問いしるべ
参考書

問いから始める物理

公式参考書

問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 18節
  1. 角運動量とトルク
  2. 外積
  3. 角運動量とトルクの演習
  4. 剛体のつり合い
  5. モーメントの計算と点の選び方
  6. 剛体のつり合いの演習
  7. 固定軸のまわりの回転
  8. 慣性モーメントの積分計算と例題
  9. 固定軸のまわりの回転の演習
  10. 剛体の平面運動
  11. 平面での外積と瞬間回転中心
  12. 剛体の平面運動の演習
  13. 転がり
  14. 転がりの束縛条件と例題
  15. 転がりの演習
  16. 第8章の章末問題
  17. 第8章の発展問題
  18. 第8章のまとめ

第8章  回転と剛体

01角運動量とトルク

問い

氷の上でスケーターが回っています.最初は両腕を大きく広げてゆっくり回り,やがて腕を体に引き寄せると,回転がぐっと速くなります.腕を広げれば,また遅くなります.氷との摩擦はほとんど無く,誰も背中を押していません.外から力を加えていないのに,回る速さが変わるのはなぜでしょうか.

考えてみる

スケーターの代わりに,単純な装置で考えます.なめらかな水平の板に穴をあけ,板の上で円運動する小球の糸を,穴から下へ出して手で持ちます.糸をゆっくり引いて半径を縮めると,小球は速く回り出します.

運動量もエネルギーも,この場面では保存しません.糸は小球に力を及ぼすので,運動量は保存しません.糸を引く手は小球に仕事をするので,エネルギーも保存しません.ところが,糸の力は常に穴の方向を向いています.小球を回す向き(接線方向)の力は,どこにもありません.だから「回す勢い」のようなものは変わらない,と見当をつけたくなります.その勢いが何かを,運動方程式から探します.

平面上で,質点(質量 m)が位置 (x,y),運動量 (px,py) にあるとして,次の量を作ります.

L=xpy−ypx

時間で微分すると

dLdt=x˙py−y˙px+xp˙y−yp˙x

です.最初の2項は m(x˙y˙−y˙x˙)=0 になって消えます.残りは運動方程式 p˙x=Fx,p˙y=Fy で書き換えられて

dLdt=xFy−yFx

です.右辺は,位置と力だけで決まります.力が r と同じ向き(または逆向き)なら,Fx:Fy=x:y なので右辺は0です.つまり L は変わりません.

角運動量とトルク

L は,ベクトル r と p から作る外積の z 成分です.外積は次の節で正確に定義します.ここでは結果だけを使います.

定義 角運動量

原点 O から見た質点の位置を r,運動量を p=mv として

L=r×p

を O のまわりの角運動量という.単位は kgm2s−1.平面運動では向きは紙面に垂直で,反時計回りを正とすると L=xpy−ypx=rp⟂(p⟂ は p の r に垂直な成分).

定義 トルク

位置 r にある質点に力 F が働くとき

τ=r×F

を O のまわりのトルクという.単位は Nm.平面では τ=xFy−yFx=rF⟂(反時計回りを正).

原点 O から質点までの位置ベクトル \vec{r} と,その質点の運動量 \vec{p} を平面上に描く.\vec{p} を \vec{r} に平行な成分と垂直な成分 p_{\perp} に分け,\vec{r}\times\vec{p} が紙面から手前を向くことを,右ねじの回転の向きとともに示す. 原点 O から質点までの位置ベクトル \vec{r} と,その質点の運動量 \vec{p} を平面上に描く.\vec{p} を \vec{r} に平行な成分と垂直な成分 p_{\perp} に分け,\vec{r}\times\vec{p} が紙面から手前を向くことを,右ねじの回転の向きとともに示す.

さきほどの計算は,ベクトルの形で次のように書けます.

法則 角運動量の変化とトルク

dLdt=τ

O のまわりの角運動量の時間変化の割合は,O のまわりのトルクに等しい.

並進の dpdt=F で,運動量を角運動量に,力をトルクに置き換えた形です.

トルクが0なら,角運動量は保存します.その代表が中心力です.中心力とは,常に O を向いた(または O から遠ざかる向きの)力のことで,r∥F より τ=0 です.

糸で引かれる小球は中心力だけを受けるので,L=mrv(v は接線方向の速さ)が一定です.半径 0.60m,速さ 1.0ms−1 で回る小球の糸を引いて,半径を 0.20m にすると,rv が一定なので速さは3倍の 3.0ms−1 です.角速度 ω=v/r は,半径が3分の1になるので9倍になります.運動エネルギーは9倍になり,増えた分は手の仕事です.

板の上で糸に引かれる小球の真上からの図を,引く前(半径が大きい)と引いた後(半径が小さい)に並べて描く.後のほうの速度の矢印を長くする. 板の上で糸に引かれる小球の真上からの図を,引く前(半径が大きい)と引いた後(半径が小さい)に並べて描く.後のほうの速度の矢印を長くする.

面積速度

中心力のもとでは円でなくても L が一定です.微小時間 dt に位置ベクトルが掃く三角形の面積は dA=12(xdy−ydx) なので,dAdt=L2m です.

ポイント 面積速度一定

中心力だけを受ける質点では,位置ベクトルが単位時間に掃く面積(面積速度)が一定である.

惑星が太陽から受ける万有引力は中心力です.惑星と太陽を結ぶ線分が等しい時間に等しい面積を掃く,というケプラーの第2法則は,この結果の特別な場合です.第10章の万有引力と天体で詳しく扱います.

質点系の角運動量

質点が n 個あるときは,O のまわりの角運動量を足します.L=∑iri×pi です.i 番目の質点に働く力を,外力 Fi とほかの質点 j から受ける力 fij に分けると

dLdt=∑iri×Fi+∑i≠jri×fij

です.内力は対にして足します.fji=−fij なので

ri×fij+rj×fji=(ri−rj)×fij

です.内力が2つの質点を結ぶ直線の上を向くなら,ri−rj と fij は平行で,外積は 0 です.重力や電気力はこの形です.

法則 質点系の角運動量

内力が質点どうしを結ぶ直線の向きなら,内力のトルクは打ち消し合い

dLdt=∑iri×Fi

となる.外力のトルクの和が 0 なら,全角運動量は保存する.

スケーターの腕を引き寄せる力は,体の内部の筋肉の力,つまり内力です.内力は全体の角運動量を変えません.氷の摩擦によるトルクは小さいので,全角運動量はほぼ一定です.体と腕が共通の角速度 ω で回っているとすると,各部分の速さは riω で,全角運動量は L=∑miri2ω です.腕が体の軸に近づくと,腕の各部分の軸からの距離 ri が小さくなり,∑miri2 が減ります.L を一定に保つには,共通の角速度 ω が増えるしかありません.各部分の mirivi が個別に保存するわけではなく,保存するのは全体の和です.詳しくは次の節以降で,慣性モーメントを使って確かめます.

ポイント ここまでのまとめ

  • 角運動量 L=r×p とトルク τ=r×F は,原点を決めてはじめて決まる.

  • 運動方程式から dLdt=τ が出る.トルクが 0 なら L は保存する.

  • 中心力ではトルクが 0.角運動量が保存し,面積速度が一定になる(ケプラーの第2法則).

  • 質点系では,内力が質点を結ぶ直線の向きなら内力のトルクは打ち消し合い,外力のトルクだけが全角運動量を変える.

  • 問いの答え:外力のトルクがほぼ無く,腕の力は内力なので,全角運動量が保たれる.腕を引き寄せて r が小さくなった分,回転が速くなる.

02外積

前の節で先に使った外積を,この節で定義し,その微分を導きます.

定理 数学の道具:外積

定義 空間のベクトル a,b の外積 a×b は,次のベクトルである.

  • 大きさは |a||b|sin⁡θ(θ は2つのなす角,0≤θ≤π).a,b を2辺とする平行四辺形の面積に等しい.

  • 向きは a にも b にも垂直で,a から b へ右ねじを回すとき,ねじの進む向き.

右手座標系で,xy 平面上の \vec{a},\vec{b} と平行四辺形に斜線を引く.\vec{a}\times\vec{b} を垂直な矢印で描き,右ねじの回転を曲線の矢印で添える. 右手座標系で,xy 平面上の \vec{a},\vec{b} と平行四辺形に斜線を引く.\vec{a}\times\vec{b} を垂直な矢印で描き,右ねじの回転を曲線の矢印で添える.

成分表示

a×b=(aybz−azby,  azbx−axbz,  axby−aybx)

x,y,z を順に回して覚える.xy 平面内のベクトルでは z 成分 axby−aybx だけが残り,これが前の節の L=xpy−ypx である.

性質 b×a=−a×b.平行なベクトルの外積は 0.和と実数倍は普通に分配できる.

外積の微分 積の微分と同じ形で,順序を保って

ddt(a×b)=a˙×b+a×b˙

である.L=r×p に使うと,v×mv=0 と p˙=F から

dLdt=v×mv+r×p˙=r×F=τ

となる.前の節の結果の導出である.

練習 1.

  1. a=(1,2,0),b=(3,−1,0) のとき,a×b と,2つを2辺とする平行四辺形の面積を求めよ.

  2. a=(2,0,1),b=(0,3,0) の外積を求め,a に垂直なことを確かめよ.

答え:(1) a×b=(0,0,1×(−1)−2×3)=(0,0,−7).面積は 7.(2) (0×0−1×3, 1×0−2×0, 2×3−0×0)=(−3,0,6).a との内積は 2×(−3)+1×6=0 で,垂直である.

練習 2. (1) ex×ey,ey×ex,a×a を求めよ.(2) 位置 r=(2.0,0,0)m,運動量 p=(0,3.0,0)kgms−1 の質点の r×p を求めよ.(3) a=(1,1,0),b=(1,−1,0) の外積と,2つを2辺とする平行四辺形の面積を求めよ.

答え:(1) ez,−ez,0.(2) (0,0,2.0×3.0−0)=(0,0,6.0)kgm2s−1.(3) (0,0,1×(−1)−1×1)=(0,0,−2),面積は 2.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

質量 0.50kg の質点が,原点 O を中心とする半径 2.0m の円周上を,反時計回りに速さ 3.0ms−1 で等速円運動している.

原点を中心とする円と,円上の2点 (2.0,\,0),(0,\,2.0) での位置ベクトルと速度の矢印を描く. 原点を中心とする円と,円上の2点 (2.0,\,0),(0,\,2.0) での位置ベクトルと速度の矢印を描く.
  1. 質点が (2.0,0)m にあるときと (0,2.0)m にあるときの,O のまわりの角運動量の z 成分を求めよ.

  2. 質点に速度と同じ向きの一定の力 1.5N を加え始めた.O のまわりのトルクと,角運動量の変化の割合を求めよ.

  3. 力を加え始めて 2.0s 後の速さを,角運動量から求めよ.ただし,この間も質点は同じ円周上を動くものとする.

解答を見る

考え方 外積の z 成分 xpy−ypx を使う.円運動では速度が位置ベクトルに垂直.

  1. (2.0,0) では p=(0, 1.5)kgms−1 なので L=2.0×1.5−0=3.0kgm2s−1.(0,2.0) では p=(−1.5, 0) なので L=0−2.0×(−1.5)=3.0kgm2s−1.どちらも mrv に等しい.

  2. 力は接線方向なので,トルクは τ=rF=2.0×1.5=3.0Nm.よって dLdt=τ=3.0kgm2s−2.

  3. 一定のトルクなので L=3.0+3.0×2.0=9.0kgm2s−1.L=mrv より v=9.00.50×2.0=9.0ms−1.運動方程式 v=3.0+1.50.50×2.0=9.0ms−1 とも一致する.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

なめらかな水平の板に穴があり,質量 0.20kg の小球が,穴を通した糸の先につながれている.初め,小球は穴を中心とする半径 0.60m の円周上を速さ 1.2ms−1 で等速円運動している.糸をゆっくり引いて,半径を 0.20m にした.

板を真上から見て,初めの円と引いた後の円を同心円で描く.糸は穴へ向かい,手が下に引く向きを添える. 板を真上から見て,初めの円と引いた後の円を同心円で描く.糸は穴へ向かい,手が下に引く向きを添える.
  1. 引いた後の小球の速さと角速度を求めよ.

  2. 引く前と後の糸の張力を求めよ.

  3. 運動エネルギーの増加と,その由来を答えよ.

解答を見る

考え方 糸の力は穴を向く中心力なので,穴のまわりの角運動量が保存する.張力は向心力として円運動の式から求める.

  1. mrv が一定なので 0.60×1.2=0.20v.v=3.6ms−1.角速度は,初め 1.2/0.60=2.0rads−1,後は 3.6/0.20=18rads−1.

  2. T=mv2/r より,初めは 0.20×1.220.60=0.48N,後は 0.20×3.620.20≈13N.

  3. 運動エネルギーは,初め 12×0.20×1.22=0.144J,後は 12×0.20×3.62=1.296J.増加は約 1.15J.

増えた分は,糸を引いた手がした仕事である.

ポイント ここまでのまとめ

  • 外積 a×b は,大きさ |a||b|sin⁡θ(平行四辺形の面積),向きは a から b への右ねじの向き.成分は (aybz−azby, azbx−axbz, axby−aybx).

  • 順序を入れ替えると符号が変わり,平行なら 0.xy 平面内なら z 成分 axby−aybx だけが残る.

  • 外積の微分は,積の微分の形で順序を保つ.これで dLdt=r×F が出る.

  • 円運動では L=mrv.中心力で半径が変わるときは,速度の接線成分 v⟂ を使った L=mrv⟂ が一定.

03角運動量とトルクの演習

まず原点と正の向きを決め,位置ベクトルと運動量のなす角を確かめてください.角運動量が保存しても,速さや運動エネルギーまで一定とは限りません.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

質量 m の質点が,水平面内の直線 y=b(b>0) を一定の速度 (u,0)(u>0) で進む.外力は働かない.

  1. 原点Oのまわりの L を求めよ.

  2. 直線上の点A (0,b) のまわりの角運動量を求め,質点が回転軌道を描かなくても角運動量を持てる理由を述べよ.

原点Oと直線y=b,直線上のAと質点,右向き速度uを示す. 原点Oと直線y=b,直線上のAと質点,右向き速度uを示す.
解答を見る

考え方 角運動量は軌道の形でなく,選んだ原点からの位置と運動量の外積で決まる.紙面から手前を正の z 方向とする.

  1. 質点が (x,b) にあるとき,r=(x,b,0),p=(mu,0,0) なので L=(0,0,−mbu).向きは紙面の奥である.x は式に残らず,質点がOから遠ざかっても角運動量は変わらない.運動量の作用線からOまでの垂直距離が常に b だからである.

  2. Aからの位置は (x,0,0) で,運動量と平行なので LA=0.同じ運動でも原点を変えると値が変わる.円運動することは角運動量を持つための必要条件ではなく,原点を通らない直線運動も反例になる.どちらの原点についても外力のトルクは0であり,それぞれの角運動量が保存することに矛盾はない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

ある瞬間,質量 2.0kg の質点の位置は (2.0,1.0,0)m,速度は (1.0,3.0,0)ms−1 である.その瞬間の合力は (4.0,−2.0,0)N である.

  1. 原点のまわりの角運動量とトルクを求めよ.

  2. その瞬間の角運動量の大きさは増えるか減るか.また,力を位置ベクトルと平行な力に置き換えた場合はどうなるか.

xy軸と点(2,1)にある質点.速度は右上,合力は右下へ描く. xy軸と点(2,1)にある質点.速度は右上,合力は右下へ描く.
解答を見る

考え方 外積の z 成分を符号付きで計算し,dLdt=τ と比べる.力の大きさだけから回転への効果を判断しない.

  1. 運動量は (2.0,6.0,0)kgms−1.したがって Lz=2.0×6.0−1.0×2.0=10kgm2s−1 で,L は正の z 方向である.一方,τz=2.0×(−2.0)−1.0×4.0=−8.0Nm だから,τ は負の z 方向である.

  2. この瞬間には Lz>0 かつ dLzdt<0 なので,大きさは減っている.これは瞬間についての結論であり,後のトルクまで一定と仮定したものではない.力を F=cr に置き換えれば r×F=0 となり,その瞬間の角運動量の変化率は0になる.中心へ向かう c<0 の場合も同じである.

演習 3

オリジナル ★★★☆☆

平面内を運動する質点に,固定点Oへ向かう中心力だけが働く.点AではOからの距離が r,速さが v,位置ベクトルと速度のなす角が 30∘ である.別の点Bでは距離が 2r,速度が位置ベクトルと垂直である.運動は反時計回りである.

  1. Bでの速さと,軌道の面積速度を求めよ.

  2. AとBでそれぞれ短い同じ時間 Δt に掃く角度の比を求めよ.

Oから距離rのAと距離2rのB.Aには半径方向と30°をなす速度v,Bには速度の方向のみを示す.軌道の形は指定しない. Oから距離rのAと距離2rのB.Aには半径方向と30°をなす速度v,Bには速度の方向のみを示す.軌道の形は指定しない.
解答を見る

考え方 一般の軌道では L=mrv とせず,速度の半径に垂直な成分を使う.面積速度は一定だが,角速度は一定ではない.

  1. Aで L=mrvsin⁡30∘=mrv/2.Bでは L=m(2r)vB なので vB=v/4.面積速度は L/(2m)=rv/4 である.中心力の具体的な距離依存性を知らなくても,この結果は決まる.エネルギー保存だけでは,力の位置エネルギーが不明なので速さの関係を求められない.

  2. 微小時間では ΔA=12r2ΔθA,ΔA=12(2r)2ΔθB と書ける.よって ΔθA:ΔθB=4:1.厳密には Δt→0 の極限での比であり,有限時間に距離が大きく変わるなら積分が必要である.同じ面積を遠方では小さい角度で掃く,という幾何学的な意味も持つ.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

同じ質量 m の2質点が,ある瞬間に (a,0),(−a,0) にあり,速度は順に (0,u),(0,−u) である.a,u>0 とする.以後は2質点を結ぶ直線に沿う内力だけが働く.

  1. 全運動量と,原点Oのまわりの全角運動量を求めよ.

  2. 固定点B (b,c) のまわりでも全角運動量が同じになることを示せ.その後も保存するか.

x軸上の±aに質点を配置し,右の質点に上向きu,左に下向きuを描く.Oと任意の固定点Bを示す. x軸上の±aに質点を配置し,右の質点に上向きu,左に下向きuを描く.Oと任意の固定点Bを示す.
解答を見る

考え方 各質点の角運動量を足してから原点を変える.全運動量が0なら,原点移動に伴う補正が消える.

  1. P=m(0,u,0)+m(0,−u,0)=0.それぞれの角運動量の z 成分は amu と (−a)(−mu)=amu なので,LO=(0,0,2amu).全運動量が0でも,角運動量は打ち消し合わない.

  2. R=(b,c,0) とすると LB=∑(ri−R)×pi=LO−R×P=LO.内力の合力は0で,全運動量は以後も0である.さらに内力のトルクの和は (r1−r2)×f12=0 なので,どちらの固定点でも全角運動量は保存する.単に作用反作用で大きさが等しいだけでなく,内力が2点を結ぶ方向にあることを使っている.

ポイント 教える人へ

  • 原点と正の回転方向を,式を書く前に宣言させることが重要である.

  • 直線運動の角運動量を問い,円運動専用の量という誤解を確かめる.

  • 中心力のトルクが0であることと,仕事が0であることを区別させる.

  • 系全体の保存則では,内力の方向まで説明できるかを確認する.

04剛体のつり合い

問い

なめらかな壁に,一様なはしごを立てかけます.はしごの下端は床の上にあり,床との間には摩擦があります.はしごを壁に立てかけて手を離すと,立てた角度が大きいうちは立ったままですが,床との角度を小さくして寝かせていくと,あるところで下端が滑り出します.どこまで寝かせると滑るのでしょうか.床の摩擦が大きいほど,その角度はどう変わるでしょうか.

考えてみる

はしごを1つの質点とみて,第4章の力のつり合いを試します.はしごには重力 W,床からの垂直抗力 N1,床の摩擦力 f,壁からの垂直抗力 N2(壁はなめらかなので壁に垂直)が働きます.水平方向と鉛直方向のつり合いは

f=N2,N1=W

です.ここから N1 は分かりますが,f(と N2)の値は決まりません.滑らない条件は f≤μN1=μW なので,f が分からなければ角度の限界も出ません.

足りないのは「はしごが回転しない」という条件です.はしごは大きさのある物体で,力が働く位置によって回り方が変わります.同じ力でも,てこやドアの取っ手のように,回転軸から遠い所に加えるほど回す効果が大きくなります.この「回す効果」を表す量が,この節の主役です.

剛体と力のモーメント

力を加えても変形しない理想の物体を剛体といいます.剛体では,力を作用線(力の向きに延ばした直線)の上で動かしても,効果は変わりません.押す力も引く力も,同じ直線上のどこで加えても同じ効果です.

力が回す効果を表すのが,力のモーメントです.角運動量の節のトルクを,平面で表したものです.

定義 力のモーメント

平面上の点 O のまわりの,位置 (x,y) に働く力 (Fx,Fy) のモーメントを

NO=xFy−yFx

で定める.O から力の作用線までの垂直な距離(腕の長さ)を d とすると,大きさは dF.反時計回りに回す向きを正とする.単位は Nm.

垂直抗力の N と区別するため,モーメントは必ず点を添えて NO と書きます.腕の長さを使うと,力 F が点Oから距離 r の所に,r と角 φ をなして加わるとき d=rsin⁡φ です.

棒の一端 O を軸とし,棒の途中に斜めの力 F が加わる図を描く.作用線を点線で延ばし,O から作用線に下ろした垂線(腕の長さ d)を示す. 棒の一端 O を軸とし,棒の途中に斜めの力 F が加わる図を描く.作用線を点線で延ばし,O から作用線に下ろした垂線(腕の長さ d)を示す.

つり合いの条件

法則 剛体のつり合い

剛体が静止し続けるためには,次の2つが必要である.

∑F=0,∑NO=0

前者は並進しない条件,後者は回転しない条件である.点 O はどこにとってもよい.

平面では,力の成分が2つとモーメントが1つなので,式は3本です.点Oはどこにとっても結果が変わりません(理由は次の節で証明します).そこで,未知の力が多く通る点を選びます.その点を通る力はモーメントが0なので,式から消えます.

重力は剛体のすべての部分に働きますが,一様な重力のもとでは,その全体を重心に働く1本の力 W=Mg として扱えます.重力のモーメントの和は,重心に全質量が集まったときと等しくなるからです.

特別な組として,大きさが同じで逆向きの2力で作用線が離れているものを偶力といいます.合力は 0 ですが,モーメントが残るので物体は回ります.大きさは力と作用線の間隔の積で,点Oの選び方によりません.ペットボトルのふたを両手の指で回すとき,5N ずつを 6cm 離れて加えれば,モーメントは 5×0.06=0.30Nm です.

円板(ふた)の上面図に,中心をはさんで逆向きの2力を描く.2つの作用線の間隔を d として示す. 円板(ふた)の上面図に,中心をはさんで逆向きの2力を描く.2つの作用線の間隔を d として示す.

はしごの問題を解く

長さ l,重さ W の一様なはしごが,床と角 θ をなして,右側の壁に立てかけてあるとします.壁はなめらかで,床との静止摩擦係数は μ です.下端を A,上端を B とします.力は A に N1(上向き)と f(摩擦,壁の向き),B に N2(壁から離れる向きに水平),重心に W(下向き)です.

壁に立てかけたはしごと床の側面図.下端 A に N_1 と f,上端 B に壁からの水平な N_2,重心に W を描く.床との角 \theta と,A から W の作用線までの水平距離 \dfrac{l}{2}\cos\theta を示す. 壁に立てかけたはしごと床の側面図.下端 A に N_1 と f,上端 B に壁からの水平な N_2,重心に W を描く.床との角 \theta と,A から W の作用線までの水平距離 \dfrac{l}{2}\cos\theta を示す.

並進のつり合いは,先ほどと同じ f=N2,N1=W です.回転のつり合いは,A のまわりで考えます.未知の N1 と f は A を通るので,モーメントが0で式に出ません.N2 の腕の長さは B の高さ lsin⁡θ,W の腕の長さは l2cos⁡θ です.W のモーメントは時計回り,N2 のモーメントは反時計回りなので,和が0という式は

N2lsin⁡θ=Wl2cos⁡θ⟹N2=W2tan⁡θ

です.したがって f=N2=W2tan⁡θ.角度が小さいほど,滑らないために必要な摩擦力は大きくなります.滑らない条件 f≤μN1=μW に入れると

W2tan⁡θ≤μW⟹tan⁡θ≥12μ

です.

μ=0.50 なら tan⁡θ≥1 で θ≥45∘,μ=0.30 なら θ≥59∘ です.

ポイント ここまでのまとめ

  • 剛体のつり合いは,力の和が 0 であること(並進しない)と,どの点のまわりでも力のモーメントの和が0であること(回転しない)の2つ.

  • 力のモーメントは NO=xFy−yFx=±dF(反時計回りを正,d は腕の長さ).力は作用線の上で動かしても効果が変わらない.重力は重心に働くとみてよい.

  • モーメントの点は,未知の力が多く通る点を選ぶと式が簡単になる.

  • 問いの答え:床の摩擦力は f=W2tan⁡θ 必要で,tan⁡θ≥12μ のとき滑らない.μ が大きいほど,より寝かせても滑らない.

05モーメントの計算と点の選び方

モーメントの符号と点の選び方を整理して,例題でつり合いの式を立てます.

定理 数学の道具:モーメントの計算

計算の手順 点 O を原点にとり,位置 (x,y) に働く力 (Fx,Fy) のモーメントは

NO=xFy−yFx

である.反時計回りが正,時計回りが負.腕の長さ d を使うときは,回る向きを見て ±dF とする.作用線が O を通れば d=0 でモーメントは0.

点の選び方は自由 力の和が 0 のとき,点 O のまわりのモーメントの和と,別の点 O′(座標 (a,b))のまわりの和は等しい.

証明. O′ を原点としたときの座標は (xi−a, yi−b) なので

∑NO′=∑[(xi−a)Fiy−(yi−b)Fix]=∑NO−a∑Fiy+b∑Fix

∑F=0 なら,右辺の第2項と第3項が0になって ∑NO′=∑NO.よって ∑NO=0 なら,どの点のまわりでも 0 である.

練習 1.

  1. 点 (3,0)m に力 (0,5)N が働くとき,原点のまわりのモーメントを求めよ.

  2. 点 (0,2)m に力 (4,0)N が働くとき,原点のまわりのモーメントを求めよ.

答え:(1) 3×5−0×0=15Nm(反時計回り).(2) 0×0−2×4=−8Nm(時計回り).

練習 2. 原点のまわりのモーメントを求めよ.(1) 点 (2,1)m に力 (3,4)N.(2) 点 (−0.50,0)m に力 (0,−10)N.(3) 点 (1,0)m に (0,5)N,点 (−1,0)m に (0,−5)N(合力0の偶力).

答え:(1) 2×4−1×3=5Nm.(2) (−0.50)×(−10)−0=5.0Nm(反時計回り).(3) 5+5=10Nm.偶力のモーメントは,どの点のまわりでも同じになる.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

長さ 4.0m,質量 10kg の一様な板を,左端から 1.5m の位置の支点 P にのせ,シーソーにした.左端に質量 30kg の子が座り,右端に質量 m の子が座って,板が水平につり合った.重力加速度を g とする.

水平な板,支点 P,左端の子と右端の子を描き,左端から支点までの距離と板の長さを寸法線で示す. 水平な板,支点 P,左端の子と右端の子を描き,左端から支点までの距離と板の長さを寸法線で示す.
  1. m を求めよ.

  2. 支点が板に及ぼす力を求めよ.また,左端のまわりでも確かめよ.

解答を見る

考え方 回転しない条件は,未知の力(支点の力)が通る P のまわりで立てる.

  1. P のまわりで,子A(左,距離 1.5m)は反時計回り,板の重心(右へ 0.50m)と子B(右へ 2.5m)は時計回りにモーメントをもつ.

30g×1.5=10g×0.50+mg×2.5

より 45=5+2.5m,m=16kg.

  1. 鉛直方向のつり合いから,支点の力は (30+10+16)g=56g≈5.5×102N(上向き).左端のまわりでは 56g×1.5=84g と 10g×2.0+16g×4.0=84g が等しく,つり合う.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

質量 4.0kg,長さ l の一様な棒の一端 O が,壁にちょうつがいで取り付けてある(ちょうつがいは自由に回り,力を及ぼす).棒は水平で,他端 B に質量 2.0kg のおもりをつるし,B を壁の上の点と糸で結んだところ,糸は水平と 30∘ の角をなした.g=9.8ms−2 とする.

壁,水平な棒,端 B のおもり,B から壁へ斜め上に伸びる糸(30^{\circ})を描く.ちょうつがい O に向きが未知の力を点線の矢印で示す. 壁,水平な棒,端 B のおもり,B から壁へ斜め上に伸びる糸(30^{\circ})を描く.ちょうつがい O に向きが未知の力を点線の矢印で示す.
  1. 糸の張力を求めよ.

  2. ちょうつがいが棒に及ぼす力の水平成分と鉛直成分を求めよ.

  3. 糸が耐えられる張力が 100N までのとき,つるせるおもりの質量の最大値を求めよ.

解答を見る

考え方 O のまわりでモーメントを立てると,ちょうつがいの力が式から消える.張力は成分に分けて使う.

  1. O のまわりで,張力の鉛直成分 Tsin⁡30∘(腕 l)は反時計回り,棒の重力(腕 l/2)とおもりの重力(腕 l)は時計回りである.

Tsin⁡30∘×l=4.0g×l2+2.0g×l

より 0.50T=4.0g,T=8.0g≈78N.l は消える.

  1. 水平方向:張力の壁に向かう成分 Tcos⁡30∘ を打ち消すため,ちょうつがいの力は H=Tcos⁡30∘≈68N(壁から離れる向き).鉛直方向:V+Tsin⁡30∘=(4.0+2.0)g より V=2.0g≈20N(上向き).

  2. おもりを M とすると,O のまわりで 0.50T=(2.0+M)g.T=100N で 2.0+M=509.8≈5.1.M≈3.1kg.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

長さ 5.0m,質量 10kg の一様なはしごを,なめらかな壁に床と 60∘ の角で立てかけた.床との静止摩擦係数は 0.40 である.質量 60kg の人がはしごに沿って登る.

壁に立てかけたはしごと,下端から s の位置の人を描き,床と壁からの力,はしごと人の重力を示す. 壁に立てかけたはしごと,下端から s の位置の人を描き,床と壁からの力,はしごと人の重力を示す.
  1. 人が下端から s の位置まで登ったとき,壁からの垂直抗力 N2 を求めよ.

  2. はしごが滑らずに人が登れる最大の s を求めよ.

  3. 人がはしごの上端まで登っても滑らないためには,静止摩擦係数がいくら以上であればよいか.

解答を見る

考え方 下端 A のまわりでモーメントを立てると,床からの力が消える.滑る限界は f=μN1.

  1. 鉛直方向:N1=(10+60)g=70g.水平方向:f=N2.A のまわりの腕の長さは,N2 が 5.0sin⁡60∘,はしごの重力が 2.5cos⁡60∘,人の重力が scos⁡60∘.

N2×5.0sin⁡60∘=(10g×2.5+60g×s)cos⁡60∘

より N2=(25+60s)g5.0tan⁡60∘.

  1. 滑らない条件 f=N2≤0.40N1=28g に入れると,25+60s≤28×5.0×3≈242.よって s≤3.6m(はしごの長さの約0.7倍).

  2. s=5.0m とすると N2=(25+300)g5.03≈37.5g.37.5g≤μ×70g より μ≥0.54.

ポイント ここまでのまとめ

  • モーメントは NO=xFy−yFx(反時計回りが正).腕の長さを使うときは回る向きで符号を決める.

  • 合力が 0 なら,モーメントの和は点の選び方によらない.

  • 未知の力が多く通る点(支点,ちょうつがい,はしごの下端)を選ぶと,式が簡単になる.

06剛体のつり合いの演習

力の作用点と作用線を図に書き込み,合力とモーメントの両方を調べてください.支点から離れる条件や摩擦の限界も,つり合いの式と一緒に確かめましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

水平な棒の左端Oから 0.30m の点に,右上へ水平と 30∘ をなす 20N の力を加える.

  1. 反時計回りを正として,力のモーメント NO を求めよ.

  2. 同じ作用点で同じ大きさの力を加えるとき,モーメントの大きさの最大値を求めよ.また,力を作用線上で移してもモーメントが変わらない理由を示せ.

水平な棒のOから0.30 mの作用点と,30°右上向きの力20 Nを描く. 水平な棒のOから0.30 mの作用点と,30°右上向きの力20 Nを描く.
解答を見る

考え方 棒に沿う成分はOを通るので回す効果がない.棒に垂直な成分に,Oから作用点までの距離を掛ける.

  1. 鉛直成分は 20sin⁡30∘=10N.したがって NO=0.30×10=3.0Nm である.正の値は棒を反時計回りに回す向きであることを示す.力の大きさ20をそのまま掛けると,棒に沿う成分まで数えてしまう.

  2. 棒に垂直な上向きまたは下向きの力なら,腕が最大の 0.30m となり,大きさは 6.0Nm.作用線上の移動 Δr は力と平行なので,トルクの変化 Δr×F は0である.棒に沿って作用点を動かす操作とは異なり,移動先でも力の作用線を同じに保つことが条件である.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

長さ l,質量 M の一様な水平板の両端A,Bを,下から支える.Aから l/4 の位置に質量 2M の小物体を置く.支持点は板を上向きに押すだけである.

  1. A,Bから受ける力 NA,NB を求めよ.

  2. 小物体を板上の任意の位置 x(0≤x≤l) に移すときの両反力を求め,板が支持点から離れないことを確かめよ.

両端A,Bで支える板と,Aからl/4の小物体2M,板の重心Gを描く. 両端A,Bで支える板と,Aからl/4の小物体2M,板の重心Gを描く.
解答を見る

考え方 Aのまわりでモーメントをとれば NA が消える.残る反力は鉛直方向のつり合いから求める.

  1. Aのまわりで NBl−Mg(l/2)−2Mg(l/4)=0 だから NB=Mg.合力0より NA+NB=3Mg なので NA=2Mg.小物体に近い側の支持点ほど大きな力を受け持つ.

  2. 同じ手順で NB=Mg/2+2Mgx/l,NA=5Mg/2−2Mgx/l.両者の和は常に 3Mg である.0≤x≤l ではどちらも Mg/2 以上で,上向きの反力だけでつり合える.小物体が端に来ても,板自身の重さが反対側の反力を正に保つ.式から負の反力が出た場合には,下から支えるという条件に反し,その接触を保つ静止状態は存在しないと判断する.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

水平面内にある剛体の点 (0,d/2) に右向きの力 F,点 (0,−d/2) に左向きの力 F を加える.F,d>0 とし,ほかの水平力はない.

  1. 合力と原点Oのまわりの合モーメントを求めよ.

  2. 任意の点A (a,b) のまわりでも計算し,この2力だけで静止し続けられるかを説明せよ.

剛体の上側に右向きF,下側に左向きFを描き,作用線の間隔dと原点Oを示す. 剛体の上側に右向きF,下側に左向きFを描き,作用線の間隔dと原点Oを示す.
解答を見る

考え方 逆向きの2力の合力は0でも,作用線が離れていれば偶力になる.モーメントの符号は作用点ごとに計算する.

  1. 合力は (F,0)+(−F,0)=0.上側は −Fd/2,下側も −Fd/2 なので ∑NO=−Fd である.どちらの力も時計回りに回すため,モーメントは相殺しない.重心は加速しないが,回転の変化は起こり得る.

  2. Aに対する上側の位置は (−a,d/2−b),下側は (−a,−d/2−b).合モーメントは −(d/2−b)F+(−d/2−b)F=−Fd となり,a,b は消える.したがって支点を選び直しても回す効果を消せず,この2力だけで静止し続けることはできない.固定具が静止を保つなら,固定具は別に反対向きのモーメントを及ぼしている.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

幅 b,高さ h,質量 M の一様な直方体を粗い水平床に置く.側面の床から高さ y(0<y≤h) の位置を,水平右向きに力 F でゆっくり押す.静止摩擦係数は μ>0.断面内の運動だけを考える.

  1. 静止中の垂直抗力の作用線が,底面中央から右へ移る距離を求めよ.

  2. 滑り出す力と転倒を始める力を求め,どちらが先に起きるかを判定せよ.

幅b,高さhの直方体と床,高さyの右向き力Fを描く.垂直抗力の位置は描かない. 幅b,高さhの直方体と床,高さyの右向き力Fを描く.垂直抗力の位置は描かない.
解答を見る

考え方 床の反力は一点に固定されていない.静止中は分布した接触力の合力の作用点が動き,底面の端まで来ると転倒の限界になる.

  1. 鉛直方向で N=Mg,水平方向で左向きの摩擦力は f=F.底面中央Oのまわりで,摩擦力のモーメントは0である.垂直抗力の作用点を右へ x とすると Nx−Fy=0,したがって x=Fy/(Mg).重力はOを通るため,この式に現れない.

  2. 摩擦の限界は Fs=μMg.転倒の限界は x=b/2 から Ft=Mgb/(2y).μ<b/(2y) なら先に滑り,μ>b/(2y) なら先に転倒する.等号なら同時に限界へ達する.後者では右下の縁を軸とする重力の復元モーメント Mgb/2 と,押す力のモーメント Fy の比較でも同じ結果になる.これは最初に動き出す条件であり,動き出した後の運動を静止の式で追ってはいけない.

ポイント 教える人へ

  • モーメントの記号には点の添字を付け,垂直抗力の記号と区別させる.

  • 未知の力が消える点を選ばせた後,別の点でも結果を検算させる.

  • 摩擦力を初めから最大値に置かず,つり合いに必要な値を求めさせる.

  • 接触力の符号と作用点の範囲は,式と同じく物理的な条件である.

07固定軸のまわりの回転

問い

質量 M,半径 R の一様な円板と,同じ質量・同じ半径の細い輪があります.どちらも中心を通る固定軸のまわりに,摩擦なく回ることができます.この2つの縁に,同じ接線方向の力を同じ時間だけ加えて回し始めるとします.どちらが速く回り出すでしょうか.

質量 M,半径 R の円板と細い輪を並べて描く.縁の同じ位置に接線方向の力 F が働いている. 質量 M,半径 R の円板と細い輪を並べて描く.縁の同じ位置に接線方向の力 F が働いている.

考えてみる

並進運動では,同じ力で動かしたとき,質量が大きいほど加速度が小さくなります(F=ma).回転でも同じ関係がありそうですが,円板と輪は質量が同じです.質量だけで決まるなら,2つは同じ速さで回り出すはずです.

けれども回転には,質量の大きさに加えて,質量の置き場所が効くはずです.その効き方を式で確かめましょう.

回転の運動方程式

軸のまわりを半径 r の円周上で動く,質量 m の質点を考えます.角度 θ を反時計回りに測り,角速度 ω=θ˙,角加速度を α=θ¨ と書きます.以下では角加速度は α で統一し,単位は rads−2 です.円周の接線方向の加速度は rα なので,接線方向の力を Ft とすると運動方程式は Ft=mrα です.両辺に r を掛けると,左辺は軸のまわりのトルク τ=rFt になります.

τ=mr2α

剛体は質点 mi の集まりで,軸からの距離 ri は変わりません.全質点の角加速度 α は共通です.各質点について τi=miri2α を足し合わせます.質点どうしの内力が両者を結ぶ直線の向きなら,そのトルクは作用反作用で互いに打ち消し合います(角運動量の節).残るのは外力のトルク τ だけです.

定義 慣性モーメントと回転の運動方程式

剛体の固定軸のまわりの慣性モーメントを

I=∑imiri2=∫r2dm

で定義する.軸のまわりの回転の運動方程式は

Iα=τ(α=θ¨)

である.I の単位は kgm2 である.

並進の ma=F と並べると,質量 m が I,加速度 a が α,力 F が τ に対応します.角運動量の節の dLdt=τ とも合っています.軸方向の角運動量は L=∑miri2ω=Iω なので,これを dLdt=τ に入れると Iα=τ が出ます.

固定軸(紙面に垂直)のまわりを回る剛体を,質点 m_i の集まりとして描く.軸から各質点までの距離 r_i と,角速度 \omega,接線方向の速度の向きを示す. 固定軸(紙面に垂直)のまわりを回る剛体を,質点 m_i の集まりとして描く.軸から各質点までの距離 r_i と,角速度 \omega,接線方向の速度の向きを示す.

円板と輪の回転のしやすさ

縁に働く力 F によるトルクは,円板も輪も τ=FR で同じです.質量の分布を足し合わせると,輪は全質量が半径 R にあるので I輪=MR2 です.円板は内側の質量が軸に近く,積分すると I円板=12MR2(次の節で導きます)です.したがって α=τ/I より,円板の角加速度は輪の2倍です.質量が同じでも,軸に近いほど回しやすいのです.

いろいろな慣性モーメント

一様な物体の慣性モーメントを表にまとめます.

物体

軸

I

細い輪(円筒殻)

中心を通り面に垂直

MR2

円板(円柱)

中心を通り面に垂直

12MR2

細い棒(長さ l)

中心を通り棒に垂直

112Ml2

細い棒(長さ l)

端を通り棒に垂直

13Ml2

球

中心を通る

25MR2

薄い球殻

中心を通る

23MR2

平行軸の定理. 重心を通る軸のまわりの慣性モーメントを IG とすると,それと平行で距離 d 離れた軸のまわりでは

I=IG+Md2

です.重心を原点にとり,各質点の位置を (xi,yi) とします.距離 d 離れた軸を x=d に置くと ri2=(xi−d)2+yi2 で,

I=∑mi(xi2+yi2)−2d∑mixi+d2∑mi=IG+Md2

となります.重心が原点なので ∑mixi=0 だからです.棒の端では 112Ml2+M(l2)2=13Ml2 となり,表と一致します.

重心 G を通る軸と,距離 d だけ離れた平行な軸を描く.剛体の質点 m_i について,重心軸からの距離と平行軸からの距離を矢印で示す. 重心 G を通る軸と,距離 d だけ離れた平行な軸を描く.剛体の質点 m_i について,重心軸からの距離と平行軸からの距離を矢印で示す.

回転の運動エネルギー

各質点の速さは riω なので,運動エネルギーの総和は

K=∑12mi(riω)2=12Iω2

です.並進の 12mv2 に対応します.dKdt=Iωα=τω なので,トルクのする仕事は W=∫τdθ です.

滑車の質量を考える

質量 M,半径 R の円板の縁に糸を巻き付け,糸の端に質量 m のおもりをつるして静かに放します.糸の他端は円板に固定されていて,おもりが落ちるとともに円板からほどけます.糸は円板の縁の上を滑らず,糸の質量と軸の摩擦は無視します.糸の張力を T,おもりの加速度を下向きに a とすると,

mg−T=ma,TR=Iα=12MR2⋅aR

です.糸が滑らないので糸の加速度 a と滑車の縁の加速度 Rα が等しく,α=a/R と置きました.第2式から T=12Ma で,第1式に入れると

a=mm+M/2g

です.滑車の質量が0なら a=g,滑車が重いほど a は小さくなります.滑車の質量 M の「半分」が,おもりと一緒に動く質量として加わるのです.糸を滑車に掛けて両側に垂らす装置では,回転を決めるのは両側の張力の差で,次の節で扱います.

実体振り子

水平な固定軸のまわりに揺れる剛体を実体振り子といいます.重心と軸の距離を d とし,鉛直からの角を θ とすると,重力のトルクは −Mgdsin⁡θ です.

Iθ¨=−Mgdsin⁡θ≈−Mgdθ

微小振動では単振動で,ω02=MgdI,周期は T=2πIMgd です.ここで I=IG+Md2 は軸のまわりの慣性モーメントです.具体的な計算は次の節で行います.

ポイント ここまでのまとめ

  • 固定軸のまわりの回転の運動方程式は Iα=τ(α=θ¨).慣性モーメント I=∑miri2=∫r2dm は,軸から遠い質量ほど大きく効く.

  • 回転の運動エネルギーは 12Iω2.平行軸の定理は I=IG+Md2.

  • 糸を巻いた円板におもりをつるすと,円板の質量は加速度を m/(m+M/2) 倍にする.実体振り子の周期は,微小振動では 2πI/(Mgd).

  • 問いの答え:円板のほうが速く回り出す.同じトルクでは α=τ/I で,I円板=12MR2 は I輪=MR2 の半分だから,角加速度は2倍になる.

08慣性モーメントの積分計算と例題

前の節で表にまとめた慣性モーメントを,積分で確かめます.そのあと,滑車・実体振り子・球の例題に進みます.

数学の道具

定理 数学の道具:慣性モーメントの積分

連続した物体の I=∫r2dm は,軸からの距離が同じ微小部分を選んで足す.微小部分の質量 dm を,密度と体積(長さ・面積)で表すのが最初の仕事である.

細い棒(長さ l,質量 M,線密度 λ=M/l)の中心を通り棒に垂直な軸では,中心から x の位置の微小部分 dm=λdx を足して

I=∫−l/2l/2x2Mldx=Ml⋅23(l2)3=112Ml2

である.

円板(半径 R,質量 M,面密度 σ=M/(πR2))の中心を通り面に垂直な軸では,軸から r の細い輪(幅 dr)を微小部分に選ぶ.面積は 2πrdr で,距離はどの点も r だから

I=∫0Rr2σ2πrdr=2πσR44=12MR2

である.

左に棒の微小部分(位置 x,幅 dx),右に円板の細い輪(半径 r,幅 dr)を描く. 左に棒の微小部分(位置 x,幅 dx),右に円板の細い輪(半径 r,幅 dr)を描く.

練習 1. 長さ l の細い棒の端を通り棒に垂直な軸のまわりの I を,積分で求めよ.また平行軸の定理で確かめよ.

練習 2. 内半径 a,外半径 b,質量 M の一様な円環板の,中心を通り面に垂直な軸のまわりの I を求めよ.また a→0 と a→b の極限を調べよ.

答え:練習 1 は ∫0lx2Mldx=13Ml2.平行軸の定理では 112Ml2+M(l2)2=13Ml2 で一致する.練習 2 は M=σπ(b2−a2) と I=∫abr2σ2πrdr=πσ2(b4−a4) から I=12M(a2+b2).a→0 で円板の 12Mb2,a→b で輪の Mb2 になる.

練習 3. (1) 軸から 0.10m に 1.0kg,0.20m に 2.0kg の小球を固定した軽い棒の I を求めよ.(2) 質量 2.0kg,半径 0.10m の一様な円板の,ふちの1点を通り面に垂直な軸のまわりの I を,平行軸の定理で求めよ.

答え:(1) 1.0×0.102+2.0×0.202=0.090kgm2.(2) 12MR2+MR2=32×2.0×0.102=0.030kgm2.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

質量 M=2.0kg,半径 R の一様な円板の滑車に軽い糸を掛け,両端に質量 m1=3.0kg,m2=1.0kg のおもりをつるして静かに放す.糸は滑車の上を滑らず,滑車の軸は摩擦なく回る.重力加速度を g=9.8ms−2 とする.

  1. おもりの加速度の大きさを求めよ.

  2. 両側の糸の張力 T1,T2 を求めよ.

円板の滑車に掛けた糸と,右に m_1,左に m_2 のおもり.m_1 が下がる向きに加速度 a,滑車の角加速度 \alpha,糸の張力 T_1,T_2 を示す. 円板の滑車に掛けた糸と,右に m_1,左に m_2 のおもり.m_1 が下がる向きに加速度 a,滑車の角加速度 \alpha,糸の張力 T_1,T_2 を示す.
解答を見る

考え方 おもりそれぞれに運動方程式を立て,滑車には回転の運動方程式を立てる.糸が滑らないので a=Rα である.

  1. m1 が下がる向きを正とする.

m1g−T1=m1a,T2−m2g=m2a,(T1−T2)R=12MR2⋅aR

第3式は T1−T2=12Ma.第1式と第2式を足すと (m1−m2)g−(T1−T2)=(m1+m2)a なので

a=m1−m2m1+m2+M/2g=2.05.0×9.8≈3.9ms−2

滑車の質量が0なら a=4.9ms−2 だったので,滑車の慣性の分だけ遅くなる.

  1. T1=m1(g−a)=3.0×5.88≈18N,T2=m2(g+a)=1.0×13.72≈14N である.T1−T2≈3.9N で,12Ma=3.9N と一致する.両側の張力が違うからこそ,滑車が回り出す.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

質量 M,長さ l=1.0m の一様な細い棒の一端を,水平な固定軸で支える.棒は軸のまわりに摩擦なく振れる.

微小振動の周期を求めよ.また,同じ周期の単振り子の長さはいくらか.

一端を軸で支えた棒が鉛直から角 \theta だけ傾いた図.重心 G,軸から重心までの距離 d=l/2 と重力 Mg を示す. 一端を軸で支えた棒が鉛直から角 \theta だけ傾いた図.重心 G,軸から重心までの距離 d=l/2 と重力 Mg を示す.
解答を見る

考え方 実体振り子の周期は T=2πI/(Mgd).I は平行軸の定理で求める.

端のまわりでは I=13Ml2,d=l2 だから

T=2πMl2/3Mgl/2=2π2l3g=2π2×1.03×9.8≈1.6s

長さ ℓ の単振り子の周期 2πℓ/g と比べると,ℓ=23l≈0.67m である.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,半径 R の一様な球について,中心を通る軸のまわりの慣性モーメントを積分で求めよ.

解答を見る
軸を z 軸とする球を,軸に垂直な薄い円板(高さ z,厚さ dz,半径 \sqrt{R^2-z^2})に切った図. 軸を z 軸とする球を,軸に垂直な薄い円板(高さ z,厚さ dz,半径 \sqrt{R^2-z^2})に切った図.

考え方 球を軸に垂直な薄い円板に切り,円板の慣性モーメント 12dmρ2 を足し合わせる.

軸を z 軸とし,高さ z の薄い円板の半径を ρ=R2−z2,厚さを dz とする.体積密度は 3M4πR3 だから,円板の質量は dm=3M4πR3πρ2dz=3M4R3(R2−z2)dz である.

I=∫12ρ2dm=3M8R3∫−RR(R2−z2)2dz=3M8R3⋅16R515=25MR2

ここで ∫−RR(R4−2R2z2+z4)dz=2R5(1−23+15)=16R515 を使った.

ポイント ここまでのまとめ

  • 慣性モーメント I=∫r2dm は,軸からの距離が同じ微小部分を選んで足す.棒の中心は 112Ml2,円板は 12MR2,球は 25MR2,薄い球殻は 23MR2.

  • 滑車の質量は,おもりの加速度に m1+m2+M/2 として効く.両側の張力の差が滑車を回す.

  • 実体振り子の周期は,微小振動では 2πI/(Mgd).棒の端で支えると,長さ 23l の単振り子と同じ周期になる.

09固定軸のまわりの回転の演習

慣性モーメントを求める前に,どの軸から距離を測るかを確かめてください.回転の運動方程式と仕事の関係を使い分け,同じ結果になるところでは検算しましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

軽い棒の両端に質量 m,2m の小球を固定し,それぞれを固定軸Oから距離 a,2a の反対側に置く.棒は水平面内で回り,初め静止している.軸のまわりに一定の正のトルク τ0 を加える.

  1. 慣性モーメントと角加速度を求めよ.

  2. 時間 t 後の角速度,回転角,運動エネルギーを求めよ.

Oの左へaにm,右へ2aに2mを置いた軽い棒.正のトルクτ₀を曲線矢印で示す. Oの左へaにm,右へ2aに2mを置いた軽い棒.正のトルクτ₀を曲線矢印で示す.
解答を見る

考え方 軸からの距離は2乗して質量を掛ける.一度 I が決まれば,一定トルクは一定角加速度を与える.

  1. I=ma2+2m(2a)2=9ma2.右の小球の寄与は左の8倍である.Iα=τ0,α=θ¨ より α=τ0/(9ma2).軸は重心を通っていないが,固定軸の運動方程式はこの軸のまわりの I を用いればよい.

  2. 初めの角度を0にとると ω=αt=τ0t/(9ma2),θ=αt2/2=τ0t2/(18ma2).運動エネルギーは K=Iω2/2=τ02t2/(18ma2).一定トルクの仕事 τ0θ も同じ値になる.角度を回転数で数えた場合は,1回転を 2π としてラジアンに直してから仕事を計算する.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

質量 M,長さ l の一様な細い棒を,中心Gから l/4 離れた点Oを通り,棒に垂直な軸で支える.

  1. Oのまわりの慣性モーメントを求めよ.

  2. 同じ棒を端で支えた場合と比べ,同じトルクを加えたときの角加速度の比を求めよ.重力のトルクは無視できる向きに装置を置く.

長さlの棒と中心G,Gからl/4の軸O,端の軸Aを示す.軸は紙面に垂直である. 長さlの棒と中心G,Gからl/4の軸O,端の軸Aを示す.軸は紙面に垂直である.
解答を見る

考え方 平行軸の定理で足す距離は,必ず重心軸から新しい軸までの距離である.端の軸から任意の軸へ直接同じ式を使わない.

  1. 重心まわりでは IG=Ml2/12.よって IO=Ml2/12+M(l/4)2=7Ml2/48.軸が重心から離れるため,IO>IG であり,端の軸の Ml2/3 よりは小さい.

  2. 同じトルクを τ とすると αO=48τ/(7Ml2),αA=3τ/(Ml2).したがって αO:αA=16:7.慣性モーメントの比の逆数になっている.なお「同じ力」だけではこの比較はできない.軸から力の作用線までの距離が異なればトルクも変わるため,力の大きさと腕の長さを合わせて調べる必要がある.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

慣性モーメント I のはずみ車が,固定軸のまわりを正の角速度 ω0 で回る.ブレーキは回転と逆向きに一定の大きさ τb>0 のトルクを及ぼし,停止した瞬間に外す.

  1. 停止時間と停止までの回転角を求めよ.

  2. ブレーキが奪ったエネルギーと,停止までの平均の散逸仕事率を求めよ.

解答を見る

考え方 停止前に限れば角加速度は負の一定値である.停止後まで同じ式を延長すると逆回転を予測してしまうので,適用する時間範囲を区切る.

  1. Iα=−τb より ω(t)=ω0−τbt/I.これが0になる時刻は ts=Iω0/τb.角速度は直線的に減るので,回転角は θs=(ω0+0)ts/2=Iω02/(2τb) である.回転数なら θs/(2π) となる.

  2. 奪ったエネルギーは初めの運動エネルギー Q=Iω02/2.仕事からも Q=τbθs と求まる.平均の散逸仕事率は Q/ts=τbω0/2.瞬間の散逸仕事率は τbω(t) なので,停止に近づくほど小さくなる.トルクが一定でも仕事率が一定とは限らない.ブレーキが車にした仕事そのものは負であり,ここでの Q は失われたエネルギーの正の大きさである.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

慣性モーメント I,半径 R の滑車の軸を固定し,軽く伸びない糸を掛ける.左端に質量 m,右端に質量 2m のおもりをつけて静かに放す.糸は滑車上で滑らず,軸の摩擦はない.

  1. おもりの加速度と左右の張力を求めよ.

  2. 右のおもりが高さ h だけ下がったときの速さを,エネルギーから求めて(1)と照合せよ.

固定滑車I,Rと左のm,右の2mを描く.右のおもりの落下距離hを示す. 固定滑車I,Rと左のm,右の2mを描く.右のおもりの落下距離hを示す.
解答を見る

考え方 糸の両側の張力は等しいとは限らない.その差が滑車にトルクを与え,並進と回転を a=Rα が結ぶ.

  1. 右側の下向き加速度を a とし,左右の張力を TL,TR とする.TL−mg=ma,2mg−TR=2ma,(TR−TL)R=Ia/R.足し合わせて a=mg/(3m+I/R2).張力は TL=m(g+a),TR=2m(g−a) となる.I>0 なら TR−TL=Ia/R2>0 である.

  2. 右が h 下がる間に左は h 上がるので,全位置エネルギーの減少は mgh.共通の速さを v とすれば mgh=12(3m)v2+12I(v/R)2.よって v2=2mgh/(3m+I/R2)=2ah となり一致する.滑車の重心は動かないため,滑車自身の並進エネルギーは加えない.I→0 なら a→g/3 で,左右の張力は等しくなる.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,長さ l の一様な細い棒を,重心から距離 d(0<d≤l/2) の点を通る水平軸で支え,鉛直面内で微小振動させる.重心は軸の下側にある.

  1. 周期を d の関数で表せ.

  2. 周期を最小にする d と最小周期を求めよ(必要なら ddd(1d)=−1d2 を使ってよい).重心そのものを支えれば周期が最小になる,という考えの誤りを説明せよ.

支点Oの下側に重心Gがある傾いた棒.OG=d,全長l,鉛直からの微小角θを示す. 支点Oの下側に重心Gがある傾いた棒.OG=d,全長l,鉛直からの微小角θを示す.
解答を見る

考え方 軸を重心に近づけると慣性モーメントだけでなく重力の復元トルクも小さくなる.両方を含む周期の式を最小化する.

  1. I=M(l2/12+d2) で,回転の運動方程式は Iθ¨=−Mgdsin⁡θ.微小角で sin⁡θ≈θ とすると,T=2π(d+l2/(12d))/g である.ここでの周期は微小振幅の極限であり,大きな振幅にそのまま使うことはできない.

  2. 根号内の q(d)=d+l2/(12d) を微分すると q′(d)=1−l2/(12d2).d=l/12 の前で負,後で正だからここが最小で,許された範囲にも含まれる.qmin=l/3 より Tmin=2πl/(3g).d→0 では重力の復元トルクが消える一方,慣性モーメントは Ml2/12 に残るので周期は発散する.d=0 ではそもそも重力による振り子運動にならない.

ポイント 教える人へ

  • 慣性モーメントには,どの軸についての量かを言葉で添えさせる.

  • 角加速度と角速度,トルクと仕事率の違いを確認することが重要である.

  • 滑車の張力差を,回転を加速する原因として説明させる.

  • 最適化では,数式の極値が許された範囲に入るかまで確かめさせる.

10剛体の平面運動

問い

長さ l のはしごを,なめらかな壁に立てかけておいたら,下端が床の上を滑り出し,上端が壁に沿って下がり始めました.はしごが倒れていく途中,はしごの上の各点はどの向きに動いているのでしょうか.とくに,はしごの真ん中の点は,床に着くまでにどんな線を描くでしょうか.

壁と床に沿って滑るはしごを示す模式図. 壁と床に沿って滑るはしごを示す模式図.

考えてみる

両端の動きはわかります.上端 A は壁に沿って下へ,下端 B は床に沿って横へ動きます.では真ん中の点 M はどうでしょう.「両端の向きの平均で,斜め下へ」と答えたくなりますが,倒れていくにつれて向きがどう変わるのかは,これだけではわかりません.

はしごを,ある点のまわりに回る物体と見ることもできそうです.けれども下端 B のまわりに回るのなら B は止まっているはずで,上端 A のまわりでも同じことです.はしごは固定軸のまわりに回っているわけではありません.位置を変えながら向きも変える運動を,どう記述すればよいかを考えます.

並進と回転に分ける

どの2点の距離も変わらない物体を剛体といいました.剛体のどの点も1つの平面に平行に動く運動を平面運動といいます.はしごも,床を転がる円板も,平面運動をします.

剛体の中に基準点 O′ を1つ選びます.短い時間の間の剛体の動きは,次の2つを続けて行ったものとみなせます.まず,剛体全体を O′ と同じだけ平行に動かします(並進).次に,O′ を中心に,ある角だけ回します(回転).剛体なので,剛体に描いたどの線分も,向きは同じ角だけ変わります.したがって,回転の角速度 ω は剛体に1つだけ決まり,基準点をどこに選んでも同じです.変わるのは並進の部分だけです.

[図:並進と回転への分解]

スライダーの前半で基準点を並進し,後半でその点のまわりに回す.AとBを選び直しても最終配置と回転角は同じになる.初期状態は移動前.

紙面に垂直で手前向きの単位ベクトルを ez とし,反時計回りを正とした角速度 ω を使って,角速度ベクトル ω=ωez を考えます.向きは回転の向きに右ねじを回したときに進む向きで,角運動量の節の右ねじと同じ約束です.O′ から点 P へのベクトルを r′ とすると,r′ は長さを変えずに角速度 ω で回るので,その変化の速度は ω×r′ です(r′ を反時計回りに90度回して ω 倍したベクトル.次の節で確かめます).

法則 剛体の平面運動の速度と加速度

剛体の基準点 O′ の速度を V,加速度を A,剛体の角速度を ω(反時計回りが正),角加速度を α=ω˙ とする.O′ から剛体上の点 P へのベクトルを r′ とすると,P の速度と加速度は

vP=V+ω×r′,aP=A+αez×r′−ω2r′

である(ω=ωez).角速度 ω は,基準点の選び方によらない.

加速度の式は,速度の式を時間で微分すると出ます.ω×r′ の微分は,ω が変わる分の αez×r′ と,r′ が回る分の ω×(ω×r′)=−ω2r′ の和です.第1項は O′ のまわりの円の接線方向の加速度,第2項は O′ に向かう向心加速度で,第3章の円運動の Rθ¨ と Rθ˙2 と同じものです.

瞬間回転中心

ω≠0 なら,その瞬間に速度が0になる点がちょうど1つあります.V+ω×r′=0 を満たす r′ は,V に垂直な向きに,O′ から距離 V|ω| の所にあります.この点 I を瞬間回転中心といいます.剛体に固定した平面を広げて考えれば,I は剛体の外にあってもかまいません.I を基準点に選び直すと V=0 なので,各点の速度は vP=ω×rIP です.その瞬間,剛体全体が I のまわりに角速度 ω で回っているように動きます.

ポイント 瞬間回転中心の見つけ方

  • 各点の速度は,I とその点を結ぶ線分に垂直で,大きさは |ω|×(I からの距離) である.

  • 速度の向きがわかっている2点で,それぞれ速度に垂直な直線を引く.2本の交点が I である.

  • 2本の直線が平行で交わらないときは,その瞬間 ω=0 で,剛体は並進している.

I は固定された軸ではありません.時間がたつと別の場所に移り,I にある剛体の点も,速度は0でも加速度は0とは限りません.ですから「I のまわりのトルクで回転の運動方程式を立ててよいか」は別の問題で,第9章で調べます.

問いのはしごに使ってみます.壁と床の交わる点を原点 O とし,下端 B を (lcos⁡θ,0),上端 A を (0,lsin⁡θ) とします.B の速度は水平なので,B を通る鉛直線を引きます.A の速度は鉛直なので,A を通る水平線を引きます.交点 I=(lcos⁡θ,lsin⁡θ) が瞬間回転中心で,O,B,I,A は長方形をつくります.真ん中の点 M はこの長方形の中心なので,O と I を結ぶ対角線の中点でもあります.M の速度は IM に垂直,つまり OM に垂直です.しかも OM の長さは対角線の半分 l2 で,θ によりません.

[図:はしごの瞬間回転中心]

初期角は55°.角を変えると瞬間回転中心I,両端と中点の速度方向,中点がたどる円弧を見比べられる.矢印は倒れる向きの速度を表す.

座標でも確かめられます.M は (l2cos⁡θ,l2sin⁡θ) で,原点からの距離はいつも l2 です.M は O を中心とする半径 l2 の円弧を描きます.一方,M 以外の点は円を描きません.下端から s の点は ((l−s)cos⁡θ,ssin⁡θ) にあり,半軸の長さが l−s と s の楕円 x2(l−s)2+y2s2=1 の一部を描きます.

滑らずに転がる円板では,床に接している点の速度が0です.つまり接点が瞬間回転中心です.これは次の題材「転がり」の出発点になります.

ポイント ここまでのまとめ

  • 剛体の平面運動は,基準点の並進と,その点のまわりの回転に分けられる.角速度は基準点の選び方によらない.

  • 各点の速度は v=V+ω×r′,加速度は a=A+αez×r′−ω2r′(接線の項と向心の項).

  • 速度が0の点が瞬間回転中心 I.2点の速度に垂直な直線の交点として作図でき,各点の速度は I からの線分に垂直で,I からの距離に比例する.I は固定軸ではない.

  • 問いの答え:はしごの各点は,I(壁と床の角の向かい側の頂点)からの線分に垂直な向きに動く.真ん中の点は,壁と床の交わる点を中心とする半径 l/2 の円弧を描く.

  • 力とトルクで運動を決める話は,次の題材「転がり」と第9章で扱う.

11平面での外積と瞬間回転中心

前の節の v=V+ω×r′ を手早く計算するために,角速度ベクトルが紙面に垂直なときの外積を成分で確かめます.そのあと,瞬間回転中心を座標で求める方法を用意し,例題に進みます.

定理 数学の道具:紙面に垂直なベクトルとの外積

xy 平面内のベクトル r=(x,y,0) と ez=(0,0,1) の外積は,成分の式から

ez×r=(0⋅0−1⋅y,  1⋅x−0⋅0,  0)=(−y,x,0)

である.これは r を反時計回りに90度回したベクトルで,長さは |r| のまま変わらない.したがって ω×r=ωez×r は,r を90度回して ω 倍したベクトルである.ω<0(時計回り)なら,逆向きになる.

もう一度回すと ez×(ez×r)=(−x,−y,0)=−r で,180度回して元の逆向きになる.前の節の向心の項 ω×(ω×r′)=−ω2r′ はこれである.

速度の式の導出. r′=r(cos⁡φ,sin⁡φ,0) で r が一定,φ˙=ω なら,合成関数の微分で

r˙′=rω(−sin⁡φ,cos⁡φ,0)=ωez×r′

となる.

瞬間回転中心を座標で求める. 基準点 O′ の位置 rO′,速度 V,角速度 ω≠0 がわかっているとき,V+ωez×r′=0 の両辺に左から ez× を掛けると ez×V−ωr′=0 なので

rI=rO′+ez×Vω

である.作図で垂線の交点を探すことの計算版である.

練習 1. 反時計回りに ω=2.0rads−1 で回る剛体の基準点 O′ が原点にあり,速度は V=(1.0,0)ms−1 である.点 (0,1.0)m の速度と,瞬間回転中心の位置を求めよ.

答え:ω×r′=2.0×(−1.0,0) より,速度は (1.0−2.0,0)=(−1.0,0)ms−1.ez×V=(0,1.0) なので,rI=(0,0.50)m.I をはさんで,O′ と点 (0,1.0) の速度は逆向きである.

練習 2. 半径 0.50m の車輪の中心が原点にあり,速度 V=(2.0,0)ms−1,角速度 ωz=−4.0rads−1(時計回り)である.最上点 (0,0.50) と最下点 (0,−0.50) の速度,および瞬間回転中心を求めよ.

答え:ωzez×(0,0.50)=−4.0×(−0.50,0)=(2.0,0) より最上点は (4.0,0)ms−1.最下点は (2.0,0)+(−2.0,0)=0.rI=ez×Vωz=(0,2.0)−4.0=(0,−0.50)m で最下点に一致し,滑らずに転がっている.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

長さ 5.0m のはしごが,なめらかな鉛直の壁と床にもたれている.ある瞬間,下端 B は壁から 3.0m,上端 A は床から 4.0m の所にあり,B は壁から離れる向きに一定の速さ 0.60ms−1 で引かれている.壁と床の交点を原点 O,床に沿って壁から離れる向きを x 軸,鉛直上向きを y 軸とする.

  1. 瞬間回転中心 I の位置と,はしごの角速度を求めよ.

  2. 上端 A と,はしごの真ん中の点 M の速度を求めよ.

  3. 上端 A の加速度を求めよ.

速度を求めるはしごの配置を示す模式図. 速度を求めるはしごの配置を示す模式図.
解答を見る

考え方 両端の速度の向きは壁と床で決まるので,垂線の交点で I が求まる.加速度は,B を基準点にして a=A+αez×r′−ω2r′ を使う.

  1. B を通る鉛直線と A を通る水平線の交点は I=(3.0,4.0)m.IB =4.0m なので |ω|=0.604.0=0.15rads−1.B から A へのベクトル (−3.0,4.0) は,倒れるにつれて −x の向きへ寝ていくので,回転は反時計回りで ω=+0.15rads−1 である.

  2. B を基準点にし,ez×(−3.0,4.0)=(−4.0,−3.0) を使うと

vA=(0.60,0)+0.15×(−4.0,−3.0)=(0,−0.45)ms−1

で,A は真下へ 0.45ms−1.M へは r′=(−1.5,2.0) なので

vM=(0.60,0)+0.15×(−2.0,−1.5)=(0.30,−0.225)ms−1

速さは約 0.38ms−1(=0.15×IM)で,向きは OM に垂直(内積 1.5×0.30−2.0×0.225=0)である.

    1. と同じく IB は A の高さ yA に等しいので,どの瞬間も ω=uyA(u=0.60ms−1)である.これを微分し,y˙A=−0.45ms−1 だから

α=−uy˙AyA2=0.60×0.454.02≈1.69×10−2rads−2

B の加速度は0なので

aA=α(−4.0,−3.0)−0.152(−3.0,4.0)=(0,−0.14)ms−2

x 成分は接線の項と向心の項で打ち消し合い,A は壁に沿って下向きに加速する.B を一定の速さで引いても,A はしだいに速くなる.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

半径 R の円板が,水平な床の上を滑らずに右へ転がっている.中心 G の速度は右向きに一定の V である.滑らないとは,床に接している円板の点の速度が0であることとする.

  1. 円板の角速度を求めよ.

  2. 時刻 t=0 に床に接していた円周上の点 P は,円板が時計回りに角 θ だけ回ったとき,中心から見て r′=(−Rsin⁡θ,−Rcos⁡θ) の所にある.P の速度と速さを求め,P と接点を結ぶ線分に P の速度が垂直なことを確かめよ.必要なら 1−cos⁡θ=2sin2⁡θ2 を使ってよい.

  3. 接点にある円板の点の加速度を求めよ.

転がる円板の円周上の点を示す模式図. 転がる円板の円周上の点を示す模式図.
解答を見る

考え方 中心を基準点にして v=V+ω×r′ を使う.接点の速度が0という条件から ω が決まる.

  1. 接点は中心から r′=(0,−R).ez×(0,−R)=(R,0) なので,接点の速度は (V+ωR,0).これが0だから ω=−VR,すなわち時計回りに VR である.

  2. ez×r′=(Rcos⁡θ,−Rsin⁡θ) なので

vP=(V,0)−VR(Rcos⁡θ,−Rsin⁡θ)=V(1−cos⁡θ,sin⁡θ)

速さは V2−2cos⁡θ=2V|sin⁡θ2| で,θ=0(接点)で0,θ=π(頂点)で 2V.接点から P へのベクトルは r′−(0,−R)=(−Rsin⁡θ,R−Rcos⁡θ) で,vP との内積は −RVsin⁡θ(1−cos⁡θ)+RV(1−cos⁡θ)sin⁡θ=0.接点が瞬間回転中心である.

P の位置 (Rθ−Rsin⁡θ,R−Rcos⁡θ)(中心は Rθ 進む)を微分しても同じ速度になる.P が描くこの曲線をサイクロイドという.

  1. V が一定で α=0 なので,向心の項だけが残る.a=−ω2(0,−R)=(0,V2R).接点の点は,速度は0でも,上向きに V2R の加速度をもつ.

ポイント ここまでのまとめ

  • ez×(x,y)=(−y,x):紙面に垂直な角速度との外積は,ベクトルを反時計回りに90度回して ω 倍する.2回回すと −r.

  • 瞬間回転中心は,2点の速度に垂直な直線の交点(2本が平行なら,その瞬間は並進).座標では rI=rO′+ez×Vω.

  • はしごの真ん中の点は円の接線の向きに動き,転がる円板の縁の点はサイクロイドを描いて速さ 2V|sin⁡(θ/2)| で動く.

  • 瞬間回転中心にある点は,速度が0でも加速度は0とは限らない(転がる円板の接点は上向きに V2/R).

12剛体の平面運動の演習

ここでは力から運動を決めず,測定された速度や拘束条件から各点の運動を求めます.右向きを x,上向きを y,角速度 ω と角加速度 α は反時計回りを正とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

半径 R の円板が,水平面を右向きに速さ v で滑らずに転がる.右向きを x,上向きを y とする.

  1. 角速度の大きさと,円板の頂点および床との接点の速度を求めよ.

  2. 円板の右端と左端の点の速度を成分で表し,それぞれの速さを求めよ.

床上の円板の中心G,頂点A,接点P,右端B,左端Cと,中心の右向き速度vを示す.各点の速度の答えは描かない. 床上の円板の中心G,頂点A,接点P,右端B,左端Cと,中心の右向き速度vを示す.各点の速度の答えは描かない.
解答を見る

考え方 各点の速度は,重心の速度 (v,0) と時計回りの回転による速度を足したものである.足すのは速さではなくベクトルである.

  1. 滑らない条件から角速度の大きさは |ω|=v/R(時計回りなので ω=−v/R).頂点の回転による速度は右向き R|ω|=v なので,地面から見た速度は (2v,0).接点では回転による速度が左向きなので (0,0) になる.ただし同じ物質点が床に居続けるわけではなく,時間が進むと別の点が接点になる.

  2. 右端の回転による速度は (0,−v),左端では (0,v).よって地面から見ると右端は (v,−v),左端は (v,v) で,速さはいずれも 2v である.どちらの速度も,接点Pからその点へ引いた線分と垂直になる.瞬間回転中心という見方でも方向と大きさを確かめられる.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

平面内を動く剛体の点Aを原点にとる.ある瞬間,Aの速度は V=(0.60,0.20)ms−1,加速度は A=(0.10,−0.20)ms−2,剛体の角速度は 2.0rads−1,角加速度は −1.0rads−2 であった.点BはAに対して (0.30,0.40)m にある.

  1. Bの速度と加速度を成分で求めよ.

  2. 瞬間回転中心Iの,Aに対する位置を求めよ.

剛体上の2点AとBを示す模式図. 剛体上の2点AとBを示す模式図.
解答を見る

考え方 Aを基準に並進と回転を足す.加速度では向心の項も落とさない.

  1. ez×(0.30,0.40)=(−0.40,0.30) だから,vB=(0.60,0.20)+2.0(−0.40,0.30)=(−0.20,0.80)ms−1.加速度は aB=(0.10,−0.20)−1.0(−0.40,0.30)−4.0(0.30,0.40)=(−0.70,−2.1)ms−2.

  2. rAI=(ez×V)/ω=(−0.20,0.60)/2.0=(−0.10,0.30)m.ここへ速度の式を代入すると (0.60,0.20)+2.0(−0.30,−0.10)=(0,0) になる.ωr は速度,αr と ω2r はともに加速度の次元である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

長さ l の棒ABが,平行な2本の水平レール上を動く.ある瞬間,Aは (0,0),Bは (3l/5,4l/5) にあり,Aの速度は右向きに u,Bの速度も水平である.

  1. Bの速度と棒の角速度を求めよ.有限の位置に瞬間回転中心はあるか.

  2. 点Cは棒のAからBへ向かって l/3 の位置にある.Cの速度を求めよ.また,棒の向きは時間とともに変わるか.

平行レールに沿う棒を示す模式図. 平行レールに沿う棒を示す模式図.
解答を見る

考え方 距離一定の条件は,両端の相対速度とABの内積が0という形でも書ける.

  1. Bの速度を (w,0) とすると,(w−u,0)⋅(3l/5,4l/5)=0 より w=u.速度の式の y 成分でも 0=ω(3l/5) より ω=0.棒はその瞬間に並進しており,u≠0 なら速度が0の点はなく,有限の瞬間回転中心はない.

  2. ω=0 だからCも (u,0) の速度である.両端がレール上にある限り,鉛直方向の間隔 4l/5 と棒の長さが一定なので,水平間隔の大きさも 3l/5 で一定.棒の向きは変わらず,並進を続ける.各点の速度差が0であることは,どの2点の距離も変わらない条件と合う.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

半径 R の車輪の中心Gが,水平に動くベルトの上で右向きに速度 V,加速度 A で進んでいる.ベルトの速度は右向き U,加速度は右向き B である.車輪とベルトの接触部には滑りがなく,V>U とする.

  1. 車輪の角速度と角加速度を求めよ.

  2. その瞬間に接触している車輪の物質点Pの速度と加速度を求めよ.

  3. 地上から見た瞬間回転中心Iの,Gに対する位置を求めよ.

動くベルト上の車輪を示す模式図. 動くベルト上の車輪を示す模式図.
解答を見る

考え方 滑らない条件は接触する2物体の速度が等しいこと.ベルトが動く場合,接点の速度は0ではない.

  1. rGP=(0,−R) より vP,x=V+ωR=U.したがって ω=(U−V)/R,α=(B−A)/R.ω<0 で時計回りである.

  2. vP=(U,0),aP=(A,0)+α(R,0)−ω2(0,−R)=(B,(V−U)2/R).物質点は次の瞬間にベルトから上へ離れていくので,鉛直加速度があってよい.接点の位置を追うことと,同じ物質点を追うことは違う.

  3. rGI=(0,V/ω)=(0,−RV/(V−U)).U>0 ならIは接点より下にある.U=B=0 では床上の転がりの式に戻る.(V−U)2/R は加速度の次元であり,V→U では回転が止まって有限のIはなくなる(V≠0 の場合).

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

クランクOAの長さを r=0.10m,連接棒ABの長さを L=0.30m とする.Oは原点,ピストンBは x 軸上を動き,常にAより右にある.クランクは反時計回りに一定角速度 Ω=20rads−1 で回る.OAが +x 軸となす角を φ とする.

  1. Bの位置 x と速度を φ で表せ.必要なら ddφL2−r2sin2⁡φ=−r2sin⁡φcos⁡φL2−r2sin2⁡φ を使ってよい.φ=0 でBが瞬間的に止まることを確かめよ.

  2. φ=60∘ で,Bの速度と連接棒の角速度を求めよ.

  3. φ=90∘ で連接棒は瞬間的に並進することを示し,このときのBの加速度を求めよ.

[図:クランクと連接棒の配置]

角φを操作すると,クランクOAと連接棒AB,水平に動くピストンBの配置を見比べられる.初期角は60°.速度や加速度の答えは表示しない.

解答を見る

考え方 ABの長さが一定である条件を先に書く.連接棒の角速度はクランクの角速度とは違う.

  1. Aは (rcos⁡φ,rsin⁡φ).s=L2−r2sin2⁡φ>0 とおくと x=rcos⁡φ+s.微分して x˙=−rΩsin⁡φ−r2Ωsin⁡φcos⁡φ/s.φ=0 では両項が0で,ピストンの折返点(死点)である.

  2. rAB=(s,−rsin⁡φ),Aの鉛直速度は rΩcos⁡φ.Bの鉛直速度が0だから,連接棒の角速度 ω=−rΩcos⁡φ/s.s=0.302−0.102×3/4=0.28723m を用いると,x˙=−2.0336ms−1≈−2.0ms−1,ω=−3.4816rads−1≈−3.5rads−1.Bは左へ進み,連接棒は時計回りに回る.

  3. cos⁡φ=0 なので ω=0,AとBの速度はともに (−rΩ,0) で瞬間的に並進する.ただし角加速度は α=rΩ2/L2−r2 で0ではない.Aの加速度は (0,−rΩ2) だから,aB,x=αr=r2Ω2/L2−r2≈14ms−2.鉛直成分は −rΩ2+αs=0.速度0と加速度0,角速度0と角加速度0をそれぞれ区別する.rΩ は速度,r2Ω2/s は加速度の次元である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

長さ l の棒の端Aは水平レール,端Bは原点を通る角 β(0<β<π/2) の斜めのレールを動く.ある瞬間,Aは原点,Bは (lcos⁡β,lsin⁡β) にあり,Aは右向きに一定速度 u>0 で進む.Bの速度をレールの原点から離れる向きに w とする.

  1. w と棒の角速度を求めよ.

  2. Bの加速度をレールに沿う成分で求めよ.

交差するレールに沿う棒を示す模式図. 交差するレールに沿う棒を示す模式図.
解答を見る

考え方 速度の差は棒に垂直である.加速度の差には棒に沿う向心成分があるので,速度の条件をそのまま加速度へ置き換えてはいけない.

  1. (wcos⁡β−u,wsin⁡β)⋅(cos⁡β,sin⁡β)=0 より w=ucos⁡β.y 成分は wsin⁡β=ωlcos⁡β なので ω=usin⁡β/l.

  2. Bの加速度を a(cos⁡β,sin⁡β) とする.Aの加速度は0.加速度の式と棒方向との内積をとると a=−ω2l=−u2sin2⁡β/l.原点へ向かう加速度である.ここで w=ucos⁡β はその瞬間だけの関係なので,β が一定だから w˙=0 としてはいけない.u2/l は加速度の次元をもち,β→0 では回転も加速度も0へ近づく.

ポイント 教える人へ

  • 速度はベクトルで足し,各成分を計算してから速さを求めさせる.

  • 移動するベルトでは,接点の速度と地上から見た瞬間回転中心を区別させる.

  • クランクの角速度と連接棒の角速度を同じ記号にしない.死点や並進の瞬間でも加速度が残ることを問いかける.

  • 瞬間だけ成り立つ式を,時間を通して成り立つ式として微分していないか確かめる.

13転がり

問い

同じ質量,同じ半径の円板,中身の詰まった球,細い輪を,同じ斜面の上から同時に静かに放します.どれも斜面を滑らずに転がり落ちます.いちばん先に下へ着くのはどれでしょうか.質量や半径を変えると,順番は変わるのでしょうか.

傾き \theta の斜面の上端に,円板・球・輪を並べて描く.どれも半径 R,質量 M.斜面の下端に着く順番はまだ書かない. 傾き \theta の斜面の上端に,円板・球・輪を並べて描く.どれも半径 R,質量 M.斜面の下端に着く順番はまだ書かない.

考えてみる

もし斜面がなめらかで,物体が回らずに滑り降りるなら,加速度は gsin⁡θ で,質量にも形にもよりません.転がる物体は,位置エネルギーの一部が回転の運動エネルギーになります.同じ高さを降りても,並進の速さに使われるエネルギーは減るはずです.その減り方が形で違うなら,順番も形で決まりそうです.

前の題材では,剛体の平面運動を並進と回転に分けて記述しました.ここでは,その運動を力とトルクで決める方法を用意し,転がりに使います.

並進と回転の運動方程式

前の題材で見たように,剛体の平面運動は,基準点の並進とそのまわりの回転に分けられ,角速度は基準点によりません.力で運動を決めるときは,基準点に重心を選びます.重心の並進は外力の和で,重心のまわりの回転は重心のまわりのトルクで決まります.

法則 剛体の平面運動

質量 M,重心のまわりの慣性モーメント IG の剛体に外力 Fi が働くとき,

MaG=∑Fi,IGα=τG

である.τG は重心のまわりの外力のトルクの和で,重心が加速していても成り立つ.運動エネルギーは K=12MvG2+12IGω2 である.

滑らずに転がる条件

半径 R の円板が,水平面の上を滑らずに転がるとします.円板が θ だけ回ると,床と接していた円周が長さ Rθ だけ床に当たるので,中心は Rθ だけ進みます.ここでは,進む向きを並進の正の向きとし,回転はそれに合う向き(右へ進むなら時計回り)を正とします.前の題材までは反時計回りを正としたので,向きの約束が逆です.この約束で時間で微分すると

v=Rω,a=Rα

です.これが滑らずに転がる条件です.反時計回りを正のままにすると,符号が逆の v=−Rω,a=−Rα になります.速さと角速度の大きさの間には,どちらの約束でも |v|=R|ω| が成り立ちます.

この条件は,床に接している点の速度が0であることを言い換えたものです.前の題材の v=V+ω×r′ のとおり,円板の各点の速度は,重心の速度 v(向きは進行方向)に,回転による速度をベクトルとして足したものです.中心から距離 r の点では,回転による速さは rω(向きは中心のまわりの接線方向)で,円周上では Rω=v です.接点では2つが打ち消し合って0,中心では回転による速度が0なので v,いちばん上の点では2つが同じ向きで 2v です.

転がる円板の速度分布.中心,頂点,接点,円周上の数点で,重心の速度 v,回転による速度,その合成を矢印で示す.接点では0,頂点では 2v,各点の速度は接点を中心とする円の接線方向を向く. 転がる円板の速度分布.中心,頂点,接点,円周上の数点で,重心の速度 v,回転による速度,その合成を矢印で示す.接点では0,頂点では 2v,各点の速度は接点を中心とする円の接線方向を向く.

前の題材で見たように,速度が0の接点が瞬間回転中心になり,その瞬間,円板全体が接点のまわりに角速度 ω で回っているように動きます.ただし接点にある円板の点は,速度は0でも上向きの加速度をもちます.接点まわりの慣性モーメントは,平行軸の定理で IP=IG+MR2 だから,運動エネルギーは

K=12IPω2=12IGω2+12Mv2

となり,並進と回転のエネルギーの和と一致します.

斜面を転がる物体

傾き θ の斜面を,質量 M,半径 R の物体が転がり降りるとします.慣性モーメントを IG=kMR2 とおきます(円板は k=12,球は k=25,輪は k=1).斜面に沿って下向きを正とし,物体に働く力は重力 Mg,垂直抗力 N,斜面に沿って上向きの静止摩擦力 f です.

斜面を転がる球に働く力.重力 Mg(重心から鉛直下向き),垂直抗力 N(接点から斜面に垂直),摩擦力 f(接点から斜面に沿って上向き)を描く.斜面に沿った正の向きと,回転の向きも示す. 斜面を転がる球に働く力.重力 Mg(重心から鉛直下向き),垂直抗力 N(接点から斜面に垂直),摩擦力 f(接点から斜面に沿って上向き)を描く.斜面に沿った正の向きと,回転の向きも示す.

重心の運動方程式と,重心まわりの回転の運動方程式は

Ma=Mgsin⁡θ−f,IGα=fR

です.摩擦力だけが重心のまわりにトルクを与えます.α=a/R を使うと f=kMa で,第1式に入れて

a=gsin⁡θ1+k,f=k1+kMgsin⁡θ

です.質量 M も半径 R も消えます.

物体

k

加速度 a

球

25

57gsin⁡θ

円板

12

23gsin⁡θ

輪

1

12gsin⁡θ

k が小さい,つまり質量が軸の近くに集まっているほど,加速度は大きくなります.滑らずに転がるには,f≤μN=μMgcos⁡θ が必要で,μ≥k1+ktan⁡θ となります.

摩擦の役割

静止摩擦力 f は,物体を減速させる向きに働いています.けれども接点の速度は0なので,摩擦力は仕事をしません.力学的エネルギーは保存し,高さ h だけ降りたとき

Mgh=12Mv2+12kMR2ω2=12Mv2(1+k)

です.斜面の長さは h/sin⁡θ なので,v2=2gh1+k となり,加速度の式と合います.摩擦力は並進のエネルギーを減らして回転のエネルギーに移しますが,合計は変えません.摩擦のない斜面を初めに回転していない物体が滑って降りる場合なら位置エネルギーのすべてが並進に使われますが,転がる場合は k1+k の割合が回転に使われます.

回転軸の向きが変わるとき(歳差)

高速で回るコマは,傾いても倒れずに,軸の向きがゆっくり円を描きます.これが歳差です.ここでは,支点が固定された軸対称のコマが,傾き φ をほぼ一定に保って遅く歳差する場合を考えます.自転が十分に速く,歳差による角運動量は無視できるとして,コマの角運動量 L は軸の向きを向いていると近似します.重力のトルクは水平で,L と垂直です.dLdt=τ より,L は長さを変えずに水平方向へ向きを変えます.倒れる方向ではなく,横へ回るのです.傾き φ のとき,トルクの大きさは Mgrsin⁡φ(r は支点から重心までの距離)で,L の水平成分の大きさは Lsin⁡φ だから,歳差の角速度は

Ω≈MgrL=MgrIω

です.ここで I は自転軸(対称軸)のまわりの慣性モーメント,ω は自転の角速度です.速く回すほど(ω が大きいほど)ゆっくり歳差します.

支点Oを固定した軸対称のコマが,ほぼ一定の傾きで遅く歳差する.自転が十分速く,角運動量は近似的に軸方向を向く.重力のトルクは紙面の奥向きで,角運動量の向きを変える. 支点Oを固定した軸対称のコマが,ほぼ一定の傾きで遅く歳差する.自転が十分速く,角運動量は近似的に軸方向を向く.重力のトルクは紙面の奥向きで,角運動量の向きを変える.

ポイント ここまでのまとめ

  • 剛体の平面運動を力で決めるときは,基準点を重心にとり,重心の並進(MaG=F)と,重心まわりの回転(IGα=τG)に分ける.運動エネルギーは 12Mv2+12IGω2.

  • 滑らずに転がる条件は,進む向きと回転の正の向きを合わせて v=Rω,a=Rα.接点の速度は0で,前の題材で見たとおり,接点が瞬間回転中心である.

  • 斜面を転がる物体の加速度は a=gsin⁡θ1+k(IG=kMR2).この斜面では静止摩擦力は仕事をせず,力学的エネルギーは保存する.

  • 問いの答え:球,円板,輪の順に着く.質量や半径には依らず,k が小さい物体ほど速い.

14転がりの束縛条件と例題

滑らずに転がる条件を微分で扱い,並進と回転のエネルギーが分かれる理由を確かめます.そのあと例題に進みます.

数学の道具

定理 数学の道具:束縛条件の微分とエネルギーの分離

束縛条件の微分. 半径 R の円板が右へ滑らずに転がるとする.回転角 θ を時計回りに測ると,中心の位置は x=Rθ である.時間で微分すると

v=x˙=Rω,a=x¨=Rα

となる.これは「接点の速度が0」という条件を,中心の位置と回転角の関係として書いたものである.円周上の各点の速度と,最初に接点だった点が描くサイクロイドは,前の題材「剛体の平面運動」の例題で求めた(接点で0,頂点で 2v).

エネルギーの分離. 質点 mi の速度を,重心の速度 vG と重心に対する速度 ui の和 vi=vG+ui で表すと

K=∑12mi|vG+ui|2=12MvG2+vG⋅∑miui+∑12miui2

である.重心に対する位置の質量加重平均は0だから,その時間微分 ∑miui も0で,真ん中の項は消える.剛体では ui=riω(ri は重心を通る回転軸からの距離)なので,最後の項は 12IGω2 である.

練習 1. 質量 3.0kg,半径 0.20m の一様な円板が,滑らずに速さ 2.0ms−1 で転がっている.角速度と運動エネルギーを求めよ.

答え:ω=v/R=10rads−1,K=12×3.0×2.02+12×(12×3.0×0.202)×102=9.0J.

練習 2. (1) 質量 2.0kg の薄い輪(I=MR2)が速さ 1.0ms−1 で滑らずに転がっている.運動エネルギーを,重心の分と回転の分に分けて求めよ.(2) 一様な円板(I=12MR2)が,高さ 0.30m の斜面を静止から滑らずに転がり下りた.下での速さを求めよ.

答え:(1) 重心の分 12×2.0×1.02=1.0J,回転の分 12MR2(v/R)2=1.0J,合計 2.0J.(2) Mgh=12Mv2+12⋅12MR2(v/R)2=34Mv2 より v=4gh/3≈2.0ms−1.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

質量 2.0kg,半径 0.10m の一様な球が,傾き 30∘ の斜面を滑らずに転がり降りる.g=9.8ms−2 とする.

  1. 重心の加速度の大きさと,球の角加速度を求めよ.

  2. 摩擦力の大きさと,必要な静止摩擦係数の最小値を求めよ.

傾き 30^\circ の斜面を転がる球.重力 Mg,垂直抗力 N,斜面に沿って上向きの静止摩擦力 f を描く. 傾き 30^\circ の斜面を転がる球.重力 Mg,垂直抗力 N,斜面に沿って上向きの静止摩擦力 f を描く.
解答を見る

考え方 重心の運動方程式と重心まわりの回転の運動方程式を立て,a=Rα で結ぶ.球では IG=25MR2 である.

  1. 斜面に沿って下向きを正とする.Ma=Mgsin⁡θ−f,25MR2α=fR,α=a/R より f=25Ma.よって

a=57gsin⁡30∘=3.5ms−2,α=aR=35rads−2
  1. f=25×2.0×3.5=2.8N.垂直抗力は N=Mgcos⁡θ≈17N だから,μ≥fN≈0.17(27tan⁡30∘ と同じ)である.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

質量 M=0.20kg,外半径 R=0.040m,軸の半径 r=0.010m のヨーヨーがある.軸に巻いた糸の端を固定して手を離すと,糸がほどけながら真下に落ちる.ヨーヨーは一様な円板(I=12MR2)と見なし,糸の厚さは無視する.g=9.8ms−2 とする.

加速度の大きさと糸の張力を求めよ.

糸を軸に巻いたヨーヨーと,上で固定された糸.重力 Mg が重心に,張力 T が糸のほどける点に働く.軸の半径 r と外半径 R を示す. 糸を軸に巻いたヨーヨーと,上で固定された糸.重力 Mg が重心に,張力 T が糸のほどける点に働く.軸の半径 r と外半径 R を示す.
解答を見る

考え方 糸のほどける点は,その瞬間は動かない.重心の速さは v=rω,加速度は a=rα である.

下向きを正とする.Ma=Mg−T,Iα=Tr,a=rα より T=Ir2a.

a=g1+I/(Mr2),IMr2=R22r2=8.0

だから a=9.89.0≈1.1ms−2.T=M(g−a)≈1.7N である.落ちて失った位置エネルギーの 89 は回転に使われる.

例題 3

オリジナル ★★★★☆

水平な台の上に,質量 M,半径 R の一様な球が静止している.台との動摩擦係数は μ′=0.20 である.ビリヤードのキューで球の中心の高さを水平に突き,初速 v0=3.5ms−1 を与える(回転は与えない).球は最初は滑り,やがて滑らずに転がり始める.g=9.8ms−2 とする.

  1. 転がり始めるまでの時間と,そのときの速さを求めよ.

  2. 中心より b だけ高い位置を突くと,突いた直後から滑らずに転がった.b を求めよ.

台の上の球を水平に突くキューの図.(1) は中心の高さを,(2) は中心より b だけ上を突く.球に働く動摩擦力 f の向きも示す. 台の上の球を水平に突くキューの図.(1) は中心の高さを,(2) は中心より b だけ上を突く.球に働く動摩擦力 f の向きも示す.
解答を見る

考え方 滑っている間は,一定の動摩擦力 μ′Mg が働く.並進と回転の運動方程式から v(t) と ω(t) を求め,v=Rω となる時刻を探す.

  1. 進む向きを正とする.摩擦力は逆向きで,Mv˙=−μ′Mg,25MR2ω˙=μ′MgR.よって

v=v0−μ′gt,ω=5μ′g2Rt

v=Rω とおくと v0−μ′gt=52μ′gt で

t=2v07μ′g≈0.51s,v=57v0=2.5ms−1

である.

  1. 突いたときの力積を J とすると,Mv0=J,Iω0=Jb.v0=Rω0 より 25MR2⋅v0R=Mv0b,すなわち b=25R である.

ポイント ここまでのまとめ

  • 滑らずに転がる条件 x=Rθ を微分して v=Rω,a=Rα.

  • 運動エネルギーは,重心の 12Mv2 と重心まわりの回転 12IGω2 の和に分かれる.

  • 斜面を転がる球は a=57gsin⁡θ.ヨーヨーは a=g/(1+I/(Mr2)).

  • 初めに回転していない一様な球が,水平な粗い床の上で滑りから転がりに変わるとき,v=57v0 になる(円板なら 23v0,輪なら 12v0 で,物体の形と初めの回転で変わる).

15転がりの演習

重心の並進と重心まわりの回転を分け,接点が滑るかどうかを先に確かめてください.摩擦力の向きは重心の速度だけで決めず,接点で起こりそうな相対運動から考えましょう.

演習 1

オリジナル ★★☆☆☆

質量 M,半径 R の一様な円柱が,角 θ(0<θ<π/2) の斜面を静止から滑らずに転がる.IG=MR2/2 とする.

  1. 加速度と摩擦力を求めよ.

  2. 必要な静止摩擦係数の最小値と,高さ h 下がったときの速さを求めよ.

傾きθの斜面上に円柱M,Rを描き,重心の落下高さhを示す.摩擦の向きは描かない. 傾きθの斜面上に円柱M,Rを描き,重心の落下高さhを示す.摩擦の向きは描かない.
解答を見る

考え方 斜面下向きの並進と,斜面を下る回転を正にとる.摩擦力は回転を増すために斜面上向きに働くと仮定し,符号を確かめる.

  1. Ma=Mgsin⁡θ−f,(MR2/2)α=fR,a=Rα なので f=Ma/2.したがって a=2gsin⁡θ/3,f=Mgsin⁡θ/3.正の値なので仮定した向きでよい.重力と垂直抗力は重心のまわりのトルクを持たない.

  2. N=Mgcos⁡θ と f≤μN より μmin=tan⁡θ/3.エネルギー保存は Mgh=12Mv2+12(MR2/2)(v/R)2=3Mv2/4 なので v=4gh/3.摩擦係数が最小値未満なら滑りが生じ,この解答の束縛条件は使えない.また摩擦が働いていても,静止した斜面上の接点の速度は0なので,摩擦力による全仕事は0である.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

質量 M,半径 R の一様な球と細い輪を,同じ速さ v0 で同じ斜面へ滑らずに転がり上がらせる.始めの角速度はともに v0/R.静止摩擦は十分で,転がり抵抗はない.

  1. 各物体の重心が上がる最大高さを求めよ.

  2. 上昇中の摩擦力の向きを説明し,最高点で回転だけが残らない理由を述べよ.

上り斜面に入る球と輪を別々の小図に描き,どちらにも斜面上向きの初速度v₀を示す. 上り斜面に入る球と輪を別々の小図に描き,どちらにも斜面上向きの初速度v₀を示す.
解答を見る

考え方 同じ重心速度でも回転エネルギーは形によって違う.滑らない限り並進と回転は同時に止まるため,初めの全運動エネルギーを位置エネルギーに変えられる.

  1. IG=kMR2 とすれば初めのエネルギーは M(1+k)v02/2.よって h=(1+k)v02/(2g).球は k=2/5 なので h球=7v02/(10g),輪は k=1 なので h輪=v02/g.輪のほうが高く上がる.下りの競走で球が速いこととは初期条件が違う.

  2. 摩擦力は斜面上向きである.上昇する回転を減らすトルクを与え,並進の減速と回転の減速を対応させる.摩擦を除けば重力は重心を減速させるが回転を減らせず,接点は斜面下向きに滑ろうとする.最高点でも v=Rω が成立するので,v=0 なら ω=0.その瞬間にも斜面下向きの加速度は残り,続いて転がり下りる.

演習 3

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,半径 R の一様な円柱を粗い水平床に置き,中心に一定の水平右向き力 F>0 を加える.初め静止しており,滑らずに転がるとする.

  1. 重心の加速度と摩擦力を求めよ.

  2. 滑らないための F の条件を静止摩擦係数 μ で表し,中心が距離 s 進む間のエネルギー収支を示せ.

水平床上の円柱と,中心Gに作用する右向きの力Fを描く.摩擦力の向きは示さない. 水平床上の円柱と,中心Gに作用する右向きの力Fを描く.摩擦力の向きは示さない.
解答を見る

考え方 中心に加えた力は重心まわりのトルクを持たない.転がる回転を作るのは床の摩擦力である.

  1. 摩擦を左向きに f とおくと Ma=F−f,(MR2/2)α=fR,a=Rα.よって a=2F/(3M),f=F/3 で,摩擦は左向きである.もし摩擦がなければ中心だけが加速し,円柱は回転を始めずに右へ滑る.摩擦力はその接点の相対運動を抑える向きに働いている.

  2. N=Mg より F/3≤μMg,すなわち F≤3μMg.静止から距離 s 進むと v2=2as=4Fs/(3M).全運動エネルギーは 3Mv2/4=Fs となり,外力 F の仕事に等しい.並進には (F−f)s=2Fs/3,回転には fRθ=Fs/3 が配分される.摩擦による並進と回転への寄与は互いに相殺し,摩擦力の全仕事は0となる.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,半径 R の一様な円柱を,回転させずに右向きの速さ v0 で粗い水平床へ置く.動摩擦係数は μ′>0,IG=MR2/2 とする.空気抵抗と転がり抵抗はない.

  1. 滑りが止まるまでの時間と,そのときの重心の速さを求めよ.

  2. 失われた力学的エネルギーを求め,滑りが止まった後の摩擦力を答えよ.

床に置かれた円柱の初速度v₀と初期角速度ω₀=0を示す.接点と中心Gを明示する. 床に置かれた円柱の初速度v₀と初期角速度ω₀=0を示す.接点と中心Gを明示する.
解答を見る

考え方 滑っている間は v=Rω を使えない.並進と回転を別々に解き,接点の相対速度が0になる時刻を求める.時計回りの角速度を正にする.

  1. 摩擦は左向きに μ′Mg なので v=v0−μ′gt,ω=2μ′gt/R.接点の速度は v−Rω=v0−3μ′gt で,ts=v0/(3μ′g) に0になる.そのとき vs=2v0/3,ωs=2v0/(3R).接点の速度はこの時刻まで正であり,摩擦の向きを途中で変える必要はない.

  2. 初めは K0=Mv02/2,最後は Ks=3Mvs2/4=Mv02/3.したがって損失は Mv02/6.摩擦係数は滑る時間を変えるが,この損失には現れない.滑りが止まった後は水平外力がなく,Ma=−f,Iα=fR,a=Rα を同時に満たすのは a=f=0 である.したがって一定速度で転がり続け,摩擦力は0となる.

ポイント 教える人へ

  • 滑りがある区間とない区間を,接点の相対速度で区切らせる.

  • 上り斜面でも摩擦が上向きになる理由を,回転の減速から説明させる.

  • 摩擦の全仕事と,並進エネルギーだけの変化を混同させない.

  • 転がっていることだけを根拠に,摩擦力が必ず存在すると考えさせない.

16第8章の章末問題

力のつり合い,並進と回転の運動方程式,保存則を組み合わせ,車輪や質量分布,滑りと転がりの問題に取り組みます.未知量と拘束条件を整理し,接点の相対速度と支持力を調べて,運動の切替条件を確かめてください.

演習 1

オリジナル ★★☆☆☆

同じ速さ v=6.0ms−1 で走る自転車の車輪を比べる.車輪Aは半径 R=0.34m,質量 M=1.2kg,車輪Bは R=0.20m,M=0.90kg である.質量の割合 f が薄いリムに,残りが半径 a=0.030m の一様な円板状ハブに集まり,スポークの質量は無視する.両輪とも 0.70≤f≤0.90 とする.

大小の車輪と,リム半径R,ハブ半径a,進行速度vを示す. 大小の車輪と,リム半径R,ハブ半径a,進行速度vを示す.
  1. 滑らずに転がる車輪の,車軸まわりの角運動量を求めよ.

  2. A,Bそれぞれの角運動量の範囲を数値で評価し,小径車輪は角速度が大きいから角運動量も大きい,という説明を検討せよ.

解答を見る

考え方 質量の位置から慣性モーメントを求め,転がりの条件で角速度を消す.

  1. I=fMR2+(1−f)Ma2/2,ω=v/R より,

L=Mv(fR+(1−f)a22R).

これは重心を通る車軸まわりの値であり,道路上の任意の原点まわりの角運動量ではない.

  1. R>a なので L は f とともに増える.Aは 1.7〜2.2kgm2s−1,Bは 0.76〜0.97kgm2s−1 である.Bの角速度は 30rads−1,Aは約 18rads−1 だが,慣性モーメントの減少の方が効く.f=1 なら L=MRv となり,次元も質量×長さ²÷時間で正しい.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

質量 M,長さ l の一様な細い棒の上端Oを水平軸で支え,下端に質量 m の小球を固定する.小球の大きさは無視でき,棒は鉛直面内で摩擦なく回る.

  1. 鉛直下向きの安定位置のまわりの微小振動の周期を求めよ.

  2. 棒を水平にして静かに放したとき,鉛直下向きを通過する角速度を求めよ.

Oを支点とする棒M,lと下端の小球m.水平の初期位置を破線,鉛直下向きの位置を実線で示す. Oを支点とする棒M,lと下端の小球m.水平の初期位置を破線,鉛直下向きの位置を実線で示す.
解答を見る

考え方 慣性モーメントと重力のモーメントを,棒と小球についてそれぞれ足す.小球を付けた系の重心を新しく計算しなくてもよい.

  1. 軸のまわりの I=(M/3+m)l2.鉛直からの角を θ とすると Iθ¨=−(M/2+m)glsin⁡θ.微小角で線形化して T=2π(M/3+m)l/{(M/2+m)g}.m→0 では一様棒,m/M→∞ では長さ l の単振り子の周期へ近づく.

  2. 棒の重心は l/2,小球は l 下がる.したがって (M/2+m)gl=Iω2/2 より ω=2(M/2+m)g/{(M/3+m)l}.この計算は大角度でも成り立ち,微小振動の近似を使っていない.軸の反力の作用点は動かず,仕事は0である.

演習 3

オリジナル ★★★☆☆

滑らかな水平面上で,質量 m の小球を長さ r の軽い糸で固定点Oにつなぎ,速さ v0 で円運動させる.糸の破断張力は T∗ で,初め mv02/r<T∗ である.小球に常に接線方向へ一定の力 F>0 を加える.

  1. 破断までの時間と回転角を求めよ.

  2. 破断までに力 F がした仕事を求め,運動エネルギーの変化と比べよ.

Oを中心とする半径rの円,小球m,接線方向の力Fと初速度v₀を描く. Oを中心とする半径rの円,小球m,接線方向の力Fと初速度v₀を描く.
解答を見る

考え方 接線方向の力が角運動量を増し,増した速さに応じて糸の張力も増える.糸は半径方向なので接線方向の運動を妨げない.

  1. d(mrv)dt=rF から v=v0+Ft/m.半径方向では T=mv2/r なので,破断時の速さは v∗=T∗r/m.よって t∗=m(v∗−v0)/F.回転角は θ∗=(v0+v∗)t∗/(2r)=m(v∗2−v02)/(2Fr) である.与えられた初期条件により時間と角度は正になる.

  2. 力は移動方向に沿うので W=Frθ∗=m(v∗2−v02)/2.運動エネルギーの増加と一致する.破断前の張力は変位に垂直で仕事をしない.破断した後は円軌道の拘束が消えるので,この式をそのまま使って円運動を延長してはいけない.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,長さ l の一様なはしごを,滑らかな壁に床と角 θ をなして立てかける.床の静止摩擦係数は μ.質量 2M の人が下端から距離 s の位置に立つ.0<θ<π/2 とする.

  1. 床と壁から受ける力を求めよ.

  2. 許される s の範囲を求め,人が下端にいても立てかけられない条件,上端まで登れる条件を分けて述べよ.

壁と床にはしごを立てかけ,下端Aからsの位置に人2Mを置く.全長lと角θを示す. 壁と床にはしごを立てかけ,下端Aからsの位置に人2Mを置く.全長lと角θを示す.
解答を見る

考え方 下端Aのまわりでモーメントをとり,必要な摩擦力を求めた後に最大静止摩擦力と比較する.

  1. 床の垂直抗力は N1=3Mg.壁の力を N2 とすると,N2lsin⁡θ=Mg(l/2)cos⁡θ+2Mgscos⁡θ だから N2=Mg(1/2+2s/l)cot⁡θ.床の摩擦力は壁へ向かい,大きさ f=N2 である.

  2. f≤3μMg より s≤l(3μtan⁡θ−1/2)/2.これと 0≤s≤l の共通範囲が答えである.μtan⁡θ<1/6 なら下端でも不可能,1/6≤μtan⁡θ<5/6 なら右辺が登れる限界,μtan⁡θ≥5/6 なら上端まで可能である.等号の状態は滑り出す直前の限界を含む.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

半径 R,慣性モーメント I の水平な円板が,鉛直固定軸のまわりに角速度 ω0>0 で回っている.質量 m の小さな粘土を円板の縁へ真上から落とし,付着させる.衝突前の粘土の水平速度は0である.軸の摩擦はない.

  1. 付着直後の角速度を求めよ.

  2. 水平運動と回転に関する運動エネルギーの損失を求めよ.鉛直方向の衝突損失は数えない.

回転する水平円板を上から見た図と,縁へ鉛直に落ちる粘土mの側面小図を示す. 回転する水平円板を上から見た図と,縁へ鉛直に落ちる粘土mの側面小図を示す.
解答を見る

考え方 保存するのは固定軸方向の角運動量である.粘土は付着後に半径 R で回るため,慣性モーメントに mR2 が加わる.

  1. 軸の反力と鉛直力は軸まわりのトルクを与えない.したがって Iω0=(I+mR2)ω より ω=Iω0/(I+mR2).軸には外力の力積が働くので,全水平運動量の保存を仮定する必要はない.

  2. 初めの対象エネルギーは Iω02/2,最後は (I+mR2)ω2/2.差は Q=ImR2ω02/{2(I+mR2)}>0 である.付着の過程は非弾性であり,角運動量が保存しても運動エネルギーは保存しない.落下高さが与えられていないため,鉛直運動の損失まで含む総損失は決められない.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

半径 R,質量 M の回転対称な車輪について IG=kMR2 とする.静止から角 θ の斜面を滑らずに転がし,斜面に沿う距離 s を進む時間が t と測定された.

  1. k を s,t,θ,g で表せ.

  2. 質量がすべて軸から距離 R 以下にある場合,測定値が満たすべき範囲と,必要な静止摩擦係数を求めよ.

傾きθの斜面に車輪M,Rを描き,静止から測る走行距離sを寸法線で示す. 傾きθの斜面に車輪M,Rを描き,静止から測る走行距離sを寸法線で示す.
解答を見る

考え方 加速度は a=gsin⁡θ/(1+k) で一定である.測定から a を決め,次に k を逆算する.

  1. s=at2/2 と合わせて k=gt2sin⁡θ/(2s)−1.質量と半径の絶対値を知らなくても,質量分布を表す無次元量 k が求まる.

  2. 0≤IG≤MR2 より 0≤k≤1.したがって 2s/(gsin⁡θ)≤t2≤4s/(gsin⁡θ).下限は質量が軸に集中する理想的な極限である.必要な摩擦は f=kMgsin⁡θ/(1+k),N=Mgcos⁡θ より μ≥{k/(1+k)}tan⁡θ.測定が範囲外なら,滑り,転がり抵抗,初速度などの仮定を見直すべきであり,負の k を物性として採用してはいけない.

演習 7

東京大 2002 前期(改題) ★★★☆☆

長さ L=1.0m の軽い不透明な管に,質量 m と 3m の小球が固定されている.左端Aからの位置を x1<x2 とする.水平な管を両端の支持具で支え,左右の支持具を互いに近づける.管の水平移動は無視でき,滑っている支持具の動摩擦力が,止まっている支持具の最大静止摩擦力に達した瞬間に,滑る側が交代する模型を使う.静止摩擦係数を μ,動摩擦係数を μ′ とする.

右支持具が最初に止まったCについて AC=d1=0.90m,続いて左支持具が止まったDについて DC=d2=0.54m であった.次にAを摩擦のない固定軸にし,管を鉛直上向きからごくわずかに傾けて静かに放すと,鉛直下向きでBの速さが v=215ms−1 であった.g=9.8ms−2 とする.

水平な管のA,D,重心G,C,Bと支持具,およびAを軸に回す実験を示す. 水平な管のA,D,重心G,C,Bと支持具,およびAを軸に回す実験を示す.
  1. q=μ′/μ と重心位置 b を測定距離から求めよ.

  2. Aまわりの慣性モーメントを全質量で割った量 S=IA/(4m) を求め,小球の位置を復元せよ.

解答を見る

考え方 支持具の交代は摩擦力の比,落下回転は質量分布の2乗平均を測っている.

  1. 最初の交代時に μNA=μ′NC で,モーメントのつり合いから NA/NC=(d1−b)/b である.したがって d1=(1+q)b.次の交代時には NC/ND=q だから,C−G=d1−b=qd2/(1+q).両式より

q=d2d1=0.60,b=d12d1+d2=0.5625m.

後の復元で丸め誤差を増やさないよう,ここでは桁を残した.

  1. 重心の落下距離は 2b なので 4mg(2b)=IA(v/L)2/2.よって S=4gbL2/v2=0.3675m2.x1+3x2=4b と x12+3x22=4S を使い,δ=x2−x1>0 とおけば,

S−b2=316δ2,x1=b−34δ,x2=b+14δ.

計算すると δ=0.5220…m,x1=0.17m,x2=0.69m となる.ともに管内にあり,S≥b2 も満たす.S=b2 の極限では2球が重心に重なる.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

半径 R,質量 M の一様な球殻状ステーションが,鉛直な z 軸まわりに角速度 Ω で回っている.球殻の慣性モーメントは I=2MR2/3 である.外力のトルクを無視できる短時間に,北緯 λ の地点から小荷物を東向きに射出する.射出装置が荷物に与える追加の力積の大きさを J とし,その反作用を球殻が受ける.荷物の質量と射出前の慣性モーメントへの寄与は無視する.射出地点は xz 面内,東向きは +y である.

球殻の子午面と緯度λ,射出地点の位置ベクトル,紙面に垂直な東向きの力積を示す. 球殻の子午面と緯度λ,射出地点の位置ベクトル,紙面に垂直な東向きの力積を示す.
  1. 射出直後の球殻の角運動量の x,z 成分と,回転軸の傾き β を求めよ.IΩ>RJcos⁡λ とする.

  2. M=2.0×104kg,R=8.0m,Ω=0.20rads−1,J=100kgms−1,λ=60∘ で評価し,赤道と北極から射出する場合と比較せよ.

解答を見る

考え方 追加の角運動量は位置と力積の外積である.球殻ではどの軸でも慣性モーメントが等しく,角運動量と回転軸が平行になる.

  1. r=R(cos⁡λ,0,sin⁡λ),荷物への力積は (0,J,0) なので,球殻への角力積は (RJsin⁡λ,0,−RJcos⁡λ).したがって

Lx=RJsin⁡λ,Lz=IΩ−RJcos⁡λ,tan⁡β=RJsin⁡λIΩ−RJcos⁡λ.
  1. I=8.53…×105kgm2,β=4.1×10−3rad=0.23∘.赤道では傾きは0で自転が遅くなる.北極では tan⁡β=RJ/(IΩ),β=0.27∘ となる.J→0 なら傾きも0であり,正接の分子・分母はいずれも角運動量の次元をもつ.

演習 9

オリジナル ★★★☆☆

車体の質量を M,前後の車軸間隔を d,重心をその中央の地上高 h に置く.前進中に一定の大きさ a で減速し,車体の上下運動と傾きの過渡的な振動が収まった状態を考える.前後のサスペンションのばね定数の合計はそれぞれ kf,kr で,車輪の質量は無視する.傾きは小さく,重心位置の変化は荷重計算で無視する.

前進する車体の重心高h,車軸間隔d,前後ばねと路面からの力を側面図に示す. 前進する車体の重心高h,車軸間隔d,前後ばねと路面からの力を側面図に示す.
  1. 地上の慣性系で並進と回転の式を立て,前後の荷重 Nf,Nr を求めよ.

  2. 制動前からの前下がり角の増分 Δθ と,後輪が浮かない条件を求めよ.M=900kg,d=2.4m,h=0.48m,a=3.0ms−2,kf=3.6×104Nm−1,kr=2.4×104Nm−1,g=9.8ms−2 で評価せよ.

解答を見る

考え方 水平力はつり合っていない.重心の加速度と,重心まわりの角加速度0を区別する.

  1. 路面の制動力の合計は −Ma,鉛直方向は Nf+Nr=Mg.重心まわりでは (d/2)(Nf−Nr)=Mah だから,

Nf=Mg2+Mahd,Nr=Mg2−Mahd.
  1. 荷重増分 ΔN=Mah/d により,前は ΔN/kf 沈み,後ろは ΔN/kr 上がる.したがって

Δθ=Mahd2(1kf+1kr),a≤gd2h.

数値は ΔN=540N,Nf=4.95×103N,Nr=3.87×103N,Δθ=0.016rad(約 0.90∘).浮き上がりの閾値は 24.5ms−2 で,今回の荷重は正である.実際にはこれより先にタイヤが滑ることもある.kf,kr→∞ なら傾きは0でも荷重移動は残る.

演習 10

オリジナル ★★★☆☆

摩擦なく鉛直軸まわりに回る台(慣性モーメント I0)に,同軸の円板(慣性モーメント I)をねじりばねで取り付ける.円板と台の相対角を θ とすると,円板へのトルクは −κθ である.全体の角運動量は初め0で,外力のトルクはない.

台と円板の絶対角α,β,両者の差θを上から見て示す. 台と円板の絶対角α,β,両者の差θを上から見て示す.
  1. 円板と台の絶対角を α,β として,相対角 θ=α−β の運動方程式と周期を求めよ.

  2. 台を固定した周期を T0=1.20s,I0=24I としたとき,自由な台での周期と,固定台用の目盛りで実時間1時間を測った表示を求めよ.

解答を見る

考え方 2つの回転の運動方程式を引き,相対角の方程式を作る.

  1. Iα¨=−κθ,I0β¨=+κθ より

θ¨=−κ(1I+1I0)θ,T=2πII0κ(I+I0).

また Iα˙+I0β˙=0 で,台も逆向きに動くため相対角は速く戻る.

  1. T/T0=24/25,T=1.18s.表示は周期の個数に比例するので,3600T0/T=3674…s,約74秒進む.I0→∞ なら T→T0.κ の次元はトルクであり,I/κ は時間²になる.

演習 11

オリジナル ★★★☆☆

人とブランコを,支点からの距離を変えられる質点で近似する.初め距離 l,小さな角振幅 θ0 で揺れている.最下点で距離を瞬時に s=l−h へ縮め,次の折返点で l に戻する.操作中の重力の角力積は無視し,操作終了時の半径方向速度は0とする.

最下点でのlからsへの短縮と,折返点での復元を,支点を共通にして示す. 最下点でのlからsへの短縮と,折返点での復元を,支点を共通にして示す.
  1. 一連の操作後の角振幅を求めよ.

  2. 逆に,初め距離 s で最下点で l へ伸ばし,折返点で s へ戻す場合を比較せよ.l=2.0m,h=0.20m,θ0=6.0∘ として数値を求めよ.

解答を見る

考え方 操作中は角運動量,長さ一定の区間は力学的エネルギーを使う.操作する人の仕事があるので,全行程でエネルギーを保存させない.

  1. 最下点で l2ω−=s2ω+.小振動では ω−=g/lθ0,短縮後の振幅は ω+s/g だから,

θ1=(ls)3/2θ0.

折返点では角速度が0なので,半径方向の復元で角度は変わらない.有限角なら 1−cos⁡θ1=(l/s)3(1−cos⁡θ0) で小角近似を点検できる.

  1. 逆操作では θ1=(s/l)3/2θ0.倍率はそれぞれ 1.171…,0.8538…,角振幅は 7.0∘,5.1∘.h→0 ならどちらも倍率1で,倍率が無次元であることも確かめられる.

演習 12

オリジナル ★★★☆☆

半径 R,質量 M,車軸まわりの慣性モーメント I=kMR2 の車輪を粗い水平面に置き,右向きの初速 v0>0 と,右向きの転がりとは逆向きの角速度の大きさ Ω0>0 を与える.動摩擦係数は μ′ で,車輪は鉛直面内に保たれ,転がり抵抗はない.角速度 ω の正は右向きに転がる回転とする.

右へ動く車輪と逆回転,接点の滑り,左向きの摩擦力を示す. 右へ動く車輪と逆回転,接点の滑り,左向きの摩擦力を示す.
  1. 滑り停止時刻とそのときの速度を求め,前進・静止・後退の条件を分類せよ.

  2. k=0.50,R=0.20m,v0=1.0ms−1,Ω0=15rads−1,μ′=0.20,g=9.8ms−2 で評価せよ.

解答を見る

考え方 摩擦の向きは重心速度ではなく,接点の速度 u=v−Rω で決まる.

  1. 初め u0=v0+RΩ0>0 なので摩擦は左向き.滑り中は v˙=−μ′g,ω˙=μ′g/(kR) である.よって

ts=k(v0+RΩ0)(1+k)μ′g,vs=v0−kRΩ01+k,ωs=vsR.

kRΩ0<v0 なら前進,等しければ静止,大きければ後退する.重心が止まっても接点が滑る間は摩擦の向きは変わらない.

  1. ts=0.68s,vs=−0.33ms−1,ωs=−1.7rads−1 で後退する.失われるエネルギーは Q=Mk(v0+RΩ0)2/[2(1+k)]≥0.速度の結果に μ′ がないのは,摩擦力が弱いほど長く作用するためである.ただし μ′=0 では滑りは止まらない.

演習 13

オリジナル ★★★☆☆

水平面で静止する半径 R,質量 M,慣性モーメント I=kMR2 の物体に,中心より高さ b の位置で右向きの水平力積 J を与える.打撃中の床からの水平力積は無視する.一様な球では k=2/5,一様な円柱では k=1/2 である.

球の中心から高さbの打点へ水平力積Jを加える様子を示す. 球の中心から高さbの打点へ水平力積Jを加える様子を示す.
  1. 打撃直後に滑らず転がる打点を,球と円柱について求めよ.

  2. その打点での並進・回転の運動エネルギーを求め,M=0.60kg,R=0.10m,J=0.90kgms−1 で両者を比較せよ.

解答を見る

考え方 並進への力積は J,中心まわりの角力積は Jb である.

  1. v=J/M,ω=Jb/I より v=Rω は b=kR.球は中心の 0.040m 上,円柱は 0.050m 上である.いずれも表面上で実現できる高さである.

  2. Ktr=J2/(2M),Krot=J2b2/(2I).指定の打点では Krot=kJ2/(2M) となる.v=1.5ms−1,ω=15rads−1,並進エネルギーは両者とも 0.68J,回転エネルギーは球 0.27J,円柱 0.34J.同じ力積でも仕事は同じとは限らない.b=0 なら回転エネルギーは0であり,J2/M の次元はエネルギーである.

演習 14

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,1辺 a の一様な正方形板を,水平面内で動かす.対角の頂点AとBをそれぞれ水平な直線レールと鉛直な直線レールにはめる.ある瞬間,Aは (0,0),Bは (a,a) にあり,Aは右向きの一定速度 u>0 で駆動される.Bのレールは x=a,Aのレールは y=0 である.Gまわりの慣性モーメントは IG=Ma2/6 とする.

  1. この瞬間のBとGの速度,板の角速度を求めよ.

  2. Bの加速度と板の角加速度を求めよ.

  3. 板の全運動エネルギーを求めよ.Bの速度を u と得ても,Bの加速度を0とできない理由を説明せよ.

2本のレールに拘束された正方形板を示す模式図. 2本のレールに拘束された正方形板を示す模式図.
解答を見る

考え方 2点の速度と加速度を,Aを基準にした剛体の式で関係づける.角速度は反時計回りを正とする.

  1. Bの速度を (0,w) とすると (0,w)=(u,0)+ω(−a,a).したがって ω=u/a,w=u.中点Gは vG=(u/2,u/2).瞬間回転中心は (0,a) で,A,Bの速度の垂線の交点にもなる.

  2. Aの加速度は0.Bの x 加速度もレールのため0だから 0=−αa−ω2a,α=−u2/a2.y 成分は aB,y=αa−ω2a=−2u2/a.Bは上へ動いているが,下向きに加速する.

  3. VG2=u2/2 より K=MVG2/2+IGω2/2=Mu2/4+Mu2/12=Mu2/3.Bの速さがAの速さに等しいのは,ABが45°をなすこの瞬間だけである.次の瞬間には配置が変わり,同じ等式を微分できない.u2/a は加速度,Mu2 はエネルギーの次元である.u→0 では速度,加速度,エネルギーがすべて0へ近づく.

17第8章の発展問題

★4・★5の発展問題で,動く支持点,衝突,歳差や回転する装置を扱います.並進と回転,衝突中と衝突の間を分けて使える保存則を選び,得られた解が接触条件と近似の範囲を満たすかまで調べてください.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

質量 M,半径 R の一様な円柱が粗い水平床を右向きに速さ v0 で滑らずに転がり,滑らかな鉛直壁に正面衝突する.壁との反発係数は 0≤e≤1.衝突中の床の水平力積は無視でき,壁の力積は中心を通る.衝突後の床との動摩擦係数は μ′>0 とする.

  1. 衝突直後の重心速度と角速度を求めよ.

  2. 壁から離れた後に再衝突が起きないと仮定して,滑りが止まるまでの時間と速度を求めよ.この仮定が滑り終了まで成り立つ範囲と,再衝突の有無を判定せよ.

水平床を右へ転がる円柱と右側の鉛直壁.衝突前のv₀,時計回りのω₀を描き,衝突後の向きは示さない. 水平床を右へ転がる円柱と右側の鉛直壁.衝突前のv₀,時計回りのω₀を描き,衝突後の向きは示さない.
解答を見る

考え方 壁は並進速度を反転させるが,重心まわりの角運動量を変えない.衝突直後に転がり条件を課してはいけない.

  1. 右向きと時計回りを正とする.反発係数より v(0)=−ev0.壁の力積のトルクは0なので ω(0)=v0/R.接点の速度は v−Rω=−(1+e)v0<0 であり,床の摩擦力は右向きである.

  2. 滑り中は v=−ev0+μ′gt,ω=v0/R−2μ′gt/R.したがって ts=(1+e)v0/(3μ′g),vs=(1−2e)v0/3,ωs=vs/R.e>1/2 なら左へ転がり去り,e=1/2 なら停止する.0<e<1/2 なら最終的には右へ戻るが,再衝突が滑り終了前かも調べる必要がある.壁からの変位は x=−ev0t+μ′gt2/2 で,帰着時刻は tr=2ev0/(μ′g).tr<ts は e<1/5 に相当する.よって 0<e<1/5 では上の ts,vs は壁がなければ得る値であり,実際にはその前に再衝突する.e=1/5 は滑り終了と帰着が同時,1/5<e<1/2 は転がりに移ってから再衝突する.e=0 では壁から離れず,単独の自由な滑り区間は存在しない.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

質量 M,外半径 R,巻き芯の半径 r<R,慣性モーメント I=kMR2 の糸巻きを粗い水平床に置く.糸は巻き芯の下側から接線方向に出て,右斜め上へ水平と角 β(0≤β<π/2) をなす一定の力 F で引く.初め静止し,床から離れず滑らないとする.

  1. 重心の右向き加速度と,右向きを正とした摩擦力を求めよ.

  2. 静止摩擦係数 μ で仮定の成立条件を表し,時間 t までに力 F がした仕事を求めよ.

外半径R,芯半径rの糸巻き.芯の右下の接点から右上へ出る糸と角β,力Fを描く. 外半径R,芯半径rの糸巻き.芯の右下の接点から右上へ出る糸と角β,力Fを描く.
解答を見る

考え方 糸の張力は反時計回りのトルク Fr を与える.右へ転がる時計回りを正とし,摩擦の符号を未知として連立する.

  1. Ma=Fcos⁡β+f,Iα=−Fr−fR,a=Rα である.よって

a=F(cos⁡β−r/R)M(1+k),f=−F(kcos⁡β+r/R)1+k

となる.摩擦は左向きだが,加速度は cos⁡β=r/R を境に向きが変わる.境界では重心も回転も加速しない.

  1. N=Mg−Fsin⁡β>0 と F(kcos⁡β+r/R)/(1+k)≤μ(Mg−Fsin⁡β) が条件である.接線方向の糸の速度は,重心の寄与 vcos⁡β と回転の寄与 −rω の和だから u=v(cos⁡β−r/R).v=at を積分して

W=F2(cos⁡β−r/R)2t22M(1+k)

を得る.これは M(1+k)(at)2/2 に等しい.左へ動く場合でも糸端は力の向きへ動き,仕事は非負である.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

質量 M の軸対称なコマが固定支点Oのまわりに回る.Oから重心までの距離は r,対称軸まわりの慣性モーメントは I,自転角速度は ω>0.軸は鉛直上向きから角 φ(0<φ<π/2) を保ってゆっくり歳差し,角運動量は自転による L≈Iωn が支配的とする.n は支点から重心へ向く単位ベクトルである.

  1. 歳差角速度 Ω とその向きを求めよ.

  2. 支点を通り対称軸に垂直な軸の慣性モーメントを I⟂ とする.歳差による角運動量を無視する近似の目安を示し,自転が遅くなったときの式の限界を述べよ.

固定支点Oから傾いたコマの軸,重心G,距離r,鉛直との角φ,自転ωの向きを描く.歳差の向きは示さない. 固定支点Oから傾いたコマの軸,重心G,距離r,鉛直との角φ,自転ωの向きを描く.歳差の向きは示さない.
解答を見る

考え方 一定の傾きを保つ角運動量の先端は,半径 Lsin⁡φ の円を描く.トルクと比べるべき変化率は ΩLsin⁡φ である.

  1. 鉛直上向きの単位ベクトルを ez とすると τ=rn×(−Mgez)=Mgrez×n.一方,正の鉛直軸まわりの歳差では dLdt=ΩIωez×n.したがって Ω=Mgr/(Iω).上から見て反時計回りである.大きさだけで計算しても,両辺の sin⁡φ が消える.

  2. 歳差による対称軸に垂直な角速度は Ωsin⁡φ 程度である.よって I⟂Ωsin⁡φ/(Iω) が1より十分小さいことが目安になる.角度によらず十分な条件は I⟂Mgr/(I2ω2) が1より十分小さいことである.自転が遅くなるとこの比が大きくなり,角運動量を対称軸方向だけに置く近似が破れる.Ω∝1/ω を ω→0 まで延長してはいけない.また任意の初期条件で傾き一定になるわけではなく,この問題はゆっくりした定常歳差を仮定している.

演習 4

東京大 1998 後期(改題) ★★★★☆

固定された2つのローラーの接点が x=−a,+a にある.薄い一様な長板(質量 M)を水平に載せ,重心を x=A に置いて静かに放する.0<A<a である.左のローラー上面は右向き,右の上面は左向きに,板の最大速さより十分速く動く.動摩擦係数を μ′ とし,板の厚さと接点の高さの差は無視する.板は全過程で両ローラーに届く長さをもつ.

[図:問題9の模式図]

間隔2aのローラーと長板,重心位置x,内向きの表面速度を示す.初期状態で上面速度の向きが分かり,再生するとローラーの回転方向を確認できます.板の軌跡は表示しません.

  1. 接点の垂直抗力を N−,N+ として求め,板の運動 x(t) と角振動数 ω を求めよ.

  2. ωt=ψ,0≤ψ≤π の瞬間に両ローラーを停止・固定する.停止操作は板に水平な力積を与えないとする.その後の滑走距離 s と最終位置 xf を求めよ.

  3. a=0.60m,A=0.18m,μ′=0.15,g=9.8ms−2 として,ψ=π/3 と π/2 を比較せよ.全位相で板が転倒しないことも確かめよ.

解答を見る

考え方 回転しない板でも,抗力の配分にはモーメントの式が必要である.ローラーを止めると,左右逆向きだった摩擦が同じ向きになる.

  1. 鉛直方向の加速度と角加速度は0なので,N−+N+=Mg,重心まわりで (a−x)N+=(a+x)N−.よって

N−=Mg(a−x)2a,N+=Mg(a+x)2a.

ローラーの回転中は Mx¨=μ′N−−μ′N+=−μ′Mgx/a.初期条件は x(0)=A,x˙(0)=0 だから,

ω=μ′ga,x=Acos⁡ωt,x˙=−Aωsin⁡ωt.

摩擦はエネルギーを常に減らすとは限らない.ここではローラーを回す装置が仕事をするため,振幅一定の運動が続く.

  1. 0<ψ<π では板は左向きであり,固定された両接点から右向きの摩擦を受ける.合力は μ′(N−+N+)=μ′Mg なので減速度の大きさは一定である.停止直前の速さ Aωsin⁡ψ から

s=A2ω2sin2⁡ψ2μ′g=A22asin2⁡ψ,xf=Acos⁡ψ−A22asin2⁡ψ.

ψ=0,π では初めから速度0であり,ローラー固定後は水平に動かす力がないためその場に止まる.上式も s=0 を与える.

  1. ω=1.57rads−1,周期は 4.01s.ψ=π/3 では s=0.020m,xf=0.070m.ψ=π/2 では s=0.027m,xf=−0.027m である.滑走距離は中央通過時が最大となる.

支持条件は N±>0,すなわち −a<x<a.c=cos⁡ψ とおくと xf=Ac−A2(1−c2)/(2a) で,dxfdc=A+(A2/a)c>0.したがって −A≤xf≤A,滑走途中も出発位置と最終位置の間にあり,A<a なら支持は失われない.s の次元は長さで,A→0 なら0になる.

演習 5

東京大 2007 後期(改題) ★★★★☆

頂点Oを下にした滑らかな円錐の内面を,高さ z=h と z=3h で切り取る.軸は鉛直,母線と軸の角は α=30∘ である.下端で質点に円周接線方向の速さ u を与える.縁には段差がなく,面の範囲外では重力だけが働く.境界で母線方向の速度が0の場合は,接触を保って折り返す理想的な縁とする.

円錐の断面と上下端h,3h,下端の接線方向初速u,上端の母線方向を示す. 円錐の断面と上下端h,3h,下端の接線方向初速u,上端の母線方向を示す.
  1. 高さ z での水平円運動の速さと抗力を求めよ.

  2. 一般の運動で円周方向速度を vφ,母線方向速度を w とし,それぞれを z,u,h で表せ.下端から落ちず,上端からも出ない u の範囲を求めよ.

  3. 上端から飛び出すときの,接線と速度のなす角 γ および自由飛行の最高点 H を求めよ.h=0.40m,g=9.8ms−2 として,H=4h を実現する u を逆算せよ.

解答を見る

考え方 軸まわりの角運動量とエネルギーを保存させ,母線方向に動ける範囲を調べる.天体運動の知識は必要ない.

  1. 円の半径は r=ztan⁡α.抗力の水平成分と鉛直成分から mv2/r=Ncos⁡α,Nsin⁡α=mg であり,v=gz,N=mg/sin⁡α=2mg となる.

  2. 重力も抗力も鉛直軸まわりのトルクをもたない.したがって mrvφ=mhtan⁡αu,すなわち vφ=hu/z.抗力は仕事をしないので

w2=u2(1−h2z2)−2g(z−h).

下端で母線上向きに加速する条件は u2≥gh.等号なら下端の水平円運動となる.u2<gh なら直ちに下端の外へ向かう.下端以外の折返し高さは w2=0 を因数分解して得る 2gz2−u2z−u2h=0 の正の根である.この根が h 以上 3h 以下になる条件は,

gh≤u≤92gh.

上限では上端に速度の母線成分0で達し,仮定に従い折り返す.途中で面から離れないことも確認する.内向き・上向きの法線方向の運動方程式から

N=m(gsin⁡α+vφ2rcos⁡α)>0.

したがって離脱は縁でのみ起こる.

  1. 上端で vφ=u/3,w2=8u2/9−4gh>0,全速さは u2−4gh.ゆえに

cos⁡γ=u3u2−4gh,H=3h+cos2⁡α2g(89u2−4gh).

母線の鉛直成分が wcos⁡α であることに注意する.H=4h を代入すると u2=15gh/2,u=5.42ms−1.上端到達の閾値 4.20ms−1 を超え,γ=60.8∘,最高点は 1.60m となる.射出後は半径が増して円錐の外へ出るため,最高点まで縁に再衝突しない.上限速度に近づければ w→0,H→3h となり,式の次元も長さで一致する.

演習 6

オリジナル ★★★★☆

軽い鉛直軸に軽い棒を固定し,固定点Oから両側へ距離 l の位置に質量 m の質点を付ける.棒と鉛直軸の角は ϕ で,軸は一定角速度 ω で回る.軸受はOより上に a,下に b 離れている.重力は別のスラスト軸受が受け持つものとし,ここでは2つの軸受の水平力だけを求める.

傾いた棒の両端質点と,鉛直軸上の上下の軸受を示す. 傾いた棒の両端質点と,鉛直軸上の上下の軸受を示す.
  1. 上側質点が +x 側にある瞬間の各質点の水平力と,Oまわりの合トルクを求めよ.

  2. 上下の軸受が軸に及ぼす水平力を求め,m=0.40kg,l=0.30m,ϕ=35∘,ω=12rads−1,a+b=0.50m で評価せよ.

解答を見る

考え方 地上から見た各質点の向心力を足せば,合力0でも偶力が必要なことが分かる.

  1. 上下の質点の x 方向の力はそれぞれ −mlsin⁡ϕω2,+mlsin⁡ϕω2.高さは ±lcos⁡ϕ なので,合トルクは y 方向に

τy=−2ml2ω2sin⁡ϕcos⁡ϕ=−ml2ω2sin⁡2ϕ.
  1. 上下の軸受の x 成分を FA,FB とすると,FA+FB=0,aFA−bFB=τy.よって FA=−ml2ω2sin⁡2ϕ/(a+b),FB=−FA.各力の大きさは 9.7N であり,軸受が受ける力はそれぞれ逆向きである.ϕ=0 でも ϕ=90∘ でもこの偶力は消える.ml2ω2/(a+b) の次元は力になる.

演習 7

オリジナル ★★★★☆

椅子を剛体の枠に置き換える.質量は M,重心まわりの慣性モーメントは IG=Mρ2.倒れる間は床の脚Pを固定軸とし,重心が h 下がると別の脚が床に着く.着地直前の重心のPに対する座標は (b,c) で,時計回りに回っている.着地時にはPの固定が外れ,水平力積はなく,鉛直速度と回転だけが非弾性的な緩衝機構で止まるとする.その後は姿勢を保ち,動摩擦係数 μ′ の床を滑る.

枠の固定脚Pと重心G,着地姿勢での距離b,c,その後の水平滑走を示す. 枠の固定脚Pと重心G,着地姿勢での距離b,c,その後の水平滑走を示す.
  1. 着地直前の角速度と,着地後の水平速度を求めよ.

  2. 着地後の滑走距離を求め,ρ=0.30m,b=0.30m,c=0.40m,h=0.050m,μ′=0.25,g=9.8ms−2 で評価せよ.

解答を見る

考え方 落下中の位置エネルギーは並進だけでなく回転にも移る.着地の損失を経て残った水平運動だけが滑走を決める.

  1. IP=M(ρ2+b2+c2) だから,Mgh=IPω2/2,ω=2gh/(ρ2+b2+c2).重心の水平速度は V=cω.着地時の水平力積が0なので,この成分だけがそのまま残る.

  2. MV2/2=μ′Mgs より

s=hc2μ′(ρ2+b2+c2).

数値は ω=1.7rads−1,V=0.68ms−1,s=0.094m.着地前の水平重心移動は含めていない.s≤h/μ′ であり,h→0 なら0になる.実際の椅子では着地時の水平力積にも依存するため,この距離をそのまま使えるとは限らない.

演習 8

オリジナル ★★★★☆

半径 r,質量 M の薄い輪が,重心の水平軌道半径 R の円に沿い,速さ v で滑らずに転がっている.輪の面は鉛直から円の内側へ角 θ だけ傾き,一定の姿勢で旋回する.R は r より十分大きく,θ は極端に大きくないとする.車軸まわりの自転角速度を v/r,重心まわりの角運動量を大きさ L=Mrv の自転成分だけで近似する.歳差そのものの角運動量は無視する.

旋回する輪を進行方向から見て,内向きの傾きθと接点,重心,軸の向きを示す. 旋回する輪を進行方向から見て,内向きの傾きθと接点,重心,軸の向きを示す.
  1. 地面からの力の鉛直・水平成分を求め,重心まわりのトルクと dLdt を等置して傾きを求めよ.

  2. r=0.15m,R=12m,v=3.0ms−1,g=9.8ms−2 で評価し,R を2倍にした場合と比べよ.

解答を見る

考え方 力の合力が向心加速度を作るだけでなく,そのトルクが自転軸の向きを変える.トルクを0にすると歳差の効果を失う.

  1. 地面の力は上向き Mg,内向き Mv2/R.重心から接点へのベクトルは外向き成分 rsin⁡θ,下向き成分 rcos⁡θ をもつ.角運動量が向きを変える方向を正にとると,トルクは Mgrsin⁡θ−Mrv2cos⁡θ/R となる.角運動量の水平成分 Lcos⁡θ が角速度 v/R で向きを変えるから,

Mgrsin⁡θ−Mrv2Rcos⁡θ=vRMrvcos⁡θ,tan⁡θ=2v2gR.

係数2の一方は重心の円運動,他方は自転角運動量の向きの変化に由来する.

  1. θ=8.7∘,半径を2倍にすれば 4.4∘.r/R=0.0125 で,歳差の角速度と自転角速度の比もこの程度である.R→∞ なら傾きは0に近づく.ここで v は既に転がっている輪の速さであり,滑りながら着地したときの初速からエネルギー保存で求めてはいけない.

演習 9

オリジナル ★★★★☆

高速回転子の自転慣性モーメントは I,自転角速度は一定の ω である.2つの軸受の間隔を d とし,自転軸を含む台を ϕ(t)=ϕ0sin⁡(2πt/T) の角度で揺らする.揺動軸は自転軸に垂直で,回転子の重心を通る.自転以外の角運動量と静的荷重は無視し,ジャイロ効果による軸受の付加荷重だけを考える.

回転子と間隔dの軸受,自転軸に垂直な揺動軸と平行な揺動軸を示す. 回転子と間隔dの軸受,自転軸に垂直な揺動軸と平行な揺動軸を示す.
  1. 軸受が作る偶力のモーメントと,各軸受の付加荷重の最大値を求めよ.

  2. I=0.80kgm2,毎分 2400 回転,d=0.40m,ϕ0=6.0∘,T=4.0s で数値を求めよ.揺動軸を自転軸と平行にした場合も比較せよ.

解答を見る

考え方 一定なのは角運動量の大きさであって,ベクトル全体ではない.

  1. L=Iω(cos⁡ϕ,sin⁡ϕ,0) と置けば,|dLdt|=Iω|ϕ˙|.したがって偶力のモーメントの大きさは τ=Iω|ϕ˙|,各軸受の最大荷重は

Fmax=Iωd2πϕ0T.

最大になるのは台が中央を通る瞬間で,角度の折返点では付加荷重は0になる.

  1. ω=2π(2400/60)=80πrads−1,ϕ0=π/30rad.τmax=33Nm,Fmax=83N.揺動軸が自転軸と平行なら自転角運動量の向きは変わらず,このジャイロ荷重は0である.その場合に自転速度を変えるための駆動トルクは,ここでの付加荷重とは別である.T→∞ なら付加荷重は0で,式の次元は力になる.

演習 10

オリジナル ★★★★☆

鉛直な円筒の内壁を,小さな台車が水平に走る.重心の円軌道半径は R,重心から壁までの距離は b,全質量は M,車輪半径は r である.台車には慣性モーメント I の高速回転子があり,その軸は水平な半径方向を向く.車輪の角速度を v/r,回転子の角速度を kv/r とする.回転の向きは,壁からの上向き摩擦力が作るトルクと,回転子の角運動量の変化が一致する向きに選ぶ.車輪自体と台車の旋回による角運動量は無視する.壁との静止摩擦係数は μ である.

円筒内壁を走る台車の平面図と,重心から壁までb離れた側面図を示す. 円筒内壁を走る台車の平面図と,重心から壁までb離れた側面図を示す.
  1. 水平走行する速さ v と比 k の関係を求めよ.

  2. 滑り落ちないための k の範囲を求めよ.M=12kg,b=0.10m,r=0.050m,I=0.020kgm2,μ=0.50,R=5.0m,g=9.8ms−2 とし,k=1.0 のときの速さと,回転子を増速する倍率 k>1 に許される範囲を求めよ.

解答を見る

考え方 重力を支える摩擦は,重心まわりのトルクも作る.そのトルクが回転子の角運動量を円周方向に曲げる.

  1. 鉛直方向のつり合いから摩擦力は Mg,法線力は向心力 N=Mv2/R.重心まわりのトルクは Mgb である.回転子の角運動量 Ikv/r が角速度 v/R で向きを変えるので,

Mgb=Ikv2rR,v2=MgbrRIk.
  1. Mg≤μMv2/R に代入すると

0<k≤μMbrI=1.5.

k=1.0 では v=12ms−1(丸め前は 12.12…).滑り落ちない最低速度は gR/μ=9.9ms−1 なので条件を満たす.増速するなら 1<k≤1.5.k が大きすぎると姿勢保持に必要な速度が低くなり,摩擦が不足する.この模型では速度を無限に上げられると仮定したため下限が0になったのであり,実機の出力限界を意味しない.Mbr/I は無次元である.

演習 11

オリジナル ★★★★☆

長さ 2a の一様な棒を,水平となす角 ϕ=60∘ で,回転させずに静かに落とする.最初は左端Aが低く,Aが滑らかな水平床と弾性衝突する.その後,右端Bが初めて床に当たる瞬間の棒の角度を −ϕ にしたいとする.衝突時間中の重力の力積は無視するが,衝突と衝突の間には重力が働く.放したときの重心の高さを H0,最初の衝突までの落下距離を h=H0−asin⁡ϕ とする.重心まわりの慣性モーメントは I=Ma2/3 である.

最初に左端Aが当たる姿勢φと,次に右端Bが当たる姿勢−φ,重心の高さの基準を示す. 最初に左端Aが当たる姿勢φと,次に右端Bが当たる姿勢−φ,重心の高さの基準を示す.
  1. 最初の衝突直前の重心の下降速度を u,床の力積を J として,衝突直後の上向き重心速度 V と時計回り角速度 ω を求めよ.

  2. 必要な h,H0 を求め,a=0.30m,g=9.8ms−2 で評価せよ.2度目までに別の接触がないことも確認せよ.

解答を見る

考え方 反発係数1は重心ではなく,衝突する端の鉛直速度に適用する.自由飛行中の重心は放物運動,回転は等角速度である.

  1. MV=J−Mu,Iω=Jacos⁡ϕ.Aの衝突後の上向き速度は V+aωcos⁡ϕ であり,反発条件はこれが u に等しいことである.したがって

J=2Mu1+3cos2⁡ϕ,V=u1−3cos2⁡ϕ1+3cos2⁡ϕ,ω=6ucos⁡ϕa(1+3cos2⁡ϕ).

ϕ=π/3 では V=u/7,ω=12u/(7a).この値を MV2/2+Iω2/2 に代入すると Mu2/2 に戻り,弾性衝突のエネルギー保存も満たす.

  1. 姿勢が +ϕ から −ϕ になる時間は t∗=2ϕ/ω=7πa/(18u).両衝突で重心高は asin⁡ϕ なので,Vt∗−gt∗2/2=0,すなわち t∗=2u/(7g).両式と u2=2gh から

u2=49πga36,h=49πa72,H0=asin⁡π3+49πa72.

数値は u=3.5ms−1,h=0.64m,H0=0.90m,t∗=0.10s.0<t<t∗ では重心が asin⁡ϕ より高く,棒の角度 θ は −ϕ<θ<ϕ なので a|sin⁡θ|≤asin⁡ϕ.したがって棒全体は床より上にあり,Bが次の接点になる.落下距離は a に比例し,次元も長さである.

演習 12

オリジナル ★★★★☆

半径 R の一様な球(I=2MR2/5)を,重心速度0で粗い水平面上に置く.初期角速度は ω0=(0,ω0sin⁡ϕ,ω0cos⁡ϕ) である.z 軸は鉛直上向き,x,y 軸は水平とする.点接触の摩擦だけを考え,接触面積による自転抵抗は無視する.動摩擦係数は μ′ である.

初期回転軸と鉛直の角φ,球の接点,水平・鉛直の角速度成分を示す. 初期回転軸と鉛直の角φ,球の接点,水平・鉛直の角速度成分を示す.
  1. 滑り停止時の速度,角速度の各成分と大きさを求めよ.

  2. R=0.060m,ω0=50rads−1,μ′=0.20,g=9.8ms−2 として,ϕ=30∘ と 60∘ を比較せよ.滑り停止までの時間も求めよ.

解答を見る

考え方 接点の速度を作るのは水平な角速度成分だけである.摩擦のトルクには鉛直成分がない.

  1. 初めの接点速度は −Rω0sin⁡ϕ の x 成分をもつので,摩擦は +x 向き.力積を J とすれば vx=J/M,ωy=ω0sin⁡ϕ−RJ/I,ωz=ω0cos⁡ϕ.停止条件 vx=Rωy から

vx=27Rω0sin⁡ϕ,ωy=27ω0sin⁡ϕ,ωz=ω0cos⁡ϕ,|ω|=ω0449sin2⁡ϕ+cos2⁡ϕ.

ほかの速度成分と ωx は0である.

  1. 30∘ では vx=0.43ms−1,ωy=7.1rads−1,ωz=43rads−1,角速度の大きさは 44rads−1.60∘ ではそれぞれ 0.74ms−1,12rads−1,25rads−1,28rads−1.ts=vx/(μ′g) なので停止時間は 0.22s,0.38s となる.ϕ=0 なら初めから接点は滑らず,球はその場で自転し続ける.垂直成分が残っても点接触での滑りなし条件と矛盾しない.

演習 13

オリジナル ★★★★☆

球が水平床上を速さ v0 で滑らず転がり,鉛直な壁に正面から衝突する.壁へ向かう方向を +x,上向きを +z とし,初期角速度は +y 向きの v0/R である.I=kMR2 とする.衝突中の重力と床の力積を無視し,壁の法線方向の反発係数は1とする.壁との滑り摩擦係数は f.壁の接点の鉛直相対速度が0になった後は接線力積が増えない,接線方向の弾性復元をもたない模型を使う.

壁に正面入射する球と,壁の接点の下向き速度,上向きの摩擦力積を示す. 壁に正面入射する球と,壁の接点の下向き速度,上向きの摩擦力積を示す.
  1. 跳ね返り速度の水平・鉛直成分と,水平からの跳ね上がり角 η を求めよ.

  2. 一様な球 k=2/5,v0=2.0ms−1 について,f=0.080 と 0.25 を比較せよ.薄い球殻 k=2/3 にすると,角度が飽和する摩擦係数はどう変わるか.

解答を見る

考え方 法線方向の力積は反発条件で決まる.接線方向は,滑りが衝突終了まで続く場合と途中で止まる場合を分ける.

  1. 法線方向の力積の大きさは 2Mv0,反発後の水平速度は −v0.上向き力積を P とすると vz=P/M,ωy=v0/R−RP/I.壁の接点の鉛直速度は

uz=vz−Rωy=−v0+PM(1+1k).

これが0になる力積は P∗=Mv0k/(1+k).滑りが続く場合は P=2fMv0 であり,途中で止まれば仮定により P=P∗.よって

vz=v0min(2f,k1+k),tan⁡η=min(2f,k1+k).

飽和の閾値は f∗=k/[2(1+k)] である.法線方向が弾性的でも,接線の滑りによって運動エネルギーは失われる.

  1. 一様な球では f∗=1/7.f=0.080 なら vz=0.32ms−1,η=9.1∘.f=0.25 なら vz=0.57ms−1,η=15.9∘ で飽和する.薄い球殻では f∗=0.20,飽和角は arctan⁡(2/5)=21.8∘ となる.f=0 なら鉛直速度0で正面へ戻る.正接と閾値はともに無次元である.

演習 14

オリジナル ★★★★★

質量 M,長さ l の一様な細い棒を,鉛直上向きから角 θ0(0<θ0<π/2) だけ右へ傾け,静かに放す.Aでは下端を床に固定した自由なちょうつがいで支え,Bでは下端を滑らかな水平床に置くだけとする.棒が水平になる直前まで考える.

  1. Aで角 θ に達したときの角速度を求めよ.

  2. Bで同じ角に達したときの角速度と重心速度を求めよ.

  3. Bで下端が床を離れないことを確かめ,水平になる直前の上端の速さをA,Bで比較せよ.

左に下端固定の棒A,右に滑らかな床へ下端を置いた棒B.鉛直からの初期角θ₀と途中の角θを示す. 左に下端固定の棒A,右に滑らかな床へ下端を置いた棒B.鉛直からの初期角θ₀と途中の角θを示す.
解答を見る

考え方 Aは固定軸回転,Bは重心の並進と重心まわりの回転である.Bの下端を固定軸とみなすと,運動エネルギーを誤る.

  1. c0=cos⁡θ0,c=cos⁡θ とおく.失われた位置エネルギーは Mgl(c0−c)/2.Aでは端のまわりの慣性モーメントが Ml2/3 なので θ˙A2=3g(c0−c)/l となる.

  2. Bには水平外力がなく,初め静止していたので重心の水平速度は常に0である.yG=lcos⁡θ/2 より vGy=−(l/2)sin⁡θθ˙B.全運動エネルギーは Ml2(1+3sin2⁡θ)θ˙B2/24 だから

θ˙B2=12g(c0−c)l(4−3c2),vG=(0,−l2sin⁡θθ˙B)

である.角速度は正の平方根をとる.下端は左へ動き,その速度は −(l/2)cos⁡θθ˙B である.

  1. D=1+3sin2⁡θ とし,(2)のエネルギー式を時間微分すると Dθ¨B+3sin⁡θcos⁡θθ˙B2=6gsin⁡θ/l.これを N−Mg=My¨G に代入すると

N=Mg4+3c2−6c0c(4−3c2)2

となる.分子は 4−3c02+3(c−c0)2>0 なので,接触は維持される.水平直前には両者の角速度が 3gc0/l になるが,上端の速さはAが 3glc0 である.Bの上端の位置は (xG+lsin⁡θ/2,lcos⁡θ) なので,水平直前の鉛直速度は −lθ˙B となり,Bも 3glc0 である.したがって両者の上端の速さは等しい.重心速度と上端速度を混同しないことが比較の要点である.

演習 15

オリジナル ★★★★★

慣性モーメント I の水平円板に,中心Oから外向きの滑らかな直線溝を設ける.円板は鉛直固定軸のまわりに摩擦なく回る.質量 m の小球を半径 a>0 の位置に止め,円板とともに角速度 ω0>0 で回してから,半径方向の留め具だけを外す.溝は b>a まで続く.

  1. 小球が半径 r に来たときの円板の角速度を求めよ.

  2. 半径 b に達する直前の半径方向速度と,溝が小球に及ぼす接線方向の力を求めよ.必要なら,回転する半径に沿って動く質点の加速度の,半径方向成分が r¨−rω2,それに垂直な成分が rω˙+2r˙ω であることを使ってよい.

水平円板を上から見て,Oからの直線溝,初期半径aの小球m,外側の位置b,初期回転ω₀を描く. 水平円板を上から見て,Oからの直線溝,初期半径aの小球m,外側の位置b,初期回転ω₀を描く.
解答を見る

考え方 溝は小球の角運動量を変えるが,円板と小球の全角運動量は保存する.円板の角速度は一定ではない.

  1. 小球の接線速度は rω なので,全角運動量は (I+mr2)ω.初期値を L0=(I+ma2)ω0 とすれば ω=L0/(I+mr2).軸の反力は軸まわりのトルクを持たない.

  2. 半径方向速度を u=r˙ とする.溝の力は接触する両物体間でエネルギーを移すだけなので,系全体では

12mu2+L022(I+mr2)=12(I+ma2)ω02

である.したがって ub=ω0(I+ma2)(b2−a2)/(I+mb2).溝の角を φ,φ˙=ω とする.x=rcos⁡φ,y=rsin⁡φ を2回微分して溝方向へ射影すると,加速度のその成分は r¨−rω2.溝方向には力がないから r¨=rω2,初めは r¨=aω02>0 である.またエネルギー式の右辺から回転の項を引いた値は r>a で正なので,いったん外へ動けば途中で反転せず,外向きの正の根を選ぶ.接線力を回転方向に Q とする.小球だけのOまわりの角運動量は mr2ω なので,トルクの式 ddt(mr2ω)=rQ を積の微分で展開すると m(2rr˙ω+r2ω˙)=rQ,すなわち Q=m(rω˙+2r˙ω) となる.(1)を微分して ω˙=−2mrr˙ω/(I+mr2) を代入すれば Qb=2mIubωb/(I+mb2),ただし ωb=L0/(I+mb2).円板には反対向きのトルク −bQb が働く.

演習 16

オリジナル ★★★★★

質量 M,長さ l の一様棒を上端Oでつり,鉛直下向きに静止させる.質量 m の粘土が右向きに速さ u で飛来し,Oから距離 b(0<b≤l) の位置に付着する.衝突は瞬間的で,重力の力積は無視する.

  1. 直後の角速度と,軸から系への水平力積を求めよ.

  2. 軸の水平力積が0となる b を求めよ.

  3. 付着後の最大振れ角 ϕ<π を決める式と,その範囲内で折り返す条件を求めよ.

上端Oでつった棒M,lと,Oからbの点へ水平速度uで衝突する粘土mを描く. 上端Oでつった棒M,lと,Oからbの点へ水平速度uで衝突する粘土mを描く.
解答を見る

考え方 衝突中はOのまわりの角運動量を保存し,直後の全運動量との差から軸の力積を求める.衝突後の振り上がりにはエネルギー保存を使う.

  1. IO=Ml2/3+mb2 とおくと mub=IOω,つまり ω=mub/IO.直後の棒の重心速度は右向き lω/2,粘土は右向き bω である.したがって軸の右向き力積は Jx=(Ml/2+mb)ω−mu.鉛直速度は衝突前後とも0なので,この近似での軸の鉛直力積は0である.

  2. Jx=0 に代入すると b(Ml/2+mb)=Ml2/3+mb2.粘土に関する項が消え,b=2l/3 を得る.この位置でのみ,軸で支えられた系でも衝突中の全水平運動量が保存する.一般の位置では,軸の力積を落とした運動量保存式は使えない.

  3. 衝突直後のエネルギーは K+=m2u2b2/(2IO).角 ϕ まで上がる位置エネルギーは g(Ml/2+mb)(1−cos⁡ϕ) なので,両者を等置する.有限時間で ϕ<π に折り返す条件は K+<2g(Ml/2+mb) である.等号では理想的には真上へ漸近し,それより大きければ真上を通過する.衝突時の損失は mu2/2−K+ であり,衝突前から振り上がりまで一括してエネルギー保存としてはいけない.

18第8章のまとめ

この章では,並進の運動量・力・質量に対応する角運動量・トルク・慣性モーメントを導入し,質点の回転から,剛体のつり合い,固定軸のまわりの回転,剛体の平面運動,転がりへと進みました.ここで定義と法則を一覧にし,各節の最初の問いに短く答えます.

定義と法則

法則 角運動量とトルク

  • 原点に対する質点の角運動量 L=r×p,トルク(力のモーメント)τ=r×F.外積の大きさは |a×b|=|a||b|sin⁡θ(平行四辺形の面積)で,向きは a から b へ回す右ねじの向きである.

  • 運動方程式から dLdt=τ.トルクが0なら角運動量は保存する.

  • 力が常に原点に向かう(中心力)なら τ=0 で L は一定.面積速度 dAdt=L2m が一定になる(ケプラーの第2法則).

  • 質点系では,内力が質点を結ぶ直線の向きなら内力のトルクは打ち消し合い,全角運動量の変化は外力のトルクだけで決まる.

法則 剛体のつり合い

  • 剛体がつり合う条件は,外力の合力が 0,任意の点のまわりの外力のモーメントの和が0であること.平面でのモーメントは NO=xFy−yFx(反時計回りが正)で,垂直抗力 N とは区別する.

  • 力のモーメントは,力の作用線上で力を動かしても変わらない.大きさが等しく逆向きで作用線が違う2力(偶力)は,合力が0でもモーメントを持つ.

  • 重力は,物体全体では重心に働く1つの力として扱える.

法則 固定軸のまわりの回転

  • 慣性モーメント I=∑miri2=∫r2dm.回転の運動方程式 Iα=τ(α=θ¨).

  • 回転の運動エネルギー K=12Iω2,角運動量 L=Iω.

  • 平行軸の定理 I=IG+Md2.

  • 実体振り子(微小振動)の周期 T=2πIMgd.

法則 剛体の平面運動

  • 剛体の平面運動は,基準点 O′ の並進と,O′ のまわりの回転に分けられる.角速度 ω は基準点の選び方によらない.

  • O′ から点 P へのベクトルを r′,角速度ベクトルを ω=ωez(反時計回りが正)とすると,vP=V+ω×r′,aP=A+αez×r′−ω2r′.ez×(x,y)=(−y,x).

  • 速度が0の点が瞬間回転中心 I.2点の速度に垂直な直線の交点で,各点の速度は I からの線分に垂直で I からの距離に比例する.I は固定軸ではなく,I にある点の加速度は0とは限らない.

法則 転がり

  • 剛体の運動を力で決めるときは,重心の並進 MaG=F外 と,重心のまわりの回転 IGα=τG に分ける.運動エネルギーは 12Mv2+12IGω2.

  • 滑らずに転がる条件は,進む向きと回転の正の向きを合わせて v=Rω,a=Rα.接点は瞬間回転中心で,その速度は0である.

  • 静止した斜面を滑らずに転がる場合,静止摩擦力は接点で仕事をせず,重力以外の仕事や空気抵抗などの散逸を無視すれば,力学的エネルギーが保存する.

  • 支点が固定された軸対称のコマが速く自転し,傾きをほぼ一定に保って遅く歳差するとき,歳差の角速度は Ω≈MgrIω(I は自転軸まわりの慣性モーメント,ω は自転の角速度).

手順

ポイント 剛体の問題を解く手順

  1. 運動の種類を決める.つり合い,固定軸のまわりの回転,平面運動(転がりを含む)のどれかを見分ける.速度の関係だけを問われたら,瞬間回転中心を探す.

  2. 物体に働く力をすべて図に描く.作用点を正しく置くことが,トルクの計算の前提である.

  3. つり合いなら,合力0とモーメント0を立てる.モーメントの中心は,未知の力が多く通る点を選ぶと式が減る.

  4. 回転の運動方程式 Iα=τ では,軸(または重心)を決めて,トルクの符号を回転の向きで統一する.

  5. 滑らずに転がるなら v=Rω,糸がほどけるなら糸の点の速度で結ぶ.滑るなら動摩擦力を使う.

  6. 力が不明のときは,角運動量の保存やエネルギー保存が使えないかを考える.極端な場合(質量が0,I→0 など)で検算する.

主な公式

  • L=r×p,τ=r×F,dLdt=τ

  • Iα=τ,K=12Iω2,I=IG+Md2

  • 慣性モーメント:輪 MR2,円板 12MR2,球 25MR2,棒の中心 112Ml2,棒の端 13Ml2

  • 平面運動:v=V+ω×r′,瞬間回転中心 rI=rO′+ez×Vω

  • 斜面を転がる物体:a=gsin⁡θ1+k(IG=kMR2)

各節の問いへの答え

  • 角運動量とトルク:フィギュアスケートの選手が腕を縮めると,外から回転を妨げるトルクがほぼ無いので L=Iω が保存し,I が小さくなった分だけ ω が大きくなる.質点で半径が半分になれば I∝r2 は 14,角速度は4倍になる.

  • 剛体のつり合い:はしごが滑らない条件は,合力0とモーメント0の連立で決まり,床の摩擦力が最大摩擦力以下であることから,寝かせられる限界の角度が出る.なめらかな壁に立てかけた一様なはしごでは,床との角を θ,床との静止摩擦係数を μ として,tan⁡θ≥12μ のとき滑らない(μ=0.50 なら θ≥45∘).

  • 固定軸のまわりの回転:質量と半径が同じなら,輪 I=MR2,円板 I=12MR2 で,同じトルクなら円板の角加速度が2倍になる.円板のほうが速く回り出す.質量が軸の近くにあるほど回しやすい.

  • 剛体の平面運動:倒れていくはしごの各点は,瞬間回転中心(壁と床の交点 O の向かい側の,長方形の頂点)からの線分に垂直な向きに動く.真ん中の点は O を中心とする半径 l/2 の円弧を描く.

  • 転がり:斜面を転がる順は,球,円板,輪である.a=gsin⁡θ1+k で,k は球が 25,円板が 12,輪が1である.質量や半径には依らない.

この章で使った数学

外積(定義,成分,右ねじ,微分,紙面に垂直なベクトルとの外積で90度回す),瞬間回転中心の作図と座標での計算,2次元のモーメントのスカラー計算,積分による慣性モーメントの計算,束縛条件の微分,速度の分解によるエネルギーの分離がありました.