問いしるべ
参考書

問いから始める物理

公式参考書

問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 12節
  1. 電流と抵抗
  2. 積分で抵抗を求める
  3. 電流と抵抗の演習
  4. 直流回路とキルヒホッフの法則
  5. 直流回路の例題
  6. 直流回路と測定器の演習
  7. コンデンサーの充電と放電
  8. 指数関数的な緩和と片対数グラフ
  9. 充放電と回路の切り替えの演習
  10. 第21章の章末問題
  11. 第21章の発展問題
  12. 第21章のまとめ

第21章  電流と回路

01電流と抵抗

問い

壁のスイッチを入れると,天井の電灯はすぐにつきます.ところが,導線の中の電子は1秒に 0.1mm ほどしか進まないといいます.スイッチから電灯まで数 m あれば,電子がたどり着くには何時間もかかるはずです.電流とは何が流れていることなのでしょうか.そして,なぜ電灯は待たずにつくのでしょうか.

この章では,第20章で止まっていた電荷を動かします.導体の中に電場があると電荷は押されて流れ続け,その流れが電流です.最初の題材で電流と抵抗を電子の運動と電場から説明し,次の題材で回路の決まり(キルヒホッフの法則)を導き,最後の題材でコンデンサーを含む回路の時間変化を扱います.電流が磁場を作ることは第22章,磁場の変化が回路の電圧の決まりを書き換えることは第23章で見ます.各題材の「(発展)」の所は飛ばしても後が読めます.入試の直流回路だけを先に固めたい人は,この題材の本体,次の題材の本体と例題,コンデンサーの題材の順に読んでください.

ポイント 第21章で使う記号

記号

意味

I

電流(単位 A=Cs−1)

j

電流密度(単位 Am−2)

n

動く電荷(電子)の数密度(単位 m−3)

vd

ドリフト速度(電子の平均の速さ)

m, −e

電子の質量と電荷

τ

この題材では平均の衝突時間.コンデンサーの題材では時定数

R

抵抗(単位 Ω=VA−1)

ρ

抵抗率(単位 Ωm)

ρq

電荷密度(この章だけの書き方)

E, r

電池の起電力と内部抵抗

ℓ, S

導線の長さと断面積

α

抵抗の温度係数

第20章の電荷密度 ρ は,この章では抵抗率と紛れないよう ρq と書きます.

考えてみる

電流を「電子が電灯まで走ること」と思うと,問いの数字と合いません.もう1つ困ることがあります.第20章では,導体の中の電場は0でした.電場が0なら電子を押すものが無く,そもそも電流が流れ続けるはずがありません.

鍵は,「導体の中は E=0」が電荷が落ち着いた後の話だったことです.電池が電荷を送り続ける導線では電荷は落ち着かず,中に電場があって電子を押し続けます.

電流と電荷の保存

導線のある断面を,時間 Δt の間に電荷 ΔQ が通るとき,I=ΔQ/Δt を電流といいます.向きは正の電荷が動く向きと決めます.金属で動くのは負の電子なので,電子は電流と逆向きに進みます.

数密度 n の電子が平均の速さ vd で動いているとします.断面積 S の断面を時間 Δt に通るのは,長さ vdΔt の筒の中の電子 nSvdΔt 個なので

I=enSvd,j=IS=envd

です.j は単位面積あたりの電流で,電流の向きを向くベクトル j を電流密度といいます.銅では n=8.5×1028m−3 なので,断面積 1mm2 の導線に 1A を流すと

vd=IenS=11.6×10−19×8.5×1028×1.0×10−6ms−1≈7×10−5ms−1

です.電子の数が途方もなく多いので,ゆっくり動くだけで大きな電流になります.

断面積Sの導線で,断面の右側にある長さv_dΔtの筒の電子がΔtの間に左向きに断面を通る.電流Iは電子と逆の右向き. 断面積Sの導線で,断面の右側にある長さv_dΔtの筒の電子がΔtの間に左向きに断面を通る.電流Iは電子と逆の右向き.

電荷は生まれも消えもしません.閉じた面から出ていく電流は,中の電荷が減る速さに等しくなります.電流が時間によらない定常電流では,どこかに電荷がたまり続けることは無いので,閉じた面から出る電流の和は0です.導線の分かれ目を面で囲めば,入る電流の和と出る電流の和が等しいことになります.これが次の題材のキルヒホッフの第1法則です.

電荷の保存を各点で書く(発展)

第20章でガウスの法則に使ったガウスの定理を,電流密度に使います.小さな体積から出ていく j の流束は,体積あたり ∇⋅j なので,電荷の保存は各点で

∇⋅j=−∂ρq∂t

と書けます.これを連続の式といいます.定常電流では ∇⋅j=0 で,電流の線は湧き出しも吸い込みもありません.

導線の中の電場とオームの法則

導線の中の電場は,導線の表面にわずかにたまった電荷が作ります.電池の正極に近い所ほど表面の電荷が正に寄り,その電荷の分布が,導線が曲がっていても導線に沿う向きの電場を内側に作ります.導線に沿って電場を線積分したものが,2点の間の電圧(電位差)です.一様な導線の両端に電圧 V をかけると,中の電場は E=V/ℓ です.

この電場で電子がどう動くかを,簡単な模型で見積もります.電子は電場で加速されますが,すぐに金属の原子(格子)にぶつかり,向きがばらばらになります.衝突の直後は,電場から得た速度を平均すると0です.衝突から次の衝突までの平均の時間を τ とすると,電子が電場からもらう平均の速度は,加速度 eE/m に時間 τ を掛けた程度で

vd=eEmτ

です(向きは電場と逆).これを j=envd に入れると j=(ne2τ/m)E で,電流密度が電場に比例します.

[図:格子との衝突と電子のドリフト]

初期状態は電場の相対値E=3,時刻t/τ=2.5.格子を結ぶ熱運動の道すじが電場と逆向きに曲がる模式図.電場と時刻を操作すると電子の集団の左向きの流れが増す.再生はt/τ=12で止まる.

法則 オームの法則

多くの導体で,電流密度は電場に比例し

j=1ρE,ρ=mne2τ

である.ρ を抵抗率という.長さ ℓ,断面積 S の一様な導線では V=Eℓ,I=jS から

V=RI,R=ρℓS

で,R を抵抗という.

銅の抵抗率 ρ=1.7×10−8Ωm から衝突時間を逆算すると τ=m/(ne2ρ)≈2.5×10−14s です.この模型は電子の熱運動を古典的に扱っていて,平均の衝突時間の値まで正しく説明するには量子論が要りますが,抵抗率が m/(ne2τ) の形になることは変わりません.

この比例が成り立つのは,vd が熱運動の速さ(金属では 105ms−1 以上)より十分小さく,電場で衝突の様子が変わらない場合です.電場の変わる時間が τ よりずっと長いことも要ります.金属の普通の回路ではどちらも満たされ,破れる例は強い電場をかけた気体や半導体,温度が大きく変わる電球のフィラメントです.

抵抗率と温度

温度が上がると格子の振動が激しくなって τ が短くなるので,金属の抵抗率は増えます.室温付近では,温度変化 θ について1次の近似

ρ=ρ0(1+αθ)

がよく成り立ち,α を温度係数といいます.銅では α≈4×10−3K−1 で,100K 上がると抵抗はおよそ4割増えます.この式は αθ が1よりずっと小さい範囲の近似で,フィラメントのように数千度も変わる所では使えません.一方,半導体では温度が上がると動ける電子の数 n が増えるので,抵抗率は下がります(第29章).

ジュール熱

電場は動く電子に仕事をしますが,電子は衝突のたびにもらったエネルギーを格子に渡すので,平均の速さは増えません.渡されたエネルギーは格子の振動,つまり熱になります.電圧 V の2点の間を電荷 ΔQ が移ると,電場のする仕事は VΔQ なので,単位時間に生じる熱は

公式 ジュール熱

P=IV=I2R=V2R

単位体積あたりでは jE=ρj2.

です.電流を決めて比べれば抵抗の大きい方が,電圧を決めて比べれば小さい方が熱くなります.どちらを固定したかを確かめてください.

電池の起電力と内部抵抗

導線の中の電場は,回路を一周すると元の電位に戻ります.電荷を一周させ続けるには,どこかで電荷を電場に逆らって電位の高い方へ運ぶものが要ります.それが電池で,電池の中では化学反応による力が,電荷を負極から正極へ運びます.単位電荷あたりのこの仕事を起電力 E といいます.

電池の中の物質にも抵抗があり,これを内部抵抗 r といいます.電流 I を取り出すと,内部で rI だけ電圧が下がるので,端子の電圧は

V=E−rI

です.両辺に I を掛けると EI=VI+rI2 で,電池がする仕事が,外へ渡す電力と内部の発熱に分かれます.外に抵抗 R をつなぐと I=E/(R+r) で,外へ渡す電力 RI2=E2R/(R+r)2 は R=r のとき最大の E2/(4r) になります.

点線の箱で囲んだ電池は起電力ℰと内部抵抗rの直列で,箱の2端子に外部抵抗をつなぐ.Vは電池全体の端子間電圧.Vを電流Iに対して描くと,縦軸の切片がℰ,傾きが−rの直線になる. 点線の箱で囲んだ電池は起電力ℰと内部抵抗rの直列で,箱の2端子に外部抵抗をつなぐ.Vは電池全体の端子間電圧.Vを電流Iに対して描くと,縦軸の切片がℰ,傾きが−rの直線になる.

r=0 の電池を理想電圧源といい,どんな電流でも端子電圧が E です.反対に,E と r をともに大きくして E/r を一定に保つと,つなぐ抵抗によらずほぼ一定の電流 E/r が流れます.これを定電流源といいます.実際の電源はこの2つの間にあり,どちらで近似するかはつなぐ抵抗と r の大小で決まります.

問いに戻る

スイッチを入れると,導線の表面の電荷の分布が変わり,それに伴って導線の中の電場が変わります.この変化は電子の歩みとは関係なく,光に近い速さで導線に沿って伝わります(第26章).電場が届いた所では,そこに初めからいた電子がすぐに動き出します.電灯のフィラメントを光らせるのは,フィラメントの中にもともといた電子が電場に押されて格子とぶつかり,熱を生むからです.スイッチの所の電子が電灯まで運ばれる必要はありません.水で満たしたホースの蛇口をひねると,先から水がすぐ出るのと似ています.

この描像では,回路の中の電場は一瞬で整い,その後は定常電流として扱えます.回路の大きさを ℓ,光の速さを c とすると,ℓ/c は数 m の回路で 10−8s 程度です.考える時間がこれよりずっと長い限り,電流は回路のどこでも同時に決まるとしてよく,これを集中定数回路の近似といいます.次の題材のキルヒホッフの法則もこの近似の上に立ち,電流が時間とともに変わる回路での条件はコンデンサーの題材で確かめます.

ポイント ここまでのまとめ

  • 電流は断面を単位時間に通る電荷で,I=enSvd,j=envd.電荷の保存から,定常電流では閉じた面から出る電流の和は0(各点では ∇⋅j=0).

  • 導線の中には表面の電荷が作る電場があり,衝突を繰り返す電子は平均の速さ vd=eEτ/m で流れる.ここから j=E/ρ,ρ=m/(ne2τ),R=ρℓ/S が出る.vd が熱運動よりずっと小さく,温度が変わらない範囲で成り立つ.

  • 金属の抵抗率は温度とともに増え,室温付近では ρ=ρ0(1+αθ).

  • ジュール熱 P=IV=I2R=V2/R は,電場が電子にした仕事が衝突で格子に渡ったもの.

  • 電池は起電力 E と内部抵抗 r で表し,V=E−rI.外へ渡せる電力は E2/(4r) が最大.

  • 問いの答え:流れているのは電子だが,電灯をすぐにつけるのは電子の移動ではなく,光に近い速さで伝わる電場の変化である.電場が届くと,フィラメントの中にもともといた電子が動き出す.

02積分で抵抗を求める

R=ρℓ/S は断面が一様な導線の式です.断面が変わる導体や電流が放射状に広がる導体では,薄い小片の抵抗を足し合わせます.温度係数の式で使う1次の近似も整理します.この節の ρ はすべて抵抗率です.

定理 数学の道具:小片の抵抗を積分で足す

電流が x 方向に流れ,位置 x の断面積が S(x),抵抗率が ρ(x) の導体の抵抗は

R=∫0ℓρ(x)S(x)dx

である.電流が半径 r の方向に広がる場合は,半径 r で電流が通る面の面積を A(r) として R=∫abρA(r)dr である.

導体を x に垂直に厚さ dx の板に切ると,1枚の抵抗は ρdx/S(x) です.定常電流では電荷がたまらないので,どの板にも同じ電流 I が流れ,板は直列です.電圧 V=∫Edx は各板の電圧 Iρdx/S の和なので,V=RI と比べると上の式になります.放射状の場合は薄い殻に切れば同じです.

この式は,各断面の上で電流密度が一様で断面がほぼ等電位だと仮定しています.断面が急に変わると電流の線が曲がって偏るので,断面の差し渡し a の変化の割合 |da/dx| が1よりずっと小さいことが条件です.

断面積S(x)が変わる導体を厚さdxの板に分ける.各板を同じ電流Iが通り,抵抗ρdx/S(x)を直列に足す. 断面積S(x)が変わる導体を厚さdxの板に分ける.各板を同じ電流Iが通り,抵抗ρdx/S(x)を直列に足す.

電流と平行に細い筒に切る場合は,筒が並列で同じ電圧を受けるので,コンダクタンス(抵抗の逆数 1/R)を足します.

練習1 長さ 10m,断面積 0.50mm2 の銅線(ρ=1.7×10−8Ωm)の抵抗を求めよ.

練習2 断面積 S が一様で,抵抗率が ρ(x)=ρ0(1+x/ℓ) と変わる長さ ℓ の棒の抵抗を求めよ.

答え 練習1:R=1.7×10−8×10/(0.50×10−6)Ω=0.34Ω.練習2:R=ρ0S∫0ℓ(1+xℓ)dx=3ρ0ℓ2S.ρ が x の1次式なので,平均の 1.5ρ0 を使った値と一致する.

定理 数学の道具:1次の近似

|x| が1よりずっと小さいとき

(1+x)n≈1+nx,11+x≈1−x

である.省いた項は x2 の程度で,相対誤差もおよそ x2 である.

11+x=1−x+x2−⋯ です.R=R0(1+αθ) に電圧 V をかけたときの電流は I≈VR0(1−αθ) で,どこまで信じてよいかは (αθ)2 で判断します.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

厚さ h の一様な金属の板が,長さ ℓ の台形をしている.幅は左端で w0,右端で 2w0 で,左端からの距離 x に比例して増える.抵抗率は ρ で,左右の端の全体を電極とする.w0/ℓ は十分小さいとする.

  1. 左右の電極の間の抵抗を求めよ.平均の幅 1.5w0 の長方形の板として求めた抵抗と比べよ.

  2. 電流 I を流すとき,単位長さあたりの発熱率が最も大きいのはどこか.左端と右端の比も求めよ.

上から見た厚さh,抵抗率ρの台形の板.左端の幅w_0,右端の幅2w_0,長さℓと左端からの座標xを示す.左右の端の全体が電極である. 上から見た厚さh,抵抗率ρの台形の板.左端の幅w_0,右端の幅2w_0,長さℓと左端からの座標xを示す.左右の端の全体が電極である.
解答を見る

考え方 幅 w(x)=w0(1+x/ℓ),断面積 S(x)=hw(x) として,薄い板を直列に足す.

R=∫0ℓρhw0(1+x/ℓ)dx=ρℓhw0[ln⁡(1+xℓ)]0ℓ=ρℓln⁡2hw0≈0.693ρℓhw0

平均の幅の長方形なら ρℓ1.5hw0≈0.667ρℓhw0 で,約 4 % 小さい.狭い所の抵抗が大きく効くので,幅を平均すると抵抗を小さく見積もる.

  1. 長さ dx の部分の発熱率は I2ρdx/S(x) なので,単位長さあたり I2ρ/(hw(x)).幅が最も狭い左端で最大で,左端と右端の比は 2:1 である.

確かめ:ln⁡2 は 1/2 と 1 の間にあり,一様な幅 2w0 の板と w0 の板の抵抗の間に入る.w0/ℓ が小さくないと電流が幅いっぱいに一様に広がらず,この式は使えない.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

同軸ケーブルは,半径 a の銅の芯線を,内半径 a,外半径 b のポリエチレン(抵抗率 ρ,比誘電率 εr)で包み,その外側を円筒の導体(外部導体)で覆ったものである.長さは ℓ とする.端の効果を無視し,漏れ抵抗と容量を求めるときは,芯線と外部導体をそれぞれ等電位とみなす.

  1. 芯線と外部導体の間に電圧をかけたとき,ポリエチレンを通って漏れる電流に対する抵抗(漏れ抵抗)Rℓ を求めよ.a=0.50mm,b=2.5mm,ℓ=50m,ρ=1.0×1014Ωm のときの値も求めよ.

  2. ケーブルを長くすると,漏れ抵抗と芯線の抵抗はそれぞれどう変わるか.

  3. 芯線と外部導体の間の容量 C は,第20章のガウスの法則から C=2πεrε0ℓln⁡(b/a) である.RℓC を求め,εr=2.3,ε0=8.85×10−12Fm−1 で値を求めよ.

半径aの銅の芯線と,内半径bの外部導体の間をポリエチレンが満たす.青い矢印で芯線から外側へ向かう漏れ電流の向きを示す.緑の破線の同心円は半径r,厚さdrの薄い円筒殻の断面.ケーブルの長さはℓ. 半径aの銅の芯線と,内半径bの外部導体の間をポリエチレンが満たす.青い矢印で芯線から外側へ向かう漏れ電流の向きを示す.緑の破線の同心円は半径r,厚さdrの薄い円筒殻の断面.ケーブルの長さはℓ.
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考え方 漏れ電流は芯線から放射状に流れる.半径 r,厚さ dr の円筒の殻は,電流が通る面の面積が A(r)=2πrℓ で,殻は直列に並ぶ.

Rℓ=∫abρ2πrℓdr=ρ2πℓln⁡ba

数値では ln⁡5≈1.61 なので

Rℓ=1.0×10142π×50×1.61Ω≈5.1×1011Ω
  1. 漏れの道は長さ方向に並列に並ぶので Rℓ∝1/ℓ で,長くすると小さくなる.芯線の抵抗 ρCuℓ/(πa2) は ℓ に比例して大きくなる.電流が長さに沿うか垂直かで逆になる.

RℓC=ρ2πℓln⁡ba×2πεrε0ℓln⁡(b/a)=ρεrε0

で,ケーブルの寸法によらない.数値は 1.0×1014×2.3×8.85×10−12s≈2.0×103s である.

確かめ:ρε0 の単位は Ωm×Fm−1=ΩF=s で時間になる.Rℓ と C に同じ形の積分 ∫dr/r が逆数で入るので,形によらない組み合わせが残った.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

金属の抵抗は,基準の温度からの温度変化 θ について R=R0(1+αθ) で近似できるとする.

  1. 白金の測温抵抗体は 0∘C で R0=100.0Ω,α=3.85×10−3K−1 である.抵抗が 119.4Ω を示したときの温度を求めよ.

  2. この測温抵抗体に 0.100V の一定電圧をかけて電流を読む.(1) の温度での電流を,1/(1+αθ)≈1−αθ で近似した値と,近似しない値で求め,差が何の程度か説明せよ.

  3. 電球のタングステンのフィラメントは,20∘C で 12Ω で,点灯中は 100V で 0.60A が流れる.20∘C を基準として α=4.5×10−3K−1 を使い,点灯中の温度を見積もれ.この見積もりは信頼できるか.

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考え方 1次の式を θ について解く.近似が使えるかは αθ の大きさで決まる.

  1. αθ=R/R0−1=0.194 より θ=0.194/(3.85×10−3)K≈50.4K.温度は約 50.4∘C である.

  2. V/R0=1.00mA なので,近似では 1.00×(1−0.194)mA=0.806mA,近似しないと 1.00/1.194mA=0.838mA.差 0.032mA は V/R0 の約 0.03 倍で,省いた2次の項 (αθ)2=0.038 と同じ程度である.αθ=0.19 は小さいが,3桁の精度が要る測定では1次の近似では足りない.

  3. 点灯中の抵抗は 100/0.60Ω≈167Ω.αθ=167/12−1≈12.9 から θ≈2.9×103K,温度は約 2.9×103∘C となる.しかし αθ≈13 は1よりずっと大きく,室温付近の1次の式を使う根拠が無い.タングステンの抵抗率は高温で直線より速く増えるので,実際の温度はこれより低い.

確かめ:(3) では抵抗が十数倍に変わるので,電球は抵抗一定の素子として扱えない(次の題材で非線形素子として扱う).

ポイント ここまでのまとめ

  • 断面や抵抗率が場所で変わる導体は,電流に垂直な薄い小片に切って R=∫ρdx/S(x) と足す.放射状の流れでは殻に切り,R=∫ρdr/A(r).

  • 直列は抵抗を,並列はコンダクタンスを足す.断面の変化がゆるやかで,断面がほぼ等電位であることが条件.

  • 同軸ケーブルの漏れ抵抗は ρ2πℓln⁡ba で,長さに反比例する.RℓC=ρεrε0 は形によらない.

  • (1+x)n≈1+nx の誤差は x2 の程度.温度係数の式は αθ が1よりずっと小さいときだけ使える.

03電流と抵抗の演習

電荷の流れ,導線内の電場,発熱を結びつけて考えてください.この節の ρ は抵抗率を表し,電荷密度には使いません.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

電子の数密度 n=8.0×1028m−3,断面積 S=2.0×10−6m2,抵抗率 ρ=2.0×10−8Ωm の一様な導線に,右向きに I=3.2A が流れる.電気素量は e=1.6×10−19C とする.

  1. 電流密度と電子のドリフト速度の大きさ・向きを求めよ.

  2. 導線内の電場と,電子が平均して 1.0m 移動する時間を求めよ.

一様な導線の断面積Sと,右向きに流れる電流I = 3.2 Aを示す.数密度nと抵抗率ρは問題で与えられた値である. 一様な導線の断面積Sと,右向きに流れる電流I = 3.2 Aを示す.数密度nと抵抗率ρは問題で与えられた値である.
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考え方
断面を単位時間に通る電荷を数える.負の電荷の移動と電流の向きは逆である.

  1. j=I/S=1.6×106Am−2.時間 dt に断面を通る電子数は nSvddt なので,I=neSvd.よって vd=I/(neS)=1.3×10−4ms−1 で,電子は左へ進む.

  2. E=ρj より電場は右向きで,E=3.2×10−2Vm−1.丸める前の vd=1.25×10−4ms−1 を使うと,時間は 1.0/vd=8.0×103s.平均移動の時間は電場の変化が伝わる時間と異なり,点灯の速さを決めない.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

電池の電流 I と端子電圧 V を測った.計器の影響は補正済みで,起電力 E と内部抵抗 r は一定とする.

I

0.20A

0.50A

0.80A

V

4.50V

4.20V

3.90V

  1. V と I の関係から E,r を決め,中央の測定値も確かめよ.

  2. 電流 0.50A での外部への電力と内部の発熱率を求めよ.両端の電圧の誤差が各 ±0.02V 以内で,電流の誤差を無視すると,両端から求める r の誤差の最大値はいくらか.

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考え方
傾きから内部抵抗,切片から起電力を読む.

  1. V=E−rI だから,r=(4.50−3.90)/(0.80−0.20)=1.0Ω,E=4.50+1.0×0.20=4.70V.中央の予測も 4.70−1.0×0.50=4.20V で一致する.

  2. 外部電力は IV=2.1W,内部発熱率は I2r=0.25W.電圧差の誤差は 0.04V なので,r の誤差は最大 0.04/0.60≈0.07Ω.丸める前に 2.10+0.25=2.35W=EI で収支も合う.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

長さ ℓ,抵抗率 ρ の導体の円形断面の半径は,左端からの距離 x に対して a(1+x/ℓ) である.両端面を電極とし,側面は絶縁する.断面内の電位は一様と近似し,a/ℓ は十分小さいとする.

  1. 抵抗と,定常電流 I を流したときの電場 E(x) を求めよ.

  2. 同じ電圧で,半径 a,長さ ℓ の一様な導線と,全発熱率を比較せよ.

両端面を電極とする円すい台状導体.左端からの座標x,長さℓ,左端の半径aと右端の半径2a,抵抗率ρを示す. 両端面を電極とする円すい台状導体.左端からの座標x,長さℓ,左端の半径aと右端の半径2a,抵抗率ρを示す.
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考え方
断面を通る電流は一定で,小区間の電圧降下を足す.

  1. S(x)=πa2(1+x/ℓ)2,j(x)=I/S(x) より,E(x)=ρI/[πa2(1+x/ℓ)2].電圧は V=∫0ℓE(x)dx だから

R=VI=ρπa2∫0ℓdx(1+x/ℓ)2=ρℓ2πa2.
  1. 一様な導線の抵抗は Ru=ρℓ/(πa2)=2R.電圧一定では P=V2/R なので円すい台の発熱率は2倍である.ρℓ/a2 は抵抗の次元で,E(0)/E(ℓ)=4 である.近似には半径の傾き a/ℓ が十分小さいことが必要である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

起電力 E>0,内部抵抗 r>0 の電池に,可変抵抗 R>0 をつなぐ.

  1. 外部抵抗の電力 P を最大にする R と,そのときの外部への供給効率を求めよ.効率は P/(EI) とする.

  2. 装置が要求する端子電圧 V≥3E/4 を守る場合の最大電力を求めよ.

起電力ℰと内部抵抗rをもつ電池に外部抵抗Rを接続する.破線内が電池で,外部抵抗の両端に端子電圧Vの極性の基準を示す. 起電力ℰと内部抵抗rをもつ電池に外部抵抗Rを接続する.破線内が電池で,外部抵抗の両端に端子電圧Vの極性の基準を示す.
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考え方
電圧条件を抵抗の範囲に直して最大化する.

  1. I=E/(r+R),P=E2R/(r+R)2.微分すると dPdR=E2(r−R)/(r+R)3 なので,R=r で最大 Pmax=E2/(4r).効率は IR/E=R/(r+R)=1/2 である.

  2. V/E=R/(r+R)≥3/4 から R≥3r.この範囲では P は減少するため,最大は R=3r で P=3E2/(16r),効率は 3/4.R→0 と R→∞ で電力は0となり,途中の最大と整合する.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

温度上昇 θ=T−T0 の電熱線が,R=R0(1+αθ) に従う.α>0,熱容量を H,周囲への放熱率を hθ とし,温度は一様,θ(0)=0,h>αI2R0 とする.

  1. 定電流 I を流すときの θ(t) と平衡温度上昇を求めよ.

  2. V=IR0 の定電圧に変え,発熱率を αθ の1次まで展開せよ.平衡温度上昇を比較し,近似が使える条件を示せ.

定電流Iで加熱する熱容量Hの電熱線と,温度T₀の周囲への放熱hθを示す.小問(2)ではV = IR₀の定電圧源を用いる. 定電流Iで加熱する熱容量Hの電熱線と,温度T₀の周囲への放熱hθを示す.小問(2)ではV = IR₀の定電圧源を用いる.
解答を見る

考え方
発熱と放熱の差が温度を変える.

  1. P0=I2R0 とおけば,Hdθdt=P0−(h−αP0)θ.h>αP0 なら θs=P0/(h−αP0) とおいて,d(θs−θ)dt=−(h−αP0)(θs−θ)/H.積分と初期条件から θ(t)=θs[1−e−(h−αP0)t/H] となる.

  2. V2/R0=P0 より,V2/R≈P0(1−αθ).したがって Hdθdt=P0−(h+αP0)θ,平衡値は θs′=P0/(h+αP0) であり,定電流より低い.近似には η=αP0/h が十分小さい必要があり,αθs=η/(1−η) も小さい.η→1 の発散は適用範囲外である.α→0 では両平衡値が P0/h に一致し,H/h は時間の次元をもつ.

ポイント 教える人へ

  • 電荷の符号から電子の速度と電流の向きを説明させてください.

  • 測定直線の傾き・切片と供給電力・内部損失を結びつけてください.

  • 小区間の電圧降下を足す理由を問うてください.

  • 電源による発熱の違いと,1次近似の条件を確かめてください.

04直流回路とキルヒホッフの法則

問い

4本の抵抗を四角形につなぎ,向かい合う2つの頂点に電池を,残りの2つの頂点の間に5本目の抵抗をつなぎます.この5本目の抵抗には,どれだけの電流が流れるでしょうか.直列と並列の公式を組み合わせようとしても,この回路はどこから手をつけても直列にも並列にもなっていません.枝分かれした複雑な回路の電流は,何によって決まるのでしょうか.

考えてみる

直列なら電流が共通,並列なら電圧が共通です.どちらでもない回路では,各枝の電流を未知数にするしかありません.問いの回路なら電池の枝を含めて6本の枝があり,独立な式が6つ要ります.その式を,前の題材の「電荷の保存」と「導線の中の電場」から作ります.

キルヒホッフの法則

法則 キルヒホッフの法則

第1法則:回路の接続点に流れこむ電流の和は,流れ出す電流の和に等しい.

第2法則:回路の中のどの閉じた道を一周しても,起電力の和は電圧降下(抵抗 R に電流 I が流れる向きに進むときの RI)の和に等しい.

第1法則は,定常電流では電荷が接続点にたまらないこと,つまり電荷の保存です.第2法則は,静電場が保存場であること(第20章)から出ます.電位は場所だけで決まるので,閉じた道を一周して元の点に戻れば,電位の変化の和は0です.抵抗を電流の向きに通ると電位は RI 下がり,電池を負極から正極へ通ると E 上がるので,上がる分と下がる分が等しくなります.

電池2個と抵抗3本の回路.上の接続点へI_1とI_3が流れ込み,I_2が流れ出すと仮定する.破線の矢印は各網目を一周する向き. 電池2個と抵抗3本の回路.上の接続点へI_1とI_3が流れ込み,I_2が流れ出すと仮定する.破線の矢印は各網目を一周する向き.

使い方の手順は次のとおりです.各枝の電流の向きを仮に決め,接続点ごとに第1法則を,独立な閉じた道ごとに第2法則を書きます.解いた電流が負なら,実際の向きが仮の向きと逆だということです.代わりに,接続点の電位を未知数にして各接続点で第1法則を書いてもかまいません.電位を使えば第2法則は自動的に満たされるので,未知数が少なくて済むことが多い方法です.

第2法則は,磁場が時間とともに変わる所では書き換えが要ります(第23章).また,光が回路を横切る時間より十分ゆっくりした変化だけを考える,前の題材の最後で述べた集中定数回路の近似の上に立っています.

直列と並列

キルヒホッフの法則から,直列なら R=R1+R2,並列なら 1R=1R1+1R2 が出ます.並列の合成抵抗を R1∥R2=R1R2R1+R2 と書くこともあります.対称な回路では,対称性から等電位と分かる点どうしを導線でつないでも,そこに電流は流れないので回路は変わりません.逆に,等電位の点を結ぶ導線を外してもかまいません.これを使うと,立方体のような網も直列と並列にまとめられます.同じ形の段が無限に続くはしご型の回路では,1段進んだ先にも同じ回路が続くことを使えば,合成抵抗の満たす方程式が作れます.

電流計と電圧計

電流計は測る枝に直列に,電圧計は測る2点の間に並列に入れます.どちらも回路の一部になるので,電流計の内部抵抗 RA は小さいほど,電圧計の内部抵抗 RV は大きいほど,回路を乱しません.

指針の振れが電流に比例する計器(抵抗 Rg,最大の電流 Ig)から,大きな電流を測る電流計を作るには,小さな抵抗(分流器)を並列につないで電流の大部分をそちらへ逃がします.全体の電流 I で振り切れるには,分流器の抵抗を Rs=IgRg/(I−Ig) にします.電圧計を作るには,大きな抵抗(倍率器)を直列につなぎ,電圧 V で振り切れるよう全体を V/Ig にします.

左は抵抗R_gの計器に分流器R_sを並列につないだ電流計.全電流Iが計器のI_gと分流器のI−I_gに分かれる.右は計器に抵抗V/I_g−R_gを直列につないだ電圧計. 左は抵抗R_gの計器に分流器R_sを並列につないだ電流計.全電流Iが計器のI_gと分流器のI−I_gに分かれる.右は計器に抵抗V/I_g−R_gを直列につないだ電圧計.

ホイートストンブリッジと電位差計

問いの回路で,四角形の4辺を R1,R2,R3,R4,5本目を検流計(ごく小さな電流を検出する計器)とします.検流計の両端が等電位なら電流は流れず,R1 と R2 には共通の電流 I,R3 と R4 には共通の電流 I′ が流れます.電池をつないだ一方の頂点から検流計の両端までの電圧降下が等しいことと,検流計の両端からもう一方の頂点までの電圧降下が等しいことから R1I=R3I′,R2I=R4I′ で,割ると

ポイント ブリッジの平衡

R1R2=R3R4

のとき検流計に電流は流れない.このとき,電池の起電力や内部抵抗,検流計の抵抗によらず,3つの抵抗から残りの1つが決まる.

四つの抵抗R_1,R_2,R_3,R_4の間を検流計で結び,もう一組の対角の頂点に電池をつなぐ.平衡時,検流計の両端の二点は等電位になる. 四つの抵抗R_1,R_2,R_3,R_4の間を検流計で結び,もう一組の対角の頂点に電池をつなぐ.平衡時,検流計の両端の二点は等電位になる.

電流が0になる所を探して測るこの方法を零位法といいます.電池の起電力を測るのにも使えます.一様な抵抗線に一定の電流を流しておくと,線に沿った電圧は長さに比例します.測りたい電池を検流計を通して線につなぎ,検流計の振れが0になる長さ ℓx を探します.起電力の分かっている標準電池で同じことをして長さ ℓs を得れば,Ex=Esℓx/ℓs です.つり合ったとき電池から電流を取り出していないので,内部抵抗による電圧降下が入らず,端子電圧ではなく起電力そのものが測れます.これが電位差計です.

テブナンの定理

複雑な回路のうち1本の枝の電流だけが知りたいときは,残りを簡単な形にまとめます.

定理 テブナンの定理

理想電圧源・理想電流源と抵抗だけからなる回路を,2つの端子から見ると,起電力 Vth の理想電圧源と抵抗 Rth の直列と同じにふるまう.Vth は端子を開いたときの端子間の電圧,Rth は理想電圧源を導線に,理想電流源を切れた導線に置き換えたときの端子間の合成抵抗である.

理由は,キルヒホッフの法則がすべて1次式で,解を重ね合わせられるからです.端子から電流 I を取り出したときの端子電圧は,「電源だけがあって I=0 のときの電圧」と「電源をすべて0にした回路から I を取り出したときの電圧」の和です.前者が開放電圧 Vth,後者は抵抗だけの回路なので −RthI で,V=Vth−RthI となります.電源を0にするとは,電圧源を導線に,電流源を切れた導線にすることです.前の題材の電池の E と r は,この定理の一番簡単な例です.

電池と複数の抵抗を含む左の回路を,右ではV_thとR_thの直列で表す.両側の端子に同じ負荷抵抗をつなぐと,同じ電圧と電流になる. 電池と複数の抵抗を含む左の回路を,右ではV_thとR_thの直列で表す.両側の端子に同じ負荷抵抗をつなぐと,同じ電圧と電流になる.

非線形素子と動作点

電球のフィラメントは電流が増えると熱くなって抵抗が増えるので,電流と電圧の関係(特性曲線)は直線になりません.ダイオードは,一方の向き(逆方向)にはほとんど電流を通さず,もう一方の向き(順方向)には電圧がある値を超えると急に大きな電流を通します.ここでは素子の性質だけを使い,仕組みは第29章で説明します.

非線形素子に,起電力 E の電源を抵抗 R を通してつなぐとします(電源と抵抗はテブナンの定理でまとめたものでもかまいません).素子の電圧 V と電流 I は,回路の側からは V=E−RI,素子の側からは特性曲線で決まります.同じグラフに2つを描いた交点が,実際に流れる電流と電圧で,これを動作点といいます.

[図:電球の特性と動作点の移動]

初期状態はℰ=6 V,R=10 Ω.上に凸の電球の模式的な特性I=0.1√Vと回路の直線の交点が動作点.ℰとRのスライダーで交点が動き,その点での接線も変わる.

動作点のまわりで電圧を少し変えたときの電流の変化は,特性曲線の接線の傾きで決まります.rd=dV/dI を微分抵抗といい,小さな変化については δV=rdδI と,素子を抵抗 rd とみなせます.これは動作点での静的な抵抗 V/I とは別の値です.この近似が使えるのは,変化の範囲で曲線が直線とみなせるとき,つまり |δI|/I が十分小さいときです.

問いに戻る

問いの回路では,電池の枝を含む6本の枝の電流を未知数にして,4つの接続点のうち3つで第1法則を(残りの1つは他の3つから出ます),3つの独立な閉じた道で第2法則を書けば,ちょうど6つの独立な式がそろい,電流は1通りに決まります.5本目の電流だけが要るなら,5本目を外した残りをテブナンの定理で Vth と Rth にまとめ,I=Vth/(Rth+R5) とすれば済みます.4辺の抵抗がブリッジの平衡の条件を満たせば,5本目には電流が流れません.

ポイント ここまでのまとめ

  • 第1法則は電荷の保存,第2法則は静電場が保存場であること.仮の向きで電流を置き,負の答えは逆向きを表す.接続点の電位を未知数にしてもよい.

  • 電流計は直列で内部抵抗が小さいほど,電圧計は並列で大きいほど回路を乱さない.分流器は並列,倍率器は直列に入れる.

  • ブリッジは R1/R2=R3/R4 で平衡し,電位差計は電流を取り出さずに起電力を測る(零位法).

  • テブナンの定理:2端子から見た線形の回路は,開放電圧 Vth と,電源を0にした合成抵抗 Rth の直列に置き換えられる.

  • 非線形素子は特性曲線と V=E−RI の交点(動作点)で動く.小さな変化には微分抵抗 rd=dV/dI を使う.

  • 問いの答え:電流は,各接続点の電荷の保存と各閉じた道の電圧の収支を同時に満たすように1通りに決まる.1本の枝だけならテブナンの定理が近道である.

05直流回路の例題

本体の節の道具を,測定の場面で使います.ブリッジのずれをテブナンの定理で見積もること,測定器の内部抵抗による誤差,非線形素子の動作点の3つです.どれも,測定器や素子を回路の一部として式に入れることが要点です.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

内部抵抗の無視できる起電力 E=3.0V の電池の正極を頂点A,負極を頂点Bにつなぐ.AからBへ,抵抗 R1=100Ω,接続点P,抵抗 R2=200Ω の順に直列につないだ枝と,抵抗 R3=150Ω,接続点N,抵抗 X の順に直列につないだ枝を置く.P,N間には抵抗 Rg=50Ω の検流計をつなぐ.

  1. 検流計に電流が流れないときの X を求めよ.

  2. X=310Ω のとき,検流計を流れる電流の大きさと向きを求めよ.

電池の正極をA,負極をBにつなぐ.左枝はR_1,P,R_2,右枝はR_3,N,Xの順.PとNの間に抵抗R_gの検流計を置く. 電池の正極をA,負極をBにつなぐ.左枝はR_1,P,R_2,右枝はR_3,N,Xの順.PとNの間に抵抗R_gの検流計を置く.
解答を見る

考え方 (1) はブリッジの平衡の条件.(2) は検流計を外した残りを,P,N を端子とするテブナンの回路にまとめる.

  1. R1/R2=R3/X より

X=R2R3R1=200×150100Ω=300Ω
  1. 検流計を外すと,Bを基準として

VP=ER2R1+R2=2.000V,VN=EXR3+X=3.0×310460V≈2.022V

なので,開放電圧は Vth=VN−VP=146V≈0.0217V で,N の方が高い.電池を導線に置き換えるとA,Bが同じ点になり,P から見ると R1 と R2 が並列,N から見ると R3 と X が並列で,それらが直列につながる.

Rth=R1∥R2+R3∥X=100×200300Ω+150×310460Ω≈66.7Ω+101.1Ω=167.8Ω

検流計の電流は

Ig=VthRth+Rg=0.0217167.8+50A≈1.0×10−4A

で,N から P の向きに流れる.

確かめ:X=300Ω なら VN=2.000V で Ig=0 に戻る.X のずれ 10Ω で約 0.1mA なので,1μA を読める検流計なら 0.1Ω のずれまで分かる.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

抵抗 R を,電圧計の読み V と電流計の読み I から V/I として測る.電流計の内部抵抗は RA=0.50Ω,電圧計の内部抵抗は RV=5.0kΩ である.つなぎ方は次の2通りある.

  • つなぎ方 a:電流計を R と直列にし,電圧計を R と電流計の両方にまたがせる.

  • つなぎ方 b:電圧計を R の両端だけにつなぎ,電流計は R と電圧計に分かれる前に置く.

  1. R=10Ω と R=1.0kΩ のそれぞれについて,2通りのつなぎ方で V/I を求め,真の値からのずれを百分率で答えよ.

  2. つなぎ方 a の方が正確になるのは,R がどんな範囲のときか.

aでは電流計Aと抵抗Rの直列全体に電圧計Vをつなぐ.bではRだけに電圧計をつなぎ,電流計を分岐の手前に置く.計器の内部抵抗はR_AとR_V. aでは電流計Aと抵抗Rの直列全体に電圧計Vをつなぐ.bではRだけに電圧計をつなぎ,電流計を分岐の手前に置く.計器の内部抵抗はR_AとR_V.
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考え方 電流計と電圧計を内部抵抗をもつ抵抗として回路に入れ,V/I が何を測っているかを式にする.

  1. つなぎ方 a では,電圧計は R と RA の直列の電圧を読み,電流計はそこを流れる電流を読むので V/I=R+RA.相対的なずれは +RA/R である.つなぎ方 b では,電流計は R と電圧計の電流の和を読むので V/I=R∥RV=RRVR+RV.相対的なずれは −R/(R+RV) である.

R

a の V/I

a のずれ

b の V/I

b のずれ

10Ω

10.5Ω

+5.0 %

9.98Ω

−0.20 %

1.0kΩ

1.0005kΩ

+0.050 %

0.83kΩ

−17 %

小さい抵抗ではつなぎ方 b,大きい抵抗ではつなぎ方 a が正確である.

  1. a の方が正確な条件は,ずれの絶対値を比べて R/(R+RV)>RA/R.R>0 より,これは R2−RAR−RARV>0,すなわち

R>RA+RA2+4RARV2

である.境界の計算値は約 50.25Ω である.RV が R よりずっと大きい近似では,条件は R>RARV=5.0×101Ω となる.

確かめ:RA→0 なら a は常に正しく,RV→∞ なら b は常に正しい.電流計の抵抗は小さいほど,電圧計の抵抗は大きいほどよいことと合う.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

ある電球の電圧 V と電流 I の関係(特性)を測ると次の表のようになった.表の点の間は直線で結んだ折れ線を特性とみなす.

V

0V

1.0V

2.0V

3.0V

4.0V

5.0V

6.0V

I

0A

0.100A

0.150A

0.180A

0.200A

0.220A

0.235A

この電球を,内部抵抗の無視できる起電力 E=6.0V の電池と抵抗 R=10Ω に直列につなぐ.

  1. 電球の電圧と電流(動作点)を求めよ.

  2. 動作点での電球の抵抗 V/I と,表の 3.0V と 5.0V の点から求めた微分抵抗 rd を比べよ.

  3. 起電力を 0.30V だけ増やすと,電球の電流と電圧はどれだけ変わるか.微分抵抗を使って求め,表の折れ線から求めた値と比べよ.

表に与えられた電球の特性を折れ線で描き,I=(ℰ−V)/Rの直線を重ねる.交点を動作点として示す.座標値と解答で用いる接線は描かない. 表に与えられた電球の特性を折れ線で描き,I=(ℰ−V)/Rの直線を重ねる.交点を動作点として示す.座標値と解答で用いる接線は描かない.
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考え方 回路の側の関係 V=E−RI と電球の特性を同時に満たす点を探す.小さな変化は,電球を抵抗 rd に置き換えた回路で考える.

  1. 回路の側では I=(6.0−V)/10(I は A,V は V で測る).V=3.0 では直線が 0.30 で特性 0.180 より上,V=5.0 では直線が 0.10 で特性 0.220 より下なので,交点はその間にある.V=4.0 では直線も特性も 0.200 で一致するので,動作点は V=4.0V,I=0.20A である.直線は右下がり,特性は右上がりなので,交点はこの1つだけである.

  2. 動作点での抵抗は V/I=4.0/0.20Ω=20Ω.微分抵抗は

rd=5.0−3.00.220−0.180Ω=50Ω

で,V/I の2.5倍である.電流を増やすとフィラメントが熱くなって抵抗が増すので,電圧の増え方の割に電流が増えにくい.

  1. 電池と R から見ると,電球は小さな変化については抵抗 rd としてふるまうので

δI=δER+rd=0.3010+50A=5.0×10−3A,δV=rdδI=0.25V

表の折れ線で確かめる.新しい直線 I=(6.3−V)/10 と,4.0V と 5.0V の間の特性 I=0.200+0.020(V−4.0) の交点は,0.63−0.1V=0.120+0.020V から V=4.25V,I=0.205A で,上の結果と一致する.

確かめ:抵抗 V/I=20Ω を使って 0.30/(10+20)A=10mA とすると,変化を2倍に見積もってしまう.小さな変化に効くのは V/I ではなく接線の傾きである.微分抵抗で扱えるのは,変化 |δI|/I=0.025 のように,特性が直線とみなせる範囲に限られる.

ポイント ここまでのまとめ

  • ブリッジのわずかなずれは,検流計を外した残りをテブナンの回路にまとめると Ig=Vth/(Rth+Rg) で見積もれる.

  • V/I は,電流計を内側に入れると R+RA,電圧計を内側に入れると R∥RV を測る.R>RARV なら前者,小さければ後者が正確.

  • 非線形素子の動作点は,特性と直線 V=E−RI の交点.小さな変化は,素子を微分抵抗 rd に置き換えて計算する.

06直流回路と測定器の演習

電荷保存と電圧の収支を書いてください.測定器も回路の一部です.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

抵抗 Rg=80Ω,最大電流 Ig=1.0mA の指針式計器がある.

  1. 最大 0.20A の電流計にするため,計器に並列につなぐ分流抵抗を求めよ.

  2. 別の同じ計器を最大 8.0V の電圧計にするため,直列につなぐ抵抗と完成した電圧計の抵抗を求めよ.

抵抗R_g = 80 Ω,最大電流I_g = 1.0 mAの計器に,分流抵抗を並列につなぐ構成と倍率抵抗を直列につなぐ構成.測定範囲はそれぞれ0.20 Aと8.0 Vである. 抵抗R_g = 80 Ω,最大電流I_g = 1.0 mAの計器に,分流抵抗を並列につなぐ構成と倍率抵抗を直列につなぐ構成.測定範囲はそれぞれ0.20 Aと8.0 Vである.
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考え方
並列の等電圧,直列の等電流を使う.

  1. 計器の電圧は IgRg=0.080V.分流抵抗の電流は 0.20−0.0010=0.199A なので,抵抗は 0.080/0.199≈0.40Ω.

  2. 全抵抗は 8.0/Ig=8.0×103Ω.追加抵抗は 8.0×103−80=7.92×103Ω≈7.9×103Ω.電流計は小抵抗,電圧計は大抵抗となる.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

接続点A,Bの間に3本の枝がある.第1枝は起電力 12V の理想電源と抵抗 4.0Ω,第2枝は起電力 6.0V の理想電源と抵抗 2.0Ω,第3枝は抵抗 6.0Ω である.両電源ともBからAへ進むと電位が上がる向きに置く.

  1. 第1・第2枝をBからAへ流れる電流を I1,I2 として,2つの閉じた道の式から全枝の電流を求めよ.

  2. 第3枝を外した端子A,Bから見たテブナンの起電力と内部抵抗を求め,(1)の端子電圧を検算せよ.

AとBの間に3枝を接続する.第1枝は12 Vと4.0 Ω,第2枝は6.0 Vと2.0 Ω,第3枝は6.0 Ωである.両電源の正極はA側で,仮の電流I₁,I₂はBからAを正とする. AとBの間に3枝を接続する.第1枝は12 Vと4.0 Ω,第2枝は6.0 Vと2.0 Ω,第3枝は6.0 Ωである.両電源の正極はA側で,仮の電流I₁,I₂はBからAを正とする.
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考え方
第3枝は I1+I2 が流れ,負の解は逆向きを表す.

  1. 第3枝をAからBへ戻る2つの道について

12=4I1+6(I1+I2),6=2I2+6(I1+I2)

が成り立つ.係数の単位は Ω,左辺の単位は V である.整理した第1式を4倍,第2式を3倍して差をとると 22I1=30.よって I1=15/11A≈1.4A,I2=−3/11A≈−0.27A.第3枝はAからBへ 12/11A≈1.1A である.

  1. 開放時の電圧 Vth は (12−Vth)/4+(6−Vth)/2=0 より 8.0V.理想電源を短絡して見ると Rth=4×2/(4+2)=4/3Ω≈1.3Ω.負荷を戻すと V=8×6/(6+4/3)=72/11V≈6.5V,負荷電流は V/6=12/11A と一致する.第2電源には正極から電流が入り,電気エネルギーを受け取る向きである.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

未知の一定抵抗 R に,内部抵抗 RV=10kΩ の電圧計を並列につなぐ.理想電流計は抵抗と電圧計へ分かれる前に置く.電源電圧を変えて次の値を得た.電流の誤差は ±0.01mA 以内で,電圧の誤差は無視する.

電圧計の読み V

1.00V

2.00V

3.00V

電流計の読み I

0.30mA

0.61mA

0.90mA

  1. 両端の測定値から R を推定し,中央の値が一定抵抗の模型と両立するか判定せよ.

  2. 電圧計の電流を無視して V/I を抵抗とすると,真の値から何 %ずれるか.電圧計の電流が抵抗の電流の1 %以下となる条件も示せ.

理想電流計の後で未知抵抗Rと内部抵抗R_v = 10 kΩの電圧計へ分岐する.電流計は枝分かれ前の電流Iを測る. 理想電流計の後で未知抵抗Rと内部抵抗R_v = 10 kΩの電圧計へ分岐する.電流計は枝分かれ前の電流Iを測る.
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考え方
傾きから電圧計の電流の寄与を引く.

  1. I=V/R+V/RV.両端から I/V=0.30mAV−1,電圧計の寄与は 1/RV=0.10mAV−1 だから,1/R=0.20mAV−1,R=5.0kΩ.中央での予測は 0.60mA であり,測定の誤差範囲に入る.

  2. 見かけの抵抗は Rapp=RRV/(R+RV)=10/3kΩ.(Rapp−R)/R=−1/3 より約33 %小さい.電流の比は Iv/IR=R/RV なので,条件は RV≥100R.RV→∞ では補正が不要となることも確かめられる.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

理想電源の正極と接続点Aを抵抗 Rs=1.0kΩ,Aと負極Bを同じ抵抗 Rs でつなぐ.さらにA,B間に非線形抵抗素子をつなぐ.素子はAからBへの電流 I≥0 に対して V=V∗(I/I∗)2 に従う.V∗=1.0V,I∗=1.0mA,電源の起電力は E=10V とする.

  1. 素子以外をテブナンの回路に置き換え,素子の電流と電圧を求めよ.

  2. 起電力を δE=0.090V 増したとき,微分抵抗 rd=dVdI を使い,素子の電流と電圧の変化を1次まで求めよ.

電源の正極から抵抗R_sを通ってAへ接続し,Aと負極Bの間に同じR_sと非線形素子を並列につなぐ.素子の与えられた電圧特性を記す. 電源の正極から抵抗R_sを通ってAへ接続し,Aと負極Bの間に同じR_sと非線形素子を並列につなぐ.素子の与えられた電圧特性を記す.
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考え方
回路の電圧降下と素子の特性を同時に満たす点を探す.小変化には接線を使う.

  1. 素子を外すと Vth=E/2=5.0V,電源を短絡すると Rth=Rs/2=0.50kΩ.u=I/I∗ とおけば,Vth=RthI+V は 5=0.50u+u2.(u−2)(u+2.5)=0 だから,許される解は I=2.0mA,V=4.0V.

  2. rd=2V∗I/I∗2=4.0kΩ.δVth=δE/2=0.045V と δV=rdδI より,δI=0.045/(500+4000)=1.0×10−5A,δV=0.040V.近似には |δI|/I が十分小さい必要があり,ここでは0.0050である.省いた2次の電圧は V∗(δI/I∗)2=1.0×10−4V と1次項より小さい.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

立方体の辺に抵抗を置き,体対角線の両端をA,Bとする.AまたはBに接する6辺は抵抗 R,残りの6辺は抵抗 2R とし,A,Bを直接結ぶ抵抗 3R も加える.A,B間に一定電圧 V>0 を加える.

  1. 対称性を使って合成抵抗を求めよ.

  2. 各種類の辺の電流と,抵抗 2R の6辺全体の発熱率を求めよ.

体対角線の両端A,Bに接する6辺はR,残りの6辺は2Rである.AとBを直接結ぶ3Rの枝は立方体の外側に描く.A,B間の印加電圧はV > 0である. 体対角線の両端A,Bに接する6辺はR,残りの6辺は2Rである.AとBを直接結ぶ3Rの枝は立方体の外側に描く.A,B間の印加電圧はV > 0である.
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考え方
A,Bを固定する回転で入れ替わる頂点は等電位で,まとめても電流は変わらない.

  1. Aに隣接する3頂点を一群,Bに隣接する3頂点を一群とする.Aから第1群までは3本の並列で R/3,群の間は6本の並列で 2R/6=R/3,第2群からBまでは R/3.辺全体は直列で R となり,追加した 3R と並列だから,合成抵抗は 3R/4.

  2. 辺の網を流れる電流は V/R である.A,Bに接する各辺は V/(3R),残りの各辺は V/(6R).直接つないだ抵抗 3R の電流はAからBへ V/(3R) である.抵抗 2R の6辺の発熱率は 6[V/(6R)]2(2R)=V2/(3R).A側とB側の3辺も各群で同じ発熱率となる.直接枝の発熱率 V2/(3R) を加えた全体は 4V2/(3R)=V2/(3R/4) で,合成抵抗からの計算と一致する.

ポイント 教える人へ

  • 仮の電流が負になる意味を,実際の向きと電源の仕事から説明させてください.

  • 電圧計の電流を引く理由を問うてください.

  • 開放電圧と等価抵抗から負荷電流を検算させてください.

  • 等電位の頂点と,接線で近似する条件を確かめてください.

07コンデンサーの充電と放電

問い

カメラのフラッシュは,1000分の1秒ほどの間,暗い部屋を昼のように照らします.ところが,その電源は単3電池2本ほどです.同じ電池に豆電球を直接つないでも,ぼんやり光るだけです.電池をそのままつないだのでは出せない明るさを,フラッシュはどうやって一瞬に出しているのでしょうか.

考えてみる

明るさを決めるのは,エネルギーの量ではなく仕事率です.フラッシュ1回のエネルギーは 10J ほどで,単3電池1本のエネルギー(104J ほど)に比べればわずかです.困るのは,それを 10−3s ほどで出すと仕事率が 104W ほどになることです.電池には内部抵抗 r があり,最初の題材で見たとおり,外の抵抗をどう選んでも,取り出せる仕事率は E2/(4r)(外の抵抗を r にしたとき)を超えません.E=3V,r=0.3Ω なら 7.5W で,3桁以上足りません.

そこで,電池から少しずつエネルギーを受け取ってためておき,一度に出す入れ物が要ります.それがコンデンサーです.第20章で見たとおり,電圧 V まで充電した容量 C のコンデンサーは,極板の間の電場に 12CV2 のエネルギーをためています.問題は,ためるのと出すのにどれだけ時間がかかり,その間にどれだけエネルギーを失うかです.コンデンサーがあると,電流は時間とともに変わります.

コンデンサーを含む回路の決まり

電荷は極板の間を渡りません.理想的なコンデンサーでは電場は極板の間だけにあり,向かい合う極板の電荷は +q と −q です.+q の極板へ電流 I が流れ込むと q が増え,反対側の極板からは同じ電流が流れ出ます.極板の間の電場の線積分が電圧 v=q/C です.時間とともに変わる電圧は小文字の v,一定の電圧は大文字の V で書きます.

電荷の配置がゆっくり変わるなら,各瞬間の電場はその瞬間の電荷が作る静電場とほとんど同じで,保存場です.だから各瞬間にキルヒホッフの第2法則が使え,コンデンサーは電圧 v=q/C の素子として一周の和に入ります.電流が極板の間で途切れて見えることは,第24章で「足りなかった1項」として見直します.

ポイント コンデンサーを含む回路の決まり

  • コンデンサーの電圧は v=q/C,+q の極板へ流れ込む電流は I=dq/dt.

  • 各瞬間に,キルヒホッフの2つの法則が成り立つ.

  • 抵抗を通る電流は有限なので,q と v は切り替えの瞬間に跳ばない(電流は跳んでよい).直後の未充電のコンデンサーは導線と同じ.

  • 十分時間がたつと,コンデンサーへ流れ込む電流は0になる(電荷が0になるとは限らない).

  • 電源や他の導体から切り離された導体部分(孤立部分)では,そこにつながる極板の電荷の和(符号つき)が変わらない.

充電と時定数

起電力 E の電池(内部抵抗は R に含める),抵抗 R,未充電のコンデンサー C を直列につなぎ,時刻0にスイッチを入れます.

電池ℰ,閉じたスイッチ,抵抗R,コンデンサーCを直列につなぐ.電流Iが上側の極板へ流れ込み,極板の電荷は+qと−q,電圧はvである. 電池ℰ,閉じたスイッチ,抵抗R,コンデンサーCを直列につなぐ.電流Iが上側の極板へ流れ込み,極板の電荷は+qと−q,電圧はvである.

閉じた道を一周すると E=RI+q/C で,I=dq/dt を入れると

RCdqdt=CE−q

です.直後は q=0 で I=E/R です.電荷がたまると抵抗にかかる電圧 E−q/C が下がり,電流が減って充電は遅くなります.これは第4章の線形の空気抵抗の運動方程式 mbdvdt=mgb−v と同じ形で,速さが終端速度に近づくように,電荷は CE に近づきます.解は数学の節で求めます.

q=CE(1−e−t/RC),I=ERe−t/RC

定義 時定数

抵抗 R とコンデンサー C の回路で,τ=RC を時定数という.単位は ΩF=(V/A)(C/V)=s.時間 τ で,目標の値との差が e−1≈0.37 倍に縮む(63 % まで進む).5τ で差は 1 % 以下になる.

R が大きいと電流が小さく,C が大きいと多くの電荷が要るので,どちらも充電を遅くします.最初の題材の衝突時間と同じ文字ですが,ここからの τ は時定数です.

[図:充電の曲線と時定数]

初期状態はR=1 MΩ,C=1 μF,ℰ=6 V,τ=1 s.上のq–tの曲線はCℰに近づき,初めの接線は時刻τでCℰに届く.下のI–tの曲線は0へ減る.RとCを変えると共通の時間軸上でτと曲線が変わる.

放電

電圧 V0 のコンデンサーを,時刻0に抵抗 R だけにつなぎます.一周すると 0=RI+q/C なので RCdq/dt=−q で

q=CV0e−t/RC,I=dqdt=−V0Re−t/RC

です.I<0 は,電流が +q の極板から流れ出る向きであることを表します.抵抗で出る熱は

∫0∞RI2dt=V02R∫0∞e−2t/RCdt=V02R⋅RC2=12CV02

で,ためていたエネルギーがすべて熱になります.R を小さくすると,同じエネルギーを短い時間で出すので仕事率が大きくなります.

切り替えのある回路

抵抗がいくつもあっても,コンデンサーが1つなら,残りの回路はテブナンの定理で起電力 Vth と内部抵抗 Rth の電源1つにまとめられ,上の充電と同じ形になります.

定理 コンデンサーが1つの回路の時間変化

抵抗と電源とコンデンサー1つの回路で,切り替えの後の電圧,電荷,電流は,どれも

x(t)=x∞+(x0−x∞)e−t/τ,τ=RthC

で変わる.x0 は切り替えの直後の値,x∞ は十分時間がたった後の値,Rth はコンデンサーの両端から見た回路の抵抗(理想電源は導線に置き換える)である.

直前の電荷から直後の電流を求め,コンデンサーへの電流を0として十分後の値を求め,Rth から時定数を出せば,途中の変化も決まります.コンデンサーが2つ以上あるときは,孤立部分の電荷の和が変わらないことで前後をつなぎます.例は数学の節で扱います.

充電のエネルギーの収支

充電で電池がする仕事と,コンデンサーにたまるエネルギーを比べます.電池は電荷 CE を電位差 E だけ持ち上げるので,仕事は W=E⋅CE=CE2 です.たまるのは U=12CE2 なので,残りの 12CE2 は抵抗で熱になります.放電と同じように ∫RI2dt を計算しても,R が消えて同じ値になります.その理由は,電荷を少しずつ運ぶと考えると分かります.電荷が q のとき,次の dq を運ぶと,電池は Edq の仕事をし,コンデンサーは vdq=(q/C)dq を受け取り,差 (E−v)dq が抵抗で熱になります.電荷が電位差 E−v を「落ちる」ときに熱が出るのです.どれも q だけで決まり,R は「どれだけ速く運ぶか」を変えるだけです.

横軸q,縦軸は電圧.水平線ℰと直線v=q/Cで作る長方形の下側の三角形がコンデンサーのエネルギー,上側が抵抗の熱を表し,どちらも½Cℰ²である. 横軸q,縦軸は電圧.水平線ℰと直線v=q/Cで作る長方形の下側の三角形がコンデンサーのエネルギー,上側が抵抗の熱を表し,どちらも½Cℰ²である.

損失を減らすには,E−v をいつも小さく保てばよいのです.電源の電圧を少しずつ上げていくと,図の上の三角形が細い三角形の列に変わり,熱が減ります.代わりに時定数よりずっと長い時間がかかります.有限の温度差で熱を流すと不可逆になり,準静的に流せば可逆に近づく(第16章)のと同じ構造です.一方,R→0 としても損失は消えません.時定数が短すぎると次に述べる近似が成り立たなくなり,エネルギーは火花や電磁波として出ていきます.

集中定数回路として扱える条件

ここまで,導線の電流はどこでも同じで,電場は各瞬間の静電場と同じ,と扱ってきました.これが最初の題材の最後で触れた集中定数回路の近似です.実際には電荷の配置の変化は光の速さ c で伝わり,大きさ ℓ の回路を伝わるのに ℓ/c かかります.これが τ よりずっと短ければ,遅れを無視できます.

ポイント 集中定数回路として扱える条件

無次元量 ℓ/(cτ) が1よりずっと小さいこと.電子の衝突時間(10−14s ほど)が τ よりずっと短く各瞬間にオームの法則が成り立つこと,自己誘導(第23章)が無視できることも前提にしている.

ℓ=0.1m,τ=1ms なら ℓ/(cτ)≈3×10−7 で,十分に成り立ちます.信号が 10−9s ほどで変わるコンピューターの回路では比が 0.3 ほどになり,導線を伝わる波として扱う必要があります.

問いに戻る

フラッシュの中のコンデンサーは,たとえば C=150μF で,電池の電圧を上げる回路によって V0=300V まで充電され,12CV02≈6.8J をためます.電池から取り出せる仕事率は数 W なので,充電には数秒かかり,続けて光らせるときに少し待たされます.

光らせるときは,コンデンサーを放電管(キセノンガスを封じた管)につなぎます.放電管をおおまかに 2Ω ほどの抵抗とみなすと,時定数は τ=2×1.5×10−4=3×10−4s で,最初の仕事率は V02/R≈4.5×104W です.数秒かけてためたエネルギーを1000分の1秒ほどで出すので,仕事率は電池だけの場合の数千倍になります.ためる時間と出す時間を,別々の時定数で選べるのです.

ポイント ここまでのまとめ

  • コンデンサーの電荷と電圧は切り替えの瞬間に跳ばない.十分後はコンデンサーへの電流が0.

  • 充電は q=CE(1−e−t/RC),放電は q=CV0e−t/RC.時定数 τ=RC で,目標との差が e−1 倍に縮む.抵抗が多い回路では τ=RthC.

  • 一定の起電力で充電すると,電池の仕事の半分が熱になり,その量は R によらない.電源の電圧をゆっくり上げると損失は減る.

  • 集中定数回路の近似は ℓ/(cτ) が1よりずっと小さいときに成り立つ.

  • フラッシュは,数秒かけてコンデンサーにためた数 J を,小さい抵抗を通して1000分の1秒ほどで出す.

08指数関数的な緩和と片対数グラフ

本体の節で結果だけ示した充電と放電の式を,第4章の1階の微分方程式の解き方で導きます.指数関数の性質と,測定から時定数を読む片対数グラフもまとめます.

定理 数学の道具:目標の値に近づく1階の微分方程式

τ>0,y∞ を定数として

τdydt=y∞−y,y(0)=y0

の解は

y=y∞+(y0−y∞)e−t/τ

である.u=y−y∞ とおくと τdu/dt=−u となり,変数分離で u=u0e−t/τ を得る(第4章).線形の空気抵抗の落下では y=v,y∞=mg/b,τ=m/b,コンデンサーの充電では y=q,y∞=CE,τ=RC,放電では y∞=0 である.

接線. t=0 での傾きは (y∞−y0)/τ で,この傾きのまま進むと,ちょうど t=τ で y∞ に届く.

半分になる時間. 差 y−y∞ が半分になる時間は τln⁡2≈0.69τ,10分の1になる時間は τln⁡10≈2.3τ で,どこから数えても同じである.

積分. ∫0∞e−t/τdt=τ,∫0∞e−2t/τdt=τ2.電流が e−t/τ で減るとき,運ばれる全電荷は I(0)τ,抵抗の熱は RI(0)2τ/2 である.

練習1 起電力 6.0V の電池で,R=20kΩ を介して未充電の C=50μF を充電する.電池の内部抵抗は無視し,充電開始を時刻0とする.時定数,電圧が 3.0V になる時刻,t=2.0s での電流を求めよ.

答え 練習1:τ=2.0×104×5.0×10−5=1.0s.e−t/τ=1/2 より t=τln⁡2≈0.69s.I=6.02.0×104e−2.0≈4.1×10−5A.

定理 数学の道具:片対数グラフ

y=y0e−t/τ の自然対数をとると

ln⁡y=ln⁡y0−tτ

で,横軸 t,縦軸 ln⁡y のグラフは傾き −1/τ の直線になる.常用対数なら傾きは −(log10⁡e)/τ=−0.434/τ である.片対数方眼紙(縦軸だけが対数の目盛り)に y をそのまま記入しても直線になり,y が10分の1になる時間 τln⁡10 から τ が読める.

0でない y∞ に近づく量は,差 |y∞−y| の対数をとる.点が1本の直線に乗れば時定数が1つの模型で説明でき,曲がっていれば時定数が2つ以上あるか,素子が線形でない.

測定値に直線を引くときは,差 y∞−y が小さい終わりの点ほど,測定のずれ δy による縦軸のずれ δy/|y∞−y| が大きいことに注意します.

練習2 片対数グラフで,放電の電圧が 10V から 1.0V まで下がるのに 4.6s かかった.時定数を求めよ.

答え τ=4.6/ln⁡10≈2.0s.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

内部抵抗の無視できる起電力 E=12V の電池の正極から,スイッチSと抵抗 R1=4.0kΩ を通って接続点Pに至る.Pと負極の間には,抵抗 R2=2.0kΩ と未充電のコンデンサー C=50μF を並列につなぐ.時刻0にSを閉じる.

  1. 閉じた直後の R1,R2,コンデンサーに流れる電流を求めよ.

  2. 十分時間がたった後の電流と,コンデンサーの電圧と電荷を求めよ.

  3. コンデンサーの電圧 v(t) と時定数を求めよ.

電池ℰの正極からスイッチS,抵抗R_1を通りPへ至る.Pと負極の間にR_2とCを並列につなぐ.矢印は各枝の電流の基準の向き,vはコンデンサーの電圧. 電池ℰの正極からスイッチS,抵抗R_1を通りPへ至る.Pと負極の間にR_2とCを並列につなぐ.矢印は各枝の電流の基準の向き,vはコンデンサーの電圧.
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考え方 直後は電圧が0のまま,十分後は電流が0.途中はコンデンサーから見た回路をテブナンの電源にまとめる.

  1. 直後は v=0 なので R2 の電流は0,R1 の電流 E/R1=3.0mA がすべてコンデンサーへ流れ込む.

  2. コンデンサーの電流が0なので,R1 と R2 に同じ電流 E/(R1+R2)=2.0mA が流れる.v=R2×2.0mA=4.0V,q=Cv=2.0×10−4C.

  3. コンデンサーから見ると Vth は (2) の 4.0V,電池を導線に置き換えて Rth=R1R2/(R1+R2)=4/3kΩ.よって

τ=RthC≈6.7×10−2s,v=4.0(1−e−t/τ)V

確かめ:(3) の t=0 での傾き Vth/τ=60Vs−1 は,(1) の電流から出す I/C=60Vs−1 と一致する.この後Sを開けば,放電の時定数は R2C=0.10s で,充電より長い.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

容量 C1 のコンデンサーを電圧 V0 に充電して充電用の電源から切り離し,未充電の容量 C2 のコンデンサーと,下側の極板どうしを導線で,上側の極板どうしを抵抗 R とスイッチでつなぐ.時刻0にスイッチを閉じる.

  1. 十分後の共通の電圧と,抵抗を通った電荷を求めよ.

  2. 2つの電圧の差 w=v1−v2 と電流 I を求めよ.時定数はいくらか.

  3. 抵抗で出る熱を求め,静電エネルギーの減少と比べよ.R を小さくすると熱は減るか.

左のC_1は電圧V_0で上側が正,右のC_2は未充電.下側の極板を導線で,上側を抵抗Rとスイッチでつなぐ.点線はスイッチを閉じた後の上側の孤立部分,IはC_1からC_2への基準の向き. 左のC_1は電圧V_0で上側が正,右のC_2は未充電.下側の極板を導線で,上側を抵抗Rとスイッチでつなぐ.点線はスイッチを閉じた後の上側の孤立部分,IはC_1からC_2への基準の向き.
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考え方 上側の2枚の極板とその間の導線は孤立部分で,電荷の和が変わらない.電圧の差が抵抗に電流を流す.

  1. 上側の電荷の和は C1V0 で一定.十分後は電流が0で電圧が等しく,(C1+C2)vf=C1V0 から

vf=C1V0C1+C2

抵抗を通った電荷は C2vf=C1C2V0C1+C2.

  1. I=w/R,C1dv1/dt=−I,C2dv2/dt=I より

dwdt=−(1C1+1C2)wR=−wRCs,Cs=C1C2C1+C2

w(0)=V0 だから w=V0e−t/τ,I=V0Re−t/τ,時定数は τ=RCs.Cs は2つを直列にしたときの容量である.

  1. 熱は

∫0∞RI2dt=V02R⋅τ2=12CsV02

静電エネルギーの減少 12C1V02−12(C1+C2)vf2=12C1V02⋅C2C1+C2 と一致する.熱は R によらず,R を小さくしても減らない.

確かめ:C1=C2 なら熱は初めのエネルギーの半分.R→0 では τ→0 で集中定数回路の条件が破れ,自己誘導や電磁波の放射なども考慮する必要がある.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

未知の容量 C の未充電のコンデンサーを,R=100kΩ を介して起電力 E=10.0V の電池で時刻0から充電し,コンデンサーの電圧 v を測った.電池の内部抵抗と電圧計の影響は無視でき,読みのずれは ±0.05V ほどである.何を縦軸にとれば直線になるかを示し,時定数と C を求めよ.

t

0s

1.0s

2.0s

3.0s

4.0s

6.0s

v

0V

3.9V

6.3V

7.8V

8.6V

9.5V

電池ℰと抵抗RでコンデンサーCを充電する.Cの両端に電圧計Vを並列につなぎ,電圧vを測る. 電池ℰと抵抗RでコンデンサーCを充電する.Cの両端に電圧計Vを並列につなぎ,電圧vを測る.
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考え方 v=E(1−e−t/τ) なら ln⁡(1−v/E)=−t/τ で,原点を通る直線になる.

y=ln⁡(1−v/E) を計算すると

t

1.0s

2.0s

3.0s

4.0s

6.0s

y

−0.49

−0.99

−1.51

−1.97

−3.00

で,原点を通るほぼ1本の直線に乗る.原点を通る直線の最小二乗法(第14章)で傾きは ∑ty/∑t2=−32.9/66≈−0.50s−1.よって τ≈2.0s,C=τ/R≈2.0×10−5F=2.0×101μF.

確かめ:t=τ=2.0s で v は E の 63 % の 6.3V で,表と合う.y のずれ δv/(E−v) は,t=1.0s で 0.05/6.1≈0.008,t=6.0s で 0.05/0.5=0.1 なので,直線を引くときは最後の点を軽く見る.上の和では t の大きい点ほど重く効くので,最後の点を除いて求め直すと −14.9/30≈−0.50s−1 で,結果は変わらない.

ポイント ここまでのまとめ

  • τdy/dt=y∞−y の解は y=y∞+(y0−y∞)e−t/τ.空気抵抗の落下と RC 回路は同じ方程式.

  • 初めの接線は t=τ で目標の値に届く.差が半分になる時間は τln⁡2.

  • 片対数グラフで ln⁡|y∞−y| は傾き −1/τ の直線になる.直線に乗るかどうかが模型の確かめになる.

  • 時定数は,抵抗が多い回路で RthC,2つのコンデンサーを抵抗でつなぐと RCs.孤立部分の電荷の和が終わりの電圧を決め,失うエネルギーは R によらない.

09充放電と回路の切り替えの演習

直後・十分後を区別し,孤立部分の電荷を符号つきで数えてください.電源も収支に入れます.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

容量 C=5.0μF のコンデンサーの電圧は初め Vi=2.0V である.時刻0に抵抗 R=40kΩ を介し,同極性の理想電源 E=4.0V につなぐ.電圧を v,正極板へ入る電流を I とする.

  1. 回路の式から v(t),I(t) を求め,直後と十分後の値を示せ.

  2. v=3.0V になる時刻を求めよ.回路の大きさ ℓ=3.0m,光の速さ c=3.0×108ms−1 として,集中定数回路の条件も確かめよ.

初期電圧V_i = 2.0 VのコンデンサーCを,抵抗Rとスイッチを介して起電力ℰ = 4.0 Vの電源につなぐ.電源の正極と初めの正極板を同じ側に示す. 初期電圧V_i = 2.0 VのコンデンサーCを,抵抗Rとスイッチを介して起電力ℰ = 4.0 Vの電源につなぐ.電源の正極と初めの正極板を同じ側に示す.
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考え方
初期電圧を使って微分方程式を解く.

  1. I=Cdvdt,E=RI+v より,d(E−v)dt=−(E−v)/(RC).積分すると ln⁡[(E−v)/(E−Vi)]=−t/(RC).したがって,τ=RC=0.20s として

v=E−(E−Vi)e−t/τ,I=E−ViRe−t/τ.

直後は v=2.0V,I=5.0×10−5A,十分後は v=4.0V,I=0.

  1. e−t/τ=1/2 より t=τln⁡2≈0.14s.伝わる時間は ℓ/c=1.0×10−8s,比 ℓ/(cτ)=5.0×10−8 が十分小さく,伝わりの遅れを無視できる.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

未充電のコンデンサー C を,抵抗 R>0 を介して一定起電力 E の理想電源で充電する.渡った電荷を q とする.

  1. 電圧が E/2 に達するまでの電源の仕事 W,蓄積エネルギー U,ジュール熱 QJ を求めよ.

  2. 十分後の3量を求め,電流から求めた発熱とも比較せよ.抵抗を小さくするだけで発熱を減らせるか.

起電力ℰの電源,抵抗R,未充電のコンデンサーCを直列につなぐ.電源からコンデンサーへ渡る電荷qの向きを示す. 起電力ℰの電源,抵抗R,未充電のコンデンサーCを直列につなぐ.電源からコンデンサーへ渡る電荷qの向きを示す.
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考え方
電源の仕事と蓄積エネルギーの差を熱として数える.

  1. q=CE/2 より,W=Eq=CE2/2.U=q2/(2C)=CE2/8 だから,QJ=W−U=3CE2/8.

  2. 十分後は q=CE,W=CE2,U=CE2/2,QJ=CE2/2.回路の式 RCdqdt+q=CE を微分すると RCdIdt=−I.I(0)=E/R より I=Ee−t/(RC)/R.よって

∫0∞RI2dt=E2R∫0∞e−2t/(RC)dt=CE22.

発熱は R によらない.R→0 では ℓ/(cRC) が増え,集中定数近似が破れる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

容量が未知のコンデンサーに抵抗 R=2.0MΩ と内部抵抗 RV=1.0MΩ の電圧計を並列につなぎ,電源を外して放電させた.読みは次のとおりで,他の漏れはない.

t

0s

2.0s

4.0s

6.0s

v

8.0V

4.0V

2.0V

1.0V

  1. y=ln⁡[v(t)/v(0)] を縦軸にすると直線になることを示し,時定数と容量を求めよ.

  2. 電圧計の影響を無視して求めた容量は,真の容量の何倍か.

容量が未知のコンデンサーに抵抗R = 2.0 MΩと内部抵抗R_v = 1.0 MΩの電圧計を並列につなぐ.電源を外した放電回路である. 容量が未知のコンデンサーに抵抗R = 2.0 MΩと内部抵抗R_v = 1.0 MΩの電圧計を並列につなぐ.電源を外した放電回路である.
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考え方
電圧計も放電の経路になる.対数で直線化する.

  1. 合成抵抗は Rp=RRV/(R+RV)=2/3MΩ.Cdvdt=−v/Rp を積分すると v=v(0)e−t/(RpC),y=−t/(RpC).測定値は y=0,−ln⁡2,−2ln⁡2,−3ln⁡2 なので,傾きは −ln⁡2/(2.0s),τ=2.0s/ln⁡2≈2.9s.よって C=τ/Rp≈4.3μF.

  2. 影響を無視すると Capp=τ/R.比は Capp/C=Rp/R=1/3.RV→∞ では比が1へ近づき,補正が不要となる.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

容量 C,2C のコンデンサー1,2の下側極板を導線でつなぐ.下側に対する上側の初期電圧は,1が V>0,2が −V/4 である.電源を外し,時刻0に上側極板どうしを抵抗 R>0 を介してつなぐ.電流 I は1から2へ流れる向きを正とする.

  1. 直後と十分後の電圧,十分後までに抵抗を通る電荷を求めよ.

  2. 電流と発熱を求め,エネルギー差で検算せよ.

容量Cと2Cの下側極板を導線で結び,上側は抵抗Rとスイッチで結ぶ.下側を基準とした上側の初期電圧はVと−V/4であり,電流Iは1から2へ向かう方向を正とする. 容量Cと2Cの下側極板を導線で結び,上側は抵抗Rとスイッチで結ぶ.下側を基準とした上側の初期電圧はVと−V/4であり,電流Iは1から2へ向かう方向を正とする.
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考え方
上側全体の電荷を保存し,電圧差の減衰を追う.

  1. 直後は v1=V,v2=−V/4 のままである.上側全体の電荷は CV+2C(−V/4)=CV/2,下側は −CV/2 で,各々保存する.十分後は共通電圧 vf となり,3Cvf=CV/2 から vf=V/6.1から失われる電荷は CV−CV/6=5CV/6 である.

  2. I=(v1−v2)/R,Cdv1dt=−I,2Cdv2dt=I.w=v1−v2 とおくと dwdt=−3w/(2RC).w(0)=5V/4 から,τ=2RC/3,I=5Ve−t/τ/(4R).発熱は

QJ=∫0∞RI2dt=25V2τ32R=25CV248.

初期エネルギーは Ui=CV2/2+2C(V/4)2/2=9CV2/16,終状態は Uf=3C(V/6)2/2=CV2/24.差は 25CV2/48 で一致する.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

未充電のコンデンサー C を抵抗 R を介して充電する.理想電源の電圧を E/N,2E/N,…,E と N 段階に上げ,各段階で十分待つ.

  1. 第 k 段階の電源の仕事と発熱,全段階の仕事と発熱を求めよ.

  2. 一度に E まで充電する場合の全発熱の10分の1以下に,全段階の発熱を抑える最小の N を求めよ.全所要時間 T を固定したまま N→∞ としてよいか.

未充電のコンデンサーCを抵抗Rを介して充電する回路.電源電圧をℰ/N,2ℰ/N,…,ℰとN段階に上げ,各段階で十分待つ. 未充電のコンデンサーCを抵抗Rを介して充電する回路.電源電圧をℰ/N,2ℰ/N,…,ℰとN段階に上げ,各段階で十分待つ.
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考え方
仕事とエネルギーを段階ごとに比べる.

  1. d=E/N とおけば,第 k 段階で増える電荷は Cd,電源の仕事は Wk=(kd)(Cd)=kCd2.エネルギー増加は ΔUk=C[(kd)2−((k−1)d)2]/2=C(2k−1)d2/2.よって QJ,k=Wk−ΔUk=Cd2/2.∑k=1Nk=N(N+1)/2 より,全仕事は W=CE2(N+1)/(2N),全発熱は QJ=CE2/(2N).

  2. 一度に充電する場合の全発熱は CE2/2 であり,これに対する全段階の発熱の比は 1/N だから最小は N=10.1段階の時間を T/N とすると,残る電圧差の割合は e−T/(NRC).近似には NRC/T が十分小さい必要があり,T を固定した無限段階の極限では満たせない.W−QJ=CE2/2 は蓄積エネルギーと等しく,収支が合う.

ポイント 教える人へ

  • 電荷の連続性から直後の電圧を説明させてください.

  • 孤立部分の電荷を,負の初期電圧も含めて数えさせてください.

  • 片対数グラフの傾きと時定数を対応させてください.

  • 損失を減らす段階充電には時間が必要であることを問うてください.

10第21章の章末問題

抵抗の中の電場,回路の電流,コンデンサーの電荷を結びつけて解いてください.特に断らない限り,導線とスイッチの抵抗,コンデンサーの漏れ,電磁誘導は無視し,集中定数回路として扱います.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

長さと断面積がともに等しい2本の導線を並列につなぎ,電池につなぐ.導線1の抵抗率は ρ,導線2は 2ρ で,電子の数密度は等しい.長さ ℓ=2.0m,断面積 S=2.0×10−8m2,ρ=3.0×10−8Ωm,電池の起電力 E=9.0V とする.導線1の抵抗を R とし,電池の内部抵抗は R/3 である.

  1. 電池の電流,各導線の電流,端子電圧を求めよ.

  2. 両導線の電子のドリフト速度の大きさの比と,両導線および電池内部の発熱率を求めよ.

長さℓと断面積Sが等しい2本の導線を並列につなぐ.導線1の抵抗率はρ,導線2は2ρで,電池の起電力はℰ,内部抵抗はR/3である. 長さℓと断面積Sが等しい2本の導線を並列につなぐ.導線1の抵抗率はρ,導線2は2ρで,電池の起電力はℰ,内部抵抗はR/3である.
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考え方
並列部分は等電圧である.電池内部の電圧降下も含めて電流を決める.

  1. R=ρℓ/S=3.0Ω,導線2の抵抗は 2R.並列部分の抵抗は Rp=2R/3 だから,全抵抗は R/3+2R/3=R.電池の電流は I=E/R=3.0A,端子電圧は V=IRp=6.0V.各電流は I1=V/R=2.0A,I2=V/(2R)=1.0A である.

  2. Ik=neSvd,k より,速度の大きさの比は vd,1:vd,2=2:1.電子の移動は電流と逆向きである.発熱率は P1=I12R=12W,P2=I22(2R)=6.0W,Pr=I2R/3=9.0W.合計 27W は電池の仕事率 EI と等しく,内部の発熱を含めて収支が合う.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

理想電源の正極A,負極Bの電位差は E>0 である.AからBへ,抵抗 R,接続点P,抵抗 3R を直列につなぐ枝と,抵抗 2R,接続点N,抵抗 R を直列につなぐ枝を置く.P,N間には容量 C のコンデンサーをつなぐ.十分時間がたった状態を考える.

  1. Bを電位の基準としてP,Nの電位,コンデンサーのP側極板の電荷,蓄積エネルギーを求めよ.

  2. 電源の電流と4本の抵抗の全発熱率を求めよ.コンデンサーの電流が0であることから,その電荷も0と判断してよいか.

正極Aから負極Bへ,R,P,3Rの枝と,2R,N,Rの枝を接続する.PとNの間に容量Cのコンデンサーを置き,電源の極性を示す. 正極Aから負極Bへ,R,P,3Rの枝と,2R,N,Rの枝を接続する.PとNの間に容量Cのコンデンサーを置き,電源の極性を示す.
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考え方
定常状態ではコンデンサーの枝を電流について開放とみなし,2つの分圧を比較する.

  1. 左右の枝の電流は E/(4R),E/(3R) である.したがって VP=3E/4,VN=E/3,VP−VN=5E/12.P側の電荷は qP=C(VP−VN)=5CE/12,N側は −qP.エネルギーは U=C(VP−VN)2/2=25CE2/288 である.

  2. 電源電流は I=E/(4R)+E/(3R)=7E/(12R).全発熱率は P=4R[E/(4R)]2+3R[E/(3R)]2=7E2/(12R)=EI.コンデンサー電流が0とは電荷が変化しないことであり,電荷が0という意味ではない.電荷の式は電圧を反転すると符号を変え,エネルギーは変わらない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

未知の容量 C と漏れ抵抗 Rℓ が並列になったコンデンサーがある.初めの電圧を0とし,起電力 E=6.00V の理想電源に既知の直列抵抗 Rs を介してつなぐ.測定器の影響は補正済みである.十分後の電圧 V∞ と,ln⁡[(V∞−v)/V∞] のグラフの傾き −1/τ から次の値を得た.

Rs

2.00MΩ

4.00MΩ

8.00MΩ

V∞

4.00V

3.00V

2.00V

τ

4.00s

6.00s

8.00s

  1. 1/τ を 1/Rs の1次式で表し,最初の2列から C,Rℓ を決めよ.最後の列と定常電圧も検算せよ.

  2. Rs=4.00MΩ の定常電圧だけに ±0.03V の誤差があるとき,この電圧から推定する Rℓ の範囲を求めよ.漏れを無視して C=τ/Rs とすると,3列の結果はどうなるか.

電源ℰと直列抵抗R_sの先に,容量Cと漏れ抵抗R_ℓを並列につなぐ.測定する電圧vは並列部分の上側を正とした電圧である. 電源ℰと直列抵抗R_sの先に,容量Cと漏れ抵抗R_ℓを並列につなぐ.測定する電圧vは並列部分の上側を正とした電圧である.
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考え方
充電電流の一部は漏れへ流れる.減衰率の傾きと切片を分けて容量と漏れ抵抗を求める.

  1. 接続点での電荷保存は

Cdvdt=E−vRs−vRℓ.

右辺を0とすると V∞=ERℓ/(Rs+Rℓ).w=V∞−v とおけば dwdt=−w/τ となり,積分と初期条件から w=V∞e−t/τ.ここで

1τ=1C1Rs+1CRℓ.

最初の2列の傾きは [1/(4.00s)−1/(6.00s)]/[1/(2.00MΩ)−1/(4.00MΩ)]=1/(3.00μF).したがって C=3.00μF.第2列では 1/τ−1/(CRs)=1/(12.0s) だから Rℓ=4.00MΩ.第3列の並列抵抗は 8/3MΩ で,τ=8.00s.定常電圧も順に 4.00,3.00,2.00V となり一致する.

  1. 定常値から Rℓ=RsV∞/(E−V∞).これは V∞ とともに増加するので,両端を代入した範囲は

4.00MΩ×2.973.03≤Rℓ≤4.00MΩ×3.032.97.

すなわち約 3.92MΩ から 4.08MΩ である.漏れを無視した容量は順に 2.00,1.50,1.00μF となり,一定容量の模型と両立しない.漏れを無視する条件は Rs/Rℓ が十分小さいことであり,この測定では満たされない.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

容量 C の未充電のコンデンサーの下側極板を電源の負極につなぐ.上側極板は抵抗 R を介して切り替えスイッチにつなぐ.時刻0から T=RCln⁡3 までは起電力 E>0 の理想電源の正極に,その後は負極につなぐ.コンデンサーの上側の電圧を v,上側極板へ入る電流を I とする.

  1. 両区間の v,I を求め,切り替え前後で連続な量を示せ.切り替え後,初めて v=E/6 となるまでの時間も求めよ.

  2. その時刻までの電源の仕事と全ジュール熱を求め,残る蓄積エネルギーと比較せよ.

コンデンサーCの下側は電源の負極につながる.上側は抵抗Rと切り替えスイッチを介して,時刻Tまでは正極,その後は負極につながる.上側の電圧vと上側極板へ入る電流Iの基準を示す. コンデンサーCの下側は電源の負極につながる.上側は抵抗Rと切り替えスイッチを介して,時刻Tまでは正極,その後は負極につながる.上側の電圧vと上側極板へ入る電流Iの基準を示す.
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考え方
有限抵抗を通る切り替えでは極板電荷が連続する.電源につながる区間と放電だけの区間を別々に解く.

  1. τ=RC とする.前半では Cdvdt=(E−v)/R.E−v の対数を積分すると v=E(1−e−t/τ),I=Ee−t/τ/R である.v(T)=2E/3.後半は s=t−T として Cdvds=−v/R より

v=2E3e−s/τ,I=−2E3Re−s/τ.

電荷 Cv と電圧 v は連続するが,電流は E/(3R) から −2E/(3R) へ変わる.到達条件は e−s/τ=1/4 なので s=RCln⁡4.

  1. 前半に電源から渡る電荷は 2CE/3 で,仕事は W=2CE2/3.切り替え時のエネルギーは UT=C(2E/3)2/2=2CE2/9 だから,前半の熱は QJ,1=W−UT=4CE2/9.終状態は Uf=C(E/6)2/2=CE2/72 なので,後半の熱は QJ,2=UT−Uf=5CE2/24.合計は QJ=47CE2/72 で,QJ+Uf=W.切り替えの理想化は,電圧が切り替わる時間を ts,回路の大きさを ℓ,光の速さを c とすると,ℓ/(cts) と ts/(RC) をともに十分小さくできる場合に適用できる.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

容量 C のコンデンサー1をA,M間,容量 2C のコンデンサー2をM,B間につなぐ.Mにつながる2枚の極板と導線は,他の導体から孤立している.初めの電位差は VA−VM=0,VM−VB=V>0 である.時刻0にBを理想電源の負極へ,Aを抵抗 R を介して正極へつなぐ.起電力は 4V とする.

  1. Mの保存電荷を符号つきで数え,十分後の両コンデンサーの電圧と電荷を求めよ.

  2. 電源からAへ流れる電流 I(t),時定数,渡る全電荷を求めよ.

  3. 十分後までの電源の仕事とジュール熱を求めよ.

電源4Vから抵抗R,A,容量C,M,容量2C,Bの順に接続する.破線はMにつながる2枚の極板と導線の範囲である.初めの電位差V_A−V_M = 0とV_M−V_B = Vを記す. 電源4Vから抵抗R,A,容量C,M,容量2C,Bの順に接続する.破線はMにつながる2枚の極板と導線の範囲である.初めの電位差V_A−V_M = 0とV_M−V_B = Vを記す.
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考え方
直列コンデンサーの電荷が等しいとは限らない.Mの電荷を保存したまま,外側端子の電圧の変化を追う.

  1. Bを基準とし,v1=VA−VM,v2=VM,v=VA=v1+v2 とする.M側の電荷の和は初め −Cv1+2Cv2=2CV である.したがって全時刻で −Cv1+2Cv2=2CV,すなわち

v1=23(v−V),v2=13v+23V.

十分後は v=4V だから v1=v2=2V.コンデンサー1のA側は 2CV,M側は −2CV.コンデンサー2のM側は 4CV,B側は −4CV で,Mの和は 2CV のままである.

  1. A側電荷は qA=Cv1=2C(v−V)/3 なので I=2Cdvdt/3.4V=RI+v より,τ=2RC/3 として d(4V−v)dt=−(4V−v)/τ.初期値 v(0)=V から v=4V−3Ve−t/τ,I=3Ve−t/τ/R.全電荷は ∫0∞Idt=3Vτ/R=2CV である.

  2. 電源の仕事は W=(4V)(2CV)=8CV2.初期エネルギーは Ui=(2C)V2/2=CV2,終状態は Uf=C(2V)2/2+(2C)(2V)2/2=6CV2.よって QJ=W−(Uf−Ui)=3CV2.電流からも ∫0∞RI2dt=9V2τ/(2R)=3CV2 となる.R を小さくしても熱は減らず,集中定数近似には ℓ/(cτ) が十分小さいことが必要である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

A,B間の電位差が初め VA−VB=E>0 の理想電源である.AからBへ,抵抗 R,P,抵抗 2R の枝と,抵抗 2R,N,抵抗 R の枝を置く.PからNへは抵抗 R と容量 C のコンデンサーを直列につなぐ.十分待った後,時刻0に電源の極性を反転し,VA−VB=−E にする.コンデンサーのP寄り極板の電位からN寄り極板の電位を引いた電圧を v,PからNへの枝電流を I とする.

  1. 反転後の v(t),I(t) を求めよ.

  2. Bを基準として VP(t),VN(t) を求め,反転直後に VP−VN と v が等しくなるか調べよ.

  3. P,N間の枝の抵抗 R で生じる全ジュール熱を求めよ.

AからBへR,P,2Rの枝と2R,N,Rの枝を置き,Pから抵抗R,容量C,Nの順に接続する.反転前後の電源の極性,PからNを正とする電流Iとコンデンサー電圧vの基準を示す. AからBへR,P,2Rの枝と2R,N,Rの枝を置き,Pから抵抗R,容量C,Nの順に接続する.反転前後の電源の極性,PからNを正とする電流Iとコンデンサー電圧vの基準を示す.
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考え方
コンデンサーの枝から見た回路をテブナンの電源に置き換える.枝電流による分圧点のずれも求める.

  1. 反転前の開放電圧は 2E/3−E/3=E/3 で,v(0)=E/3.反転後は Vth=−E/3.電源を短絡して見た抵抗は,各分圧点から共通点までが R∥2R=2R/3 だから Rth=4R/3 である.枝の R を加えると Rt=7R/3.I=Cdvdt,Vth=RtI+v を解くと

τ=7RC3,v=−E3+2E3e−t/τ,I=−2E7Re−t/τ.
  1. Pでの電荷保存は (VP+E)/R+VP/(2R)+I=0,Nでは (VN+E)/(2R)+VN/R−I=0.これらから

VP=−2E3−2R3I,VN=−E3+2R3I.

直後は VP=−10E/21,VN=−11E/21 だから VP−VN=E/21.一方 v=E/3 であり,両者の差 −2E/7 は枝の抵抗の電圧 RI である.極板間電圧が連続でも,分圧点の電位が連続するとは限らない.

  1. この枝の抵抗に定常電流は流れない.したがって

QJ=∫0∞RI2dt=4E249Rτ2=2CE221.

これは4本の分圧抵抗の熱を含まない.C→0 で熱も0となる.反転を短時間の操作とみなすには,切り替え時間 ts に対する ℓ/(cts) と ts/τ がともに十分小さい必要がある.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

半径 a,b(b>a)の同心球状電極の間を,誘電率 ε,抵抗率 ρ の一様な物質で満たす.ここで ρ は抵抗率である.物質の漏れはオームの法則に従うとし,外側電極の外の場は無視する.

  1. 球面を通る定常電流から漏れ抵抗 Rℓ を,ガウスの法則から容量 C を導け.電源を外して自己放電させるときの時定数を求めよ.

  2. 未充電の状態から,起電力 E の理想電源と直列抵抗 Rs=Rℓ につなぐ.電圧の時間変化と定常状態での電源の仕事率,物質内と直列抵抗の発熱率を求めよ.

  3. a,b を変えても一定な時定数はどちらか.その理由を説明せよ.Rs は変更しないものとする.

半径aとbの同心球電極の断面と,電極間の誘電率ε,抵抗率ρを示す.外部回路は電源ℰ,直列抵抗R_s,スイッチからなり,内側電極への導線は外側電極と絶縁して通す. 半径aとbの同心球電極の断面と,電極間の誘電率ε,抵抗率ρを示す.外部回路は電源ℰ,直列抵抗R_s,スイッチからなり,内側電極への導線は外側電極と絶縁して通す.
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考え方
漏れ抵抗と容量には同じ幾何学的因子が逆向きに現れる.外部抵抗を加えた時定数とは区別する.

  1. 半径 r の球面の電流密度は j=I/(4πr2).E=ρj から電圧は V=∫abEdr=ρI(1/a−1/b)/(4π) なので

Rℓ=ρ4π(1a−1b).

内側に電荷 q があるとき,ガウスの法則 4πr2εE=q より V=q(1/a−1/b)/(4πε).したがって C=4πε/(1/a−1/b).自己放電は Cdvdt=−v/Rℓ だから v=v(0)e−t/(RℓC),時定数は τ0=RℓC=ρε である.

  1. Cdvdt=(E−v)/Rs−v/Rℓ.Rs=Rℓ なので d(E/2−v)dt=−2(E/2−v)/(RℓC) となり,v=E(1−e−t/τc)/2,τc=ρε/2.定常電流は I=E/(2Rℓ),電源の仕事率は E2/(2Rℓ).物質内の発熱率は (E/2)2/Rℓ=E2/(4Rℓ),直列抵抗も同じである.

  2. 自己放電の τ0 は幾何学によらない.一方,変更後の充電時定数は τc=CRsRℓ/(Rs+Rℓ)=ρεRs/(Rs+Rℓ) であり,Rs を固定すると一定ではない.RℓC は時間の次元をもち,外部回路を付けると放電経路が増えるため時定数が短くなる.球対称と集中定数の近似には,外部接続による場の乱れを無視でき,b/(cτc) が十分小さい必要がある.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

容量 C のコンデンサーとダイオードを並列につなぎ,起電力 E=3VD の理想電源から抵抗 R を介して充電する.下側を電位の基準とし,上側の電圧を v≥0 とする.ダイオードを上側から下側へ流れる電流は,0≤v≤VD では0,v>VD では ID=(v−VD)/rd である.VD>0,rd>0,初め v=0 とする.

  1. ダイオードが電流を流し始める時刻 tD と,それ以前の v(t) を求めよ.

  2. それ以後の v(t),定常電圧,時定数を求めよ.rd=R の場合,初めて v=3VD/2 となる時刻も求めよ.

  3. rd=R の定常状態で,電源の仕事率が抵抗とダイオードの消費電力の和に等しいことを示せ.rd→0 の極限で電圧がどうなるかも述べよ.

電源3V_Dと抵抗Rの先に,コンデンサーCと上側から下側へ導通するダイオードを並列につなぐ.電圧vとダイオード電流I_Dの正方向,折れ曲がり電圧V_Dをもつ与えられた電流特性を示す. 電源3V_Dと抵抗Rの先に,コンデンサーCと上側から下側へ導通するダイオードを並列につなぐ.電圧vとダイオード電流I_Dの正方向,折れ曲がり電圧V_Dをもつ与えられた電流特性を示す.
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考え方
素子の特性が変わる電圧で解をつなぐ.定常電圧だけでなく,ダイオードが流し始めた後の緩和も変わる.

  1. 導通前は Cdvdt=(3VD−v)/R だから,v=3VD(1−e−t/(RC)).v(tD)=VD より e−tD/(RC)=2/3,tD=RCln⁡(3/2).

  2. 導通後は

Cdvdt=3VD−vR−v−VDrd.

定常値と時定数は V∞=VD(R+3rd)/(R+rd),τ=CRrd/(R+rd).V∞−v がこの時定数で指数減衰するので,初期値 v(tD)=VD から v=V∞−(V∞−VD)e−(t−tD)/τ.これは常に v≥VD で,導通を仮定した範囲に収まる.rd=R では V∞=2VD,τ=RC/2.3VD/2=2VD−VDe−(t−tD)/τ より

t=RCln⁡32+RC2ln⁡2.
  1. 定常電流は I=VD/R.電源の仕事率は 3VDI=3VD2/R,抵抗の発熱率は I2R=VD2/R,ダイオードの消費電力は V∞ID=2VD2/R で,和が一致する.rd→0 では V∞→VD,τ→0 となり,導通後の電圧は VD に保たれる極限へ近づく.ただし有限の回路で過渡解を使うには ℓ/(cτ) が十分小さい必要があり,rd=0 の瞬間的応答まで集中定数近似で保証したわけではない.

11第21章の発展問題

無限抵抗網,信号の読み出し,電子の衝突,非線形素子,連成した充放電を扱います.問題文で与えた模型を使い,電荷とエネルギーの収支を確かめながら,近似や極限の意味まで調べてください.

演習 1

IPhO 1967 第2問(改題) ★★★★☆

共通の下側導線Bに対して,上側の端子Aから抵抗 R を1本進むごとに,下側へ抵抗 2R を1本つなぐ.この組を右へ無限に繰り返す.N 組で打ち切り,最後の 2R より右を開放した回路のA,B間の抵抗を XN とし,無限回路は定常状態の N→∞ の極限で定義する.

  1. 無限回路の抵抗 X を求めよ.A,B間の電圧を V>0 としたとき,第 k 接続点の電位と,そこにつながる 2R の電流を求めよ.Bを基準とする.

  2. 上側の抵抗群と下側へ向かう抵抗群の発熱率を,それぞれ無限級数から求めよ.

  3. 有限回路の XN を求め,無限回路の抵抗に対する相対誤差を1 %以下にする最小の N を求めよ.

上図は上側のRと共通導線Bへの2Rを3組示し,右へ無限に繰り返す.下図はN組の有限回路で,接続点番号k = Nの2Rより右を開放する位置を示す. 上図は上側のRと共通導線Bへの2Rを3組示し,右へ無限に繰り返す.下図はN組の有限回路で,接続点番号k = Nの2Rより右を開放する位置を示す.
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考え方
1組進んだ先にも同じ回路がある.有限回路の漸化式を先に考えると,自己相似から得た根の選び方と極限を確かめられる.

  1. 最初の抵抗の先は 2R と残りの X の並列だから,X=R+2RX/(2R+X).整理すると X2−RX−2R2=(X−2R)(X+R)=0.正の抵抗を選び X=2R.最初の抵抗の先の並列抵抗は R なので,電位は1組ごとに半分になる.したがって Vk=V/2k,下側への電流は Ib,k=Vk/(2R)=V/(R2k+1).

  2. 上側の第 k 抵抗の電圧降下は V/2k−1−V/2k=V/2k.したがって,∑k=1∞4−k=1/3 を使うと

Pa=V2R∑k=1∞4−k=V23R,Pb=V22R∑k=1∞4−k=V26R.

合計は V2/(2R)=V2/X である.上側と下側への枝は2対1の割合で発熱する.

  1. xN=XN/R とすれば x1=3,xN=(3xN−1+2)/(xN−1+2).2つの固定点2,−1 を使い,直接変形すると

xN−2xN+1=14xN−1−2xN−1+1.

(x1−2)/(x1+1)=1/4 より比は 4−N.これを xN について解くと XN=R(2+4−N)/(1−4−N).相対誤差は (XN−X)/X=3/[2(4N−1)] で,N=3 では 1/42,N=4 では 1/170.したがって最小は N=4 である.誤差を制御する小さい無次元量は 4−N であり,この極限は無限に遠い抵抗まで瞬時に応答するという仮定を必要としない.

演習 2

APhO 2000 第2問(改題) ★★★★☆

電荷を集めるセンサーを,電流源と,それに並列な容量 C,読み出し抵抗 R で表す.電流源は1回の信号で,時刻0から tc まで一定電流 Is=Q/tc を上側接続点へ送り込み,その後は電流を流さない.初めの電圧は0で,測定器の影響は無視する.上側の電圧を v,τ=RC とする.

  1. 信号の前半と後半の v(t) および最大電圧 Vp を求めよ.Q/C を最大電圧とみなす近似の相対誤差を,x=tc/τ の先頭の次数まで求めよ.

  2. Q=6.00×10−12C,C=30.0×10−12F,tc=1.00×10−4s とする.最大電圧は 0.160V 以上,次の信号の開始時刻 Δt=1.20×10−3s に残る電圧は Vp の1 %以下,という両条件を満たす R の範囲を求めよ.必要なら (1−e−x)/x=0.800 の正の根を数値で求めてよい.

  3. 読み出し抵抗を通じて失う全エネルギーと電流源の仕事を求めよ.(2)の信号間隔を保つとき,実現できる最大の Vp はいくらか.

センサーの電流源,容量C,読み出し抵抗Rを並列につなぐ.電流源は時刻0からt_cまでQ/t_cを上側へ送り込む.別の図に与えられた電流パルスと次の信号の開始時刻Δtを示す. センサーの電流源,容量C,読み出し抵抗Rを並列につなぐ.電流源は時刻0からt_cまでQ/t_cを上側へ送り込む.別の図に与えられた電流パルスと次の信号の開始時刻Δtを示す.
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考え方
電荷を集める間にも抵抗へ電流が流れる.大きな信号と短い残留時間の要求は,時定数に逆向きの制約を与える.

  1. 前半は Cdvdt=Q/tc−v/R.定常値 QR/tc からの差を積分し,v(0)=0 を使うと v=QR(1−e−t/τ)/tc.電流源が止まった後は Cdvdt=−v/R だから

Vp=QRtc(1−e−x)=QC1−e−xx,v=Vpe−(t−tc)/τ(t≥tc).

前半は増加し後半は減少するので,最大は t=tc にある.e−x=1−x+x2/2+⋯ より Vp=(Q/C)(1−x/2+⋯).真の値を分母にした過大評価の相対誤差 [(Q/C)−Vp]/Vp は x/2 が先頭項である.

  1. Q/C=0.200V なので,振幅条件は f(x)=(1−e−x)/x≥0.800.f′(x)=[(1+x)e−x−1]/x2<0 である.ここでは ex>1+x を使った.根は x∗=0.4642 だから,τ≥tc/x∗=2.154×10−4s.残留条件は e−(Δt−tc)/τ≤0.010 なので τ≤(Δt−tc)/ln⁡100=2.389×10−4s.よって

7.18MΩ≤R≤7.96MΩ

が3桁で表した範囲である.厳密な端点は上の時定数の式を C で割った値である.

  1. 前半に電流源がする仕事は

W=∫0tcQtcvdt=Q2Rtc2[tc−τ(1−e−x)].

前半の抵抗の熱は W−CVp2/2,後半の熱は ∫tc∞v2dt/R=CVp2τ/(2R)=CVp2/2 なので,全熱は QJ=W.振幅は τ とともに増えるため,残留条件の上限で最大となり,x=tcln⁡100/(Δt−tc)=0.4187 を代入すると Vp,max=0.163V.小さい x の近似を使うには tc/τ が十分小さくなければならず,設計範囲では約0.42から0.46であるため,(2)(3)は指数関数を展開せずに計算した.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

電子の質量を m,電荷を −e,数密度を n とする.一様な導体に一定電場 E=Eex(E>0)を加える.ex は x 方向の単位ベクトルである.電子の熱運動は電流の平均に寄与しないとし,衝突で電場による速度だけが0に戻る模型を考える.連続する衝突の間隔 s は独立で,密度 p(s)=e−s/τ/τ に従う.定常状態で最後の衝突からの時間も同じ分布に従うことを使ってよい.

  1. 定常状態の電流密度と抵抗率を求めよ.衝突で格子へ渡る単位体積・単位時間のエネルギーを,⟨s2⟩ から求め,jE と比較せよ.

  2. 衝突間隔が必ず τ で,電子の衝突時刻が均等にずれている別の模型を考える.定常電流密度と単位体積あたりの発熱率を求め,(1)と比較せよ.

  3. 最初の模型で時刻0に電場を加え,直前の電場による速度は全電子で0とする.電流密度 j(t),電場による運動エネルギー密度 K(t),格子への単位体積あたりの発熱率 H(t) を求め,過渡状態の収支を確かめよ.巨視的なRC回路で瞬時のオームの法則を使う条件も述べよ.

一様な導体のx軸と,正のx方向に与える一定電場E = Ee_xを示す.衝突の間の自由飛行を方向のない模式線で表し,飛行時間sを記す.電子の電荷は−e,質量はm,数密度はnである. 一様な導体のx軸と,正のx方向に与える一定電場E = Ee_xを示す.衝突の間の自由飛行を方向のない模式線で表し,飛行時間sを記す.電子の電荷は−e,質量はm,数密度はnである.
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考え方
平均速度が電流を決め,速度の2乗の平均が衝突で失うエネルギーを決める.平均をとってから2乗する操作とは区別する.

  1. a=eE/m とすると,自由飛行中の速度は −as.指数分布の積分を部分積分すると

⟨s⟩=∫0∞sτe−s/τds=∫0∞e−s/τds=τ,⟨s2⟩=∫0∞s2τe−s/τds=2∫0∞se−s/τds=2τ2.

したがって vd=aτ,j=nevd=ne2Eτ/m,抵抗率は ρ=E/j=m/(ne2τ) である.1回の衝突で失う平均エネルギーは ma2⟨s2⟩/2=ma2τ2.単位体積で毎秒 n/τ 回の衝突があるので

H=nma2τ=ne2E2τm=jE.

平均速度を2乗した mvd2/2 を1回の損失とすると半分になり,揺らぎの寄与を落としてしまう.

  1. 観測時の経過時間は0から τ まで一様だから,平均速度の大きさは aτ/2.よって j=ne2Eτ/(2m).衝突直前の速度の大きさは必ず aτ であり,毎秒の衝突数はやはり n/τ なので H=nma2τ/2=jE.同じ平均衝突間隔でも,時間の分布を変えると電流と発熱は半分になる.

  2. 負の x 方向の速度成分の大きさを u とする.短時間 dt に衝突する割合は dt/τ である.平均をとると

d⟨u⟩dt=a−⟨u⟩τ,d⟨u2⟩dt=2a⟨u⟩−⟨u2⟩τ.

第1式を初期値0で解くと ⟨u⟩=aτ(1−e−t/τ),j(t)=ne2Eτ(1−e−t/τ)/m.これを第2式へ入れ,両辺に et/τ を掛けて積分すると

et/τ⟨u2⟩=2a2τ[τ(et/τ−1)−t],K(t)=nm2⟨u2⟩=nma2τ2[1−(1+tτ)e−t/τ].

衝突で毎秒失うエネルギーは H=K/τ.したがって jE−H=nma2te−t/τ=dKdt で,電場の仕事は熱と電子の運動エネルギー増加に分かれる.定常極限では dKdt→0 となり(1)へ戻る.RC回路の時定数を τRC とすると,瞬時の抵抗を使う条件は τ/τRC が十分小さいことである.この模型は熱運動や衝突率が電場によって変わらない範囲に限られる.

演習 4

オリジナル ★★★★★

起電力 E の理想電源から抵抗 R を介して接続点Aへ電流を送り,Aから電源の負極Bへ,容量 C と非線形素子を並列につなぐ.AのBに対する電圧を v,u=v/V∗−2,I∗=V∗/R とする.V∗>0 で,素子のAからBへの電流は,0≤v≤4V∗ において ID=I∗(u3−3u+3) に従う.素子はこの特性へ遅れなく応答すると仮定する.

  1. E=5V∗ で全定常電圧を求め,微小な電圧変化に対する安定性と緩和時間を調べよ.初期値 0<v(0)<4V∗ からどの定常値へ近づくかも示せ.

  2. h=E/V∗−5 とし,3つの異なる定常値が存在する h の範囲を −hc<h<hc の形で求めよ.その範囲を含む近傍で,定常値が1つだけの状態から起電力を十分ゆっくり上げ下げするとき,電圧が跳び移る起電力を求めよ.

  3. 起電力を上げたときの跳び移りに近い h=hc−δ,0<δ で,消滅に近い安定状態の緩和時間の先頭項を求めよ.近似に必要な δ と電圧変化の条件を示せ.また,負の微分抵抗があることがエネルギー保存に反するか,収支の式から判定せよ.

電源ℰから抵抗Rを介してAへ接続し,Aと負極Bの間に容量Cと非線形素子を並列につなぐ.下図は与えられた特性I_D = I_*(u³−3u+3)だけを,v/V_*とI_D/I_*の軸で示す. 電源ℰから抵抗Rを介してAへ接続し,Aと負極Bの間に容量Cと非線形素子を並列につなぐ.下図は与えられた特性I_D = I_*(u³−3u+3)だけを,v/V_*とI_D/I_*の軸で示す.
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考え方
特性曲線との交点だけでは安定性は決まらない.接続点に余った電流がコンデンサーを充電する向きを調べる.

  1. 電荷保存は Cdvdt=(E−v)/R−ID なので

RCdudt=h+2u−u3.

h=0 では u(2−u2)=0 より,v=(2−2)V∗,2V∗,(2+2)V∗.定常値 us からのずれを ξ とすると RCdξdt=(2−3us2)ξ が1次の式である.外側2つは係数 −4 で安定,ξ=ξ(0)e−4t/(RC),緩和時間は RC/4.中央は係数2で不安定である.−2<u<0 では −2 に向かう符号,0<u<2 では 2 に向かう符号となるため,v(0)<2V∗ なら下の安定値,v(0)>2V∗ なら上の安定値へ近づく.ちょうど中央から出発すれば模型上は中央にとどまる.

  1. 定常値の条件は h=g(u)=u3−2u.g′(u)=3u2−2 の零点は u=±a,a=2/3.g(−a)=4a/3,g(a)=−4a/3 だから,異なる3根をもつ範囲は −hc<h<hc,hc=42/3/3.外側は安定,中央は不安定である.起電力を上げて下の枝をたどると h=hc で安定値が消滅し,上の枝へ移る.下げると h=−hc で逆に移る.したがって跳び移る起電力の準静的極限は

Eup=V∗(5+4323),Edown=V∗(5−4323).

この2つが異なるため,上げ下げで履歴が残る.近傍の定常値は与えた特性の範囲内にあり,境界 u=±2 での電圧変化も内側へ向く.

  1. 上側の消滅点は uc=−a.u=−a+y とおくと

h+2u−u3=−δ+3ay2−y3.

δ が十分小さいと,近傍の定常値は y≈±δ/(3a).安定なのは負の根である.右辺の傾きは 6ay−3y2≈−23aδ なので

τrel≈RC23aδ.

近似には δ が1より十分小さく,さらに安定値からのずれ |ξ| が δ/(3a) より十分小さいことが必要である.緩和が遅くなるため,有限速度で電源を変えると(2)の準静的な跳び移りからずれる.

電源からの電流を IR=(E−v)/R とすると,蓄積エネルギー U=Cv2/2 の収支は

dUdt=v(IR−ID)=EIR−RIR2−vID.

右辺は電源の仕事率から抵抗と素子の消費電力を引いた値である.−2≤u≤2 で u3−3u+3≥1 だから vID≥0.微分抵抗が負でも,素子の消費電力は負ではなく,エネルギー保存に反しない.

演習 5

オリジナル ★★★★★

容量 C のコンデンサーをA,O間とB,O間に1個ずつ置く.抵抗 R をA,O間,抵抗 2R をB,O間,別の抵抗 R をA,B間につなぐ.Oを電位の基準とする.コンデンサーの初期電圧をそれぞれ V>0,0 とし,電源を外した後の時刻0に3本の抵抗を同時につなぐ.電圧を vA,vB とする.

  1. 電荷保存から2つの微分方程式を立て,vA(t),vB(t) を求めよ.vB が最大となる時刻と最大電圧を求め,それぞれ RC,V を単位として数値で示せ.

  2. 3本の抵抗がそれぞれ失う全エネルギーを求めよ.

  3. 同じ回路で初期電圧を vA(0)=a,vB(0)=b に変更し,初期エネルギー U0=C(a2+b2)/2>0 を固定する.A,B間の抵抗で失うエネルギーを最大にする b/a と,U0 に対する最大の割合を求めよ.負の初期電圧も準備できるものとする.

AとO,BとOの間に容量Cを1個ずつ置き,AとOにはR,BとOには2R,AとBにはRをつなぐ.初期電圧Vと0,変更時のaとbは,Oを基準とする上側電圧の符号で表す. AとO,BとOの間に容量Cを1個ずつ置き,AとOにはR,BとOには2R,AとBにはRをつなぐ.初期電圧Vと0,変更時のaとbは,Oを基準とする上側電圧の符号で表す.
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考え方
2つの電圧は連成して減衰する.時間変化は2つの指数関数で解き,全発熱は電圧の積の積分を使うと簡単になる.

  1. 各接続点の電荷保存より

RCdvAdt=−2vA+vB,RCdvBdt=vA−32vB.

x=t/(RC) とし,vA=Ae−kx,vB=Be−kx を代入すると (2−k)A−B=0,−A+(3/2−k)B=0.係数の行列式は (2−k)(3/2−k)−1=0,すなわち k2−7k/2+2=0.s=17,k−=(7−s)/4,k+=(7+s)/4 とすれば,初期条件を満たす係数は

vA=V2s[(s−1)e−k−x+(s+1)e−k+x],vB=2Vs(e−k−x−e−k+x).

実際に vA(0)=V,vB(0)=0,dvAdx(0)=−2V となる.dvBdx=0 は k+e−k+x=k−e−k−x だから

xp=2sln⁡k+k−,vB,p=2Vs(e−k−xp−e−k+xp).

数値では tp=0.656RC,vB,p=0.224V.微分は初め正,十分後は負なので唯一の最大である.

  1. (3)にも使うため,一般の初期電圧 a,b で積分する.JAA=∫0∞vA2dx,JAB=∫0∞vAvBdx,JBB=∫0∞vB2dx とする.微分方程式から2乗と積を微分し,終状態 vA=vB=0 を使うと

4JAA−2JAB=a2,3JBB−2JAB=b2,72JAB−JAA−JBB=ab.

最初の2式を最後の式へ入れると JAB=(3a2+12ab+4b2)/28.これを戻して

JAA=17a2+12ab+4b256,JBB=4a2+16ab+24b256.

dt=RCdx だから,A,O間の熱は QAO=CJAA,B,O間は QBO=CJBB/2,A,B間は QAB=C(JAA−2JAB+JBB).a=V,b=0 として

QAO=17CV256,QBO=CV228,QAB=9CV256.

合計は CV2/2 で初期エネルギーに等しい.

  1. 一般の式から QAB=C(9a2−20ab+12b2)/56.r=b/a とすると

QABU0=9−20r+12r228(1+r2),ddr(QABU0)=20r2+6r−2028(1+r2)2.

停留条件は 10r2+3r−10=0.負の根 r=−(3+409)/20 が最大を与え,正の根は最小を与える.a=0 の場合の割合 3/7 とも比較すると,大域的な最大は

ba=−3+40920≈−1.16,QAB,maxU0=21+40956≈0.736.

逆極性に準備してA,B間の電圧差を大きくすると,その枝への散逸を増やせる.最大割合は1より小さく,他の抵抗にも必ず熱が出る.2つの減衰時間のうち短いものは RC/k+ なので,集中定数近似には ℓk+/(cRC) が十分小さい必要がある.

12第21章のまとめ

この章では,第20章で止まっていた電荷を動かしました.導体の中の電場は0という結果は電荷が落ち着いた後の話で,電池が電荷を送り続ける導線の中には表面の電荷が作る電場があり,それが電子を押し続けます.衝突を繰り返す電子の平均の運動からオームの法則とジュール熱が出て,電荷の保存と静電場が保存場であることからキルヒホッフの2つの法則が出ました.コンデンサーを含む回路では電流が時間とともに変わりますが,各瞬間にキルヒホッフの法則を書けば,どの量も時定数 τ で目標の値に近づく指数関数になります.そのすべてを支えているのが,光が回路を横切る時間より十分ゆっくりした変化だけを考える集中定数回路の近似です.

定義と法則

定義 電流と電流密度

断面を時間 Δt に電荷 ΔQ が通るとき,I=ΔQ/Δt を電流という.向きは正の電荷が動く向きで,金属の電子は電流と逆向きに進む.数密度 n の電子が平均の速さ(ドリフト速度)vd で動くと

I=enSvd,j=IS=envd

で,電流の向きを向く j を電流密度という.銅の導線では vd は 10−4ms−1 程度にすぎない.

法則 電荷の保存

閉じた面から出ていく電流は,中の電荷が減る速さに等しい.定常電流では閉じた面から出る電流の和は0で,これがキルヒホッフの第1法則になる.各点では連続の式 ∇⋅j=−∂ρq/∂t と書け,定常電流では ∇⋅j=0.

法則 オームの法則

衝突から次の衝突までの平均の時間を τ とすると,電子は vd=eEτ/m で流れ(向きは電場と逆),

j=1ρE,ρ=mne2τ

となる.長さ ℓ,断面積 S の一様な導線では V=RI,R=ρℓ/S.vd が熱運動の速さよりずっと小さく,電場の変わる時間が τ よりずっと長いときに成り立つ.強い電場をかけた気体や半導体,温度が大きく変わる電球のフィラメントでは破れる.

定義 起電力と内部抵抗

電池の中で化学反応による力が単位電荷にする仕事を起電力 E,電池の中の物質の抵抗を内部抵抗 r という.端子電圧は V=E−rI で,EI=VI+rI2 と,電池の仕事が外へ渡す電力と内部の発熱に分かれる.r=0 の電池が理想電圧源,E/r を一定に保って E と r をともに大きくしたものが定電流源である.

法則 キルヒホッフの法則

第1法則:接続点に流れこむ電流の和は,流れ出す電流の和に等しい.電荷の保存から出る.

第2法則:どの閉じた道を一周しても,起電力の和は電圧降下の和に等しい.静電場が保存場であることから出る.磁場が時間とともに変わる所では書き換えが要る(第23章).

定理 テブナンの定理

理想電圧源・理想電流源と抵抗だけからなる回路を2つの端子から見ると,起電力 Vth の理想電圧源と抵抗 Rth の直列と同じにふるまう.Vth は端子を開いたときの電圧,Rth は電圧源を導線に,電流源を切れた導線に置き換えたときの合成抵抗である.キルヒホッフの法則が1次式で,解を重ね合わせられることから出る.

ポイント コンデンサーを含む回路の決まり

  • コンデンサーの電圧は v=q/C,+q の極板へ流れ込む電流は I=dq/dt.各瞬間にキルヒホッフの2つの法則が成り立つ.

  • q と v は切り替えの瞬間に跳ばない(電流は跳んでよい).直後の未充電のコンデンサーは導線と同じ.

  • 十分時間がたつと,コンデンサーへ流れ込む電流は0になる.

  • 孤立部分では,そこにつながる極板の電荷の和(符号つき)が変わらない.

定義 時定数

抵抗 R とコンデンサー C の回路で,τ=RC を時定数という.単位は s.時間 τ で目標の値との差が e−1≈0.37 倍に縮み,5τ で 1 % 以下になる.抵抗が多い回路ではコンデンサーの両端から見た Rth を使い τ=RthC.

ポイント 集中定数回路として扱える条件

回路の大きさ ℓ と光の速さ c について,無次元量 ℓ/(cτ) が1よりずっと小さいこと.電子の衝突時間が τ よりずっと短いこと,自己誘導(第23章)が無視できることも前提にしている.信号が 10−9s ほどで変わる回路では破れ,導線を伝わる波として扱う.

手順

ポイント 回路の問題を解く手順

  1. 各枝の電流の向きを仮に決め,接続点ごとに第1法則,独立な閉じた道ごとに第2法則を書く.負の答えは実際の向きが逆であることを表す.接続点の電位を未知数にすれば,第2法則は自動的に満たされる.

  2. 対称な回路では,等電位と分かる点どうしをつないでも外してもよい.無限に続くはしご型では,1段先にも同じ回路が続くことから方程式を作る.

  3. 1本の枝の電流だけが要るなら,その枝を外した残りをテブナンの回路にまとめ,I=Vth/(Rth+R) とする.

  4. 測定器も回路の一部として式に入れる.電流計は直列で内部抵抗 RA が小さいほど,電圧計は並列で内部抵抗 RV が大きいほどよい.

  5. 非線形素子は,特性曲線と回路の側の直線 V=E−RI の交点(動作点)を探す.小さな変化には,素子を微分抵抗 rd=dV/dI に置き換える.V/I ではない.

  6. コンデンサーが1つなら,直前の電荷から直後の値 x0 を,コンデンサーへの電流を0として十分後の値 x∞ を,Rth から時定数を出し,x=x∞+(x0−x∞)e−t/τ とする.2つ以上なら孤立部分の電荷の和で前後をつなぐ.

  7. エネルギーは,電池の仕事,コンデンサーのエネルギー,抵抗の熱の収支で確かめる.

主な公式

  • 電流:I=enSvd,j=envd,連続の式 ∇⋅j=−∂ρq/∂t

  • オームの法則:j=E/ρ,ρ=m/(ne2τ),V=RI,R=ρℓ/S

  • 抵抗率と温度:ρ=ρ0(1+αθ)(αθ が1よりずっと小さいとき.銅で α≈4×10−3K−1)

  • ジュール熱:P=IV=I2R=V2/R,単位体積あたり jE=ρj2

  • 電池:V=E−rI,取り出せる仕事率は外の抵抗を r にしたときの E2/(4r) が最大

  • 小片の抵抗の積分:R=∫0ℓρ(x)S(x)dx,放射状なら R=∫abρA(r)dr.同軸ケーブルの漏れ抵抗 Rℓ=ρ2πℓln⁡ba,RℓC=ρεrε0

  • 合成抵抗:直列 R=R1+R2,並列 1R=1R1+1R2,R1∥R2=R1R2R1+R2

  • 分流器 Rs=IgRg/(I−Ig)(並列),倍率器は計器と合わせて全体を V/Ig にする(直列)

  • ブリッジの平衡:R1/R2=R3/R4.電位差計:Ex=Esℓx/ℓs

  • テブナン:V=Vth−RthI

  • 抵抗の測定:電流計を内側に入れると V/I=R+RA,電圧計を内側に入れると V/I=R∥RV.R>RARV なら前者が正確

  • 微分抵抗:rd=dV/dI,δV=rdδI

  • 充電:q=CE(1−e−t/RC),I=ERe−t/RC.放電:q=CV0e−t/RC,熱は 12CV02

  • 充電のエネルギー:電池の仕事 CE2 のうち 12CE2 がたまり,残りの 12CE2 が R によらず熱になる

  • 2つのコンデンサーを抵抗でつなぐ:vf=C1V0C1+C2,τ=RCs,Cs=C1C2C1+C2,熱は 12CsV02

各題材の問いへの答え

  • 電流と抵抗:流れているのは電子だが,その歩みは1秒に 0.1mm ほどにすぎない.スイッチを入れると導線の表面の電荷の分布が変わり,それに伴う電場の変化が光に近い速さで導線に沿って伝わる.電場が届くと,フィラメントの中にもともといた電子が動き出して格子とぶつかり,熱を生む.だから電灯は待たずにつく.

  • 直流回路とキルヒホッフの法則:直列にも並列にもならない回路の電流も,各接続点の電荷の保存と各閉じた道の電圧の収支を同時に満たすように1通りに決まる.5本目の電流だけなら,残りをテブナンの回路にまとめて I=Vth/(Rth+R5) とすればよい.4辺が R1/R2=R3/R4 を満たせば,5本目には電流が流れない.

  • コンデンサーの充電と放電:電池の内部抵抗のために,電池から直接取り出せる仕事率は数 W にとどまる.フラッシュは,電池から数秒かけて 150μF のコンデンサーを 300V まで充電して約 7J をため,それを 2Ω ほどの放電管を通して時定数 3×10−4s で出す.ためる時間と出す時間を別々の時定数で選べるので,最初の仕事率は 4.5×104W ほどになる.

この章で使った数学

断面や抵抗率が場所で変わる導体を薄い小片に切って足す積分,(1+x)n≈1+nx と 1/(1+x)≈1−x の1次の近似とその誤差 x2 の見積もり,そして目標の値に近づく1階の微分方程式 τdy/dt=y∞−y とその解 y=y∞+(y0−y∞)e−t/τ がありました.最後の方程式は第4章の線形の空気抵抗の落下と同じ形で,初めの接線は t=τ で目標の値に届き,差が半分になる時間は τln⁡2 です.測定から時定数を読むには片対数グラフを使い,ln⁡|y∞−y| が傾き −1/τ の直線に乗るかどうかで模型を確かめます.電流が磁場を作ることは第22章で,磁場の変化が第2法則を書き換えることは第23章で扱います.