問いしるべ
参考書

問いから始める物理

公式参考書

問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 9節
  1. 場の重ね合わせと対称性
  2. 回路の中のエネルギー
  3. 場の中の荷電粒子
  4. 動く導体と誘導
  5. 波と光の重ね合わせ
  6. 放射とエネルギーの流れ
  7. 測定から模型を決める
  8. 東大の電磁気・波の過去問を発展させる
  9. 東大の電磁気・波の過去問を発展させる

第28章  電磁気と波の総合演習

01場の重ね合わせと対称性

第20章の電場の重ね合わせ,ガウスの法則,電位と導体の境界条件を,第6章のエネルギー,第7章の振動,第8章の角運動量と組み合わせます.対称性は計算を短くしますが,つり合いの安定性までは保証しません.固定した電荷と電源につないだ導体を区別し,何が力学系へ仕事をするかを確かめよ.近似で捨てた項の大きさも調べます.

総合演習 1

オリジナル ★★★★★

2つの帯電リングで復元力を調整する

半径 R の細い絶縁リング2個を,共通の z 軸に垂直に,中心が z=±a となるよう固定します.各リングに負の電荷 −Q を一様に分布させます.Q>0 です.質量 m,電荷 q>0 の小粒子は,電気的な影響を無視できる滑らかな案内により z 軸上だけを動きます.リングの分布は粒子によって変わらず,重力,相互の変形,放射と抵抗を無視します.クーロン定数を ke=1/(4πε0) とします.

同符号に帯電した2つのリングと軸上の粒子を描く.半径 \(R\),中心の位置 \(\pm a\),粒子の座標 \(z\),案内を示す. 同符号に帯電した2つのリングと軸上の粒子を描く.半径 \(R\),中心の位置 \(\pm a\),粒子の座標 \(z\),案内を示す.
  1. 無限遠を基準にした軸上の電位 V(z) と電場 Ez(z) を求めよ.原点のつり合いが軸方向に安定となる a/R の範囲と,小振動の角振動数を求めよ.

  2. 小振動の線形の復元力が消えるときの a を ac とします.その配置で粒子の位置エネルギーを U(z)=U(0)+βz4+⋯ と展開し,β を求めよ.振幅 A から静かに放した運動の周期を定積分で表し,∫01(1−s4)−1/2ds=1.311 を用いて係数を評価してください.1≫A/R とします.

  3. 間隔を少し増し a=ac+δa,0<δa/R が十分小さい場合,原点近くの新しいつり合い位置と各位置の小振動の角振動数を求めよ.また,a=ac で次の周期を測りました.線形の単振動模型と4次の位置エネルギーの模型を比較し,後者から β/m を決める式を示せ.最後に,案内を外した場合の安定性を検討せよ.

振幅

周期(s)

A

2.40±0.03

2A

1.21±0.03

解答を見る

考え方

リングの各点から軸上までの距離は等しい.まず電位を加え,位置エネルギーの2次と4次の項を分ける.案内で横方向の運動を除いた1自由度の模型であり,静電場だけによる空間全体での閉じ込めとは区別する.

  1. 一方のリングでは dV=kedq/R2+(z−a)2 であり,電荷を積分すると −keQ/R2+(z−a)2 となる.したがって

V(z)=−keQ[1R2+(z−a)2+1R2+(z+a)2],
Ez=−dVdz=−keQ[z−a(R2+(z−a)2)3/2+z+a(R2+(z+a)2)3/2].

偶関数の電位だから Ez(0)=0.D=R2+a2 と置くと,U=qV の曲率は

K=d2Udz2∫|z=0=2keqQ(R2−2a2)D5/2.

md2zdt2=−Kz より,0≤a/R<1/2 で線形の安定性を持ち,ω=K/m.a/R>1/2 では小さな変位と同方向の力となる.等号では次の4次項が正なので軸方向には安定だが,振動は単振動ではなく,線形の角振動数は0となる.

  1. 一つのリングの距離因子を4階微分すると,z=0 で (9R4−72R2a2+24a4)/D9/2 となる.両リングの寄与を足して 4!=24 で割り,ac=R/2 を入れると

β=7keqQR44(3R2/2)9/2>0.

2次の項が消えても Fz≃−4βz3 は復元力である.エネルギー保存は

m2(dzdt)2+βz4=βA4.

四分の一周期は A から0への移動なので,

T=4m2β∫0AdzA4−z4=4(1.311)Am2β≃3.708Amβ.

振幅を0に近づけると周期は発散する.これは力がなくなることではなく,原点近くの復元力が変位の3乗まで小さくなることを表す.

  1. ac で K=0 なので,曲率の分母の変化は1次の K に寄与しない.Dc=3R2/2 と置くと

K≃−8keqQacDc5/2δa<0,U−U(0)≃K2z2+βz4.

停留条件 z(K+4βz2)=0 から,原点以外に

z±=±−K4β,z±2≃187acδa

を得る.新しい位置の曲率は K+12βz±2=−2K>0 で,角振動数は ω±≃−2K/m.原点は不安定となり,軸方向の谷が2つへ分かれる.近似には δa/R と |z±|/R が十分小さいこと,各谷の振動振幅が |z±| より十分小さいことが要る.

測定の周期比の公称値は 1.21/2.40=0.504.誤差上限から比は 1.18/2.43=0.486 から 1.24/2.37=0.523 の間である.単振動なら比は1,4次の模型なら T(2A)/T(A)=1/2 なので後者に整合する.振幅 A を別に測れば

βm=8(1.311)2A2T(A)2

で決まる.小さな読取誤差の上限は1次で |δ(β/m)|/(β/m)≤2|δA|/A+2|δT|/T と見積もれる.これだけでは未測定の大振幅まで4次の模型が使えるとはいえない.

間隔に誤差があると2次のエネルギーが戻る.4次の運動として扱うには,測定振幅で |K|/(βA2) も十分小さい必要があり,単に A/R を小さくするだけでは足りない.また真空の原点近傍には電荷がないので,V はラプラス方程式を満たす.軸上では軸対称性から ∂2V∂x2=∂2V∂y2,従って ∂2V∂x2=∂2V∂y2=−12∂2V∂z2 である.軸方向に正の曲率がある原点や新しいつり合い位置では,横方向の曲率が負なので案内なしでは不安定である.a=ac の原点では2次の曲率がすべて0となるため,4次まで調べる.軸からの距離を ϱ=x2+y2 とし,軸対称な4次項を βz4+c4z2ϱ2+d4ϱ4 と置く.ラプラス方程式は (12β+4c4)z2+(2c4+16d4)ϱ2=0 を与えるので,c4=−3β,d4=3β/8.従って

U−U(0)≃β(z4−3z2ϱ2+38ϱ4).

軸上では正だが ϱ=|z| の方向では −13βz4/8<0 となるので,この場合も原点は空間全体では不安定である.β の次元は Jm−4 であり,求めた周期は時間の次元を持つ.

総合演習 2

オリジナル ★★★★☆

浮いた導体板の電荷がばねを柔らかくする

面積 S の平行な固定導体板を x=−d,x=d に置き,理想電源でそれぞれの電位を V/2,−V/2 に保ちます.間に同面積,質量 m の薄い導体板を置き,電荷 Q を与えて電気的に孤立させます.中央板の変位を x とし,水平案内に沿って −d<x<d の範囲で動かします.中央板には x=0 を自然長の位置とするばね定数 k のばねをつなぎます.重力,摩擦,板厚,端の電場を無視し,電荷分布は運動に対し十分速く平衡化するとします.α=ε0S と置きます.

3枚の導体板,中央板のばねと水平案内,外板間の理想電源を描く.外板の電位,左右の間隔 \(d+x\),\(d-x\),中央板の全電荷 \(Q\) を示す. 3枚の導体板,中央板のばねと水平案内,外板間の理想電源を描く.外板の電位,左右の間隔 \(d+x\),\(d-x\),中央板の全電荷 \(Q\) を示す.
  1. 中央板の電位 Vm と左右の隙間の電場 EL,ER を,右向きを正として求めよ.中央板の左右の面の電荷の和が Q であることを確かめよ.

  2. 片側の電場による圧力 ε0E2/2 を用い,中央板への電気力とばねを含めた運動方程式を求めよ.安定な平衡位置,振動数,板に接触せずに振動する振幅の条件を示せ.

  3. 中央板を x1 から x2 へゆっくり動かします.電場のエネルギー変化,電源の仕事,外力の仕事を求め,電場のエネルギーだけを微分すると誤る理由を示せ.次に V=0 のまま Q を増す操作と,Q=0 のまま V を増す操作を比較し,どちらが小振動数を下げるか説明せよ.

解答を見る

考え方

中央の孤立板では全電荷を保存し,外板では電位を固定する.力には左右の電場の圧力差を使う.準静的な平行板模型を用い,電源が受け渡す電荷も収支に入れる.

  1. 左右の容量は CL=α/(d+x),CR=α/(d−x).中央板の電荷保存は

Q=CL(Vm−V2)+CR(Vm+V2).

両辺に (d2−x2)/α を掛けて整理すると,

Vm=Q(d2−x2)2αd−Vx2d.

電位が低下する向きを正として,

EL=V/2−Vmd+x=V2d−Q(d−x)2αd,ER=Vm+V/2d−x=V2d+Q(d+x)2αd.

中央板の左面は −αEL,右面は αER の電荷を持つ.差 α(ER−EL)=Q が保存された全電荷である.各面の電荷を最初から等量異符号とすることはできない.

  1. 右面の圧力は右向き,左面の圧力は左向きなので,

Fe=α2(ER2−EL2)=QV2d+Q2x2αd.

従って k∗=k−Q2/(2αd) と置けば

md2xdt2=QV2d−k∗x.

k∗>0 の場合,xe=QV/(2dk∗),ω=k∗/m,振動数は f=ω/(2π).この平衡が装置内に存在する条件は |xe|<d.平衡からの振幅 A は A<d−|xe| でなければならない.この平行板模型では合力が厳密に変位の1次式なので,振幅が小さいという近似を使わなくても単振動となる.

k∗<0 のつり合いは不安定である.k∗=0 では QV≠0 なら一定の力で加速し,QV=0 なら変位への復元力がなく中立である.後者を正の振動数を持つ安定な振動と呼ぶことはできない.

  1. 両隙間の場を積分したエネルギーは

U=α2[EL2(d+x)+ER2(d−x)]=αV24d+Q2(d2−x2)4αd.

よって ΔU=−Q2(x22−x12)/(4αd).左外板の内面の電荷は

QL=αEL=αV2d−Q(d−x)2d.

右外板の内面の電荷は QR=−αER.両外板の変化は dQR=−dQL なので,電源の仕事は

dWs=V2dQL−V2dQR=VdQL,Ws=QV2d(x2−x1).

速度を無視する操作で,ばねのエネルギー増加を ΔUk=k(x22−x12)/2 とすると,Ws+Wext=ΔU+ΔUk.従って

Wext=k∗2(x22−x12)−QV2d(x2−x1).

この式の微分はばねと電気力の合力の負となる.−dUdx だけでは QV/(2d) の力を落とす.電源の仕事を除いて力学に使える関数は,ばねも含めて k∗x2/2−QVx/(2d) である.

V=0 でも外板間は短絡されて電荷を交換でき,Q が増すと k∗ が減る.一方 Q=0 なら両側の電場が等しく,V を増しても中央板の合力と振動数は変わらない.これは外板を固定電荷にした比較ではない.端の効果を捨てるには最大隙間と板の代表幅の比が十分小さく,準静的には ωd/c が十分小さい必要がある.Q→0 で ω→k/m,Q2/(αd) の次元がばね定数となることも確かめられる.

総合演習 3

オリジナル ★★★★☆

逆1乗の電気力で回る粒子の軌道

半径 a の十分長い固定導体円筒に,単位長さあたり −λ の電荷を与えます.λ>0 です.真空中で電荷 q>0,質量 m の粒子を円筒軸に垂直な平面内で動かします.粒子自身による誘導電荷の変化,重力,放射,衝突を無視します.円筒からの距離に比べ両端は十分遠いとし,角運動量の大きさを J>0,κ=qλ/(2πε0) と置きます.粒子が表面へ達したら吸収されるものとします.

負に帯電した円筒の断面と外側の粒子を描く.表面半径 \(a\),粒子の極座標 \(r,\theta\),初期速度の径方向と接線方向の成分を示す. 負に帯電した円筒の断面と外側の粒子を描く.表面半径 \(a\),粒子の極座標 \(r,\theta\),初期速度の径方向と接線方向の成分を示す.
  1. 円筒を囲むガウス面から外部の電場を求めよ.表面の電位を0とした粒子の位置エネルギーと,径方向の運動に用いる有効ポテンシャルを導いてください.

  2. 円軌道の半径 r0,速さ,角振動数を求めよ.r0>a の場合に,円軌道の近くの径方向振動が安定であることを示し,径方向の角振動数と公転の角振動数の比を求めよ.

  3. 円軌道の位置で接線速度を変えず,径方向だけに速さ u を与えます.表面に衝突せず運動する u の厳密な条件を求めよ.さらに微小な径方向振動で,連続する最接近点の間の方位角を求め,軌道が一般には閉じない理由を説明せよ.

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考え方

ガウスの法則で場を決め,中心力の角運動量を保存して径方向を1自由度へ減らす.試験粒子の近似と無限長近似のもとで,電気力は距離の逆1乗である.逆2乗の重力の円軌道とは振動数の比が変わる.

  1. 半径 r>a,長さ ℓ の円筒面では電場は径方向で側面上一定,端面の流束は0である.外向きを正とすると

Er(2πrℓ)=−λℓε0,Er=−λ2πε0r.

表面からの電位差は V(r)=−∫arErdr=λln⁡(r/a)/(2πε0).無限遠では対数が発散するため,無限遠を基準にすることはできない.U=κln⁡(r/a) で,−dUdr=−κ/r は内向きの力となる.

接線速度は rdθdt=J/(mr) なので,エネルギーは

E=m2(drdt)2+Ueff(r),Ueff=J22mr2+κln⁡ra.

遠心力の項は電位そのものではなく,保存する角運動量を用いて運動エネルギーの一部を書き替えた項である.

  1. dUeffdr=−J2/(mr3)+κ/r=0 より

r0=Jmκ,v0=Jmr0=κm,Ω=v0r0=κJ.

円軌道の速さは半径に依存しない.曲率は 3J2/(mr04)−κ/r02=2κ/r02>0 なので,ξ=r−r0 に対し

md2ξdt2≃−2κr02ξ,ωr=2κmr02=2Ω.

J>amκ なら谷が表面の外にある.それ以外では外側に円軌道の谷はない.

  1. 付与するエネルギーは mu2/2 で,角運動量は変わらない.a<r0 では a<r<r0 で有効ポテンシャルは内側へ向かって増す.表面の高さに達しなければ衝突しないので,必要十分な条件は

mu22<Ueff(a)−Ueff(r0)=κ[r022a2−12−ln⁡r0a].

右辺の括弧は h=r0/a>1 に対して,h=1 で0,微分 h−1/h>0 なので正である.等号は速さ0で表面に触れる場合で,吸収を避ける条件から除く.対数項は外へ向かって無限に増すため,外向きに与えた有限の u でもいずれ戻り,同じ条件で内側の衝突を判断できる.

小振動では ξ の周期は 2π/ωr.dθdt=Ω(r0/r)2≃Ω(1−2ξ/r0) であり,1周期の ξ の平均は0なので,最接近点間の方位角は先頭の近似で 2πΩ/ωr=2π.これは 2π の有理数倍ではなく,一般に同じ位置と向きへ戻らない.有限振幅ではこの角度にも補正がある.近似には径方向の振幅と半径の比 Ar/r0 が十分小さく,かつ Ar<r0−a が要る.κ はエネルギーの次元を持ち,r0→a で許される径方向の付与エネルギーが0になることも装置の境界と整合する.

02回路の中のエネルギー

第20章のコンデンサーのエネルギー,第21章の電荷保存と非線形素子,第23章の自己誘導,相互誘導,複素インピーダンスを組み合わせます.第7章の複素指数関数と,第16章の熱の収支も使います.電流を止める素子の役割と,抵抗による平衡化を区別してください.交流は複素数で解きます.

総合演習 4

オリジナル ★★★★☆

一方向の電荷移送で電圧差を残す

容量 C1,C2 のコンデンサーの下側の極板を共通に接続します.上側の極板の初電位は V1>V2≥0 です.充電用の電源を切り離した後,上側の極板間を抵抗 R>0,自己インダクタンス L のコイル,スイッチで直列に接続します.電流 I は1から2へを正とし,初め0です.C∗=C1C2/(C1+C2),Δ0=V1−V2,α=R/(2L),ω0=1/LC∗ と置き,α<ω0 とします.素子は集中定数として扱い,配線の抵抗と放射を無視します.

共通の下側導体と2つのコンデンサーを描き,上側極板間に抵抗,コイル,スイッチを直列に置く.1から2への正電流と初電位を示す. 共通の下側導体と2つのコンデンサーを描き,上側極板間に抵抗,コイル,スイッチを直列に置く.1から2への正電流と初電位を示す.
  1. 電荷保存から電位差 Δ(t) と電流 I(t) を求めよ.特性方程式を複素数の根で解いてください.十分後の共通電位と発熱も求めよ.

  2. 直列に理想ダイオードを加え,1から2への電流だけを許します.順方向の電圧降下と逆電流は0です.最初の電流0で遮断されるとして,停止後の両電位,全ジュール熱,コンデンサーに残るエネルギーを求めよ.C1=2.0μF,C2=3.0μF,L=12mH,R=20Ω,V1=12V,V2=2.0V で数値も求めよ.

  3. ダイオードの順方向に一定の電圧 Vd を消費する模型へ変えます.0<Vd<Δ0 として,停止時の電位差,ダイオードが受け取るエネルギー,抵抗の発熱を求めよ.抵抗だけの接続と損失を比較せよ.

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考え方

ダイオードは電流が0となった境界で遮断し,それまでは通常の回路の式に従う模型とする.

  1. 上側電荷は Q1=C1V1(t),Q2=C2V2(t) で,dQ1dt=−I,dQ2dt=I.よって Q1+Q2=QΣ 一定であり,Vc=QΣ/(C1+C2) と置けば

V1(t)=Vc+C2C1+C2Δ(t),V2(t)=Vc−C1C1+C2Δ(t),I=−C∗dΔdt.

回路の式 LdIdt+RI=Δ に代入すると

d2Δdt2+2αdΔdt+ω02Δ=0.

est の代入から根は s=−α±iω,ω=ω02−α2.Δ(0)=Δ0,dΔdt(0)=0 を満たす複素指数関数の実数の組合せは

Δ=Δ0e−αt(cos⁡ωt+αωsin⁡ωt),I=Δ0Lωe−αtsin⁡ωt.

全電気エネルギーは

U=QΣ22(C1+C2)+C∗Δ22+LI22,dUdt=−RI2.

十分後は Δ=I=0 で両電位が Vc,ジュール熱は H∞=C∗Δ02/2.

  1. 0<t<π/ω で I>0 なので,この間の解は(1)と同じ.ts=π/ω,r=e−πα/ω と置くと,I(ts)=0,Δs=−rΔ0<0.このあと逆電流を遮断する.最終電位は

V1s=Vc−C2C1+C2rΔ0,V2s=Vc+C1C1+C2rΔ0.

コンデンサーの残留エネルギーは QΣ2/[2(C1+C2)]+C∗r2Δ02/2,熱は Hs=C∗Δ02(1−r2)/2 である.

数値では C∗=1.2μF,Vc=6.0V,α=8.33×102s−1,ω=8.29×103s−1.計算途中の値は ts=0.379ms,r=0.729 なので,V1s≃1.6V,V2s≃8.9V.有効数字2桁で,初エネルギーは 1.5×102μJ,残留は約 1.2×102μJ,発熱は約 28μJ.ダイオードなしで十分待てば 60μJ を失う.

  1. 導通中は LdIdt+RI=Δ−Vd.w=Δ−Vd と置くと(1)と同じ方程式で,初期値を Δ0−Vd に替えればよい.停止時刻は同じで,

Δs=Vd−r(Δ0−Vd).

Δs<Vd だから再導通せず,移動した電荷は Qtr=∫0tsIdt=C∗(Δ0−Δs).従って

Wd=VdC∗(Δ0−Δs),HR=C∗2(Δ0−Vd)2(1−r2).

発熱は C∗w2/2+LI2/2 の減少を使ったものである.コンデンサーのエネルギー差は,

C∗2(Δ02−Δs2)=HR+Wd

となり,ダイオードの消費を含めて収支が合う.

理想ダイオードで R→0 なら r→1,コイルがいったん受け取ったエネルギーをコンデンサーへ返し,ダイオードが逆電流を止めるため損失は0へ近づく.抵抗だけの平衡化では差の成分を全て熱にする.一定電圧降下の模型も,その接続の損失 C∗Δ02/2 に比べて C∗Δs2/2 だけ損失が少なく,Δs=0 なら等しい.R=0 のダイオードなしの回路は振動し続ける.集中定数近似には回路長 ℓ に対し ω0ℓ/c が十分小さいことが要る.

総合演習 5

オリジナル ★★★★★

結合コイルで負荷へ渡る電力を最大にする

一次側に抵抗 R1,自己インダクタンス L1,可変容量 C を直列に置き,電圧 V(t)=V0cos⁡ωt の理想電源で駆動します.二次側はコイル L2 と可変抵抗 R2>0 の閉回路です.相互インダクタンスは M>0,M2<L1L2 とします.巻き方向と電流の正方向は,磁気エネルギーの交差項が +MI1I2 となるよう定義します.素子は線形で温度によらず,漏れ容量と放射を無視します.複素振幅を I^1,I^2 とし,実際の電流は I^jeiωt の実部です.

電源と直列の \(R_1,L_1,C\),別の閉回路の \(L_2,R_2\) を描き,相互インダクタンス \(M\) と指定された正電流の向きを示す. 電源と直列の \(R_1,L_1,C\),別の閉回路の \(L_2,R_2\) を描き,相互インダクタンス \(M\) と指定された正電流の向きを示す.
  1. 複素数で回路の式を立て,二次電流と一次の入力インピーダンスを求めよ.二次側の寄与の実部と虚部を分離せよ.

  2. 一次電流が電源と同位相となるよう C を調整します.二次電力と電源出力の平均を求めよ.R2=5.00Ω,L2=5.00mH,ω=1.00×103s−1 で,電流振幅の比が 0.566±0.006 と測定されました.他の誤差を無視し,M と誤差上限を推定せよ.位相差の予測も示せ.

  3. R1=1.0Ω,L1=10mH,L2=5.0mH,M=4.0mH,ω=1.0×103s−1,V0=4.0V とします.各 R2 ごとに C を調整するとき,二次電力を最大にする R2 と対応する C,最大電力を求めよ.一次電流の振幅を一定にする場合の最適値との違いも説明せよ.

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考え方

線形な相互誘導の模型を複素数で解き,二次電流を消去する.負荷が一次電流も変えるため,電圧一定と電流一定の最適化を分ける.

  1. Z2=R2+iωL2 と置くと,

V0=(R1+iωL1+1iωC)I^1+iωMI^2,0=Z2I^2+iωMI^1.

従って I^2=−iωMI^1/Z2 であり,

Zin=R1+i(ωL1−1ωC)+ω2M2R2+iωL2.

D=R22+ω2L22 とすると,二次側の寄与は

Rf=ω2M2R2D,Xf=−ω3M2L2D.
  1. 同位相の条件は ωL1−1/(ωC)+Xf=0 なので,

C=1ω2(L1−ω2M2L2/D),I^1=V0R1+Rf.

ω2M2L2/D<M2/L2<L1 より容量は必ず正となる.I10=|I^1| と置けば,二次電力と一次抵抗の電力は

P2=R22|I^2|2=Rf2I102,P1=R12I102.

電源の平均出力は Re⁡(V0I^1∗)/2=(R1+Rf)I102/2=P1+P2.蓄積エネルギーの周期平均は変わらない.

振幅の比を b とすれば,M=bD/ω.測定条件では D=50Ω なので,M=4.00mH,δM=0.0424mH.誤差上限を丸めて (4.00±0.05)mH と表せる.二次の一次に対する位相差は −π/2−arctan⁡(ωL2/R2)=−3π/4.

  1. 電圧振幅一定での電力は

P2=V022Rf(R1+Rf)2.

Rf に関する微分は V02(R1−Rf)/[2(R1+Rf)3].従って Rf=R1 を実現できればそこで最大である.Rf(R2) は R2=ωL2 で最大 ωM2/(2L2) となる.指定値では最大が 1.6Ω>R1 なので,整合する負荷が2つある.

R1R22−ω2M2R2+R1ω2L22=0

を解くと,有効数字2桁で R2≃1.8Ω,14Ω.未丸めの負荷を容量の式に入れると,対応する容量は約 1.4×102μF,1.0×102μF.最大電力は P2max=V02/(8R1)=2.0W である.

一次電流固定では P2=RfI102/2 より R2=ωL2=5.0Ω が最適.電圧固定では一次電流も変わる.弱結合で ωM2/(2L2)<R1 なら整合に届かず,同じ負荷が最適となる.M→0 で二次電力は0へ戻り,集中定数近似には回路長 ℓ に対し ωℓ/c が十分小さい必要がある.

総合演習 6

オリジナル ★★★★☆

漏れ電流は増えても電源のない温度には上限がある

面積 S,間隔 d の平行板コンデンサーを,比誘電率 εr の弱く導電する材料で満たします.容量は C=ε0εrS/d で温度によらず,漏れ電流は並列抵抗 R(θ)=R0e−θ/Ts で表せます.θ=T−T0 は環境温度からの上昇,Ts>0,R0=ρ0d/S,ρ0 は初期の抵抗率です.材料と極板を合わせた熱容量は Ch,温度は一様とします.この抵抗の式は 0≤θ≤3Ts の範囲で実験に合うものとします.初め θ=0 で電圧 V0 まで充電し,電源を切り離して断熱します.

容量 \(C\) と温度依存の漏れ抵抗を並列に表し,断熱容器内の材料を描く.充電用電源の切り離しと,後半の放熱部の接続を示す. 容量 \(C\) と温度依存の漏れ抵抗を並列に表し,断熱容器内の材料を描く.充電用電源の切り離しと,後半の放熱部の接続を示す.
  1. 電圧 V(t) と温度上昇 θ(t) の連立方程式を立て,全エネルギー保存から θ を V で表せ.η=CV02/(2ChTs)<3,w=V2/V02 と置き,時刻を w の定積分で表せ.初期の時定数の形状依存も調べよ.

  2. 放電中の漏れ電流が初めより増す条件,最大となる電圧を求めよ.C=2.0μF,V0=40V,R0=1.0MΩ,Ch=8.0×10−5JK−1,Ts=10K で最大電流と最終温度上昇を求めよ.

  3. 今度は同じ装置を理想電源につなぎ,電圧 Vs を一定に保ちます.環境への放熱率を Gθ として,温度平衡と安定性を調べよ.平衡が消える電圧を求め,断熱放電との違いを電源の仕事から説明せよ.式の実験的な適用範囲を越えた温度について何がいえるかも述べよ.

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考え方

孤立系では電気と熱の総エネルギーが保存し,電源につなぐと流入が加わる.

  1. 漏れ電流は I=V/R(θ) なので,

CdVdt=−VR(θ),Chdθdt=V2R(θ).

第1式に V を掛けて足すと,ddt(CV2/2+Chθ)=0.初条件から

θ=C(V02−V2)2Ch=ηTs(1−w),dwdt=−2wR0Ceη(1−w).

変数を分け,w=1 から積分すると

t=R0C2e−η∫w1eηuudu.

初期値は R0C=ρ0ε0εr で,面積と厚さが消える.熱容量が変われば放電全体は異なる.

  1. 電流は I=(V0/R0)weη(1−w).dln⁡Idw=1/(2w)−η であり,w は時間とともに減る.η>1/2 なら初めの電流は増え,w∗=1/(2η) で最大となる.η≤1/2 なら最大は初期値である.従って増加する場合,

V∗=V02η,Imax=V0R02ηeη−1/2.

数値では η=2.0,V∗=20V,Imax≃90μA.初電流 40μA より増す.最終温度上昇は θ∞=CV02/(2Ch)=20K.w→0 で定積分は対数的に発散し,電圧は有限時間で厳密な0にはならない.

  1. 電圧固定では Chdθdt=Vs2eθ/Ts/R0−Gθ.y=θ/Ts,b=Vs2/(R0GTs) とすると

dydt=GCh(bey−y),ye−y=b.

左辺は y=1 で最大 1/e となる.0<b<1/e では形式上2つの根があり,y<1 の根は安定,y>1 の根は不安定である.範囲内の根だけを予測として使う.安定性は微小偏差への係数 (G/Ch)(bey−1)=(G/Ch)(y−1) の符号から分かる.

臨界電圧は Vs,c=R0GTs/e.等号の y=1 では線形の係数は0だが,bey−y≃(y−1)2/2 なので,上からの偏差は増し,下からは近づく.両側から戻る安定性はない.b>1/e なら温度は単調に増え,少なくとも経験式の範囲を出るまで平衡はない.

熱は電源の出力 VsI が供給し,孤立系のエネルギー上限は使えない.経験式を越えた発散や破壊時刻も断定できない.温度一様には内部の熱平衡化が電気・熱の変化より速く,集中定数近似には ℓ/(cR(θ)C) が十分小さい必要がある.η→0 で通常の指数放電に戻る.

03場の中の荷電粒子

第20章の電場による仕事と第22章のローレンツ力を,第7章の複素数による振動,第13章の相対論的な運動量と組み合わせます.集束,回転周期の変化,加速電場との位相を比べます.必要な式は問題中で示します.軌道を求めたあとに,通過と安定性の条件を確かめよ.

総合演習 7

オリジナル ★★★★☆

速度の違う粒子が同じ出口へ戻る長さ

0<x<ℓ に,E=Eey,B=Bez の一様な静電場と磁場を作ります.E,B>0,ey,ez は座標の単位ベクトルです.質量 m,電荷 q>0 の粒子を原点から x 方向へ入射させ,初速度を v0=vd+u,vd=E/B,|u|<vd とします.粒子同士の相互作用,重力,放射,端の電場を無視し,速さは光速より十分小さいものとします.y=±h の壁に接触した粒子は吸収されます.ω=qB/m と置きます.

長さ \(\ell\) の場の領域と上下の壁を描く.入射点,初速度,電場の上向き,磁場の紙面手前向き,壁の位置 \(\pm h\) を示す. 長さ \(\ell\) の場の領域と上下の壁を描く.入射点,初速度,電場の上向き,磁場の紙面手前向き,壁の位置 \(\pm h\) を示す.
  1. ローレンツ力の成分から x(t),y(t) を求めよ.複素数 W=(vx−vd)+ivy を用いてよいものとします.単調な前進と,電場の仕事による運動エネルギー変化を確かめよ.

  2. ℓ=2πvd/ω のとき,壁に触れずに u によらず同じ出口点を通ることを示し,出射速度と通過できる u の条件を求めよ.ℓ=πvd/ω に変更した場合の出射位置と速度,速度選択の方法を示せ.

  3. 最初と次の集束を領域長 ℓ1,ℓ2 を変えて観測しました.ℓ2−ℓ1=(0.1260±0.0008)m,E=2.00×103Vm−1,B=0.100T とし,他の誤差は無視します.比電荷と誤差を求めよ.また最初の集束長から δℓ だけずれた出口で,出射位置と方向の誤差の先頭の項を求めよ.位置測定だけでの調整の難しさを説明せよ.

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考え方

非相対論的な試験粒子の模型を用いる.力がつり合う速度を差し引くと,残りは複素平面で等速回転する.

  1. 成分の式は mdvxdt=qBvy,mdvydt=q(E−Bvx).従って dWdt=−iωW,W(0)=u より W=ue−iωt となる.実部と虚部を積分すると

vx=vd+ucos⁡ωt,vy=−usin⁡ωt,x=vdt+uωsin⁡ωt,y=uω(cos⁡ωt−1).

vx≥vd−|u|>0 なので出口までの x は単調増加する.速度の2乗は vd2+u2+2vducos⁡ωt であり,

K(t)−K(0)=mvdu(cos⁡ωt−1)=qEy(t).

mωvd=qE を使った.

  1. t∗=2π/ω では x=2πvd/ω,y=0.これが最初の出口通過で,出射速度は (vd+u,0) に戻る.途中の最大変位は max|y|=2|u|/ω なので,通過するには

|u|<vd,2|u|ω<h

が必要である.この長さの出口の穴では速度を選べない.

半分の長さでは t1/2=π/ω が最初の出口通過で,y1/2=−2u/ω,出射速度は (vd−u,0).出口に |y|<b の穴を置けば |u|<ωb/2 を選べる.

  1. u≠0 の粒子を複数の速度で観測すれば,全周期の整数倍で出口が集束する.従って間隔 D=ℓ2−ℓ1 は 2πvd/ω で,

qm=2πvdBD=2πEB2D.

数値は q/m=9.973×106Ckg−1.微小誤差に対し δ(q/m)/(q/m)=−δD/D なので,上限は 6.33×104Ckg−1.丸めて (9.97±0.07)×106Ckg−1 と表せる.

t=t∗+δt と置くと,δℓ=(vd+u)δt+⋯.出口の誤差の先頭の項は

yout≃−uω2(δℓvd+u)2,vy,out≃−uωδℓvd+u,vy,outvx,out≃−uωδℓ(vd+u)2.

位置は誤差の2次,方向は1次で変わり,自由飛行でずれが拡大する.展開には |ωδℓ/(vd+u)| が十分小さい必要がある.非相対論的には (vd+|u|)/c,端の近似には端の変化区間と装置長の比も小さくなければならない.u→0 で横ずれは0に戻る.

総合演習 8

オリジナル ★★★★★

平行な電場と磁場の中でらせんの間隔が広がる

一様な静的な場 E=Eez,B=Bez の中に,質量 m,電荷 q>0 の粒子を入れます.E,B>0 です.時刻0に原点で x 方向の運動量 p0>0 を与え,その他の運動量成分は0とします.相対論の式

p=γmv,γ=11−v2/c2,γmc2=m2c4+p2c2,dpdt=q(E+v×B)

を使ってください.γ0=1+(p0/mc)2 と置きます.場は十分広いものとします.

共通の \(z\) 軸方向に向く電場と磁場,原点で \(x\) 方向へ与える運動量 \(p_0\) を描く.座標軸と場の領域を示す. 共通の \(z\) 軸方向に向く電場と磁場,原点で \(x\) 方向へ与える運動量 \(p_0\) を描く.座標軸と場の領域を示す.
  1. 横方向の運動量の大きさが保存することを示し,pz(t),γ(t),z(t) を求めよ.電場の仕事と全エネルギー増加の一致も確かめよ.

  2. px=p0cos⁡ϕ,py=−p0sin⁡ϕ,ϕ(0)=0 と置き,回転角 ϕ(t) と x(t),y(t) を求めよ.s=qEt/(mc) を用いてよいものとします.

  3. ϕ=2πn となる時刻 tn と位置 zn を求め,1回転で進む z 方向の距離が増すことを示せ.最初の1回転だけ γ=γ0 と近似した周期を T0 とします.E/(Bc)=0.100 のとき,厳密な t1/T0 と,厳密な z1 の一定 γ の予測に対する比を求めよ.半径が一定でも補正が要る理由と近似条件を説明せよ.

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考え方

重力,放射,相互作用を捨てた試験粒子の模型で,電場が増す平行運動量から毎時刻のエネルギーを決める.保存する横運動量と,保存しない横速度を区別する.

  1. 横成分の式は dpxdt=qBvy,dpydt=−qBvx.従って

ddt(px2+py2)=2qB(pxvy−pyvx)=0

であり,px2+py2=p02.軸方向は dpzdt=qE だから pz=qEt=mcs.エネルギーの式より

γ(t)=γ02+s2,vz=csγ02+s2.

dt=mcds/(qE) を用いて積分すれば

z(t)=mc2qE(γ02+s2−γ0).

全エネルギー増加は mc2(γ−γ0)=qEz で,電場の仕事に等しい.

  1. 横成分を複素数でまとめると,ddt(px+ipy)=−iqB(px+ipy)/(γm).従って

dϕdt=qBγm,ϕ(t)=BcEln⁡s+γ02+s2γ0.

dxdϕ=p0cos⁡ϕ/(qB),dydϕ=−p0sin⁡ϕ/(qB) なので,r=p0/(qB) と置いて

x=rsin⁡ϕ,y=r(cos⁡ϕ−1).

投影は中心 (0,−r),半径 r の円である.γ が増すと回転が遅くなり,v⟂=p0/(γm) も減る.

  1. χn=2πnE/(Bc) と置く.ln⁡[(sn+γ02+sn2)/γ0]=χn を指数関数に直し,γ02+sn2−sn=γ0e−χn も使うと

sn=γ02(eχn−e−χn),γn=γ02(eχn+e−χn).

従って

tn=mcγ02qE(eχn−e−χn),zn=mc2γ0qE(eχn+e−χn2−1).

xn=yn=0 に戻っても zn は増える.z を回転回数の関数と見ると,指数関数の和の2階微分は正で,zn+1−zn は増加する.

一定 γ の周期は T0=2πγ0m/(qB).その間の軸方向運動は zapp=qET02/(2γ0m) と予測される.χ=2πE/(Bc) とすると,

t1T0=eχ−e−χ2χ,z1zapp=eχ+e−χ−2χ2.

χ=0.6283 で比はそれぞれ約 1.067,1.033.半径だけでは,回転時刻や軸方向の間隔に現れる補正を見落とす.

一定 γ の近似には nχ が十分小さい必要がある.最初の回転では t1/T0=1+χ2/6+⋯,z1/zapp=1+χ2/12+⋯.非相対論的な式には p0/(mc) と qEt/(mc) も十分小さくなければならない.E→0 で z→0,ϕ→qBt/(γ0m) の円運動に戻る.

総合演習 9

オリジナル ★★★★★

周期の増加を利用する電子加速器の位相安定性

一様な磁場 B の中で,電子を共通の短い加速間隙へ1回転ごとに戻す装置を考えます.電子の質量は m,電荷は −e です.間隙で電子が得るエネルギーを eV0cos⁡ϕ とし,ϕ は通過時の交流電場の位相です.交流の角振動数は ω,周期は Tr=2π/ω です.間隙の通過時間,放射,外場への反作用を無視します.磁場中では運動エネルギー K が一定で,円運動の周期と半径を,相対論の式

K=(γ−1)mc2,p=γmv,p2c2=K(K+2mc2),p=eBr

から求めるものとします.

共通の間隙に接する円軌道を数本と交流電源を描く.一定の磁場,加速間隙,通過ごとの位相 \(\phi\) を示す. 共通の間隙に接する円軌道を数本と交流電源を描く.一定の磁場,加速間隙,通過ごとの位相 \(\phi\) を示す.
  1. 周期を T(K)=A(K+mc2) と表し,A を求めよ.同期する粒子は各間隙で同じ位相 0<ϕs<π/2 を持ち,1回ごとに周期が整数 h≥1 倍の Tr だけ増すとします.必要なエネルギー増分 W と電圧振幅を求めよ.初回直前の周期も整数倍でなければならない理由を述べよ.

  2. B=0.080T,ω=2π×1.0×109s−1,h=1,ϕs=π/8 とします.初回直前の周期を Tr に選び,運動エネルギーが初めて 8.0MeV 以上となる通過回数と,その直後の軌道半径を求めよ.m=9.11×10−31kg,e=1.60×10−19C,c=3.00×108ms−1,1MeV=1.60×10−13J を用います.

  3. 同期からの微小なずれを考えます.第 n 回の通過時の位相偏差を δϕn,直後のエネルギー偏差を δKn とします.微小偏差の更新式から δϕn だけの差分方程式を導き,偏差が増幅しない ϕs の条件を求めよ.(2)の位相での偏差の振動周期を通過回数で表し,最大加速の位相 ϕs=0 が必ずしも安定でないことも説明せよ.

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考え方

間隙で瞬間的に加速する模型を用いる.相対論的な周期と全エネルギーの比例から同期を決め,位相偏差を1次まで残して安定性を調べる.

  1. 円運動で r=p/(eB) だから,周期は

T=2πrv=2πγmeB=2πeBc2(K+mc2),A=2πeBc2.

同期粒子は AW=hTr を満たすので,

W=heBc2ω,V0=Wecos⁡ϕs.

T(K0)=N0Tr を満たす整数 N0 を選べば,通過直後の周期は (N0+nh)Tr.交流の位相は同じ値へ戻る.最初の周期に端数があれば毎回その位相が加わり,同期しない.K0≥0 を満たす整数の選択も必要である.

  1. 与えられた値で mc2=0.5124MeV,W=1.1459MeV,V0≃1.24MV.N0=1 から K0+mc2=Tr/A=W であり,K0≃0.6335MeV.第 n 回直後は Kn=K0+nW なので,6回では 7.5090MeV,7回では 8.6549MeV.従って7回.

この直後の半径は

r7=K7(K7+2mc2)eBc.

分子をジュールに直すと r7≃0.38m となる.K0/(mc2)>1 なので,非相対論的な半径は使えない.

  1. 位相が δϕn だけ遅れると,エネルギー増分は

eV0cos⁡(ϕs+δϕn)≃W−aδϕn,a=eV0sin⁡ϕs>0.

従って加速での更新は δKn=δKn−1−aδϕn.次の1回転の時間偏差は AδKn なので,位相の更新は δϕn+1=δϕn+ωAδKn.前回の同式を引いてエネルギー偏差を消すと,

δϕn+1−(2−g)δϕn+δϕn−1=0,g=ωAa=2πhtan⁡ϕs.

δϕn∝sn の代入から特性方程式は s2−(2−g)s+1=0.根の積は1で,異なる2根が単位円上なら偏差は有界となる.s=e±iν,cos⁡ν=1−g/2 と表せる条件は

0<g<4,0<tan⁡ϕs<2πh.

遅い位相では加速が小さくなり,短い周期で遅れを補正する.ただし補正が強すぎると不安定になる.

指定の ϕs=π/8 では g=2πtan⁡(π/8)=2.60.ν≃1.88rad で,偏差の振動周期は 2π/ν≃3.35 回の通過である.ϕs=0 では g=0 の重根 s=1 となり,解は定数と通過回数に比例する項を持つ.g=4 も重根となり,同様に一般の偏差は有界とは限らない.

線形化には |δϕn| が十分小さく,同じ間隙へ戻る軌道が要る.間隙通過時間 τg の近似には ωτg,放射を捨てるには1回転の放射エネルギーと W の比が十分小さい必要がある.K→0 で T→2πm/(eB) に戻る.

04動く導体と誘導

第23章の電磁誘導を,第4章の運動方程式,第6章のエネルギー,第7章の振動,第8章の回転と組み合わせます.導体の運動が電流を作り,その電流が運動を変えるので,起電力だけを先に計算して終わりにしないでください.落下,回転,周期駆動の収支を調べます.最後には,境界と切り替え,外力の条件も確かめます.

総合演習 10

オリジナル ★★★★☆

磁場へ落ちるコイルの電流はすぐには立ち上がらない

横幅 ℓ,高さ h,巻数 N,質量 m の長方形コイルを鉛直の案内に沿って落とします.コイル面に垂直な一様磁場 B が,水平な境界より下の半空間だけにあります.下辺が境界に達した瞬間を t=0 とし,このとき速度と電流はともに0です.下辺の下向き変位を x,下向きを正とする速度を v,磁束の増加を妨げる向きの電流を I とします.全抵抗 R と自己インダクタンス L は一定で,磁場の源は動かず,摩擦・空気抵抗・巻線間の電気容量を無視します.K=NBℓ とおき,K2/(mL)>R2/(4L2) とします.

  1. 0<x<h の連立方程式を立て,終端速度の候補 v∞ を求めよ.機械的エネルギー,磁気エネルギー,発熱の収支を,時間微分の形で示せ.

  2. α=R/(2L),ωd=K2/(mL)−α2 を用い,複素指数関数から v(t),I(t),x(t) を求めよ.m=0.020kg,K=0.20Tm,L=0.050H,R=0.20Ω,h=0.120m,g=9.8ms−2 のとき,初めて x=h に達する時刻,速さ,電流を求めよ.

  3. コイル全体が磁場に入った後の運動と電流,その後に生じる熱量を求めよ.この装置で終端速度を観測できるとは限らない理由を説明し,自己誘導を省く近似の条件を時間尺度の比で示せ.

水平な磁場境界と,そこへ下辺から入る長方形コイルを描く.下向きのx,幅ℓ,高さh,巻数N,磁場の向きと正の電流の向きを示す. 水平な磁場境界と,そこへ下辺から入る長方形コイルを描く.下向きのx,幅ℓ,高さh,巻数N,磁場の向きと正の電流の向きを示す.
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考え方

一辺だけが磁場にある間に外部磁束が変わる.一定の集中定数 R,L を使う準静的模型で,運動と回路を連立する.

  1. 外部磁束の大きさは NBℓx=Kx である.正の電流の向きを定義したので,駆動起電力は Kv.下辺への上向きの磁気力は KI となり,

mdvdt=mg−KI,LdIdt+RI=Kv,dxdt=v.

定常な候補では I∞=mg/K,従って v∞=mgR/K2 である.両式にそれぞれ v,I を掛けると,交換項 KIv が消えて

ddt(12mv2+12LI2−mgx)=−RI2.

重力の仕事が運動・磁気エネルギーと熱に分かれる.

  1. 第1式を微分し,第2式で I を消去すると

d2vdt2+RLdvdt+K2mLv=RgL.

v−v∞∝est を代入した特性方程式は s2+2αs+K2/(mL)=0 で,根は −α±iωd.実部をとった解を v=v∞+e−αt(C1cos⁡ωdt+C2sin⁡ωdt) と書く.v(0)=0,I(0)=0 より dv/dt(0)=g なので,C1=−v∞,C2=(g−αv∞)/ωd である.従って

v=v∞+e−αt[−v∞cos⁡ωdt+g−αv∞ωdsin⁡ωdt],
I=mK[g−e−αt(gcos⁡ωdt+v∞(ωd2+α2)−αgωdsin⁡ωdt)].

位置も初期値を保って積分する.D=(g−αv∞)/ωd,Q=α2+ωd2 とおくと

C(t)=∫0te−αscos⁡ωdsds=α+e−αt(−αcos⁡ωdt+ωdsin⁡ωdt)Q,
S(t)=∫0te−αssin⁡ωdsds=ωd−e−αt(αsin⁡ωdt+ωdcos⁡ωdt)Q,x=v∞t−v∞C(t)+DS(t).

数値では α=2.0s−1,ωd=6.0rads−1,v∞=0.98ms−1.x(th)=h の最初の根から

th≈0.16s,vh≈1.4ms−1,Ih≈0.39A.

速度の時間微分は dvdt=ge−αt(cos⁡ωdt+αsin⁡ωdt/ωd).この時刻までは ωdt<π/2 で正なので,v(0)=0 から速度は正となり,位置は単調増加する.電流の遅れにより終端速度の候補を上回る.

  1. 両横辺が一様磁場に入ると外部磁束は一定となり,両辺への磁気力は打ち消し合う.u=t−th≥0 とおけば

I=Ihe−Ru/L,v=vh+gu,x=h+vhu+12gu2.

残る磁気エネルギーは

Qafter=∫0∞RIh2e−2Ru/Ldu=12LIh2≈3.8×10−3J

として熱になる.未丸め値を使い,入口から全進入までの熱も(1)から Qin=mgh−mvh2/2−LIh2/2≈1.1×10−3J>0 であり,直接の ∫0thRI2dt と一致する.

終端速度の観測には,最も遅い減衰時間 τs に対し th/τs≫1 が必要だが,今回は th<1/α で終了する.自己誘導を省くには,電流応答時間 τe=L/R と抵抗だけの制動時間 τm=mR/K2 の比 τe/τm=LK2/(mR2) を十分小さくする.その場合でも出発直後の t∼τe は除く.境界幅 δ を0とする模型は,実際には δ/h が小さい極限である.次元は Kv が電圧,KI が力となり,有限の境界力によって v,I が不連続に跳ばないことも確かめられる.

総合演習 11

オリジナル ★★★★☆

回転円板からコンデンサーへ移すエネルギー

慣性モーメント J の導体円板が,固定された一様磁場 B に垂直な軸のまわりに回ります.半径 a,b の同心円上に理想的な集電接点を置き,0<a<b とします.接点間の外部回路には抵抗 R と容量 C のコンデンサーを直列に入れます.初めコンデンサーの電荷は0,円板の角速度は ω0>0 です.円板の抵抗,回路の自己インダクタンス,接点の摩擦,電荷担体の遠心力を無視します.正の回転は外側接点へ正電荷を送る向きとし,K=B(b2−a2)/2 とおきます.

  1. 径方向の運動起電力を積分で求め,円板への制動トルクが −KI となることを示せ.q を充電される極板の電荷として,ω,q の関係を求めよ.

  2. 充電中の q(t),ω(t) と時定数,十分後の回転エネルギー,静電エネルギー,全発熱を η=CK2/J で表せ.η=1 のとき,各エネルギーは初めの回転エネルギーの何倍か.

  3. 充電が終わるたびに円板を回路から切り離し,コンデンサーだけを別の抵抗で完全放電してから同じ回路へ戻します.これを n 回行った後の角速度と,二つの抵抗での累積発熱を求めよ.一度の充電と,この繰り返しで到達する状態の違いを説明せよ.

磁場に垂直な回転円板,半径aとbの集電接点,直列のRとCを描く.円板を切り離してCだけを放電する切り替え位置も示す. 磁場に垂直な回転円板,半径aとbの集電接点,直列のRとCを描く.円板を切り離してCだけを放電する切り替え位置も示す.
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考え方

動く円板の電荷へのローレンツ力を積分する.電荷と角運動量を結び,電源のない系の全エネルギーを数える.

  1. 半径 r の導体の速さは ωr で,径方向の単位電荷への力は Bωr.従って

E=∫abBωrdr=Kω.

径方向の電流が受ける接線方向の力から,幅 dr の部分のトルクは −IBrdr となる.これを積分すると Jdω/dt=−KI である.I=dq/dt を使い,初期値まで積分すれば

Jω+Kq=Jω0.

円板単独の角運動量保存ではない.

  1. 回路方程式 Rdq/dt+q/C=Kω に(1)を入れると

Rdqdt+(1C+K2J)q=Kω0.

従って τ=RC/(1+η),q∞=CKω0/(1+η) として

q=q∞(1−e−t/τ),ω=ω01+η(1+ηe−t/τ).

E0=Jω02/2 とおく.終状態の各エネルギーと熱は

Erot=E0(1+η)2,UC=q∞22C=ηE0(1+η)2,QR=ηE01+η.

途中の収支は d/dt(Jω2/2+q2/(2C))=−RI2 である.また I=q∞e−t/τ/τ を使った直接積分は QR=Rq∞2/(2τ) となり,同じ式を与える.η=1 なら回転に 1/4,コンデンサーに 1/4,熱に 1/2 が配分される.

  1. r=1/(1+η) とおけば,各回の充電で角速度が r 倍になるので ωn=rnω0.第 j 回の直前の回転エネルギーは E0r2(j−1) である.充電抵抗の熱と放電抵抗の熱はそれぞれ

Qcharge,n=η1+ηE0∑j=0n−1r2j=E01+η2+η(1−r2n),
Qdischarge,n=η(1+η)2E0∑j=0n−1r2j=E02+η(1−r2n).

和と残る E0r2n を足すと E0 に戻る.一度だけなら電圧が起電力を打ち消して回転が残り,放電するたびに再び減速できる.η>0 で n→∞ なら全初期エネルギーが熱になるが,完全な充放電も無限回の操作も理想極限である.切り替えは電流が十分小さくなってから行う.自己インダクタンスを省くには L/(Rτ) が小さく,さらに ω0b/c と装置の伝播時間を τ で割った量が十分小さいことを要する.K→0 では充電も減速も消え,η が無次元であることとも整合する.

総合演習 12

オリジナル ★★★★★

誘導による制動は抵抗を下げれば強くなるか

間隔 ℓ の水平な導体レール上を,質量 m の棒が摩擦なく動きます.棒はばね定数 κ のばねにつながり,自然長からの変位を x とします.回路には抵抗 R>0 と一定の自己インダクタンス L>0 が直列に入り,レール面に垂直な一様磁場 B が固定されています.外力 F0cos⁡ωt を加えた定常振動を考え,K=Bℓ とします.正の電流は正の速度が作る向きです.棒・レールの抵抗,機械的な減衰,電気容量を無視し,定数は変位によらないとします.

  1. 複素振幅 x^,I^ と Z=R+iωL を使い,変位と電流の振幅・位相を決める式を導け.磁気力を速度比例成分と復元力成分に分けよ.

  2. 外力の平均仕事率と抵抗の平均発熱率が等しいことを示せ.m=0.10kg,κ=10Nm−1,K=0.20Tm,L=0.20H,R=2.0Ω,F0=5.0×10−4N,ω=10rads−1 で変位・電流の振幅と平均発熱率を求めよ.

  3. 速度振幅を外部装置で一定に保つ場合,平均発熱を最大にする R を求めよ.次に外力振幅を一定にし,ω=κ/m で R を変える場合と比較せよ.大きな R へ結果を延長できるか,棒の許される変位幅 a を使って論じよ.

ばねにつながるレール上の棒と,直列のR,Lを描く.正のx,電流,磁場,周期外力だけを示す. ばねにつながるレール上の棒と,直列のR,Lを描く.正のx,電流,磁場,周期外力だけを示す.
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考え方

複素インピーダンスで電流の遅れを残すと,制動と復元力が現れる.過渡解が消えた定常状態で,固定する振幅を区別する.

  1. 実際の量を x=Re⁡(x^eiωt),I=Re⁡(I^eiωt) とする.運動と回路の式は md2∗dx2t=−κx−KI+F0cos⁡ωt,LdI/dt+RI=Kdx/dt.従って

I^=iωKZx^,x^=F0D,D=κ−mω2+iωK2R+iωL.

実部と虚部に分けると

D=dr+idi,dr=κ−mω2+ω2K2LR2+ω2L2,di=ωK2RR2+ω2L2.

変位振幅は F0/dr2+di2,位相は複素数 1/D の偏角で決まる.電流振幅は ωK|x^|/|Z|,位相は変位に対し π/2−arctan⁡(ωL/R) だけ進む.磁気力は −bedx/dt−κex と表せ,be=K2R/(R2+ω2L2),κe=ω2K2L/(R2+ω2L2) である.

  1. 複素振幅の積の実部を使うと

⟨PF⟩=12Re⁡[F0(iωx^)∗]=F02ωdi2|D|2=Rω2K2F022|Z|2|D|2=12R|I^|2.

収支も d/dt(mv2/2+κx2/2+LI2/2)=Fv−RI2 となり,一周期で蓄積エネルギーの変化が0になる.数値では Z=2+2i(単位 Ω),D=0.10+0.10i(単位 Nm−1).従って

|x^|=3.5×10−3m,|I^|=2.5×10−3A,⟨PR⟩=6.3×10−6W.

変位は外力より π/4 遅れ,電流は変位より π/4 進むので,電流と外力は同位相である.

  1. 速度振幅 v0 を固定するなら ⟨PR⟩=K2v02R/[2(R2+ω2L2)].微分の符号は ω2L2−R2 と同じなので最大は R=ωL.R→0,∞ で発熱は0になる.

一方,外力を固定して裸の固有角振動数で駆動すると κ−mω2=0 であり,

x^=F0ZiωK2,I^=F0K,⟨PR⟩=RF022K2.

制動が弱まるほど振幅と外力の供給仕事が増し,発熱も増す.ただし |x^|/a=F0|Z|/(ωK2a) が十分小さい範囲に限る.大きな R では変位範囲を超え,発散の予測は使えない.集中定数近似には ωd/c が小さいことも必要で,d は回路の最大寸法である.R→0 の κe→K2/L と R→∞ の両磁気成分0は,磁気エネルギーの蓄積と開回路の極限に合う.

05波と光の重ね合わせ

第25章のドップラー効果・定常波・群速度を,第26章の電磁波と第27章の干渉・偏光へつなげます.音も光も境界で位相をつなぎます.複素振幅を足し,明暗とエネルギーの移動を区別してください.分散では位相と波束を合わせる条件も比べます.第26章(発展)を飛ばした人は,第27章の初めにまとめた結果を使ってください.

総合演習 13

オリジナル ★★★★☆

動く鏡の反射を参照波と重ねる

静止した送信器から正の x 方向へ単色波を送り,xm=d+ut,d>0,u>0 の反射板で反射させます.受信器は x=0 に固定し,同じ送信器から分けた参照波と反射波を重ねます.一様で静止した媒質中の音では波の速さを v,振動数を f,真空中の光では速さを c,振動数を ν とします.音は板表面で変位0,光は瞬間の鏡の静止系で接線電場0とします.u<v とし,うなりを測る際には u/v と u/c が十分小さいものとします.反射波と参照波の振幅比 r は既知の正の一定値,光の偏光は同じ向きです.測定中の波の減衰,鏡への力による速度変化を無視します.

  1. 音と光を共通の速さ w,角振動数 ω で表し,動く境界での位相一致から反射波の ωr を導け.参照波との合成の2乗を速い振動について平均し,うなりの振動数と明暗の振幅を求めよ.

  2. v=340ms−1,f=2.00×103Hz,u=1.70ms−1 で音のうなりを求めよ.同じ板の速さを,波長 λ=680nm の光で調べるときのうなりも求めよ.c=3.00×108ms−1 とする.うなりから速度を求める式と低速の近似を比べよ.

  3. 光の鏡の運動を xm(t)=d+acos⁡Ωt,d>a,aΩ<c に変えます.往復の伝播時間を残した受信位相の式を導き,a=1.02μm,同じ波長で半周期ごとの明暗の繰り返し数を求めよ.変位振幅と速度の小ささの条件を区別し,明暗の記録だけで運動方向が決まるかも論じよ.

x=0の送受信器から動く反射板へ向かう波と戻る波,参照波の分岐を描く.鏡の位置d+utと正のx方向を示す. x=0の送受信器から動く反射板へ向かう波と戻る波,参照波の分岐を描く.鏡の位置d+utと正のx方向を示す.
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考え方

反射時刻の境界で位相をつなぐ.線形波と既知の振幅比を使い,受信器はうなりを分解するとする.

  1. 入射波の位相は ωt−kx,k=ω/w.反射波を ωrt+krx+ϕ,kr=ωr/w とする.境界上で両波の符号が反対になるため

ωt−k(d+ut)=ωrt+kr(d+ut)+ϕ−π.

時間の係数と定数をそれぞれ比べると

ωr=ωw−uw+u,ϕ=π−(k+kr)d.

音では媒質に対する速度を使う.光の振幅比は別に与えた.

x=0 の合成は,振幅 A の参照波を基準に ARe⁡[eiωt+rei(ωrt+ϕ)] である.速い振動を平均し,うなりより短い時間で測ると,2乗平均 J は

J(t)=A22[1+r2+2rcos⁡((ωr−ω)t+ϕ)].

最大と最小は A2(1+r)2/2,A2(1−r)2/2,可視度は V=2r/(1+r2).J はそれぞれ変位と電場の2乗平均である.うなりは

fb=2ufv+u,νb=2uνc+u.
  1. 音では fb=2(1.70)(2000)/(341.70)=19.9Hz.光では ν=c/λ=4.41×1014Hz なので,νb=2u/[λ(1+u/c)]≈5.00×106Hz となる.共通の送信振動数を f0,うなりを fb と書けば

u=wfb2f0−fb,u≈wfb2f0(1≫fb/(2f0)).

今回,近似による速度の過小評価は音で約0.50 %,光で約 5.7×10−7 %である.

  1. 反射時刻を tb,受信時刻を t とすれば

t=tb+xm(tb)c.

入射位相は ωtb−kxm(tb),受信時の参照位相は ωt なので,反射による π も含めた差は

δ(t)=π−2kxm(tb)=π−2kd−2kacos⁡Ωtb.

1+dxm/dtb/c>0 なら tb と t の対応は一意で,反射時の運動の各半周期は受信時にも単調な位相変化として現れる.鏡は半周期で 2a 動くので位相の変化の大きさは 4ka.明暗の周期数は

N1/2=4ka2π=4aλ=6.00.

一周期では12回だが,符号付き位相変化は0である.

a/λ=1.50 は小さくないので,e−2ikacos⁡Ωtb を変位の1次まで展開できない.一方,速度による振幅変化を省く条件は 1≫aΩ/c である.さらに遅れを省いて tb≈t−d/c とするには Ωa/c が小さく,tb≈t とするなら Ωd/c も小さくする.強度の cos⁡δ だけでは位相の増減を区別できない.方向には初期位置の情報や,位相が π/2 違う参照信号が要る.a→0 では静止鏡の往復光路 2d に戻る.

総合演習 14

オリジナル ★★★★☆

暗い場所にエネルギーはないのか

真空中で,角振動数 ω,波数 k=ω/c,電場振幅 E0 の平面波が正の x 方向へ進みます.負の方向には振幅 rE0,0<r≤1 の反射波が進み,反射位相は π,両電場はまずy方向とします.c=1/ε0μ0 を使い,場のエネルギー密度とポインティングベクトルを

u=12ε0E2+B22μ0,S=E×Bμ0

とします.検出器の信号は J(x)=⟨E2⟩ に比例し,検出器の反作用はまず省きます.

  1. 合成した電場・磁場,⟨u⟩,⟨Sx⟩,J(x) を求めよ.r=1 の電場の節と磁場の節を示し,第25章の弦の変位とひずみの節の関係と対応させよ.

  2. r=1 で平均エネルギー流が0であることと,瞬間のエネルギー流が0でないことを両立させて説明せよ.電場の節にエネルギーがないか,腹に小さな吸収体を置いても吸収できないかを検討せよ.

  3. 検出器が x 方向に幅 b を持ち,中心 x0 の周囲で J を一様に平均します.測定される可視度を導き,r=0.80,λ=600nm,b=150nm で求めよ.戻り波の電場を y 方向から角 θ 傾けた場合を考え,空間平均と偏光の違いによる可視度の低下を区別せよ.

向かい合う入射波と反射波の向き,同じy方向の電場,幅bの検出器と中心x_0を描く.節・腹の位置やエネルギー分布は描かない. 向かい合う入射波と反射波の向き,同じy方向の電場,幅bの検出器と中心x_0を描く.節・腹の位置やエネルギー分布は描かない.
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考え方

真空の線形波で,検出器は微弱とする.

  1. 進行方向を逆にすると,E,B の相対的な向きも逆になる.従って

Ey=E0[cos⁡(ωt−kx)−rcos⁡(ωt+kx)],Bz=E0c[cos⁡(ωt−kx)+rcos⁡(ωt+kx)].

⟨cos2⟩=1/2,⟨cos⁡(ωt−kx)cos⁡(ωt+kx)⟩=cos⁡2kx/2 から

J=E022(1+r2−2rcos⁡2kx),⟨B2⟩=E022c2(1+r2+2rcos⁡2kx).

干渉項は全エネルギーでは相殺し,

⟨u⟩=ε0E022(1+r2),⟨Sx⟩=ε0cE022(1−r2).

r=1 なら Ey=2E0sin⁡ωtsin⁡kx,Bz=2E0cos⁡ωtcos⁡kx/c.電場の節は kx=jπ,磁場の節は kx=(j+1/2)π,j は整数である.弦の定常波 y∝sin⁡kxsin⁡ωt でも変位の節はひずみ ∂y/∂x の腹になる.

  1. r=1 の瞬間の量は

u=2ε0E02(sin2⁡ωtsin2⁡kx+cos2⁡ωtcos2⁡kx),Sx=ε0cE02sin⁡2ωtsin⁡2kx.

流れの平均は0でもエネルギーは往復する.区間 [x1,x2] で積分・微分すると

ddt∫x1x2udx=Sx(x1,t)−Sx(x2,t)

となり,境界を通る流れで収支が閉じる.電場の節にも磁気エネルギーが残る.

吸収体は場を変え,定常な吸収には外から正味の流入が要る.無摂動の r=1 を保ったまま吸収させることはできない.弱い吸収の初期評価に ⟨E2⟩ を使えるが,吸収0とはならない.

  1. 一様な感度で平均すると

J―(x0)=1b∫x0−b/2x0+b/2J(x)dx=E022[1+r2−2rsin⁡kbkbcos⁡2kx0].

従って Vb=2r|sin⁡kb/(kb)|/(1+r2). kb=π/2 なので Vb=(1.60/1.64)(2/π)≃0.62.点なら約0.98で,最初に干渉項が消える幅は b=λ/2 である.

戻り波の偏光単位ベクトルを er=cos⁡θey+sin⁡θez とする.電場の2乗の交差項は内積 ey⋅er=cos⁡θ 倍になるので

Vb,θ=2r1+r2|cos⁡θsin⁡kbkb|.

θ=π/2 で明暗は消え,b→0 で空間平均の効果は消える.幅と偏光を別々に変えて原因を区別できる.確かめとして r→0 なら進行波の ⟨Sx⟩=c⟨u⟩ に戻り,検出器の反作用を省くには吸収・散乱の割合を十分小さくする必要がある.

総合演習 15

オリジナル ★★★★★

位相を合わせた光でも波束は重なるか

光を同じ長さの二つの経路へ分け,一方の長さ ℓ=0.200m の区間を透明媒質で満たし,もう一方は真空に保ちます.真空側には追加の距離 d を設けられます.反射・吸収と経路間の振幅差は無視します.媒質の屈折率は真空波長 λ に対し n(λ)=B+A/λ2 の形とし,A,B は未知です.表の値は模型内で正確とします.c=3.00×108ms−1 です.

λ/nm

n

500

1.5364

600

1.5100

750

1.4884

  1. n と 1/λ2 の直線関係から A,B を求め,3点目を検算せよ.k=nω/c,λ=2πc/ω,vg=dω/dk を使い,中心波長 λ0=600nm の位相速度と群速度を求めよ.

  2. 中心角振動数を ω0 とし,ω±=ω0±δω/2 の等強度の2成分を入れます.各成分の各経路単独の強さを Is とします.うなりより長い時間で平均した合成強度を,位相差 Φ(ω)=ℓ[k(ω)−ω/c]−ωd/c から導け.1次の分散で,中心位相差 Φ(ω0) そのものを0にする d と群遅延を0にする d の違いを求めよ.

  3. 連続した狭い帯域 |ω−ω0|≤Δω の波束に変え,群遅延を0にします.媒質の k″=d2∗dk2ω を導き,帯域両端の遅延の差と位相の2次項を評価せよ.Δω=6.0×1012rads−1 で,1次の分散だけを残せるか判定せよ.位相の2次項を0.10以下に抑える帯域幅の条件も求めよ.

分岐・再合流する二経路と,媒質の長さℓ,真空側の追加距離dを示す.入力の二つの近い振動数と,波束を使う場合の帯域幅を添える. 分岐・再合流する二経路と,媒質の長さℓ,真空側の追加距離dを示す.入力の二つの近い振動数と,波束を使う場合の帯域幅を添える.
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考え方

屈折率を直線化し,位相の傾きから群遅延を求める.狭い帯域でも蓄積する位相誤差を確かめる.

  1. 表の最初の2点を添字1,2で表すと

A=n1−n2λ1−2−λ2−2=2.16×10−14m2,B=1.4500.

750nm では A/λ2=0.0384,従って1.4884となる.周波数へ変換すると

dkdω=1c(n+ωdndω)=1c(n−λdndλ)=ngc,ng=B+3Aλ2.

n0=1.5100,ng0=1.6300 なので vp=c/n0=1.99×108ms−1,vg=c/ng0=1.84×108ms−1.

  1. 各周波数の二経路の複素振幅を足すと,その強さは 2Is(1+cos⁡Φ±) である.異なる周波数の交差項は長時間平均で消えるので

I=4Is[1+cos⁡Φ++Φ−2cos⁡Φ+−Φ−2].

Φ±≈Φ0±δωΔτ/2,Δτ=Φ′(ω0)=[ℓ(ng0−1)−d]/c として

I≈4Is[1+cos⁡Φ0cos⁡(δωΔτ/2)].

中心位相を掃引する縞の可視度は |cos⁡(δωΔτ/2)| となる.中心光の光路差を0にする値は dp=ℓ(n0−1)=0.102m.群遅延を0にする値は dg=ℓ(ng0−1)=0.126m であり,同じ条件ではない.追加距離なしでは 0.420ns,d=dp でも 0.0800ns 残る.d=dg でも中心位相は別に調整する.

  1. 波長の式を k に代入すると

k(ω)=Bωc+Aω34π2c3,k″(ω)=3Aω2π2c3.

追加の真空距離は2次項を消さない.ω0=3.14×1015rads−1,k0″=3.82×10−25s2m−1 より,帯域両端の相対遅延の差は

Δtband≈2ℓk0″Δω=9.2×10−13s.

位相の2次項は ϵ2=ℓk0″(Δω)2/2≃1.4 で,1より小さくない.Δω/ω0≃1.9×10−3 が小さくても,蓄積位相の誤差は大きい.波束の時間尺度 1/Δω≈1.7×10−13s と比べても,帯域内の遅延の広がりは無視できない.条件 ϵ2≤0.10 は

Δω≤0.20ℓk0″≃1.6×1012rads−1

である.3次項と2次項の比は最大 Δω/(3ω0) 程度で,今回も十分小さい.確かめとして A→0 なら ng=n,dg=dp,k″=0 に戻り,k″ℓ(Δω)2 は無次元になる.

06放射とエネルギーの流れ

第26章の光圧・放射を,第10章の軌道,第7章の振動,第16章の熱収支,第18章の熱放射と組み合わせます.エネルギーと運動量を別々に数えてください.熱の発展章の関係は問題に示します.最後には応答時間と近似の条件も調べます.第26章(発展)の放射の式を使う問題が多いので,第26章を飛ばした人は後回しにしてかまいません.

総合演習 16

オリジナル ★★★★☆

光に押される塵は,重力が勝っていても脱出する

質量 M,出力 P⋆ の球対称な恒星のまわりの円軌道 r0 から,半径 a,密度 ρ の小球を母天体に対する速度0で離します.球は恒星の光をすべて吸収し,熱放射の放射率は ε です.球は一様温度で,静止系の熱放射は対称です.母天体の光圧,球の質量変化と接線方向の光の力は無視します.

距離 r での入射強度は I=P⋆/(4πr2),完全吸収の圧力は I/c,球の全熱放射出力は 4πa2εσSBT4 とします.背景放射は無視します.GM=1.30×1020m3s−2,P⋆=3.60×1026W,r0=1.50×1011m,ρ=200kgm−3,ε=0.70,c=3.00×108ms−1,σSB=5.67×10−8Wm−2K−4 とします.

  1. 光圧と重力の比 β を求め,両力が等しくなる半径 ac を計算せよ.平衡温度 Te(r) も求めよ.吸収率と放射率が違う理由を述べよ.

  2. エネルギーと角運動量から束縛条件を求めよ.束縛される場合の遠点距離と,解放点・遠点での平衡温度の比を求めよ.a=10.0μm で数値を求め,力のつり合いによる判定と比べよ.

  3. 球の比熱を一定の cs=1.0×103Jkg−1K−1 とします.小さな温度差の放射緩和時間を導き,解放点で求めよ.平衡温度を追う条件と,接線方向の力を省く条件を無次元量で示せ.

恒星,母天体の円軌道r_0と解放する小球を描く.接線方向の初速度と,径方向の光圧・重力を示す. 恒星,母天体の円軌道r_0と解放する小球を描く.接線方向の初速度と,径方向の光圧・重力を示す.
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考え方

逆二乗の中心力と,一様温度・灰色の熱放射を使う.

  1. 質量は m=4πρa3/3,吸収する投影面積は πa2.従って

Frad=P⋆a24cr2,Fg=GMmr2,β=3P⋆16πcGMρa=aca.

ac=2.75×10−6m である.吸収と熱放射の平衡は

P⋆a24r2=4πa2εσSBT4,Te(r)=(P⋆16πεσSBr2)1/4.

吸収率と放射率が等しいのは同じ波長であり,恒星光と熱放射の波長域では別の値になる.

  1. 初速度は v0=GM/r0.単位質量あたりの角運動量 j=r0v0=GMr0 は保存する.ポテンシャルを −GM(1−β)/r とすれば,単位質量あたりの全エネルギーは

e=12v02−GM(1−β)r0=GMr0(β−12).

e<0,すなわち β<1/2 で束縛され,等号では無限遠で速さ0の脱出となる.1/2≤β<1 でも,初速度が新しい中心力に対して大きすぎて脱出する.

径方向の速度が0になる点では e=j2/(2r2)−GM(1−β)/r.z=r0/r を代入すると

z2−2(1−β)z+1−2β=0,(z−1)(z−(1−2β))=0.

解放点 r0 が近点で,他方は ra=r0/(1−2β).平衡温度は r−1/2 に比例するので Ta/T0=1−2β である.数値では β=0.275,ra/r0=2.23,ra=3.34×1011m,T0=299K,Ta=201K.力のつり合い半径は ac だが,解放時の脱出限界は 2ac=5.51μm となる.

  1. 全熱容量は Ch=mcs で,温度の式は

ChdTdt=P⋆a24r(t)2−4πa2εσSBT4.

距離固定で T=Te+ϑ を線形化すると

Chdϑdt=−16πa2εσSBTe3ϑ,τh=ρacs12εσSBTe3.

解放点では τh=0.16s.平衡温度の変化が緩和より遅い条件は,τh|dr/dt|/(2r) が小さいことを要する.力学の時間 r03/(GM)=5.10×106s より短く,内部熱拡散も十分速いとした.

接線方向の光の力は光圧に対し v/c 程度の補正で,解放点では v0/c=9.81×10−5 と小さい.長期には損失が蓄積する.吸収を幾何学的面積で扱うには恒星光の代表波長を a で割った量も小さくする.線形化には |ϑ|/Te も小さくする.β→0 で遠点は近点へ戻る.

総合演習 17

オリジナル ★★★★★

振動する電荷のエネルギーを熱として受け取る

電荷 q,質量 m の粒子をばね定数 κ の束縛でz方向に振動させます.ω0=κ/m,初振幅 A0 で,駆動はありません.非放射的な抵抗は −bdz/dt です.放射と抵抗は弱く,一周期の振幅変化を無視します.非相対論的な双極子の遠方電場の横成分を

Erad(r,θ,t)=qsin⁡θ4πε0c2rd2zdt2(t−r/c)

と与えます.θ は軸との角で,磁場は Brad=Erad/c,エネルギー流は外向きです.c−2=ε0μ0 とします.

  1. 球面を通る平均流を積分して全放射出力を求め,それを平均損失 br⟨(dz/dt)2⟩ と等置する br を求めよ.周期平均エネルギー E(t) と振幅 A(t) の減衰を導け.

  2. 非放射的な発熱と全放射エネルギーを求めよ.θ=π/2 の遠方に,面積 D の小さな完全吸収検出器を放射に垂直に置きます.全放射のうち検出器へ届く割合 χ を求め,振動軸上に置く場合と比べよ.

  3. 検出器の熱容量は C,背景との熱交換は小さな温度差 ϑ に対して Hϑ です.最初の放射が届く瞬間を検出器の t=0 とし,ϑ(0)=0 とします.温度の時間変化とピーク時刻を求めよ.Γ=(b+br)/m,τ=C/H として,Γτ=1 の極限も示せ.

z方向の振動電荷と,距離r,角θの検出器を描く.面積D,熱容量C,熱交換Hを示す. z方向の振動電荷と,距離r,角θの検出器を描く.面積D,熱容量C,熱交換Hを示す.
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考え方

遠方場の流れを積分し,周期平均の損失を求める.検出器の反作用は無視し,伝播時間一定,温度応答は線形とする.

  1. 一周期では z=Acos⁡ω0t,加速度の2乗平均は A2ω04/2.従って

⟨Sr⟩=ε0c⟨Erad2⟩=q2A2ω0432π2ε0c3r2sin2⁡θ.

球面の面積要素 r2sin⁡θdθdϕ で積分する.∫0πsin3⁡θdθ=4/3 より

Pr=q2A2ω0412πε0c3,br=q2ω026πε0c3.

これはほぼ単色の振動の平均制動係数である.E=mω02A2/2,⟨vz2⟩=ω02A2/2=E/m より

dEdt=−(b+br)Em=−ΓE,E=E0e−Γt,A=A0e−Γt/2,E0=12κA02.
  1. 抵抗での平均発熱率は (b/m)E(t),放射出力は (br/m)E(t).積分すると

Qb=bb+brE0,Er=brb+brE0,Qb+Er=E0.

赤道面では ⟨Sr⟩D/Pr=3D/(8πr2) なので χ=3D/(8πr2) である.入力は Pd=P0e−Γt,P0=χbrE0/m,総入射量は χEr.軸上の点では sin2⁡θ=0 で届かない.有限面積や近接場には補正が要る.

  1. Cdϑ/dt+Hϑ=P0e−Γt.積分因子 et/τ を掛け,初期値から積分すると,Γ≠1/τ では

ϑ(t)=P0Ce−Γt−e−t/τ1/τ−Γ.

微分を0として Γe−Γt∗=e−t∗/τ/τ より

t∗=ln⁡(Γτ)Γ−1/τ,ϑmax=P0He−Γt∗.

Γτ→1 では見かけの0割を極限でとり,ϑ=(P0/C)te−t/τ,t∗=τ,ϑmax=P0τ/(Ce) となる.

全収支は ∫0∞Hϑdt=P0/Γ で閉じる.

近似には Γ/ω0,A0ω0/c,c/(ω0r),D/r2 が十分小さく,線形熱交換には |ϑ|/Tb が小さいことを要する.Tb は背景温度である.H→0 で温度は χEr/C へ近づく.

総合演習 18

オリジナル ★★★★☆

光圧と温度上昇を同時に測る板

真空中の薄い板が出力 P の光をすべて垂直に受けます.光の反射率 R,透過率 T,吸収率 α=1−R−T は未知の一定値です.反射は鏡面反射,透過は直進で,再入射はありません.熱容量は C,片面積は A.ばね定数 κ で支持し,照射方向の変位を x とします.静止した定常状態を測ります.

両面は同じ温度 T,放射率 ε で,放射の反動は相殺します.背景温度は Tb=300K,支えを通る伝導損失は G(T−Tb),正味の放射損失は 2εσSBA(T4−Tb4) とします.G,ε は未知です.A=1.00×10−3m2,C=0.500JK−1,κ=1.00×10−4Nm−1,c=3.00×108ms−1,σSB=5.67×10−8Wm−2K−4 です.

  1. 光のエネルギーと運動量の流れから力を求め,定常変位 x∗ と定常温度 T∗ の式を立てよ.変位だけでは R,T が分離できない理由を説明せよ.

  2. ヒーターで温度 Tj を保ち,全損失の温度微分 hj を測りました.表から G,ε を求めよ.光のみで P=1.00W を照射すると T∗=350K,x∗=34.7μm でした.α,R,T を求め,各割合の許容範囲も確かめよ.

Tj/K

hj/WK−1

300

0.0111

400

0.0195

  1. P(t)=P+δPcos⁡Ωt,1≫|δP|/P と微小変調します.板の速度は十分小さく,運動による光のエネルギー収支の補正はこの変調による変化に比べて無視できるものとします.温度の複素振幅と,振幅が低周波値の 1/2 になる角振動数を求めよ.光圧の仕事を吸収熱から引く必要があるか説明せよ.

ばね付きの板と入射・反射・透過光,両面の熱放射を描く.A,x,T,支えの熱伝導Gとヒーターを示す. ばね付きの板と入射・反射・透過光,両面の熱放射を描く.A,x,T,支えの熱伝導Gとヒーターを示す.
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考え方

運動量から力,吸収から温度を求める.照射出力は変位によらず,速度は光速より十分小さいとする.

  1. 入射光は毎秒 P/c の正方向の運動量を運ぶ.反射光は −RP/c,透過光は TP/c を持ち去るから

F=Pc(1+R−T)=Pc(α+2R).

定常なつり合いと熱収支は

κx∗=Pc(α+2R),αP=G(T∗−Tb)+2εσSBA(T∗4−Tb4).

変位は R−T しか決めない.熱から吸収率を得れば,保存則と合わせて各割合が決まる.

  1. 校正した損失を温度で微分すると

h(T)=G+8εσSBAT3=G+HT3,H=8εσSBA.

従って横軸 T3,縦軸 h の直線の傾きと切片から

H=0.0195−0.01114003−3003WK−4=2.27×10−10WK−4,
G=h(300K)−H(300K)3=4.97×10−3WK−1,ε=H8σSBA=0.501.

未丸め値では,伝導損失は 0.2485W,放射損失は 0.3920W,従って α=0.6405.また

qF=cκx∗P=1.041,R=qF−α2=0.2003,T=1−α−R=0.1593.

丸めて α≈0.64,R≈0.20,T≈0.16.各値は0以上で和は1となる.

  1. T=T∗+ϑ とおき,ϑ=Re⁡(ϑ^eiΩt) とする.熱収支の1次の式は

Cdϑdt+h∗ϑ=αδPcos⁡Ωt,

h∗=G+HT∗3 より

ϑ^=αδPh∗+iΩC.

温度の時定数は τh=C/h∗=34.0s,低周波値に対する振幅比は 1/1+Ω2τh2.従って Ωh=1/τh=0.0294rads−1,温度は π/4 遅れる.

静止した板の仕事率は0で,吸収熱は αP.周期平均の機械的な仕事は変調振幅の2次だが,瞬間の仕事率には定常光圧と速度の積という1次項がある.従って平均だけを理由に温度の1次応答から除くことはできない.ここでは問題の条件により運動の補正を無視し,吸収熱を αP(t) と扱う.光圧の仕事をこの吸収熱から一律に引くのではなく,補正が必要なら反射光・透過光・吸収光のエネルギー収支を速度の1次まで組み直す.例えば max|v|/c が |δP|/P に比べて十分小さければ運動の補正を省ける.近似には |ϑ^|/T∗ と変位振幅の許容変位に対する比も小さいことを要する.Ω→0 で定常式の微分に戻り,C/h∗ の次元も時間となる.

07測定から模型を決める

第14章の直線化と不確かさを,第20・21章の電荷と回路,第23章の共振,第27章の干渉計に組み合わせます.測定器の負荷と零点も含めます.測り方を替えて検査します.不確かさは小さい誤差の一次までを残し,積・商の相対不確かさの上限を,各相対不確かさの和で見積もります.

総合演習 19

オリジナル ★★★★☆

電圧計を替えて漏れを測る

未知の容量 C のコンデンサーには,電圧によらない未知の漏れ抵抗 Rp が並列に付いています.電圧計の入力抵抗 Rm も並列に入ります.コンデンサーの両端電圧を V(t),電圧計の表示を Y(t)=V(t)+b とし,零点のずれ b は時間によらず,電圧計を替えても同じとします.各測定で同じ電圧に充電して電源を切り離し,次の表示を得ました.

測定

入力抵抗

時間間隔 Δt

Y(0)

Y(Δt)

Y(2Δt)

Y(3Δt)

A

1.00×106Ω

0.693s

4.10V

2.10V

1.10V

0.600V

B

2.50×105Ω

0.277s

4.10V

2.10V

1.10V

0.600V

表示と抵抗の不確かさを無視し,各時定数の相対不確かさの上限を2 %とします.配線の抵抗・自己誘導,容量の電圧依存,温度変化は無視します.

  1. 放電の微分方程式を立て,等間隔の表示の差から時定数 τ と b を求める方法を導け.測定 A・B に適用し,ln⁡Y を時刻に対して直線化する方法の問題点も説明せよ.

  2. C,Rp を決め,C の相対不確かさの上限を求めよ.2種類の入力抵抗が近いと推定が不安定になる理由を述べよ.

  3. 測定 A で初めに蓄えたエネルギーと,漏れ抵抗・電圧計で発生する全ジュール熱を求めよ.さらに,別の放電で隣り合う表示の差の比が時間とともに変わった場合,この模型のどの仮定を検討すべきか挙げよ.

コンデンサー,漏れ抵抗,電圧計を並列に描く.電源切断のスイッチ,\(C,R_p,R_m\),両端電圧 \(V\) と表示 \(Y\) を記す. コンデンサー,漏れ抵抗,電圧計を並列に描く.電源切断のスイッチ,\(C,R_p,R_m\),両端電圧 \(V\) と表示 \(Y\) を記す.
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考え方

2本の放電電流を足す.表示の差で零点のずれを消し,入力抵抗の異なる測定から容量と漏れを分離する.容量・抵抗・零点一定の模型を使う.

  1. 正に帯電した極板の電荷は Q=CV であり,外へ流れる電流は V/Rp+V/Rm である.したがって

CdVdt=−(1Rp+1Rm)V,V(t)=Vie−t/τ,1τ=1C(1Rp+1Rm).

r=e−Δt/τ,Yj=Y(jΔt) とおくと Yj=b+Virj.連続する差 Dj=Yj−Yj+1 は Vi(1−r)rj なので

r=Dj+1Dj,τ=−Δtln⁡r,b=Yj+1−rYj1−r.

両測定の差は 2.00,1.00,0.500V,比は 1/2 である.よって b=0.100V,Vi=4.00V,τA=0.693/ln⁡2≃1.00s,τB=0.277/ln⁡2≃0.400s となる.

正しい直線化は ln⁡[(Y−b)/Vi]=−t/τ である.一方,dln⁡Ydt=−V/[τ(V+b)] は一定ではない.正の零点ずれがあると,放電後半ほど見かけの時定数が大きくなる.

  1. aA=1/τA,aB=1/τB,gA=1/Rm,A,gB=1/Rm,B とおく.2式の差から

C=gB−gAaB−aA=3.00×10−6ln⁡2/0.277−ln⁡2/0.693F≃2.00×10−6F.

未丸め値では C=1.99717×10−6F,1/Rp=CaA−gA=9.97596×10−7Ω−1 なので,Rp≃1.00×106Ω である.それぞれの逆数の相対不確かさも一次では2 %だから,差の絶対不確かさの上限は

δ(aB−aA)≤0.02(aB+aA)=0.0700s−1,δCC≤0.07001.50≃0.047.

従って容量の相対不確かさの上限は約4.7 %である.入力抵抗が近いと gB−gA,従って aB−aA が小さくなる.差に誤差が残り,相対不確かさが拡大する.

  1. 初めの場のエネルギーは Ui=CVi2/2≃1.60×10−5J である.測定中は電源が切り離されており,b は蓄える電圧に含めない.抵抗 Rj の熱を積分すると

Hj=∫0∞Vi2e−2t/τARjdt=Vi2τA2Rj=Ui1/Rj1/Rp+1/Rm,A.

未丸めの時定数と抵抗を使うと Hp≃7.98×10−6J,Hm≃8.00×10−6J.両抵抗はほぼ等しいが厳密には異なり,未丸めの熱の和は Ui と一致する.

差の比が一定でない場合,漏れ抵抗や容量の電圧依存,複数の時定数,零点の時間変化を検討する.放電終盤は丸めや雑音も比を乱すため,模型の破綻とは即断できない.配線長 ℓ,伝播速度 vs に対し ℓ/(vsτB) が十分小さく,自己誘導による過渡が測定の時間間隔より短いことが必要である.

総合演習 20

オリジナル ★★★★☆

共振曲線と自由減衰は同じコイルを示すか

未知のインダクタンス L と内部抵抗 r をもつコイル,未知のコンデンサー C,既知の抵抗 Rs=12.0Ω を直列につなぎます.電源の実効電圧は全角振動数で Ve=3.00V です.定常状態の電流の実効値を測ると,最大は ω0=1.000×103rads−1 で,次の値を得ました.半値とは電力が最大の半分になることです.

位置

ω

Ie

低周波側の半値

800rads−1

0.0707A

最大

1000rads−1

0.100A

高周波側の半値

1250rads−1

0.0707A

電源を短絡し,同じ閉回路の自由減衰を測りました.同符号の隣り合う電流の極大の間隔は 6.45ms,極大の大きさの比は後の値を前の値で割って0.400でした.内部抵抗一定,コンデンサーの漏れなし,磁気飽和なしを候補の模型とします.

  1. 複素インピーダンスから共振曲線を導き,r,L,C と,共振の鋭さ Q=ω0L/(Rs+r) を求めよ.半値点の差と積がどの量を与えるかも導け.

  2. 電源短絡後の特性方程式を複素指数関数で解き,周期と極大の比を予測せよ.測定と模型の整合性を判定せよ.

  3. Ve,Ie(ω0),ω0 の相対不確かさの上限をそれぞれ1 %,2 %,0.3 %,各半値角振動数の絶対不確かさを 5rads−1 とする.L,C の相対不確かさを見積もり,極大の比の食い違いを容量の測定誤差だけで説明できるか論じよ.

交流電源,抵抗,内部抵抗付きコイル,コンデンサーの直列回路を描く.電源を短絡へ切り替えるスイッチと電流測定位置を示し,図の別枠に表で与えた3測定点だけを置く. 交流電源,抵抗,内部抵抗付きコイル,コンデンサーの直列回路を描く.電源を短絡へ切り替えるスイッチと電流測定位置を示し,図の別枠に表で与えた3測定点だけを置く.
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考え方

定常応答の幅と最大位置から定数を決め,自由減衰も計算する.電源短絡後にも Rs が残る.

  1. R=Rs+r とし,電圧・電流をそれぞれ複素振幅 V^,I^ に eiωt を掛けた実部とする.振幅 V0=2Ve の電源に対し

Z=R+iωL+1iωC=R+i(ωL−1ωC),I^=V^Z,Ie=VeR2+(ωL−1/(ωC))2.

最大ではリアクタンスが0だから ω02=1/(LC),R=3.00/0.100=30.0Ω,r=18.0Ω となる.半値点 ω−,ω+ は

ω−L−1ω−C=−R,ω+L−1ω+C=R.

各式を角振動数で掛け,差と和を整理すると ω+−ω−=R/L,ω−ω+=1/(LC)=ω02 である.従って

L=30.0450H=0.0667H,C=1Lω02=1.50×10−5F,Q=1000450=2.22.

半値点の幾何平均が最大の位置を与える.

  1. 極板の電荷 q と電流 I=dqdt に対し Ld2qdt2+Rdqdt+q/C=0.q∝est として

Ls2+Rs+1C=0,s=−α±iωd,α=R2L=225s−1,ωd=ω02−α2=974rads−1.

電流も e−αt と正弦波の積である.同符号の極大は位相が 2π 増えた位置にあり,時間間隔と比は

Td=2πωd=6.45ms,η=e−αTd=0.234.

周期は合うが比は合わない.測定値から逆に得る減衰率は −ln⁡0.400/Td=142s−1 である.同じ線形直列回路では両測定を説明できない.コイルの振幅依存,切り替え後の回路,測定器の接続を調べる.

  1. R=Ve/Ie(ω0) の相対不確かさの上限は3 %.幅 D=ω+−ω−=450rads−1 の不確かさは最大 10rads−1,相対値は2.22 %である.従って

δLL≤0.030+10450=0.0522,δCC≤δLL+2δω0ω0=0.0582.

約5.2 %と5.8 %となる.α=D/2 は容量によらず,その不確かさは 5s−1 である.周期の測定値をそのまま使えば予測比は約0.227〜0.242であり,0.400には届かない.容量の誤差では説明できない.

模型のエネルギー LI2/2+q2/(2C) は dUdt=−RI2 を満たす.振幅による定数の変化率と ωℓ/vs が十分小さいことが必要である.また α/ω0=0.225 は0とみなせないため,減衰周期を無減衰周期に置き換えずに検算した.

総合演習 21

オリジナル ★★★★☆

気体の屈折率と測定管の伸びを分ける

マイケルソン干渉計の一方の腕に,気体を出し入れできる透明な管を入れます.光は管を往復し,真空中の波長は λ=600nm です.管内の気体は一様な希薄理想気体で,屈折率を n−1=Kp/T とする模型を考えます.K は未知の定数です.管の長さは ℓ(T)=ℓ0[1+α(T−T0)],ℓ0=0.100m,T0=300K とします.窓などによる,圧力によらない位相の変化もあります.

最初の T0・真空での位相を基準に,位相差の変化を 2π で割った符号付き縞数 N を連続して測りました.端数も読み取れます.

温度

p=0

p=20.0kPa

p=40.0kPa

300K

0.00

20.00

40.00

400K

3.00

18.15

33.30

  1. 各温度の真空での縞数を Nb(T) とし,N(p,T) の式を導け.圧力に対する傾きから K,α を決め,300K,100kPa での屈折率を求めよ.

  2. 各傾きの絶対不確かさの上限が 0.005kPa−1 で,他の量の不確かさを無視できるとする.K,α の不確かさを見積もり,管の伸びを検出したといえるか判定せよ.

  3. 管の断面積を温度によらず一定とし,T0,p0=40.0kPa で弁を閉じて 400K まで温める.密閉した同じ気体が管の伸びに合わせて全体積を変えるとき,圧力と縞数の変化を予測せよ.定圧で温める場合との違いを説明せよ.

2腕の干渉計の一方に,圧力計,温度計,弁を付けた気体管を置く.管内の往復光路と基準の腕を描き,\(\ell(T),p,T,\lambda\) を示す. 2腕の干渉計の一方に,圧力計,温度計,弁を付けた気体管を置く.管内の往復光路と基準の腕を描き,\(\ell(T),p,T,\lambda\) を示す.
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考え方

真空測定を引いて背景を消し,傾きの温度依存から気体密度と管の伸びを分ける.密閉加熱には粒子数一定の条件を使う.

  1. T1=400K とする.往復の光路差は 2ℓ(T)(n−1) だから

N(p,T)=Nb(T)+s(T)p,s(T)=2Kℓ0λT[1+α(T−T0)].

表から s0=1.000kPa−1=1.000×10−3Pa−1,s1=0.7575kPa−1.従って

K=λT0s02ℓ0=9.00×10−7KPa−1,α=(T1/T0)(s1/s0)−1T1−T0=1.00×10−4K−1.

100kPa で n=1+Kp/T0=1.000300 と予測する.400K の真空の3縞を引かずに原点を通る直線を当てはめると,気体の係数まで誤る.

  1. K の相対不確かさは 0.005/1.000=0.005,従って δK≤4.5×10−9KPa−1 である.F=(T1/T0)(s1/s0)=1.010 とすると

δF≤F(0.0050.7575+0.0051.000)≃0.0117,δα≤δF100K=1.17×10−4K−1.

この上限は推定した α 自身より大きく,α=0 を排除できない.管の伸びは近い量の差から決めるため,高い精度が必要である.

  1. 断面積一定,粒子数一定の状態方程式は p(T)ℓ(T)/T=p0ℓ0/T0 となる.推定値を用いると

p(T1)=p0T1T0ℓ0ℓ(T1)=40.040030011.010kPa=52.8kPa.

気体に由来する縞数は 2Kp(T)ℓ(T)/(λT)=2Kp0ℓ0/(λT0)=40.00 で変化しない.変化するのは背景だけなので,終値は43.00,変化は3.00縞である.定圧の 40.0kPa なら表の終値33.30で,初めからの変化は −6.70 縞になる.

屈折率の減少を管の伸びが補償する.相殺は断面積一定と n−1∝p/T による.確かめとして n−1=3.00×10−4,α(T1−T0)=0.0100 はともに十分小さい.高密度での屈折率の非線形性,断面積の熱膨張,窓の圧力依存を含めれば相殺も背景除去も修正が要る.

08東大の電磁気・波の過去問を発展させる

第20・21章の電荷と回路,第22・23章の誘導,第26・27章の光を,第7章の振動,第14章の測定に組み合わせます.結合の不完全さ,電荷の遅れ,波長の違いを調べます.保存則と応答の速さを区別してください.最後に実験と照合します.

総合演習 22

東京大 2002 前期(改題) ★★★★☆

結合が不完全なコイルで負荷を選ぶ

結合した2コイルの自己インダクタンスを L1,L2,相互インダクタンスを M>0 とします.一次側は抵抗 R1 と電源 V0cos⁡ωt,二次側は可変抵抗 R2>0 で閉じます.電流方向は磁気エネルギーが UB=L1I12/2+MI1I2+L2I22/2 となるように選びます.巻線抵抗を含め,容量,鉄心の損失,飽和を無視します.M2<L1L2 とします.

L1=0.200H,L2=0.0500H,M=0.0800H,R1=4.00Ω,ω=100rads−1,V0=10.0V とします.

  1. 複素振幅 I^1,I^2 の連立方程式と,電源から見たインピーダンスを求めよ.

  2. 二次抵抗での平均電力 P2 を R2 の関数として求め,それを最大にする R2 と最大電力を求めよ.

  3. 二次側のリアクタンス ωL2 に R2 を合わせれば最大電力になる,という判断を検討せよ.電源と両抵抗の平均電力の収支も確かめよ.

一次閉回路に交流電源と \(R_1,L_1\),二次閉回路に \(R_2,L_2\) を描き,結合 \(M\),電流の向きと巻き方向を記す. 一次閉回路に交流電源と \(R_1,L_1\),二次閉回路に \(R_2,L_2\) を描き,結合 \(M\),電流の向きと巻き方向を記す.
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考え方

素子一定の線形集中定数回路として,2回路を同時に解く.

  1. 電流を I^jeiωt の実部とすれば

(R1+iωL1)I^1+iωMI^2=V0,iωMI^1+(R2+iωL2)I^2=0.

後式より I^2=−iωMI^1/(R2+iωL2).これを前式へ代入すると

Zin=R1+iωL1+ω2M2R2+iωL2,I^1=V0Zin.
  1. D=L1L2−M2>0 とおく.行列式を実部と虚部に分けると

I^2=−iωMV0R1R2−ω2D+iω(R1L2+R2L1),P2=R2ω2M2V022[(R1R2−ω2D)2+ω2(R1L2+R2L1)2].

分母の括弧内は aR22+bR2+c と書け,

a=R12+ω2L12,b=2R1ω2M2,c=ω4D2+ω2R12L22.

A=ω2M2V02/2 とすると P2=AR2/(aR22+bR2+c) だから

dP2dR2=Ac−aR22(aR22+bR2+c)2.

最大は R2∗=c/a である.代入して R2∗=2.02Ω,P2,max=1.46W.aR22,bR2,c の次元はすべて抵抗の4乗である.

  1. ωL2=5.00Ω は最適値と異なる.二次電圧を負荷によらず一定とすれば R2=ωL2 が出る.今回は一次電流も負荷で変わる.

時間領域の2式を各 I1,I2 で掛けて足すと

V(t)I1=R1I12+R2I22+dUBdt.

一周期で UB が戻るため,電源の平均電力は R1|I^1|2/2+P2 である.配線長 ℓ,伝播速度 vs に対し ωℓ/vs と鉄心の非線形・損失補正が十分小さくなければならない.

総合演習 23

東京大 1990 前期(改題) ★★★★★

抵抗を通した電荷の遅れが回転を減衰させる

回転式コンデンサーを慣性モーメント J の軸とねじりばねにつなぎます.角 θ=0 付近で C(θ)=C0+c1θ+c2θ2/2,C0,c1,c2>0 とします.ばねのトルクは −κ(θ−θr).電圧 V0 で0を平衡とするため θr=−V02c1/(2κ) とします.重力,軸の摩擦,端の電場,回路の自己誘導を無視します.

  1. 電圧一定での電気的トルクを,電源の仕事と静電エネルギーから導け.電荷を Q0=C0V0 に固定した場合を考え,両場合の0付近の小振動の角振動数と安定条件を比較せよ.

  2. 電圧一定で安定な系を,抵抗 R を通して電源 V0 へつなぎ,外部トルク Tacos⁡ωt を加えた定常応答で,θ と電圧ずれ δV の複素振幅を求めよ.τ=RC0 とし,ばねの強さと減衰係数を表せ.

  3. 外部駆動で振幅 A と ω を保つとき,一周期のジュール熱を求め,熱が最大になる R を求めよ.

ねじりばねと回転軸につながる可動極板,固定極板,抵抗付き直流電源を描く.角度 \(\theta\),回転の向き,容量 \(C(\theta)\),外部トルクを示す. ねじりばねと回転軸につながる可動極板,固定極板,抵抗付き直流電源を描く.角度 \(\theta\),回転の向き,容量 \(C(\theta)\),外部トルクを示す.
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考え方

電源を含めて仕事を数える.有限抵抗での電荷の遅れを一次までの応答で求める.

  1. 電源の仕事は dWs=V0dQ=V02dC,場の増加は dU=V02dC/2 である.差が軸の仕事なので,トルクは Te=V02(c1+c2θ)/2.合トルクは −κVθ,ただし κV=κ−V02c2/2 である.

電荷一定では U=Q02/[2C(θ)] から

Te=−dUdθ=Q02(c1+c2θ)2C2,dTedθ∫|θ=0=V02c22−V02c12C0.

0でのトルクは同じである.G=V02c12/C0>0 とおけば

ωV=κVJ,ωQ=κV+GJ.

安定条件は各根号の中が正であること.

  1. 電荷変化は δQ=C0δV+V0c1θ,電源の式は RI+δV=0,I=dδQdt である.eiωt の実部で表し,複素振幅を使うと

δV^=−V0c1C0iωτ1+iωτθ^,θ^=TaκV−Jω2+Giωτ1+iωτ.

ix/(1+ix)=(x2+ix)/(1+x2) だから,分母の実部と虚部は

κeff−Jω2+iωΓ,κeff=κV+Gω2τ21+ω2τ2,Γ=Gτ1+ω2τ2>0.

θ(t) は θ^eiωt の実部である.ωτ→0 では電圧一定,ωτ→∞ では電荷一定のばねの強さを回収する.

  1. 電流振幅は |I^|=V0c1ωA/1+ω2τ2.平均発熱 R|I^|2/2 に周期を掛けると

H=πGA2ωτ1+ω2τ2=πΓωA2.

x/(1+x2) の微分は (1−x2)/(1+x2)2 なので,最大は ωτ=1,R=1/(ωC0) で,Hmax=πGA2/2 となる.電荷が戻るため直流電源の正味の仕事 V0∫Idt は0で,熱は機械的駆動から来る.

近似条件は |c1A|/C0,|c2A2|/C0,|δV|/V0 が十分小さいことである.

総合演習 24

東京大 2014 前期(改題) ★★★★☆

不等間隔スリットはどの波長を集めるか

遮光板に,y=±yj,yj2=2jλ0f0,j=1,…,N の位置で z 方向に伸びる細いスリットを開けます.y=0 のスリットはありません.スリットごとの振幅を同じ as とし,伝播距離による差を無視します.光路はスリットの横位置の2次までの近軸近似で求めます.f0=0.400m,λ0=600nm,N=40 とします.

  1. 波長 λ0 の平面波を垂直に入射させると,板から距離 f0 の軸上で各スリットの光が強め合うことを示せ.同次数で波長 λ を集める距離 f(λ) を求めよ.

  2. 板の手前の軸上,距離 a=1.20m に点光源を置く.第一の集光次数について,像までの距離 b の式と,λ=660nm での値を求めよ.

  3. 平面波の配置に戻し,検出器を f0 に固定する.軸上の強さを設計波長での強さで割った式を,複素振幅の和から導け.設計波長に最も近い両側の零点の波長を求め,近軸展開で位相まで正しく保つ条件を検討せよ.

遮光板の対称な不等間隔スリットと軸を描く.平面波入射の配置,距離 \(a\) の点光源と距離 \(b\) の観測点の配置を並べ,\(y_j\) と最外スリットを示す. 遮光板の対称な不等間隔スリットと軸を描く.平面波入射の配置,距離 \(a\) の点光源と距離 \(b\) の観測点の配置を並べ,\(y_j\) と最外スリットを示す.
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考え方

光路を二次まで展開し,複素振幅を幾何級数で足す.

  1. 軸上距離 b までの光路は b2+yj2≃b+yj2/(2b).b=f0 なら中心軸からの余分な距離は jλ0 で,位相差は 2πj となる.対称な組の光路も等しく,2N 本が強め合う.波長 λ の同次数では yj2/(2f)=jλ より f(λ)=f0λ0/λ.

  2. 入射側の光路も加えると,j に依存する部分は yj2(1/a+1/b)/2.光路差を λ とする条件は

1a+1b=λλ0f0,b=(λλ0f0−1a)−1.

右辺が正なら後方に実像ができる.660nm で b=0.522m.

  1. ϵ=λ0/λ−1 とおく.共通位相を除くと

A=2as∑j=1Ne−2πijϵ,∑j=1Ne−2πijϵ=e−πi(N+1)ϵsin⁡(Nπϵ)sin⁡(πϵ).

強さは複素振幅の絶対値の二乗に比例するので

I(λ)I(λ0)=1N2[sin⁡(Nπϵ)sin⁡(πϵ)]2.

極限は1である.近い零点は ϵ=±1/N だから,λ=λ0/(1+1/N)=585nm,λ0/(1−1/N)=615nm である.

二次近似が捨てた光路は最大で yN4/(8f03) 程度で,その位相誤差は設計波長で πN2λ0/f0 程度である.今回は yN/f0=0.0110,位相誤差は 0.00754rad で,ともに小さい.入射側の四次の項も波長と比べる.

総合演習 25

東京大 1998 後期(改題) ★★★★☆

ホール電圧の反転と,立ち上がる時間

長さ ℓ=0.0400m,幅 w=0.0100m,厚さ d=0.500mm の直方体試料に,x 方向の電流 I と z 方向の磁場 B を加えます.横電圧は VH=V(y=0)−V(y=w) と定義します.電子のみが伝導し,その数密度を n,質量を m=9.10×10−31kg,電荷を −e,e=1.60×10−19C とします.縦の抵抗は R=80.0Ω です.

表示には接点位置による ηIR と,電流・磁場によらない Vb が混ざり,Y(I,B)=VH(I,B)+ηIR+Vb です.I0=0.0100A,B0=0.200T で次の値を得ました.

(I,B)

(I0,B0)

(I0,−B0)

(−I0,B0)

(−I0,−B0)

表示 Y

−0.500mV

1.100mV

0.700mV

−0.900mV

平均速度には mdvdt=−e(E+v×B)−mv/τc という緩和模型を与えます.試料の有効な誘電率は ε=1.00×10−7Fm−1 です.

  1. 定常状態で横電流が0となる条件から VH を導き,4測定から n を求めよ.

  2. 磁場なしの定常伝導から抵抗率 ρ と τc を求めよ.

  3. 電流を I0 に保ち,磁場を0から B0 へ切り替える.切り替え後の時間を t とし,電子の慣性を無視して横電場の立ち上がりを求めよ.側面の回路は開き,jy+εdEydt=0 が成り立つ.立ち上がり時間と緩和時間を比較せよ.

直方体試料に \(x,y,z\) 軸,電流,磁場を示し,横の2接点と縦の抵抗測定端子を描く.幅 \(w\),厚さ \(d\),長さ \(\ell\) と,横電圧の定義を記す. 直方体試料に \(x,y,z\) 軸,電流,磁場を示し,横の2接点と縦の抵抗測定端子を描く.幅 \(w\),厚さ \(d\),長さ \(\ell\) と,横電圧の定義を記す.
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考え方

電流・磁場の反転で背景を消す.速度の緩和と側面の電荷蓄積の時間を分ける.

  1. I=−nevxwd.横速度0でローレンツ力の横成分が消える条件は Ey−vxB=0 である.電位差の定義から VH=Eyw なので

VH=−IBned.

表の順で表示を Y1,Y2,Y3,Y4 とすると

VH(I0,B0)=Y1−Y2−Y3+Y44=−0.800mV.

従って n=I0B0/[ed|VH|]=3.13×1022m−3.

  1. 磁場なしの定常状態では vx=−eτcEx/m,従って jx=ne2τcEx/m.ρ=Ex/jx と R=ρℓ/(wd) より

ρ=Rwdℓ=0.0100Ωm,τc=mne2ρ=1.14×10−13s.
  1. 慣性を落とした横成分から jy=σ(Ey−vxB0),σ=1/ρ である.与えた全電流の条件を使うと

εdEydt+σEy=σvxB0,Ey(t)=vxB0(1−e−t/τH),τH=ερ=1.00ns.

初期値0より VH(t)=−0.800(1−e−t/τH)mV.電荷蓄積と伝導が決める時間で,τc より約 8.8×103 倍長く,同一視できない.

切り替えは τc より遅く τH より速く,誘導電場・配線の遅れを無視する.τc/τH=1.14×10−4,eB0τc/m=0.00400 が小さく,慣性と縦電流の補正を無視できる.

09東大の電磁気・波の過去問を発展させる

第25・27章の波と光を,第7章の振動,第14章の測定と組み合わせます.回路は第21・23章の電流とエネルギーで解きます.発生・反射・受信の時刻を区別してください.最後に逆算の精度,損失,背景を調べます.

総合演習 26

東京大 1994 後期(改題) ★★★★☆

周波数の揺れと反射縞から音源を探す

静止空気の音速は v=340ms−1 です.鉛直で平らな壁を x=0,水平な観測線を y=0 とし,音源を (d,h),d=0.500m に置きます.壁以外の反射を無視します.周波数 f0,高さ h は未知です.

壁を吸音材で覆い,音源を鉛直に小さく単振動させると,直下 (d,0) で受ける周波数の最大は 5100Hz,最小は 4900Hz,変動周期は 0.200s でした.次に吸音材を除き音源を止めると,(X,0) 付近に反射音と直接音の干渉縞が生じ,隣り合う強め合いの間隔は 0.680m でした.測定位置は h に比べて |X|,d が小さい範囲です.反射での位相変化は0とします.

  1. f0,音源の最大速さと振幅を求めよ.受信周期と運動周期が等しい理由も示せ.

  2. 光路差に相当する音の経路差から h を決め,近似の条件も確かめよ.

  3. 音源が同じ x=d の線上,高さ H で短い音波の束を発する.直下での直接音と反射音の到着時刻の差を Δt として H を逆算する式を導け.H=8.00m で到着時刻差を求め,連続音との違いを述べよ.

鉛直壁,音源の平衡位置 \((d,h)\),直下の観測点と観測線上の点 \((X,0)\) を描く.直接経路と壁を経る経路,鏡像音源を示す. 鉛直壁,音源の平衡位置 \((d,h)\),直下の観測点と観測線上の点 \((X,0)\) を描く.直接経路と壁を経る経路,鏡像音源を示す.
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考え方

周波数の極値で速度,干渉縞で位置を決める.静止空気,点音源と平面反射を仮定する.

  1. 最大速さを um とすると,音源が下向きで接近,上向きで遠ざかり

fmax=f01−um/v,fmin=f01+um/v.

両式の逆数を加え,差も取れば

f0=2fmaxfminfmax+fmin=4998Hz,um=vfmax−fminfmax+fmin=6.80ms−1.

発生時刻を s,直下までの距離を r(s) とすれば受信時刻は t=s+r(s)/v.一周期後に距離が戻るため t(s+T)−t(s)=T で,受信周期も T=0.200s である.従って振幅は A=umT/(2π)=0.216m.

  1. 直接経路と反射経路の長さは rD=h2+(X−d)2,rR=h2+(X+d)2.二次まで展開すると

Δ=rR−rD≃2dXh,δX=hλ2d,h=2df0δXv=10.0m,λ=vf0.
  1. 発生位置が共通なので

vΔt=H2+4d2−H,H=4d2−(vΔt)22vΔt.

数値は Δt=1.83×10−4s である.束の間の運動を無視する.

連続音の同一受信時刻では,反射音は早く発生した音である.加速する音源では,発生速度を分ける.vΔt→0 では高さが増す一方,時間差の相対誤差も拡大する.干渉の近似には d/h,|X|/h が小さく,捨てた経路差を λ で割った量も小さいことが要る.A/h=0.0216,um/v=0.0200 も小さい.

総合演習 27

東京大 2013 前期(改題) ★★★★☆

2つの角度の反射時間で深さと音速を分ける

2液体 A・B の平面境界に超音波を送ります.A の厚さは hA=0.0200m,音速は vA=1.50×103ms−1 です.B の音速 vB と境界からの深さ h にある小さな散乱体の位置は未知です.音は各層で一定速度で進み,境界の法線に対する入射角を θ,屈折角を ϕ とします.入射経路を戻る後方散乱を測ります.

送受信点を動かして散乱体を測ると,垂直入射の往復時間は t0=56.67μs,θ=30.0∘ の往復時間は tθ=71.04μs でした.散乱体の大きさ,分散,多重反射,装置の遅れを無視します.

  1. 境界で位相がつながる条件から屈折の法則を導き,往復時間を表せ.

  2. 2測定から vB,h を求めよ.

  3. 入射角を小さくすると深さと音速の分離が難しくなる理由を,θ の二次までの展開から説明せよ.各時間の不確かさを 0.20μs とし,θ=3.0∘ での2層目の時間差と比較せよ.大きい角度にも測定上の限界があることを述べよ.

厚さ \(h_A\) の液体 A と液体 B,小さな散乱体を描く.垂直経路と屈折した往復経路,角 \(\theta,\phi\),散乱体の深さ \(h\),送受信点を示す. 厚さ \(h_A\) の液体 A と液体 B,小さな散乱体を描く.垂直経路と屈折した往復経路,角 \(\theta,\phi\),散乱体の深さ \(h\),送受信点を示す.
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考え方

垂直入射で深さと音速の比,斜め入射で音速を決める.層と経路が波長より十分長い模型を使う.

  1. 接線座標を x とすると,入射・透過波の位相の傾きは kAsin⁡θ,kBsin⁡ϕ である.両者は等しく,振動数も共通なので kj=2πf/vj を使って

sin⁡θvA=sin⁡ϕvB,tθ=2(hAvAcos⁡θ+hvBcos⁡ϕ).
  1. A 内の既知の時間を引き,s0=t0−2hA/vA,sθ=tθ−2hA/(vAcos⁡θ) とおく.すると

s0=2hvB,s0sθ=cos⁡ϕ=1−(vBvAsin⁡θ)2,

従って

vB=vAsin⁡θ1−(s0sθ)2,h=vBs02.

s0=30.00μs,sθ=40.25μs を代入して vB=2.00×103ms−1,h=0.0300m.sin⁡ϕ=2/3,ϕ=41.8∘ で,両時間を再現する.

  1. sin⁡θ≃θ,(1−x)−1/2≃1+x/2 を使うと

sθ−s0≃s02(vBvA)2θ2.

角度を小さくすると違いは二次で消える.3.0∘=0.0524rad では,差は約 0.0731μs である.差の不確かさは 0.20+0.20=0.40μs となり,信号の違いより大きい.時間差が小さく,vB を精密に決められない.

大角度では差が増えるが,(vB/vA)sin⁡θ<1 を満たす必要である.臨界角近くでは横の移動と経路が長く,有限の試料と減衰に制限される.小角展開の条件は (vB/vA)2θ2 が十分小さいことで,3.0∘ では0.00487である.逆算には屈折の式を用いた.

総合演習 28

東京大 1998 前期(改題) ★★★★☆

コイルの電流を待ってから電圧へ変える

L=0.0200H,内部抵抗 r=4.00Ω のコイルに,電源から定常電流 I0=4.00A を流しておきます.電源を切り離し,コイルを抵抗のない導線で短絡して tw=3.00ms だけ待ちます.次に導線を無電荷の C=50.0μF のコンデンサーに替えます.切り替え中も電流の道を確保し,電流・電荷は連続とします.

接続時刻を t=0 とし,極板へ入る電流を I=dqdt とします.コイルの飽和,容量の漏れ,配線の容量・抵抗,切り替え中の損失を無視します.

  1. 待ち時間後の電流 Iw と,その間の発熱を求めよ.

  2. コンデンサー接続後の q(t) を複素指数関数から求め,電圧が初めて最大になる時刻と値を求めよ.初めの磁気エネルギーに対する最大時の静電エネルギーの割合も求めよ.

  3. 同じ素子で,最大電圧を 40.0V 以上にするために許される待ち時間の上限を求めよ.損失を無視する条件も述べよ.

電流準備,コイル短絡,コンデンサー接続の3回路を並べる.コイル内部抵抗 \(r\),\(L,C\),電流の連続する方向,時間 \(t_w\) を示す. 電流準備,コイル短絡,コンデンサー接続の3回路を並べる.コイル内部抵抗 \(r\),\(L,C\),電流の連続する方向,時間 \(t_w\) を示す.
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考え方

電流を引き継ぎ,各区間の発熱を差し引く.素子一定の線形回路とする.

  1. 待つ間は LdIdt+rI=0 なので Iw=I0e−rtw/L=2.20A.初めの磁気エネルギーは U0=LI02/2=0.160J,待ち時間後は Uw=LIw2/2=0.0482J.発熱は

Hw=∫0twrI02e−2rt/Ldt=LI022(1−e−2rtw/L)=0.112J.

和は U0 に戻る.

  1. q(0)=0,dqdt(0)=Iw として

Ld2qdt2+rdqdt+qC=0,s2+2αs+ω02=0,α=r2L,ω0=1LC.

根は s=−α±iωd,ωd=ω02−α2.2根から実解を作り,初期条件を入れると

q(t)=Iwωde−αtsin⁡ωdt,I(t)=Iwe−αt(cos⁡ωdt−αωdsin⁡ωdt).

V=q/C の最初の最大は I=0 だから

t∗=1ωdarctan⁡ωdα,Vmax=IwLCe−αt∗.

sin⁡(ωdt∗)=ωd/ω0 を用いた.数値は α=100s−1,ωd=995rads−1,t∗=1.48ms,Vmax=37.9V である.初めの磁気エネルギーに対する最大時の割合は

CVmax2/2LI02/2=e−2rtw/L−2αt∗=0.224.

2.24割で,静電エネルギーは 0.0359J.残りは発熱である.

  1. 最大電圧は I0L/Cexp⁡[−rtw/L−αt∗] なので,指定電圧を Va とすると

tw≤Lrln⁡(I0L/Ce−αt∗Va)=2.73ms.

3.00ms は上限を超える.

待ち区間と最初の電圧最大までの損失をともに省くには,rtw/L と αt∗ がそれぞれ十分小さい必要がある.弱減衰なら αt∗≃πα/(2ω0) である.今回は rtw/L=0.600,αt∗=0.148 で,両区間の損失を残す.集中定数近似には ω0ℓ/vs が十分小さいことも要る.

総合演習 29

東京大 2007 後期(改題) ★★★★★

動く鏡の位相から加速度まで測る

真空中のマイケルソン干渉計に,波長 λ=640nm の単色光を入れます.c=3.00×108ms−1,ν=c/λ です.一方の鏡は固定され,他方は半透鏡から遠ざかる向きを正として直線運動します.反射時刻 s における距離を ℓ(s),速度を u(s)=dℓds,|u|<c とします.戻り光が半透鏡に到達する時刻を t,同じ光が半透鏡から出た時刻を te とします.

装置は相対位相 ϕ を,規格化信号 D1=cos⁡ϕ,D2=sin⁡ϕ で測れるものとします.反射で加わる一定の位相を除き,ϕ は固定腕の位相から可動腕の位相を引いた符号で定義します.

  1. t,te,s の関係から,相対位相と反射光の振動数を求めよ.符号付き縞の変化率 b=dϕdt/(2π) と u の関係を導け.

  2. 測定した b,dbdt から反射時刻での速度・加速度を求めよ.受信時刻で b=2.50×105Hz,dbdt=6.25×106Hzs−1 のときの値を求めよ.

  3. 2信号で運動方向を判定できる理由を示せ.レーザーの振動数がゆっくり変化し,可動腕が固定腕より 0.300m 長いとき,鏡を止めても生じる縞の変化率を求めよ.dνdt=1.00×1012Hzs−1 とし,速度の見かけのずれと対策を述べよ.

固定鏡と可動鏡をもつ干渉計を描き,可動鏡の距離 \(\ell(s)\),速度の正方向,出射・反射・帰着時刻を示す.2信号を読む検出部と固定腕の距離 \(\ell_r\) を記す. 固定鏡と可動鏡をもつ干渉計を描き,可動鏡の距離 \(\ell(s)\),速度の正方向,出射・反射・帰着時刻を示す.2信号を読む検出部と固定腕の距離 \(\ell_r\) を記す.
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考え方

出射時の位相を伝播時間を残して微分する.鏡の運動は外から指定し,速度による振幅変化を無視する.

  1. 往復の各長さは反射時の ℓ(s) なので

t=s+ℓ(s)c,te=s−ℓ(s)c,dsdt=11+u/c.

固定腕の長さを ℓr とすれば,出射時刻は固定腕で t−2ℓr/c,可動腕で te.従って

ϕ(t)=4πνc[ℓ(s)−ℓr],νr=νdtedt=ν1−u/c1+u/c,b=ν−νr=2νuc+u.

近づく鏡では u<0,b<0 となる.|u|/c が小さいとき b≃2u/λ である.

  1. 速度は u=cb/(2ν−b).加速度は反射時刻で微分し,a=duds より

dudt=2cν(2ν−b)2dbdt,a=dudtdtds=4cν2(2ν−b)3dbdt.

ν=4.6875×1014Hz より |b|/(2ν)=2.67×10−10 である.近似式 u≃λb/2,a≃(λ/2)dbdt を使って u=0.0800ms−1,a=2.00ms−2 となり,正確な式も一致する.反射時刻の値なので,受信時刻への補正が要る.

  1. (D1,D2) は単位円上を進む.その回る向きが b の符号を与える.D1 だけでは ϕ と −ϕ を区別できない.

ゆっくり変わる出射位相を Θ(t),dΘdt=2πν(t) とする.可動腕のほうが長い場合,固定鏡でも

12πdϕdt=ν(t−2ℓr/c)−ν(t−2ℓ/c)≃2(ℓ−ℓr)cdνdt.

距離差が 0.300m なら遅れの差は 2.00ns,見かけの b は 2.00×103Hz,速度のずれは λb/2=6.40×10−4ms−1 である.2信号でも鏡の移動と周波数変化を分離できない.腕の長さを近づけるか,周波数変化を別に測って補正する.

最後の展開では,遅れの間に dνdt がほぼ一定で,|Δν|/ν が小さいとした.運動では |u|/c=2.67×10−10 が十分小さく,2腕の遅れを超える可干渉時間も要る.u=0 かつ周波数一定なら縞も動かない.