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問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 18節
  1. 光の屈折とフェルマーの原理
  2. 屈折と全反射の例題
  3. 屈折と光の停留時間の演習
  4. レンズと像
  5. 近軸近似と球面での屈折
  6. レンズと鏡による結像の演習
  7. 光の干渉と光学距離
  8. 光の干渉の例題
  9. 光学距離と干渉縞の演習
  10. 回折と回折格子
  11. 位相の矢印の和と回折の強さ
  12. 回折と光の分解能の演習
  13. 光の偏光
  14. 偏光の例題
  15. 偏光と光の強度の演習
  16. 第27章の章末問題
  17. 第27章の発展問題
  18. 第27章のまとめ

第27章  光

01光の屈折とフェルマーの原理

問い

水を入れたコップに箸を斜めに差すと,水面のところで箸が折れ曲がって見えます.水の中の部分は実際より浅く,水面の近くまで持ち上がって見えます.箸はまっすぐなままなので,曲がっているのは箸から目に届く光の道筋のはずです.光は水と空気の境目で,なぜ,どちら向きに曲がるのでしょうか.

ここから光の章です.第26章(発展)では,光が電磁波であることを電場と磁場の法則から導き,物質の中で光が遅くなる理由(屈折率の起源)と,境界での反射と透過を調べました.第26章を飛ばした人のために,この章と後の章で使うその結果を,記号の表の前にまとめておきます.この章では,光がどう進み,どう重なるかを扱います.前半の2つの題材(この題材と「像を作る」)は,光を細い線(光線)とみなす幾何光学です.後半の3つの題材(干渉,回折,偏光)では,光を波として扱い,光線の考え方が破れる所を見ます.この題材の中心になる最小時間の原理は,第13章の停留作用の原理と同じ形をしていますが,第13章を飛ばした人もそのまま読めます.第29章では,光が粒としての性質ももつことへ進みます.初めて読むときは,題や見出しに(発展)と付いた所(この題材の「なぜ光は時間を比べられるのか」と,偏光の題材の「複屈折と波長板」)を飛ばしてかまいません.

ポイント 第26章(発展)から使う結果

第26章を飛ばした人は,次の結果を認めて先へ進んでください.導き方は第26章にあります.

  • 光は電磁波で,電場 E と磁場 B が進む向きに垂直に振動する横波である.真空中の速さは c=1/ε0μ0 で,各点・各時刻で E=cB.

  • 光の強さ(進む向きに垂直な単位面積を単位時間に通るエネルギーの時間平均)は,電場の振幅の2乗に比例する.真空では I=12ε0cE02.

  • 光は運動量も運ぶ.強さ I の光を垂直に受けて吸収する面は I/c,完全に反射する面は 2I/c の圧力を受ける.

  • 加速度運動する電荷は電磁波を出す(放射).遠くでの電場は,電荷の加速度のうち見る向きに垂直な成分に比例する.物質の中で光が遅くなる(屈折率 n>1)のは,光に揺すられた物質の電子が出す光が,元の光と重なるからである.

  • 屈折率 n1 の側から n2 の側へ垂直に入る光では,反射光の電場の振幅比は n1−n2n1+n2,強さの反射率は R=(n1−n2n1+n2)2 である.n2>n1 なら,反射で電場の位相が π ずれる.

  • 斜めに入る光の反射率は偏光によって違う.電場が入射面内にあるp偏光の反射率は,tan⁡θB=n2/n1 のブルースター角で0になる.

ポイント 第27章で使う記号

記号

意味

c

真空中の光の速さ 3.00×108ms−1

n, v

屈折率 n=c/v,媒質中の光の速さ v

θ1, θ2

入射角,屈折角(どちらも境界の法線から測る)

θc

全反射の臨界角

f

焦点距離

a, b

レンズから物体まで,像までの距離(干渉と回折ではスリットの幅にも a を使う)

ν, λ

光の振動数(焦点距離の f と区別する),波長.真空中の波長は λ0

d

スリットの間隔,回折格子の格子定数

Δ

光路差(光学距離の差)

I

光の強さ

波の章(第25章)では振動数に f を使いましたが,この章では f を焦点距離に譲り,振動数を ν と書きます.

考えてみる

光は一様な媒質の中ではまっすぐ進み,境界で向きを変えます.問題は向きの変え方の規則と,その理由です.反射については,古代のヘロンが「鏡で反射して点 A から点 B へ行く光は,鏡を経由する道の中で最短の道を通る」と気づいていました.ところが屈折には,この考えが使えません.水中の点と空気中の点を結ぶ最短の道は線分で,そこでは光は曲がらないからです.最短の「長さ」の代わりに何をとれば,屈折まで説明できるのでしょうか.

反射の法則と屈折の法則

先に,実験で分かっている規則をまとめます.角は境界の面からではなく,境界に立てた法線から測ります.

法則 反射の法則と屈折の法則

入射光線,反射光線,屈折光線と,入射点での境界の法線は,同じ平面内にある.反射角は入射角に等しい.屈折率 n1 の媒質から n2 の媒質へ進む光の入射角 θ1 と屈折角 θ2 は

n1sin⁡θ1=n2sin⁡θ2

を満たす(屈折の法則,スネルの法則).屈折率は,真空中の光の速さ c と媒質中の速さ v の比 n=c/v である.

空気の屈折率はほぼ1(1.0003),水は 1.33,ふつうのガラスは 1.5 程度,ダイヤモンドは 2.42 です.屈折率の大きい媒質へ入る光は法線に近づくように曲がり,屈折率の小さい媒質へ出る光は法線から離れるように曲がります.どちらの場合も,境界では一部の光が反射します(その割合は第26章で求めました).

フェルマーの原理

17世紀にフェルマーは,長さの代わりに時間をとりました.

法則 フェルマーの原理

光が点 A から点 B へ進むとき,実際の道筋は,その道筋を少しずらしても,かかる時間が1次の範囲で変わらない道である(多くの場合は時間が最小になる道).

屈折率 n の媒質を長さ ℓ だけ進む時間は ℓ/v=nℓ/c なので,時間を比べることは,屈折率と長さの積 nℓ を道に沿って足した量を比べることと同じです.この量を光学距離(光路長)といいます.フェルマーの原理は「光学距離が停留する道を通る」と言い換えられます.

一様な媒質では,時間が最小の道は線分です.反射では,鏡の面について B と対称な点 B' をとると,鏡上のどの点 P を経由しても AP+PB=AP+PB′ です.これが最小になるのは A,P,B' が一直線に並ぶときで,そのとき入射角と反射角が等しくなります.ヘロンの最短の道は,フェルマーの原理の特別な場合です.

屈折では,浜辺から海で溺れている人を助けに行くライフガードを思い浮かべると分かりやすくなります.砂浜を走るほうが泳ぐより速いので,まっすぐ向かうより,砂浜を長めに走って水に入る点をずらすほうが早く着きます.ずらしすぎると今度は走る距離が増えすぎるので,ちょうどよい入水点があるはずです.

[図:境界上の通過点と最小時間]

初期状態では,上の点Aから下の点Bへ向かう時間が最小の点Pを示す.n₁ = 1,n₂ = 1.5,h₁ = h₂ = 2 m,L = 6 m と固定し,角はPの法線から測る.スライダーでPを動かすと折れ線と時間T(x)のグラフ上の点が動き,最小の点でn₁ sin θ₁とn₂ sin θ₂が一致することが分かる.

式で確かめます.A は境界から高さ h1,B は深さ h2 にあり,境界に沿った水平距離が L だけ離れているとします.境界上の点 P の位置を,A の真下から測って x とすると,A→P→B にかかる時間は

T(x)=n1ch12+x2+n2ch22+(L−x)2

です.これを x で微分して0とおくと

dTdx=n1cxh12+x2−n2cL−xh22+(L−x)2=0

となります.第1項の分数は sin⁡θ1,第2項の分数は sin⁡θ2 なので,n1sin⁡θ1=n2sin⁡θ2 が出ます.屈折の法則は,光が遅い媒質の中を短く通るように道を選んだ結果なのです.T(x) の2階微分は正なので,この点で時間は最小です.

ただし,いつも最小とは限りません.楕円の形の鏡の内側では,一方の焦点から出て鏡で1回反射し,もう一方の焦点へ届く道は,反射点がどこでも長さが同じです(楕円の定義そのもの).このとき時間は反射点によらず一定で,停留はしていますが,ほかの道より短いわけではありません.鏡の曲がり方が楕円より強く,接点のまわりで楕円の内側に入っていれば,接点で反射する道は,近くの反射の道の中で最も時間がかかる道(最大)になります.原理の正しい言い方が「最小」ではなく「停留」なのはこのためです.第13章で見た,力学の運動が作用を停留させる道を選ぶことと同じ形です.

全反射と光ファイバー

屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進む光(n1>n2)では,sin⁡θ2=(n1/n2)sin⁡θ1 が1を超える入射角があります.そのような屈折光は存在しえないので,光はすべて反射されます.これを全反射といいます.屈折角がちょうど 90∘ になる入射角を臨界角 θc といい

sin⁡θc=n2n1

です.水から空気へは 48.8∘,ガラスから空気へは 41.8∘,ダイヤモンドから空気へは 24.4∘ です.ダイヤモンドがよく光るのは,臨界角が小さく,中に入った光が全反射をくり返して上面へ戻るからです.屈折率の小さい側から入る光は,入射角によらず全反射しません.

光ファイバーは,屈折率の大きい細いガラスの芯(コア)を,屈折率が少し小さいガラス(クラッド)で包んだものです.芯の中を軸に近い向きに進む光は,側面へ臨界角より大きい角で当たるので全反射をくり返し,曲がったファイバーに沿って何キロメートルも進みます.どこまで斜めの光を取り込めるかは例題で求めます.

屈折率が場所で変わるとき

屈折率が高さ y とともに少しずつ変わる媒質を考えます.薄い水平な層に分けると,隣の層との境界の法線はどれも鉛直なので,屈折の法則が層ごとにつながり

n1sin⁡θ1=n2sin⁡θ2=n3sin⁡θ3=⋯

となります.層を薄くした極限で,鉛直から測った光線の角を θ とすれば,n(y)sin⁡θ は光線に沿って一定です.光線は屈折率の大きい側へ曲がり込みます.nsin⁡θ の一定の値が,ある高さの屈折率に等しくなると sin⁡θ=1 で光線は水平になり,そこで向きを変えて戻ってきます.

晴れた日に熱いアスファルトの道路の先が濡れたように光って見える逃げ水(下位蜃気楼)がこの例です.路面のすぐ上の空気は熱くて密度が小さく,屈折率が上の空気よりわずかに小さくなっています.空から斜めに降りてきた光は,屈折率の大きい上の側へ曲がり込んで向きを上に変え,目に届きます.目は光が来た向きの先に物があると判断するので,路面の上に空が映って見えます.空気の屈折率のずれは 10−5 ほどしかありませんが,ほぼ水平に進む光は何十メートルも層の中を進むので,向きが目に見えるほど変わります.

空気の屈折率は路面に近いほど小さく,青い層の濃さは上ほど大きい屈折率を表す.空の点から右へ進む光は,路面に達する前に上向きに曲がって目に届く.目に届く光の向きを逆に延ばした破線は,路面の下の空の像を指す. 空気の屈折率は路面に近いほど小さく,青い層の濃さは上ほど大きい屈折率を表す.空の点から右へ進む光は,路面に達する前に上向きに曲がって目に届く.目に届く光の向きを逆に延ばした破線は,路面の下の空の像を指す.

大気全体も上ほど薄く,屈折率が小さいので,天体の光は下向きに曲がり,天体は実際より高く見えます(大気差).地平線の近くでは約 0.5∘ で,夕日が地平線に接して見えるとき,実際の太陽はもう地平線の下にあります.

ここまでの光線の考え方には適用の条件があります.光線とみなせるのは,波長が物体の大きさや,屈折率が目立って変わる距離に比べて十分小さいときです.たとえば屈折率が n=n0−αy と変わる層では,真空中の波長 λ0 について λ0α/n2 が十分小さいこと,つまり1波長進む間の屈折率の変化がわずかであることが必要です.すき間や物体が波長と同じくらいになると,光は回り込み(回折,この章の第4題材),光線の考えは使えなくなります.

分散とプリズム,虹

屈折率は光の波長によって少し違います(分散).第26章で見たように,屈折率は物質の中の電子の振動が出す波の重ね合わせで決まり,可視光では波長が短いほど,つまり紫に近いほど屈折率が大きくなります.たとえば水では,赤い光で 1.331,紫の光で 1.343 くらいです.

三角柱のプリズムに白色光を通すと,紫ほど大きく曲がるので色に分かれます.入射光と出射光の向きのなす角を偏角 δ といい,頂角 A のプリズムの外側での入射角を θ1,出射角を θ3 とすると δ=θ1+θ3−A です.プリズムを回して入射角を変えると,偏角はある所で最小になり,そのときプリズムの中の光路は左右対称です.最小偏角 δmin を測ると

n=sin⁡[(A+δmin)/2]sin⁡(A/2)

から屈折率が決まります.最小の所では入射角が少しずれても偏角が1次では変わらないので,角を精度よく読めます.測った δmin の不確かさ uδ から屈折率の不確かさを見積もるには,第14章の1次の誤差評価 un=|dn/dδ|uδ を使います.このとき角の微分はラジアンで計算します.

白色光は頂角Aのプリズムで屈折し,赤から紫へ分かれて出る.角θ₁とθ₃はそれぞれの面の法線から測る.δは入射光の延長方向と出射方向のなす角で,θ₃とδは赤い光線に対して示す.紫は青の変数色と色名で表し,短波長ほど大きく曲がる順序を示す. 白色光は頂角Aのプリズムで屈折し,赤から紫へ分かれて出る.角θ₁とθ₃はそれぞれの面の法線から測る.δは入射光の延長方向と出射方向のなす角で,θ₃とδは赤い光線に対して示す.紫は青の変数色と色名で表し,短波長ほど大きく曲がる順序を示す.

虹も分散と「偏角の最小」で説明できます.雨粒に入った太陽の光は,中で1回反射して出てきます.入射する位置によって偏角が違いますが,偏角が最小になる所では,入射位置が少しずれても出ていく向きがほとんど変わりません.そのため,その向きに光が集まって明るく見えます.水では,太陽と反対の方向から約 42∘ の円の上でこれが起こり,赤のほうが外側に並びます.角度の計算は例題で行います.

なぜ光は時間を比べられるのか(発展)

光が進む前に,あらゆる道の時間を比べて一番よい道を選んでいるように見えるのは不思議です.答えは,光が波であることにあります.A から B へ向かう波は,いろいろな道を通る寄与の重ね合わせと考えられ,各道の寄与の位相は,かかった時間(光学距離)で決まります.時間が停留する道のすぐ近くの道は,時間がほとんど同じなので位相がそろい,強め合います.停留する道から離れた道は,少しずらすだけで位相が大きく変わるので,隣り合う道の寄与どうしが打ち消し合います.こうして,時間が停留する道の近くの細い束だけが残り,それが光線に見えるのです.束の太さは波長で決まるので,波長が無視できない所では光線の考えが破れます.この見方は,干渉と回折(この章の第3・4題材)で具体的に使い,第30章では電子にも同じ考えが当てはまることを見ます.

問いに戻る

光は水の中では空気中の 1/1.33 倍の速さでしか進めません.フェルマーの原理によれば,光は時間が停留する道,ここでは最も早く着く道を通るので,遅い水の中の道のりを短くするように境界で折れ曲がります.水中の箸から出た光は,水面で法線から離れる向きに曲がって目に届きます.目は届いた光をまっすぐ逆にたどった先に箸があると判断するので,水中の部分は実際より水面に近い所に見えます.真上近くから見ると,見かけの深さは実際の深さの約 1/1.33 倍です.水面より上の部分はそのままの位置に見えるので,箸は水面の所で上へ折れ曲がって見えるのです.

ポイント ここまでのまとめ

  • 屈折率は n=c/v.角は法線から測り,反射角は入射角に等しく,屈折では n1sin⁡θ1=n2sin⁡θ2 が成り立つ.

  • フェルマーの原理:光は光学距離 ∑nℓ(かかる時間)が停留する道を通る.反射と屈折の法則はここから出る.停留は最小とは限らない.

  • 屈折率の大きい側から小さい側へ進む光は,入射角が臨界角 sin⁡θc=n2/n1 を超えると全反射する.光ファイバーはこれを使う.

  • 屈折率が層状に変わる媒質では nsin⁡θ が光線に沿って一定で,光線は屈折率の大きい側へ曲がる(逃げ水,大気差).

  • 屈折率は波長で違う(分散).プリズムの最小偏角から屈折率を測れ,虹は雨粒の中の偏角が最小になる向きに光が集まって見える.

  • 光線の考えは,波長が物体の大きさや屈折率が変わる距離に比べて十分小さいときの近似である.

02屈折と全反射の例題

屈折の問題は,法線を描いて角を法線から測り,境界ごとに屈折の法則を書けば,あとは図形の問題になります.ここでは,見かけの深さ,光ファイバーが取り込める角,虹の角度の3つを練習します.

ポイント 屈折の問題の手順

  1. 境界ごとに法線を描き,入射角・屈折角・反射角を法線から測る.

  2. 各境界で屈折の法則を書く.平行な境界では法線も平行なので,nsin⁡θ がそのまま受け渡される.

  3. 境界どうしの角の関係(三角形の内角,円の半径と法線など)を図形から決める.

  4. 屈折率の大きい側から小さい側へ進むときは,入射角を臨界角 sin⁡θc=n2/n1 と比べる.

例題

例題 1

オリジナル ★★★☆☆

深さ h=2.0m のプールの底に小石がある.水の屈折率を n=1.33,空気の屈折率を1とする.

  1. 小石を真上近くから見ると,水面から測ってどれだけの深さに見えるか.小石から出て目に入る光は,鉛直とのなす角が十分小さいとする.

  2. 小石を含む鉛直面の中で,目に入る光が水面の上で鉛直と θ2 の角をなすように,斜めから見る.小石から出て水中で鉛直と θ1 の角をなす光線と,それにごく近い角の光線を水面の上から逆向きに延ばし,2本が交わる点の深さを見かけの深さ h′ とする.h′ を h,n,θ1,θ2 で表し,θ2=60∘ のときの値を求めよ.

深さh = 2.0 mの底にある小石から出た近い角の2本の光線が,水面で法線から離れる向きに屈折して目へ進む.θ₁は水中の角,θ₂は空気中の角である.空気中の光線を逆に延ばす破線の交点を見かけの位置とし,求める深さをh′と示す. 深さh = 2.0 mの底にある小石から出た近い角の2本の光線が,水面で法線から離れる向きに屈折して目へ進む.θ₁は水中の角,θ₂は空気中の角である.空気中の光線を逆に延ばす破線の交点を見かけの位置とし,求める深さをh′と示す.
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考え方 目は,届いた光をまっすぐ逆にたどって物の位置を判断する.1本の光線だけでは位置が決まらないので,小石から出る近い角の2本の光線を逆に延ばし,その交点を像とする.

  1. 光線が水面に達する点の,小石の真上からの水平距離は x=htan⁡θ1 である.空気中の光線を逆に延ばした線が,深さ h′ で小石の真上の鉛直線と交わるとすると x=h′tan⁡θ2 である.角が十分小さければ tan⁡θ≈sin⁡θ で,屈折の法則 nsin⁡θ1=sin⁡θ2 から

h′=htan⁡θ1tan⁡θ2≈hsin⁡θ1sin⁡θ2=hn=2.01.33m=1.5m

となる.これは θ が十分小さく,tan⁡θ と sin⁡θ の違い(θ2 の程度)を無視できるときの値である.

  1. 水面上の点を,小石の真上から測った水平の位置で表す.角 θ1 の光線は水面の X=htan⁡θ1 に達し,そこから空気中を角 θ2 で進む.この光線を水中へ逆に延ばした直線上で,深さ y の点の水平の位置は

X(y)=htan⁡θ1−ytan⁡θ2

である.θ1 をわずかに変えた光線の延長と交わる点では,X(y) が θ1 によらず等しいので,y を固定して θ1 で微分したものが0になる.

hcos2⁡θ1−ycos2⁡θ2dθ2dθ1=0

屈折の法則 nsin⁡θ1=sin⁡θ2 を微分すると ncos⁡θ1dθ1=cos⁡θ2dθ2 なので,dθ2/dθ1=ncos⁡θ1/cos⁡θ2 である.これを入れて

h′=y=hcos3⁡θ2ncos3⁡θ1

を得る.θ2=60∘ では sin⁡θ1=sin⁡60∘/1.33=0.651,cos⁡θ1=0.759 なので

h′=2.0×(0.500)31.33×(0.759)3m=0.43m

である.

確かめ:θ1,θ2→0 では h′→h/n となり (1) と一致する.斜めから見るほど cos⁡θ2 が小さくなり,プールは急に浅く見える.なお,左右の目のように水平に並んだ2本の光線では交わる深さが少し違い,斜めから見た像はぼやけやすい.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

光ファイバーの芯(コア)の屈折率を n1=1.48,それを包む層(クラッド)の屈折率を n2=1.46 とする.ファイバーはまっすぐで,端面は軸に垂直に切ってあり,外は空気(屈折率1)である.真空中の光の速さを c=3.00×108ms−1 とする.

  1. 空気中から端面の中心に角 θ0(軸とのなす角)で入った光が,芯とクラッドの境界で全反射をくり返して進むための条件を,sin⁡θ0 の範囲として求めよ.

    1. の θ0 の最大値を求めよ.

  2. 長さ L=1.0km のファイバーの一端から,軸に沿う光と (2) の最大の角で入った光を同時に入れる.他端に着く時刻の差を求めよ.

芯の屈折率は n₁=1.48,クラッドは n₂=1.46,外は空気である.端面の中心へ角 θ₀ で入り,芯の中を屈折角 θ′ で進み,側面へ入射角 90°−θ′ で当たって全反射する.長さ L=1.0 km は与条件である. 芯の屈折率は n₁=1.48,クラッドは n₂=1.46,外は空気である.端面の中心へ角 θ₀ で入り,芯の中を屈折角 θ′ で進み,側面へ入射角 90°−θ′ で当たって全反射する.長さ L=1.0 km は与条件である.
解答を見る

考え方 端面での屈折で芯の中の角が決まり,その角で側面の全反射の条件が決まる.端面と側面は垂直なので,端面の屈折角と側面への入射角の和は 90∘ である.

  1. 端面での屈折角を θ′ とすると sin⁡θ0=n1sin⁡θ′ である.側面への入射角は 90∘−θ′ で,全反射の条件は

sin⁡(90∘−θ′)=cos⁡θ′≥n2n1

である(等号は臨界の場合).sin⁡θ′=1−cos2⁡θ′≤1−n22/n12 なので

sin⁡θ0=n1sin⁡θ′≤n12−n22

となる.

  1. n12−n22=1.482−1.462=2.94×0.02=0.242.よって θ0 の最大値は 14.0∘ である.この n12−n22 を開口数といい,ファイバーが取り込める光の広がりを表す.

  2. 軸に沿う光が進む道のりは L で,時間は t1=n1L/c である.最大の角の光は,芯の中で軸と θ′ をなす向きにジグザグに進み,道のりは L/cos⁡θ′=Ln1/n2 になる(臨界の場合 cos⁡θ′=n2/n1).時間は t2=n12L/(n2c) で,差は

t2−t1=n1Lc(n1n2−1)=n1(n1−n2)Ln2c=1.48×0.02×1.0×1031.46×3.00×108s=6.8×10−8s

である.

確かめ:n2→n1 では取り込める角も時刻の差も0になる.1 km で約 70 ns の差があると,それより短い間隔の光の点滅は他端で重なって区別できない.長距離の通信では芯を波長の数倍まで細くするが,そうなると光線の考えは使えず,波としての扱いが要る.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

太陽の光が球形の雨粒に入り,中で1回反射して出てくる.雨粒の大きさは光の波長より十分大きく,光線の考えが使えるとする.雨粒への入射角を θ,屈折角を r,水の屈折率を n とする.

  1. 出てくる光の向きが,入ってくる光の向きから回った角(偏角)D を θ,r で表せ.

  2. θ を変えたとき D が最小になる条件が cos2⁡θ=n2−13 であることを示せ.

  3. 赤い光(n=1.331)と紫の光(n=1.343)について,D が最小になる向きが,太陽と反対の方向(観測者の影の頭の方向)となす角 180∘−D を求めよ.虹の外側に見えるのはどちらの色か.

球形の雨粒に太陽の光が入射角θで入り,屈折角rで進み,奥の面で1回反射してから屈折して出る.破線の半径は各面の法線である.左下では入射方向を平行移動して,出射方向とのなす偏角Dの定義を示す. 球形の雨粒に太陽の光が入射角θで入り,屈折角rで進み,奥の面で1回反射してから屈折して出る.破線の半径は各面の法線である.左下では入射方向を平行移動して,出射方向とのなす偏角Dの定義を示す.
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考え方 光は3回向きを変える(入るときの屈折,中での反射,出るときの屈折).それぞれで回る角を足せば偏角になる.偏角が最小の所では,入射角が少しずれても出ていく向きが変わらないので光が集まる.

  1. 入るときの屈折で向きが θ−r だけ回る.雨粒の中で光線と半径(法線)のなす角は,二等辺三角形の性質からどこでも r なので,中での反射では 180∘−2r 回る.出るときの屈折は入るときの逆で,向きが θ−r 回る.3回とも同じ向きに回るので

D=(θ−r)+(180∘−2r)+(θ−r)=180∘+2θ−4r

である.

  1. dD/dθ=2−4dr/dθ=0 から dr/dθ=1/2 である.屈折の法則 sin⁡θ=nsin⁡r を θ で微分すると cos⁡θ=ncos⁡rdr/dθ なので,2cos⁡θ=ncos⁡r となる.2乗して n2cos2⁡r=n2−n2sin2⁡r=n2−sin2⁡θ=n2−1+cos2⁡θ を使うと

4cos2⁡θ=n2−1+cos2⁡θ,cos2⁡θ=n2−13

となる.θ が0のとき D=180∘,θ が 90∘ に近づくと D は再び大きくなるので,この点は最小である.

  1. 赤い光では cos2⁡θ=(1.3312−1)/3=0.2572,cos⁡θ=0.5071,θ=59.53∘.sin⁡r=sin⁡θ/1.331=0.6475,r=40.36∘ なので

D=180∘+2×59.53∘−4×40.36∘=137.6∘,180∘−D=42.4∘

である.紫の光では cos2⁡θ=(1.3432−1)/3=0.2679,cos⁡θ=0.5176,θ=58.83∘,sin⁡r=0.6371,r=39.58∘ なので D=139.4∘,180∘−D=40.6∘ である.

観測者の影の頭の方向から見て,赤は約 42∘,紫は約 41∘ の円の上で明るくなる.したがって虹の外側が赤,内側が紫である.

確かめ:屈折率が大きいほど D が大きく,虹の半径は小さいので,紫が内側に来る.n=1(曲がらない)なら cos2⁡θ=0 で θ=90∘,r=90∘,D=0 となり,かすめて素通りする光に戻る.雨粒の中で2回反射する光にも偏角の最小があり,太陽と反対の方向から約 51∘ に色の並びが逆の副虹ができる.

ポイント ここまでのまとめ

  • 見かけの深さは,物から出る近い角の2本の光線を逆に延ばした交点で決まる.真上近くからは h/n,斜めから見るほど浅く見える.

  • 光ファイバーが取り込める光は sin⁡θ0≤n12−n22.端面の屈折角と側面への入射角の和が 90∘ であることを使う.

  • 雨粒の中で1回反射する光の偏角は D=180∘+2θ−4r で,最小の向きに光が集まる.虹の半径は約 42∘(赤)と約 41∘(紫)で,外側が赤になる.

  • 偏角が最小(停留)の向きは,入射の条件が少しずれても変わらないので,測定にも像にも強く現れる.

03屈折と光の停留時間の演習

法線から測る角と,光学距離を確かめてください.測定と連続媒質も考えます.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

屈折率 n1=1.50 の透明体から,n2=1.20 の液体へ光が進む.光速は c=3.00×108ms−1 とする.

  1. 両媒質での光の速さを求めよ.

  2. 臨界角を求め,入射角 50.0∘ と 60.0∘ で全反射するか判定せよ.

屈折率1.50の透明体から屈折率1.20の液体へ入る光を,入射角50.0°と60.0°の2配置で示す.破線は法線である. 屈折率1.50の透明体から屈折率1.20の液体へ入る光を,入射角50.0°と60.0°の2配置で示す.破線は法線である.
解答を見る

考え方 速さは屈折率で決まる.全反射の限界では屈折角が直角になる.

  1. v=c/n より v1=2.00×108ms−1,v2=2.50×108ms−1である.

  2. n1sin⁡θc=n2 より θc=arcsin⁡0.800=53.1∘.したがって前者は全反射せず,後者は全反射する.低屈折率側からは全反射できない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

空気の屈折率を1とする.厚さ h=12.0mm,屈折率 n=2 の平行平板へ,光が θ1=45.0∘ で入射する.多重反射は考えない.

  1. 出射光線が入射光線と平行になることを示せ.

  2. 入射光線をそのまま延長した直線と出射光線との垂直距離 s を導き,数値を求めよ.

空気中の平行平板の厚さhは12.0 mm,屈折率nは√2である.入射角θ₁は45.0°で,破線は法線と入射光線の延長を示す. 空気中の平行平板の厚さhは12.0 mm,屈折率nは√2である.入射角θ₁は45.0°で,破線は法線と入射光線の延長を示す.
解答を見る

考え方 2面の法線は平行である.横移動と光線に垂直なずれを区別する.

  1. 第1面で sin⁡θ1=nsin⁡θ2 より θ2=30.0∘.第2面の出射角を θ3 とすれば nsin⁡θ2=sin⁡θ3 なので θ3=θ1.

  2. 出射面上で延長線と出射点の横の差は h(tan⁡θ1−tan⁡θ2).これを光線に垂直に射影すると

s=h(tan⁡θ1−tan⁡θ2)cos⁡θ1=hsin⁡(θ1−θ2)cos⁡θ2=3.59mm

n→1 では θ2→θ1 となり,ずれは0へ戻る.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

断面が直角二等辺三角形のプリズムを,同じ液体中に沈める.プリズムの屈折率は n=1.60,液体は ne とする.光を一方の直角を挟む面へ垂直に入射させる.

  1. 斜辺の面で全反射する ne の条件を求めよ.等号の場合も区別せよ.

  2. ne=1.10 と 1.30 の場合を判定し,全反射した主光線が残る面から出る方向を求めよ.

屈折率nが1.60の直角二等辺プリズムを屈折率nₑの液体に沈める.入射光は左の面に垂直である. 屈折率nが1.60の直角二等辺プリズムを屈折率nₑの液体に沈める.入射光は左の面に垂直である.
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考え方 最初の面では曲がらない.内部の入射角を断面の幾何から決める.

  1. 斜辺面の法線となす角は 45∘.全反射には nsin⁡45∘>ne,すなわち ne<1.60/2≈1.13 が必要である.等号は屈折光が境界に沿う臨界の状態である.

  2. 1.10 では全反射し,反射の法則により進行方向が 90∘ 曲がる.残る面には垂直に達するため,そのまま出る.1.30 では斜辺面から屈折して出る光がある.同じ屈折率の媒質間で全反射しないこととも一致する.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

空気中で頂角 A=60.0∘ のプリズムを回し,同じ単色光の最小偏角 δmin を3回測った.頂角の誤差は無視でき,偏角の代表値には平均,不確かさには最大値と最小値の差の半分を用いる.

測定

δmin

1

35.0∘

2

35.2∘

3

35.4∘

  1. 最小偏角で内部の光路が左右対称であることを用い,屈折率の式を導け.

  2. 屈折率とその不確かさを1次の誤差評価で求めよ.

頂角Aが60.0°のプリズムと光路を示す.外側の入射角θ₁,出射角θ₃,入射方向と出射方向の間の偏角δを示す. 頂角Aが60.0°のプリズムと光路を示す.外側の入射角θ₁,出射角θ₃,入射方向と出射方向の間の偏角δを示す.
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考え方 偏角をそのまま屈折角に使わず,2面での曲がりを足す.微分にはラジアンを使う.

  1. 内部の角を r1,r2 とすると r1+r2=A,δ=θ1+θ3−A.対称条件より r1=r2=A/2,θ1=θ3=(A+δmin)/2.屈折の法則から

n=sin⁡[(A+δmin)/2]sin⁡(A/2)
  1. 平均は 35.2∘,不確かさは uδ=0.2∘=3.49×10−3rad.よって n=2sin⁡47.6∘=1.477.また dndδ=cos⁡47.6∘ なので un=0.6743uδ=0.00235.丸めて n=1.477±0.002 である.誤差の展開は uδ が1より十分小さいため有効であり,この幅は指定した評価法による.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

層状媒質の屈折率が n(y)=n0−αy である.0≤y≤H,α>0,n(H)>1 とする.原点から上向きに入った光線の鉛直との角は θ0,0<θ0<π/2 で,水平方向には右へ進む.

  1. 薄い層どうしで屈折の法則を使い,保存される量を示せ.層の内部で水平に転じる条件と高さを求めよ.

  2. 転じた後に y=0 へ戻るまでの水平距離 X を積分で求めよ.n0=1.60,α=0.0200m−1,H=20.0m,sin⁡θ0=0.875 で評価せよ.

上ほど屈折率が低くなる層状媒質を示す.原点から右上へ進む入射方向と鉛直との角θ₀,層の高さHを描く. 上ほど屈折率が低くなる層状媒質を示す.原点から右上へ進む入射方向と鉛直との角θ₀,層の高さHを描く.
解答を見る

考え方 隣接する層の法線は共通である.角度の保存式から光線の傾きを出し,位置を積分する.

  1. 各境界で nsin⁡θ が共通だから,連続極限でも p=n(y)sin⁡θ=n0sin⁡θ0 は一定である.水平になると sin⁡θ=1 なので y∗=(n0−p)/α.内部で転じる条件は n(H)<p<n0 である.

  2. 上昇中は dxdy=tan⁡θ=p/n(y)2−p2.u=n0−αy と置けば

x∗=pα∫pn0duu2−p2=pαln⁡n0+n02−p2p,X=2x∗

下降側は同じ屈折率の層を逆順に通るので水平距離が等しい.数値は p=1.40,y∗=10.0m<H,X=74.0m.幾何光学には,真空波長 λ0 に対して λ0α/n2 が十分小さく,波長内の屈折率変化が小さいことが必要である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

一様な屈折率 n の媒質に,断面が楕円 x2/R2+y2/K2=1 の内向きの鏡を置く.R>K>0,q=R2−K2 として焦点を F−=(−q,0),F+=(q,0) とする.楕円上の点 P には |PF−|+|PF+|=2R が成り立つ.

  1. F− から出た光が鏡で1回反射して F+ に達することを,接線方向への微小変位と反射の法則から示せ.

  2. 所要時間を求め,直接結ぶ経路と比べて「最小時間」という呼び方を検討せよ.真空光速を c とする.

楕円鏡の2焦点F₋とF₊,鏡上の点Pと接線を示す.入射光線はF₋からPへ向かう. 楕円鏡の2焦点F₋とF₊,鏡上の点Pと接線を示す.入射光線はF₋からPへ向かう.
解答を見る

考え方 距離の和の変化が0であることは,接線に沿う方向成分がつながることを意味する.停留は厳密な最小とは限らない.

  1. F− から P への単位ベクトルを u1,P から F+ への単位ベクトルを u2,接線の単位ベクトルを t とする.P を接線方向へ ds 動かすと距離の和の変化は (u1−u2)⋅tds=0.よって接線成分は等しい.両焦点が鏡の内側にあるため法線成分は反対向きであり,大きさが1であることから入射角と反射角が等しい.したがって反射光は F+ へ進む.

  2. 時間は t=2nR/c で,反射点によらない.直接の距離は 2q<2R なので,許されるなら直接経路の方が短い.鏡で1回反射する経路の中では時間は一定で停留するが,孤立した厳密な最小ではない.nR/c の次元は時間である.

ポイント 教える人へ

  • 入射角を面から測っていないか,法線を描いて確かめさせます.

  • 平行平板の横移動と,光線に垂直なずれを区別させます.

  • プリズムの角度測定では,微分に使う角度をラジアンへ直させます.

  • 層状媒質の保存量と,停留時間が必ずしも厳密な最小でないことを説明させます.

04レンズと像

問い

晴れた日に虫めがねで日光を受け,紙との距離を調節すると,紙の上に明るく小さな点ができ,やがて紙が焦げ始めます.レンズのどこを通った光も,その点へ集まってきます.レンズの中心を通る光と縁を通る光では,曲がる角度も進む道のりも違うのに,なぜ同じ1点に来るのでしょうか.また,その「点」はどれくらいの大きさなのでしょうか.

考えてみる

素朴には,レンズの1点1点で屈折の法則 n1sin⁡θ1=n2sin⁡θ2 を使い,光線を1本ずつ追えばよさそうです.しかしレンズの表面は曲がっているので,入射角は光線ごとに違い,表と裏で2回屈折します.何本追えば「全部が1点に集まる」と言えるのか,この方法では見通しがききません.

前の題材のフェルマーの原理を使うと,見通しがよくなります.光が点 P から点 Q へ進むとき,実際の道すじは,所要時間がまわりの道と比べて停留する道です.では,P から Q へ行く道が何本もあり,そのすべての所要時間がちょうど等しかったらどうなるでしょう.どの道も,まわりの道と時間が変わらないので,どれも停留の条件を満たします.つまり,すべての道を光が実際に通り,Q に集まります.レンズとは,P から出てレンズのいろいろな高さを通り Q へ行く道の時間を,すべて等しくそろえる道具なのです.

前の題材で見たように,時間を比べることは,屈折率と長さの積 nℓ を足した光学距離を比べることと同じです.以下では光学距離で考えます.

同じ時間で着く点

光軸(レンズの中心を貫く対称軸)上で,レンズの左 a の所に点光源 P,右 b の所に点 Q があるとします.レンズの高さ h を通る道の,空気中の部分の長さは,レンズが薄ければほぼ a2+h2+b2+h2 です.h が a,b よりずっと小さいとき,a2+h2=a1+h2/a2≈a+h2/(2a) なので

a2+h2+b2+h2≈a+b+h22(1a+1b)

です.縁を通る道ほど,h2 に比例して長くなります.これを打ち消すには,縁ほど遅れを少なくすればよいのです.高さ h でのレンズの厚さを t(h) とすると,厚さ t の空気をガラスに置きかえることで光学距離は (n−1)t だけ増えます.そこでレンズを中央で厚く,縁で薄くします.

両面が半径 R1,R2 の球面の凸レンズでは,半径 R の球面は中心から高さ h の所で h2/(2R) だけ後退するので,t(h)≈t0−h22(1R1+1R2) です(t0 は中央の厚さ).全体の光学距離は

L(h)≈a+b+(n−1)t0+h22[1a+1b−(n−1)(1R1+1R2)]

となり,角括弧の中が0なら,h によらずすべての道の時間がそろいます.

[図:同じ時間で着く点を探す]

初期状態では P と Q が凸レンズからそれぞれ240 mm離れ,いろいろな高さ h を通る道の光学距離が近軸近似でそろう.Q の距離 b を動かすと候補の道が破線になり,光学距離の棒の高さがずれる.棒は共通の長さ a+b を引いた値を示す.

法則 薄いレンズの式

薄いレンズの焦点距離 f は,レンズの形と屈折率で決まり,両凸レンズでは

1f=(n−1)(1R1+1R2)

である.光軸上で距離 a にある物体の像は,距離 b の所にでき

1a+1b=1f

が成り立つ.レンズが屈折率 n0 の液体の中にあるときは,n を相対屈折率 n/n0 に置きかえる.

a→∞(平行光)では b=f です.光軸に平行な光が集まる点を焦点,レンズから焦点までの距離を焦点距離といいます.焦点はレンズの両側に1つずつあります.

この式を出すときに,h4 以上の項を捨てました.それができるのは,h/a,h/b,h/R がどれも十分小さいとき,つまり光線が光軸の近くを光軸とほぼ平行に進むときで,この条件を近軸近似といいます.レンズの縁を通る光まで使うと,捨てた項が効いて,縁を通る光は中心近くを通る光より手前で光軸を横切ります.これを球面収差といいます.また,屈折率は色(波長)によって少し違うので,焦点距離も色によって違います.これを色収差といいます.実際のカメラのレンズは,何枚ものレンズを組み合わせて収差を小さくしています.

光線の向きはどう変わるか

時間の議論を,光線の向きの言葉に直しておきます.光線の傾きを,光軸から上向きに測った小さな角とします.P を出て高さ h でレンズに入る光線の傾きは h/a,レンズを出て Q へ向かう光線の傾きは −h/b です.傾きの変化は −h(1/a+1/b)=−h/f で,P の位置によりません.

ポイント 薄いレンズの光線の規則

高さ y で薄いレンズに入った光線は,傾きが −y/f だけ変わる(凸レンズでは光軸の側へ曲がる).とくに

  • レンズの中心(y=0)を通る光線は,曲がらずに直進する.

  • 光軸に平行な光線は,後ろ側の焦点を通る.

  • 前側の焦点を通る光線は,光軸に平行に出ていく.

この規則から,光軸に対して小さな角 θ で入る平行光も1点に集まることが分かります.高さ y で入った光線の傾きは θ−y/f になるので,レンズから f 進んだ所での高さは y+f(θ−y/f)=fθ で,y によりません.平行光は,向きが少し傾いていても,焦点を通り光軸に垂直な面(焦点面)の高さ fθ の点に集まります.

光軸から高さ h0 にある物体の点の像は,中心を通る直進の光線の上にあります.像の高さを h′ とすると,相似な三角形から h′/h0=−b/a です.

物体の先端から中心を通る光線,光軸に平行に入って後ろの焦点を通る光線,前の焦点を通って平行に出る光線を示す.3本は同じ像の先端で交わり,物体の高さ h₀ に対して像の高さ h′ は負になる. 物体の先端から中心を通る光線,光軸に平行に入って後ろの焦点を通る光線,前の焦点を通って平行に出る光線を示す.3本は同じ像の先端で交わり,物体の高さ h₀ に対して像の高さ h′ は負になる.

符号の約束と実像・虚像

1つの式で凸レンズも凹レンズも,像がどちら側にできる場合も扱えるように,符号を約束します.

定義 符号の約束(レンズ)

光は左から右へ進むとする.

  • 物体がレンズの入射側(左)にあれば a>0(実物体).レンズに入る光が右側の点へ向かって収束しているときは,その点を物体とみなし a<0(虚物体).

  • 像がレンズの出射側(右)にあれば b>0(実像),入射側(左)にあれば b<0(虚像).

  • 凸レンズは f>0,凹レンズは f<0.

  • 横倍率を M=−b/a とする.M<0 なら倒立,M>0 なら正立で,像の大きさは物体の |M| 倍.

実像は光が実際に集まる点なので,スクリーンに映せます.虚像は,レンズを出た光を逆向きに延ばした線が交わる点で,光はそこに集まっていません.スクリーンには映りませんが,レンズをのぞく眼には,光がそこから来るように見えます.

凸レンズで物体を焦点より内側(0<a<f)に置くと,1/b=1/f−1/a<0 で b<0,M=−b/a>1 です.レンズの手前に拡大された正立の虚像ができます.これが虫めがねで小さな字を見るときの使い方です.凹レンズは中央が薄いので f<0 で,実物体(a>0)に対していつも b<0,0<M<1 の縮小された正立の虚像を作ります.

鏡による像

曲がった鏡も像を作ります.半径 R の凹面鏡の前の光軸上に P と Q を置くと,鏡面は中心から高さ h の所で h2/(2R) だけ手前にせり出しているので,往きと帰りの両方で道が短くなります.光学距離は a+b+h22(1a+1b)−2⋅h22R で,時間がそろう条件は 1/a+1/b=2/R です.鏡も同じ式 1/a+1/b=1/f に従い,焦点距離は f=R/2 です.

鏡では,光は反射して入射側へ戻るので,鏡の前側に像があれば b>0(実像),鏡の裏側にあれば b<0(虚像)とします.凹面鏡は f=R/2>0,凸面鏡は f=−R/2<0 で,倍率は同じく M=−b/a です.平面鏡は f→∞ なので b=−a,M=1 で,鏡の裏の同じ距離に同じ大きさの虚像ができます.

光軸に平行な光を厳密に1点に集める鏡の形は,球面ではなく放物面です.パラボラアンテナや大きな反射望遠鏡の鏡が放物面なのはこのためです.近軸では放物面と球面の違いは h4 の項にしか現れません.

像を作る光の束

像の1点には,レンズの開口(光が通れる円)全体を通った光が集まります.このことから,次のような結像の性質が分かります.

  • レンズの半分を覆う:残りの半分を通る光も,同じ像点へ集まります.像は欠けず,形も位置も変わらず,明るさが約半分になります.

  • 絞りを置く:開口を小さくしても像は欠けず,暗くなります.

  • スクリーンを結像位置からずらす:像点へ集まった光は,そこを過ぎると再び広がります.開口の直径を D,像距離を b,ずれを δ とすると,スクリーン上の光は直径 D|δ|/b の円に広がり,像がぼけます.開口を絞るとこの円が小さくなり,ピントの合う範囲が広がります.

[図:開口とスクリーンの位置で変わるぼけ]

初期状態は像距離 b=200 mm,開口直径 D=80 mm,スクリーンのずれ δ=50 mmで,直径20 mmのぼけができる.スクリーンと開口を動かしてぼけ幅 D|δ|/b の変化を調べられる.上半分を覆うと通る光が約半分になり,像点の位置は変わらない.結像位置から外れるとぼけは半円になる.

眼と光学器械

眼:角膜と水晶体がまとまって1つの凸レンズとして働き,網膜に実像を作ります.レンズと網膜の距離はほぼ一定なので,見る距離が変わると,筋肉で水晶体の厚さを変えて焦点距離を調節します.はっきり見える最も遠い点を遠点,最も近い点を近点といいます.近視の眼は遠点が有限の距離にあり,無限遠の物体の虚像を遠点に作る凹レンズの眼鏡で補正します.遠視や老眼の眼は近点が遠く,凸レンズで補正します.眼鏡の度数は,メートルで表した焦点距離の逆数で,単位は D=m−1(ディオプトリー)です.

レンズを2枚使う:1枚目のレンズの像を,2枚目のレンズの物体とみなします.レンズの間隔を ℓ とすると,2枚目にとっての物体距離は a2=ℓ−b1 です.1枚目を出た光が2枚目を越えた所へ収束していく場合は a2<0 の虚物体です.全体の倍率は M=M1M2 です.2枚の薄いレンズを密着させると,傾きの変化 −y/f1 と −y/f2 が足されるので,1/f=1/f1+1/f2 のように度数が足し算になります.

虫めがね・顕微鏡・望遠鏡:小さなものがどれだけ大きく見えるかは,像が眼に対して張る角で決まります.肉眼でよく見える距離を D0=0.25m(明視の距離)とすると,高さ h の物体は角 h/D0 に見えます.焦点距離 f の虫めがねの焦点に物体を置くと,出る光は平行になり,物体は角 h/f に見えるので,角倍率は D0/f です.顕微鏡は,焦点距離の短い対物レンズでまず拡大した実像を作り,それを接眼レンズの虫めがねで見ます.望遠鏡は,焦点距離 f1 の対物レンズで,角 β の方向から来る遠くの物体の実像を焦点面の高さ f1β に作り,それを焦点距離 f2 の接眼レンズで見ます.像を接眼レンズの焦点に置くと,出る光は角 −f1β/f2 の平行光になり,角倍率は −f1/f2(倒立)です.レンズの間隔は f1+f2 です.

間隔 f₁+f₂ の対物レンズと接眼レンズを示す.上向きの角 β で入る平行光は対物レンズの焦点面の高さ f₁β に実像を作る.接眼レンズからは下向きの角 β′=−(f₁/f₂)β の平行光が出る.角の表示は光軸に平行な補助線を使う. 間隔 f₁+f₂ の対物レンズと接眼レンズを示す.上向きの角 β で入る平行光は対物レンズの焦点面の高さ f₁β に実像を作る.接眼レンズからは下向きの角 β′=−(f₁/f₂)β の平行光が出る.角の表示は光軸に平行な補助線を使う.

問いに戻る

太陽はとても遠いので,太陽の1点から来る光はほぼ平行光です.平行光がレンズを通るとき,レンズのどこを通る道も焦点までの時間が等しくなるようにレンズの厚さが作られているので,フェルマーの原理によって,そのすべての道が実際の光線になり,焦点に集まります.光線の言葉で言えば,高さ y を通る光線ほど大きく −y/f だけ曲げられ,ちょうど同じ点で光軸を横切ります.

ただし,太陽は点ではなく,見かけの直径が約 0.0093rad(0.53∘)の円盤です.方向が θ 違う光は焦点面の高さ fθ に集まるので,紙の上の明るい点は,直径 f×0.0093 の太陽の実像です.f=0.10m なら直径は約 0.9mm です.直径 5cm のレンズが受けた日光がこの円に集まると,明るさは面積の比 (50/0.93)2≈3×103 倍になります.地表の日光の強さは約 1kWm−2 なので,紙は 3MWm−2 ほどの光を受け,焦げるのです.

ポイント ここまでのまとめ

  • レンズや曲面鏡は,1点から出る光がいろいろな道を通って別の1点へ着く時間をそろえる.フェルマーの原理により,すべての道が実際の光線になり,像ができる.

  • 近軸近似(h/a,h/b,h/R が十分小さい)では 1a+1b=1f,横倍率 M=−b/a.b<0 は虚像,a<0 は虚物体,凹レンズ・凸面鏡は f<0.

  • 薄いレンズは高さ y の光線の傾きを −y/f だけ変える.傾き θ の平行光は焦点面の高さ fθ に集まる.

  • 像点には開口全体の光が集まるので,レンズの一部を覆っても像は欠けずに暗くなり,スクリーンをずらすと直径 D|δ|/b にぼける.

  • 虫めがねで日光を集めた点は,直径が焦点距離の約 1/100 の太陽の実像である.

05近軸近似と球面での屈折

本体の節では,光学距離をそろえる条件から薄いレンズの式を出しました.ここでは同じ式を,屈折の法則と小さな角の近似から,球面1面ずつ組み立てて導きます.この方法は,ガラス玉や水槽のように厚さを無視できない場合にも使えます.最後に,像を作図する手順をまとめます.

定理 数学の道具:近軸近似

角 θ(ラジアン)が小さいとき

sin⁡θ≈θ,tan⁡θ≈θ,cos⁡θ≈1−θ22

である.誤差は sin⁡θ−θ≈−θ3/6,tan⁡θ−θ≈θ3/3 で,θ に対する比は θ2 の程度である.また,|x| が1よりずっと小さいとき 1+x≈1+x/2 で,半径 R の球面が中心軸から高さ h の所で後退する量(サジッタ)は

R−R2−h2≈h22R

である.光線と光軸のなす角,光線の高さと距離の比が十分小さいとして,これらの近似を使うことを近軸近似という.

導出は,sin⁡θ と tan⁡θ を θ で展開したときの最初の項を残すだけです(テイラー展開は第7章).sin⁡θ=θ−θ3/6+⋯ なので,θ=0.1rad(約 6∘)でも sin⁡θ と θ の違いは 0.17 % ほどです.

練習1 θ=0.10rad と θ=0.30rad について,sin⁡θ と θ の違いは θ の何パーセントか.

練習2 半径 R=0.200m の球面で,高さ h=0.0100m でのサジッタを近似式で求めよ.厳密な値との違いはどれほどか.

答え 練習1:比はほぼ θ2/6 で,θ=0.10 では 0.17 %,θ=0.30 では 1.5 %(厳密には sin⁡0.30=0.2955 で 1.5 %).練習2:h2/(2R)=(1.00×10−4)/0.400=2.50×10−4m.次の項は h4/(8R3)=1.6×10−7m で,相対的には h2/(4R2)≈6×10−4 しか違わない.

球面1面での結像

屈折率 n1 の物質と n2 の物質が,半径 R の球面で接しているとします.光は左から右へ進み,光軸上で球面の頂点から左 a の点 P から出た光が,右 b の点 Q に集まるとします.球面の中心 C が右側にあるとき R>0 とします.

P を出て高さ h で球面に当たる光線を考えます.光線が光軸となす角は α≈h/a,その点での球面の法線(C を通る直線)が光軸となす角は φ≈h/R,屈折した光線が光軸となす角は γ≈h/b です.図から,入射角は θ1=α+φ,屈折角は θ2=φ−γ です.屈折の法則 n1sin⁡θ1=n2sin⁡θ2 を近軸近似で n1θ1=n2θ2 とすると

n1(ha+hR)=n2(hR−hb)

で,両辺を h で割ると h が消えます.どの高さを通る光線も同じ点 Q に集まるということで,これが像ができる理由です.

屈折率 n₁ の側の P から出た光は,高さ h の球面で屈折し,n₂ の側の Q に向かう.中心 C は右側にあり R>0 で,法線は C を通る.入射光と光軸の角 α,法線と光軸の角 φ,出射光と光軸の角 γ を示す.下の角の拡大図で θ₁=α+φ,θ₂=φ−γ を示す. 屈折率 n₁ の側の P から出た光は,高さ h の球面で屈折し,n₂ の側の Q に向かう.中心 C は右側にあり R>0 で,法線は C を通る.入射光と光軸の角 α,法線と光軸の角 φ,出射光と光軸の角 γ を示す.下の角の拡大図で θ₁=α+φ,θ₂=φ−γ を示す.

定理 球面1面の結像の式

n1a+n2b=n2−n1R,M=−n1bn2a

符号は,物体が入射側なら a>0,像が出射側なら b>0,球面の中心が出射側なら R>0 とする.M は横倍率.

倍率は,物体の先端から球面の頂点に当たる光線で求めます.頂点では法線が光軸と一致するので,物体の高さを h0,像の高さを h′ とすると n1(h0/a)=n2(−h′/b) で,上の M が出ます.

平らな境界では R→∞ で b=−(n2/n1)a です.水中(n1=1.33)の深さ a の物体を空気中(n2=1)から真上近くで見ると,深さ a/1.33 の所に虚像が見えます.前の題材の見かけの深さと同じ結果です.

2つの面から薄いレンズへ

空気中の屈折率 n のレンズを考え,面の半径を順に R1,R2(どちらも上の符号の約束で)とします.第1面では空気からガラスへ入るので,第1面だけによる像 b1 は

1a+nb1=n−1R1

です.この像が第2面にとっての物体です.レンズが薄ければ,第2面から見た物体距離は a2=−b1 です(b1>0 なら,光は第2面の向こうへ収束していくので虚物体).第2面ではガラスから空気へ出るので

n−b1+1b=1−nR2

で,2つの式を足すと n/b1 が消えて

1a+1b=(n−1)(1R1−1R2)

です.

定理 レンズの焦点距離の式

空気中の薄いレンズの焦点距離は

1f=(n−1)(1R1−1R2)

両凸レンズでは R1>0,R2<0 なので,本体の節の式 (n−1)(1/R1+1/|R2|) と一致する.周囲が屈折率 n0 の物質なら,n−1 を n/n0−1 に置きかえる.

作図の手順

式で計算した結果は,作図で確かめると間違いが見つかります.薄いレンズは1枚の面で表し,光線はその面で1回だけ曲げます.

ポイント 作図の手順

  1. 物体の先端から,レンズの中心を通る直線を引く(曲がらない).

  2. 物体の先端から光軸に平行な光線を引き,レンズで曲げて後ろの焦点を通す.凹レンズでは,前の焦点から出てきたように広げる.

  3. 2本の光線がレンズの後ろで交われば実像.交わらなければ,レンズを出た光線を逆向きに延ばし,交わる点を虚像とする.

  4. 確かめに,前の焦点を通る光線(凹レンズでは後ろの焦点へ向かう光線)を引き,レンズを出たあと光軸に平行になることを使う.

  5. 虚物体のときは,レンズに入る光線を物体点へ向かう向きに引き,同じ規則で曲げる.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

半径 R=5.00mm,屈折率 n=1.50 のガラス玉の光軸付近に,光軸に平行な細い光束を当てる.周囲は屈折率1の空気とし,近軸近似を用いる.

  1. 光が集まる点は,ガラス玉の後ろの面から何 mm の所か.

  2. 光が後ろの面のちょうど上に集まるのは,屈折率がいくらのときか.

半径 R=5.00 mm,屈折率 n=1.50 のガラス玉に,左から光軸に平行な細い光束を当てる.前の面と後ろの面で折れ,玉の外で光軸を横切る.横切る点までの距離は図に書かない. 半径 R=5.00 mm,屈折率 n=1.50 のガラス玉に,左から光軸に平行な細い光束を当てる.前の面と後ろの面で折れ,玉の外で光軸を横切る.横切る点までの距離は図に書かない.
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考え方 厚さ 2R を無視できないので,球面1面の式を2回使う.第1面の像を第2面の物体とし,第2面を越えた所へ向かう光は虚物体として扱う.

  1. 第1面(R1=R>0,空気からガラス)で a=∞ だから n/b1=(n−1)/R,b1=nR/(n−1)=3R=15.0mm.第2面は第1面から 2R=10.0mm 先にあるので,第2面にとっての物体距離は a2=2R−b1=−5.00mm(虚物体).第2面は中心が入射側にあるので R2=−R,ガラスから空気へ出るので

na2+1b=1−n−R,1b=0.505.00mm+1.505.00mm=12.50mm

で,後ろの面から b=2.50mm の所に集まる.

  1. 文字のまま計算すると a2=R(n−2)/(n−1),1/b=2(n−1)/(R(2−n)),つまり b=R(2−n)/(2(n−1)) である.b=0 となるのは n=2.0 のとき.

確かめ:(2) の一般式に n=1.50 を入れると b=R×0.50/1.00=2.50mm で一致する.水滴(n=1.33)なら b≈R である.光束の半径が R より十分小さいことが近軸近似の条件で,太い光束では縁の光ほど手前に集まる(球面収差).

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

半径 15.0cm の球形の金魚鉢に水(屈折率 4/3)が満ちている.ガラスの厚さは無視する.観察者は屈折率1の空気中の光軸上にいて,近軸近似を用いる.倍率は横倍率を指す.

  1. 金魚が,観察者に近い側の鉢の面から 10.0cm の所(鉢の中心と面を結ぶ光軸上)にいる.観察者には金魚が面から何 cm の所に,何倍の大きさで見えるか.

  2. 金魚が鉢の中心にいるときはどうか.平らな面の水槽の場合と比べよ.

半径15.0 cmの水を満たした金魚鉢と,右側の観察者を示す.(1) の金魚は近い面から10.0 cmの光軸上にいる.金魚から出て右の面で屈折し観察者の側へ向かう光線と,その逆向きの延長が交わる像を示す.像までの距離と倍率は図に書かない.(2) では金魚を中心に置く. 半径15.0 cmの水を満たした金魚鉢と,右側の観察者を示す.(1) の金魚は近い面から10.0 cmの光軸上にいる.金魚から出て右の面で屈折し観察者の側へ向かう光線と,その逆向きの延長が交わる像を示す.像までの距離と倍率は図に書かない.(2) では金魚を中心に置く.
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考え方 光は水から空気へ右向きに出る.鉢の面の中心は入射側(左)にあるので R<0 である.

  1. n1=4/3,n2=1,a=10.0cm,R=−15.0cm を球面1面の式に入れると

1b=1−4/3−15.0cm−4/310.0cm=145.0cm−645.0cm=−19.00cm

で b=−9.00cm.面の内側 9.00cm の所に虚像がある.倍率は M=−(4/3)(−9.00)1×10.0=1.20 で,正立に1.2倍で見える.

  1. a=15.0cm では 1/b=1/45.0−4/45.0=−1/15.0(単位 cm−1)で b=−15.0cm,M=−(4/3)(−15.0)15.0=43.中心にいる金魚は中心に見え,4/3 倍に大きく見える.平らな面なら b=−a/(4/3),M=1 で,(1) では 7.50cm,(2) では 11.3cm の所に等倍で見える.

確かめ:中心から出た光は面に垂直に当たるので曲がらず,像は中心に残る.これは b=−15.0cm と合う.観察者が光軸から大きく外れた方向から見ると近軸近似が破れ,像はゆがむ.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

光軸上に,焦点距離 f1=10.0cm の凸レンズと,その右 20.0cm に焦点距離 f2=−20.0cm の凹レンズを置く.レンズは薄いとし,近軸近似を用いる.

  1. 凹レンズだけを置き,その左 30.0cm に物体を置いたときの像の位置と倍率を,式で求め作図で確かめよ.

  2. 2枚とも置き,凸レンズの左 15.0cm に物体を置いたときの最終の像の位置と全体の倍率を求めよ.

(1) は凹レンズの左30.0 cmの物体から,光軸に平行な光線と中心を通る光線を引き,前の焦点から出たように広がる延長と虚像を示す.虚像の位置と倍率は図に書かない.(2) は凸レンズの左15.0 cmの物体から出た光が,凹レンズの向こうの点へ向かう途中で凹レンズに入る.最終の像の位置は描かない. (1) は凹レンズの左30.0 cmの物体から,光軸に平行な光線と中心を通る光線を引き,前の焦点から出たように広がる延長と虚像を示す.虚像の位置と倍率は図に書かない.(2) は凸レンズの左15.0 cmの物体から出た光が,凹レンズの向こうの点へ向かう途中で凹レンズに入る.最終の像の位置は描かない.
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考え方 2枚のときは,凸レンズの像を凹レンズの物体とする.凹レンズを越えた所へ収束する光なら虚物体 a2<0 である.

  1. 1/b=1/f2−1/a=−1/20.0−1/30.0=−1/12.0(単位 cm−1)で b=−12.0cm,M=−b/a=0.400.凹レンズの左 12.0cm に,正立で0.4倍の虚像ができる.作図では,平行に入った光線は前の焦点(左 20.0cm)から出たように広がり,その延長と中心を通る直線が左 12.0cm で交わる.

  2. 凸レンズで 1/b1=1/10.0−1/15.0=1/30.0,b1=30.0cm,M1=−2.00.この点は凹レンズの右 10.0cm なので a2=20.0−30.0=−10.0cm(虚物体).

1b2=1f2−1a2=−120.0+110.0=120.0

で b2=20.0cm,M2=−b2/a2=2.00.凹レンズの右 20.0cm に実像ができ,全体の倍率は M=M1M2=−4.00(倒立で4倍).

確かめ:本体の節の光線の規則で,物体の点(光軸上)から高さ y で凸レンズに入る光線を追う.傾きは y/15.0 から y/15.0−y/10.0=−y/30.0 に変わり,凹レンズでの高さは y−20.0×y/30.0=y/3.凹レンズで傾きは −y/30.0−(y/3)/(−20.0)=−y/60.0 になり,光軸を横切るのは (y/3)/(y/60.0)=20.0cm 先である.y によらないので,式の結果と一致する.

ポイント ここまでのまとめ

  • 近軸近似:sin⁡θ≈tan⁡θ≈θ,サジッタ h2/(2R).誤差の比は θ2 や (h/R)2 の程度.

  • 球面1面:n1/a+n2/b=(n2−n1)/R,M=−n1b/(n2a).高さ h が消えることが,像ができる理由.

  • 2つの面を続けて使うと,薄いレンズの 1/f=(n−1)(1/R1−1/R2) が出る.厚いガラス玉や組み合わせレンズでは,前の像を次の物体とし,必要なら虚物体を使う.

  • 作図は,中心を通る光線と平行な光線の2本で像を決め,焦点を通る光線で確かめる.

06レンズと鏡による結像の演習

実像と虚像を区別してください.薄いレンズと近軸光線を扱い,入射側の実物体の距離を a>0,出射側の実像の距離を b>0,虚物体・虚像の距離をそれぞれ負とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

焦点距離 f=12.0cm の凸レンズの左に,高さ h=2.00mm の小物体を置く.光は右へ進む.物体距離が a=18.0cm の場合と 8.00cm の場合について,像の位置,高さ,向きと投影の可否を求めよ.

焦点距離12.0 cmの凸レンズに対し,物体距離18.0 cmと8.00 cmの2配置を示す.小物体の高さはどちらも2.00 mmである. 焦点距離12.0 cmの凸レンズに対し,物体距離18.0 cmと8.00 cmの2配置を示す.小物体の高さはどちらも2.00 mmである.
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考え方 像距離と倍率の符号から,像の種類と向きを決める.

薄いレンズの式 1/a+1/b=1/f より b=af/(a−f),横倍率は M=−b/a である.a=18.0cm なら b=36.0cm,M=−2.00.右側に高さの大きさ 4.00mm の倒立実像ができ,スクリーンに映せる.a=8.00cm なら b=−24.0cm,M=3.00.左側に高さ 6.00mm の正立虚像ができ,スクリーンには映せない.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

凸面鏡の前に小物体を置く.鏡の焦点距離は f=−12.0cm,物体距離は a=36.0cm である.鏡では前側の像距離を正,裏側を負とし,1/a+1/b=1/f,M=−b/a が成り立つ.

  1. 像の位置,倍率,向きを求めよ.

  2. a>0 を変えても倒立実像ができないことを示し,a→∞ の像位置を求めよ.

凸面鏡の前側に物体距離aが36.0 cmの小物体を置く.鏡の頂点と光軸,焦点距離fの与えられた値を示す. 凸面鏡の前側に物体距離aが36.0 cmの小物体を置く.鏡の頂点と光軸,焦点距離fの与えられた値を示す.
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考え方 焦点距離の符号を保って像距離を求める.

  1. b=af/(a−f) より b=−9.00cm,M=0.250.鏡の裏に縮小した正立虚像ができる.

  2. F=|f|>0 とすれば b=−aF/(a+F)<0,M=F/(a+F) は0と1の間で,正立虚像である.遠方では b→−F=f.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

ある人は裸眼で,眼から 0.200m と 0.500m の間の物体にピントを合わせられる.薄い眼鏡を眼の 0.0200m 前に置く.度数はメートルで表した焦点距離の逆数で,単位 D=m−1 とする.

  1. 無限遠を見られる眼鏡の焦点距離と度数を求めよ.

  2. 同じ眼鏡で最も近くまで鮮明に見える物体は,眼から何メートルにあるか.

裸眼の近点は眼から0.200 m,遠点は0.500 mである.眼鏡は眼の0.0200 m前に置かれる. 裸眼の近点は眼から0.200 m,遠点は0.500 mである.眼鏡は眼の0.0200 m前に置かれる.
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考え方 眼鏡の虚像を裸眼の近点・遠点へ置く.距離の原点に注意する.

  1. 無限遠では 1/a=0.遠点は眼鏡の前 0.480m にあるので b=−0.480m.1/b=1/f より f=−0.480m,度数は −2.08D である.

  2. 近点に虚像を置くと b=−(0.200−0.0200)m=−0.180m.したがって

1a=1f−1b=(−10.480+10.180)m−1,a=0.288m

で,眼からの距離は 0.308m.矯正後の近点は裸眼より遠くなる.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

物体とスクリーンを距離 L だけ離して固定し,間の凸レンズを動かす.鮮明な像ができる2つの位置の間隔 s を測ると,次の値を得た.同じレンズを使う.

L

s

0.600m

0.346m

0.800m

0.566m

1.000m

0.775m

  1. s,L,f の関係と,2位置が存在する条件を導け.

  2. Y=s2/L と L で直線化し,共通の焦点距離を見積もれ.その値で3点を確かめよ.

固定された物体とスクリーンの間隔をLとする.その間にある凸レンズを光軸に沿って動かす. 固定された物体とスクリーンの間隔をLとする.その間にある凸レンズを光軸に沿って動かす.
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考え方 距離の和を固定し,レンズ位置の二次方程式を作る.

  1. b=L−a を 1/a+1/b=1/f に代入すると a(L−a)=fL.よって a2−La+fL=0,2根は a=(L±L2−4fL)/2.根の差から s2=L2−4fL.異なる2位置には L>4f が必要で,等号では1位置になる.

  2. Y=L−4f は傾き1,切片 −4f の直線.各点の f=(L2−s2)/(4L) は順に 0.1001m,0.09989m,0.09984m.共通値は約 0.100m で,予測する s は 0.3464m,0.5657m,0.7746m.表の桁に丸めると一致する.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

共軸の2枚の凸レンズで,左の焦点距離は f1=12.0cm,右は f2=18.0cm,間隔は ℓ=18.0cm.左のレンズのさらに左 18.0cm に小物体を置く.

  1. 最終像の位置と全倍率を求めよ.

  2. 右のレンズの半径は r=2.00mm.各物体点からの光が開口を一様に満たすとする.結像面より 6.00mm 遠くへスクリーンをずらしたときのぼけの直径を求めよ.

  3. 結像面に戻し,右の上半分を覆う.像の形,位置,明るさはどうなるか.左のレンズによる光の遮断と吸収は無視する.

焦点距離f₁が12.0 cm,f₂が18.0 cmの凸レンズを18.0 cm離して置く.物体位置と右の開口半径r,その上半分を覆う条件を示す. 焦点距離f₁が12.0 cm,f₂が18.0 cmの凸レンズを18.0 cm離して置く.物体位置と右の開口半径r,その上半分を覆う条件を示す.
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考え方 第1レンズの光が第2レンズを越えて収束するなら,虚物体として扱う.

  1. 1/b1=1/f1−1/a1 より b1=36.0cm.第2レンズを越えて収束するので a2=ℓ−b1=−18.0cm は虚物体である.b2=a2f2/(a2−f2) より b2=9.00cm.右のレンズの右に実像ができる.M1=−2.00,M2=0.500 だから M=M1M2=−1.00 で,等倍倒立である.

  2. 開口の縁から結像点までの光線の傾きは r/b2.ずれを ε とすれば,ぼけの半径は r|ε|/b2 なので,直径は 2×2.00×6.00/90.0=0.267mm.

  3. 残る光も同じ像点へ集まる.像の形と位置は同じで,明るさは半分になる.近軸条件は光線の傾きや物体高と距離の比が十分小さいことで, r/b2=0.0222 である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

凸の対物レンズと凸の接眼レンズで望遠鏡を作る.無限遠に調整したレンズ間隔は 0.450m,角倍率の大きさは8.00である.出射光を平行にする.

  1. 両レンズの焦点距離と,角倍率の符号を求めよ.

  2. 対物レンズを固定し,その前方 10.0m の物体を見る.出射光を平行にする接眼の移動方向と距離を求めよ.

対物レンズと接眼レンズはいずれも凸レンズである.無限遠に調整した初めの間隔は0.450 m,角倍率の大きさは8.00である. 対物レンズと接眼レンズはいずれも凸レンズである.無限遠に調整した初めの間隔は0.450 m,角倍率の大きさは8.00である.
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考え方 対物の像を接眼の焦点に置く.

  1. 小角 β で中間像の高さは h≈f1β,接眼の角は β′≈−h/f2.よって角倍率は −f1/f2.また間隔は f1+f2 だから f1=8f2,9f2=0.450m.f1=0.400m,f2=0.0500m,角倍率は −8.00 である.

  2. a=10.0m として b1=af1/(a−f1) より b1=0.4167m.新しい間隔は b1+f2=0.4667m なので,対物から遠ざける向きへ 0.0167m 動かす.移動量は f12/(a−f1) で,a→∞ で0へ戻る.角倍率は |β| と |β′| が十分小さい範囲で有効である.

ポイント 教える人へ

  • 負の像距離を誤答扱いせず,光線の延長が交わる側を確認させます.

  • 眼と眼鏡の距離の原点を区別し,度数の符号を説明させます.

  • 2枚のレンズでは,次のレンズにとっての物体距離を計算し直させます.

  • 開口を覆った像と,結像面から外れたぼけを区別させます.

07光の干渉と光学距離

問い

シャボン玉の膜は,無色の石けん水なのに,赤や緑や紫の縞模様に光って見えます.模様はゆっくり流れ,割れる直前には上のほうが黒く抜けたように見えます.色素の無い膜に,なぜ色が付くのでしょうか.そして割れる直前の膜は,なぜ光を返さなくなるのでしょうか.

考えてみる

光が膜に当たると,表の面で一部が反射し,残りは膜に入って裏の面でまた一部が反射します.目に届くのは,この2つの反射光の重ね合わせです.光は電磁波(第26章)なので,2つの波の電場を足せば合成の波になります.2つの山がそろえば強め合い,山と谷が重なれば弱め合います.弱め合う波長の光が抜ければ,白い光は残りの色に見えるはずです.

ところが,懐中電灯を2つ並べて壁を照らしても,明暗の縞は見えません.波が重なれば必ず縞ができるわけではないのです.干渉を考えるには,2つの光の位相の差を正しく数える方法と,どんなときに位相の差が保たれるかを知る必要があります.

2つの光を重ねる

第7章と同じように,振動数 ν,角振動数 ω=2πν の光の電場を,複素数 E^ を使って E=Re(E^eiωt) と書きます.E^ を複素振幅といいます.真空中を距離 ℓ 進んだ光は,波の標準形 sin⁡(ωt−kx) のとおり位相が kℓ=2πℓ/λ だけ遅れるので,複素振幅に e−ikℓ が掛かります.光の強さは電場の2乗の時間平均に比例し,cos2 の平均は 1/2 なので,強さは |E^|2 に比例します.

定理 2つの光の干渉

同じ振動数の2つの光の複素振幅を E^1,E^2,それぞれだけのときの強さを I1,I2,2つの位相の差を ϕ とすると,重ねた光の強さは

I∝|E^1+E^2|2,I=I1+I2+2I1I2cos⁡ϕ

である.I1=I2=I0 なら I=4I0cos2⁡(ϕ/2) で,ϕ が 2π の整数倍で 4I0,π の奇数倍で0になる.

強さが違う2つの光でも縞はできますが,暗い所が0になりません.最大と最小は (I1±I2)2 です.2I1I2cos⁡ϕ を干渉項といいます.場所について平均すると干渉項は消え,エネルギーは配り直されるだけです.

ヤングの実験

1つの光源から出た光を,間隔 d の2つの細いスリットに当て,距離 L 離れたスクリーンに映します.2つのスリットは同じ波面の上にあるので,同位相の2つの光源とみなせます.スクリーンの中央から x の点に届く2つの光の経路差は,L が d より十分大きいとき,2本の光線がほぼ平行で

dsin⁡θ≈dxL

です(θ は中央から見た角度).経路差が波長の整数倍の所が明るくなります.

法則 ヤングの実験の明線

明線は dsin⁡θ=mλ(m=0,±1,±2,…),暗線は dsin⁡θ=(m+12)λ の所にできる.小角では明線の位置は x=mLλ/d,明線の間隔は

w=Lλd

である.この近似は d/L と |x|/L が十分小さいときに使える.

[図:ヤングの実験と経路差]

初期状態はd=0.50 mm,L=1 m,λ=500 nmで,縞の間隔は1.00 mmである.dとλを変えると縞の間隔が変わり,点Pのxを選ぶと2本の光線と経路差が変わる.下の拡大図では2本を平行とみなして波面への射影を示す.

d=0.5mm,L=1m,λ=500nm なら w=1mm です.目に見えない 500nm という長さが,L/d 倍に拡大されて見えるのです.スリットの後ろに凸レンズを置き,その焦点面で見る場合は,同じ角度 θ の光が焦点面の1点に集まるので,L を焦点距離 f に置き換えます.レンズはすべての光線の時間をそろえる(前の題材)ので,光路差を新たに作りません.

光学距離

屈折率 n の物質の中では光の速さが c/n なので,振動数は同じでも波長は λ0/n に縮みます(λ0 は真空中の波長).物質の中を距離 ℓ 進むと位相は 2πℓ/(λ0/n)=2πnℓ/λ0 だけ遅れます.つまり,位相を数えるときは,物質中の距離を n 倍して真空中の距離に換算すればよいのです.この nℓ は,この章の最初の題材でフェルマーの原理に使った光学距離(かかる時間に c を掛けたもの)そのものです.

定義 光路差

2つの光の光学距離の差 Δ を光路差といい,位相の差は

ϕ=2πΔλ0

である.

たとえばヤングの装置の一方のスリットを,屈折率 n,厚さ h の透明な薄板で覆うと,その経路の光学距離は空気の分を差し引いて (n−1)h だけ増えます.光路差0の中央明線は,覆ったスリットの側へずれます.装置全体を屈折率 n の液体に入れれば,波長が λ0/n になるので縞の間隔は Lλ0/(nd) に縮みます.

反射による位相のずれ

第26章で見たように,垂直入射の電場の反射の振幅比は n1−n2n1+n2 です.

ポイント 反射で位相が変わるかどうか

  • 屈折率の小さい側から大きい側の面で反射すると(n1<n2),位相が π ずれる(弦の固定端と同じ).光路差に換算すると λ0/2 である.

  • 屈折率の大きい側から小さい側の面で反射すると,位相は変わらない(自由端と同じ).

  • 透過した光の位相は変わらない.

干渉の問題では,まず経路の光路差を出し,次に反射での反転が「片方だけにあるか」を確かめます.片方だけなら強め合いと弱め合いの条件が入れ替わります.

薄膜の干渉

屈折率 n,厚さ h の膜に,空気中から入射角 θ1 で光が当たる場合を考えます.膜の中の屈折角を θ2 とします.

空気から膜へ斜めに入った光は,表で反射する光と,膜の裏で反射して出る光に分かれる.膜の厚さはh,屈折率はn,入射角はθ₁,屈折角はθ₂である.平行に出る2本に垂直な波面を橙の破線で示す. 空気から膜へ斜めに入った光は,表で反射する光と,膜の裏で反射して出る光に分かれる.膜の厚さはh,屈折率はn,入射角はθ₁,屈折角はθ₂である.平行に出る2本に垂直な波面を橙の破線で示す.

膜の中を往復する光は,光学距離 2nh/cos⁡θ2 を進みます.その間に,表で反射する光は空気中を 2htan⁡θ2sin⁡θ1 だけ余分に進んで同じ波面にそろいます.屈折の法則 sin⁡θ1=nsin⁡θ2 を使うと,光路差は

Δ=2nhcos⁡θ2−2nhsin2⁡θ2cos⁡θ2=2nhcos⁡θ2

です.

定理 薄膜の干渉の条件

膜の上下の反射のうち片方だけで位相が反転するとき,反射光が強め合うのは

2nhcos⁡θ2=(m+12)λ0

弱め合うのは 2nhcos⁡θ2=mλ0(m=0,1,2,…)である.両方で反転するときや,どちらでも反転しないときは,2つの条件が入れ替わる.

ここでは表と裏で1回ずつ反射した2つの光だけを足しました.ガラスや水の面の反射率は数 % なので,膜の中で何度も反射した光は弱く,無視できます.反射率が大きい面では多重反射を足し合わせる必要があります.

くさび,ニュートンリング,反射防止膜

2枚のガラス板の一端を接し,他端に薄い紙をはさむと,くさび形の空気層ができます.上から見ると,厚さ t が 2t=mλ0 を満たす所に暗線が並びます(上のガラスから空気への反射は反転せず,空気から下のガラスへの反射は反転する).厚さは接点からの距離に比例するので,暗線は等間隔です.接点では t=0 で暗くなります.

平らなガラスの上に曲率半径 R の平凸レンズを置くと,中心から r の所の空気層の厚さは t≈r2/(2R) です(r/R が十分小さいとき).暗い所は同心円になり,これをニュートンリングといいます.厚さが等しい所を結んだ線が縞になるので,ニュートンリングはレンズの面の検査に使われます.

左はガラス板にはさんだ紙でできるくさび形空気層と,等間隔の暗線である.接点は暗い.右は凸面を下にした平凸レンズとガラス板で,中心からrの所の空気層の厚さをtで示す.暗輪は同心円で,外側ほど間隔が狭い.断面の厚さを拡大して示す. 左はガラス板にはさんだ紙でできるくさび形空気層と,等間隔の暗線である.接点は暗い.右は凸面を下にした平凸レンズとガラス板で,中心からrの所の空気層の厚さをtで示す.暗輪は同心円で,外側ほど間隔が狭い.断面の厚さを拡大して示す.

カメラのレンズには,ガラス(屈折率 ns)の表面に屈折率 nf の薄い膜が付いています.1<nf<ns なら膜の上下の反射はどちらも反転するので,反転の影響は打ち消し合い,2nft=λ0/2,つまり厚さ t=λ0/(4nf) で反射光が弱め合います.上下の反射の振幅がそろう nf=ns のとき,その波長の反射は0になります.これが反射防止膜です.

マイケルソン干渉計

光を半透鏡で2つに分け,それぞれ鏡で反射させて半透鏡に戻し,重ねて見る装置をマイケルソン干渉計といいます.一方の鏡を δ 動かすと,光は往復するので光路差は 2δ 変わり,縞は N=2δ/λ0 本流れます.縞の本数を数えれば,波長を物差しにして長さが測れます.一方の腕に長さ ℓ の気体のセルを置けば,気体を入れたときの縞の移動から 2(n−1)ℓ が分かり,屈折率が測れます.

光源からの光を半透鏡で直交する2本の腕に分け,鏡M₁とM₂で反射させて検出器で重ねる.M₁を右へδ動かすと,往路と復路がそれぞれδ長くなり,光路差は2δ変わる. 光源からの光を半透鏡で直交する2本の腕に分け,鏡M₁とM₂で反射させて検出器で重ねる.M₁を右へδ動かすと,往路と復路がそれぞれδ長くなり,光路差は2δ変わる.

干渉が見えるための条件

ふつうの光源では,たくさんの原子がばらばらに光を出すので,光の位相はごく短い時間で不規則に変わります.別々の光源どうしでは位相の差 ϕ が目まぐるしく変わるので,干渉項 2I1I2cos⁡ϕ は時間平均で0になり,強さは単に足し算になります.懐中電灯2つで縞が見えないのはこのためです.

同じ光源から分けた2つの光なら,位相の乱れは同じように起こり,差は保たれます.ただし,光路差が大きすぎると,前後に出た別の光どうしを重ねることになり,位相の関係が失われます.位相がそろっている長さを可干渉距離といい,白色光では数 μm です.シャボン玉のような薄い膜は色付き,厚い窓ガラスでは色が見えないのはこのためです.レーザーの可干渉距離は,ものによっては数 m 以上あります.

ポイント 干渉の条件

  • 同じ光源から分けた光は,光路差が可干渉距離より短ければ干渉する.複素振幅を足してから2乗する.

  • 互いに無関係な光源の光は干渉しない.強さを足す.

  • 偏光の向きが直交する2つの光は,電場が直交するので干渉項が無い.

光源の大きさも問題になります.ヤングの装置で点光源をスリットの前方 D の所で横に s ずらすと,入射側にも光路差 ds/D ができ,縞全体が Ls/D だけ反対側にずれます.大きな光源の各点は互いに無関係なので,ずれた縞の強さが足されます.縞のずれが縞の間隔と同じくらいになると,明暗が埋まって縞が消えます.ヤングがスリットの前に小さな穴を置いたのはこのためです.

[図:光源位置と縞の移動,2光源の強さの和]

初期状態では光源1がs=0.25 mmだけ上へずれ,縞は下へ0.25 mm移動する.sの正の向きは配置図では上,強さのグラフではxの正の向きを右にとる.光源2を加えると強さが足される.半周期ずらして2光源のボタンで,縞が消える状態を確認できる.

問いに戻る

シャボン玉の膜の色は,膜の表と裏で反射した2つの光の干渉です.膜は数百 nm と薄く,白色光の可干渉距離より光路差が短いので干渉が起こります.光路差 2nhcos⁡θ2 で弱め合う波長が白い光から抜け,残りの色が見えます.膜は重力で下へ流れて上ほど薄くなり,厚さが場所と時間で変わるので,色の縞が流れます.

石けん水の膜は両側が空気なので,表の反射(空気から膜)は反転し,裏の反射(膜から空気)は反転しません.膜が波長よりずっと薄くなると光路差はほぼ0になり,反転の分だけ2つの反射光が打ち消し合います.割れる直前の膜が黒く見えるのは,どの色の光も反射しなくなるからです.

ポイント ここまでのまとめ

  • 同じ光源から分けた光は,複素振幅を足して2乗すると強さが出る.I=I1+I2+2I1I2cos⁡ϕ.

  • 位相の差は光学距離の差(光路差)Δ から ϕ=2πΔ/λ0 で出す.屈折率 n の中の距離は n 倍する.

  • ヤングの実験の明線は dsin⁡θ=mλ,間隔は Lλ/d(d/L,|x|/L が小さいとき).

  • 屈折率の小さい側から大きい側の面での反射は位相が π ずれる.薄膜では 2nhcos⁡θ2 と反転の有無で条件が決まる.

  • 無関係な光源どうしや可干渉距離を超えた光は干渉せず,強さを足す.シャボン玉の色は薄膜の干渉で,割れる直前に黒くなるのは片方だけの反転のためである.

08光の干渉の例題

干渉の問題は,いつも同じ手順で解けます.まず2つの光の経路を図に描き,それぞれの光学距離を出して光路差 Δ を求めます.次に,反射で位相が反転する所を数え,片方だけに反転があれば λ0/2 を加えます.最後に,強め合いは位相の差が 2π の整数倍,弱め合いは π の奇数倍として条件を立て,使った近似の条件を確かめます.この節では,ヤングの実験で波長を測る,油膜の色を決める,ニュートンリングから曲率半径を測る,の3つでこの手順を練習します.

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

間隔 d=0.250mm の2スリットに単色光を垂直に当て,距離 L=1.50m 離れたスクリーンに縞を映した.中央明線の両側の5番目の明線(m=−5 と m=5)の間隔を物差しで測ると 33.0mm であった.

  1. 光の波長を求めよ.

  2. 測った明線間隔の不確かさが 0.5mm であるとき,波長の不確かさを求めよ.また,隣り合う明線1組の間隔だけを同じ不確かさで測った場合と比べよ.d と L の不確かさは無視する.

  3. この測定で小角近似が使えることを確かめよ.

スリット間隔d=0.250 mm,スクリーンまでの距離L=1.50 mである.中央明線と両側5本ずつの明線を示す.m=−5からm=5までの間隔33.0 mmに物差しを当てる.配置と物差しの大きさは模式的である. スリット間隔d=0.250 mm,スクリーンまでの距離L=1.50 mである.中央明線と両側5本ずつの明線を示す.m=−5からm=5までの間隔33.0 mmに物差しを当てる.配置と物差しの大きさは模式的である.
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考え方 明線は等間隔に並ぶので,離れた2本の間隔を本数で割れば1つの間隔になる.間隔 w=Lλ/d から波長を出す.

  1. m=−5 から m=5 までは間隔10個分なので,w=33.0/10=3.30mm である.

λ=wdL=3.30×10−3×0.250×10−31.50=5.50×10−7m=550nm
  1. 波長は測った長さに比例するので,相対的な不確かさは同じで 0.5/33.0=0.015,つまり約1.5 %である.波長の不確かさは 550×0.015≈8nm となる.間隔1つ分の 3.30mm だけを同じ物差しで測ると,相対的な不確かさは 0.5/3.30=0.15,約15 %で,10倍悪くなる.読み取りの不確かさは測る長さによらないので,長い区間を測って本数で割るほうがよい.

  2. 最も外側の明線の位置は |x|=16.5mm で,|x|/L=0.011,d/L=1.7×10−4 である.sin⁡θ を x/L で置き換えた誤差は θ2/2 の程度,約 6×10−5 で,(2) の1.5 %より十分小さい.

確かめ:550nm は緑色の光の波長で,もっともらしい.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

水(屈折率 1.33)の上に,屈折率 1.45 の油が厚さ h=380nm の一様な膜となって広がっている.空気中から白色光(波長 400nm から 700nm)を当て,反射光を見る.

  1. 真上から見るとき,反射で強め合う波長と弱め合う波長を可視光の範囲で求め,膜の色を述べよ.

  2. 入射角 45∘ の向きから見るときはどうなるか.

水の屈折率は1.33,油の屈折率は1.45,油膜の厚さはh=380 nmである.白色光が入射角θ₁で入り,表の反射光と裏で反射して出る光を描く.油中の屈折角はθ₂である.角度と厚さは模式的に示す. 水の屈折率は1.33,油の屈折率は1.45,油膜の厚さはh=380 nmである.白色光が入射角θ₁で入り,表の反射光と裏で反射して出る光を描く.油中の屈折角はθ₂である.角度と厚さは模式的に示す.
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考え方 反転は屈折率の小さい側から大きい側への反射で起こる.空気から油(1<1.45)では反転し,油から水(1.45>1.33)では反転しない.片方だけに反転があるので,強め合いは 2nhcos⁡θ2=(m+12)λ0,弱め合いは 2nhcos⁡θ2=mλ0 である.

  1. 真上からなら cos⁡θ2=1 で,2nh=2×1.45×380=1102nm である.強め合う波長は λ0=1102/(m+1/2) で,m=0,1,2,3 に対し 2204,735,441,315nm.可視光の範囲では 441nm(青紫)だけである.弱め合う波長は λ0=1102/m で,m=1,2 に対し 1102,551nm.可視光の範囲では 551nm(緑)である.緑が弱まり,青紫と,強め合いの 735nm に近い赤が相対的に強まるので,赤紫系の色が目立つ.

  2. 屈折の法則から sin⁡θ2=sin⁡45∘/1.45=0.488,cos⁡θ2=1−0.4882=0.873 である.光路差は 2nhcos⁡θ2=1102×0.873=962nm となる.強め合いは 962/(m+1/2) で,可視光では m=1 の 641nm(赤).弱め合いは 962/m で,可視光では m=2 の 481nm(青緑).青緑が弱まり,赤が強まるので,赤系の色が目立つ.斜めから見るほど光路差が小さくなり,弱め合う波長が短い側へ移る.

確かめ:真上から見た反射率は,空気と油の境界で (0.452.45)2≈0.034,油と水の境界で (0.122.78)2≈0.0019 と小さいので,膜の中の多重反射は無視してよい.油が水でなくガラス(屈折率 1.5)の上にあれば,裏の反射も反転するので,強め合いと弱め合いの条件が入れ替わり,真上から見た色は緑になる.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

平らなガラス板の上に,曲率半径 R の平凸レンズの凸面を下にして置き,真上から波長 λ0=589nm の光を当てて反射光を見ると,同心円の暗い輪が見えた.空気の屈折率は1とする.レンズの軸は板に垂直とし,空気層の厚さは R に比べて十分小さいとする.

  1. レンズと板が中心で接しているとき,中心から m 番目の暗輪の半径 rm を求めよ.中心は明るいか暗いか.

  2. 実際には,中心に小さなごみがはさまってレンズがわずかに持ち上がっているかもしれない.このとき暗輪を内側から順に数えると,ある暗輪の半径が 2.65mm,そこから外側へ10番目の暗輪の半径が 4.80mm であった.持ち上がりの大きさが分からなくても R が決まることを示し,R を求めよ.

曲率半径Rの平凸レンズをガラス板の上に置く.中心からrの所の空気層の厚さをtで示す.上から入る光と,レンズ下面と板上面で反射する2本を描く.右には同心円の暗輪を添える.中心の明暗も考える配置である.長さと角度は模式的である. 曲率半径Rの平凸レンズをガラス板の上に置く.中心からrの所の空気層の厚さをtで示す.上から入る光と,レンズ下面と板上面で反射する2本を描く.右には同心円の暗輪を添える.中心の明暗も考える配置である.長さと角度は模式的である.
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考え方 干渉するのは,レンズの下面で反射する光と,板の上面で反射する光である.光路差は空気層の厚さ t の2倍で,レンズの下面(ガラスから空気)の反射は反転せず,板の上面(空気からガラス)の反射は反転する.

  1. 中心から r の所の空気層の厚さは,三平方の定理 R2=r2+(R−t)2 から 2Rt=r2+t2 である.t は R より十分小さいので t2 を無視して t=r2/(2R).片方だけ反転するので,暗くなるのは 2t=mλ0 のときで

rm2R=mλ0,rm=mRλ0

である.中心では t=0 で光路差は0だが,反転の分だけ打ち消し合い,暗い.

  1. レンズが δ 持ち上がると,空気層の厚さは δ+r2/(2R) になり,暗輪の条件は

2δ+r2R=mλ0

となる.δ が分からないと,ある暗輪の m も分からない.しかし,隣の暗輪へ移るごとに m は1ずつ増えるので,ある暗輪とそこから外側へ k 番目の暗輪について差をとると,δ と m の両方が消えて

rm+k2−rm2=kRλ0

となる.k=10 として

R=(4.80×10−3)2−(2.65×10−3)210×589×10−9=1.602×10−55.89×10−6=2.72m

である.

確かめ:近似 t=r2/(2R) は r/R が十分小さいときに使え,ここでは r/R≈0.0018 である.半径の2乗を干渉次数 m に対してグラフにすると直線になり,その傾きが Rλ0,切片が −2Rδ となる.差をとる方法は,この直線の傾きだけを使うことに当たる.

ポイント ここまでのまとめ

  • 干渉の問題は,光学距離の差 Δ を出し,反射の反転を数え,強め合い・弱め合いの条件を立てる順に解く.

  • ヤングの実験の波長の測定では,多くの明線の間隔をまとめて測ると,読み取りの不確かさの影響が小さくなる.

  • 薄膜の色は,弱め合って抜ける波長で決まり,見る角度によって 2nhcos⁡θ2 が変わるので色も変わる.

  • ニュートンリングでは rm2=mRλ0 で,半径の2乗の差を使うと接触の具合によらず R が測れる.

  • どの例題でも,小角や薄い空気層などの近似が成り立つかを最後に確かめる.

09光学距離と干渉縞の演習

光学距離と反射の位相を数えてください.特記なければ真空波長 λ0=600nm,d=0.400mm,L=1.20m,空気の屈折率1とし,吸収と分散を無視します.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

同位相で照らす2スリットの装置全体を,距離を変えずに屈折率 n=1.50 の液体に入れる.

小角近似で,空気中と液体中の縞間隔を求めよ.

屈折率nが1.50の液体中に,間隔dの2スリットと距離Lのスクリーンを置く.スクリーンの中央を0とする横座標xを示す. 屈折率nが1.50の液体中に,間隔dの2スリットと距離Lのスクリーンを置く.スクリーンの中央を0とする横座標xを示す.
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考え方 明線の光路差は真空波長の整数倍である.

中央からの座標を x とすると,小角で経路差は dx/L なので,光路差は Δ=ndx/L.明線の条件 Δ=mλ0 から間隔は w=Lλ0/(nd).空気中は 1.80mm,液体中は 1.20mm である.

近似条件は d/L,|x|/L が十分小さいことである.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

同位相で照らすヤングの装置で,上下のスリットを x=±d/2 とする.上側に屈折率 n=1.50,厚さ h=1.80μm の板と減光板を垂直に置く.上側からの電場振幅は下側の半分になる.板以外の位相変化と多重反射は無視する.

  1. 板を置く前の中央明線が移る向きと距離を求めよ.

  2. 下側だけの強さを I0 とし,合成の強さ,最大値,最小値を複素振幅から求めよ.

上のスリットの直後に屈折率1.50,厚さhが1.80 μmの板と減光板を置く.上下のスリット位置はxが±d/2で,xの正方向を上向きにとる. 上のスリットの直後に屈折率1.50,厚さhが1.80 μmの板と減光板を置く.上下のスリット位置はxが±d/2で,xの正方向を上向きにとる.
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考え方 板による光学距離の増加は,置き換えた空気の分を引く.

  1. 上側から下側を引いた光路差は Δ=(n−1)h−dx/L.中央明線は Δ=0 より x=L(n−1)h/d=2.70mm.板のある上側へ移る.

  2. ϕ=2πΔ/λ0 とする.下側の複素振幅を E0 とすれば,上側は E0e−iϕ/2.電場は和に eiωt を掛けた実部,強さは和の絶対値の2乗に比例し

I=I0|1+12e−iϕ|2=I0(54+cos⁡ϕ),Imax=94I0,Imin=14I0

となる.振幅の差が残るため暗線は0にならない.d/L,|x|/L が小さい範囲の近似である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

ガラス板の間に,接点から距離 ℓ=45.0mm の位置で厚さ h となるくさび形空気層を作る.ガラスの屈折率は ng=1.60.ほぼ垂直に照らし,層の上下からの反射の干渉を観察する.暗線の間隔は w=0.750mm であった.

接点が明るいか暗いかを説明し,h を求めよ.

ガラス板の接点から距離ℓが45.0 mmの位置に厚さhの空気層がある.ほぼ垂直な入射光と,ガラスの屈折率n_gを示す. ガラス板の接点から距離ℓが45.0 mmの位置に厚さhの空気層がある.ほぼ垂直な入射光と,ガラスの屈折率n_gを示す.
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考え方 反転は一方の反射だけに起こる.

ガラスから空気への反射は反転せず,空気からガラスへの反射は π ずれる.接点は光路差0で暗い.位置 x の厚さは t=hx/ℓ.暗線は 2t=mλ0 なので w=ℓλ0/(2h).よって h=ℓλ0/(2w)=18.0μm.

くさびの傾き h/ℓ=4.00×10−4 が小さく,同じ厚さで上下を比較する近似が有効である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

空気,薄膜,基板の屈折率を 1,nf=1.25,ns=1.5625 とする.垂直入射の複素振幅反射係数は

r=r0(1+e−iψ)1+r02e−iψ,r0=−19,ψ=4πnftλ0

で与えられる.多重反射を含む式で,t は膜厚,反射率は |r|2 である.

  1. λ0=500nm の反射を消す最小の正の膜厚を求めよ.

  2. 膜厚を2倍にしたときの反射率を求めよ.

屈折率1の空気,屈折率n_fが1.25の薄膜,屈折率n_sが1.5625の基板を示す.膜厚をtとし,光は垂直に入射する. 屈折率1の空気,屈折率n_fが1.25の薄膜,屈折率n_sが1.5625の基板を示す.膜厚をtとし,光は垂直に入射する.
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考え方 反射振幅の分子を0にする.

  1. r0=−1/9.分子0には e−iψ=−1,最小位相は ψ=π.分母は 1−1/81≠0 なので t=λ0/(4nf)=100nm である.

  2. t=200nm では ψ=2π なので r=(−2/9)/(1+1/81)=−9/41,反射率は 81/1681=0.0482.膜厚と反射率は単調な関係ではない.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

マイケルソン干渉計の一方に長さ ℓ=0.0500m の気体セルを置く.光はセルを往復し,温度一定で圧力 p に対し n−1=κp とする.λ0=500nm の光を用い,基準からの光路差を λ0 で割った符号付きの縞の本数 N を測った.基準は,セルを真空にし,窓を含む両腕の光学距離を等しく調整した状態とする.鏡には基準状態から一定のずれ ε があり得る(遠ざかる向きが正).窓の寄与は一定である.

p

N

0Pa

0.60

2.00×104Pa

8.60

6.00×104Pa

24.60

  1. N と p の関係から κ,ε を求めよ.

  2. ずれを無視し,p=2.00×104Pa の1点だけで κ を決めると,相対誤差はいくらか.

半透鏡から分かれる2本の腕を示す.一方の腕の気体セルの長さはℓで,光はセルを往復する.鏡の変位εの正方向は半透鏡から遠ざかる向きである. 半透鏡から分かれる2本の腕を示す.一方の腕の気体セルの長さはℓで,光はセルを往復する.鏡の変位εの正方向は半透鏡から遠ざかる向きである.
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考え方 傾きから気体の変化を,切片から鏡のずれを決める.

  1. 光路差の変化は Δ=2ℓκp+2ε.N=Δ/λ0 だから傾きは 2ℓκ/λ0,切片は 2ε/λ0.表の傾きは 8.00/(2.00×104Pa)=4.00×10−4Pa−1 で各区間で一致する.κ=λ0(4.00×10−4Pa−1)/(2ℓ)=2.00×10−9Pa−1,ε=0.60λ0/2=0.15μm.

  2. 1点からの値は κ′=Nλ0/(2ℓp)=2.15×10−9Pa−1.相対誤差は (κ′−κ)/κ=0.075,7.5 %の過大評価となる.p=0 のずれは気体の寄与ではない.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

2スリットの横座標を ±d/2,スクリーンの横座標を x とする.点光源はスリットの前方 D=0.600m,横座標 s にある.各光源の2スリット経由の振幅は等しい.

  1. 小角近似で全光路差を求め,光源を s=0.300mm へ移したときの中央明線の位置を求めよ.

  2. 点光源を,同じ強さで位相が無相関な2光源 s=±s0 に置き換える.縞が消える最小の正の s0 を求めよ.

上段は横座標sの1光源,下段は横座標±s₀の無相関な2光源の配置である.光源からスリットまでD,スリットからスクリーンまでLをとる. 上段は横座標sの1光源,下段は横座標±s₀の無相関な2光源の配置である.光源からスリットまでD,スリットからスクリーンまでLをとる.
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考え方 光源側の差も数え,無相関な光源の強さを足す.

  1. D2+u2≈D+u2/(2D) を使うと,上側から下側を引いた入射側の差は [(s−d/2)2−(s+d/2)2]/(2D)=−ds/D.出射側も同様に −dx/L だから Δ=−d(s/D+x/L).中央明線は Δ=0 より x=−Ls/D=−0.600mm で,光源と反対側へ移る.

  2. 片スリットからの強さを I0,ϕ=2πdx/(Lλ0),η=2πds0/(Dλ0) とする.複素振幅を足すと I±=I0|1+e−i(ϕ±η)|2=2I0[1+cos⁡(ϕ±η)].無相関なので交差項の平均は0で,合計は I++I−=4I0(1+cos⁡ϕcos⁡η).縞が消える最小条件は η=π/2 だから s0=Dλ0/(4d)=0.225mm.近似条件は d/D,|s|/D,d/L,|x|/L が十分小さいことである.

ポイント 教える人へ

  • 光路差と反射の位相を数えさせます.

  • 暗線の振幅条件を問います.

  • 無相関な光源では強さを足す理由を問います.

10回折と回折格子

問い

CD の裏面を光にかざすと,虹のような色の帯が見えます.傾ける角度を変えると,同じ場所の色が赤から青へ変わり,帯は1組だけでなく外側にもう1組見えることがあります.CD には色を塗ってあるわけではありません.この色はどこから来るのでしょうか.

考えてみる

色が分かれるといえば,まずプリズムを思い浮かべます.しかしプリズムの分散は屈折率がわずかに波長によることから来るので,色の広がりは数度ほどで,2組目の虹は出ません.CD の色は見る角度で大きく変わり,しかも何組も現れます.手がかりは溝が規則正しく並んでいることです.前の題材では,2つのスリットからの光が重なると,光路差が波長の整数倍の向きで強め合いました.すき間が2つでなく何万も並ぶと何が起こるでしょうか.そもそも1つのすき間を通った光は,どう広がるのでしょうか.

光がすき間の後ろで幾何光学の影の中まで回り込むことを回折といいます.回折も干渉も,波を重ね合わせた結果であることに変わりはありません.ただ,重ねる波の数が多くなるので,足し算の仕方を工夫します.

位相の矢印を足す

第25章のホイヘンスの原理では,波面の各点がそれぞれ新しい波を出すと考えました.すき間を通る光も,すき間の中の各点から出た波の重ね合わせとして扱えます.遠くの1点で,それぞれの波は同じ振幅で届き,道のりの違いの分だけ位相がずれています.

第7章と前の題材のとおり,振動を複素数(時間因子 eiωt を掛けて実部をとる)で表すと,道のり r を進んだ波の複素振幅は Ae−ikr(k=2π/λ)です.複素数は平面上の矢印なので,重ね合わせは位相の矢印を次々につなぐことになります.各矢印の長さは振幅,向きは位相で,つないだ始点から終点までの矢印が合成の振幅です.光の強さはその長さの2乗に比例します.

ポイント 位相の矢印の足し算

多くの波が1点で重なるとき,各波を長さが振幅,向きが位相の矢印で表し,順につなぐ.始点から終点への矢印が合成の振幅で,強さはその長さの2乗に比例する.光路差 Δ は位相差 2πΔ/λ に当たる.

以下では,すき間からスクリーンまでの距離 L が十分大きく,各点からの光線をすべて平行とみなせる場合(遠方回折,フラウンホーファー回折)を考えます.すき間の全体の幅を w とすると,この近似の条件は w2/(λL) が1より十分小さいことです.これは,すき間の端と中央から観測点までの道のりを平行光線の値で近似したときの誤差(w2/(8L) 程度)が,波長に比べて小さいということです.w=1mm,λ=500nm なら L は数 m 以上必要です.すき間の直後に凸レンズを置けば,同じ向きの平行光線はレンズの焦点面の1点 x=ftan⁡θ に集まるので,焦点面に遠方回折の像がそのまま現れます.条件が破れる近い所の回折(フレネル回折)は,この本では扱いません.

回折格子

細いスリットを間隔 d で N 本並べたものを回折格子といい,d を格子定数といいます.垂直に入射した光を角 θ の向きで見ると,隣のスリットとの光路差は dsin⁡θ で,隣どうしの位相差は

ϕ=2πdsin⁡θλ

です.N 本の矢印は,同じ長さで,1本ごとに ϕ ずつ向きを変えてつながります.

ϕ が 2π の整数倍なら,矢印はすべて同じ向きで,合成の振幅は1本の N 倍,強さは N2 倍になります.これが主極大です.ϕ がそこから少しずれると,矢印の列は正多角形の一部のように曲がっていきます.Nϕ がちょうど 2π になると,矢印は1周して閉じ,合成は0になります.つまり主極大のすぐ隣に,ϕ が 2π/N ずれただけで暗くなる所があります.N が大きいほど,主極大は鋭くなります.

[図:回折格子の位相の矢印と強さ]

初期状態はN=6,φ=0.20πで,6本の青い矢印が曲がってつながり,橙の矢印が合成を示す.φを変えると矢印の列とグラフ上の点が連動し,Nを2〜20で変えると主極大の鋭さが変わる.I₁は1本だけの強さで,縦軸の上端はN²である.

法則 回折格子の主極大

格子定数 d の回折格子に垂直に光を当てると,強い光が出る向き θ は

dsin⁡θ=mλ(m=0,±1,±2,…)

である.m を次数という.主極大の角の幅(中心から隣の暗線まで)は,sin⁡θ で測って λ/(Nd) で,格子の全体の幅 Nd で決まる.

|sin⁡θ|≤1 なので,現れる次数は |m|≤d/λ の範囲だけです.主極大の間には N−1 個の暗線と,ずっと弱い N−2 個の小さな山があります.強さの式 I=I1sin2⁡(Nϕ/2)/sin2⁡(ϕ/2) は数学の節で導きます.N=2 なら前の題材のヤングの実験です.ヤングの縞は cos2 形でゆるやかに明暗をくり返しますが,N が大きい格子では細く明るい線が暗い背景に並びます.

光を斜めに入射角 α で当てると,入射の側でも隣どうしに光路差 dsin⁡α があります.角を法線から同じ向きに符号つきで測ると,条件は d(sin⁡θ−sin⁡α)=mλ です.CD のような反射格子でも同じ考え方で,0次(m=0)はふつうの鏡の反射の向きになります.

分光と分解能

主極大の向きは波長によるので,白色光を当てると,0次以外では色ごとに違う向きへ分かれます.これが分光です.0次はどの波長でも θ=0 なので白いままです.プリズムと違い,波長と角の関係が d だけで決まるので,角を測れば波長が精密に求まります.

近い2つの波長 λ と λ+δλ を見分けられるかは,2つの主極大のずれと,主極大の幅の比べっこです.m 次の主極大は dsin⁡θ で測って mδλ だけずれ,幅は λ/N です.一方の主極大がもう一方の隣の暗線まで離れたら見分けられる,という目安(レイリーの基準)を使うと,次の結果になります.

定理 回折格子の分解能

N 本の格子の m 次の光で,波長の差 δλ を見分けられる条件は

λδλ≤|m|N

ナトリウムの黄色い光は 589.0nm と 589.6nm の2本で,λ/δλ は約1000です.1次の光なら,照らされた本数が1000本ほどあれば2本に分かれて見えます.大事なのは本数で,格子定数ではありません.

1つのすき間の回折

幅 a の1本のスリットを考えます.すき間を細かく分け,各部分から出る小さな波を足します.角 θ の向きでは,すき間の両端の光路差は asin⁡θ,位相差は 2πasin⁡θ/λ です.小さな矢印を無数につなぐと,矢印の列は円弧になります.弧の長さは向きによらず,θ=0 のときの合成の振幅に等しく,両端の矢印の向きの差が 2πasin⁡θ/λ です.

[図:単スリットの光路差と位相の円弧]

初期状態はθ=0で,光線は法線方向へ進み,位相の矢印はまっすぐ並ぶ.a=4λに固定してθを変えると,両端の光路差a sinθと位相の円弧が連動する.最初の暗線では円弧が1周して合成が0になり,1周半では小さな合成が残る.

両端の位相差が 2π になると,弧はちょうど1周の円になって閉じ,合成は0です.つまり最初の暗線は asin⁡θ=λ です.これは次のようにも分かります.すき間を上半分と下半分に分けると,上半分の各点と,そこから a/2 下の点の光路差がちょうど λ/2 で,すべての組が打ち消し合います.同じように 2 周,3 周で閉じるので,暗線は

asin⁡θ=mλ(m=±1,±2,…)

です.m=0 は暗線ではなく,いちばん明るい中央の山です.格子の主極大の式と形が同じですが,意味は逆なので注意してください.

中央の明るい山は sin⁡θ=±λ/a の間に広がります.すき間を狭くするほど光は広がります.すき間が波長よりずっと広ければ λ/a は小さく,光はほぼまっすぐ進んで,幾何光学の影ができます.これが幾何光学の成り立つ条件です.強さの分布は I=I0(sin⁡β/β)2,β=πasin⁡θ/λ で,数学の節で導きます.中央の外側の山は中央の5 %ほどしかありません.

実際のスリットは幅をもつので,ヤングの実験や回折格子の強さは,1本のスリットの回折の山(包絡線)と,スリットどうしの干渉の掛け算になります.各スリットの中の足し算は,どのスリットでも同じで,スリットの位置の分だけ位相がずれるだけだからです.干渉の主極大が包絡線の暗線と重なると,その次数の明線は消えます.たとえば d=3a なら ±3 次,±6 次が欠けます.

円い穴と見分けられる限界

レンズや望遠鏡の筒の口は円い穴です.直径 D の円い穴の遠方回折では,中央の明るい円板のまわりに暗い輪ができ,最初の暗い輪は sin⁡θ≈1.22λ/D にあります(係数1.22は円の形から出る数で,ここでは結果だけ使います).星のような点光源でも,像は大きさをもった円板になります.

2つの点光源の像の円板が重なると,見分けられなくなります.レイリーの基準で,片方の中心が他方の最初の暗い輪に来るまで離れていれば見分けられるとすると,見分けられる最小の角は

θmin≈1.22λD

です.これを回折限界といいます.焦点距離 f のレンズで作る像では,円板の半径は 1.22λf/D です.倍率を上げても,回折の円板も同じように拡大されるので,見分けられる角は変わりません.細かいものを見分けるには,口径を大きくするか,波長を短くするしかありません.ここでの λ は光が進む媒質の中の波長で,屈折率 n の中では真空の波長の 1/n です.人の瞳(直径 3mm ほど)で λ=550nm なら θmin≈2×10−4rad,10 m 先で 2mm ほどの間隔です.

X 線の結晶回折

結晶の中では原子が規則正しく並んでいて,原子間の距離は 0.1nm 程度です.可視光には細かすぎますが,波長がそれと同じくらいの X 線にとっては,立体的な回折格子になります.原子が並んだ平行な面(格子面)の間隔を d とし,X 線が格子面となす角を θ とします.各面で鏡のように反射した X 線が強め合う条件は,隣の面との光路差 2dsin⁡θ が波長の整数倍になることです.

間隔dの平行な格子面にX線が面となす角θで入射し,同じ角で反射する.進行方向は入射側から格子面へ,反射側では格子面から外へ向く.緑の補助線は光線と垂直で,下の面で反射する光線の余分な道のりを橙の太線で示す.それぞれd sinθで,合計は2d sinθである. 間隔dの平行な格子面にX線が面となす角θで入射し,同じ角で反射する.進行方向は入射側から格子面へ,反射側では格子面から外へ向く.緑の補助線は光線と垂直で,下の面で反射する光線の余分な道のりを橙の太線で示す.それぞれd sinθで,合計は2d sinθである.

法則 ブラッグの条件

格子面の間隔 d,格子面と X 線のなす角 θ について,反射した X 線が強め合う条件は

2dsin⁡θ=mλ(m=1,2,…)

角 θ は面の法線からではなく,面から測ることに注意してください.入試では整数を n と書くことが多いですが,この章では n を屈折率に使うので m と書きます.X 線の波長が分かっていれば結晶の面の間隔が,間隔が分かっていれば波長が測れます.第29章では,電子を結晶に当てても同じ条件で回折が起こることを見ます.

問いに戻る

CD の溝は間隔 d=1.6μm の反射の回折格子です.白色光をほぼ垂直に当てたとき,1次の光が強め合う向きは sin⁡θ=λ/d で,紫(400nm)では θ≈14∘,赤(700nm)では θ≈26∘ です.見る角度によって,その向きで強め合う色が変わるので,傾けると色が移ります.d/λ は2〜4なので2次(紫 30∘,赤 61∘)や3次も出て,外側にもう1組の虹が見えます.溝が何万本もあるので,主極大は鋭く,色が鮮やかに分かれます.

ポイント ここまでのまとめ

  • 回折は多くの波の重ね合わせで,位相の矢印をつないで合成する.遠方回折の条件は w2/(λL) が1より十分小さいこと.

  • 回折格子の主極大は dsin⁡θ=mλ(斜め入射では d(sin⁡θ−sin⁡α)=mλ).本数 N が多いほど鋭く,分解能は λ/δλ≤|m|N.

  • 幅 a の単スリットの暗線は asin⁡θ=mλ(m≠0).狭いほど広がる.幅をもつスリットの列では,包絡線の暗線と重なる明線が欠ける.

  • 円い穴の回折限界は 1.22λ/D.倍率では改善しない.

  • X 線の結晶回折はブラッグの条件 2dsin⁡θ=mλ(θ は面から測る).

  • CD の虹色は,溝の列が作る回折格子の分光である.

11位相の矢印の和と回折の強さ

本体の節で図に描いた位相の矢印の足し算を複素数で実行し,回折格子と単スリットの強さの分布を導きます.道具は等比級数の和と,和を積分に直すことです.

回折格子の強さ

定理 数学の道具:等比級数で位相の矢印を足す

同じ長さで,1本ごとに向きが ϕ ずつ変わる N 本の矢印の和は,公比 eiϕ の等比級数で

S=∑j=0N−1eijϕ=1−eiNϕ1−eiϕ=ei(N−1)ϕ/2sin⁡(Nϕ/2)sin⁡(ϕ/2)

である.したがって

|S|2=sin2⁡(Nϕ/2)sin2⁡(ϕ/2)

で,ϕ=2πm(m は整数)では |S|2=N2 となる.

導き方を示します.x を実数として,1−eix=eix/2(e−ix/2−eix/2)=−2ieix/2sin⁡(x/2) です.分子は x=Nϕ,分母は x=ϕ として割ると,−2i が消えて上の形になります.前の因子 ei(N−1)ϕ/2 は大きさ1なので,強さには効きません.

ϕ=2πm では分子も分母も0ですが,ϕ=2πm+ϵ と置くと,ϵ が小さいとき比の2乗は N2 に近づきます(矢印がすべてそろう).分子だけが0になる Nϕ=2πp(p は N の倍数でない整数)が暗線で,主極大の隣の暗線 ϕ=2πm±2π/N は本体の節の「矢印が1周して閉じる」所です.

1本のスリットだけによる強さを I1 とすると,N 本の格子の強さは

I=I1sin2⁡(Nϕ/2)sin2⁡(ϕ/2),ϕ=2πdsin⁡θλ

です.位相の遅れを e−ijϕ と数えても |S|2 は変わりません.N=2 では sin⁡ϕ=2sin⁡(ϕ/2)cos⁡(ϕ/2) から |S|2=4cos2⁡(ϕ/2) となり,前の題材のヤングの実験の強さに戻ります.

練習1 N=3 の格子で,ϕ=0 と ϕ=2π の間にある暗線の ϕ を求めよ.また ϕ=π の強さは主極大の何倍か.矢印の図でも確かめよ.

答え 練習1:3ϕ=2πp で p=1,2,つまり ϕ=2π/3,4π/3(N−1=2 個).ϕ=π では |S|2=sin2⁡(3π/2)/sin2⁡(π/2)=1 で,主極大の N2=9 の 1/9 倍.矢印は右,左,右の順につながり,合成は1本分が残る.これが小さな山である.

単スリットの強さ

定理 数学の道具:和を積分に直す

幅 a のスリットの中の位置を s(−a/2≤s≤a/2)とし,単位の幅あたりの振幅を一定の A0/a とする.遠方の角 θ の向きでは,位置 s から出る波の道のりは中央からのものより ssin⁡θ だけ短いので,合成の複素振幅は(共通の位相を除いて)

A0a∫−a/2a/2eikssin⁡θds=A0sin⁡ββ,β=πasin⁡θλ

である.強さは

I=I0(sin⁡ββ)2

で,I0 は中央(β=0)の強さである.

u=ksin⁡θ と置くと,∫−a/2a/2eiusds=eiua/2−e−iua/2iu=2sin⁡(ua/2)u で,ua/2=πasin⁡θ/λ=β なので asin⁡β/β になります.β→0 では sin⁡β/β→1 です.暗線は sin⁡β=0,β≠0,つまり β=mπ(asin⁡θ=mλ,m≠0)で,本体の節の結果と一致します.

本体の節の円弧の図からも同じ結果が出ます.長さ A0 の弧の両端の向きの差が 2β なので,円の半径は R=A0/(2β),弦の長さは 2Rsin⁡β=A0sin⁡β/β です.幅 a を N 個の点に分けて格子の式で N を大きくしても,同じ形に近づきます.

横軸はβ/πで−3から3,縦軸はI/I₀である.中央の強さは1で,β=±π,±2π,±3πの暗線を丸印で示す.最初の小さな山の強さは約0.047で,中央の山に比べて低い. 横軸はβ/πで−3から3,縦軸はI/I₀である.中央の強さは1で,β=±π,±2π,±3πの暗線を丸印で示す.最初の小さな山の強さは約0.047で,中央の山に比べて低い.

練習2 最初の小さな山は,ほぼ β=3π/2 にあるとみなせる.その強さは中央の何倍か.

答え 練習2:(sin⁡(3π/2)/(3π/2))2=4/(9π2)≈0.045.正確な山の位置は tan⁡β=β の解 β≈1.43π で,強さは約0.047倍である.中央の山にほとんどの光が集まっている.

幅をもつスリットの列

幅 a のスリットを間隔 d で N 本並べると,j 番目のスリットからの寄与は,0番目のスリットの積分 A0sin⁡β/β に,位置のずれ jd による位相 eijϕ を掛けたものです.すべて足すと,共通の A0sin⁡β/β がくくり出せて

I=I1(sin⁡ββ)2sin2⁡(Nϕ/2)sin2⁡(ϕ/2),β=πasin⁡θλ,ϕ=2πdsin⁡θλ

となります.I1 は1本のスリットの中央の強さです.第1の因子が単スリットの回折の包絡線,第2の因子がスリットどうしの干渉で,本体の節の「欠ける次数」(m=pd/a,p は0でない整数)はこの積から分かります.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

1 mm あたり500本の溝をもつ透過型の回折格子に,波長 400nm から 700nm の白色光を垂直に当てる.

  1. 可視光のスペクトルが全部そろって現れる最大の次数を求めよ.また3次の光として現れる波長の範囲を求めよ.

  2. 2次と3次のスペクトルは重なるか.重なるなら,同じ向きに出る2次の光と3次の光の波長の範囲をそれぞれ求めよ.

白色光が回折格子に垂直に入射する.透過側では0次が白いまま直進し,1次,2次,3次のスペクトルが扇形に広がる.指定された扇の重なりを網かけで示す模式図である.角度や波長の境界値は示さず,色帯は模式的な表示とする. 白色光が回折格子に垂直に入射する.透過側では0次が白いまま直進し,1次,2次,3次のスペクトルが扇形に広がる.指定された扇の重なりを網かけで示す模式図である.角度や波長の境界値は示さず,色帯は模式的な表示とする.
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考え方 格子定数は d=1mm/500=2.00μm.m 次で波長 λ の光は sin⁡θ=mλ/d の向きに出る.sin⁡θ で並べれば,各次数のスペクトルは区間になる.

  1. 全部そろうには,最も長い 700nm の光でも mλ/d≤1 であればよい.d/λ=2000/700≈2.86 より,最大の次数は2である.3次で現れるのは 3λ/d<1,つまり λ<667nm の光で,3次のスペクトルは 400nm から 667nm まで(赤の端が欠ける).

  2. sin⁡θ の区間は,2次が 0.400 から 0.700,3次が 0.600 から1未満である.0.600 から 0.700 が重なる.この範囲の2次の光は λ=dsin⁡θ/2 より 600nm から 700nm,3次の光は λ=dsin⁡θ/3 より 400nm から 467nm である.たとえば2次の 600nm と3次の 400nm は同じ向きに出る.

確かめ:1次の区間は 0.200 から 0.350 で,2次とは重ならない.一般に m 次の赤の端と (m+1) 次の紫の端を比べると,700m と 400(m+1) の大小で決まり,m≥2 では必ず重なる.格子で波長を測るとき,高い次数では別の次数の光と取り違えないよう注意が要る.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

ナトリウムの D 線は λ1=589.0nm と λ2=589.6nm の2本である.1 mm あたり600本の溝をもつ透過型の回折格子に垂直に当て,1次の光を観察する.分解はレイリーの基準で判定する.

  1. 2本を見分けるには,格子の何 mm 以上の幅を照らす必要があるか.

  2. 1次で2本の光が出る向きの角の差を求めよ.

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考え方 分解できるかは本数 N で決まる(λ/δλ≤mN).角の差は dsin⁡θ=mλ を λ で微分して出す.

  1. λ/δλ=589.0/0.6≈982 で,m=1 なので N≥982 本が必要である.格子定数は d=1mm/600=1.667μm なので,照らす幅は Nd≥982/600mm≈1.64mm.

  2. sin⁡θ=λ/d=589.0/1666.7≈0.3534 より θ≈20.7∘,cos⁡θ≈0.935.dcos⁡θdθ=mdλ より

δθ=δλdcos⁡θ=0.6×10−91.667×10−6×0.935rad≈3.8×10−4rad

で,約 0.022∘ である.

確かめ:照らす幅が 1.64mm のとき,主極大の角の幅(中心から隣の暗線まで)は sin⁡θ で λ/(Nd),角では λ/(Ndcos⁡θ)≈589×10−9/(1.64×10−3×0.935)≈3.8×10−4rad で,(2) の角の差とほぼ一致する.これがレイリーの基準の意味である.微分で角の差を出したのは δλ/λ≈10−3 が十分小さいからである.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

幅 a=0.10mm のスリットに波長 λ=600nm の平行光を垂直に当て,L=2.0m 離れたスクリーンで観察する.スクリーン上の中央からの距離を x とする.

  1. 中央の明るい部分の幅(両側の最初の暗線の間隔)を求めよ.

  2. x=3.0mm の点の強さは,中央の強さの何倍か.

  3. 一様な入射光の強さを変えずにスリットの幅を半分にすると,中央の明るい部分の幅と中央の強さはそれぞれ何倍になるか.スリットを通る光の量との関係から確かめよ.

幅aのスリットに平行光が垂直に入射し,距離Lのスクリーンに届く.中央Oから上向きを正とする座標xと,法線から測った観測方向θを示す.スクリーン右側の山は強さの分布を模式的に表す.暗線の座標や中央の明るい部分の幅,求める強さの比は示していない. 幅aのスリットに平行光が垂直に入射し,距離Lのスクリーンに届く.中央Oから上向きを正とする座標xと,法線から測った観測方向θを示す.スクリーン右側の山は強さの分布を模式的に表す.暗線の座標や中央の明るい部分の幅,求める強さの比は示していない.
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考え方 θ が小さいので sin⁡θ≈tan⁡θ=x/L.単スリットの強さ I=I0(sin⁡β/β)2,β=πax/(λL) を使う.

  1. 最初の暗線は asin⁡θ=±λ,つまり x=±Lλ/a.幅は

2Lλa=2×2.0×600×10−90.10×10−3m=2.4×10−2m

で,24mm である.

  1. β=π×0.10×10−3×3.0×10−3600×10−9×2.0=π4.したがって

II0=(sin⁡(π/4)π/4)2=8π2≈0.81
  1. 幅は 2Lλ/a なので2倍の 48mm になる.中央では矢印がすべてそろい,合成の振幅は矢印の総和の長さ,つまりスリットの幅 a に比例する.強さはその2乗で,1/4 倍になる.

確かめ:スリットを通る光の量(スクリーンに届く全体の光の量)は幅 a に比例する.全体の量はおよそ「中央の強さ×中央の幅」なので,a2×(1/a)=a となって比例関係が合う.遠方回折の条件は a2/(λL)=(10−4)2/(6×10−7×2.0)≈8×10−3 で,1より十分小さい.sin⁡θ≈x/L の誤差も,x/L が 10−2 以下なので無視できる.

ポイント ここまでのまとめ

  • 同じ長さで ϕ ずつ向きを変える N 本の矢印の和は等比級数で,|S|2=sin2⁡(Nϕ/2)/sin2⁡(ϕ/2).主極大で N2,Nϕ=2πp で0.

  • 単スリットは和を積分に直して I=I0(sin⁡β/β)2,β=πasin⁡θ/λ.円弧の弦の長さからも同じ結果が出る.

  • 幅をもつスリットの列の強さは,単スリットの包絡線と干渉の因子の積.

  • 格子の次数は sin⁡θ の区間で考え,高い次数ではスペクトルが重なる.分解は本数で,角の差は dsin⁡θ=mλ の微分で求める.

12回折と光の分解能の演習

光路差から次数と欠ける明線を調べます.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

格子定数 d=2.40μm の透過格子に,波長 λ=640nm の光を垂直入射させます.主極大は dsin⁡θ=mλ に現れ,スリット幅の影響を無視します.格子面に沿う方向は除きます.

  1. 全次数と,0次を含む総数を求めよ.

  2. 正の最大次数の回折角を求めよ.

格子定数dが2.40 μmの透過格子へ,波長640 nmの光を垂直に入射する.透過側の法線と,観測方向の角θを示す. 格子定数dが2.40 μmの透過格子へ,波長640 nmの光を垂直に入射する.透過側の法線と,観測方向の角θを示す.
解答を見る

考え方 正弦の範囲から整数を選ぶ.

  1. |sin⁡θ|<1 より |m|<d/λ=3.75.m=0,±1,±2,±3 の7本である.

  2. sin⁡θ=3λ/d=0.800 より θ=53.1∘.角度は無次元の比 λ/d で決まる.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

距離 L=2.0km の2点光源が,視線に垂直に s=3.0cm 離れています.波長は λ=600nm,円形開口の直径は D です.角間隔が 1.22λ/D 以上なら分解でき,収差と大気の影響を無視します.

  1. 必要な D の最小値を求めよ.

  2. D=8.0cm から同心の絞りで 4.0cm にすると分解できるか.倍率で改善するか.

間隔sが3.0 cmの2点光源を,距離Lが2.0 kmの望遠鏡で見る.正面図は直径Dの円形開口と,同心の絞りを示す.寸法Dは外円の直径,網掛けは同心の絞りの遮光部分を表す. 間隔sが3.0 cmの2点光源を,距離Lが2.0 kmの望遠鏡で見る.正面図は直径Dの円形開口と,同心の絞りを示す.寸法Dは外円の直径,網掛けは同心の絞りの遮光部分を表す.
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考え方 光源の角間隔と開口の限界を比較する.

  1. 角間隔は s/L=1.5×10−5.s/L≥1.22λ/D より D≥1.22λL/s=4.9cm である.

  2. 絞る前は分解できる.絞った後は 1.22λL/D=3.7cm なので分解できない.倍率で回折像も拡大し,限界は改善しない.近軸近似には s/L,λ/D が十分小さいことが必要である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

波長 λ=0.120nm のX線を結晶に当てます.θ は結晶面と入射方向の角です.表の r が同じ面間隔 d の次数か,2dsin⁡θ=rλ で調べます.

r

1

2

3

sin⁡θ

0.200

0.400

0.600

  1. r を横軸としたグラフの傾きから d を求めよ.

  2. 3次の sin⁡θ の不確かさが ±0.004 のとき,この1点から求める d の不確かさを一次近似で求めよ.波長は正確とします.

間隔dの結晶面に対する角θでX線を入射する.下のグラフには次数rとsin θの測定3点のみを示す. 間隔dの結晶面に対する角θでX線を入射する.下のグラフには次数rとsin θの測定3点のみを示す.
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考え方 原点を通る直線かを確かめ,傾きから面間隔を求める.

  1. sin⁡θ=λr/(2d) の傾きは q=0.200.3点は原点を通る直線上にあり,模型に合う.d=λ/(2q)=0.300nm である.

  2. u=sin⁡θ とすれば d=3λ/(2u),dddu=−3λ/(2u2).δd/d≈δu/u=0.004/0.600 より d=(0.300±0.002)nm.微分の符号から角度が大きいほど推定値は小さく,近似条件は 1≫δu/u である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

幅 a,中心間隔 d=3a の同じ2スリットを,単色光で同位相・同強度に照らします.遠方の強度は

I(θ)=Ic(sin⁡ββ)2cos2⁡(πdsin⁡θλ),β=πasin⁡θλ

です.Ic は中央強度,β=0 の比は1,a>λ とします.

  1. 干渉条件 dsin⁡θ=mλ のうち消える次数と,単スリットの中央の2暗線の間に残る次数の数を求めよ.

  2. m=1 の方向の I/Ic を求めよ.

同じ幅aの2スリットの中心間隔はdが3aである.垂直入射光,法線,観測方向θを示す. 同じ幅aの2スリットの中心間隔はdが3aである.垂直入射光,法線,観測方向θを示す.
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考え方 単スリット因子が0なら,干渉の明線も消える.

  1. 暗線は asin⁡θ=pλ,p≠0 は整数である.干渉条件と合わせると m=3p だから,存在する ±3,±6,… が消える.0次は消えない.中央は |asin⁡θ|<λ より |m|<3,残るのは 0,±1,±2 の5本である.

  2. β=π/3,干渉因子は1より I/Ic=(sin⁡β/β)2=27/(4π2)≈0.684.包絡線のため厳密な極大とは限らない.距離 L での遠方近似には,全幅 w=d+a に対して 1≫w2/(λL) が必要である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

透過格子を x 軸上に並べ,透過側への法線を +z とします.xz 面内の入射・観測方向の角を,法線から +x へ符号つきで α,θ と測ります.d=2.0μm,λ=600nm,α=30∘ とし,スリット幅は無視します.

  1. 入射位相と観測点への光路差を含め,隣接複素振幅の比から主極大条件を導け.

  2. 格子面に沿う方向を除き,全次数と両端の回折角を求めよ.

透過格子をx軸に並べ,透過側への法線を+zとする.αとθは,進行方向と+zとの角を+xへ正として測る. 透過格子をx軸に並べ,透過側への法線を+zとする.αとθは,進行方向と+zとの角を+xへ正として測る.
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考え方 斜め入射では入射時にも位相差がある.

  1. 時間因子を eiωt,波数を k=2π/λ とする.+x へ d 離れると入射位相は −kdsin⁡α,観測点への距離による位相は +kdsin⁡θ だけ変わる.比は eiϕ,ϕ=kd(sin⁡θ−sin⁡α).ϕ=2πm より d(sin⁡θ−sin⁡α)=mλ を得る.

  2. sin⁡θ=0.50+0.30m だから −5<m<5/3.次数は −4,−3,−2,−1,0,1 の6本で,両端は θ−4=arcsin⁡(−0.70)≈−44∘,θ1=arcsin⁡0.80≈53∘.m=−5 は格子面に沿うので除く.0次では θ=α となり,直進を再現する.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

垂直入射で同じ複素振幅 A を出す N≥2 本の細いスリットがあり,間隔は d,隣接位相差は ϕ=2πdsin⁡θ/λ です.一方の主極大が他方の最初の暗線に達したら分解できるとします.

  1. 等比級数 A∑j=0N−1eijϕ から,主極大近傍の最初の暗線と,近い2波長 λ,λ+δλ の分解条件を導け.

  2. N=2500,d=2.0μm,λ=600.0nm,δλ=0.10nm で,分解できる最小の正の次数を求めよ.照明する本数が半分ならどうか.

間隔dの細いスリットN本を同位相で垂直に照らす.各スリットの複素振幅はAで,観測方向を法線との角θで表す. 間隔dの細いスリットN本を同位相で垂直に照らす.各スリットの複素振幅はAで,観測方向を法線との角θで表す.
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考え方 線の間隔と幅を比較する.

  1. 和は A(1−eiNϕ)/(1−eiϕ),強度は |A|2sin2⁡(Nϕ/2)/sin2⁡(ϕ/2) に比例する.主極大 ϕ=2πm の振幅は NA,隣の暗線は ϕ=2πm±2π/N.dsin⁡θ での半幅 λ/N と2波長の間隔 |m|δλ を比較し,|m|N≥λ/δλ を得る.

  2. 右辺は6000より m≥3.観測できる次数は m<d/(λ+δλ)≈3.33 より1〜3で,答えは3次.1250本では3次でも3750で分解できない.近似条件は 1≫δλ/λ である.

ポイント 教える人へ

次数の上限を正弦の範囲から説明させます.
欠ける明線では干渉因子と回折因子を確かめさせます.
斜め入射の角の符号とブラッグ角の基準を問います.
分解能と倍率を区別し,近似条件を確認します.

13光の偏光

問い

晴れた日に湖の岸から水面を眺めると,空の光が照り返してまぶしく,水の中はよく見えません.ところが偏光サングラスをかけると,照り返しだけがすっと消え,水底の石や泳ぐ魚が見えてきます.ふつうのサングラスは全体を暗くするだけなのに,偏光サングラスはなぜ照り返しだけを選んで消せるのでしょうか.サングラスをかけたまま首を横に傾けると,照り返しがまた戻ってくるのはなぜでしょうか.

考えてみる

光の強さを減らすだけなら,色のついたガラスで足ります.照り返しだけを選んで消すには,照り返しの光が,水の中から来る光や空から直接来る光と何か違う性質をもっていなければなりません.照り返しも元は空の光で,色で選んでいるのではありません.

首を傾けると結果が変わることが手がかりです.光の進む向きを軸にして回すと何かが変わるのなら,光は進む向きに垂直な面の中に「向き」をもっていることになります.音の波は空気の粗密が進む向きに伝わる縦波で,進む向きのまわりに回しても何も変わりません.第26章で見たように,電磁波は電場 E と磁場 B が進む向きに垂直な横波です.進む向きに垂直な面の中で,電場がどちらを向いて振動するかという自由度が残ります.これが偏光です.

偏光の種類

定義 偏光

光の電場が振動する向きを偏光の向きという.電場がいつも1本の直線に沿って振動する光を直線偏光,電場の先端が円を描いて回る光を円偏光,楕円を描く光を楕円偏光という.磁場の向きは電場と進む向きから決まるので,偏光は電場の向きで表す.

z 方向に進む光の電場は,x 成分と y 成分の2つの正弦波の重ね合わせで書けます.

Ex=Axcos⁡(ωt−kz),Ey=Aycos⁡(ωt−kz−δ)

2つの成分の位相差 δ が0か π なら,Ey/Ex はいつも一定で,電場は直線に沿って振動します.直線偏光です.Ax=Ay で δ=π/2 なら,z=0 で Ex=Axcos⁡ωt,Ey=Axsin⁡ωt となり,電場は大きさを変えずに,光を迎える向きから見て反時計回りに回ります.円偏光は,同じ振幅で位相が 90∘ ずれた2つの直線偏光の和です.それ以外の組み合わせは楕円偏光になります.第7章の複素数で書けば,複素振幅の比 Aye−iδ/Ax が実数なら直線偏光,±i なら円偏光です.

[図:位相差と振幅比で変わる偏光]

初期状態はδ=π/2,A_y/A_x=1,ωt=π/4の円偏光である.z=0の面を光を迎える向きから見て,xを右,yを上に取る.位相差δと振幅比A_y/A_xを変えると,電場の先端の軌跡が直線,楕円,円に変わる.時刻ωtで電場の位置を確かめられる.

太陽や電球が出す光は,干渉の題材で見たように,たくさんの原子がばらばらに出した短い波の集まりです.偏光の向きも位相も,10−14s 程度より長い時間では保たれず,でたらめに入れ替わります.目や検出器は光の周期よりはるかに長い時間で平均するので,どの向きの成分も同じ強さに見えます.このような光を自然光(偏光していない光)といいます.自然光は,強さが半分ずつで,互いに位相の関係をもたない x 偏光と y 偏光の和と考えてかまいません.

偏光板とマリュスの法則

偏光板は,ある向きの電場の成分だけを通す板です.よく使われるのは,ヨウ素を含ませた高分子の鎖を一方向にそろえたものです.鎖に沿った電場は鎖の中の電子を鎖に沿って揺らし,そのエネルギーは吸収されてしまいます.鎖に垂直な電場では電子が動けないので,光はそのまま通ります.通す向きを透過軸といいます.マイクロ波では,波長より狭い間隔で平行に張った金属線が同じ働きをし,透過軸は線に垂直です.

振幅 E0 の直線偏光が,偏光の向きと角 θ をなす透過軸の偏光板に入るとします.電場を透過軸に沿う成分 E0cos⁡θ と,それに垂直な成分 E0sin⁡θ に分けると,通るのは前者だけです.第26章で見たとおり,光の強さは電場の振幅の2乗に比例します(I=12cε0E02).

法則 マリュスの法則

強さ I0 の直線偏光が,偏光の向きと角 θ をなす透過軸の理想的な偏光板を通ると,透過光の強さは

I=I0cos2⁡θ

で,透過光は透過軸の向きの直線偏光になる.自然光が理想的な偏光板を通ると,強さは半分の I0/2 になる.

自然光の場合は,偏光の向きがでたらめに入れ替わるので,cos2⁡θ の平均 1/2 が残ります.2枚の偏光板の透過軸を直交させると(直交ニコル),1枚目を通った光は2枚目で cos2⁡90∘=0 となり,真っ暗になります.

[図:偏光板の透過軸への射影とマリュスの法則]

初期状態では2枚目の透過軸が鉛直から45°傾き,1枚目を通った光の強さの半分が透過する.上段の板と電場は光に垂直な面を正面から描いたもの.θを変えると,電場E_0の透過軸への射影E_0 cosθと,相対的な透過光の強さcos²θが変わる.

ここで「理想的」とは,透過軸に沿う成分を損失なく通し,垂直な成分を完全に止めることです.実際の偏光板は,透過軸に沿う光でも1割ほどを吸収し,垂直な成分もわずかに通します.また,強さの式は光の周期にわたって平均した値なので,偏光板を回すなら,その角速度が光の角振動数より十分小さいことが前提です.

反射光の偏光

偏光サングラスの話に戻るために,水面やガラスで反射した光の偏光を考えます.第26章と同じく,光の進む向きと境界面の法線を含む面を入射面とし,電場が入射面に垂直な成分をs偏光,入射面内にある成分をp偏光と呼びます.水面に斜めに入る光では,s偏光の電場は水平です.

第26章で見たように,反射率は偏光によって違い,p偏光の反射率はある入射角(ブルースター角)で0になります.理由を思い出しておきます.反射光は,屈折光の電場に揺すられた水の中の電子が出す光です.p偏光では,電子は入射面内で屈折光の進む向きに垂直に揺れ,揺れる電荷はその向きには光を出しません.反射光の向きが屈折光の向きと直交していれば,反射光の向きはちょうど電子の揺れる向きと重なり,p偏光の反射光は出られなくなります.

入射面を紙面とする.入射光は空気から水へ進み,反射光と屈折光は直交する.屈折光のp偏光で揺れる電子の振動方向は,屈折光に垂直で反射方向と平行である.s偏光の電場は紙面に垂直な点で示す.θ_1とθ_2はそれぞれ法線から測る. 入射面を紙面とする.入射光は空気から水へ進み,反射光と屈折光は直交する.屈折光のp偏光で揺れる電子の振動方向は,屈折光に垂直で反射方向と平行である.s偏光の電場は紙面に垂直な点で示す.θ_1とθ_2はそれぞれ法線から測る.

反射光と屈折光が直交する条件は θ1+θ2=90∘ で,屈折の法則に sin⁡θ2=cos⁡θ1 を入れると,第26章のブルースター角が出ます.

定理 ブルースター角

屈折率 n1 の媒質から n2 の媒質へ入る光のp偏光の反射率は,入射角が

tan⁡θB=n2n1

を満たすとき0になる.このとき反射光と屈折光は直交し,自然光を入れても反射光はs偏光(電場が入射面に垂直)だけの直線偏光になる.

空気から水(n=1.33)なら θB=53∘ です.ちょうどこの角でなくても,その前後の広い範囲でp偏光の反射率はs偏光よりずっと小さいので,水面や道路の照り返しは,電場が水平な向きに強く偏っています.この結論は,表面が平らで,吸収の小さい(屈折率が実数とみなせる)物質の場合のものです.金属の反射では,p偏光の反射率は小さくなっても0にはなりません.

散乱光の偏光

青空の光も偏光しています.第26章で見たように,遠くの電荷が出す光の電場は,電荷の加速度のうち,見る向きに垂直な成分に比例します.空気の分子の電子は日光の電場 E に沿って揺れるので,向き s(単位ベクトル)に散乱される光の電場は

E−(E⋅s)s

に比例します.太陽と直角の向きの空を見ると,日光の電場のうち見る向きに沿った成分は散乱光に寄与せず,散乱光は太陽・散乱する場所・観測者を含む面に垂直な直線偏光になります.

左から進む日光が分子に当たり,真下の観測者へ散乱される.日光の電場のうち観測方向sに沿う成分は,その方向への散乱に寄与しない.紙面に垂直な成分だけが散乱光に残る.⊙は紙面の手前向きの電場を表す. 左から進む日光が分子に当たり,真下の観測者へ散乱される.日光の電場のうち観測方向sに沿う成分は,その方向への散乱に寄与しない.紙面に垂直な成分だけが散乱光に残る.⊙は紙面の手前向きの電場を表す.

実際の空では,一度散乱された光がさらに散乱されたり,地面で反射されたりするので,太陽と直角の向きでも偏光は完全ではなく,偏光している割合は最大でも7割ほどです.それでも偏光フィルターを回すと,太陽と直角の空が暗くなる向きがはっきり分かります.

複屈折と波長板(発展)

方解石や水晶のような結晶,引き伸ばしたプラスチックでは,電場の向きによって屈折率が違います.これを複屈折といいます.屈折率の小さい向きを進相軸,大きい向きを遅相軸と呼びます.厚さ d の板を,2つの軸の屈折率が ns,nf の板として光が垂直に通ると,2つの向きの成分の間に

δ=2πλ0(ns−nf)d

の位相差が生じます(λ0 は真空中の波長).δ=π/2 となる板を 1/4 波長板といい,軸と 45∘ をなす直線偏光を入れると,同じ振幅で位相が 90∘ ずれた2成分になるので,円偏光が出てきます.δ=π の 1/2 波長板は,軸と角 α をなす直線偏光を,反対側の −α の直線偏光に変えます.偏光の向きを 2α だけ回す板です.水晶では ns−nf≈0.009 なので,黄色の光(λ0=590nm)の 1/4 波長板の厚さは約 16μm です.

[図:1/4波長板で変わる偏光]

初期状態では進相軸と45°をなす直線偏光が1/4波長板を通り,円偏光になる.板の軸と出射光の電場の軌跡を,光を迎える向きから見た面で示す.入射方向を軸に近づけると楕円偏光になり,軸と平行なら直線偏光になる.時刻ωtで先端の位置を確かめられる.

砂糖の水溶液のように,分子の形が鏡に映すと重ならない(右手と左手のような)物質を通ると,直線偏光の向きが光路の長さと濃度に比例して回ります.これを旋光といい,回る角を測ると濃度が分かります.

液晶ディスプレイは偏光を巧みに使っています.棒状の液晶分子は複屈折をもち,2枚のガラスの間で分子の向きが少しずつ 90∘ ねじれるように並べてあります.ねじれがゆるやかで,複屈折による位相差が十分大きいとき,直線偏光の向きは分子のねじれについて回り,90∘ 回って出てきます.両側に透過軸を直交させた偏光板を置けば,光は通り,画素は明るく見えます.電圧をかけると分子が電場の向きに立ち,偏光は回らなくなって,2枚目の偏光板で止められます.画素ごとの電圧で回る角を調節し,明暗を作るのです.

問いに戻る

水面の照り返しは,入射角がブルースター角 53∘ の前後のとき,ほとんどs偏光,つまり電場が水平な直線偏光です.偏光サングラスのレンズは,透過軸を鉛直にした偏光板です.照り返しの水平な電場は透過軸に垂直なので,マリュスの法則で cos2⁡90∘=0 となり,ほとんど通りません.一方,水の中から来る光や景色からの光は自然光に近いので,半分が通ります.照り返しだけが選ばれて消えるのはこのためです.首を角 α だけ傾けると,透過軸と照り返しの電場のなす角が 90∘−α になり,照り返しの sin2⁡α の割合が通ってしまいます.スマホの画面が暗くなる角度があるのも,液晶の画面から出る光が直線偏光だからです.

ポイント ここまでのまとめ

  • 光は横波なので,電場の振動する向きという自由度をもつ.これが偏光で,直線偏光・円偏光・楕円偏光がある.円偏光は位相が 90∘ ずれた同じ振幅の2つの直線偏光の和である.

  • 自然光は偏光の向きがでたらめに入れ替わる光で,強さが半分ずつの無相関な2つの直線偏光の和とみなせる.

  • 偏光板は透過軸の成分だけを通す.マリュスの法則 I=I0cos2⁡θ.自然光は半分になる.

  • ブルースター角 tan⁡θB=n2/n1 ではp偏光が反射されず,反射光は電場が入射面に垂直な直線偏光になる.照り返しは電場が水平に偏っているので,透過軸が鉛直な偏光サングラスで消える.

  • 散乱光の電場は入射光の電場の,見る向きに垂直な成分に比例し,太陽と直角の空の光は強く偏光している.

14偏光の例題

本体の節の2つの考え方(電場を透過軸や入射面に対して成分に分けること,強さは振幅の2乗で決まること)を,偏光板の組み合わせ,水面の照り返し,液晶の画素に使います.どの例題でも,電場の向きを図に書き込んでから計算してください.

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

強さ I0 の自然光を,透過軸を鉛直にした偏光板 A に当て,その後ろに透過軸を水平にした偏光板 B を置く.偏光板はすべて理想的とする.

  1. B を通った光の強さを求めよ.

  2. A と B の間に,透過軸が鉛直と角 θ をなす偏光板 C を差し込む.B を通った光の強さを θ の関数で表し,最大になる θ と最大値を求めよ.

  3. θ=30∘ のとき,B を通った光の強さは I0 の何倍か.

強さI_0の自然光が,鉛直な透過軸のA,鉛直と角θをなす透過軸のC,水平な透過軸のBの順に進む.各板の透過軸と,AとCの間,CとBの間の電場の向きを示す.各板と電場の面は光に垂直で,正面から描いて並べている.透過光の強さは示さない. 強さI_0の自然光が,鉛直な透過軸のA,鉛直と角θをなす透過軸のC,水平な透過軸のBの順に進む.各板の透過軸と,AとCの間,CとBの間の電場の向きを示す.各板と電場の面は光に垂直で,正面から描いて並べている.透過光の強さは示さない.
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考え方 自然光は1枚目で半分になる.その後は,板を通るたびに,直前の偏光の向きと透過軸のなす角でマリュスの法則を使う.

  1. A を通った光は強さ I0/2 の鉛直な直線偏光である.B の透過軸とのなす角は 90∘ なので,B を通る強さは I02cos2⁡90∘=0 である.

  2. C を通ると強さは I02cos2⁡θ で,偏光の向きは C の透過軸の向きになる.B の透過軸とのなす角は 90∘−θ なので

I=I02cos2⁡θsin2⁡θ=I08sin2⁡2θ

である.最大は 2θ=90∘,すなわち θ=45∘ のときで,最大値は I0/8 である.

  1. sin2⁡60∘=3/4 より I=332I0≈0.094I0 である.

確かめ:θ=0 なら C は A と同じ向き,θ=90∘ なら B と同じ向きで,どちらも (1) と同じく0になる.光を減らすはずの板を足すと明るくなるのは,C が鉛直な偏光を斜めの偏光に作り直し,B の透過軸に沿う成分を生むからである.偏光板はただの「ふるい」ではなく,通った光の偏光の向きを透過軸の向きに変える.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

晴れた日,湖の岸で水面の照り返しを見る.水の屈折率を n=1.33,空気の屈折率を1とする.照り返しのもとになる空の光は自然光で,水面に入射する強さを I0 とする.入射角がブルースター角のとき,s偏光(電場が入射面に垂直)の強さの反射率は Rs=0.077 である(第26章のフレネルの式から出る値).また,同じ向きから目に届く,水の中から出てきた光の強さを 0.020I0 とし,これは自然光とする.水面は平らとする.

  1. 照り返しが完全な直線偏光になるとき,入射角と,照り返している空の部分の高度(水平面からの角)を求めよ.照り返しの電場はどちらを向いているか.

    1. のとき,裸眼で見た照り返しの強さと,水の中から来る光の強さの比を求めよ.透過軸が鉛直の理想的な偏光サングラスをかけると,それぞれの強さはどうなるか.

  2. サングラスをかけたまま首を 20∘ 傾けた.照り返しと,水の中から来る光の強さの比を求めよ.

空の自然光が法線から角θ_Bで水面に入射する.反射光は岸で偏光サングラスをかけた観測者の目へ進み,屈折光は水中へ進む.空の光の向きの高度は,水面の入射点から空へ向かう方向と水平面との間の弧で示す.電場の向き,角の数値,求める強さは示さない. 空の自然光が法線から角θ_Bで水面に入射する.反射光は岸で偏光サングラスをかけた観測者の目へ進み,屈折光は水中へ進む.空の光の向きの高度は,水面の入射点から空へ向かう方向と水平面との間の弧で示す.電場の向き,角の数値,求める強さは示さない.
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考え方 ブルースター角では反射光はs偏光だけになる.自然光の強さの半分がs偏光である.偏光サングラスは,照り返しの電場の向きと透過軸のなす角でマリュスの法則を使う.

  1. tan⁡θB=1.33 より θB=53.1∘ である.入射角は法線(鉛直)から測った角なので,空の部分の高度は 90∘−53.1∘=36.9∘ である.照り返しはs偏光だけなので,電場は入射面に垂直である.入射面は鉛直な面だから,電場は水平で,見る向きに垂直である.

  2. 自然光のうちs偏光の強さは I0/2 なので,照り返しの強さは

Ir=RsI02=0.077×I02=0.0385I0

である.水の中から来る光 0.020I0 との比は 0.0385/0.020≈1.9 で,照り返しの方が約2倍明るい.サングラスをかけると,照り返しの水平な電場は鉛直な透過軸と直交するので,強さは0になる.水の中から来る光は自然光なので,半分の 0.010I0 が通る.照り返しが消えて,水の中が見えるようになる.

  1. 透過軸は鉛直から 20∘ 傾くので,水平な電場とのなす角は 70∘ になる.照り返しの通る強さは

0.0385I0cos2⁡70∘=0.0385I0×0.117=0.0045I0

である.水の中から来る光は自然光なので,傾けても 0.010I0 のままである.比は 0.0045/0.010≈0.45 で,照り返しが水中の光の半分ほどまで戻ってくる.

確かめ:(3) で傾きを0にすれば照り返しは0,90∘ にすれば 0.0385I0 がすべて通り,(2) の2つの場合に一致する.ここでは入射角がちょうどブルースター角としたが,実際の水面は波で傾きがばらつくので,照り返しにはp偏光も少し混ざり,サングラスでも完全には消えない.それでもブルースター角の前後ではp偏光の反射率がs偏光よりずっと小さいので,大部分を消せる.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

液晶ディスプレイの1つの画素を,次のように模型化する.裏側の光源から強さ I0 の自然光が出て,透過軸が x 方向の偏光板1,液晶の層,透過軸が y 方向の偏光板2を順に通る.液晶の層は,通る直線偏光の向きを角 φ だけ回し,強さは変えないとする.電圧をかけないとき φ=90∘ で,電圧を上げると φ は小さくなり,十分大きな電圧で0になる.偏光板は (3) 以外では理想的とする.

  1. 画素から出る光の強さ I を φ で表せ.電圧をかけないときと十分大きな電圧をかけたときに,画素はそれぞれ明るいか暗いか.

  2. 最も明るいときの 1/4 の明るさを表示するには,φ をいくらにすればよいか.

  3. 実際の偏光板は,透過軸に沿う直線偏光でも強さの 85 %しか通さない.透過軸に垂直な直線偏光は完全に遮るとする.また,色を出すために画素の前にカラーフィルターを置き,フィルターに入射する光の強さの 1/3 だけを通すとする.最も明るいとき,光源の光の何 %が画面から出てくるか.

光源,x方向を通す偏光板1,液晶の層,y方向を通す偏光板2,カラーフィルター,観測者を左から並べる.各層と電場は光に垂直な面の正面図である.問題文で与えた電圧をかけない場合を描き,液晶分子の90°のねじれと各層間の電場の向きを示す.求める強さや角の計算結果は示さない. 光源,x方向を通す偏光板1,液晶の層,y方向を通す偏光板2,カラーフィルター,観測者を左から並べる.各層と電場は光に垂直な面の正面図である.問題文で与えた電圧をかけない場合を描き,液晶分子の90°のねじれと各層間の電場の向きを示す.求める強さや角の計算結果は示さない.
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考え方 偏光板1で自然光は半分の強さの x 偏光になる.液晶で向きが φ 回った直線偏光と,偏光板2の透過軸のなす角を求めて,マリュスの法則を使う.

  1. 偏光板1を通った光は,強さ I0/2 の x 方向の直線偏光である.液晶を通ると,偏光の向きは x 軸と角 φ をなす.偏光板2の透過軸(y 方向)とのなす角は 90∘−φ なので

I=I02cos2⁡(90∘−φ)=I02sin2⁡φ

である.電圧をかけないとき φ=90∘ で I=I0/2,画素は明るい.十分大きな電圧では φ=0 で I=0,画素は暗い.

  1. 最も明るいときは I0/2 なので,sin2⁡φ=1/4,sin⁡φ=1/2 より φ=30∘ である.

  2. 偏光板1で自然光の半分が止められ,さらに透過軸に沿う光の 85 %だけが通る.液晶で 90∘ 回った光は偏光板2の透過軸に沿うので,ここでも 85 %が通る.カラーフィルターで 1/3 になるから,出てくる割合は

12×0.85×0.85×13≈0.12

で,約12 %である.

確かめ:(1) の式は φ の増加とともに0から I0/2 まで単調に増えるので,電圧で φ を連続的に変えれば中間の明るさを作れる.(3) から,液晶ディスプレイでは光源の光の大部分が熱になることが分かる.最初の偏光板で必ず半分を失うのが大きい.ここでは液晶の層が偏光の向きを回すだけとしたが,これは分子のねじれがゆるやかで,複屈折による位相差が十分大きいときの近似である.この条件が崩れると出てくる光は楕円偏光になり,暗い画素が完全には暗くならない.

ポイント ここまでのまとめ

  • 偏光板を何枚も通すときは,1枚ごとに直前の偏光の向きと透過軸のなす角でマリュスの法則を使う.通った光の偏光の向きは透過軸の向きになる.

  • 直交した2枚の偏光板の間に斜めの偏光板を入れると光が通り,45∘ で最大の I0/8 になる.

  • 水面の照り返しはブルースター角の前後で電場が水平な直線偏光になり,透過軸が鉛直の偏光サングラスで消える.首を α 傾けると sin2⁡α の割合が戻る.

  • 液晶の画素は,偏光の向きを回す角 φ を電圧で変え,直交した偏光板で I=I02sin2⁡φ の明暗を作る.

15偏光と光の強度の演習

電場の射影から強度を求め,明暗の変化と偏光方向を結びつけます.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

一定のパワー P0=3.0mW の直線偏光を,角速度 Ω=5πrads−1 で回る理想偏光板に当てます.透過軸の角は電場から Ωt+π/6 とします.

  1. 透過パワー P(t),明暗の周期,初めて暗くなる時刻を求めよ.

  2. 板の1回転中に通るエネルギーを求めよ.

光の進行方向から見た初期配置である.入射電場と初期透過軸の角はπ/6で,透過軸は角速度Ωで正方向へ回る. 光の進行方向から見た初期配置である.入射電場と初期透過軸の角はπ/6で,透過軸は角速度Ωで正方向へ回る.
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考え方 マリュスの法則でパワーを表し,時間積分する.

  1. P(t)=P0cos2⁡(Ωt+π/6)=P0[1+cos⁡(2Ωt+π/3)]/2.明暗の周期は T=π/Ω=0.20s.最初の暗さは Ωt+π/6=π/2 より t=π/(3Ω)=0.067s である.

  2. 1回転は 2π/Ω,余弦の積分は0なので W=∫02π/ΩP(t)dt=P0π/Ω=0.60mJ.単位はパワーと時間の積である.光の角振動数 ω に対し,強度の時間平均には 1≫Ω/ω が必要である.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

糖液は偏光方向を ψ=Kρℓ だけ正に回します.ρ は質量濃度,ℓ は光路長で,K=1.00×10−2radm2kg−1 とします.吸収は無視します.透過軸の角 β の基準には未知のずれがあり,最小強度の角を測りました.

ℓ/m

0

0.050

0.100

0.150

β/deg

92.0

95.0

98.0

101.0

  1. 直線の傾きと切片を求め,ρ を推定せよ.

  2. 両端の角に独立な不確かさ 0.2∘ があるとき,差から求める ρ の不確かさを求めよ.差の不確かさは2乗の和の平方根とし,K,ℓ は正確とします.

入射偏光を光路長ℓの糖液に通し,検光子と検出器で測る.角βは検光子の目盛りに対する透過軸の角で,目盛りの基準には未知のずれがある. 入射偏光を光路長ℓの糖液に通し,検光子と検出器で測る.角βは検光子の目盛りに対する透過軸の角で,目盛りの基準には未知のずれがある.
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考え方 長さに依存しない角度のずれを,傾きから分離する.

  1. 最小では軸と電場が直交し,β=β0+Kρℓ.切片は 92.0∘,傾きは 9.0∘/(0.150m)=(π/3)radm−1.中間点もこの直線に合い,ρ=(π/3)/K=1.05×102kgm−3.切片と 90∘ の差が基準のずれである.

  2. δβ=2×0.2∘=4.94×10−3rad.ρ=Δβ/(KΔℓ) より δρ=δβ/(KΔℓ)=3.3kgm−3.結果は ρ=(105±3)kgm−3.単位も Kℓ の逆数と一致する.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

自然光を屈折率1の空気中から,屈折率 n=3 の2つのガラス面で順に反射させます.両面で入射角はブルースター角,2つの入射面の角は ϕ です.入射面に垂直な電場の強度反射率を両面で Rs=1/4 と与え,裏面反射は無視します.

  1. 両面の入射角を求めよ.

  2. ϕ=60∘ のとき,2回反射後の強度と入射強度 I0 の比を求めよ.反射光を完全に消す ϕ はいくらか.

空気側から2つのガラス面の上面で順に反射する光路と各面の法線を模式的に示す.中間光線はガラス板の外を通り,両入射角はブルースター角である.下の図は中間光線に沿って見た2入射面の角φを示す. 空気側から2つのガラス面の上面で順に反射する光路と各面の法線を模式的に示す.中間光線はガラス板の外を通り,両入射角はブルースター角である.下の図は中間光線に沿って見た2入射面の角φを示す.
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考え方 最初の反射で選ばれた電場を,次の入射面に対して射影する.

  1. 空気の屈折率を1とすると tan⁡θB=n より θB=60∘.屈折角は 30∘ で,反射方向と屈折方向は直交する.

  2. 自然光の2成分は等強度より I1=RsI0/2=I0/8.第1入射面に垂直な電場を,第2入射面に垂直な軸へ射影し,I1cos2⁡ϕ を得る.第2反射を含め I2/I0=Rs2cos2⁡ϕ/2=1/128.ϕ=90∘ なら0となる.両面が正確にブルースター角という条件が必要である.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

日光を +z 方向に進む自然光とし,分子で1回だけ散乱する模型で空を考えます.入射電場は等強度の x,y 成分をもち,干渉項の平均は0です.散乱方向を s=(sin⁡χ,0,cos⁡χ) とし,各成分の散乱電場は E−(E⋅s)s に比例すると与えます.比例係数は両成分で同じです.

  1. 入射面 xz に垂直・平行な散乱光の強度比を求めよ.

  2. 検光子を回したときの最大・最小強度を Imax,Imin とし,P=(Imax−Imin)/(Imax+Imin) を求めよ.χ=60∘ で評価し,χ=90∘ で空の偏光方向を答えよ.

日光は+z方向へ進む.散乱方向sはxz面内にあり,+zとの角をχとする.y方向は入射面の外向きの軸として描く. 日光は+z方向へ進む.散乱方向sはxz面内にあり,+zとの角をχとする.y方向は入射面の外向きの軸として描く.
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考え方 各入射成分を散乱方向に垂直な面へ射影し,強度を足す.

  1. y 成分はそのまま残る.散乱方向に垂直な入射面内の単位ベクトルは u=(cos⁡χ,0,−sin⁡χ) だから,x 成分の射影は Excos⁡χ.各成分の元の強度を同じ係数で J と表すと,I⟂=J,I∥=Jcos2⁡χ で,比は 1:cos2⁡χ である.

  2. 透過軸が y 軸となす角を β とすれば I=Jcos2⁡β+Jcos2⁡χsin2⁡β.最大は J,最小は Jcos2⁡χ より P=sin2⁡χ/(1+cos2⁡χ).χ=60∘ では P=3/5.90∘ では I∥=0 となり,電場は太陽・散乱点・観測者を含む面に垂直である.前方の χ=0 で P=0 も再現する.多重散乱を無視するには,光路上で散乱される割合が十分小さいことが必要である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

強度 I0 の x 方向の直線偏光に,N≥4 枚の理想偏光板を順に通します.軸の角を 0=θ0≤θ1≤⋯≤θN=π/2 とし,各差 δj=θj−θj−1 は π/2 未満とします.

  1. 透過強度を最大にする角度の並べ方を求めよ.固定した和 u+v に対する cos⁡ucos⁡v=[cos⁡(u+v)+cos⁡(u−v)]/2 を使ってよいとします.

  2. 最大強度の N→∞ の極限と,減少分の先頭の項を求めよ.各板が軸に平行な光にも同じ強度透過率 0<η<1 をもつ場合の極限も答えよ.ln⁡cos⁡x≈−x2/2 を使ってよいとします.

入射偏光の方向はxで角0に対応する.順に並ぶN枚の板のうち第1,第j,最後の板を抜き出し,任意の中間角と最後の角π/2を示す. 入射偏光の方向はxで角0に対応する.順に並ぶN枚の板のうち第1,第j,最後の板を抜き出し,任意の中間角と最後の角π/2を示す.
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考え方 投影の損失を各段で掛け,角度差の配分を比べる.

  1. I/I0=∏j=1Ncos2⁡δj,∑jδj=π/2.2つの差が異なれば,その和を保って等しくすると与えた恒等式の cos⁡(u−v) が増す.最大では全差が等しく,δj=π/(2N),θj=jπ/(2N) である.最大値は IN=I0cos2N⁡(π/(2N)) となる.

  2. ln⁡(IN/I0)=2Nln⁡cos⁡(π/(2N))≈−π2/(4N) より IN/I0≈1−π2/(4N)→1.減少分は I0π2/(4N) である.損失があればさらに ηN を掛けるので極限は0となる.近似には π/(2N) と π2/(4N) が十分小さいことが必要で,理想化の有無で極限が変わる.

ポイント 教える人へ

電場の射影と,その2乗である強度を区別させます.
回転の角速度と明暗の周期,旋光の傾きと基準のずれを問います.
反射と散乱では,偏光方向を入射面に対して説明させます.
多数の板の極限では,小さい角度差と板ごとの損失を確認します.

16第27章の章末問題

屈折,結像,干渉,回折,偏光を組み合わせて,光学装置の働きを調べます.空気の屈折率は1とし,レンズは薄い理想レンズです.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

格子定数 d=20.0μm の透過格子を,波長 λ=600nm の平行光で垂直に照らします.格子の直後に焦点距離 f=0.250m の凸レンズを置き,後側の焦点面で回折像を観察します.回折方向の角を θ,焦点面の横座標を x とします.

  1. 正の1次の主極大の位置を,近軸近似で求めよ.

  2. レンズを焦点距離 2f のものに替え,スクリーンもその焦点面へ動かすと,回折角と主極大の位置はどう変わるか.

透過格子の直後に凸レンズを置き,距離fの後側焦点面を観察する.格子定数d,回折方向θ,焦点面の横座標xを示す. 透過格子の直後に凸レンズを置き,距離fの後側焦点面を観察する.格子定数d,回折方向θ,焦点面の横座標xを示す.
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考え方 格子は光の進む角を決め,レンズはその角を焦点面の位置へ変える.

  1. 隣接スリットの経路差は dsin⁡θ で,1次の主極大には dsin⁡θ=λ が必要である.平行光束は焦点面の x=ftan⁡θ に集まるので,sin⁡θ≈tan⁡θ≈θ として

x≈fλd=0.250×600×10−920.0×10−6m=7.50mm

を得る.

  1. 格子の条件は変わらないので回折角は同じで,位置は x′=2ftan⁡θ≈15.0mm となる.ここで小さいとした量は λ/d=0.0300 で,位置の近軸近似の相対補正はその2乗程度である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

自然光を空気から透明体の平面へ入射させます.反射光が完全な直線偏光になる入射角は θ1=60.0∘ で,そのとき反射方向と屈折方向は直交します.入射光の真空波長は λ0=660nm です.反射光の強度を Ir とし,その進路に理想検光子を置きます.

  1. 透明体の屈折率 n と,内部の光の波長を求めよ.

  2. 検光子の透過軸が入射面に垂直な方向となす角を β とする.透過強度が Ir/4 になる 0≤β≤90∘ の角を求めよ.

自然光は入射角θ₁が60.0°で透明体へ入射する.上段の紙面が入射面で,下段は反射光に沿って見た検光子の透過軸と角βを示す. 自然光は入射角θ₁が60.0°で透明体へ入射する.上段の紙面が入射面で,下段は反射光に沿って見た検光子の透過軸と角βを示す.
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考え方 ブルースター角では屈折角と入射角の和が直角になり,反射光の電場は入射面に垂直である.

  1. θ2=90∘−θ1 と屈折の法則 sin⁡θ1=nsin⁡θ2 より,n=tan⁡θ1=3≈1.73.境界を越えて振動数は変わらず,速さが 1/n 倍になるから,波長は λ=λ0/n=381nm である.

  2. マリュスの法則より I=Ircos2⁡β.指定範囲では cos⁡β=1/2 なので β=60∘.β=90∘ では消光することも確かめられる.角度を小さいとする近似は使っておらず,完全な偏光という結論は入射角が正確にブルースター角である場合に限る.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

空気中の凸レンズに入る平行光は,レンズから f=0.180m の位置に集まります.レンズの右 s=0.0400m の位置から,厚さ h=0.0120m,屈折率 n=1.50 の平行平板を光軸に垂直に挿入します.板の後方にも空気があります.開口半径は R=2.00mm,反射と回折は無視し,近軸光線を考えます.

  1. 板を入れた後の結像位置を求めよ.

  2. スクリーンを元の位置に保った場合の,光斑の直径を求めよ.

開口半径Rの凸レンズの右に,前面位置s,厚さh,屈折率nの平行平板を挿入する.元の焦点面までの距離fを示す. 開口半径Rの凸レンズの右に,前面位置s,厚さh,屈折率nの平行平板を挿入する.元の焦点面までの距離fを示す.
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考え方 板の内部では光線の傾きが小さくなるため,軸へ近づく距離が減る.後面を出ると元の傾きに戻る.

  1. レンズを出る光線の軸に向かう傾きの大きさを u とする.前面での高さは u(f−s).屈折の法則の近軸形から板内の傾きは u/n で,後面の高さは u(f−s)−uh/n である.後面から交点までの距離はこの高さを u で割った値だから,レンズから測る像距離は

b=s+h+f−s−hn=f+h(1−1n)=0.184m

となる.焦点は 4.00mm 遠ざかる.

  1. 開口の縁を通る光線では u=R/f.元の面は新焦点より δ=b−f 手前なので,半径は uδ.直径は

2Rfδ=22.00×10−30.180×4.00×10−3m=0.0889mm

である.n→1 で焦点の移動も光斑も消える.近軸条件は R/f=0.0111 が十分小さいことで,板全体が元の焦点より手前にあることも用いた.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

間隔 d の細い2スリットを,同じ光源からの同位相・同振幅の直線偏光で照らします.入射電場は,互いに直交する横方向の軸 x,y のそれぞれと 45∘ をなします.各スリットの直後に理想偏光板を置き,一方の透過光を x 方向,他方を y 方向の偏光にします.各スリットだけを開けたときのスクリーンでの強度は,偏光板を通した後でそれぞれ I0 です.光路差による相対位相を ϕ とし,スクリーンの直前に,透過軸が x 方向となす角 0≤β≤π/2 の理想検光子を置きます.

  1. 検光子を置かないと縞が見えない理由を述べ,検光子を置いた後の強度 I(ϕ) を複素振幅から求めよ.

  2. 縞の鮮明度を V=(Imax−Imin)/(Imax+Imin) と定義する.V と,完全に暗い縞が生じる β を求めよ.

2スリットの透過軸は互いに直交するxとyである.2経路の相対位相はφで,スクリーン前の検光子の透過軸はxと角βをなす. 2スリットの透過軸は互いに直交するxとyである.2経路の相対位相はφで,スクリーン前の検光子の透過軸はxと角βをなす.
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考え方 直交する電場には強度の交差項がない.同じ透過軸への射影後は,複素振幅を足してから絶対値を2乗する.

  1. 検光子がなければ2電場は直交し,強度は 2I0 で ϕ に依存しない.検光子後の複素振幅は E0(cos⁡β+eiϕsin⁡β).時間因子 eiωt を掛けた実部が電場であり,強度は

I=I0|cos⁡β+eiϕsin⁡β|2=I0(1+sin⁡2βcos⁡ϕ)

となる.

  1. sin⁡2β≥0 より Imax=I0(1+sin⁡2β),Imin=I0(1−sin⁡2β).したがって V=sin⁡2β で,完全な消光には β=π/4 が必要である.このとき最大は 2I0,最小は0,位相についての平均は I0 となり,検光子が平均強度を半分にすることとも一致する.これは偏光板が余分な時間変動や無相関な位相差を作らない理想化で,小角近似は不要である.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

水平な平面鏡を y=0 に置き,波長 λ=560nm の点光源を (z,y)=(0,H),H=0.350mm に置きます.z=L=1.25m のスクリーン上で,直接光と鏡で1回反射した光を重ねます.反射により電場の位相が π 変わり,両光の振幅は等しいとします.y>0 の小角領域だけを考えます.

  1. 光路差を鏡像光源で表し,最初の明線の高さと明線間隔を求めよ.

  2. 装置の距離を保って一様な屈折率 n=1.40 の液体中に入れます.鏡の位相変化は同じとして,最初の明線の高さを求めよ.

鏡yが0の上に高さHの点光源を置く.距離Lのスクリーン上に高さyの観測点をとり,光源とスクリーンの配置を示す. 鏡yが0の上に高さHの点光源を置く.距離Lのスクリーン上に高さyの観測点をとり,光源とスクリーンの配置を示す.
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考え方 反射経路の長さは鏡像光源からの距離に等しい.経路差に加えて反射の位相反転を数える.

  1. 鏡像光源は (0,−H) にある.反射経路から直接経路を引いた差は

Δ=L2+(y+H)2−L2+(y−H)2≈2HyL

である.反射側の相対位相は π−2πΔ/λ なので,明線は Δ=(m+1/2)λ,m=0,1,… に現れる.最初の高さは y0=Lλ/(4H)=0.500mm,間隔は w=Lλ/(2H)=1.00mm である.

  1. 光学距離の差は経路差の n 倍である.よって 2nHy0′/L=λ/2,y0′=y0/n=0.357mm.y→0 の極限では位相反転によって暗くなる.距離の展開は H/L,|y|/L が十分小さい範囲で有効である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

屈折率 ng=1.60 の凸レンズは,空気中で焦点距離 f0=0.120m をもちます.これを屈折率 n=1.30 の液体へ沈めます.同じレンズについて

1f=K(ngn−1),1f0=K(ng−1)

が成り立ち,K は形状だけで決まる定数です.液体中のレンズの前 a=0.780m に,互いに無相関な2点光源を光軸に垂直に s=50.0μm 離して置きます.真空波長は λ0=600nm,円形開口の直径は D=8.00mm です.像面での分解の条件を,像の間隔が 1.22(λ0/n)b/D 以上と与えます.

  1. 液体中の焦点距離,像距離 b,像の間隔を求めよ.

  2. 2点は分解できるか.また,同じ形状のレンズを n=ng の液体へ入れると結像能力はどうなるか.

屈折率nが1.30の液体中に凸レンズを置く.間隔sが50.0 μmの2点光源の物体距離aは0.780 m,レンズの開口直径Dは8.00 mmである. 屈折率nが1.30の液体中に凸レンズを置く.間隔sが50.0 μmの2点光源の物体距離aは0.780 m,レンズの開口直径Dは8.00 mmである.
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考え方 周囲との屈折率の比がレンズの強さを決める.波長も液体中の値へ直し,幾何学的な像の間隔と回折の広がりを比べる.

  1. 2式の比から

f=f0ng−1ng/n−1=0.312m,b=afa−f=0.520m

となる.横倍率は M=−b/a=−2/3 であるから,像の間隔は s′=|M|s=33.3μm である.

  1. 分解に必要な間隔は

smin′=1.22λ0bnD=36.6μm

で,s′<smin′ より分解できない.n=ng なら 1/f=0 で,レンズ表面で光が曲がらず,有限距離の実像は作れない.近軸近似では D/a,D/b,s/a が十分小さいことが必要で,ここでは最大でも D/b=0.0154 である.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

空気に挟まれた一様な透明膜を,いろいろな入射角で照らします.膜厚 h と屈折率 n>1 は未知で,分散を無視します.各角度で,反射光が強め合う最長の真空波長 λ を測りました.膜内での屈折角を θ2 とし,膜の上下の反射光だけを考え,その振幅の違いは極大の位置に影響しないとします.

X=sin2⁡θ1

0

0.2500

0.6400

λ

600.0nm

565.7nm

507.5nm

  1. Y=λ2 と X を使って直線化し,最初と最後の測定から h,n を推定せよ.中間の測定も確かめよ.

  2. 両端の波長に独立な不確かさ uλ=0.2nm があるとする.X は正確とし,h の不確かさを一次近似で求めよ.独立な誤差の寄与は2乗して足し,平方根を取る.

空気に挟まれた厚さhの膜について,法線,入射角θ₁,膜内の角θ₂を示す.下段はXがsin²θ₁,Yが測定波長λの2乗である3測定点のみを示す. 空気に挟まれた厚さhの膜について,法線,入射角θ₁,膜内の角θ₂を示す.下段はXがsin²θ₁,Yが測定波長λの2乗である3測定点のみを示す.
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考え方 片方だけの反射で位相が反転することから最長波長を選び,屈折の法則で膜内の角を消去する.

  1. 反射の位相反転は上面だけにあり,強め合いの条件は 2nhcos⁡θ2=(m+1/2)λ,m=0,1,….最長波長は m=0 だから λ=4nhcos⁡θ2.sin⁡θ1=nsin⁡θ2 より

Y=16h2(n2−X)=B−SX,S=16h2,B=16h2n2

である.波長をナノメートル単位で計算すると,B=360000nm2,S=(600.02−507.52)/0.6400nm2=160068nm2.よって

h=S4≈100.0nm,n=BS≈1.500

を得る.中間の予測は B−0.2500S=565.67nm で,表の桁に丸めると一致する.

  1. X3=0.6400 と置くと S=(λ12−λ32)/X3 なので

uS=2uλX3λ12+λ32≈491nm2,uh=uS8S=huS2S≈0.15nm

となる.したがって h=(100.02±0.15)nm.直線の負の傾きは斜め入射で光路差が減ることを表す.誤差の一次近似には uλ/λ と uS/S が十分小さいことが必要で,後者は約 0.0031 である.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

波長 λ1=600nm,λ2=630nm の2種類の光を,間隔 d=0.500mm の細い2スリットに垂直に当てます.各波長ではスリットの複素振幅は同じで,片スリットだけによる強度は I0 です.異なる波長どうしの干渉項は検出器の時間平均で消えます.直後の凸レンズの後側焦点面で観察し,焦点距離は f=0.250m,横座標は x とします.回折の包絡線を無視し,小角で考えます.

  1. 合計の強度を,速く変化する余弦と,ゆっくり変化する余弦の積で表せ.その変調の振幅が最初に0になる正の x を求めよ.

  2. 両波長の明線が中央以外で初めて一致する正の位置と,それぞれの次数を求めよ.

波長λ₁が600 nm,λ₂が630 nmの光を,間隔dが0.500 mmの2スリットに垂直入射する.レンズから距離fの後側焦点面と横座標xを示す. 波長λ₁が600 nm,λ₂が630 nmの光を,間隔dが0.500 mmの2スリットに垂直入射する.レンズから距離fの後側焦点面と横座標xを示す.
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考え方 同じ波長の振幅を足して強度を出し,波長が違う成分は強度で足す.和積の公式から縞の変調を読む.

  1. ϕj=2πdx/(fλj) とすれば,各強度は Ij=I0|1+eiϕj|2=2I0(1+cos⁡ϕj).したがって

I=4I0[1+cos⁡(ϕ1+ϕ22)cos⁡(ϕ1−ϕ22)]

となる.ゆっくり変わる因子が最初に0になる条件は πdx(1/λ1−1/λ2)/f=π/2 だから

x∗=fλ1λ22d(λ2−λ1)=3.15mm

である.変調の振幅が0になる位置でも,合計強度は 4I0 であり暗点ではない.

  1. 一致には dx/f=m1λ1=m2λ2 が必要で,20m1=21m2 の最小の正整数解は m1=21,m2=20.よって x=f(21λ1)/d=6.30mm.波長が近いため速い縞と遅い変調を分けて見られるが,強度の式自体に波長差の展開はない.位置の近似には |x|/f が十分小さいことが必要で,この位置では 0.0252 である.

演習 9

オリジナル ★★★☆☆

凸レンズによる点光源の実像の距離は b=0.200m ですが,スクリーンはその位置から δ=1.00mm 遠くへずれています.波長は λ=550nm,可変の円形開口の直径は D です.ぼけを評価する模型として,幾何学的な光斑半径と回折の半径を

rg=Dδ2b,rd=1.22λbD,r=rg2+rd2

と与えます.吸収と収差は無視し,この r の最小化を考えます.

  1. 最適な D と,最小の r を文字式と数値で求めよ.

  2. δ が4倍になったときの最適直径と最小半径の倍率を求めよ.δ→0 での最適直径の振る舞いと,模型の限界を述べよ.

開口直径Dの凸レンズによる結像距離bは0.200 mである.スクリーンはその結像面よりδが1.00 mm遠くに置かれる. 開口直径Dの凸レンズによる結像距離bは0.200 mである.スクリーンはその結像面よりδが1.00 mm遠くに置かれる.
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考え方 絞ると幾何学的なぼけは減るが,回折は増える.与えた模型の半径の2乗を最小化する.

  1. A=δ/(2b),B=1.22λb と置くと,r2=A2D2+B2/D2.微分して 2A2D−2B2/D3=0 より D2=B/A.両端で r が発散するのでこの点は最小で,rg=rd が成り立つ.したがって

Dopt=2.44λb2δ=7.33mm,rmin=2AB=1.22λδ=25.9μm

である.

  1. Dopt∝δ−1/2,rmin∝δ1/2 なので,直径は半分,半径は2倍になる.δ→0 では模型は無限大の開口を要求するが,実際にはレンズの直径が有限で,近軸近似や無収差の理想化も破れる.数値設定では δ/b=0.00500,Dopt/b=0.0366 が小さく,回折を元の像面の式で評価する近似も有効である.2乗の和という評価法は与えた模型の約束である.

17第27章の発展問題

屈折率分布,レンズ系,多スリットの振幅を使って,光学装置の設計とその限界を調べます.必要な模型を問題文で与え,近似や理想化が結果にどう影響するかまで考えます.

演習 1

IPhO 1969 第4問(改題) ★★★★☆

高さ H=30.0mm の透明な台の上に,固定されたガラス板があり,台の上面と板の間に一様な空気層ができています.初めの厚さ h0 は未知です.垂直入射の反射光を分光すると,真空波長 λ1=480nm,λ2=800nm に強め合いの極大があり,その間に別の極大はありません.空気の屈折率は1,ガラスと台の屈折率はともに1より大きく,空気層の2面からの反射だけを考えます.

台だけをゆっくり温めると,上面が上がります.温度上昇を ΔT,台の線膨張係数を α=1.00×10−5K−1 とし,h=h0−αHΔT とする模型を用います.台の底面とガラス板は固定され,空気の屈折率は温度によらないものとします.

  1. h0 と,各極大の次数を求めよ.

  2. 接触するまでの温度上昇を求めよ.次に波長を λ0=600nm に固定し,接触前に反射が極大となる温度上昇をすべて求めよ.

  3. 膜厚の推定には,λ1 と λ2 の値だけでなく,間に極大がないという情報が必要です.その情報がなければ許される膜厚を表せ.また,2波長が非常に近い場合に膜厚推定が誤差に敏感になる理由を微分で示せ.

底面を固定した高さHの台と固定ガラス板の間に厚さhの空気層がある.下段には観測された480 nmと800 nmの2極大のみを示し,高さは模式的に表す. 底面を固定した高さHの台と固定ガラス板の間に厚さhの空気層がある.下段には観測された480 nmと800 nmの2極大のみを示し,高さは模式的に表す.
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考え方 一方の反射だけに位相反転がある.波長の順序と次数の順序は逆になり,隣接する極大の次数差は1である.

  1. 空気から台への反射では位相が π 変わり,ガラスから空気への反射では変わらない.したがって極大の条件は 2h0=(m+1/2)λ,m=0,1,….短い波長側の次数が1だけ大きいから

2h0(1λ1−1λ2)=1,h0=λ1λ22(λ2−λ1)=600nm

である.2h0/λ1=5/2,2h0/λ2=3/2 より次数は順に2,1となる.

  1. 接触には h=0 が必要なので,ΔTc=h0/(αH)=2.00K.固定波長では極大の厚さは hm=(m+1/2)λ0/2.0<hm<h0 にあるのは 450nm と 150nm であるから

ΔT1=600−450300K=0.500K,ΔT2=600−150300K=1.50K

の2回である.ここで温度上昇 1K あたりの厚さ減少が 300nm であることを用いた.

  1. 次数差を正整数 k とすれば h0=600knm.両波長について m+1/2 が半整数になるには,5k/2,3k/2 が半整数でなければならないので k は奇数である.したがって許される厚さは 600(2j+1)nm,j=0,1,… で,間の極大がないことが k=1 を選ぶ.隣接と分かっている場合でも,g=λ2−λ1 とすると

∂h0∂λ1=λ222g2,∂h0∂λ2=−λ122g2

で,差 g が小さいほど絶対誤差が増幅される.誤差の一次近似には,各波長の不確かさが g より十分小さいことが必要である.膨張の線形化も αΔTc=2.00×10−5 が小さいため有効である.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

空気中で平行な単色光束を広げる装置を作ります.光は左から進み,最初に焦点距離 f1=−40.0mm の凹レンズ,次に f2=240mm の凸レンズを通ります.両者の間隔は ℓ,入射光束の直径は D0=4.00mm,第2レンズの開口直径は 30.0mm です.第1レンズの開口では光束が遮られないものとします.光線の高さ y と符号つきの小さい傾き u について,距離 ℓ の伝播は y↦y+ℓu,薄いレンズは u↦u−y/f と与えます.

  1. 出射光束が平行になる間隔 ℓ0 と,出射直径を求めよ.開口で光が遮られるかも答えよ.

  2. 第2レンズの直後に焦点距離 f3=120mm の凸レンズを置き,その開口では光束が遮られないものとします.波長 λ=600nm の光の焦点面での回折半径を 1.22λf3/D と与え,拡大前の光束を直接第3レンズで集めた場合と比較せよ.回折の計算では照明された直径 D を円形開口の直径として扱います.

  3. 間隔を ℓ0+ε にすると,第3レンズから測る結像距離はどれだけ変わるか.ε の一次まで求め,ε>0 での移動方向を答えよ.

凹レンズf₁が−40.0 mmと凸レンズf₂が240 mmを間隔ℓで置く.入射直径D₀は4.00 mm,第2レンズの開口は30.0 mmである.破線の凸レンズは第2レンズ直後に追加するf₃が120 mmのレンズを表す. 凹レンズf₁が−40.0 mmと凸レンズf₂が240 mmを間隔ℓで置く.入射直径D₀は4.00 mm,第2レンズの開口は30.0 mmである.破線の凸レンズは第2レンズ直後に追加するf₃が120 mmのレンズを表す.
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考え方 光線の高さと傾きを順に追えば,無限遠の像や虚物体を使わずに平行化と誤差を扱える.

  1. 入射高さを y0,傾きを0とする.第1レンズ後は u1=−y0/f1,第2レンズでの高さは y2=y0(1−ℓ/f1).出射傾きは

u2=−y0f1−y0(1−ℓ/f1)f2=ℓ−f1−f2f1f2y0

なので,ℓ0=f1+f2=200mm.このとき y2=−f2y0/f1=6y0 より D=6D0=24.0mm で,開口より小さく遮られない.

  1. 拡大後は

rd=1.22600×10−9×0.1200.0240m=3.66μm

で,拡大前の 22.0μm の 1/6 になる.光束が広がることで,第3レンズが使える開口が増えるためである.

  1. ℓ=ℓ0+ε とすると

u2y2=εf1f2(1−ℓ/f1)=−εf2(f2+ε)

となる.第3レンズ後の傾きは u3=u2−y2/f3,像距離は b=−y2/u3 だから

b=11/f3+ε/[f2(f2+ε)]≈f3−f32f22ε=f3−14ε

である.間隔が広すぎると第3レンズを入れる前から収束するので,像はレンズに近づく.展開には |ε|/f2 と |ε|f3/f22 が十分小さいことが必要である.近軸条件も,例えば第1レンズ後の最大傾き (D0/2)/|f1|=0.0500 が小さいことに対応する.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

2M 本の細いスリットを間隔 d で並べ,垂直入射の波長 λ の光で照らします.M≥2,d>λ とします.スリット j=0,1,…,2M−1 のうち偶数番は複素振幅 A,奇数番は薄い位相板と減光板を通り,複素振幅 qAeiχ,0<q≤1 を出します.観測角 θ における隣接スリットの伝播位相差を ϕ=2πdsin⁡θ/λ とします.単スリットの包絡線は無視し,1本の偶数番スリットの強度を I1 とします.

  1. 合成の複素振幅を偶数番・奇数番の組でまとめ,強度を求めよ.

  2. χ=π のとき,ϕ=2πr と ϕ=(2r+1)π の方向の強度を求めよ.q=1 の装置で強い主極大の sin⁡θ の間隔だけを見て,通常の格子と誤認すると,格子定数をどう推定するか.

  3. q=1,χ=π+η とする.ϕ=0 と ϕ=π の強度比を求め,前者を後者の ϵ 倍以下に抑える小さい位相誤差の条件を示せ.0<ϵ<1 とし,近似条件では ϵ が1より十分小さい場合を考えます.

間隔dの2M本のスリットを垂直に照らす.偶数番の複素振幅はAで,奇数番には位相χの位相板と振幅比qの減光板がある.観測方向θを示す. 間隔dの2M本のスリットを垂直に照らす.偶数番の複素振幅はAで,奇数番には位相χの位相板と振幅比qの減光板がある.観測方向θを示す.
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考え方 2本を1組とする振幅の因子と,組どうしの等比級数を分けると,周期が2倍になった意味が分かる.

  1. 時間因子 eiωt を省いた複素振幅は

U=A(1+qei(χ+ϕ))∑k=0M−1e2ikϕ=A(1+qei(χ+ϕ))ei(M−1)ϕsin⁡Mϕsin⁡ϕ

である.最後の式は分母が0でない所で使い,それ以外は有限和で評価する.強度は

I=I1[1+q2+2qcos⁡(χ+ϕ)](sin⁡Mϕsin⁡ϕ)2

となる.

  1. ϕ=pπ では組どうしの位相はすべてそろい,有限和は M になる.χ=π より,偶数 p では I=M2I1(1−q)2,奇数 p では I=M2I1(1+q)2.q=1 なら前者は消え,後者は 4M2I1 となる.強い主極大は dsin⁡θ=(r+1/2)λ で,隣の強い主極大との sin⁡θ の差は λ/d.したがって間隔だけから推定する格子定数は d のままである.ただし全体が半次数分ずれ,0次が消えているため,通常の格子とは区別できる.

  2. 指定された2方向では,有限和の強度因子は同じである.よって

I(0)I(π)=|1−eiη|2|1+eiη|2=4sin2⁡(η/2)4cos2⁡(η/2)=tan2⁡η2

である.|η|<π の範囲では厳密に |η|≤2arctan⁡ϵ,小さい誤差では |η|≤2ϵ が先頭の近似となる.小角展開には |η| が十分小さいことが必要である.距離 L のスクリーンでレンズなしに観察する遠方近似には,全スリット幅 W≈(2M−1)d に対して W2/(λL) が十分小さいことも必要となる.

演習 4

IPhO 1974 第2問(改題) ★★★★★

平行な端面をもつ透明な板の内部では,屈折率は光軸からの距離だけで決まります.光軸を含む断面の符号付き横座標を y とすると,屈折率は

n(y)=n01−γ2y2,n0>1,γ>0

と変わります.板の長手方向を z とし,入射端面を z=0,出射端面を z=ℓ0=π/(2γ) に置きます.n(y)>1 の領域を使います.空気中から光軸に平行な光を入れ,板内で y(0)=y0>0,dydz(0)=0 とします.反射を無視し,幾何光学で扱います.

  1. 屈折の法則を薄い層に適用して p=n(y)/1+(dydz)2 が一定であることを示し,光線 y(z) と最初に軸を横切る位置 z∗ を求めよ.

  2. γy0 が小さいときの z∗ の先頭の補正を求めよ.入射光束半径を R とし,全光線の z∗ を ℓ0 の相対誤差 ϵ 以内にする厳密な条件を求めよ.

  3. 軸上の結像位置を近軸値 ℓ0 に固定します.出射面での周辺光線のずれは,先頭の項で rg=πγ2R3/4 です.これを確かめ,空気中の回折半径の見積もり rd=0.61λ0/(n0γR) と合わせた評価 r=max(rg,rd) を最小にする R を求めよ.n0=1.50,γ=10.0m−1,λ0=600nm で最適半径と r を評価し,近似を点検せよ.

長さℓ₀の透明板の中心で屈折率が高く,横方向yに離れるほど低くなる.光束半径R,入射高さy₀,光軸に平行な入射光線を示す. 長さℓ₀の透明板の中心で屈折率が高く,横方向yに離れるほど低くなる.光束半径R,入射高さy₀,光軸に平行な入射光線を示す.
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考え方 屈折率は y 方向だけに変わるため,層に平行な光の方向成分に保存量がある.近軸ではそろう焦点が,有限開口でずれることを厳密解から調べる.

  1. 層の法線は y 方向である.光線と z 軸の角を α とすると,屈折の法則の保存量は ncos⁡α.tan⁡α=dydz より,これが指定された p である.初期条件から p=n(y0)=n01−γ2y02.したがって

(dydz)2=n(y)2p2−1=γ2(y02−y2)1−γ2y02

である.光線の傾きが0でない所で微分すると d2ydz2=−γ2y/(1−γ2y02) となり,滑らかな光線では初期点にも連続に成り立つ.したがって初めに軸へ曲がる.軸に向かう枝で積分すると,arccos⁡(y/y0)=γz/1−γ2y02.滑らかに軸の反対側まで続けて

y(z)=y0cos⁡(γz1−γ2y02),z∗=π2γ1−γ2y02

を得る.

  1. 1−u≈1−u/2 より z∗≈ℓ0(1−γ2y02/2).周辺ほど手前で軸を横切る.最大の相対ずれは 1−1−γ2R2 であるから,0<ϵ<1 に対し

1−1−γ2R2≤ϵ⟺γR≤2ϵ−ϵ2

となる.別に n(R)>1,すなわち γ2R2<1−1/n02 も満たす必要がある.

  1. 出射面では y0=R として

y(ℓ0)=Rcos⁡(π21−γ2R2)≈Rcos⁡(π2+πγ2R24)≈−πγ2R34

なので,絶対値が rg である.rg は R とともに増え,rd は減るので,最大値の最小は2つが等しい点にある.よって

Ropt=(2.44λ0πn0γ3)1/4=4.20mm,r=0.61λ0n0γRopt=5.81μm

となる.γR=0.0420 と空気側の最大傾き n0γR≈0.0630 は小さく,幾何学的な先頭の補正と回折の近軸見積もりは整合する.幾何光学には局所波長内の屈折率変化も小さくなければならず,その比 λ0|dndy|/n2 は開口内で最大でも約 1.7×10−7 である.r は指定された2尺度の比較による見積もりである.

演習 5

オリジナル ★★★★★

色による結像位置の変化を抑えるため,空気中で凸レンズと凹レンズを間隔 ℓ で置きます.光は左から進み,基準波長を λ0,ε=(λ0−λ)/λ0 とします.光学的な強さ Pj=1/fj は,波長の狭い範囲で

P1(ε)=P10(1+κ1ε),P2(ε)=P20(1+κ2ε)

という模型に従います.P10=20.0m−1,P20=−10.0m−1,κ1=0.0100,κ2=0.0800 です.0<ℓ<1/P10 とし,入射光は光軸に平行です.薄いレンズでは高さ y の光線の傾きが −Pjy だけ変わります.第2レンズから測る像距離を b とします.

  1. A=1−ℓP1,P=P1+P2−ℓP1P2 と置き,b=A/P を導け.

  2. ε=0 における dbdε が0になる ℓ と,そのときの b を求めよ.

  3. 与えた模型をそのまま使い,その配置での b の2次までの変化を求めよ.像距離が一定であることと,系の有効焦点距離 F=1/P が一定であることは両立するか.最後に,この残留変化が円形開口の回折半径より小さい条件を求めよ.第2レンズでの照明半径を R とし,残留変化による光斑半径を R|b−b0|/b0,回折半径を 0.61λ0b0/R と見積もります.ここで b0=b(0) です.

共軸の凸レンズと凹レンズを間隔ℓで置き,光軸に平行な光を入れる.第2レンズでの照明半径Rを示す. 共軸の凸レンズと凹レンズを間隔ℓで置き,光軸に平行な光を入れる.第2レンズでの照明半径Rを示す.
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考え方 色でレンズの強さが変わるだけでなく,第2レンズを通る高さも変わる.像距離の微分では分子と分母の両方を変化させる.

  1. 入射光線の高さを y0 とする.第1レンズ後の傾きは −P1y0,第2レンズでの高さは y2=(1−ℓP1)y0=Ay0.出射傾きは u2=−P1y0−P2Ay0=−Py0 だから,軸との交点までの距離は b=−y2/u2=A/P である.

  2. 基準で dP1dε=κ1P10,dP2dε=κ2P20.商の微分を用いると

dbdε=A′P−AP′P2,P′=P1′(1−ℓP2)+P2′A

で,ℓP+A(1−ℓP2)=1 を使えば,基準で

dbdε∫|0=−κ1P10+κ2P20A02P02

となる.したがって 0.200−0.800A02=0.指定範囲で A0>0 なので A0=1/2,ℓ=(1−A0)/P10=0.0250m.このとき P0=15.0m−1,b0=A0/P0=0.0333m である.

  1. この間隔では

A=0.500−0.00500ε,P=(15.0−0.150ε+0.00400ε2)m−1

である.よって

bb0=1−0.0100ε1−0.0100ε+(0.00400/15.0)ε2≈1−c2ε2,c2=0.0040015.0=2.67×10−4

となり,b−b0≈−8.89×10−6ε2m.一方,P0′=−0.150m−1≠0 なので F の一次変化は消えない.一般にも b0′=0 と P0′=0 が両立するなら A0′P0=0 が必要だが,ここでは A0′=−ℓκ1P10≠0,P0≠0 である.したがって同時には一定にできない.

最後の条件は Rc2ε2<0.61λ0b0/R,すなわち

|ε|<0.61λ0b0c2R2

である.これは指定された局所的な分散模型内の評価で,実際の材料の2次の分散を無視できることまでは保証しない.展開には |ε| が十分小さく,近軸の光斑評価には R/b0 が十分小さいことが必要である.

18第27章のまとめ

この章では,光がどう進み,どう重なるかを扱いました.前半は光を細い線(光線)とみなす幾何光学で,出発点はフェルマーの原理です.光は光学距離(かかる時間)が停留する道を通るとすると,反射と屈折の法則,全反射,屈折率が場所で変わる媒質の中の光線の曲がり方が出てきました.1点から出ていろいろな道を通る光の時間をそろえる道具がレンズと曲面鏡で,そこから像の式が出ました.後半は光を波として扱い,複素振幅を足して2乗するという1つの規則から,薄膜やヤングの実験の干渉,回折格子と単スリットの回折,回折限界を導きました.最後に,光が横波であることから偏光が生まれることを見ました.光線の考えは,波長が物体の大きさや屈折率が目立って変わる距離に比べて十分小さいときの近似です.

定義と法則

法則 反射・屈折の法則とフェルマーの原理

  • 屈折率は真空中の光の速さ c と媒質中の速さ v の比 n=c/v である.水は 1.33,ガラスは 1.5 程度.

  • 角は境界の法線から測る.入射光線・反射光線・屈折光線と法線は同じ平面内にあり,反射角は入射角に等しく,屈折では n1sin⁡θ1=n2sin⁡θ2(スネルの法則)が成り立つ.

  • フェルマーの原理:光は,道筋を少しずらしてもかかる時間が1次の範囲で変わらない道を通る.時間は光学距離 ∑nℓ を c で割ったものなので,光学距離が停留する道と言ってもよい.反射と屈折の法則はここから出る.停留は最小とは限らない(楕円の鏡では一定,それより強く曲がった鏡では最大).

定義 全反射・層状の媒質・分散

  • 屈折率の大きい側から小さい側へ進む光(n1>n2)は,入射角が臨界角 sin⁡θc=n2/n1 を超えると全反射する.水から空気へは 48.8∘,ガラスから空気へは 41.8∘.光ファイバーは芯とクラッドの境界での全反射を使う.

  • 屈折率が高さとともに変わる層状の媒質では,鉛直から測った光線の角 θ について nsin⁡θ が光線に沿って一定で,光線は屈折率の大きい側へ曲がる(逃げ水,大気差).

  • 屈折率が波長で違うことを分散という.可視光では波長が短いほど屈折率が大きい.

法則 薄いレンズと曲面鏡の結像

近軸近似(h/a,h/b,h/R が十分小さい)で,物体距離 a,像距離 b,焦点距離 f について

1a+1b=1f,M=−ba

が成り立つ(M は横倍率).空気中の薄いレンズでは 1/f=(n−1)(1/R1−1/R2)(両凸レンズは R1>0,R2<0)で,周囲が屈折率 n0 の物質なら n を n/n0 に置きかえる.半径 R の球面鏡は f=R/2 である.どちらも,1点から出ていろいろな高さを通る道の光学距離をそろえる条件から出る.

定義 符号の約束と実像・虚像

  • レンズ:光は左から右へ進むとする.物体が入射側なら a>0,右側の点へ収束していく光が入るときは,その点を虚物体として a<0.像が出射側なら b>0(実像),入射側なら b<0(虚像).凸レンズは f>0,凹レンズは f<0.

  • 鏡:前側の像は b>0(実像),裏側の像は b<0(虚像).凹面鏡は f=R/2>0,凸面鏡は f=−R/2<0,平面鏡は b=−a,M=1.

  • M<0 なら倒立,M>0 なら正立.実像は光が実際に集まる点でスクリーンに映せる.虚像は出た光を逆に延ばした線の交点で,眼には光がそこから来るように見える.

ポイント 薄いレンズの光線の規則

高さ y で入った光線は,傾きが −y/f だけ変わる.中心を通る光線は直進し,光軸に平行な光線は後ろの焦点を通り,前の焦点を通る光線は光軸に平行に出る.傾き θ の平行光は焦点面の高さ fθ に集まる.像点には開口全体の光が集まるので,レンズの一部を覆っても像は欠けずに暗くなる.

定義 光学距離と干渉

  • 屈折率 n の中の距離 ℓ に対し,nℓ を光学距離という.物質の中の波長は λ0/n である.2つの光の光学距離の差(光路差)Δ から,位相の差は ϕ=2πΔ/λ0.

  • 光の電場を複素振幅 E^ で E=Re(E^eiωt) と書くと,強さは |E^|2 に比例する.同じ光源から分けた光は複素振幅を足してから2乗し,I=I1+I2+2I1I2cos⁡ϕ となる.I1=I2=I0 なら I=4I0cos2⁡(ϕ/2).

  • 屈折率の小さい側から大きい側の面での反射は位相が π ずれる.大きい側から小さい側の面での反射と,透過では変わらない.

  • 互いに無関係な光源どうし,光路差が可干渉距離(白色光で数 μm)を超えた光,偏光の向きが直交する光は干渉せず,強さを足す.

法則 回折

  • 回折は多くの波の重ね合わせで,長さが振幅,向きが位相の矢印を順につないだ始点から終点への矢印が合成の振幅になる.遠方回折の条件は,すき間の全体の幅 w について w2/(λL) が1より十分小さいこと.

  • 格子定数 d,本数 N の回折格子の主極大は dsin⁡θ=mλ(m は次数)で,斜め入射では d(sin⁡θ−sin⁡α)=mλ.主極大の幅は sin⁡θ で測って λ/(Nd),分解能はレイリーの基準で λ/δλ≤|m|N.

  • 幅 a の単スリットの暗線は asin⁡θ=mλ(m≠0).

  • 直径 D の円い穴による回折限界は θmin≈1.22λ/D で,倍率を上げても改善しない.

  • X 線の結晶回折はブラッグの条件 2dsin⁡θ=mλ(θ は格子面から測る).

定義 偏光

  • 光は横波で,電場の振動する向きを偏光の向きという.直線偏光,円偏光(同じ振幅で位相が 90∘ ずれた2つの直線偏光の和),楕円偏光がある.

  • 自然光は偏光の向きと位相がでたらめに入れ替わる光で,強さが半分ずつの無相関な2つの直線偏光の和とみなせる.

  • 入射面に垂直な電場の成分をs偏光,入射面内の成分をp偏光という.

法則 マリュスの法則とブルースター角

  • 強さ I0 の直線偏光が,偏光の向きと角 θ をなす透過軸の理想的な偏光板を通ると I=I0cos2⁡θ で,透過軸の向きの直線偏光になる.自然光は半分になる.

  • 入射角が tan⁡θB=n2/n1 のとき,反射光と屈折光が直交してp偏光の反射率が0になり,反射光はs偏光の直線偏光になる.空気から水では 53∘.

  • 散乱光の電場は,入射光の電場 E のうち見る向き s に垂直な成分 E−(E⋅s)s に比例する.太陽と直角の向きの空の光は強く偏光している.

定義 複屈折と波長板(発展)

電場の向きによって屈折率が違うことを複屈折という.厚さ d の板を垂直に通ると,2つの軸の成分の間に位相差 δ=2π(ns−nf)d/λ0 が生じる.δ=π/2 の 1/4 波長板は軸と 45∘ の直線偏光を円偏光に変え,δ=π の 1/2 波長板は軸と角 α の直線偏光を −α の直線偏光に変える.液晶ディスプレイは,ねじれた液晶で偏光の向きを回し,直交した偏光板で明暗を作る.

手順

ポイント 光の問題を解く手順

  1. 屈折では,境界ごとに法線を描いて角を法線から測り,屈折の法則を書く.平行な境界では nsin⁡θ がそのまま受け渡される.屈折率の大きい側から出るときは臨界角と比べる.

  2. 結像では,前の面やレンズの像を次の物体とし,次を越えた所へ収束する光は虚物体 a<0 とする.

  3. 干渉では,2つの光の光学距離の差 Δ を出し,反射の反転を数え,片方だけに反転があれば強め合いと弱め合いの条件を入れ替える.近似が成り立つかを最後に確かめる.

  4. 回折では,位相の矢印をつなぐか,等比級数や積分で複素振幅を足す.格子の次数は sin⁡θ の区間で考える.

  5. 偏光板を何枚も通すときは,1枚ごとに直前の偏光の向きと透過軸のなす角でマリュスの法則を使う.

主な公式

  • 見かけの深さ:真上近くから h/n,斜めから h′=hcos3⁡θ2ncos3⁡θ1

  • 光ファイバー:取り込める光 sin⁡θ0≤n12−n22(開口数),長さ L での到着時刻の差 n1(n1−n2)Ln2c

  • プリズム:偏角 δ=θ1+θ3−A,最小偏角から n=sin⁡[(A+δmin)/2]sin⁡(A/2)

  • 虹:1回反射の偏角 D=180∘+2θ−4r,最小の条件 cos2⁡θ=(n2−1)/3.太陽と反対の方向から赤は約 42∘,紫は約 41∘

  • 球面1面:n1a+n2b=n2−n1R,M=−n1bn2a

  • レンズ2枚:a2=ℓ−b1,M=M1M2.密着させると 1/f=1/f1+1/f2

  • 角倍率は虫めがね D0/f(D0=0.25m),望遠鏡 −f1/f2(間隔 f1+f2)

  • ヤングの実験:明線間隔 w=Lλ/d.スリットを厚さ h の板で覆うと光学距離が (n−1)h 増える.液体の中では Lλ0/(nd)

  • 薄膜の光路差 2nhcos⁡θ2.くさびの暗線 2t=mλ0

  • ニュートンリング:暗輪 rm=mRλ0(中心は暗い),rm+k2−rm2=kRλ0

  • 反射防止膜:t=λ0/(4nf),nf=ns で反射が0

  • マイケルソン干渉計:鏡を δ 動かすと縞が N=2δ/λ0 本流れる

  • 回折格子の強さ:I=I1sin2⁡(Nϕ/2)sin2⁡(ϕ/2),ϕ=2πdsin⁡θλ

  • 単スリットの強さ:I=I0(sin⁡ββ)2,β=πasin⁡θλ.最初の小さな山は中央の約0.047倍

  • 幅をもつスリットの列:単スリットの包絡線と干渉の因子の積.m=pd/a の次数が欠ける

  • 偏光板3枚(直交した2枚の間に角 θ の1枚):I08sin2⁡2θ.液晶の画素:I02sin2⁡φ

各題材の問いへの答え

  • 光の屈折とフェルマーの原理:光は水の中では空気中の 1/1.33 倍の速さでしか進めないので,時間が停留する道として,遅い水の中を短く通るように境界で折れ曲がる.目は届いた光をまっすぐ逆にたどるので,水中の部分は水面に近く(真上近くからは深さの約 1/1.33 倍に)見え,箸は折れ曲がって見える.

  • レンズと像:レンズは,焦点までのどの道も時間が等しくなるように厚さが作られているので,フェルマーの原理によりすべての道が実際の光線になって焦点に集まる.紙の上の明るい点は,見かけの直径約 0.0093rad の太陽の実像で,直径は f×0.0093(f=0.10m なら約 0.9mm)である.

  • 光の干渉と光学距離:シャボン玉の色は膜の表と裏で反射した光の干渉で,光路差 2nhcos⁡θ2 で弱め合う波長が抜けて残りの色が見える.膜が波長よりずっと薄くなると光路差はほぼ0になり,表の反射だけが反転するので2つの反射光が打ち消し合い,黒く見える.

  • 回折と回折格子:CD の溝は間隔 1.6μm の反射の回折格子で,dsin⁡θ=mλ の向きが色ごとに違うので白色光が分かれる.d/λ が2〜4なので2次以上も出て,外側にもう1組の虹が見える.

  • 光の偏光:水面の照り返しはブルースター角 53∘ の前後でほとんどs偏光,つまり電場が水平な直線偏光である.透過軸が鉛直な偏光サングラスはこれをほとんど通さず,自然光に近い水中からの光は半分通す.首を α 傾けると照り返しの sin2⁡α の割合が通る.

この章で使った数学

近軸近似(sin⁡θ≈tan⁡θ≈θ,サジッタ h2/(2R),1+x≈1+x/2.誤差の比は θ2 の程度),停留点を微分で求めること(屈折の法則,虹,プリズムの最小偏角),微分による角の差や不確かさの見積もり,複素振幅による波の足し算,等比級数による N 本の矢印の和,和を積分に直す単スリットの計算がありました.

光線と波のつながり(発展)

光が進む前にあらゆる道の時間を比べているように見えるのは,光が波だからです.いろいろな道の寄与の位相は光学距離で決まり,時間が停留する道の近くでは位相がそろって強め合い,離れた道どうしは打ち消し合います.残った細い束が光線に見え,その太さは波長で決まります.波長が無視できない所では光線の考えが破れ,干渉と回折が現れます.第29章では,光が粒としての性質ももつことへ進み,第30章では電子にも同じ考えが当てはまることを見ます.