げ上げと例題は次の節で扱います.

等加速度運動の式

加速度 a が一定の運動を考えます.直線上の運動なので,座標軸を1本決め,位置 x,速度 v,加速度 a はすべてその軸の向きを正とした符号つきの量とします.時刻 t=0 の位置を x0,速度を v0 とします.

速度は加速度の積分で,位置は速度の積分で得られます.

v(t)=v0+∫0tads=v0+at
x(t)=x0+∫0t(v0+as)ds=x0+v0t+12at2

法則 等加速度運動の式

加速度が一定の直線運動では,次の3つの式が成り立つ.

v=v0+at,x=x0+v0t+12at2,v2−v02=2a(x−x0)

3つ目の式は,最初の2式から t を消して作ります.最初の式より t=(v−v0)/a で,これを2番目に代入して整理すれば得られます.もう少し見通しのよい導き方もあります.v2 を時間で微分すると,積の微分から ddt(v2)=2vdvdt=2va です.一方 v=dxdt なので,これは 2adxdt に等しく,a が定数なら ddt(v2−2ax)=0 です.したがって v2−2ax は時間によらない定数で,初期値と比べて v2−v02=2a(x−x0) が出ます.

面積を使う別の導き方もあります.v-tグラフは v0 から v まで直線で上がるので,面積は台形です.

横軸が時刻t,縦軸が速度vのグラフ.t=0で速度v0,時刻tで速度vとなる右上がりの直線と横軸の間に台形ができる.台形の上底は左の辺のv0,下底は右の辺のv,高さは横幅のt.v−v0はatに等しく,直線の傾きが加速度a.台形の面積が変位x−x0. 横軸が時刻t,縦軸が速度vのグラフ.t=0で速度v0,時刻tで速度vとなる右上がりの直線と横軸の間に台形ができる.台形の上底は左の辺のv0,下底は右の辺のv,高さは横幅のt.v−v0はatに等しく,直線の傾きが加速度a.台形の面積が変位x−x0.

変位は台形の面積なので,(上底+下底)×高さ÷2 より

x−x0=v0+v2t

です.平均の速度が初めと終わりの速度の平均であることを式にしたものです.v=v0+at を代入すれば,2番目の式に一致します.さらに t=(v−v0)/a を入れると x−x0=v2−v022a で,3番目の式です.

3番目の式には時間が登場しません.時間を聞かれていない問題では,時間を経由せずに速度と位置を結べるので便利です.「加速度 × 変位が,v2 の変化を決める」と読めます(x−x0 は符号つきの変位です).

自由落下と重力加速度

空気の抵抗が無視できるとき,地表付近で物体を落とすと,物体の重さにも形にもよらず,同じ加速度で落ちます.これが自由落下で,その加速度を重力加速度 g といいます.

定義 重力加速度

地表付近の自由落下の加速度の大きさ g を重力加速度といい,g≈9.8ms−2 である.向きは鉛直下向きで,落下の速さは1秒ごとにおよそ 9.8ms−1 ずつ増える.

「重い物ほど速く落ちる」という日常の感覚は,空気の抵抗の影響です.月面で羽根と金づちを同時に放すと同時に着地した,という宇宙飛行士の実験が知られています.月には空気がないからです.

座標軸は鉛直上向きを正にとることが多く,このとき加速度は a=−g です.地面を y=0 とすると,等加速度の式は

v=v0−gt,y=y0+v0t−12gt2,v2−v02=−2g(y−y0)

となります.v0>0 なら投げ上げ,v0=0 なら放しただけ,v0<0 なら投げ下ろしです.向きと符号を最初に決めれば,上昇も下降も1つの式で書けます.

ポイント ここまでのまとめ

  • 時計がなくても,時間の比さえ分かれば等加速度運動は確かめられる.静止から出発する等加速度運動では,出発点から測った変位 x が x∝t2 で,等しい時間ごとの距離は 1:3:5:7 の比になる.

  • 加速度が一定の直線運動では v=v0+at,x=x0+v0t+12at2,v2−v02=2a(x−x0) が成り立つ.3つ目の式には時間が入らない.

  • 空気の抵抗が無視できる落下は,質量によらず加速度 g≈9.8ms−2 の等加速度運動である.

  • 斜面は加速度を小さくして,速すぎる落下を測りやすくする工夫だった.

14等加速度運動と自由落下の例題

鉛直投げ上げ

地面から初速度 v0 で真上に投げた物体を考えます.最高点では,上昇から下降に変わる瞬間に速度が0になります.v=v0−gt=0 より,最高点に達する時刻は

t1=v0g

です.最高点の高さは y=v0t1−12gt12=v022g.これは3つ目の式で v=0 とおいても得られます.地面に戻る時刻は y=0 より v0t−12gt2=t(v0−12gt)=0 で t2=2v0/g,最高点に達する時刻のちょうど2倍です.戻ってきたときの速度は v0−g⋅2v0/g=−v0 で,大きさは初速度と同じです.

数値で確かめます.v0=9.8ms−1 で投げると,最高点まで1.0 s,最高点の高さは 9.822×9.8=4.9m,地面に戻るのは2.0 s後です.

同じ高さを通るときの速さは,上りでも下りでも等しくなります.3つ目の式は v2=v02−2g(y−y0) の形で,時間が入らず,高さ y だけで v2 が決まるからです.速度の向きだけが逆になります.v-tグラフでは,上りの正の面積と下りの負の面積が打ち消し合うので,地面に戻ったときの変位は0です.

ポイント 数学の道具:2次方程式の解の選び方

この節に新しい公式は出てきません.積分で式を作り,あとは2次方程式を解くだけです.注意すべきは解の選び方です.例えば y=h となる時刻を求める式は t の2次式で,解が2つ出ます.地面から投げ上げた物体は,0<h<v02/(2g) の高さなら上りと下りで h を2度通るので,2つとも意味があります.h=v02/(2g)(最高点)では解は1つ(重解)で,h>v02/(2g) では実数解がなく,その高さには届きません.落下時間のように,負の解や条件に合わない解は捨てます.

2次方程式 At2+Bt+C=0(A≠0)の解は t=−B±B2−4AC2A で,判別式 B2−4AC が正なら2つ,0なら1つ(重解),負なら実数の解はありません.

練習. 地面から初速度 14ms−1 で真上にボールを投げる(g=9.8ms−2).(1) 高さ 5.0m を通る時刻をすべて求め,それぞれ上りか下りかを答えよ.(2) 高さ 12m を通るか,判別式で調べよ.(3) 高さ 10m を通る時刻を求めよ.

答え:(1) 14t−4.9t2=5.0 より 4.9t2−14t+5.0=0.t=14±196−989.8=14±9.909.8 で,t≈0.42s(上り)と 2.4s(下り).(2) 4.9t2−14t+12=0 の判別式は 196−235.2<0 なので通らない(最高点は 142/(2×9.8)=10m).(3) 判別式が 196−196=0 で重解 t=14/9.8≈1.4s.ちょうど最高点である.

重力加速度の測り方

g はどのように測るのでしょうか.最も素朴な方法は,高さ h から物体を静かに落とし,落下にかかる時間 t を測ることです.h=12gt2 より

g=2ht2

です.ところが時間の測定は誤差が大きく,高さ1.0 mなら落下時間は約0.45 sで,0.01 sの誤差は約 2 % です.g は t2 に反比例するので,g の誤差はその2倍の約 4 % になります.そこで,いくつかの高さ h について時間を測り,h を縦軸,t2 を横軸にとってグラフにします.点が原点を通る直線に並べば等加速度の確認になり,傾きが g/2 です.誤差が平均されて,よい値が得られます.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

地面から真上に,初速度 v0 でボールを投げた.空気の抵抗は無視できる.(1) 最高点の高さと,そこに達する時刻を求めよ.(2) 最高点の高さの 34 の高さを通る時刻を,v0 と g で表せ.(3) v0=19.6ms−1,g=9.8ms−2 のとき,(1),(2) の数値を求めよ.

地面から鉛直上向きの初速度v₀でボールを投げる.重力加速度gを示す. 地面から鉛直上向きの初速度v₀でボールを投げる.重力加速度gを示す.
解答を見る

考え方 鉛直上向きを正にとり,a=−g として式を立てる.最高点では速度が0.高さを指定された時刻は2次方程式の2つの解になる.

  1. v=v0−gt=0 より t1=v0/g.高さは H=v022g.

  2. 34H=3v028g とおくと,v0t−12gt2=3v028g.t=τv0/g と置いて整理すると τ−12τ2=38,すなわち τ2−2τ+34=0.これは (τ−12)(τ−32)=0 と因数分解でき,τ=12, 32 である.よって t=v02g と 3v02g.前者は上りの途中,後者は下りの途中である.

  3. 数値を直接代入する.t1=19.6ms−19.8ms−2=2.0s,H=(19.6ms−1)22×9.8ms−2=19.6m.(2) の時刻は v02g=1.0s と 3v02g=3.0s,そのときの高さは 34H=14.7m.

例題 2

オリジナル ★☆☆☆☆

橋の上から石を静かに放したところ,3.0 s後に水面に着いた.空気の抵抗と音の伝わる時間は無視する.(1) 橋の高さ (2) 水面に着く直前の速さ (3) 着水までの最後の1.0 sに落ちる距離を求めよ.

橋から石を静かに放す.着水まで3.0 sであることだけを示す. 橋から石を静かに放す.着水まで3.0 sであることだけを示す.
解答を見る

考え方 落下を「放した点から測った距離」で表し,その時刻の値を引き算する.

鉛直下向きを正にとると,放した点からの落下距離は y=12gt2,速度は v=gt である.

  1. h=12×9.8ms−2×(3.0s)2=44.1m.有効数字2桁で約 44m.

  2. v=9.8ms−2×3.0s=29.4ms−1.約 29ms−1.

  3. 2.0 sまでの落下距離は 12×9.8×(2.0)2=19.6m.最後の1.0 sに落ちる距離は 44.1−19.6=24.5m.約 25m.

例題 3

オリジナル ★☆☆☆☆

質量の違う2つの球を,同じ高さ h から同時に静かに放す.また,高さ h と高さ 4h から,同じ球を静かに放す.空気の抵抗は無視する.(1) 2つの球の落下時間と着地速度を比べよ.(2) 高さ h と 4h から放したときの,落下時間の比と着地速度の比を求めよ.

同じ高さの異なる質量の球と,高さhと4hの同じ球を並べる.落下後の位置は示さない. 同じ高さの異なる質量の球と,高さhと4hの同じ球を並べる.落下後の位置は示さない.
解答を見る

考え方 自由落下の加速度は質量によらない.落下時間は t=2h/g,着地速度は v=2gh である.

  1. 式 h=12gt2,v=gt のどこにも質量が入らないので,2つの球は同時に着地し,速さも等しい.

  2. 高さ h のとき t=2h/g,4h のとき 8h/g=22h/g なので,落下時間の比は 1:2.着地速度も 2gh と 8gh=22gh で比は 1:2 である.

ポイント ここまでのまとめ

  • 鉛直投げ上げは,上向きを正にとって a=−g とおく.最高点は v=0 より t1=v0/g,高さは v02/(2g),地面に戻る時刻は 2v0/g で,戻るときの速さは初速度と同じである.

  • 高さを指定された時刻は2次方程式の解で,地面から投げ上げて最高点より低い高さ(0<h<v02/(2g))なら2つあり,上りと下りに対応する.最高点では重解,それより高い所には届かない.落下時間を求めるときは,条件に合わない解を捨てる.

  • 落下は放した点からの距離で表し,時刻ごとの値を引き算すると区間の距離が出る.

  • 重力加速度は g=2h/t2 で測れる.いくつかの高さで h を t2 に対してグラフにすると,傾きが g/2 になる.

15等加速度運動と自由落下の演習

まず座標軸の向きを決めて,符号を書いてから式を立ててください.等加速度運動の3つの式のうち,聞かれていない量が入らない式を選ぶと,計算が短くなります.

演習

演習 1

オリジナル ★★☆☆☆

斜面上で静止していた球を放し,水時計の水が流れ出た重さ w で時間を測った.水は毎秒 20g の割合で流れ出る.w=10,20,30,40g の時刻の球の位置は,出発点から順に 5,20,45,80cm だった.(1) 球は等加速度運動をしていると考えてよいか,理由とともに答えよ.(2) 加速度の大きさを求めよ.

斜面の出発点からの測定位置と,毎秒20 gずつ流出する水時計を示す. 斜面の出発点からの測定位置と,毎秒20 gずつ流出する水時計を示す.
解答を見る

考え方 等加速度で静止から出発するなら x=12at2 なので,x は t2 に比例し,時間は w に比例する.x/w2 が一定かを調べる.

  1. x/w2 は 5/100=0.05,20/400=0.05,45/900=0.05,80/1600=0.05cmg−2 と一定である.x が w2,つまり t2 に比例するので,等加速度運動と考えてよい.隣り合う区間の距離も 5,15,25,35cm で,1:3:5:7 に並ぶ.

  2. w=10g は t=10/20=0.50s に当たる.x=0.05m より,a=2xt2=2×0.050.25=0.40ms−2.自由落下の加速度のおよそ4 %で,球の動きは自由落下よりずっとゆっくりである.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

高さ 44.1m のビルの屋上から,石Aを静かに放した.その1.0 s後に,同じ点から石Bを初速度 v0 で真下に投げ下ろしたところ,AとBは同時に地面に着いた.空気の抵抗は無視する.(1) v0 を求めよ.(2) 地面に着く直前のA,Bの速さを求めよ.

同じ高さ44.1 mからAを静かに放し,1.0 s後にBを下向きの初速度v₀で投げる. 同じ高さ44.1 mからAを静かに放し,1.0 s後にBを下向きの初速度v₀で投げる.
解答を見る

考え方 Aの落下時間から着地時刻を出し,Bはその1.0 s前から動いているとして立式する.鉛直下向きを正にとる.

  1. Aは 44.1=12gtA2 より tA=3.0s で着く.Bの落下時間は tB=3.0−1.0=2.0s.Bについて 44.1=v0⋅2.0+12g(2.0)2=2v0+19.6 なので,v0=12.25ms−1,約 12ms−1.

  2. A:vA=gtA=29.4ms−1.B:vB=v0+gtB=12.25+19.6=31.85ms−1.約 29ms−1 と 32ms−1 で,後から投げたBのほうが少し速い.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

高さ H=40m の位置から球Pを静かに放すと同時に,真下の地面から球Qを初速度 v0=20ms−1 で真上に投げた.(1) PとQが出会う時刻と高さを求めよ.(2) PとQが空中で出会うために,v0 が満たすべき条件を求めよ.

高さHの球Pを静かに放すと同時に,真下の地面から球Qを上向きに投げる. 高さHの球Pを静かに放すと同時に,真下の地面から球Qを上向きに投げる.
解答を見る

考え方 2つの球の高さを同じ時刻で等しいとおく.重力の項は共通なので打ち消し合う.

  1. 上向きを正とし,地面を原点にとる.Pの高さは yP=H−12gt2,Qの高さは yQ=v0t−12gt2.yP=yQ とおくと 12gt2 が消えて H=v0t となり,出会う時刻は t=H/v0=2.0s.高さは y=40−12⋅9.8⋅4.0=40−19.6=20.4m.

  2. 出会う高さが0以上であればよい.y=H−gH22v02≥0 より v02≥gH2,v0≥gH/2.H=40m なら v0≥196=14ms−1.出会う時刻が g によらないのは,Qから見るとPが一定の速さ v0 で近づいてくるからである(相対運動はこの章の「相対運動」の節で扱う).

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

深い井戸の口から石を静かに落としたところ,落としてから3.0 s後に水面に当たる音が聞こえた.空気の抵抗を無視し,音の速さを V=340ms−1 とする.井戸の深さ h を求めよ.また,音の伝わる時間を無視した場合の値と比べよ.

井戸の口から落とす石と,水面から口へ伝わる音を示す.深さをhとする. 井戸の口から落とす石と,水面から口へ伝わる音を示す.深さをhとする.
解答を見る

考え方 音が聞こえるまでの時間は,石が落ちる時間 t1 と,音が上ってくる時間 h/V の和である.t1 について2次方程式を立てる.

石の落下は h=12gt12,音が上る時間は h/V.合計が T=3.0s なので

t1+gt122V=T

である.数値を入れて整理すると 4.9t12+340t1−1020=0.解の公式より

t1=−340+3402+4×4.9×10202×4.9=−340+1355929.8≈−340+368.29.8≈2.88s

である(負の解は捨てる).深さは h=12⋅9.8⋅2.882≈40.7m,有効数字2桁で約 41m.音が上る時間は 40.7/340≈0.12s である.

音の時間を無視すると h=44.1m となり,約 8 % 大きく見積もる.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

一定の加速度 1.0ms−2 で上昇を始めたエレベーターの,床から天井までの高さは 2.4m である.出発してから2.0 s後に,天井からボルトが外れて落ち始めた.ボルトは外れた瞬間に,エレベーターと同じ速度で上向きに動いていたものとして,地上に固定した座標系で次を求めよ.(1) ボルトが床に着くまでの時間 (2) その間のボルトの変位と道のり

高さ2.4 mのエレベーターで,天井のボルトが外れる瞬間を示す.ボルトは上向きの速度を引き継ぐ. 高さ2.4 mのエレベーターで,天井のボルトが外れる瞬間を示す.ボルトは上向きの速度を引き継ぐ.
解答を見る

考え方 外れた瞬間を時刻0とし,その時刻の床の位置を原点にとる.ボルトは加速度 −g の運動,床は加速度 +1.0ms−2 の運動をする.

外れた瞬間のエレベーターの速度は u=1.0×2.0=2.0ms−1(上向き)である.上向きを正にとる.

  1. 床の高さは yF=ut+12(1.0)t2,ボルトの高さは yB=2.4+ut−12gt2.ボルトが床に着くのは yB=yF のときで,u の項が消えて

2.4=12(g+1.0)t2

となる.g+1.0=10.8ms−2 を用いると,t2=4.810.8=49,t=23s≈0.67s.

  1. 変位は ut−12gt2=2.0⋅23−4.9⋅49≈1.333−2.178=−0.84m,すなわち下向きに 0.84m である.ボルトは初め上向きに動くので,最高点までの時間 u/g≈0.20s は 23s より短く,いったん上がってから落ちる.上昇する高さは u22g≈0.204m.最高点から終点まで下がる距離は 0.204+0.84≈1.05m.道のりは 0.204+1.05≈1.25m,約 1.3m である.

床が上がってくるぶん,中の人にはボルトの落下の加速度が g+1.0ms−2 に見える(相対運動はこの章の「相対運動」の節で扱う).

ポイント 教える人へ

  • 問いかけ:「時計がないとき,何を比べれば等加速度だと言えるか」と聞く.時間そのものでなく時間の比で足りること,距離の比が 1:3:5:7 になることに気づくかを見る.

  • つまずき:符号である.上向きを正にとったら a=−g になること,最高点で0になるのは速度だけで加速度は −g のままであることを,式と図で確認させる.

  • 2次方程式の解:高さを指定された時刻が2つ出る理由を「上りと下りで2度通る」と説明させ,落下時間で負の解を捨てる理由も問う.

  • 理解の確かめ:「2倍の高さから落とすと,落下時間は何倍か」を式を書かずに答えさせる.2 倍と答えられれば t∝h が分かっている.

16放物運動

問い

木の枝に猿がぶら下がっています.離れた地面にいる猟師が,猿を狙って銃を構えました.猟師は猿をまっすぐ狙っていますが,弾が出る瞬間に猿は驚いて枝から手を離し,真下に落ち始めました.弾は重力で曲がりながら飛ぶので,猿のいた位置には届かないはずです.ところが猿も落ちています.

左下に猟師が立ち,銃口から右上の枝にぶら下がる猿の最初の位置へ向けて,狙う向きに直線を引く.水平面とのなす角はθ.銃口から猿の最初の位置までの水平距離がL,高さがH.猿の真下には落下の経路を赤い破線の矢印で示す.弾の軌道は描かない. 左下に猟師が立ち,銃口から右上の枝にぶら下がる猿の最初の位置へ向けて,狙う向きに直線を引く.水平面とのなす角はθ.銃口から猿の最初の位置までの水平距離がL,高さがH.猿の真下には落下の経路を赤い破線の矢印で示す.弾の軌道は描かない.

弾は猿に当たるでしょうか.それとも上を通り過ぎるのでしょうか.弾の速さで答えは変わるでしょうか.まず予想を立ててみてください.

考えてみる

手がかりは,重力が弾にも猿にもはたらくことです.重力がなければ,弾は狙った向きに一直線に進み,動かない猿に当たります.重力があると,弾は直線から下へ,猿も元の位置から下へずれます.そのずれはどちらも,時間 t の間に 12gt2 で同じ大きさです.重力がなければ弾と猿は出会う時刻があるので,その時刻には両方が同じだけ下へずれ,やはり出会うはずです.

確かめるには,運動を水平方向と鉛直方向に分けて考えます.水平方向は等速,鉛直方向は g の等加速度になります.この考え方で弾の運動を調べ,次の節の例題1で式を使って確かめます.

水平と鉛直の独立

物体を斜めに投げると,その位置は平面(水平方向と鉛直方向)の中を動きます.座標軸を水平に x 軸,鉛直上向きに y 軸をとり,加速度の成分は

ax=0,ay=−g

です.水平方向には何も加速するものがなく,鉛直方向には重力加速度 g だけが下向きにあります.空気抵抗は無視します.2つの方向は互いに影響しないので,それぞれを「等加速度運動と自由落下」の節の等加速度運動として別々に扱えます.これを独立といいます.

実験でも確かめられます.同じ高さから一方の球を静かに放し,同時にもう一方を水平に弾き出すと,2つの球は同時に床に着きます.連続写真に撮ると,2つの球は常に同じ高さにあり,弾き出した球が一定の間隔で横へ進んでいくのが見えます.水平に動いていても,鉛直方向の落ち方は変わらないのです.

法則 放物運動(水平投射・斜方投射)

原点から,水平面と角 θ をなす向きに,初速度の大きさ v0 で投げたとき,時刻 t の速度と位置は

vx=v0cos⁡θ,vy=v0sin⁡θ−gt
x=v0cos⁡θ⋅t,y=v0sin⁡θ⋅t−12gt2
[図:斜方投射の軌道と速度の成分]

原点から斜め上に投げた物体の放物線の軌道を,水平方向をx,鉛直上向きをyとして描く.スライダーで射出角θを変えられ,初期状態はθ=60°.軌道上の等しい時間間隔の5点に速度ベクトルを青い矢印で示し,その水平成分と鉛直成分を破線で示す.水平成分は5点とも同じ長さで,鉛直成分は上向きから最高点で0になり下向きに変わる.破線の軌道は45°の場合で,到達距離Rが最大.目盛はv0²/gを単位とする.

軌道の式

t を消すと軌道の形が分かります.t=xv0cos⁡θ を y の式に入れて

y=xtan⁡θ−g2v02cos2⁡θx2

です.y は x の2次式で,上に凸の放物線です.1cos2⁡θ=1+tan2⁡θ を使った形も書いておきます.

y=xtan⁡θ−gx22v02(1+tan2⁡θ)

最高点と到達距離

最高点は vy=0 の瞬間です.v0sin⁡θ−gt=0 より,最高点に達する時刻と高さは

t1=v0sin⁡θg,H=v02sin2⁡θ2g

で,最高点の速度は水平成分 v0cos⁡θ だけです.次に,投げた高さまで戻る時刻は,鉛直投げ上げと同じく最高点に達する時刻の2倍で,

T=2v0sin⁡θg

です.この間に水平方向へ進む距離,つまり到達距離は

R=v0cos⁡θ⋅T=2v02sin⁡θcos⁡θg=v02sin⁡2θg

です.最後の変形には2倍角の公式 sin⁡2θ=2sin⁡θcos⁡θ を使いました(次の節で復習します).

たとえば v0=20ms−1,θ=30∘ なら,滞空時間は約2.0 s,最高点の高さは約5.1 m,到達距離は約35 m です.同じ初速で最も遠くへ飛ばすと約41 m(θ=45∘)になります.

最大の到達距離と2つの角

R=v02sin⁡2θg は sin⁡2θ=1,すなわち θ=45∘ のとき最大で,最大の到達距離は v02g です.また,ある到達距離 R(R<v02/g)を与える角は2つあります.sin⁡2θ=sin⁡(180∘−2θ)=sin⁡2(90∘−θ) なので,θ と 90∘−θ は同じ到達距離を与えます.

[図:同じ到達距離を与える2つの投射角]

同じ初速の大きさv0で,投射角がθと90°−θの2本の放物線を描く.初期状態はθ=30°(青,低い軌道)と60°(橙,高い軌道).2本は同じ点に着地し,到達距離Rは等しいが,60°のほうが高く上がる.スライダーで低い方の角θを変えると,着地点は2本とも同じまま,高さと滞空時間の比がtanθに応じて変わる.目盛はv0²/gを単位とする.

角 θ で投げたときの滞空時間と最高点の高さを T1, H1,角 90∘−θ で投げたときを T2, H2 とすると,それらの比は T1:T2=tan⁡θ:1,H1:H2=tan2⁡θ:1 です.T は sin⁡θ に,H は sin2⁡θ に比例し,sin⁡(90∘−θ)=cos⁡θ だからです.大きい角で投げたほうが高く上がり,時間もかかります.

ポイント ここまでのまとめ

  • 水平方向は等速,鉛直方向は加速度 −g の等加速度運動で,2つは互いに影響しない.

  • 軌道は y が x の2次式になる放物線.最高点では vy=0 だが,水平成分 v0cos⁡θ は残る.

  • 最高点の高さは v02sin2⁡θ2g,到達距離は R=v02sin⁡2θg.θ=45∘ で最大 v02g,θ と 90∘−θ は同じ到達距離を与える.

  • 問いの答え:弾も猿も,同じ時間に同じだけ 12gt2 落ちるので,弾は速さによらず猿に当たる(式での確認は次の節).ただし猿が地面に着く前に限る.

17放物運動と加法定理

放物運動の式では,sin⁡2θ や tan⁡θ など,三角関数の公式が何度も出てきます.先に高校の公式を整理してから,モンキーハンティングの証明と斜面への投射を例題で扱います.

定理 数学の道具:加法定理と2倍角(復習)

sin⁡(α±β)=sin⁡αcos⁡β±cos⁡αsin⁡β,cos⁡(α±β)=cos⁡αcos⁡β∓sin⁡αsin⁡β

で,α=β=θ とおくと2倍角の公式になる.

sin⁡2θ=2sin⁡θcos⁡θ,cos⁡2θ=cos2⁡θ−sin2⁡θ=2cos2⁡θ−1=1−2sin2⁡θ

また sin2⁡θ+cos2⁡θ=1 の両辺を cos2⁡θ で割ると 1+tan2⁡θ=1cos2⁡θ が得られる.放物運動では,sin⁡θcos⁡θ の積が出てきたら 12sin⁡2θ と書き直して,角度の最大・最小を調べるのが定石である.

練習 1. 加法定理を使って,sin⁡75∘ の値を求めよ.

練習 2. tan⁡θ=34(0<θ<90∘)のとき,sin⁡2θ と cos⁡2θ を求めよ.

練習 3. 加法定理を使って,cos⁡75∘ と sin⁡15∘ を求めよ.

練習 4. sin⁡θ=513(0<θ<90∘)のとき,cos⁡θ,tan⁡θ を求め,1+tan2⁡θ=1cos2⁡θ が成り立つことを数値で確かめよ.

練習 5. sin⁡2θ=32 となる θ(0<θ<90∘)をすべて求めよ.

答え:(1) sin⁡75∘=sin⁡(45∘+30∘)=22⋅32+22⋅12=6+24.(2) sin⁡θ=35,cos⁡θ=45 なので,sin⁡2θ=2⋅35⋅45=2425,cos⁡2θ=1625−925=725.(3) cos⁡75∘=cos⁡(45∘+30∘)=22⋅32−22⋅12=6−24≈0.259.sin⁡15∘=sin⁡(45∘−30∘)=6−24 で,同じ値になる(sin⁡15∘=cos⁡75∘).(4) cos⁡θ=1213,tan⁡θ=512.1+25144=169144=(1312)2 で一致する.(5) 0<2θ<180∘ で 2θ=60∘, 120∘ より θ=30∘, 60∘.放物運動で同じ到達距離を与える2つの角にあたる.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

問いのモンキーハンティングを数式で確かめよ.猟師の銃口を原点とし,猿の最初の位置を (L, H) とする.弾は猿を狙う向き(水平面との角 θ,tan⁡θ=H/L)に速さ v0 で撃ち出され,その瞬間に猿は手を離して自由落下する.弾が猿に当たることを示し,当たる条件を求めよ.

原点の銃口から猿の初期位置(L,H)を狙う.猿は発射と同時に手を離す.衝突位置は描かない. 原点の銃口から猿の初期位置(L,H)を狙う.猿は発射と同時に手を離す.衝突位置は描かない.
解答を見る

考え方 弾と猿の位置を同じ時刻で式にし,水平位置が等しくなる時刻の高さを比べる.

弾の位置は x=v0cos⁡θ⋅t,y=v0sin⁡θ⋅t−12gt2.猿の位置は x=L,y=H−12gt2.弾の水平位置が L になる時刻は t∗=Lv0cos⁡θ である.このときの弾の高さは

y弾=v0sin⁡θ⋅t∗−12gt∗2=Ltan⁡θ−12gt∗2=H−12gt∗2

で,同じ時刻の猿の高さ H−12gt∗2 と等しい.よって時刻 t∗ に弾は猿に当たる.これは v0 の大きさによらない.

ただし当たるのは,その時刻に猿がまだ地面より上にいるときだけである.条件は H−12gt∗2≥0,すなわち v02cos2⁡θ≥gL22H で,弾が速いほど当たりやすい.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

傾き α の斜面が,点Oから下向きに続いている.Oから水平に速さ v0 で小球を投げる.(1) 小球が斜面に落ちるまでの時間 (2) Oから落下点までの斜面に沿った距離 (3) 落下の瞬間の速度の向き(水平面から下向きに測った角 ϕ)を求めよ.α=30∘,v0=10ms−1 のときの数値も求めよ.

下向きに傾く斜面の上端Oから,水平な初速度v₀で投げる. 下向きに傾く斜面の上端Oから,水平な初速度v₀で投げる.
解答を見る

考え方 Oを原点とし,水平にx軸,鉛直上向きにy軸をとる.斜面は y=−xtan⁡α である.小球の軌道がこの直線と交わる点が落下点である.

水平投射なので x=v0t,y=−12gt2.

  1. 斜面上の点は y=−xtan⁡α を満たす.−12gt2=−v0ttan⁡α より,t>0 で t=2v0tan⁡αg.

  2. 落下点のx座標は x=v0t=2v02tan⁡αg.斜面に沿った距離は d=xcos⁡α=2v02sin⁡αgcos2⁡α.

  3. 落下の瞬間に vx=v0,vy=−gt=−2v0tan⁡α.水平面から下向きの角は tan⁡ϕ=|vy|vx=2tan⁡α.この結果は v0 によらない.

数値は t=203g≈1.2s,d=2⋅100⋅12g⋅34=4003g≈13.6m,tan⁡ϕ=23≈1.155,ϕ≈49∘ である.

例題 3

オリジナル ★☆☆☆☆

高さ 19.6m の崖の上から,水平に 15ms−1 で石を投げた.空気の抵抗は無視する.(1) 着水までの時間 (2) 崖の真下から着水点までの水平距離 (3) 着水直前の速さと,水平面から下向きに測った角度を求めよ.

高さ19.6 mの崖から,水平に15 m s⁻¹で石を投げる.着水位置は示さない. 高さ19.6 mの崖から,水平に15 m s⁻¹で石を投げる.着水位置は示さない.
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考え方 水平は等速,鉛直は初速度0の自由落下として扱う.

  1. 鉛直方向は 19.6=12gt2 より t=2⋅19.6/g=2.0s.

  2. 水平距離は 15×2.0=30m.

  3. vx=15ms−1,vy=−gt=−19.6ms−1.速さは 152+19.62=609.16≈24.7ms−1,約 25ms−1.角度は tan⁡ϕ=19.6/15≈1.31 より ϕ≈53∘.

ポイント ここまでのまとめ

  • 加法定理から2倍角の公式が出る.sin⁡θcos⁡θ の積は 12sin⁡2θ と書き直して,角度の最大・最小を調べる.1+tan2⁡θ=1/cos2⁡θ は軌道の式を tan⁡θ の2次式に直すときに使う.

  • モンキーハンティングでは,弾の水平位置が L になる時刻に,弾と猿の高さがどちらも H−12gt2 になる.空気抵抗を無視し,地面に着く前に出会える速さであれば,当たることは v0 の大きさによらない.

  • 斜面への投射は,軌道と斜面の直線の交点を求める問題になる.水平投射で斜面に落ちるとき,落下の向きは tan⁡ϕ=2tan⁡α で,初速に依存しない.

18放物運動の演習

水平方向と鉛直方向に分け,それぞれの加速度を書き出してから取りかかります.三角関数の式変形が出てきたら,前の節の加法定理と2倍角を見直してください.

演習

演習 1

オリジナル ★★☆☆☆

地面のボールを初速 14ms−1,水平面との角 30∘ で蹴った.空気の抵抗は無視する.(1) 滞空時間,最高点の高さ,到達距離を求めよ.(2) 同じ到達距離を与える別の角を答えよ.また,この初速でボールを最も遠くへ飛ばしたときの到達距離はいくらか.必要なら,2倍角の公式 sin⁡2θ=2sin⁡θcos⁡θ を使ってよい.

水平な地面から30°の向きに速さ14 m s⁻¹で蹴り出す瞬間を示す. 水平な地面から30°の向きに速さ14 m s⁻¹で蹴り出す瞬間を示す.
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考え方 T=2v0sin⁡θg,H=v02sin2⁡θ2g,R=v02sin⁡2θg を用いる.v02=196.

  1. T=2⋅14⋅0.59.8≈1.43s.H=196⋅0.252⋅9.8=2.5m.R=196⋅sin⁡60∘9.8=20⋅32≈17.3m.

  2. sin⁡2θ=sin⁡(180∘−2θ) から,もう1つの角は 90∘−30∘=60∘.最大の到達距離は θ=45∘ のときの v02g=1969.8=20m である.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

原点から初速 14ms−1 で球を投げ,水平距離 12m,高さ 3.0m の位置にある的に当てたい.投射角を2つ求めよ.必要なら 1cos2⁡θ=1+tan2⁡θ を使ってよい.

原点と水平距離12 m,高さ3.0 mの的を示す.投射方向は未記入とする. 原点と水平距離12 m,高さ3.0 mの的を示す.投射方向は未記入とする.
解答を見る

考え方 軌道の式を tan⁡θ の2次方程式とみて解く.

u=tan⁡θ とおくと,y=xu−gx22v02(1+u2).g2v02=9.8392=0.025 より,x=12,y=3.0 では

3.0=12u−0.025⋅144(1+u2)=12u−3.6(1+u2)

である.整理して 3.6u2−12u+6.6=0,両辺を0.6で割って 6u2−20u+11=0.解は u=20±13612≈20±11.6612 なので,u≈0.695, 2.64.よって θ≈35∘, 69∘.

演習 3

オリジナル ★★★☆☆

傾き α の斜面の下端Oから,斜面を含む鉛直面内で,水平面との角 θ(θ>α)で初速 v0 の小球を投げる.斜面に沿った着地点までの距離 d について,(1) d を α,ϕ=θ−α の式で表せ.(2) 投射角 θ を変えたときの d の最大値と,そのときの θ を求めよ.(3) α=30∘ のとき,水平面上の最大到達距離 v02/g との比を求めよ.必要なら,2倍角の公式 sin⁡ϕcos⁡ϕ=12sin⁡2ϕ,sin2⁡ϕ=12(1−cos⁡2ϕ) と,加法定理 sin⁡(A+B)=sin⁡Acos⁡B+cos⁡Asin⁡B を使ってよい.

傾きαの斜面の下端Oから,水平とθをなす初速度v₀で投げる.着地点は示さない. 傾きαの斜面の下端Oから,水平とθをなす初速度v₀で投げる.着地点は示さない.
解答を見る

考え方 斜面に沿った向きをX,斜面に垂直な向きをYとする.重力加速度の成分は −gsin⁡α(Xの向き)と −gcos⁡α(Yの向き)で,初速は斜面から ϕ だけ傾く.

  1. v0X=v0cos⁡ϕ,v0Y=v0sin⁡ϕ.Y方向は Y=v0sin⁡ϕt−12gcos⁡αt2 より,着地(Y=0)の時刻は T=2v0sin⁡ϕgcos⁡α.X方向の距離は

d=v0cos⁡ϕT−12gsin⁡αT2=2v02gcos2⁡α(sin⁡ϕcos⁡ϕcos⁡α−sin2⁡ϕsin⁡α)

である.sin⁡ϕcos⁡ϕ=12sin⁡2ϕ,sin2⁡ϕ=12(1−cos⁡2ϕ) を使うと

d=v02gcos2⁡α(sin⁡2ϕcos⁡α+cos⁡2ϕsin⁡α−sin⁡α)=v02gcos2⁡α(sin⁡(2ϕ+α)−sin⁡α)
  1. sin⁡(2ϕ+α)=1,すなわち ϕ=45∘−α2 のとき最大である.このとき θ=ϕ+α=45∘+α2.最大値は

dmax=v02(1−sin⁡α)gcos2⁡α=v02g(1+sin⁡α)
  1. sin⁡30∘=12 より dmax=v02g⋅23.水平面の最大到達距離の 23 である.(α→0 で水平面の結果に一致する.)

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

地面の原点から,初速の大きさ v0 で,鉛直面内のいろいろな向きに物体を投げる.(1) 軌道の式を tan⁡θ の2次方程式とみて(1cos2⁡θ=1+tan2⁡θ を使う),点 (x,y) に届く向きがあるための条件を求めよ.これが,投げうる範囲を囲む放物線(安全放物線)になることを示せ.(2) 高さ h の崖の上の原点から投げるとき,地面に届く最大の水平距離を求めよ.v0=14ms−1,h=19.6m のときの値も求めよ.

地面の原点と高さhの崖上の原点について,初速の大きさv₀と任意の投射方向を示す.到達範囲は描かない. 地面の原点と高さhの崖上の原点について,初速の大きさv₀と任意の投射方向を示す.到達範囲は描かない.
解答を見る

考え方 軌道の式を u=tan⁡θ の2次方程式とみると,実数の u があること,つまり判別式が0以上であることが,その点に届く条件である.

  1. y=xu−gx22v02(1+u2) を u についてまとめると

gx22v02u2−xu+(y+gx22v02)=0

である.実数解があるための条件は,判別式が0以上,すなわち

x2−4⋅gx22v02(y+gx22v02)≥0

で,x2 で割って整理すると

y≤v022g−g2v02x2

を得る.等号のとき,その点には1つの向きだけで届く.この放物線の内側が届く範囲で,外側には決して届かない.境界の放物線はすべての軌道に接している(包絡線).x=0 で最高到達高さ v022g,y=0 で最大の到達距離 v02g が出る.

  1. 崖の上の原点から地面(y=−h)へ向かうので,y=−h を代入して

−h=v022g−g2v02x2⟹xmax=v0gv02+2gh

である.数値は v02+2gh=196+384.16=580.16,その平方根は約24.1 なので,xmax=149.8×24.1≈34m である.このときの向きは重根 u=v02gxmax≈0.58 から約 30∘ である.

ポイント 教える人へ

  • 問いかけ:モンキーハンティングは,まず予想を聞く.「速い弾なら当たる」「遅いと上を通る」など,直感の誤りが出るので,その理由を言葉にさせてから式に入る.

  • つまずき:水平と鉛直を別々に扱うことに納得しない教わる人が多い.水平方向の速度は変わらないこと,最高点でも加速度は −g のままであることを,図で確認させる.初速の分解(cos⁡θ と sin⁡θ の取り違え)も頻出である.

  • 到達距離の式は暗記させず,その場で導けるようにする.

  • 理解の確かめ:「最高点での速さは0か」と尋ねる.水平成分が残るので0ではない,と答えられれば,独立の考え方がつかめている.

19相対運動

問い

無風の日に,雨が真下に一定の速さで降っているとします.傘もささずに立っていると,雨粒は頭の真上から降ってきます.ところが同じ雨の中を走り出すと,雨は前から顔に当たるように見えます.雨そのものの降り方は変わっていないのに,なぜ見え方が変わるのでしょうか.雨粒の落ちる速さを 8ms−1,走る速さを 4ms−1 とすると,走っている人は雨が鉛直からどちらへ何度傾いて降ってくるように感じるでしょうか.まず自分で考えてみてください.

考えてみる

走っている人の立場で考えてみます.人は前へ進んでいるので,雨粒は人に対して後ろへ流れていくように見えるはずです.隣の線路を並んで走る電車がゆっくり後ずさりして見えるのと同じで,「見える速さ」は,見ている側の動きを差し引いた量になりそうです.

人から見た雨粒は,下向きの 8ms−1 に加えて,後ろへ 4ms−1 流れます.雨粒が後ろ下へ向かって来るということは,逆にたどれば前上方から降ってくるということで,これが「雨が前から降ってくる」感覚の正体です.以下では,この「差し引く」操作を位置・速度・加速度のベクトルで正確に書き,答えを数値で確かめます.

相対位置・相対速度・相対加速度

「どの立場から見るか」を明記するために,次のように定義します.

定義 相対位置・相対速度・相対加速度

物体A,Bの位置ベクトルを rA, rB とする.Aから見たBの相対位置を

rBA=rB−rA

と定める.これを時間で微分したものが相対速度,もう一度微分したものが相対加速度である.

vBA=drBAdt=vB−vA,aBA=aB−aA

微分は線形なので,差の微分は微分の差になります.相対速度は「相対位置の時間変化率」であり,同時に「速度の差」でもあります.

ここで,相対速度があるなら「絶対速度」もあるのではないか,と思うかもしれません.実際には,速度は何かを基準にして初めて値が決まる量です.地面から見た電車の速度と,隣を走る電車から見た同じ電車の速度は,どちらも正しいのに値が違います.基準にする物体(と,それに固定した座標軸)を座標系といいます.この章では,座標軸の向きは常に共通に保ち,回転する座標系は扱いません.以後,「地面から見た」という言い方を「地上系」,「Aに乗って見た」という言い方を「A系」と書きます.

速度の合成

人Pが電車Tの中を歩いています.その電車を地面Gから見ています.このとき,次の関係が成り立ちます.

法則 速度の合成

vPG=vPT+vTG

「地面から見たPの速度」は「電車から見たPの速度」に「地面から見た電車の速度」を加えたものである.

導出は1行です.定義から vPT=vP−vT,vTG=vT−vG なので,足すと vP−vG=vPG になります.添字が隣り合う所で「打ち消し合う」ので,式を書くときに間違えにくくなります.

最初の問いに戻ります.水平方向前向きに x 軸,鉛直上向きに y 軸をとります.地面を G,雨粒を R,走る人を P として,vRG=(0,−8)ms−1,vPG=(4,0)ms−1 です.人から見た雨粒の速度は

vRP=vRG−vPG=(−4,−8)ms−1

となります.雨粒は人に対して後ろへ 4ms−1,下へ 8ms−1 進みます.この速度の向きは鉛直下向きから後ろへ arctan⁡(4/8)≈27∘ 傾いており,見かけの速さは 42+82≈8.9ms−1 です.雨粒が来る向きはその逆なので,走る人は雨が鉛直から前へ約 27∘傾いて降ってくると感じます.走るほど傾きが大きくなるのも,式から分かります.

[図:立っている人と走る人から見た雨粒の速度]

雨粒は地面に対して鉛直下向きに8m/sで落ちる.立っている人から見た雨粒の速度v_RPは地面に対する速度v_RGと同じ.右へ走る人(初期状態で4m/s)では,v_RPはv_RGからv_PGを引いたベクトルで,後ろへ4m/s,下へ8m/sの左下向きになり,雨は鉛直から前へ約27°傾いて見える.スライダーで走る速さを変えると,傾きが走る速さとともに大きくなる様子が分かる.

川を渡る船

川には流れがあります.川の水に対する船の速さが v,岸に対する水の流れの速さが u のとき,岸(地上系)から見た船の速度は,合成則から

v船・岸=v船・水+v水・岸

です.船首を向ける向きを決めるのは「水に対する速度」の向きであり,実際に進む向きは足し合わせたあとのベクトルの向きです.川幅方向と流れ方向に分けて成分で考えると,川幅方向の運動は流れに影響されないことが分かります.対岸に着くまでの時間は川幅方向の速さだけで決まり,流れは「どこに着くか」だけを変えます.

川幅d,流速u,船の水に対する速度vを矢印で示す.左は船首を対岸へまっすぐ向けた場合で,岸から見た船の速度はv+uとなり下流側へ斜めに進む.右は船首を上流側へ角θだけ傾けた場合で,v+uの向きは下流側への傾きが小さくなる.どちらも川幅方向の速さはvの川幅方向の成分だけで決まる. 川幅d,流速u,船の水に対する速度vを矢印で示す.左は船首を対岸へまっすぐ向けた場合で,岸から見た船の速度はv+uとなり下流側へ斜めに進む.右は船首を上流側へ角θだけ傾けた場合で,v+uの向きは下流側への傾きが小さくなる.どちらも川幅方向の速さはvの川幅方向の成分だけで決まる.

ポイント ここまでのまとめ

  • Aから見たBの相対位置・相対速度・相対加速度は,B の量から A の量を引いて作る.vBA=vB−vA.

  • 速度の合成は vPG=vPT+vTG.添字が隣り合う所で打ち消し合う形に書くと間違えにくい.

  • 問いの答え:走る人から見た雨は,鉛直から前へ約 27∘ 傾いて降ってくる(見かけの速度は (−4,−8)ms−1).

  • 川を渡る船では,川幅方向の運動は流れの影響を受けない.時間は川幅方向の速さだけで決まり,流れは着く位置だけを変える.

20相対運動と最接近

定理 数学の道具:最も近づく時刻(二次関数と内積)

2つの物体が等速で動くとき,相対位置は r(t)=r0+ut と表せます.ここで r0 は t=0 の相対位置,u は一定の相対速度です.両者の距離 d(t)=|r(t)| が最小になる時刻を求めます(相対速度は u≠0 とします.u=0 なら距離は一定です).

距離の二乗は,内積の定義より

d2=|r0|2+2(r0⋅u)t+|u|2t2

という t の二次関数です.平方完成すると,

d2=|u|2(t+r0⋅u|u|2)2+|r0|2−(r0⋅u)2|u|2

となるので,最接近の時刻と最小距離は

t∗=−r0⋅u|u|2,dmin2=|r0|2−(r0⋅u)2|u|2

です.t∗ は r(t∗)⋅u=0 を満たします.つまり最接近の瞬間には,相対位置と相対速度が垂直になります.t∗<0 なら,t≥0 の範囲では t=0 が最小で,最小距離は |r0| です(この場合は最接近の瞬間の垂直条件は成り立ちません).

練習 1. r0=(8,6)m,u=(−2,−1)ms−1 のとき,最接近の時刻と最小距離を求めよ.

練習 2. r0=(10,0)m,u=(−2,2)ms−1 のとき,最接近の時刻と最小距離を求め,その瞬間に r(t∗)⋅u=0 となることを確かめよ.

練習 3. r0=(3,4)m,u=(1,1)ms−1 のとき,t≥0 での最小距離を求めよ.

答え:(1) r0⋅u=−22,|u|2=5 より t∗=4.4s.dmin2=100−484/5=3.2 なので,dmin=3.2≈1.8m.(2) r0⋅u=−20,|u|2=8 より t∗=2.5s.r(t∗)=(5,5)m で,dmin=52≈7.1m.(5,5)⋅(−2,2)=0 である.(3) r0⋅u=7>0 なので t∗=−3.5s<0.t≥0 では離れていく一方で,最小距離は t=0 の 5m.

ガリレイ変換と慣性系

座標系の取り替えを式で書いておきます.地上系 S の座標を (x,y),S に対して x 方向に一定の速さ V で動く系 S′ の座標を (x′,y′) とします.時刻 t=0 で原点が一致していたとすると,

x′=x−Vt,y′=y,t′=t

です.これを微分すると vx′=vx−V,vy′=vy です.もう一度微分すると

a′=a

となり,系 S′ が一定の速度で動くかぎり加速度は両方の系で同じになります.速度は系によって変わりますが,加速度は変わらないのです.一方,系 S′ が加速度 A で動いている場合は a′=a−A となり,加速度も変わります.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

川幅 d=120m で,水は一様に u=3.0ms−1 で流れている.水に対する速さ v=5.0ms−1 の船で,対岸へ渡る.

  1. 最短時間で渡るには船首をどちらへ向ければよいか.そのときの時間と,対岸に着くまでに流される距離を求めよ.

  2. 流されずに真向かいの点に着くには,船首をどちらへ向ければよいか.そのときの時間を求めよ.

幅dの川が右向きに速さuで流れている.下の岸の出発点Aから,水に対する速さvの船で上の岸へ渡る.Aの真向かいの対岸の点をBとする.船首の向きは自由で,水に対する速さvが半径になる半円で表している. 幅dの川が右向きに速さuで流れている.下の岸の出発点Aから,水に対する速さvの船で上の岸へ渡る.Aの真向かいの対岸の点をBとする.船首の向きは自由で,水に対する速さvが半径になる半円で表している.
解答を見る

考え方 岸に垂直な方向の動きは流れの影響を受けない.時間は垂直方向の速さだけで決まり,流れは着く位置にだけ効く.

岸に垂直に y 軸,下流向きに x 軸をとる.

  1. 船首を対岸にまっすぐ向け,垂直方向の速さを v=5.0ms−1 にするのが最短である.垂直方向の速さが最大だからである.時間は t=d/v=120/5.0=24s.その間に下流へ流される距離は ut=3.0×24=72m.

  2. 船首を上流側へ,岸に垂直な方向から角 θ だけ傾ける.岸に沿った成分が打ち消し合う条件は vsin⁡θ=u で,sin⁡θ=3.0/5.0=0.60,θ≈37∘.このとき岸に垂直な速さは vcos⁡θ=5.0×0.80=4.0ms−1 だから,時間は 120/4.0=30s.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

無風のとき,雨は鉛直に降る.速さ 10ms−1 で直線上を走る電車の窓から見ると,雨粒の筋は鉛直から 30∘ 傾いていた.

地上では鉛直に降る雨と,速さ10 m s⁻¹の電車から見える鉛直から30°傾いた雨の筋を並べる. 地上では鉛直に降る雨と,速さ10 m s⁻¹の電車から見える鉛直から30°傾いた雨の筋を並べる.
  1. 地面に対する雨粒の速さを求めよ.

  2. 電車の速さを 20ms−1 に上げると,窓の外の雨粒の筋は鉛直から何度傾いて見えるか.また,電車に対する雨粒の速さはいくらか.

解答を見る

考え方 雨粒の電車に対する速度は,地面に対する速度から電車の速度を引いたものである.地面に対する雨粒の速度は鉛直下向きで,電車の速さによらない.

雨粒の地面に対する速さを w とし,電車の進む向きを x,鉛直上向きを y とする.vRG=(0,−w),vTG=(V,0) だから,

vRT=vRG−vTG=(−V,−w)

である.筋が鉛直となす角を ϕ とすると tan⁡ϕ=V/w.

  1. V=10ms−1,ϕ=30∘ より w=V/tan⁡30∘=103≈17ms−1.

  2. V=20ms−1 のとき tan⁡ϕ=20/(103)=2/3≈1.15 なので ϕ≈49∘.電車に対する雨粒の速さは 202+(103)2=700≈26ms−1.

ポイント ここまでのまとめ

  • 等速で動く2物体の距離は,相対位置 r0+ut の大きさ.距離の2乗が t の2次関数なので,u≠0 なら,平方完成で最接近の時刻 t∗=−r0⋅u/|u|2 が出る.t∗≥0 のとき,その瞬間に相対位置と相対速度は垂直になる.t∗<0 なら t≥0 では t=0 が最小で,最小距離は |r0| である.

  • 等速で動く系へ移っても,加速度は変わらない(ガリレイ変換).加速度で動く系では a′=a−A となる.

  • 川の問題では,岸に垂直な成分と沿う成分に分ける.雨の見かけの傾きは tan⁡ϕ=V/w(電車の速さ V,雨の速さ w)で決まる.

21相対運動の演習

「だれから見た,だれの速度か」を最初に書き,速度の合成の式に添字をつけて立式してください.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

自転車が点Pを一定の速さ 5.0ms−1 で通過した.その 20s 後に,オートバイが同じ点Pを同じ向きに一定の速さ 15ms−1 で通過した.

自転車が点Pを通過した20 s後にオートバイが同じ点を通過する.各速さと方向を示す. 自転車が点Pを通過した20 s後にオートバイが同じ点を通過する.各速さと方向を示す.
  1. オートバイが自転車に追いつくのは,オートバイがPを通過してから何秒後か.

  2. 追いつく地点はPから何mか.

解答を見る

考え方 オートバイから見た自転車の相対速度と,通過した瞬間の相対位置(自転車が先にいる距離)に注目する.

  1. オートバイが通過する時点で,自転車は 5.0×20=100m 先にいる.自転車から見たオートバイの相対速度は 15−5.0=10ms−1 だから,詰まるまでに 100/10=10s かかる.

  2. オートバイはその間に 15×10=150m 進む.確認として,自転車は 5.0×(20+10)=150m 進んでいて,一致する.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

対気速度(空気に対する速さ)が 60ms−1 の飛行機で,真北にある 120km 離れた空港へ向かう.空気は西から東へ 20ms−1 で動いている(西風).

出発点の真北120 kmに空港があり,風は東向き20 m s⁻¹.機首の向きは描かない. 出発点の真北120 kmに空港があり,風は東向き20 m s⁻¹.機首の向きは描かない.
  1. 機首をどちらへ向ければ,空港まで真北に進めるか.

  2. そのとき,地面に対する飛行機の速さと,所要時間を求めよ.

  3. 風がなければ所要時間は何分か.

解答を見る

考え方 地面に対する速度は,空気に対する速度と風の速度の和である.東向きの成分を打ち消すように機首を傾ける.

東向きに x,北向きに y をとる.機首を真北から西へ φ だけ傾けると,空気に対する速度は 60(−sin⁡φ,cos⁡φ),風は (20,0) である.

  1. 東西成分が0になる条件は −60sin⁡φ+20=0,すなわち sin⁡φ=1/3,φ≈19∘.機首を真北から西へ約 19∘ 傾ける.

  2. 地面に対する速さは北向き成分 60cos⁡φ=601−1/9=402≈57ms−1.所要時間は 1.2×105/(402)≈2.1×103s,約 35 分である.

  3. 風がなければ 1.2×105/60=2.0×103s,約 33 分である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

一定の速さ 10ms−1 で右向きに走る電車の床の上で,乗客がボールを床から真上に初速度 9.8ms−1 で投げ上げた(電車に対して真上).重力加速度は g=9.8ms−2 で,空気の抵抗は無視する.

  1. 電車の中から見たボールの運動を述べよ.ボールが床に戻るまでの時間と最高点の高さを求めよ.

  2. 地上から見たボールの初速度の大きさと向き,ボールが投げた位置から水平に進む距離,軌道の概形を述べよ.

右向きに走る電車の床から,ボールを電車に対して真上に投げ上げる.左は電車の中から見た軌道で,鉛直な直線を往復する.右は地上から見た軌道で,電車が右へ進む間にボールも水平に進むため放物線になる.最高点の高さは二つの図で同じ. 右向きに走る電車の床から,ボールを電車に対して真上に投げ上げる.左は電車の中から見た軌道で,鉛直な直線を往復する.右は地上から見た軌道で,電車が右へ進む間にボールも水平に進むため放物線になる.最高点の高さは二つの図で同じ.
解答を見る

考え方 電車の中から見る運動は,電車の速度を差し引くだけで得られる.水平方向と鉛直方向は独立に扱える.

  1. 電車系では,投げ上げ直後の速度は鉛直上向きの 9.8ms−1,加速度は鉛直下向きの g である.ボールは同じ鉛直線上を往復する.戻る時間は t=2v0/g=2.0s,最高点の高さは v02/(2g)=4.9m.

  2. 地上系での初速度は (10,9.8)ms−1.大きさは 100+96.04≈14ms−1,水平から arctan⁡(9.8/10)≈44∘ 上向きである.水平には等速 10ms−1 で 2.0s 進むので 20m.軌道は放物線であり,最高点の高さは電車系と同じ 4.9m(高さは水平方向に動く系で変わらない)である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

一定の速さで下流から上流へ向かう船が,橋の真下で川に浮き輪を落とした.船は 10 分間そのまま進んでから,落としたことに気づいて直ちに引き返し,橋から下流へ 1.8km の地点で浮き輪に追いついた.川の流速を求めよ.船のエンジンの出力は一定で,水に対する船の速さは上りも下りも同じとする.

橋で落とした浮き輪と,橋から下流1.8 kmの再会地点を示す.船は10分間上ってから引き返す. 橋で落とした浮き輪と,橋から下流1.8 kmの再会地点を示す.船は10分間上ってから引き返す.
解答を見る

考え方 川と一緒に動く系(水系)に移ると,浮き輪は静止し,船は一定の速さで遠ざかって同じ速さで戻ってくる.

水系では浮き輪は静止している.船の水に対する速さは行きも帰りも同じなので,離れる時間と戻る時間は等しく,どちらも 10 分である.つまり浮き輪を落としてから拾うまでに 20 分 =1200s が経過した.その間に浮き輪は川の流れに乗って橋から 1.8km=1800m 下流へ運ばれた.よって流速は

u=18001200=1.5ms−1 (=5.4km/h)

である.船の水に対する速さは分からなくても,流速は求まる.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

海上で,船Aは時刻0に原点を出て東向きに一定の速さ 6.0ms−1 で進む.船Bは時刻0に原点から東へ 800m,北へ 700m の位置にあり,速度 (−2.0,−6.0)ms−1 で進む(東向きを x,北向きを y とする).

時刻0の船Aと船Bの位置と,地面に対する各速度を示す. 時刻0の船Aと船Bの位置と,地面に対する各速度を示す.
  1. Aから見たBの相対速度を求めよ.

  2. 2船が最も近づく時刻と,そのときの距離を求めよ.

  3. 最接近距離が 100m 以上でなければ危険とするとき,この2船は危険か.

解答を見る

考え方 相対位置は r0+ut の形になる.最接近は相対位置と相対速度が垂直になる時刻である.数学の道具の公式を使う.

  1. u=vBA=(−2.0,−6.0)−(6.0,0)=(−8.0,−6.0)ms−1.|u|=10ms−1.

  2. r0=(800,700)m なので r0⋅u=−6400−4200=−10600,|u|2=100.よって t∗=10600/100=106s.このとき

r(t∗)=(800−8.0×106, 700−6.0×106)=(−48, 64)m

であり,距離は 482+642=80m.確認として r⋅u=384−384=0 で垂直になっている.

  1. 80m<100m なので危険である.

ポイント 教える人へ

  • 「走ると雨が斜めに見えるのはなぜか」を,「走る人から見て後ろへ動くから」と言葉で説明できるか確かめる.矢印を2本描かせ,差のベクトルを作らせると定着する.

  • つまずきやすいのは引き算の順序である.「Aから見たBの速度は vB−vA」を,具体的な車や船で確かめさせる.

  • 川渡りでは「船首の向き」と「実際に進む向き」を混同しがちである.「水に対する速度」と「地面に対する速度」を別の矢印で描かせる.

  • 最接近が「相対位置と相対速度が垂直」で決まる理由を,図でも説明できるか確かめる.

  • 加速度が等速の系で変わらない点は第4章の入り口である.ここでは導入にとどめる.

22円運動の運動学

問い

回転しているCDの端の点と,そこから半径の半分の位置にある点を比べます.どちらが「速い」でしょうか.また,一定の速さで円を描いて回る点は,速さが変わらないのに「加速している」といえるでしょうか.電車でカーブを曲がるとき,速さが一定でも体が外側へ押されると感じるのはなぜでしょうか.まず自分で考えてみてください.

考えてみる

CDは1周するのにかかる時間が,端でも半径の半分の位置でも同じです.同じ時間に,端の点のほうが大きい円を描くので,進む道のりが長くなります.したがって速さは端のほうが大きく,円周は半径に比例するので,半径が2倍なら速さも2倍になりそうです.一方,「単位時間にどれだけ回るか」という見方なら,どの点も同じ割合で回っています.この「回る割合」を表す量が必要で,これを角速度と呼び,速さと結びつけます.

後半の問いは,加速度の定義に戻って考えます.加速度は速度ベクトルの時間変化率でした.速度ベクトルは速さと向きの両方を持つので,速さが一定でも向きが変わっていれば速度は変化しており,加速度は0ではありません.円運動では速度の向きが常に変わり続けるので,加速度があります.その向きは,速度の向きの変わり方から考えると,円の中心を向くことが予想できます.以下で,これを式で確かめます.

角度と角速度

角度の測り方を1つ決めておきます.半径 r の円で,中心角 θ に対する弧の長さを s とします.

定義 弧度法(ラジアン)

中心角 θ を,弧の長さ s と半径 r の比 θ=sr で測る.単位はラジアン(rad)で,1周は 2πrad である.

これで,弧の長さは s=rθ とごく単純に書けます.度数法では s=π180rθ のように係数が付くので,回転の計算ではラジアンを使います.

定義 角速度・周期・振動数

円周上を動く点の,円の中心のまわりの回転角を θ(t) とする.

ω=dθdt

を角速度という.一定の角速度での1周の時間を周期 T,1秒あたりの回転数を振動数(回転数)f とすると,

ω=2πT=2πf,f=1T

この節では,回転角が増える向き(反時計回り)を正の向きに選び,回転の向きは途中で逆転しないものとします.このとき ω>0 で,逆向きに回る場合は ω<0 となるので,一般には速さは r|ω| と書きます.

弧の長さ s=rθ を時間で微分すると,円周に沿った速さは

v=dsdt=rdθdt=rω

となります.角速度はどの点でも同じ,速さは半径に比例します.冒頭の問いの答えは,端の点のほうが半径の分だけ速い,です.

位置ベクトルから速度・加速度へ

半径 R の円周上を一定の角速度 ω で回る点を,座標で表します.時刻 t=0 に x 軸上の点 (R,0) を出発するとして,位置ベクトルは

r(t)=(Rcos⁡ωt, Rsin⁡ωt)

です.成分ごとに微分します(連鎖律を使います).

v=drdt=(−Rωsin⁡ωt, Rωcos⁡ωt)
a=dvdt=(−Rω2cos⁡ωt, −Rω2sin⁡ωt)=−ω2r

ここから読み取れることを整理します.

法則 等速円運動の速度と加速度

  • 速さは |v|=Rω で一定.

  • 速度は位置ベクトルと垂直(v⋅r=0).つまり円の接線方向を向く.

  • 加速度は a=−ω2r.位置ベクトルと逆向きなので,常に円の中心を向く.その大きさ a=Rω2=v2R=vω を向心加速度という.

最初の問いの2点では,角速度 ω が等しく半径が R と R/2 です.速さは Rω と Rω/2,向心加速度は Rω2 と Rω2/2 となり,どちらも端が2倍です.「速さが一定なのに加速度がある」という疑問は,加速度が速度ベクトルの変化率であることを思い出せば解けます.カーブを曲がる電車の中で体が外側へ押される感じがするのは,電車の加速度が内側を向いているためです(なぜ「押される」と感じるのかは第4章で扱います).

速さが変わる円運動

角速度が時間とともに変わる場合も,同じ手順で扱えます.半径 R の円周上で,回転角が時間の関数 θ(t) のとき,

r=R(cos⁡θ, sin⁡θ)

です.接線方向(回転角が増える向き)の単位ベクトルを et=(−sin⁡θ,cos⁡θ),中心向きの単位ベクトルを en=(−cos⁡θ,−sin⁡θ) とします.また時間微分を θ˙=dθdt,θ¨=d2θdt2 と書きます.微分すると,積の微分から

v=Rθ˙et,a=Rθ¨et+Rθ˙2en

となります(e˙t=−θ˙r/R を使いました).

法則 接線加速度と法線加速度

加速度は接線方向と中心方向に分解できる.

at=Rθ¨=Rdωdt=dvdt,an=Rω2=v2R

at は速さの変化を,an は向きの変化を表す(θ˙>0 として,v=Rθ˙ を速さとしたときの式である).全加速度の大きさは a=at2+an2 である.

等速円運動は at=0 の特別な場合です.

ポイント ここまでのまとめ

  • 角度はラジアンで測り,弧の長さは s=rθ.角速度 ω=dθdt,周期 T,振動数 f の間に ω=2π/T=2πf が成り立つ.

  • 回転角が増える向きを正とし,回転が逆転しないとき,速さは v=rω で,角速度はどの点でも同じ,速さは半径に比例する(一般には v=r|ω|).

  • 等速円運動の加速度は a=−ω2r で,常に円の中心を向く.大きさは rω2=v2/r.速さが一定でも,向きが変わるので加速度がある.

  • 速さが変わる円運動では,加速度は接線成分 at=dvdt と法線成分 an=v2/r に分かれる.

23円運動と弧度法

定理 数学の道具:弧度法と小角近似

弧度法のよい点は,三角関数の微分が簡潔になることである.ddθsin⁡θ=cos⁡θ は,θ がラジアンで測られているときに限って成り立つ.

もう1つ,θ が小さいとき(ラジアンで)次の近似が使える.

sin⁡θ≈θ,tan⁡θ≈θ,cos⁡θ≈1−θ22

理由は図形から分かる.半径1の円で,中心角 θ に対する弧の長さは θ である.θ が小さいと,弧とその両端を結ぶ弦はほとんど重なる.弦の長さは 2sin⁡(θ/2) なので,弧と弦が近いことは 2sin⁡(θ/2)≈θ,すなわち小さい角 x=θ/2 で sin⁡x≈x であることを意味する.cos⁡θ の式は,cos⁡θ=1−2sin2⁡(θ/2)≈1−θ2/2 から得られる.

[図:半径1の円の弧と弦,sinθ,tanθ]

半径1の円で,中心角θに対する弧の長さθ(青),弦(黒),sinθ(緑),tanθ(橙)を並べて比べる図.初期状態はθ=0.5rad.θが小さいと弧と弦とsinθとtanθはほとんど同じ長さで,スライダーでθを大きくするとtanθが先に大きく離れ,sinθも少しずつ小さくなる.

練習 1. θ=0.05rad のとき,sin⁡θ の近似値と,近似の誤差を見積もれ.

答え:sin⁡0.05≈0.05.真の値は 0.049979 なので相対誤差は約 0.04 % である.

練習 2. 月の見かけの大きさ(視直径)は約 0.5∘,地球からの距離は約 3.8×105km である.月の直径を見積もれ.

答え:0.5∘=0.5×π/180≈8.7×10−3rad なので,直径は 3.8×105×8.7×10−3≈3.3×103km.

練習 3. (1) 30∘,135∘ をラジアンで,1rad を度で表せ.(2) 半径 2.0m の円で,中心角 0.30rad の弧の長さを求めよ.

答え:(1) π/6≈0.52rad,3π/4≈2.36rad,1rad=180∘/π≈57.3∘.(2) 2.0×0.30=0.60m.

練習 4. 小角近似で cos⁡0.1 と tan⁡1∘ の値を求めよ.

答え:cos⁡0.1≈1−0.01/2=0.995(真の値 0.99500).1∘=π/180≈0.01745rad なので tan⁡1∘≈0.0175(真の値 0.01746).

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

半径 R=0.20m の円周上を一定の角速度 ω で回る点がある.位置ベクトルが r=(Rcos⁡ωt, Rsin⁡ωt) と表されるとき,

半径Rの円上の点を中心からの位置ベクトルで示す. 半径Rの円上の点を中心からの位置ベクトルで示す.
  1. 速度 v と加速度 a を成分の微分で求め,a=−ω2r を示せ.

  2. 毎秒5回転するときの,速さと加速度の大きさを求めよ.重力加速度の何倍か.

解答を見る

考え方 各成分を時間で微分する.位置ベクトルと加速度ベクトルの成分を見比べると,比例関係に気づく.

  1. 成分ごとに微分して,

v=(−Rωsin⁡ωt, Rωcos⁡ωt)
a=(−Rω2cos⁡ωt, −Rω2sin⁡ωt)=−ω2(Rcos⁡ωt, Rsin⁡ωt)=−ω2r

内積 v⋅r=−R2ωsin⁡ωtcos⁡ωt+R2ωcos⁡ωtsin⁡ωt=0 であり,速度は位置ベクトルと垂直である.

  1. f=5s−1 より ω=2πf=10π≈31rads−1.速さは v=Rω=0.20×31.4≈6.3ms−1,加速度の大きさは a=Rω2=0.20×(31.4)2≈2.0×102ms−2.重力加速度 9.8ms−2 の約 20 倍である.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

アナログ時計の時針と分針は,12時ちょうどに重なっている.

12時ちょうどに重なる時針と分針を,長さと線種を変えて示す. 12時ちょうどに重なる時針と分針を,長さと線種を変えて示す.
  1. 時針,分針の角速度(radmin−1)を求めよ.

  2. 時針から見た分針の相対角速度を求め,次に2つの針が重なるのは何分後かを求めよ.

  3. 12時以降,2つの針が初めて直角をなすのは何分後か.

解答を見る

考え方 相対運動と同様に,角速度の差を考える.針の重なりは,分針が時針より 2π だけ多く回ったときに起こる.

  1. 分針は60分で 2π,時針は720分で 2π 回るので,ω分=2π60,ω時=2π720 radmin−1.

  2. 時針から見た分針の相対角速度は

ω分−ω時=2π(160−1720)=11⋅2π720 radmin−1

分針が時針に追いついて再び重なるには,相対角が 2π 進む必要があるから,t=2π/22π720=72011≈65.5 分後(約1時間5分27秒).

  1. 相対角が π/2 になる時刻は t=π/222π/720=18011≈16.4 分後.

例題 3

オリジナル ★☆☆☆☆

レコード盤が毎分 3313 回転で回っている.回転軸から 0.12m の位置にある盤上の点の速さを求めよ.また,その点の加速度の大きさを求めよ.

回転軸から0.12 mの点を示す.回転数は毎分33⅓回. 回転軸から0.12 mの点を示す.回転数は毎分33⅓回.
解答を見る

考え方 毎分の回転数を毎秒に直して振動数 f を出し,ω=2πf から v=rω と a=rω2 を求める.

f=3313 回転/分 =100/360=59s−1 なので,ω=2πf=10π9≈3.49rads−1.速さは v=rω=0.12×3.49≈0.42ms−1,加速度の大きさは a=rω2=0.12×3.492≈1.5ms−2(向きは中心向き)である.

ポイント ここまでのまとめ

  • ラジアンで測った角では ddθsin⁡θ=cos⁡θ が成り立つ.円運動の微分は,角をラジアンにそろえてから行う.

  • 角が小さい(ラジアンで1より十分小さい)とき,sin⁡θ≈θ,tan⁡θ≈θ,cos⁡θ≈1−θ2/2 と近似できる.

  • 位置ベクトル (Rcos⁡ωt, Rsin⁡ωt) を成分ごとに2回微分すると a=−ω2r が出る.

  • 針の問題のように角速度の差を考えると,追いつく時刻や直角になる時刻が相対運動と同じ手順で求まる.

24円運動の演習

円運動では,まず半径と角速度を決めてから速さと加速度を求めます.加速度の向きがどこを向くかも毎回確かめてください.

演習

演習 1

オリジナル ★★☆☆☆

地球は 24 時間で1回自転する(ここでは1日を 8.64×104s とする).地球の半径を 6.4×106m とする.

  1. 赤道上の点の速さと加速度の大きさを求めよ.

  2. 北緯 35∘ の地点の速さと加速度の大きさを求めよ.加速度は地球の中心を向くか.

地球の断面図.鉛直な自転軸のまわりを地球が角速度ωで回る.赤道上の点Eは自転軸から地球の半径Rだけ離れた円を描く.北緯35°の点Pは,地球の中心とPを結ぶ線が赤道面と35°の角をなす位置にあり,自転軸からの水平な距離rの円を描く.Pの円運動の中心は地球の中心ではなく自転軸上の点である. 地球の断面図.鉛直な自転軸のまわりを地球が角速度ωで回る.赤道上の点Eは自転軸から地球の半径Rだけ離れた円を描く.北緯35°の点Pは,地球の中心とPを結ぶ線が赤道面と35°の角をなす位置にあり,自転軸からの水平な距離rの円を描く.Pの円運動の中心は地球の中心ではなく自転軸上の点である.
解答を見る

考え方 北緯 φ の点は,自転軸のまわりを半径 Rcos⁡φ の円周上で回る.角速度は全地点で共通である.

自転の角速度は ω=2π/(8.64×104)≈7.3×10−5rads−1.

  1. 赤道では円運動の半径が地球の半径 R に等しいので,v=Rω=6.4×106×7.27×10−5≈4.7×102ms−1.加速度は a=Rω2≈6.4×106×(7.27×10−5)2≈3.4×10−2ms−2(重力加速度の約 0.3 %).

  2. 北緯 35∘ では半径 Rcos⁡35∘≈0.82R なので,速さ v≈3.8×102ms−1,加速度 a≈2.8×10−2ms−2.加速度は円運動の中心,つまり自転軸に向かう向きであり,地球の中心を向くのは赤道上だけである.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

半径 R=0.50m の円周上を,点が静止の状態から回転角 θ=12αt2(α=2.0rads−2)で動き始める.

半径Rの円と回転角θを示す.接線・法線加速度は描かない. 半径Rの円と回転角θを示す.接線・法線加速度は描かない.
  1. t=1.5s の接線加速度,法線加速度,加速度の大きさを求めよ.また,加速度が速度となす角を求めよ.

  2. 加速度の向きが速度と 45∘ になるのは何秒後か.

解答を見る

考え方 接線加速度は Rθ¨,法線加速度は Rθ˙2 である.

θ˙=ω=αt,θ¨=α.

  1. t=1.5s で ω=3.0rads−1.at=Rα=0.50×2.0=1.0ms−2,an=Rω2=0.50×9.0=4.5ms−2.加速度の大きさは 1.02+4.52≈4.6ms−2.速度は接線方向を向くので,加速度と速度のなす角 ψ は tan⁡ψ=an/at=4.5,ψ≈78∘ である.

  2. ψ=45∘ は an=at と同値.Rα2t2=Rα より t=1/α=1/2.0≈0.71s.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

等速円運動の加速度が中心を向くことを,図形で示す.半径 R,速さ v の等速円運動で,短い時間 Δt の間に回転角が Δθ だけ増える.

  1. 時刻 t と t+Δt の速度ベクトルを同じ始点から描き,速度の変化 Δv を図示せよ.

  2. |Δv| を v,Δθ で表し,小角近似を使って加速度の大きさ v2/R を求めよ.また,Δt→0 で Δv の向きが中心向きになることを示せ.

左は半径Rの円で,時刻tの点と時刻t+Δtの点(中心角Δθだけ進んだ位置)に,円の接線方向の速度ベクトルv(t)とv(t+Δt)を描いたもの.右は同じ二つの速度ベクトルを同じ始点から描き直したもので,二つのなす角はΔθ,大きさはどちらもvである.速度の変化Δvは,読者が右の図に描き入れて求める. 左は半径Rの円で,時刻tの点と時刻t+Δtの点(中心角Δθだけ進んだ位置)に,円の接線方向の速度ベクトルv(t)とv(t+Δt)を描いたもの.右は同じ二つの速度ベクトルを同じ始点から描き直したもので,二つのなす角はΔθ,大きさはどちらもvである.速度の変化Δvは,読者が右の図に描き入れて求める.
解答を見る

考え方 2つの速度ベクトルは大きさが等しく,向きの差が Δθ.その差のベクトルは二等辺三角形の底辺になる.

  1. 2つの速度ベクトルを始点を共通にして描くと,長さ v の2辺が頂角 Δθ をなす二等辺三角形ができ,底辺が Δv である.

  2. 底辺の長さは |Δv|=2vsin⁡Δθ2≈vΔθ(小角近似).Δθ=ωΔt なので,

a=limΔt→0|Δv|Δt=vω=v2R

二等辺三角形の底角は π−Δθ2 であり,Δt→0 では π/2 に近づく.よって Δv は速度に垂直で,速度の向きが曲がっていく側,つまり中心を向く.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

長さ 0.80m の糸の先に石をつけ,床から高さ 1.25m の水平面内で,毎秒 2.0 回転の等速円運動をさせた(速く回すので糸は水平とみなし,重力による糸の傾きは無視する).

床から1.25 mの水平面内で長さ0.80 mの糸についた石を回す.右向きの接線速度は問題文の条件を示す. 床から1.25 mの水平面内で長さ0.80 mの糸についた石を回す.右向きの接線速度は問題文の条件を示す.
  1. 石の加速度の大きさと向きを求めよ.

  2. 石が糸から離れる瞬間に,石の速度は円の接線方向を向く.石が離れてから床に着くまでの水平距離と,着地点の回転軸からの距離を求めよ.重力加速度は 9.8ms−2,空気の抵抗は無視する.

  3. 回転数を変えずに糸の長さを2倍にすると,石の加速度は何倍になるか.

解答を見る

考え方 円運動では速さ v=rω,加速度 a=rω2.離れた後は,水平方向に等速,鉛直方向に自由落下する放物運動になる.

  1. ω=2π×2.0=4π≈12.6rads−1.a=rω2=0.80×(12.6)2≈1.3×102ms−2.向きは円の中心(回転軸)である.

  2. 石の速さは v=rω=0.80×12.6≈10ms−1.離れる瞬間の速度は水平で,接線方向である.落下の時間は h=12gt2 より t=2×1.25/9.8≈0.505s.水平距離は,離れた点から接線方向に 10.05×0.505≈5.08m,約 5.1m.離れた点は回転軸から 0.80m で,接線は半径に垂直だから,着地点の回転軸からの水平距離は 0.802+5.082≈5.14m,これも約 5.1m である.糸の長さに比べて飛ぶ距離が長いので,2つの距離の差は 0.06m ほどしかない.

  3. 回転数が同じなら ω は同じで,a=rω2 は r に比例するので2倍である.

ポイント 教える人へ

  • 「半径の半分の点はどちらが速いか」を最初に問い,「速さは半径に比例するが,角速度は同じ」と言い分けられるかを確かめる.

  • 「速さが一定ならば加速度は0」という素朴な誤解に対しては,円運動で速度ベクトルの矢印を数本描かせ,向きが変わっていることを見せる.

  • ラジアンの感覚をつかませるため,1 rad が約 57∘,円周が半径の約 6.3 倍であることを具体的に確かめる.

  • 小角近似は「いつ使ってよいか」が大事である.θ=0.05rad,0.5rad,1rad で誤差を比べさせる.

  • 接線加速度と法線加速度は「速さの変化」と「向きの変化」に対応する.どちらが何を変えるかを自分の言葉で言えれば,理解できている.

25第3章の章末問題

この章で学んだ,位置・速度・加速度,微分と積分,放物運動,相対運動,円運動を総動員する問題です.どれも1つの公式に当てはめるだけでは解けないので,どの系で見るか,どの量を未知数にするかを最初に決めてから取りかかってください.難しい問題は,まず特別な場合(速さが極端に大きい,角度が0 など)で答えの見当をつけると,解いた後の確かめにも使えます.

演習 1

オリジナル ★★☆☆☆

長さ 180m の列車Aと長さ 240m の列車Bが,平行な線路を一定の速さで走る.列車Aの乗客(質点とみなす)から見て,Bが反対向きにすれ違うとき,Bの先頭が乗客に並んでから末尾が通り過ぎるまでに 6.0s かかった.Bが同じ向きに走って後ろからAを追い越すときには,同じ区間に 30s かかった.各列車の速さは2つの場合で同じとする.

列車AとBの長さを示し,Bが反対向きの場合と同じ向きの場合を分けて描く. 列車AとBの長さを示し,Bが反対向きの場合と同じ向きの場合を分けて描く.
  1. A,Bの速さを求めよ.

  2. 反対向きにすれ違うとき,両列車の先頭が並んでから,末尾が互いに通り過ぎ終わるまでの時間を求めよ.

  3. 同じ向きに走るとき,Bの先頭がAの末尾に並んでから,Bの末尾がAの先頭を通り過ぎるまでの時間を求めよ.

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考え方 相手の列車に乗って見れば,片方が止まり,もう片方が相対速度で動く問題になる.通り過ぎるべき長さを相対速度で割ればよい.

A,Bの速さを vA,vB とする.

  1. 反対向きのとき,Aから見たBの速さは vA+vB で,長さ 240m を 6.0s で通り過ぎるから vA+vB=240/6.0=40ms−1.同じ向きのときは vB−vA=240/30=8.0ms−1.連立して vB=24ms−1,vA=16ms−1.

  2. 先頭が並んでから末尾同士が離れ終わるまでに,Bの先頭はAに対して 180+240=420m 進む.よって 420/40=10.5s.

  3. 同様に相対的に 420m 進み,相対速度は 8.0ms−1 だから 420/8.0=52.5s.

演習 2

オリジナル ★★★☆☆

まっすぐな道路上の点Aから,道路から垂直に l=900m 離れた野原の点Bへ,できるだけ早く車で行きたい.Bから道路に下ろした垂線の足をCとし,Cは道路に沿ってAから D=2000m の位置にあるとする.車の速さは道路上で 20ms−1,野原の中で 12ms−1 である.道路上でAから x の位置の点Pで道路を離れ,野原をPからBまで直進するとする.

道路上のA,P,Cと野原のBを示す.AP=x,AC=D,BC=lである. 道路上のA,P,Cと野原のBを示す.AP=x,AC=D,BC=lである.
  1. 所要時間 T(x) を表せ.

  2. T を最小にする x と,そのときの最小時間を求めよ.必要なら,(w)′=12w((tn)′=ntn−1 の n=12 の場合)と連鎖律を使ってよい.

  3. AからBまで野原を直進する場合,およびCまで道路を走ってから野原を垂直に進む場合と比較せよ.

解答を見る

考え方 T(x) は道路を走る時間と野原を走る時間の和である.x で微分して0とおく.野原での進路の向きに注目すると見通しがよい.

道路上の速さを v1=20,野原での速さを v2=12ms−1 とする.

  1. 野原での道のりは l2+(D−x)2 だから

T(x)=xv1+l2+(D−x)2v2
  1. 微分して,

dTdx=1v1−D−xv2l2+(D−x)2=0

野原での進路が道路への垂線となす角を φ とすると,sin⁡φ=D−xl2+(D−x)2 だから,条件は sin⁡φ=v2/v1=0.60.tan⁡φ=0.75 より D−x=ltan⁡φ=675m,x=1325m.野原での道のりは l/cos⁡φ=900/0.80=1125m.最小時間は

T=132520+112512=66.25+93.75=160s

T(x) の第2項は x について下に凸だから,この停留点が最小である.

  1. 野原を直進すると 9002+20002/12≈183s.Cまで道路を走る場合は 2000/20+900/12=175s.最小の 160s が最も短い.なお,この最小条件 sin⁡φ=v2/v1 は,光の屈折の法則と同じ形をしている.

演習 3

オリジナル ★★★☆☆

直線上を運動する質点の,速さ v に対する減速度の大きさが a=kv(k は正の定数)で与えられる.時刻0の速さを v0=9.0ms−1,k=1.5m1/2s−3/2 とする.

進行方向と反対向きに,問題で与えられた減速度が働く状況を示す. 進行方向と反対向きに,問題で与えられた減速度が働く状況を示す.
  1. 質点が止まるまでの時間を求めよ.

  2. 止まるまでに進む距離を求めよ.

  3. 減速度が a=kv の場合には,質点は有限の時間で止まるか.また,進む距離の上限はあるか.

必要なら次の公式を使ってよい:(tn)′=ntn−1 は n が分数でも成り立つ(たとえば (v)′=12v,(v3/2)′=32v).また (ekt)′=kekt なので,v=v0e−kt は dvdt=−kv と v(0)=v0 を満たす.

解答を見る

考え方 式は dvdt=−kv.v の関数を時間で微分すると dvdt が出てくることを使う.距離は,連鎖律で dvdt=vdvdx と直して求める.

  1. 連鎖律より ddt(2v)=1vdvdt=−k なので,2v=2v0−kt.v=0 となる時刻は T=2v0k=2×3.01.5=4.0s.

  2. 連鎖律より dvdt=dvdxdxdt=vdvdx と書けるから,vdvdx=−kv,すなわち vdvdx=−k.左辺は ddx(23v3/2) なので 23(v03/2−v3/2)=kx.止まる位置は x=2v03/23k=2×273×1.5=12m.確認として v(t)=(v0−k2t)2 を 0≤t≤T で積分しても 12m が得られる.

  3. 問題文の公式より,dvdt=−kv,v(0)=v0 を満たすのは v=v0e−kt である(この形の方程式の解が1つに決まることは,空気抵抗の章で扱う).これはどんな有限の t でも0にならないので,有限の時間では止まらない.距離は ∫0∞v0e−ktdt=v0/k と有限で,これが進む距離の上限になる(v と x の関係は v=v0−kx).

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

水平な地面の上を,台車が右向きに一定の速さ V で走っている.台車の上の点から,台車に対して速さ v0,水平となす角 θ(0<θ<90∘)の向きに,台車の進む向きの前方へボールを投げ出す.空気の抵抗は無視する.台車の上面は水平で十分に長く,ボールが投げた点の高さまで戻ったときを落下とみなす.

水平な地面の上を,台車が右向きに一定の速さVで走っている.台車の上の点から,台車に対する速さv0で,水平となす角θの向きにボールを投げ出す.台車に対する初速度の矢印と角θ,台車の速度Vの矢印を示す.ボールの軌道と着地点は描かない. 水平な地面の上を,台車が右向きに一定の速さVで走っている.台車の上の点から,台車に対する速さv0で,水平となす角θの向きにボールを投げ出す.台車に対する初速度の矢印と角θ,台車の速度Vの矢印を示す.ボールの軌道と着地点は描かない.
  1. 台車から見たボールの運動を述べ,ボールが台車のどこに落ちるか答えよ.

  2. 地面から見た初速度の成分を書き,投げた点から落下点までの,地面に対する水平距離 R を v0,V,θ,g で表せ.

  3. R を最大にする θ について cos⁡θ=−V+V2+8v024v0 であることを示せ.必要なら,(sin⁡θ)′=cos⁡θ,(cos⁡θ)′=−sin⁡θ,2倍角の公式 cos⁡2θ=2cos2⁡θ−1 を使ってよい.

  4. v0=10ms−1,V=5.0ms−1 のとき,R を最大にする θ と,そのときの R を求め,θ=45∘ で投げた場合と比べよ.

解答を見る

考え方 台車は等速なので,台車から見ても加速度は −g(鉛直下向き)のままである.地面から見た初速度は,台車に対する初速度に台車の速度を足したもの(速度の合成)である.

  1. 台車は等速なので,台車から見てもボールの加速度は鉛直下向きに g である.したがって台車から見ると,初速 v0,角 θ のふつうの放物運動になる.滞空時間 T=2v0sin⁡θg の後,ボールは台車の上の,投げた点から前方へ v02sin⁡2θg の点に落ちる.この結果は V によらない.

  2. 地面から見た初速度は (v0cos⁡θ+V, v0sin⁡θ).滞空時間は同じ T なので

R=(v0cos⁡θ+V)2v0sin⁡θg
  1. R は f(θ)=(v0cos⁡θ+V)sin⁡θ=v02sin⁡2θ+Vsin⁡θ に比例する.連鎖律で

f′(θ)=v0cos⁡2θ+Vcos⁡θ=2v0cos2⁡θ+Vcos⁡θ−v0

f′=0 を c=cos⁡θ の2次方程式 2v0c2+Vc−v0=0 とみて,c>0 の解をとると c=−V+V2+8v024v0.c がこれより大きい(θ が小さい)と f′>0,小さいと f′<0 なので,ここで最大である.V=0 なら c=12,すなわち θ=45∘ に戻る.

  1. cos⁡θ=−5.0+25+80040=−5.0+28.740≈0.593 より θ≈54∘.sin⁡θ≈0.805 で,R=(5.93+5.0)×2×10×0.8059.8≈18.0m.θ=45∘ では R=(7.07+5.0)×2×10×0.7079.8≈17.4m で,少し短い.前へ走りながら投げるときは,45∘ より高めに投げるのがよい.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

半径 R の車輪が,水平な地面を滑らずに右向きに一定の速さ v で転がる.車輪は中心のまわりを時計まわりに角速度 v/R で回る.縁の点の位置を,中心から見て水平右向きから反時計まわりに測った角 θ で表す.

水平な地面を右へ滑らずに転がる半径Rの車輪.中心から右向きに速度v(青)を描き,車輪は時計まわりに角速度v/Rで回る.縁の点は,中心から見て水平右向きから反時計まわりに角θの位置にある. 水平な地面を右へ滑らずに転がる半径Rの車輪.中心から右向きに速度v(青)を描き,車輪は時計まわりに角速度v/Rで回る.縁の点は,中心から見て水平右向きから反時計まわりに角θの位置にある.
  1. 縁の点の地面に対する速度の成分と,速さを θ で表せ.速さが最大,最小になる点はどこか.

  2. 車輪の後ろ側(cos⁡θ<0)で縁の点から泥が離れ,その後は空中を放物運動する.泥が離れる角 θ を変えるとき,泥の最高点の高さ H の最大値を R,v,g で表せ(v2>gR とする).R=0.30m,v=5.0ms−1 では何 m か.

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考え方 地面から見た速度は,中心の速度と,中心に対する縁の点の速度の和である.

  1. 中心に対する速度は v(sin⁡θ,−cos⁡θ).中心の速度 (v,0) を加えて (v(1+sin⁡θ),−vcos⁡θ).速さは v2(1+sin⁡θ) で,最上点(θ=90∘)で最大の 2v,地面に接する点(θ=−90∘)で最小の 0 である.

  2. 離れる位置の高さは R(1+sin⁡θ),上向きの速度成分は −vcos⁡θ.よって s=sin⁡θ として

H=R(1+s)+v2cos2⁡θ2g=R(1+s)+v2(1−s2)2g

dHds=R−v2s/g=0 から s=gR/v2 で最大となり,Hmax=R+v22g+gR22v2.数値は 0.30+1.276+0.018≈1.6m.車輪の上端(0.60m)よりかなり高い.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

1 辺 L=12m の正三角形ABCの頂点に虫がいる.時刻 0 から,AはBへ,BはCへ,CはAへ,常に相手の方向へ一定の速さ v=0.50ms−1 で動く.

1辺Lの正三角形ABC(Aが左下,Bが右下,Cが上).AはBへ,BはCへ,CはAへ,それぞれ一定の速さvで進む(青い矢印).3匹は対称に,中心Oのまわりを反時計まわりに回りながらOへ近づく軌跡(渦巻き)を描く.Oから頂点までの初めの距離をr0とする. 1辺Lの正三角形ABC(Aが左下,Bが右下,Cが上).AはBへ,BはCへ,CはAへ,それぞれ一定の速さvで進む(青い矢印).3匹は対称に,中心Oのまわりを反時計まわりに回りながらOへ近づく軌跡(渦巻き)を描く.Oから頂点までの初めの距離をr0とする.
  1. 3 匹が出会うまでの時間と,各虫の道のりを求めよ.

  2. 中心Oからの距離が r0 から r まで縮む間に,Oのまわりに回る角 φ を求めよ.出会うまでの回転数は有限か.必要なら,r>0 で ∫drr=ln⁡r+C を使ってよい(ln は e を底とする対数で,(ln⁡r)′=1r である.∫tndt の公式で除いた n=−1 の場合にあたる).

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考え方 対称性から,3 匹は常に正三角形の頂点にいる.速度を,Oに向かう成分とOのまわりを回る成分に分ける.

  1. 虫の進む向きと,虫からOへの向きは 30∘ をなす.Oに向かう速さは vcos⁡30∘=32v,初めの距離は r0=L3.よって時間は

T=r0(3/2)v=2L3v=2×123×0.50=16s

道のりは vT=8.0m.

  1. Oのまわりを回る速さは vsin⁡30∘=v2.dφdt=v2r,drdt=−32v を割り算して dφ=−dr3r.r0 から r まで積分し,∫drr=ln⁡r を使うと

φ=13ln⁡r0r

r→0 で φ→∞ なので,道のりは有限でも,虫は無限回転しながらOに近づく.ただし r が r0 の百万分の 1 でも約 1.3 回転である.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

岸壁の滑車(水面から高さ h=3.0m)に通した綱の端を,一定の速さ u=1.5ms−1 で引いて,水面の小舟を引き寄せる.綱はたるまない.滑車の真下の水面の点をOとし,舟は大きさの無い点とみなす.必要なら (1x)′=−1x2((tn)′=ntn−1 の n=−1 の場合)を使ってよい.

水面から高さhの岸壁の滑車に綱を通し,綱の一端を一定の速さuで引く(青い矢印).綱のもう一端は水面の小舟につながる.滑車の真下の水面の点Oから舟までの距離をxとする. 水面から高さhの岸壁の滑車に綱を通し,綱の一端を一定の速さuで引く(青い矢印).綱のもう一端は水面の小舟につながる.滑車の真下の水面の点Oから舟までの距離をxとする.
  1. 舟のOからの距離が x のときの舟の速さ v と加速度の大きさ a を,x で表せ.

  2. x=4.0m での v と a を求めよ.また,a が g に達する x を求めよ.

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考え方 滑車から舟までの綱の長さ l は l2=x2+h2 を満たし,一定の割合 u で減る.x の 1 階微分が速さ,2 階微分が加速度である.

  1. l2=x2+h2 の両辺を微分し,dldt=−u を使うと −lu=xdxdt.舟の速さは

v=−dxdt=lux=ux2+h2x

さらに微分すると,dldt=−u,dxdt=−v より

a=dvdt=u(−ux+lvx2)=u2(l2−x2)x3=u2h2x3
  1. l=5.0m なので v=1.5×5.0/4.0≈1.9ms−1,a=1.52×3.02/4.03≈0.32ms−2.a=g は x=(u2h2/g)1/3≈1.3m.x→0 で速さも加速度も限りなく大きくなる.

26第3章の発展問題

★4・★5の問題です.第3章の道具に加えて,相加平均・相乗平均の不等式や連鎖律などの数学も使います.1題に時間をかけて,特別な場合での確かめも試してください.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

水平な地面の点Oから,水平距離 d=30m,高さ h=40m にある点Pを通るように石を投げる.重力加速度を g=9.8ms−2 とし,空気の抵抗は無視する.

  1. 投げ上げの初速度 v0 と,Pに達する時刻 t の関係式を,ベクトルで書け.

  2. 石がPを通るために必要な最小の初速の大きさ vmin と,そのときの投げ上げの角を求めよ.必要なら,相加平均・相乗平均の不等式(正の数 a,b について a+b≥2ab,等号は a=b のとき)を使ってよい.

水平な地面の点Oから,水平に距離d,鉛直に高さhだけ離れた点Pを通るように石を投げる.OとPを結ぶ破線がOPの方向.青い曲線は初速度v0で投げたときの軌道の一例で,点Pを通る.重力加速度gは鉛直下向き.最小の初速度や投げ上げの角は図には描いていない. 水平な地面の点Oから,水平に距離d,鉛直に高さhだけ離れた点Pを通るように石を投げる.OとPを結ぶ破線がOPの方向.青い曲線は初速度v0で投げたときの軌道の一例で,点Pを通る.重力加速度gは鉛直下向き.最小の初速度や投げ上げの角は図には描いていない.
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考え方 自由落下する観測者から見ると,石は等速直線運動をするだけである.Pに達する条件は,ベクトルの関係としてきれいに書ける.

  1. 点Oを原点,水平方向を x,鉛直上向きを y とする.重力加速度のベクトルは g=(0,−g),Pの位置ベクトルは OP→=(d,h).時刻 t の位置は v0t+12gt2 だから,

OP→=v0t+12gt2⟺v0=OP→t−12gt
  1. 両辺の大きさの二乗をとる.OP→⋅g=−gh,OP=d2+h2=50m を使うと,

v02=OP2t2+gh+g2t24

第1項と第3項に相加平均・相乗平均の不等式を使うと,

OP2t2+g2t24≥2⋅OPt⋅gt2=gOP

等号は t2=2OP/g のときで,

vmin2=g(h+OP)=9.8×90=882,vmin≈30ms−1

このとき t=2×50/9.8≈3.19s.初速度は v0=(30,40)/3.19+(0,4.9×3.19)≈(9.4, 28.2)ms−1 で,水平となす角 θ は tan⁡θ=28.2/9.4=3.0,θ≈72∘ である.これは「OPの方向(水平から約 53∘)」と「鉛直上向き(90∘)」のちょうど中間の向きになっている.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

傾き α=30∘ の斜面をもつ台が,水平面上で,斜面を下る向きの水平方向(左向き)に一定の加速度 A=g で加速している.台が静止の状態から加速を始めた瞬間に,斜面の下端Oから,斜面に垂直な向きにボールを初速 v0=4.0ms−1 で投げた.ボールには重力加速度 g=9.8ms−2 だけが働き,空気の抵抗は無視する.台は十分に長く,ボールは斜面から離れて飛ぶ.

  1. 台から見たボールの加速度を求めよ.

  2. ボールが再び斜面に着く時刻と,その点のOからの斜面に沿った距離(斜面を上る向きを正)を求めよ.

  3. ボールがちょうどOに戻るための,台の加速度 A の条件を求めよ.

傾き角αの斜面をもつ台が,水平な地面の上を左向き(斜面を下る向き)に加速度Aで加速している.斜面の下端Oから,斜面に垂直な向きに初速度v0でボールを投げる.重力加速度gは鉛直下向き.斜面に沿って上る向きを正としてOからの距離ℓを測る.右向きにx軸,上向きにy軸をとる.台から見た軌道は図には描いていない. 傾き角αの斜面をもつ台が,水平な地面の上を左向き(斜面を下る向き)に加速度Aで加速している.斜面の下端Oから,斜面に垂直な向きに初速度v0でボールを投げる.重力加速度gは鉛直下向き.斜面に沿って上る向きを正としてOからの距離ℓを測る.右向きにx軸,上向きにy軸をとる.台から見た軌道は図には描いていない.
解答を見る

考え方 台に乗って見ると,ボールの加速度は「地上系の加速度」から「台の加速度」を引いたもの.この見かけの加速度の,斜面に平行な成分と垂直な成分で運動を分ける.

右向きを x,上向きを y とする.斜面を上る向きの単位ベクトルは s=(cos⁡α,sin⁡α),斜面に垂直で外向きの単位ベクトルは n=(−sin⁡α,cos⁡α).

  1. ボールの加速度は (0,−g),台の加速度は (−A,0) だから,台から見たボールの加速度は a′=(A,−g).

  2. 斜面に平行・垂直な成分は

as=a′⋅s=Acos⁡α−gsin⁡α,an=a′⋅n=−(Asin⁡α+gcos⁡α)

台から見た初速度は v0=v0n である(台が静止しているので).斜面に垂直な運動は等加速度運動で,斜面に戻る条件 v0t+12ant2=0 から

t=2v0Asin⁡α+gcos⁡α=2×4.09.8×(0.5+0.866)≈0.60s

斜面に平行な方向は初速0の等加速度運動だから,

ℓ=12ast2=2v02(Acos⁡α−gsin⁡α)(Asin⁡α+gcos⁡α)2=2×16×9.8×0.3669.82×1.3662≈0.64m

ℓ>0 なので,ボールはOより斜面の上側に着く.

  1. ℓ=0 すなわち Acos⁡α=gsin⁡α,A=gtan⁡α のとき.このとき台から見た加速度は斜面に垂直になり,ボールは斜面に垂直な直線を往復する.なお,A=0(台が動かない)のときは ℓ<0 となる.Oは斜面の下端なので,ボールは斜面には戻らず,Oより左側(斜面の下端より先)の床に落ちる.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

一様な風の中で雨が一定の速度で降っている.東向きに速さ 1.0ms−1 で歩くと雨粒の筋は鉛直から前方へ傾き,その傾きの tan は 1/2 であった.東向きに速さ 3.0ms−1 で歩くと,筋は鉛直から前方へ 45∘ 傾いて見えた.

東へ歩く速さが異なる二つの場合について,鉛直から前方へ傾く雨の筋を示す.地上での雨の速度は描かない. 東へ歩く速さが異なる二つの場合について,鉛直から前方へ傾く雨の筋を示す.地上での雨の速度は描かない.
  1. 地面に対する雨粒の速度(大きさと向き)を求めよ.

  2. 雨粒の筋が鉛直に見えるのは,どちらの向きに何 ms−1 で歩くときか.

  3. 人の体を,頭上面(面積 S)と進行方向に向いた前面(面積 5S)の板とみなす.板に当たる雨の量は,雨の板に対する相対速度の板に垂直な成分,面積,時間の積に比例する.東向きに距離 L を歩くとき,濡れる量を歩く速さ u の関数で表し,u=1.0ms−1 と 3.0ms−1 の場合を比べよ.

解答を見る

考え方 雨粒の人に対する速度は「地面に対する雨粒の速度」から「人の速度」を引く.傾きの情報が2つあるので,雨粒の速度の2成分が決まる.

東向きを x,鉛直上向きを y とする.雨粒の速度を (wx,−wy)(wy>0)とおく.歩く人の速度は (u,0) で,人から見た雨粒の速度は (wx−u, −wy).筋が前方へ傾くとは wx−u<0 のことで,鉛直となす角 ϕ は tan⁡ϕ=u−wxwy である.

  1. 条件より 1.0−wxwy=12,3.0−wxwy=1.整理すると 1.0−wx=wy2,3.0−wx=wy.辺々引くと 2.0=wy2 だから wy=4.0,wx=−1.0.雨粒の速度は西向き 1.0ms−1,下向き 4.0ms−1.速さは 17≈4.1ms−1,鉛直から西へ arctan⁡(1/4)≈14∘ 傾いた向きに降っている.

  2. 筋が鉛直なのは u=wx=−1.0ms−1 のとき,つまり西向きに 1.0ms−1 で歩くとき(雨と同じ水平速度で動くとき).

  3. 頭上面に垂直な相対速度成分は wy=4.0,前面に垂直な成分は u−wx=u+1.0(u>0).時間は L/u だから

W∝Lu[S⋅4.0+5S(u+1.0)]=SL(9u+5)

u=1.0 のとき 14SL,u=3.0 のとき 8SL.速く通るほど雨にさらされる時間が短くなり,頭上面から受ける量 4SL/u も前面から受ける量 5SL(1+1/u) も減るので,濡れる量は約 57 % になる.ただし u→∞ でも,前面が雨に突っ込むことによる 5SL は残る.

演習 4

オリジナル ★★★★★

平らな原っぱで,主人が点Qから,まっすぐな道を一定の速さ u=1.5ms−1 で歩き出した.犬は道から垂直に L=60m 離れた点Oにいて(OQは道に垂直),主人が歩き出すと同時に,常に主人に向かって一定の速さ v=2.5ms−1 で走り出す.

  1. 犬が主人に追いつくまでの時間を求めよ.一般の u,v,L(v>u)についても式で表せ.

  2. 犬が走る道のりと,主人が歩く道のりを求めよ.

  3. v≤u のとき犬は追いつけないことを,(1) の計算から確かめよ.

原点Oにいる犬が,Oから距離Lだけ離れた,y軸に平行な道の上を点Qから歩き出した主人に向かって,常に主人の方向へ速さvで走る.主人は道に沿って一定の速さuで進む.図はある時刻の犬の位置と主人の位置,どちらの速度の向き,犬が通った道筋の曲線を示す.犬の速度は常に主人を向くので,軌跡は主人の進む側へ曲がっていく. 原点Oにいる犬が,Oから距離Lだけ離れた,y軸に平行な道の上を点Qから歩き出した主人に向かって,常に主人の方向へ速さvで走る.主人は道に沿って一定の速さuで進む.図はある時刻の犬の位置と主人の位置,どちらの速度の向き,犬が通った道筋の曲線を示す.犬の速度は常に主人を向くので,軌跡は主人の進む側へ曲がっていく.
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考え方 犬の軌跡の式を求めなくても,主人と犬の間の距離 D(相対位置の大きさ)の時間変化と,道に沿った成分 Y の変化を調べれば,追いつく時間が求まる.

犬の位置をOを原点として (xd,yd),主人の位置を (L,ut) とする.犬から見た主人の相対位置 r=(X,Y)=(L−xd, ut−yd) と,その大きさ D=X2+Y2 を考える.犬の速度は,常に主人の向きだから

v犬=vrD=v(XD,YD)

主人の速度は (0,u) だから,相対速度(主人が犬から見て動く速度)は

dXdt=−vXD,dYdt=u−vYD
  1. D2=X2+Y2 を微分して(文字の上の点は t による微分を表す),

dDdt=XX˙+YY˙D=−vX2/D+uY−vY2/DD=−v+uYD

また,Y˙=u−vY/D より Y/D=(u−Y˙)/v.これを代入すると

D˙=−v+u(u−Y˙)v⟹vD˙+uY˙=−(v2−u2)

左辺は ddt(vD+uY) だから,右辺が定数であることから vD+uY は時間に比例して減る.初め D=L,Y=0,追いつく時刻 T では D=Y=0 なので,

0−vL=−(v2−u2)T⟹T=vLv2−u2

数値では T=2.5×602.52−1.52=1504.0=37.5s.u→0 では T→L/v,v→∞ では T→0 で,直観と合っている.

  1. 犬の速さは一定だから道のりは vT=v2Lv2−u2=2.5×37.5≈94m.主人は uT=1.5×37.5≈56m 歩く.追いつく地点は (L,uT)=(60,56)m で,Oからの直線距離は 602+562≈82m だから,犬の道のり 94m はそれより長い(曲がった軌跡なので当然).

  2. ddt(vD+uY)=−(v2−u2)≥0 となるので,v≤u では vD+uY は増えるか一定である.初めの値は vL>0 で,追いつくには0にならなければならないが,それは不可能.よって追いつけない.v→u で T→∞ となるのも,この結果と整合する.

27第3章のまとめ

この章では,力のことはまだ考えずに,物体が「どこに,どれだけの速さで,どう動くか」を数と式で書き表しました.位置から速度へは微分,速度から位置へは積分という往復が,章全体の背骨です.

定義の一覧

定義 運動を表す量

  • 位置ベクトル r:原点から物体へ向かう矢印.変位は Δr=r2−r1.

  • 速度 v=drdt:位置の時間変化率.大きさ |v| が速さ.直線上では v=dxdt.

  • 加速度 a=dvdt:速度の時間変化率.向きだけが変わる運動にも加速度がある.

  • 相対速度 vBA=vB−vA:Aから見たBの速度.

  • 角速度 ω=dθdt(θ はラジアンで,増える向きを正とする.逆転しない回転では ω>0),周期 T,振動数 f:ω=2πT=2πf.

法則と公式の一覧

法則 速度と位置の関係

v-tグラフと横軸にはさまれた面積が変位になる(横軸より下の部分は負として数える.道のりは速さ |v| の積分で,往復があると変位とは一致しない).

x(t)=x0+∫0tv(s)ds,v(t)=v0+∫0ta(s)ds

法則 等加速度運動と自由落下

v=v0+at,x=x0+v0t+12at2,v2−v02=2a(x−x0)

自由落下では,鉛直上向きを正にとって a=−g(g≈9.8ms−2).

法則 放物運動

水平方向は等速,鉛直方向は加速度 −g の等加速度運動.水平面と角 θ をなす向きに初速 v0 で投げると,

x=v0cos⁡θ⋅t,y=v0sin⁡θ⋅t−12gt2

空気抵抗は無視する.投射点と同じ高さに戻るまでに進む水平距離(到達距離)は,R=v02sin⁡2θg である.この式は投射点と着地点が同じ高さのときだけに使える.

法則 速度の合成

vPG=vPT+vTG

座標軸の向きを保ち,一定の速度で動く系の間では,加速度は変わらない(ガリレイ変換).

法則 円運動

s=rθ,v=rω,an=rω2=v2r (中心向き),at=dvdt

回転角が増える向きを正とし,回転が逆転しない場合の式である(一般には v=r|ω|).

各節の問いへの短い答え

  • 位置とベクトル:「駅から500 m」は,位置ベクトルの大きさだけを伝えていた.場所を決めるには,向きと,原点・軸の約束(座標系)が要る.

  • 速度:スピードメーターの数字は,短い時間の平均を限りなく短くした極限,つまり瞬間速度 dxdt の大きさである.平均の速さは区間全体をならした値である.

  • 加速度:速さが一定でも,速度の向きが変われば加速度がある.カーブで外へ押されるように感じるのは,加速度が内向きだからである.

  • 速度から位置へ:v-tグラフの面積(横軸より下は負)が変位になる.道のりは |v| の面積で,往復では変位と一致しない.細かく切って足し合わせる極限が積分である.

  • 等加速度運動と自由落下:ガリレオは時間の比だけを使い,静止から出発した球の出発点からの距離の比が 1:4:9:16 になることで x∝t2 を確かめた.斜面は加速度を小さくして測りやすくする工夫だった.

  • 放物運動:空気抵抗を無視すれば,猿は弾に当たる.弾も猿も同じ時間に同じだけ 12gt2 落ちるので,地面に着く前に出会える速さであれば,弾の速さによらない.

  • 相対運動:走る人から見た雨の速度は,雨の速度から人の速度を引いたもの.雨は前から降ってくるように見える.

  • 円運動:端の点のほうが速い.角速度は同じで,速さは半径に比例する.速さが一定でも,加速度 rω2 が中心を向く.

数学の道具の一覧

  • ベクトル:成分での和・差・実数倍,大きさ,内積.

  • 微分:(tn)′=ntn−1,積の微分,連鎖律,(sin⁡θ)′=cos⁡θ(ラジアン).

  • 積分:べき関数・三角関数・指数関数の原始関数,定積分は端点の差.

  • 三角関数:加法定理と2倍角,小角近似 sin⁡θ≈θ.

  • 二次関数と内積:距離の2乗の平方完成から最接近の時刻を求める.

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この章では,運動の「様子」を書き表しただけで,なぜそう動くのかは問いませんでした.電車で押される感覚,落ちる石の加速度が g で一定になる理由,円運動で中心を向く加速度のもとは何か.次の第4章では,これらの原因を力として扱い,運動の法則を学びます.