問いしるべ
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問いから始める物理

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問いから始める物理

問いから原理へ,基本からオリンピックまで

著者:柚木芹香

身近な問いから始めて物理の原理を組み立て直す参考書.微積分は必要になった所で導入し,各節の演習は基本から物理オリンピックの水準まで段階をつけて置く.独学でも,教わりながらでも読めるように,各節の終わりに「教える人へ」の囲みがある.

この章の目次 · 18節
  1. クーロンの法則と電場
  2. クーロン力と電場の例題
  3. 電荷とクーロン力の演習
  4. ガウスの法則
  5. 面積分と流束,発散とガウスの定理
  6. 対称な電荷分布とガウスの法則の演習
  7. 電位と静電エネルギー
  8. 勾配・回転とストークスの定理
  9. 電位と静電エネルギーの演習
  10. 導体とコンデンサー
  11. コンデンサーと鏡像法の例題
  12. 導体とコンデンサーの演習
  13. 誘電体と分極
  14. 誘電体の例題
  15. 誘電体と分極の演習
  16. 第20章の章末問題
  17. 第20章の発展問題
  18. 第20章のまとめ

第20章  電荷と電場

01クーロンの法則と電場

問い

プラスチックの下じきを服でこすって頭に近づけると,髪の毛が下じきに吸い寄せられて持ち上がります.髪の毛を下へ引いているのは地球全体の重力です.地球の質量は 6.0×1024kg もあるのに,手のひらほどの下じきが,どうしてそれに勝てるのでしょうか.しかも,髪の毛のほうは何もこすっていないのに引かれます.電気を帯びていないものが引かれるのはなぜでしょうか.

ここから電磁気の分野(第20〜24章)に入ります.電磁気の見方は「電荷が場を作り,場が電荷に力を及ぼす」の一言にまとまります.電荷が止まっていれば電場だけが現れ(この章),電荷が動いて電流になると磁場も現れ(第21・22章),場が時間とともに変わると,磁場の変化が電場を,電場の変化が磁場を生みます(第23・24章).第24章で,法則の全部が次の4つ(マクスウェル方程式)と電荷が受ける力の式にまとまることを見ます.この章では静電気を,クーロンの法則と電場(この題材),ガウスの法則,電位,導体とコンデンサー,誘電体の順に扱います.万有引力(第10章)と同じ逆2乗の力なので,球殻の定理などの考え方がそのまま使えます.本体と数学の節のうち,発散・回転などのベクトル解析を使う部分には(発展)と付けてあり,初めて読むときは飛ばしてかまいません.

ポイント 電磁気の見取り図(言葉で)

  1. 閉じた面から出ていく電場の流束は,中にある電荷に比例する(ガウスの法則,第20章).

  2. 閉じた面から出ていく磁場の流束は,いつも0である(磁荷は無い,第22章).

  3. 閉じた道を一周する電場の線積分は,その道を縁とする面を貫く磁場の流束の減る速さに等しい(電磁誘導の法則,第23章).

  4. 閉じた道を一周する磁場の線積分は,その道を貫く電流と,電場の流束の変化の速さで決まる(第22章と第24章).

電荷 q が速度 v で動くとき,受ける力は F=q(E+v×B) である.

ポイント 第20章で使う記号

記号

意味

q, Q

電荷(単位 C,クーロン)

e

電気素量 1.60×10−19C.電子の電荷は −e

ε0, k

真空の誘電率,クーロンの法則の比例定数 k=1/(4πε0)

E

電場(単位 NC−1=Vm−1)

er

原点から外向きの単位ベクトル

ρ, σ, λ

体積・面・線の電荷密度(単位 Cm−3, Cm−2, Cm−1)

p

電気双極子モーメント

ΦE

電場の流束(電束)

V, U

電位・電圧,静電エネルギー

C

電気容量

εr, P, D

比誘電率,分極,電束密度(第5題材)

ρ は第21章で抵抗率に,λ は第25章から波長に使います.章の初めの表で確かめてください.

考えてみる

下じきの質量は地球よりはるかに小さいので,重力の仲間の力なら勝てるはずがありません.重力よりけた違いに強い電気の力が働いているはずで,どれほど強いのかを数で確かめるのが1つ目の課題です.

2つ目の課題はもっと厄介です.電気の力が帯電したものどうしに働くのなら,帯電していない髪の毛は引かれないはずです.「帯電していない」ことの中身を考え直す必要があります.

電荷

こすった2枚の下じきは退け合い,下じきとこすった布は引き合います.電気には2種類あり,同じ種類どうしは退け合い,違う種類どうしは引き合うのです.この性質を担う量を電荷といい,2種類を正と負の符号で区別します.

原子の中心には正の電荷をもつ原子核があり,そのまわりに負の電荷をもつ電子があります.ふつうの物体では正と負がほぼ正確に打ち消し合い,全体の電荷は0(電気的に中性)です.2つの物体をこすると電子の一部が一方からもう一方へ移り,受け取った側が負に,失った側が正に帯電します(摩擦帯電).

法則 電荷の保存と電気素量

  • 外と電荷のやりとりが無い系では,電荷の総和(正と負を符号つきで足したもの)は変わらない.

  • 自由に取り出せる電荷は,電気素量 e=1.60×10−19C の整数倍である.陽子の電荷は +e,電子の電荷は −e.

電荷が飛び飛びであることは,ミリカンが示しました.電場の中に浮かせた油滴の電荷をつり合いから測ると,どれも共通の値の整数倍だったのです.

金属のように,自由に動き回れる電子(自由電子)をもつ物質を導体,電子が原子や分子に縛られて動けない物質を絶縁体(不導体)といいます.下じきや髪の毛は絶縁体です.

クーロンの法則

法則 クーロンの法則

真空中で距離 r だけ離れた2つの点電荷 q1,q2 の間には,2つを結ぶ直線に沿って,大きさ

F=k|q1q2|r2,k=14πε0=8.99×109Nm2C−2

の力が働く.同符号なら斥力,異符号なら引力である.ε0=8.85×10−12C2N−1m−2 を真空の誘電率という.

向きまで含めると,q2 から q1 へ向かう単位ベクトルを e として q1 が受ける力は F1=kq1q2e/r2 で,q2 が受ける力は −F1 です(作用反作用の法則,第4章).

万有引力 Gm1m2/r2(第10章)とそっくりな形ですが,電荷には正負があって斥力もあることと,強さのけたが違います.k の代わりに 1/(4πε0) と書くのは,次の題材のガウスの法則がきれいな形になるからです.点電荷を囲む球面の面積は 4πr2 なので,球面を通る電場を足し合わせると,必ず 4π が出てきます.4π をクーロンの法則の側に入れておけば,ガウスの法則には 4π が現れません.どちらか一方に 4π が付くのは避けられず,今の物理ではガウスの法則のほうを簡単にする書き方を選んでいます.

電気の力はどれほど強いか

電子2個の間の電気の力と重力の比は,距離によりません.電子の質量 me=9.11×10−31kg と G=6.67×10−11Nm2kg−2 を使うと

ke2Gme2=8.99×109×(1.60×10−19)26.67×10−11×(9.11×10−31)2≈4×1042

です.電気の力は重力より 1042 倍も強いのです.

それでも目立たないのは,正と負がほとんど完全に打ち消し合っているからです.打ち消しが少し崩れたらどうなるでしょう.質量 70kg の人の体には陽子がおよそ 70/(2×1.67×10−27)≈2×1028 個あります(質量の約半分が陽子).2人の体で電子が陽子より 1 % だけ多ければ,余分な電荷はそれぞれ 2×1026×1.6×10−19≈3×107C です.1m 離れて立つ2人の間の斥力は

F≈8.99×109×(3×107)212≈1025N

で,地球と同じ質量の物体が地表で受ける重力 6×1025N に迫ります.物質がこれほど正確に中性を保っているのは,わずかでも偏ると,この強い力が偏りを戻すからです.

左では地球の重力が髪の毛を下へ引き,右では負の電荷がわずかに多い下じきが髪の毛を上へ引く.矢印の長さと粒の数は模式的に示している. 左では地球の重力が髪の毛を下へ引き,右では負の電荷がわずかに多い下じきが髪の毛を上へ引く.矢印の長さと粒の数は模式的に示している.

重ね合わせと電場

電荷がたくさんあるとき,1つの電荷が受ける力は,ほかの電荷が1つずつ及ぼす力をベクトルとして足したものです(重ね合わせの原理,実験で確かめられた事実).すると電荷 q が受ける力は,ほかの電荷の配置で決まるベクトルに q を掛けた形をしています.そのベクトルを,空間の各点に割り当てられた量と考えます.

定義 電場

点 r に置いた電荷 q が受ける力が F のとき,その点の電場を

E(r)=Fq

と定める.q は,まわりの電荷の配置を乱さないほど小さいとする(試験電荷).単位は NC−1(Vm−1 と同じ).

原点に置いた点電荷 Q が作る電場は E=kQer/r2 で,Q>0 なら外向き,Q<0 なら内向きです.たくさんの点電荷 qi が位置 ri にあれば,重ね合わせの原理から

E(r)=∑ikqir−ri|r−ri|3

です.電荷が連続に分布しているときは,和を積分に置き換えます(次の題材の数学の節).

電場は計算の道具というだけではありません.遠くの電荷を急に動かしても,影響は光の速さで遅れて届き,その間,力を運んでいるのは空間の状態,つまり場です.場はエネルギーも持ち(コンデンサーの題材と第24章),電波や光は電荷から離れて飛んでいく場そのものです(第26章).

電気力線

各点で電場の向きに接する曲線を,電場の強い所ほど密に描いたものが電気力線です.点電荷の電気力線は放射状の直線で,正電荷から出て無限遠へ向かい,負電荷には無限遠から入ります.電荷の無い所で始まったり終わったりせず,2本が交わることもありません(交われば,その点で電場の向きが2つになる).

[図:2つの点電荷の電気力線]

初期状態は q₂/q₁ = −1 で,力線は左の正電荷から右の負電荷へ向かう.スライダーで電荷比を −2 から +2 へ変えると,力線の形と同符号の場合の電場が0の点が変わる.

電気双極子

正負の電荷 +q,−q が小さな距離 d だけ離れた組を電気双極子,−q から +q へ向かう大きさ qd のベクトルを電気双極子モーメント p といいます.全体の電荷は0ですが,電場は0になりません.

+q を z=d/2,−q を z=−d/2 に置き,z 軸上の遠い点 z=r での電場を求めます.

Ez=kq[1(r−d/2)2−1(r+d/2)2]=kq2rd(r2−d2/4)2≈2kpr3

最後は d/r が十分小さいとして,分母の d2/4 を落としました.垂直二等分線上で距離 r の点では z 成分だけが残り,Ez≈−kp/r3(p と逆向き)です.正負の電荷の電場はそれぞれ 1/r2 ですが,遠くから見ると2つはほぼ同じ場所にあるので,打ち消し合って1つ高い次数の 1/r3 だけが残るのです.

z 軸上の −q から +q へ双極子モーメント p が向く.軸上の外側の電場は p と同じ向きで,垂直二等分線上では逆向きである. z 軸上の −q から +q へ双極子モーメント p が向く.軸上の外側の電場は p と同じ向きで,垂直二等分線上では逆向きである.

水の分子のように,正と負の電荷の重心がもともとずれている分子(極性分子)は双極子です.

中性の物体が引かれるわけ

一様な電場の中の双極子では,+q と −q が受ける力が打ち消し合い,合力は0です(トルクは働きます).ところが電場が場所によって違うと,合力が残ります.x 方向の電場 E(x) の中に,p を x 方向に向けた双極子を置くと,合力は

F=qE(x+d2)−qE(x−d2)≈qddEdx=pdEdx

です(d について1次の近似).

中性の物体を帯電体に近づけると,中の電荷が少しずれます.導体なら自由電子が動き(静電誘導),絶縁体なら電子の雲が偏ったり極性分子の向きがそろったりします(誘電分極,第5題材).どちらでも帯電体に近い側に異符号,遠い側に同符号の電荷が現れ,電場と同じ向きの双極子ができます.近い側の異符号の電荷のほうが強い電場の所にあるので,引力が勝ちます.帯電体の電荷の符号によらず,力はいつも電場の強い所,つまり帯電体へ向かいます.

[図:帯電した下じきによる髪の毛の分極]

初期状態は負に帯電した下じきで,髪の毛の近い側に正,遠い側に負の電荷が偏る.正負の切替ボタンと接近のスライダーで,どちらの符号でも近づくほど引力が強まることを示す.

近似の条件:点電荷とみなせるのは物体の大きさが距離より十分小さいとき,双極子の電場 ∝1/r3 と力 pdE/dx は d が r や電場の変わる距離より十分小さいときです.

問いに戻る

電気の力は重力より 1042 倍も強いので,わずかな電荷の偏りで大きな力になります.こすった下じきの余分な電荷は多くても 10−7C 程度で,下じきの電子の全電荷(105C のけた)の1兆分の1にも足りませんが,長さ10cmほどの髪の毛の重さ(10−5N 程度)に勝つには十分です.重力はそれほど弱いのです.

帯電していない髪の毛が引かれるのは,下じきの電場で中の電荷が偏り,電場の強い近い側に異符号の電荷が寄るからです.下じきの電荷の符号によらず引き寄せられます.

ポイント ここまでのまとめ

  • 電荷には正負があり,保存し,電気素量 e=1.60×10−19C の整数倍の値をとる.

  • クーロンの法則 F=k|q1q2|/r2,k=1/(4πε0)=8.99×109Nm2C−2.力は重ね合わせられる.

  • 電場 E=F/q.点電荷なら kQer/r2.電気力線は正電荷から出て負電荷に入る.

  • 電気の力は重力より 1042 倍も強く,物質はほぼ正確に中性を保つ.

  • 双極子 p の遠方の電場は 1/r3 で減り,非一様な電場の中で pdE/dx の力を受ける.

  • 中性の物体は,電場で電荷が偏って双極子になり,強い電場の側,つまり帯電体へ引き寄せられる.

02クーロン力と電場の例題

点電荷の問題は,どの電荷が「受ける側」かを決め,ほかの電荷が作る電場をベクトルとして足すのが基本です.向きは図に矢印で描き,大きさは k|q|/r2 で計算してから成分に分けると,符号の間違いが減ります.ここでは,つり合い,対称性を使った重ね合わせ,力学と組み合わせた測定の3つを練習します.

ポイント 点電荷の問題の手順

  1. 力を受ける電荷を1つ決め,それ以外の電荷を電場の源とする.

  2. 各電荷が作る電場の大きさ k|qi|/ri2 と向き(正電荷から遠ざかる向き,負電荷へ近づく向き)を図に描く.

  3. 対称性で打ち消し合う成分を先に消し,残りを成分ごとに足す.

  4. 受ける力は F=qE.負電荷では電場と逆向きになる.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

x 軸上の原点に電荷 Q(Q>0),x=d に電荷 4Q がある.ここに3つ目の点電荷 q を x 軸上に置き,3つの電荷がどれも力のつり合いの状態になるようにしたい.重力は無視する.

  1. 3つ目の電荷を置く位置と,q の値を求めよ.

  2. 電荷 Q と 4Q を固定し,3つ目の電荷だけを x 軸に沿って少しずらしたとき,つり合いの位置に戻るか.

原点に Q,x = d に 4Q,その間の未定の位置 x に電荷 q を置く.距離 x と d − x を示し,q の符号やつり合いの位置は示さない. 原点に Q,x = d に 4Q,その間の未定の位置 x に電荷 q を置く.距離 x と d − x を示し,q の符号やつり合いの位置は示さない.
解答を見る

考え方 まず3つ目の電荷が受ける力のつり合いから位置を決める.Q と 4Q は同符号なので,間に置かないと2つの力が同じ向きになる.次に Q が受ける力のつり合いから q を決め,最後に 4Q のつり合いを確かめる.

  1. 3つ目の電荷を 0<x<d に置く.q の符号によらず,2つの電荷から受ける力が逆向きで大きさが等しければよいので

kQ|q|x2=k⋅4Q|q|(d−x)2

より (d−x)2=4x2,d−x=2x(0<x<d なので正の側),x=d/3 である.

次に原点の Q を考える.4Q からの斥力は −x 向きで大きさ 4kQ2/d2.これを打ち消すには,q から +x 向きの引力が要るので q<0 で

kQ|q|(d/3)2=4kQ2d2,|q|=49Q

よって q=−49Q を x=d3 に置く.

確かめに 4Q を考える.Q からの斥力は +x 向きに 4kQ2/d2,q からの引力は −x 向きに

k⋅4Q⋅49Q(2d/3)2=4kQ2d2

で,確かにつり合う.3つの電荷に働く力の和はいつも0(作用反作用)なので,2つがつり合えば残りもつり合う.

  1. Q と 4Q が作る電場の x 成分は,0<x<d で

Ex(x)=kQx2−4kQ(d−x)2

であり,x=d/3 で0になる.微分すると

dExdx=−2kQx3−8kQ(d−x)3<0

なので,x=d/3 から +x 向きに δ ずらすと Ex≈dEx/dx⋅δ<0 となる.q<0 なので力 qEx は正,つまりずらした向きに働く.つり合いの位置からさらに離れていくので,戻らない(不安定).

確かめ:負電荷 q は近いほうの正電荷に強く引かれるので,少しでも近づいたほうへ引き寄せられる,という直観に合う.x 軸に垂直にずらした場合は2つの引力の和が軸へ戻す向きになるが,どの向きにも安定な点電荷のつり合いは作れないことを,次の次の題材で確かめる.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

1辺 a の正三角形 ABC の頂点に点電荷を置く.正三角形の重心を G とする.

  1. 3つの頂点に同じ電荷 q(q>0)を置いたとき,G の電場を求めよ.

  2. A,B に q,C に −q を置いたとき,G の電場の大きさと向きを求めよ.

    1. の G に電荷 −q を置いたとき,それが受ける力の大きさと向きを求めよ.

1辺 a の正三角形 ABC の A と B に +q,C に −q を置き,重心 G を示す.G における電場の向きや解答で求める距離は示さない. 1辺 a の正三角形 ABC の A と B に +q,C に −q を置き,重心 G を示す.G における電場の向きや解答で求める距離は示さない.
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考え方 G から各頂点までの距離は等しい.(1) は対称性で打ち消し合う.(2) は (1) の配置に「C に −2q を足したもの」と見ると,重ね合わせで1つの電荷の電場を求めるだけになる.

  1. 重心から頂点までの距離は,中線の長さ 32a の 23 で a3 である.3つの電場は大きさが等しく,互いに 120∘ ずつ違う向きを向く.3つのベクトルを足すと,正三角形を描いて元に戻るので,和は0である.よって G の電場は0.

  2. C の −q は,C の +q に −2q を重ねたものと見られる.(1) から3つの +q の電場の和は0なので,G の電場は C に置いた −2q の電場だけになる.大きさは

E=k⋅2q(a/3)2=6kqa2

で,負電荷へ近づく向き,つまり G から C へ向かう向きである.

  1. F=(−q)E なので,大きさ 6kq2a2,向きは G から C と反対向き(辺 AB の中点へ向かう向き)である.

確かめ:成分で直接足してもよい.G から C への向きを正にとると,C の −q の電場は正の向きに 3kq/a2.A,B の +q の電場は,それぞれ A,B から遠ざかる向きで,G から C への向きと 60∘ をなすので,成分は2つ合わせて 2×3kqa2cos⁡60∘=3kqa2,横の成分は打ち消し合う.和は 6kq/a2 で一致する.G の −q は C の −q に押され,A,B の +q に引かれ,どれも AB の側へ向かう.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

質量 m の小さな2つの球に同じ電荷 q(q>0)を与え,同じ点から長さ L の軽い絶縁体の糸で吊るしたところ,2つの球は距離 r だけ離れて静止した.球の大きさは r より十分小さく,点電荷とみなせるものとする.重力加速度の大きさを g,k=1/(4πε0) とする.

  1. 糸が鉛直となす角を θ として,つり合いの式を書け.

  2. r が L よりずっと小さいとして q を m,g,L,r,k で表し,m=1.0×10−3kg,L=0.50m,r=5.0×10−2m,g=9.8ms−2,k=8.99×109Nm2C−2 のときの値を求めよ.

  3. 一方の球の電荷だけを 2q にした.2つの糸の角は等しいままか.r は何倍になるか.

質量 m,電荷 q の2つの小球を長さ L の糸で同じ点から吊るす.糸と鉛直の角 θ と球の間隔 r を示し,解答で導入する力の矢印は描かない. 質量 m,電荷 q の2つの小球を長さ L の糸で同じ点から吊るす.糸と鉛直の角 θ と球の間隔 r を示し,解答で導入する力の矢印は描かない.
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考え方 1つの球に働く力は重力,張力,もう一方の球からの斥力の3つ.斥力は水平なので,水平と鉛直に分けてつり合いを書く.

  1. 張力を T,斥力の大きさを F=kq2/r2 とすると

Tsin⁡θ=kq2r2,Tcos⁡θ=mg

よって tan⁡θ=kq2mgr2.幾何から r=2Lsin⁡θ である.

  1. r が L よりずっと小さいと θ も小さく,tan⁡θ≈sin⁡θ=r2L である.(1) に入れて

r2L=kq2mgr2,q=mgr32kL

数値を入れると

q=1.0×10−3×9.8×(5.0×10−2)32×8.99×109×0.50=1.36×10−16≈1.2×10−8C

である.

  1. 2つの球が受ける斥力は作用反作用で大きさが等しく,質量も等しいので,2つの糸の角は等しいままである.斥力は k⋅q⋅2q/r2 になるので,(2) と同じ近似で r2L=2kq2mgr2,r3 が2倍になる.よって r は 21/3≈1.26 倍になる.

確かめ:(2) で θ≈r/(2L)=0.05 で,tan⁡θ と sin⁡θ の差は θ2/2 の割合,およそ 0.1 % なので近似は十分よい.q は電子 7×1010 個ぶんで,ふつうの摩擦帯電で得られる量である.(3) で角が等しいのは電荷の大小によらないが,質量が違えば m1tan⁡θ1=m2tan⁡θ2 となって角は違う.小球の半径が r よりずっと小さいことが,点電荷とみなす条件である.

ポイント ここまでのまとめ

  • 点電荷の電場は,大きさ k|q|/r2 と向きを図に描いてから,成分に分けて足す.

  • 3つの電荷のつり合いでは,1つの電荷の位置を決め,残りの電荷のつり合いで電荷の値を決める.力の和はいつも0なので,最後の1つは確かめになる.

  • 静電気力だけによるつり合いは,どこかの向きに不安定になる.

  • 対称な配置の電場は0になる.配置の一部を変えたときは,「対称な配置+差の電荷」と見ると重ね合わせが簡単になる.

  • 糸で吊るした帯電球では,作用反作用から2つの角は電荷の大小によらず等しい.小角の近似で電荷を測れる.

03電荷とクーロン力の演習

電場を成分に分け,電荷の符号と運動の向きを結びつける.k=1/(4πε0) とする.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

真空中の xy 平面で,A=(−a,0) に電荷 +Q,B=(a,0) に電荷 −2Q を固定する.a,Q>0 とする.

  1. P=(0,a) における電場の成分 Ex,Ey を求めよ.

  2. Pに置いた電荷 −q(q>0)が受ける力の成分と向きを求めよ.固定電荷は動かない.

A,B,Pと座標軸,電荷Qと−2Q,長さaを示す. A,B,Pと座標軸,電荷Qと−2Q,長さaを示す.
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考え方
各電場を成分に分けて加え,試験電荷を掛ける.

  1. 距離はともに 2a.Aの電場の成分はともに kQ/(22a2),Bの電場の成分は kQ/(2a2),−kQ/(2a2) だから

Ex=3kQ22a2,Ey=−kQ22a2.
  1. F=−qE より Fx=−3kQq/(22a2),Fy=kQq/(22a2).力は左上向きで,左向きの軸との角を θ とすれば tan⁡θ=1/3 である.負電荷では電場と力の向きが反転する.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

質量が各 m=2.0×10−9kg の微粒子2個に,同じ個数 n の電子を余分に与える.大きさを無視し,粒子間距離を r とする.k=8.99×109Nm2C−2,G=6.67×10−11Nm2kg−2,e=1.60×10−19C を用いる.

  1. 電気力と粒子間の重力の大きさの比を求めよ.

  2. 電気的な反発が重力の引力を上回る最小の整数 n を求めよ.

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考え方
力の比では距離が消える.電子の個数は整数である.

  1. FE=kn2e2/r2,FG=Gm2/r2 より FE/FG=kn2e2/(Gm2)=0.863n2≈0.86n2.

  2. 0.863n2>1 より n>1.08 だから最小は2個.1個では比が約0.86,2個では約3.5となる.比は無次元である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

電子が原点から x 軸の正方向へ速さ u で入射する.0<x<ℓ には上向きの一定電場 E=E0ey があり,その外では電場は0である.ey は上向きの単位ベクトルである.x=ℓ+D にスクリーンを置く.電子の質量は m,電荷は −e とし,重力,端の電場,放射による損失を無視する.
運動中の電子の速さは光速より十分小さいとする.

  1. 電場中の軌道 y(x) と,出るときの速度成分を求めよ.

  2. スクリーン上の到達座標 ys を求めよ.

幅ℓの電場領域と上向きのE₀,原点での右向き入射速度u,出口から距離Dのスクリーンを描く. 幅ℓの電場領域と上向きのE₀,原点での右向き入射速度u,出口から距離Dのスクリーンを描く.
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考え方
電場中の等加速度運動と,出口後の等速運動をつなぐ.

  1. mdvxdt=0,mdvydt=−eE0.初期条件から x=ut,y=−eE0t2/(2m) なので y=−eE0x2/(2mu2).出口までの時間は ℓ/u,速度は vx=u,vy=−eE0ℓ/(mu) である.

  2. 電場のない領域の通過時間は D/u.したがって

ys=−eE0ℓ22mu2−eE0ℓDmu2=−eE0ℓmu2(ℓ2+D).

D=0 では出口の位置に一致する.古典的な運動方程式には最大速さを光速で割った量が十分小さいこと,端の電場を無視するにはその領域の長さと ℓ の比が十分小さいことが必要である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

下向きの電場 E0=2.00×105Vm−1 で,負に帯電した4個の油滴を静止させた.各油滴の重力から浮力を引いた下向きの力 F を別の測定で求めたところ,次の値を得た.電場の誤差は無視し, F の誤差の限界を 0.08×10−14N とする.

油滴

A

B

C

D

F/(10−14N)

6.40

9.60

12.80

16.00

  1. 電荷の絶対値を求めよ.

  2. 電荷の絶対値は e の整数倍で,4滴には隣り合う整数倍が含まれると仮定する.e と各整数を推定し,その整数を固定したとき全測定と両立する e の範囲を求めよ.

油滴1個に下向きの電場E₀と,下向きの力Fを示す.滴の電荷の符号だけを記す. 油滴1個に下向きの電場E₀と,下向きの力Fを示す.滴の電荷の符号だけを記す.
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考え方
つり合いから電荷を求め,差から共通の単位を探す.

  1. 上向きの電気力は |q|E0.|q|=F/E0 より順に 3.20,4.80,6.40,8.00 倍の 10−19C である.誤差限界は 4.0×10−21C.

  2. 差はすべて 1.60×10−19C なので e をこの値,整数を 2,3,4,5 と推定する.電荷の測定値を qiobs,誤差限界を δq とすると,許される範囲は (qiobs−δq)/ni≤e≤(qiobs+δq)/ni の共通部分である.Dの範囲が最も狭く,1.592×10−19C≤e≤1.608×10−19C.隣り合う整数倍という仮定がなければ,このデータだけでは推定値の整数分の1も排除できない.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

(a,0,0),(−a,0,0),(0,a,0),(0,−a,0) に,同じ正電荷 Q を固定する.原点に質量 m,電荷 −q の粒子を置く.a,Q,q>0 とし,重力を無視する.

  1. 粒子を摩擦のない案内で z 軸上に拘束し,小振幅 A で動かしたときの角振動数を求めよ.

  2. 案内を外し,原点から x 方向にわずかにずらしたときの力を1次まで求め,3次元での安定性を判定せよ.

xy平面の4電荷Qと原点を通るz方向の案内を描く.座標aと負電荷−qを示す. xy平面の4電荷Qと原点を通るz方向の案内を描く.座標aと負電荷−qを示す.
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考え方
安定性は変位後の力で判定する.拘束方向と自由な方向を分ける.

  1. 4電荷の z 成分を加えると Ez=4kQz/(a2+z2)3/2.A/a が十分小さいなら Fz≈−4kQqz/a3.md2zdt2=−4kQqz/a3 より ω=4kQq/(ma3).

  2. x 軸上の2電荷の電場は kQ[(a+x)−2−(a−x)−2]≈−4kQx/a3.y 軸上の2電荷からは 2kQx/(a2+x2)3/2≈2kQx/a3.合計は Ex≈−2kQx/a3,従って Fx≈2kQqx/a3 で変位と同じ向きである.3次元では不安定である.近似条件は A/a または |x|/a が十分小さいことであり,力が0でも安定とは限らない.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

x=a に電荷 +q,x=−a に電荷 −q を固定する.a,q>0,r>a とする.

  1. 軸上の P=(r,0) と,垂直二等分線上の S=(0,r) での電場を厳密に求めよ.

  2. a/r が十分小さいとき,各電場の先頭の項と,両点での電場の大きさの比を求めよ.先頭の項に対する相対補正も (a/r)2 の項まで求めよ.

x軸上の2電荷と点P,Sを描き,距離rと半間隔aを示す. x軸上の2電荷と点P,Sを描き,距離rと半間隔aを示す.
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考え方
近似する前に差をまとめ,遠方で打ち消される項を調べる.

  1. Pでは Ex=kq[(r−a)−2−(r+a)−2]=4kqar/(r2−a2)2,Ey=0.Sでは上下の成分が消え,Ex=−2kqa/(r2+a2)3/2,Ey=0.

  2. s=a/r と置くと,Pの成分は (4kqa/r3)(1−s2)−2≈(4kqa/r3)(1+2s2),Sの成分は −(2kqa/r3)(1+s2)−3/2≈−(2kqa/r3)(1−3s2/2).先頭の項はともに逆3乗に比例し,大きさの比は2.相対補正はそれぞれ 2s2,−3s2/2 で,比も 2(1+7s2/2) と補正される.次の項は s4 の次数であり,a/r が十分小さい範囲でだけこの近似が使える.

ポイント 教える人へ

  • 電場の向きと,負電荷が受ける力の向きを別々に説明させます.

  • 電場領域の出口で,位置と速度の両方をつなげているか確かめさせます.

  • 油滴の整数の割り当てが,測定だけでなく仮定にも依存することを説明させます.

  • つり合いと安定性,拘束下の安定性と自由な運動の安定性を区別させます.

04ガウスの法則

問い

金属でできた中空の球に電荷を与えて帯電させます.球には小さな穴があいていて,そこから空洞の中に小さな電荷を差し入れることができます.空洞の中の電荷は,球の電荷から力を受けるでしょうか.球の外に別の帯電体を近づけたら,その影響は空洞の中まで届くでしょうか.

考えてみる

球の表面の電荷が空洞の中の電荷に及ぼす力を,クーロンの法則で1つずつ足していくこともできます.近くの壁の電荷は近いので強く押し,遠くの壁の電荷は遠いけれど量が多い.この勝負は,第10章の球殻の定理と同じ形で,殻の内側では力がちょうど打ち消し合うことを知っています.けれど,それは電荷が球面に一様に分布しているときの話です.外に帯電体を近づければ,金属の中の自由電子が動いて表面の電荷の分布は偏りますし,球でない容器ではどうなるのかも分かりません.電荷の分布が分からないまま,クーロンの法則を足し合わせることはできません.

そこで見方を変えます.電気力線は正電荷から出て負電荷に入り,途中で消えません.それなら,閉じた面から出ていく電気力線の本数を数えれば,中にある電荷が分かるはずです.逆に,中の電荷が分かれば,出ていく本数が分かります.電気力線を数えるという考えを,式にしましょう.

電場の流束

一様な電場 E の中に,面積 S の平面を置きます.面に垂直な単位ベクトル(法線ベクトル)を n とし,E と n のなす角を θ とします.面を横切る電気力線の本数は,面を電場に垂直な向きに映した面積 Scos⁡θ に比例します.

定義 電場の流束

面を小さな部分 dS に分け,各部分の法線ベクトルを n とするとき

ΦE=∫E⋅ndS

を,面を n の向きに通る電場の流束(電束)という.一様な電場と平面なら ΦE=EScos⁡θ.閉じた面では n をいつも外向きにとる.

電気力線を,電場に垂直な面の単位面積あたり E 本の密度で描くことにすると,流束は面を通る電気力線の本数そのものです.ただし,本数は流束を思い描くための絵であって,流束そのものは連続な量です.1.5 本のような半端な値になっても構いません.閉じた面では,出ていく本数から入ってくる本数を引いたものになります.面積分の計算の仕方は数学の節で練習します.

左の平面の法線 n は一様な電場 E と角 θ をなす.電場に垂直な投影面積は S cosθ である.右では閉じた面を出る力線から入る力線を引いて流束を数える. 左の平面の法線 n は一様な電場 E と角 θ をなす.電場に垂直な投影面積は S cosθ である.右では閉じた面を出る力線から入る力線を引いて流束を数える.

ガウスの法則

原点にある点電荷 q を,半径 r の球面で囲みます.球面上では電場は外向きで大きさ kq/r2 なので,E⋅n=kq/r2 が一定です.流束は

ΦE=kqr2×4πr2=4πkq=qε0

で,r によりません.電場は 1/r2 で弱まり,球面の面積は r2 で増えるので,ちょうど打ち消し合います.どの半径の球面でも,通る電気力線の本数は同じです.

面が球面でなくても同じです.点電荷から見て,閉じた面の小さな部分 dS が距離 r にあり,その法線が電場と角 θ をなすとします.この部分を通る流束 (kq/r2)cos⁡θdS は,dS を半径 r の球面に映した面積 cos⁡θdS を通る流束と同じで,それは同じ円錐が半径1の球面を切り取る面積(立体角)dΩ=cos⁡θdS/r2 に kq を掛けたものです.面全体で足すと,立体角は全部で 4π なので流束は 4πkq になります.

電荷が閉じた面の外にあれば,電気力線は面に入って,また出ていくので,流束は0です.たくさんの電荷があるときは,重ね合わせの原理から流束も足し合わせられます.

法則 ガウスの法則

任意の閉じた面について,外向きの電場の流束は,面の中にある電荷の総和 Qin で決まる.

ΦE=∫E⋅ndS=Qinε0

面の外の電荷は,面上の電場を変えるが,流束には寄与しない.

左では点電荷 q からの細い円錐が閉じた面を切り取る部分 dS と,法線 n,電場 E,角 θ を示す.右では外の点電荷の力線が面に入り,再び出る. 左では点電荷 q からの細い円錐が閉じた面を切り取る部分 dS と,法線 n,電場 E,角 θ を示す.右では外の点電荷の力線が面に入り,再び出る.

ガウスの法則は,クーロンの法則の逆2乗の性質と同じことを言っています.もし力が 1/r2+δ に比例していたら,球面を通る流束は r−δ に比例して半径で変わり,電気力線は途中で消えたり生まれたりすることになります.帯電した導体の殻の内側に電場がまったく無いことを精密に調べる実験で,δ は 10−15 より小さいと確かめられています.

注意しておきたいのは,ガウスの法則は流束,つまり面全体での合計についての法則だということです.各点の電場までは教えてくれません.たとえば一様な電場は,どんな閉じた面でも流束が0で,電場の無い空間と区別できません.静電場を決めるには,もう1つ「静電場は保存場である」(電位の題材)という性質が要ります.ガウスの法則だけで電場が求まるのは,対称性から電場の向きと,どこで大きさが等しいかが前もって分かる場合です.

対称性から電場を求める

ポイント ガウスの法則で電場を求める手順

  1. 電荷の分布の対称性から,電場の向きと,電場の大きさが何に依存するかを決める.

  2. 面上で E⋅n が一定か0になるような閉じた面(ガウス面)を選ぶ.

  3. 流束を「電場の大きさ × 面積」の掛け算で書く.

  4. ガウス面の中の電荷 Qin を数え,ΦE=Qin/ε0 から電場の大きさを出す.

球対称.半径 a の薄い球殻に電荷 Q が一様に分布しているとします.電場は中心から放射状で,大きさは中心からの距離 r だけで決まります.半径 r の同心の球面をガウス面にとると,4πr2Er=Qin/ε0 です(Er は外向きの成分).殻の外(r>a)では Qin=Q で Er=kQ/r2,殻の中(r<a)では Qin=0 で Er=0 です.半径 R の球に電荷 Q が一様に分布していれば,内部では Qin=Q(r/R)3 なので

Er=kQR3r(r<R),Er=kQr2(r>R)

となります.第10章で輪に分けた積分で示した球殻の定理が,数行で出てしまいました.万有引力でも,重力の場 g について ∫g⋅ndS=−4πGMin が同じ理由で成り立ちます(kq を −Gm に置き換える).

円筒対称.無限に長い直線に,単位長さあたり λ の電荷が一様に分布しているとします.電場は直線から放射状に広がり,大きさは直線からの距離 r だけで決まります.半径 r,長さ L の円筒をガウス面にとると,両端のふたでは E⋅n=0,側面では一定なので

2πrLE=λLε0,E=λ2πε0r

です.点電荷の 1/r2 と違って,1/r でしか弱まりません.電気力線が平面の中に放射状に広がるだけだからです.

平面対称.無限に広い平面に,単位面積あたり σ の電荷が一様に分布しているとします.電場は平面に垂直で,平面の両側で反対向き,大きさは平面からの距離だけで決まります.平面を貫く,底面積 S の円筒(または箱)をガウス面にとると,流束は両方の底面から出て

2SE=σSε0,E=σ2ε0

です.電場は平面からの距離によりません.電気力線が平行なまま広がらないからです.+σ と −σ の2枚の平行な平面を重ねると,間では2つの電場が同じ向きで E=σ/ε0,外では打ち消し合って0になります.これが,導体とコンデンサーの題材で使う平行板の電場です.

球殻 Q と同心球面,直線電荷 λ を囲む円筒,平面電荷 σ を貫く円筒を並べる.青の電場は球面,円筒の側面,両底面をそれぞれ外向きに通る. 球殻 Q と同心球面,直線電荷 λ を囲む円筒,平面電荷 σ を貫く円筒を並べる.青の電場は球面,円筒の側面,両底面をそれぞれ外向きに通る.

ここでの「無限に長い直線」「無限に広い平面」は理想化です.長さや広さが L の有限の分布でも,端から十分離れ,分布からの距離 r と L の比が十分小さい所では,同じ式がよい近似になります.逆に r が L よりずっと大きい所では,どんな分布も全電荷をもつ点電荷のように見えます.

対称性が無いとき

対称性が無いときは,ガウスの法則から電場は出せないので,電荷の分布を小さな部分に分けてクーロンの法則で足し合わせます.たとえば半径 a の輪に電荷 Q が一様に分布しているとき,輪の中心軸上で中心から距離 z の点の電場は,軸に沿った向きに

Ez=kQz(a2+z2)3/2

となります(導き方は数学の節).z が a よりずっと大きいと kQ/z2 で点電荷と同じになり,中心 z=0 では対称性から0です.球面上のどこでも電場の大きさが同じ,という性質が無いので,この結果はガウスの法則からは出せません.

各点で成り立つ形(発展)

ガウスの法則は,どんな閉じた面でも成り立ちます.そこで,ごく小さな箱を考え,箱から出ていく流束を箱の体積で割った量を考えます.これを E の発散 ∇⋅E といい,ガウスの法則から,箱の中の電荷を体積で割った量,つまり電荷密度 ρ を使って

∇⋅E=ρε0

が各点で成り立ちます.逆に,この式を体積で積分すると元のガウスの法則に戻ります(ガウスの定理,数学の節).電場が「どこからわき出しているか」を各点で言う形で,第24章のマクスウェル方程式の1つ目です.

問いに戻る

静電気の状態では,導体の中で電場は0です.電場があれば自由電子が動いてしまい,止まった状態にならないからです(詳しくは導体の題材).そこで,空洞を囲むように,金属の中だけを通る閉じた面をとります.面上では電場が0なので流束は0で,ガウスの法則から面の中の電荷の総和は0です.空洞に何も入れていなければ,空洞の内壁には正味の電荷がありません.球に与えた電荷も,外の帯電体が引き寄せたり退けたりする電荷も,すべて外側の表面に集まります.

球形の空洞なら,対称性から空洞の中の電場は0で,空洞に入れた小さな電荷は,球の電荷からも外の帯電体からも力を受けません.外の帯電体を近づけると,外側の表面の電荷の分布が変わり,空洞の中への影響をちょうど打ち消すのです.ファラデーの部屋の中の検電器が動かなかったのは,このためです.空洞が球形でなくても中の電場が0になることは,電場が保存場であることも使って,導体の題材で示します.

ただし,空洞に入れた電荷そのものは,空洞の内壁に反対符号の電荷を呼び寄せ,その電荷から力を受けることがあります.これは空洞に電荷を置いた場合の話として,導体の題材で答えます.

ポイント ここまでのまとめ

  • 電場の流束 ΦE=∫E⋅ndS は,面を通る電気力線の本数.

  • ガウスの法則:閉じた面から出る流束は Qin/ε0.逆2乗則と同じことで,電気力線は電荷の無い所で消えない.

  • 流束だけでは各点の電場は決まらない.対称性があるときに,ガウス面を選んで掛け算にする.

  • 球殻の外は kQ/r2,中は0.直線電荷は λ/(2πε0r),平面電荷は σ/(2ε0).

  • 各点の形は ∇⋅E=ρ/ε0(発展).

  • 導体で囲まれた,電荷の無い空洞には,導体の電荷や外の電荷の影響が届かない.

05面積分と流束,発散とガウスの定理

本体の節では,流束を「電場 × 面積」の掛け算で計算できる場合だけを扱いました.ここでは面積分の一般の形と,電荷の分布を積分して電場を出す方法を練習し,後半(発展)で発散とガウスの定理を熱の流れから導入します.

定理 数学の道具:面積分と流束

面を小さな部分に分け,i 番目の部分の面積を ΔSi,法線ベクトルを ni とする.分け方を細かくした極限

∫E⋅ndS=lim∑iEi⋅niΔSi

を面積分という.よく使う面では次のように分ける.

  • 平面(xy 平面):dS=dxdy,n=ez.中心からの距離 s の輪に分けるなら dS=2πsds.

  • 半径 r の円筒の側面:軸を z 軸とし,軸のまわりの角を φ として dS=rdφdz,n は軸から外向き.

  • 半径 r の球面:極からの角 θ で幅 rdθ の帯に分けると,帯の半径は rsin⁡θ なので dS=2πr2sin⁡θdθ.全体は ∫0π2πr2sin⁡θdθ=4πr2.

面上で E⋅n が一定なら,面積分は「その値 × 面積」です.一定でなくても,対称性で1つの変数だけの関数になれば,帯や輪に分けて1変数の積分になります.

練習1 z 方向の一様な電場 E の中に,底面が xy 平面上にある半径 R の半球面(ふたの無いお椀を伏せた形)を置く.半球面を外向きに通る流束を求めよ.

練習2 点電荷 q から距離 d の所に,点電荷を通る軸に垂直な半径 a の円板を置く.円板の中心は軸上にある.円板を点電荷から遠ざかる向きに通る流束を求めよ.

答え 練習1:半球面と底面の円板を合わせた閉じた面の中には電荷が無いので,流束の和は0.底面を外向き(−z 向き)に通る流束は −EπR2 なので,半球面の流束は EπR2.帯に分けて直接 ∫0π/2Ecos⁡θ⋅2πR2sin⁡θdθ を計算しても同じ.練習2:中心から s の輪では,電場の軸方向の成分が kqd/(d2+s2)3/2 なので

ΦE=∫0akqd(d2+s2)3/22πsds=2πkqd[1d−1d2+a2]=q2ε0(1−dd2+a2)

a→∞ で q/(2ε0),全流束の半分になる.

定理 数学の道具:連続な電荷分布の電場

電荷が線・面・体積に分布しているときは,小さな部分の電荷 dq=λdl,σdS,ρdV を点電荷とみなし,その電場を積分する.

E(r)=∫kdq|r−r′|2r−r′|r−r′|

ここで r′ は小さな部分の位置である.先に対称性で打ち消し合う成分を消し,残った成分だけを積分する.

一様に帯電した輪の軸上.半径 a,電荷 Q の輪の中心軸を z 軸とします.輪の小さな部分 dq から軸上の点 z までの距離はどこも a2+z2 です.軸に垂直な成分は,輪の反対側の部分と打ち消し合うので,軸方向の成分だけを足します.dq の電場の大きさに,軸となす角の余弦 z/a2+z2 を掛けて

Ez=∫kdqa2+z2⋅za2+z2=kQz(a2+z2)3/2

です.被積分関数が輪の上で一定なので,積分は電荷を全部足すだけになりました.

半径 a の輪の向かい合う2つの部分 dq が軸上の点 P に作る電場を示す.軸に垂直な成分は逆向きで,z 方向の成分は同じ向きである. 半径 a の輪の向かい合う2つの部分 dq が軸上の点 P に作る電場を示す.軸に垂直な成分は逆向きで,z 方向の成分は同じ向きである.

練習3 (1) dds(−1z2+s2) を計算せよ.(2) 半径 R,面電荷密度 σ の一様な円板の中心軸上,円板から z(z>0)の点の電場を,円板を半径 s,幅 ds の輪に分け,上の輪の結果を足して求めよ.R→∞ ではどうなるか.

答え 練習3:(1) s(z2+s2)3/2.(2) 輪の電荷は dq=σ⋅2πsds なので,(1) を使って Ez=∫0Rkzσ2πsds(z2+s2)3/2=2πkσ(1−zz2+R2).R→∞ では 2πkσ=σ/(2ε0) で,z によらない.広い面の電場が一様になる理由である.

発散とガウスの定理(発展)

ここからは,流束を各点の量に直します.最初の例は電場ではなく,熱の流れです(第18章で1次元の場合を扱いました.読んでいなくても次の説明だけで足ります).熱が伝わる物体の中の各点に,熱の流れる向きを向き,大きさがその向きに垂直な単位面積を単位時間に通る熱エネルギーであるベクトル h(単位 Wm−2)を考えます.閉じた面を通る h の流束 ∫h⋅ndS は,単位時間に面から出ていく熱です.

小さな直方体(辺 Δx,Δy,Δz,体積 ΔV)から出ていく熱を数えます.x 軸に垂直な2つの面では,右の面(x+Δx)から hx(x+Δx)ΔyΔz が出て,左の面(x)から hx(x)ΔyΔz が入るので,正味の流出は

[hx(x+Δx)−hx(x)]ΔyΔz≈∂hx∂xΔxΔyΔz=∂hx∂xΔV

です.y,z の向きの面も同じなので,直方体から出ていく熱は全部で (∂hx/∂x+∂hy/∂y+∂hz/∂z)ΔV です.

辺 Δx,Δy,Δz の直方体を通る熱流束 hₓ(x) と hₓ(x + Δx) を示す.両者の矢印は +x 向きで,右から出る量と左から入る量の差が正味の流出である. 辺 Δx,Δy,Δz の直方体を通る熱流束 hₓ(x) と hₓ(x + Δx) を示す.両者の矢印は +x 向きで,右から出る量と左から入る量の差が正味の流出である.

定義 発散

ベクトル場 h の発散を

∇⋅h=∂hx∂x+∂hy∂y+∂hz∂z

と定める.小さな体積から出ていく流束を,その体積で割ったものに等しい.演算子 ∇=(∂/∂x,∂/∂y,∂/∂z) とベクトル h の内積の形をしているので,∇⋅h と書く.

大きな体積を小さな直方体に分けると,隣り合う2つの直方体が共有する面では,一方から出る流束がもう一方に入る流束なので,足すと打ち消し合います.残るのは外側の面の流束だけです.

定理 数学の道具:ガウスの定理

閉じた面 S と,それが囲む体積 V について

∫Sh⋅ndS=∫V∇⋅hdV

連続の式.熱がどこかで生まれたり消えたりしなければ,体積 V から出ていく熱は,中の熱エネルギーの減少に等しくなります.単位体積あたりの熱エネルギーを u とすると,∫Sh⋅ndS=−d/dt∫VudV です.左辺をガウスの定理で体積積分に直すと,どんな V でも成り立つことから

∂u∂t=−∇⋅h

です.流れがわき出している所(∇⋅h>0)では,中身が減っていきます.同じ形は保存する量なら何にでも成り立ちます.電荷では,電荷密度 ρ と電流密度 j(単位時間に単位面積を通る電荷,第21章)について ∂ρ/∂t=−∇⋅j で,これが各点での電荷の保存です.1次元に戻すと,第18章の ∂c/∂t=−∂J/∂x です.

ガウスの法則の各点の形.ガウスの法則 ∫SE⋅ndS=1ε0∫VρdV の左辺をガウスの定理で書き直すと,どんな V でも ∫V(∇⋅E−ρ/ε0)dV=0 なので,各点で ∇⋅E=ρ/ε0 です.電場は,電荷のある所からだけわき出します.

練習3 点電荷 q の電場 E=kqr/r3 について,原点以外で ∇⋅E=0 を確かめよ.

答え ∂r/∂x=x/r なので ∂/∂x(x/r3)=1/r3−3x2/r5.y,z も同じで,足すと 3/r3−3(x2+y2+z2)/r5=0.わき出しは原点の1点に集まっている.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

長さ 2L の線分に,単位長さあたり λ の電荷が一様に分布している.線分の垂直二等分線上で,線分から距離 d の点 P の電場を求めよ.また,d が L よりずっと小さい場合と,ずっと大きい場合の形を調べよ.

x 軸上の −L から L までに線密度 λ の電荷が分布する.点 P は線分の垂直二等分線上で,線分からの距離は d である.解答で導入する微小電荷や電場成分は描かない. x 軸上の −L から L までに線密度 λ の電荷が分布する.点 P は線分の垂直二等分線上で,線分からの距離は d である.解答で導入する微小電荷や電場成分は描かない.
解答を見る

考え方 線分を x 軸に置き,位置 x の小さな部分 λdx の電場を足す.x と −x の部分の x 成分は打ち消し合うので,y 成分だけを積分する.

位置 x の部分から P までの距離は d2+x2,電場が y 軸となす角の余弦は d/d2+x2 なので

Ey=∫−LLkλd(d2+x2)3/2dx

d/dx(xd2d2+x2)=1(d2+x2)3/2 を使うと

Ey=kλd[xd2d2+x2]−LL=2kλLdd2+L2

である.

d が L よりずっと小さいとき,d2+L2≈L で Ey≈2kλd=λ2πε0d.無限に長い直線電荷の,ガウスの法則による結果に一致する.d が L よりずっと大きいとき,d2+L2≈d で Ey≈k⋅2λLd2.全電荷 2λL の点電荷の電場になる.

確かめ:次元は kλ/d で,点電荷の kq/r2 と同じく電場の次元になっている.無限に長い直線の近似のずれは 1−L/d2+L2≈d2/(2L2) の割合で,たとえば d=0.1L なら 0.5 % である.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

球対称な電荷の分布があり,中心からの距離 r が R より小さい所の電場が,外向きに Er=Ar2(A は正の定数)であることが分かっている.

  1. 半径 r の球面にガウスの法則を使って,中に含まれる電荷 Q(r) を求め,さらに電荷密度 ρ(r) を求めよ.

(2)(発展)電場を E=Arr と書いて ∇⋅E を計算し,(1) と一致することを確かめよ.

半径 R の領域の内部で,Eᵣ = Ar²,A > 0 の外向きの電場が与えられている.中心からの距離 r と電場の増大を示し,解答で導入する薄い殻や電荷密度は示さない. 半径 R の領域の内部で,Eᵣ = Ar²,A > 0 の外向きの電場が与えられている.中心からの距離 r と電場の増大を示し,解答で導入する薄い殻や電荷密度は示さない.
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考え方 (1) 半径 r と r+dr の2つの球面の間の薄い殻の電荷が dQ で,それが ρ⋅4πr2dr に等しい.(2) は発散の定義どおりに偏微分する.

  1. 半径 r の球面では 4πr2⋅Ar2=Q(r)/ε0 なので Q(r)=4πε0Ar4.薄い殻の電荷は

dQ=16πε0Ar3dr=ρ(r)⋅4πr2dr

より ρ(r)=4ε0Ar である.中心からの距離に比例して濃くなる分布である.

  1. E=Ar2er=Arr なので Ex=Arx.∂r/∂x=x/r を使うと

∂Ex∂x=A(r+x2r)

y,z も同じで,足すと ∇⋅E=A(3r+x2+y2+z2r)=4Ar.よって ρ=ε0∇⋅E=4ε0Ar で,(1) と一致する.

確かめ:∫0rρ⋅4πs2ds=16πε0A∫0rs3ds=4πε0Ar4 で Q(r) に戻る.(1) の薄い殻の計算は,発散の定義(小さな体積から出る流束 ÷ 体積)を球の殻で行ったものになっている.

ポイント ここまでのまとめ

  • 面積分 ∫E⋅ndS は,面を小さな部分に分けて足したもの.球面は帯 2πr2sin⁡θdθ,円板は輪 2πsds に分ける.

  • 対称性が無いときは,dq の電場を積分する.打ち消し合う成分を先に消す.輪の軸上は kQz/(a2+z2)3/2.

  • (発展)発散 ∇⋅h は,小さな体積から出る流束 ÷ 体積.ガウスの定理 ∫Sh⋅ndS=∫V∇⋅hdV.

  • (発展)保存する量の連続の式 ∂u/∂t=−∇⋅h,電荷では ∂ρ/∂t=−∇⋅j.ガウスの法則の各点の形は ∇⋅E=ρ/ε0.

06対称な電荷分布とガウスの法則の演習

対称性を確かめて流束を計算する.電荷は固定され,空間は真空とする.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

中心を共有する半径 a,b(0<a<b)の薄い球面に,それぞれ電荷 +Q,−2Q を一様に固定する.Q>0 とする.

  1. 中心からの距離 r における電場の外向き成分 Er を,3領域に分けて求めよ.球面そのものは除く.

  2. a<r<b の球面を通る外向きの流束 ΦE は,外側の電荷を取り除くと変わるか.

半径a,bの同心球面と各電荷,その間の半径rのガウス面を描く. 半径a,bの同心球面と各電荷,その間の半径rのガウス面を描く.
解答を見る

考え方
球対称性で電場は半径方向である.面が囲む電荷を数える.

  1. 半径 r の球面で 4πr2Er=Qin/ε0.囲む電荷は順に 0,Q,−Q なので

Er={0(r<a),Q/(4πε0r2)(a<r<b),−Q/(4πε0r2)(r>b).
  1. 流束は Q/ε0 で変わらない.ただし一般には,面外の電荷が流束を変えないことから各点の電場が変わらないとは言えない.遠方では総電荷 −Q の点電荷と同じ場になる.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

無限に長い円筒状の領域 a<r<b に,一様な体積電荷密度 ρ>0 を固定する.r は軸からの距離であり,r<a と r>b に電荷はない.

  1. 電場の外向き成分 Er を全領域で求めよ.

  2. 長さあたりの電荷を λ とし,外部の電場を λ で表せ.r=b でのつながりも確かめよ.

同軸の半径a,bの円筒境界と,一部を切り出した長さLのガウス面を描く. 同軸の半径a,bの円筒境界と,一部を切り出した長さLのガウス面を描く.
解答を見る

考え方
円筒対称性から場は半径方向で,流束は側面だけから出る.

  1. 半径 r,長さ L の面で 2πrLEr=Qin/ε0.内部電荷は順に 0,ρπ(r2−a2)L,ρπ(b2−a2)L.従って r<a で Er=0,a<r<b で Er=ρ(r2−a2)/(2ε0r),r>b で Er=ρ(b2−a2)/(2ε0r).

  2. λ=ρπ(b2−a2) より外部では Er=λ/(2πε0r).両側で Er(b)=ρ(b2−a2)/(2ε0b) となり,連続である.a→0 では一様な円柱内部の場 ρr/(2ε0) に戻る.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

−d<x<d にだけ正の一定電荷密度 ρ がある,無限に広い厚い平板を考える.d,ρ は未知である.他の電荷による場はない.電場の測定結果は次のとおりで,測定誤差は無視する.ε0=8.85×10−12CV−1m−1 とする.

x/mm

−2.00

−1.00

0

1.00

2.00

3.00

Ex/(Vm−1)

−200

−100

0

100

200

200

  1. ガウスの法則で Ex(x) を導き,厚さ 2d と ρ を求めよ.

  2. 平板の単位面積あたりの総電荷を求めよ.表から一様性を証明できるか述べよ.

平板の中央をx=0とし,未知の半厚さd,測定点の位置を描く. 平板の中央をx=0とし,未知の半厚さd,測定点の位置を描く.
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考え方
対称な箱で流束を数え,場の傾きと一定値から未知量を決める.

  1. x>0 の両底面の面積を S とすると,内部では 2SEx=2xSρ/ε0,外部では 2SEx=2dSρ/ε0.従って内部は Ex=ρx/ε0,外部は Ex=ρd/ε0.負側では符号が反転する.傾きは s=1.00×105Vm−2 なので ρ=ε0s=8.85×10−7Cm−3.一定値から d=200/s=2.00×10−3m,厚さは 4.00mm.

  2. 2dρ=3.54×10−9Cm−2.点間の変化は排除できず,一様性は模型の仮定である.式に戻すと全測定点を再現する.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

半径 R の球に正電荷密度 ρ を一様に固定し,中心から距離 b<R の直線に沿って細いトンネルを開ける.トンネルで除いた電荷の効果は無視する.質量 m,電荷 −q(q>0)の粒子を,摩擦のない案内でこの直線上に拘束する.中心に最も近い点からの座標を x とし,0<A<R2−b2 の位置から静かに放す.重力を無視する.

  1. 運動方程式と周期を求めよ.

  2. x=0 を初めて通る時間と速さを求め,案内が必要な理由を述べよ.

球の断面と中心から距離bのトンネル,座標x,初期位置A,電荷−qを示す. 球の断面と中心から距離bのトンネル,座標x,初期位置A,電荷−qを示す.
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考え方
球内の電場の直線方向の成分を求める.

  1. 半径 r<R の球面で 4πr2Er=ρ(4πr3/3)/ε0 より Er=ρr/(3ε0).直線方向の成分は Ex=Erx/r=ρx/(3ε0).よって md2xdt2=−qρx/(3ε0),ω=qρ/(3mε0),T=2π/ω.周期は b に依存しない.

  2. 初期条件から x=Acos⁡ωt,vx=−Aωsin⁡ωt.通過時間は π/(2ω),速さは Aω.b>0 なら中心へ向かう垂直成分 qρb/(3ε0) もあり,案内の力がこれを支える.振幅の条件により軌道は球内に収まる.近似にはトンネル半径と R の比が十分小さいことも必要である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

(発展)ある領域の静電場が Ex=αx2,Ey=βy,Ez=0 と与えられる.α,β>0 で,単位はそれぞれ Vm−3,Vm−2 である.領域内の直方体 0<x<a,0<y<b,0<z<c を考える.

  1. 発散を用いて体積電荷密度 ρ(x,y,z) を求めよ.

  2. 直方体の各面の外向き流束を直接数え,(1)を体積積分した電荷とガウスの法則が一致することを示せ.

座標軸に沿う辺a,b,cの直方体と,各面の外向き法線を示す. 座標軸に沿う辺a,b,cの直方体と,各面の外向き法線を示す.
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考え方
発散による密度を,向かい合う面の流束の差で確かめる.

  1. ∇⋅E=∂Ex∂x+∂Ey∂y+∂Ez∂z=2αx+β.従って ρ=ε0(2αx+β).

  2. x=a の面は αa2bc,x=0 の面は0.y=b の面は βbac,y=0 の面は0.z の両面は0なので ΦE=bc(αa2+βa).一方

Qin=ε0bc∫0a(2αx+β)dx=ε0bc(αa2+βa)=ε0ΦE.

ρ の単位は Cm−3,Qin は C であり,両表現が一致する.

ポイント 教える人へ

  • 流束を電場と面積の積にできる根拠を,対称性と法線の向きから説明させます.

  • 内部電荷が0でも一般に電場は0とは限らないことを説明させます.

  • 密度を仮定して測定に合うことと,測定から一意に密度が決まることを区別させます.

  • トンネルの座標と球の半径座標,案内の力と復元力を別々に示させます.

07電位と静電エネルギー

問い

山の地形は,等高線を引いた地図1枚で分かります.等高線が混んだ所は急な斜面で,雨水は等高線に直角に流れ下ります.電場は各点に向きと大きさをもつベクトルで,目には見えません.電場についても,各点に1つの数を書き込んだ地図を作り,その「等高線」から電場の向きと強さを読み取ることはできないでしょうか.できるとすれば,その地形にはどんな決まりがあるでしょうか.

考えてみる

重力には位置エネルギーがありました.第6章では,仕事が道すじによらない力(保存力)に位置エネルギー U を決め,力を F=−∇U と取り出しました.地上の重力なら U=mgh で,地図の等高線はそのまま位置エネルギーの等しい線です.電気の力でも同じことができれば,電荷1つあたりの位置エネルギーが「電場の地図」になります.

困るのは,どんなベクトルの場にも地図が作れるわけではないことです.風呂の栓を抜いたときの渦のように,ぐるりと回る流れを考えます.流れに沿って一周すると,ずっと流れに押される向きに進むので,元の場所に戻っても押された分の仕事が0になりません.このような場では,各点の「高さ」を1つに決められません.ですから,まず静電気の力が保存力であることを確かめる必要があります.

静電気力は保存力

原点にある点電荷 Q が作る電場の中で,電荷 q を点 A から点 B まで動かします.電場は原点から放射状なので,小さな変位 dr のうち仕事に効くのは半径方向の成分 dr だけです.電場がする仕事は

WA→B=∫ABqE⋅dr=∫rArBqQ4πε0r2dr=qQ4πε0(1rA−1rB)

で,端の2点の距離だけで決まります.第10章の万有引力と同じ計算です.電荷がたくさんあっても,電場は各電荷の電場の和なので,仕事も各項の和で,やはり道すじによりません.

定理 静電場は保存場

止まった電荷の作る電場 E について,線積分 ∫ABE⋅dr は道すじによらず端点だけで決まる.同じことだが,どんな閉じた道 Γ に沿って一周しても ∫ΓE⋅dr=0 である.

電位

定義 電位

基準の点 O を決め,点 P の電位を

V(P)=−∫OPE⋅dr

と定める.電荷 q の位置エネルギーは qV である.単位は V=JC−1(ボルト).

2点の電位差(電圧)VB−VA=−∫ABE⋅dr は基準の選び方によりません.電荷 q が A から B へ動く間に電場がする仕事は −q(VB−VA) です.一方,電荷を運動エネルギーを変えずにゆっくり運ぶ外力は,電場の力と逆向きで同じ大きさなので,外力の仕事は +q(VB−VA) です.正の電荷は電位の低い方へ押され,負の電荷(電子)は電位の高い方へ引かれます.

点電荷 Q の電位は,上の計算で無限遠を基準にして

V(r)=14πε0Qr

です(k=1/(4πε0) を使えば V=kQ/r).電荷 q1,q2,… があれば,電位は各電荷の電位の和 V=∑ikqi/ri で,連続した分布なら和を積分 ∫kdq/r にします.電場はベクトルの和でしたが,電位はただの数の和なので,計算がずっと楽です.

電荷 e が電位差 1V を通って得るエネルギーを電子ボルトといい,1eV=1.60×10−19J です.原子や分子の中の電子のエネルギーは数 eV ほどです.

基準はふつう無限遠に取りますが,いつもできるわけではありません.無限に長い直線電荷(線密度 λ)では,E=λ/(2πε0r) を積分すると V=−λ2πε0ln⁡rr0 となり,r→∞ で発散します.無限に広い平面電荷でも,一様な電場の中で電位が距離に比例して変わり続けます.電荷が無限の遠くまで広がった模型では,有限の点(上の r0)を基準にします.一様な電場 E の中で,電場の向きに距離 d 離れた2点の電位差は V=Ed,つまり E=V/d です.

等電位面と勾配

電位の等しい点をつないだ面を等電位面といいます.地図の等高線にあたります.等電位面に沿って電荷を動かしても仕事は0なので,電場は等電位面に垂直です.小さな変位 dr での電位の変化は dV=−E⋅dr で,これを各成分について読むと次のようになります.

定理 電場は電位の勾配

E=−∇⁡V=−(∂V∂x, ∂V∂y, ∂V∂z)

電場は電位が最も急に下がる向きを向き,大きさはその向きの電位の傾きに等しい.等電位面が混んだ所ほど電場は強い.

∇⁡V は第6章で ∇U と書いた勾配で,数学の節でくわしく扱います.

[図:等電位線と電気力線]

初期状態は q₂/q₁ = −1 で,等しい正負の点電荷を置く.灰色の等電位線と青の電気力線を重ね,スライダーで比を −1 から +1 へ変えると,電場が0でない所で両者が直交したまま形を変える.

一周の線積分と回転(発展)

保存場であることは「どんな閉じた道でも一周の線積分が0」と言い換えられました.数学の節のストークスの定理を使うと,これは各点の性質

∇×E=0

と同じことです.回転 ∇×E は,その点のまわりの小さな道に沿った一周の線積分を,道の囲む面積で割ったものです.逆に E=−∇⁡V と書ければ,∇×∇⁡V=0 がいつも成り立ちます.第23章では,磁場が時間とともに変わると ∇×E が0でなくなり,電位だけでは電場を表せなくなることを見ます.この題材の話は「電荷が止まっている」という条件の上に立っています.

前の題材で,ガウスの法則は各点で ∇⋅E=ρ/ε0 と書けました.これに E=−∇⁡V を入れると,次の式が出ます.

法則 ポアソン方程式とラプラス方程式

∇2⁡V=∂2V∂x2+∂2V∂y2+∂2V∂z2=−ρε0

電荷の無い所では ∇2⁡V=0(ラプラス方程式).

静電場の法則は ∇⋅E=ρ/ε0 と ∇×E=0 の2つで尽きていて,電位を使うと1つの式にまとまります.

電荷の無い所に山や谷はない

電荷の無い所で電位が極大や極小になることはありません.ガウスの法則から分かります.点 P で電位が極大なら,P を囲む小さな球面ではどこでも電場が外向きで,流束が正になるので,中に正の電荷がなければなりません(極小なら負の電荷).電荷の無い所の電位の地形は,山頂も谷底もない,馬の鞍(くら)のような形の組み合わせだけです.(発展)ラプラス方程式で言えば,∇2⁡V はある点の電位がまわりの平均からどれだけずれているかを表し(数学の節),∇2⁡V=0 は「どの点の電位も,そのまわりの小さな球面上の平均に等しい」ということです.

ここからアーンショーの定理が出ます.正の電荷が安定につり合うには,位置エネルギー qV が極小,つまりほかの電荷が作る電位がその点で極小でなければなりませんが,それは起こりません.止まった電荷の力だけで,電荷を安定に浮かせておくことはできないのです.

電荷の系の静電エネルギー

点電荷 q1,q2,… を無限遠から1つずつ運んできて並べます.j 番目の電荷を運ぶ外力の仕事は,先に置いた電荷がその場所に作る電位を qj に掛けたものです.全部を並べるのに要る仕事,つまり系の静電エネルギーは

U=∑i<j14πε0qiqjrij=12∑iqiVi

です.Vi は i 番目の電荷の位置に,自分以外の電荷が作る電位です.右の式に 12 が付くのは,どの組も2回数えているからです.どの順番で並べても同じ値になります.

電気双極子

最初の題材の電気双極子を電位で見直します.双極子の性質は,モーメント p=qd(d は −q から +q へ向かうベクトル)で決まります.中心から十分遠く(d/r が1よりずっと小さい所)の電位は

V=14πε0p⋅rr3

で,1/r2 で減ります(導き方は数学の節).電場 E=−∇⁡V の中に双極子を置くと,位置エネルギーは qV(r+)−qV(r−)≈qd⋅∇⁡V です.

定理 電場の中の双極子

U=−p⋅E,τ=p×E

一様な電場では,トルク τ が p を E の向きにそろえようとし,力の和は0である.一様でない電場では,p を一定にして U を位置で微分した力 F=−∇⁡U が働く.

p が E と同じ向きなら,U=−pE は電場の強い所ほど低いので,双極子は電場の強い方へ引かれます.帯電していない髪の毛が下じきに引かれたのはこの力でした(最初の題材の F=pdE/dx).近似の条件は,双極子の長さ d が,電場が目立って変わる距離よりずっと短いことです.

問いに戻る

静電場では,どんな閉じた道でも一周の線積分が0なので,電位という1つの数の地図が作れます.等電位面が等高線で,電場は等電位面に垂直に,電位の高い所から低い所へ向き,等電位面が混んだ所ほど強くなります(E=−∇⁡V).この地形には決まりがあり,電荷の無い所には山頂も谷底もなく(ガウスの法則,各点の形では ∇2⁡V=0),鞍の形だけが許されます.山と谷は,電荷のある所にしかできません.

ポイント ここまでのまとめ

  • 静電場は保存場:一周の線積分は0,各点で ∇×E=0(発展).

  • 電位 V(P)=−∫OPE⋅dr,点電荷では V=Q/(4πε0r).電場のする仕事は −qΔV,ゆっくり運ぶ外力の仕事は qΔV.

  • E=−∇⁡V.等電位面と電気力線は直交する.

  • 電荷の無い所に電位の極大・極小はない(アーンショーの定理).各点の形はポアソン方程式 ∇2⁡V=−ρ/ε0(発展).

  • 静電エネルギー U=∑i<jqiqj/(4πε0rij).双極子は U=−p⋅E,トルク p×E.

08勾配・回転とストークスの定理

本体の節で使った勾配 ∇,回転 ∇×,ラプラシアン ∇2 を,熱の流れと水の流れを例にして定義します(発散 ∇⋅ とガウスの定理は前の題材の数学の節).勾配と例題1は本体の電位に使います.回転から後は(発展)で,飛ばしてかまいません.熱は高温から低温へ流れ,単位時間に単位面積を通る熱(熱流束)は温度の傾きに比例するのでした(第18章).

定理 数学の道具:勾配と演算子 ∇

温度 T(x,y,z) の場で,近い2点の温度差は

ΔT=∂T∂xΔx+∂T∂yΔy+∂T∂zΔz=∇⁡T⋅Δr,∇⁡T=(∂T∂x, ∂T∂y, ∂T∂z)

と書ける.∇⁡T を T の勾配という.∇⁡T は T が最も急に増える向きを向き,大きさはその向きの傾きで,等温面に垂直である.熱流束のベクトルは h=−κ∇⁡T(κ は熱伝導率).演算子 ∇=(∂∂x, ∂∂y, ∂∂z) を使うと,勾配は ∇T,発散は ∇⋅h,次に定義する回転は ∇×v と書ける.

|Δr| を決めると,内積 ∇⁡T⋅Δr は Δr が ∇⁡T と同じ向きのとき最大で,等温面に沿う向きのとき0です.

定理 数学の道具:勾配の線積分

どんな道すじに沿っても

∫AB∇⁡ψ⋅dr=ψ(B)−ψ(A)

である.とくに閉じた道を一周すると0になる.

道を小さな区間に分けると,各区間で ∇⁡ψ⋅Δr=Δψ です.これを足すと途中の値が打ち消し合い,終点と始点の差だけが残ります.電位では E=−∇⁡V なので,−∫ABE⋅dr=VB−VA となり,本体の電位の定義と合っています.

練習 a,b を定数として,電位が V=ax2−by の領域の電場 E=−∇⁡V を求めよ.また,原点から点 (x0,y0,0) まで直線に沿って ∫E⋅dr を計算し,−[V(x0,y0,0)−V(0,0,0)] に一致することを確かめよ.

答え E=(−2ax,b,0).道を r=(x0u,y0u,0)(0≤u≤1)とすると dr=(x0,y0,0)du で,∫01(−2ax02u+by0)du=−ax02+by0.これは −[V(x0,y0,0)−V(0,0,0)]=−(ax02−by0) と一致する.

回転と循環(発展)

水の流れの速度の場 v について,閉じた道 Γ に沿った一周の線積分 ∫Γv⋅dr を循環といいます.流れが道に沿ってどれだけ回っているかの量です.xy 平面の中に,辺が Δx,Δy の小さな長方形をとり,反時計回りに一周します.下の辺と上の辺では vx だけが効き,向きが逆なので,合わせて −∂vx/∂yΔyΔx です.右の辺と左の辺からは ∂vy/∂xΔxΔy が残ります.循環を面積で割ると ∂vy/∂x−∂vx/∂y で,長方形の大きさによりません.

定理 数学の道具:回転

∇×v=(∂vz∂y−∂vy∂z, ∂vx∂z−∂vz∂x, ∂vy∂x−∂vx∂y)

を v の回転という.単位ベクトル n 方向の成分は,n に垂直な小さな道を(n に対して右ねじの向きに)一周する循環を,道の囲む面積で割ったものである.

角速度 ω で回る水 v=ω(−y,x,0) では ∇×v=(0,0,2ω) で,回転は角速度の2倍です.流線がまっすぐな v=(ay,0,0) でも ∇×v=(0,0,−a) で,浮かべた小さな水車は回ります.反対に,栓のまわりの渦 v=Γ02π(−y,x,0)x2+y2 は,中心を除けば ∇×v=0 で,水車は回りません.

[図:3つの流れに浮かべた水車]

初期状態は一様な回転で,水車は流れに運ばれながら自転する.ボタンで横にずれる流れと栓のまわりの渦に切り替え,時刻スライダーや再生と停止で位置と橙の目印の向きを比べる.栓のまわりでは中心以外の水車は自転しない.

定理 数学の道具:ストークスの定理

閉じた道 Γ と,Γ を縁とする面 S(法線 n は道の向きに対して右ねじの向き)について

∫Γv⋅dr=∫S(∇×v)⋅ndS

面 S を小さな網の目に分けると,各網目の循環は (∇×v)⋅nΔS です.全部を足すと,隣り合う網目の共通の辺は逆向きに2回通るので打ち消し合い,縁 Γ の分だけが残ります.ガウスの定理と同じ仕組みです.

勾配の回転は0(発展)

∇×∇⁡ψ の z 成分は ∂∂x∂ψ∂y−∂∂y∂ψ∂x=0 で,偏微分の順序を入れ替えてよいので0です.ほかの成分も同じで

∇×∇⁡ψ=0

です.逆に,穴のない領域で ∇×E=0 なら,どんな閉じた道にもそれを縁とする面が張れるので,一周の線積分は0で,電位が作れます.第6章で保存力の判定に使った ∂Fx/∂y=∂Fy/∂x は,∇×F の z 成分が0という条件でした.栓のまわりの渦は,中心という穴を囲むと循環が Γ0 になり,穴のない領域という条件が要ることを示しています.同じ計算で ∇⋅∇×v=0 も出ます.

ラプラシアン(発展)

勾配の発散を ∇2⁡ψ=∇⋅∇⁡ψ=∂2ψ∂x2+∂2ψ∂y2+∂2ψ∂z2 と書き,ラプラシアンといいます.熱源のない物体の定常な温度では,どの小さな体積からも熱が出入りしないので ∇⋅h=0,つまり ∇2⁡T=0 です.電荷のない所の電位と同じ式なので,同じ形の境界なら同じ形の解になります.

1次元では ψ″(x)≈ψ(x+h)+ψ(x−h)−2ψ(x)h2 なので,3次元では ∇2⁡ψ≈6h2(前後・左右・上下の6点の平均−ψ(x,y,z)) です.∇2⁡ψ=0 なら,どの点の値もまわりの平均に等しく,極大も極小もありません.

球対称な V(r) では,∇⁡V=dV/drer の流束は半径 r の球面で 4πr2dV/dr です.半径 r と r+dr の球面の流束の差を殻の体積 4πr2dr で割ると,次の式が出ます.円筒対称でも同じようにして,軸からの距離 r について右の式になります.

∇2⁡V=1r2ddr(r2dVdr) (球対称),∇2⁡V=1rddr(rdVdr) (円筒対称)

練習1 k=1/(4πε0) とする.点電荷の電位 V=kQ/r の勾配から電場を求め,r≠0 でラプラス方程式を満たすことを確かめよ.

練習2 v=(yz,zx,xy) の回転を求めよ.v=∇⁡ψ となる ψ はあるか.

練習3 半径 R,総電荷 Q の一様に帯電した球(密度 ρ)の中の電位は,中の電場 kQr/R3 を表面から積分して V=kQ(3R2−r2)/(2R3) となる.ポアソン方程式を満たすことを確かめよ.

答え 練習1:∂r/∂x=x/r なので ∂V/∂x=−kQx/r3,ほかも同じで E=kQr/r3.r2dV/dr=−kQ は定数なので ∇2⁡V=0.練習2:x 成分は ∂(xy)/∂y−∂(zx)/∂z=x−x=0,ほかも0で ∇×v=0.ψ=xyz とすればよい.練習3:r2dV/dr=−kQr3/R3 なので ∇2⁡V=−3kQ/R3=−ρ/ε0(ρ=3Q/(4πR3)).

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

点 (0,0,d/2) に電荷 +q,点 (0,0,−d/2) に電荷 −q を置く.p=(0,0,qd),k=1/(4πε0) とする.

  1. 無限遠の電位を0とし,原点からの距離 r が d よりずっと大きい点の電位を,d/r の1次まで求めよ.

    1. の電位から電場を求め,z 軸上と xy 平面上の電場を答えよ.

z = d/2 に +q,z = −d/2 に −q を置く.原点から遠くの点 P への位置ベクトル r と電荷の間隔 d を示す. z = d/2 に +q,z = −d/2 に −q を置く.原点から遠くの点 P への位置ベクトル r と電荷の間隔 d を示す.
解答を見る

考え方 距離を d/r で展開して電位を足し,それから勾配をとる.

  1. r±2=r2∓zd+d2/4 なので,1次までで 1r±≈1r(1±zd2r2).

V=kq(1r+−1r−)≈kqdzr3=kp⋅rr3
  1. V=kpz(x2+y2+z2)−3/2 を偏微分して

Ex=3kpxzr5,Ey=3kpyzr5,Ez=kp(3z2−r2)r5

まとめると E=k3(p⋅er)er−pr3 である.z 軸上では Ez=2kp/|z|3(p の向き),xy 平面上では E=−kp/r3(p と逆向き).

確かめ:|z|>d/2 の z 軸上で2つの点電荷の電場を直接足すと Ez=2kqd|z|(z2−d2/4)2≈2kp|z|3(1+d22z2) で,先頭の項は (2) と一致し,ずれの割合は d2/(2z2) である.双極子の近似は d/r が十分小さいときに使え,r が d の5倍でも誤差は2 %ほどである.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

(発展)E0,a を正の定数とし,2つのベクトルの場 E1=E0a(x,−y,0) と E2=E0a(−y,x,0) を考える.

  1. それぞれの回転を求め,止まった電荷の電場になりうるのはどちらか答えよ.

  2. なりうる方について,原点を基準とする電位と電荷密度を求め,等電位線の形を述べよ.

  3. もう一方について,(0,0),(a,0),(a,a),(0,a) を頂点とする正方形を反時計回りに一周する線積分を直接求め,ストークスの定理と合うことを確かめよ.

左に E₁ = (E₀/a)(x,−y,0),右に E₂ = (E₀/a)(−y,x,0) の青の矢印を示す.右の橙の正方形は原点から第1象限にある辺 a の道で,反時計回りに一周する. 左に E₁ = (E₀/a)(x,−y,0),右に E₂ = (E₀/a)(−y,x,0) の青の矢印を示す.右の橙の正方形は原点から第1象限にある辺 a の道で,反時計回りに一周する.
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考え方 静電場なら回転が0.一周の線積分は辺ごとに計算する.

  1. z 成分だけを調べればよい.E1 は ∂Ey/∂x−∂Ex/∂y=0,E2 は E0a+E0a=2E0a.静電場になりうるのは E1.

  2. V=−E02a(x2−y2) とすると −∂V/∂x=E0x/a,−∂V/∂y=−E0y/a で E1 に一致する.∇⋅E1=E0/a−E0/a=0 なので ρ=0,∇2⁡V=0 である.xy 平面の等電位線は V≠0 では直角双曲線 x2−y2=一定,V=0 では2直線 y=±x で,原点は鞍点である.

  3. 下の辺(y=0)では Ex=0 で0.右の辺(x=a,y を0から a へ)では Ey=E0 で E0a.上の辺(y=a,x を a から0へ)では Ex=−E0 で ∫a0(−E0)dx=E0a.左の辺(x=0)では Ey=0 で0.合計 2E0a.回転の z 成分 2E0/a に面積 a2 を掛けても 2E0a で,一致する.

確かめ:E1 は,x 軸上の2点に負の電荷,y 軸上の2点に正の電荷を原点から等距離に置いたときの,中心付近の場の形で,鞍点はアーンショーの定理と合う.E2 のような回る電場は,第23章で磁場が時間とともに変わる所に現れる.

ポイント ここまでのまとめ

  • 勾配 ∇⁡ψ は ψ が最も急に増える向きのベクトルで,Δψ=∇⁡ψ⋅Δr.勾配の線積分は端点の値の差で決まる.

  • (発展)回転 ∇×v は,小さな道に沿った循環を面積で割ったもの.ストークスの定理 ∫Γv⋅dr=∫S(∇×v)⋅ndS.

  • (発展)∇×∇⁡ψ=0.穴のない領域では,回転が0の場は勾配で書ける(保存場).

  • (発展)∇2⁡ψ=∇⋅∇⁡ψ はまわりの平均とのずれ.∇2⁡V=−ρ/ε0,電荷のない所では ∇2⁡V=0.

  • 双極子の電位は kp⋅r/r3,電場は k[3(p⋅er)er−p]/r3.

09電位と静電エネルギーの演習

電場のする仕事と外力のする仕事の符号を区別する.以下では k=1/(4πε0) とし,点電荷の電位は無限遠を0とする.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

電位が x だけで変わる領域で,次の測定値を得た.測定点間を直線で結ぶ模型を使う.

x/cm

0

1.0

3.0

V/V

80

50

10

  1. 各区間で電場の成分 Ex を求めよ.

  2. 電荷 q=2.0×10−9C を左端から右端へゆっくり運ぶ外力の仕事を求めよ.電位の全測定値に同じ定数を加えると,答えは変わるか.

表の3測定点をVとxの平面に描き,点間を直線で結ぶ.電場の値は記さない. 表の3測定点をVとxの平面に描き,点間を直線で結ぶ.電場の値は記さない.
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考え方
電場は電位の傾きの負であり,仕事は端点間の電位差で決まる.

  1. Ex=−dVdx.最初の区間は −(50−80)/0.010=3.0×103Vm−1,次は −(10−50)/0.020=2.0×103Vm−1.ともに右向きである.

  2. Wext=qΔV=(2.0×10−9)(10−80)=−1.4×10−7J.電場は正の仕事をし,外力はエネルギーを取り出す.基準を変えても差と傾きは変わらない.ただし点間の直線性は測定だけから確定せず,模型の仮定である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

電子を電位 −40.0V の点Aから静かに放すと,電位 110V の点Bへ達した.電気力以外を無視する.e=1.60×10−19C,m=9.11×10−31kg,c=3.00×108ms−1 とする.Bでの運動エネルギーをジュールと電子ボルトで,速さを古典的な運動方程式の範囲で求めよ.電子ボルトは電気素量に 1V を掛けたエネルギーである.

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考え方
電子の電荷は負なので,高い電位へ動くと位置エネルギーが減る.

ΔU=−e(VB−VA)=−150eV.エネルギー保存から K=−ΔU=2.40×10−17J=150eV.mv2/2=K より v=2K/m=7.26×106ms−1.v/c=0.0242,その2乗は 5.85×10−4 で十分小さく,古典的な計算の適用条件を満たす.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

正電荷 Q を原点に固定する.質量 m,正電荷 q の粒子が,無限遠で速さ u をもち,入射直線と原点の距離が b>0 となるように近づく.電気力以外を無視する.
粒子の速さは光速より十分小さいとする.

  1. 原点からの最接近距離 rmin を求めよ.

  2. b→0 と Q→0 の極限を説明せよ.

原点の電荷Q,遠方の入射直線と速度u,原点から直線への垂線bを描く.軌道と最接近点は描かない. 原点の電荷Q,遠方の入射直線と速度u,原点から直線への垂線bを描く.軌道と最接近点は描かない.
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考え方
中心力なので角運動量も保存する.最接近点で消えるのは半径方向の速度である.

  1. 無限遠のエネルギーは mu2/2,角運動量は mub.最接近点の接線速度を vt とすると mrminvt=mub,従って vt=ub/rmin.電位 V=kQ/r を使うと

mu22=mu2b22rmin2+kQqrmin.

α=kQq/(mu2) と置けば rmin2−2αrmin−b2=0.負の根は距離にならず,rmin=α+α2+b2.

  1. 正面から近づく極限は rmin=2kQq/(mu2) で,初期の運動エネルギーがすべて位置エネルギーになる.Q→0 では rmin→b となり,直進の最短距離に戻る.α は長さの次元をもつ.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

直角二等辺三角形の頂点 A=(0,0),B=(a,0),C=(0,a) に,順に電荷 +Q,+Q,−2Q を置く.a,Q>0 とする.

  1. 無限遠からA,B,Cの順にゆっくり運んで組み立てるとき,各段階の外力の仕事と全静電エネルギーを求めよ.

  2. A,Bを固定してCの電荷だけを無限遠へ運ぶ外力の仕事を求めよ.各電荷は一定とする.

三角形ABCと辺a,a,各電荷を示す.Cの電荷を取り去る操作を矢印で描く. 三角形ABCと辺a,a,各電荷を示す.Cの電荷を取り去る操作を矢印で描く.
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考え方
運び込む電荷には,先に置いた電荷による電位だけを使う.各組の相互作用を1回ずつ数える.

  1. 最初の仕事は0.Bを運ぶ仕事は WB=Q(kQ/a)=kQ2/a.Cでは VC=kQ/a+kQ/(2a) なので WC=(−2Q)VC=−(2+2)kQ2/a.合計は U=−(1+2)kQ2/a である.

  2. Cが無限遠にある終状態ではA,Bの相互作用だけが残り,Uf=kQ2/a.よって Wext=Uf−U=(2+2)kQ2/a>0.固定されたA,Bの支持力は変位がないので仕事をしない.a→∞ で両方のエネルギーと仕事は0に近づく.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

線電荷密度 λ>0 の無限に長い糸から距離 r0 の位置に,長さ ℓ の軽い剛い棒の中心を固定する.棒の両端の粒子は各質量 m,電荷は +q,−q(q>0)で,p=qℓ とする.棒は糸に垂直な平面内で回り,双極子モーメントと外向き半径方向の角を θ とする.q,λ は一定である.

  1. θ=0 付近の小振動の角振動数を求めよ.

  2. θ=0 の向きで棒を静止させ,中心の固定を外す瞬間の,棒全体への半径方向の力を求めよ.両小問で ℓ/r0 が十分小さい近似を使い,重力を無視する.

糸の断面と中心までの距離r₀,長さℓの棒,各端の電荷,外向き半径との角θを示す. 糸の断面と中心までの距離r₀,長さℓの棒,各端の電荷,外向き半径との角θを示す.
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考え方
向きによるエネルギーの変化はトルク,位置による変化は力を与える.双極子の電荷を一定として微分する.

  1. 糸の場は E(r)=λ/(2πε0r).中心付近で一様とみなし,U=−pE(r0)cos⁡θ.トルクは −dUdθ=−pE(r0)sin⁡θ≈−pE(r0)θ.慣性モーメントは 2m(ℓ/2)2=mℓ2/2 なので

mℓ22d2θdt2=−pE(r0)θ,ω=pλπε0mℓ2r0.
  1. θ=0 を保つと U(r)=−pλ/(2πε0r).従って Fr=−dUdr=−pλ/(2πε0r02) で糸へ向かう.近い側の負電荷への内向きの力が強いこととも合う.近似条件は ℓ/r0 と角振幅が十分小さいことである.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

(発展)ある領域の電位は V=V0+α(x2+y2)+βz2 である.α>0,β は定数で,単位はともに Vm−2 とする.

  1. 勾配で電場を求め,この領域に電荷がないための β の条件をラプラス方程式で求めよ.

  2. その条件で等電位面 V=V0 の形を述べ,原点の正電荷 q のつり合いが3次元で安定か判定せよ.

原点Oとx,y,zの座標軸,原点の正電荷qを描く.等電位面と力は描かない. 原点Oとx,y,zの座標軸,原点の正電荷qを描く.等電位面と力は描かない.
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考え方
各方向の曲率の和が0でも,個々の方向の曲率は0とは限らない.安定性は方向ごとに調べる.

  1. E=−∇⁡V より Ex=−2αx,Ey=−2αy,Ez=−2βz.∇2⁡V=∂2V∂x2+∂2V∂y2+∂2V∂z2=4α+2β だから,電荷のない条件は β=−2α.

  2. x2+y2=2z2 となり,z軸を軸とする上下の円すい面である.原点の場は0だが,Fz=4qαz は変位と同じ向きなので不安定である.x,y 方向には復元力がある.微小な立方体で流束を数えると,x,y方向の寄与 −2α,−2α とz方向の 4α が相殺され,電荷のない条件とも一致する.

ポイント 教える人へ

  • 電位の基準を変えても電場と仕事が変わらない理由を説明させます.

  • 負電荷の位置エネルギーと電位の増減を混同しないことを確かめさせます.

  • 最接近点で接線方向の速度が残ることと,静電エネルギーで組を二重に数えないことを説明させます.

  • 双極子近似と小角近似の条件を別々に述べさせ,静電場のつり合いを各方向で確かめさせます.

10導体とコンデンサー

問い

雷が自動車に落ちても,窓を閉めて中に座っている人はふつう無事です.雷の電流は数万アンペア,雲と地面の電位差は1億ボルトにもなります.金属は電気をよく通すのに,なぜ金属の車体に囲まれた人は守られるのでしょうか.

考えてみる

「ゴムのタイヤが電気を止めるから」と考えたくなりますが,1億ボルトの前では数センチのゴムは役に立ちません.かといって,金属が電気をよく通すなら,中の人にも電気が回ってきそうです.鍵は,金属の中の電子が自由に動けることにあります.電子は,金属の中に電場がある限り動き続け,電場が消えるように並び直します.すると,金属に囲まれた空間にも電場が入ってこられなくなります.この題材ではまず止まった電荷(静電平衡)で考え,そのあと,蓄える電荷とエネルギーを数える道具としてコンデンサーを扱います.

導体の中に電場はない

導体を電場の中に置くと,自由電子が電場と逆向きに動き,表面の一方に負,反対側に正の電荷が現れます(静電誘導).この電荷の作る電場が外からの電場を打ち消すまで,電子の移動は続きます.金属ではこの並び直しはきわめて短い時間で終わります.

定理 静電平衡の導体

  1. 導体の内部では E=0.

  2. 導体全体が等電位で,表面は等電位面.電場は表面に垂直に出入りする.

  3. 電荷は表面にだけ分布する(内部では ρ=ε0∇⋅E=0).

  4. 面電荷密度 σ の所のすぐ外の電場は E=σ/ε0.

4 は,表面をまたぐ薄い箱にガウスの法則を使うと出ます.中の電場は0なので,流束は外側の底面からだけ出て ES=σS/ε0 です.1枚の平面電荷の σ/(2ε0) と違うのは,電気力線が片側にしか出ないからです.

表面の電荷は一様とは限りません.半径 r1,r2 の2つの導体球を遠く離して細い導線でつなぐと,両方の電位 kQ1/r1=kQ2/r2 が等しくなるので Q∝r,面電荷密度は σ∝Q/r2∝1/r です.小さい球ほど表面の電場が強くなります.1つの導体でも,曲がり方の急な,とがった所に電荷が集まり,電場が強くなります.避雷針はとがった先で空気を電離させ,雷を自分の所へ導きます.

[図:導体のとがった先端と表面電荷]

初期状態では涙のしずく形の導体の先端に正の表面電荷と青の電気力線が集まる.スライダーで先端をとがらせると集中が強まる.外側の灰色の実線は等電位線で,力線に直交する.

静電遮蔽

導体の中にある空洞を考えます.

空洞に電荷がない場合 空洞の中の電場は0です.空洞の壁は1つの導体の表面なので等電位で,空洞の中には電荷がありません.前の題材で見たように,電荷の無い所の電位には極大も極小もないので,壁の上で一定の電位は,空洞の中でもその値のままです.外にどんな電荷があっても,空洞の中には電場が入りません.これを静電遮蔽といいます.

空洞に電荷 q を置いた場合 空洞を囲むガウス面を導体の中にとると,その上で E=0 なので,中の電荷の和は0です.空洞の壁(内表面)には −q が誘導されます.導体がもともと中性なら,電荷の保存から外表面に +q が現れます.外表面の電荷の分布は外表面の形だけで決まり,空洞の中のどこに q があるかによりません.このとき外には電場が出ます.導体を接地すると,外表面の +q は地面へ流れて外の電場は消えますが,空洞の中の電場は残ります.空洞の中の q は内表面の −q から力を受け,空洞が球形で q が中心からずれていれば,近い壁へ引かれます.

左は外の正電荷による誘導で,空の空洞には電場が入らない.右はもともと中性の導体の空洞に正の q を置いた場合で,内表面に −q,外表面に +q が現れる. 左は外の正電荷による誘導で,空の空洞には電場が入らない.右はもともと中性の導体の空洞に正の q を置いた場合で,内表面に −q,外表面に +q が現れる.

解は1つに決まる

導体の表面の電位と,空間にある電荷を決めると,電位は1つに決まります.2つの解 V1,V2 があったとすると,差 V1−V2 は空間の電荷が打ち消し合った,電荷の無い場合の電位で(各点の形ではラプラス方程式の解),境界ではどこでも0です.電荷の無い所の電位には極大も極小もないので,差は至る所で0です.

これを使うと,うまく見つけた解は正しいと言えます.接地した広い導体平面から高さ a に点電荷 q を置くと,平面の反対側の対称な点に −q を置いた2つの点電荷の電位は,平面の上でちょうど0になり,平面より上にある電荷は q だけです.したがって,これが平面より上の本当の電位です(鏡像法).q は平面に 14πε0q2(2a)2 の力で引かれます.くわしくは例題の節で扱います.

コンデンサー

2つの導体に +Q と −Q の電荷を与えると,間に電位差 V が生じ,V は Q に比例します.Q=CV の C を電気容量といい,単位は F=CV−1(ファラド)です.

面積 S の2枚の極板を間隔 d で向かい合わせた平行板コンデンサーでは,極板の間の電場は E=σ/ε0=Q/(ε0S),電位差は V=Ed なので

C=ε0Sd

です.縁で電場がはみ出す効果を無視したので,d が S よりずっと小さいことが条件です.d=1mm で 1F を作るには,一辺が約 10km の極板が要ります.半径 a の導体球を半径 b の導体球殻で同心に囲んだ球形コンデンサーでは,間の電位差が Q4πε0(1a−1b) なので C=4πε0abb−a です.

コンデンサーを並列につなぐと電圧が共通で電荷が足し合わされ C=C1+C2,直列につなぐと間の孤立した部分の電荷が +Q と −Q に分かれて電圧が足し合わされ 1C=1C1+1C2 です.

ポイント 孤立した導体部分ごとに電荷を数える

  1. 導線でつながった導体をまとめて1つの部分とし,各部分の電位を未知数にする.

  2. 向かい合う極板の面の電荷を,符号をつけて「容量 ×(自分の電位 − 相手の電位)」と書く.

  3. 電源や接地につながっていない部分では,面の電荷の和が初めの値のまま保存される.電源や接地につながった部分では,電荷の代わりに電位が決まる.

極板の電荷を初めから +Q,−Q と決めつけてはいけません.たとえば,帯電した金属板を2つの極板の間に入れると,その板の両面の電荷の大きさは一般に違います.

蓄えるエネルギーと極板の間の力

電荷 q のコンデンサーに dq を運ぶ仕事は Vdq=(q/C)dq です.0から Q まで積分すると,蓄えられるエネルギーは

U=Q22C=12CV2=12QV

です.平行板では U=12ε0E2⋅Sd と書けるので,エネルギーは電場のある体積に 12ε0E2 の密度で蓄えられていると見ることもできます(第24章でこの見方が正しいことを確かめます).

極板の間の力を,間隔 x を変えたときのエネルギーの変化から求めます.

電荷一定(電源から切り離す).U=Q2x2ε0S なので,力は F=−dU/dx=−Q22ε0S で,引力です.QE=Q2ε0S の半分なのは,極板の電荷を押すのは相手の極板の電場 σ/(2ε0) だけで,自分の電荷の電場は自分を押さないからです.

電圧一定(電源につないだまま).x を dx 変えると容量が dC 変わり,電荷が dQ=VdC 流れ込み,電源が VdQ=V2dC の仕事をします.そのうち dU=12V2dC がエネルギーの増加で,残りが電気の力のする仕事 Fdx です.

F=12V2dCdx=−ε0SV22x2=−Q22ε0S

で,電荷一定のときと同じ力になります.力は極板の電荷とその場所の電場で決まり,電源の有無によりません.電圧一定で −dU/dx を計算すると符号が逆になってしまうのは,電源の仕事を数え忘れたからです.

問いに戻る

車体は金属の殻です.静電平衡では導体の中の電場は0で,中に電荷のない空洞の中にも,外からの電場は入りません.雷の電荷は外表面を伝わって地面へ逃げ,中の人には電位差がかかりません.ただし,これは静電気の話です.雷の電流は100万分の1秒ほどで大きく変わりますが,速く変わる場でも金属の表面を流れる電流が中を守ることを,第23章で見ます.窓が開いていたり,車体が金属でない(樹脂の屋根の)車では,この守りは弱くなります.

ポイント ここまでのまとめ

  • 静電平衡の導体:内部の電場は0,全体が等電位,電荷は表面に,すぐ外の電場は σ/ε0.とがった所に電荷が集まる.

  • 空の空洞には外の電場が入らない(静電遮蔽).空洞に q を置くと内表面に −q,外表面に +q.

  • 境界の電位と電荷を決めると電位は1つに決まる.鏡像法はこれを使う.

  • 平行板 C=ε0S/d,球形 C=4πε0ab/(b−a).孤立した部分ごとに符号つきの電荷の和を保存させる.

  • U=12CV2,場のエネルギー密度 12ε0E2.極板の間の力 Q2/(2ε0S) は,電圧一定でも電源の仕事を入れると同じ.

11コンデンサーと鏡像法の例題

本体の節で決めた手順を,典型的な3つの設定で使います.エネルギーの収支では電源の仕事を必ず数え,つなぎ替えでは孤立した導体部分ごとに符号つきの電荷の和を保存させます.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

極板の面積 S,間隔 d の真空の平行板コンデンサーを,電圧 V0 の電池で充電した.C0=ε0S/d とし,端の効果は無視する.極板をゆっくり引き離して間隔を 2d にする.

  1. 電池を切り離してから引き離す場合,静電エネルギーの変化と外力の仕事を求めよ.

  2. 電池につないだまま引き離す場合,電池を通って移る電荷,電池のする仕事,静電エネルギーの変化,外力の仕事を求めよ.

上段は電池を切り離してスイッチを開く場合,下段は電池 V₀ につないだままスイッチを閉じる場合を示す.各段の左は間隔 d,右は 2d で,赤の矢印は上の極板を引く外力の向きである. 上段は電池を切り離してスイッチを開く場合,下段は電池 V₀ につないだままスイッチを閉じる場合を示す.各段の左は間隔 d,右は 2d で,赤の矢印は上の極板を引く外力の向きである.
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考え方 (1) は電荷一定,(2) は電圧一定.(2) では「外力の仕事 + 電池の仕事 = 静電エネルギーの変化」で収支をとる.ゆっくり動かすので,導線での発熱や運動エネルギーは考えない.

  1. 電荷は Q=C0V0 のまま,容量は C0/2 になる.U=Q2/(2C) より

ΔU=Q22(2C0−1C0)=12C0V02

外力の仕事は W=ΔU=12C0V02.電圧は 2V0 になる.

  1. 電荷は C0V0 から 12C0V0 に減るので,12C0V0 が電池へ押し戻される.電池のする仕事は Wb=V0ΔQ=−12C0V02(電池は充電される).静電エネルギーは

ΔU=12⋅C02V02−12C0V02=−14C0V02

で減る.外力の仕事は W=ΔU−Wb=−14C0V02+12C0V02=14C0V02.

確かめ:(1) では極板を引く力が一定で Q2/(2ε0S)=C0V02/(2d),これに d を掛けると 12C0V02 で合う.(2) では間隔 x での力 ε0SV022x2 を d から 2d まで積分して ε0SV024d=14C0V02 で合う.(2) では外力の仕事と静電エネルギーの減少分の両方が電池に入る.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

容量 C のコンデンサー1を電圧 3V0 で,容量 2C のコンデンサー2を電圧 V0 で別々に充電し,電源から切り離した.コンデンサー1の正の極板を A1,負の極板を B1,コンデンサー2の正の極板を A2,負の極板を B2 とする.次に A1 と B2,B1 と A2 をそれぞれ導線でつないだ.

  1. 十分時間がたった後の電圧と,4枚の極板の電荷を求めよ.

  2. つなぐ前後の静電エネルギーの差を求めよ.

容量 C の極板 A₁ と B₁,容量 2C の極板 A₂ と B₂ に初めの電荷の符号を記す.A₁ と B₂,B₁ と A₂ を結ぶ導線と,2つの孤立部分を破線で示す. 容量 C の極板 A₁ と B₁,容量 2C の極板 A₂ と B₂ に初めの電荷の符号を記す.A₁ と B₂,B₁ と A₂ を結ぶ導線と,2つの孤立部分を破線で示す.
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考え方 つないだ後の孤立部分は,P(A1 と B2)と N(B1 と A2)の2つ.各部分の電荷の和は保存する.極板の電荷は + と − を決めつけず,電位差で書く.

  1. 初めの電荷は A1 が 3CV0,B2 が −2CV0 なので,P の電荷の和は CV0.N は −CV0 である.P の N に対する電位を V とすると,A1 の電荷は CV,B2 の電荷は 2CV(A2 に向かい合う).P の保存から

CV+2CV=CV0⟹V=V03

極板の電荷は A1 が CV0/3,B1 が −CV0/3,B2 が +2CV0/3,A2 が −2CV0/3.コンデンサー2は正負が入れ替わった.

  1. 前は 12C(3V0)2+12(2C)V02=112CV02,後は 12(3C)(V03)2=16CV02.差は 163CV02 で,これだけ減る.

確かめ:容量 C1,C2 を電圧 V1,V2 で逆向きにつなぐときの損失は 12C1C2C1+C2(V1+V2)2 で,12⋅2C3(4V0)2=163CV02 と一致する.失われたエネルギーは導線の発熱と電磁波になり,その量は導線の抵抗によらない(第21章).

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

接地した十分に広い導体平面を z=0 とし,高さ a の点 (0,0,a) に点電荷 q>0 を置く.k=1/(4πε0) とする.

  1. z>0 の電位を鏡像法で求め,それが正しい理由を述べよ.

  2. 平面に誘導される電荷の面密度を,q の真下の点からの距離 s の関数として求め,総量が −q であることを示せ.

  3. q が受ける力を求めよ.また,q を無限遠までゆっくり運ぶ外力の仕事を求め,2つの点電荷 q,−q を距離 2a から引き離す仕事 kq2/(2a) と違う理由を説明せよ.

接地した導体平面 z = 0 の上,高さ a に正の点電荷 q を置く.平面上の位置までの距離 s を示し,解答で導入する鏡像や求める力は描かない. 接地した導体平面 z = 0 の上,高さ a に正の点電荷 q を置く.平面上の位置までの距離 s を示し,解答で導入する鏡像や求める力は描かない.
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考え方 平面上で電位0,無限遠で0,z>0 にある電荷は q だけ,という条件を満たす電位を見つければ,解は1つなのでそれが答えである.

  1. (0,0,−a) に −q を置いて

V=kq[1x2+y2+(z−a)2−1x2+y2+(z+a)2]

z=0 では2つの距離が等しく V=0,無限遠でも0.z>0 では q の所以外でラプラス方程式を満たす.境界の条件と電荷が同じなので,解の一意性からこれが正しい電位である(z<0 は導体なので鏡像の電荷は実在しない).

  1. 平面のすぐ上では,q と鏡像の電場の z 成分はどちらも −kqa/(s2+a2)3/2 なので,Ez=−2kqa(s2+a2)3/2.導体表面では σ=ε0Ez なので

σ=−qa2π(s2+a2)3/2

総量は

∫0∞σ⋅2πsds=−qa[−1s2+a2]0∞=−q
  1. 力は鏡像からの引力 F=kq2(2a)2 で,平面へ向かう.高さ z での力は kq2/(4z2) なので,外力の仕事は

W=∫a∞kq24z2dz=kq24a

で,kq2/(2a) の半分である.鏡像は q と一緒に動く架空の電荷で,外力が押すのは q だけである.電場が実際にあるのは z>0 だけで,2つの点電荷の場のうち上半分にあたるから,エネルギーも半分になる.

確かめ:s が a よりずっと大きい所では σ∝1/s3 で急に小さくなり,誘導電荷は q の真下の半径 a ほどの範囲に集まる.平面の広さが a よりずっと大きければ,有限の平面でもこの結果が使える.

ポイント ここまでのまとめ

  • 電荷一定では W外力=ΔU.電圧一定では W外力+W電池=ΔU で,電池の仕事 VΔQ を忘れない.

  • つなぎ替えでは,孤立した部分ごとに電荷の和を保存させ,極板の電荷を電位差で書く.極板の符号が入れ替わることもある.

  • つなぎ替えで失われるエネルギーは,導線の抵抗の値によらない.

  • 接地した平面と点電荷は鏡像の −q で表せる.引く力は kq2/(2a)2,引き離す仕事は kq2/(4a).

12導体とコンデンサーの演習

導体ごとの電荷保存を使う.力を求めるときは,電源の仕事も数える.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

真空中で,内半径 a,外半径 b の中性の導体球殻の空洞内に,正の点電荷 q を中心からずらして置く.外部に電荷はなく,無限遠を電位0とする.

  1. 内壁と外表面の総電荷,導体の電位を求めよ.内壁の電荷は一様か.

  2. 球殻を接地した後の内壁と外表面の総電荷,地面から球殻へ移る電荷を求めよ.空洞の電場も0になるか.

球殻の断面に半径 \(a,b\),中心からずれた \(q\),接地用のスイッチを示す. 球殻の断面に半径 \(a,b\),中心からずれた \(q\),接地用のスイッチを示す.
解答を見る

考え方
金属内のガウス面の内側の電荷は0である.

  1. 金属内は E=0 なので q+Qin=0.球殻の総電荷が0だから Qin=−q,Qout=q.外表面が等電位なので外部は球対称で,E=q/(4πε0r2).したがって V(b)=∫b∞Edr=q/(4πε0b).内壁の電荷は一様ではない.

  2. 接地で V(b)=0.外部の電位は境界と無限遠で0だから全域で0となり,Qout=0.内壁は依然 −q なので,球殻へ移る電荷は −q.空洞の場は点電荷から内壁へ向かい,0ではない.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

面積 S,間隔 d の真空の平行板コンデンサーを,電荷 +Q,−Q を与えて孤立させる.厚さ t<d の中性の導体板を極板と平行に,全面に挿入する.板は極板に接触せず,隙間は h,d−t−h である.端の効果を無視する.

  1. 両隙間の電場,挿入後の容量と電圧を求めよ.

  2. 挿入前後の静電エネルギーの差を求めよ.容量は h に依存するか.

極板の電荷,面積 \(S\),間隔 \(d\),板の厚さ \(t\) と隙間 \(h\) を示す. 極板の電荷,面積 \(S\),間隔 \(d\),板の厚さ \(t\) と隙間 \(h\) を示す.
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考え方
導体板内の電位差は0であり,電位差が生じる長さは隙間の和である.

  1. 板の両面に −Q,+Q が誘導される.ガウスの法則から両隙間で E=Q/(ε0S).よって V=E[h+d−t−h]=Q(d−t)/(ε0S),C=Q/V=ε0S/(d−t).

  2. U0=Q2d/(2ε0S),U1=Q2(d−t)/(2ε0S) だから,U1−U0=−Q2t/(2ε0S).容量は位置によらず,t→0 で元に戻る.近似には d/S が十分小さく,挿入板の縁の影響を無視できることが必要である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

面積 S の3枚の導体板A,M,Bをこの順に平行に並べ,隙間を d,2d とする.真空中で C0=ε0S/d とおき,外側の面の電荷と端の効果を無視する.初め VA=V>0,VB=0,孤立したMの総電荷は q=C0V/4 である.

  1. Mの電位と両面の電荷を求めよ.

  2. 電源を切り離し,AとBをつなぐ.平衡後のMと外側の電位差,Mの両面の電荷,静電エネルギーの減少を求めよ.接続中の損失で静電平衡に達する.

A,M,Bの隙間 \(d,2d\),Mの総電荷 \(q\),初めの電源と切り離し後にA,Bを結ぶスイッチを示す. A,M,Bの隙間 \(d,2d\),Mの総電荷 \(q\),初めの電源と切り離し後にA,Bを結ぶスイッチを示す.
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考え方
Mの両面の電荷の和が保存される.両面の電荷は等しいとは限らない.

  1. Mの左面は C0(VM−V),右面は (C0/2)VM.その和が C0V/4 なので 3VM/2−V=V/4,VM=5V/6.両面の電荷は順に −C0V/6,5C0V/12 である.

  2. 外側の電位を VO とすると (3C0/2)(VM−VO)=q.よって電位差は V/6,Mの電荷は順に C0V/6,C0V/12.外側の総電荷は初めも最後も −q である.初めのエネルギーは Ui=C0(V/6)2/2+(C0/2)(5V/6)2/2=3C0V2/16,最後は Uf=(3C0/2)(V/6)2/2=C0V2/48.減少は C0V2/6 で,接続中に失われる.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

幅 w=4.00×10−2m の極板の重なり長さ x を変えて容量を測る.真空の間隔 d は一定で,容量には一定の並列寄生容量 Cp を含める.ε0=8.85×10−12Fm−1 とする.

x(m)

C(pF)

0.0200

120

0.0400

200

0.0600

280

  1. C と x の関係式から d,Cp を求めよ.各容量の誤差が最大 2pF のとき,両端2点で決める傾きの相対誤差の上限も求めよ.長さの誤差は無視する.

  2. 電圧 V=50.0V を一定に保つ.電気力と,x を 0.0600m から 0.0200m までゆっくり減らす外力の仕事を求めよ.

横に滑る極板の幅 \(w\),重なり \(x\),間隔 \(d\),一定電圧源を描く. 横に滑る極板の幅 \(w\),重なり \(x\),間隔 \(d\),一定電圧源を描く.
解答を見る

考え方
測定の傾きと,電源を含む収支を使う.

  1. C=Cp+ε0wx/d.傾きは A=(280−120)×10−12/0.0400=4.00×10−9Fm−1.従って d=ε0w/A=8.85×10−5m,Cp=120pF−A×0.0200m=40.0pF.中央も一致する.傾きの相対誤差は最大 4/160=0.025,2.5 %である.

  2. dQ=VdC,電源の仕事は VdQ=V2dC,場の増分は dU=V2dC/2.差が Fdx だから F=V2A/2=5.00×10−6N で重なりを増す向き.外力の仕事は W=F×0.0400m=2.00×10−7J.端を無視する条件 d/w,d/x は測定範囲で十分小さい.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

面積 S の真空の平行板コンデンサーの一方を固定し,質量 m の極板をばね定数 k のばねで支える.無帯電時の隙間は d0,接近方向の変位は x,ばねの復元力は −kx である.摩擦,重力,端の効果を無視する.

  1. 両極板の電荷を +Q,−Q に固定した場合のつり合い位置と微小振動の角振動数を求めよ.

  2. 電圧 V を一定に保つ場合のつり合い条件,安定範囲,安定なつり合いの限界電圧 Vc を求めよ.安定位置 xe での小振動の角振動数も求めよ.

固定極板,可動極板 \(m\),ばね \(k\),隙間 \(d_0-x\),接近方向の座標 \(x\) を描く. 固定極板,可動極板 \(m\),ばね \(k\),隙間 \(d_0-x\),接近方向の座標 \(x\) を描く.
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考え方
電気力の位置依存性が,ばねの復元力を弱めるかどうかを調べる.

  1. U=Q2(d0−x)/(2ε0S) より F=−dUdx=Q2/(2ε0S).kxe=F だから xe=Q2/(2kε0S).ξ=x−xe とおくと md2ξdt2=−kξ,ω=k/m.ただし xe<d0 が必要である.

  2. C=ε0S/(d0−x).電源の仕事 V2dC から場の増分 V2dC/2 を引くと,F=V2dCdx/2=ε0SV2/[2(d0−x)2].つり合いは xe(d0−xe)2=ε0SV2/(2k).その点で dFdx=2kxe/(d0−xe) なので安定条件は k>dFdx,すなわち 0≤xe<d0/3.左辺の最大値は xe=d0/3 で 4d03/27 だから

Vc=8kd0327ε0S,ω=kmd0−3xed0−xe.

角振動数は md2ξdt2=−[k−dFdx(xe)]ξ から得られる.V=Vc でも xe=d0/3 のつり合いは残るが,合力の先頭の項が 9kξ2/(4d0) となるため安定ではない.V>Vc ではつり合いは存在しない.線形化には |ξ|/(d0−xe) が十分小さく,限界近くでは |ξ|/(d0−3xe) も十分小さいことが必要である.V→0 で ω→k/m となる.

ポイント 教える人へ

  • 空洞の遮蔽と接地の効果を,内壁と外表面に分けて説明させます.

  • 孤立した板の両面に,符号つき電荷を書かせます.

  • 電源の仕事と場の増分を別々に数えさせます.

  • つり合いの存在と安定性を区別させます.

13誘電体と分極

問い

食塩の結晶は,ナトリウムイオン NaA+ と塩化物イオン ClA− が電気の力で引き合って並んだものです.隣どうしの距離は約 0.28nm で,1組のイオンを引き離すには数 eV,室温の熱運動のエネルギー kBT≈0.026eV の100倍以上が要ります.それなのに,食塩は水に入れてかき混ぜるだけで,ばらばらのイオンになって溶けます.水の中ではイオンどうしの引力が弱まるからだといわれます.中性の分子の集まりである水が,なぜ電気の力を弱められるのでしょうか.

考えてみる

この章の最初の題材で,中性の髪の毛が下じきに引かれるのは分極するからだと説明しました.水の分子も同じで,NaA+ のまわりでは負に偏った酸素の側をイオンに向けて並び,遠くから見たイオンの電荷を小さく見せるはずです.けれど,どれだけ弱まるかを分子1個ずつの重ね合わせで計算することはできません.分子の向きはその場所の電場で決まり,その電場が分子の向きで決まるからです.そこで「単位体積あたりどれだけ偏っているか」という平均の量で物質を表し,外から決められる電荷と切り分けます.

分極と分極電荷

電流をほとんど通さない物質を誘電体といいます.電場の中では,原子の電子の雲がずれる電子の偏りと,水のような極性分子が熱運動に乱されながら電場の向きにそろう向きのそろいによって,双極子モーメントが生じます.

定義 分極

誘電体の中の小さな体積 ΔV(電位 V と区別するため,この節では体積を V と書く)に含まれる双極子モーメントの和を ΔV で割った P を分極という.数密度 n の分子が平均で p をもつなら P=np(単位 Cm−2).

一様に分極した板(面積 S,厚さ L)の中では,分子の正の端の隣に次の分子の負の端が来て打ち消し合い,両端の面にだけ薄い電荷の層が残ります.その面密度を σb とすると,板全体の双極子モーメントを2通りに数えて σbSL=PSL,つまり σb=P です.一般に,正の電荷(数密度 n,電荷 q)が u ずれたと考えると,外向きの法線が n の小さな面 dS を横切って外へ出る電荷は nqu⋅ndS=P⋅ndS で,閉じた面の中にはその分の負の電荷が残ります.

板の内部の双極子は − から + へ右向きにそろう.隣接する双極子の正負は打ち消し合い,左の面に負,右の面に正の分極電荷の薄い層が残る. 板の内部の双極子は − から + へ右向きにそろう.隣接する双極子の正負は打ち消し合い,左の面に負,右の面に正の分極電荷の薄い層が残る.

定理 分極電荷

誘電体の表面には,外向きの単位法線ベクトルを n として面密度 σb=P⋅n の分極電荷が現れる.閉じた面の中の分極電荷の和は Qb=−∫P⋅ndS(積分は閉じた面全体).

分極電荷は分子に縛られ,導線で運び出せません.極板にのせた電荷や外から持ち込んだイオンの電荷は自由電荷と呼び,添字 f で区別します.電場を作るのは両方の電荷です.

比誘電率

真空の平行板コンデンサー(面積 S,間隔 d)に自由電荷 ±Q を与えて電源から切り離し,隙間を誘電体で満たします.誘電体は正の極板から負の極板へ向けて分極し,正の極板に接する面に −P,負の極板に接する面に +P の分極電荷が現れて,極板の電荷を一部打ち消します.σf=Q/S として,中の電場は E=(σf−P)/ε0 です.多くの物質では,電場が強すぎなければ P は E に比例します.

定義 線形な誘電体と比誘電率

P=ε0(εr−1)E と書ける誘電体を線形な誘電体,定数 εr を比誘電率,ε=εrε0 を誘電率という.

代入すると εrE=σf/ε0 で,電場も電圧も真空のときの 1/εr 倍,容量 C=εrε0S/d=εrC0 は εr 倍です.εr は,空気 1.0006,ポリエチレン 2.3,ガラス 5〜10,エタノール 24,水(20∘C)80 などです.比例は電場が原子の中の電場(1011Vm−1 程度)よりずっと弱いときの近似ですが,実際にはその前に絶縁破壊が起こって電流が流れます(空気では約 3×106Vm−1).

電束密度と自由電荷のガウスの法則

電場のガウスの法則 ε0∫E⋅ndS=Qf+Qb に Qb の式を入れて左辺へ移すと,分極電荷が消えます.

法則 電束密度と自由電荷のガウスの法則

電束密度 D=ε0E+P について,どんな閉じた面でも

∫D⋅ndS=Qf

(右辺は面の中の自由電荷).線形な誘電体の中では D=εrε0E.

これだけで D が決まるのは対称性があるときです.平行板では D=σf,E=D/(εrε0) で上の結果に一致します.一様な液体の中の点電荷 q では 4πr2D=q から E=q4πεrε0r2 で,もう1つのイオンが受ける力も 1/εr 倍になります.ただし液体を連続した物質と見ているので,r が分子の大きさ(水では約 0.3nm)より十分大きいときの式です.コンデンサーのエネルギー U=12CV2 に V=Ed を入れると,エネルギー密度は 12εrε0E2=12ED です.

境界の条件

比誘電率 εr1 と εr2 の誘電体が接する平面を考え,法線は1から2へ向けます.境界をまたぐ平たい箱(底面積 ΔS)で D のガウスの法則を使い,厚さを0に近づけると側面の流束が消えて (D2n−D1n)ΔS=σfΔS です.境界をまたぐ細い長方形の道を一周する E の線積分は,静電場が保存場なので0で,短い辺を0に近づけると (E1t−E2t)ℓ=0 です.

上は誘電体1,下は誘電体2で,法線 n は下向きにとる.薄い箱の上下の底面を貫く D₁ₙ と D₂ₙ,細い長方形の道に沿う E₁ₜ と E₂ₜ を示す. 上は誘電体1,下は誘電体2で,法線 n は下向きにとる.薄い箱の上下の底面を貫く D₁ₙ と D₂ₙ,細い長方形の道に沿う E₁ₜ と E₂ₜ を示す.

定理 誘電体の境界の条件

電場の接線成分はつながる(E1t=E2t).電束密度の法線成分は境界の自由電荷の分だけ跳ぶ(D2n−D1n=σf).

自由電荷が無ければ,電気力線が法線となす角について tan⁡θ1/tan⁡θ2=εr1/εr2 で,比誘電率の大きい側では力線が境界に寝ます.「境界で何がつながるか」という見方は,第26章の光の反射と透過でもう一度使います.

[図:誘電体の境界で折れ曲がる電気力線]

初期状態は εᵣ₂/εᵣ₁ = 2 で,境界に自由電荷はない.スライダーで比を変えると角 θ₂ が変わる.電場の接線成分は等しいままで,法線成分は誘電率の比に反比例する.

誘電体が引き込まれる力

幅 w,長さ ℓ,間隔 d の平行板コンデンサーに,隙間を満たす誘電体板を長さ x だけ差し込みます.入った部分と入っていない部分は並列なので C(x)=ε0wd[ℓ+(εr−1)x] です.

幅 w,長さ ℓ,間隔 d の極板の右端から誘電体が長さ x だけ入る.青の力線は極板の端で曲がり,赤の力 F は板を左へ引き込む向きに働く.w は紙面に垂直な幅である. 幅 w,長さ ℓ,間隔 d の極板の右端から誘電体が長さ x だけ入る.青の力線は極板の端で曲がり,赤の力 F は板を左へ引き込む向きに働く.w は紙面に垂直な幅である.

力の出し方は,前の題材の極板の間の力と同じです.電荷 Q が一定なら,電気力の仕事 Fdx の分だけ U=Q2/(2C) が減るので F=−dUdx=Q22C2dCdx=V22dCdx です.電圧 V が一定なら,電源の仕事 V2dC の半分が静電エネルギーの増加 12V2dC に,残りが Fdx になるので,やはり Fdx=12V2dC です.

定理 誘電体を引き込む力

電荷一定でも電圧一定でも,その瞬間の電圧を V として F=V22dCdx=ε0w(εr−1)V22d で引き込まれる.

同じ状態なら力は同じで,電圧一定なら力は一定,電荷一定なら V が下がって力は弱まっていきます.力が働くのは極板の端の曲がった電場の所で,非一様な電場が誘電体の双極子を強い場の側へ引くのです.エネルギーの方法はその場を計算せずにすみますが,端の影響の広がりは d 程度なので,d が w,x,ℓ−x より十分小さいことが条件です.

分極の微視的な模型

原子を,半径 a の球に一様に広がった電子の雲(−e)と中心の原子核(+e)で表します.電場 E で原子核が u ずれると,一様に帯電した球の中の電場 eu/(4πε0a3)(ガウスの法則)が引き戻すので,つり合いから p=eu=4πε0a3E です.p=αE の係数 α=4πε0a3 を分極率といいます.復元力は u に比例するので,ばね定数 e2/(4πε0a3) のばねで電子をつないだ模型と同じです.

a=1.0×10−10m なら α≈1.1×10−40Cm2V−1.気体では P=nαE から εr=1+nα/ε0 で,空気の n=2.7×1025m−3 では εr−1≈3×10−4 と,測定値 6×10−4 と桁が合います.ここでは原子に働く場を巨視的な E で近似しました.nα/ε0 が十分小さい気体では良い近似ですが,液体や固体では隣の双極子の場の補正が要ります.

水の εr がとびぬけて大きいのは,電子の偏りではなく,もともと双極子をもつ分子の向きのそろいが効くからです.熱運動が向きを乱すので,温度が上がると εr は下がります(0∘C で88,100∘C で55).

問いに戻る

NaA+ を水に入れると,まわりの水の分子が向きをそろえ,イオンの表面を負の分極電荷が包みます.D は真空と同じでも,電場は 1/εr≈1/80 に弱まります.距離 0.28nm の NaA+ と ClA− の引き合うエネルギーは,真空の約 5eV から約 0.06eV になり,kBT と同じ程度です.だから熱運動がイオンを引き離せるのです(接したイオンでは連続体の近似は粗く,桁の見積もりです).

ポイント ここまでのまとめ

  • 誘電体は電場の中で分極し,分極 P が表面に分極電荷 σb=P⋅n を作る.

  • 線形な誘電体では P=ε0(εr−1)E.容量は εr 倍,自由電荷のまわりの電場は 1/εr 倍になる.

  • D=ε0E+P の流束は自由電荷だけを数える.境界では Et がつながり,Dn は自由電荷の分だけ跳ぶ.

  • 誘電体を引き込む力は電荷一定でも電圧一定でも F=12V2dCdx.電圧一定では電源の仕事を入れる.

  • 食塩が水に溶けるのは,向きをそろえた水の分子がイオンの電場を約 1/80 に弱め,引力のエネルギーが熱運動の程度まで下がるから.

14誘電体の例題

自由電荷を D の流束で数え,境界の条件で各部分をつなぎます.力とエネルギーでは電源の仕事を忘れないようにしましょう.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

面積 S,間隔 d の平行板コンデンサーを電圧 V の電池につないだまま,隙間の半分を比誘電率 εr の線形な誘電体で満たす.真空のときの容量を C0=ε0S/d とし,端の効果を無視する.

電池 V につないだ面積 S,間隔 d の平行板コンデンサーを並べる.左では正の極板側の厚さ d/2 を,右では面積 S/2 の全厚さを,比誘電率 εᵣ の誘電体で満たす. 電池 V につないだ面積 S,間隔 d の平行板コンデンサーを並べる.左では正の極板側の厚さ d/2 を,右では面積 S/2 の全厚さを,比誘電率 εᵣ の誘電体で満たす.
  1. 直列型:厚さ d/2 の誘電体板を正の極板に接して全面に入れた.誘電体中と真空部分の電場,極板の自由電荷,容量 CA を求めよ.また,誘電体の真空側の面に現れる分極電荷の面密度を求めよ.

  2. 並列型:隙間の全厚さを満たす誘電体を,面積の半分にだけ入れた.各部分の電場と,極板の自由電荷の面密度,容量 CB を求めよ.

  3. CA と CB の大小を比べよ.εr=3 のときの値も求めよ.

解答を見る

考え方 直列型では境界が極板に平行で,自由電荷の無い境界で Dn がつながるから,D が2つの層で等しい.並列型では境界が極板に垂直で,Et がつながり,どちらの部分も両極板の電位差が V だから,E が等しい.

  1. 両層の電束密度を D とすると,誘電体中は Ed=D/(εrε0),真空中は Ev=D/ε0 である.電圧は V=Ed⋅d2+Ev⋅d2=Dd2ε0(1εr+1) だから

D=2εrεr+1⋅ε0Vd,Ed=2εr+1⋅Vd,Ev=2εrεr+1⋅Vd

極板の表面で D のガウスの法則を使うと,正の極板の自由電荷の面密度は D で,Q=DS.よって

CA=QV=2εrεr+1C0

分極は P=D−ε0Ed=D(1−1εr) で,正の極板から負の極板へ向く.真空側の面の外向き法線は P と同じ向きなので,分極電荷の面密度は

σb=P=2(εr−1)εr+1⋅ε0Vd

で正である.確かめとして,この面で電場のガウスの法則を使うと ε0(Ev−Ed)=σb となり,一致する.

  1. どちらの部分でも E=V/d.電束密度は誘電体側で D=εrε0V/d,真空側で D=ε0V/d で,それぞれが極板の自由電荷の面密度に等しい.自由電荷は誘電体の側に εr 倍集まる.全電荷は Q=S2⋅(εr+1)ε0Vd だから

CB=εr+12C0

(εrC0/2 と C0/2 の並列).

  1. 差は

CB−CA=(εr+1)2−4εr2(εr+1)C0=(εr−1)22(εr+1)C0≥0

で,CB≥CA(等号は εr=1).εr=3 では CA=1.5C0,CB=2C0.直列型の真空部分の電場 1.5V/d は誘電体が無いときより強く,薄い空気の層は絶縁破壊しやすい.εr→1 では両方とも C0 に戻る.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

幅 w,長さ ℓ,間隔 d の水平な平行板コンデンサーと,隙間をちょうど満たす厚さで長さ ℓ,幅 w,質量 m,比誘電率 εr>1 の線形な誘電体板がある.板の先端を極板の端に合わせ(差し込んだ長さ x=0),静かに放す.板は極板の間を摩擦なく水平に動き,極板の反対側から抜け出すこともできる.C0=ε0wℓ/d とし,端の効果,電気抵抗による損失を無視する.電荷の移動は板の運動より十分速いとする.

長さ ℓ,幅 w の誘電体板が左から長さ x だけ入った配置を示す.極板の長さも ℓ,間隔は d である.上段は電池 V につながり,下段は充電後にスイッチを開く.求める速さや力の値は示さず,赤の矢印は板を右へ引き込む力 F の向きだけを表す. 長さ ℓ,幅 w の誘電体板が左から長さ x だけ入った配置を示す.極板の長さも ℓ,間隔は d である.上段は電池 V につながり,下段は充電後にスイッチを開く.求める速さや力の値は示さず,赤の矢印は板を右へ引き込む力 F の向きだけを表す.
  1. 電池につないで電圧を V に保つ.x=ℓ/2 での板の速さを求めよ.その間に電池がした仕事は,静電エネルギーの増加と板の運動エネルギーにどう分かれるか.

  2. x=0 で電圧 V に充電してから電池を切り離し,板を放す.x=ℓ/2 での板の速さを求め,(1)と比べよ.

  3. (1)の場合,板はその後どのように動くか.周期を求め,単振動かどうか答えよ.

解答を見る

考え方 入った部分と入っていない部分は並列で,C(x)=C0[1+(εr−1)x/ℓ].電圧一定では電池の仕事 VdQ を入れたエネルギーの収支,電荷一定では静電エネルギーの減少が板の運動エネルギーになる.

  1. x=0 から ℓ/2 までの容量の増加は ΔC=(εr−1)C02.電池は電荷 VΔC を送り込み,仕事 Ws=V2ΔC をする.静電エネルギーの増加は ΔU=12V2ΔC だから,板の運動エネルギーは

12mv12=Ws−ΔU=12V2ΔC=(εr−1)C0V24

で,v1=V(εr−1)C02m.電池の仕事は半分ずつ静電エネルギーと運動エネルギーに分かれる.引き込む力は一定値 F0=V22dCdx=(εr−1)C0V22ℓ で,仕事 F0ℓ/2 とも一致する.

  1. 電荷 Q=C0V が一定である.C(ℓ/2)=εr+12C0 だから

12mv22=Q22C0−Q22C(ℓ/2)=C0V22⋅εr−1εr+1

で,v2=V(εr−1)C0(εr+1)m.比は v22v12=2εr+1<1 で,電荷一定の方が遅い.電荷一定では板が入るほど C が増えて電圧が下がり,力が弱まるからである.x=0 では両者の力は等しい.

  1. 0<x<ℓ では板は一定の力 F0 で引き込まれ,等加速度 a=F0/m で動く.x=ℓ で板は極板の間をちょうど満たし,運動エネルギー F0ℓ をもって反対側へ出始める.ℓ<x<2ℓ では重なりの長さが 2ℓ−x で,C が減るので力は −F0(引き戻す向き)になる.対称性から板は x=2ℓ で止まり,x=0 と 2ℓ の間を往復する.0 から ℓ までの時間は t1=2ℓ/a なので,周期は

T=4t1=42mℓF0

力の大きさが一定で変位に比例しないから,単振動ではない.たとえば w=ℓ=0.10m,d=1.0mm,εr=4.0,V=1.0kV では F0≈1.3×10−3N で,m=20g なら T≈6.9s とゆっくりである.

確かめ:力の式は d が w,x,ℓ−x より十分小さいときのもので,x=0,ℓ,2ℓ の近く(幅 d 程度)では力はなめらかに変わる.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

水(比誘電率 εr=80)の中に NaA+(電荷 e)と ClA−(電荷 −e)がある.水を一様な線形の誘電体とみなし,e=1.60×10−19C,14πε0=8.99×109Nm2C−2,kB=1.38×10−23JK−1,T=300K とする.

比誘電率 εᵣ = 80 の水の中に電荷 e の Na⁺ と電荷 −e の Cl⁻ を置く.(1) で用いる Na⁺ からの距離 r と,(2) のイオン間隔 r₀ を示し,求める分極電荷は示さない. 比誘電率 εᵣ = 80 の水の中に電荷 e の Na⁺ と電荷 −e の Cl⁻ を置く.(1) で用いる Na⁺ からの距離 r と,(2) のイオン間隔 r₀ を示し,求める分極電荷は示さない.
  1. NaA+ だけを水の中に置く.イオンから距離 r の電場の大きさを求めよ.また,イオンのすぐまわりの水に現れる分極電荷の和を求めよ.

  2. 距離 r0=0.28nm の NaA+ と ClA− の静電エネルギーの大きさを,真空中と水中で eV 単位で求め,kBT と比べよ.

  3. 静電エネルギーの大きさが kBT に等しくなる距離を,真空中と水中で求めよ.濃度 1mol/L の完全に電離した食塩水で,NaA+ と ClA− を合わせた数密度から見積もるイオンの間隔はおよそ何 nm か.アボガドロ定数を 6.02×1023mol−1 とする.これと比べて何が言えるか.

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考え方 イオンの電荷は自由電荷として D のガウスの法則で数え,E=D/(εrε0) で電場に直す.分極電荷は,電場のガウスの法則が数える電荷と自由電荷の差である.

  1. 半径 r の球面で 4πr2D=e だから

E=e4πεrε0r2

電場のガウスの法則で数えた面の中の電荷は ε0⋅4πr2E=e/εr なので,分極電荷の和は

Qb=eεr−e=−(1−1εr)e≈−0.99e

である.r によらないので,分極電荷は水の内部には無く,イオンに接する水の表面に集まっている.

  1. 真空中では

e24πε0r0=8.99×109×(1.60×10−19)20.28×10−9J≈8.2×10−19J≈5.1eV

水中ではその 1/80 で約 0.064eV.kBT=4.14×10−21J≈0.026eV だから,真空中では kBT の約200倍,水中では約2.5倍にすぎない.

  1. e24πεrε0r=kBT より r=e24πεrε0kBT.真空中では

r=8.99×109×(1.60×10−19)24.14×10−21m≈5.6×10−8m=56nm

水中では 1/80 で約 0.69nm.1mol/L の食塩水では,NaA+ と ClA− を合わせた数密度は n=2×6.02×1026m−3 で,間隔は n−1/3≈0.94nm である.水中ではこの程度離れた異符号のイオンの引力のエネルギーは kBT より小さく,熱運動でばらばらに動ける.真空中では,kBT と等しくなるまで約60倍の距離が必要である.

確かめ:水を連続した誘電体とみなせるのは,距離が水の分子の大きさ(約 0.3nm)より十分大きいときである.(3) の 0.69nm や 0.94nm ではおおよそ使えるが,(2) の接した距離 r0 では近似が粗く,0.064eV は桁の見積もりと考える.

ポイント ここまでのまとめ

  • 極板に平行な境界では D が共通(自由電荷の無い境界で Dn がつながる),極板に垂直な境界では E が共通(Et がつながり電圧も共通).前者は直列,後者は並列の合成になり,容量は並列型の方が大きい.

  • 電圧一定では電池の仕事 V2ΔC の半分が静電エネルギーに,半分が力学的な仕事になる.電荷一定では静電エネルギーの減少が仕事になり,力は弱まっていく.

  • 自由電荷のまわりの誘電体は,自由電荷に接する面に −(1−1/εr) 倍の分極電荷を集めて,外から見た電荷を 1/εr 倍にする.

  • 水中では εr≈80 のため,イオンの引力のエネルギーが kBT と同じ程度になる距離が約 0.7nm まで縮む.連続体の近似は分子の大きさより十分離れた所で使う.

15誘電体と分極の演習

自由電荷と分極電荷を区別する.挿入や液面上昇では,電源の仕事も数える.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

真空の平行板コンデンサー(面積 S,間隔 d)を電圧 V0 まで充電し,電源から切り離す.比誘電率 εr>1 の線形誘電体で隙間を満たす.端と漏れを無視し,C0=ε0S/d とする.

  1. 挿入後の容量,極板の自由電荷,電圧,電場を求めよ.

  2. 分極の大きさと,正の極板に向く面の分極電荷密度を求めよ.静電エネルギーは挿入前の何倍か.

極板と誘電体,\(S,d,\varepsilon_r\),充電時の \(V_0\) を記す. 極板と誘電体,\(S,d,\varepsilon_r\),充電時の \(V_0\) を記す.
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考え方
自由電荷を保存し,D=Q/S,P=D−ε0E を使う.

  1. C=εrC0,Q=C0V0 は一定.従って V=Q/C=V0/εr,E=V/d=V0/(εrd).

  2. P=D−ε0E=ε0(εr−1)V0/(εrd).正の極板に向く面の外向き法線は分極と反対なので,σb=−P.U=Q2/(2C) より U/U0=C0/C=1/εr.εr→1 で P→0 となり,真空の結果に戻る.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

比誘電率 εr1=2.0 の媒質1と,未知の εr2 の媒質2の平面境界を考える.法線は1から2へ向ける.媒質1の場の法線・接線成分は E1n=3.0×104Vm−1,E1t=4.0×104Vm−1 である.媒質2の場が法線となす角 θ2 は tan⁡θ2=8/3 であった.両媒質は線形で,境界に自由電荷はない.

  1. 小さな箱と細い長方形の道で境界条件を導け.

  2. εr2 と E2n,E2t を求めよ.Dn が連続なら En も連続か.

媒質1,2の境界と法線,\(E_{1n},E_{1t}\),測定角 \(\theta_2\) を示す. 媒質1,2の境界と法線,\(E_{1n},E_{1t}\),測定角 \(\theta_2\) を示す.
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考え方
ガウスの法則と静電場の循環を使う.

  1. 境界をまたぐ薄い箱で (D2n−D1n)S=0.細い長方形に沿って一周する積分は0だから,厚さを0にすると (E1t−E2t)ℓ=0.よって εr1E1n=εr2E2n,E2t=E1t.

  2. E2n=E2t/tan⁡θ2=1.5×104Vm−1,E2t=4.0×104Vm−1,εr2=2.0×3.0/1.5=4.0.Dn は連続でも En は異なる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

原子を,固定電荷 +e と,ばね定数 k のばねにつなぐ負電荷 −e で表す.一様な場 E に対し,負電荷の場と反対向きのずれを u とする.ずれは電場がないときのつり合い位置から測り,ばねの力が原子内の復元力全体を表すものとする.測定値は次のとおりである.e=1.60×10−19C,ε0=8.85×10−12Fm−1 とする.

E/(106Vm−1)

u/(10−14m)

1.00

0.500

2.00

1.00

3.00

1.50

  1. u と E の関係から k と,p=αE で定義する分極率 α を求めよ.

  2. 原子を数密度 n=1.00×1026m−3 で並べ,局所の場を巨視的な場で近似し,比誘電率を求めよ.原子半径 a=1.0×10−10m で,小変位の近似を確かめよ.

電荷とばね,場に対するずれ \(u\) を示す. 電荷とばね,場に対するずれ \(u\) を示す.
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考え方
つり合いを単位体積の双極子モーメントへ結びつける.

  1. ku=eE より u/E=e/k.表の傾きは A=5.00×10−21m2V−1.従って k=e/A=32.0Nm−1.p=eu=eAE だから α=eA=8.00×10−40Cm2V−1.

  2. P=np=nαE,D=ε0E+P=(ε0+nα)E より εr=1+nα/ε0=1.00904.最大でも u/a=1.5×10−4 で十分小さい.場の近似では,nα/ε0=0.00904 が十分小さいことを用いている.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

真空の平行板コンデンサーA,Bの面積は S,2S,間隔はともに d である.直列につなぎ,全電圧を V に保つ.中間部分の総電荷は0である.Aだけを比誘電率3の誘電体で完全に満たす.C0=ε0S/d として,端を無視する.

  1. 挿入前後の電圧と電荷を求めよ.Aの電場は初めの何倍か.

  2. 電源の仕事,静電エネルギーの増分,外力の仕事を求めよ.摩擦と電気的損失を無視し,挿入は準静的とする.

A,Bの直列接続,電源 \(V\),Aへ入れる誘電体を示す. A,Bの直列接続,電源 \(V\),Aへ入れる誘電体を示す.
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考え方
中間部分の電荷保存により,両容量の電荷は等しい.

  1. Ci=[1/C0+1/(2C0)]−1=2C0/3,Qi=2C0V/3.各電圧は VAi=Qi/C0=2V/3,VBi=Qi/(2C0)=V/3.挿入後は Cf=[1/(3C0)+1/(2C0)]−1=6C0/5,Qf=6C0V/5.従って VAf=2V/5,VBf=3V/5,Aの場の比は (2V/5d)/(2V/3d)=3/5.

  2. ΔQ=Qf−Qi=8C0V/15 だから,電源の仕事は Ws=VΔQ=8C0V2/15.ΔU=(Cf−Ci)V2/2=4C0V2/15.収支 ΔU=Ws+Wext から Wext=−4C0V2/15.外力は仕事を受け取る.場の比が3分の1ではないのは,電源から電荷が入るためである.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

幅 w,高さ H,間隔 d の鉛直極板の下端を広い液槽の液面に合わせる.液体は密度 ρ,比誘電率 εr>1 の線形絶縁体で,外の誘電率は ε0 である.極板間の液面だけが高さ h まで上がる.d は他の長さより十分小さく,表面張力と漏れを無視する.C0=ε0wH/d,β=εr−1,重力加速度を g とする.V>0 とし,両条件の平衡液面が 0<h<H に収まる電圧の範囲を扱う.

  1. 容量 C(h) と,液体の重力位置エネルギーの増分を求めよ.電圧 V 一定の場合の平衡高さを求め,安定性を調べよ.

  2. h=0 に固定して電圧 V まで充電し,電源を切り離してから液面を解放する.平衡高さの方程式と安定性を調べ,(1)と比べよ.

液槽と鉛直極板,液面からの \(h,H\),\(w,d\) を示す. 液槽と鉛直極板,液面からの \(h,H\),\(w,d\) を示す.
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考え方
液体部分と上の部分は同じ電圧なので,容量を足す.

  1. C(h)=ε0w[H−h+εrh]/d=C0(1+βh/H).重力位置エネルギーは Ug=∫0hρgwdzdz=ρgwdh2/2.dQ=VdC,電源の仕事から場の増分を引くと V2dC/2 だから,電気力は F=V2dCdh/2=ε0wβV2/(2d).F=dUgdh=ρgwdh より

hV=ε0βV22ρgd2.

合力の傾きは −ρgwd<0 なので安定である.

  1. Q=C0V が一定であり,U=Q2/[2C(h)].電気力は −dUdh=Q2C0β/[2HC(h)2].重力による抵抗とつり合わせると

h(1+βhH)2=hV.

左辺は単調に増すので根は唯一で,0<h<hV.電気力は減り,重力の抵抗は増すので安定である.V→0 で両高さとも0となる.両解は h<H で,d/w,d/h,d/(H−h) が十分小さい範囲に適用する.

ポイント 教える人へ

  • 自由電荷と分極電荷を区別させます.

  • 自由表面電荷がない境界での Et,Dn の連続性を説明させます.

  • 測定の傾きを比誘電率へ結びつけさせます.

  • 電源の仕事の有無から液面上昇を比較させます.

16第20章の章末問題

電荷の保存,場の重ね合わせ,電位とエネルギーを組み合わせて解く.真空の誘電率を ε0,k=1/(4πε0) とする.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

真空中の x=0 と x=d に,面電荷密度 +σ,−2σ の無限に広い絶縁性の平面を置く.d,σ>0 で,電荷は固定されている.

  1. 各平面を除く3領域の電場の成分 Ex を求めよ.V(0)=0 としたとき,V(d) はいくらか.

  2. 質量 m,正電荷 q の粒子を x=0 のすぐ右から静かに放す.x=d のすぐ左での速さを求めよ.平面との衝突と重力は考えない.

2枚の平面と面電荷密度,間隔d,右向きのx軸,粒子の出発点を示す. 2枚の平面と面電荷密度,間隔d,右向きのx軸,粒子の出発点を示す.
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考え方
各平面の場を符号つきで足し,その積分を電位差へ結びつける.

  1. 面積 S の薄い箱を平面にまたがせると,対称性から 2ES=|σ|S/ε0.正電荷から離れ,負電荷へ向かう場を重ねると

Ex={σ/(2ε0)(x<0),3σ/(2ε0)(0<x<d),−σ/(2ε0)(x>d).

従って V(d)−V(0)=−∫0dExdx=−3σd/(2ε0).

  1. 電場の仕事は −q[V(d)−V(0)].mv2/2=3qσd/(2ε0) より v=3qσd/(mε0).一定加速度 qEx/m による v2=2qExd/m とも一致する.有限の平面で近似するなら,間隔と粒子の軌道から縁までの距離の比が十分小さいことが必要である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

大きさを無視できる2個の絶縁性粒子A,Bが,真空中で距離 d を隔てて静止している.質量は m,3m,電荷は +q,+2q である.電荷を一定に保ったまま同時に放す.電気力以外は無視する.

  1. 粒子間距離が r>d になったとき,各粒子の速さを求めよ.

  2. 十分遠く離れたときの運動エネルギーの比と,各速さを求めよ.

初めの粒子A,Bと質量,電荷,距離dを示す.外力のない直線上に配置する. 初めの粒子A,Bと質量,電荷,距離dを示す.外力のない直線上に配置する.
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考え方
電気力は内力なので,全運動量と全エネルギーの両方が保存する.

  1. 互いに反対向きに動く.全運動量0より mvA=3mvB,すなわち vA=3vB.位置エネルギーの減少から

mvA22+3mvB22=2kq2(1d−1r),vB=kq23m(1d−1r),vA=3vB.
  1. KA/KB=mvA2/(3mvB2)=3.r→∞ とすると vA=3kq2/(md),vB=kq2/(3md).運動エネルギーの和は初期の 2kq2/d に戻る.粒子半径と d の比が十分小さい範囲で点電荷の近似を使っている.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

半径 a=2.00×10−2m の導体球を帯電させ,中心からの距離 r における電位を測った.球の電荷を Q とし,遠くの物体はこの測定領域に一定の背景電位 Vb だけを加える模型を使う.ε0=8.85×10−12Fm−1 とする.

r/m

0.0400

0.0800

0.160

V/V

50.0

32.0

23.0

  1. ガウスの法則から球外の場と電位の模型を導き,直線化によって Q,Vb を求めよ.球表面の電位と面電荷密度も求めよ.

  2. 各電位の誤差限界を 0.20V とする.両端の2点だけで推定する Q の誤差限界を求めよ.距離の誤差は無視する.3点の一致だけで背景の場が厳密に0と証明できるか.

導体球の半径aと,半径方向の3測定点rを示す.球の電荷Qと遠方の物体の存在だけを記す. 導体球の半径aと,半径方向の3測定点rを示す.球の電荷Qと遠方の物体の存在だけを記す.
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考え方
球対称な場を積分し,電位を 1/r の一次式として扱う.

  1. 4πr2Er=Q/ε0 より Er=kQ/r2.背景電位を定数とする模型では V(r)=Vb+∫r∞kQ/s2ds=Vb+kQ/r.横軸 1/r に対する傾きは A=(50.0−23.0)/(25.0−6.25)=1.44Vm だから,Q=4πε0A=1.60×10−10C.切片は Vb=50.0−1.44/0.0400=14.0V.中央の値も 14.0+1.44/0.0800=32.0V となる.表面電位は V(a)=86.0V,面電荷密度は Q/(4πa2)=3.19×10−8Cm−2 である.

  2. 電位差の誤差限界は 0.40V だから,δA=0.40/18.75=2.13×10−2Vm.従って δQ=4πε0δA=2.4×10−12C,相対誤差は約1.5 %である.点間や他の方向の変化は排除できず,背景の一定性は模型の仮定である.この近似には,背景の電位変化が測定領域内で球による電位変化より十分小さいことが必要である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

端子A,Bの間に,A,M,Bの順に容量 C,2C を直列につないだ枝と,A,N,Bの順に容量 C,C を直列につないだ枝を並列に置く.M,Nは互いにも外部にもつながらない導体部分で,総電荷は各0である.初めA,Bの電位差を V0>0 にしてから電源を両端で切り離す.その後,A,M間のコンデンサーだけを比誘電率3の誘電体で満たす.全コンデンサーは平行板型で,誘電体挿入中の漏れを無視する.

  1. 挿入後のA,B間の電圧と,VM−VB,VN−VB を求めよ.

  2. Mの両極板の電荷を符号つきで求め,M,N間の電位差も求めよ.MとNは接続しない.

2本の直列枝をA,B間に並べ,M,N,各容量,A,M間に入れる誘電体と切り離す電源を示す. 2本の直列枝をA,B間に並べ,M,N,各容量,A,M間に入れる誘電体と切り離す電源を示す.
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考え方
M,Nの総電荷と,切離し後のAの総電荷を別々に保存する.

  1. 初めの合成容量は Ci=2C/3+C/2=7C/6 なので,Aの総電荷は QA=7CV0/6.挿入後はA,M間が 3C となる.V=VA−VB,vM=VM−VB と置くと,Mの保存則は 3C(vM−V)+2CvM=0,従って vM=3V/5.同様に C(vN−V)+CvN=0 より vN=V/2.Aの保存則は

3C(V−vM)+C(V−vN)=17C10V=7C6V0

よって V=35V0/51,vM=7V0/17,vN=35V0/102.

  1. MのA側とB側の電荷は順に 3C(vM−V)=−14CV0/17,2CvM=14CV0/17 で,和は0である.VM−VN=7V0/102.途中の導体が中性でも,両面の電荷は0にならない.極板間隔と極板の横の長さの比を十分小さくして,端の効果を無視している.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

半径 R の絶縁性の球に,一様な正の体積電荷密度 ρ を固定する.中心Oからベクトル b だけずれた点Cを中心とする,半径 a の球状部分をくり抜く.b=|b|>0,a+b<R とする.

  1. 空洞内の電場を求め,任意の2点P,S間の電位差を位置ベクトルで表せ.

  2. 質量 m,正電荷 q の粒子を,Cを通り b に平行な直線の,b と逆側の空洞端から静かに放す.反対側の端に達する直前の速さを求めよ.重力と空洞壁の影響は無視する.

球の断面にO,C,ベクトルb,半径R,a,粒子の出発点と直線を示す.空洞内の電場は描かない. 球の断面にO,C,ベクトルb,半径R,a,粒子の出発点と直線を示す.空洞内の電場は描かない.
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考え方
くり抜いた球を負の電荷密度の球として重ね合わせる.

  1. 一様な球の内部では,半径 r のガウス面から 4πr2Er=4πρr3/(3ε0),従って E=ρr/(3ε0).空洞内の点では,大きい球と密度 −ρ の小さい球を足すと

E=ρ3ε0r−ρ3ε0(r−b)=ρb3ε0.

一様な場なので VS−VP=−∫PSE⋅dr=−ρb⋅(rS−rP)/(3ε0).

  1. 移動距離は場の向きに 2a だから,mv2/2=qE(2a)=2qρba/(3ε0).よって v=4qρba/(3mε0).b→0 では場も得られる速さも0となり,同心の空洞で場が消えることと合う.

演習 6

オリジナル ★★☆☆☆

面積 S の平行な導体板を x=0,3d に置き,両方を接地する.0<x<d を比誘電率2,d<x<3d を比誘電率4の線形誘電体で満たし,境界 x=d に面電荷密度 σ>0 の自由電荷をもつ薄い絶縁性の膜を固定する.端の効果を無視する.

  1. 各層の Ex と膜の電位を求めよ.境界条件を小さな箱の流束から説明せよ.

  2. 両導体板の向かい合う面の自由電荷密度と,膜の位置で重なる2つの誘電体表面の分極電荷密度の和を求めよ.

接地された両極板と,厚さd,2dの誘電体層,比誘電率2,4,境界の自由電荷σ,x軸を示す. 接地された両極板と,厚さd,2dの誘電体層,比誘電率2,4,境界の自由電荷σ,x軸を示す.
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考え方
自由電荷で電束密度が跳ぶ条件と,両板の電位が等しい条件を使う.

  1. 場は各層で一定である.境界をまたぐ底面積 s の薄い箱では (D2x−D1x)s=σs.従って 4ε0E2x−2ε0E1x=σ.一方,両板の電位差0より dE1x+2dE2x=0.これらを解くと E1x=−σ/(4ε0),E2x=σ/(8ε0).膜の電位は V(d)=−dE1x=σd/(4ε0).右側から積分しても V(d)=2dE2x と一致する.

  2. 導体から誘電体へ向く法線をとると,左板の自由電荷密度は D1x=−σ/2,右板は −D2x=−σ/2.分極は P1x=ε0E1x=−σ/4,P2x=3ε0E2x=3σ/8.境界の両面の外向き法線はそれぞれ +x,−x だから,分極電荷の和は P1x−P2x=−5σ/8.自由電荷との和 3σ/8 は ε0(E2x−E1x) に等しく,電場のガウスの法則とも一致する.近似条件は d/S が十分小さいことである.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

半径 R の絶縁性の球に,中心からの距離 r に比例する体積電荷密度 ρ(r)=ρ0r/R を固定する.0≤r≤R,ρ0>0 で,外部は真空である.無限遠を電位0とする.

  1. 総電荷 Q と球内外の電場,電位を求めよ.

  2. 薄い球殻を内側から加えてこの分布を組み立てる外力の仕事を求めよ.同じ Q,R の導体球とどちらが大きいか.

  3. 電荷を一定に保ち,分布の形を相似に保って半径を R から 2R までゆっくり広げる外力の仕事を求めよ.材料の弾性エネルギーは考えない.

半径Rの球と薄い球殻r,厚さの記号を描き,密度ρ₀r/Rと相似に広げる操作を示す.密度に対応する答えの場は描かない. 半径Rの球と薄い球殻r,厚さの記号を描き,密度ρ₀r/Rと相似に広げる操作を示す.密度に対応する答えの場は描かない.
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考え方
ガウス面の内側の電荷を積分し,組み立てでは先に置いた電荷との相互作用だけを数える.

  1. 半径 r≤R に含まれる電荷は Q(r)=∫0r4πs2ρ0s/Rds=πρ0r4/R.総電荷は Q=πρ0R3.4πr2Er=Q(r)/ε0 より球内は Er=kQr2/R4,外部は Er=kQ/r2.外部の電位は V=kQ/r.内部では

V(r)=V(R)+∫rRkQs2R4ds=kQR[43−13(rR)3].

場も電位も r=R で連続である.

  1. 組み立て途中で内側にある電荷は Q(r)=Qr4/R4,追加する電荷は dQ(r)=4Qr3dr/R4.その球殻を運ぶ仕事を足すと

U=∫0RkQ(r)rdQ(r)=4kQ2R8∫0Rr6dr=4kQ27R.

無限に薄い各追加殻自身のエネルギーは微小電荷の2乗なので積分の極限では残らない.導体球では表面電位が kq/R だから,Uc=∫0Q(kq/R)dq=kQ2/(2R).従って U/Uc=8/7>1.

  1. 相似な分布では U は半径の逆数に比例する.Wext=U(2R)−U(R)=−2kQ2/(7R) であり,外力は電気力から仕事を受け取る.仕事の単位は J で,無限に広げる極限では初期の静電エネルギーをすべて取り出せる.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

原点に正電荷 Q を固定し,これに重ねて x 軸の負方向へ一定の電場 E0 を加える.質量 m,正電荷 q の粒子を,摩擦のない案内で x>0 の x 軸上に拘束する.Q,q,E0>0 で,重力を無視する.

  1. 軸方向のつり合い位置 xe と,その近くの小振動の角振動数を求めよ.

  2. x=xe/2 から静かに放した場合の反対側の転回点と,つり合い位置での速さを求めよ.小振動の近似をこの運動へ使えるか.

原点の電荷Q,負方向の一定電場E₀,正のx軸の案内と粒子qを示す.つり合い位置は描かない. 原点の電荷Q,負方向の一定電場E₀,正のx軸の案内と粒子qを示す.つり合い位置は描かない.
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考え方
つり合いでは力の和,小振動では力の傾き,有限の運動では厳密なエネルギーを使う.

  1. 力は Fx=kQq/x2−qE0.Fx=0 より xe=kQ/E0.ξ=x−xe とすると dFxdx(xe)=−2kQq/xe3=−2qE0/xe だから,md2ξdt2≈−2qE0ξ/xe.従って ω=2qE0/(mxe) で,案内上では安定である.

  2. 一定電場の電位は E0x と選べるので,U(x)=kQq/x+qE0x.s=x/xe とおけば U=qE0xe(s+1/s).初め s=1/2 で全エネルギーは 5qE0xe/2.転回点は s+1/s=5/2,すなわち (2s−1)(s−2)=0 だから,反対側は x=2xe.つり合い位置では U=2qE0xe なので mv2/2=qE0xe/2,v=qE0xe/m.小振動には |ξ|/xe が十分小さいことが必要だが,この運動では最大1に達するため適用できない.

演習 9

オリジナル ★★★☆☆

長さ L の伸びない軽い糸で,質量 m,正電荷 q の小球をつり下げる.支点には正電荷 Q を固定する.小球を最下点から速さ u で水平に発射し,鉛直面内で一周させる.電荷は一定で,重力加速度を g とする.糸と電荷の大きさ,空気抵抗を無視する.f=kQq/L2 とおく.

  1. 糸が張っている間,最下点からの角度 θ における速さと張力 T を求めよ.電気力は仕事をするか.

  2. 有限の時間で一周し,途中で糸がたるまないための u の条件を,f<mg と f≥mg に分けて求めよ.最高点で張力が0となる瞬間は許す.

支点の電荷Q,長さLの糸,最下点の小球qと水平初速度u,鉛直下向きからの角θを示す. 支点の電荷Q,長さLの糸,最下点の小球qと水平初速度u,鉛直下向きからの角θを示す.
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考え方
一定半径の軌道では電気力が半径方向を向く.エネルギー条件と張力の符号の条件を両方調べる.

  1. kQq/L は一定なので,糸が張っている間は電気力の仕事は0.高さの増加は L(1−cos⁡θ) だから,v2=u2−2gL(1−cos⁡θ).内向きを正とする運動方程式は mv2/L=T−mgcos⁡θ−f.従って

T=mu2L−2mg+3mgcos⁡θ+f.
  1. 張力の最小値は最高点 θ=π で Tmin=mu2/L−5mg+f.従って u2≥5gL−fL/m が必要である.また最高点で正の速さを保つには u2>4gL が必要である.f<mg なら前者が強く,条件は u≥5gL−fL/m.f≥mg なら条件は u>2gL となり,下限に等しい速さでは一周できない.実際,u2=4gL では v2=2gL(1+cos⁡θ) が最高点付近で gL(π−θ)2 となり,∫Ldθ/v は発散する.Q→0 では通常の 5gL に戻る.小球半径と L の比が十分小さいことが点電荷の近似条件である.

17第20章の発展問題

対称性と境界条件から場を組み立て,力学とエネルギーの収支へつなげる.k=1/(4πε0) とし,動く粒子が固定電荷や誘電体の分極を変える効果,放射,電荷の漏れは無視する.

演習 1

IPhO 2021 第2問(改題) ★★★★☆

半径 R の細い絶縁性の輪に,総電荷 Q>0 を一様に固定する.輪の中心を原点とし,軸を z 軸とする.質量 m,電荷 −q(q>0)の粒子を摩擦のない案内で軸上に拘束する.重力を無視し,無限遠を電位0とする.

  1. 軸上の電位と電場を積分または重ね合わせで求めよ.z=A>0 から静かに放した粒子が中心を通るときの速さを求めよ.

  2. 中心にある粒子へ正方向の速度を瞬間的に与える.無限遠へ脱出できる速さの下限を求めよ.

  3. (1)の往復運動の周期を積分で表し,A/R が十分小さいときの周期を (A/R)2 の補正まで求めよ.振幅によらない周期を使うときの相対誤差を δ 以下にする条件を,先頭の補正で見積もれ.

帯電輪の半径R,軸z,電荷Q,案内上の粒子−qと初期位置Aを示す.軌道の速さや場は描かない. 帯電輪の半径R,軸z,電荷Q,案内上の粒子−qと初期位置Aを示す.軌道の速さや場は描かない.
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考え方
輪上の微小電荷から粒子までの距離は等しい.有限振幅では,厳密な電位をエネルギー保存へ代入してから展開する.

  1. 微小電荷 dQ の電位を輪に沿って足すと,V(z)=∫kdQ/R2+z2=kQ/R2+z2.横成分は相殺し,軸成分は Ez=kQz/(R2+z2)3/2.粒子の位置エネルギーは U(z)=−kQq/R2+z2.従って中心で

mvc22=U(A)−U(0)=kQq(1R−1R2+A2),vc=2kQqm(1R−1R2+A2).
  1. 無限遠で U=0 なので,中心での全エネルギーが0以上なら脱出する.mu2/2−kQq/R≥0 より,下限は uesc=2kQq/(mR).等号では無限遠の速さが0へ近づく.

  2. 往復の対称性から

T=4m2∫0AdzU(A)−U(z).

B=kQq とおき,(1+s)−1/2=1−s/2+3s2/8+⋯ を用いると

U(A)−U(z)=B2R3(A2−z2)[1−3(A2+z2)4R2+⋯].

ω0=B/(mR3),z=Asin⁡ϕ と置けば

T≈4ω0∫0π/2[1+3A28R2(1+sin2⁡ϕ)]dϕ=2πω0[1+916(AR)2].

∫0π/2sin2⁡ϕdϕ=π/4 を使った.T0=2π/ω0 を用いた相対誤差は先頭で 9A2/(16R2) だから,A/R≤4δ/3 が目安となる.この見積もり自体にも A/R と δ が十分小さいことが必要で,次の相対補正は (A/R)4 の次数である.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

半径 a の導体球の中心Oから距離 b>a の点Bに,正の点電荷 q を固定する.外部は真空で,無限遠を電位0とする.

  1. 球を接地した場合を考える.直線OB上でOから距離 s<a に置く架空の電荷 q′ によって,球外の電位を表すための s,q′ を求めよ.球面の任意の点Pで電位が0となることを距離の比から示せ.

  2. 接地した球,および孤立した総電荷0の球が点電荷に及ぼす半径方向の力をそれぞれ求めよ.後者では(1)の架空の電荷にOの電荷を追加してよい.

  3. 点電荷を b から無限遠へゆっくり運ぶ外力の仕事を両条件で求めよ.a/b が十分小さいときの力の先頭の項を比較し,孤立した中性球で弱くなる理由を説明せよ.各条件は運ぶ間も保つ.

半径aの導体球,中心O,点電荷qの位置Bと距離b,球面上の任意点Pを示す.架空の電荷の位置や値は描かない. 半径aの導体球,中心O,点電荷qの位置Bと距離b,球面上の任意点Pを示す.架空の電荷の位置や値は描かない.
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考え方
鏡像は球面の境界条件を満たすための道具である.電荷を運ぶと誘導電荷も変わるので,仕事はその瞬間の力を積分する.

  1. s=a2/b,q′=−qa/b と選ぶ.∠BOP=θ とし,d1=PB,d2=Pq′ とおけば

d12=a2+b2−2abcos⁡θ,d22=a2+a4b2−2a3bcos⁡θ=a2b2d12

従って d2=(a/b)d1 で,kq/d1+kq′/d2=0.球外の電位は実電荷とこの鏡像の電位の和で表され,導体球面と無限遠の境界条件を満たす解の一意性から正しい.

  1. 接地球から受ける力は鏡像による力である.外向きを正とすると

Fg=kqq′(b−s)2=−kq2ab(b2−a2)2.

鏡像の総電荷 q′ は球の誘導総電荷に等しい.これは球を囲みBを含まないガウス面の流束から分かる.中性球では中心に q0=−q′=qa/b を追加する.中心の電荷は球面へ一定電位だけを加え,球面を等電位に保つ.よって

Fn=−kq2ab(b2−a2)2+kq2ab3.

両方とも内向きである.

  1. 外力の仕事は −∫b∞F(s)ds.接地では

Wg=kq2a∫b∞s(s2−a2)2ds=kq2a2(b2−a2).

中性の場合は ∫b∞s−3ds=1/(2b2) を引き,Wn=kq2a3/[2b2(b2−a2)].接地の地面は電位0なので電荷の出入りによる仕事は0である.遠方では (1−a2/b2)−2≈1+2a2/b2 より,Fg≈−kq2a/b3,Fn≈−2kq2a3/b5.中性球には単極子の誘導総電荷がなく,先頭の項が相殺する.展開には a/b が十分小さいことが必要で,いずれの仕事も b→∞ で0に近づく.

演習 3

IPhO 1970 第3問(改題) ★★★★☆

半径 a の導体球を,半径 b>a の薄い導体球殻で同心に囲む.初め球間は真空で,内球を接地したまま外殻に総電荷 Q>0 を与え,外殻を孤立させる.接地線の細い穴の影響を無視し,無限遠を電位0とする.その後,球間を比誘電率 εr>1 の線形誘電体で準静的に満たす.外殻の総電荷は常に Q である.

  1. 内球の電荷を qi として,球間および球殻外の電場と,各領域に蓄える静電エネルギーを求めよ.球間の容量 Cg と外殻単独の容量 Cb を用いてもよい.

  2. 内球の接地を保って挿入する場合,挿入後の qi,外殻の電位,外力の仕事を求めよ.地面との電荷の出入りも収支に含めよ.

  3. 真空の初期状態で接地線を切ってから挿入する場合,同じ量と内球の電位を求めよ.両条件の終状態のエネルギーを比較し,εr→∞ の極限で外部の場が消えるのはどちらか説明せよ.

同心の内球a,外殻b,外殻の保存電荷Q,内球の接地線と切断箇所,球間に満たす誘電体の比誘電率 \(\varepsilon_r\) を示す. 同心の内球a,外殻b,外殻の保存電荷Q,内球の接地線と切断箇所,球間に満たす誘電体の比誘電率 \(\varepsilon_r\) を示す.
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考え方
内球の電荷と外殻の総電荷を区別する.接地を保つ場合だけ,内球の電荷がエネルギーを最小にする値へ変わる.

  1. 外殻の内面は −qi,外面は Q+qi である.半径 r の球面で電束密度の流束を数えると,球間では Er=kqi/(εrr2),外部では Er=k(Q+qi)/r2.電位差の積分から

Cg=4πε0εrabb−a,Cb=4πε0b.

エネルギー密度 ε0εrE2/2 を積分すると,球間のエネルギーは Ug=kqi2(1/a−1/b)/(2εr)=qi2/(2Cg),外部は Ub=k(Q+qi)2/(2b)=(Q+qi)2/(2Cb).従って

U(qi,εr)=qi22Cg+(Q+qi)22Cb,Vi=qiCg+Q+qiCb,Vo=Q+qiCb.
  1. Vi=0 より qi=−QCg/(Cb+Cg)=−εraQ/(b−a+εra).従って Vo=Q/(Cb+Cg)=kQ(b−a)/[b(b−a+εra)].真空の初期値は qi0=−aQ/b,U0=kQ2(b−a)/(2b2).終状態は

UG=Q22(Cb+Cg)=kQ2(b−a)2b(b−a+εra).

地面から移る電荷は qi−qi0 だが,その仕事は ∫Vidqi=0.収支 UG−U0=Wext+Wground より Wext=UG−U0<0 となる.

  1. 接地を切ると qi=−aQ/b が一定.従って Vo=kQ(b−a)/b2 は変わらず,Vi=Vo(1−1/εr).終状態のエネルギーは

UD=kQ22b3[a(b−a)εr+(b−a)2],Wext=UD−U0=−kQ2a(b−a)2b3(1−1εr).

∂U∂qi=qi/Cg+(Q+qi)/Cb=Vi である.接地の値を qiG とすれば,平方完成によって

UD−UG=12(1Cg+1Cb)(qi0−qiG)2≥0

接地を保つ方が多くの仕事を取り出せる.εr→∞ では接地の場合だけ qi→−Q,外面の電荷と外部の場が0になる.切断後は外面電荷 Q(b−a)/b が残る.εr→1 では両仕事とも0となる.

演習 4

オリジナル ★★★★☆

長さ L の同軸円筒コンデンサーの内半径を a,外半径を b とし,L は半径より十分長いとする.内電極の電位は V>0,外電極は0である.端を無視する.

  1. まず隙間を真空とする.ガウスの法則と電位差の積分から Er,V(r),C を求めよ.円筒対称な電位について ∇2⁡V=(1/r)ddr(rdVdr) を使い,電荷のない隙間でラプラス方程式を満たすことを確かめよ.

  2. a<r<c を比誘電率4,c<r<b を比誘電率1の線形絶縁体で満たす.境界に自由電荷はなく,両材料の耐えられる電場の大きさの上限を,共通に E∗ とする.b=9a とする.容量と,各材料が破壊しない最大電圧 Vmax(c) を求めよ.

  3. Vmax を最大にする境界半径と最大電圧を求め,隙間全体をどちらか一方の材料で満たした場合と比べよ.(1)の真空の場を,(b−a)/a が十分小さい極限で平行板の場と比較せよ.

同軸円筒の断面にa,c,b,2層の比誘電率4,1,両電極の電位を示す.長さLは別の側面図に記す. 同軸円筒の断面にa,c,b,2層の比誘電率4,1,両電極の電位を示す.長さLは別の側面図に記す.
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考え方
電束密度の流束が自由電荷を数える.絶縁破壊は各層で電場が最も強い場所から始まるので,2つの上限を比較する.

  1. 内電極の単位長さあたりの電荷を λ>0 とする.長さ ℓ,半径 r のガウス面で 2πrℓEr=λℓ/ε0.従って Er=λ/(2πε0r),V=λln⁡(b/a)/(2πε0).よって

V(r)=Vln⁡(b/r)ln⁡(b/a),Er=Vrln⁡(b/a),C=λLV=2πε0Lln⁡(b/a).

rdV(r)dr=−V/ln⁡(b/a) は定数なので,∇2⁡V=0.この確認は積分形から得た解と一致する.

  1. Dr=λ/(2πr) は境界で連続である.h=λ/(2πε0) とおくと,内層で Er=h/(4r),外層で Er=h/r.両層の電位差を足すと

V=h[14ln⁡ca+ln⁡bc],C=2πε0L14ln⁡(c/a)+ln⁡(b/c).

最大の場は内層の r=a と外層の r=c にある.従って h≤4aE∗,h≤cE∗.t=c/a と置くと

Vmax=aE∗min(4,t)(ln⁡9−34ln⁡t),1<t<9
  1. 1<t<4 では括弧を A(t) とすると,ddt[tA(t)]=ln⁡9−3ln⁡t/4−3/4.これは単調に減少するが,t=4 でも約0.41で正である.4<t<9 では ddt[4A(t)]=−3/t<0.よって最適値は c=4a で,両層が同時に破壊限界へ達する.最大電圧は

Vopt=aE∗(4ln⁡9−3ln⁡4)≈4.63aE∗.

一様な比誘電率では場の形は(1)と同じなので,限界電圧は両材料とも aE∗ln⁡9≈2.20aE∗.2層の最適配置は約2.11倍まで電圧を上げられる.最後に d=b−a,d/a が十分小さいと ln⁡(b/a)≈d/a,隙間内で r≈a だから Er≈V/d,C≈ε0(2πaL)/d.端の近似には b/L が十分小さいことも必要である.

演習 5

オリジナル ★★★★★

幅 w,長さ ℓ,間隔 d の水平平行板コンデンサーに,隙間を満たす厚さの線形誘電体板を横から挿入する.比誘電率は εr>1,挿入長さは 0≤x≤ℓ である.このコンデンサーと固定容量 Cs を直列につなぎ,全電圧を理想電源で V>0 に保つ.中間の孤立した導体部分の総電荷は0である.C0=ε0wℓ/d,β=εr−1 とする.

板は摩擦なく滑り,装置は一定の大きさ f>0 の力で板を引き出す向きに引く.運動に伴う装置も含めた有効質量を m とし,端の効果を無視する.電荷の再配置は力学的運動より十分速いとし,電気的な損失も無視する.

  1. 合成容量 Ce(x) と,板を引き込む電気力 F(x) を求めよ.電源の仕事を明示せよ.

  2. F(ℓ)<f<F(0) の場合の平衡位置と安定性を求めよ.

  3. x=0 で板を静かに放す.初めに内向きに動く場合,板が x=ℓ に達するための電圧の条件を求めよ.最後に,内部の平衡位置での小振動の角振動数と近似条件を求めよ.

挿入長xの板,比誘電率,極板のw,ℓ,d,外向きの一定力f,固定容量C_sとの直列接続と電源Vを示す. 挿入長xの板,比誘電率,極板のw,ℓ,d,外向きの一定力f,固定容量C_sとの直列接続と電源Vを示す.
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考え方
誘電体の入った部分と真空部分は並列,その全体と固定容量は直列である.電源を含めて機械的な仕事を取り出す.

  1. 挿入側の容量は C(x)=C0(1+βx/ℓ).A=C0β/ℓ とおけば C=C0+Ax,Ce=CsC/(Cs+C).共通の電荷は Q=CeV,場のエネルギーの和は U=Q2/(2C)+Q2/(2Cs)=CeV2/2.電源の仕事は dWs=VdQ=V2dCe で,dU=V2dCe/2 との差が Fdx.従って

F(x)=V22dCedx=V2ACs22(Cs+C0+Ax)2.

直列の固定容量により,引き込まれるほど電気力は減る.

  1. D=Cs+C0,B=V2ACs2/2 とおけば F=B/(D+Ax)2.つり合い F(xe)=f から

xe=B/f−DA=VCsA/(2f)−DA.

指定の条件は 0<xe<ℓ を保証する.dFdx=−2AB/(D+Ax)3<0 なので,外向きの一定力と合わせたつり合いは安定である.

  1. x までの運動エネルギーは機械的仕事の積分から

K(x)=∫0x[F(s)−f]ds=V22[Ce(x)−Ce(0)]−fx.

K′(x)=F(x)−f は単調に減るので,初め内向きに動く場合,K(ℓ)≥0 なら途中で止まらず末端へ達する.従って

V2≥2fℓCe(ℓ)−Ce(0),Ce(ℓ)−Ce(0)=Cs2AℓD(D+Aℓ).

すなわち V≥2fD(D+Aℓ)/(ACs2).この下限では F(0)=f(D+Aℓ)/D>f なので初めの運動条件も満たす.等号では末端に達した瞬間の速度が0になる.ξ=x−xe として md2ξdt2=F′(xe)ξ より

ω=2Afm(D+Axe).

線形化には A|ξ|/(D+Axe) が十分小さく,振幅が xe,ℓ−xe より小さいことが必要である.端の影響を捨てた力の式には d/w,d/x,d/(ℓ−x) が十分小さい範囲を用いる.始端・末端での到達条件はその理想模型での値であり,d/ℓ→0 の極限で近似される.

演習 6

オリジナル ★★★★★

同じ2個の電気双極子を真空中に置く.各双極子は長さ ℓ の軽い剛い棒の両端に電荷 −q,+q と質量 m/2,m/2 を固定したもので,p=qℓ である.初め中心間距離 r0 を ℓ より十分大きく保ち,中心を結ぶ直線を x 軸とする.各棒は xy 平面内を回転でき,双極子モーメントが +x 方向となす角を θ1,θ2 とする.重力を無視する.

  1. 点双極子の電位 V(r)=kp⋅r/r3 を微分し,中心間距離 r0 での相互作用エネルギーを求めよ.θ1=θ2=0 付近の2つの基準角振動数を求めよ.

  2. 両棒を +x 方向にそろえたまま中心の固定を外し,中心を摩擦のない直線の案内に沿って動かす.初速度は0とする.r<r0 かつ ℓ/r が十分小さい範囲で,各中心の速さを求めよ.姿勢を保つ拘束は仕事をしない.

  3. 同じ姿勢で4個の点電荷の相互作用を直接足し,点双極子近似のエネルギーの相対補正を求めよ.さらに姿勢を保つ拘束だけを外し,(2)の中心運動に小さな角振動を重ねる場合,距離変化をゆっくりした変化とみなせる条件を |drdt|/(rω−) で評価せよ.ω− は小さい方の局所的な基準角振動数である.

中心間距離r₀の2本の棒に長さℓ,両端の電荷と質量,+x方向からの角θ₁,θ₂を示す.中心を動かす案内を破線で描く. 中心間距離r₀の2本の棒に長さℓ,両端の電荷と質量,+x方向からの角θ₁,θ₂を示す.中心を動かす案内を破線で描く.
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考え方
一方の作る場に他方の双極子を置く.角度の運動はエネルギーの2次項で分離し,中心の運動は相互作用エネルギーの減少で求める.

  1. V=k(pxx+pyy+pzz)/r3 を各座標で偏微分すると

E1=−∇⁡V=kr3[3(p1⋅er)er−p1].

例えば ∂V∂x=k[px/r3−3x(p1⋅r)/r5] で,他の成分も同様である.第2双極子のエネルギーは U=−p2⋅E1 だから

U=kp2r03[cos⁡(θ1−θ2)−3cos⁡θ1cos⁡θ2].

H=kp2/r03 と置き,角度を2次まで展開すると U≈−2H+H(θ12+θ22+θ1θ2).各棒の慣性モーメントは J=mℓ2/4 である.電荷は一定なので,Jd2θ1dt2=−∂U∂θ1=−H(2θ1+θ2),Jd2θ2dt2=−H(2θ2+θ1).和と差をとれば

ω+=3kp2Jr03,ω−=kp2Jr03.

両方とも実数なので,中心固定のもとでこの姿勢は安定である.

  1. そろった姿勢では U(r)=−2kp2/r3.全運動量が0なので2中心の速さは同じ v で,運動エネルギーの和は mv2.保存則から

mv2=2kp2(1r3−1r03),v=2kp2m(1r3−1r03).
  1. 同符号の2組の距離は r,異符号の組は r−ℓ,r+ℓ なので,r>ℓ で

Uexact=kq2[2r−1r−ℓ−1r+ℓ]=−2kp2r311−(ℓ/r)2.

相対補正は先頭で (ℓ/r)2.接近が進んで r が ℓ に近づくと近似は破れる.局所的な ω−=kp2/(Jr3),|drdt|=2v より

|drdt|rω−=22J/mr1−(rr0)3=2ℓr1−(rr0)3.

従って ℓ/r が十分小さければ,中心の接近も角振動に比べてゆっくりである.実際に(2)へ角振動を重ねても中心運動の式を先頭で保つには,角振動のエネルギーが相互作用エネルギーの大きさより十分小さいことも必要である.角振幅と ℓ/r が小さい条件を別々に確かめる.

18第20章のまとめ

この章では,止まった電荷が作る電場,つまり静電気を扱いました.出発点はクーロンの法則と重ね合わせの原理で,そこから「電荷が場を作り,場が電荷に力を及ぼす」という見方に切り替えて電場を導入しました.静電場の性質は2つにまとまります.閉じた面から出る流束が中の電荷で決まること(ガウスの法則)と,どんな閉じた道でも一周の線積分が0であること(保存場)です.後者から電位という1つの数の地図が作れ,前者と合わせると,電荷の無い所の電位には山も谷もないことが分かりました.この2つを導体に当てはめると静電遮蔽とコンデンサーが,物質の偏りを分極という平均の量で表すと誘電体の振る舞いが出てきました.

定義と法則

法則 電荷とクーロンの法則

  • 電荷には正負があり,外とやりとりの無い系では総和が保存する.自由に取り出せる電荷は電気素量 e=1.60×10−19C の整数倍である.

  • 真空中で距離 r だけ離れた点電荷 q1,q2 の間には,2つを結ぶ直線に沿って大きさ

F=k|q1q2|r2,k=14πε0=8.99×109Nm2C−2

の力が働き,同符号なら斥力,異符号なら引力である.ε0=8.85×10−12C2N−1m−2 を真空の誘電率という.

  • たくさんの電荷からの力は,1つずつの力をベクトルとして足したものになる(重ね合わせの原理).

  • 電子どうしでは電気の力は重力の約 4×1042 倍である.物質がほぼ正確に中性を保つのは,わずかな偏りでもこの強い力が偏りを戻すからである.

定義 電場と電気力線

点 r に置いた試験電荷 q が受ける力が F のとき,その点の電場を E=F/q と定める(単位 NC−1=Vm−1).点電荷 Q の電場は kQer/r2 である.電気力線は各点で電場の向きに接し,電場の強い所ほど密に描く.正電荷から出て負電荷に入り,電荷の無い所で始まったり終わったりせず,互いに交わらない.

定義 電気双極子

+q と −q が小さな距離 d だけ離れた組を電気双極子といい,−q から +q へ向かう大きさ qd のベクトルを双極子モーメント p という.全体の電荷は0だが,遠方では電位が kp⋅r/r3,電場が 1/r3 で減る形で残る.電場の中では U=−p⋅E,トルク τ=p×E で,一様な電場では力の和が0,一様でない電場では電場の強い方へ引かれる(p が x 向きなら F=pdE/dx).

法則 ガウスの法則

面を通る電場の流束 ΦE=∫E⋅ndS は,面を通る電気力線の本数である.任意の閉じた面(n は外向き)について

ΦE=Qinε0

が成り立つ(Qin は面の中の電荷の総和).面の外の電荷は面上の電場を変えるが,流束には寄与しない.クーロンの法則の逆2乗の性質と同じ内容で,流束という面全体の合計についての法則なので,各点の電場までは決めない.各点の形は ∇⋅E=ρ/ε0(発展).

定理 静電場と電位

  • 止まった電荷の電場の線積分 ∫ABE⋅dr は道すじによらず,閉じた道を一周すると0になる(保存場).各点の形は ∇×E=0(発展).

  • 電位を V(P)=−∫OPE⋅dr と定める(単位 V=JC−1).電荷 q の位置エネルギーは qV である.q が A から B へ動く間に電場がする仕事は −q(VB−VA),ゆっくり運ぶ外力の仕事は +q(VB−VA).

  • E=−∇⁡V.電場は等電位面に垂直で,電位の下がる向きを向き,等電位面が混んだ所ほど強い.

  • 電荷の無い所に電位の極大も極小もないので,止まった電荷の力だけで電荷を安定につり合わせることはできない(アーンショーの定理).各点の形はポアソン方程式 ∇2⁡V=−ρ/ε0,電荷の無い所ではラプラス方程式 ∇2⁡V=0(発展).

定理 静電平衡の導体

  1. 導体の内部では E=0.

  2. 導体全体が等電位で,表面は等電位面.電場は表面に垂直に出入りする.

  3. 電荷は表面にだけ分布する.

  4. 面電荷密度 σ の所のすぐ外の電場は E=σ/ε0.曲がり方の急な,とがった所に電荷が集まり,電場が強くなる.

空洞に電荷が無ければ,外にどんな電荷があっても空洞の中の電場は0である(静電遮蔽).空洞に q を置くと内表面に −q が誘導され,もともと中性の導体なら外表面に +q が現れる.導体の表面の電位と空間の電荷を決めると,電位は1つに決まる.鏡像法はこれを使う.

定義 電気容量

2つの導体に +Q と −Q を与えたときの電位差 V は Q に比例する.Q=CV の C を電気容量といい,単位は F=CV−1(ファラド)である.

定義 分極と比誘電率

  • 誘電体の小さな体積に含まれる双極子モーメントの和を体積で割った P を分極という(数密度 n の分子が平均 p をもてば P=np).表面には面密度 σb=P⋅n の分極電荷が現れ,閉じた面の中の分極電荷の和は Qb=−∫P⋅ndS である.分極電荷は分子に縛られて運び出せない.極板にのせた電荷のように外から決められる電荷を自由電荷という.

  • P=ε0(εr−1)E と書ける誘電体を線形な誘電体,εr を比誘電率,ε=εrε0 を誘電率という.比例は電場が原子の中の電場より十分弱いときの近似である.

法則 電束密度と自由電荷のガウスの法則

電束密度 D=ε0E+P について,どんな閉じた面でも

∫D⋅ndS=Qf

が成り立つ(右辺は面の中の自由電荷).線形な誘電体の中では D=εrε0E.2つの誘電体の境界では,電場の接線成分がつながり(E1t=E2t),電束密度の法線成分は自由電荷の分だけ跳ぶ(D2n−D1n=σf).

手順

ポイント 静電気の問題を解く手順

  1. 点電荷の配置では,力を受ける電荷を1つ決め,ほかの電荷の電場の大きさ k|qi|/ri2 と向きを図に描く.対称性で打ち消し合う成分を先に消し,残りを成分ごとに足す.対称な配置の一部を変えたときは「対称な配置+差の電荷」と見る.

  2. 電位はただの数の和 ∑ikqi/ri なので,向きを考えずに足せる.

  3. 対称性があれば,面上で E⋅n が一定か0になるガウス面を選び,流束を「電場の大きさ × 面積」にして Qin から電場を出す.対称性が無ければ,小さな部分の電荷 dq の電場を積分する.

  4. コンデンサーでは,導線でつながった導体をまとめた孤立部分ごとに電位を未知数にし,向かい合う面の電荷を「容量 ×(自分の電位 − 相手の電位)」と書く.電源や接地につながっていない部分では電荷の和を保存させる.極板の電荷を初めから +Q,−Q と決めつけない.

  5. エネルギーと力は,電荷一定なら W外力=ΔU,電圧一定なら電源の仕事 VΔQ を入れて W外力+W電池=ΔU で収支をとる.

  6. 誘電体では自由電荷を D の流束で数える.極板に平行な境界では D が共通(直列),極板に垂直な境界では E が共通(並列)になる.

主な公式

  • 点電荷の電位:V=kQ/r(無限遠が基準)

  • 双極子の遠方の電場:k[3(p⋅er)er−p]/r3(軸上 2kp/r3,垂直二等分線上 −kp/r3)

  • 球殻(半径 a,電荷 Q):外 kQ/r2,中 0.一様に帯電した球(半径 R):中 kQr/R3,外 kQ/r2

  • 直線電荷 E=λ/(2πε0r),電位 V=−λ2πε0ln⁡rr0.平面電荷 E=σ/(2ε0).±σ の2枚の間 σ/ε0,外 0

  • 輪(半径 a,電荷 Q)の軸上:Ez=kQz/(a2+z2)3/2

  • 一様な電場:V=Ed.電子ボルト 1eV=1.60×10−19J

  • 点電荷の系の静電エネルギー:U=∑i<jkqiqj/rij=12∑iqiVi

  • 導体:すぐ外の電場 σ/ε0.導線でつないだ2つの球では σ∝1/r

  • 鏡像法(接地した平面から高さ a の q):引力 kq2/(2a)2,誘導電荷 σ=−qa2π(s2+a2)3/2(総量 −q),無限遠まで運ぶ仕事 kq2/(4a)

  • 容量:平行板 C=ε0S/d(d が S よりずっと小さいとき),球形 C=4πε0ab/(b−a),並列 C=C1+C2,直列 1/C=1/C1+1/C2.隙間を誘電体で満たすと εr 倍

  • エネルギー:U=Q22C=12CV2=12QV,エネルギー密度 12ε0E2(誘電体の中では 12ED)

  • 極板の間の引力:Q2/(2ε0S)(電荷一定でも電圧一定でも同じ)

  • 逆向きのつなぎ替えで失われるエネルギー:12C1C2C1+C2(V1+V2)2(導線の抵抗によらない)

  • 誘電体を引き込む力:F=V22dCdx=ε0w(εr−1)V22d(その瞬間の電圧 V で,電荷一定でも電圧一定でも同じ)

  • 誘電体の中の点電荷:E=q4πεrε0r2.境界での電気力線の屈折 tan⁡θ1/tan⁡θ2=εr1/εr2

  • 原子の模型の分極率 α=4πε0a3(p=αE),希薄な気体 εr=1+nα/ε0

各題材の問いへの答え

  • クーロンの法則と電場:電気の力は重力より 1042 倍も強いので,下じきの電荷が全電荷の1兆分の1にも足りない偏りでも,髪の毛の重さに勝てる.帯電していない髪の毛が引かれるのは,下じきの電場で中の電荷が偏って双極子になり,近い側に寄った異符号の電荷のほうが強い電場の所にあるからで,下じきの電荷の符号によらず引き寄せられる.

  • ガウスの法則:導体の中だけを通って空洞を囲む閉じた面では電場が0なので,中の電荷の和は0で,球に与えた電荷も外の帯電体が呼び寄せる電荷もすべて外側の表面に集まる.電荷の無い空洞の中の電場は0で,空洞に入れた電荷は球の電荷からも外の帯電体からも力を受けない.ファラデーの部屋の検電器が動かなかったのはこのためである.

  • 電位と静電エネルギー:静電場はどんな閉じた道でも一周の線積分が0なので,電位という1つの数の地図が作れる.等電位面が等高線で,電場はそれに垂直に電位の下がる向きを向き,等電位面が混んだ所ほど強い(E=−∇⁡V).電荷の無い所では ∇2⁡V=0 なので山頂も谷底もなく,鞍の形だけが許される.

  • 導体とコンデンサー:金属の車体の中の電場は0で,電荷の無い空洞には外の電場が入らない(静電遮蔽).雷の電荷は外表面を伝わって地面へ逃げ,中の人には電位差がかからない.速く変わる場でも表面の電流が中を守ることは第23章で見る.

  • 誘電体と分極:水の分子が NaA+ のまわりで向きをそろえ,イオンの表面を負の分極電荷が包むので,電場は 1/εr≈1/80 に弱まる.距離 0.28nm の NaA+ と ClA− の引き合うエネルギーは真空の約 5eV から約 0.06eV になり,kBT と同じ程度まで下がるので,熱運動がイオンを引き離せる.

この章で使った数学

面積分(平面は dxdy か輪 2πsds,円筒の側面は rdφdz,球面は帯 2πr2sin⁡θdθ に分ける),連続な電荷分布の電場の積分(dq=λdl,σdS,ρdV を点電荷とみなし,打ち消し合う成分を先に消す),電場の線積分,そして d/r の1次までの展開がありました.どれも,電荷や場を小さな部分に分けて足し合わせる道具と,近似がどこまで使えるかを測る道具です.

数学の道具(発展)

定理 数学の道具:発散とガウスの定理(発展)

  • ベクトル場 h の発散 ∇⋅h=∂hx∂x+∂hy∂y+∂hz∂z は,小さな体積から出ていく流束をその体積で割ったもの.

  • ガウスの定理:閉じた面 S と,それが囲む体積 V について ∫Sh⋅ndS=∫V∇⋅hdV.隣り合う小さな箱の共通の面の流束が打ち消し合い,外側の面だけが残る.

  • 保存する量の連続の式 ∂u/∂t=−∇⋅h.電荷では ∂ρ/∂t=−∇⋅j.

  • ガウスの法則に使うと,各点で ∇⋅E=ρ/ε0.点電荷の電場は原点以外で ∇⋅E=0.

定理 数学の道具:勾配・回転とストークスの定理(発展)

  • 勾配 ∇⁡ψ=(∂ψ∂x, ∂ψ∂y, ∂ψ∂z) は ψ が最も急に増える向きを向き,Δψ=∇⁡ψ⋅Δr.勾配の線積分は道すじによらず ∫AB∇⁡ψ⋅dr=ψ(B)−ψ(A).

  • 回転 ∇×v の n 方向の成分は,n に垂直な小さな道を一周する循環を,道の囲む面積で割ったもの.z 成分は ∂vy/∂x−∂vx/∂y.

  • ストークスの定理:閉じた道 Γ と,それを縁とする面 S について ∫Γv⋅dr=∫S(∇×v)⋅ndS.

  • ∇×∇⁡ψ=0,∇⋅∇×v=0.穴のない領域では,回転が0の場は勾配で書ける(保存場).

  • ラプラシアン ∇2⁡ψ=∇⋅∇⁡ψ=∂2ψ∂x2+∂2ψ∂y2+∂2ψ∂z2 は,まわりの平均とのずれを表す.∇2⁡ψ=0 なら極大も極小もない.球対称では 1r2ddr(r2dVdr),円筒対称では 1rddr(rdVdr).

静電場の法則は ∇⋅E=ρ/ε0 と ∇×E=0 の2つで尽きていて,電位を使うとポアソン方程式1つにまとまります.次の第21章では電荷が動いて電流になる場合を扱い,その先で磁場が現れます.磁場が時間とともに変わると ∇×E が0でなくなり,電位だけでは電場を表せなくなることを第23章で見ます.