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問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 15節
  1. 外部運動と内部運動
  2. 外部運動と内部運動の計算
  3. 外部運動と内部運動の演習
  4. 角運動量の分解
  5. 重心のまわりの分解と外積
  6. 角運動量の分解の演習
  7. 角運動量を取る点の選び方
  8. 動く点のまわりの計算と例題
  9. 角運動量を取る点の選び方の演習
  10. 剛体の衝突
  11. 剛体の衝突の例題
  12. 剛体の衝突の演習
  13. 第9章の章末問題
  14. 第9章の発展問題
  15. 第9章のまとめ

第9章  外部運動と内部運動

01外部運動と内部運動

この章では,第5章の重心 rG を R,その速度を V と書きます(同じものです).

問い

打ち上げ花火の玉が高く上がり,頂点の近くで割れて,星(光る粒)が四方へ広がります.空気の抵抗を無視すると,星全体の重心は,割れたことなど無かったかのように,割れる前の玉と同じ放物線を描いて落ちていきます.第5章で見たように,重心の運動は外力(重力)だけで決まるからです.

では,玉を割るとき火薬の化学エネルギーが運動エネルギーに変わって,破片の運動エネルギーの合計は増えています.重心の運動が変わらないのなら,増えた運動エネルギーは,いったいどこへ入ったのでしょうか.

考えてみる

第6章では,2つの物体の運動エネルギーが K=12MV2+12μvrel2 と,重心の分と相対運動の分に分かれることを見ました.花火の玉は2つではなく多数の破片になりますが,同じことが言えるはずです.一直線上で,等しい質量 m(M=2m)の2つに割れ,速度が V±u になる場合で確かめます.運動量は m(V+u)+m(V−u)=MV で変わらず,運動エネルギーは

12m(V+u)2+12m(V−u)2=12MV2+mu2

と mu2 だけ増えます.増えた分は V に関係せず,破片が重心に対してどう動くかだけで決まります.

そこで,多数の物体でも,剛体でも,運動を重心の動きと,重心から見た動きに分けて数えることにします.

外部運動と内部運動

定義 外部運動と内部運動

質量 mi,位置 ri,速度 vi の質点の集まりで,全質量を M=∑mi,重心を R,重心の速度を V=dRdt とする.

ri=R+ri′,vi=V+vi′

と分けたとき,重心そのものの運動を外部運動,重心から見た運動 ri′,vi′ を内部運動という.

重心の定義から,重心から見た位置と速度を質量で重みづけして足すと0になります.

∑miri′=0,∑mivi′=0
割れた花火の玉.各破片の速度 \(\vb*{v}_i\) が,重心 G の速度 \(\vb*{V}\)(全破片に共通の太い矢印)と,G から放射状に広がる \(\vb*{v}_i'\) の和に分かれる様子を,3つの破片について描く.G は放物線上にあり,破片の位置 \(\vb*{r}_i=\vb*{R}+\vb*{r}_i'\) も矢印で示す. 割れた花火の玉.各破片の速度 \(\vb*{v}_i\) が,重心 G の速度 \(\vb*{V}\)(全破片に共通の太い矢印)と,G から放射状に広がる \(\vb*{v}_i'\) の和に分かれる様子を,3つの破片について描く.G は放物線上にあり,破片の位置 \(\vb*{r}_i=\vb*{R}+\vb*{r}_i'\) も矢印で示す.

運動量と運動エネルギーの分解

全運動量は P=∑mivi=MV+∑mivi′=MV です.運動量は外部運動だけが持ち,第5章で見たように dPdt=F外 なので,外力だけが P を変えます.

法則 ケーニッヒの定理

質点系の運動エネルギーは,外部運動の分と内部運動の分の和になる.

K=12MV2+K内,K内=∑12mi|vi′|2

2体では K内=12μvrel2(第6章).形の変わらない剛体が重心のまわりを角速度 ω で回るなら,K内=12IGω2(IG は重心のまわりの慣性モーメント).

証明は次の節で行います.剛体の内部運動は回転だけで,重心から距離 ρi の質点の速さが ρiω だから,K内=∑12miρi2ω2=12IGω2 となります.第8章で転がる物体の運動エネルギーを 12Mv2+12IGω2 と書いたのは,この定理の一例だったのです.

外力は何をするか

外力の合力は外部運動を変えます.外力は,作用点によっては内部の回転や変形も変えます.MdVdt=F外 に V を掛けて時間で積分すると

Δ(12MV2)=∫F外⋅dR

となります.右辺は力の作用点ではなく重心の変位で計算するので,これを「重心の仕事」と呼びます.物体に外力が実際にする仕事 ∑Fi⋅dri とは,一般に違います.

たとえば静止から走り出す人を考えます.水平方向の外力は,床が足にはたらく静止摩擦力 f だけです.足は床に接している間は止まっているので,摩擦力の実際の仕事は0です.ところが重心は加速し,Δ(12MV2)=∫fdR>0 になります.運動エネルギーを与えたのは床ではなく,人の体の内部(筋肉の化学エネルギー)です.床の役目は,運動量 P を渡す外力になることだけです.車が走り出すときも同じです.

走り出す人を横から描く.後ろの足が床に接して静止し,床から前向きの静止摩擦力 \(f\) を受けている.重心 G が右へ進むこと,力の作用点(足の接地点)は動かないことを,G の矢印と接地点の印で対比する. 走り出す人を横から描く.後ろの足が床に接して静止し,床から前向きの静止摩擦力 \(f\) を受けている.重心 G が右へ進むこと,力の作用点(足の接地点)は動かないことを,G の矢印と接地点の印で対比する.

内力は P を変えませんが,K内 は変えられます.爆発は化学エネルギーを,ばねは弾性エネルギーを,筋肉は体のエネルギーを K内 に変えます.逆に,摩擦や衝突の変形は K内 を分子の乱雑な運動に変えます.このように蓄えられる微視的なエネルギーは内部エネルギーに含まれます.熱は温度差によるエネルギーの移動を指し,内部エネルギーそのものとは区別します.詳しくは熱の章で扱います.形の変わらない剛体では,物体を作る粒子どうしの距離が変わらないので,内力の仕事は0です.

ポイント 出入りできるのは K内 だけ

外力が無視できる短い出来事(衝突,爆発,分裂)では,P も V も 12MV2 も変わらない.運動エネルギーの出入りは,すべて K内 で起きる.

ポイント ここまでのまとめ

  • 位置と速度を ri=R+ri′,vi=V+vi′ と分けると,∑miri′=0,∑mivi′=0.運動量は外部運動だけが持ち,P=MV で,外力だけが変える.

  • 運動エネルギーは K=12MV2+K内.剛体では K内=12IGω2.

  • Δ(12MV2)=∫F外⋅dR は重心の仕事で,実際の仕事とは違う.走り出す人では,摩擦力の実際の仕事は0でも運動エネルギーが増える.

  • 問いの答え:割れても重心は変わらず,増えた運動エネルギーは全部 K内,つまり破片が重心から離れていく運動に入った.

02外部運動と内部運動の計算

前の節の主張を和の計算で確かめ,重心の仕事と実際の仕事の違いが現れる例題に進みます.

定理 数学の道具:重心のまわりの和

内部運動の運動量の和は0. V=∑miviM なので

∑mivi′=∑mivi−V∑mi=MV−MV=0

ケーニッヒの定理. |vi|2=V2+2V⋅vi′+|vi′|2 を 12mi 倍して足すと

K=12MV2+V⋅∑mivi′+K内=12MV2+K内

交差項は ∑mivi′=0 で消える.

重心の仕事. 質点系の運動方程式 MdVdt=F外 に V を掛けると d(12MV2)dt=F外⋅V.Vdt=dR だから,積分して Δ(12MV2)=∫F外⋅dR.

練習 1. 質量 50kg の人が,静止から一定の静止摩擦力 100N で走り出す.重心が 9.0m 進んだときの速さを求めよ.

答え:重心の仕事は 100×9.0=900J.12⋅50v2=900 より v=6.0ms−1.

練習 2. 質量 60kg の人がその場で跳び上がる.床が足を押す力が一定の 1500N で 0.30s 続いたとする.重心の運動方程式から,足が床を離れるときの重心の速さを求めよ(g=9.8ms−2).

答え:60a=1500−60×9.8=912 より a≈15ms−2.v=at≈4.6ms−1.床の力は仕事をしないが,重心の運動は外力の合力で決まる.

練習 3. 質量 2.0kg の質点Aと質量 1.0kg の質点Bが,それぞれ速度 (3.0,0)ms−1 と (0,3.0)ms−1 で動いている.重心速度 V を求め,全運動エネルギー K を外部運動の分 K外 と内部運動の分 K内 に分けよ.

答え:V=2.0×(3.0,0)+1.0×(0,3.0)3.0=(2.0,1.0)ms−1.K外=12×3.0×(2.02+1.02)=7.5J.K=12×2.0×3.02+12×1.0×3.02=13.5J より K内=6.0J.(重心に対する速度 (1.0,−1.0),(−2.0,2.0) から直接 12×2.0×2.0+12×1.0×8.0=6.0J と確かめられる.)

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

水平な床の上で,質量 60kg の人が静止から一定の加速度で走り出し,2.0s 後に 4.0ms−1 になった.

走り出す人を横から描く.後ろの足の接地点(印)に前向きの静止摩擦力 \(f\) を,重心 G に右向きの速度と加速度を示す.\(2.0\,\mathrm{s}\) 間の G の変位を矢印で書き入れる. 走り出す人を横から描く.後ろの足の接地点(印)に前向きの静止摩擦力 \(f\) を,重心 G に右向きの速度と加速度を示す.\(2.0\,\mathrm{s}\) 間の G の変位を矢印で書き入れる.
  1. 床が人に及ぼす摩擦力を求めよ.

  2. 重心の仕事と,摩擦力の実際の仕事を求めよ.

  3. 増えた運動エネルギーは,どこから来たか.

解答を見る

考え方 水平方向の外力は静止摩擦力だけである.重心の仕事は重心の変位で,実際の仕事は力の作用点(足の接地点)の変位で計算する.

  1. 加速度 a=4.02.0=2.0ms−2 より,f=Ma=60×2.0=120N.

  2. 重心の変位は 12⋅2.0⋅2.02=4.0m なので,重心の仕事は 120×4.0=480J.これは 12⋅60⋅4.02=480J に等しい.一方,足は床に接している間は静止していて作用点の変位が0なので,摩擦力の実際の仕事は 0 である.

  3. 床は仕事をしていないので,人の体の内部(筋肉の化学エネルギーなど)から来た.床は運動量 Mv=240kgms−1 を渡す役をしただけである.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

頂点で水平に 10ms−1 で飛ぶ質量 3.0kg の花火の玉が,等しい質量 1.0kg の3つに割れた.割れた直後,重心から見て3つの破片は水平面内で,速さ 4.0ms−1 で互いに 120∘ の向きに飛び,1つは玉の進行方向に飛んだ.空気の抵抗は無視する.

120度ずつ離れた等しい内部速度と,別に描いた共通の重心速度.実験室系での合成結果は表示しない. 120度ずつ離れた等しい内部速度と,別に描いた共通の重心速度.実験室系での合成結果は表示しない.
  1. 3つの破片の速度(進行方向を x,水平で垂直な向きを y)を求めよ.

  2. 割れる前後の運動エネルギーの差を求め,K内 と比べよ.

解答を見る

考え方 破片の速度は vi=V+vi′ である.内部運動の速度の和は0になっている.

  1. V=(10,0).vi′ は (4.0,0),(−2.0,23),(−2.0,−23)(ms−1)で,和は 0 になる.よって

v1=(14,0),v2=(8.0,3.5),v3=(8.0,−3.5)  ms−1

運動量の和は 1.0×(30,0)=(30,0)=3.0×(10,0) で,割れる前に等しい.

  1. 割れた後は 12⋅1.0⋅(142+8.02+3.52+8.02+3.52)≈174J,前は 12⋅3.0⋅102=150J.差は 24J.K内=3×12⋅1.0⋅4.02=24J と一致し,外部の分 12MV2=150J は変わらない.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

傾いた面の高さ h=0.50m の所から,質量 M,半径 r の一様な円柱を静かに放し,滑らずに転がして下まで降ろす.重力加速度を 9.8ms−2 とし,円柱の慣性モーメントは IG=12Mr2 である.比べるために,同じ高さから滑らかな面を滑る質量 M の箱も考える.

円柱と箱を同じ高さから放す設定.円柱の接点の摩擦は斜面上向き,垂直抗力は面に垂直.到着速度の答えは表示しない. 円柱と箱を同じ高さから放す設定.円柱の接点の摩擦は斜面上向き,垂直抗力は面に垂直.到着速度の答えは表示しない.
  1. 下端での,円柱の重心の速さ v と,箱の速さを求めよ.

  2. 円柱の運動エネルギーのうち,K内 が占める割合を求めよ.

  3. 静止摩擦力の実際の仕事と,重心の仕事を求めよ.

解答を見る

考え方 接点は瞬間的に静止しているので,静止摩擦力の実際の仕事は0で,力学的エネルギーが保存する(第8章).滑らずに転がるので ω=v/r.

  1. 円柱は K=12Mv2+12⋅12Mr2⋅(vr)2=34Mv2 で,34Mv2=Mgh より

v=4gh3=4×9.8×0.503≈2.6ms−1

箱は 12Mv2=Mgh より v=2gh=9.8≈3.1ms−1.

  1. K内=12IGω2=14Mv2 なので,K の 13 である.重力が与えた Mgh のうち,23 が重心の運動,13 が回転(内部運動)に入った.この分だけ円柱は箱より遅い.

  2. 静止摩擦力の実際の仕事は 0.重心の仕事は Δ(12Mv2)=23Mgh で,重力の仕事 Mgh と摩擦力が重心に対して行う −fs の和(s は面に沿った距離)に等しい.よって fs=13Mgh である.摩擦力は円柱から運動エネルギーを奪うのではなく,重心の運動のエネルギーを回転に移している.

ポイント ここまでのまとめ

  • 重心のまわりで足すと ∑mivi′=0.これで交差項が消え,K=12MV2+K内 が出る.

  • 外力の仕事のうち重心の運動を変える分は,重心の変位で計算する ∫F外⋅dR で,実際の仕事とは違う.走り出す人や転がる円柱では,静止摩擦力の実際の仕事は0である.

  • 転がる剛体では,重力の仕事が重心の運動と回転(K内)に配分される.分裂や爆発は,外部の分を変えず K内 だけを増やす.

03外部運動と内部運動の演習

全体の運動を先に求め,残りを内部運動として数えてください.外力の仕事では,どの点の変位を使ったかも説明しましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

水平面上の3つの小物体A,B,Cの質量はそれぞれ m,m,2m,ある瞬間の速度は (3u,0),(0,3u),(0,0) である.m,u>0 とする.

  1. 全運動量,重心速度,各物体の重心に対する速度を求めよ.

  2. 全運動エネルギーを外部と内部に分け,内部の運動量が0であることと矛盾しない理由を説明せよ.

AとBの直交する速度3uと,静止したCを真上から描く.質量m,m,2mを記す. AとBの直交する速度3uと,静止したCを真上から描く.質量m,m,2mを記す.
解答を見る

考え方 速度の単純平均ではなく質量を重みにした平均を使う.運動量は符号付きの和,エネルギーは速度の大きさの2乗の和である.

  1. P=(3mu,3mu),V=(3u/4,3u/4).したがって vA′=(9u/4,−3u/4),vB′=(−3u/4,9u/4),vC′=(−3u/4,−3u/4).質量を掛けて足すと各成分が0になる.

  2. K=9mu2.外部の分は K外=(4m)(18u2/16)/2=9mu2/4,内部の分は差を取って K内=27mu2/4 である.直接計算でも m(90+90+36)u2/32=27mu2/4.逆向きの運動量は相殺するが,正のエネルギーは相殺しない.どの項も質量×速度の2乗というエネルギーの次元を持つ.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

質量 M=4.0kg の密閉された装置が,水平な実験台に対して V=3.0ms−1 で並進している.内部の部品の,装置全体の重心に対する運動エネルギーは 8.0J,ばねの弾性エネルギーは 5.0J である.

  1. 実験台から見た運動エネルギーと,ばねを含めた力学的エネルギーを求めよ.

  2. 同じ向きへ 1.0ms−1 で等速運動する観測者には,それぞれいくらになるか.内部の量が変わらない理由も説明せよ.

並進する装置の箱の中にばねと部品を描き,箱のVと観測者の速度を同方向に示す. 並進する装置の箱の中にばねと部品を描き,箱のVと観測者の速度を同方向に示す.
解答を見る

考え方 観測者を変えるとすべての速度から同じ速度を引く.重心速度も同じだけ変わるので,差である内部速度は変わらない.

  1. K外=4.0×3.02/2=18J より K=26J,E=K+5.0=31J.部品の運動を装置の質量に含めた上で,内部の運動エネルギーも加える必要がある.

  2. 重心速度は 2.0ms−1 なので K外=8.0J,K=16J,E=21J.相対速度とばねの伸びは変わらず,内部の 8.0+5.0=13J は共通である.一般に観測者の速度を w とすると E(w)=M(V−w)2/2+13J.w=V で最小になることも,重心運動の分を取り除いたという解釈に合う.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

空気抵抗のない空中で,3つの小部品が一体となり速度 V0 で飛んでいる.質量はA,Bが m,Cが 2m である.内部のばねを解放すると,瞬間的にAは重心に対し (u,0),Bは (0,2u) の速度を得た.解放中の重力の力積を無視する.

  1. Cの重心に対する速度と,必要だったばねのエネルギーを求めよ.

  2. 解放から時間 t 後のCの位置を,解放時の重心位置 R0,Cの重心に対する初期位置 rC0′,一定の重力加速度 g を用いて書け.

解放直後のAの内部速度(u,0)とBの内部速度(0,2u),Cの位置を描く.Cの速度は描かない. 解放直後のAの内部速度(u,0)とBの内部速度(0,2u),Cの位置を描く.Cの速度は描かない.
解答を見る

考え方 爆発・解放でも内部速度の質量付きの和は0である.解放後は各部品と重心が同じ重力加速度を受ける.

  1. m(u,0)+m(0,2u)+2mvC′=0 から vC′=(−u/2,−u).外部の運動エネルギーは変わらないので,損失のない解放に必要なばねのエネルギーは

Q=12mu2+12m(2u)2+12(2m)(u24+u2)=154mu2

である.V0 が式に入らないことが重要である.

  1. R(t)=R0+V0t+gt2/2 で,重心に対するCの加速度は0.したがって

rC(t)=R0+V0t+12gt2+rC0′+(−u/2,−u)t

となる.u→0 なら3部品は位置関係を保って自由落下する.内部の相対的な広がりと,重心全体の落下を別々に足せばよい.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

水平面上に静止した,質量 M,半径 R の一様な円板を考える.円板の面は水平で,面との摩擦はない.短い時間,円板の中心から距離 b(0≤b≤R) の点へ,その点への半径と垂直な水平力を加えた.力積の大きさは J,中心まわりの慣性モーメントは MR2/2 である.

  1. 直後の外部と内部の運動エネルギーを求めよ.

  2. 外力の実際の仕事と重心の仕事はどう違うか.b=R の場合の比も求めよ.

水平円板の中心G,半径R,Gからbの作用点と接線方向の力積Jを真上から示す. 水平円板の中心G,半径R,Gからbの作用点と接線方向の力積Jを真上から示す.
解答を見る

考え方 重心の並進は力積で,回転は力積のモーメントで決まる.同じ外力が両方を変える例である.

  1. MV=J,IGω=Jb より V=J/M,ω=2Jb/(MR2).したがって K外=J2/(2M),K内=J2b2/(MR2) である.力積の向きを正に選んだ回転の符号を使えば,エネルギーは常に非負になる.

  2. 変形・発熱を無視した理想剛体では,実際の仕事は両者の和 W=J2/(2M)+J2b2/(MR2).重心の仕事は WG=J2/(2M) だけである.b=R では W/WG=3.短時間だからといって,仕事も0とはできない.力が大きく,作用点の速度も変わるからである.b=0 なら回転は生じず両仕事は一致する.これは外力が内部運動も変えうる明瞭な例である.

ポイント 教える人へ

  • 「内部の運動量は0」と「内部では誰も動かない」を区別できるか,演習1の速度を図に描かせて確かめてください.

  • 座標系の変更では,各速度と重心速度から同じ量を引く手順を言葉にさせます.

  • 仕事を計算する前に,重心と力の作用点のどちらが動いたかを問いかけます.外力が内部運動を変える演習4を,外力が無視できる演習3と比較すると,適用条件を確かめられます.

04角運動量の分解

問い

リレーのバトンを回しながら投げ上げると,バトンの重心は放物線を描き,バトン自身は同じ速さで回り続けます.重力は絶えずバトンを引いているのに,なぜ自転の速さは乱れないのでしょうか.地球も,太陽のまわりを回りながら(公転),自分でも回っています(自転).この2つの回転は,別々に保たれる量なのでしょうか.

回しながら投げたバトンのストロボ写真風の図.一定の間隔で描いた棒が放物線に沿って並び,各位置の重心に黒点を打つ.棒の向きは一定の角ずつ回っている. 回しながら投げたバトンのストロボ写真風の図.一定の間隔で描いた棒が放物線に沿って並び,各位置の重心に黒点を打つ.棒の向きは一定の角ずつ回っている.

考えてみる

バトンを鉛直面内の質点系と見て,原点 O のまわりの角運動量 L を考えます.第8章で見たように,質点系の dLdt は O のまわりの外力のトルクの和に等しく,内力の分は打ち消し合います.一様な重力 mig のトルクの和は ∑ri×mig=MR×g で,重心が動くにつれて変わり続けます.つまり,O のまわりの L は保存しません.それでも回転の速さは変わりません.L のうち,変わる部分と変わらない部分が混ざっているのではないか,と考えます.そこで運動量やエネルギーと同じように,重心の運動と,重心から見た運動に分けてみます.

角運動量の分解

位置 ri=R+ri′,速度 vi=V+vi′ と分けます.∑miri′=0,∑mivi′=0 でした.L=∑miri×vi に代入して展開すると

L=MR×V+R×∑mivi′+(∑miri′)×V+∑miri′×vi′

です.中の2項は0になります.

定理 角運動量の分解

L=R×P+L′,L′=∑imiri′×vi′

第1項は全質量が重心に集まったとしたときの角運動量(外部運動).L′ は重心のまわりの角運動量(内部運動)である.

重心のまわりのトルク

L の変化は dLdt=∑(R+ri′)×Fi=R×F外+∑ri′×Fi です.第1項は ddt(R×P)=V×P+R×F外 と一致し(V∥P で前者は0),残りが L′ の変化になります.

法則 内部運動の角運動量

内力が質点を結ぶ直線の向きなら,重心のまわりの外力のトルクを τG=∑ri′×Fi として

dL′dt=τG

である.重心が加速していても成り立つ.

重心が加速していても成り立つ理由を,重心から見た量だけで確かめておきます.重心から見た加速度は ai′=ai−A(A=dVdt)で,vi′×vi′=0 だから

dL′dt=∑miri′×ai′=∑ri′×Fi−(∑miri′)×A

です.最後の項は ∑miri′=0 より0で,重心の加速は L′ に影響しません.この見方は,第11章で「見かけの力」として言い直します.

一様な重力なら τG=(∑miri′)×g=0 なので,L′ は一定です.変わるのは R×P だけです.これがバトンの答えで,無重量の宇宙船の中でも同じ回り方をします.

剛体と2体

この章で扱う平面運動の剛体では,面に垂直な重心軸のまわりの角速度を ω とすると,L′ の大きさは IGω,運動エネルギーは K=12MV2+12IGω2 です.第8章の転がりで IGα=τG が重心の加速に関係なく使えたのも,この分解の一例です.撃力で叩かれた剛体など,衝突の問題は後の節で3つの保存則を使って解きます.地球では,公転の R×P が約 2.7×1040kgm2s−1,自転の IGω が約 5.8×1033kgm2s−1 と,桁がまるで違います.

2体では,r=r1−r2,vrel=v1−v2 として L′=μr×vrel です(次の節で導きます).

3つの分解

量

外部運動

内部運動

内力は内部の分を

全体が保存する条件

運動量

P=MV

0(常に)

変えない

F外=0

運動エネルギー

12MV2

K内

変えうる

外力と内力の仕事の和が0

角運動量

R×P

L′

変えない

∑ri×Fi=0

外力の条件ごとに整理します.外力が無ければ P,R×P,L′ が別々に保存します.一様な重力だけなら P と R×P は変わりますが,L′ は保存します.K内 は内力の仕事でも,重心に対する各作用点での外力の仕事でも変わりますが,運動量と L′ は内力では変わりません.L′ を変えるのは,重心のまわりの外力のトルクだけです.

ポイント ここまでのまとめ

  • 全角運動量は L=R×P+L′(軌道の分+重心のまわりの分)に分かれる.

  • dL′dt=τG は重心が加速していても成り立つ.∑miri′=0 で重心の加速の項が消える.

  • 一様な重力では τG=0 なので,バトンの回転は一定である.公転と自転も分けて扱えるが,それぞれの保存には対応するトルクが0という条件が要る.

  • 剛体では L′=IGω,K=12MV2+12IGω2.2体では L′=μr×vrel.

  • 内力で変えられるのは K内 だけ.P は外力,L′ は重心のまわりの外力のトルクだけが変える.

05重心のまわりの分解と外積

定理 数学の道具:重心のまわりで分ける

和と外積 外積は和と実数倍に分配できるので,i によらないベクトル c について (∑miai)×c=∑mi(ai×c) である.ai=ri′ や vi′ なら左辺は 0 なので,前の節の分解の交差項は消える.

平行軸の定理 質量 M の剛体が,重心 G から距離 d の固定軸のまわりを角速度 ω で回る.軸のまわりの角運動量のうち,G の運動の分は Md⋅dω=Md2ω(G の速さは dω で位置ベクトルに垂直),重心のまわりの分は IGω.和が Iω だから

I=IG+Md2

である.

2体の L′ r=r1−r2,vrel=v1−v2 とすると r1′=m2Mr,r2′=−m1Mr.速度も同じ比で

L′=[m1(m2M)2+m2(m1M)2]r×vrel=m1m2Mr×vrel=μr×vrel

である.

練習 1. 質量 0.40kg と 0.20kg の質点が重心系で x 軸上の 0.30m,−0.60m にあり,速度は +y 向きに 1.5ms−1,−y 向きに 3.0ms−1 である.Lz′ を求めよ.

答え:0.40×0.30×1.5+0.20×(−0.60)×(−3.0)=0.54kgm2s−1.μrvrel=0.40×0.200.60×0.90×4.5=0.54 と一致する.

練習 2. 質量 1.0kg の2つの質点が重心系で (±0.50,0)m にあり,x>0 の質点は +y 向き,x<0 の質点は −y 向きに 2.0ms−1 で動く.Lz′ を2通りに求めよ.

答え:1.0×0.50×2.0+1.0×(−0.50)×(−2.0)=2.0kgm2s−1.μ=0.50kg,r=1.0m,vrel=4.0ms−1 で μrvrel=2.0 と一致する.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

質量 0.30kg,長さ 0.80m の一様な細い棒を,鉛直面内で重心のまわりに角速度 15rads−1 で回しながら,水平から 60∘ 上向きに速さ 6.0ms−1 で投げた.重力加速度は 9.8ms−2,空気抵抗は無視する.

投げ出す速さ6.0 m s⁻¹と角60度,角速度15 rad s⁻¹,最高点で棒が鉛直になるという条件を示す.求める時間・高さ・端点速度は表示しない. 投げ出す速さ6.0 m s⁻¹と角60度,角速度15 rad s⁻¹,最高点で棒が鉛直になるという条件を示す.求める時間・高さ・端点速度は表示しない.
  1. 最高点に達する時間と,最高点の高さを求めよ.

  2. 最高点までに棒が回る角と,重心のまわりの角運動量の変化を求めよ.

  3. 最高点でちょうど棒が鉛直になるとして,両端の速度の水平成分を求めよ.

解答を見る

考え方 重心は放物運動をする.一様な重力では τG=0 なので ω は一定である.

  1. 鉛直成分は 6.0sin⁡60∘≈5.20ms−1.t=5.209.8≈0.53s,高さは 5.2022×9.8≈1.4m.

  2. IG=0.30×0.80212=0.016kgm2 より L′=IGω=0.24kgm2s−1 で,変化は0.回る角は ωt≈8.0rad.

  3. 最高点で重心は水平に V=6.0cos⁡60∘=3.0ms−1.回転による端の速度は水平で大きさ 15×0.40=6.0ms−1,向きは両端で逆なので,水平成分は 3.0+6.0=9.0ms−1 と 3.0−6.0=−3.0ms−1.運動エネルギーは投げた直後 5.4+1.8=7.2J,最高点 1.35+1.8=3.15J で,差 4.05J は Mgh に等しい.内部の 1.8J は変わらない.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

なめらかな水平面上に,質量 0.20kg の球1と 0.60kg の球2が,長さ 0.80m の軽い糸でつながれている.ある瞬間,糸はぴんと張り,2球とも糸に垂直で同じ向きに,速さ 3.0ms−1 と 1.0ms−1 で動いている.

球1と球2は糸に垂直な同じ向きへ,それぞれ3.0 m s⁻¹と1.0 m s⁻¹で進む.長さ0.80 mと質量を示し,求める重心距離の数値は表示しない. 球1と球2は糸に垂直な同じ向きへ,それぞれ3.0 m s⁻¹と1.0 m s⁻¹で進む.長さ0.80 mと質量を示し,求める重心距離の数値は表示しない.
  1. 重心の速さ V,重心のまわりの角運動量 L′,角速度 ω,糸の張力 T を求めよ.

  2. 球2の小さな巻き取り機で糸をゆっくり巻き取り,長さを 0.40m にした.ω,K内,巻き取り機の仕事を求めよ.

解答を見る

考え方 外力が無いので V は一定.糸も巻き取り機も内力だから L′ は変わらない.

  1. V=0.20×3.0+0.60×1.00.80=1.5ms−1.G から球1までは m2Ml=0.60m,球2までは 0.20m.μ=0.20×0.600.80=0.15kg,vrel=2.0ms−1 より L′=μlvrel=0.24kgm2s−1,ω=vrel/l=2.5rads−1.球1の向心力から T=m1ω2×0.60=0.75N.

  2. L′=μl′2ω′ が一定で ω′=2.5×(0.800.40)2=10rads−1.重心系の速さは 3.0ms−1 と 1.0ms−1 になり,K内 は(第6章の)12μvrel2=0.30J から 12×0.20×3.02+12×0.60×1.02=1.2J に増える.巻き取り機の仕事は 0.9J.重心は 1.5ms−1 のまま直進する.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

地球(質量 5.97×1024kg)と月(質量 7.35×1022kg)を,円軌道で互いのまわりを回る2体とみなす.中心間の距離は 3.84×108m,公転周期は 2.36×106s,地球の自転の角運動量は 5.8×1033kgm2s−1,地球の自転周期は 8.62×104s である.月の自転と太陽の影響は無視する.

地球と月を真上から見た図.共通の重心 G(地球の内部)を中心に,地球と月がそれぞれ円を描く.地球は自転の矢印も付け,月までの距離 \(r\) を示す. 地球と月を真上から見た図.共通の重心 G(地球の内部)を中心に,地球と月がそれぞれ円を描く.地球は自転の矢印も付け,月までの距離 \(r\) を示す.
  1. 地月系の重心のまわりの公転の角運動量を求め,地球の自転の何倍か答えよ.

  2. 潮汐の力で地球の自転は遅くなり,1日の長さは100年で 2.0ms 長くなる.この間に地月系の L′ が変わらないとして,月と地球の距離は100年で何 m 変わるか.ただし地球の自転の慣性モーメントは一定,円軌道のままとし,この変化では公転の角運動量が中心間距離の平方根に比例するという関係 L公転∝r を用いてよい.この関係の導出は次章で扱う.

解答を見る

考え方 (1) 2体の L′=μrvrel(第6章の換算質量).(2) 自転が失った角運動量は公転が受け取る.円軌道では L′ が r とともに増える.

  1. μ=5.97×1024×7.35×10226.04×1024≈7.26×1022kg,ω=2π2.36×106≈2.66×10−6rads−1.L公転′=μr2ω≈7.26×1022×(3.84×108)2×2.66×10−6≈2.85×1034kgm2s−1.自転の約4.9倍である.

  2. 自転の角運動量は IGω∝1/T なので,100年の減少は 5.8×1033×2.0×10−38.62×104≈1.35×1026kgm2s−1.これが公転に移る.問題文で与えた関係より L公転′∝r.よって Δrr=2ΔL′L′=2×1.35×10262.85×1034≈9.5×10−9.Δr≈3.6m(年に約3.6 cm).月は遠ざかり,実測値(年に約3.8 cm)に近い.

ポイント ここまでのまとめ

  • 分解の交差項は,∑miri′=0 と外積の分配で消える.

  • 平行軸の定理 I=IG+Md2 は,L=R×P+L′ を剛体に使った結果である.

  • 2体では L′=μr×vrel.

  • 一様な重力では L′ は一定.内力は L′ を保ったまま K内 を変える.

  • 地月系では,自転が失った L′ が公転に移り,月が遠ざかる.撃力を受ける剛体の衝突は後の節で扱う.

06角運動量の分解の演習

角運動量には,どの点のまわりかを必ず添えてください.重心の運動と重心まわりの運動を分けてから,保存する量を判断しましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

ある平面運動をする剛体の質量は 2.0kg,重心位置は R=(1.0,2.0)m,重心速度は V=(3.0,0)ms−1 である.重心まわりの慣性モーメントは 0.50kgm2,反時計回りの角速度は 4.0rads−1 である.

  1. 原点Oのまわりの角運動量の z 成分を,外部と内部に分けて求めよ.

  2. 自転は反時計回りなのに,全角運動量が反対符号になってもよいのでしょうか.

xy座標上のG(1.0,2.0),右向きのV,反時計回りの自転を描き,OからGへの位置を示す. xy座標上のG(1.0,2.0),右向きのV,反時計回りの自転を描き,OからGへの位置を示す.
解答を見る

考え方 Lz=RxPy−RyPx+Lz′ を使う.角運動量の符号は,物体の自転の向きだけでは決まらない.

  1. P=(6.0,0)kgms−1.外部の分は 1.0×0−2.0×6.0=−12kgm2s−1,内部の分は Lz′=0.50×4.0=2.0kgm2s−1.全体では Lz=−10kgm2s−1 である.

  2. Oから見た重心は,この瞬間,時計回りに向きを変える運動をしている.その寄与が自転の寄与より大きいので,負でよい.重心を通る点から測れば外部の寄与は消え,自転の正の角運動量だけになる.外部と内部は同じ単位を持つので足せるが,互いに打ち消す場合もある.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

氷上を動く物体群の全運動量は P=(p,0,0)(p>0),固定点Oのまわりの全角運動量は LO=(0,0,−pa) である.別の固定点QはOから見て (b,c,0) にある.

  1. Qのまわりの角運動量を求め,それが0になるQの集合を描け.

  2. 全運動量が0で,重心まわりに回転している系では,基準点を選んで全角運動量を0にできるか.

O,Q(b,c),水平方向の全運動量pを座標図に示す.角運動量が0となる直線は描かない. O,Q(b,c),水平方向の全運動量pを座標図に示す.角運動量が0となる直線は描かない.
解答を見る

考え方 基準点を変えると,各位置ベクトルから同じ a=OQ→ を引く.速度は同じ実験室系で測り続ける.

  1. 定義から

LQ=∑(ri−a)×mivi=LO−a×P

である.a×P=(0,0,−cp) だから LQz=p(c−a).0になるのは c=a の直線全体であり,b は任意.全運動量と平行に基準点を動かしても角運動量は変わらない.c=0 とすればOと同じ値になることも確かめられる.

  1. P=0 なら上式の差は常に0で,全角運動量は基準点によらない.したがって L′≠0 の回転を基準点の選択で消すことはできない.運動量が0であることと,角運動量が0であることは別の条件である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

軽い剛体の枠に3個の等しい質点 m を固定した.重心Gからの位置は,ある瞬間 (a,0),(−a/2,3a/2),(−a/2,−3a/2) である.水平面内を,Gが右へ速さ V,枠が反時計回りの角速度 ω で動いている.

  1. L′ と K を求めよ.

  2. 3質点それぞれに,同じ右向きの力積 j を同時に加えた.直後の重心速度,自転角速度,運動エネルギーの増加を求めよ.

正三角形の頂点に3質点mを置き,Gからの距離a,V,ωと,各頂点への同じ力積jを示す. 正三角形の頂点に3質点mを置き,Gからの距離a,V,ωと,各頂点への同じ力積jを示す.
解答を見る

考え方 3質点の位置の和が0なので,等しい力積の重心まわりのモーメントは相殺する.全力積は相殺しない.

  1. IG=3ma2 より L′=(0,0,3ma2ω),K=3mV2/2+3ma2ω2/2.内部速度は各位置を90度回して ω 倍したもので,質量付きの和は0になる.

  2. 3m(V+−V)=3j より V+=V+j/m.角力積は ∑ri′×(j,0,0)=0 なので ω+=ω.したがって

ΔK=3m2[(V+jm)2−V2]=3Vj+3j22m

で,増加はすべて外部運動に入る.同じ力積を1点にまとめて加える場合は,その作用線がGを通るかを改めて調べる必要がある.j→0 で変化が0になること,V=0 でも力積の2乗の分が残ることを確認できる.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,長さ l の一様な棒が,なめらかな水平面上の x 軸に沿って静止している.重心は原点である.右端に +y 方向,左端に −y 方向の等しい力積 J を同時に加える.IG=Ml2/12 である.

  1. 直後の全運動量,重心まわりの角運動量,角速度,運動エネルギーを求めよ.

  2. 合力積が0なのに,内部運動が変わることを説明せよ.その後,外力なしに棒の内部ブレーキだけで全体を完全に静止させられるか.

水平な棒の両端に逆向きの力積Jを描く.右端は上向き,左端は下向きで,中心Gを示す. 水平な棒の両端に逆向きの力積Jを描く.右端は上向き,左端は下向きで,中心Gを示す.
解答を見る

考え方 逆向きの力積は運動量では相殺するが,角力積では同じ回転方向に加算される.

  1. P=0,Lz′=J(l/2)+J(l/2)=Jl.よって ω=12J/(Ml),K=IGω2/2=6J2/M.外部運動のエネルギーは0で,全量が内部運動である.角運動量の次元は力積×長さ,エネルギーの次元は力積の2乗÷質量となり整合する.

  2. 合外力積0はトルクの力積0を意味しない.この2つの外力積は偶力を作り,L′ を変えた.以後の孤立した装置では,内部ブレーキが部品間で角運動量を移すことはできても,全体の L′=Jl は消せない.有限の広がりを保った全物質が完全に静止すると L′=0 になるので不可能である.回転エネルギーを減らすには,角運動量を持つ別の部品の回転や形の変化まで数える必要がある.

ポイント 教える人へ

  • 外積の符号が苦手な読者には,最初に右手で向きを確かめ,次に成分計算をさせてください.

  • 「重心のまわり」と「実験室に固定した点のまわり」のどちらを使ったかを,解答の式ごとに確認します.

  • 演習3と4を比べ,同じ合力積でも作用点の配置で回転への効果が変わることを説明させます.外力がないこと,合外力が0であること,外力のトルクが0であることを混同していないかが理解の目安です.

07角運動量を取る点の選び方

問い

傾き θ の斜面を,質量 M,半径 R の一様な円柱が滑らずに転がり降ります.接点 P のまわりのトルクを考えると,摩擦力も垂直抗力も P を通るのでトルクが0になり,重力のトルク MgRsin⁡θ だけが残ります.P のまわりの慣性モーメント IP=32MR2 を使って IPα=MgRsin⁡θ と書くと,第8章で重心の運動方程式と回転の運動方程式を連立して求めた a=Rα=23gsin⁡θ が,1行で出てきます.

ところが,重心が中心からずれた円板(偏心円板)を水平な床の上で転がし,同じように接点のまわりで IPα=τP と書くと,正しい答えと合いません.「角運動量の変化=トルク」は,どの点のまわりなら,そのまま使ってよいのでしょうか.

一様な円柱と偏心円板を示す模式図. 一様な円柱と偏心円板を示す模式図.

考えてみる

偏心円板の正しい答えは,第8章のとおり,重心の運動方程式と重心のまわりの回転の運動方程式を連立すれば出ます(次の節の例題で解きます).縁の半径を R,G のまわりの慣性モーメントを IG とします.G が O と同じ高さにあり(OG が水平で OG=b),円板が角速度 ω で転がっている瞬間には,角加速度の大きさは

|α|=Mb(g+Rω2)IP,IP=IG+M(b2+R2)

になります.接点のまわりの式 IPα=τP では,重力のトルクの大きさ Mgb から Mgb/IP が出て,Rω2 の分だけ足りません.ω=0 の瞬間だけは合います.

第8章で dLdt=τ を導いたときは,角運動量を空間に固定した点 O のまわりで測りました.固定していることを使ったのは,ri×mivi を微分して出る dridt×mivi を vi×mivi=0 とした所です.接点は物体とともに動いていく点で,その瞬間の速度は0でも,加速度は0ではありません.そこで,動く点のまわりでは何が付け加わるのかを,一般の点で調べます.

動く点のまわりの角運動量

この題材の中だけ,重心の位置を rG,速度を vG と書きます(第9章のほかの節の R,V と同じものです.縁の半径 R と紛れないようにします).質点系の各質点の位置を ri,速度を vi,全質量を M とし,角運動量を取る点 A の位置・速度・加速度を rA,vA,aA とします.剛体の回転を A から見て扱いたいので,各質点の速度も A から見た相対速度で測ります.

定義 点 A のまわりの角運動量

LA∗=∑i(ri−rA)×mi(vi−vA)

A が空間に固定されていれば第8章の角運動量と同じで,A が重心 G なら前の題材の L′ と同じである.

A のまわりの外力のトルクを τA=∑(ri−rA)×Fi とします.内力は前の題材と同じく質点を結ぶ直線の向きとし,そのトルクは打ち消し合います.時間で微分すると,次の結果が得られます(導出は次の節).

定理 動く点のまわりの角運動量の変化

dLA∗dt=τA−M(rG−rA)×aA

余分な項は A の加速度で決まります.aA=0 のとき,A が G のとき,aA が A から G へ向かう直線と平行なときに消えます.A を G にとると前の題材の dL′dt=τG に戻ります.A の速度が0でも,加速度が0でなければ余分な項は残りえます.余分な項は,第11章で別の見方をします.

剛体で使うとき

平面運動をする剛体に固定した点 A を取ります(剛体の外にあっても,剛体と一緒に動く点なら同じです).第8章の剛体の平面運動で見たように vi−vA=ωez×(ri−rA) なので,LA∗ の z 成分は ∑mi|ri−rA|2ω=IAω で,IA は時間によらず一定です.したがって

IAα=τA−M[(rG−rA)×aA]z

です.IAα=τA と書いてよいのは,右辺の第2項が0のときだけです.

滑らずに転がる物体の接点にある点は,速度は0ですが,縁の円の中心 O に向かって大きさ Rω2 の加速度をもちます.これは O の加速度にも,質量の分布にもよりません(次の節で確かめます).一様な円柱では O が G なので,aP は P から G へ向かう直線に沿い,余分な項は0です.問いの円柱で接点のまわりの式が正しかったのはこのためです.偏心円板では aP は O を向き,G を向きません.OG が水平なら (rG−rP)×aP の大きさは bRω2 で,余分な項 MbRω2 が,考えてみるで見たずれと一致します.

瞬間回転中心で考えると,判断がもっと簡単になります(第8章では I と書きましたが,ここでは慣性モーメントと区別して Q と書きます).Q から G までの距離を d とすると,次の節でエネルギーから示すように

IQα=τQ−Mdd˙ω

です(d˙=dddt).d がその瞬間に変わらなければ,Q のまわりで IQα=τQ が使えます.重心が中心にある丸い物体の転がり(d=R)や,壁と床を滑り落ちるはしご(d ははしごの長さの半分.次の節)では使えます.偏心円板では d が刻々と変わるので使えません.

[図:転がる円板の接点と重心]

角度を手動で変えると,一様な円板ではPGの長さが一定で,偏心円板ではPGの長さと加速度との角が変わる.並進を除いて比較し,初期角は0°.

撃力の間

撃力が働く短い間は,空間に固定した点か G のまわりなら ΔL=∑r×J がそのまま使えます.物体はほとんど動かないので,固定点はその瞬間に物体のどの点と重なっていてもかまいません.次の題材「剛体の衝突」ではこれを使います.

ポイント 角運動量を取る点の選び方

  1. 空間に固定した点か重心 G なら,dLdt=τ がいつでもそのまま使える.撃力の間は固定点ならどこでもよい.

  2. 未知の力の作用線が多く通る点(接点,支点,瞬間回転中心)を探す.そのまわりなら未知の力が式から消える.

  3. その点が動くなら余分な項を調べる.剛体で IAα=τA と書くには,A の加速度が A から G へ向かう直線に沿うこと,瞬間回転中心なら G までの距離が変わらないことを確かめる.

  4. 余分な項が残るなら,その項を入れるか,重心の運動方程式と G のまわりの式に戻る.結果はエネルギーや ω=0 の場合で確かめる.

ポイント 補足:静止系の速度で測る角運動量

各質点の速度を静止系のまま使って LA=∑(ri−rA)×mivi と定義することもできる.次の節と同じ計算で

dLAdt=τA−MvA×vG

で,余分な項は A の速度で決まる.vA=0 の点(その瞬間だけ止まっている点も含む)や,vA が vG と平行な点なら消える.したがって偏心円板の接点の点でも dLPdt=τP そのものは正しい.誤りは,その瞬間に LP=LP∗=IPωez であることから,変化率も IPα としたところにある.2つの定義の差は LA−LA∗=M(rG−rA)×vA で,次の瞬間に接点の点が動き出すと,この差が M(rG−rP)×aP の割合で増えていく.

ポイント ここまでのまとめ

  • 動く点 A のまわりでは,A に対する相対速度で測ると dLA∗dt=τA−M(rG−rA)×aA.余分な項は A の加速度で決まる.

  • 空間に固定した点と重心 G なら,余分な項はいつも0である.剛体に固定した点 A では IAα=τA−M[(rG−rA)×aA]z.

  • 問いの答え:一様な円柱では接点の点の加速度が G を向くので,接点のまわりの式が使える.偏心円板では G を向かず,MbRω2 の項が残る.瞬間回転中心のまわりで使ってよいのは,G までの距離がその瞬間に変わらないときである.

08動く点のまわりの計算と例題

前の節の式を導き,3つの例で確かめます.重心の位置は前の節と同じく rG と書きます.

定理 数学の道具:動く点のまわりで微分する

変化率の式. ddt(ri−rA)=vi−vA だから,外積の積の微分で

dLA∗dt=∑(vi−vA)×mi(vi−vA)+∑(ri−rA)×mi(ai−aA)

である.第1項は同じベクトルどうしの外積で0.第2項の ai の分は,内力のトルクが打ち消し合って τA.aA の分は −(∑mi(ri−rA))×aA=−M(rG−rA)×aA である.

接点の点の加速度. 半径 R の縁が水平な床を滑らずに転がるとき,接点 P にある点の加速度を,縁の中心 O を基準にして第8章の式(接線の項と向心の項)で求める.進む向きを正とすると,O の加速度は Rα.P は O の真下 R にあるので,O に対する接線の項は後ろ向きに Rα,向心の項は O へ向かって Rω2 である.前後の成分は打ち消し合い,aP は O へ向かう大きさ Rω2 の加速度になる.質量の分布は入らない.

エネルギーの式. 瞬間回転中心 Q から G までの距離を d とすると,運動エネルギーは K=12IQω2,IQ=IG+Md2.Q から見た位置を (xi,yi) とすると vi=ω(−yi,xi) なので,外力の仕事率は ∑Fi⋅vi=ω∑(xiFiy−yiFix)=ωτQ.剛体では内力の仕事の和は0だから dKdt=IQωα+Mdd˙ω2=ωτQ(d˙=dddt).ω≠0 で割ると

IQα=τQ−Mdd˙ω

練習 1. 半径 0.30m の円板が,水平な床の上を,中心の速さ 1.5ms−1,中心の加速度 0.60ms−2 で滑らずに転がっている.接点にある円板の点の速度と加速度を求めよ.

答え:速度は0.加速度は鉛直上向き(中心向き)に v2R=1.520.30=7.5ms−2.中心の加速度は答えに入らない.

練習 2. 同じ円板の最上点の速度と加速度を求めよ(進む向きを x,鉛直上向きを y とする).

答え:速度は 2×1.5=3.0ms−1(進む向き).角加速度は 0.60/0.30=2.0rads−2 で,最上点の接線加速度は進む向きに 2.0×0.30=0.60ms−2,中心向きは下向きに 7.5ms−2.中心の加速度を足して (0.60+0.60,−7.5)=(1.2,−7.5)ms−2.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

質量 3.0kg,半径 0.10m の一様な円柱が,傾き 30∘ の斜面を滑らずに転がり降りる.g=9.8ms−2 とする.

斜面を転がる一様な円柱を示す模式図. 斜面を転がる一様な円柱を示す模式図.
  1. 中心の速さが 1.0ms−1 の瞬間に,接点にある円柱の点の加速度の大きさと向きを求めよ.また,接点のまわりで IPα=τP を使ってよい理由を述べよ.

  2. 接点のまわりの式から,重心の加速度の大きさを求めよ.

解答を見る

考え方 接点の点の加速度が P から G へ向かう直線に沿えば,余分な項は0になる.

  1. ω=vR=10rads−1 で,加速度は斜面に垂直に G へ向かう向きに Rω2=10ms−2.rG−rP も同じ向きなので外積は0である.

  2. IP=12MR2+MR2=0.045kgm2.τP=MgRsin⁡30∘=1.47Nm.α≈32.7rads−2,a=Rα≈3.3ms−2 で,23gsin⁡30∘ と一致する.摩擦力を求めるには重心の運動方程式が要る.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

縁が半径 R=0.20m の円で,重心 G が縁の中心 O から b=0.10m ずれた偏心円板がある.質量は M=2.0kg,G のまわりの慣性モーメントは IG=0.030kgm2 である.この円板が水平な床の上を滑らずに転がり,G が O の真横(右)に来た瞬間に,角速度の大きさが ω=5.0rads−1 であった.g=9.8ms−2 とする.

偏心円板に働く力を示す模式図. 偏心円板に働く力を示す模式図.
  1. 接点のまわりで IPα=τP とした場合の角加速度の大きさを求めよ.

  2. 重心の運動方程式と G のまわりの回転の運動方程式から,角加速度,摩擦力,垂直抗力を求めよ.

    1. と (2) の差が,余分な項 M[(rG−rP)×aP]z で説明できることを確かめよ.

解答を見る

考え方 (2) の連立が正しい答えである.接点の点の加速度は G を向かないので,余分な項が残る.

  1. 時計回りを正とする.IP=IG+M(b2+R2)=0.130kgm2,τP=Mgb=1.96Nm で,α=1.960.130≈15.1rads−2.

  2. 右と上を正,回転は時計回りを正とする.O の加速度は右へ Rα.O の右 b にある G は,O に対して下へ αb,左へ ω2b の加速度をもつ.P は G の左 b,下 R にあるので

f=M(Rα−ω2b),N−Mg=−Mαb,IGα=bN−Rf

第1式と第2式を第3式に入れると [IG+M(b2+R2)]α=Mgb+MRbω2 となり,α=1.96+1.000.130≈22.8rads−2.このとき f≈4.1N(右向き),N≈15N.

  1. rG−rP=(b,R),aP=(0,Rω2) の外積の z 成分は bRω2(反時計回り)なので,余分な項は時計回りに MbRω2=1.00Nm で,IPα=τP+MbRω2 は (2) の式と同じである.ω=0 の瞬間だけ (1) と (2) は一致する.エネルギーの式でも,OG が水平な位置から時計回りに角 ψ だけ回ると d2=PG2=R2+b2−2Rbsin⁡ψ なので,この瞬間(ψ=0)dd˙=−Rbω となり,−Mdd˙ω=MbRω2 が同じ差を与える.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,長さ l の一様なはしごを,なめらかな鉛直の壁となめらかな水平の床の間に,床と 60∘ の角をなすように立てかけ,静かに放した.壁と床が交わる点を C,はしごが床となす角を θ とし,はしごが壁から離れるまでを考える.

壁と床に接するはしごの基準点を示す模式図. 壁と床に接するはしごの基準点を示す模式図.
  1. 瞬間回転中心 Q を求め,Q のまわりで IQα=τQ を使ってよいことを示せ.

  2. 角加速度の大きさと,角速度の2乗を θ で表せ.

  3. 壁がはしごを押す力を θ で表し,はしごが壁から離れるときの sin⁡θ を求めよ.

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考え方 上端の速度は鉛直,下端の速度は水平で,それぞれに垂直な直線の交点が Q である.

  1. T を通る水平線と B を通る鉛直線の交点が Q で,C,B,Q,T は長方形をなす.G は対角線 BT の中点だから対角線 CQ の中点でもあり,d=l2 は一定で d˙=0.壁と床の垂直抗力は Q を通り,トルクは重力の分だけになる.

  2. IQ=Ml212+M(l2)2=Ml23,τQ=Mgl2cos⁡θ.倒れる向きの角速度を ω=−θ˙ とすると α=3g2lcos⁡θ.エネルギー保存 12IQω2=Mgl2(sin⁡60∘−sin⁡θ) から ω2=3gl(sin⁡60∘−sin⁡θ)(時間で微分すると α の式に戻る).

  3. 水平に働く力は壁の力 N2 だけである.xG=l2cos⁡θ(C から)を2回微分して x¨G=l2(αsin⁡θ−ω2cos⁡θ) だから

N2=Mx¨G=3Mg4cos⁡θ(3sin⁡θ−2sin⁡60∘)

放した直後は N2≈0.32Mg>0 で,N2=0 となる sin⁡θ=23sin⁡60∘=33(θ≈35∘)ではしごは壁から離れる.

ポイント ここまでのまとめ

  • 変化率の式は,外積の積の微分と ∑mi(ri−rA)=M(rG−rA) から出る.

  • 転がる縁の接点の点は,速度0で O へ向かう加速度 Rω2 をもつ.

  • 瞬間回転中心では IQα=τQ−Mdd˙ω.円柱(d=R)とはしご(d=l/2)では余分な項が0,偏心円板では MbRω2 が残る.

09角運動量を取る点の選び方の演習

未知の力が消える点を選んだあと,その点が固定点か,剛体の物質点か,位置だけを追う幾何学的な点かを確かめてください.LA は静止系の速度,LA∗ はAに対する相対速度で測ります.反時計回りを正とし,ez は紙面手前向き,g=9.8ms−2 とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

外力を受けない質量 M=2.0kg の物体系の重心Gが,速度 V=(3.0,0)ms−1 で進む.基準点Aを速度 vA=(0,1.0)ms−1 で等速に動かす.Aは物体に固定した点ではない.

  1. dLAdt と dLA∗dt を求めよ.

  2. 外力のトルクが0なのに一方が変わる理由を説明せよ.

重心と別方向に動く基準点を示す模式図. 重心と別方向に動く基準点を示す模式図.
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考え方 角運動量の2つの定義で,基準点の速度と加速度のどちらが補正に入るかを確かめる.

  1. τA=0 で,vA×V=−3.0ezm2s−2.よって dLAdt=6.0ezNm.一方,Aは等速なので aA=0 であり,dLA∗dt=0.

  2. 静止系の運動量は一定でも,それに掛けるAからの位置が変わるためである.これは物体が角加速度を得たという意味ではない.MvAV はトルクの次元をもち,Aの速度をGの速度と平行にすれば第1の補正も0になる.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

質量 M,長さ l の一様な棒の端Aを,装置で水平右向きに一定加速度 a で動かす.ある瞬間,棒はAから鉛直上向きに延び,角速度は0である.棒には重力とAでの装置の力だけが働く.

  1. Aのまわりの外力のトルクを求めよ.

  2. この瞬間の角加速度を,動くAのまわりの式で求めよ.

右へ加速する棒の端を示す模式図. 右へ加速する棒の端を示す模式図.
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考え方 Aを通る力を消しても,Aが加速するための補正項は残る.

  1. 装置の力はAに働き,重力の作用線もこの瞬間にはAを通るので,τA=0.

  2. rAG=(0,l/2),aA=(a,0) より,外積の z 成分は −la/2.IA=Ml2/3 だから IAα=Mla/2,α=3a/(2l),反時計回りである.Gの水平加速度は aG,x=a−αl/2=a/4.装置の水平力は Ma/4 で,Gまわりのトルク (l/2)(Ma/4)=Mla/8 を IG=Ml2/12 で割っても同じ角加速度になる.a/l は s−2,a=0 ならこの瞬間の角加速度も0である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

中心Gを重心とする半径 R の円柱が,水平床上で右へ滑りながら回る.中心速度は (V,0),角速度は反時計回りを正とした ω で,V+Rω≠0 とする.幾何学的な接点Aを,いつもGの真下の床上の位置として追う.

  1. Aの速度と,その位置にある円柱の物質点Pの速度を求めよ.

  2. Gまわりの慣性モーメントを IG として,静止系の速度で測る LA を求めよ.dLAdt=τA としてよいか.

滑っている円柱と2種類の接点を示す模式図. 滑っている円柱と2種類の接点を示す模式図.
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考え方 同じ瞬間に同じ位置でも,Aは床上の位置を追う点,Pは円柱の同じ物質を追う点である.

  1. Aの位置は (xG,0) だから vA=(V,0).PはGから (0,−R) にあり,vP=(V+Rω,0).Pは静止せず,瞬間回転中心ではない.

  2. 分解の式から LA=IGω−MRV.AとGの速度が平行なので,−M(vA×V)z=0,dLAdt=τA としてよい.ただし LA=(IG+MR2)ω と置くことはできない.それは V=−Rω のときだけ一致する.床からの力はAを通り,重力もAを通るので τA=0.よって IGα=MRV˙ となり,並進と回転の式とも合う.各項は kgm2s−1 の単位である.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,縁の半径 R の偏心円板が水平床を滑らずに転がる.縁の中心Oから重心Gへのベクトルを b(cos⁡φ,sin⁡φ)(0<b<R)とし,Gまわりの慣性モーメントは IG.角速度は ω=φ˙,角加速度は α.床から離れていない間を考える.

  1. 接点にある物質点Pのまわりの式から α を求めよ.

  2. 床の垂直抗力 N を求めよ.φ=π/2 で接触を保つための ω の条件を示せ.

任意の姿勢の偏心円板を示す模式図. 任意の姿勢の偏心円板を示す模式図.
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考え方 接点の物質点の加速度はOへ向かうが,Gへ向かうとは限らない.補正を入れ,最後に N≥0 を調べる.

  1. rPG=(bcos⁡φ,R+bsin⁡φ),aP=(0,Rω2).したがって IP=IG+M(R2+b2+2Rbsin⁡φ),τP=−Mgbcos⁡φ.補正項は MRbcos⁡φω2 なので

α=−Mbcos⁡φ(g+Rω2)IG+M(R2+b2+2Rbsin⁡φ).

ここで IP は,各瞬間の接点位置に対して求めた値であり,時刻を通じて同じ物質点の慣性モーメントを追った値ではない.

  1. Gの鉛直加速度は aG,y=bαcos⁡φ−bω2sin⁡φ.よって N=M(g+bαcos⁡φ−bω2sin⁡φ).φ=π/2 では α=0,N=M(g−bω2).接触した運動が可能なのは ω2≤g/b で,等号が離れる境目である.必要な摩擦を供給できることも別に要る.b→0 では α=0,N=Mg となり,水平床上の一様な円板に戻る.分子はトルク,分母は慣性モーメントである.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

半径 R,重心が中心Gにある車輪が,半径 C の固定された円形の凸な路面の外側を滑らずに転がる.中心Gの速さは U.車輪が路面の頂点を通る瞬間を考える.必要ならGに水平方向の駆動力を加え,それ以外には重力と接点の力だけが働く.

  1. 接点にある車輪の物質点Pの加速度を求め,Pまわりの IPα=τP を使えるか調べよ.

  2. この瞬間の垂直抗力と,接触を維持する速さの条件を求めよ.

凸な円形路面の頂点を示す模式図. 凸な円形路面の頂点を示す模式図.
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考え方 Gの軌道は半径 C+R の円.Pの速度は0でも,加速度は平面の路面の場合とは違う.

  1. 頂点で右と上を正にする.Gの速度が右向きなら ω=−U/R.水平加速度を a とすれば α=−a/R,aG=(a,−U2/(C+R)).rGP=(0,−R) を加速度の式へ入れると,水平成分は a+αR=0,鉛直成分は U2/R−U2/(C+R).よって aP=(0,CU2/[R(C+R)]).PGと平行なので補正の外積は0で,Pまわりの式を使える.

  2. 鉛直の運動方程式は N−Mg=−MU2/(C+R).したがって N=M[g−U2/(C+R)],必要条件は U2≤g(C+R).C→∞ では N→Mg,aP,y→U2/R で平面の路面に戻る.U2/(C+R) は加速度の次元をもち,N<0 となる速度では路面が車輪を引きつけられないため,接触を仮定した式は成立しない.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,長さ l の一様なはしごが壁から離れ,下端Bだけをなめらかな水平床につけて倒れている.重心Gの水平速度は0とする.床との角を θ(0<θ<π/2),倒れる向きの角速度を ω=−θ˙>0 とする.

  1. 瞬間回転中心Qの位置をGに対して求め,d=QG が一定か調べよ.

  2. Qまわりの補正を含む式から角加速度 α=ω˙ を求めよ.

壁を離れたはしごを示す模式図. 壁を離れたはしごを示す模式図.
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考え方 壁を離れた後は,上端が鉛直に動く条件がなくなる.以前の長方形の作図を続けず,現在の重心速度からQを求め直す.

  1. yG=lsin⁡θ/2 なので VG=(0,−lωcos⁡θ/2).rGQ=(ez×VG)/ω=(lcos⁡θ/2,0).したがって d=lcos⁡θ/2,d˙=lωsin⁡θ/2 で,距離は増える.QはBの真上でGと同じ高さにある.

  2. 床の反力はQを通り,重力のトルクは Mgd.IQ=Ml2/12+Md2 だから IQα=Mgd−Mdd˙ω より

α=6gcos⁡θ/l−3sin⁡θcos⁡θω21+3cos2⁡θ.

壁に接していたときの d=l/2 を使うとこの補正を失う.K=Ml2(1+3cos2⁡θ)ω2/24 と U=Mglsin⁡θ/2 の和を微分しても同じ式になる.g/l と ω2 はともに s−2.この解は下端の接触が続く区間のもので,それを確かめるには別に N=M(g+y¨G)≥0 を調べる.

ポイント 教える人へ

  • A,P,Qという名前より,点を時間を通してどう追うかを説明させる.

  • dLAdt=τA が正しくても,LA=IAω が正しいとは限らないことを滑る円柱で確かめる.

  • 接点の速度が0という確認で終えず,加速度とPGの外積まで調べさせる.

  • 接触条件 N≥0 と,滑らないための摩擦の条件を区別させる.

10剛体の衝突

問い

なめらかな氷の上に,細い棒が静止しています.その端に,棒と垂直な向きにパックが当たりました.棒は進みながら回り出します.このとき,棒の上には衝突の直後に一瞬だけ止まっている点があります.それは棒のどこでしょうか.

野球のバットでボールを打つと,当たる場所によって,手がしびれることもあれば,ほとんど何も感じないこともあります.手に衝撃が来ない「芯」とは,どんな点なのでしょうか.

[図:端を打った棒と瞬間回転中心]

左は衝突前,右の初期状態は衝突直後.再生すると重心は等速直進し棒は等速回転する.橙の物質点は後には動き出し,緑の瞬間回転中心は通常棒から外れる.

考えてみる

質点どうしの衝突は,第5章のとおり運動量保存則と反発係数で解けました.ところが棒が相手だと,棒の重心の速度 V のほかに角速度 ω も未知で,パックの衝突後の速度 u と合わせて未知数は3つです.運動量保存則は1本しかありません.そのうえ,衝突の最中にパックが棒に及ぼす力は,時間とともに複雑に変わって分かりません.それでも3つの未知数を決められるのは,衝突がごく短い時間で終わることと,角運動量を測る点を選べることのおかげです.

撃力の近似

定義 撃力

衝突のように,ごく短い時間 Δt のあいだに大きな力が働くとき,この力を撃力という.撃力の力積 J=∫Fdt は有限の値をもつ.

撃力が働く間にも重力やばねの力などは働きますが,大きさが有限の力の力積は Δt→0 で無視できます.ただし床の垂直抗力や摩擦力も,床への衝突などでは撃力になりえます.物体もこの間にほとんど動かないので,トルクの腕も変わりません.衝突の直前と直後だけを比べるなら,系の外から受ける撃力の力積を J外 として

ΔP=∑J外,ΔL=∑r×J外

です(L は空間に固定した点のまわり).動く点のまわりでは余分な項が付くことを前の題材「角運動量を取る点の選び方」で見ましたが,固定点ならその心配はなく,その瞬間に物体のどの点と重なる点を選んでもかまいません.パックと棒を1つの系に入れれば,両者の接触力は内力になります.作用反作用で同じ作用線上を逆向きに働くので,P も,どの点のまわりの L も変えません.

氷の上の棒

棒(質量 M,重心 G のまわりの慣性モーメント IG)の,G から垂直に距離 d の点に,質量 m,速さ v0 のパックが当たるとします.氷の上では撃力を受けないので,系の運動量と,衝突の瞬間に G があった点のまわりの角運動量が保存します.衝突後のパックの速度を u として

mv0=mu+MV,mv0d=mud+IGω

です.弾性衝突なら運動エネルギーも保存して,3本目の式

12mv02=12mu2+12MV2+12IGω2

が得られます.棒が受けた力積を J とおくと,V=JM,ω=JdIG,u=v0−Jm で,これをエネルギーの式に入れると,J=0(衝突前)以外の解として

J=2v01m+1M+d2IG

が出ます.反発係数 e の衝突なら,分子が (1+e)v0 になります.付着する衝突では e=0 ですが,e=0 だけではその後も付着し続けるとは限りません.

瞬間の回転中心

衝突の直後,棒の上で G から叩かれた側と反対側に s の点の速度は V−ωs です.これが0になる点が

s=Vω=IGMd

で,一様な棒(長さ l)では IG=Ml212 より s=l212d です.直後の棒は,この点のまわりを回っているように見えるので,瞬間の回転中心といいます.

V も ω も J に比例するので,s に J は入らず,パックの質量や速さ,弾性か合体かに関係なく,叩く位置 d だけで決まります.端(d=l2)を叩けば s=l6,G を叩けば s→∞ で,回らずに進みます.

[図:打点と速度分布の関係]

初期状態は端を打った棒の直後の速度分布.再生または打点スライダーで,打点を重心へ近づけると回転中心が遠ざかる様子を比較できる.

固定軸があるとき:打撃の中心

棒の一端 O を固定軸で支えて,G から h の位置にあるとします.軸は撃力を及ぼしうる外力なので,運動量は保存しません.そのかわり,軸の力は O を通るので O のまわりのトルクが0になり,叩く物体も含めた系では O のまわりの角運動量が保存します.O から q の点を垂直に叩く力積 J と,軸が与える力積 JO について,O のまわりの慣性モーメントを IO=IG+Mh2 として

Jq=IOω,MVG=J+JO,VG=hω

です.軸が棒へ与える力積は

JO=J(MhqIO−1)

です.ちょうど JO=0,つまり叩いても軸(手)に力積がかからない点が打撃の中心で,

q=IOMh=h+IGMh

です.一様な棒の端を支点にすると q=2l3 になります.これは第8章の実体振り子の周期 2πIOMgh と同じ周期をもつ単振り子の長さでもあります.

打撃の中心は,前の節と結びついています.G から d=q−h=IGMh の点を叩く自由な棒の回転中心は,ちょうど O にあたる s=h です(sd=IGM).止まっている点に軸を置いても,その点は動かないので,軸は力積を受けないのです.

保存則の選び方

ポイント 衝突でどの保存則を使うか

  1. 系を決め,衝突の直前と直後だけを比べる.互いに撃力を及ぼし合うもの(パックと棒など)を1つの系に入れると,その接触力は内力になる.

  2. 系の外から撃力を受けないか調べる.氷の上の棒では,重力・垂直抗力・摩擦は有限の力で,衝突中の力積は無視できる.固定軸・蝶番・壁から受ける力は撃力になりうる.撃力を受けない向きでは,運動量が保存する.

  3. 角運動量を測る点を,空間に固定した点から選ぶ.未知の撃力の作用線が通る点(固定軸,支点,接触点)を選ぶと,その力のトルクが0になり,未知数が式から消える.

  4. 弾性(e=1)なら運動エネルギーも保存する.非弾性や合体では保存しないので,反発係数の式や,接触点の速度が等しいという条件を使う.

  5. 未知数と式の数を数える.足りなければ,滑らない条件のような接触の条件を加える.

  6. 検算する.運動エネルギーが増えていないか,極端な場合で自然な答えかを見る.

衝突のあとは話が変わります.有限の力である摩擦は,時間をかけると効いてくるからです.ただし摩擦の作用線が基準点を通るなら,そのトルクは0で,角運動量は保存します(次の節の,滑りながら転がる球).

ポイント ここまでのまとめ

  • 撃力は短時間に働く大きな力で,力積は有限である.有限な力の力積は無視でき,その間に物体は動かない.

  • 接触力は内力で,P と固定点のまわりの L を変えない.外から撃力を受けなければ両方が保存し,弾性ならエネルギーも保存する.

  • 自由な棒を G から d の点で叩くと,V=J/M,ω=Jd/IG.直後に止まっている点は G の反対側で s=IGMd.これは叩く位置だけで決まる.

  • 固定軸があると運動量は保存しないが,軸のまわりの角運動量は保存する.軸が力積を受けない点が打撃の中心で,q=IOMh(一様な棒の端支持で 2l3)である.

  • 問いの答え:端を叩くと,止まっている点は G の反対側 l6(反対の端から l3)の点である.バットの芯は,握りから IO/(Mh) の点(打撃の中心)である.

11剛体の衝突の例題

例題 1

オリジナル ★★★☆☆

なめらかな水平面(氷の上)に,質量 M=0.80kg,長さ l=1.2m の一様な細い棒が静止している.質量 m=0.20kg のパックが速さ v0=3.0ms−1 で,棒に垂直な向きに進み,棒の一端 A に当たった.

水平面上の棒とパックを真上から見た図.パックは棒に垂直に端 A へ進む.重心 G,G から A までの距離 \(d=0.60\,\mathrm{m}\),パックの速度 \(v_0\) を示す. 水平面上の棒とパックを真上から見た図.パックは棒に垂直に端 A へ進む.重心 G,G から A までの距離 \(d=0.60\,\mathrm{m}\),パックの速度 \(v_0\) を示す.
  1. 弾性衝突のとき,衝突直後のパックの速度 u,棒の重心の速さ V,角速度 ω を求めよ.

    1. で,衝突直後に棒の上で静止している点を,G からの距離で答えよ.

  2. パックが A に付着して棒と一体になるとき,直後の角速度 ω′ と,失われた運動エネルギーを求めよ.

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考え方 氷の上では撃力を受けないので,運動量が保存する.角運動量は衝突の瞬間に G があった点のまわりで考える.

  1. IG=Ml212=0.096kgm2.棒が受けた力積を J とすると V=JM,ω=JdIG,u=v0−Jm.エネルギー保存に入れて J≠0 の解を取ると

J=2v01m+1M+d2IG=6.05.0+1.25+3.75=0.60kgms−1

したがって u=3.0−0.600.20=0(パックは止まる),V=0.600.80=0.75ms−1,ω=0.60×0.600.096=3.75rads−1.確かめると,運動エネルギーは前が 0.90J,後が 12×0.80×0.752+12×0.096×3.752=0.225+0.675=0.90J で合う.

  1. G から A と反対側に s=Vω=0.753.75=0.20m の点である(s=l212d とも一致する).反対の端 B から見ると 0.40m の点で,B は後ろ向きに 0.75−3.75×0.60=−1.5ms−1 で動く.

  2. 合体後の重心 C は,G から A の側へ mdm+M=0.12m の点で,C の速さは mv0m+M=0.60ms−1.衝突の瞬間に C があった点のまわりの角運動量は,パックが 0.60−0.12=0.48m 離れた線上を進むので,前は 0.20×3.0×0.48=0.288kgm2s−1.直後の慣性モーメントは 0.096+0.80×0.122+0.20×0.482=0.1536kgm2.よって ω′=0.2880.1536=1.875rads−1.直後の運動エネルギーは 12×1.0×0.602+12×0.1536×1.8752=0.18+0.27=0.45J で,失われたのは 0.90−0.45=0.45J(半分)である.回転中心は C から後ろへ 0.601.875=0.32m,つまり G の反対側 0.20m で,(2) と同じ点である.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

長さ l=1.0m,質量 M=0.90kg の一様な細い棒が,上端 O を通る水平な固定軸(なめらか)のまわりに,鉛直にぶら下がって静止している.質量 m=0.10kg の粘土の玉が,速さ v=6.0ms−1 で水平に飛んできて,O から距離 q の点に当たり,棒に付着した.

鉛直にぶら下がる棒を横から見た図.上端 O の固定軸,O から \(q\) の点に水平に当たる粘土の玉,重心 G と O から G までの距離 \(\dfrac l2\) を描く. 鉛直にぶら下がる棒を横から見た図.上端 O の固定軸,O から \(q\) の点に水平に当たる粘土の玉,重心 G と O から G までの距離 \(\dfrac l2\) を描く.
  1. q=1.0m(棒の下端)のとき,直後の角速度と,軸が受ける水平方向の力積を求めよ.

  2. 軸が水平方向の力積を受けないための q と,そのときの角速度を求めよ.

解答を見る

考え方 軸は撃力を受けうるので運動量は保存しないが,O のまわりの角運動量は保存する.重力の力積は無視する.この配置では衝突前後の鉛直運動量が0なので,軸の鉛直力積もこの近似で0となる.

  1. IO=Ml23=0.30kgm2.mvq=(IO+mq2)ω より ω=0.10×6.0×1.00.30+0.10=1.5rads−1.直後の水平方向の運動量は Ml2ω+mqω=0.675+0.15=0.825kgms−1,前は mv=0.60kgms−1 なので,軸が系へ与えた力積は玉の進む向きに 0.825−0.60=0.225kgms−1.したがって軸が棒から受けた力積は,玉の進む向きと反対向きに 0.225kgms−1 である.失われたエネルギーは 12×0.10×6.02−12×0.40×1.52=1.8−0.45=1.35J.

  2. 運動量の式 mv=(Ml2+mq)ω と角運動量の式 mvq=(IO+mq2)ω から ω を消すと,Mlq2=IO より

q=2IOMl=2l3≈0.67m

で,玉の質量 m も速さ v も入らない.これが打撃の中心である.そのとき ω=0.10×6.0×0.6670.30+0.10×0.6672≈1.2rads−1.確かめると,運動量は (0.45+0.0667)×1.161=0.60kgms−1 で前と等しい.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

水平な机の上に,質量 m=0.20kg,半径 R=0.030m の一様な球が置いてある.中心の高さを水平に突き,回転させずに速さ v0=2.0ms−1 で滑り出させた.球と机の動摩擦係数は μ′=0.20,重力加速度は 9.8ms−2 とし,転がり抵抗は無視する.

[図:滑り出した球の初期条件と運動]

初期状態は回転せず右へ滑る球と接点の摩擦・垂直抗力・重力.答えに関わる変化は「解答確認の動く図を開く」で表示し,再生・停止できる.

  1. 滑りが止まり,滑らずに転がり始めたときの速さを求めよ.

  2. そこまでの時間と,摩擦で失われた運動エネルギーを求めよ.

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考え方 第8章「転がりの束縛条件と例題」の例題3では並進と回転の運動方程式を時間で解いた.ここでは別の方法として,トルクが0になる基準点のまわりの角運動量保存を使う.動摩擦力は,運動量も運動エネルギーも変える.しかし,机の面上で進行方向の直線上にある点 P を基準にすると,摩擦力は P と接点を結ぶ向きに働くのでトルクが0である.重力と垂直抗力は同じ鉛直線上にあって,トルクは打ち消し合う.したがって P のまわりの角運動量が保存する.

  1. 球が机の面から高さ R の位置を速さ v で進み,角速度 ω(進む向きに転がる向きを正)で回るとき,P のまわりの角運動量の大きさは mRv+Iω(I=25mR2).はじめは mRv0,滑りが止まったとき ω=vR なので

mRv0=(mR+2mR5)vよりv=57v0≈1.4ms−1

である.

  1. 中心の加速度は −μ′g=−1.96ms−2 なので,t=2.0−1.431.96≈0.29s.運動エネルギーは前が 12×0.20×2.02=0.40J,後が 12×0.20×1.432×75≈0.29J で,失われたのは約 0.11J(もとの 27)である.回転の運動方程式 Iα=μ′mgR から出る角加速度 163rads−2 を使っても,ω=1.430.030=47.6rads−1 に達する時間は 0.29s で一致する.

例題 4

オリジナル ★★★★☆

例題 3 と同じ球(m=0.20kg,R=0.030m)が机の上に静止している.中心から高さ h の点を,水平なキューで力積 J=0.40kgms−1 だけ突く.押し球は中心より 0.015m 上(h=+0.015m),引き球は 0.015m 下(h=−0.015m)を突く.突いた直後,机との摩擦が効く前に,球は静止している同じ球に正面から弾性衝突した.球どうしの接触は滑らかで,接線方向の力積は無視する.その後,摩擦で転がり始めるまでを考える.動摩擦係数は 0.20.

[図:押し球と引き球の打点]

初期状態は中心より上と下を突く2つの設定.「解答確認の動く図を開く」後の再生は,球同士の衝突直後から手球が転がり始めるまでを表す.

  1. 突いた直後の中心の速さ v0 と角速度 ω0 を,押し球と引き球のそれぞれについて求めよ.

  2. 衝突の直後の手球の速度と角速度を求めよ.

  3. その後に手球が転がり始めたときの速度を求めよ.

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考え方 (1) 突く力積は水平で,中心のまわりのトルクは Jh.(2) 球どうしの接触力は中心を通るので,手球の回転は変わらない.(3) 机の面上の点のまわりの角運動量が保存する(例題 3).

  1. v0=Jm=2.0ms−1.I=25mR2=7.2×10−5kgm2 で Iω0=Jh より ω0=0.40×(±0.015)7.2×10−5=±83rads−1.押し球は前進の向きに転がる回転(正),引き球は逆向きの回転(負)である.

  2. 質量が等しい球の弾性正面衝突では速度が入れ替わるので,手球は止まり,的球が 2.0ms−1 で進む.接触力は手球の中心を通るのでトルクは0で,手球は ω0 のまま回り続ける.

  3. 机の面上の点のまわりの角運動量は,衝突直後は Iω0,転がり始めたとき mRv+IvR.

v=Iω0mR+I/R=27Rω0=±0.71ms−1

押し球は前へ 0.71ms−1 進み(的球について行く),引き球は後ろへ 0.71ms−1 戻る.引き球では,接点が机に対して前へ動くので,摩擦力が後ろ向きに働くためである.かかる時間は 0.710.20×9.8≈0.36s.運動エネルギーは 12Iω02=0.25J から 27 の約 0.071J に減る.

ポイント ここまでのまとめ

  • 氷の上の棒への衝突は,運動量・固定点のまわりの角運動量・(弾性なら)エネルギーの3本で解ける.叩かれた棒の止まっている点は,叩く位置だけで決まる.

  • 固定軸があるときは,軸のまわりの角運動量で ω を決め,運動量の差から軸の力積を出す.軸の力積が0になる点が打撃の中心である.

  • 外力の摩擦でも,作用線が基準点を通ればトルクは0である.机の面上の点のまわりでは,滑りながら転がる球の角運動量が保存し,v=mv0+Iω0/Rm+I/R2 が出る.

  • 押し球・引き球は,同じ式で ω0 の符号が違うだけである.

12剛体の衝突の演習

反発係数で比べるのは,重心どうしではなく接触した点どうしの速度です.衝突の間と,その後の運動を分けて考えてください.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

長さ l,質量 M の一様な棒が,なめらかな水平面上で静止している.重心Gから d(0<d≤l/2) の点へ,棒と垂直な水平力積 J を加えた.

  1. 衝突直後の瞬間回転中心までの距離を求めよ.

  2. 瞬間回転中心が棒の上にある打点の範囲を求め,d=l/4 の場合を図で説明せよ.

棒の中心Gからdの打点へ垂直な力積Jを示す.両端と全長lを記し,回転中心は描かない. 棒の中心Gからdの打点へ垂直な力積Jを示す.両端と全長lを記し,回転中心は描かない.
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考え方 IG=Ml2/12.重心の並進と回転による速度が打ち消す点を探す.

  1. V=J/M,ω=Jd/IG.Gから打点と反対側へ s 離れた点の速度は V−ωs なので,s=IG/(Md)=l2/(12d).長さの次元を持ち,力積の大きさには依存しない.

  2. 棒上の点であるには s≤l/2,すなわち l/6≤d≤l/2.d=l/4 では反対側へ s=l/3 であり,反対の端から l/6 内側にある.0<d<l/6 なら回転中心は棒の延長線上にあって,棒上で静止する点はない.d→0 では ω→0 となり純粋な並進へ移る.瞬間回転中心は固定支点ではなく,この時刻の速度分布を表す点である.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

なめらかな水平面上で,質量 M,重心まわりの慣性モーメント I の剛体が静止している.重心から距離 d>0 の点を,その半径に垂直に質量 m の小球が速さ u で打つ.接触は滑らかで,力積は入射方向だけである.反発係数は e である.

  1. 剛体への力積 J を,接触点の速度を使って導け.

  2. m=M/2,I=Md2,e=1/2 の場合の小球の速度,剛体の重心速度,角速度を求めよ.

小球mが速さuで剛体の偏心した点へ進む図.Gから打点までd,接触法線とIを示す. 小球mが速さuで剛体の偏心した点へ進む図.Gから打点までd,接触法線とIを示す.
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考え方 衝突前後の速度を入射方向に符号付きで表す.剛体の接触点には並進速度だけでなく回転の速度もある.

  1. 小球は u−J/m,剛体の重心は J/M,角速度は打点が前へ動く向きを正として Jd/I.したがって接触点速度は J/M+Jd2/I で,反発条件は

(u−Jm)−(JM+Jd2I)=−eu

となる.よって J=(1+e)u/(1/m+1/M+d2/I).

  1. 分母は 4/M で J=3Mu/8.小球は u/4,重心は 3u/8,角速度は 3u/(8d) となる.接触点は 3u/4 なので,小球との差は −u/2 で条件に合う.衝突後のエネルギーは 5Mu2/32,前は Mu2/4 であり,損失 3Mu2/32 は正である.重心速度だけを反発条件に入れると,この接触点の検算が合わなくなる.

演習 3

オリジナル ★★★☆☆

水平面上に,軽い棒で結んだ2つの質点が静止している.一端Aの質量は m,他端Bは 3m,距離は l である.Aから距離 q の点を通る鉛直軸で支える装置を考え,0≤q<3l/4 とする.Bへ棒と垂直な力積 J を加えた.

  1. 軸が装置へ与える力積を求めよ.

  2. それが0になる q を求め,自由な装置の瞬間回転中心との関係を説明せよ.

Aにm,Bに3mを付けた軽い棒,Aからqの支点O,Bへの垂直なJを示す. Aにm,Bに3mを付けた軽い棒,Aからqの支点O,Bへの垂直なJを示す.
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考え方 装置の重心はAから 3l/4 にある.軸のまわりの角力積と,全運動量の変化を別に計算する.

  1. 軸から重心まで h=3l/4−q,IO=mq2+3m(l−q)2 である.角速度は ω=J(l−q)/IO,重心速度は hω.力積の方向を正として

JO=4mhω−J=J(4mh(l−q)IO−1)

となる.これは軸が装置へ与える力積であり,装置が軸へ与える力積は −JO である.

  1. 4mh(l−q)=IO を整理すると −mlq=0,したがって q=0,すなわちAを支えればよい.自由な装置では IG=3ml2/4,打点BはGから d=l/4 にあるので,瞬間回転中心まで s=IG/(4md)=3l/4.これはAそのものである.Aが元から静止する速度分布なので,そこを固定しても追加の力積が要らない.q=0 を(1)に戻すと ω=J/(3ml),4mhω=J と検算できる.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

なめらかな水平面上に静止している一様な薄い円板の質量は M,半径は R である.質量 m の小さな粘土が,円板の縁の点Aへ接線方向に速さ u で飛来し,付着する.円板と粘土を合わせた系には水平外力積がない.

  1. 合体後の重心Cの速さと,Cのまわりの慣性モーメントを求めよ.

  2. 角速度と,失われる運動エネルギーを求めよ.

水平円板の縁Aへ接線方向に進む粘土mと速度u,元の中心G,半径Rを示す.合体後の重心は描かない. 水平円板の縁Aへ接線方向に進む粘土mと速度u,元の中心G,半径Rを示す.合体後の重心は描かない.
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考え方 合体後は重心が移る.元の円板の中心のまわりに,合体後の全エネルギーを単純に回転の形で書いてはいけない.

  1. CはGからAへ mR/(M+m) 進んだ位置にあり,VC=mu/(M+m).平行軸の定理より

IC=12MR2+M(mRM+m)2+m(MRM+m)2=MR2(M+3m)2(M+m)

である.

  1. 衝突時のCの位置を基準にすると,初めの角運動量は muMR/(M+m).よって ω=2mu/[R(M+3m)].直後のエネルギーは (M+m)VC2/2+ICω2/2=3m2u2/[2(M+3m)].損失は

Q=12mu2−3m2u22(M+3m)=mMu22(M+3m)

となる.Q>0,m/M→0 では粘土のエネルギーのほぼ全部が失われる.角速度の次元は速度÷長さであり,質量をすべて同じ倍率にしても変わらない.

ポイント 教える人へ

  • 反発係数の式を書く前に,接触点の速度矢印を並進と回転の2本に分けて描かせてください.

  • 軸の力積は,どちらの物体が受ける量かを必ず言葉で添えます.作用反作用を取り違えると符号だけ逆になります.

  • 付着問題では,衝突前後の全質量と重心を確認します.エネルギーを保存したくなる読者には,まず失われる量が非負かを調べさせてください.

13第9章の章末問題

系に含める物体と,角運動量を測る点を自分で選んでください.運動エネルギーを保存できない過程でも,何が変わらないかを探すと見通しが立ちます.

演習 1

オリジナル ★★★☆☆

なめらかな水平面を速さ V で直進する台に,同じ鉛直軸を持つ2つのローターを載せた.軸は台に固定され,外部へ鉛直軸まわりのトルクを伝えない.ローターの慣性モーメントは I,2I,初めの角速度は 3ω0,−ω0 である.装置全体の質量は M,重心は軸上にある.内部クラッチをつなぐと,最終的に両ローターが同じ角速度になる.

  1. 最終角速度と発熱量を求めよ.

  2. 重心の運動と外部の運動エネルギーは変わるか.発熱量を V で変えられるかも説明せよ.

台の上に同軸のローターIと2Iを上下に描き,初めの逆向き回転3ω₀と−ω₀,台のVを示す. 台の上に同軸のローターIと2Iを上下に描き,初めの逆向き回転3ω₀と−ω₀,台のVを示す.
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考え方 クラッチの摩擦は内力である.角運動量は足し算で保存するが,回転エネルギーは一部が熱になる.鉛直運動はない.

  1. I(3ω0)+2I(−ω0)=3Iωf より ωf=ω0/3.初めの回転エネルギーは 11Iω02/2,最後は Iω02/6 で,差の Q=16Iω02/3 が発熱になる.一般式 Q=I1I2(ω1−ω2)2/[2(I1+I2)] に戻しても同じ結果を得る.

  2. 水平外力はなく P=MV は一定なので,MV2/2 は変わらない.発熱は内部の相対的な回転が減った分であり,V を変えても同じである.特に V=0 でも発熱は生じる.「内部角運動量一定」は「内部運動エネルギー一定」を意味しない.

演習 2

オリジナル ★★★☆☆

水平な無端ベルトを2つの固定ローラーに掛ける.上側の直線部分で質量 m の人が右へ走り出する.ベルトとローラーの運動エネルギーを,上側ベルトの右向き速度 w を使って Aw2/2 と表せるとする.A>0 は装置の有効な慣性を表し,単位は質量である.初めはすべて静止し,人が上側ベルトから受ける右向き摩擦力は一定の f である.接触は滑らず,軸摩擦はない.人の体内エネルギーの減少を考え,重心の上下動と四肢の運動エネルギーの変化は無視する.

  1. 時間 t 後の人の速度と w を求めよ.

  2. 人の重心とベルトの幾何学的な重心を合わせて,水平運動量保存を使えない理由を説明せよ.

  3. 人が消費した内部エネルギーを求めよ.

固定軸を持つ2ローラーと無端ベルト,上側を走る人,右向きfを描く.上側ベルト速度wの正方向を示す. 固定軸を持つ2ローラーと無端ベルト,上側を走る人,右向きfを描く.上側ベルト速度wの正方向を示す.
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考え方 軸がなめらかでも,固定軸は装置へ外力を及ぼす.重心が静止するベルトでも,内部に運動エネルギーを蓄えられる.

  1. 人について mv˙=f より v=ft/m.ベルトの運動方向に沿う駆動力は −f なので Aw˙=−f,w=−ft/A.この式は仕事率 d(Aw2/2)dt=−fw とも一致する.

  2. 固定された支持台から水平反力を受けるため,人・ベルト・ローラーの系は孤立していない.一様な無端ベルトでは全体の重心は固定されていても,上側と下側は逆向きに運動している.人の運動量 ft の増加は支持部からの外力積でまかなわれ,矛盾はない.支持台まで自由に動ける別の装置なら,その台の反動も含める必要がある.

  3. 固定軸は仕事をせず,接触の滑りによる発熱もないので,減った体内エネルギーは増えた全運動エネルギーに等しい.

Q=12mv2+12Aw2=f2t22(1m+1A)

A→∞ ならベルトはほぼ静止し,普通の床を走る極限に近づく.有限の A では人はベルトを逆向きに回すためのエネルギーも使う.

演習 3

オリジナル ★★★☆☆

幅 a,質量 M の一様な薄い長方形板を,左の鉛直辺Oで摩擦なく支える.初め板は静止している.質量 m=M/3 の小球が,板の幅の中央へ垂直に速さ u で弾性衝突する.球と板の接触は滑らかである.

  1. 衝突直後の球の速度と板の角速度を求めよ.

  2. 軸が板へ与えた,入射方向の力積を求めよ.

鉛直辺Oを軸とする幅aの板を上から見て,Oからa/2の中央への入射球M/3とuを示す. 鉛直辺Oを軸とする幅aの板を上から見て,Oからa/2の中央への入射球M/3とuを示す.
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考え方 固定軸の力積があるので並進運動量を保存してはいけない.軸まわりの慣性モーメントは IO=Ma2/3.

  1. 板への力積を J とすれば IOω=Ja/2,球は u−J/m.弾性の反発条件は u−J/m−(a/2)ω=−u だから

J=2u1/m+(a/2)2/IO=8Mu15

となる.球の速度は −3u/5,板の角速度は 4u/(5a).板の重心速度は 2u/5 である.

  1. 板だけの運動量変化は 2Mu/5.よって軸から板への力積は JO=2Mu/5−8Mu/15=−2Mu/15,入射と反対向きである.板から軸へは逆向きとなる.エネルギーを検算すると,球は 3Mu2/50,板は 8Mu2/75,和は Mu2/6=mu2/2 で保存する.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

一様な棒の質量は M,長さは l である.なめらかな水平面上で,ある瞬間に棒が y 軸に沿い,重心は原点,重心速度は +x 方向に V>0,自転は反時計回りに ω>0 である.この瞬間,棒上の座標 y=b の点へ −x 方向の力積を1回だけ加える.

  1. 並進と回転を同時に止めるのに必要な力積の大きさと b を求めよ.

  2. そのような打点が棒上に存在する条件を求め,除かれるエネルギーを示せ.

棒の重心速度Vと反時計回りの角速度ω,左向きの力積Jを示す.打点は概念的な位置で,bの符号は未定である. 棒の重心速度Vと反時計回りの角速度ω,左向きの力積Jを示す.打点は概念的な位置で,bの符号は未定である.
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考え方 2つの運動を止めるには,運動量と内部角運動量を同時に0にする必要がある.力積の符号を外積で調べる.

  1. 力積の大きさを J とすると MV−J=0,よって J=MV.(0,b,0)×(−J,0,0)=(0,0,bJ) なので IGω+bJ=0.したがって b=−l2ω/(12V).Gより下側を打つ.上側へ左向きの力積を加えると,回転をむしろ強める.

  2. |b|≤l/2 は ωl≤6V に等しい.この範囲では Q=MV2/2+Ml2ω2/24 が除かれる.これは受動的な制動でも実現しうる.この打点の初速度は vx=V−ωb=V+IGω2/(MV)>0 で,力積はその動きを妨げる向きだからである.ω→0 なら中心を打てばよい.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

質量 M=2.0kg の剛体に,重心から未知の距離 d で垂直な力積 J=1.2kgms−1 を加えた.初め静止し,なめらかな水平面内で動く.直後の角速度は 3.0rads−1,全運動エネルギーは 0.90J と測定された.

  1. 重心まわりの慣性モーメントと打点の距離を求めよ.

  2. 直後の瞬間回転中心までの距離と,回転に入ったエネルギーの割合を求めよ.

形の詳細が未知の剛体にG,未知の距離d,力積Jを描く.角速度の測定とエネルギー測定を短く添える. 形の詳細が未知の剛体にG,未知の距離d,力積Jを描く.角速度の測定とエネルギー測定を短く添える.
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考え方 全エネルギーから並進の分を引けば,形を知らなくても回転の慣性モーメントを逆算できる.

  1. V=J/M=0.60ms−1.K外=0.36J より K内=0.54J.したがって IG=2K内/ω2=0.12kgm2.角力積から d=IGω/J=0.30m となる.

  2. s=V/ω=0.20m で,打点と反対側である.回転に入った割合は 0.54/0.90=0.60,すなわち60 %.ds=0.060m2=IG/M と検算できる.測定されたエネルギーが J2/(2M) より小さかったなら,この静止からの平面運動という仮定とは両立しない.また形が不明なので,回転中心が物体の内部にあるかどうかはこのデータだけでは決まらない.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

平面上の3質点 m,m,2m の重心に対する位置が,ある瞬間 (a,0),(−a,0),(0,0) である.重心速度は V,重心まわりの角運動量の z 成分は L>0 とする.

  1. 各内部速度を vi′=ωez×ri′+wi と書き,ω=L/(2ma2) と選ぶと,エネルギーの交差項が消えることを示せ.

  2. この位置配置と V,L を持つ運動の,最小の運動エネルギーと各速度を求めよ.ez は紙面に垂直な単位ベクトルである.

Gの左右aにm,Gに2mの3質点を配置し,重心速度Vを描く.未知の内部速度は描かない. Gの左右aにm,Gに2mの3質点を配置し,重心速度Vを描く.未知の内部速度は描かない.
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考え方 指定の角運動量を持つ剛体回転を先に取り出すと,残りは角運動量を持たない速度になる.

  1. I=∑mi|ri′|2=2ma2.指定の回転の角運動量は Iω=L なので,∑mi(ri′×wi)z=0.したがって交差項 ω∑mi(ez×ri′)⋅wi は0で,

K=12(4m)V2+L22I+∑i12mi|wi|2

と書ける.

  1. 最後の和は非負で,すべての wi=0 のとき最小.Kmin=2mV2+L2/(4ma2).速度は順に V+(0,L/(2ma)),V+(0,−L/(2ma)),V である.これらは重心の条件も満たす.これはこの瞬間の下限であり,自由な3質点が以後もこの配置を保つという意味ではない.L=0 では全員が重心と同じ速度を持つ状態が最小になり,第6章の結果につながる.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,長さ l の一様棒の端Aを,上下に動く支持具へ摩擦のない軸で取り付ける.支持具の鉛直上向き加速度を a とする.棒はAから斜め下へ延び,鉛直下向きから反時計回りに角 θ(0<θ<π/2) をなす.棒には重力とAの支持力だけが働く.

  1. 相対速度で測るAまわりの式から,棒の角加速度 α を求めよ.

  2. 支持具の加速度が一定で,棒を小さく振動させるときの周期を求めよ.a=−g と a<−g の場合も説明せよ.

鉛直に加速する支持点と棒を示す模式図. 鉛直に加速する支持点と棒を示す模式図.
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考え方 Aを通る支持力を消すには,Aが動くための補正も入れる.そのあと角の小さい極限を調べる.

  1. rAG=(lsin⁡θ/2,−lcos⁡θ/2).重力のトルクは −Mglsin⁡θ/2,補正の外積は Mlasin⁡θ/2.IA=Ml2/3 より α=−3(g+a)sin⁡θ/(2l).Aが空間に固定された場合の式へ,単に支持力を消しただけではこの a の分を得られない.

  2. 小さな θ では sin⁡θ≈θ だから,g+a>0 なら θ¨=−[3(g+a)/(2l)]θ,T=2π2l/[3(g+a)].a=0 で端を固定した棒の周期に戻る.a=−g では角加速度が0で,初めの角速度を保ち,復元する振動はない.a<−g では下向きの姿勢からのずれを増す角加速度となり,この姿勢は不安定である.l/(g+a) は時間の2乗の次元をもつ.ここでは座標を動く系へ移さず,静止系で導いた補正の式だけを使った.

14第9章の発展問題

保存則に加えて,打点の範囲,接触の条件,内部の拘束を調べます.式が解けても,負の接触力積や不可能な打点を採用していないかまで確かめてください.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

なめらかな水平面上に静止した,質量 M,長さ l の一様な棒へ,質量 m の小球を垂直に速さ u で当てる.重心から打点までの距離を d(0≤d≤l/2) とし,反発係数は一定の e(0≤e≤1) である.接触の力積は入射方向に限る.

  1. 衝突直後の棒の角速度を最大にする d を求めよ(必要なら,商の微分 ddd(dc+d2)=c−d2(c+d2)2(c は定数)を使ってよい).質量比による場合分けを明示せよ.

  2. m=M,e=1/2 のとき,最適打点,瞬間回転中心,小球の速度,失われるエネルギーの割合を求めよ.

棒のGから可変距離dへ小球mが速さuで入射する図.選べる打点の範囲0からl/2を括弧で示す. 棒のGから可変距離dへ小球mが速さuで入射する図.選べる打点の範囲0からl/2を括弧で示す.
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考え方 端ほど腕は長いが,接触点が動きやすくなるので力積は小さくなる.力積を一定とみなして最大化してはいけない.

  1. I=Ml2/12,A=1/m+1/M とおく.反発条件から J=(1+e)u/(A+d2/I),したがって

ω(d)=(1+e)udIA+d2,dωdd=(1+e)u(IA−d2)(IA+d2)2

である.制限がなければ d∗=IA=l(M+m)/(12m) で最大.これが l/2 以下なのは M≤2m のときである.よって m≥M/2 では d∗,m<M/2 では端 l/2 を選ぶ.境界では両方の式が一致する.内部最適点では ωmax=(1+e)u/(2IA).反発係数は大きさを変えるが最適打点を変えない.

  1. d∗=l/6.この点では d∗2/I=A=2/M なので J=3Mu/8,V=3u/8,ω=36u/(4l).瞬間回転中心は打点と反対側へ s=V/ω=l/(26).小球は u−J/M=5u/8 で進む.損失は Q=(1−e2)u2/[2(A+d∗2/I)]=3Mu2/32,初めの Mu2/2 の 3/16 である.接触点の速度は V+ωd∗=9u/8 であり,小球との差は −u/2 と反発条件を満たす.小球が前進しても棒の接触点より遅ければ,両者は離れていく.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

質量 M,長さ l の一様な細い棒の端Aへ,棒と垂直な水平力積 J を加える.棒は初め静止し,水平面はなめらかである.撃力が終わった後の自由運動を考える.

  1. 棒の中央の断面で,一方の半分が他方の半分へ及ぼす力の大きさと向きを求めよ.

  2. 棒を同じ材質・断面積 S で作り,許される引張応力を σ とする.自由回転中に破断しないための J の上限を求めよ.衝突中の局所的な応力波は考えない.

  3. 衝突直後,中央の結合を力積なしに外せたとする.2本の半棒の重心速度と自転角速度を求め,エネルギーが飛び変わらないことを確かめよ.

棒の端AへのJと中央断面を示す.中央の結合を外せることを拡大図で描き,未知の内部力は描かない. 棒の端AへのJと中央断面を示す.中央の結合を外せることを拡大図で描き,未知の内部力は描かない.
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考え方 棒全体に外力がなくても,半分だけを系に取れば切断面の力は外力になる.半棒の重心は全体の重心のまわりを回っている.

  1. 全体の V=J/M,ω=6J/(Ml) は一定.半棒の重心はGから l/4 にあるので,その向心加速度は ω2l/4.質量は M/2 だから

F=Mω2l8=9J22Ml

で,それぞれの半棒をGへ引く向きである.切断面では引張力であり,2つの力は作用反作用の対となる.

  1. 線密度 λ=M/l とする.Gから距離 x≥0 の断面が外側部分へ及ぼす張力は T(x)=∫xl/2λω2rdr=λω2(l2/4−x2)/2.最大は中央で,F/S≤σ より J≤2MlSσ/9.単位は kgmN=kgms−1 である.これは撃力が終わった後の条件だけであり,衝突時にも安全だとは結論できない.

  2. A側と反対側の重心速度は入射方向を正として V+ωl/4=5J/(2M),V−ωl/4=−J/(2M).各半棒は同じ ω で回り続ける.各重心まわりの慣性モーメントは (M/2)(l/2)2/12=Ml2/96.並進エネルギーの和は 13J2/(8M),自転の和は 3J2/(8M),合計は 2J2/M.切断前の MV2/2+(Ml2/12)ω2/2 と一致する.内部力を除いた瞬間には速度は変わらず,その後の軌跡が変わるのである.

演習 3

オリジナル ★★★★★

質量 M,長さ l の一様な棒の両端に,棒を車軸とする薄い車輪を付ける.車輪の半径は棒の長さに比べて十分小さく,棒の運動は斜面に平行な平面内に限る.車輪の質量・慣性モーメント・軸摩擦は無視し,十分広い傾斜角 β の平面上を滑らずに転がるとする.車輪は車軸に垂直な方向へ自由に転がれるが,車軸方向には滑れない.両端の接触は保たれるものとする.

斜面に沿って下向きを x,等高線方向を y とし,棒の向き n=(cos⁡θ,sin⁡θ),それを90度回した方向を t=(−sin⁡θ,cos⁡θ) とする.初め θ=0,重心速度は0,棒は面内で θ˙=Ω>0 の回転をしている.

  1. θ˙ が一定で,重心速度が V=ut と書けることを示せ.

  2. u(t) と重心の軌跡を求め,1回転後の変位を示せ.必要なら cos2⁡θ=1+cos⁡2θ2 を使ってよい.

  3. 滑りを防ぐのに必要な静止摩擦係数の下限を求めよ.

斜面内の座標xを下り方向に取り,棒の両端の車輪,向きnと転がれる向きt,角θを描く.初期は棒がx方向である. 斜面内の座標xを下り方向に取り,棒の両端の車輪,向きnと転がれる向きt,角θを描く.初期は棒がx方向である.
解答を見る

考え方 車輪の質量が無視できるので,転がる方向の力は0である.車軸方向の摩擦は棒に沿い,重心まわりの面に垂直なトルクを持たない.見かけの力を導入せず,斜面に固定した座標で計算する.

  1. 両端の車軸方向速度はともに V⋅n で,滑らないため0.よって V=ut.重力はGに作用し,接触力も面に垂直な角運動量を変えないので,θ˙=Ω,θ=Ωt.

  2. a=gsin⁡β と略記する.t 方向の運動方程式は u˙=−asin⁡θ.初期条件から u=a(cos⁡θ−1)/Ω.x˙=−usin⁡θ,y˙=ucos⁡θ を積分すると,初期位置を原点として

x=a2Ω2(1−cos⁡θ)2,y=aΩ2(θ2+sin⁡2θ4−sin⁡θ)

となる.1回転では Δx=0,Δy=πa/Ω2.下り続けるのではなく,上下に往復しながら等高線方向にずれていく.Mu2/2=Max が成り立ち,回転エネルギーは一定なのでエネルギー保存にも合う.β=0 ならGは動かない.

  1. t˙=−Ωn だから,重心の n 方向加速度は −uΩ.摩擦の合力の符号付き成分を f とすると −MuΩ=Macos⁡θ+f,よって f=Ma(1−2cos⁡θ).両輪の反力は Mgcos⁡β/2 ずつで,対称に f/2 を負担できる.|1−2cos⁡θ| の最大値は3なので,全回転で滑らない条件は μ≥3tan⁡β.条件を満たさない床では,(2)をそのまま長時間延長できない.

演習 4

オリジナル ★★★★★

質量 M,長さ l の一様棒が,なめらかな水平面上で y 軸に沿って静止している.質量がともに M の2つの小球A,Bが,+x 方向へそれぞれ速さ u,v>0 で進み,Aは棒の中心G,Bは上端へ同時に接触する.小球同士は接触せず,各接触の力積は x 方向だけである.

反発しない瞬間衝突を次の模型で扱う.各接触で,棒への力積 JA,JB は非負.力積が正の接触では,直後の球と棒の接触点の法線速度は等しくなる.力積が0の接触では,棒の接触点速度が球の速度以上で,互いに離れてよいものとする.これは付着を要求する模型ではない.

  1. 両方の力積が正の場合を解き,成立する v/u の範囲を求めよ.

  2. その範囲外で成立する解を求めよ.

  3. 各範囲のエネルギー損失を求め,境界で連続することを確認せよ.

y軸上の棒のGと上端に向け,左側から小球Aのuと小球Bのvを水平に描く.接触が同時であることを記す. y軸上の棒のGと上端に向け,左側から小球Aのuと小球Bのvを水平に描く.接触が同時であることを記す.
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考え方 2接点の力積は同じ棒を介して影響し合う.独立した2回の衝突として順に計算してはいけない.負になった力積は,引っ張る接触を意味し,この模型では認めない.

  1. 棒の重心速度は V=(JA+JB)/M,時計回りの角速度は ω=6JB/(Ml).Gと上端の速度はそれぞれ (JA+JB)/M,(JA+4JB)/M.球の速度と等置すると 2JA+JB=Mu,JA+5JB=Mv.したがって

JA=M9(5u−v),JB=M9(2v−u)

となる.両方正なのは 1/2<v/u<5.各球の速度は u−JA/M,v−JB/M で,棒の対応する接点と一致する.

  1. v/u≤1/2 では JB=0,JA=Mu/2.棒は回らず V=u/2 で,上端がBより速いので離れる条件を満たす.v/u≥5 では JA=0,JB=Mv/5.このとき V=v/5,ω=6v/(5l) で,GがAより速い.等号では一方の力積が0かつ相対速度も0で,両方の表式が同じ解を与える.

  2. 速度変化が力積に線形なので,エネルギー変化は各力積に対する接触相対速度の始値と終値の平均で計算できる.活動する接触は終値0だから Q=(JAu+JBv)/2.よって

Q={Mu2/4(v/u≤1/2),M(5u2−2uv+2v2)/18(1/2≤v/u≤5),Mv2/10(v/u≥5).

中央の分子は M{(u−v)2+4u2+v2} で常に正.境界 v=u/2 では Mu2/4,v=5u では 5Mu2/2=Mv2/10 に一致する.全運動量と角運動量はどの範囲でも保存し,エネルギーだけが失われる.

15第9章のまとめ

物体の集まりを,重心全体の運動と,重心に対する運動に分けました.2体について第6章で使った考え方が,多数の質点や回転する剛体にも使えます.ただし,分けて書けることと,それぞれが保存することは別です.

3つの分解

全質量を M,重心位置を R,重心速度を V とします.ri′=ri−R,vi′=vi−V です.角運動量は慣性系の固定点Oから測り,内部の角運動量は重心から測ります.

量

外部運動の分

内部運動の分

全体

運動量

MV

∑mivi′=0

P=MV

運動エネルギー

MV2/2

K内=∑mi|vi′|2/2

K=MV2/2+K内

角運動量

R×P

L′=∑ri′×mivi′

LO=R×P+L′

ポイント 分解で消えるもの

∑miri′=0 と ∑mivi′=0 によって交差項が消える.内部の運動量の和が0でも,各部分は動いており,内部のエネルギーや角運動量は0とは限らない.

並進しながら回る剛体を,Gの並進とGまわりの回転の2つに分ける模式図.運動量,エネルギー,角運動量の3行で外部と内部を対応させる. 並進しながら回る剛体を,Gの並進とGまわりの回転の2つに分ける模式図.運動量,エネルギー,角運動量の3行で外部と内部を対応させる.

保存則の選び方

ポイント 系・時間・基準点を決める

  1. まず系に含める物体を決めます.棒と球の接触力は,両者を含めれば内力,棒だけを取れば外力です.

  2. 調べる時間区間を決めます.衝突中は有限の重力やばねの力の力積を無視できても,固定軸や床の衝撃力まで無視できるとは限りません.

  3. 外力積が0の方向では運動量が保存します.固定軸で支えられた物体の全運動量は,普通は保存しません.

  4. 角力積が0になる固定点を選びます.固定軸を基準にすれば,軸の未知の力積を角運動量の式から消せます.重心まわりなら,重心が加速しても dL′dt=τG を使えます.接点のような動く点を使うときは,余分な項が消えるかを確かめます.内力のトルクが相殺する系を前提にします.

  5. エネルギーの行き先を調べます.弾性衝突なら運動エネルギーが保存します.付着や摩擦では熱・変形へ移る分を含め,爆発や筋肉では内部から供給される分を含めます.

  6. 反発係数は接触点どうしの速度に使います.剛体の接触点速度は V+ω×r′ です.重心の速度だけで代用しないでください.

  7. 力積の向き,打点の範囲,エネルギー損失の符号を検算します.解けた式が接触条件を満たさなければ,別の場合分けが必要です.

状況

運動量

重心まわりの角運動量

運動エネルギー

外力なし,内力で変形・発熱あり

保存

内力のトルクが相殺すれば保存

一般には変化

一様な重力だけを受ける平面運動の剛体

鉛直成分が変化

保存

並進の分が変化し,回転の分は一定

自由な剛体と球の滑らかな弾性衝突

系全体で保存

系全体の重心まわりで保存

系全体で保存

固定軸を持つ物体への衝突

一般には変化

一般には変化.固定軸まわりを選ぶ

弾性なら保存,付着なら減少

主な公式と条件

  • 平面運動の剛体では K内=IGω2/2,Lz′=IGω です.3次元の任意の回転で角運動量ベクトルが角速度と平行になるとは限りません.

  • 2質点では K内=μvrel2/2,L′=μr×vrel です.μ=m1m2/(m1+m2) は換算質量です.

  • 重心の仕事は Δ(MV2/2)=∫F外⋅dR.実際の仕事は各力の作用点の変位で計算します.外力は重心の運動だけでなく,内部の回転なども変えられます.

  • 静止した自由な剛体へ,Gから距離 d で垂直な力積 J を加えると,V=J/M,ω=Jd/IG.直後の瞬間回転中心は打点と反対側に s=IG/(Md) です.延長線上に来る場合もあります.

  • 一様棒では s=l2/(12d).固定支点OとGの距離が h なら,打撃の中心はOから q=IO/(Mh).端で支える一様棒では q=2l/3 です.

  • 動く点 A のまわりでは,静止系の速度で測ると dLAdt=τA−MvA×V,A に対する相対速度で測ると dLA∗dt=τA−M(R−rA)×aA です.剛体に固定した点では IAα=τA−M[(R−rA)×aA]z,瞬間回転中心 Q では IQα=τQ−Mdd˙ω(d は Q から G までの距離)です.

  • 軸が物体へ与える力積と,物体が軸へ与える力積は逆向きです.力積を報告するときは,受ける物体も添えます.

各節の問いへの答え

  • 外部運動と内部運動:花火の分裂中には外力積を無視でき,重心速度は変わりません.増えた運動エネルギーは破片の内部運動に入ります.その後も一様な重力だけなら重心は同じ放物線を描きます.

  • 角運動量の分解:一様な重力の重心まわりのトルクは0なので,投げたバトンの内部角運動量は一定です.平面運動で慣性モーメントも一定なら自転角速度も一定です.公転と自転を分けて書けても,個別に保存するとは限りません.両者の間で角運動量をやり取りする場合は,合計を追います.

  • 角運動量を取る点の選び方:一様な円柱の接点にある点は,速度0で加速度が G を向くので,接点のまわりで IPα=τP が使えます.偏心円板では加速度が G を向かず,OG が水平の瞬間に MbRω2 のずれが出ます.そのまま使えるのは,固定点,G,加速度が G への直線に沿う点です.瞬間回転中心なら,G までの距離が変わらない場合です.

  • 剛体の衝突:端を打った一様棒では,直後にGから反対側へ l/6 の点が止まっています.これは固定点ではなく,その後の瞬間回転中心は通常,棒の外へ出ます.手に力積が来ない理想的な「芯」は打撃の中心です.実際のバットの振動や変形までこの剛体模型で説明するわけではありません.

この章で使った数学

質量を重みにした和,ベクトルの分解,内積と外積の分配,平行軸の定理,力積の積分,動く点のまわりの外積の微分を使いました.発展では,打点に関する微分,部分系の運動方程式,回転する方向ベクトルの微分,接触条件による場合分けも使いました.いずれも,どの量を固定し,どの量を変えるかを先に決めることが計算の出発点です.