問いしるべ
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問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 15節
  1. フックの法則と単振動
  2. 2階の微分方程式と三角関数の合成
  3. フックの法則と単振動の演習
  4. いろいろな単振動
  5. テイラー展開と小振動
  6. いろいろな単振動の演習
  7. 減衰振動と強制振動
  8. 減衰振動と強制振動の数学と例題
  9. 減衰振動と強制振動の演習
  10. 連成振動
  11. 連成振動の数学と例題
  12. 連成振動の演習
  13. 第7章の章末問題
  14. 第7章の発展問題
  15. 第7章のまとめ

第7章  振動

01フックの法則と単振動

問い

ばねの先におもりをつけて,ばねを少し引いてから静かに放すと,おもりは行ったり来たりを繰り返します.引く長さを 5cm から 10cm に変えて,もう一度同じことをします.往復する距離は2倍になりますが,一往復にかかる時間はどうなるでしょうか.2倍になるのか,変わらないのか,別の変わり方をするのでしょうか.

考えてみる

引く長さが2倍なら,戻るべき距離も2倍です.一方,ばねの力は伸びが大きいほど強いので,放した直後に受ける力も,加速度も大きくなります.遠くまで行く分だけ強く引き戻されるので,かかる時間は打ち消し合って変わらないかもしれません.ただし力は戻るにつれて弱まるので,この見通しは厳密ではありません.運動方程式を立てて確かめましょう.

フックの法則と運動方程式

法則 フックの法則

ばねを自然長から変位 x だけ伸ばす(縮める)と,ばねが物体に及ぼす力は

F=−kx

である.k をばね定数といい,単位は Nm−1.負号は,力が変位と逆向き(自然長の位置へ戻す向き)に働くことを表す.

つり合いの位置からずれた物体を,元のつり合いの位置へ戻す向きに働く力を復元力といいます.復元力が変位に比例するとき,単振動になります.ばねだけの力は自然長へ戻す向きで,おもりに働く合力の復元力はつり合いの位置へ戻す向きです.水平なばねでは両者の位置が一致し,鉛直なばねでは異なります(例題で扱います).伸ばしすぎたばねではフックの法則が成り立たなくなるので,この法則は変位が小さい範囲で使います.

まず,なめらかな水平面の上で,一端を壁に固定したばねに質量 m のおもりをつけます.自然長のときのおもりの位置を原点とし,ばねの伸びる向きに x 軸をとります.

自然長では力は0.伸ばすと左向き,縮めると右向きの復元力が働く.力は赤い矢印で表す. 自然長では力は0.伸ばすと左向き,縮めると右向きの復元力が働く.力は赤い矢印で表す.

運動方程式は,加速度を x¨=d2xdt2 と書いて

mx¨=−kxすなわちx¨=−kmx

です.x の2階微分が,x に負の定数を掛けたものに等しい,という式です.

解を代入して確かめる

2回微分すると符号が変わって元の形に戻る関数といえば,三角関数です.そこで ω=k/m とおき,次の関数が解になるかを代入して確かめます.ただし A,ϕ は定数です.

x=Acos⁡(ωt+ϕ)

微分すると

x˙=−Aωsin⁡(ωt+ϕ),x¨=−Aω2cos⁡(ωt+ϕ)=−ω2x

となり,ω2=k/m なので運動方程式が成り立ちます.A と ϕ がどんな値でも成り立つ点に注目してください.この式は,2つの定数を自由に選べる解です.

運動方程式は2階の微分方程式です.位置から加速度までに微分を2回しているので,もとの x に戻すには積分を2回し,積分定数が2つ残ります.実際,同じ力でも初めの位置と初めの速度が違えば,おもりの動きは違います.2つの定数は,この2つの初期条件で決まります.この形の解がすべての解を尽くすことは,次の節で確かめます.

単振動の言葉

法則 単振動

復元力 F=−kx を受けるおもりの運動は

x=Acos⁡(ωt+ϕ),ω=km

となる.この運動を単振動という.A を振幅,ω を角振動数(単位 rads−1),ωt+ϕ を位相,ϕ を初期位相という.

cos は位相が 2π 増えるごとに元へ戻ります.一往復の時間である周期 T は ωT=2π から決まり,1秒あたりの往復の回数である振動数 f はその逆数です.

T=2πω=2πmk,f=1T  (Hz)
青実線は振幅A,緑破線は振幅2Aの余弦曲線.横軸は周期Tで規格化した時間で,両者の山と谷の時刻は一致する. 青実線は振幅A,緑破線は振幅2Aの余弦曲線.横軸は周期Tで規格化した時間で,両者の山と谷の時刻は一致する.

周期の式に,振幅 A は入っていません.これが問いの答えです.引く長さを2倍にしても,一往復の時間は変わりません.これを等時性といいます.復元力が変位に比例するからこそ,遠くへ行く分だけ強く引き戻され,打ち消し合うのです.一方,周期は質量とばね定数で決まります.m を4倍にすると T は2倍,k を4倍にすると T は半分になります.たとえば k=20Nm−1,m=0.50kg なら ω=40≈6.3rads−1,T≈0.99s です.

初期条件から A と φ を決める

t=0 での位置を x0,速度を v0 とします.x と x˙ の式に t=0 を入れると

x0=Acos⁡ϕ,v0=−Aωsin⁡ϕ

です.これを解いて A=x02+(v0/ω)2 を得ます.ϕ は cos⁡ϕ=x0/A,sin⁡ϕ=−v0/(ωA) の両方の符号から決めます(x0≠0 なら tan⁡ϕ=−v0/(ωx0) とも書けますが,x0=0 のときは cos⁡ϕ=0 から決めます.x0=v0=0 は A=0 の静止した状態で,位相は決まりません).いちばん単純なのは,引いて静かに放す場合です.x0=A,v0=0 なので ϕ=0 で,x=Acos⁡ωt になります.

速度・加速度とエネルギー

x を微分した v=−Aωsin⁡(ωt+ϕ) と,a=−ω2x から次のことが読み取れます.

  • 速さの最大値は Aω,加速度の大きさの最大値は Aω2.

  • 振動の両端(x=±A)では v=0 で,加速度の大きさが最大.中心(x=0)では a=0 で,速さが最大.

  • v は x より位相が π/2 だけ進んでいる.

力学的エネルギーは,mω2=k を使うと

12mv2+12kx2=12mA2ω2sin2⁡(ωt+ϕ)+12kA2cos2⁡(ωt+ϕ)=12kA2

で一定です.両端ではすべてが弾性エネルギー,中心ではすべてが運動エネルギーで,その間で入れ替わります.振幅を2倍にするとエネルギーは4倍になります.

弾性エネルギーの放物線と全エネルギーEの水平線.二つの交点が転回点で,任意の位置での差が運動エネルギーとなる. 弾性エネルギーの放物線と全エネルギーEの水平線.二つの交点が転回点で,任意の位置での差が運動エネルギーとなる.

ポイント ここまでのまとめ

  • フックの法則 F=−kx の復元力を受けるおもりの運動方程式は mx¨=−kx.解は x=Acos⁡(ωt+ϕ),ω=k/m.代入すれば確かめられ,2階の方程式なので定数が2つ(A,ϕ)ある.

  • A と ϕ は初期条件(初めの位置と速度)で決まる.周期は T=2πm/k.

  • 速度は v=−Aωsin⁡(ωt+ϕ),加速度は a=−ω2x.力学的エネルギーは 12kA2 で一定.

  • 問いの答え:周期に振幅は入らない(等時性).引く長さを2倍にしても往復の時間は変わらない.

022階の微分方程式と三角関数の合成

前の節で代入して確かめた x=Acos⁡(ωt+ϕ) が解のすべてだといえる理由と,初期条件から定数を決める道具を整えます.

定理 数学の道具:2階線形微分方程式 x¨=−ω2x

重ね合わせ. x1,x2 が解で,c1,c2 が定数なら,x=c1x1+c2x2 も解である.微分は和と定数倍を保つので x¨=c1x¨1+c2x¨2=−ω2x となる(線形という).

一般解. cos⁡ωt と sin⁡ωt はどちらも解で,一方は他方の定数倍ではない.2階の方程式では,独立な解が2つあればすべての解が表せる.よって一般解は

x=C1cos⁡ωt+C2sin⁡ωt

で,定数は2つである.

初期条件. x(0)=C1=x0,x˙(0)=ωC2=v0 より C1=x0,C2=v0/ω とただ1通りに決まる.

三角関数の合成. 加法定理 cos⁡(α+β)=cos⁡αcos⁡β−sin⁡αsin⁡β より Acos⁡(ωt+ϕ)=Acos⁡ϕcos⁡ωt−Asin⁡ϕsin⁡ωt.一般解と比べて

A=C12+C22,cos⁡ϕ=C1A,sin⁡ϕ=−C2A

である.ϕ は cos⁡ϕ,sin⁡ϕ の両方の符号で決める.A=0(C1=C2=0)は静止した解で,位相は決まらない.

係数平面の点(C₁,−C₂)へ向かうベクトル.原点からの長さが合成振幅A,正の横軸からの角が初期位相φである. 係数平面の点(C₁,−C₂)へ向かうベクトル.原点からの長さが合成振幅A,正の横軸からの角が初期位相φである.

練習 1. (1) 3cos⁡2t+4sin⁡2t を Acos⁡(2t+ϕ) の形に直せ.(2) x¨=−9x,x(0)=0.20,x˙(0)=0.60(SI単位)の解を求めよ.

答え:(1) A=5,cos⁡ϕ=35,sin⁡ϕ=−45 なので 5cos⁡(2t−0.93). (2) C1=0.20,C2=0.60/3=0.20 なので A=0.202,ϕ=−π4.x=0.202cos⁡(3t−π4).

練習 2. (1) x¨=−4x,x(0)=0,x˙(0)=1.0(SI単位)の解を求めよ.(2) x¨=−25x の周期を求めよ.

答え:(1) C1=0,C2=1.0/2=0.50 なので x=0.50sin⁡2t.(2) ω=5 より T=2π/5≈1.3s.

練習 3. x¨=−16x,x(0)=−0.30,x˙(0)=1.6(SI単位)のとき,解を Acos⁡(4t+ϕ)(0≤ϕ<2π)の形に表せ.

答え:C1=−0.30,C2=1.6/4=0.40 なので A=0.50.Acos⁡ϕ=C1,Asin⁡ϕ=−C2 より cos⁡ϕ=−0.60,sin⁡ϕ=−0.80 で,ϕ は第3象限にある.電卓で ϕ≈π+0.93≈4.07rad.x=0.50cos⁡(4t+4.07).

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

なめらかな水平面上で,ばね定数 80Nm−1 のばねにつないだ質量 0.20kg のおもりが振動する.自然長の位置を原点に,伸びる向きに x 軸をとる.t=0 にはおもりは x=0.030m にあり,正の向きに 0.80ms−1 で動いている.

水平ばねにつながる質量0.20 kgの物体.初期位置は原点の右0.030 m,初速度は青矢印の向きに0.80 m/sである. 水平ばねにつながる質量0.20 kgの物体.初期位置は原点の右0.030 m,初速度は青矢印の向きに0.80 m/sである.
  1. 周期 T を求めよ.

  2. 位置 x(t) を Acos⁡(ωt+ϕ) の形で求めよ.

  3. 速さの最大値と,加速度の大きさの最大値を求めよ.

解答を見る

考え方 一般解に初期条件を入れ,合成する.

  1. ω=80/0.20=20rads−1,T=2π/ω≈0.31s.

  2. C1=0.030,C2=v0/ω=0.040.A=0.0302+0.0402=0.050m,cos⁡ϕ=0.6,sin⁡ϕ=−0.8 より ϕ=−0.93rad.

x=0.050cos⁡(20t−0.93)  [m]
  1. Aω=1.0ms−1,Aω2=20ms−2.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

天井からつるしたばね定数 40Nm−1 の軽いばねに,質量 0.40kg のおもりをつけ,自然長の位置で静かに放す.鉛直下向きに y 軸をとり,自然長の位置を y=0 とする.g=9.8ms−2 とする.

同じ高さの天井からつるしたばねを,自然長,つり合い,最下点の順に並べる.破線は共通の自然長位置で,最下点の伸びは未知とする. 同じ高さの天井からつるしたばねを,自然長,つり合い,最下点の順に並べる.破線は共通の自然長位置で,最下点の伸びは未知とする.
  1. つり合いの位置での伸び d を求めよ.

  2. X=y−d が単振動の方程式を満たすことを示し,周期を求めよ.

  3. 振幅と,最下点でのばねの伸びを求めよ.

  4. 月面(重力加速度は 16)での周期は.

解答を見る

考え方 つり合いの位置を原点にとり直す.

  1. kd=mg より d=0.40×9.840=0.098m.

  2. my¨=mg−ky に mg=kd を使うと my¨=−k(y−d).d は定数で X¨=y¨ だから mX¨=−kX.つり合いの位置のまわりの単振動で,ω=k/m=10rads−1,T=2π/ω≈0.63s.

  3. 放した瞬間は X=−d,速度は 0 なので,振幅は d=0.098m.最下点は X=+d なので,伸びは 2d≈0.20m.

  4. 周期の式に g は入らないので,同じ 0.63s(振幅だけが 16 になる).

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

なめらかな水平面上で,ばね定数 100Nm−1 のばねにつないだ質量 0.25kg のおもりが,振幅 0.040m で単振動している.

弾性エネルギーの放物線に全エネルギーの水平線を重ねる.正の位置x=0.020 mに縦の破線を置くが,エネルギー差の値は示さない. 弾性エネルギーの放物線に全エネルギーの水平線を重ねる.正の位置x=0.020 mに縦の破線を置くが,エネルギー差の値は示さない.
  1. 力学的エネルギーと,速さの最大値を求めよ.

  2. x=0.020m での速さを求めよ.

解答を見る

考え方 時刻を経由せず,エネルギー保存を使う.

  1. 端では v=0 なので E=12kA2=12×100×0.0402=0.080J.中心で運動エネルギーが E になるので vmax=2E/m=0.80ms−1(Aω と一致).

  2. 12mv2+12kx2=12kA2 より v2=ω2(A2−x2).よって v=200.0402−0.0202≈0.69ms−1.

ポイント ここまでのまとめ

  • x¨=−ω2x は線形で,解の重ね合わせも解になる.一般解は C1cos⁡ωt+C2sin⁡ωt(定数は2つ).C1=x0,C2=v0/ω.

  • 合成:A=C12+C22,cos⁡ϕ=C1/A,sin⁡ϕ=−C2/A.

  • 鉛直ばねは,つり合いの位置から測ると重力が消える.周期は g によらない.

  • 位置から速さは v2=ω2(A2−x2).

03フックの法則と単振動の演習

つり合いの位置と座標の正方向を決めてから,位置・速度・エネルギーを結びつけてください.同じ位置でも進む向きは2通りあることに注意しましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

滑らかな水平面で,質量 0.50kg の物体をばね定数 50Nm−1 の軽いばねにつなぐ.自然長の位置から右へ 0.040m 引いて,時刻0に静かに放す.右向きを正とする.

  1. 角振動数と周期,位置 x(t) を求めよ.

  2. 放した瞬間と初めて原点を通る瞬間の速度,加速度を求めよ.

水平ばねの自然長の位置を0とし,物体を右へ0.040 mずらして静かに放す.右向きのx軸を示す. 水平ばねの自然長の位置を0とし,物体を右へ0.040 mずらして静かに放す.右向きのx軸を示す.
解答を見る

考え方 初速度0という条件は転回点からの出発を表す.速度は位置の微分,加速度は復元力から求める.

  1. ω=k/m=10rads−1,T=2π/10≈0.63s.x(0)>0,v(0)=0 なので A=0.040m,ϕ=0 であり,x(t)=0.040cos⁡10t(位置はm,時刻はs)となる.

  2. v=−0.40sin⁡10t,a=−4.0cos⁡10t である.放した瞬間は v=0,a=−4.0ms−2.最初の原点通過は 10t=π/2 で,v=−0.40ms−1,a=0.原点で力が0でも,それまでに得た速度は残るので静止しない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

角振動数 5.0rads−1 の単振動で,t=0 に x=−0.060m,v=−0.40ms−1 であった.

  1. x=C1cos⁡ωt+C2sin⁡ωt の係数を求めよ.

  2. x=Acos⁡(ωt+ϕ) の A と 0≤ϕ<2π の範囲の ϕ を求め,最初に左端へ達する時刻を求めよ.

原点の左0.060 mにある物体に,左向き0.40 m/sの初速度を与える.青い矢印は既知の速度だけを示す. 原点の左0.060 mにある物体に,左向き0.40 m/sの初速度を与える.青い矢印は既知の速度だけを示す.
解答を見る

考え方 正弦の係数は初速度を角振動数で割った値である.位相は正接の値だけでなく,正弦と余弦の符号を合わせて決める.

  1. x(0)=C1,v(0)=ωC2 より C1=−0.060m,C2=−0.080m.したがって x=−0.060cos⁡5t−0.080sin⁡5t である.

  2. A=C12+C22=0.10m.cos⁡ϕ=−0.60,sin⁡ϕ=0.80 なので第2象限にあり,ϕ≈2.21rad.左端では位相が π となるので,最初の到達時刻は (π−ϕ)/5.0≈0.19s である.時刻0で左へ動くことと,直後に左端へ達することが整合する.ϕ に 2π の整数倍を足しても運動は同じである.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

質量 m,ばね定数 k の水平ばね振動で,振幅を A とする.抵抗はない.

  1. x=A/2 での運動エネルギーと弾性エネルギーの比,速さを求めよ.

  2. x=A から静かに放したとき,初めて x=A/2 に達するまでの時間を求めよ.振幅を2倍にし,同じ割合の位置へ達する時間はどう変わるか.

一直線上に−A,0,A/2,Aを示す.物体は右の転回点Aで静かに放される. 一直線上に−A,0,A/2,Aを示す.物体は右の転回点Aで静かに放される.
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考え方 速さにはエネルギー保存が使えるが,到達時刻には位相の情報が必要である.問題ごとに使う式を選ぶ.

  1. 全エネルギーは E=kA2/2.x=A/2 では U=kA2/8=E/4,K=E−U=3E/4 だから K:U=3:1.mv2/2=3kA2/8 より速さは 3Aω/2,ただし ω=k/m である.この位置で右へ進む場合も左へ進む場合も速さは等しい.

  2. x=Acos⁡ωt に代入すると cos⁡ωt=1/2.最初は ωt=π/3 なので t=π/(3ω)=T/6.振幅を2倍にして x=A まで戻る場合も位相条件は同じで,時間は変わらない.移動距離だけでなく速さも2倍になるためであり,エネルギーは4倍になる.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

鉛直につるした軽いばねの定数を k,物体の質量を m とする.自然長からの下向きの伸びを y とし,t=0 に y=0 から下向きに速さ u>0 を与える.ばねは圧縮時にもフックの法則に従い,物体は鉛直の案内に沿って動く.

  1. つり合いの伸び d と,X=y−d の時間変化を求めよ.

  2. 振幅と最大の伸びを求めよ.また,物体が自然長より上へ達するか判定せよ.

天井からつるしたばねの自然長の位置で,物体へ下向きの初速度uを与える.下向き座標yとつり合い位置dを示す. 天井からつるしたばねの自然長の位置で,物体へ下向きの初速度uを与える.下向き座標yとつり合い位置dを示す.
解答を見る

考え方 重力を含むつり合いの位置へ原点を移すと,定数の力が消える.自然長から測った伸びと振幅を区別する.

  1. kd=mg より d=mg/k.my¨=mg−ky=−kX だから X¨=−ω2X,ω=k/m.X(0)=−d,X˙(0)=u より X=−dcos⁡ωt+(u/ω)sin⁡ωt である.

  2. 合成した振幅は A=d2+(u/ω)2,最大の伸びは ymax=d+A.最小は d−A<0 なので自然長より上へ達する.これは圧縮も許す仮定による.つり合いから測るエネルギー kX2/2+mX˙2/2 の初期値が kd2/2+mu2/2=kA2/2 となることでも検算できる.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

水平ばねにつながる質量 m の物体が,x=A から静かに出発した.初めて原点を通る瞬間に,右向きの短い力積 J>0 を加える.作用時間中の変位とばねの力積は無視できる.

  1. 力積直後の速度と新しい振幅を求めよ.

  2. 完全に停止させる J と,振幅が元と等しくなる正の J を求めよ.それぞれの力学的エネルギーの変化も求めよ.

水平ばねの物体が原点を左向きに通るとき,右向きに短い力積Jを加える.青が作用前の速度,赤が力積である. 水平ばねの物体が原点を左向きに通るとき,右向きに短い力積Jを加える.青が作用前の速度,赤が力積である.
解答を見る

考え方 短い作用の前後は運動量変化でつなぎ,その後の振動は直後の位置と速度から決める.力積の作用中に力学的エネルギーは保存しない.

  1. ω=k/m とすると直前の速度は −Aω.m(v++Aω)=J より v+=J/m−Aω.原点で速度を与えた単振動の振幅は A+=|v+|/ω=|J/(mω)−A| である.

  2. 停止には J=mAω が必要で,その後はつり合い位置にとどまる.エネルギー変化は −kA2/2.A+=A の正の解は J=2mAω で,速度が −Aω から +Aω に反転し,エネルギー変化は0である.一般には ΔE=J2/(2m)−JAω となるので,右向きの力積を加えても必ずエネルギーが増えるわけではない.

ポイント 教える人へ

  • 原点で力が0になることと,原点で止まることを区別させる.

  • 初期位相は正弦と余弦の両方の符号から説明させる.

  • 鉛直ばねでは自然長,つり合い位置,転回点を別々に示させる.

  • 力積の前後にエネルギー保存を使わず,運動量変化を使う理由を問う.

04いろいろな単振動

問い

振り子時計は,ゼンマイが弱って振れ幅が小さくなっても,時刻がほとんど狂いません.振れ幅が変わっても,一往復にかかる時間はほとんど変わらないのです.なぜでしょうか.

考えてみる

単振動の節のばねでは,復元力が変位に比例していたので,周期は振幅によりませんでした.振り子でおもりを引き戻すのは重力ですが,糸が傾くにつれて,重力の円弧の接線方向の成分が変わります.この復元力は,変位に比例するのでしょうか.

素朴には,振れ幅が大きいほど,おもりは遠くまで行くのに,高い所から下りてくるので速くなる,とも考えられます.距離と速さが打ち消し合うかどうかは,式にしてみないと分かりません.

単振り子

質量 m のおもりを長さ L の軽い糸でつるし,糸が鉛直から角度 θ になったとします.おもりは円弧に沿って動くので,その接線方向を考えます.糸の張力は接線方向に成分を持たず,重力の接線成分だけが働くので

mLθ¨=−mgsin⁡θ

です.復元力は θ そのものではなく sin⁡θ に比例します.しかし θ(rad)が小さいとき,sin⁡θ≈θ と近似できます.10∘(0.1745rad)でも sin⁡θ=0.1736 で,差は 0.5 % ほどです.すると

θ¨=−gLθ⟹ω=gL,T=2πLg

で,ばねと同じ形の単振動になります.

鉛直から角θだけ傾いた振り子.赤い重力矢印を,糸に沿うmg cos θと円弧の接線に沿うmg sin θへ分解する. 鉛直から角θだけ傾いた振り子.赤い重力矢印を,糸に沿うmg cos θと円弧の接線に沿うmg sin θへ分解する.

この式には振れ幅が入っていません.これが問いの答えです.重力も慣性も質量に比例するので質量 m が消え,周期は長さ L と g だけで決まります.L≈0.99m で T≈2.0s です.近似の外では,周期は振れ角が大きいほどわずかに長くなります.その割合は,振れ角 θ0(rad)のときおよそ θ02/16 で,3∘ で約 0.017 %,10∘ で約 0.19 % です.時計の振り子の振れ角が数度に抑えられているのは,この性質を使うためです.

小さな振動はたいてい単振動

ばねや振り子だけの特別な話ではありません.第6章で見たように,ポテンシャルエネルギー U(x) が x0 で U″(x0)>0 の極小のとき,その近くでは放物線で近似できます.

法則 小振動

U′(x0)=0,U″(x0)>0 のとき,質量 m の粒子の x0 のまわりの小さな運動は,近似的に次の単振動になる.

U≈U(x0)+12U″(x0)(x−x0)2,ω=U″(x0)m

谷の曲がりが急なほど,周期は短い.U″(x0)=0 の極小(たとえば U∝x4)では放物線で近似できず,単振動にならない.

単振り子で確かめます.高さの基準を最下点にとると U=mgL(1−cos⁡θ),運動エネルギーは 12m(Lθ˙)2 なので,質量 m の役目を mL2 が果たします.U″(0)=mgL から ω2=mgL/(mL2)=g/L となり,先の結果と一致します.

ばねの直列・並列

ばね定数 k1,k2 のばね2本を並べてつなぐと,伸びが共通なので力は足し合わされ k=k1+k2 です.縦に直列につなぐと,各ばねに同じ力 F が働いて伸びが足し合わされ,F/k=F/k1+F/k2 より 1k=1k1+1k2 です.同じばね2本なら,並列は 2k で周期が 1/2 倍,直列は k/2 で周期が 2 倍になります.

上は壁と物体の間に二本のばねを並列につなぐ配置.下は二本を直列につなぐ配置で,それぞれのばね定数はk₁とk₂である. 上は壁と物体の間に二本のばねを並列につなぐ配置.下は二本を直列につなぐ配置で,それぞれのばね定数はk₁とk₂である.

液体に浮かぶものの振動

断面積 S,質量 m の円柱が,密度 ρ の液体に鉛直に浮いています.円柱は側面の一部が液面を貫いたまま動き,周囲の液体の運動による慣性や抵抗は無視できるとします.つり合いの位置から y だけ余計に沈めると,浮力は ρgSy だけ増え,復元力になります.よって k=ρgS,T=2πm/(ρgS) です.

U字管では,断面積が一定値 S で,非圧縮の液体が全長 l だけ入っていて,管壁との摩擦などの抵抗は無視できるとします.両側の断面積が等しいので,片側の液面が y 下がると反対側が y 上がり,液面差は 2y になります.質量 ρSl の液体が,復元力 2ρgSy を受けるので,ρSly¨=−2ρgSy より T=2πl/(2g) です.

左はつり合いからyだけ押し下げた円柱.右はU字管で左液面がy下がり右液面がy上がった状態.破線はつり合いの液面を表す. 左はつり合いからyだけ押し下げた円柱.右はU字管で左液面がy下がり右液面がy上がった状態.破線はつり合いの液面を表す.

円運動の射影

半径 A の等速円運動(角速度 ω)の位置の x 成分は x=Acos⁡(ωt+ϕ) です.加速度は中心を向いて大きさ Aω2 で,その x 成分は −Aω2cos⁡(ωt+ϕ)=−ω2x です.つまり単振動は,等速円運動を横から見たときの影の運動です.角振動数は円運動の角速度,位相は円運動の回転角にあたります.

半径Aの円上の点を横軸へ射影する.橙色の点が射影で,右側の余弦曲線の同じ位相にも橙色の点を置く. 半径Aの円上の点を横軸へ射影する.橙色の点が射影で,右側の余弦曲線の同じ位相にも橙色の点を置く.

ポイント ここまでのまとめ

  • 単振り子は mLθ¨=−mgsin⁡θ.小さな振れ(sin⁡θ≈θ)では単振動で,T=2πL/g.質量にも振れ幅にもよらない.

  • U″(x0)>0 のポテンシャルの極小のまわりの小さな運動は,近似的に ω=U″(x0)/m の単振動になる.

  • ばねは並列で k=k1+k2,直列で 1/k=1/k1+1/k2.浮かぶ円柱は k=ρgS.

  • 単振動は等速円運動の射影である.

  • 問いの答え:振り子の周期は小さな振れでは振れ幅によらないので,振れ幅が少し変わっても時計は狂わない.

05テイラー展開と小振動

第6章の放物線近似(2次の項まで)を高次へ続けた形がテイラー展開です.精度の見積もり方と小振動の手順を整理します.

定理 数学の道具:テイラー展開と小振動の手順

滑らかな関数は,h=x−a が小さいとき

f(a+h)≈f(a)+f′(a)h+f″(a)2h2+f‴(a)6h3+⋯

と冪の和で近似できる.n 次の係数は n 階微分を n! で割ったものである.項を増やすほど,また h が小さいほど精度は上がる.無限に続けた級数が元の関数に等しい(収束する)かどうかは関数と h の範囲による.下の表では,sin⁡h,cos⁡h はすべての h,ln⁡(1+h) は −1<h≤1,(1+h)n は |h|<1 で成り立つ.

関数

展開

sin⁡h

h−h36+⋯

cos⁡h

1−h22+h424−⋯

ln⁡(1+h)

h−h22+⋯

(1+h)n

1+nh+n(n−1)2h2+⋯

どこで打ち切るか. 捨てた最初の項が誤差の目安である.sin⁡θ≈θ の相対誤差は θ2/6 で,θ=0.1 なら 0.17 % である.

小振動の手順. (1) U′(q0)=0 からつり合いを求める.(2) U″(q0)>0 で安定を確かめる.(3) 運動エネルギーが 12Mq˙2 の形なら ω=U″(q0)/M.M は直線運動では m,振り子の角度では mL2 である.

練習 1. (1) ln⁡(1+h) を2次まで展開し,ln⁡1.1 の近似値を求めよ.(2) sin⁡0.5 を3次まで展開した値を求め,sin⁡0.5=0.4794 との相対誤差を見よ.

答え:(1) f′=11+h,f″=−1(1+h)2 より h−h22.ln⁡1.1≈0.1−0.005=0.095. (2) 0.5−0.1256=0.4792.相対誤差は約 0.05 %.

練習 2. (1) (1+h)−1/2 を2次まで展開し,h=0.20 のときの近似値を求めよ.(2) cos⁡0.30 を2次まで展開した値を求めよ.

答え:(1) f′=−12(1+h)−3/2,f″=34(1+h)−5/2 より 1−h2+38h2.h=0.20 で 0.915(真の値 0.9129⋯).(2) 1−0.3022=0.955(真の値 0.9553⋯).

練習 3. 質量 m の粒子のポテンシャルが U(x)=U0(x2a2+a2x2)(x>0,U0,a>0)である.小振動の手順に従って,つり合いの位置 x0 と,そのまわりの小振動の角振動数 ω を求めよ.

答え:U′(x)=2U0(xa2−a2x3)=0 より x0=a.U″(x)=2U0(1a2+3a2x4) で U″(a)=8U0a2>0(安定).ω=8U0ma2.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

重力加速度 9.80ms−2 の場所で,長さ 0.993m の単振り子を使った時計がある.

長さLの糸の振り子を鉛直線から小角θ₀だけ傾ける.破線は鉛直線である. 長さLの糸の振り子を鉛直線から小角θ₀だけ傾ける.破線は鉛直線である.
  1. 小さな振れの周期を求めよ.

  2. 糸が 0.020 % 伸びたとき,周期の変化の割合と,1日(86400s)のずれを求めよ.

  3. 振れ角 0.10rad で sin⁡θ を θ とする相対誤差を求めよ.

解答を見る

考え方 (2) は T∝L を (1+h)1/2≈1+h2 で処理する.

  1. T=2π0.9939.80=2.00s.

  2. L が 1+h 倍(h=2.0×10−4)になると T は 1+h≈1+h2 倍なので,周期は 1.0×10−4(0.010 %)長くなる.時計は遅れ,1日で 約 8.6s のずれになる.

  3. sin⁡θ=θ−θ36 なので,相対誤差は θ26=0.0106≈1.7×10−3(0.17 %).

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

質量 m の粒子が,ポテンシャルエネルギー U(x)=ax4−bx2(a,b は正の定数)のもとで x 軸上を動く.

四次のポテンシャルが持つ左右二つの谷.右の谷の底x₁付近に二次近似を橙色の破線で重ねる.曲線は規格化した式を数値評価している. 四次のポテンシャルが持つ左右二つの谷.右の谷の底x₁付近に二次近似を橙色の破線で重ねる.曲線は規格化した式を数値評価している.
  1. 右の谷の底 x1 を求めよ.

  2. 谷の底のまわりの小さな振動の周期を求めよ.

  3. 振幅 ε の振動での最大の速さを求めよ.(2) の結果が使える条件も述べよ.

解答を見る

考え方 小振動の手順に従う.

  1. U′=4ax3−2bx=0 より x=0,±b/(2a).右の谷の底は x1=b2a.

  2. U″=12ax2−2b に x12=b2a を入れて U″(x1)=6b−2b=4b>0.よって ω=4bm,T=2πω=πmb.

  3. 最大の速さは εω=2εb/m.(2) は放物線近似なので,ε が谷の幅(x1 程度)より十分小さいことが条件である.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

長さ 0.30m,密度 600kgm−3 の一様な棒が,密度 1000kgm−3 の水に鉛直に浮いている.断面積を S とし,重力加速度を 9.8ms−2,棒は鉛直を保つものとし,水の抵抗は無視する.

長さlの棒について,つり合いとyだけ押し下げた状態を並べる.沈む長さはそれぞれdとd+yである. 長さlの棒について,つり合いとyだけ押し下げた状態を並べる.沈む長さはそれぞれdとd+yである.
  1. 棒が水に沈んでいる長さ d を求めよ.

  2. 少し押し下げて放したときの周期を求めよ.

  3. 密度 1200kgm−3 の塩水では,周期はどうなるか.

    1. と同じ周期の単振り子の長さを求めよ.

解答を見る

考え方 浮力のつり合いから d を出し,y だけ余分に沈めたときの浮力の増加を復元力とみる.

  1. 重さと浮力のつり合い ρsSlg=ρSdg より d=ρsρl=6001000×0.30=0.18m.

  2. 質量は m=ρsSl.余分に沈めた y に対して,浮力は ρgSy だけ増すので my¨=−ρgSy.

T=2πρsSlρgS=2πdg=2π0.189.8≈0.85s
  1. 沈む長さは d=6001200×0.30=0.15m となり,T=2π0.15/9.8≈0.78s(密度が大きいほど浅く沈み,周期は短い).

  2. T=2πd/g は単振り子の 2πL/g と同じ形なので,長さは L=d=0.18m.

ポイント ここまでのまとめ

  • テイラー展開は f(a+h)=f(a)+f′(a)h+12f″(a)h2+⋯.捨てた最初の項が誤差の目安で,sin⁡θ≈θ の相対誤差は θ2/6.

  • 小振動の手順は,U′(q0)=0,U″(q0)>0,ω=U″(q0)/M(M は運動エネルギー 12Mq˙2 の係数).

  • 単振り子は T∝L.長さの小さな変化は (1+h)1/2≈1+h/2 で処理する.

  • 浮かぶ棒の周期は 2πd/g(d は沈む長さ).

06いろいろな単振動の演習

ばね以外の運動でも,つり合いからの変位に比例する復元力を探してください.小振動の近似が必要な箇所と,モデルの範囲で厳密に比例する箇所を見分けましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

長さ L=0.40m の単振り子を小さく振らせる.g=10ms−2 とする.

  1. 周期を求めよ.長さを4倍にした場合,質量だけを4倍にした場合も求めよ.

  2. 角振幅 θ0=0.050rad から静かに放すとき,最下点での速さを小角近似で求めよ.

長さLの振り子の初期角θ₀を,鉛直の破線から測る.転回点から静かに放す配置である. 長さLの振り子の初期角θ₀を,鉛直の破線から測る.転回点から静かに放す配置である.
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考え方 接線方向の運動方程式では,慣性にも重力にも同じ質量が掛かる.角度の振幅を長さの振幅へ直して速さを求める.

  1. mLθ¨=−mgθ より ω=g/L=5.0rads−1.T=2π/5.0≈1.3s である.長さ4倍では T は2倍で約 2.5s,質量4倍では変わらない.質量を変えても糸の長さや振幅を保つことが比較の前提である.

  2. 円弧に沿う変位の振幅は Lθ0=0.020m.速さの最大値は Lθ0ω=0.10ms−1.厳密なエネルギー式 v2=2gL(1−cos⁡θ0) に 1−cos⁡θ0≈θ02/2 を使っても同じ値となる.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

ばね定数が k と 3k の軽いばねを,同じ質量 m の物体と固定壁の間につなぐ.滑らかな水平面での直列配置と並列配置を比較する.

  1. それぞれの実効ばね定数と周期を求めよ.

  2. 物体をつり合いから a だけ動かしたとき,直列配置の各ばねの伸びを求めよ.並列配置で力がどう分担されるかも述べよ.

ばね定数kと3kのばねを,同じ物体mと壁の間で並列または直列につなぐ.実効ばね定数は図には記さない. ばね定数kと3kのばねを,同じ物体mと壁の間で並列または直列につなぐ.実効ばね定数は図には記さない.
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考え方 直列では質量のない接続点で力がつり合い,並列では両ばねの端の変位が等しい.同じになる量を先に決める.

  1. 直列は 1/Ks=1/k+1/(3k) より Ks=3k/4,Ts=2π4m/(3k).並列は Kp=k+3k=4k,Tp=2πm/(4k).周期の比は Ts/Tp=4/3 で,柔らかい直列の方が長い.

  2. 直列の伸びを a1,a2 とすると ka1=3ka2,a1+a2=a.したがって a1=3a/4,a2=a/4 である.並列はどちらも a だけ伸びるので,復元力の大きさは ka と 3ka.直列で伸びを等分したり,並列で力を等分したりすると接続条件を満たさない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

断面積 S,長さ h,密度 ρs=ρ/4 の円柱が,密度 ρ の液体に鉛直に浮いている.傾きを防ぐ案内は摩擦がなく,液体の抵抗と付加的に動く液体の慣性は無視する.

  1. つり合いで沈む長さ d と,鉛直小振動の周期を求めよ.

  2. つり合いから下へ a>0 押して静かに放す.振動中,円柱が水面と交わり続けるための a の条件を求めよ.

高さhの円柱のつり合いと,aだけ下へ押した状態.つり合いの沈む長さをdとし,水面との位置関係を比較する. 高さhの円柱のつり合いと,aだけ下へ押した状態.つり合いの沈む長さをdとし,水面との位置関係を比較する.
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考え方 浮力の増加分が復元力になる.断面積が一定でも,全体が沈んだり液面から離れたりすると同じ式は使えない.

  1. m=ρSh/4 と mg=ρgSd から d=h/4.下向き変位 y に対して my¨=mg−ρgS(d+y)=−ρgSy.したがって ω=4g/h,T=πh/g となる.断面積は慣性と復元力の両方に比例して現れるので消える.

  2. 転回点での沈む長さは d−a と d+a.両方が0と h の間にあればよいので a<d,a<h−d.よって 0<a<h/4 である.この条件内なら,採用したモデルでは浮力は変位に厳密に比例する.単に「振幅が小さい」とするより,幾何学的な限界を明示できる.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

断面積 S が一定のU字管に,密度 ρ の液体が全長 l だけ入っている.両側の液面は鉛直な管の部分にあり,大気に開いている.粘性を無視し,管に沿う流速は各点で等しいとする.左の液面をつり合いから下へ a ずらし,静止から放す.

  1. 左液面の下向き変位 y の運動方程式と周期を求めよ.

  2. 液体の最大流速と,つり合い状態を基準にした初期の位置エネルギーを求めよ.

断面積Sが一定のU字管.左液面はつり合いの破線よりa低く,右液面はa高い.液柱全長をlとする. 断面積Sが一定のU字管.左液面はつり合いの破線よりa低く,右液面はa高い.液柱全長をlとする.
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考え方 動くのは液面の差の部分だけではなく液体全体である.液面差が片側の変位の2倍になる点が復元力を決める.

  1. 右液面は y 上がり,高さの差は 2y.圧力差に対応する復元力は −2ρgSy,動く質量は ρSl である.ρSly¨=−2ρgSy より ω=2g/l,T=2πl/(2g).密度を変えても同じ長さなら周期は変わらない.

  2. y=acos⁡ωt より最大流速は a2g/l.初期位置エネルギーは,準静的に押しずらす仕事 ∫0a2ρgSydy=ρgSa2 である.つり合い通過時の運動エネルギー (ρSl)(a22g/l)/2 と一致する.液体が管口からこぼれず,液面が鉛直部分を離れない範囲が必要である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

質量 m の粒子が x>0 の範囲を動き,ポテンシャルが U(x)=cx2+d/x2 である.c,d は正の定数とする.

  1. つり合い位置 x0 とその安定性を調べよ.

  2. x0 のまわりの小振動の周期を求めよ.変位の振幅を ε としたときの近似条件も述べよ.

正のxに対するU=cx²+d/x²の形を示す.原点付近と遠方で高くなる谷の曲線で,極小位置や曲率の値は示さない. 正のxに対するU=cx²+d/x²の形を示す.原点付近と遠方で高くなる谷の曲線で,極小位置や曲率の値は示さない.
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考え方 力を直接解く代わりに,ポテンシャルの停留点と曲率を使う.谷の底の高さは振動数に影響しない.

  1. U′=2cx−2d/x3=0 より x0=(d/c)1/4.U″=2c+6d/x4 なので U″(x0)=8c>0 で安定である.また x→0 と x→∞ で U は大きくなるため,正の領域でこの谷は唯一である.

  2. X=x−x0 として U≈U(x0)+4cX2.mX¨=−8cX より T=2πm/(8c).d はつり合い位置を変えるが,この小振動の周期には現れない.U‴(x0)=−24c/x0 なので,3次の項と2次の項の比の大きさは |X|/x0 程度である.したがって ε/x0 が1より十分小さいことが近似条件となり,有限の大振幅についてまでこの周期を保証したわけではない.

ポイント 教える人へ

  • 復元力を求める変位と,運動エネルギーを書く変位を揃えさせる.

  • 直列では力,並列では伸びが共通である理由を説明させる.

  • 液面差と片側の変位の違いを図で確かめる.

  • 近似の条件を,捨てた項の比や液面との位置関係で述べさせる.

07減衰振動と強制振動

問い

公園のブランコに乗っています.後ろから背中を押してもらうとき,いつ押すと一番大きく揺れるでしょうか.また,押す力が弱くても,何度も押すうちに大きく揺れるようになるのはなぜでしょうか.そして,押すのをやめるとブランコがやがて止まるのはなぜでしょうか.

考えてみる

押す力が強いほど大きく揺れそうですが,ブランコを経験した人は,力任せに押すよりも頃合いを見て軽く押すほうが高く上がると知っているはずです.頃合いとは,ブランコが自分で揺れる周期に合っていること,つまり押す向きが動く向きと同じになることだと見当がつきます.ばねや振り子の周期は振幅によらず決まっているので,そのリズムに押す側が合わせるのでしょう.

止まる理由は,空気の抵抗と鎖の摩擦で,エネルギーが少しずつ熱になるからです.ところが,押し続けても揺れが際限なく大きくなるわけではありません.押す力がする仕事と,抵抗で失うエネルギーが釣り合うところで,揺れの大きさが落ち着くはずです.これを式で確かめるために,まず抵抗だけがある振動を調べ,次に周期的な外力を加えます.

抵抗のある振動

おもりに,速度に比例する抵抗 −bx˙(b>0)が働くとします.運動方程式は mx¨=−kx−bx˙ です.次の2つの量を決めておきます.

定義 固有角振動数と減衰係数

ω0=k/m を固有角振動数,γ=b2m を減衰係数という.ω0 は抵抗が無いときの角振動数で,単位は rads−1.γ の単位は s−1 である.運動方程式は次の形になる.

x¨+2γx˙+ω02x=0

解は γ と ω0 の大小で3つの形に分かれます.導き方は次の節で扱い,ここでは結果と意味を見ます.

法則 減衰振動の3つの場合

  • 弱減衰(γ<ω0):x=Ae−γtcos⁡(ω′t+ϕ),ω′=ω02−γ2.振動しながら,振幅が e−γt で小さくなる.

  • 臨界減衰(γ=ω0):振動せず,つり合いの位置へ戻る.つり合いからずらして静かに放したときは,ω0 を一定にして γ を変えた場合に,振動しない範囲で最も速く戻る.

  • 過減衰(γ>ω0):振動せず,ゆっくりと戻る.

ω₀tを横軸に同じ初期位置と初速度0の厳密解を数値評価.弱減衰,臨界減衰,過減衰と弱減衰の包絡線を示す. ω₀tを横軸に同じ初期位置と初速度0の厳密解を数値評価.弱減衰,臨界減衰,過減衰と弱減衰の包絡線を示す.

弱減衰では,振幅が最初の 1/e になる時間 τ=1/γ が目安になります.周期 T′=2π/ω′ は抵抗が無いときより少し長くなりますが,抵抗が小さければほとんど変わりません.隣り合う山の高さの比は e−γT′ で,いつも一定です.エネルギーは振幅の2乗に比例するので,減衰が十分弱いときは,1周期ほどで平均したエネルギーが e−2γt で減ると見なせ,1/e になる時間は 1/(2γ) が目安です.ただし瞬間のエネルギーは E˙=−bx˙2 で減るので,速さが0になる折り返しの瞬間は減り方が止まり,なめらかな指数関数にはなりません.

臨界減衰は,扉を静かに閉めるドアクローザーや,自動車のショックアブソーバーに生かされています.

周期的な外力を加える

抵抗のあるおもりに,角振動数 ω の外力 F0cos⁡ωt を加えます.f=F0/m とおくと,運動方程式は次のとおりです.

x¨+2γx˙+ω02x=fcos⁡ωt

解は,初めの条件で決まる減衰振動の部分と,外力が続くかぎり残る部分の和になります.前者は時間とともに消える(弱減衰では e−γt で小さくなる)ので,十分に時間がたつと定常振動だけが残ります.

定理 強制振動の定常解

定常振動は,外力と同じ角振動数 ω で振動する.

x=Acos⁡(ωt−δ),A=f(ω02−ω2)2+4γ2ω2

δ は外力に対する位相の遅れで,tan⁡δ=2γωω02−ω2 をみたす(0≤δ≤π).振幅 A は外力の大きさ f に比例し,ω0,γ,ω にも依存する.位相の遅れ δ は ω0,γ,ω だけで決まる.どちらも初めの条件には無関係である.

導出は次の節で行います.まず,外力の角振動数 ω を変えたときの様子を3つの場合に分けて見ましょう.

  • ω0≫ω(ゆっくり押す.ω02≫2γω も必要):A≈f/ω02=F0/k.ばねを静かに引いたときの伸びと同じで,δ≈0,つまり変位が外力と同位相になる.

  • ω≫ω0(速く押す.ω≫2γ も必要):A≈f/ω2 で小さい.おもりが追いつけず,δ≈π,つまり変位が外力と逆位相になる.

  • ω=ω0:A=f2γω0 で,δ=π2.

δ は外力と変位の位相差なので,力が仕事をするかどうかは変位ではなく速度との向きで決まります.

γ が小さいと,ω が ω0 の近くで A は急に大きくなります.これを共鳴といいます.

同じ外力振幅で減衰比0.1と0.4の振幅および位相を厳密式から数値評価した曲線. 同じ外力振幅で減衰比0.1と0.4の振幅および位相を厳密式から数値評価した曲線.

ω=ω0 のとき δ=π/2 で,x=Asin⁡ω0t,速度は x˙=Aω0cos⁡ω0t になり,外力 F0cos⁡ω0t と同位相です.外力が常に動く向きに働くので,外力の仕事率が最大になります.これが「動く向きに合わせて押す」の正体です.なお,変位の振幅 A が最大になるのは,γ<ω0/2 のとき ω=ω02−2γ2 で,ω0 とはわずかにずれます.速度の振幅が最大になり,外力と同位相になるのが ω=ω0 です.弱減衰では両者はほぼ一致します.

共鳴の鋭さとQ値

共鳴での振幅を,ゆっくり押したときの伸び F0/k と比べると

A(ω0)F0/k=ω02γ

です.この値をQ値といい,Q と書きます.Q が大きいほど共鳴は強く,曲線は細くなります.弱減衰では,振幅の2乗が最大値の半分になる2点の間の幅がおよそ 2γ=ω0/Q です.また,Q が十分大きいとき,1周期で失うエネルギーの割合はおよそ 2π/Q です(厳密には 1−e−2γT′).Q は「振動が何回くらい続くか」の目安でもあります.ブランコの Q は数十,音叉では数千以上にもなります.

共鳴は,楽器の胴が音を響かせる仕組みや,ラジオが特定の局を選ぶ電気回路に使われます.橋や建物は,歩調や風,地震の周期が固有振動数に近いと危険です.弦や空気の柱の固有振動は,第25章の波で調べます.

ポイント ここまでのまとめ

  • 速度に比例する抵抗があると x¨+2γx˙+ω02x=0.γ<ω0 なら振幅が e−γt で減る振動,γ=ω0 は臨界減衰,γ>ω0 は過減衰である.

  • 周期的な外力を加えると,十分に時間がたてば外力と同じ ω の定常振動になる.弱減衰では振幅は ω≈ω0 で最大になり,これが共鳴である.

  • 問いの答え:動く向きに合わせて,ブランコ自身の周期で押すのがよい.そのとき外力は常に仕事をし,抵抗で失う分とつり合う振幅で落ち着く.弱い力でも,抵抗が小さければ,ゆっくり押したときの Q 倍の揺れになる.

08減衰振動と強制振動の数学と例題

数学の道具

定理 数学の道具:複素数とオイラーの式

複素数. i2=−1 となる i を使った z=a+bi(a,b は実数)を複素数といい,a を実部として a=Re⁡z と書く.

オイラーの式. 実数 a の eat は f′=af,f(0)=1 をみたす関数だった.この性質を保ったまま a=i とした関数を eiθ と定める.一方 g=cos⁡θ+isin⁡θ は

g′=−sin⁡θ+icos⁡θ=ig,g(0)=1

をみたし,1階の微分方程式の解は初期値で決まるので

eiθ=cos⁡θ+isin⁡θ

である.eiθ は単位円の上を回る点で,実部が cos⁡θ である.

微分が掛け算になる. z=Ceiωt なら z˙=iωz,z¨=−ω2z である.強制振動の方程式は,右辺を feiωt に替えて解き,実部をとれば解が得られる.

特性方程式. x¨+2γx˙+ω02x=0 に x=eλt を代入すると λ2+2γλ+ω02=0,つまり λ=−γ±γ2−ω02 である.γ<ω0 なら λ=−γ±iω′ で,実数の形は Ae−γtcos⁡(ω′t+ϕ).γ>ω0 は実数の λ が2つ,γ=ω0 は重解で x=(C1+C2t)e−γt である.

定常解. z=Ceiωt を代入すると (ω02−ω2+2iγω)C=f.括弧の中を Deiδ とおくと D=(ω02−ω2)2+4γ2ω2,tan⁡δ=2γωω02−ω2 で,C=fDe−iδ より x=Re⁡(Ceiωt)=fDcos⁡(ωt−δ) となる.

練習 1. (1) Re[eit1+i] を cos⁡(t−δ) の形で表せ.(2) x¨+4x˙+13x=0 の一般解を求めよ.

答え:(1) 11+i=1−i2=12e−iπ/4 より 12cos(t−π4) (2) λ=−2±3i より x=e−2t(acos⁡3t+bsin⁡3t)

練習 2. (1) eiπ/3 の実部と虚部を求めよ.(2) 3+4i を reiθ の形に書け.(3) x¨+2x˙+5x=0 の一般解を求めよ.

答え:(1) 実部 12,虚部 32.(2) r=5,tan⁡θ=43(θ≈0.93).(3) λ2+2λ+5=0 より λ=−1±2i,x=e−t(acos⁡2t+bsin⁡2t).

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

質量 0.50kg のおもりを,ばね定数 200Nm−1 のばねにつなぎ,速度に比例する抵抗(比例定数 b=2.0kgs−1)のある液体の中で振動させる.

例題の係数で曲線を数値評価し,減衰周期と包絡線が十分の一となる位置を記号で示す.数値解答は記さない. 例題の係数で曲線を数値評価し,減衰周期と包絡線が十分の一となる位置を記号で示す.数値解答は記さない.
  1. ω0,γ,減衰振動の角振動数 ω′ を求めよ.

  2. 振幅が最初の 1/10 になるまでの時間と,その間の振動の回数を求めよ.

  3. おもりをつり合いの位置からずらして静かに放すとき,振動させずに最も速くつり合いの位置へ戻すには,b をいくらにするか.

解答を見る

考え方 ω0=k/m,γ=b/2m を求め,γ<ω0 を確かめて弱減衰の式を使う.

  1. ω0=200/0.50=20rads−1,γ=2.0/(2×0.50)=2.0s−1.弱減衰で ω′=202−2.02≈19.9rads−1 である.

  2. e−γt1=0.1 より t1=ln⁡10/γ≈1.2s.周期 T′=2π/ω′≈0.316s なので,回数は t1/T′≈3.6 回である.

  3. 静かに放す場合,振動しない運動のうち最も速くつり合いの位置へ近づくのは臨界減衰 γ=ω0 のときである.よって b=2mω0=20kgs−1 である.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

例題 1 のおもりに外力 F0cos⁡ωt(F0=1.0N)を加える.十分に時間がたった後の定常振動を考える.

固有角振動数で駆動した定常振動.赤実線の外力と青破線の速度は同位相で重なり,緑の変位は四分の一周期遅れる.各量を自身の振幅で割って表示する. 固有角振動数で駆動した定常振動.赤実線の外力と青破線の速度は同位相で重なり,緑の変位は四分の一周期遅れる.各量を自身の振幅で割って表示する.
  1. ω=10rads−1 のときの振幅 A と位相の遅れ δ を求めよ.

  2. ω=ω0 のときの振幅は F0/k の何倍か.

    1. のとき,外力の仕事率の平均と,抵抗で失うエネルギーの毎秒の平均を求めよ.

解答を見る

考え方 f=F0/m=2.0ms−2 を前の節の式に入れる.(3) は Fv と bv2 の平均をとる.

  1. ω02−ω2=300,2γω=40 なので A=2.03002+402≈6.6×10−3m,tan⁡δ=40300 より δ≈0.13rad である.

  2. A=f2γω0=2.5×10−2m.F0/k=5.0×10−3m の5倍で,Q=ω0/2γ=5 に等しい.

  3. x=Asin⁡ω0t,v=Aω0cos⁡ω0t で,v は外力と同位相である.cos2 の平均は 1/2 だから,外力の仕事率の平均は 12F0Aω0=0.25W,抵抗の損失は 12bA2ω02=0.25W で,両者は等しい.

ポイント ここまでのまとめ

  • オイラーの式 eiθ=cos⁡θ+isin⁡θ で,振動の微分を iω の掛け算に置き換え,実部をとって実数の解を得る.

  • 特性方程式 λ2+2γλ+ω02=0 の根で,3つの減衰の形が決まる.

  • 定常解は C=f/(ω02−ω2+2iγω) の絶対値が振幅,偏角の符号を逆にしたものが位相の遅れ.共鳴では外力の仕事と抵抗の損失がつり合う.変位の振幅が最大になるのは γ<ω0/2 のとき ω=ω02−2γ2 で(それ以上の γ では ω=0 が最大),位相の遅れが π/2(速度が外力と同位相)になるのは ω=ω0 である.γ が小さければ両者は近い.

09減衰振動と強制振動の演習

固有角振動数,減衰した振動の角振動数,外力の角振動数を区別して解いてください.エネルギーについては,瞬間の値を扱うのか,周期平均を扱うのかも確かめましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

質量 m=1.0kg,ばね定数 k=16Nm−1 の系に速度比例抵抗 −bv が働く.

  1. b=2.0,8.0,10kgs−1 の各場合を弱減衰,臨界減衰,過減衰に分類せよ.

  2. 弱減衰の場合の角振動数 ω′ と周期を求めよ.

解答を見る

考え方 抵抗係数 b を直接 ω0 と比較せず,単位の揃う γ=b/(2m) に直す.

  1. ω0=k/m=4.0rads−1.各 γ は 1.0,4.0,5.0s−1 だから順に弱減衰,臨界減衰,過減衰である.臨界値は bc=2mω0=8.0kgs−1.抵抗が大きいほど速く戻るという予想は,過減衰の範囲では成り立たない.

  2. ω′=ω02−γ2=15≈3.9rads−1,T′=2π/15≈1.6s.抵抗なしの周期 2π/4 より長い.臨界減衰と過減衰では周期的な往復がないため,同じ周期の式を実数値として当てはめることはできない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

自由な弱減衰振動を観測すると,同じ向きの変位の山が 0.50s 間隔で現れ,続く山の高さは直前の0.80倍であった.質量は 0.20kg とする.

  1. γ,b,ω0 を求めよ.

  2. 山の高さがある山の半分以下となるのは,何周期後の山からか.

同じ向きの二つの山の観測点.時間間隔は0.50 sで,高さを最初の山で規格化すると1と0.80になる. 同じ向きの二つの山の観測点.時間間隔は0.50 sで,高さを最初の山で規格化すると1と0.80になる.
解答を見る

考え方 同じ位相で比較すれば三角関数の因子が同じになるため,山の比は指数因子の比だけで決まる.

  1. e−γT′=0.80 より γ=−ln⁡0.80/0.50≈0.446s−1.b=2mγ≈0.18kgs−1.ω′=2π/T′=4πrads−1 であり,ω0=(4π)2+γ2≈12.6rads−1.山の間隔から直接分かるのは ω′ であって ω0 ではない.

  2. 0.80n≤1/2 より n≥ln⁡(1/2)/ln⁡0.80≈3.11.したがって4周期後の山からである.3周期後は0.512倍,4周期後は0.4096倍となる.包絡線そのものが半分になる時刻と,離散的に記録された山が初めて半分以下になる時刻を区別する必要がある.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

x¨+6x˙+9x=0 に従う系を x(0)=a>0,x˙(0)=0 から放す.係数の単位はSI単位系に従い,時刻はsとする.

  1. 解が x=(C1+C2t)e−3t と書けることを使い,C1,C2 を決めよ.

  2. 有限の時刻に原点を横切るか,途中で向きを変えるかを調べよ.

解答を見る

考え方 重解をもつ特性方程式では,指数関数だけでは独立な解が足りず,時刻を掛けた項も必要である.

  1. λ2+6λ+9=(λ+3)2=0 で,γ=ω0=3s−1 の臨界減衰である.初期位置から C1=a.x˙={C2−3(C1+C2t)}e−3t に初速度を代入して C2=3a.よって x=a(1+3t)e−3t.

  2. t≥0 で x>0,t>0 で x˙=−9ate−3t<0.したがって原点を横切らず,向きも変えずに0へ近づく.x=ae−3t だけを解とすると初速度が −3a となり,静かに放す条件に合わない.なお,原点を横切らないという結論はここで指定した初期条件についてのものであり,十分大きい初速度を与えた場合まで含む主張ではない.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

m=0.50kg,k=50Nm−1,b=1.0kgs−1 の系に F=0.20cos⁡ωtN を加える.十分に時間がたった定常振動を扱う.

  1. ω=10rads−1 での振幅と位相の遅れを求めよ.

  2. 外力の平均仕事率と抵抗による平均損失率を求めよ.

  3. 変位振幅が最大になる角振動数は正確に10か.

水平ばねに結ばれた物体へ周期外力を加え,並列の抵抗装置が速度と逆向きの力を及ぼす.赤矢印は外力の正方向を示す. 水平ばねに結ばれた物体へ周期外力を加え,並列の抵抗装置が速度と逆向きの力を及ぼす.赤矢印は外力の正方向を示す.
解答を見る

考え方 固有角振動数で駆動すると,変位は外力より四分の一周期遅れ,速度は外力と同位相になる.変位の最大振幅を与える周波数とは区別する.

  1. ω0=10rads−1,γ=1.0s−1.A=F0/(bω0)=0.020m,δ=π/2.したがって x=0.020sin⁡10t,v=0.20cos⁡10t である.

  2. cos2 の1周期平均は 1/2 なので,⟨Fv⟩=0.20×0.20/2=0.020W.⟨bv2⟩=1.0×0.202/2=0.020W で等しい.定常状態とはエネルギーの流入がない状態ではなく,周期平均の流入と損失が釣り合う状態である.

  3. 振幅の分母の2乗を微分すると 4ω(ω2−ω02+2γ2).正の極小点は ωr=98≈9.90rads−1 で,10よりわずかに小さい.弱い抵抗で両者を近似的に同じとする場合も,どの応答を最大にするかは明示する.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

外力のない系 mx¨+bx˙+kx=0 で,E=mv2/2+kx2/2 とする.弱減衰解は x=Ae−γtcos⁡(ω′t+ϕ) である.

  1. 瞬間のエネルギー変化率を導け.

  2. T′=2π/ω′ として E(t+T′)/E(t) を求めよ.また E(t)=E(0)e−2γt がすべての瞬間に厳密に成り立つか調べよ.

解答を見る

考え方 運動方程式に速度を掛けると,力の式が仕事率の式になる.1周期後の比と,周期の途中を含む時間変化は別に調べる.

  1. 微分して E˙=mvv˙+kxv=v(mx¨+kx)=−bv2≤0.外力がなければエネルギーは増えず,転回点では v=0 なので瞬間の減少率も0になる.

  2. 三角関数の位相が 2π 増えるため,x(t+T′)=e−γT′x(t),v(t+T′)=e−γT′v(t).両方を2乗して足すと E(t+T′)/E(t)=e−2γT′ が厳密に成り立つ.しかし全時刻で単純な指数関数なら E˙=−2γE となり,転回点でも E>0 なら減少率が負になって(1)と合わない.抵抗が十分小さい場合には,周期中の小さな変動をならしたエネルギーの近似として指数減衰を使える.

ポイント 教える人へ

  • b,γ,ω0 の単位と関係を最初に確かめさせる.

  • 初期条件を代入して解を検算する習慣をつける.

  • 変位の共鳴と,外力と速度が同位相になる条件を区別させる.

  • エネルギーの周期ごとの比と瞬間の変化率を混同させない.

10連成振動

問い

同じ長さの振り子を2つ,水平に張った1本の糸からつるします.片方だけを揺らして放すと,はじめは揺れていなかったもう片方が,だんだん揺れ始めます.そのうち最初に揺らしたほうはほとんど止まり,今度はもう片方が大きく揺れます.この揺れの受け渡しは,何度も繰り返されます.なぜ揺れが「移る」のでしょうか.

考えてみる

糸がなければ,2つの振り子はそれぞれ単振動を続け,片方がもう片方に影響することはありません.糸をつなぐと,片方が揺れたときに糸が引かれ,もう片方に小さな力が働きます.力を受ければエネルギーが移るのは自然ですが,それが「ぴったり全部移って,また戻る」ように見えるのが不思議です.

困るのは,一方の動きが他方の力を決め,他方の動きがまたその力を決めることです.2つの変位 x1,x2 の運動方程式が絡み合い,1つずつ解けません.そこで,絡みをほどく見方を探します.

2つの質点と3つのばね

なめらかな水平面の上で,質量 m の2つの質点を,ばね定数 k のばね2本で左右の壁につなぎ,2つの質点の間をばね定数 κ のばねでつなぎます.つり合いの位置からの右向きの変位を x1,x2 とします.結合ばねの伸びは x2−x1 なので,運動方程式は次のとおりです.

mx¨1=−kx1−κ(x1−x2),mx¨2=−kx2+κ(x1−x2)
左右の壁から定数kのばねで支えた二つの質点mを,定数κのばねで結ぶ.x₁とx₂は各つり合い位置から右向きに測る. 左右の壁から定数kのばねで支えた二つの質点mを,定数κのばねで結ぶ.x₁とx₂は各つり合い位置から右向きに測る.

2つの質点が同じ角振動数で振動するパターンを探します.まず x1=x2(同位相)で動く場合を考えます.結合ばねは伸び縮みせず,どちらの式も mx¨1=−kx1 になるので,これは実際に起こる運動です.角振動数は ω1=k/m です.次に x1=−x2(逆位相)で動く場合です.結合ばねの伸びは x2−x1=−2x1 になり,式は mx¨1=−(k+2κ)x1 となります.結合ばねの分だけ復元力が強いので,角振動数は ω2=(k+2κ)/m で,ω1 より大きくなります.

定義 基準振動

すべての質点が同じ角振動数で,一定の位相関係を保って振動する運動を基準振動,その角振動数を基準角振動数という.この系の基準振動は,同位相(ω1=k/m)と逆位相(ω2=(k+2κ)/m)の2つである.

上は同位相,下は逆位相の配置.下段の時間曲線では青をx₁,橙破線をx₂とし,同位相で重なり逆位相で符号が反対になることを示す. 上は同位相,下は逆位相の配置.下段の時間曲線では青をx₁,橙破線をx₂とし,同位相で重なり逆位相で符号が反対になることを示す.

法則 重ね合わせ

運動方程式は線形なので,基準振動を足し合わせたものも解になる.一般の運動は

x1=Acos⁡(ω1t+ϕ1)+Bcos⁡(ω2t+ϕ2),x2=Acos⁡(ω1t+ϕ1)−Bcos⁡(ω2t+ϕ2)

の形で,2つの基準振動の重ね合わせである.A,B,ϕ1,ϕ2 は初めの条件で決まる.

揺れが移るわけ

はじめに質点1を a だけ引いて静かに放すと,x1(0)=a,x2(0)=0,初速度は0です.これは,同じ大きさの2つの基準振動が,時刻0でちょうど x2 を打ち消し合う重ね合わせです.

x1=a2(cos⁡ω1t+cos⁡ω2t),x2=a2(cos⁡ω1t−cos⁡ω2t)

和積の公式(次の節の「数学の道具」で整理します)で和を積に直すと,ω¯=ω1+ω22,Δ=ω2−ω12 として次のようになります.

x1=acos⁡Δtcos⁡ω¯t,x2=asin⁡Δtsin⁡ω¯t

速く振動する cos⁡ω¯t に,ゆっくり変わる振幅 cos⁡Δt,sin⁡Δt がかかっています.Δt=π/2 で質点1の振幅(包絡線)は0になり,質点2が最大の振幅 a になります.結合が弱く Δ が ω¯ よりずっと小さいとき,質点1の揺れはこのころにほぼ消えます.厳密に0になるのは包絡線で,速度には aΔ 程度の大きさが残ります.この振幅の入れ替わりがうなりです.

ω₁=1,ω₂=1.1の厳密な重ね合わせを数値評価.包絡因子が0になる時刻を示すが,その時刻の速度が必ず0とは限らない. ω₁=1,ω₂=1.1の厳密な重ね合わせを数値評価.包絡因子が0になる時刻を示すが,その時刻の速度が必ず0とは限らない.

揺れが移る理由は,2つの基準振動の角振動数が少し違うことです.時間がたつと2つの位相がずれていき,はじめは打ち消し合っていた質点2が強め合い,質点1が打ち消し合うようになります.結合が弱い(κ が k よりずっと小さい)とき,結合ばねに蓄えられるエネルギーは小さく,各質点の揺れのエネルギーはおよそ cos2⁡Δt と sin2⁡Δt の割合で配られます.質点1から質点2へほぼ移りきる,つまり包絡線が入れ替わるまでの時間は π2Δ=πω2−ω1 です.また,ω2≈ω1(1+κ/k) なので,ω2−ω1≈ω1κ/k と小さく,移るのに長い時間がかかります.

質点が3つ,4つ,N 個と増えると,基準振動も N 個になります.N をどんどん大きくして連続にしたものが波で,第25章で調べます.

ポイント ここまでのまとめ

  • 連成した振動は運動方程式が絡み合うが,同位相と逆位相の基準振動に分けると,それぞれ単振動になる.

  • この系では ω1=k/m,ω2=(k+2κ)/m.一般の運動は基準振動の重ね合わせである.

  • 問いの答え:片方だけ揺らすのは,2つの基準振動を同じ大きさで足した状態である.角振動数が少し違うので位相差が進み,結合が弱ければ,一方の揺れがほぼ消えて他方が最大になる.これを繰り返してエネルギーがほぼ往復する.

11連成振動の数学と例題

数学の道具

定理 数学の道具:連立の微分方程式を和と差で分離する

2つの変数を入れ替えても同じ形になる連立方程式

x¨1=−αx1+βx2,x¨2=βx1−αx2

で,辺々を足したものと引いたものを作り,q+=x1+x2,q−=x1−x2 とおくと

q¨+=−(α−β)q+,q¨−=−(α+β)q−

となり,q+ と q− はそれぞれ独立な方程式になる(和と差で分離できるのは,この入れ替え対称な場合である).α−β>0 なら q+ は角振動数 ω+=α−β の単振動,α+β>0 なら q− は角振動数 ω−=α+β の単振動になる(係数が0なら等速運動,負なら指数関数的な運動である).x1=q++q−2,x2=q+−q−2 と戻す.q−=0 が同位相,q+=0 が逆位相の基準振動である.前の節の系は α=k+κm,β=κm にあたり,α∓β>0 をみたす.

うなりの計算には和積の公式を使う.

cos⁡A+cos⁡B=2cos⁡A+B2cos⁡A−B2,cos⁡A−cos⁡B=−2sin⁡A+B2sin⁡A−B2

加法定理 cos⁡(α±β)=cos⁡αcos⁡β∓sin⁡αsin⁡β の2式を足し引きし,α+β=A,α−β=B とおくと導ける.

練習 1. (1) x¨1=−2x1+x2,x¨2=x1−2x2 の基準角振動数を求めよ.(2) cos⁡11t+cos⁡9t を積の形に直せ.

答え:(1) α=2,β=1 より ω+=1,ω−=3 (2) 2cos⁡10tcos⁡t

練習 2. (1) x¨1=−3x1+x2,x¨2=x1−3x2 の基準角振動数を求めよ.(2) cos⁡21t+cos⁡19t を積の形に直し,うなりの角振動数を答えよ.

答え:(1) 和 s=x1+x2 は s¨=−2s,差 d=x1−x2 は d¨=−4d に従うので 2 と 2.(2) 2cos⁡20tcos⁡t.振幅 |2cos⁡t| は角振動数 2 で強弱をくり返す(21−19=2).

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

なめらかな水平面の上で,質量 0.20kg の2つの質点を,ばね定数 20Nm−1 のばね2本で左右の壁につなぎ,質点どうしを 30Nm−1 のばねでつなぐ.

質量0.20 kgの二つの物体を外側の20 N/mのばねと中央の30 N/mのばねで結ぶ.基準振動数の数値は記さない. 質量0.20 kgの二つの物体を外側の20 N/mのばねと中央の30 N/mのばねで結ぶ.基準振動数の数値は記さない.
  1. 基準角振動数を求めよ.

  2. 質点1を右に 2.0cm 引き,質点2をつり合いの位置に保って,同時に静かに放す.質点1の振れの振幅(包絡線)が初めて0になる時刻と,そのときの質点2の振幅を求めよ.

解答を見る

考え方 前の節の式に数値を入れる.(2) は和積の公式でうなりの形にする.

  1. k=20,κ=30 のとき,ω1=k/m=20/0.20=10rads−1,ω2=(k+2κ)/m=80/0.20=20rads−1 である.

  2. ω¯=15rads−1,Δ=5rads−1 で,a=2.0cm として

x1=acos⁡5tcos⁡15t,x2=asin⁡5tsin⁡15t

である.質点1の包絡線の大きさ a|cos⁡5t| が初めて0になるのは 5t=π/2,すなわち t=π/10≈0.31s である.このとき質点2の包絡線の大きさは a=2.0cm である.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

長さ L=1.0m の軽い糸に質量 m=0.10kg の小球をつるした2つの振り子が,並んでつるされている.2つの小球を,水平に張った軽いばね(ばね定数 κ=0.020Nm−1)でつなぐ.重力加速度は 9.8ms−2,振れは小さく,ばねは水平を保つとする.

長さlの二つの振り子の小球を定数κのばねで結ぶ.鉛直からの小角をθ₁とθ₂とし,ばねは小角近似で水平とみなす. 長さlの二つの振り子の小球を定数κのばねで結ぶ.鉛直からの小角をθ₁とθ₂とし,ばねは小角近似で水平とみなす.
  1. 基準角振動数を求めよ.

  2. 振り子1だけを小さく振らせて放した.振り子1の振れが初めてほぼ0になるまでの時間を求め,κ が小さいとして ω2−ω1 を近似した値と比べよ.

解答を見る

考え方 小球の水平変位 xi=Lθi の運動方程式を立て,前の節の系の k を mg/L に置き換える.

  1. 水平方向の力は,重力の成分 −mgθi=−(mg/L)xi と,ばねの力 ∓κ(x1−x2) である.運動方程式は

mx¨1=−mgLx1−κ(x1−x2),mx¨2=−mgLx2+κ(x1−x2)

で,前の節の k=mg/L の場合である.よって

ω1=gL≈3.130rads−1,ω2=gL+2κm=10.2≈3.194rads−1

である.

  1. 振り子1の振れの包絡線が0になるのは Δt=π/2 のときで,t=πω2−ω1=π0.0632≈50s.近似 ω2−ω1≈ω1κ/k(k=mg/L=0.98Nm−1)では 0.0639rads−1 で,t≈49s とほぼ一致する.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

2原子分子を,質量 m の2つの原子をばね定数 κ のばねでつないだものとみなす.壁は無く,2つの原子は一直線上を動く.酸素分子で m=16u=2.66×10−26kg,κ=1.2×103Nm−1 として,次を答えよ.

壁に固定されていない二つの質量mの原子模型.位置をx₁,x₂,結合ばねの自然長をl₀とする. 壁に固定されていない二つの質量mの原子模型.位置をx₁,x₂,結合ばねの自然長をl₀とする.
  1. 和と差で運動を分け,基準振動が何を表すか述べよ.

  2. 分子の振動の周期を求めよ.

解答を見る

考え方 前の節の系で壁のばねを無くした(k=0)ものと考え,和と差に分ける.

  1. x1<x2 とすると,ばねの伸びは x2−x1−l0 で,mx¨1=κ(x2−x1−l0),mx¨2=−κ(x2−x1−l0) である.足すと m(x¨1+x¨2)=0 で,重心が等速直線運動をする(角振動数0の基準振動).引くと,r=x2−x1 について r¨=−2κm(r−l0) となり,ばねの長さが l0 のまわりで単振動する.

  2. 角振動数 ω=2κ/m=2400/(2.66×10−26)≈3.0×1014rads−1 で,周期は T=2π/ω≈2.1×10−14s である.

ポイント ここまでのまとめ

  • 入れ替えて同じ形の連立方程式は,和と差を作ると独立な方程式に分かれ,係数が正なら独立な単振動になる.

  • 弱い結合では ω2−ω1≈ω1κ/k が小さく,エネルギーがほぼ移りきる時間 π/(ω2−ω1) は長い.

  • 壁の無い系では,角振動数0の基準振動が重心の等速運動を表す.

12連成振動の演習

同じ向きの座標軸で各物体の変位を書き,結合ばねの伸びを確かめてください.和と差で分けた運動を,最後に個々の物体の位置と速度へ戻しましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

左右の壁と質量 m の2物体を外側のばね k でつなぎ,物体間をばね κ でつなぐ.つり合いではどのばねも自然長であり,変位 x1,x2 はともに右向きを正とする.

  1. x1=a,x2=a と x1=a,x2=−a の各場合に,結合ばねの伸びを求めよ.

  2. 同位相と逆位相の基準角振動数を求めよ.

同じ質量mの二つの物体と三本のばね.外側はk,中央はκ.変位x₁とx₂はともに右向きを正とする. 同じ質量mの二つの物体と三本のばね.外側はk,中央はκ.変位x₁とx₂はともに右向きを正とする.
解答を見る

考え方 結合ばねの右端の変位から左端の変位を引く.左端だけが右へ動けば,結合ばねは短くなる.

  1. 伸びは x2−x1 なので,同位相では0,逆位相では −2a である.負の伸びは圧縮を意味する.結合ばねが物体1に及ぼす力は κ(x2−x1),物体2への力はその反対になる.

  2. 同位相では結合ばねの力が0だから mx¨1=−kx1,ω1=k/m.逆位相では x2=−x1 を代入して mx¨1=−(k+2κ)x1,ω2=(k+2κ)/m.逆位相では結合ばねも変形するので,振動数は大きくなる.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

演習1の系で m=0.50kg,k=8.0Nm−1,κ=5.0Nm−1 とする.x1(0)=a,x2(0)=−a,両物体の初速度0で放す.

  1. q+=x1+x2,q−=x1−x2 の初期条件と時間変化を求めよ.

  2. 各物体の位置と,初めて両方がつり合い位置を通る時刻を求めよ.

三本ばねの系で,左の物体は基準位置から右へa,右の物体は左へaずらされている.初速度はともに0である. 三本ばねの系で,左の物体は基準位置から右へa,右の物体は左へaずらされている.初速度はともに0である.
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考え方 位置だけでなく速度の和と差も初期条件に含める.一方の基準振動だけを励起すれば,2つの振動数の混合は起こらない.

  1. ω1=4.0rads−1,ω2=6.0rads−1.初期条件は q+(0)=0,q˙+(0)=0,q−(0)=2a,q˙−(0)=0.したがって q+=0,q−=2acos⁡6t となる.

  2. x1=(q++q−)/2=acos⁡6t,x2=(q+−q−)/2=−acos⁡6t.最初の同時通過は 6t=π/2,すなわち t=π/12≈0.26s.このとき変位はともに0だが,速度は −6a と +6a であり,静止したわけではない.全エネルギーが運動エネルギーになっている.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

演習1の系をすべてつり合い位置に置き,時刻0に物体1だけへ右向きの短い力積 J を加える.力積中の変位は無視できる.

  1. q+,q− の初速度を求めよ.

  2. ω1=k/m,ω2=(k+2κ)/m を使って x1(t),x2(t) を求めよ.結合を0にした極限も調べよ.

三本ばねの系がつり合い位置にあるとき,左の物体だけに右向きの力積Jを加える.赤矢印は力積を表す. 三本ばねの系がつり合い位置にあるとき,左の物体だけに右向きの力積Jを加える.赤矢印は力積を表す.
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考え方 初めに片方だけへ速度を与える操作も,同位相と逆位相の両方の運動を含む.正弦型の解を重ねる.

  1. 運動量変化から v1(0)=J/m,v2(0)=0.したがって q˙+(0)=q˙−(0)=J/m で,初期位置は両方0である.

  2. q+=Jsin⁡ω1t/(mω1),q−=Jsin⁡ω2t/(mω2) なので

x1=J2m(sin⁡ω1tω1+sin⁡ω2tω2),x2=J2m(sin⁡ω1tω1−sin⁡ω2tω2)

である.κ→0 では両角振動数が ω=k/m に一致し,x1=Jsin⁡ωt/(mω),x2=0 となる.結合がなければ運動が他方へ伝わらないことを確かめられる.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

演習1の系で x1(0)=a,x2(0)=0,初速度はともに0とする.ω¯=(ω1+ω2)/2,Δ=(ω2−ω1)/2>0 とおく.

  1. 解を積の形に直せ.

  2. x1 の包絡因子が初めて0になる時刻 t∗ と,その瞬間の x1,v1 を求めよ.この時刻に必ず物体1が静止するか.

左の物体だけを右へaずらし,右の物体をつり合い位置に保つ.両物体を同時に静かに放す初期状態である. 左の物体だけを右へaずらし,右の物体をつり合い位置に保つ.両物体を同時に静かに放す初期状態である.
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考え方 変位の包絡因子が0でも,その因子の時間微分は0とは限らない.積を微分して速度を確かめる.

  1. q+=acos⁡ω1t,q−=acos⁡ω2t だから,和積の公式より x1=acos⁡Δtcos⁡ω¯t,x2=asin⁡Δtsin⁡ω¯t である.

  2. Δt∗=π/2 より t∗=π/(2Δ)=π/(ω2−ω1).x1(t∗)=0 だが,微分すると v1(t∗)=−aΔcos⁡ω¯t∗ で一般には0ではない.また x2(t∗)=asin⁡ω¯t∗ で,瞬間の変位が必ず a になるわけでもない.弱結合で Δ/ω¯ が小さいと,残る速度は通常の速度尺度 aω¯ に比べて小さい.そこで「ほぼ静まる」と表現できるが,包絡線と実際の軌道は区別が必要である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

壁につながれていない質量 m と 2m の2物体を,自然長 l0,ばね定数 κ のばねで結ぶ.水平な一直線上で抵抗なく動き,位置は x1<x2 とする.

  1. 重心 R=(x1+2x2)/3 と伸び r=x2−x1−l0 の運動方程式を求めよ.

  2. 重心が静止し,初めの伸びが a,相対速度が0のとき,r(t) と各物体の振幅を求めよ.

質量mと2mの物体を自然長l₀のばねκで結ぶ.壁はなく,位置x₁とx₂は同じ右向きの座標で測る. 質量mと2mの物体を自然長l₀のばねκで結ぶ.壁はなく,位置x₁とx₂は同じ右向きの座標で測る.
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考え方 質量が違う場合,単純な位置の和ではなく質量を重みにした重心を使う.内力は重心運動を変えない.

  1. mx¨1=κr,2mx¨2=−κr.加えると 3mR¨=0.加速度の差をとると r¨=−3κr/(2m) となる.重心は等速で,伸びは角振動数 Ω=3κ/(2m) の単振動である.

  2. r=acos⁡Ωt.x1=R−2(l0+r)/3,x2=R+(l0+r)/3 だから,各つり合い位置からの変位は −2acos⁡Ωt/3 と acos⁡Ωt/3.振幅は 2a/3 と a/3 で,軽い方が大きく動く.位置の平均は振動しても重心は固定され,両物体の運動量は常に打ち消し合う.

ポイント 教える人へ

  • 結合ばねの伸びの符号を,両端の変位から決めさせる.

  • 和と差の初期位置だけでなく初速度も書かせる.

  • 包絡線が0になることと,瞬間の速度が0になることを分ける.

  • 質量が異なる場合は重心と相対座標を使う理由を問う.

13第7章の章末問題

単振動,運動量保存,仕事とエネルギーを組み合わせ,つり合いの移動や接触・摩擦で運動が切り替わる問題に取り組みます.区間ごとに初期条件を選び,境目で位置と速度をつないで,停止や離脱の条件を確かめてください.特に断らない限り,ばね・糸・滑車の質量と空気抵抗は無視します.

演習 1

オリジナル ★★☆☆☆

傾斜角 α の滑らかな固定斜面に沿って,ばね定数 k の軽いばねを置き,上端を固定して下端に質量 m の物体をつなぐ.自然長からの伸び s を斜面下向きに測る.自然長で静かに放す.

  1. つり合いの伸び d,周期,最大の伸びを求めよ.

  2. 運動中の最大速さを求め,斜面角を変えると周期と最大速さがそれぞれどう変わるか述べよ.

固定斜面の上端にばねkを固定し,物体mをつなぐ.傾斜角はαで,座標sは斜面下向きに測る. 固定斜面の上端にばねkを固定し,物体mをつなぐ.傾斜角はαで,座標sは斜面下向きに測る.
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考え方 斜面に沿う重力は一定なので,つり合いを移すが変位に対する復元力の傾きを変えない.

  1. ms¨=mgsin⁡α−ks.d=mgsin⁡α/k とすれば X=s−d は mX¨=−kX に従う.ω=k/m,T=2πm/k.初期条件は X=−d,v=0 なので s=d(1−cos⁡ωt),最大の伸びは 2d.

  2. 最大速さは dω=gsin⁡αm/k.斜面角を増やすと初期のつり合いからの隔たりが大きくなるので最大速さは増すが,周期は変わらない.エネルギー式 mv2/2+ks2/2−mgssin⁡α=0 からも,s=d で速さ最大と確認できる.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

距離 D だけ離れた左右の壁の間に質量 m の物体を置く.左壁とのばねは定数 k,自然長 l,右壁とのばねは定数 3k,自然長 l である.物体は滑らかな水平面を動き,ばねは伸縮ともフックの法則に従う.左壁からの位置を x とする.

  1. つり合い位置と周期を求めよ.

  2. 物体を中央 x=D/2 で静かに放すときの振幅を求めよ.壁に衝突しない範囲の D,l を考える.

距離Dの二つの壁と物体mを左のばねk,右のばね3kでつなぐ.各ばねの自然長はl,物体の位置xは左壁から測る. 距離Dの二つの壁と物体mを左のばねk,右のばね3kでつなぐ.各ばねの自然長はl,物体の位置xは左壁から測る.
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考え方 両ばねの力を同じ右向き座標で足す.自然長や壁間隔はつり合い位置に影響するが,力の傾きはばね定数の和である.

  1. F=−k(x−l)+3k(D−x−l)=−4kx+3kD−2kl.よって x0=(3D−2l)/4.X=x−x0 なら mX¨=−4kX で,T=2πm/(4k) となる.

  2. X(0)=D/2−x0=(2l−D)/4,初速度0だから A=|D−2l|/4.D=2l では初めからつり合いで振動しない.D>2l では初め右へ,D<2l では初め左へ動く.両側のばねがあるからといって,中央が必ずつり合い位置になるわけではない.

演習 3

オリジナル ★★★☆☆

長さ L の単振り子をつるした箱が,時刻0までは静止していた.小球が鉛直線から小角 θ=a で静止した瞬間に,箱が一定の上向き加速度 g で運動を始める.切り替えに速度の跳びはなく,その後も加速度は一定とする.

  1. 切り替え後の角振動数と θ(t) を求めよ.

  2. 箱から見た最下点での速さを求め,箱が静止したままの場合と比べよ.

箱の天井につるした長さLの振り子が初期角aにある.箱の上向き加速度gを橙色で示す. 箱の天井につるした長さLの振り子が初期角aにある.箱の上向き加速度gを橙色で示す.
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考え方 加速する箱から見ると下向きの慣性力が加わる.初期の位置と速度は連続だが,運動方程式は変わる.

  1. 有効な下向き加速度は g+g=2g.接線方向に mLθ¨=−2mgθ なので ω=2g/L.θ(0)=a,θ˙(0)=0 より θ=acos⁡(2g/Lt).周期は静止時の 1/2 倍である.

  2. 最下点の速さは Laω=a2gL.静止時の agL の 2 倍になる.切り替え後の箱の座標では一定の有効重力に対応するエネルギーを使えるが,実際の重力だけで作ったエネルギーを切り替え前後に保存させてはいけない.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

水平ばねの物体が x=Acos⁡ω0t,ω0=k/m で振動していた.右端 x=A に達した瞬間を新しい時刻0とし,抵抗 −bv を働かせる.γ=b/(2m)<ω0 とする.

  1. 切り替え後の x(t) を求めよ.

  2. 初めて原点を通る時刻を ω′=ω02−γ2 と逆正接で表せ.ただし,tan⁡α=c,0<α<π/2 を満たす角を α=arctan⁡c と書く(逆正接).

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考え方 減衰因子も微分すると速度に寄与する.静止から放しても単に Ae−γtcos⁡ω′t とはならない.

  1. x=e−γt(Ccos⁡ω′t+Dsin⁡ω′t) とおく.x(0)=A から C=A,v(0)=−γC+ω′D=0 より D=γA/ω′.

x=Ae−γt(cos⁡ω′t+γω′sin⁡ω′t)
  1. tan⁡ω′t=−ω′/γ で,最初の零点は第2象限にある.t={π−arctan⁡(ω′/γ)}/ω′.γ→0 の極限で t→π/(2ω0) となり,抵抗なしの四分の一周期に戻る.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

質量 m,ばね定数 k,抵抗係数 b>0 の系を角振動数 ω0=k/m の外力で駆動する.外力を十分長く加えると,変位の振幅は A になった.

  1. 必要な外力振幅 F0 を求めよ.

  2. 定常振動の1周期で抵抗が失わせるエネルギーと,Q=ω0/(2γ) を使った ΔE/(kA2/2) を求めよ.

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考え方 定常振動では外力が損失を補っている.同じ振幅の自由減衰振動が1周期で失う割合と,近似なしで同一視しない.

  1. 固有角振動数での振幅は A=F0/(bω0) なので F0=bω0A.速度は外力と同位相である.

  2. v=Aω0cos⁡ω0t より,損失は ΔE=bA2ω02T0/2=πbA2ω0.k=mω02,Q=mω0/b を使うと ΔE/(kA2/2)=2π/Q.この定常振動ではエネルギー kA2/2 は一定に保たれるので,割合が1を超えても矛盾しない.1周期に蓄積エネルギー以上の量が流入し,同量が散逸することを意味する.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

質量 m の2物体を,外側のばね k と結合ばね κ で左右の壁に結ぶ.基準角振動数を測ると ω1=Ω,ω2=3Ω であった.初め x1=a,x2=0,初速度0から放す.

  1. k,κ を求めよ.

  2. t=π/(2Ω) での位置と速度を求め,全エネルギーを初期値と比較せよ.

外側のばねkと結合ばねκの連成系で,左の物体だけをずらす.観測された基準角振動数はΩと3Ωである. 外側のばねkと結合ばねκの連成系で,左の物体だけをずらす.観測された基準角振動数はΩと3Ωである.
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考え方 基準振動数はばね定数の情報を含む.個々の物体が原点にあっても,全エネルギーが0になるとは限らない.

  1. k/m=Ω2,(k+2κ)/m=9Ω2 より k=mΩ2,κ=4mΩ2.

  2. x1=a(cos⁡Ωt+cos⁡3Ωt)/2,x2=a(cos⁡Ωt−cos⁡3Ωt)/2.指定時刻で両方0,微分して v1=aΩ,v2=−2aΩ.エネルギーは m(v12+v22)/2=5ma2Ω2/2.初めは外側のばねと結合ばねに (k+κ)a2/2=5ma2Ω2/2 が蓄えられ,同じである.

演習 7

東京大 2009 前期(改題) ★★★☆☆

鉛直なばね(定数 k)の上端に質量 m の受け皿を固定し,その上に質量 2m の小球を載せる.摩擦のない鉛直ガイドで横移動を防ぎ,両者の大きさは無視する.ばねが自然長の位置を y=0,上向きを正とする.接触したまま y=−3mg/k−A から静かに放す.

小球2mを受け皿mに載せた初期状態.破線はばねが自然長のときの受け皿の高さ. 小球2mを受け皿mに載せた初期状態.破線はばねが自然長のときの受け皿の高さ.
  1. 接触中の y(t) と小球が受ける抗力 N を求め,分離する振幅の条件を述べよ.

  2. 分離時の速さを V,分離後の時間を τ とする.両者の位置を求めよ.受け皿の単独の周期を P とすると,再衝突が 2P 後となるために必要な V,A はいくらか.途中の接触がないことは位置の差のグラフで確認してよいものとする.

  3. m=0.10kg,k=40Nm−1,g=9.8ms−2 で P,V,A を求めよ.位置の記録から,接触中の区間を見分ける基準も述べよ.

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考え方 接触中は全質量で振動し,分離は上の球を押す抗力がゼロになるときである.分離後は同じ初期位置・速度から異なる運動を始める.

  1. Ω=k/(3m) とおくと,y=−3mg/k−Acos⁡Ωt.小球の式 2my¨=N−2mg に全体の式 3my¨=−ky−3mg を代入して N=−2ky/3 を得る.したがって y=0 を上向きに通過するとき分離し,条件は A>3mg/k である.等号ではその点で速度もゼロで,有限時間の分離は起こらない.分離時には V2=Ω2[A2−(3mg/k)2].

  2. ω=k/m,P=2π/ω とおけば,受け皿と小球の位置は

y1=−gω2+gω2cos⁡ωτ+Vωsin⁡ωτ,y2=Vτ−12gτ2.

τ=2P では y1=0 なので V=gP.よって

A=gω29+12π2.

途中を確認するには s=ωτ とし,差を g/ω2 で割った D(s)=2π(s−sin⁡s)−s2/2+1−cos⁡s を描く.0<s<4π で正,s=4π でゼロとなる.小球が常に上にあり,これが最初の再衝突である.

  1. P=0.314s,V=3.08ms−1,A=0.277m.接触区間は位置も傾きも一致する有限の区間であり,単に2曲線が交わる衝突の瞬間とは区別する.この区間では y≤0 も必要である.g/ω2 は長さ,gP は速さの次元をもち,分離条件とも整合する.

演習 8

東京大 2008 前期(改題) ★★★☆☆

滑らかな水平面上の質量 m の箱を静止から出発させ,時刻 T に距離 L の地点を通過させる.到着時に停止させる必要はない.右向きの力だけを使い,0≤F(t)≤F0 とする.

上段は力Fで押す箱.下段は圧縮ばねで押す箱で,自然長の端が通過点に一致する. 上段は力Fで押す箱.下段は圧縮ばねで押す箱で,自然長の端が通過点に一致する.
  1. 一定の力を加え続ける方法と,自然長の位置が通過点となるばねを L 圧縮して放す方法について,必要な力またはばね定数,到着速度,仕事を求めよ.

  2. 力の上限のもとで実行可能となる条件と,仕事を最小にする力の時間変化を求めよ.最小になる理由も説明せよ.

  3. m=2.0kg,L=1.2m,T=2.0s,F0=3.0N で3方法の仕事を比較せよ.

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考え方 速度のグラフの面積を固定し,終速度を小さくする.負の仕事は許されないので,早く加速して長く等速で進むことが有利になる.

  1. 一定加速では F=2mL/T2,v(T)=2L/T,W=2mL2/T2.ばねでは x=L(1−cos⁡ωt) の最初の x=L が T だから,ωT=π/2.したがって k=mπ2/(4T2),v(T)=πL/(2T),W=mπ2L2/(8T2).それぞれ最大力 2mL/T2,kL が F0 以下である必要がある.

  2. a0=F0/m とすると,最大到達距離は a0T2/2.実行可能条件は F0≥2mL/T2 である.終速度 vf を固定した任意の運動で v(t)≤min(a0t,vf) だから,この上限どおりのグラフが最大の距離を与える.従って所定の距離を最小の vf で達成する方法は,時間 tc まで F0,以後ゼロとする方法である.

L=a0tc(T−tc/2),tc=T−T2−2L/a0,Wmin=12ma02tc2.
  1. 一定加速の仕事は 1.44J,ばねは 0.888J,最適法は tc=0.451s,Wmin=0.457J.各最大力は 1.20N,1.48N,3.0N で実行可能である.F0 を限りなく大きくすると vf→L/T,Wmin→mL2/(2T2) となり,速度グラフの面積からの下限に一致する.

演習 9

東京大 2007 前期(改題) ★★★☆☆

水平に張った軽い糸の両端の間隔は 2a,張力は一定の S である.中央の質量 m の小片は,糸と垂直な水平方向 x に動ける.|x|/a は十分小さいとする.小片には +x 向きに速さ U で動くベルトを押し付ける.押付け力は N,静止摩擦係数は μ で,動摩擦は無視できる模型である.相対速度ゼロで静止摩擦が足りれば,小片はベルトとともに動く.

上から見た図.小片は糸の端を結ぶ線に垂直に動く.押付け力Nは紙面に垂直. 上から見た図.小片は糸の端を結ぶ線に垂直に動く.押付け力Nは紙面に垂直.
  1. 復元力を −Kx と書き,K と角振動数 ω を求めよ.

  2. 同行から滑りに移る位置を s>0 とする.s と振幅 B,次に同行が始まる位置を求めよ.

  3. q=ωs/U とおき,一周期の時間を求めよ.必要なら,tan⁡α=c,0<α<π/2 を満たす角を α=arctan⁡c と書いてよい.N を増すと周期はどうなるか.ω=10s−1,U=0.10ms−1 で,s=0.010m とその2倍の場合を比較せよ.

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考え方 同行中は等速,滑っている間は単振動である.位置と速度をつないで,次に速度がベルトと一致する位相を探す.

  1. 左右の糸による力の和は −2Sx/a だから,K=2S/a,ω=K/m.

  2. 同行に必要な摩擦は Kx.限界 Ks=μN より s=μN/K.滑り開始を t=0 とすれば x=scos⁡ωt+(U/ω)sin⁡ωt,従って B=s2+(U/ω)2.次に x˙=U となる位置は −s であり,そこで必要な静止摩擦 −Ks は限界内なので同行に移る.

  3. α=arctan⁡q とすれば,滑りの位相の進みは 2π−2α.同行では −s から s まで 2s/U かかるので,

Tc=2π−2arctan⁡q+2qω.

dTcdq=2q2/[ω(1+q2)]>0 だから,押付け力を増すと周期は長くなる.数値は q=1,2 に対して Tc=0.671,0.807s,振幅は 0.0141,0.0224m.q→0 では周期が 2π/ω に戻る.振幅が a に比べて十分小さい範囲でこの近似を使う.

演習 10

東京大 2003 前期(改題) ★★★☆☆

滑らかな水平面で左から台車A(質量 3m),B(質量 m)を定数 k の自然長のばねで結び,Aを左の壁に接して置く.右から質量 m/3 のCが速さ u で来てBと弾性衝突する.右向きを正とし,衝突時間は振動周期より十分短いとする.

左から壁,A,ばね,B,入射するCの順に並ぶ. 左から壁,A,ばね,B,入射するCの順に並ぶ.
  1. 衝突直後のB,Cの速度,ばねの最大圧縮量,Aが壁から離れるまでの時間を求めよ.

  2. 離れた後の重心速度,相対運動の角振動数,最大伸びを求めよ.壁に接している間と離れた後で,系A+Bの保存量はどう違うか.

  3. BがCに追いつかないことを,速度の上限で確かめよ.m=0.20kg,k=20Nm−1,u=0.80ms−1 で最大圧縮量と最大伸びを評価せよ.

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考え方 最初の衝突,Aが壁に押付けられる半周期,外力のない2体振動を分ける.

  1. 運動量保存と相対速度の反転から vB=−u/2,vC=u/2.Aは圧縮ばねから左向きに押され,壁に留まる.ω=k/m とおくと最大圧縮量は u/(2ω),自然長に戻って壁から離れる時刻は td=π/ω.このとき vA=0,vB=u/2.

  2. 重心速度は V=u/8,換算質量は μr=3m/4,相対角振動数は ωr=k/μr=2ω/3.離脱後の時間を τ とすると伸びは r=[u/(2ωr)]sin⁡ωrτ で,最大伸びは 3u/(4ω).壁に接している間は外からの力積があるため運動量は保存しないが,壁の作用点は動かずエネルギーは保存する.離れた後は両方が保存する.

  3. vB=V+(3/4)r˙=u/8+(3u/8)cos⁡ωrτ≤u/2=vC.壁から離れるまでにもCとの間隔は正となり,以後縮まらない.また vA=(u/8)(1−cos⁡ωrτ)≥0 で壁への再衝突もない.最大圧縮量は 0.040m,最大伸びは 0.0346m.後者が小さいのは重心運動に残るエネルギーがあるためで,ばねのエネルギーへの全変換は起こらない.

演習 11

東京大 1999 前期(改題) ★★★☆☆

質量 M の台に半径 R の円弧レールを固定し,質量 m の小球を摩擦なく滑らせる.台も水平な床上を摩擦なく動ける.台の最下点の水平位置を X,球の地上での水平位置を x,相対変位を q=x−X とする.初め X=0,q=b から両者を静かに放し,b/R は十分小さいとする.

台Mの最下点の位置Xと球の位置xを地上から測る.初期相対変位はb. 台Mの最下点の位置Xと球の位置xを地上から測る.初期相対変位はb.
  1. 台を固定したときの周期 P0 を求めよ.

  2. 自由に動くときの周期 P と,x,X の振動中心・振幅を求めよ.

  3. m=0.30kg,R=0.40m,g=9.8ms−2 で P/P0=2/3 と測定された.台の質量と両周期を求めよ.

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考え方 小振動では球の高さは q2/(2R).水平重心が動かない条件で,運動エネルギーを相対変位だけで表す.

  1. 復元力は −mgq/R,従って P0=2πR/g.

  2. mx+MX=mb から,X=m(b−q)/(M+m),x=(mb+Mq)/(M+m).運動エネルギーの2次までの部分は μrq˙2/2,μr=mM/(m+M) である.鉛直速度の2乗は4次の微小量なので省ける.ポテンシャルは mgq2/(2R) だから

P=2πMR(M+m)g,q=bcos⁡(2πt/P).

x,X の中心はともに mb/(M+m),振幅はそれぞれ Mb/(M+m),mb/(M+m).両者は逆位相である.

  1. M/(M+m)=2/3 より M=2m=0.60kg.P0=1.27s,P=1.04s.M→∞ では台の振幅がゼロ,P→P0 となる.自由な台では相対運動の慣性が小さくなるため周期が短い.

演習 12

東京大 1994 前期(改題) ★★★☆☆

傾斜角 θ のベルト上の質量 m の小片を,斜面上方の固定端から伸びる定数 k のばねでつなぐ.伸び z は斜面下向きを正とする.ベルトは下向きに速さ U で動く.摩擦係数は静止が μ,動摩擦が μ′ である.

斜面上方の固定点と小片をばねで結ぶ.ベルトは斜面下向きに動く. 斜面上方の固定点と小片をばねで結ぶ.ベルトは斜面下向きに動く.
  1. 小片が地上に対して静止できる伸び z0 を求めよ.

  2. z=z0 で小片に下向きの速度 U を与える.ベルトと同行した後,伸び zs で滑り始めた.zs から μ を逆算する式を求め,その後の最大伸びと,z0 に初めて戻る速さを求めよ.

  3. m=0.20kg,k=20Nm−1,g=9.8ms−2,sin⁡θ=0.60,cos⁡θ=0.80,U=0.12ms−1,μ′=0.25,zs=0.098m で数値を求めよ.

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考え方 摩擦の向きは地上での速度でなくベルトに対する速度で決まる.同行中だけ静止摩擦の限界を用いる.

  1. 地上で静止した小片はベルトより遅いため,下向きに動摩擦を受ける.従って kz0=mg(sin⁡θ+μ′cos⁡θ).

  2. 同行には f=kz−mgsin⁡θ の下向き摩擦が必要で,kzs=mg(sin⁡θ+μcos⁡θ).よって μ=[kzs/(mg)−sin⁡θ]/cos⁡θ.d=zs−z0,ω=k/m とおくと,滑り始めから z−z0=dcos⁡ωt+(U/ω)sin⁡ωt.最大伸びは z0+d2+(U/ω)2,中心に戻る速さは ω2d2+U2 である.この区間では速度が U より小さいので動摩擦の向きは変わらない.

  3. z0=0.0784m,μ=0.50,d=0.0196m.最大伸びは 0.101m,中心通過の速さは 0.230ms−1.d→0 なら振幅は U/ω,通過速さは U となる.摩擦による一定力は中心を変えるが,角振動数は変えない.

演習 13

東京大 1993 前期(改題) ★★★☆☆

軽い定滑車にかけた伸びない糸で,質量 m と 2m のおもりをつなぐ.軽い側の下端を,定数 k のゴムひもで床に結ぶ.軽い側の上向き変位を x とし,ゴムが自然長になる位置をゼロとする.ゴムの張力は x>0 で kx,x≤0 でゼロである.滑車・床との衝突は起こらないものとする.

左側mの下に床へつながるゴムを付ける.右側は2m. 左側mの下に床へつながるゴムを付ける.右側は2m.
  1. つり合いの位置 a と,ゴムが張っている区間の角振動数 ω を求めよ.

  2. x=4a から静かに放す.ゴムが最初にたるむ時刻・速度,最も低い位置を求めよ.

  3. 全周期と,そのうちゴムの張力がゼロとなる時間の割合を求めよ.m=0.10kg,k=30Nm−1,g=9.8ms−2 で評価せよ.

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考え方 2つのおもりは同じ速さで動くので慣性に寄与する質量は 3m.ゴムがたるんでも,重い側が引くため等加速度運動が続く.

  1. 2つの運動方程式から糸の張力を消すと 3mx¨=mg−kx.従って a=mg/k,ω=k/(3m).

  2. 張っている間は x=a+3acos⁡ωt.cos⁡α=−1/3,0<α<π を満たす角を α とおけば,たるみ始めは t1=α/ω,速度は −8aω.その後の時間を τ とすると,x¨=g/3=aω2 だから

x=−8aωτ+12aω2τ2.

τ=8/ω で最下点 xmin=−4a に達する.同じ x=0 に戻るまでの時間は 28/ω.

  1. 張っている区間の往復は 2α/ω なので,全周期は P=(2α+28)/ω,たるむ時間の割合は 8/(α+8).数値は a=0.0327m,t1=0.191s,たるみ始めの速度は −0.924ms−1,最下点は −0.131m,P=0.948s,割合は 0.597(約60 %).糸の張力は 2m(g−x¨) である.全区間で x¨≤g/3 なので張力は 4mg/3 以上で正となり,糸の拘束と矛盾しない.時間の式の係数は無次元である.

演習 14

東京大 1985 前期(改題) ★★★☆☆

滑らかな水平面で,質量 m の台車Aが速さ u で右に進み,静止した質量 2m の台車Bに付いたばねの左端に触れる.定数 k のばねは圧縮中だけ力を伝え,自然長に戻るとAから離れる.台車本体同士は衝突しない.最初の接触を t=0 とする.

AがBの左側のばねの端に初めて触れた状態.圧縮量δは自然長から短くなった量. AがBの左側のばねの端に初めて触れた状態.圧縮量δは自然長から短くなった量.
  1. 圧縮量 δ(t),最大圧縮量,接触時間を求めよ.

  2. 接触中の各台車の速度と,離れた後の速度を求め,直接の弾性衝突と比較せよ.

  3. 最大圧縮時にばねへ蓄えられるエネルギーは入射エネルギーの何倍か.m=0.30kg,k=80Nm−1,u=0.60ms−1 で接触時間と最大圧縮量を求めよ.

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考え方 接触中の重心速度は一定で,相対運動だけがばねのエネルギーに変わる.

  1. 換算質量 μr=2m/3 を使うと μrδ¨=−kδ.ω=k/μr とおけば δ=(u/ω)sin⁡ωt で,0≤t≤π/ω に適用する.最大圧縮量は u/ω,接触時間は tc=π/ω.

  2. 重心速度は u/3,vA−vB=δ˙=ucos⁡ωt だから,

vA=u3+2u3cos⁡ωt,vB=u3−u3cos⁡ωt.

離れた後は vA=−u/3,vB=2u/3 の等速運動となる.直接の弾性衝突でも運動量保存と相対速度の反転から同じ結果を得るが,この模型では有限の接触時間が求まる.

  1. 最大のばねエネルギーは μru2/2=mu2/3,入射エネルギー mu2/2 の 2/3 である.残りは重心の運動エネルギーである.数値は ω=20s−1,tc=0.157s,最大圧縮量 0.030m.k→∞ で接触時間と圧縮量はゼロに近づくが,終速度は変わらない.

演習 15

東京大 1982 前期(改題) ★★★☆☆

質量 m のおもりを定数 k のゴムひもで天井からつるし,その静止位置を下向き座標 x=0 とする.おもりの下にも定数 k/2 のゴムを取り付け,最初は自然長で下端を保持する.上のゴムの初めの伸びは a=mg/k である.下端を下向きに b>0 動かす.ゴムは伸びているときだけ張力を生じる.

下端を初期位置からbだけ下げる操作.初期には下のゴムは自然長である. 下端を初期位置からbだけ下げる操作.初期には下のゴムは自然長である.
  1. 下端をゆっくり動かした場合のおもりの変位と仕事 Ws を求めよ.

  2. おもりが動く暇のないほど短時間に下端を b 動かす極限で,仕事 Wf を求めよ.その後下端を固定したときの x(t) を求め,Wf−Ws の行方を説明せよ.

  3. m=0.20kg,k=20Nm−1,b=0.060m で仕事の差と振動周期を求めよ.

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考え方 下端の変位を s とすると,下のゴムの伸びは s−x.操作する端の仕事と,おもりへの仕事を混同しない.

  1. 力のつり合いは −kx+(k/2)(s−x)=0,従って x=s/3.手が引く力は (k/2)(s−x)=ks/3 だから,Ws=∫0b(ks/3)ds=kb2/6.最終変位は b/3.

  2. 急操作中は x=0 とみなせるので Wf=∫0b(ks/2)ds=kb2/4.固定後は mx¨=−(3k/2)(x−b/3) より,ω=3k/(2m),x=(b/3)(1−cos⁡ωt).範囲は 0≤x≤2b/3 で,下のゴムの伸びは少なくとも b/3>0,上も常に伸びている.従って区間途中で式を切り替える必要はない.振動エネルギーは (1/2)(3k/2)(b/3)2=kb2/12=Wf−Ws である.

  3. Ws=0.012J,Wf=0.018J,差は 0.0060J,周期は 0.513s.b→0 で仕事も振幅もゼロとなる.急操作をしても,質量ゼロのゴムに有限の伸びを与えるこの極限では,おもりの速度に瞬間的な跳びはない.

演習 16

東京大 1981 前期(改題) ★★★☆☆

粗い水平面上の質量 m の物体を定数 k のばねで壁につなぐ.自然長からの伸びを x とする.静かに放す実験では |x|≤d なら止まり続け,|x|>d なら動き始めた.別の実験で x0=4.2d から放すと,最初に速度がゼロになる位置は x1=−3.0d であった.

初期位置4.2dから左へ動き,最初の速度ゼロは−3.0dで観測された. 初期位置4.2dから左へ動き,最初の速度ゼロは−3.0dで観測された.
  1. 静止・動摩擦係数 μ,μ′ を求めよ.

  2. その後の速度ゼロの位置を順に求め,何回目で止まり続けるかを述べよ.初期時刻は回数に含めない.

  3. 停止までの時間と全行程を求めよ.m=0.50kg,k=50Nm−1,d=0.020m,g=9.8ms−2 で評価せよ.

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考え方 滑っている間の中心は動摩擦でずれ,速度ゼロの瞬間ごとに静止摩擦が支えられるかを調べる.

  1. 静止の限界から μ=kd/(mg).初めの半往復のエネルギー収支は k(x02−x12)/2=μ′mg(x0−x1) だから,μ′mg/k=(x0+x1)/2=0.60d,従って μ′=0.60μ.

  2. 左向きに滑る区間の振動中心は +0.60d,右向きなら −0.60d.中心に関して出発点を反転すると次の速度ゼロの位置になる.従って x1=−3.0d,x2=1.8d,x3=−0.60d.最後は |x3|<d なので,3回目で止まり続ける.それ以前は静止摩擦の限界を超える.

  3. 各区間は πm/k かかるため,全時間は 3πm/k.全行程は (7.2+4.8+2.4)d=14.4d である.数値は μ=0.204,μ′=0.122,時間 0.942s,全行程 0.288m.μ′mgL=k(x02−x32)/2 でも同じ行程となる.静止後には kx32/2 のばねエネルギーが残り,全てが摩擦熱になるわけではない.

14第7章の発展問題

★4・★5の発展問題で,周期を決める積分,空間的に変わる復元力,共鳴,移動する装置や反復衝突を扱います.モデルと近似の次数を示し,運動が切り替わる瞬間の位置・速度・力を区別して,公式を導くところから取り組んでください.特に断らない限り,ばね・糸・滑車の質量,空気抵抗,摩擦は無視します.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

長さ L の単振り子を,鉛直から角 0<θ0<π だけ傾けて静かに放す.抵抗はない.

  1. エネルギー保存から周期の積分表示を導け.

  2. q=sin⁡(θ0/2),sin⁡(θ/2)=qsin⁡u と変数変換し,θ0 の2次までの補正 T≈T0(1+θ02/16) を導け.T0=2πL/g とする.2倍角の公式 cos⁡θ=1−2sin2⁡(θ/2),|z| が1より十分小さいときの (1−z)−1/2≈1+z2,∫0π/2sin2⁡udu=π4 を使ってよい.

  3. 振れ角3°,10°での周期増加率を求めよ.角度は計算時にradへ直す.

長さLの振り子について転回角θ₀と途中の角θを示す.高さの基準を最下点に置く.周期補正の結果は示さない. 長さLの振り子について転回角θ₀と途中の角θを示す.高さの基準を最下点に置く.周期補正の結果は示さない.
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考え方 転回点で速度が0になるため,そのままの積分を展開すると端点の扱いが難しい.変数変換で積分区間を固定してから展開する.

  1. mL2θ˙2/2=mgL(cos⁡θ−cos⁡θ0) より

T=4L2g∫0θ0dθcos⁡θ−cos⁡θ0

となる.係数4は,最下点から一方の転回点までが全周期の四分の一であることによる.

  1. cos⁡θ−cos⁡θ0=2q2cos2⁡u,dθ=2qcos⁡udu/1−q2sin2⁡u.したがって

T=4Lg∫0π/2du1−q2sin2⁡u

である.(1−z)−1/2=1+z/2+⋯,∫0π/2sin2⁡udu=π/4 を使い,T=T0(1+q2/4+⋯).q2=θ02/4 に4次以上の項を足したものだから,T≈T0(1+θ02/16) を得る.振れ角が大きいほど周期は増すが,この打ち切り式の適用は θ0 が十分小さい範囲である.

  1. 3°は π/60rad で,θ02/16≈0.0001713,約0.017 %.10°は π/18rad で,約0.001904,すなわち0.19 %である.力の小角近似の誤差 θ02/6 と周期の誤差は係数が異なる.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

半径 R,一様密度の自転しない球形の地球を考える.地表の重力加速度は g である.中心から距離 d<R のところを通る直線状の細いトンネルを掘り,入口から物体を静かに放す.トンネルは滑らかで物体を直線上に拘束し,空気抵抗はない.球対称な殻の内側でその殻の重力は0であることを使ってよい.

  1. トンネルの中点から測る座標 s の運動方程式を導け.

  2. 反対側の地表へ達する時間と最大速さを求めよ.直径を通る場合と比べよ.

半径Rの球を弦に沿って貫くトンネル.中心Oとトンネル中点Hの距離がdで,中点から入口に向かって座標sを測る. 半径Rの球を弦に沿って貫くトンネル.中心Oとトンネル中点Hの距離がdで,中点から入口に向かって座標sを測る.
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考え方 内部の重力の大きさは中心からの距離に比例する.そのトンネル方向成分だけが加速に寄与する.

  1. 地球の質量を M とすると,半径 r 内の質量は Mr3/R3.内部の重力加速度は −GMr/R3=−(g/R)r.トンネル方向へ射影して s¨=−(g/R)s を得る.垂直方向の力は案内の抗力が打ち消す.

  2. 半弦長は a=R2−d2.s=acos⁡ωt,ω=g/R と書けるから,反対側への時間は半周期 πR/g で d によらない.最大速さは中点で aω=g(R2−d2)/R.直径の場合の gR より小さい.R=6.4×106m,g=9.8ms−2 なら所要時間は約 2.54×103s,約42分である.実際の地球の密度分布にはこの一様密度モデルをそのまま当てはめられない.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

自由な弱減衰系で,隣り合う同方向の転回点の変位の大きさを an,an+1 とする.ω0=k/m,γ=b/(2m)<ω0,Q=ω0/(2γ) とする.

  1. 対数減衰率 Λ=ln⁡(an/an+1) を求め,Q を Λ で表せ.

  2. 転回点から次の同方向転回点までのエネルギー損失割合を求め,弱い抵抗で 2π/Q になることを示せ.

  3. Q=20 で厳密値と近似値を比較せよ.

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考え方 転回点では速度が0なのでエネルギーは変位の2乗で決まる.同方向の転回点の間隔は減衰周期である.

  1. T′=2π/ω02−γ2 だから Λ=γT′=π/Q2−1/4.逆に Q=(π/Λ)2+1/4.弱い抵抗なら Q≈π/Λ である.

  2. En=kan2/2 より En+1/En=e−2Λ.損失割合は 1−e−2Λ である.Q が十分大きい場合,Λ≈π/Q,1−e−2Λ≈2Λ なので 2π/Q を得る.近似には1周期での損失が小さいことが必要となる.

  3. Λ=π/399.75≈0.15713,厳密値は 1−e−0.31426≈0.2697,約27.0 %.近似値は 2π/20≈0.3142,約31.4 %である.周期の変化が小さくても,指数関数を1次で打ち切る誤差は無視できるとは限らない.

演習 4

東京大 2000 後期(改題) ★★★★☆

右上がりで傾斜角 θ の長い斜面の上方に,水平レールを設ける.質量を無視できる台車から,鉛直方向だけに伸縮する定数 k のばねを下げ,先端に質量 m の小球を固定する.ガイドも質量を無視でき,ばねは鉛直な力だけを小球に伝える.台車は小球と同じ水平位置を保つ.小球が重力とばね力だけでつり合う高さを y=0 とし,この水平線と斜面の交点を原点に,地上の右向きを x,上向きを y とする.

初め台車を固定し,斜面上の y=A>0 に小球を静止させる.時刻ゼロで固定を外する.斜面とレールは十分長く,球は床や装置の端に当たらないとする.

初めは小球が斜面上の高さAにあり,台車を固定している.ばねは常に鉛直. 初めは小球が斜面上の高さAにあり,台車を固定している.ばねは常に鉛直.
  1. 斜面に接している間の y(t) と抗力 N(t) を求め,離脱時刻を求めよ.

  2. 離脱時の水平・鉛直速度を求め,離脱後の位置を表せ.ばねは離脱後も小球につながっている.

  3. 再び斜面に触れるかを判定し,鉛直位置の時間グラフの接続の特徴を述べよ.m=0.20kg,k=20Nm−1,A=0.12m,sin⁡θ=0.60,cos⁡θ=0.80 で,離脱時刻・速度・離脱後の鉛直振幅を求めよ.

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考え方 重力とばね力の和を,つり合い高さから測って −ky と書く.斜面の抗力は引くことができないので,接触解の抗力がゼロになるところで自由な運動へ切り替える.

  1. 斜面上向きの距離を s とすれば y=ssin⁡θ.接線方向の式は ms¨=−kysin⁡θ である.従って ω=k/m とおくと y¨=−ω2sin2⁡θy,初期条件から

y=Acos⁡(ωsin⁡θt),N=kycos⁡θ.

法線方向には直線斜面のため加速度がなく,上式の N が必要になる.0<θ<π/2 では,初めて y=0 に達する

td=π2ωsin⁡θ

で離脱する.その先まで接触解を延ばすと N<0 を要求するので許されない.

  1. 接触中は x=ycot⁡θ だから,離脱時の速度は vx=−Aωcos⁡θ,vy=−Aωsin⁡θ.位置は原点であり,離脱後の時間を τ=t−td とすると,

x=−Aωcos⁡θτ,y=−Asin⁡θsin⁡ωτ.

水平方向には力がなく,鉛直方向では my¨=−ky が続く.放物運動にしてしまうと,接続されたばねの力を落としてしまう.

  1. 小球の鉛直位置と,同じ x にある斜面の高さとの差は

y−xtan⁡θ=Asin⁡θ(ωτ−sin⁡ωτ).

z>0 では z−sin⁡z>0 だから,離脱後は常に斜面より上にあり,再接触しない.鉛直位置のグラフは最初の余弦の4分の1周期から,振幅 Asin⁡θ,角振動数 ω の正弦曲線につながる.接続点で位置・速度は連続し,加速度も両側でゼロである.

数値は td=0.262s,vx=−0.96ms−1,vy=−0.72ms−1,鉛直振幅 0.072m.離脱時の全運動エネルギーは mA2ω2/2=kA2/2 で初期の振動エネルギーに等しい.離脱後も水平と鉛直のエネルギーの和がこの値を保つ.θ→0 で離脱までの時間が発散するのは,水平面では接線方向の復元力がなくなるためである.

演習 5

東京大 2003 後期(改題) ★★★★☆

水平な搬送台の位置を X(t) とする.台には質量 M の枠を固定し,その中で質量 m の測定子が摩擦なく水平に動く.枠と測定子を定数 k のばねで結び,ばねの自然長からの右向きの変位を q とする.地上から見た測定子の位置は,定数の位置差を除いて X+q である.t=0 では全て静止し q=0 である.

搬送台の加速度を,0<t<H で a>0,H<t<2H でゼロ,t>2H で再び a とする.ω=k/m,H=π/ω とし,切替時に台の速度は連続とする.

枠Mの中の測定子mとばねを示す.下段は台に指定した加速度であり,測定結果ではない. 枠Mの中の測定子mとばねを示す.下段は台に指定した加速度であり,測定結果ではない.
  1. 地上での運動方程式から q の式を導き,0≤t≤3H の記録 q(t) を求めよ.記録から台の加速度を復元する式も示せ.

  2. 台の速度を全区間で表し,t=3H までの移動距離を求めよ.

  3. 最初の区間で,台が加速度計全体(枠・測定子・ばね)にした仕事を求めよ.枠を固定せず摩擦だけで載せる場合,最初の区間で滑らない静止摩擦係数の条件を求めよ.

  4. m=0.10kg,M=0.30kg,k=10Nm−1,a=0.50ms−2,g=9.8ms−2 で,H,移動距離,仕事,摩擦係数の下限を求めよ.

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考え方 測定子の地上加速度は X¨+q¨ である.台の加速度が切り替わっても,ばねの伸びと測定子の相対速度は連続する.仕事は地上での全エネルギーの増加と照合する.

  1. 測定子に働く水平力は −kq だけなので m(X¨+q¨)=−kq.従って

q¨+ω2q=−X¨,X¨=−q¨−ω2q.

慣性力という新しい力を持ち込まず,地上の式から導ける.c=a/ω2 とすると,最初の区間は q=−c(1−cos⁡ωt).t=H では q=−2c,q˙=0 である.第二の区間で s=t−H とおけば q=−2ccos⁡ωs.t=2H では q=2c,q˙=0.第三の区間で r=t−2H とおけば q=−c+3ccos⁡ωr.単なる振幅ではなく,中心と相対加速度の両方から台の加速度を読む必要がある.

  1. 速度は順に at,aH,aH+a(t−2H) である.各区間の距離は aH2/2,aH2,3aH2/2 だから,全距離は 3aH2=3π2a/ω2.速度は常に非負なので変位と道のりは等しい.

  2. 台が枠に及ぼす力を F とすると,枠の式は Ma=F+kq,従って F=Ma−kq.最初の区間では F=(M+m)a−macos⁡ωt である.台の仕事は作用点である枠の速度 at を用いて

W=∫0HFatdt=12(M+m)a2H2+2ma2ω2.

終点では枠も測定子も速度 aH,ばねの伸びは −2a/ω2.運動エネルギーとばねエネルギーの和からも同じ値が得られる.後の項を落とすと,測定子が内部に蓄えるエネルギーを見逃す.

固定を外しても同じ運動をするには,床と枠の間の摩擦がこの F を供給できればよい.F の最大値は (M+2m)a,床の抗力は (M+m)g なので,条件は μ≥(M+2m)a/[(M+m)g].これは最初の区間だけの条件である.

  1. H=0.314s,全距離 0.148m,仕事 0.00543J,μ≥0.0638.c=0.0050m なので記録の振幅は順に 0.0050,0.010,0.015m である.仕事の各項は質量×速さの2乗の次元をもち,a→0 なら振動・移動・仕事が全てゼロになる.

演習 6

東京大 2004 後期(改題) ★★★★☆

下り階段に沿って,質量 3m の水平な小板を,定数 k の鉛直ばねで支える.隣の板との水平間隔は w,つり合い位置の高さの差は h である.各板は鉛直にだけ動く.板は十分狭く,球は板の中心でだけ瞬間的に衝突するものとする.球と板の衝突は鉛直方向に弾性衝突であり,水平速度は変化しない.球の大きさは無視する.

まず質量 m の球Aを投射し,静止した各板に同じ入射鉛直速度 −v で衝突しながら下らせる.その後,質量 ηm の球Bを逆向きに投射し,振動中の各板からエネルギーを受け取って上らせることを考える.Bは各板に同じ振動位相で当たり,各衝突直前のBの鉛直速度も同じとする.

板のつり合い位置を描く.Aは右下へ進み,その後Bが左上へ進む. 板のつり合い位置を描く.Aは右下へ進み,その後Bが左上へ進む.
  1. 各板にAが与えるエネルギーから,Bが上り続けられるための η の必要条件を予測せよ.

  2. Aの入射速さ v,衝突間隔 Δ,水平速度,板の振動振幅を求めよ.

  3. Bの衝突間隔を T とする.同じ位相で当たるための T の条件,Bの衝突前後の鉛直速度,衝突直前に板が持つべき速度 U を求めよ.振動板がその速度をとれる条件も述べよ.

  4. m=0.10kg,h=0.15m,w=0.30m,g=9.8ms−2,η=1/2 とする.板の周期を P=2Δ とする k を選び,T=Δ で上る運動が可能かを位相まで含めて確かめよ.

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考え方 球が一段進む間のエネルギー収支,瞬間的な弾性衝突,板の振動位相を別々に調べ,最後に同時に満たせるかを確かめる.必要なエネルギーがあるだけでは位相条件までは保証されない.

  1. Aは毎回同じ速度で入射するので,一段下る間に減る重力のエネルギー mgh を,各板に渡している.Bは一段につき ηmgh を得なければならない.各板に蓄えられた振動エネルギーを全て受け取っても mgh なので,必要条件は η≤1 である.これは十分条件とは限らない.

  2. Aの衝突直後の鉛直速度は v/2,板は −v/2.次の衝突までに高さが h 下がるから v2=(v/2)2+2gh,従って

v=8gh3,Δ=3v2g=6hg,u=wΔ.

ω=k/(3m) とおく.板はつり合い位置で初速 −d,d=v/2 を受けるので,Aの通過からの時間を s として変位 z=−(d/ω)sin⁡ωs,速度 −dcos⁡ωs,振幅 d/ω.振動エネルギーは 3md2/2=mgh で,(1)の収支と一致する.

  1. Aが上の板から下の板へ進むのに Δ,Bが下の板から上の板へ進むのに T かかる.したがってBが出会う板の「Aの通過からの経過時間」は一段ごとに T+Δ 増える.同じ位相の条件は

T+Δ=jP,P=2πω,j=1,2,…,T>0.

同じ位相なら板の変位も同じなので,衝突点間の高さの差はやはり h.Bの衝突前後の鉛直速度を b−,b+ とすると,b−=b+−gT,h=b+T−gT2/2.従って b−=h/T−gT/2,b+=h/T+gT/2.水平速度は上り向きに大きさ w/T である.

弾性衝突の式 b+=[(η−3)b−+6U]/(η+3) に代入すると

U=hT+ηgT6,U後=hT−ηgT6.

U>0 だから板は上昇中でなければならない.実現には U≤d が必要で,この不等式を満たせば −dcos⁡ϕ=U の位相を選べる.また U−b−=gT(η+3)/6>0 なので板が下から球に近づく衝突となる.板から失われる運動エネルギーは (3m/2)(U2−U後2)=ηmgh.衝突の瞬間には位置は変わらず,ばねのエネルギーも変わらない.

  1. Δ=0.303s,v=1.98ms−1,d=0.990ms−1,u=0.990ms−1.P=2Δ にするには k=3m(π/Δ)2=32.2Nm−1.板の振幅は 0.0955m.T=Δ は j=1 の位相条件を満たす.h=gΔ2/6 から U=gΔ/4=0.742ms−1=(3/4)d で,必要な速度を実現できる.例えば cos⁡ϕ=−3/4 を満たす位相 ϕ≈2.42rad に当たるよう,Bの投射時刻と位置を選べばよい.全ての板に同じ位相で当たる.

Bは b−=−0.990ms−1 で入射し,b+=1.98ms−1 で上昇する.選んだ位相での板の変位は −0.0632m だが,隣の板でも同じなので段差は変わらない.板は球の通過先以外では十分狭いという仮定を使っている.U の2項はいずれも速さの次元で,Bが得るエネルギー 0.0735J はAが残す 0.147J より小さい.エネルギー条件と位相条件がともに満たされた.

演習 7

オリジナル ★★★★★

質量 m の浮ひょうが密度 ρ の液体に鉛直に浮く.つり合い時の水面を原点とし,浮ひょうに固定した上向き座標 z で,水面近くの断面積は S(z)=S0(1+αz) とする.液面は十分広く,抵抗と液体の慣性を無視し,案内で傾きを防ぐ.下向き変位を y とする.

  1. 浮力の変化と運動方程式を,y2 の項まで求めよ.

  2. 先頭の小振動周期を求めよ.さらに振幅尺度 a に対し |α|a が十分小さいとき,y=acos⁡ω0t+αa2(C+Dcos⁡2ω0t) の形を代入し,C,D を決めよ.基本振動の余弦・正弦の追加項は a と時刻原点へ吸収する.

  3. 周期平均した位置がつり合い位置からずれる理由を説明せよ.

水面近くで上ほど太くなる浮ひょう.つり合い水面の断面積S₀,物体に固定した上向き座標z,下向き変位yを示す. 水面近くで上ほど太くなる浮ひょう.つり合い水面の断面積S₀,物体に固定した上向き座標z,下向き変位yを示す.
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考え方 押し下げると新たに沈む部分の断面積を積分する.復元力の非対称性は,基本振動に平均変位と2倍の周波数成分を生む.

  1. 水面が物体座標で z=y に移るので,排除体積の増分は ∫0yS(z)dz=S0(y+αy2/2).つり合い時の浮力は mg だから

my¨=−ρgS0(y+αy22)

である.負の y に対しても同じ符号付き積分が使える.

  1. ω02=ρgS0/m,T0=2πm/(ρgS0).式を y¨+ω02y=−αω02y2/2 とし,右辺には先頭解だけを入れる.右辺は −αω02a2(1+cos⁡2ω0t)/4.左辺の補正項は αa2ω02(C−3Dcos⁡2ω0t) なので C=−1/4,D=1/12 となる.この次数では基本周波数の補正は必要ない.

  2. 平均は ⟨y⟩=−αa2/4.α>0 なら下へ押した側で復元力が強くなるため,運動は上側に偏る.平均の運動方程式からも ⟨y⟩+α⟨y2⟩/2=0,⟨y2⟩≈a2/2 として同じ結果になる.断面積の式が有効な範囲を往復し,常に S(z)>0 であることが必要である.

演習 8

オリジナル ★★★★★

mx¨+bx˙+kx=F0cos⁡ωt の定常振動について,b>0,ω>0 とする.ω0=k/m,γ=b/(2m) を使う.

  1. 吸収される平均仕事率 P(ω) を求め,最大となる角振動数を示せ.

  2. P が最大値の半分になる2つの正の角振動数 ω−,ω+ を求め,幅 Δω=ω+−ω− と Q の関係を導け.

  3. 変位振幅の最大点と比べ,幅を「振幅が半分になる幅」と呼べない理由を述べよ.

物体mをばねkと抵抗装置bにつなぎ,外力F₀ cos ωtの角振動数ωを変える.応答曲線や共鳴幅の解答は図示しない. 物体mをばねkと抵抗装置bにつなぎ,外力F₀ cos ωtの角振動数ωを変える.応答曲線や共鳴幅の解答は図示しない.
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考え方 定常状態で吸収仕事率は抵抗の散逸率と等しい.変位ではなく速度の2乗を平均すると,幅の定義を厳密に扱える.

  1. 変位振幅 A=F0/(k−mω2)2+b2ω2 より

P=12bω2A2=F022b4γ2ω2(ω02−ω2)2+4γ2ω2

である.最後の分数は1以下で,ω=ω0 のとき1だから Pmax=F02/(2b).

  1. 半値条件は (ω02−ω2)2=4γ2ω2.低い方では ω02−ω−2=2γω−,高い方では ω+2−ω02=2γω+ なので

ω−=ω02+γ2−γ,ω+=ω02+γ2+γ

となる.従って Δω=2γ,Q=ω0/Δω がこの仕事率の半値全幅について厳密に成り立つ.両端の幾何平均は ω0 だが,算術平均はそれより大きい.

  1. 変位の最大点は ωr=ω02−2γ2 で,これは ω02>2γ2 のときだけ正の値をもつ.仕事率の半値は速度振幅の 1/2 倍に対応する.弱い抵抗で共鳴付近の ω をほぼ一定とみなす場合に限り,変位振幅の 1/2 倍の幅にも近似できる.変位振幅が半分となる幅は別の量である.

15第7章のまとめ

この章では,復元力が変位に比例すると単振動になることを出発点に,2階の微分方程式を初めて本格的に解きました.そして,振り子や浮かぶ物体などへの応用,抵抗と外力が加わった減衰・強制振動,複数の物体がつながった連成振動まで広げました.ここで定義と法則を一覧にし,各題材の最初の問いに短く答えます.

定義と法則

法則 フックの法則と単振動

  • 復元力 F=−kx のとき,運動方程式 mx¨=−kx の一般解は x=Acos⁡(ωt+ϕ).角振動数 ω=k/m,周期 T=2πω.振幅 A と初期位相 ϕ は初期条件で決まる.

  • 周期は振幅によらない(等時性).速度は −Aωsin⁡(ωt+ϕ),加速度は −ω2x.力学的エネルギー 12kx2+12mv2=12kA2 は一定である.

法則 いろいろな単振動

  • 単振り子は,小さい振れ(sin⁡θ≈θ)で単振動になり,T=2πL/g.ポテンシャルの極小 x0(U″(x0)>0)のまわりの小振動は,近似的に k=U″(x0) の単振動である.

  • ばねの並列は k=k1+k2,直列は 1k=1k1+1k2.鉛直ばねや浮かぶ物体では,つり合いの位置から測った変位が単振動になる(断面積 S の円柱が密度 ρ の液体に浮くとき k=ρgS).

法則 減衰振動と強制振動

  • 抵抗 −bx˙ のとき x¨+2γx˙+ω02x=0(γ=b2m,ω0=k/m).γ<ω0 は弱減衰 x=Ae−γtcos⁡(ω′t+ϕ),ω′=ω02−γ2.γ=ω0 は臨界減衰,γ>ω0 は過減衰である.

  • 外力 F0cos⁡ωt を加えると,定常振動は外力と同じ ω で振幅 A=f(ω02−ω2)2+4γ2ω2(f=F0/m).弱減衰では ω≈ω0 で共鳴し,ω=ω0 で位相の遅れが π/2(速度が外力と同位相)になる.Q値は Q=ω0/2γ(共鳴での振幅と F0/k の比)である.

法則 連成振動

  • 入れ替えて同じ形(対称)な2質点の連立方程式は,和と差で独立な方程式に分かれ,係数が正なら単振動になる.すべての質点が同じ角振動数で振動する運動が基準振動で,一般の運動はその重ね合わせである.

  • 質量 m の2質点を,ばね定数 k のばね2本と結合ばね κ でつなぐと,同位相は ω1=k/m,逆位相は ω2=(k+2κ)/m.結合が弱いとき,片方だけ動かすと,エネルギーはほぼ π/(ω2−ω1) かけて他方に移る.

手順

ポイント 振動の問題を解く手順

  1. つり合いの位置を決め,そこからの変位 x をとる.復元力を x の1次式で書き,mx¨=−Kx の形(K は実質のばね定数)にして ω=K/m.

  2. 振り子や浮かぶ物体は,微小な変位で1次近似する(sin⁡θ≈θ,U″>0 の極小でのポテンシャルの2次展開).

  3. 初期条件(位置と速度)から A と ϕ を決める.エネルギー保存が使える設問では,それで最大速さを求める.

  4. 抵抗があれば γ と ω0 を比べて型を決める.外力があれば定常解の A と位相を使う.

  5. 質点が複数あれば,対称性を見て和と差(または同位相と逆位相)に分ける.

主な公式

  • 単振動:ω=k/m,x=Acos⁡(ωt+ϕ),T=2π/ω,E=12kA2

  • 単振り子:T=2πL/g

  • 減衰:γ=b2m,x=Ae−γtcos⁡(ω′t+ϕ),振幅が 1/e になる時間 1/γ

  • 強制振動:A(ω)=f(ω02−ω2)2+4γ2ω2,Q=ω02γ

  • 連成:ω1=k/m,ω2=(k+2κ)/m

各題材の問いへの答え

  • フックの法則と単振動:振幅を2倍にすると,往復の時間は変わらない.T=2πm/k に振幅は入っておらず,大きく引くと復元力も大きくなり,遠くまで速く動いて周期が保たれる.

  • いろいろな単振動:振り子時計の周期は 2πL/g で振れ幅によらないので,振れ幅が少し変わっても時刻は狂わない.ただし振れが大きいと,周期はわずかに長くなる(振れ角 θ0 でおよそ θ02/16 の割合).

  • 減衰振動と強制振動:ブランコは,動く向きに合わせて,自分の周期で押すと最も大きく揺れる.そのとき外力は常に仕事をし,抵抗で失う分とつり合った振幅で落ち着く.

  • 連成振動:糸でつながれた振り子は,同位相と逆位相の2つの基準振動をもち,その角振動数が少し違う.片方だけ揺らすと2つの位相差が進み,結合が弱ければ一方の揺れがほぼ消えて他方が最大になることを繰り返し,エネルギーがほぼ往復する.

この章で使った数学

2階線形微分方程式の一般解,三角関数の合成,テイラー展開と小振動の近似,複素数とオイラーの式,特性方程式,連立の微分方程式を和と差で分ける方法がありました.